説明

ベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物

【課題】外生地の配合を自由に設計することができ、焼成直後の外生地焼成部分のサクサクとした食感を、経日的に維持することができるベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物を提供すること。
【解決手段】油相の固体脂含量(SFC)が25℃で55%以上、35℃で60%以下であることを特徴とするベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物及びこれを使用したベーカリー食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
菓子パン生地やデニッシュ生地等の内生地の上に、ビスケット生地やタルト生地等の外生地を載せ、焼成したベーカリー製品は、メロンパンと称されている。
このメロンパンは、内生地焼成部分と外生地焼成部分から構成されるものであるが、焼成直後から、内生地焼成部分から外生地焼成部分への水分移行が始まる。そのため、外生地焼成部分が、カリカリとした食感から経日的にべたついた食感となってしまうという欠点があった。
【0003】
このような問題を解決するために、外生地にあたる上掛け生地について検討した先行技術として特許文献1〜3が挙げられる。
【0004】
特許文献1には、糖類、油脂類及び水を主成分とする乳化物生地において、油中水型乳化物、水中油型乳化物、油相及び水相が混在しているベーカリー用上掛け生地が開示されている。
しかし、特許文献1のベーカリー用上掛け生地は、糖類が必須原料であり、このようなベーカリー用上掛け生地を用いてベーカリー製品を製造すると、焼成後、経日的に糖類による泣きという現象により、上掛け部分がサクサクとした食感にならないという欠点があった。
【0005】
特許文献2には、油脂10〜25質量%及び水分5〜30質量%を含有し、該油脂の20℃における固体脂含量が40%以上であり且つ35℃における固体脂含量が10%以下であるベーカリー用上掛け生地が記載されている。
また特許文献3には、油脂と糖類を含有し、SFC(固体脂含量)が25℃で10〜50%、35℃で3〜25%である焼成用トッピング材が記載されている。
上記の特許文献1〜3は、いずれもベーカリー用上掛け生地又は焼成用トッピング材そのものに関するものであり、それぞれ特定の配合とするものである。そのため自由にベーカリー用上掛け生地や焼成用トッピング剤の配合を設計することはできなかった。
【0006】
一方、特許文献4には、特定の組成を有する冷凍食品内水分移行抑制用油性組成物が開示されている。特許文献4に記載の冷凍食品内水分移行抑制用油性組成物は、冷凍食品に用いるのに適しているが、使用温度が異なるベーカリー食品で用いても、水分移行抑制効果を発揮することはできなかった。
【0007】
【特許文献1】特開2004−57018号公報
【特許文献2】特開2006−149220号公報
【特許文献3】特開2006−296345号公報
【特許文献4】特開平9−9940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、外生地の配合を自由に設計することができ、焼成直後の外生地焼成部分のサクサクとした食感を、経日的に維持することができるベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、油相中の特定温度における固体脂含量(SFC)を特定の範囲とした油脂組成物がベーカリー食品内の水分移行抑制効果に優れることを見出した。
本発明は、油相の固体脂含量(SFC)が25℃で55%以上、35℃で60%以下であることを特徴とするベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、内生地の上に上記ベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物を載せ、さらに外生地を載せ、焼成するベーカリー食品の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、内生地の上に外生地を載せ、さらに上記ベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物を載せ、焼成するベーカリー食品の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、内生地の上に外生地を載せ、焼成したベーカリー食品の表面に、溶解した上記ベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物を塗布するベーカリー食品の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物は、メロンパンのような外生地焼成部分と内生地焼成部分で構成されるベーカリー食品において、内生地焼成部分から外生地焼成部分への水分移行を抑制することが可能である。そのため、外生地焼成部分において焼成直後のカリカリとした食感を経日的に維持することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明のベーカリー食品内水分抑制油脂組成物について詳細に説明する。
本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物は、油相の固体脂含量(以下SFCという)が25℃で55%以上、35℃で60%以下であることが必要である。
