説明

ペプチドを持続的放出により送達するための薬理組成物

本発明は、液状薬理組成物を投与することにより、身体内に、その場で、固体の生分解性インプラントを形成する方法を提供するものであり、該薬理組成物は、有効量の生体適合性で、水-不溶性の生分解性ポリマー、及び有効量の、1又はそれ以上の親油性又は両親媒性部分により共有結合的に変性された治療用ペプチドを含み、これらの成分は、生体適合性で、水溶性の有機溶媒中に溶解又は分散されている。本発明は、また関連する組成物及び方法をも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互引照)
本件特許出願は、2006年7月11日付で出願された、米国仮特許出願第60/830,011号に係る優先権を主張するものである。該仮特許出願の内容を、参照することにより本件特許出願に組入れる。
本件特許出願の全体を通して、様々な刊行物を引用する。これら刊行物の開示事項を、参照することにより本件特許出願に組入れ、本発明が属する技術分野の現状を、より完全に説明する。
【0002】
本発明は、治療用ペプチドを、制御放出により送達する分野、及び1又はそれ以上の親油性又は両親媒性分子によって、共有結合的に変性された、治療用ポリペプチドを制御放出により送達するのに有用な組成物及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
オリゴペプチド、ポリペプチド及びタンパク質とも称されるペプチドは、治療薬として広く使用されている。該ペプチドは、組換えDNA技術によって都合良く製造することができ、あるいは十分に確立されたペプチド合成技術によって合成することができる。しかし、多くのペプチドは、酵素によって分解され易く、また極めて短時間の、インビボでの循環半減期をもつ。従って、殆どのペプチド系医薬は、典型的には1日当たり多数回に渡る注射によって投与されている。安全性、効力及び患者のコンプライアンスを改善するために、長期間に渡り制御された様式で、このようなペプチドを送達できるとすれば、極めて有利であろう。
【0004】
生分解性ポリマーが、治療用ペプチドの持続的送達のために使用されている。該ペプチドは、一般的に該ポリマー組成物に取り込まれ、またロッド、ウエハ及び微小粒子等の所定の形状に、身体の外部において成型されている。次いで、これらの固体組成物を、切開術又は注射によって身体内に挿入することができる。あるいはまた、及び好ましくは、該ポリマー組成物の幾つかを、液状ポリマー組成物として身体内に注入して、その場でインプラントを形成することも可能である。制御された様式で、薬物を送達するために、その場でインプラントを形成するための、注射可能な液状生分解性ポリマー組成物は、特許文献に記載されている。以下の参考文献は、この領域において代表的なものと考えられ、参照することにより本明細書に組入れる:米国特許第6,565,874号;同第6,528,080号; RE37, 950号; 米国特許第6,461,631号; 同第6,395,293号; 同第6,355,657号; 同第6,261,583号; 同第6,143,314号; 同第5,990,194号; 同第5,945,115号; 同第5,792,469号; 同第5,780,044号; 同第5,759,563号; 同第5,744,153号; 同第5,739,176号; 同第5,736,152号; 同第5,733,950号; 同第5,702,716号; 同第5,681,873号; 同第5,599,552号; 同第5,487,897号; 同第5,340,849号; 同第5,324,519号; 同第5,278,202号; 同第5,278,201号;及び同第4,938,763号。これら特許文献に記載されているように、生活性薬剤は、生体適合性の有機溶媒に分散された、生分解性ポリマーを含む溶液に、溶解又は分散されて、液状組成物を与える。該液状組成物を身体内に注入した場合、該溶媒は、周辺の水性環境に散逸し、しかも該ポリマーは析出して、固体又はゲル状のデポー剤を形成し、該デポー剤から該生活性薬剤が、該ポリマーの分解に応じて、長期間に渡り放出される。このような送達系の使用は、進行した前立腺癌を治療するための、ロイプロリドアセテート[エリガード(EligardTM)]の送達によって、例証された。幾分かの成功にも拘らず、これらの方法は、上記のような方法によって効果的に送達できる多数のペプチドにとって、完全に満足できるものではなかった。
【0005】
多くの治療用ペプチドに関連して、ポリ(DL-ラクチド-co-グリコライド)の微小球中に封入された、該ペプチドのアシル化及び/又は分解が、その放出過程において観測された[例えば、Na DH, Youn YS, Lee SD, Son MO, Kim WA, DeLuca PP, Lee KC. J. Control Release, 2003; 92(3):291-9)参照のこと]。ペプチド上の求核性官能基は、該生分解性ポリマーと反応し得るのみならず、該生分解性ポリマーの分解を触媒することができる。該アシル化及び/又は分解は、固体状態におけるよりも、ポリマー溶液中で、より迅速に起こり得ることも見出された。例えば、オクトレオチドアセテートを、カルボキシ末端を持つポリ(DL-ラクチド-co-グリコライド)の50/50比のNMP溶液と混合した場合、80%を越えるオクトレオチドが、24時間以内にアシル化及び/又は分解された。該ペプチドとポリマー又はその分解生成物間の相互作用/反応は、処方、保存及び投与中に起こる可能性がある。従って、該処方物の安定性を維持するためには、該ペプチドは、典型的には別の注射器内に供給され、一方で上記成分の残部は、もう一方の注射器に収容される。これら注射器の内容物は、使用直前に混合される。しかし、該ポリマー処方物の粘稠な性質のために、最終的なユーザーが、2つの別々の注射器内の内容物を混合することは、往々にして困難である。最終的なユーザーにより調製される該処方物の均一性は、大幅に変動し、また汚染を生じる危険性があり、従って該治療の品位は、著しく信頼性の低いものとなる可能性がある。その上、該注射可能な液状ポリマー処方物からの、該固体インプラントのその場での形成は、緩慢な過程である。典型的に、該溶媒の散逸/拡散過程は、使用する溶媒に依存して、数時間〜数日、あるいはそれ以上の期間を要する可能性がある。この期間中の有機溶媒の存在は、ペプチドとポリマー又はその分解生成物間の相互作用/反応を促進する恐れがある。
【0006】
さらに、該インプラントの形成中に、凝固しつつあるポリマー組成物からの、該ペプチドの拡散速度は、その後に形成されるインプラントからの該ペプチドの拡散速度よりも一層迅速なものとなる恐れがある。インプラント形成中における、ペプチドのこの初期における「突発的な」放出は、大量の該治療用ペプチドの喪失又は放出をもたらす可能性がある。該ペプチドが、特に有毒であり、あるいは狭い治療窓を持つ場合には、この初期の放出又は突発的放出(バースト)は、同様に有害な副作用の発生に導く恐れがあり、また隣接する組織を損傷する可能性もある。従って、該固体インプラントの緩慢な形成過程及び該生活性薬剤及び/又は賦形剤の不安定性は、治療用ペプチドを持続放出により送達するための、この種の処方物の使用に対して、極めて重大な課題を思い浮ばせる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
親油性分子、例えば脂肪酸によるペプチドの共有結合による変性が、アルブミンへの結合を介して、インビボでの循環半減期を増大することにより、治療的効力を改善することが記載されている[EP0708179-A2、EP0699686-A2、US 6268343、Knudsen LB, Nielsen PF, Huusfeldt PO, Johansen NL, Madsen K, Pedersen FZ, Thogersen H, Wilken M, Agerso H.,毎日1回投与するのに適した、薬物動態学的特性を持つ、グルカゴン-様ペプチド-1の有力な誘導体(Potent derivatives of glucagon-like peptide-1 with pharmacokinetic properties suitable for once daily administration), J. Med. Chem., 2000, 43(9):1664-9;Kurtzhals P, Havelund S, Jonassen I, Kiehr B, Larsen UD, Ribel U, Markussen J., 脂肪酸によりアシル化されたインシュリンのアルブミン結合:該リガンド-タンパク質の相互作用及び結合アフィニティーとインビボにおけるインシュリン作用のタイミングとの間の相関の特徴付け(Albumin binding of insulins acylated with fatty acids: characterization of the ligand-protein interaction and correlation between binding affinity and timing of the insulin effect in vivo), Biochem. J., 1995;312 (3):725-31;及びそこに記載されている引用例]。これらの親油的に変性されたペプチドは、未変性のペプチドと比較して、インビボにおいて延長された作用を示したが、該変性されたペプチドの血漿における滞留時間は、そのアルブミンに対する結合アフィニティーによって制限される。一つの上首尾の例は、アシル化されたインシュリン[デテミール(Detemir)]であり、これは10.2±1.2時間なる循環半減期をもつ[Havelund S, Plum A, Ribel U, Jonassen I, Volund A, Markussen J and Kurtzhals P, Pharmaceutical Research, 2004; 21 (8), 1498-1504]。この製品は、I型糖尿病に罹患した患者の治療のための、注射に対して承認されている。しかし、これは、依然として、患者に対して毎日投与する必要がある。従って、幾つかのペプチドの送達速度が、特に長期間に渡り持続的に放出する必要のあるペプチドに対して、より一層容易に制御できる、安定な組成物に対する大きな需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
