説明

ペプチド含有食品組成物

【課題】液状食品や飲料において、透明系の液性であり、高含量のホエイペプチドを含有しつつ苦味・渋味が低減された食品組成物を提供する。
【解決手段】ホエイペプチドと共に、椎茸エキス、イノシン酸ナトリウム及びグアニル酸ナトリウムを含有するホエイペプチドの苦味・渋味が低減された液状食品又は飲料のための食品組成物。さらに、酢酸及び/又は茶エキスを含有することで苦味・渋味のマスキング効果が増強される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホエイペプチドを含有する液状食品又は飲料のための食品組成物に関するものである。より詳細には水又は熱湯に溶解させた後、喫食時において、ホエイペプチドの苦味が低減化されるように調製された食品組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高タンパク・低カロリーのダイエット用の食品としては種々のタイプの食品が知られている。これらのダイエット食品の中には液状食品(例えば、スープ)や飲料も含まれる。このような液状食品や飲料はダイエット食品として朝食、昼食、夕食のいずれか一食に置き換えることができるものもある。このように代替食として利用する場合、総カロリーは低減させたとしても1日摂取推定必要量の1食当りの平均量として20g前後の良質なタンパク質を液状食品や飲料に含有させる必要がある。
【0003】
このようなダイエット用の液状食品(例えば、スープ)や飲料に利用されるタンパク質は従来、乳タンパク・大豆タンパクが主体であった。これらは水に対する溶解性が低く、液状の状態において懸濁状の非透明系を呈する。従って、これらを利用したダイエット用の液状食品や飲料については、液性が非透明系のタイプとなっていた。一方、液状食品であるスープの種類としては液性が透明系のコンソメ風のスープも存在する。このため、ダイエット用のスープの範疇においても商品バリエーションや消費者の好みに対応するため透明系のスープを提供する必要性も高まってきている。さらに、飲料においても高いタンパク含量を有しつつ、液性を透明系のタイプとするニーズも大きい。
【0004】
透明系の液状食品(スープ)や飲料とするためには、タンパク分解度の高いペプチドを使用することが必要となる。ペプチドには大豆ペプチドや乳由来のカゼインペプチドやホエイペプチド等の種類があるが、これらの中でも苦味・渋みが少ないホエイペプチドが有利である。
【0005】
しかし、ホエイペプチドについても喫食時において苦味・渋味を呈する。このため液状食品(スープ)や飲料において高い含量で使用する場合においては、苦味・渋味を低減させる必要があった。この点、ペプチドの苦味・渋味抑制として一般的なペプチドの苦味抑制技術が種々開示されている(例えば、特許文献1〜3)。しかし、これらの方法はホエイペプチドのみを対象としたものではなく、特定の物質を添加する等の必要がありコストの面やバリエーションの面で問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開平8−173093
【特許文献2】特開2006−67874
【特許文献3】特開2006−75064
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明者らは、熱湯や水を加えて飲料や液状食品とするホエイペプチドを含有する食品組成物において、喫食時の苦味・渋味を低減させ、無理なく所定のタンパク量を摂取できるように調整できる食品組成物を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記の目的に準じて、ホエイペプチドの苦味・渋味について鋭意研究を行った。この結果、ホエイペプチドの苦味・渋味を呈するステップが概ね二段階に分けることができることを見出した。
【0009】
すなわち、喫食者がホエイペプチドを摂取すると、まず立ち上がりが早く、強い苦味・渋味を呈するステップがあり、次に持続性の長い部分の苦味・渋味を呈する部分がある。そこで、これらのそれぞれのステップにおいて苦味・渋味を効果的にマスキングできる添加物を調べた。その結果、各ステップにおいて効果的に苦味・渋味をマスキングできる物
【0010】
質を見出した。まず立ち上がりの苦味・渋味をマスキングするためには、椎茸エキスが有効であることを見出した。また、これに連続する持続性の長い部分の苦味・渋味についてはイノシン酸ナトリウムやグアニル酸ナトリウムの核酸を使用することでマスキングできることを見出した。
すなわち、本願第一の発明は、
ホエイペプチドと、
椎茸エキスと、
イノシン酸ナトリウム及びグアニル酸ナトリウムを含有する、
