説明

ペルヒドロラーゼの安定化

少なくとも1つのCE−7エステラーゼ、少なくとも1つのオリゴ糖賦形剤、および任意選択的に少なくとも1つの界面活性剤の噴霧乾燥調合物を含む酵素粉末が本明細書に開示される。前述の酵素粉末を使用するカルボン酸エステルからのペルオキシカルボン酸の生成方法もまた本明細書に開示される。さらに、本明細書に記載される方法によって生成する過酸を含む消毒およびランドリーケア調合物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、それらのそれぞれが全体を本明細書に参照により援用される、それぞれ2008年10月3日出願の、米国仮特許出願第61/102,505号明細書、同第61/102,512号明細書、同第61/102,514号明細書、同第61/102,520号明細書、同第61/102,531号明細書、および同第61/102,539号明細書の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、酵素的過酸合成およびその場酵素触媒作用の分野に関する。少なくとも1つのペルオキシカルボン酸が、表面の消毒または殺菌、医療機器滅菌、食品加工設備滅菌のために有効であり、かつ、漂白、防汚、脱臭、消毒または殺菌などの織物およびランドリーケア用途での使用に好適であるような十分な濃度で生成する。
【背景技術】
【0003】
過酸組成物は、有効な抗菌剤であると報告されてきた。硬表面、肉製品、生きている植物組織、および望ましくない微生物増殖に抗する医療装置をきれいにする、消毒する、および/または殺菌するための方法が記載されてきた(例えば、特許文献1〜5)。過酸はまた洗濯洗剤用途向けの漂白組成物を調製するのに有用であると報告されてきた(特許文献6〜8)。
【0004】
過酸は、カルボン酸と過酸化水素との化学反応によって製造することができる(非特許文献1を参照されたい)。この反応は通常、濃硫酸などの、強い無機酸によって触媒される。過酸化水素とカルボン酸との反応は平衡反応であり、過酸の生成は、過剰濃度の過酸化物および/またはカルボン酸の使用によって、または水の除去によって有利に働く。
【0005】
幾つかの過酸ベースの消毒剤または漂白剤は、過酸、過酸化水素、および相当するカルボン酸の平衡混合物からなる。これらの市販されている過酸クリーニングシステムの一欠点は、時間とともに溶液中で多くの場合不安定であることである。安定性問題を克服するための一方法は、長期間個別に安定である多反応成分を組み合わせることによって使用前に過酸を発生させることである。好ましくは、個々の反応成分は、貯蔵するのが容易であり、取り扱うのに比較的安全であり、かつ、混合すると有効濃度の過酸を迅速に生成することができるものである。
【0006】
炭水化物エステラーゼのCE−7族はペルヒドロラーゼ活性を有することが最近報告された。これらの「ペルヒドロラーゼ」酵素は、過酸素源と組み合わせられたときに様々なカルボン酸エステル基質から過酸を生成するために特に有効であることが実証された(それぞれが全体を参照により本明細書に援用される、DiCosimoらに付与される特許文献9ならびに10および11を参照されたい)。炭水化物エステラーゼのCE−7族の幾つかのメンバーは、いったん反応成分が混合されたら、アルコール、ジオール、およびグリセロールのアセチルエステルから1分で4000〜5000ppm、5分〜30分で9000ppmまでの過酢酸を生成するのに十分なペルヒドロリシス活性を有することが実証された(特許文献12)。
【0007】
DiCosimoらに付与される特許文献13で記載されている酵素的過酸発生システムは典型的には、過酸溶液が必要とされるまで別々のままである多反応成分の使用をベースとしている。このアプローチの使用は、多くの過酸ベースの消毒剤および漂白剤の貯蔵に関連した過酸不安定性問題を克服する。しかしながら、CE−7炭水化物エステラーゼを含む多成分調合物を使用するときペルヒドロラーゼ活性の長期安定性を提供する特異的な調合物はまだ取り組まれないままである。有機液体または2未満のlog P(すなわち、Pが[溶質]オクタノール/[溶質]に等しい、オクタノールと水との間の物質の分配係数の対数)を有する溶媒中に貯蔵されるときにペルヒドロリシス活性を有するCE−7酵素の長期貯蔵安定性が特に関心事である。DiCosimoらによって先に記載された有機エステル基質の幾つかは、2未満のlog P値を有する。
【0008】
有機液体または溶媒は、酵素が直接有機液体または溶媒中に懸濁されるとき、または混和性の有機/水性単一相液体または溶媒が用いられるときのどちらかに、酵素の活性に有害であり得る。酵素活性および構造への有機溶媒の影響をレビューしている2つの文献刊行物は、非特許文献2および3である。上掲のCowanおよびPlantは、(87ページに)技術は概ね有機相システムで細胞内酵素を安定化させるためにlog P≦2を有する有機溶媒を使用することにほとんどまたは全く価値がないことを認識していると指摘している。2〜4のlog Pを有する有機溶媒は、酵素安定性に依存してケース−バイ−ケースで使用することができ、log P>4を有するものは一般に、有機相システムで有用である。
【0009】
CowanおよびPlant(上記を参照)は、(91ページに)単一相有機−水性溶媒に溶解された酵素の直接暴露の影響が溶媒濃度、溶媒/酵素表面基相互作用、および溶媒/酵素水和殻相互作用に依存するとさらに指摘している。溶媒のlog P値は、溶媒が水相と完全に混和して単一相を生成するように十分に低くなければならないので、低いlog Pの有機溶媒を含有する単一相有機−水性溶媒は通常、低い有機溶媒濃度用途でを除いて酵素安定性に負の影響を有する。トリアセチンは、エタノール(log P −0.26)およびイソプロパノール(log P 0.15)(Cowan and Plant)のそれに類似の、0.25のlog Pを有すると報告されており(非特許文献4);それ故トリアセチン中の酵素粉末の貯蔵は、log P<2(例えば、シクロヘキサノン、log P=0.94(Cowan and Plant);1,2−プロパンジオール、log P=−1.41(Gunningら);1,3−プロパンジオール、log P=−1.3(非特許文献5;ジエチレングリコールブチルエーテル、log P=0.56(非特許文献6;トリエチレングリコール、log P=−1.75(非特許文献7)の追加の共溶媒の使用がそうであるように、酵素活性の受け入れられない損失をもたらすと予期されるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,545,047号明細書
【特許文献2】米国特許第6,183,807号明細書
【特許文献3】米国特許第6,518,307号明細書
【特許文献4】米国特許同第5,683,724号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/0026846号明細書
【特許文献6】米国特許第3,974,082号明細書
【特許文献7】米国特許第5,296,161号明細書
【特許文献8】米国特許第5,364,554号明細書
【特許文献9】国際公開第2007/070609号パンフレット
【特許文献10】米国特許出願公開第2008/0176299号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2008/176783号明細書
【特許文献12】DiCosimoら、米国特許出願公開第2009/0005590号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2009/0005590号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Organic Peroxides,Daniel Swern,ed.,Vol.1,pp 313−516;Wiley Interscience,New York,1971
【非特許文献2】C.Laane et al.,Biotechnol.Bioeng.30:81−87(1987)
【非特許文献3】Cowan,D.A.and Plant,A.,Biocatalysis in Organic Phase Systems.,Ch.7 in Biocatalysis at Extreme Temperatures、Kelly,R.W.W.and Adams,M.eds.,Amer.Chem.Soc.Symposium Series,Oxford University Press,New York,NY,pp 86−107(1992)
【非特許文献4】Y.M.Gunningら,J.Agric.Food Chem.48:395−399(2000)
【非特許文献5】S−J.Kuoら,J.Am.Oil Chem.Soc.73:1427〜1433(1996)
【非特許文献6】N.Funasakiら,J.Phys.Chem.88:5786〜5790(1984)
【非特許文献7】L.Braeken,ら,ChemPhysChem 6:1606−1612(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、解決されるべき問題は、酵素がカルボン酸エステル基質との混合物で貯蔵されるときでさえ顕著なペルヒドロリシス活性を保持する、過酸発生酵素の混合物を、過酸生成のために用いられる有機エステル基質中に使用する製品を調合することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
述べられた問題は、CE−7酵素として構造上分類され、ペルヒドロリシス活性を有する少なくとも1つの酵素を含む水性調合物の噴霧乾燥方法であって、その調合物が、噴霧乾燥調合物(酵素粉末)が過酸生成のために用いられるカルボン酸エステル基質と組み合わせられるときにペルヒドロラーゼ活性を安定化させるオリゴ糖賦形剤をさらに含む方法の発見によって解決された。
【0014】
一態様では、酵素およびカルボン酸エステルからなる調合物中に存在するときに前記酵素のペルヒドロリシス活性を安定化させるための方法であって、
(a)CE−7酵素として構造上分類され、ペルヒドロリシス活性を有する少なくとも1つの酵素、少なくとも1つのオリゴ糖賦形剤、および任意選択的に少なくとも1つの界面活性剤を含む水性調合物を提供する工程と;
(b)(a)の水性調合物を噴霧乾燥して、カルボン酸エステルおよび酵素粉末からなる調合物中に存在するときに前記少なくとも1つの酵素のペルヒドロリシス活性を実質的に保持する前記酵素粉末を製造する工程と
を含む方法が提供される。
【0015】
別の態様は、CE−7酵素として構造上分類され、ペルヒドロリシス活性を有する少なくとも1つの酵素および少なくとも1つのオリゴ糖賦形剤、ならびに任意選択的に少なくとも1つの界面活性剤の噴霧乾燥調合物を含む酵素粉末であって、カルボン酸エステルおよび酵素粉末からなる調合物中に存在するときに少なくとも1つの酵素のペルヒドロリシス活性を実質的に保持する酵素粉末についてである。
【0016】
さらなる態様は、カルボン酸エステルと混合された上に議論された酵素粉末を含む調合物についてである。別の態様では、調合物は、モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン、モノプロピオニン、ジプロピオニン、トリプロピオニン、モノブチリン、ジブチリン、トリブチリン、およびそれらの混合物からなる群から選択されるカルボン酸エステルと混合された酵素粉末を含む。
【0017】
追加の態様は、
(a)CE−7酵素として構造上分類され、ペルヒドロリシス活性を有する少なくとも1つの酵素、少なくとも1つのオリゴ糖賦形剤、および任意選択的に少なくとも1つの界面活性剤を含む水性調合物を提供する工程と;
(b)(a)の水性調合物を噴霧乾燥して酵素粉末を製造する工程と;
(c)(b)の酵素粉末を、カルボン酸エステルおよび過酸素源を含む水溶液と組み合わせる工程と
を含む消毒調合物の製造方法についてである。
【0018】
別の態様は、
(a)(1)(i)上に議論された酵素粉末;および
(ii)カルボン酸エステル
を含む調合物と;
(2)過酸素源と
を含む、反応成分一式を提供する工程と;
(b)前記反応成分を好適な水性反応条件下に組み合わせ、それによってペルオキシカルボン酸が生成する工程と;
を含むカルボン酸エステルからのペルオキシカルボン酸の生成方法についてである。
【0019】
さらなる態様は、酵素的に生成するペルオキシカルボン酸組成物を使用する硬表面または無生物物体の消毒または殺菌方法であって、
(a)(1)(i)上に議論された酵素粉末;および
(ii)カルボン酸エステル
を含む調合物;ならびに
(2)過酸素源
を含む、反応成分一式を提供する工程と;
(b)前記反応成分を好適な水性反応条件下に組み合わせ、それによってペルオキシカルボン酸生成物が形成される工程と;
(c)任意選択的に前記ペルオキシカルボン酸生成物を希釈する工程と;
(d)前記硬表面または無生物物体を工程(b)または工程(c)で生成したペルオキシカルボン酸と接触させ、それによって前記表面または前記無生物物体が消毒される工程と
を含む方法についてである。
【0020】
さらなる態様は、酵素的に生成したペルオキシカルボン酸組成物を使用する漂白、汚れ除去、臭い低減、殺菌または消毒のための衣料品もしくは織物の処理方法であって、
(a)(1)(i)上に議論された酵素粉末;および
(ii)カルボン酸エステル
を含む調合物と;
(2)過酸素源と
を含む、反応成分一式を提供する工程と;
(b)前記反応成分を好適な水性反応条件下に組み合わせ、それによってペルオキシカルボン酸生成物が形成される工程と;
(c)任意選択的に前記ペルオキシカルボン酸生成物を希釈する工程と;
(d)前記衣料品もしくは織物を工程(b)または工程(c)で生成したペルオキシカルボン酸と接触させる工程と
を含み、
ここで、前記衣料品もしくは織物が防汚され、脱臭され、消毒され、漂白されるか、殺菌されるかまたはそれらの組み合わせである方法についてである。
【0021】
生物学的配列の簡単な説明
以下の配列は、37C.F.R.§§1.821−1.825(「Requirements for Patent Applications Containing Nucleotide Sequences and/or Amino Acid Sequence Disclosures−the Sequence Rules」)に従っており、World Intellectual Property Organization(WIPO)Standard ST.25(1998)およびEuropean Patent Convention(EPC)およびPatent Cooperation Treaty(PCT)Rules 5.2 and 49.5(a−bis)の配列表規定、ならびにAdministrative InstructionsのSection 208およびAnnex Cと一致している。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列データについて用いられる記号およびフォーマットは、37C.F.R.§1.822に記述されている規則に従う。
【0022】
配列番号1は、枯草菌(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)31954TMからのセファロスポリンCデアセチラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0023】
配列番号2は、枯草菌(B.subtilis)ATCC(登録商標)6633TMからのセファロスポリンCデアセチラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0024】
配列番号3は、B.リケニホルミス(B.licheniformis)ATCC(登録商標)14580TMからのセファロスポリンCデアセチラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0025】
配列番号4は、B.プミラス(B.pumilus)PS213からのアセチルキシランエステラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0026】
配列番号5は、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)ATCC(登録商標)27405TMからのアセチルキシランエステラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0027】
配列番号6は、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)からのアセチルキシランエステラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0028】
配列番号7は、サーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)MSB8からのアセチルキシランエステラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0029】
配列番号8は、サーモアナエロバクテリウム種(Thermoanaerobacterium sp.)JW/SL YS485からのアセチルキシランエステラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0030】
配列番号9は、バチルス種(Bacillus sp.)NRRL B−14911からのセファロスポリンCデアセチラーゼの推定アミノ酸配列である。GENBANK(登録商標)Accession番号ZP_01168674に報告されているようなバチルス種(Bacillus sp.)NRRL B−14911からのセファロスポリンCデアセチラーゼをエンコードする核酸配列は、他のセファロスポリンCデアセチラーゼとの配列アラインメントおよび報告される長さ(340アミノ酸)対他のCAH酵素の観察される長さ(典型的には長さが318〜325アミノ酸;参照により本明細書に援用される、「ENZYMATIC PERACID PRODUCTION USING A COSOLVENT」という表題の代理人整理番号CL4205 US NAのもとでの共同所有される、共同出願された、そして同時係属の米国特許出願を参照されたい)の比較に基づいて間違っているらしい15アミノ酸N−末端付加をエンコードするように思われることが指摘されるべきである。従って、バチルス種(Bacillus sp.)NRRL B−14911からのセファロスポリンCデアセチラーゼ配列について本明細書で報告される推定アミノ酸配列は、GENBANK(登録商標)Accession番号ZP_01168674のもとで報告されているようなN−末端15アミノ酸を含まない。
【0031】
配列番号10は、バチルス・ハロデュランス(Bacillus halodurans)C−125からのセファロスポリンCデアセチラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0032】
配列番号11は、バチルス・クラウジ(Bacillus clausii)KSM−K16からのセファロスポリンCデアセチラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0033】
配列番号12は、枯草菌(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)29233TMセファロスポリンCデアセチラーゼ(CAH)の推定アミノ酸配列である。
【0034】
配列番号13は、サーモアネアロバクテリウム・サッカロリチクム(Thermoanearobacterium saccharolyticum)セファロスポリンCデアセチラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0035】