予想外のことに、1又はそれ以上の親油性及び/又は両親媒性分子により、共有結合的に変性されたペプチドを、生分解性ポリマーと共に処方することができ、得られる該処方物が、このような結合を持たないペプチドに対して、大幅に改善された安定性及び持続的放出プロフィールを与えることを見出した。親油的に及び/又は両親媒的に変性されたペプチドは、該処方、保存及びその後のインビボ放出過程中の、該ペプチドの制御されていないランダムなアシル化及び分解を回避し得るばかりでなく、望ましからぬ初期の突発的なペプチドの放出を減じることをも可能とする。このような送達系は、生分解性のポリマー型送達系内に、より高濃度の治療用ペプチドを、安全に配合することを可能とする。このような製品の効力も改善される。というのは、より一層高い割合の完全な活性ペプチドが、持続的な放出のために、該送達系に残されており、また該処方、保存、投与及びその後のインビボ放出中の分解によって失われることがないからである。
【0009】
従って、本発明は、治療用ポリペプチドを制御しつつ、持続的に放出するための新規な薬理処方物を提供するものである。本発明のこの組成物は、(a) 1又はそれ以上の親油性分子と共有結合により結合したペプチド;(b) 生分解性ポリマー;及び(c) 製薬上許容される有機溶媒を含む。該ペプチドは、該結合ペプチドが、該未結合のペプチドの生物学的活性の殆ど又は全てを維持し、かつ該未結合のペプチドに対して、インビトロ及びインビボ両者において、該生分解性ポリマーとの反応に対して高い化学的抵抗性を持つように、1又はそれ以上の親油性分子と共有結合により結合している。次いで、この親油的に変性されたペプチドを、製薬上許容される有機溶媒を用いて、生分解性ポリマー溶液に溶解又は分散させることにより、処方物とする。本発明のこれら処方物は、該処方、保存、投与及びその後の放出中の、該ペプチドの安定性を高めるばかりでなく、より低い初期突発性放出レベルを持ち、かつ維持された期間に渡る、その放出プロフィールをも改善する。
【0010】
もう一つの局面において、本発明は、(a) 1又はそれ以上の両親媒性部分と共有結合により結合したペプチド;(b) 生分解性ポリマー;及び(c) 製薬上許容される有機溶媒を含む組成物を提供するものである。該ペプチドは、該結合ペプチドが、該未結合のペプチドの生物学的活性の殆ど又は全てを維持し、かつ該未結合のペプチドに対して、インビトロ及びインビボ両者において、該生分解性ポリマーとの反応に対して高い化学的抵抗性を持つように、1又はそれ以上の両親媒性部分と共有結合により結合している。次いで、この両親媒的に変性されたペプチドを、製薬上許容される有機溶媒を用いて、生分解性ポリマー溶液に溶解又は分散させることにより、処方物とする。本発明のこれら処方物は、該処方、保存、投与及びその後の放出中の、該ペプチドの安定性を高めるばかりでなく、より低い初期突発性放出レベルを持ち、かつ維持された期間に渡る、その放出プロフィールをも改善する。該結合ペプチドは、また該ペプチドの求核性基による、該ポリマーの触媒的分解をも減じる。
【0011】
本発明のこれら組成物の各々は、流体として運動して、注射器を用いて注射できる、粘稠性の又は非-粘稠性の液体、ゲル又は半-固体であり得る。各組成物は、インビトロにて移植可能なマトリックスとして製造でき、あるいはまたゲル又は固体インプラントとして、その場で形成することができる。本発明の組成物は、皮下、筋肉内、腹腔内、又は皮内経路で、注射及び/又は移植により投与することができる。治療対象に投与する場合、該ペプチドの制御放出は、該インプラントの組成に依存して、所定期間に渡り維持することができる。該生分解性ポリマー及び他の賦形剤の選択により、該ペプチドの持続放出期間は、数週間〜1年間に渡り調節することができる。
本発明を特徴付ける新規性の様々な特徴は、ここに添付され、また本開示の一部を構成する特許請求の範囲に具体的に指摘されている。本発明、その実施上の利点及びその使用により達成される特定の目的をよりよく理解するためには、本発明の好ましい態様を例示し、説明している添付図面及び説明を参照すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】RG503H溶液中の処方物からの、リゾチーム及びパルミチン酸でアシル化したリゾチームの、mPEG350における、インビトロ放出を示す図である。
【図2】RG503H溶液中の処方物からの、グレリン(ghrelin)及び脱アシル化グレリンの、mPEG350における、インビトロ放出を示す図である。
【図3】DLPLG85/15(IV 0.28)溶液中の処方物からの、NMPにおける、オクトレオチドのインビトロ放出を示す図である。
【図4】DLPLG85/15(IV 0.28)溶液中の処方物からの、NMPにおける、変性オクトレオチド(Pal-PEG-BA-OCT)のインビトロ放出を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ペプチドの制御放出による送達系を製造するための、注射可能な液状の生分解性ポリマー組成物を提供することにある。本発明は、また該組成物の製造方法及びその使用法をも提供するものである。
本発明の組成物は、(a) 1又はそれ以上の親油性分子と、好ましくは共有結合により結合したペプチド;(b) 製薬上許容される、水-不溶性の生分解性ポリマー;及び(c) 製薬上許容される有機溶媒を含む。該ペプチドは、該結合ペプチドが、該未結合ペプチドの生物学的活性の殆ど又は全てを維持し、かつ該未結合ペプチドに対して、インビトロ及びインビボ両者において、該生分解性ポリマーとの反応に対して高い化学的抵抗性を持つように、1又はそれ以上の親油性分子と共有結合により結合している。次いで、この親油的に変性されたペプチドを、製薬上許容される有機溶媒を用いて、生分解性ポリマー溶液に溶解又は分散させることにより、処方物とする。本発明のこれら処方物は、該処方、保存、投与及びその後の放出中の、該ペプチドの安定性を高めるばかりでなく、より低い初期突発性放出レベルを持ち、かつ維持された期間に渡る、その放出プロフィールをも改善する。
【0014】
もう一つの局面において、本発明は、(a) 1又はそれ以上の両親媒性分子と、好ましくは共有結合により結合したペプチド;(b) 製薬上許容される、水-不溶性の生分解性ポリマー;及び(c) 製薬上許容される有機溶媒を含む組成物を提供するものである。該ペプチドは、該結合ペプチドが、該未結合ペプチドの生物学的活性の殆ど又は全てを維持し、かつ該未結合ペプチドに対して、インビトロ及びインビボ両者において、該生分解性ポリマーとの反応に対して高い化学的抵抗性を持つように、1又はそれ以上の両親媒性分子と共有結合により結合している。次いで、この両親媒的に変性されたペプチドを、製薬上許容される有機溶媒を用いて、生分解性ポリマー溶液に溶解又は分散させることにより処方物とする。本発明のこれら処方物は、該処方、保存、投与及びその後の放出中の、該ペプチドの安定性を高めるばかりでなく、より低い初期突発性放出レベルを持ち、かつ維持された期間に渡る、その放出プロフィールをも改善する。該結合ペプチドは、また該ペプチドの求核性基による、該ポリマーの触媒的分解をも減じる。
本発明において使用する用語「一つの(“a”, “an”及び “one”)」は、「1又はそれ以上の」及び「少なくとも1種の」として理解すべきものであることを意味する。
上記用語「ペプチド」とは、「ポリペプチド」及び「タンパク質」と同義語的に使用されている。ペプチドの有する、非-限定的な治療上の特性の例は、抗-代謝性、抗-真菌性、抗-炎症性、抗-腫瘍性、抗-感染性、抗-生物性、栄養分性、アゴニスト及びアンタゴニスト性を包含する。
【0015】