ホエイペプチドの苦味・渋味が低減された液状食品又は飲料のための食品組成物、
である。本願第一の発明は、これに水又は熱湯を添加することにより飲料又はスープ等の液状食品とすることができる。
【0011】
さらに、ホエイペプチドを含有する液状食品や飲料の溜飲後において全体に感じる渋みを低減させるためには、酢酸を含有させることが効果的であることを見出した。
すなわち、本願第二の発明は、
前記食品組成物がさらに、酢酸を含有する請求項1に記載の食品組成物、
である。
【0012】
また、苦味・渋味全体の強度を下げるためには茶エキスを添加することが有効である。
すなわち、本願第三の発明は、
前記食品組成物がさらに、茶エキスを含有する請求項1又は2に記載の食品組成物、
である。
【0013】
特に、これらの食品組成物はカップ内に収納し、水又は熱湯を注ぐことにより溶解させて喫食可能となるタイプに好適に利用することができる。
すなわち、本願第四の発明は、
請求項1ないし3のいずれか記載の食品組成物をカップ内に収納し、水又は熱湯を注ぐことにより喫食可能とした即席カップスープ又は飲料、
である。
【0014】
また、本食品組成物は溶解後においてもコンソメ風の透明系の液状食品(スープ)又は飲料を提供することができる。
すなわち、本願第五の発明は、
前記即席カップスープ又は飲料が、喫食可能状態において略透明の液性を呈するものである請求項4に記載の即席カップスープ又は飲料、
である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の食品組成物を溶解前の液状食品や飲料に含有させることで、水又は熱湯で溶解させた後の喫食時においてホエイペプチドの苦味・渋味を低減した透明系の液性を呈する液状食品や飲料を提供することができる。これによって、高タンパク・低カロリーのダイエット食品の商品バリエーションを広げ、消費者の商品選択の範囲を拡大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本願発明を実施するための最良の形態を記載するが、本発明はこの形態に限定されるものではない。
【0017】
・ホエイペプチド
本発明はホエイペプチドを含有させることを特徴とする。ホエイペプチドの原料としては、乳清たん白であるWPC(ホエイ・プロテイン・コンセントレート)、WPI(ホエイ・プロテイン・アイソレート)がある。ホエイペプチドは、これらの乳清たん白を酵素等で分解したものをいう。分解度は種々あるが分解度が低いと、乳臭が強くなり溶解後の液性が不透明(白濁)であるという傾向を有する。一方、分解度が高いと溶解時の液性が透明になるが、苦味・渋味が増加するという傾向を有する。このバランスより本願で用いるホエイペプチドは一般的には分解後の平均分子量が概ね5000以下であれば良い。また、平均分子量が概ね700〜1200程度であれば好ましい。
【0018】
ホエイペプチドは、その分解度にもよるが概ね平均分子量が概ね700〜1200程度であれば、喫食時の濃度が2重量%程度の低濃度であれば、さほど苦味・渋味を感じない。一方、2重量%以上であると苦味・渋みを徐々に強く感じるようになる。本発明による苦味・渋み抑制のための食品組成物が効果的にマスキングできるホエイペプチドの含量の範囲は、平均分子量が700〜1200程度である場合には、ホエイペプチドの含有量として喫食する際の液状食品又は飲料中の最終濃度が2重量%〜10重量%程度が好適である。
【0019】
ホエイペプチドが10重量%以上であると、苦味・渋味をマスキングするためには、後述する椎茸エキス・イノシン酸ナトリウム及びグアニル酸ナトリウム、さらに酢酸・茶エキスの添加量が多くなる場合がある。このため、これらの苦味・渋みの抑制物質自体の配合量も大きくなるため、これらの味が強くなり、液状食品又は飲料の喫食時の呈味に対する影響が大きくなる場合がある。
【0020】
・ホエイペプチドの苦味・渋味
本発明者らの検討の結果、ホエイペプチドの苦味・渋味の感じ方には次のような傾向があることがわかった。(市販製品:平均分子量:700〜1200)を熱湯に溶解させて5重量%の水溶液を調製し、これを溜飲した。苦味・渋味のプロセスは概ね立ち上がりの部分(以下、先味と略称する)と残存する持続する部分(以下、後味と略称する)になる傾向にある。苦味と渋味の概ねのイメージ図について図1に記載する。
【0021】
本発明においては、上記の苦味・渋味を効果的に抑制するための手段を求めた。ここで、ホエイペプチドの苦味・渋味を低減するために、それぞれのステップで苦味・渋味をマスキングする方法を採用した。検討の結果、立ち上がりの部分は、椎茸エキスが効果的であること、残存する部分は、イノシン酸ナトリウム及びグアニル酸ナトリウムの混合物が効果的であることが判明した。
