説明

ペット用カート

【課題】飼い主に負担をかけずにペットをカートに乗せられるペット用カートを提供する。
【解決手段】キャスターを備えるベースフレーム2と、前記ベースフレーム2から立設され上部にハンドルを備える支柱フレーム3と、前記ベースフレーム2上に支持されペットを収容する収容体4とを備えたペット用カート1であって、前記収容体4の前側面は、その下端縁40を軸として前記収容体4の外側へ傾倒可能に枢着された開放扉22になっていると共に、前記開放扉の内側には踏み板53が段差状に形成されており、前記開放扉22を傾倒した状態においては、前記収容体4の前側面が開口し前記開放扉22の踏み板53がペットを案内する階段になるようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットを乗せることができるカートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ペットを連れて出掛けてもペットが入店できる店は少なく、飼い主はペットと一緒に店に入れないことが多かった。しかし、近年、ペットを飼う人の増加に伴いペットと一緒に買い物をしたいという要望が多くなっている。そのため、ペットの入店を許可するホームセンター等が増えてきている。そのような店で買い物をする場合、飼い主はペットをリードで繋いで歩かせながら、買物カート(例えば特許文献1)を押して買い物することとなる。
【0003】
ここで、特許文献1の買物カートは、下部に前キャスター2を有する下枠3と、下枠3の後端部に固定され下部にキャスター4を備えると共に上部にハンドル5を備える支柱6とによって概略構成されており、支柱6の上部には前方に向けて買い物籠を載置する網状の荷物保持部7が設けられ、下枠3には買物カゴを載置できるように枠3A,3B,3C,3Dが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−132268号公報
【特許文献2】実用新案登録第3110310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した通常の買物カートで買い物をしつつ、ペットをリードで繋いで歩かせると、飼い主はカートを押すのと同時に、歩き回るペットの行動に注意を払いながら買い物をしなければならない。そのため、ゆっくりと買い物を楽しむことができず、飼い主によっては、ペットと一緒に買い物へ行くことを諦め、ペットを買い物に連れて行かなかったり、あるいは店の駐車場の車にペットを残して買い物をしていた。
【0006】
他方、上記した問題を解決するものとして特許文献2のようなペット用ショッピングカートが創作されている。このペット用ショッピングカートでは、前述の特許文献1に記載された買物カートの荷物保持部7にあたる部分にペットを乗せることができるように改良されているものの、ペットを乗せる部分が地面から離れた高い位置にあるため、飼い主がペットを抱き上げてカート上に乗せる必要があり、飼い主に負担をかけてしまうことになる。また、このカートではペットの乗る部分の大きさや高さから考えると、大型犬に利用することは難しいなどの問題が存在している。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、飼い主に負担をかけることなくペットをカートに乗せることができ、ペットと一緒に買い物ができるペット用カートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため本発明に係るペット用カートは、キャスターを備えるベースフレームと、前記ベースフレームから立設され上部にハンドルを備える支柱フレームと、前記ベースフレーム上に支持されペットを収容する収容体とを備えたペット用カートであって、前記収容体の前側面は、その下端縁を軸として前記収容体の外側へ傾倒可能に枢着された開放扉になっていると共に、前記開放扉の内側には踏み板が段差状に形成されており、前記開放扉を傾倒した状態においては、前記収容体の前側面が開口し前記開放扉の踏み板がペットを案内する階段になるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るペット用カートは、ペットが入る収容体を備えているので、収容体内にペットを入れておくことができ、飼い主はペットに気をとられることなくゆっくりとペットと一緒に買い物をすることができる。さらに、収容体はベースフレーム上に支持されているので、収容体の底面がベースフレーム上の低位置となる。よって、収容体の周壁を高く設定でき、ひいては収容体そのものを大きくすることができるので、このペット用カートは大型犬の場合にも利用が可能となる。
【0010】