本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物において、油相の25℃のSFCが55%未満であると、ベーカリー生地にベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物を用いた際、ベーカリー食品内における水分移行抑制効果が得られにくいので好ましくない。又本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物において、油相の35℃のSFCが60%を超えると、ベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物を用いたベーカリー食品の口溶けが悪くなるので好ましくない。
【0013】
本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物において、油相の20℃におけるSFCは、好ましくは58%以上、さらに好ましくは58〜95%、より好ましくは65〜95%、最も好ましくは68〜90%である。
【0014】
本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物において、油相の25℃におけるSFCは、好ましくは55〜90%、さらに好ましくは60〜85%、最も好ましくは60〜80%である。
【0015】
本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物において、油相の30℃におけるSFCは、好ましくは80%以下、さらに好ましくは45〜80%、より好ましくは50〜75%、最も好ましくは53〜70%である。
【0016】
本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物において、油相の35℃におけるSFCは、好ましくは20〜60%、さらに好ましくは30〜55%、最も好ましくは32〜45%である。
【0017】
本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物において、油相の40℃におけるSFCは、好ましくは50%以下、さらに好ましくは3〜45%、より好ましくは5〜35%、最も好ましくは10〜30%である。
【0018】
上記のSFCは、次のようにして測定する。即ち、ベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物の油相を60℃に30分保持して完全に融解した後、0℃に30分保持して固化させる。次いで、25℃に30分保持し、テンパリングを行い、その後、0℃に30分保持し固化させた後、各測定温度に順次30分保持した後、SFCを測定する。
【0019】
本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物では、該油相のSFCを上記のような範囲とするために、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオバター、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、魚油、鯨油等の各種動植物油脂、これらの各種動植物油脂に必要に応じてエステル交換、水素添加、異性化水添および分別の中から選ばれた1種又は2種以上の処理を施した加工油脂を使用することができる。さらに上記の各種動植物油脂や加工油脂と、脂肪酸及び/又は脂肪酸低級アルコールエステルを用いて製造したエステル交換油脂も使用することができる。本発明ではエステル交換油脂を用いるのが好ましい。
【0020】
上記のエステル交換油脂としては、炭素数14以下の飽和脂肪酸を含有する油脂と、炭素数16以上の飽和脂肪酸を含有する油脂とを混合して油脂配合物とし、これをランダムエステル交換したランダムエステル交換油脂を1種又は2種以上用いることが好ましい。
【0021】
上記の炭素数14以下の飽和脂肪酸を含有する油脂は、その構成脂肪酸中に炭素数14以下の飽和脂肪酸を30〜100質量%含有することが好ましく、60〜100質量%含有することがさらに好ましい。このような炭素数14以下の飽和脂肪酸を含有する油脂の具体例としては、パーム核油、ヤシ油、ババス油、並びにこれらに対し硬化、分別及びエステル交換のうちの1種又は2種以上の操作を施した油脂を挙げることができ、これらの中の1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、好ましくはパーム核油、ヤシ油を使用する。
【0022】
上記の炭素数16以上の飽和脂肪酸を含有する油脂は、その構成脂肪酸中に炭素数16以上の飽和脂肪酸を20〜100質量%含有することが好ましく、30〜100質量%含有することがさらに好ましい。このような炭素数16以上の飽和脂肪酸を含有する油脂の具体例としては、パーム油、大豆油、ナタネ油、ラード、牛脂、並びにこれらに対し硬化、分別及びエステル交換のうちの1種又は2種以上の操作を施した油脂を挙げることができ、これらの中の1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、好ましくは、パーム硬化油、大豆硬化油、ナタネ硬化油、さらに好ましくは、パーム極度硬化油、大豆極度硬化油、ナタネ極度硬化油を使用する。
【0023】
上記油脂配合物における上記の構成脂肪酸中の炭素数14以下の飽和脂肪酸の含有量は、好ましくは15〜55質量%、さらに好ましくは20〜55質量%、最も好ましくは、30〜50質量%であり、上記の構成脂肪酸中の炭素数16以上の飽和脂肪酸の含有量は、好ましくは20〜70質量%、さらに好ましくは25〜65質量%、最も好ましくは30〜60質量%である。
【0024】
上記油脂配合物には、その構成脂肪酸中における炭素数14以下の飽和脂肪酸の含有量及び炭素数16以上の飽和脂肪酸の含有量が上記の範囲であれば、その他の油脂を加えてもよい。その他の油脂としては、例えば、コーン油、米油、豚脂、カカオバター、並びにこれらに対し硬化、分別及びエステル交換のうちの1種又は2種以上の操作を施した油脂を挙げることができ、これらの中の1種又は2種以上を用いることができる。
【0025】