【0022】
さらに、ホエイペプチドを飲み込んだ後の全体に感じる苦味については酢酸の持つ特有の味が効果的であることを見出した。加えて苦味・渋味全体の強度を下げるために、茶エキスを使用することが効果的であることを見出した。以下にこれらの各成分について説明する。
【0023】
・椎茸エキス
椎茸エキスは主として先味を効果的にマスキングすることができる。本発明にいう椎茸エキスとは一般には椎茸を水等で抽出したものを乾燥や濃縮したものをいう。椎茸エキスは粉末タイプについてはもちろんのこと、液状タイプでも利用することができる。椎茸エキスは、グアニル酸ナトリウムが含有されている点で後述する核酸と共通する部分があるが、グアニル酸ナトリウムとともに、椎茸の含有する香気成分・呈味成分が関係しているものと考えられる。
【0024】
椎茸エキスの効果については、図2に示す様なイメージであり、椎茸エキスは先味の苦味・渋味を覆うような強度の味を呈しているものと推定される。椎茸エキスの含有量は、ホエイペプチドの分解度(平均分子量)やその添加量によっても異なる。例えば、ホエイペプチド(市販製品:平均分子量:700〜1200)の喫食時の最終濃度として、3重量%〜7重量%程度含有する場合であれば、喫食時の液状食品又は飲料中に椎茸エキスがエキス分に換算して、0.075重量%〜0.175重量%程度の範囲内にあれば好適である。
【0025】
尚、上記エキス分とは(乾燥)椎茸を水等で抽出した後、当該抽出液を乾燥した場合に得られる固形分の重量をいうものとする。また、当該抽出液にデキストリン等の保形剤等を添加する場合は当該保形剤の重量を除いた固形分の重量をいうものとする。
【0026】
・イノシン酸ナトリウム及びグアニル酸ナトリウム
イノシン酸ナトリウム(IMP)及びグアニル酸ナトリウム(GMP)は主として後味を効果的にマスキングすることができる。イノシン酸ナトリウムとグアニル酸ナトリウムの重量比は概ね10:1〜1:10の範囲内であればよい。また、5:3〜3:5の範囲内であれば好ましい。イノシン酸ナトリウム及びグアニル酸の苦味・渋味の後味のマスキングについては、図3のイメージ図で説明される。イノシン酸ナトリウム及びグアニル酸ナトリウムは後味の苦味・渋味を覆うような強度の味を呈しているものと考えられる。
【0027】
イノシン酸ナトリウム及びグアニル酸ナトリウムの含有量は、ホエイペプチドの分解度(平均分子量)やその添加量によっても異なる。例えば、ホエイペプチド(平均分子量:700〜1200)を喫食時の最終濃度として、3重量%〜7重量%程度含有する場合であれば、喫食時の液状食品又は飲料中にイノシン酸ナトリウムとグアニル酸ナトリウムを加算した濃度が0.2重量%〜0.55重量%程度の範囲内にあれば好適である。
【0028】
・酢酸
酢酸は、飲溜後の全体に感じる軽い渋みを緩和するために用いる。酢酸特有の呈味が役立っているものと推定される。使用する酢酸としては、液状の酢酸はもちろんのこと、粉末状の酢酸も利用することができる。酢酸の含有量は、ホエイペプチドの分解度(平均分子量)やその添加量によっても異なる。例えば、ホエイペプチド(平均分子量:700〜1200)を喫食時の最終濃度として、3重量%〜7重量%程度含有する場合であれば、喫食時の液状食品又は飲料中に酢酸の濃度が0.05重量%〜0.35重量%程度の範囲内にあれば好適である。
【0029】
・茶エキス
茶エキスは、苦味・渋味全体の強度を下げるために用いる。茶エキスとは、一般には原料となる茶を水等で抽出し、これを乾燥や濃縮したものをいう。原料としては緑茶、ウーロン茶、紅茶等の種類を原料とすることができる。茶エキス自体も渋みを有するが、添加量が少ないとペプチドの渋みを効果的に低減し、茶自体の渋みはほとんど抑えられる。茶エキスについては、特に緑茶の抽出物が苦味・渋味を抑制し、味に影響を与えないので好ましい。
【0030】
茶エキスの含有量は、ホエイペプチドの分解度(平均分子量)やその添加量によっても異なる。例えば、ホエイペプチド(平均分子量:700〜1200)を喫食時の最終濃度として、3重量%〜7重量%程度含有する場合であれば、喫食時の液状食品又は飲料中に茶エキス分の濃度が0.005重量%〜0.03重量%程度の範囲内にあれば好適である。尚、上記茶エキス分とは、茶を水等で抽出した後、当該抽出液を乾燥した場合に得られる固形分の重量をいうものとする。
【0031】
・他の成分について
本発明においては、例えば、液状食品としての即席カップスープであれば、本発明の構成成分以外に他の種々の原材料や具材となる成分を含有する。すなわち、椎茸エキス、イノシン酸ナトリウム・グアニル酸ナトリウム、酢酸、茶エキスの単独以外に、飲料や液状食品に付与したい味に応じた他の種々の原材料や具材となる成分を添加することができる。この場合、これらの他の成分が椎茸エキス、イノシン酸ナトリウム・グアニル酸ナトリウム、酢酸、茶エキスをその一部として含有している場合には、これらの他の成分も含めて本発明の食品組成物を構成する。