より具体的には、本発明のペプチドは、親油性又は両親媒性分子によって、共有結合的に変性されている。該ペプチドは、好ましくは1又はそれ以上の変性可能な官能基を含む。本発明の処方物の調製において有用なペプチドは、以下に列挙するものを含むが、これらに限定されない:オキシトシン、バソプレッシン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、上皮増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、プロラクチン、ホルモン、例えば黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、LHRHアゴニスト、LHRHアンタゴニスト、成長ホルモン、成長ホルモン放出因子、インシュリン、エリスロポエチン、ソマトスタチン、グルカゴン、インターロイキン、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、ガストリン、テトラガストリン、ペンタガストリン、ウロガストロン、セクレチン、カルシトニン、エンケファリン、エンドルフィン、アンギオテンシン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、腫瘍壊死因子(TNF)、副甲状腺ホルモン(PTH)、神経成長因子(NGF)、顆粒球-コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージ-コロニー刺激因子(M-CSF)、ヘパリナーゼ、血管内皮細胞増殖因子(VEG-F)、骨形成タンパク質(BMP)、hANP、グルカゴン-様ペプチド(GLP-1)、エキセナチド(exenatide)、ペプチドYY(PYY)、グレリン(Ghrelin)、レニン、ブラジキニン、バシトラシン、ポリミキシン、コリスチン、チロシジン、グラミシジン、シクロスポリン、酵素、サイトカイン、抗体、ワクチン、抗生物質、抗体、糖タンパク質、卵胞刺激ホルモン、キョウトルフィン(kyotorphin)、タフトシン(taftsin)、チモポエチン、チモシン、チモスチムリン、胸腺体液性因子、血清胸腺因子、コロニー刺激因子、モチリン、ボンベシン、ジノルフィン(dinorphin)、ニューロテンシン、セルレイン(cerulein)、ウロキナーゼ、カリクレイン、P物質類似体及びアンタゴニスト、アンギオテンシンII、血液凝固因子VII及びIX、リゾチーム、グラミシジン、メラノサイト刺激ホルモン、甲状腺ホルモン放出ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、パンクレオチミン、コレシストキニン、ヒト胎盤性ラクトゲン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、タンパク質合成刺激ペプチド、胃抑制性ペプチド、血管作用性腸ペプチド、血小板由来増殖因子、色素含有ホルモン、ソマトメジン、絨毛性ゴナドトロピン、視床下部ホルモン放出因子、抗-利尿ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、ビファリン(biphalin)及びプロラクチン。
【0016】
本発明において使用する用語「親油性部分」とは、親油特性を有し、かつ5mg/mL未満、好ましくは0.5mg/mL未満の、20℃における水に対する溶解性を持つ、任意の部分を意味する。このような親油性部分は、典型的にはC3-39-アルキル、C3-39-アルケニル、C3-39-アルカジエニル、トコフェロール及びステロイド系残基から選択される。これらの用語「C3-39-アルキル」、「C3-39-アルケニル」及び「C3-39-アルカジエニル」とは、3-39個の炭素原子を持つ、直鎖及び分岐、好ましくは直鎖の、飽和、モノ-不飽和及びジ-不飽和型の炭化水素残基を含むものとする。
【0017】
親油性部分とペプチドとの共有結合は、親油的に変性されたペプチドへと導き、該変性ペプチドは、未変性の該ペプチドと比較して、改善された治療効果を持つことができる。これは、典型的には、ペプチド中のアミノ基等の官能基と、親油性分子内の酸又は他の反応性の基との反応によって行うことができる。あるいはまた、ペプチドと親油性分子との該結合は、分解性又は非-分解性であり得る、ブリッジ、スペーサ又は結合部分等の追加の部分を介して行われる。幾つかの例は、公知技術に記載されている[例えば、脂肪酸でアシル化されたインシュリンは、日本国特許出願第1,245,699号に記載されている。またHashimoto, M.等, Pharmaceutical Research, 6:171-176 (1989),及び Lindsay, D. G.等, Biochemical J., 121:737-745 (1971)をも参照のこと]。脂肪酸でアシル化されたインシュリン、及び脂肪酸アシル化インシュリン類似体、及びその合成方法の更なる説明は、米国特許第5,693,609号、WO95/07931、米国特許第5,750,497号、及びWO96/29342に見出される。アシル化ペプチドの更なる例は、WO98/08871、WO98/08872、及びWO99/43708に見出される。これらの開示は、親油的に変性されたペプチドを記載しており、またこれはその製造を可能とする。
【0018】
ここで使用するように、該用語「両親媒性部分」とは、親油性及び親水性両者の特徴を有し、かつ水及び親油性溶媒両者に対して溶解性の任意の部分を意味する。本発明において使用する、該両親媒性分子は、親油性及び親水性部分両者で構成される。該親油性部分は、好ましくは天然の脂肪酸又はアルキル鎖及び上記のものである。該親水性部分は、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、糖等から選択される。該親水性部分は、好ましくは1,000個未満のエチレングリコール単位を含む、ポリエチレングリコール(PEG)である。該親油性部分及び該親水性部分のサイズ及び組成は、所定の両親媒性を得るために調節することができる。
ここで使用するような、本発明の該ペプチド及び変性ペプチドの他の成分に関する、該用語「結合(conjugated, linked, bonded)」等は、該指定された部分が、リンカー、ブリッジ、スペーサ等を介して、好ましくは共有結合によって、相互に結合されていることを意味する。
ここで使用する該用語「リンカー」、「ブリッジ」、「スペーサ」等は、好ましくは共有結合により、また例えば親油性部分と治療用ペプチドとを結合する原子又は一群の原子を意味する。
【0019】
共有結合を行うためには、治療用ペプチドは、1又はそれ以上の適当な官能基を持つことができ、あるいは親油性又は両親媒性部分に、共有結合的にカップリングするための、1又はそれ以上の適当な官能基を含むように変性することができる。適当な官能基は、例えば以下に列挙する基を含む:ヒドロキシル基、アミノ基(第一アミノ又は第二アミノ基)、チオール基、及びカルボキシル基。本発明の親油性又は両親媒性部分は、1又はそれ以上の適当な官能基を持つことができ、あるいはペプチドに対して共有結合的にカップリングするための、1又はそれ以上の適当な官能基を含むように変性することができる。適当な官能基は、例えば以下に列挙する基を含む:ヒドロキシル基、アミノ基(第一アミノ基又は第二アミノ基)、チオール基、カルボキシル基、アルデヒド基、イソシアナト基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、ホスホン酸基、アリルハライド基、ベンジルハライド基、置換ベンジルハライド基、及びオキシラニル基。
【0020】
治療用ペプチドは、エステル基、アミド基、第二又は第三アミノ基、カルバメート基、スルホネート基、硫酸基、リン酸基、ホスホネート基、又はエーテル基を介して、1又はそれ以上の親油性部分と、直接又は間接的に結合することができる。
本発明の一態様においては、パルミチン酸は、N-ヒドロキシサクシンイミドで活性化され、次いでオクタペプチドであるオクトレオチド上のアミノ基との反応に付されて、該パルミチル親油性部分と該ペプチドとの間のアミドリンカーを介して、抱合体を形成した。オクトレオチド上には、2つの第一アミノ基が存在する。これらの両アミノ基は、同時に結合することができ、あるいは一方のみのアミノ基を、反応条件を調節することにより、選択的に結合し、次いで分離することができた。
もう一つの態様では、アルデヒド末端基を持つ親油性化合物であるデカナールを、オクトレオチド上のアミノ基と反応させて、第二アミノ結合を介する抱合体を生成した。これら2つのアミノ基は、同時に結合することができ、あるいは一方のみのアミノ基を、反応条件を調節することにより、選択的に結合し、次いで分離することができた。
【0021】
さらなる態様において、パルミチン酸を、幾つかの比率で、リゾチームの6個のアミノ基を介して、リゾチームと結合させた。該パルミチン酸対リゾチームの比が、6未満である場合、リゾチーム上の結合部位は、各アミノ基の反応性に依存して、ランダムであってもよい。
さらに別の態様において、グレリンは、そのヒドロキシル基をn-オクタノイル部分でアシル化することにより得られる、アシル化ペプチドである。グレリンは、成長ホルモンの分泌を刺激し、また肥満度を高める胃で分泌されるペプチドである。これは、以前にクローン化された成長ホルモン分泌刺激性レセプタに対する、最初に同定された天然のリガンドであり、該レセプタは、下垂体及び脳の視床下部領域に存在する。
【0022】
親油性部分は、親水性部分と最初に共有結合的に結合して、両親媒性分子を形成することができる。本発明の該両親媒性分子は、1又はそれ以上の適当な官能基を持つことができ、あるいはペプチドに対して共有結合的にカップリングするための、1又はそれ以上の適当な官能基を持つように変性することができる。適当な官能性基は、ヒドロキシル基、アミノ基(第一アミノ基又は第二アミノ基)、チオール基、カルボキシル基、アルデヒド基、イソシアナト基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、ホスホン酸基、アリルハライド基、ベンジルハライド基、置換ベンジルハライド基、及びオキシラニル基から選択される。
治療用ペプチドは、エステル基、アミド基、第二又は第三アミノ基、カルバメート基、スルホネート基、硫酸基、リン酸基、ホスホネート基、又はエーテル基を介して、1又はそれ以上の両親媒性部分と、直接又は間接的に結合することができる。
【0023】
好ましくは、治療用ペプチドは、(a) 親水性部分及び(b) 親油性部分を含む、1又はそれ以上の両親媒性分子と共有結合的に結合しており、ここで該両親媒性分子の親水特性と親油特性との間のバランスは、該抱合体に、生物学的流体又は水性溶液に対する適当な溶解度を付与する。