上記のランダムエステル交換油脂は、上述した油脂配合物に対し、ランダムエステル交換を行なうことにより得られる。該ランダムエステル交換の方法は、常法のリパーゼ等の酵素による方法でも、ナトリウムメチラート等のアルカリ触媒による方法でもよく、特に制限されるものではない。
【0026】
本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物には、このようにして得られたランダムエステル交換油脂を1種又は2種以上用いることができる。また本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物中における上記のランダムエステル交換油脂の含有量は、好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、最も好ましくは80〜99.5質量%である。
【0027】
本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物では、上記のランダムエステル交換油脂を用いる場合において、融点50℃以上、好ましくは融点55℃以上の油脂を好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.5〜5質量%含有させることが望ましい。
【0028】
上記の融点50℃以上の油脂としては、融点が50℃以上の油脂であればどのようなものでも使用することができる。具体的には原料油脂に対し、ヨウ素価が好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下、最も好ましくは1未満となるまで水素添加し、実質的に構成成分である不飽和脂肪酸をほぼ完全に飽和することによって得られる極度硬化油脂を1種又は2種以上使用することができる。
【0029】
本発明では、上記極度硬化油脂を更に分別した硬部油、あるいは1種又は2種以上の極度硬化油脂をエステル交換したものを用いてもよく、上記極度硬化油脂と、飽和脂肪酸や飽和脂肪酸を主体とする部分グリセリド等とをエステル交換したものを用いてもよい。本発明では、これら全てを極度硬化油脂として扱う。
上記の極度硬化油脂としては、大豆、パーム油、菜種油及び魚油の極度硬化油脂、長鎖脂肪酸を多く含む油脂を原料油脂とした極度硬化油脂の中から選ばれた1種又は2種以上を使用するのが好ましい。
【0030】
本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物において、上記のランダムエステル交換油脂を用いる場合、ベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物の構成脂肪酸中の炭素数14以下の飽和脂肪酸の含有量は、好ましくは5〜60質量%、さらに好ましくは10〜50質量%、最も好ましくは15〜45質量%である。
また、本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物において、上記のランダムエステル交換油脂を用いる場合、ベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物の構成脂肪酸中の炭素数16以上の飽和脂肪酸の含有量は、好ましくは40〜95質量%、さらに好ましくは50〜90質量%、最も好ましくは50〜80質量%である。
【0031】
本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物において、トランス酸の含有量は少ないほうが好ましい。具体的には、トランス酸の含有量は、好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、最も好ましくは2質量%以下である。
【0032】
本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂は、水相を含有しないことが好ましい。水相を含んでいると水分移行を抑制する効果が小さくなり、外生地を焼成した部分のサクサクとした食感を損ないやすくなる。
【0033】
本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物は、糖類を含有しないことが好ましい。糖類を含有するベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物を低水分の生地と高水分の生地で構成されるベーカリー生地で用い、焼成すると、焼成直後は低水分の生地の焼成部分の食感はサクサクとしているが、経日的にサクサクした食感が失われてしまう。
【0034】
上記の糖類としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、はちみつ、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、還元乳糖、ソルビトール、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、トレハロース等が挙げられる。
【0035】
さらに本発明では、スクラロース、ステビア、アスパルテーム、ソーマチン、サッカリン等の中から選ばれた1種又は2種以上の甘味料を含有しないことが好ましい。
【0036】
本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物では、必要に応じて、他の成分として、乳化剤、増粘安定剤、β−カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白といった植物蛋白、着香料、乳製品、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、ココアマス、ココアパウダー等の食品素材や食品添加物を使用しても良い。これらの他の成分は、本発明の効果を損なわない限り、任意に使用することができるが、好ましくは、本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物中、合計で5質量%以下となる範囲で使用する。