【0032】
・液状食品の種類
本発明にいう液状食品としてはスープが挙げられる。スープの種類については、透明系のスープにあるという点以外は特に限定されず、和風・洋風・中華風等の様々な種類のタイプが可能である。すなわち、本発明の食品組成物をベースとしてこれに好みの味に寄与する他の成分を加えることで様々なバリエーションのスープとすることができる。具体的には、ロシア風のボルシチ、中華風のサンラータン又はタイ風のトムヤンクン等が挙げられる。尚、液状食品のスープとしては、熱湯で溶解する即席タイプのものに限らず、液状状態のスープをパウチに封入したものや、レトルトパウチに封入して殺菌処理して長期保存可能としたものも可能である。
【0033】
・飲料の種類
本願発明は、飲料にも利用できる。具体的には、高タンパク含量でありながら透明な液性となるダイエット飲料等として利用することができる。
【0034】
・ダイエット用の液状食品又は飲料
本発明の食品組成物を利用することで、ダイエット用の高タンパク低カロリー透明系の液状食品(スープ)又は飲料が可能となる。
すなわち、一般に食事代替食品として利用する場合には、成人が1日に摂取推定必要なタンパク量を60gとした場合、総タンパク量として20g程度を確保することが必要となるが、本発明の食品組成物を利用すれば、これらのタンパク量の大半を補うことができる。
【0035】
具体的には、液状食品であるスープであれば、喫食時の液性を透明としつつホエイペプチドとして、必要なタンパク量の大半を確保することができる。また、味等の関係から本発明の食品組成物のみではタンパク量として20gに不足する場合には、不足するタンパク量については、ホエイペプチドとしてではなく、苦味・渋味は少ないがアミノ酸スコアの劣るコラーゲンペプチド等の他のペプチドを用いたり、肉・魚・大豆タンパク質等の具材として補うことができる。このように工夫することで、総カロリーを低く保ったまま摂取できる総タンパク量として20g程度を確保することができる。
【0036】
・本発明の食品組成物の利用形態
本発明はスープや飲料等の液状食品として広く利用することができる。特に、熱湯を注湯するだけで喫食できる即席スープの原料組成物として好適に利用できる。具体的には本発明は注湯前の原料として構成されていればよく、喫食時の液状状態において椎茸エキス、イノシン酸ナトリウム・グアニル酸ナトリウム、又は、これにさらに酢酸、茶エキスを含有する組成となるように調製されていればよい。また、その他の添加物として小麦粉、塩、水の他に種々の添加剤を用いることができる。具体的には、アルコール、酢酸、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウムなどの保存料や酸味料を添加することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の食品組成物をスープ等の液状食品や飲料の原料として利用することで、従来まで存在しなかった透明系の液性を有しつつ、高タンパク・低カロリーのダイエット用の液状食品や飲料を提供することができる。
【実施例】
【0038】
以下、本願発明の実施例(試験例)を示すが、本願発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
<試験例1> ホエイペプチドの苦味・渋味の低減物質の検索
ホエイペプチドの苦味を低減させるために、各種メーカーの添加物等を試験した。試験した添加物の一部について以下に記載する。このように種々の添加物等を試験することで、ホエイペプチド苦味・渋味をマスキングする物質の検索を行った。試験方法は以下のように行った。ホエイペプチド(市販製品:平均分子量:700〜1200)に下記の各成分をホエイペプチド1重量部に対して、0.01〜0.1重量部となるように添加し、ホエイペプチドの濃度が5重量%となるように熱湯に溶解し、攪拌後に溜飲した。
マスキングの効果については、以下の表1で示す。尚、マスキングの評価は以下の基準で行った。
【0040】
〇:改善効果あり→先味、後味等のいずれかの面で添加しない場合と比較して苦味又は渋味をマスキングする有意な差があったもの
△:改善効果多少あり→先味、後味等のいずれかの面で添加しない場合と比較して苦味又は渋味をマスキングする有意な差があるが弱いもの
×:改善効果なし→先味、後味等のいずれの面で添加しない場合と比較して苦味又は渋味をマスキングする有意な差がなかったもの
【0041】
【表1】