配列番号14は、サーモトガ・レッチンガエ(Thermotoga lettingae)アセチルキシランエステラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0036】
配列番号15は、サーモトガ・ペトロフィラ(Thermotoga petrophila)アセチルキシランエステラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0037】
配列番号16は、本明細書で「RQ2(a)」と称されるサーモトガ種(Thermotoga sp.)RQ2からの第1アセチルキシランエステラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0038】
配列番号17は、本明細書で「RQ2(b)」と称されるサーモトガ種(Thermotoga sp.)RQ2からの第2アセチルキシランエステラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0039】
配列番号18は、配列番号1のアミノ酸残基118〜299を包含する領域のアミノ酸配列である。
【0040】
配列番号19は、共同所有され、共同出願された、そして同時係属の米国特許出願代理人整理番号CL4392 US NA(全体を参照により本明細書に援用される)からのサーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)アセチルキシランエステラーゼ変異株の推定アミノ酸配列であり、ここで、位置277でのXaa残基は、Ala、Val、Ser、またはThrである。
【0041】
配列番号20は、共同所有される、共同出願された、そして同時係属の米国特許出願代理人整理番号CL4392 US NAからのサーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)MSB8アセチルキシランエステラーゼ変異株の推定アミノ酸配列であり、ここで、位置277でのXaa残基は、Ala、Val、Ser、またはThrである。
【0042】
配列番号21は、共同所有される、共同出願された、そして同時係属の米国特許出願代理人整理番号CL4392 US NAからのサーモトガ・レッチンガエ(Thermotoga lettingae)アセチルキシランエステラーゼ変異株の推定アミノ酸配列であり、ここで、位置277でのXaa残基は、Ala、Val、Ser、またはThrである。
【0043】
配列番号22は、共同所有される、共同出願された、そして同時係属の米国特許出願代理人整理番号CL4392 US NAからのサーモトガ・ペトロフィラ(Thermotoga petrophila)アセチルキシランエステラーゼ変異株の推定アミノ酸配列であり、ここで、位置277でのXaa残基は、Ala、Val、Ser、またはThrである。
【0044】
配列番号23は、共同所有される、共同出願された、そして同時係属の米国特許出願代理人整理番号CL4392 US NAからの「RQ2(a)」に由来するサーモトガ種(Thermotoga sp.)RQ2アセチルキシランエステラーゼ変異株の推定アミノ酸配列であり、ここで、位置277でのXaa残基は、Ala、Val、Ser、またはThrである。
【0045】
配列番号24は、共同所有される、共同出願された、そして同時係属の米国特許出願代理人整理番号CL4392 US NAからの「RQ2(b)」に由来するサーモトガ種(Thermotoga sp.)RQ2アセチルキシランエステラーゼ変異株の推定アミノ酸配列であり、ここで、位置278でのXaa残基は、Ala、Val、Ser、またはThrである。
【0046】
配列番号25は、サーモアナエロバクテリウム種(Thermoanaerobacterium sp.)JW/SL YS485アセチルキシランエステラーゼからの推定アミノ酸配列である。
【0047】
配列番号26は、ストレプトミセス・カナマイセティカス(Streptomyces kanamyceticus)からのカナマイシン耐性遺伝子(kan)のコーディング領域である。
【0048】
配列番号27は、カナマイシン耐性遺伝子を含有する、プラスミドpKD13である。
【0049】
配列番号28は、プラスミドpKD13からのkatGをクローニングするために使用される順方向プライマー(forward primer)である。
【0050】
配列番号29は、プラスミドpKD13からのkatGをクローニングするために使用される逆方向プライマー(reverse primer)である。
【0051】
配列番号30は、配列番号28および配列番号29のプライマーを使用するプラスミドpKD13からのkatG増幅のPCR生成物である。
【0052】
配列番号31は、カタラーゼ−ペルオキシダーゼ遺伝子(katG)のコーディング領域である。
【0053】
配列番号32は、katGの推定アミノ酸配列である。
【0054】
配列番号33は、λ−Redリコンビナーゼ遺伝子を含有する、プラスミドpKD46である。
【0055】
配列番号34は、katGの崩壊を確認するために使用される順方向プライマーである。
【0056】
配列番号35は、katGの崩壊を確認するために使用される逆方向プライマーである。
【0057】
配列番号36は、FLPリコンビナーゼを含有する、温度感受性プラスミドpCP20である。
【0058】
配列番号37は、プラスミドpKD13からのkatEをクローニングするために使用される順方向プライマーである。
【0059】
配列番号38は、プラスミドpKD13からのkatEをクローニングするために使用される逆方向プライマーである。
【0060】
配列番号39は、配列番号37および配列番号38のプライマーを使用するプラスミドpKD13からのkatE増幅のPCR生成物である。
【0061】
配列番号40は、カタラーゼHPII遺伝子(katE)のコーディング領域である。
【0062】
配列番号41は、katEの推定アミノ酸配列である。
【0063】
配列番号42は、katEの崩壊を確認するために使用される順方向プライマーである。
【0064】
配列番号43は、katEの崩壊を確認するために使用される逆方向プライマーである。
【0065】
配列番号44は、GENBANK(登録商標)(登録番号AE000512)に報告されているようなサーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)からのアセチルキシランエステラーゼをエンコードする遺伝子のコーディング領域である。
【0066】
配列番号45は、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)からのアセチルキシランエステラーゼ遺伝子を増幅するために使用される順方向プライマーである。
【0067】
配列番号46は、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)からのアセチルキシランエステラーゼ遺伝子を増幅するために使用される逆方向プライマーである。
【0068】
配列番号47は、配列番号45および配列番号46のプライマーを使用するアセチルキシランエステラーゼ増幅のPCR生成物である。
【0069】
配列番号48は、GENBANK(登録商標)(登録番号NP_227893.1)に報告されているようなサーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)MSB8からのアセチルキシランエステラーゼをエンコードする遺伝子である。
【0070】
配列番号49は、サーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)からのアセチルキシランエステラーゼ遺伝子を増幅するために使用される順方向プライマーである。
【0071】
配列番号50は、サーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)からのアセチルキシランエステラーゼ遺伝子を増幅するために使用される逆方向プライマーである。
【0072】
配列番号51は、配列番号49および配列番号50のプライマーを使用するアセチルキシランエステラーゼ増幅のPCR生成物である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
ペルヒドロリシス活性を有する少なくとも1つのCE−7炭水化物エステラーゼ、少なくとも1つのオリゴ糖賦形剤、および任意選択的に少なくとも1つの界面活性剤の噴霧乾燥調合物を含む酵素粉末が本明細書に開示される。前述の酵素粉末を使用するカルボン酸エステルからのペルオキシカルボン酸の生成方法もまた本明細書に開示される。さらに、本明細書に記載される方法によって生成する過酸を含む消毒調合物が提供される。
【0074】
本開示では、多数の用語および省略形が用いられる。以下の定義が、特に明確に記載しない限り適用される。
【0075】
本明細書で用いるところでは、本発明の要素または成分に先行する冠詞「a」、「an」、および「the」は、要素または成分の事例(すなわち、発生)の数に関して非制限的であることを意図される。それ故「a」、「an」、および「the」は、1つまたは少なくとも1つを含むと読まれるべきであり、要素または成分の単数語形はまた、数が単数形であることを明確に意図されない限り複数形も含む。
【0076】
本明細書で用いるところでは、用語「含む(comprising)」は、述べられる特徴、整数、工程、または成分の存在を特許請求の範囲に言及されるように意味するが、それは、1つ以上の他の特徴、整数、工程、成分またはそれらのグループの存在または追加を排除しない。用語「含む」は、用語「本質的にからなる」および「からなる」によって包含される実施形態を含むことを意図される。同様に、用語「本質的にからなる」は、用語「からなる」によって包含される実施形態を含むことを意図される。
【0077】
本明細書で用いるところでは、用いられる原料または反応剤の量を修飾する用語「約」は、例えば、現実の世界でコンセントレートの製造または溶液の使用のために用いられる典型的な測定および液体ハンドリング手順によって;これらの手順における不注意な誤差によって;組成物を製造するまたは方法を実施するために用いられる原料の製造、源、または純度における差などによって起こり得る数量の変動に関する。用語「約」はまた、特定の初期混合物から生じる組成物について異なる平衡条件のために異なる量を包含する。用語「約」で修飾されていてもされていなくても、特許請求の範囲はそれらの量の等価物を含む。
【0078】
存在する場合、全ての範囲は包含的であり、合体できる。例えば、「1〜5」の範囲が列挙されるとき、この列挙される範囲は、範囲「1〜4」、「1〜3」、「1〜2」、「1〜2および4〜5」、「1〜3および5」などを含むと解釈されるべきである。
【0079】
本明細書で用いるところでは、用語「基質」、「好適な基質」、および「カルボン酸エステル基質」は同じ意味で具体的には:
(a)構造
[X]
(式中、
Xは、式RC(O)Oのエステル基であり;
は、ヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基で任意選択的に置換された、C1〜C7の線状、分岐または環式ヒドロカルビル部分であり、ここで、Rは、RがC2〜C7である場合には1つ以上のエーテル結合を任意選択的に含み;
は、ヒドロキシル基で任意選択的に置換されたC1〜C6の線状、分岐または環式ヒドロカルビル部分であり、ここで、R中の各炭素原子は個別に、1つ以下のヒドロキシル基または1つ以下のエステル基を含み、かつ、Rは1つ以上のエーテル結合を任意選択的に含み;
mは、1からR中の炭素原子の数までである)
を有する1つ以上のエステルであって、
25℃で少なくとも5ppmの水への溶解度を有するエステル;または
(b)構造
【化1】

(式中、Rは、ヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で任意選択的に置換されたC1〜C7の直鎖または分岐鎖のアルキルであり、RおよびRは個別にHまたはRC(O)である)
を有する1つ以上のグリセリド;または
(c)式
【化2】

(式中、Rは、ヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で任意選択的に置換されたC1〜C7の直鎖または分岐鎖のアルキルであり、Rは、C1〜C10の直鎖または分岐鎖のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CHCHO)、もしくは(CHCH(CH)−O)Hであり、nは1〜10である)
1つ以上のエステル;または
(d)1つ以上のアセチル化単糖類、アセチル化二糖類、もしくはアセチル化多糖類;または
(e)(a)〜(d)の任意の組み合わせ
を意味する。
【0080】
前記カルボン酸エステル基質の例には、モノアセチン;トリアセチン;モノプロピオニン;ジプロオピオニン;トリプロピオニン;モノブチリン;ジブチリン;トリブチリン;グルコースペンタアセテート;キシローステトラアセテート;アセチル化キシラン;アセチル化キシラン断片;β−D−リボフラノース−1,2,3,5−テトラアセテート;トリ−O−アセチル−D−ガラクタール;トリ−O−アセチル−グルカール;プロピレングリコールジアセテート;エチレングリコールジアセテート;1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,5−ペンタンジオール、1,6−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、またはそれらの任意の組み合わせのモノエステルまたはジエステルが挙げられてもよい。
【0081】
本明細書で用いるところでは、用語「過酸」は、ペルオキシ酸、ペルオキシカルボン酸、ペルオキシ酸、過カルボン酸およびペルオキソ酸(peroxoic acid)と同じ意味である。
【0082】
本明細書で用いるところでは、用語「過酢酸」は、「PAA」と略記され、ペルオキシ酢酸、エタンペルオキソイック酸およびCAS登録番号79−21−0の全ての他の同義語と同じ意味である。
【0083】
本明細書で用いるところでは、用語「モノアセチン」は、グリセロールモノアセテート、グリセリンモノアセテート、およびグリセリルモノアセテートと同じ意味である。
【0084】
本明細書で用いるところでは、用語「ジアセチン」は、グリセロールジアセテート、グリセリンジアセテート、グリセリルジアセテート、およびCAS登録番号25395−31−7の全ての他の同義語と同じ意味である。
【0085】
本明細書で用いるところでは、用語「トリアセチン」は、グリセリントリアセテート、グリセロールトリアセテート、グリセリルトリアセテート、1,2,3−トリアセトキシプロパン;1,2,3−プロパントリオールトリアセテートおよびCAS登録番号102−76−1の全ての他の同義語と同じ意味である。
【0086】
本明細書で用いるところでは、用語「モノブチリン」は、グリセロールモノブチレート、グリセリンモノブチレート、およびグリセリルモノブチレートと同じ意味である。
【0087】
本明細書で用いるところでは、用語「ジブチリン」は、グリセロールジブチレートおよびグリセリルジブチレートと同じ意味である。
【0088】
本明細書で用いるところでは、用語「トリブチリン」は、グリセロールトリブチレート、1,2,3−トリブチリルグリセロール、およびCAS登録番号60−01−5の全ての他の同義語と同じ意味である。
【0089】
本明細書で用いるところでは、用語「モノプロピオニン」は、グリセロールモノプロピオネート、グリセリンモノプロピオネート、およびグリセリルモノプロピオネートと同じ意味である。
【0090】
本明細書で用いるところでは、用語「ジプロピオニン」は、グリセロールジプロピオネートおよびグリセリルジプロピオネートと同じ意味である。
【0091】
本明細書で用いるところでは、用語「トリプロピオニン」は、グリセリルトリプロピオネート、グリセロールトリプロピオネート、1,2,3−トリプロピオニルグリセロール、およびCAS登録番号139−45−7の全ての他の同義語と同じ意味である。
【0092】
本明細書で用いるところでは、用語「酢酸エチル」は、アセチックエーテル、アセトキシエタン、エタン酸エチル、酢酸エチルエステル、エタン酸エチルエステル、エチル酢酸エステルおよびCAS登録番号141−78−6の全ての他の同義語と同じ意味である。
【0093】
本明細書で用いるところでは、用途「乳酸エチル」は、乳酸エチルエステルおよびCAS登録番号97−64−3の全ての他の同義語と同じ意味である。
【0094】
本明細書で用いるところでは、用語「アセチル化糖」および「アセチル化糖類」は、少なくとも1つのアセチル基を含む単−、二−および多糖類を意味する。例には、グルコースペンタアセテート;キシローステトラアセテート;アセチル化キシラン;アセチル化キシラン断片;β−D−リボフラノース−1,2,3,5−テトラアセテート;トリ−O−アセチル−D−ガラクタール;およびトリ−O−アセチル−グルカールが挙げられるが、それらに限定されない。
【0095】
本明細書で用いるところでは、用語「ヒドロカルビル」、「ヒドロカルビル基」、および「ヒドロカルビル部分」は、単、二重、もしくは三重炭素−炭素結合でおよび/またはエーテル結合で連結された、そしてそれに応じて水素原子で置換された炭素原子の直鎖、分岐もしくは環式配置を意味する。かかるヒドロカルビル基は、脂肪族および/または芳香族であってもよい。ヒドロカルビル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、ペンチル、シクロペンチル、メチルシクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ベンジル、およびフェニルが挙げられる。好ましい実施形態では、ヒドロカルビル部分は、炭素−炭素単結合でおよび/またはエーテル結合で連結された、そしてそれに応じて水素原子で置換された炭素原子の直鎖、分岐もしくは環式配置である。
【0096】
本明細書で用いるところでは、用語1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,5−ペンタンジオール、1,6−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、およびそれらの混合物の「モノエステル」および「ジエステル」は、式RC(O)O(式中、RはC1〜C7の線状ヒドロカルビル部分である)の少なくとも1つのエステル基を含む前記化合物を意味する。一実施形態では、カルボン酸エステル基質は、プロピレングリコールジアセテート(PGDA)、エチレングリコールジアセテート(EDGA)、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0097】
本明細書で用いるところでは、用語「プロピレングリコールジアセテート」は、1,2−ジアセトキシプロパン、プロピレンジアセテート、1,2−プロパンジオールジアセテート、およびCAS登録番号623−84−7の全ての他の同義語と同じ意味である。
【0098】
本明細書で用いるところでは、用語「エチレングリコールジアセテート」は、1,2−ジアセトキシエタン、エチレンジアセテート、グリコールジアセテート、およびCAS登録番号111−55−7の全ての他の同義語と同じ意味である。
【0099】