【0037】
上記の乳化剤として、例えばグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリン酒石酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等の合成乳化剤や、例えば大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、サポニン、植物ステロール類、乳脂肪球皮膜等の天然乳化剤が挙げられる。本発明では、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を使用することができる。本発明では好ましくは構成脂肪酸が炭素数12以上の飽和脂肪酸であるグリセリン脂肪酸エステル、さらに好ましくは炭素数18〜24の飽和脂肪酸であるグリセリン脂肪酸エステルを使用する。
上記の乳化剤の含有量は特に制限はないが、本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物中、好ましくは0〜15質量%、さらに好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは0〜5質量%である。
【0038】
上記増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉、化工澱粉等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を使用することができる。
上記増粘安定剤の含有量は、特に制限はないが、本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物中、好ましくは0〜10質量%、さらに好ましくは0〜5質量%である。なお、本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物において、上記増粘安定剤が必要でなければ、増粘安定剤を用いなくてもよい。
【0039】
本発明のベーカリー食品内水分抑制油脂組成物の形態は、特に制限はないが、薄片状、フレーク状、立方体状、直方体状、角柱状、円柱状、半円柱状、球状等の小片状や粉末状で用いることができる。特に本発明ではフレーク状の形態で用いるのが好ましい。
【0040】
次に本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物の好ましい製造方法について説明する。
まず配合する油脂を混合し、これに必要に応じて、その他の成分を添加する。そしてこれを必要により加熱溶解(65〜75℃)し、さらに冷却し、常温(15〜25℃)で固形状の本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物を得る。本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物は、フレーク状の形態とするのが好ましいが、フレーク状の形態とする場合は、上記の冷却をクーリングドラム等の冷却装置を用い、急冷することにより、フレーク状のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物を得ることができる。
【0041】
本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物は、次の3通りの方法で使用することができる。本発明では作業性の面から以下の1つめと2つめの方法で使用するのが好ましい。
【0042】
1つめの方法としては、内生地の上に本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物を載せ、さらに外生地を載せ、焼成するベーカリー食品の製造方法が挙げられる。詳しくは、(1)内生地の材料を混合し、フロア、成形、ベンチ等の工程を経た生地に、本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物を載せ、ホイロをとり、その後、本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物の上に、あらかじめ製造しておいた外生地を載せ、焼成する方法、(2)内生地の材料を混合し、フロア、成形、ベンチ等の工程を経た生地に、本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物を載せ、その上にあらかじめ製造しておいた外生地を載せ、ホイロをとり、焼成する方法、(3)内生地の材料を混合し、フロア、成形、ベンチ、ホイロ等の工程を経た生地に、本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物を載せ、その上にあらかじめ製造しておいた外生地を載せ、焼成する方法をあげることができる。
なお、本発明において上記の内生地の上に外生地を載せるとは、載せる以外に包み込む場合も含むものとし、上記の内生地の上に本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物を載せるとは、ベーカリ食品内移行抑制油脂組成物を内生地全体にちりばめることである。
【0043】