また、収容体の周壁の前側面には開放扉が設けられ、開放扉は下端縁を軸として収容体の外側へ傾倒可能に枢着されていると共に、その内側に踏み板が段差状に形成されている。そのため、開放扉が傾倒することで収容体の前面が開口し、ペットの出入り口ができる。さらに、傾倒した開放扉の上面は階段になっているため、ペットはこの階段を通って自らカートへ乗り降りすることができる。このとき飼い主はペットを誘導するだけでよいので、ペットをカートへ乗せる際の飼い主の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るペット用カートの全体斜視図。
【図2】本発明に係るペット用カートの全体斜視図(開放扉が傾倒した状態)。
【図3】図1の部分斜視図。
【図4】図2の部分斜視図。
【図5】本発明に係るペット用カートの側面図。
【図6】本発明に係るペット用カートの側面図。
【図7】本発明に係るペット用カートの平面図。
【図8】本発明に係るペット用カートの底面図。
【図9】本発明に係るペット用カートの正面図。
【図10】本発明に係るペット用カートの背面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るペット用カートを図面に基づいて具体的に説明する。図1は本実施形態のペット用カート1の全体斜視図である。ペット用カート1は、ベースフレーム2と、ベースフレーム2後端から立設される支柱フレーム3と、ベースフレーム2及び支柱フレーム3に設けられペットを収容する収容体4と、支柱フレーム3の上部位置であって前記収容体4より上方に設けられる荷物載置部5とからなる。
【0013】
前記ベースフレーム2は、前方になるにしたがって幅狭となるように平面視略コ字状に屈曲形成されている。ベースフレーム2の前端下方にはキャスター6,6が左右それぞれに取り付けられている。また、ベースフレーム2の後端下方にもキャスター7,7が左右それぞれに取り付けられており、このキャスター7,7にはロック部材8,8が設けられている。そして、ベースフレーム2の前後方向略中間位置には、前記収容体4を下方から支持する一対の支持杆9,9が起立するように溶接固定されている。
【0014】
前記支柱フレーム3は、ベースフレーム2の左右後端からそれぞれ一定の間隔を保って立設する一対の支柱11,11と、この一対の支柱の上端を繋ぐようにして水平に設けられるハンドル12とからなる。詳述すると、支柱11は、ベースフレーム2の後端から立設して前方へ向って屈曲した後、さらに上向きにL字をなすように屈曲しやや後方へ傾斜しながら上方へ起立している。そして、およそ大人の腰の高さ付近で後方に水平に屈曲し、その先端同士を連結するようにハンドル12が連設されている。このように、一対の支柱11,11とハンドル12は、一本の金属製パイプを略コ字状に折り曲げて一体に形成されている。ハンドル12にはグリップ13,13が巻装されている。また、ハンドル12の前方位置には前記荷物載置部5が設けられている。
【0015】
前記荷物載置部5は、荷物や商品、あるいは商品用カゴを載置するためのラックである。荷物載置部5は、支柱11の起立部分の上寄りの位置に略水平に架設された軸杆15と、軸杆15の後方であって支柱11の水平部分の前後方向略中央位置の下方に設けられた支持枠16とによって、下方から支えられるようにして固定されている。支持枠16は、上向きコ字状に屈曲形成された金属棒状部材であって、その水平部分は前記軸杆15と同じ高さに位置しており、荷物載置部5を略水平に支持している。
【0016】
前記収容体4は、ペットがその内側に収容される有底の箱体であって、底面部21と、その周縁から立設する4面の周壁とからなる。周壁は、底面部21の左右側縁それぞれから立設する一対の側面部23,23と、側面部23,23の後方であって前記支柱11,11間に設けられる後面部24と、後面部24に対向するように設けられる前面部22とからなる。また、底面部21、側面部23,23、及び後面部24は、いずれも多数本の金属性の線材を用いて格子状に組んで形成されている。
【0017】
前記収容体4の底面部21は、前方になるにしたがって幅狭となる略台形状に形成されている。そして、底面部21の後方側縁の左右端部は、それぞれベースフレーム2上に固定されている。さらに、底面部21の左右側縁の前後方向略中央部は、ベースフレーム2上に立設された前記支持杆9にそれぞれ支持されている。このようにして、収容体の底面部21は、前方になるにつれて上方へ傾斜してベースフレーム2に支持されている。
【0018】