本明細書で用いるところでは、用語「好適な酵素反応混合物」、「過酸のその場発生に好適な成分」、「好適な反応成分」、および「好適な水性反応混合物」は、その中で反応剤と酵素触媒とが接触する材料および水を意味する。好適な水性反応混合物の成分は本明細書で提供され、当業者は、この方法に好適な成分変動の範囲を十分に理解する。一実施形態では、好適な酵素反応混合物は、反応成分を組み合わせるとその場で過酸を生成する。従って、反応成分は、反応成分の1つ以上が使用まで別々のままである多成分系として提供されてもよい。別の実施形態では、反応成分は先ず組み合わせられて過酸の水溶液を形成し、それはその後消毒されるおよび/または漂白されるべき表面と接触させられる。多数の活性成分を分離するおよび組み合わせるためのシステムおよび手段の設計は、当該技術分野で公知であり、個々の反応成分の物理的形態に一般に依存するであろう。例えば、多数の活性流体(液体−液体)システムは、所望の漂白剤が反応性流体を混合すると生成する幾つかの漂白用途に見いだされるなどの、多室分配ボトルまたは2相システムを典型的には用いる(例えば、米国特許出願公開第2005/0139608号明細書;米国特許第5,398,846号明細書;同第5,624,634号明細書;同第6,391,840号明細書;欧州特許第0807156B1号明細書;米国特許出願公開第2005/0008526号明細書;およびPCT公開国際公開第00/61713号パンフレット)。過酸を発生させるために用いられる多成分系の他の形態には、粉末(例えば、米国特許第5,116,575号明細書)、多層状錠剤(例えば、米国特許第6,210,639号明細書)、多区画を有する水溶解性パケット(例えば、米国特許第6,995,125号明細書)および水の添加時に反応する固体塊(例えば、米国特許第6,319,888号明細書)などの、1つ以上の固体成分または固体−液体成分の組み合わせのために設計されたものが含まれてもよいが、それらに限定されない。一実施形態では、多成分調合物は2つの個々の成分として提供され、それによってペルオキシカルボン酸を含む水溶液は2つの成分を組み合わせると発生する。別の実施形態では、
a)i)本明細書に開示されるような酵素粉末、および
ii)カルボン酸エステル
を含む第1成分であって、無機または有機緩衝剤、腐食防止剤、湿潤剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるさらなる原料を任意選択的に含む第1成分と;
b)過酸素源および水を含む第2成分であって、過酸化水素安定剤を任意選択的に含む第2成分と
を含む多成分調合物が提供される。
【0100】
別の実施形態では、第1成分中のカルボン酸エステルは、モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。別の実施形態では、第1成分中のカルボン酸エステルは、アセチル化糖類である。別の実施形態では、第1成分中の酵素触媒は粒状固体である。別の実施形態では、第1反応成分は固体錠剤または粉末である。
【0101】
本明細書で用いるところでは、用語「ペルヒドロリシス」は、過酸を形成するための選択された基質と過酸化物との反応と定義される。典型的には、無機過酸化物が過酸を生成するために触媒の存在下に選択された基質と反応させられる。本明細書で用いるところでは、用語「化学的ペルヒドロリシス」には、基質(過酸前駆体)が過酸化水素源と組み合わせられるペルヒドロリシス反応であって、過酸が酵素触媒の不存在下に形成される反応が含まれる。
【0102】
本明細書で用いるところでは、用語「ペルヒドロラーゼ活性」は、タンパク質の単位質量、乾燥細胞質量、または固定化触媒質量(例えば、ミリグラム)当たりの触媒活性を意味する。
【0103】
本明細書で用いるところでは、「酵素活性の1単位」または「活性の1単位」または「U」は、指定温度で毎秒1μモルの過酸生成物の生成のために必要とされるペルヒドロラーゼ活性の量と定義される。
【0104】
本明細書で用いるところでは、用語「酵素触媒」および「ペルヒドロラーゼ触媒」は、ペルヒドロリシス活性を有する酵素を含む触媒を意味し、全微生物細胞、透過処理微生物細胞、微生物細胞抽出物の1つ以上の細胞成分、部分精製酵素、または精製酵素の形態にあってもよい。酵素触媒はまた、(例えば、ペグ化によってまたは架橋反応剤との反応によって)化学修飾されてもよい。ペルヒドロラーゼ触媒はまた、当業者に周知の方法を用いて可溶性または不溶性担体に固定化されてもよく;例えば、Immobilization of Enzymes and Cells;Gordon F.Bickerstaff,Editor;Humana Press,Totowa,NJ,USA;1997を参照されたい。本明細書に記載されるように、ペルヒドロリシス活性を有する本酵素の全てが構造上、炭水化物族エステラーゼ族7(CE−7族)のメンバーである(Coutinho,P.M.,Henrissat,B.「Carbohydrate−active enzymes:an integrated database approach」in Recent Advances in Carbohydrate Bioengineering,H.J.Gilbert,G.Davies,B.Henrissat and B.Svensson eds.,(1999) The Royal Society of Chemistry,Cambridge,pp.3−12を参照されたい)。CE−7族の酵素は、過酸素源と組み合わせられたときに様々なカルボン酸エステル基質から過酸を生成するために特に有効であることが実証されてきた(それぞれが全体を参照により本明細書に援用される、DiCosimoらに付与される国際公開第2007/070609号パンフレットならびに米国特許出願公開第2008/0176299号明細書、同第2008/176783号明細書、および同第2009/0005590号明細書を参照されたい)。
【0105】
CE−7族のメンバーには、セファロスポリンCデアセチラーゼ(CAH;E.C.3.1.1.41)およびアセチルキシランエステラーゼ(AXE;E.C.3.1.1.72)が含まれる。CE−7エステラーゼ族のメンバーは、保存シグネチャーモチーフを共有している(Vincent et al.,J.Mol.Biol.,330:593−606(2003))。CE−7シグネチャーモチーフおよび/または実質的に類似の構造を含むペルヒドロラーゼは、本発明での使用のために好適である。実質的に類似の生物学的分子を同定するための手段は、当該技術分野でよく知られている(例えば、配列アラインメント・プロトコル、核酸ハイブリッド化および/または保存シグネチャーモチーフの存在)。一態様では、本ペルヒドロラーゼには、CE−7シグネチャーモチーフおよび本明細書に提供される配列と少なくとも30%、好ましくは少なくとも33%、より好ましくは少なくとも40%、さらにより好ましくは少なくとも42%、さらにより好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%アミノ酸同一性を含む酵素が含まれる。さらなる態様では、本ペルヒドロラーゼには、CE−7シグネチャーモチーフおよび配列番号1と少なくとも30%、好ましくはなくとも33%、より好ましくは少なくとも40%、さらにより好ましくは少なくとも42%、さらにより好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%アミノ酸同一性を含む酵素が含まれる。
【0106】
本明細書で用いるところでは、用語「酵素粉末」は、(1)ペルヒドロリシス活性を有するCE−7として構造上分類される少なくとも1つの酵素、(2)少なくとも1つのオリゴ糖賦形剤、および任意選択的に少なくとも1つの界面活性剤を含む水性調合物の噴霧乾燥生成物を意味する。幾つかの実施形態では、少なくとも1つのオリゴ糖賦形剤は、少なくとも約1250の数平均分子量および少なくとも約9000の質量平均分子量を有する。一実施形態では、水性調合物は少なくとも1つの緩衝剤をさらに含む。
【0107】
本明細書で用いるところでは、用語「セファロスポリンCデアセチラーゼ」および「セファロスポリンCアセチルヒドロラーゼ」は、セファロスポリンCおよび7−アミノセファロスポラン酸などのセファロスポリンの脱アセチル化を触媒する酵素(E.C.3.1.1.41)を意味する(Mitsushima et al.,(1995)Appl.Env.Microbiol.61(6):2224−2229))。顕著なペルヒドロリシス活性を有する幾つかのセファロスポリCデアセチラーゼが本明細書に提供される。
【0108】
本明細書で用いるところでは、「アセチルキシランエステラーゼ」は、アセチル化キシランおよび他のアセチル化糖類の脱アセチル化を触媒する酵素(E.C.3.1.1.72;AXE)を意味する。本明細書に例示されるように、顕著なペルヒドロリシス活性を有する、アセチルキシランエステラーゼとして分類される幾つかの酵素が提供される。
【0109】
本明細書で用いるところでは、用語「枯草菌(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)31954TM」は、国際預託登録番号ATCC(登録商標)31954TMを有するAmerican Type Culture Collection(ATCC)に預託されたバクテリア細胞を意味する。枯草菌(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)31954TMは、2〜8個の炭素アシル基を有するグリセロールエステルを加水分解することができるエステルヒドロラーゼ(「ジアセチナーゼ」)活性を有すると報告されている(全体を参照により本明細書に援用される、米国特許第4,444,886号明細書)。本明細書に記載されるように、顕著なペルヒドロラーゼ活性を有する酵素は、枯草菌(B.subtilis)ATCC(登録商標)31954TMから単離され、配列番号1として提供される。単離酵素のアミノ酸配列は、GENBANK(登録商標)Accession No.BAA01729.1によって提供されるセファロスポリンCデアセチラーゼと100%アミノ酸同一性を有する(Mitsushimaら、上記を参照)。
【0110】
本明細書で用いるところでは、用語「枯草菌(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)29233TM」は、国際預託登録番号ATCC(登録商標)29233TMを有するAmerican Type Culture Collection(ATCC)に預託された枯草菌(Bacillus subtilis)の菌株を意味する。本明細書に記載されるように、顕著なペルヒドロラーゼ活性を有する酵素は、枯草菌(B.subtilis)ATCC(登録商標)29233TMから単離され、配列決定され、配列番号12として提供される。
【0111】
本明細書で用いるところでは、用語「クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)ATCC(登録商標)27405TMは、国際預託登録番号ATCC(登録商標)27405TMを有するAmerican Type
Culture Collection(ATCC)に預託されたクロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)の菌株を意味する。C.サーモセラム(C.thermocellum)ATCC(登録商標)27405TMからのペルヒドロラーゼ活性を有する酵素のアミノ酸配列は、配列番号5として提供される。
【0112】
本明細書で用いるところでは、用語「枯草菌(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)6633TMは、国際預託登録番号ATCC(登録商標)6633TMを有するAmerican Type Culture Collection(ATCC)に預託されたバクテリア細胞を意味する。枯草菌(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)6633TMは、セファロスポリンアセチルヒドロラーゼ活性を有すると報告されている(米国特許第6,465,233号明細書)。枯草菌(B.subtilis)ATCC(登録商標)6633TMからのペルヒドロラーゼ活性を有する酵素のアミノ酸配列は、配列番号2として提供される。
【0113】
本明細書で用いるところでは、用語「バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)ATCC(登録商標)14580TM」は、国際預託登録番号ATCC(登録商標)14580TMを有するAmerican Type Culture Collection(ATCC)に預託されたバクテリア細胞を意味する。バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)ATCC(登録商標)14580TMは、セファロスポリンアセチルヒドロラーゼ活性を有すると報告されている。B.リケニホルミス(B.licheniformis)ATCC(登録商標)14580TMからのペルヒドロラーゼ活性を有する酵素のアミノ酸配列は、配列番号3として提供される。
【0114】
本明細書で用いるところでは、用語「バチルス・プミラス(Bacillus pumilus)PS213」は、アセチルキシランエステラーゼ活性を有すると報告されているバクテリア細胞を意味する(GENBANK(登録商標)AJ249957)。バチルス・プミラス(Bacillus pumilus)PS213からのペルヒドロラーゼ活性を有する酵素のアミノ酸配列は、配列番号4として提供される。
【0115】
本明細書で用いるところでは、用語「サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)」は、アセチルキシランエステラーゼ活性を有すると報告されているサーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)の菌株を意味する(GENBANK(登録商標)AAB70869)。サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)からのペルヒドロラーゼ活性を有する酵素のアミノ酸配列は、配列番号6として提供される。
【0116】
本明細書で用いるところでは、用語「サーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)MSB8」は、アセチルキシランエステラーゼ活性を有すると報告されているバクテリア細胞を意味する(GENBANK(登録商標)NP_227893.1)。サーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)MSB8からのペルヒドロラーゼ活性を有する酵素のアミノ酸配列は、配列番号7として提供される。
【0117】
本明細書で用いるところでは、「バチルス・クラウジ(Bacillus clausii)KSM−K16」は、セファロスポリンCデアセチラーゼ活性を有すると報告されているバクテリア細胞を意味する(GENBANK(登録商標)YP_175265)。バチルス・クラウジ(Bacillus clausii)KSM−K16からのペルヒドロラーゼ活性を有する酵素のアミノ酸配列は、配列番号11として提供される。
【0118】
本明細書で用いるところでは、「サーモアネアロバクテリウム・サッカロリチクム(Thermoanearobacterium saccharolyticum)は、アセチルキシランエステラーゼ活性を有すると報告されているバクテリア菌株を意味する(GENBANK(登録商標)S41858)。サーモアネアロバクテリウム・サッカロリチクム(Thermoanearobacterium saccharolyticum)からのペルヒドロラーゼ活性を有する酵素のアミノ酸配列は、配列番号13として提供される。
【0119】
本明細書で用いるところでは、用語「サーモトガ・レッチンガエ(Thermotoga lettingae)」は、アセチルキシランエステラーゼ活性を有すると報告されているバクテリア細胞を意味する(GENBANK(登録商標)CP000812)。サーモトガ・レッチンガエ(Thermotoga lettingae)からのペルヒドロラーゼ活性を有する酵素の推定アミノ酸配列は、配列番号14として提供される。
【0120】
本明細書で用いるところでは、用語「サーモトガ・ペトロフィラ(Thermotoga petrophila)」は、アセチルキシランエステラーゼ活性を有すると報告されているバクテリア細胞を意味する(GENBANK(登録商標)CP000702)。サーモトガ・レッチンガエ(Thermotoga lettingae)からのペルヒドロラーゼ活性を有する酵素の推定アミノ酸配列は、配列番号15として提供される。
【0121】
本明細書で用いるところでは、用語「サーモトガ種(Thermotoga sp.)RQ2」は、アセチルキシランエステラーゼ活性を有すると報告されているバクテリア細胞を意味する(GENBANK(登録商標)CP000969)。2つの異なるアセチルキシランエステラーゼは、サーモトガ種(Thermotoga sp.)RQ2からとして同定され、本明細書では「RQ2(a)」(配列番号16として提供される推定アミノ酸配列)および「RQ2(b)」(配列番号17として提供される推定アミノ酸配列)と言われる。
【0122】
本明細書で用いるところでは、「単離核酸分子」、および「単離核酸断片」は、同じ意味で用いられてもよく、一本鎖または二本鎖の、任意選択的に合成、非天然または改変ヌクレオチド塩基であるRNAまたはDNAのポリマーを意味する。DNAのポリマーの形態での単離核酸分子は、cDNA、ゲノムDNAまたは合成DNAの1つ以上のセグメントからなってもよい。
【0123】
用語「アミノ酸」は、タンパク質またポリペプチドの基本的な化学構造単位を意味する。次の省略形が本明細書では特有のアミノ酸を同定するために用いられる。
【0124】
【表1】

【0125】
本明細書で用いるところでは、「実質的に類似の」は、1つ以上のヌクレオチド塩基の変化が1つ以上のアミノ酸の付加、置換、または削除をもたらすが、DNA配列でエンコードされたタンパク質の機能特性(すなわち、ペルヒドロリシス活性)に影響を及ぼさない核酸分子に関する。本明細書で用いるところでは、「実質的に類似の」はまた、生じた酵素が本機能特性(すなわち、ペルヒドロリシス活性)を保持している、少なくとも30%、好ましくは少なくとも33%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、その上さらにより好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%が本明細書に報告される配列と同一であるアミノ酸配列を有する酵素に関する。「実質的に類似の」はまた、本明細書に報告される核酸分子に厳しい条件下でハイブリッド化する核酸分子でエンコードされたペルヒドロリシス活性を有する酵素に関してもよい。それ故、本発明は特有の例示的配列より多くを包含すると理解される。
【0126】
例えば、所与のサイトで化学的に等価のアミノ酸の生成をもたらすが、エンコードされたタンパク質の機能特性に影響を及ぼさない遺伝子の変更は一般的であることが当該技術分野ではよく知られている。本発明の目的のためには、置換は、次の5グループの1つ内の交換と定義される:
1.小さな脂肪族の、非極性または僅かに極性の残基:Ala、Ser、Thr(Pro、Gly);
2.極性の、負に帯電した残基およびそれらのアミド:Asp、Asn、Glu、Gln;
3.極性の、正に帯電した残基:His、Arg、Lys;
4.大きな脂肪族の、非極性残基:Met、Leu、Ile、Val(Cys);ならびに
5.大きな芳香族残基:Phe、Tyr、およびTrp。
【0127】
こうして、アミノ酸アラニン、疎水性アミノ酸のためのコドンは、別のより少ない疎水性の残基(グリシンなどの)またはより多い疎水性の残基(バリン、ロイシン、もしくはイソロイシンなどの)をエンコードするコドンで置き換えられてもよい。同様に、別のものに代えて1つの負に帯電した残基の置換(グルタミン酸に代えてアスパラギン酸など)または別のものに代えて1つの正に帯電した残基の置換(アルギニンに代えてリジンなど)をもたらす変化はまた、機能的に等価の生成物を生成すると予期することができる。多くの場合に、タンパク質分子のN−末端およびC−末端部分の変更をもたらすヌクレオチド変化はまた、タンパク質の活性を変更すると予期されないであろう。
【0128】