2つめの方法としては、内生地の上に外生地を載せ、さらに本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物を載せ、焼成するベーカリー食品の製造方法が挙げられる。詳しくは、(1)内生地の材料を混合し、フロア、成形、ベンチ等の工程を経た生地に、あらかじめ製造しておいた外生地を載せ、さらにその上に本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物を載せ、ホイロをとり、焼成する方法、(2)内生地の材料を混合し、フロア、成形、ベンチ等の工程を経た生地に、あらかじめ製造しておいた外生地を載せ、ホイロをとり、外生地の上に本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物を載せ、焼成する方法、(3)内生地の材料を混合し、フロア、成形、ベンチ、ホイロ等の工程を経た生地に、あらかじめ製造しておいた外生地を載せ、さらにその上に本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物を載せ、焼成する方法である。
なお、本発明において上記の内生地の上に外生地を載せるとは、載せる以外に包み込む場合も含むものとし、上記の外生地の上に本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物を載せるとは、ベーカリ食品内移行抑制油脂組成物を外生地全体にちりばめることである。
【0044】
3つめの方法としては、内生地の上に外生地を載せ、焼成したベーカリー食品の表面に、55〜65℃で溶解した本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物を塗布するベーカリー食品の製造方法が挙げられる。
なお、本発明において上記の内生地の上に外生地を載せるとは、載せる以外に包み込む場合も含むものとし、塗布するとは刷毛塗りや吹きつけを含むものとする。
【0045】
本発明で用いる上記の内生地としては、例えばパン生地、練りパイ生地、折りパイ生地、デニッシュ生地、シュー生地、ケーキ生地、クラッカー生地、ワッフル生地等を挙げることができる。
本発明で用いる上記の外生地としては、例えばビスケット生地、タルト生地等を挙げることができる。また、本発明において内生地と外生地の合計100質量部に対し、ベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物の添加割合は、好ましくは5〜20質量部、さらに好ましくは7〜18質量部、最も好ましくは8〜16質量部である。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例等により何ら制限されるものではない。
【0047】
〔エステル交換油脂Aの製造〕
ヨウ素価18で、構成脂肪酸中に炭素数14以下の飽和脂肪酸を65質量%含有するパーム核油60質量部と、ヨウ素価0で、構成脂肪酸中に炭素数16以上の飽和脂肪酸を45質量%含有するパーム油の極度硬化油40質量部とを70℃にて混合溶解して得た油脂配合物を、ナトリウムメチラートを触媒として、ランダムエステル交換を行なった後、漂白(白土3%、85℃、9.3×102Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×102Pa以下の減圧下)を行い、エステル交換油脂Aを得た。
なお、上記の油脂配合物における炭素数14以下の飽和脂肪酸の含有量は43質量%、炭素数16以上の飽和脂肪酸の含有量は57質量%であった。
【0048】
〔エステル交換油脂Bの製造〕
ヨウ素価18で、構成脂肪酸中に炭素数14以下の飽和脂肪酸を65質量%含有するパーム核油75質量部と、ヨウ素価0で、構成脂肪酸中に炭素数16以上の飽和脂肪酸を45質量%含有するナタネ極度硬化油25質量部とを70℃にて混合溶解して得た油脂配合物を、ナトリウムメチラートを触媒として、ランダムエステル交換を行なった後、漂白(白土3%、85℃、9.3×102Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×102Pa以下の減圧下)を行ない、エステル交換油脂Bを得た。
なお、上記の油脂配合物における炭素数14以下の飽和脂肪酸の含有量は44質量%、炭素数16以上の飽和脂肪酸の含有量は56質量%であった。
【0049】
〔エステル交換油脂Cの製造〕
ヨウ素価18で、構成脂肪酸中に炭素数14以下の飽和脂肪酸を65質量%含有するパーム核油50質量部と、ヨウ素価0で、構成脂肪酸中に炭素数16以上の飽和脂肪酸を45質量%含有するナタネ極度硬化油50質量部とを70℃にて混合溶解して得た油脂配合物を、ナトリウムメチラートを触媒として、ランダムエステル交換を行なった後、漂白(白土3%、85℃、9.3×102Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×102Pa以下の減圧下)を行ない、エステル交換油脂Cを得た。
なお、上記の油脂配合物における炭素数14以下の飽和脂肪酸の含有量は41質量%、炭素数16以上の飽和脂肪酸の含有量は59質量%であった。
【0050】
(実施例1)
エステル交換油脂A99質量%、パーム極度硬化油1質量%を70℃にて混合溶解し、これをクーリングドラムを用いて冷却し、フレーク状のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物1を得た。
得られたベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物1は、SFCが、20℃で72%、25℃で64%、30℃で55%、35℃で37%、40℃で14%であり、炭素数14以下の飽和脂肪酸の含有量が43質量%、炭素数16以上の飽和脂肪酸の含有量が57質量%、トランス酸の含有量が0.1質量%であった。
【0051】
(実施例2)
エステル交換油脂B30質量%、エステル交換油脂C69質量%、パーム極度硬化油1質量%を70℃にて混合溶解し、これをクーリングドラムを用いて冷却し、フレーク状のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物2を得た。
得られたベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物2は、SFCが、20℃で73%、25℃で66%、30℃で56%、35℃で38%、40℃で13%であり、炭素数14以下の飽和脂肪酸の含有量が41質量%、炭素数16以上の飽和脂肪酸の含有量が58質量%、トランス酸の含有量が0.2質量%であった。