より好ましくは、治療用ペプチドは、(a) 直鎖ポリエチレングリコール部分及び(b) 親油性部分を含む、1又はそれ以上の両親媒性分子と共有結合的に結合しており、ここで該治療用ペプチド、該ポリエチレングリコール及び該親油性部分は、親油性環境又は細胞膜との相互作用に対して、外部的に利用可能な該親油性部分を持つように、構造的に配列される。このような両親媒的に変性されたペプチドは、該結合していないペプチドと比較して、インビトロ及びインビボ両者において、該生分解性ポリマーとの反応に対して、高い化学的抵抗性を持つ。
【0024】
好ましくは、該両親媒性分子は、以下のような一般的な構造を持つ:L-S-(OC2H4)mOH (式 1)、ここでLは、好ましくはC3-39-アルキル、C3-39-アルケニル、C3-39-アルカジエニル、トコフェロール及びステロイド系残基から選択される親油性部分であり、またSは、エステル基、アミド基、第二及び第三アミノ基、カルバメート基、スルホネート基、硫酸基、リン酸基、ホスホネート基、又はエーテル基から選択されるリンカーである。
一態様において、炭素原子数16のアルキル基は、エーテル結合を介して、ポリエチレングリコール分子と共有結合によりカップリングしている。得られる該両親媒性分子は、ペプチド上の適当な官能基と反応するように、活性化し、あるいは誘導体化し得る、一つのヒドロキシル基を持つ。本発明の一態様において、該両親媒性分子は、アルデヒド末端基を持つように誘導体化された。次いで、該両親媒性分子は、オクトレオチド上のアミノ基との反応によって、オクトレオチドと共有結合によりカップリングされ、次いでNaCNBH3による還元反応に付された。オクトレオチド上の両アミノ基は、同時に結合でき、あるいは一方のアミノ基のみと、該反応条件を調節することにより選択的に結合し、次いで分離できた。該抱合体は、該未結合のオクトレオチドの帯電特性を変化しない、第二アミンによって形成された。この特性は、該ペプチドの活性を維持する上で有用であり得る。
【0025】
もう一つの態様において、該両親媒性分子モノパルミチルポリ(エチレングリコール)(Mn:約1124)は、4-ニトロフェニルクロロホルメートによって活性化された。次いで、該両親媒性分子は、オクトレオチド上のアミノ基との反応によって、オクトレオチドと共有結合により結合された。オクトレオチド上の両アミノ基は、同時に結合でき、あるいは一方のアミノ基のみと、該反応条件を調節することによって選択的に結合され、次いで分離することができた。
1又はそれ以上の親油性又は両親媒性部分で共有結合的に変性されたペプチドは、例えば該変性ペプチドの製薬上許容される塩及び錯体を包含する。該変性は、該ペプチドの1又はそれ以上の部位において行うことができる。このようなペプチドは、また例えばサイト-特異的に変性されたペプチド及びモノ-サイト及びマルチ-サイト変性されたペプチドをも包含する。
【0026】
「製薬上許容される塩」とは、ペプチド中の任意の1又はそれ以上の帯電した基と、任意の1又はそれ以上の製薬上許容される、非-毒性のカチオン又はアニオンとの間に形成される塩を意味する。有機又は無機塩は、例えば酸、例えば塩酸、硫酸、スルホン酸、酒石酸、フマール酸、臭化水素酸、グリコール酸、クエン酸、マレイン酸、リン酸、コハク酸、酢酸、硝酸、安息香酸、アスコルビン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、プロピオン酸、炭酸等の酸と、又は例えばアンモニウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、又はマグネシウムとから調製されるものを含む。
上記用語「生分解性、水-不溶性ポリマー」とは、インビボにおいて使用できる、任意の生体適合性(即ち、製薬上許容される)及び生分解性の合成又は天然のポリマーを含む。この用語は、また37℃において、水又は生物学的流体に対して不溶性であり、あるいはこれらに対して不溶性となる、ポリマーをも含む。該ポリマーは、場合により精製して、当分野において公知の技術を用いて、モノマー及びオリゴマーを除去することができる(例えば、米国特許第4,728,721号;米国特許出願第2004/0228833号)。このようなポリマーの幾つかの非-限定的な例は、ポリラクチド、ポリグリコライド、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリカーボネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリアルキレンオキサレート、ポリ無水物、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリウレタン、ポリアセタール、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、ポリヒドロキシバレレート、ポリアルキレンサクシネート、及びポリオルトエステル、及びこれらのコポリマー、ブロックコポリマー、分岐コポリマー、ターポリマー、及びこれらの組合せ及び混合物である。
【0027】
ポリマーに関する適当な分子量については、当業者が決定することができる。分子量を測定する際に考えることのできる因子は、所定のポリマー分解速度、機械的強度、溶媒に対するポリマーの溶解速度を含む。典型的には、ポリマーの分子量の適当な範囲は、他の様々な因子の中で、1.1〜2.8なる範囲の多分散性を示す、約2,000ダルトン(Da)〜約150,000 Daなる範囲にある。
本発明によれば、治療用ペプチドの薬理処方物は、溶解又は可溶化された、親油的に又は両親媒的に変性されたペプチドを含有する、製薬的に許容される溶媒中に溶解又は分散されたポリマーを含む、注射可能な溶液又は懸濁液として調製される。ペプチドと親油性又は両親媒性分子とを共有結合的にカップリングすることによって、ペプチド中の幾つかの反応性の基は保護されており、また溶液中におけるポリマーとの相互作用のために利用されることはない。従って、本発明の組成物中の該ペプチド及び該ポリマーの安定性は、該ペプチドの共有結合的な変性によって改善される。
【0028】
従って、本発明は、治療対象内に、その場で、固体生分解性インプラントを製造する方法を提供するものであり、該方法は、(a) 生体適合性で、水-不溶性の生分解性ポリマー及び1又はそれ以上の親油性又は両親媒性部分で共有結合的に変性された治療用ペプチドを、生体適合性で、水溶性の有機溶媒に溶解又は分散させて組成物を生成する工程、ここで該有機溶媒は、身体組織内に配置した際に体液中で散逸又は拡散することができ;及び(b) 該組成物を、該身体内の移植部位に投与して、該有機溶媒を該体液内で散逸又は拡散させ、かつ該ポリマーを、凝固又は固化させて、生分解性の固体インプラントを形成する工程を含む。
付随的に、本発明は、身体内で、その場にて生分解性のインプラントを形成するための液状薬理組成物を提供することにあり、該組成物は、有効量の生体適合性で、水溶性有機溶媒中に溶解又は分散されている、有効量の生体適合性で、水-不溶性の、生分解性ポリマー及び有効量の、1又はそれ以上の親油性又は両親媒性部分により共有結合的に変性された治療用ペプチドを含有し、ここで該溶媒は、体液内で散逸又は拡散することができ、しかも該ポリマーは、体液と接触した際に凝固又は固化することができる。
【0029】
適切なペプチド及び親油性又は両親媒性分子は、上で定義した如きものである。該抱合体におけるペプチド対親油性又は両親媒性分子のモル比は、例えば該ペプチドの性質に応じて、1:1〜1:10なる範囲内で変動するであろう。
任意の適当な生分解性ポリマーを使用できるが、但し該ポリマーは、37℃において、水性媒体又は体液に対して不溶性であるか、あるいはこれに対して不溶性となるものであり得る。適当な生分解性ポリマーは、上で定義した如きものである。
本発明の組成物中に存在する生分解性ポリマーの型、その分子量及びその量は、該ペプチドが、該制御放出性インプラントから放出される時間の長さに影響を及ぼす可能性がある。当業者は、該制御放出性インプラントの所定の特性を達成するための、本発明の組成物中に存在する生分解性ポリマーの型、分子量及び量の選択を、日常的な実験によって行うことができる。
【0030】
製薬上許容される有機溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、プロピレンカーボネート、カプロラクタム、トリアセチン、ベンジルベンゾエート、ベンジルアルコール、エチルラクテート、グリセリルトリアセテート、クエン酸のエステル、ポリエチレングリコール、アルコキシポリエチレングリコール及びポリエチレングリコールアセテート、又はこれらの任意の組合せを含むが、これらに限定されない。
生分解性ポリマーに対するこれら有機溶媒に関する基準は、これらが製薬上許容され、かつ水性媒体又は体液に対して混和性乃至分散性である点にある。該適当な有機溶媒は、体液中に拡散可能であって、該液状組成物が、凝固又は固化して、その場でインプラントを生成すべきである。単独溶媒及び/又は混合溶媒を使用することができ、またこのような溶媒の適性は、日常的な実験によって容易に決定することができる。
【0031】
本発明の薬理組成物は、典型的に0.1〜40%(w/v)なる範囲の量でペプチドを含む。一般に、最適の薬物投入量は、該ペプチドの所定の放出期間及びその効能に依存する。明らかに、低効力のペプチド及びより長い放出期間に対しては、より高い配合量が必要とされる可能性がある。
本発明の注射可能な液状組成物の粘度は、該ポリマーの分子量及び使用する有機溶媒により決定される。例えば、ポリ(ラクチド-co-グリコライド)を使用する場合、このポリエステルのNMP溶液は、mPEG350溶液よりも低い粘度を有する。典型的には、同一の溶媒を使用する場合、該ポリマーの分子量及び濃度が高いほど、該溶液の粘度は高い。該溶液中のポリマーの濃度は、好ましくは70質量%以下である。より好ましくは、該溶液中のポリマーの濃度は、20〜60質量%なる範囲内にある。
【0032】