次に表1の続きを表2に記載する。
【0042】
【表2】


強い甘み、強い酸味以外のマスキングにおいて、苦味抑制物質として知られている添加物でもホエイペプチドにおいて有意な差は認められない場合があった。また、1種類の苦味低減物質ではペプチドの苦味・渋みを完全に除去することはできなかった。このため、先味・後味の各段階において組み合わせて苦味・渋味を抑制する方法が必要であることが判明した。
【0043】
<試験例2> 苦味・渋味低減のための濃度範囲の検討
苦味・渋味の抑制に寄与する濃度範囲について検討するために以下の実験を行った。ホエイペプチド(市販製品:平均分子量:700〜1200)の5重量%水溶液の苦味・渋味低減のために、椎茸エキス(市販製品)、イノシン酸ナトリウム及びグアニル酸ナトリウム(市販製品 IMP:GMP=1:1の配合割合)、酢酸(市販製品)、緑茶エキス(市販製品)を予め添加しておき、それぞれの成分について好ましい濃度範囲を検討した。尚、椎茸エキス・緑茶エキスについてはエキス分に換算した値を示す。
【0044】
【表3】

尚、効果の評価に関しては、
マスキングの程度と添加する各成分の呈する味の2点からおこなった。尚、各評価は以下の基準による。〇(良好)、△(やや良好)、×(不良)の3段階で行った。


(1)椎茸エキス
【0045】
【表4】

マスキングの効果は、喫食時の最終濃度として、椎茸エキスが0.075重量%〜0.175重量%程度の範囲内にあれば好適に先味をマスキングできることが判明した。

(2)イノシン酸ナトリウム及びグアニル酸ナトリウム
【0046】
【表5】

マスキングの効果は、喫食時の最終濃度として、核酸が0.2重量%〜0.55重量%程度の範囲内にあれば好適に後味をマスキングできることが判明した。

(3)酢酸
【0047】
【表6】

マスキングの効果は、喫食時の最終濃度として、酢酸が0.05重量%〜0.35重量%程度の範囲内にあれば、飲溜後の全体に感じる軽い渋みを好適に緩和できることが判明した。

(4)緑茶エキス
【0048】
【表7】


マスキングの効果は、喫食時の最終濃度として、緑茶エキスが0.005重量%〜0.03重量%程度の範囲内にあれば、苦味・渋味全体の強度を好適に下げることができることが判明した。
【0049】
また、上述の椎茸エキス、イノシン酸ナトリウム及びグアニル酸ナトリウム、酢酸、緑茶エキスのうち、椎茸エキス・イノシン酸ナトリウム及びグアニル酸ナトリウムの混合品として上述の試験を行った結果、先味・後味の両方を効果的にマスキングすることができることを確認した。また、これにさらに酢酸を加えることでさらに飲溜後の全体に感じる軽い渋みを好適に緩和できることが判明した。一方、緑茶エキスを加えることで苦味・渋味全体の強度を好適に下げることができることを確認した。また、酢酸と緑茶エキスの両方を加えることで飲溜後の全体に感じる軽い渋みと苦味・渋味全体の強度の両方を好適に低減させることができることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】ホエイペプチドの苦味と渋味のイメージ図である。
【図2】椎茸エキスによる苦味・渋味のマスキングイメージ図である。
【図3】イノシン酸ナトリウム及びグアニル酸ナトリウムによる苦味・渋味のマスキングイメージ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホエイペプチドと、
椎茸エキスと、
イノシン酸ナトリウム及びグアニル酸ナトリウムを含有する、
ホエイペプチドの苦味・渋味が低減された液状食品又は飲料のための食品組成物。
【請求項2】
前記食品組成物がさらに、酢酸を含有する請求項1に記載の食品組成物。
【請求項3】
前記食品組成物がさらに、茶エキスを含有する請求項1又は2に記載の食品組成物。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか記載の食品組成物をカップ内に収納し、水又は熱湯を注ぐことにより喫食可能とした即席カップスープ又は飲料。
【請求項5】
前記即席カップスープ又は飲料が、喫食可能状態において略透明の液性を呈するものである請求項4に記載の即席カップスープ又は飲料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−261299(P2009−261299A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113795(P2008−113795)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000226976)日清食品ホールディングス株式会社 (127)
【Fターム(参考)】