提案される変性のそれぞれは、エンコードされた生成物の生物学的活性の保持の測定がそうであるように、十分に、当該技術分野での所定の技能内である。さらに、当業者は、実質的に類似の配列が本発明によって包含されることを認める。一実施形態では、実質的に類似の配列は、厳しい条件(0.1XSSC、0.1%SDS、65℃および2XSSC、0.1%SDSで洗浄され、引き続き0.1XSSC、0.1%SDS、65℃)下で、本明細書に例示される配列とハイブリッド化するそれらの能力で定義される。
【0129】
本明細書で用いるところでは、核酸分子は、第1分子の一本鎖が温度および溶液イオン強度の適切な条件下に他の分子にアニールすることができるとき、cDNA、ゲノムDNA、またはRNAなどの、別の核酸分子に「ハイブリッド化可能」である。ハイブリッド化および洗浄条件はよく知られており、Sambrook,J.and Russell,D.T.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Third Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor(2001)に例示されている。温度およびイオン強度の条件がハイブリッド化の「厳しさ」を決定する。厳しさ条件は、遠縁の有機体からの相同の配列などの、適度に類似の分子を、密に関係する有機体からの機能性酵素を複製する遺伝子などの、高度に類似の分子へと選別するために調節することができる。ポスト−ハイブリッド化洗浄が典型的には厳しさ条件を決定する。1セットの好ましい条件は、室温で15分間の6XSSC、0.5%SDSから出発して、次に45℃で30分間の2XSSC、0.5%SDSで繰り返され、次に50℃で30分間の0.2XSSC、0.5%SDSで2回繰り返される一連の洗浄を用いる。より好ましいセットの条件は、0.2XSSC、0.5SDS%での最後の2回の30分洗浄の温度が60℃に上げられることを除いて洗浄が上記のものに同一であるより高い温度を用いる。別の好ましいセットの厳しいハイブリッド化条件は、本明細書に例示される配列で0.1XSSC、0.1%SDS、65℃であり、2XSSC、0.1%SDS、引き続き0.1XSSC、0.1%SDS、65℃の最終洗浄で洗浄される。さらなる実施形態では、本組成物および方法は、ペルヒドロリシス活性を有するポリペプチドをエンコードする核酸分子に厳しい条件下でハイブリッド化する単離核酸分子でエンコードされたペルヒドロラーゼ活性を有する酵素であって、前記ポリペプチドが配列番号1、配列番号2、配列番号3;配列番号4;配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13;配列番号14;配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、および配列番号25からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する酵素を用いる。
【0130】
ハイブリッド化は、ハイブリッド化の厳しさに依存するが、2つの核酸が相補的配列を含有することを必要とし、塩基間のミスマッチが可能である。核酸をハイブリッド化するための適切な厳しさは、核酸の長さおよび相補性の程度、当該技術分野で周知の変数に依存する。2つのヌクレオチド配列間の類似性または相同性の程度が大きければ大きいほど、それらの配列を有する核酸のハイブリッドについてのTmの値は大きくなる。核酸ハイブリッド化の相対的な安定性(より高いTmに相当する)は、次の順に低下する:RNA:RNA、DNA:RNA、DNA:DNA。長さが100個超のヌクレオチドのハイブリッドについては、Tmを計算するための方程式が誘導された(SambrookおよびRussell、上記を参照)。より短い核酸、すなわち、オリゴヌクレオチドとのハイブリッド化については、ミスマッチの位置がより重要になり、オリゴヌクレオチドの長さがその特異性を決定する(SambrookおよびRussell、上記を参照)。一態様では、ハイブリッド化可能な核酸についての長さは、少なくとも約10のヌクレオチドである。好ましくは、ハイブリッド化可能な核酸についての最小長さは、長さが少なくとも約15ヌクレオチド、より好ましくは長さが少なくとも約20ヌクレオチド、さらにより好ましくは長さが少なくとも30ヌクレオチド、さらにより好ましくは長さが少なくとも300ヌクレオチド、最も好ましくは長さが少なくとも800ヌクレオチドである。さらに、当業者は、温度および洗浄液塩濃度がプローブの長さなどの因子に従って必要に応じて調節されてもよいことを認めるであろう。
【0131】
本明細書で用いるところでは、用語「パーセント同一性」は、配列を比較することによって測定されるような、2つ以上のポリペプチド配列または2つ以上のポリヌクレオチド配列間の関係である。当該技術分野では、「同一性」はまた、場合によっては、かかる配列のストリング間のマッチによって測定されるような、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列間の配列関連性の程度を意味する。「同一性」および「類似性」は、Computational Molecular Biology(Lesk,A.M.,ed.) Oxford University Press,NY(1988);Biocomputing:Informatics and Genome Projects(Smith,D.W.,ed.) Academic Press,NY(1993);Computer Analysis of Sequence Data,Part I(Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.)Humana Press,NJ(1994);Sequence Analysis in Molecular Biology(von Heinje,G.,ed.) Academic Press(1987);およびSequence Analysis Primer(Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.) Stockton Press,NY(1991)に記載されている方法を含むがそれらに限定されない、公知の方法によって容易に計算することができる。同一性および類似性を測定するための方法は、公に利用可能なコンピュータプログラムに体系化されている。配列アラインメントおよびパーセント同一性計算は、LASERGENE生物情報学コンピュータ計算スーツのMegalignプログラム(DNASTAR Inc.,Madison,WI)、the AlignX program of Vector NTI v.7.0(Informax,Inc.,Bethesda,MD)、またはEMBOSS Open Software Suite(EMBL−EBI;Rice et al.,Trends in Genetics 16,(6):276−277(2000))を用いて行われてもよい。配列の多重アラインメントは、デフォルトパラメータを使ったEuropean Bioinformatics Instituteを経由してEuropean Molecular Biology Laboratoryから入手可能な、アラインメントのCLUSTAL法(例えばCLUSTALW;例えばバージョン1.83)(Higgins and Sharp,CABIOS,5:151−153(1989);Higgins et al.,Nucleic Acids Res.22:4673−4680(1994);およびChenna et al.,Nucleic Acids Res.31(13):3497−500(2003))を用いて行うことができる。CLUSTALWタンパク質アラインメントのための好適なパラメータには、GAP Existenceペナルティ=15、GAPエクステンション=0.2、マトリックス=Gonnet(例えば、Gonnet250)、タンパク質ENDGAP=−1、タンパク質GAPDIST=4、およびKTUPLE=1が含まれる。一実施形態では、速いまたは遅いアラインメントがデフォルト設定で用いられ、ここで、遅いアラインメントが好ましい。あるいはまた、CLUSTALW法(バージョン1.83)を用いるパラメータは、KTUPLE=1、GAP PENALTY=10、GAPエクステンション=1、マトリックス=BLOSUM(例えば、BLOSUM64)、WINDOW=5、およびTOP DIAGONALS SAVED=5をまた用いるために修正されてもよい。
【0132】
一態様では、好適な単離核酸分子は、本明細書に報告されるアミノ酸配列と少なくとも約30%、好ましくは少なくとも33%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをエンコードする。好適な核酸分子は上記の相同性を有するのみならず、約300〜約340個のアミノ酸、より好ましくは約310〜約330個のアミノ酸、最も好ましくは約318個のアミノ酸を有するポリペプチドを典型的にはエンコードする。
【0133】
本明細書で用いるところでは、用語「シグネチャーモチーフ」、「CE−7シグネチャーモチーフ」、および「診断モチーフ」は、規定の活性を有する酵素の族の間で共有される保存構造を意味する。シグネチャーモチーフは、規定の族の基質に対して類似の酵素活性を有する構造上関連する酵素の族を明確にするおよび/または同定するために用いることができる。シグネチャーモチーフは、単一隣接アミノ酸配列またはシグネチャーモチーフを一緒に形成する非接触の保存モチーフの集まりであることができる。典型的には、保存モチーフはアミノ酸配列で表される。本明細書に記載されるように、ペルヒドロリシス活性を有する本酵素(「ペルヒドロラーゼ」)は、CE−7炭化水素エステラーゼの族に属する(DiCosimoら、上掲)。本明細書で用いるところでは、フレーズ「酵素はCE−7酵素として構造上分類される」、または「CE−ペルヒドロラーゼ」は、CE−7炭水化物エステラーゼとして構造上分類される、ペルヒドロリシス活性を有する酵素を意味するために用いられるであろう。この族の酵素は、シグネチャーモチーフの存在によって定義することができる(Vincentら、上記を参照)。本明細書で定義されるところ、CE−7エステラーゼについてのシグネチャーモチーフは、3つの保存モチーフを含む(基準配列配列番号1に関連しての残基位置番号):
a)Arg118−Gly119−Gln120;
b)Gly179−Xaa180−Ser181−Gln182−Gly183;および
c)His298−Glu299。
【0134】
典型的には、アミノ酸残基位置180でのXaaは、グリシン、アラニン、プロリン、トリプトファン、またはスレオニンである。触媒三つ組に属する3つのアミノ酸残基のうちの2つは肉太である。一実施形態では、アミノ酸残基位置180でのXaaは、グリシン、アラニン、プロリン、トリプトファン、およびスレオニンからなる群から選択される。
【0135】
CE−7炭水化物エステラーゼ族内の保存モチーフのさらなる解析は、CE−7炭水化物エステラーゼ族に属するペルヒドロラーゼをさらに定義するために用いられてもよい追加の保存モチーフ(配列番号1のアミノ酸位置267〜269でのLXD)の存在を示唆する。さらなる実施形態では、上に定義されたシグネチャーモチーフには、
Leu267−Xaa268−Asp269
と定義される第4の保存モチーフが含まれる。
【0136】
アミノ酸残基位置268でのXaaは典型的には、イソロイシン、バリン、またはメチオニンである。第4モチーフには、触媒三つ組(Ser181−Asp269−His298)に属するアスパラギン酸残基(肉太)が含まれる。
【0137】
多くの周知のグローバルアラインメントアルゴリズムが、ペルヒドロラーゼ活性を有する酵素を表す2つ以上のアミノ酸配列を整列させて酵素が本シグネチャーモチーフからなるかどうかを判定するために用いられてもよい。整列させられた配列は、本シグネチャーモチーフの存在を判定するために基準配列(配列番号1)と比較される。一実施形態では、基準アミノ酸配列(本明細書で使用されるところでは枯草菌(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)31954TMからのペルヒドロラーゼ配列(配列番号1))を使用するCLUSTALアラインメント(CLUSTALWなどの)がCE−7エステラーゼ族に属するペルヒドロラーゼを同定するために用いられる。保存アミノ酸残基の相対的な番号付けは、整列させられた配列内での小さな挿入または削除(例えば、5つのアミノ酸またはそれ未満)を説明するために基準アミノ酸配列の残基番号付けに基づいている。
【0138】
(基準配列と比較されるときに)本シグネチャーモチーフを含む配列を同定するために用いられてもよい他の好適なアルゴリズムの例には、NeedlemanおよびWunsch(J.Mol.Biol.48、443−453(1970);グローバルアラインメントツール)およびSmith−Waterman(J.Mol.Biol.147:195−197(1981);ローカルアラインメントツール)が挙げられるが、それらに限定されない。一実施形態では、Smith−Watermanアラインメントは、デフォルトパラメータを使用して実施される。好適なデフォルトパラメータの例には、GAPオープンペナルティ=10およびGAPエクステンションペナルティ=0.5のBLOSUM62スコアリングマトリックスの使用が挙げられる。
【0139】
本明細書に例示されるペルヒドロラーゼ間の全体的パーセント同一性の比較は、(本シグネチャーモチーフを保持しながら)配列番号1と33%ほどに少ない同一性を有する酵素が顕著なペルヒドロラーゼ活性を示し、CE−7炭水化物エステラーゼとして構造上分類されることを示す。一実施形態では、好適なペルヒドロラーゼには、CE−7シグネチャーモチーフおよび配列番号1と少なくとも30%、好ましくは少なくとも33%、より好ましくは少なくとも40%、さらにより好ましくは少なくとも42%、さらにより好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%アミノ酸同一性を含む酵素が含まれる。
【0140】
あるいはまた、本保存モチーフを包含する領域を含む隣接アミノ酸配列はまた、CE−7族メンバーを同定するために用いられてもよい。
【0141】
本明細書で用いるところでは、「コドン縮退」は、エンコードされたポリペプチドのアミノ酸配列に影響を及ぼすことなくヌクレオチド配列の変動を可能にする遺伝コードの本質に関する。従って、本発明は、本微生物ポリペプチドをエンコードするアミノ酸配列の全てまたはかなりの部分をエンコードする任意の核酸分子に関する。当業者は、所与のアミノ酸を特定するためのヌクレオチドコドンの利用で特異的な宿主細胞によって示される「コドンバイアス」をよく知っている。それ故、宿主細胞での向上した発現のための遺伝子を合成するとき、コドン利用のその頻度が宿主細胞の好ましいコドン利用の頻度に近づくように遺伝子を設計することが望ましい。
【0142】
本明細書で用いるところでは、用語「最適化されたコドン」は、それが様々な宿主の形質転換のための核酸分子の遺伝子またはコーディング領域に関するので、DNAがコードするポリペプチドを変更することなく宿主有機体の典型的なコドン利用を反映するための核酸分子の遺伝子またはコーディング領域でのコドンの変更を意味する。
【0143】
本明細書で用いるところでは、「合成遺伝子」は、当業者に公知の手順を用いて化学合成されるオリゴヌクレオチド構成要素から組み立てることができる。これらの構成要素は、遺伝子セグメントを形成するために結合され、アニールされ、遺伝子セグメントは次に全体遺伝子を構築するために酵素的に組み立てられる。DNA配列に関するように、「化学合成された」は、成分ヌクレオチドがインビトロで組み立てられたことを意味する。DNAの手動化学合成は、十分に確立された手順を用いて成し遂げられてもよいし、または自動化化学合成は、多くの商業的に入手可能な機械の1つを用いて行うことができる。従って、遺伝子は、宿主細胞のコドンバイアスを反映するためのヌクレオチド配列の最適化に基づいて最適遺伝子発現のために調整することができる。当業者は、宿主によって有利にされるそれらのコドンの方へコドン利用がバイアスをかけられる場合に成功する遺伝子発現の可能性を十分に理解している。好ましいコドンの決定は、配列情報が入手可能である宿主細胞に由来する遺伝子の調査に基づくことができる。
【0144】
本明細書で用いるところでは、「遺伝子」は、コーディング配列に先行する調節配列(5’非コーディング配列)およびコーディング配列後の調節配列(3’非コーディング配列)を含む、特異的タンパク質を発現する核酸分子を意味する。「野生遺伝子」は、それ自体の調節配列で自然界に見いだされるような遺伝子を意味する。「キメラ遺伝子」は、自然界で一緒に見いだされない調節配列およびコーディング配列を含む、野生遺伝子ではない任意の遺伝子を意味する。従って、キメラ遺伝子は、異なる出所に由来する調節配列およびコーディング配列、または同じ出所に由来するが、自然界で見いだされるものとは異なるやり方で配置された調節配列およびコーディング配列を含んでもよい。「内在性遺伝子」は、有機体のゲノムにおいてその自然の位置の野生遺伝子を意味する。「外来」遺伝子は、宿主有機体中に普通は見いだされないが、遺伝子導入によって宿主有機体へ導入される遺伝子を意味する。外来遺伝子は、外来種有機体へ挿入された野生遺伝子、またはキメラ遺伝子を含むことができる。「トランス遺伝子」は、形質転換法によってゲノムへ導入された遺伝子である。
【0145】
本明細書で用いるところでは、「コード配列」は、特有のアミノ酸配列についてコードするDNA配列を意味する。「好適な調節配列」は、コード配列の上流(5’−非コード配列)、内、または下流(3’−非コード配列)に配置された、そして転写、RNAプロセッシングもしくは安定性、または関連コード配列のトランスレーションに影響を及ぼすヌクレオチド配列を意味する。調節配列には、プロモーター、トランスレーションリーダー配列、RNAプロセッシングサイト、エフェクター結合サイトおよびステムループ構造が含まれてもよい。
【0146】
本明細書で用いるところでは、「プロモーター」は、コード配列または機能性RNAの発現を制御することができるDNA配列を意味する。一般に、コード配列は、プロモーター配列に3’位で配置される。プロモーターは、全体が野生遺伝子に由来してもよいし、または自然界に見いだされる異なるプロモ−ターに由来する異なる要素からなってもよいし、またはさらに合成DNAセグメントを含んでもよい。異なるプロモーターが増殖の異なる段階で、または異なる環境もしくは生理学的条件に応じて遺伝子の発現を指図してもよいことは当業者によって理解される。ほとんどの時間に遺伝子を発現させるプロモーターは一般に「構成的プロモーター」と言われる。ほとんどの場合に調節配列の正確な境界は完全には画定されなかったので、異なる長さのDNA断片が同一のプロモーター活性を有する可能性があることがさらに認められる。
【0147】
本明細書で用いるところでは、「3’非コード配列」は、コード配列の下流に配置されたDNA配列を意味し、ポリアデニル化認識配列(普通は真核生物に限定される)およびmRNAプロセッシングまたは遺伝子発現に影響を及ぼすことができる調節シグナルをエンコードする他の配列を含む。ポリアデニル化シグナルは通常、mRNA前駆体の3’端へのポリアデニル酸トラクトの付加(普通は真核生物に限定される)に影響を及ぼすことで特徴づけられる。
【0148】
本明細書で用いるところでは、用語「操作できるように結合した」は、1つの機能が他によって影響を及ぼされるように単一核酸分子上での核酸配列のつながりを意味する。例えば、プロモーターは、コード配列と、それが当該コード配列の発現に影響を及ぼすことができるとき、すなわち、コード配列がプロモーターの転写制御下にあるとき、操作できるように結合する。コード配列は、センスまたはアンチセンス方向に調節配列に操作できるように結合することができる。
【0149】
本明細書で用いるところでは、用語「発現」は、本発明の核酸分子に由来するセンスRNA(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写および安定蓄積を意味する。発現はまた、ポリペプチドへのmRNAのトランスレーションを意味してもよい。
【0150】