これらその場で製造したインプラントからの、親油的に又は両親媒的に変性されたペプチドの放出は、モノリシックなポリマーデバイスからの薬物の放出と同様な、一般的規則に従うであろう。該親油的に又は両親媒的に変性されたペプチドの放出は、該インプラントのサイズ及び形状、該親油的に又は両親媒的に変性されたペプチドの、該インプラントへの充填量、該親油的に又は両親媒的に変性されたペプチド及び該特定のポリマーの値を包含する透過性因子、及び該ポリマーの分解により影響される可能性がある。送達のために選択された該変性ペプチドの量に依存して、薬物放出に係る当業者は、上記パラメータを、所定の放出速度及び放出期間を得るべく、調節することができる。
投与すべき該注射可能な組成物の量は、典型的には該制御放出性インプラントの所定の特性に依存するであろう。例えば、該注射可能な溶液組成物の量は、該制御放出性インプラントから、該ペプチドが放出される期間の長さに影響を与える可能性がある。
【0033】
本発明によれば、該親油的に又は両親媒的に変性されたペプチドを含む組成物を、持続性のある、制御放出による送達が望まれる治療対象に、投与することができる。本明細書で使用する該用語「治療対象」とは、温血動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを含むことを意図する。
本明細書で使用する該用語「投与する(された)」とは、治療対象の所定の位置に、該組成物を放出するための任意の適当な経路による、組成物の該対象への分配、送達又は適用を意味するものとし、ここで該適当な経路とは、皮下、筋肉内、腹腔内、又は皮内経路での注射及び/又は移植による送達、あるいは粘膜に対する投与による送達を包含し、このようにして、治療用のペプチドによる、様々な医学的状態を治療するための既知のパラメータに基いて、該ペプチドの所定の用量を与える。
【0034】
本明細書において使用する用語「制御された、持続的放出による送達」とは、例えば投与後の所定の期間に渡り、好ましくは少なくとも数日乃至数週間又は数ヶ月間に渡る、インビボでの治療用ペプチドの連続的な送達を包含する。該ペプチドの制御された、持続的放出による送達は、例えば所定期間に渡る、該薬剤の連続する治療効果によって証明できる(例えば、オクトレオチドに関しては、ペプチドの持続的送達は、経時の連続的なGHの減少によって立証できる)。あるいはまた、該薬物の持続的送達は、インビボでの、経時的な該薬剤の存在の検出によって明らかにすることができる。
本特許出願において、当該液状薬理組成物に関する特許請求の範囲に示された様々な態様は、また必要な変更を加えて、このような組成物を製造するための本発明の方法並びに固体インプラントを製造するための本発明の方法に関しても、目論まれている。
【0035】
例:
以下の例は、本発明の組成物及び方法を例示するものである。以下の例は、本発明を限定するものと考えるべきではなく、単に本発明の有用な薬物送達系を如何様にして製造するかを教示するはずである。
例1:パルミトイルオクトレオチド(PAL-OCT)の製造
50mgのオクトレオチドアセテートを、100μLのトリエチルアミン(TEA)を含有する1mLの無水DMSOに溶解した。40.2mgのパルミチン酸N-ヒドロキシサクシンイミドエステル(Mw 353.50)を、3mLの無水DMSOに溶解し、これを該ペプチド用液に添加した。この反応を、室温にて3時間に渡り進行させた。該混合物をジエチルエーテル中に注込み、パルミトイル化オクトレオチドを析出させた。該沈殿を、ジエチルエーテルで2度洗浄し、次いで減圧下で乾燥させた。この生成したアシル化ペプチドは、白色粉末形状にあった。
【0036】
例2:パルミトイルオクトレオチド(PAL-OCT)の製造
50mgのオクトレオチドアセテートを、100μLのTEAを含有する1000μLの無水DMSOに溶解した。17.1mgのパルミチン酸N-ヒドロキシサクシンイミドエステル(Mw 353.50)を、3mLの無水DMSOに溶解し、これを該ペプチド用液に直接注入することにより、添加した。この反応を、室温にて一夜に渡り進行させた。該混合物をジエチルエーテル中に注込み、パルミトイル化オクトレオチドを析出させた。該沈殿を、ジエチルエーテルで2度洗浄し、次いで減圧下で乾燥した。この生成したアシル化ペプチドは、白色粉末形状にあった。
例3:デカナール-オクトレオチド(DCL-OCT)の製造
50mgのオクトレオチドを、pH5の0.1Mアセテートバッファー中に、20mMのナトリウムシアノボロハイドライド(Mw 62.84、NaCNBH3)(2.51 mg)を溶解した溶液2mLに溶解した。13.7mgのデカナール(Mw 156.27)(OCT:DCL = 1:2)を、直接的な注入によって、該ペプチド用液に添加した。この反応を、4℃にて一夜に渡り進行させた。該混合物を遠心分離処理により分離した。該沈殿したDCL-OCTを、凍結乾燥させた。
【0037】
例4:パルミトイルリゾチーム(PAL-Lyz、3:1)の製造
302mgのリゾチーム(Mw 14,500)を、200μLのTEAを含有する1000μLの無水DMSOに溶解した。18.25mgのパルミチン酸N-ヒドロキシサクシンイミドエステル(Mw 353.50)を、3mLの無水DMSOに溶解し、これを直接注入することにより、該タンパク質溶液に添加した。この反応を、RT(室温)にて一夜に渡り進行させた。該PAL-Lyzを、ジエチルエーテル中で沈殿させ、この最終生成物を、該有機溶媒の除去後に、凍結乾燥した。
例5:注射可能なポリマー処方物からの、パルミトイルリゾチームの放出
mPEG350中に該ポリマーを適当に溶解することにより、40%のPLGA RG503Hを調製した。次いで、パルミトイルリゾチーム及びリゾチームを、夫々約7%なる濃度にて、該ポリマー溶液と混合した。これらの処方物を十分に混合して、均一な処方物を得た。
【0038】
注射可能なポリマー溶液からの、リゾチーム及びパルミトイル化リゾチームのインビトロ放出:該処方された懸濁液(約100mg)を、0.1%のナトリウムアジドを含む、pH7.4のリン酸緩衝塩水3mL中に、37℃において注入した。該受容液体は、選択された各時間点において、新たなバッファー溶液と交換され、該取出されたバッファー溶液を、pH7.4のPB(リン酸緩衝塩水)で適当に希釈し、波長280nmにおいて、UV分光光度計により、標準曲線に対して、薬物濃度につき分析した。図1は、アセチル化された及び未変性のリゾチーム両者の累積放出プロフィールを示す。該未変性のリゾチームは、アセチル化されたリゾチームに比して、初期にはかなりの放出を示した。
【0039】
例6:パルミトイルリゾチーム(PAL-Lyz、5:1)の製造
50mgのリゾチーム(Mw 14,500)を、水に溶解し、pHを9.58に調節した。この溶液を凍結乾燥した。次いで、該乾燥粉末を、3mLのDMSOに溶解した。次に、無水DMSOに20mg/mLにてN-ヒドロキシサクシンイミドエステル(Mw 353.50)を溶解して得た溶液322μLを、該タンパク質溶液に直接注入することにより添加した。この反応を、4℃にて一夜に渡り進行させた。該PAL-Lyzを、ジエチルエーテル中で沈殿させ、この最終生成物を、該有機溶媒の除去後に、凍結乾燥した。
例7:パルミトイルリゾチーム(PAL-Lyz、13:1)の製造
50mgのリゾチーム(Mw 14,500)を、水に溶解し、pHを9.58に調節した。この溶液を凍結乾燥した。次いで、該乾燥粉末を、3mLのDMSOに溶解した。次に、無水DMSOに20mg/mLにてN-ヒドロキシサクシンイミドエステル(Mw 353.50)を溶解して得た溶液799μLを、該タンパク質溶液に直接注入することにより添加した。この反応を、4℃にて一夜に渡り進行させた。該PAL-Lyzを、ジエチルエーテル中で沈殿させ、この最終生成物を、該有機溶媒の除去後に、凍結乾燥した。
【0040】
例8:パルミトイルリゾチーム(PAL-Lyz)の製造
リゾチームを、2%のデオキシコレート(DOC)を含む、PBS (pH 8.0)中のPAL-NHSに添加する。この混合物を37℃にて6時間インキュベートする。この混合物を遠心分離処理して、未反応のPAL-NHSを除去する。この生成物を、0.15%のDOCを含むPBSに対して、48時間透析する。(PAL-NHS:Lyso=15:1)。
例9:注射可能なポリマー処方物からのグレリンの放出
mPEG350中に該ポリマーを適当に溶解することにより、40%のPLGA RG503Hを調製した。次いで、グレリン(ヒト、ラット1-5)及び脱アセチル化グレリン(Des-n-オクタノイル-[Ser]3-グレリン(ヒト、ラット1-5))を、夫々約6%にて、該ポリマー溶液と混合した。これらの処方物を、十分に混合して、均一な処方物を得た。
該処方された懸濁液(約100mg)を、0.1%のナトリウムアジドを含む、pH7.4のリン酸緩衝塩水3mL中に、37℃において注入した。該受容液体は、選択された各時間点において、新たなバッファー溶液と交換され、該取出されたバッファー溶液を、pH7.4のPB(リン酸緩衝塩水)で適当に希釈し、対応する標準曲線に対して、HPLCにより薬物濃度につき分析した。図2は、グレリン及び脱アセチル化グレリンの、PBS中での累積放出量を示す。該脱アセチル化グレリンは、テストした2週間に及ぶ期間に渡り、より迅速な放出を示した。親油性部分を持つグレリンは、より緩慢な放出速度を示した。
【0041】
例10:モノパルミチルポリ(エチレングリコール)-ブチルアルデヒド、ジエチルアセタールの製造