前記収容体4の後面部24は、支柱フレーム3の支柱間11,11に位置している。後面部24は、その上縁の左右両端から逆U字状の引掛部26,26が延設されており、この引掛部26,26は前記軸杆15に吊り下げられている。このようにして、後面部24はその上端を軸として後面部24の下縁が前方、すなわち収容体4内側へ回動可能なように支柱フレーム2に枢着されている。また、後面部24の下縁は、底面部21の後方側縁の内側に当接するように位置しているため、後面部24の下縁が収容体4の外側に回動することが防止されている。
【0019】
前記収容体4の側面部23,23は、底面部21の左右側縁からそれぞれ鉛直に立設すると共に、その後方側縁は支柱11の起立部分によって後方から溶接されて支持されている。対向する側面部23,23の間隔は、底面部21の形状により前方になるにつれ僅かに狭くなると共に、側面部23の下縁は前方になるにつれて上方へ傾斜している。一方、側面部23の上縁は水平となっており、側面部23の上下幅は前方に向って次第に狭くなっている。また、側面部23,23の前方側縁23a,23aの上端寄りには、前方側縁23aと平行な方向(鉛直方向)に貫通する孔が形成されたパイプ状の係合凹部30,30が取り付けられている。さらに、前方側縁23a,23aの下端寄りには、前面部取付フレーム31が設けられている。前面部取付フレーム31は、前方側縁23a,23aの下端前方に取り付けられた軸受け部32,32と、軸受け部32,32の上端同士を水平に連結するように設けられた水平部33とからなる。軸受け部32は、水平部33の両端から前方側縁23aに沿って下方へ屈曲され、さらに前方へ向ってU字状に上方へ折り返された上端をこのU字状部を閉塞するようにさらに後方へ水平に屈曲して形成されている。
【0020】
前記収容体4の前面部22は、その下縁である軸杆40を前記軸受け部32,32に枢着されることにより収容体4の外側へ傾倒可能に設けられており、ペットの出入り口用の開放扉として機能する。また、前面部22が傾倒することによって収容体4の前方が開口される構成となっている(図2)。以下、前面部22について図3を用いて詳しく説明する。
【0021】
前記軸杆40の左右両端には、軸部材41,41が設けられ、この軸部材41の周縁には溝42が一周形成されている。この溝42を前記軸受け部32内に位置させることで、軸杆40は軸受け部32に回動自在に枢着されている。なお、軸受け部32は側面視で縦長状に形成されているため、軸杆40は回動可能に枢着されるだけでなく、僅かに上下方向にも動かせるように枢着されている。そして、軸杆40の軸部材41,41より内側位置には、軸杆40を一辺とした略矩形状となるように下向きコ字状の前面枠45が溶接されている。前面枠45は、側面部前方側縁23a,23aと略同じ高さ位置で後方へ水平に折り曲げられることで一対の屈曲部46,46が形成されている。屈曲部46,46の下側には、水平に棒部材47aが架設されている。さらに、棒部材47aの下方であって前面枠45の高さ方向略中央位置に水平に棒部材47bが架設されている。また、前面枠45の下寄り位置にも水平に棒部材47cが架設されている。なお、棒部材47aは前面枠45の幅より長く延出し、側面部前方側縁23a,23a間と同じ幅の位置において下方に屈曲され、係合部48,48が形成されている。この係合部48は、前記係合凹部30の孔に対応位置しているため、前面部22を僅かに上下動させることで係合部48を係合凹部30に挿通できる。これにより、前面部22の起立状態の固定および解除が可能になる。
【0022】
前記前面枠45の内側には、1枚の金属板等を階段状に曲げ加工して形成された段部51が、棒部材47a,47b,47cに溶接されることで設けられている。以下、段部51について図4を用いて詳述する。段部51は、図4に示されるとおり、踏み板53,55と蹴上げ板54,56とからなる。踏み板53は、棒部材47cに固着された後縁から略水平に前方に設けられている。そして、踏み板53の前縁から下方に略垂直に折曲されて蹴上げ板54が延設されている。蹴上げ板54の下縁は、棒部材47bに溶接されると共に、前方に略水平に折曲して踏み板55が延設されている。そして、踏み板55の前縁から更に下方へ略垂直に折曲されて蹴上げ板56が延設され、その下縁は棒部材47aに溶接されている。なお、図6(側面図)に示すように略水平な地面上で前面部22を傾倒させた場合、前面枠45の屈曲部46,46が地面に接地すると共に、踏み板53,55は略水平となる。
【0023】
次に、このような構成をしたペット用カート1に、ペットを乗せる方法について説明する。まず、飼い主は収容体4の前面部22を開くため、前面部22の起立状態の固定を解除する。すなわち、前面部22を僅かに上方に持上げて係合部48を係合凹部30から外し、前面部22を回動可能にする。そして、前面部22を収容体4の外側へ傾倒させることで収容体4前方を開口させる(図1→図2)。この開口がペットの出入り口となると共に、傾倒状態である前面部22の段部51がペットの乗降用の階段となる。