本明細書で用いるところでは、「形質転換」は、遺伝子的に安定な遺伝的形質をもたらす、宿主有機体のゲノムへの核酸分子の導入を意味する。本発明では、宿主細胞のゲノムは、染色体のおよび染色体外の(例えば、プラスミド)遺伝子を含む。形質転換した核酸分子を含有する宿主有機体は、「遺伝子組み換えの(transgenic)」または「組み換えの」または「形質転換された」有機体と言われる。
【0151】
本明細書で用いるところでは、「プラスミド」、「ベクター」および「カセット」は、細胞の中央代謝の部分ではなく、通常環状二本鎖DNA分子の形にある遺伝子を多くの場合に所持する染色体外要素を意味する。かかる要素は、自己複製配列、ゲノム統合配列、多数のヌクレオチド配列がプロモーター断片を導入することができるユニークな構造へ結合したまたは再結合した、任意の出所に由来する、一本鎖または二本鎖DNAまたはRNAの、線状もしくは環状の、ファージまたはヌクレオチド配列ならびに細胞への適切な3’非翻訳配列と一緒に選択される遺伝子産物のためのDNA配列であってもよい。「形質転換カセット」は、外来遺伝子を含有する、かつ、外来遺伝子に加えて、特定の宿主細胞の形質転換を容易にする要素を有する特有のベクターを意味する。「発現カセット」は、外来遺伝子を含有する、かつ、外来遺伝子に加えて、外来宿主で当該遺伝子の高められた発現を可能にする要素を有する特有のベクターを意味する。
【0152】
本明細書で用いるところでは、用語「配列解析ソフトウェア」は、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列の解析のために有用である任意のコンピュータアルゴリズムまたはソフトウェアプログラムを意味する。「配列解析ソフトウェア」は、商業的に入手可能であってもまたは独立して開発されてもよい。典型的な配列解析ソフトウェアには、GCGスーツのプログラム(Wisconsin Package Version 9.0,Genetics Computer Group(GCG),Madison,WI),BLASTP,BLASTN,BLASTX(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403−410(1990))、およびDNASTAR(DNASTAR,Inc.1228 S.Park St.Madison,WI 53715 USA)、CLUSTALW(例えば、バージョン1.83;Thompson et al.,Nucleic Acids Research,22(22):4673−4680(1994))、およびSmith−Watermanアルゴリズムを組み込んだFASTAプログラム(W.R.Pearson,Comput.Methods Genome Res.,[Proc.Int.Symp.](1994),Meeting Date 1992,111−20.Editor(s):Suhai,Sandor.Publisher:Plenum,New York,NY),Vector NTI(Informax,Bethesda,MD)and Sequencher v.4.05が含まれるであろうが、それらに限定されない。本出願の脈略の中で、配列解析ソフトウェアが解析のために使用される場合、解析の結果は、特に明記されない限り、参照プログラムの「デフォルト値」をベースとしていることが理解されるであろう。本明細書で用いるところでは、「デフォルト値」は、最初に初期化されるときにソフトウェアを元々ロードするソフトウェア製造業者による任意のセットの値またはパラメータセットを意味するであろう。
【0153】
本明細書で用いるところでは、用語「生物学的汚染物質」は、微生物、胞子、ウィルス、プリオン、およびそれらの混合物を含むが、それらに限定されない1つ以上の望まれないおよび/または病原性の生物学的実体を意味する。本方法は、生存する生物学的汚染物質の存在を低減するおよび/または排除するために有用な、有効濃度の少なくとも1つの過カルボン酸を生成する。好ましい実施形態では、生物学的汚染物質は、生存する病原性微生物である。
【0154】
本明細書で用いるところでは、用語「消毒する」は、生物学的汚染物質の増殖の破壊または防止のプロセスを意味する。本明細書で用いるところでは、用語「消毒剤」は、生物学的汚染物質の増殖を破壊する、中和する、または抑制することによって消毒する試剤を意味する。典型的には、消毒剤は、無生物物体または表面を処理するために使用される。本明細書で用いるところでは、用語「消毒」は、消毒の行為またはプロセスを意味する。本明細書で用いるところでは、用語「防腐剤」は、病気運搬微生物の増殖を抑制する化学剤を意味する。一態様では、生物学的汚染物質は病原性微生物である。
【0155】
本明細書で用いるところでは、用語「衛生の」は、典型的には健康に有害である可能性がある作用因子を除去する、防ぐまたは制御することによって、健康の回復または保持を意味するまたはそれらに関係する。本明細書で用いるところでは、用語「殺菌する」は、衛生的にすることを意味する。本明細書で用いるところでは、用語「殺菌剤」は、殺菌試剤を意味する。本明細書で用いるところでは、用語「殺菌」は、殺菌の行為またはプロセスを意味する。
【0156】
本明細書で用いるところでは、用語「殺ウィルス剤(virucide)」は、ウィルスを抑制するまたは破壊する試剤を意味し、「殺ウィルス剤(viricide)」と同じ意味である。ウィルスを抑制するまたは破壊する能力を示す試剤は、「殺ウィルス」活性を有すると記載される。過酸は、殺ウィルス活性を有することができる。本発明での使用に好適である可能性がある当該技術分野で公知の典型的な代わりの殺ウィルス剤には、例えば、アルコール、エーテル、クロロホルム、ホルムアルデヒド、フェノール類、ベータプロピオラクトン、ヨウ素、塩素、水銀塩、ヒドロキシルアミン、エチレンオキシド、エチレングリコール、第四級アンモニウム化合物、酵素、および洗剤が含まれる。
【0157】
本明細書で用いるところでは、用語「殺生物剤」は、微生物を不活性化するまたは破壊する化学剤、典型的には広いスペクトルを意味する。微生物を不活性化するまたは破壊する能力を示す化学剤は、「殺生物」活性を有すると記載される。過酸は殺生物活性を有することができる。本発明での使用に好適である可能性がある、当該技術分野で公知の典型的な代わりの殺生物剤には、例えば、塩素、二酸化塩素、クロロイソシアヌレート、次亜塩素酸塩、オゾン、アクロレイン、アミン、塩素化フェノール化合物、銅塩、オルガノ硫黄化合物、および第四級アンモニウム塩が含まれる。
【0158】
本明細書で用いるところでは、フレーズ「最低殺生濃度」は、特定の接触時間で、標的微生物の生存する個体群の所望の致死の、不可逆的減少をもたらすであろう殺生剤の最低濃度を意味する。有効性は、処理後の生存する微生物のlog10減少によって測定することができる。一態様では、処理後の生存する微生物の目標減少は、少なくとも3−log減少、より好ましくは少なくとも4−log減少、最も好ましくは少なくとも5−log減少である。別の態様では、最低殺生濃度は、生存する微生物細胞の少なくとも6−log減少である。
【0159】
本明細書で用いるところでは、用語「過酸素源」および「過酸素の源」は、過酸化水素、過酸化水素付加体(例えば、尿素−過酸化水素付加体(カルバミドペルオキシド))、過ホウ酸塩、および過炭酸塩を含むが、それらに限定されない水溶液中のときに約1mM以上の濃度で過酸化水素を提供することができる化合物を意味する。本明細書に記載されるように、水性反応調合物中の過酸素化合物によって提供される過酸化水素の濃度は、反応成分を組み合わせると最初は少なくとも1mM以上である。一実施形態では、水性反応調合物中の過酸化水素濃度は、少なくとも10mMである。別の実施形態では、水性反応調合物中の過酸化水素濃度は、少なくとも100mMである。別の実施形態では、水性反応調合物中の過酸化水素濃度は、少なくとも200mMである。別の実施形態では、水性反応調合物中の過酸化水素濃度は、500mM以上である。さらに別の実施形態では、水性反応調合物中の過酸化水素濃度は、1000mM以上である。水性反応調合物中の過酸化水素対酵素基質、例えば、トリグリセリド(H:基質)のモル比は、約0.002〜20、好ましくは約0.1〜10、最も好ましくは約0.5〜5であってもよい。
【0160】
「オリゴ糖」とは、グリコシド結合によって結び付けられた2〜少なくとも24個の単糖単位を含有する化合物を意味する。用語「単糖」は、実験式(CHO)(式中、n≧3である)の化合物を意味し、炭素骨格は非分岐であり、1個を除いて各炭素原子はヒドロキシル基を含有し、残りの炭素原子は炭素原子2でアルデヒドまたはケトンである。用語「単糖」はまた、細胞内の環状ヘミアセタールまたはヘミケタール形を意味する。
【0161】
本明細書で用いるところでは、用語「賦形剤」は、調合物中の活性成分を安定化させるために使用される不活性物質を意味する。賦形剤はまた時々、活性原料を含有する調合物を嵩高くするために使用される。本明細書に記載されるように、「活性原料」は、ペルヒドロリシス活性を有する少なくとも1つの酵素を含む酵素触媒である。一実施形態では、活性原料は、ペルヒドロリシス活性を有する少なくとも1つのCE−7炭水化物エステラーゼである。
【0162】
本明細書で用いるところでは、用語「オリゴ糖賦形」は、水性酵素溶液に加えられたときに、噴霧乾燥後の活性酵素(すなわち、ペルヒドロラーゼ活性)の回収率/保持率を向上させるおよび/または生じた噴霧乾燥酵素粉末もしくは酵素粉末とカルボン酸エステルとの調合物の貯蔵安定性を向上させるオリゴ糖を意味する。一実施形態では、噴霧乾燥前のオリゴ糖賦形剤の添加は、カルボン酸エステル(すなわち、水を実質的に含まない貯蔵混合物)中で貯蔵されたときに酵素の貯蔵安定性を向上させる。カルボン酸エステルは、非常に低い濃度の水を含有してもよく、例えば、トリアセチンは典型的には180ppm〜300ppmの水を有する。本明細書で用いるところでは、フレーズ「水を実質的に含まない」は、カルボン酸エステル中に存在するときに酵素粉末の貯蔵安定性に悪影響を及ぼさない酵素粉末およびカルボン酸エステルの混合物中の水の濃度を意味するであろう。さらなる実施形態では、「水を実質的に含まない」は、酵素粉末およびカルボン酸エステルを含む調合物中の2000ppm未満、好ましくは1000ppm未満、より好ましくは500ppm未満、さらにより好ましくは250ppm未満の水を意味してもよい。
【0163】
酵素粉末
一態様は、CE−7酵素として構造上分類され、ペルヒドロリシス活性を有する少なくとも1つの酵素、少なくとも1つのオリゴ糖賦形剤、および任意選択的に少なくとも1つの界面活性剤の噴霧調合物を含む酵素粉末についてである。幾つかの実施形態では、少なくとも1つのオリゴ糖賦形剤は、少なくとも約1250の数平均分子量および少なくとも約9000の質量平均分子量を有する。
【0164】
少なくとも1つの酵素は、本明細書に記載されるCE−7炭水化物エステラーゼのいずれかであることができるか、または共同所有される、同時係属の米国特許出願公開第2008/0176299号明細書および同第2009/0005590号明細書(それぞれが全体を参照により本明細書に援用される)に記載されているCE−7炭水化物エステラーゼのいずれかであることができる。幾つかの実施形態では、少なくとも1つの酵素は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、19、20、21、22、23、24、および25からなる群から選択される。
【0165】
少なくとも1つの酵素は、噴霧乾燥調合物の乾燥質量を基準として約5質量%〜約75質量%の範囲の量で噴霧乾燥調合物中に存在する。噴霧乾燥調合物中の酵素の好ましい質量%範囲は、約10質量%〜50質量%であり、噴霧乾燥調合物中の酵素のより好ましい質量%範囲は、約20質量%〜33質量%である。
【0166】
噴霧乾燥調合物は、少なくとも1つのオリゴ糖賦形剤をさらに含む。幾つかの実施形態では、少なくとも1つのオリゴ糖賦形剤は、少なくとも約1250の数平均分子量および少なくとも約9000の質量平均分子量を有する。幾つかの実施形態では、少なくとも1つのオリゴ糖賦形剤は、少なくとも約1700の数平均分子量および少なくとも約15000の質量平均分子量を有する。本発明に有用な具体的なオリゴ糖には、マルトデキストリン、キシラン、マンナン、フコイダン、ガラクトマンナン、キトサン、ラフィノース、スタキオース、ペクチン、イヌリン、レバン、グラミナン、アミロペクチン、サッカロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース、ニゲロトリオース、マルトトリオース、メレジトース、マルトトリウロース、ラフィノース、ケストース、およびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。本発明に有用なオリゴ糖ベースの賦形剤には、ヒドロキシメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース、ならびにそれらの混合物などの、水溶性の非イオン性セルロースエーテルが含まれるが、それらに限定されない。
【0167】
賦形剤は、噴霧乾燥調合物の乾燥質量を基準として約95質量%〜約25質量%の範囲の量で調合物中に存在する。噴霧乾燥調合物中の賦形剤の好ましい質量%範囲は、約90質量%〜約50質量%であり、噴霧乾燥調合物中の賦形剤のより好ましい質量%範囲は、約80質量%〜約67質量%である。
【0168】
幾つかの実施形態では、調合物は、少なくとも1つの界面活性剤をさらに含む。有用な界面活性剤には、エトキシル化ヒマシ油、ポリグリコール化グリセリド、アセチル化モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポロキサマー、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン誘導体、それらのモノグリセリドまたはエトキシル化誘導体、それらのジグリセリドまたはポリオキシエチレン誘導体、ドキュセート・ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、コール酸またはそれの誘導体、レシチン、リン脂質、エチレングリコールとプロピレングリコールとのブロックコポリマー、および非イオン性オルガノシリコーンなどの、イオン性および非イオン性界面活性剤または湿潤剤が含まれるが、それらに限定されない。好ましくは、界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪エステルであり、polysorbate 80がより好ましい。
【0169】
調合物の一部のとき、界面活性剤は、噴霧乾燥調合物中に存在するタンパク質の質量を基準として約5質量%〜0.1質量%、好ましくは噴霧乾燥調合物中に存在するタンパク質の質量を基準として約2質量%〜0.5質量%の範囲の量で存在する。
【0170】
噴霧乾燥調合物は、1つ以上の緩衝剤(例えば、重炭酸、クエン酸、酢酸、リン酸、ピロリン酸、メチルホスホン酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、またはマレイン酸のナトリウムおよび/またはカリウム塩)、ならびに酵素安定剤(エチレンジアミン四酢酸、(1−ヒドロキシエチリデン)ビスホスホン酸など)をさらに含んでもよい。
【0171】
少なくとも1つの酵素、少なくとも1つのオリゴ糖オリゴ糖賦形剤および任意選択の少なくとも1つの界面活性剤の調合物の噴霧乾燥は、例えば、Spray Drying Handbook、5th ed.,K.Masters,John Wiley & Sons,Inc.,NY,N.Y.(1991)に、およびPlatz,R.らに付与されるPCT特許公開国際公開第97/41833号パンフレット(1997)および同第96/32149号パンフレット(1996)に概して記載されるように実施される。
【0172】
一般に、噴霧乾燥は、高度に分散された液体と、液体小滴の蒸発および乾燥をもたらすのに十分な容量の熱風とを一緒にすることからなる。典型的には供給物は、溶媒を蒸発させ、乾燥生成物をコレクターに搬送する暖かい濾過空気の流れ中へ噴霧される。使用済み空気は次に溶媒と共に排出される。当業者は、幾つかの異なるタイプの装置が所望の生成物を提供するために使用されてもよいことを十分理解するであろう。例えば、Buchi Ltd.(Postfach,Switzerland)またはGEA Niro Corp.(Copenhagen,Denmark)によって製造される市販の噴霧乾燥機が所望のサイズの粒子を効果的に生成するであろう。これらの噴霧乾燥機、および特にそれらの噴霧器が、ダブルノズル技法を用いる2つの溶液の同時噴霧などの、特殊用途向けに改造されてもまたは特注生産されてもよいことはさらに十分理解されるであろう。より具体的には、油中水エマルジョンは1ノズルから噴霧され、マンニトールなどの非付着剤を含有する溶液は第2ノズルから共噴霧することができる。他の場合には、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)ポンプを使用する特注設計のノズルを通して供給溶液を押し通すことが望ましいかもしれない。正しいモルホロジーを含む微細構造物および/または組成物が製造されるという条件で、装置の選択は決定的に重要であるわけではなく、本明細書の教示を考慮して当業者には明らかであろう。
【0173】
噴霧材料を乾燥させるために使用されるガスの入口および出口の両方の温度は、それが噴霧材料中の酵素の分解を引き起こさないようなものである。かかる温度は、一般には、入口温度が約50℃〜約225℃の範囲であり、一方出口温度が約30℃〜約150℃の範囲であるが、典型的には実験で決定される。好ましいパラメータには、約20〜150psi(0.14MPa〜1.03MPa)、好ましくは約30〜40から100psiまで(0.21〜0.28MPaから0.69MPaまで)の範囲の噴霧圧力が含まれる。典型的には、用いられる噴霧圧力は、次の(MPa)0.14、0.21、0.28、0.34、0.41、0.48、0.55、0.62、0.69、0.76、0.83以上の1つであろう。
【0174】
噴霧乾燥酵素粉末またはカルボン酸エステル中の噴霧乾燥酵素粉末の調合物は、周囲温度で貯蔵されるときに長期間その酵素活性を実質的に保持する。噴霧乾燥酵素粉末またはカルボン酸エステル中の噴霧乾燥酵素粉末の調合物は、短期間高められた温度でその酵素活性を実質的に保持する。一実施形態では、「その酵素活性を実質的に保持する」は、カルボン酸エステルと酵素粉末とからなる調合物の調製前の酵素粉末の初期酵素活性と比べて、噴霧乾燥酵素粉末またはカルボン酸エステル中の噴霧乾燥酵素粉末の調合物が、カルボン酸エステルと酵素粉末とからなる調合物において周囲温度での延長された貯蔵期間後におよび/または高められた温度(周囲温度より上)で短い貯蔵期間後に酵素粉末または酵素粉末の調合物中の酵素の酵素活性の少なくとも約75パーセントを保持することを意味する。延長された貯蔵期間は、周囲温度で約1年〜約2年の期間である。一実施形態では、短い貯蔵期間は、高められた温度での、カルボン酸エステルと酵素粉末とからなる調合物が40℃で製造されるときから40℃で約8週間までの期間である。別の実施形態では、高められた温度は約30℃〜約52℃の範囲にある。好ましい実施形態では、高められた温度は約30℃〜約40℃の範囲にある。
【0175】
幾つかの実施形態では、噴霧乾燥酵素粉末は、40℃でカルボン酸エステルと酵素粉末とからなる調合物の調製前の酵素粉末の初期酵素活性と比べて、カルボン酸エステルと酵素粉末とからなる調合物において40℃で8週間の貯蔵後に少なくとも1つの酵素の酵素活性の少なくとも75パーセントを有する。他の実施形態では、酵素粉末は、40℃でカルボン酸エステルと酵素粉末とからなる調合物の調製前の酵素粉末の初期酵素活性と比べて、カルボン酸エステルと酵素粉末とからなる調合物において40℃で8週間の貯蔵後に少なくとも76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100パーセントを有する。好ましくは、ペルヒドロリシス活性は、以下に、実施例8〜13に記載されるように測定されるが、ペルヒドロリシス活性を測定する任意の方法を本発明の実施で用いることができる。