モノパルミチルポリ(エチレングリコール)(平均Mn 約1124)(5.0g、4.45mM)及びトルエン(75mL)を、減圧下にトルエンを留去することにより、共沸的に乾燥させた。該乾燥したモノパルミチルポリ(エチレングリコール)を、無水トルエン(50mL)中に溶解し、THF(4.0mL、6.6mM)及び4-クロロブチルアルデヒドジエチルアセタール(0.96g、5.3mM、Mw 180.67)中に、カリウムtert-ブトキシドを溶解して得た20%(w/w)溶液を、これに添加した。この混合物を、アルゴン雰囲気下で、100-105℃にて一夜攪拌した。室温まで冷却した後、この混合物を濾過し、0-5℃にて150mLのエチルエーテルに添加した。沈殿した生成物を、濾別し、減圧下で乾燥させた。
【0042】
例11:N-末端アミノ基における、オクトレオチドと、モノパルミチルポリ(エチレングリコール)との結合(PAL-PEG-BA-OCT)
典型的な製造法においては、201.6mgのモノパルミチルポリ(エチレングリコール)-ブチルアルデヒド、ジエチルアセタール(PAL-PEG-BADA)を、10mLの0.1Mリン酸(pH 2.1)中に溶解し、得られた溶液を、50℃にて1時間加熱し、次いで室温まで冷却した。該溶液のpHを、1N NaOHで5.5に調節し、3.5mLの0.1M リン酸ナトリウムバッファー(pH 5.5)中に、195.3mgのオクトレオチドを溶解して得た溶液に、得られたこの溶液を添加した。1時間後に、18.9mgのNaCNBH3を、濃度が20mMとなるように添加した。この反応を室温にて一夜継続した。次いで、該反応混合物を、Mw遮断値2000 Daの膜を用いて透析するか、あるいはC-18カラムを用いた分取HPLCに投入した。該精製された結合オクトレオチドは、主として、一つの第一アミン(リジン)、及び一つの第二アミン(N-末端)を持つ、単一の化合物であった。
【0043】
例12:液状ポリマー組成物中のペプチド及び生分解性ポリマーのインビトロ放出及び安定性
1.5(DLPLG85/15、IV: 0.28)なる多分散性を持つ、ラクチド対グリコライドの比85/15のポリ(DL-ラクチド-co-グリコライド)(PLGA)を、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解して、50質量%の溶液を得た。該ペプチドを、NMP中の該PLGA溶液と混合して、以下の表1に示された比にて、均一な注射可能な組成物を得た。
【0044】
【表1】

【0045】
各処方物からのアリコートを、0.1%のナトリウムアジドを含有する、pH 7.4のリン酸バッファー中での、37℃におけるインビトロ放出のために採取し、また残りの処方物を、時間の経過に伴う、室温における、該ペプチド及び該ポリマーの安定性を追跡するために使用した。時間点は、0.125、1、2、5、7、14、21及び28日とする。該サンプル中の該ペプチドの純度は、HPLCにより測定した。該ポリマーの分子量は、既知の分子量をもつポリスチレン標準物質を用いた、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0046】
従来技術によれば、ペプチド上における求核基の存在は、該ペプチドと組成物の生分解性ポリマーとの間の相互作用に導く可能性がある。該ペプチド上の該求核基は、該生分解性ポリマーと反応して、アシル化生成物を形成することができ、また該生分解性ポリマーの分解を触媒することができる。オクトレオチド及びポリ(DL-ラクチド-co-グリコライド)が、特にNMP等の有機溶媒中で結合した場合、該オクトレオチドが、アシル化され、かつ該ポリマーが迅速に分解されることは、周知である。本発明の該オクトレオチドのN-末端結合は、一つの第一アミン、一つの第二アミン、及び一つのC-末端カルボン酸基を含み、また該オクトレオチド自身と同様に、該ポリマーと相互作用及び/又は反応するものと予想される。しかし、予想外にも、本発明の該共有結合的に結合されたオクトレオチドが、該アシル化反応を阻害し、かつ未変性のオクトレオチドに比して、該ポリマーの分解速度を大幅に減じることが見出された。従来技術に記載され、また以下の表2に示すように、該オクトレオチドを、NMP中のポリ(DL-ラクチド-co-グリコライド)溶液と混合した場合、該オクトレオチドは、室温にて24時間以内に、80%を越えてアシル化され、また7日後には殆ど完全に反応した。しかし、共有結合的に結合したオクトレオチドは、同一の条件下で、56日後においてさえも、安定であった。以下の表3に示したように、オクトレオチドを含有する該処方物中の該ポリマーの分子量は、室温にて迅速に低下した。21日後に、該ポリマーの分子量は、50%まで低下した。しかし、共有結合的に結合したオクトレオチドを含有する該処方物中の該ポリマーについては、元の分子量の90%を越える分子量が維持されていた。
【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
従来技術において論じられているように、処方物中の生活性薬剤及び賦形剤の安定性を維持するためには、一般に、該生活性薬剤は、例えば市販のロイプロリド処方物であるエリガード(Eligard)におけるように、該処方物の他の成分とは別に包装される。従って、全ての成分は、使用直前に混合される。このような調剤は、保存中のペプチドと生分解性のポリマーとの間の相互作用を回避できるが、これは、これら成分の混合後の如何なる相互作用をも回避することはない。該ペプチドと該ポリマーとの間の相互作用は、投与の際及びその後のインビトロ又はインビボでの放出の際に起こり得る。
【0050】
製造後、37℃において、0.1%のナトリウムアジドを含有する、pH 7.4のリン酸バッファー中で、インビトロ放出を行うために、各処方物からのアリコートを採取した場合、驚いたことに、オクトレオチドと該ポリマーとの間の相互作用が、これらの混合の際、及びその後のインビトロでの放出の際に起こることが分かった。図3に示したように、該放出媒体中に検出された、該オクトレオチドの約30%が、3時間以内に分解されるか、あるいは該ポリマーと反応した。また、該放出媒体中に検出された、50%を越える該オクトレオチドが、28日後において分解され、あるいはアシル化された。28日後に、該ポリマーマトリックスを、アセトニトリル中に溶解させ、また該ポリマーを、水を使用して沈殿させた。該オクトレオチドを、HPLCにより分析した。50%を越える、該ポリマーマトリックス中に残されている該オクトレオチドが、アシル化されていることも見出された。このようなオクトレオチドの分解及び/又はアシル化は、本来のオクトレオチドの利用性を大幅に低下し、また望ましからぬ有害な副生成物を生成する恐れがある。このような該ペプチドと該ポリマーとの間の相互作用を回避することが、極めて有利であろう。
【0051】
図4は、該共有結合的に結合されたオクトレオチドPal-PEG-BA-OCTの、インビトロ放出を示す図である。該変性されたオクトレオチドは、未変性のオクトレオチドと同様に求核基を含むが、驚いたことに、該変性されたオクトレオチドの分解は、28日間に渡り、該放出媒体中及び該ポリマーマトリックス中に、全く検出されないことが分かった。この結果は、該ペプチドとモノパルミチルポリ(エチレングリコール)等の両親媒性部分との共有結合による結合が、ペプチドと生分解性ポリマーとの間の相互作用及び/又は反応を阻害し、あるいは大幅に減じることを示している。
【0052】
例13:4-ニトロフェニルクロロホルメート(NPC)により活性化されたモノパルミチルポリ(エチレングリコール)の製造
モノパルミチルポリ(エチレングリコール)(平均のMn 約1124)(10.0g、8.9mM)とベンゼン(100mL)との混合物を、減圧下で50mLのベンゼンを留去することによって、共沸的に乾燥させた。該反応混合物を、30℃まで冷却し、次いでアルゴン雰囲気下にて、無水ピリジン(0.809mL、10mM)及び4-ニトロフェニルクロロホルメート(2.015g、10.0mM)を添加した。この添加の完了後、該反応系を45℃にて2時間攪拌し、引続き室温で一夜攪拌した。
次に、この反応混合物を濾過し、減圧下にて蒸留することにより、得られた濾液から該溶媒を除去した。得られた残渣を、2-プロパノールから再結晶して、8.2gの生成物(PAL-PEG-NPC)を得た。
【0053】
例14:オクトレオチドとモノパルミチルポリ(エチレングリコール)との結合(PAL-PEG-OCT)
236.5mgのPAL-PEG-NPCを、10mLの50mMホウ酸ナトリウムバッファー(pH 9)に、239mgのオクトレオチドを溶解して得た溶液に添加した。この溶液を、連続的に一夜に渡り、磁気的に攪拌した。得られた最終的な溶液を、Mw遮断値2,000を持つ膜を用いて透析した。透析処理した該溶液を、凍結乾燥し、HPLCにより分析した。得られた結果は、該変性されたペプチドが、単一サイト及び多重サイトで結合したオクトレオチドの混合物であることを示している。
本発明は、上記態様によって限定されるものではなく、該態様は、単なる例として提示されているのであり、添付した特許請求の範囲によって定義された、本発明の保護範囲内で、様々な方法で変更することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用のポリペプチドを制御放出するための液状ポリマー系薬理組成物であって、(a) 製薬上許容される、水-不溶性の生分解性ポリマー;(b) 該生分解性ポリマーを可溶化する、製薬上許容される有機溶媒;及び(c) 1又はそれ以上の親油性部分と結合した治療用ポリペプチドを含み、該組成物が、注射可能な粘稠性液体形状にあり、また治療対象の身体内に該有機溶媒を散逸又は分散することにより、制御放出性インプラントを形成することができ、かつ該組成物が、該親油性部分と結合していない該治療用ポリペプチドが呈するよりも高いインビトロ安定性及びそれよりも低い初期突発的放出性を示すことを特徴とする、前記液状ポリマー系薬理組成物。