【0052】
(実施例3)
パーム油(ヨウ素価53)と菜種油(ヨウ素価116)とを1:1(質量比)の割合で混合した油300g、市販のニッケル触媒(日産ガードラー触媒製、商品名「G-95E」、ニッケル含量22%)1.05g及びメチニオン60mgを、750mlのオートクレーブ中に投入し、温度200℃、水素圧19.6×104Pa、水素流量0.5l/分、攪拌速度500rpmの条件で異性化水素添加を行い、異性化水添油を得た。
得られた異性化水添油を70℃にて混合溶解し、これをクーリングドラムを用いて冷却し、フレーク状のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物3を得た。
得られたベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物3は、SFCが、20℃で70%、25℃で65%、30℃で55%、35℃で35%、40℃で15%であり、トランス酸含量が50質量%であった。
【0053】
(比較例1)
パームオレイン99.9質量%、ステアリン酸モノグリセリド0.1質量%を70℃にて混合溶解し、これをクーリングドラムを用いて冷却したが、フレーク状ではなくペースト状のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物4を得た。得られたベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物4は、SFCが、20℃で5.3%、25℃で0.1%、35℃で0%であり、トランス酸の含有量が1質量%であった。
【0054】
(比較例2)
パームオレイン99.9質量%、ステアリン酸モノグリセリド0.1質量%を70℃にて混合溶解したものを50質量部、ココア10質量部、砂糖39.65質量部、レシチン0.3質量部、バニラフレーバー0.05質量部を用いてチョコレートを作製した。これを溶解し、クーリングドラムを用いて冷却したが、フレーク状ではなく、ペースト状のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物5を得た。
得られたベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物5は、SFCが、20℃で2%、25℃で0%、35℃で0%であり、トランス酸の含有量が0.5質量%であった。
【0055】
以下の実施例4〜12及び比較例3〜8では、実施例1〜3及び比較例1〜2で得られたベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物と、下記の<内生地(パン生地)の配合と製法>に従って製造した内生地と、下記の<外生地(ビスケット生地)の配合と製法>に従って製造した外生地とを用いて、ベーカリ食品(メロンパン)を製造した。
【0056】
<内生地(パン生地)の配合と製法>
(中種配合)
強力粉 70 質量部
イースト 3 質量部
イーストフード 0.1 質量部
上白糖 3 質量部
全卵 6 質量部
水 34 質量部
(中種工程)
ミキシング 低速2分中速3分
捏上温度 26℃
発酵条件 28℃、2時間
(本捏配合)
強力粉 30 質量部
食塩 1.2 質量部
上白糖 20 質量部
脱脂粉乳 2 質量部
全卵 6 質量部
練り込み用油脂(マーガリン)14 質量部
水 12 質量部
(本捏工程)
ミキシング 低速3分中速4分高速1分ミキシング後、練り込み用油脂
を投入し、さらに低速2分中速3分高速1分ミキシグ
捏上温度 28℃
フロアータイム 30分
分割 60g
ベンチタイム 30分
成形 丸めなおし
ホイロ条件 36℃、75%RH、60分
焼成条件 190℃、15分
【0057】
<外生地(ビスケット生地)の配合と製法>
(配合)
薄力粉 100 質量部
ベーキングパウダー 1 質量部
上白糖 60 質量部
食塩 0.4 質量部
脱脂粉乳 3 質量部
全卵 25 質量部
マーガリン 40 質量部
(製法)
1 上白糖とマーガリンをビーターで混合し、クリーム状にする。
2 全卵を2〜3回に分けて1に加え、混合する。
3 篩った薄力粉、ベーキングパウダー、脱脂粉乳、食塩を加え、均一になるまで混合する。
【0058】
(実施例4)
パン生地(内生地)を上記の配合と製法にて本捏工程の成形の丸めなおしまで行った。そしてパン生地(内生地)の上に、フレーク状のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物1の8gを均一になるように載せ、これをビスケット生地(外生地)40gで包み込み、閉じ目を下にして天板の上に載せた。そして上記のパン生地の本捏工程に記載の条件で、ホイロ、焼成を行い、メロンパンを得た。得られたメロンパンの評価を表1に示した。
【0059】
(実施例5)
パン生地(内生地)を上記の配合と製法にて本捏工程の成形の丸めなおしまで行った。そしてパン生地(内生地)を、ビスケット生地(外生地)40gで包み込み、閉じ目を下にして天板の上に載せた。さらにビスケット生地(外生地)の上にフレーク状のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物1の8gを均一になるように載せた。そして上記のパン生地の本捏工程に記載の条件で、ホイロ、焼成を行い、メロンパンを得た。得られたメロンパンの評価を表1に示した。
【0060】
(実施例6)
パン生地(内生地)を上記の配合と製法にて本捏工程の成形の丸めなおしまで行った。そしてパン生地(内生地)を、ビスケット生地(外生地)40gで包み込み、閉じ目を下にして天板の上に載せた。そして上記のパン生地の本捏工程に記載の条件で、ホイロ、焼成を行い、メロンパンを得た。焼成後、フレーク状のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物1の8gを60℃に加熱して溶解し、これをメロンパンの表面に刷毛で塗布した。得られたメロンパンの評価を表1に示した。