【0176】
幾つかの実施形態では、述べられた期間にわたる酵素活性のさらなる向上は、約5.5〜約9.5のpH範囲で緩衝能力を有する緩衝剤を、カルボン酸エステルと噴霧乾燥酵素粉末とからなる調合物に添加することによって達成することができる。本調合物での使用のための好適な緩衝剤には、重炭酸、ピロリン酸、リン酸、メチルホスホン酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸またはコハク酸のナトリウム塩、カリウム塩、またはナトリウムもしくはカリウム塩の混合物が含まれてもよいが、それらに限定されない。カルボン酸エステルと噴霧乾燥酵素粉末とからなる本調合物での使用のための好ましい緩衝剤には、重炭酸、リン酸、メチルホスホン酸、またはコハク酸のナトリウム塩、カリウム塩、またはナトリウムもしくはカリウム塩の混合物が含まれる。
【0177】
緩衝剤がカルボン酸エステルおよび酵素粉末調合物中に存在する実施形態では、緩衝剤は、カルボン酸エステルと酵素粉末とからなる調合物中のカルボン酸エステルの質量を基準として約0.01質量%〜約50質量%の範囲の量で存在してもよい。緩衝剤は、カルボン酸エステルと酵素粉末とからなる調合物中のカルボン酸エステルの質量を基準として約0.10質量%〜約10質量%のより好ましい範囲で存在してもよい。さらに、これらの実施形態では、酵素のペルヒドロリシス活性間の比較は、(a)カルボン酸エステルと、約5.5〜約9.5のpH範囲で緩衝能力を有する緩衝剤と、酵素粉末とからなる調合物において40℃で8週間の貯蔵後に少なくとも1つの酵素のペルヒドロリシス活性の少なくとも75パーセントを保持する酵素粉末と、(b)カルボン酸エステルと、約5.5〜約9.5のpH範囲で緩衝能力を有する緩衝剤と、酵素粉末とからなる調合物の調製前の酵素粉末の初期ペルヒドロリシス活性との間として測定される。
【0178】
噴霧乾燥酵素粉末は、トリアセチンなどの、少なくとも1つの酵素用の基質である有機化合物中の調合物として貯蔵されることが意図される。添加される過酸化水素の不存在下では、トリアセチンは通常、CE−7炭水化物エステラーゼによって水溶液中で加水分解されてジアセチンおよび酢酸を生成し、酢酸の生成は反応混合物のpHの低下をもたらす。トリアセチン中の酵素の長期貯蔵安定性のための一要件は、トリアセチンとトリアセチン中に存在する可能性がある任意の水との有意な反応が存在しないことであり;一市販トリアセチン(Tessenderlo Group,Brussels,Belgium)によって供給される)中の含水率についての規格は0.03質量%水(300ppm)である。トリアセチン中の酵素の貯蔵中に起こるトリアセチンのいかなる加水分解も、酢酸を生成するであろうし、酢酸は、CE−7カルボヒドレートエステラーゼのペルヒドロリシスの活性の低下または不活性化をもたらし得るし;CE−7カルボヒドレートエステラーゼのペルヒドロラーゼ活性は5.0のpH以下で典型的には不活性化される(DiCosimo,R.らに付与される米国特許出願第12/539,025号明細書を参照されたい)。本出願での使用のために選択されるオリゴ糖賦形剤は、酢酸が調合物中の低濃度の水の存在のために発生する可能性がある条件下で酵素用の有機基質中の酵素の安定性を提供しなければならない。
【0179】
カルボン酸エステルおよび過酸化水素からの過酸の酵素触媒による調製のための好適な反応条件
本発明の一態様では、ペルヒドロリシス活性を有する酵素触媒の存在下に、1つ以上のカルボン酸エステルを、過酸素源(過酸化水素、過ホウ酸ナトリウムまたは過炭酸ナトリウム)と反応させることによって過酸を含む水性調合物を生成するための方法が提供される。一実施形態では、酵素触媒は、ペルヒドロリシス活性を有する少なくとも1つの酵素であって、CE−7炭水化物エステラーゼ族(CE−7;Coutinho,P.M.,Henrissat,B.、上記を参照)のメンバーとして構造上分類される酵素を含む。別の実施形態では、ペルヒドロラーゼ触媒は、セファロスポリンCデアセチラーゼとして構造上分類される。別の実施形態では、ペルヒドロラーゼ触媒は、アセチルキシランエステラーゼとして構造上分類される。
【0180】
一実施形態では、ペルヒドロラーゼ触媒は、ペルヒドロリシス活性と
a)アミノ酸残基118〜120としてのRGQモチーフ;
b)アミノ酸残基179〜183でのGXSQGモチーフ;および
c)CLUSTALWを用いて基準配列の配列番号1に整列させられるときにアミノ酸残基298〜299としてのHEモチーフ
を含むシグネチャーモチーフとを有する酵素を含む。
【0181】
さらなる実施形態では、シグネチャーモチーフはCLUSTALWを用いて基準配列の配列番号1に整列させられるときにアミノ酸残基267〜269にLXDモチーフと定義される第4保存モチーフをさらに含む。
【0182】
別の実施形態では、ペルヒドロラーゼ触媒は、本シグネチャーモチーフおよび配列番号1に付与される少なくとも30%アミノ酸を有する酵素を含む。
【0183】
別の実施形態では、ペルヒドロラーゼ触媒は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、19、20、21、22、23、24、および25からなる群から選択されるペルヒドロラーゼ活性を有する酵素を含む。
【0184】
別の実施形態では、ペルヒドロラーゼ触媒は、配列番号18と定義される隣接シグネチャーモチーフと少なくとも40%アミノ酸同一性を有する酵素であって、上記の保存モチーフ(すなわち、RGQ、GXSQG、およびHE、ならびに任意選択的に、LXD)が保存されている酵素を含む。
【0185】
別の実施形態では、ペルヒドロラーゼ触媒は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、19、20、21、22、23、24、および25からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する酵素であって、シグネチャーモチーフが保存され、ペルヒドロラーゼ活性が保持される限り1つ以上の付加、削除、または置換を有してもよい酵素を含む。
【0186】
好適なカルボン酸エステル基質には、次式:
[X]
(式中、X=式RC(O)Oのエステル基であり;
=ヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基で任意選択的に置換された、C1〜C7の線状、分岐または環式ヒドロカルビル部分であり、ここで、Rは、R6=C2〜C7については1つ以上のエーテル結合を任意選択的に含み;
=ヒドロキシル基で任意選択的に置換されたC1〜C6の線状、分岐、または環式ヒドロカルビル部分であり、ここで、R中の各炭素原子は個別に、1つ以下のヒドロキシル基または1つ以下のエステル基を含み、Rは1つ以上のエーテル結合を任意選択的に含み;
m=1からR中の炭素原子の数までである)
によって提供されるエステルであって、
25℃で少なくとも5ppmの水への溶解度を有するエステルが含まれてもよい。
【0187】
他の実施形態では、好適な基質にはまた、式:
【化3】

(式中、R=ヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で任意選択的に置換されたC1〜C7の直鎖または分岐鎖のアルキルであり、R=C1〜C10の直鎖または分岐鎖のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CHCH−O)Hもしくは(CHCH(CH)−O)Hであり、nは1〜10である)
のエステルが含まれてもよい。
【0188】
他の実施形態では、好適なカルボン酸エステル基質には、式:
【化4】

(式中、R=ヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で任意選択的に置換されたC1〜C7の直鎖または分岐鎖のアルキルであり、RおよびRは個別にHまたはRC(O)である)
のグリセリドが含まれてもよい。
【0189】
他の実施形態では、Rは、ヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基で任意選択的に置換された、1つ以上のエーテル結合を任意選択的に含む、C1〜C7の線状ヒドロカルビル部分である。さらなる好ましい実施形態では、Rは、ヒドロキシル基で任意選択的に置換された、および/または1つ以上のエーテル結合を任意選択的に含む、C2〜C7の線状ヒドロカルビル部分である。
【0190】
他の実施形態では、好適なカルボン酸エステル基質にはまた、アセチル化単−、二−および多糖類からなる群から選択されるアセチル化糖類が含まれてもよい。好ましい実施形態では、アセチル化糖類には、アセチル化単−、二−および多糖類が含まれる。他の実施形態では、アセチル化糖類は、アセチル化キシラン、アセチル化キシランの断片、アセチル化キシロース(キシローステトラアセテートなどの)、アセチル化グルコース(グルコースペンタアセテートなどの)、β−D−リボフラノース−1,2,3,5−テトラアセテート、トリ−O−アセチル−D−ガラクタール、トリ−O−アセチル−D−グルカール、およびアセチル化セルロースからなる群から選択される。好ましい実施形態では、アセチル化糖類は、β−D−リボフラノース−1,2,3,5−テトラアセテート、トリ−O−アセチル−D−ガラクタール、トリ−O−アセチル−D−グルカール、およびアセチル化セルロースからなる群から選択される。従って、アセチル化炭水化物は、本方法およびシステムを用いて(すなわち、過酸素源の存在下に)過カルボン酸を発生させるための好適な基質である可能性がある。
【0191】
追加の実施形態では、カルボン酸エステル基質は、モノアセチン;トリアセチン;モノプロピオニン;ジプロオピオニン;トリプロピオニン;モノブチリン;ジブチリン;トリブチリン;グルコースペンタアセテート;キシローステトラアセテート;アセチル化キシラン;アセチル化キシラン断片;β−D−リボフラノース−1,2,3,5−テトラアセテート;トリ−O−アセチル−D−ガラクタール;トリ−O−アセチル−グルカール;プロピレングリコールジアセテート;エチレングリコールジアセテート;1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,5−ペンタンジオール、1,6−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオールのモノエステルもしくはジエステル;およびそれらの混合物であってもよい。本方法およびシステムの好ましい実施形態では、基質はトリアセチンを含む。
【0192】
カルボン酸エステルは、酵素触媒ペルヒドロリシスすると所望濃度の過酸を生成するのに十分な濃度で反応調合物中に存在する。カルボン酸エステルは反応調合物に完全に溶ける必要はないが、相当する過酸へのペルヒドロラーゼ触媒によるエステルの転化を可能にするのに十分な溶解性を有する。カルボン酸エステルは、反応調合物の0.05質量%〜40質量%の濃度で、好ましくは反応調合物の0.1質量%〜20質量%の濃度で、より好ましくは反応調合物の0.5質量%〜10質量%の濃度で反応混合物中に存在する。
【0193】
過酸素源には、過酸化水素、過酸化水素付加体(例えば、尿素−過酸化水素付加体(カルバミドペルオキシド))、過ホウ酸塩および過炭酸塩が含まれてもよいが、それらに限定されない。反応調合物中の過酸素化合物の濃度は、0.0033質量%〜約50質量%、好ましくは0.033質量%〜約40質量%、より好ましくは0.33質量%〜約30質量%の範囲であってもよい。
【0194】
多くのペルヒドロラーゼ触媒(全細胞、透過処理全細胞、および部分精製全細胞抽出物)はカタラーゼ活性を有するとこれまで報告されてきた(EC 1.11.1.6)。カタラーゼは、酸素および水への過酸化水素の転化を触媒する。一態様では、ペルヒドロリシス触媒はカタラーゼ活性を欠く。別の態様では、カタラーゼ阻害剤が反応調合物に添加される。カタラーゼ阻害剤の例には、アジ化ナトリウムおよび硫酸ヒドロキシルアミンが挙げられるが、それらに限定されない。当業者は、必要に応じてカタラーゼ阻害剤の濃度を調節することができる。カタラーゼ阻害剤の濃度は、典型的には0.1mM〜約1M、好ましくは約1mM〜約50mM、より好ましくは約1mM〜約20mMの範囲である。一態様では、アジ化ナトリウム濃度は、典型的には約20mM〜約60mMの範囲であるが、硫酸ヒドロキシルアミン濃度は、典型的には約0.5mM〜約30mM、好ましくは約10mMである。
【0195】
別の実施形態では、酵素触媒は、顕著なカタラーゼ活性を欠くかまたはカタラーゼ活性を低下させるまたは排除するために操作される。宿主細胞におけるカタラーゼ活性は、トランスポゾン突然変異生成、RNAアンチセンス発現、標的突然変異生成、およびランダム突然変異生成を含むが、それらに限定されない周知の技法を用いてカタラーゼ活性に関与する遺伝子の発現を崩壊させることによって下方制御するかまたは排除することができる。好ましい実施形態では、内在性カタラーゼ活性をエンコードする遺伝子は、下方制御されるかまたは崩壊させられる(すなわち、不活性化される)。本明細書で用いるところでは、「崩壊」遺伝子は、修飾遺伝子でエンコードされたタンパク質の活性および/または機能がもはや存在しないものである。遺伝子を崩壊させるための手段は、当該技術分野でよく知られており、相当するタンパク質の活性および/または機能がもはや存在しない限り、挿入、削除、または遺伝子への突然変異を含んでもよいが、それらに限定されない。さらに好ましい実施形態では、生産宿主は、katGおよびkatEからなる群から選択される崩壊カタラーゼ遺伝子を含む大腸菌(E.coli)生産宿主である(米国特許出願公開第2008/0176299号明細書を参照されたい)。別の実施形態では、生産宿主は、katGおよびkatg1カタラーゼ遺伝子の両方で下方制御および/または崩壊を含む大腸菌(E.coli)菌株である。
【0196】
水性調合物中の触媒の濃度は、触媒の特有の触媒活性に依存し、反応の所望の速度を得るために選択される。ペルヒドロリシス反応における触媒の質量は典型的には、全反応容積の1mL当たり0.0001mg〜10mg、好ましくは1mL当たり0.001mg〜2.0mgの範囲である。触媒はまた、当業者に周知の方法を用いて可溶性または不溶性担体上に固定化されてもよい;例えば、Immobilization of Enzymes and Cells;Gordon F.Bickerstaff,Editor;Humana Press,Totowa,NJ,USA;1997を参照されたい。固定化触媒の使用は、触媒の回収およびその後の反応での再使用を可能にする。酵素触媒は、全微生物細胞、透過処理微生物細胞、微生物細胞抽出物、部分精製または精製酵素、およびそれらの混合物の形態にあってもよい。
【0197】
一態様では、カルボン酸エステルの化学的ペルヒドロリシスと酵素的ペルヒドロリシスとの組み合わせによって発生する過酸の濃度は、所望のpHでの漂白または消毒のための有効濃度の過酸を提供するのに十分である。別の態様では、本方法は、所望の有効濃度の過酸を生成するための酵素と酵素基質との組み合わせを提供し、ここで、添加される酵素の不存在下では、生成する過酸の濃度は顕著により低い。幾つかの場合には、無機過酸化物と酵素基質との直接化学反応による酵素基質のかなりの化学的ペルヒドロリシスがあるが、所望の用途での有効濃度の過酸を提供するのに十分な濃度の過酸の発生はない可能性があり、全過酸濃度の顕著な増加は、反応調合物への適切なペルヒドロラーゼ触媒の添加によって達成される。
【0198】
少なくとも1つのカルボン酸エステルのペルヒドロリシスによって発生する過酸(過酢酸など)の濃度は、ペルヒドロリシス反応の開始の10分以内に、好ましくは5分以内に、より好ましくは1分以内に、少なくとも約20ppm、好ましくは少なくとも100ppm、より好ましくは少なくとも約200ppm過酸、より好ましくは少なくとも300ppm、より好ましくは少なくとも500ppm、より好ましくは少なくとも700ppm、より好ましくは少なくとも約1000ppm過酸、最も好ましくは少なくとも2000ppm過酸である。過酸を含む生成物調合物は、所望のより低い濃度の過酸の調合物を生成するために、水、または主として水からなる溶液で任意選択的に希釈されてもよい。一態様では、所望濃度の過酸を生成するために必要とされる反応時間は、約2時間以下、好ましくは約30分以下、より好ましくは約10分以下、最も好ましくは約5分以下である。他の態様では、生物学的汚染物質で汚染された硬表面または無生物物体は、前記反応成分の組み合わせから約5分〜約168時間内に、または約5分〜約48時間内に、または前記反応成分の組み合わせから約5分〜2時間内に、またはその中での任意のかかる時間間隔で本明細書に記載される方法に従って形成される過酸と接触させられる。
【0199】
別の態様では、本明細書に記載される方法に従って形成されるペルオキシカルボン酸は、ペルオキシカルボン酸が、消毒、漂白、防汚、殺菌、脱臭またはそれらの組み合わせなどの、利益を提供するために衣料品または織物と接触させられる、ランドリーケア用途に使用される。ペルオキシカルボン酸は、織物プレウォッシュ処理剤、洗濯洗剤、汚れ除去剤、漂白組成物、脱臭組成物、およびリンス剤を含むが、それらに限定されない様々なランドリーケア製品に使用されてもよい。一実施形態では、標的表面向けのペルオキシカルボン酸を生成するための本方法は、その場で行われる。
【0200】
ランドリーケア用途との関連で、用語「衣料品もしくは織物を接触させること」は、衣料品もしくは織物が本明細書に開示される調合物に暴露されることを意味する。この目的のために、多数のフォーマットがあり、液体、固体、ゲル、ペースト、棒、錠剤、噴霧液、発泡体、粉末、または顆粒を含むが、それらに限定されない調合物が衣料品もしくは織物を処理するために使用されてもよいし、手動定量供給、装置定量供給、基質からの定量供給、ランドリー洗濯機または乾燥機からの噴霧および自動定量供給によって送出することができる。顆粒状組成物はまたコンパクト形であることができ;液体組成物はまた濃縮形にあることができる。
【0201】
本明細書に開示される調合物が洗濯機で使用されるとき、調合物は、洗濯洗剤に典型的な成分をさらに含有することができる。例えば、典型的な成分には、界面活性剤、漂白剤、漂白活性化剤、追加の酵素、石鹸泡抑制剤、分散剤、石灰石鹸分散剤、土壌懸濁剤および再付着防止剤、軟化剤、腐食防止剤、変色防止剤、殺菌剤、pH調整剤、非ビルダーアルカリ源、キレート剤、有機および/または無機フィラー、溶媒、ヒドロトロープ、蛍光増白剤、染料、および香料が含まれるが、それらに限定されない。
【0202】
本明細書に開示される調合物はまた、固体または液体形で洗剤添加物製品として使用することができる。かかる添加物製品は、通常の洗剤組成物の性能を補足するまたは強化することを意図され、クリーニングプロセスの任意の段階で添加することができる。
【0203】
過酸が、漂白、汚れ除去、および臭い低減の1つ以上のために発生するランドリーケアのための本システムおよび方法に関連して、少なくとも1つのカルボン酸エステルのペルヒドロリシスによって発生する過酸(例えば、過酢酸)の濃度は、少なくとも約2ppm、好ましくは少なくとも20ppm、好ましくは少なくとも100ppm、より好ましくは少なくとも約200ppm過酸であってもよい。過酸が、消毒または殺菌のために発生するランドリーケアのための本システムおよび方法に関連して、少なくとも1つのカルボン酸エステルのペルヒドロリシスによって発生する過酸(例えば、過酢酸)の濃度は、ペルヒドロリシス反応の開始から10分以内、好ましくは5分以内、最も好ましくは1分以内に少なくとも約2ppm、より好ましくは少なくとも20ppm、より好ましくは少なくとも200ppm、より好ましくは少なくとも500ppm、より好ましくは少なくとも700ppm、より好ましくは少なくとも約1000ppm過酸、最も好ましくは少なくとも2000ppm過酸であってもよい。過酸を含む生成物混合物は、所望のより低い濃度の過酸の混合物を生成するために、水、または主として水からなる溶液で任意選択的に希釈されてもよい。本方法およびシステムの一態様では、所望濃度の過酸を生成するために必要とされる反応時間は、約2時間以下、好ましくは約30分以下、より好ましくは約10分以下、さらにより好ましくは約5分以下、最も好ましくは約1分以下である。