【請求項2】
前記ポリペプチド及び前記1又はそれ以上の親油性部分が、共有結合的に結合している、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリペプチド及び前記1又はそれ以上の親油性部分が、スペーサ、ブリッジ又はリンカー基を介して共有結合的に結合している、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリペプチドが、オキシトシン、バソプレッシン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、上皮増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、プロラクチン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、LHRHアゴニスト、LHRHアンタゴニスト、成長ホルモン、成長ホルモン放出因子、インシュリン、エリスロポエチン、ソマトスタチン、グルカゴン、インターロイキン、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、ガストリン、テトラガストリン、ペンタガストリン、ウロガストロン、セクレチン、カルシトニン、エンケファリン、エンドルフィン、アンギオテンシン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、腫瘍壊死因子(TNF)、副甲状腺ホルモン(PTH)、神経成長因子(NGF)、顆粒球-コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージ-コロニー刺激因子(M-CSF)、ヘパリナーゼ、血管内皮細胞増殖因子(VEG-F)、骨形成タンパク質(BMP)、hANP、グルカゴン-様ペプチド(GLP-1)、エキセナチド(exenatide)、ペプチドYY(PYY)、グレリン(Ghrelin)、レニン、ブラジキニン、バシトラシン、ポリミキシン、コリスチン、チロシジン、グラミシジン、シクロスポリン、酵素、サイトカイン、抗体、ワクチン、抗生物質、糖タンパク質、卵胞刺激ホルモン、キョウトルフィン(kyotorphin)、タフトシン(taftsin)、チモポエチン、チモシン、チモスチムリン、胸腺体液性因子、血清胸腺因子、コロニー刺激因子、モチリン、ボンベシン、ジノルフィン(dinorphin)、ニューロテンシン、セルレイン(cerulein)、ウロキナーゼ、カリクレイン、P物質類似体、P物質アンタゴニスト、アンギオテンシンII、血液凝固因子VII及びIX、リゾチーム、グラミシジン、メラノサイト刺激ホルモン、甲状腺ホルモン放出ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、パンクレオチミン、コレシストキニン、ヒト胎盤ラクトゲン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、タンパク質合成刺激ペプチド、胃抑制性ペプチド、血管作用性腸ペプチド、及び血小板由来増殖因子からなる群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリペプチドがACTH、グルカゴン、ソマトトロピン、チモシン、色素性ホルモン、ソマトメジン、絨毛性ゴナドトロピン、視床下部ホルモン放出因子、抗-利尿ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、ビファリン(biphalin)及びプロラクチンからなる群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリペプチドが、ドキソルビシン、ラパマイシン、ナルトレキソン、上皮増殖因子(EGF)、LHRHアゴニストスト、LHRHアンタゴニスト、成長ホルモン、成長ホルモン放出因子、オクトレオチド、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、カルシトニン、副甲状腺ホルモン(PTH)、グルカゴン-様ペプチド(GLP-1)、及びペプチドYY(PYY) からなる群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、グルカゴン-様ペプチド1(GLP-1)である、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリペプチドが、エキセンジン(exendin)である、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリペプチドが、オクトレオチドである、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリペプチドが、インシュリンである、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
前記親油性部分が、C3-39-アルキル、C3-39-アルケニル、C3-39-アルカジエニル、トコフェロール、及びステロイド系化合物からなる群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
前記C3-39-アルキル、C3-39-アルケニル及びC3-39-アルカジエニルの各々が、(i) 直鎖又は分岐、及び(ii) 飽和、モノ不飽和又はジ-不飽和のものである、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
前記親油性部分が、脂質である、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
前記生分解性ポリマーが、ポリラクチド、ポリグリコライド、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリカーボネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリアルキレンオキサレート、ポリ無水物、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリウレタン、ポリアセタール、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、ポリヒドロキシバレレート、ポリアルキレンサクシネート、及びポリオルトエステル、及びこれらのコポリマー、ブロックコポリマー、分岐コポリマー、ターポリマー、及びこれらの組合せ及び混合物からなる群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
前記生分解性ポリマーが、ポリ乳酸、及びポリグリコール酸、及びこれらのコポリマーからなる群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
前記有機溶媒が、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、プロピレンカーボネート、カプロラクタム、トリアセチン、ベンジルベンゾエート、ベンジルアルコール、エチルラクテート、グリセリルトリアセテート、クエン酸のエステル、ポリエチレングリコール、アルコキシポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールアセテート、又はこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
請求項1記載の液状ポリマー系薬理組成物の製造方法であって、(a) 製薬上許容される、水-不溶性の生分解性ポリマーを、製薬上許容される有機溶媒に溶解して、ポリマー溶液を製造する工程;及び(b) 該ポリマー溶液と、1又はそれ以上の親油性部分と結合した治療用ポリペプチドの有効量とを混合して、薬理組成物を生成する工程を含むことを特徴とする前記方法。
【請求項18】
治療用ポリペプチドを持続的に送達するための、固体、生分解性インプラントを、その場で製造する方法であって、請求項1記載の前記液状ポリマー系薬理組成物を、治療対象の身体内の、移植部位に投与する工程を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項19】
前記薬理組成物を、注射により投与する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記注射が、皮下又は筋肉内注射である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
治療用ポリペプチドを持続的に送達するための、固体、生分解性インプラントを、その場で製造する方法であって、(a) 請求項17記載の前記方法に従って、液状ポリマー系薬理組成物を製造する工程;及び(b) 該製造した組成物を、治療対象の身体内の、移植部位に投与する工程を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項22】
前記薬理組成物を、注射により投与する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記注射が、皮下又は筋肉内注射である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