【0061】
(実施例7)
パン生地(内生地)を上記の配合と製法にて本捏工程の成形の丸めなおしまで行った。そしてパン生地(内生地)の上に、フレーク状のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物2の8gを均一になるように載せ、これをビスケット生地(外生地)40gで包み込み、閉じ目を下にして天板の上に載せた。そして上記のパン生地の本捏工程に記載の条件で、ホイロ、焼成を行い、メロンパンを得た。得られたメロンパンの評価を表1に示した。
【0062】
(実施例8)
パン生地(内生地)を上記の配合と製法にて本捏工程の成形の丸めなおしまで行った。そしてパン生地(内生地)をビスケット生地(外生地)40gで包み込み、閉じ目を下にして天板の上に載せた。そして上記のパン生地の本捏工程に記載の条件でホイロを行った。次にビスケット生地(外生地)の上にフレーク状のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物2の8gを均一になるように載せ、上記のパン生地の本捏工程に記載の条件で焼成を行い、メロンパンを得た。得られたメロンパンの評価を表1に示した。
【0063】
(実施例9)
パン生地(内生地)を上記の配合と製法にて本捏工程の成形の丸めなおしまで行った。そしてパン生地(内生地)をビスケット生地(外生地)40gで包み込み、閉じ目を下にして天板の上に載せた。そして上記のパン生地の本捏工程に記載の条件で、ホイロ、焼成を行い、メロンパンを得た。焼成後、フレーク状のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物2の8gを60℃に加熱して溶解し、これをメロンパンの表面に刷毛で塗布した。得られたメロンパンの評価を表1に示した。
【0064】
(実施例10)
パン生地(内生地)を上記の配合と製法にて本捏工程の成形の丸めなおしまで行った。そしてパン生地(内生地)の上に、フレーク状のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物3の8gを均一になるように載せ、これをビスケット生地(外生地)40gで包み込み、閉じ目を下にして天板の上に載せた。そして上記のパン生地の本捏工程に記載の条件で、ホイロ、焼成を行い、メロンパンを得た。得られたメロンパンの評価を表1に示した。
【0065】
(実施例11)
パン生地(内生地)を上記の配合と製法にて本捏工程の成形の丸めなおしまで行った。そしてパン生地(内生地)を、ビスケット生地(外生地)40gで包み込み、閉じ目を下にして天板の上に載せた。そして上記のパン生地の本捏工程に記載の条件で、ホイロを行った。次にビスケット生地(外生地)の上にフレーク状のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物3の8gを均一になるように載せ、上記のパン生地の本捏工程に記載の条件で焼成を行い、メロンパンを得た。得られたメロンパンの評価を表1に示した。
【0066】
(実施例12)
パン生地(内生地)を上記の配合と製法にて本捏工程の成形の丸めなおしまで行った。そしてパン生地(内生地)を、ビスケット生地(外生地)40gで包み込み、閉じ目を下にして天板の上に載せた。そして上記のパン生地の本捏工程に記載の条件で、ホイロ、焼成を行い、メロンパンを得た。焼成後、フレーク状のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物3の8gを60℃に加熱して溶解し、これをメロンパンの表面に刷毛で塗布した。得られたメロンパンの評価を表1に示した。
【0067】
(比較例3)
パン生地(内生地)を上記の配合と製法にて本捏工程の成形の丸めなおしまで行った。そしてパン生地(内生地)の上に、ペースト状のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物4の8gを均一になるように載せ、これをビスケット生地(外生地)40gで包み込み、閉じ目を下にして天板の上に載せた。そして上記のパン生地の本捏工程に記載の条件で、ホイロ、焼成を行い、メロンパンを得た。得られたメロンパンの評価を表1に示した。
【0068】
(比較例4)
パン生地(内生地)を上記の配合と製法にて本捏工程の成形の丸めなおしまで行った。そしてパン生地(内生地)を、ビスケット生地(外生地)40gで包み込み、閉じ目を下にして天板の上に載せた。そして上記のパン生地の本捏工程に記載の条件でホイロを行った。次にビスケット生地(外生地)の上にペースト状のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物4の8gを均一になるように載せ、上記のパン生地の本捏工程に記載の条件で焼成を行い、メロンパンを得た。得られたメロンパンの評価を表1に示した。
【0069】
(比較例5)
パン生地(内生地)を上記の配合と製法にて本捏工程の成形の丸めなおしまで行った。そしてパン生地(内生地)を、ビスケット生地(外生地)40gで包み込み、閉じ目を下にして天板の上に載せた。そして上記のパン生地の本捏工程に記載の条件で、ホイロ、焼成を行い、メロンパンを得た。焼成後、ペースト状のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物4の8gを60℃に加熱して溶解し、これをメロンパンの表面に刷毛で塗布した。得られたメロンパンの評価を表1に示した。
【0070】
(比較例6)