【0204】
反応の温度は、反応速度および酵素触媒活性の安定性の両方を制御するように選択される。反応の温度は、約5℃〜約55℃の反応温度のより好ましい範囲で、反応調合物の凝固点(おおよそ0℃)のすぐ上から約95℃の範囲であってもよい。
【0205】
過酸を含有する最終反応調合物のpHは、約2〜約9、好ましくは約3〜約8、より好ましくは約5〜約8、さらにより好ましくは約5.5〜約8、その上さらにより好ましくは約6.0〜約7.5である。別の実施形態では、反応調合物のpHは酸性(pH<7)である。反応液の、および最終反応調合物のpHは、重炭酸塩、ピロリン酸塩、リン酸塩、メチルホスフェート、クエン酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸マレエートまたはスクシネートを含むが、それらに限定されない好適な緩衝剤の添加によって任意選択的に調整されてもよい。用いられるとき、緩衝剤の濃度は、典型的には0.1mM〜1.0M、好ましくは1mM〜300mM、最も好ましくは10mM〜100mMである。
【0206】
別の態様では、酵素的ペルヒドロリシス反応調合物は、反応調合物へのカルボン酸エステルの溶解の速度を高めるための分散剤として働く有機溶媒を含有してもよい。かかる溶媒には、プロピレングリコールメチルエーテル、アセトン、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、イソプロパノール、エタノール、プロピレングリコール、およびそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。
【0207】
別の態様では、酵素的ペルヒドロリシス生成物は、望ましい機能性を提供する追加の成分を含有してもよい。これらの追加の成分には、緩衝剤、洗剤ビルダー、増粘剤、乳化剤、界面活性剤、湿潤剤、腐食防止剤(ベンゾトリアゾールなど)、酵素安定剤、および過酸化物安定剤(例えば、金属イオンキレート剤)が含まれるが、それらに限定されない。追加の成分の多くは、洗剤工業でよく知られている(例えば、参照により本明細書によって援用される、米国特許第5,932,532号明細書を参照されたい)。乳化剤の例には、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンが挙げられるが、それらに限定されない。増粘剤の例には、LAPONITE(登録商標)RD、コーンスターチ、PVP、CARBOWAX(登録商標)、CARBOPOL(登録商標)、CABOSIL(登録商標)、polysorbate 20、PVA、およびレシチンが挙げられるが、それらに限定されない。緩衝系の例には、リン酸ナトリウム一塩基性/リン酸ナトリウム二塩基性;スルファミン酸/トリエタノールアミン;クエン酸/トリエタノールアミン;酒石酸/トリエタノールアミン;コハク酸/トリエタノールアミン;および酢酸/トリエタノールアミンが挙げられるが、それらに限定されない。界面活性剤の例には、a)エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー、エトキシル化もしくはプロポキシル化線状もしくは分岐の第一級および第二級アルコール、ならびに脂肪族ホスフィンオキシドなどの非イオン界面活性剤;b)第四級アンモニウム化合物、特に、さらに3つのC1〜C2アルキル基に結合した窒素原子に結合したC8〜C20アルキル基を有する第四級アンモニウム化合物などの陽イオン界面活性剤;c)アルカンカルボン酸(例えば、C8〜C20脂肪酸)、アルキルホスホネート、アルカンスルホネート(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム「SDS」)または線状もしくは分岐のアルキルベンゼンスルホネート、アルケンスルホネートなどの陰イオン界面活性剤;ならびにd)アミノカルボン酸、アミノジカルボン酸、アルキルベタイン、およびそれらの混合物などの両性および双性イオン界面活性剤が挙げられるが、それらに限定されない。追加の成分には、香料、染料、過酸化水素の安定剤(例えば、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(DEQUEST(登録商標)2010、Solutia Inc,St.Louis,MO)およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの金属キレート剤)、TURPINAL(登録商標)SL(CAS#2809−21−4)、DEQUEST(登録商標)0520、DEQUEST(登録商標)0531、酵素活性の安定剤(例えば、ポリエチレングリコール(PEG))、ならびに洗剤ビルダーが含まれてもよい。
【0208】
ペルヒドロラーゼ触媒を使用する過酸のその場生成
セファロスポリンCデアセチラーゼ(E.C.3.1.1.41;系統名セファロスポリンCアセチルヒドロラーゼ;CAH)は、セファロスポリンC、7−アミノセファロスポラン酸、および7−(チオフェン−2−アセトアミド)セファロスポラン酸などのセファロスポリン上に結合したアセチルエステルを加水分解する能力を有する酵素である。Abbott,B.and Fukuda,D.,Appl.Microbiol.30(3):413−419(1975))。CAHは、炭水化物エステラーゼ族7と言われる構造上関連したより大きい族の酵素に属する(「CE−7」;Coutinho,P.M.,Henrissat,B.、上記を参照)。
【0209】
CE−7炭水化物エステラーゼ族には、CAHおよびアセチルキシランエステラーゼ(AXE;E.C.3.1.1.72)の両方が含まれる。CE−7族メンバーは、共通の構造モチーフを共有し、それらが典型的にはアセチル化キシロオリゴ糖およびアセチル化セファロスポリンCの両方に対してエステル加水分解活性を示すという点において完全に異常であり、CE−7族が様々な小さな基質に対して多機能のデアセチラーゼ活性を持った単一クラスのタンパク質を表すことを示唆する(Vincentら、上記を参照)。Vincentらは、この族のメンバー間での構造類似性を記載しており、CE−7族のシグネチャー配列モチーフ特性を定義している。
【0210】
CE−7族のメンバーは、植物、真菌類(例えば、セファロスポリジウム・アクレモニウム(Cephalosporidium acremonium))、酵母(例えば、ロドスポリジウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)、ロドトルラ・グルチニス(Rhodotorula glutinis))、およびサーモアナエロバクテリウム種(Thermoanaerobacterium sp.)などのバクテリア;ノルカディア・ラクタムデュランス(Norcardia lactamdurans)、ならびに属バチルス(Bacillus)の様々なメンバー(Politino et al.,Appl.Environ.Microbiol.、63(12):4807−4811(1997);Sakai et al.,J.Ferment.Bioeng.85:53−57(1998);Lorenz,W.and Wiegel,J.,J.Bacteriol 179:5436−5441(1997);Cardoza et al.,Appl.Microbiol.Biotechnol.,54(3):406−412(2000);Mitsushimaら、上記を参照;Abbott,B.and Fukuda,D.,Appl.Microbiol.30(3):413−419(1975);Vincentら、上記を参照;Takami et al.,NAR,28(21):4317−4331(2000);Rey et al.,Genome Biol.,5(10):article 77(2004);Degrassi et al.,Microbiology.,146:1585−1591(2000);米国特許第6,645,233号明細書;同第5,281,525号明細書;同第5,338,676号明細書;および国際公開第99/03984号パンフレット)に見いだされる。
【0211】
DiCosimoらに付与される国際公開第2007/070609号パンフレットならびに米国特許出願公開第2008/0176299号明細書、および同第2008/176783号明細書は、過酸素源と組み合わせられたときに様々なカルボン酸エステル基質から有効濃度の過酸を生成するために好適なペルヒドロリシス活性を有するCE−7酵素として構造上分類される様々な酵素を開示している。改善されたペルヒドロリシス活性を有する変異株CE−7酵素はまた、共同出願された、共同所有される、そして同時係属の米国特許出願(全体を参照により本明細書に援用される、代理人整理番号CL4392 US NA)に記載されている。
【0212】
本方法は、CE−7族の炭水化物エステラーゼに属する酵素のペルヒドロラーゼ活性を用いて水性反応条件下にその場で工業的に有用な、有効濃度の過酸を生成する。
【0213】
過酸および過酸化水素の濃度を測定するためのHPLCアッセイ方法
滴定、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、質量分析法(MS)、キャピラリー電気泳動法(CE)、U.Karst et al.によって記載されている分析手順(Anal.Chem.、69(17):3623−3627(1997))、および本実施例に記載されるような2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン)−6−スルホネート(ABTS)アッセイ(S.Minning,et al.、Analytica Chimica Acta 378:293−298(1999)および国際公開第2004/058961 A1号パンフレット)を含むが、それらに限定されない様々な分析方法を、反応剤および生成物を分析するために本方法に用いることができる。
【0214】
過酸の最低殺生濃度の測定
J.Gabrielson、et al.によって記載されている方法(J.Microbiol.Methods 50:63−73(2002))を、過酸の、または過酸化水素および酵素基質の最低殺生濃度(MBC)の測定のために用いることができる。このアッセイ方法は、XTT還元阻害に基づいており、ここで、XTT((2,3−ビス[2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホフェニル]−5−[(フェニルアミノ)カルボニル]−2H−テトラゾリウム、分子内塩、モノナトリウム塩)は、490nmまたは450nmで測定される光学密度(OD)の変化によって微生物呼吸活性を示すレドックス染料である。しかしながら、生存プレートカウント、直接顕微鏡カウント、乾燥質量、濁度測定、吸光度、およびバイオルミネセンス(例えば、Brock,Semour S.,Disinfection,Sterilization,and Preservation,5th edition,Lippincott Williams & Wilkins,Philadelphia,PA,USA;2001を参照されたい)を含むが、それらに限定されない、消毒剤および防腐剤の活性を試験するために利用可能な様々な他の方法がある。
【0215】
酵素的に調製されたペルオキシカルボン酸組成物の使用
本方法に従って生成した酵素触媒発生ペルオキシカルボン酸は、医療機器(例えば、内視鏡)、織物(例えば、衣服、カーペット)、食品調理表面、食品貯蔵および食品包装設備、食品の包装のために使用される材料、鶏孵化場および養鶏設備、動物囲い地、ならびに微生物および/または殺ウィルス活性を有する使用済みプロセス廃水の除染などの、生物学的汚染物質の濃度の低減のための様々な硬表面/無生物物体用途に使用することができる。酵素発生ペルオキシカルボン酸は、殺生物活性をさらに提供するためにプリオン(例えば、ある種のプロテアーゼ)を不活性化するように設計された調合物に使用されてもよい。好ましい態様では、本ペルオキシカルボン酸組成物は特に、オートクレーブ処理できない医療機器および食品包装設備用の消毒剤として有用である。本ペルオキシカルボン酸含有調合物はGRASまたは食品グレード成分(酵素、酵素基質、過酸化水素、および緩衝剤)を使用して調製できるので、本酵素発生ペルオキシカルボン酸はまた、動物死骸、肉、果物および野菜の除染のために、または調理食品の除染のために使用されてもよい。本酵素発生ペルオキシカルボン酸は、その最終形態が粉末、液体、ゲル、フィルム、固体またはエアゾールである製品へ組み込まれてもよい。本酵素発生ペルオキシカルボン酸は、有効な除染を依然として提供する濃度に希釈されてもよい。
【0216】
有効濃度のペルオキシカルボン酸を含む組成物は、生物学的汚染物質で汚染された(または汚染されていると疑われる)表面および/または物体を、表面または物体を本方法によって生成する生成物と接触させることによって消毒するために使用することができる。本明細書で用いるところでは、「接触させること」は、有効濃度のペルオキシカルボン酸を含む消毒組成物を、きれいにするおよび消毒するのに十分な期間、生物学的汚染物質での汚染が疑われる表面または無生物物体と接触させることを意味する。接触させることには、有効濃度のペルオキシカルボン酸を含むペルオキシカルボン酸溶液もしくは組成物、または有効濃度のペルオキシカルボン酸を形成する溶液もしくは組成物を、ある濃度の生物学的汚染物で汚染されていると疑われる表面または無生物物体と、噴霧する、処理する、浸漬する、フラッシングする、上または中へ注ぐ、混合する、組み合わせる、塗装する、コートする、塗布する、貼り付けるおよび別のやり方で伝えることが含まれる。本消毒組成物は、クリーニングおよび消毒の両方を提供するためにクリーニング組成物と組み合わせられてもよい。あるいはまた、クリーニング剤(例えば、界面活性剤または洗剤)は、単一組成物でクリーニングおよび消毒の両方を提供するために本調合物中へ組み入れられてもよい。
【0217】
有効濃度のペルオキシカルボン酸を含む組成物はまた、少なくとも1つの追加の抗菌剤、プリオン分解プロテアーゼの組み合わせ、殺ウィルス剤、殺胞子剤、または殺生物剤を含有することができる。これらの試剤と本特許請求される方法によって生成するペルオキシカルボン酸との組み合わせは、生物学的汚染物質で汚染された(または汚染されていると疑われる)表面および/または物体をきれいにするおよび消毒するために使用されるとき増加した効果および/または相乗効果を提供することができる。好適な抗菌剤には、所望の程度の微生物防護を提供するのに十分な量での、カルボン酸エステル(例えば、p−ヒドロキシアルキルベンゾエートおよびアルキルシンナメート);スルホン酸(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸);ヨード化合物または活性ハロゲン化合物(例えば、元素状ハロゲン、酸化ハロゲン(例えば、NaOCl、HOCl、HOBr、ClO)、ヨウ素、インターハロゲン化合物(例えば、一塩化ヨウ素、二塩化ヨウ素、三塩化ヨウ素、四塩化ヨウ素、塩化臭素、一臭化ヨウ素、または二臭化ヨウ素)、ポリハロゲン化物、次亜塩素酸塩、次亜塩素酸、次亜臭素酸塩、次亜臭素酸、クロロ−およびブロモ−ヒダントイン、二酸化塩素、および亜塩素酸塩);ベンゾイルペルオキシド、アルキルベンゾイルペルオキシドを含む有機過酸化物、オゾン、一重項酸素発生剤、およびそれらの混合物;フェノール誘導体(o−フェニルフェノール、o−ベンジル−p−クロロフェノール、第三アミルフェノールおよびC〜Cアルキルヒドロキシベンゾエートなど);第四級アンモニウム化合物(塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウムおよびそれらの混合物など);ならびにかかる抗菌剤の混合物が含まれる。有効量の抗菌剤は、約0.001質量%〜約60質量%抗菌剤、約0.01質量%〜約15質量%抗菌剤、または約0.08質量%〜約2.5質量%抗菌剤を含む。
【0218】
一態様では、本方法によって形成されるペルオキシカルボン酸は、場所上におよび/または場所に適用されたときに(生存する微生物個体群などの)生存可能な生物学的汚染物質の濃度を低下させるために使用することができる。本明細書で用いるところでは、「場所」は、消毒または漂白に好適な標的表面の一部または全てを含む。標的表面には、生物学的汚染物質で潜在的に汚染され得る全ての表面が含まれる。非限定的な例には、食品もしくは飲料工業で見いだされる設備表面(タンク、コンベヤ、床、下水設備、クーラー、フリーザー、設備表面、壁、バルブ、ベルト、パイプ、下水設備、ジョイント、クレバス、それらの組み合わせなどの);建物表面(壁、床および窓などの);水処理施設、プールおよび健康施設、ならびに発酵タンクを含む、非食品工業関連パイプおよび下水設備;病院または動物病院表面(壁、床、ベッド、設備(内視鏡)、衣類、手術着、靴、および他の病院または動物病院表面を含む、病院/動物病院または他の医療の場で使い古しの衣類などの);レストラン表面;浴室表面;トイレ;クロスおよび靴;家禽、畜牛、乳牛、ヤギ、ウマおよびブタなどの、家畜用の家畜小屋またはきゅう舎の表面;家禽用のまたはエビ用の孵化場;ならびに医薬品もしくは生物医薬品表面(例えば、医薬品もしくは生物医薬品製造設備、医薬品もしくは生物医薬品原料、医薬品もしくは生物医薬品賦形剤)が挙げられる。追加の硬表面にはまた、牛肉、鶏肉、豚肉、野菜、果物、シーフード、それらの組み合わせなどの食品が含まれる。この場所にはまた、汚染されたリンネルまたは他の織物などの水吸収材料が含まれ得る。この場所にはまた、種子、球茎、根茎、果物、および野菜を含む収穫された植物もしくは植物生成物、成育中の植物、ならびにとりわけ、穀物、葉野菜およびサラダ作物、根菜、マメ科植物、ベリー果物、柑橘果物およびハードフルーツを含む、作物成育中植物が含まれる。
【0219】
硬表面材料の非限定的な例は、金属(例えば、スチール、ステンレススチール、クロム、チタン、鉄、銅、真ちゅう、アルミニウム、およびそれらの合金)、鉱物(例えば、コンクリート)、ポリマーおよびプラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリ(アクリロニトリル,ブタジエン,スチレン)、ポリ(アクリロニトリル,ブタジエン)、アクリロニトリルブタジエン;ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル;およびナイロンなどのポリアミド)である。追加の表面には、煉瓦、タイル、セラミック、磁器、木材、ビニル、リノリウム、およびカーペットが含まれる。
【0220】
本方法によって形成されるペルオキシカルボン酸は、漂白、殺菌、消毒、汚れ除去、臭い低減を含むが、それらに限定されない利益を織物に提供するために使用されてもよい。本方法によって形成されるペルオキシカルボン酸は、織物プレウォッシュ処理剤、洗濯洗剤、汚れ除去剤、漂白組成物、脱臭組成物、およびリンス剤を含むが、それらに限定されないかなり多数のランドリーケア製品に使用されてもよい。
【0221】
組み換え微生物発現