治療用ポリペプチドを制御送達するための、液状ポリマー系薬理組成物であって、(a) 製薬上許容される、水-不溶性の生分解性ポリマー;(b) 該生分解性ポリマーを可溶化する、製薬上許容される有機溶媒;及び(c) 1又はそれ以上の両親媒性部分と結合した治療用ポリペプチドを含み、該組成物が、注射可能で粘稠な液体形状にあり、かつ治療対象の身体内での該有機溶媒の散逸又は分散により、制御放出性インプラントを形成することができ、しかも該組成物は、該両親媒性部分と結合していない該治療用ポリペプチドが呈するよりも、高いインビトロ安定性及びそれよりも低い初期突発的放出性を示すことを特徴とする、前記液状ポリマー系薬理組成物。
【請求項25】
前記ポリペプチド及び前記1又はそれ以上の両親媒性部分が、共有結合的に結合している、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
前記ポリペプチド及び前記1又はそれ以上の両親媒性部分が、スペーサ、ブリッジ又はリンカー基を介して共有結合的に結合している、請求項25記載の組成物。
【請求項27】
前記ポリペプチドが、オキシトシン、バソプレッシン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、上皮増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、プロラクチン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、LHRHアゴニスト、LHRHアンタゴニスト、成長ホルモン、成長ホルモン放出因子、インシュリン、エリスロポエチン、ソマトスタチン、グルカゴン、インターロイキン、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、ガストリン、テトラガストリン、ペンタガストリン、ウロガストロン、セクレチン、カルシトニン、エンケファリン、エンドルフィン、アンギオテンシン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、腫瘍壊死因子(TNF)、副甲状腺ホルモン(PTH)、神経成長因子(NGF)、顆粒球-コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージ-コロニー刺激因子(M-CSF)、ヘパリナーゼ、血管内皮細胞増殖因子(VEG-F)、骨形成タンパク質(BMP)、hANP、グルカゴン-様ペプチド(GLP-1)、エキセナチド(exenatide)、ペプチドYY(PYY)、グレリン(Ghrelin)、レニン、ブラジキニン、バシトラシン、ポリミキシン、コリスチン、チロシジン、グラミシジン、シクロスポリン、酵素、サイトカイン、抗体、ワクチン、抗生物質、糖タンパク質、卵胞刺激ホルモン、キョウトルフィン(kyotorphin)、タフトシン(taftsin)、チモポエチン、チモシン、チモスチムリン、胸腺体液性因子、血清胸腺因子、コロニー刺激因子、モチリン、ボンベシン、ジノルフィン(dinorphin)、ニューロテンシン、セルレイン(cerulein)、ウロキナーゼ、カリクレイン、P物質類似体、P物質アンタゴニスト、アンギオテンシンII、血液凝固因子VII及びIX、リゾチーム、グラミシジン、メラノサイト刺激ホルモン、甲状腺ホルモン放出ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、パンクレオチミン、コレシストキニン、ヒト胎盤ラクトゲン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、タンパク質合成刺激ペプチド、胃抑制性ペプチド、血管作用性腸ペプチド、及び血小板由来増殖因子からなる群から選択される、請求項24記載の組成物。
【請求項28】
前記ポリペプチドがACTH、グルカゴン、ソマトトロピン、チモシン、色素性ホルモン、ソマトメジン、絨毛性ゴナドトロピン、視床下部ホルモン放出因子、抗-利尿ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、ビファリン(biphalin)及びプロラクチンからなる群から選択される、請求項24記載の組成物。
【請求項29】
前記ポリペプチドが、ドキソルビシン、ラパマイシン、ナルトレキソン、上皮増殖因子(EGF)、LHRHアゴニストスト、LHRHアンタゴニスト、成長ホルモン、成長ホルモン放出因子、オクトレオチド、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、カルシトニン、副甲状腺ホルモン(PTH)、グルカゴン-様ペプチド(GLP-1)、及びペプチドYY(PYY)からなる群から選択される、請求項24記載の組成物。
【請求項30】
前記ポリペプチドがグルカゴン-様ペプチド1(GLP-1)である、請求項24記載の組成物。
【請求項31】
前記ポリペプチドが、エキセンジン(exendin)である、請求項24記載の組成物。
【請求項32】
前記ポリペプチドが、オクトレオチドである、請求項24記載の組成物。
【請求項33】
前記ポリペプチドが、インシュリンである、請求項24記載の組成物。
【請求項34】
前記両親媒性部分の親油性部分が、C3-39-アルキル、C3-39-アルケニル、C3-39-アルカジエニル、トコフェロール、及びステロイド系化合物からなる群から選択される、請求項24記載の組成物。
【請求項35】
前記C3-39-アルキル、C3-39-アルケニル及びC3-39-アルカジエニルの各々が、(i) 直鎖又は分岐、及び(ii) 飽和、モノ不飽和又はジ-不飽和のものである、請求項34記載の組成物。
【請求項36】
前記両親媒性部分の親水性部分が、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、及び糖からなる群から選択される、請求項24記載の組成物。
【請求項37】
前記生分解性ポリマーが、ポリラクチド、ポリグリコライド、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリカーボネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリアルキレンオキサレート、ポリ無水物、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリウレタン、ポリアセタール、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、ポリヒドロキシバレレート、ポリアルキレンサクシネート、及びポリオルトエステル、及びこれらのコポリマー、ブロックコポリマー、分岐コポリマー、ターポリマー、及びこれらの組合せ及び混合物からなる群から選択される、請求項24記載の組成物。
【請求項38】
前記生分解性ポリマーが、ポリ乳酸、及びポリグリコール酸、及びこれらのコポリマーからなる群から選択される、請求項24記載の組成物。
【請求項39】
前記有機溶媒が、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、プロピレンカーボネート、カプロラクタム、トリアセチン、ベンジルベンゾエート、ベンジルアルコール、エチルラクテート、グリセリルトリアセテート、クエン酸のエステル、ポリエチレングリコール、アルコキシポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールアセテート、又はこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項24記載の組成物。
【請求項40】
請求項24記載の前記液状ポリマー系薬理組成物の製造方法であって、(a) 製薬上許容される、水-不溶性の生分解性ポリマーを、製薬上許容される有機溶媒に溶解して、ポリマー溶液を製造する工程;及び(b) 該ポリマー溶液と、1又はそれ以上の両親媒性部分と結合した治療用ポリペプチドの有効量とを混合して、薬理組成物を生成する工程を含むことを特徴とする前記方法。
【請求項41】
治療用ポリペプチドを持続的に送達するための、固体、生分解性インプラントを、その場で製造する方法であって、請求項24記載の前記液状ポリマー系薬理組成物を、治療対象の身体内の、移植部位に投与する工程を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項42】
前記薬理組成物を、注射により投与する、請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記注射が、皮下又は筋肉内注射である、請求項42記載の方法。
【請求項44】
治療用ポリペプチドを持続的に送達するための、固体、生分解性インプラントを、その場で製造する方法であって、(a) 請求項40記載の前記方法に従って、液状ポリマー系薬理組成物を製造する工程;及び(b) 該製造した組成物を、治療対象の身体内の、移植部位に投与する工程を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項45】
前記薬理組成物を、注射により投与する、請求項44記載の方法。
【請求項46】
前記注射が、皮下又は筋肉内注射である、請求項45記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−543776(P2009−543776A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519503(P2009−519503)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/015770
【国際公開番号】WO2008/008363
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(508218132)キューピーエス リミテッド ライアビリティ カンパニー (4)
【Fターム(参考)】