【0024】
続いて、飼い主は、ペットを前面部22の段部51を渡って収容体4内に入るよう誘導する。そして、ペットが収容体4内に入ったら前面部22を起立状態になるまで回動し、収容体4前方の開口を閉じる(図2→図1)。そして、前面部22の係合部48を係合凹部30に挿入して前面部22を起立状態に固定する。ここで、収容体4の前面部22を起立状態に回動する際、前面部22が収容体4の内側に倒れそうになっても前面部22が前面部取付フレーム31の水平部33に当たるため、前面部22が収容体4の内側に倒れて収容体4内にいるペットに倒れ掛かってしまうということはなく安全である。
【0025】
続いて、使用後にペットを収容体から出す際も同様の操作をする。すなわち、飼い主は、収容体4の前面部22の起立状態の固定を解除して前面部22を傾倒させ、ペットが傾倒状態の前面部22である段部51を下り収容体4の外へ出るように誘導する。そして、ペットが収容体4の外に出たら、前面部22を回動させて起立状態に固定する。
【0026】
ここで、カートの使用中において、飼い主が前面部22を上方に僅かに持上げて前面部22の起立状態の固定を解除しない限り、収容体4が開口されることはない。さらに、収容体4の後面部24も収容体4の外側へは回動しない構成となっている。よって、カートの使用中に収容体4内のペットが前面部22あるいは後面部24を開けて外に飛び出る恐れはなく、飼い主は安心して買い物をすることができる。
【0027】
また、収容体4の前面部22が傾倒されることでペットの出入り口ができると共に、傾倒した前面部22を渡ってペットは自らカート1へ乗り降りすることができる。さらに、傾倒した前面部22の傾斜が急であっても、前面部22には段部51が形成されているためペットは乗り降りが可能になる。このとき、飼い主はペットを収容体4内へ誘導するだけでよいので、飼い主の負担は少ない。また、ペットを誘導する際、収容体4の一側面と上面が開口しているため、飼い主はリードひいたまま犬を収容体4内に誘導することができる。
【0028】
また、ベースフレーム2および収容体4は前方になるにしたがって幅狭となっている。さらに、収容体4の底面部21は前方になるにしたがって上方へ傾斜し、収容体4の側面部23の上下幅は前方に向って次第に狭くなっている。このような形状をした収容体4の後面部24が上縁を軸に前方へ回動可能に構成されているため、カートの未使用時には、複数のカートを前後方向にネスティングすることができる。
【0029】
さらに、荷物載置部5は、収容体4の上方であるハンドル12の前に位置するため、飼い主は商品を荷物載置部5に置きやすく買い物がしやすい。それと同時に、荷物載置部5が収容体4より上方に位置するので衛生的である。
【0030】
なお、本実施例の収容体4は、金属性の線材を格子状に組んだもので説明したが、実際に使用する場合、ペットの足が嵌まらないように収容体の底面部21にシートや床板などを敷設する。また、収容体4を木製にしたり、あるいは、ペットを見やすいように透明のアクリル板に変更することも可能である。さらに、収容体4に天井部を設けても良い。
【0031】
また、前面部22に設ける踏み板53の数は、前面部22の傾斜や長さによって変更可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 ペット用カート
2 ベースフレーム
3 支柱フレーム
4 収容体
5 荷物載置部
22 開放扉
53 踏み板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャスターを備えるベースフレームと、前記ベースフレームから立設され上部にハンドルを備える支柱フレームと、前記ベースフレーム上に支持されペットを収容する収容体とを備えたペット用カートであって、
前記収容体の前側面は、その下端縁を軸として前記収容体の外側へ傾倒可能に枢着された開放扉になっていると共に、前記開放扉の内側には踏み板が段差状に形成されており、
前記開放扉を傾倒した状態においては、前記収容体の前側面が開口し前記開放扉の踏み板がペットを案内する階段になるようにしたことを特徴とするペット用カート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−28318(P2013−28318A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167675(P2011−167675)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(593113422)三洋スーパースタンド株式会社 (9)
【Fターム(参考)】