パン生地(内生地)を上記の配合と製法にて本捏工程の成形の丸めなおしまで行った。そしてパン生地(内生地)の上に、ペースト状のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物5の8gを均一になるように載せ、これをビスケット生地(外生地)40gで包み込み、閉じ目を下にして天板の上に載せた。そして上記のパン生地の本捏工程に記載の条件で、ホイロ、焼成を行い、メロンパンを得た。得られたメロンパンの評価を表1に示した。
【0071】
(比較例7)
パン生地(内生地)を上記の配合と製法にて本捏工程の成形の丸めなおしまで行った。そしてパン生地(内生地)を、ビスケット生地(外生地)40gで包み込み、閉じ目を下にして天板の上に載せた。そして上記のパン生地の本捏工程に記載の条件でホイロを行った。次にビスケット生地(外生地)の上にペースト状のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物5の8gを均一になるように載せ、上記のパン生地の本捏工程に記載の条件で焼成を行い、メロンパンを得た。得られたメロンパンの評価を表1に示した。
【0072】
(比較例8)
パン生地(内生地)を上記の配合と製法にて本捏工程の成形の丸めなおしまで行った。そしてパン生地(内生地)を、ビスケット生地(外生地)40gで包み込み、閉じ目を下にして天板の上に載せた。そして上記のパン生地の本捏工程に記載の条件で、ホイロ、焼成を行い、メロンパンを得た。焼成後、ペースト状のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物5の8gを60℃に加熱して溶解し、これをメロンパンの表面に刷毛で塗布した。得られたメロンパンの評価を表1に示した。
【0073】
<メロンパンの製造試験>
実施例および比較例で得られたメロンパンの食感を下記評価方法に従って評価した。評価結果を表1に示す。
(評価方法)
得られたメロンパンを包装した後、28℃の恒温器に保管し、外生地であるビスケット生地焼成部分の食感を、焼成から1時間後、12時間後、24時間後及び48時間後それぞれにおいて、下記評価基準で評価した。
・評価基準
◎:カリカリした食感が極めて良好である。
○:カリカリした食感である。
△:歯切れが悪く、ねちゃつき感があり、カリカリした食感が不良である。
×:べとつき感があり、カリカリした食感が極めて不良である。
【0074】
【表1】

【0075】
パン生地(内生地)の上に、油相のSFCが25℃で55%以上、35℃で60%であり、糖類を含まない本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物1〜3を載せ、これをビスケット生地(外生地)で包み込み、閉じ目を下にして焼成したメロンパン(実施例4、実施例7、実施例10)は、焼成後、24時間経ってもカリカリとした食感が極めて良好であった。
パン生地(内生地)をビスケット生地(外生地)で包み込み、閉じ目を下にし、さらに油相のSFCが25℃で55%以上、35℃で60%であり、糖類を含まない本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物1〜3をビスケット生地の上に載せて焼成したメロンパン(実施例5、実施例8、実施例11)は、焼成後、24時間経ってもカリカリとした食感が極めて良好であった。
パン生地(内生地)をビスケット生地(外生地)で包み、綴じ目を下にし、焼成したメロンパンの表面に、油相のSFCが25℃で55%以上、35℃で60%であり、糖類を含まない本発明のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物1〜3を溶解したものを塗布したメロンパン(実施例6、実施例9、実施例12)は、焼成後、12時間経ってもカリカリとした食感が極めて良好であった。
一方、油相のSFCが25℃で0.1%、35℃で0%であるベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物4を用いて製造したメロンパン(比較例3〜5)は、焼成後、1時間後で歯切れが悪く、ネチャつき感があり、カリカリした食感が不良となってしまった。
また油相のSFCが25℃で0%、35℃で0%であるベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物5を用いて製造したメロンパン(比較例6〜8)は、焼成後、1時間後で歯切れが悪く、ネチャつき感があり、カリカリした食感が不良となってしまった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油相の固体脂含量(SFC)が25℃で55%以上、35℃で60%以下であることを特徴とするベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物。
【請求項2】
水相を含有しない請求項1に記載のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物。
【請求項3】
内生地の上に請求項1又は2に記載のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物を載せ、さらに外生地を載せ、焼成するベーカリー食品の製造方法。
【請求項4】
内生地の上に外生地を載せ、さらに請求項1又は2に記載のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物を載せ、焼成するベーカリー食品の製造方法。
【請求項5】
内生地の上に外生地を載せ、焼成したベーカリー食品の表面に、溶解した請求項1又は2に記載のベーカリー食品内水分移行抑制油脂組成物を塗布するベーカリー食品の製造方法。

【公開番号】特開2009−39076(P2009−39076A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210037(P2007−210037)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】