インスタント配列の遺伝子および遺伝子生成物は、異種宿主細胞で、特に微生物宿主の細胞で生産されてもよい。インスタント遺伝子および核酸分子の発現のための好ましい異種宿主細胞は、真菌類またはバクテリア族内に見いだすことができ、かつ、広範囲の温度、pH値、および溶媒耐性にわたって増殖する微生物宿主である。例えば、バクテリア、酵母、および糸状菌のいずれかが本核酸分子の発現を好適にホストする可能性があると考えられる。ペルヒドロラーゼは、細胞内に、細胞外に、または細胞内および細胞外の両方の組み合わせで発現されてもよく、ここで、細胞外発現は、発酵生成物から所望のタンパク質の回収を、細胞内発現によって生産されるタンパク質の回収のための方法より容易なものにする。転写、トランスレーションおよびタンパク質生合成装置は、細胞バイオマスを発生させるために使用される細胞供給原料に関連して変わらないままであり;機能性遺伝子はとにかく発現されるであろう。宿主菌株の例には、アスペルギルス属(Aspergillus)、トリコデルマ属(Trichoderma)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、ピチア属(Pichia)、ファフィア属(Phaffia)、クルイベロマイセス属(Kluyveromyces)、カンジダ属(Candida)、ハンセヌラ(Hansenula)、ヤロワイヤ(Yarrowia)、サルモネラ(Salmonella)、バチルス属(Bacillus)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、ジモモナス属(Zymomonas)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、エリスロバクター属(Erythrobacter)、クロロビウム属(Chlorobium)、クロマチウム(Chromatium)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)、サイトファガ(Cytophaga)、ロドバクター属(Rhodobacter)、ロドコッカス属(Rhodococcus)、ストレプトミセス(Streptomyces)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、コリネバクテリア(Corynebacteria)、マイコバクレリウム属(Mycobacterium)、ディノコックス(Deinococcus)、エシェリキア属(Escherichia)、エルヴィニア属(Erwinia)、パントエア(Pantoea)、シュードモナス(Pseudomonas)、スフィンゴモナス(Sphingomonas)、メチロモナス属(Methylomonas)、メチロバクター属(Methylobacter)、メチロコッカス属(Methylococcus)、メチロシナス属(Methylosinus)、メチロミクロビウム属(Methylomicrobium)、メチロシスチス属(Methylocystis)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、シネコシスティス属(Synechocystis)、シネココッカス属(Synechococcus)、アナベナ属(Anabaena)、チオバチルス属(Thiobacillus)、メタノバクテリウム(Methanobacterium)、クレブシエラ属(Klebsiella)、およびミキソコッカス属(Myxococcus)などのバクテリア種、真菌種または酵母種が挙げられるが、それらに限定されない。一実施形態では、バクテリア宿主菌株には、エシェリキア属(Escherichia)、バチルス属(Bacillus)、クルイベロマイセス属(Kluyveromyces)、およびシュードモナス(Pseudomonas)が含まれる。好ましい実施形態では、バクテリア宿主細胞は大腸菌(Escherichia coli)である。
【0222】
大規模微生物増殖および機能性遺伝子発現は、広範囲の単純または複雑な炭水化物、有機酸およびアルコールもしくはメタンなどの、飽和炭化水素または光合成のもしくは化学的自己栄養宿主の場合には二酸化炭素、窒素、リン、硫黄、酸素、炭素または小さな無機イオンを含む任意の微量の微量栄養素の形および量を使用してもよい。増殖速度の調節は、栄養素またはエネルギー源と典型的には考えられない、特有の調節分子の添加または不添加によって影響を受ける可能性がある。
【0223】
好適な宿主細胞の形質転換に有用なベクターまたはカセットは、当該技術分野でよく知られている。典型的にはベクターまたはカセットは、関連遺伝子の転写およびトランスレーションを指示する配列、選択できるマーカー、および自律複製または染色体統合を可能にする配列を含有する。好適なベクターは、転写開始制御内部に持つ遺伝子の領域5’と転写終了を制御するDNA断片の領域3’とを含む。それは、両方の制御領域が形質転換した宿主細胞に相同のおよび/または生産宿主生まれの遺伝子から誘導されるときに最も好ましいが、かかる制御領域はそのように誘導される必要はない。
【0224】
本セファロスポリンCデアセチラーゼコーディング領域の発現を所望の宿主細胞で推進するために有用である開始制御領域またはプロモーターは非常に多く、当業者にはおなじみである。CYC1、HIS3、GAL1、GAL10、ADH1、PGK、PHO5、GAPDH、ADC1、TRP1、URA3、LEU2、ENO、TPI(サッカロミセス属(Saccharomyces)での発現のために有用な);AOX1(ピチア属(Pichia)での発現のために有用な);ならびにバチルス属(Bacillus)での発現のために有用なamy、apr、nprプロモーターおよび様々なファージプロモーターだけでなくlac、araB、tet、trp、lP、lP、T7、tac、およびtrc(大腸菌(Escherichia coli)での発現のために有用な)を含むがそれらに限定されない、これらの遺伝子を推進することができる実質的にいかなるプロモ−ターも本発明に好適である。
【0225】
終了制御領域はまた、好ましい宿主細胞生まれの様々な遺伝子に由来してもよい。一実施形態では、終了制御領域の包含は随意である。別の実施形態では、キメラ遺伝子は、好ましい宿主細胞に由来する終了制御領域を含む。
【0226】
工業生産
様々な培養方法論がペルヒドロラーゼ触媒を製造するために適用されてもよい。例えば、組み換え微生物宿主から過剰発現された特有の遺伝子生成物の大規模生産は、回分、流加、および連続培養方法論によって生み出されてもよい。回分および流加培養法は当該技術分野で一般的であり、よく知られており、例は、Thomas D.Brock in Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology,Second Edition,Sinauer Associates,Inc.,Sunderland,MA(1989)およびDeshpande,Mukund V.,Appl.Biochem.Biotechnol.,36:227(1992)に見いだされる可能性がある。
【0227】
所望のペルヒドロラーゼ触媒の商業生産はまた、連続培養で成し遂げられてもよい。連続培養は、ある規定の培地が連続的にバイオリアクターに加えられ、等量の馴化培地が同時に処理のために取り出されるオープンシステムである。連続培養は一般に、細胞が主として対数期増殖にある一定の高い液相密度を維持する。あるいはまた、連続培養は、炭素および栄養素が連続的に加えられ、そして貴重な生成物、副生物または廃棄物が細胞集団から連続的に取り出される固定化触媒で実施されてもよい。細胞固定化は、天然および/または合成材料からなる広範囲の固体担体を使用して行われてもよい。
【0228】
回分発酵、流加発酵、または連続培養からの所望のペルヒドロラーゼ触媒の回収は、当業者に公知である方法のいずれかによって成し遂げられてもよい。例えば、酵素触媒が細胞内で生産されるとき、細胞ペーストは、遠心分離または膜濾過によって培地から分離され、水または所望のpHの水性緩衝液で任意選択的に洗浄され、次に所望のpHの水性緩衝液中の細胞ペーストの懸濁液は、所望の酵素触媒を含有する細胞抽出物を生成するために均質にされる。細胞抽出物は、望ましくないタンパク質を酵素触媒溶液から沈澱させるための熱処理工程の前に細胞破片を除去するためにセライトまたはシリカなどの適切な濾過助剤を通して任意選択的に濾過されてもよい。所望の酵素触媒を含有する溶液は次に、膜濾過または遠心分離によって沈澱細胞破片およびタンパク質から分離されてもよく、追加の膜濾過によって濃縮された生じた部分精製酵素触媒溶液は次に、適切なキャリア(例えば、マルトデキストリン、リン酸塩緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、またはそれらの混合物)と任意選択的に混合され、所望の酵素触媒を含む固体粉末を生成するために噴霧乾燥される。
【0229】
量、濃度、または他の値もしくはパラメータが、ある範囲、好ましい範囲として、または好ましい上方値と好ましい下方値とのリストとしてのどちらかで与えられるとき、これは、範囲が別々に開示されているかどうかに関係なく、任意の上方範囲限界または好ましい値と任意の下方範囲限界または好ましい値との任意のベアから形成される全ての範囲を具体的に開示するとして理解されるべきである。数値の範囲が本明細書で列挙される場合、特に明記しない限り、この範囲は、それの終点、およびこの範囲内の全ての整数および分数を含むことが意図される。範囲がある範囲を画定するときに列挙された具体的な値に限定されることは意図されない。
【0230】
一般的な方法
以下の実施例は、好ましい態様を実証するために提供される。本発明が見出した例示的な技術に従う実施例に開示される技法が本発明で開示された方法の実施にうまく機能し、従ってその実施のための好ましいモードを構築すると考え得ることは、当業者によって十分理解されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示を踏まえて、今開示される方法の精神および範囲から逸脱することなく多くの変更を開示される具体的な実施形態で行うことができ、同様のまたは類似の結果を依然とし得ることを十分理解するべきである。
【0231】
全ての試薬および材料は、特に明記しない限り、DIFCO Laboratories(Detroit,MI)、GIBCO/BRL(Gaithersburg,MD)、TCI America(Portland,OR)、Roche Diagnostics Corporation(Indianapolis,IN)またはSigma/Aldrich Chemical Company(St.Louis,MO)から入手した。
【0232】
本明細書で以下の省略形は、次の通り測定の単位、技法、特性、または化合物に対応する:「sec」または「s」は秒を意味し、「min」は分を意味し、「h」または「hr」は時間を意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味し、「mM」はミルモルを意味し、「M」はモルを意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「ppm」は百万当たりの部を意味し、「wt」は質量を意味し、「wt%」は質量パーセントを意味し、「g」はグラムを意味し、「mg」はミリグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「ng」はナノグラムを意味し、「g」は重力を意味し、「HPLC」は高性能液体クロマトグラフィーを意味し、「dd HO」は蒸留および脱イオン水を意味し、「dcw」は乾燥細胞質量を意味し、「ATCC」または「ATCC(登録商標)」はAmerican Type Culture Collection(Manassas,VA)を意味し、「U」はペルヒドロラーゼ活性の単位を意味し、「rpm」は回転数毎秒を意味し、「Tg」はガラス転移温度を意味し、そして「EDTA」はエチレンジアミン四酢酸を意味する。
【実施例】
【0233】
実施例1
katGカタラーゼ崩壊大腸菌(E.coli)菌株の構築
カナマイシン耐性遺伝子(kan;配列番号26)のコーディング領域を、配列番号30として同定されるPCR生成物を発生させるために配列番号28および配列番号29として同定されるプライマーを使用してPCR(94℃で0.5分、55℃で0.5分、70℃で1分、30サイクル)によってプラスミドpKD13(配列番号27)から増幅した。katG核酸配列は配列番号31として提供され、相当するアミノ酸配列は配列番号32である。大腸菌(E.coli)MG1655(ATCC(登録商標)47076TM)を、λ−Redリコンビナーゼ遺伝子(Datsenko and Wanner,(2000),PNAS USA 97:6640−6645)を含有する、温度感受性プラスミドpKD46(配列番号33)で形質転換し、30℃で24時間LB−ampプレート上で選択した。MG1655/pKD46を、エレクトロポレーション(BioRad Gene Pulser、0.2cmキュベット、2.5kV、200W、25μF)による50〜500ngのPCR生成物で形質転換し、37℃で24時間LB−kanプレート上で選択した。幾つかのコロニーをLB−kanプレート上へ画線し(streaked)、pKD46プラスミドを硬化させるために42℃で一晩培養した。コロニーを、kanR/ampSの表現型を確認するためにチェックした。ゲノムDNAを、PUREGENE(登録商標)DNA精製システム(Gentra Systems,Minneapolis,MN)を用いて幾つかのコロニーから単離し、配列番号34および配列番号35として同定されるプライマーを使用してkatG遺伝子の崩壊を確認するためにPCRによってチェックした。幾つかのkatG−崩壊菌株を、FLPリコンビナーゼを含有する、温度感受性プラスミドpCP20(配列番号36)で形質転換し、kan遺伝子を削除するために使用し、37℃で24時間LB−ampプレート上で選択した。幾つかのコロニーをLBプレート上へ画線し、pCP20プラスミドを硬化させるために42℃で一晩培養した。2つのコロニーを、kanS/ampSの表現型を確認するためにチェックし、MG1655 KatG1およびMG1655 KatG2と呼ぶ。
【0234】
実施例2
katEカタラーゼ崩壊大腸菌(E.coli)菌株の構築
カナマイシン耐性遺伝子(配列番号26)を、配列番号39として同定されるPCR生成物を発生させるために配列番号37および配列番号38として同定されるプライマーを使用してPCR(94℃で0.5分、55℃で0.5分、70℃で1分、30サイクル)によってプラスミドpKD13(配列番号27)から増幅した。katE核酸配列は配列番号40として提供され、相当するアミノ酸配列は配列番号41である。大腸菌(E.coli)MG1655(ATCC(登録商標)47076TM)を、λ−Redリコンビナーゼ遺伝子を含有する、温度感受性プラスミドpKD46(配列番号33)で形質転換し、30℃で24時間LB−ampプレート上で選択した。MG1655/pKD46を、エレクトロポレーション(BioRad Gene Pulser、0.2cmキュベット、2.5kV、200W、25μF)による50〜500ngのPCR生成物で形質転換し、37℃で24時間LB−kanプレート上で選択した。幾つかのコロニーをLB−kanプレート上へ画線し、pKD46プラスミドを硬化させるために42℃で一晩培養した。コロニーを、kanR/ampSの表現型を確認するためにチェックした。ゲノムDNAを、PUREGENE(登録商標)DNA精製システムを用いて幾つかのコロニーから単離し、配列番号42および配列番号43として同定されるプライマーを使用してkatE遺伝子の崩壊を確認するためにPCRによってチェックした。幾つかのkatE−崩壊菌株を、FLPリコンビナーゼを含有する、温度感受性プラスミドpCP20(配列番号36)で形質転換し、kan遺伝子を削除するために使用し、37℃で24時間LB−ampプレート上で選択した。幾つかのコロニーをLBプレート上へ画線し、pCP20プラスミドを硬化させるために42℃で一晩培養した。2つのコロニーを、kanS/ampSの表現型を確認するためにチェックし、MG1655 KatE1およびMG1655 KatE2と呼ぶ。
【0235】
実施例3
katGカタラーゼおよびkatEカタラーゼ崩壊大腸菌(E.coli)菌株(KLP18)の構築
カナマイシン耐性遺伝子(配列番号26)を、配列番号39として同定されるPCR生成物を発生させるために配列番号37および配列番号38として同定されるプライマーを使用してPCR(94℃で0.5分、55℃で0.5分、70℃で1分、30サイクル)によってプラスミドpKD13(配列番号27)から増幅した。大腸菌(E.coli)MG1655 KatG1(実施例1)を、λ−Redリコンビナーゼ遺伝子を含有する、温度感受性プラスミドpKD46(配列番号33)で形質転換し、30℃で24時間LB−ampプレート上で選択した。MG1655 KatG1/pKD46を、エレクトロポレーション(BioRad Gene Pulser、0.2cmキュベット、2.5kV、200W、25μF)による50〜500ngのPCR生成物で形質転換し、37℃で24時間LB−kanプレート上で選択した。幾つかのコロニーをLB−kanプレート上へ画線し、pKD46プラスミドを硬化させるために42℃で一晩培養した。コロニーを、kanR/ampSの表現型を確認するためにチェックした。ゲノムDNAを、PUREGENE(登録商標)DNA精製システムを用いて幾つかのコロニーから単離し、配列番号42および配列番号43として同定されるプライマーを使用してkatE遺伝子の崩壊を確認するためにPCRによってチェックした。幾つかのkatE−崩壊菌株(ΔkatE)を、FLPリコンビナーゼを含有する、温度感受性プラスミドpCP20(配列番号36)で形質転換し、kan遺伝子を削除するために使用し、37℃で24時間LB−ampプレート上で選択した。幾つかのコロニーをLBプレート上へ画線し、pCP20プラスミドを硬化させるために42℃で一晩培養した。2つのコロニーを、kanS/ampSの表現型を確認するためにチェックし、MG1655 KatG1KatE18.1およびMG1655 KatG1KatE23と呼ぶ。MG1655 KatG1KatE18.1は、大腸菌(E.coli)KLP18と称される。
【0236】
実施例4
サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)からのペルヒドロラーゼのクローニングおよび発現
GENBANK(登録商標)(登録番号AE000512;領域80481−81458;配列番号44)に報告されるようなサーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)からのアセチルキシランエステラーゼをエンコードする遺伝子のコーディング領域を、大腸菌(E.coli)(DNA 2.0,Menlo Park,CA)での発現のために最適化されたコドンを使用して合成した。遺伝子のコーディング領域をその後、配列番号45および配列番号46として同定されるプライマーを使用してPCR(94℃で0.5分、55℃で0.5分、70℃で1分、30サイクル)によって増幅した。生じた核酸生成物(配列番号47)を、pSW196として同定されるプラスミドを発生させるためにpTrcHis2−TOPO(登録商標)へサブクローン化した。プラスミドpSW196を使用して大腸菌(E.coli)KLP18(実施例3)を形質転換して菌株KLP18/pSW196を発生させた。KLP18/pSW196を、OD600nm=0.4〜0.5まで振盪しながら37℃でLB培地で増殖させ、その時点でIPTGを1mMの最終濃度まで添加し、培養を2〜3時間続行した。細胞を遠心分離によって収穫し、SDS−PAGEを、全可溶性タンパク質の20〜40%でペルヒドロラーゼの発現を確認するために行った。
【0237】
実施例5
サーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)MSB8からのペルヒドロラーゼのクローニングおよび発現
GENBANK(登録商標)(登録#NP_227893.1;配列番号48)に報告されるようなサーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)MSB8からのアセチルキシランエステラーゼをエンコードする遺伝子のコーディング領域を合成した(DNA 2.0,Menlo Park.CA)。遺伝子のコーディング領域をその後、配列番号49および配列番号50として同定されるプライマーを使用してPCR(94℃で0.5分、55℃で0.5分、70℃で1分、30サイクル)によって増幅した。生じた核酸生成物(配列番号51)を制限酵素PstIおよびXbaIでカットし、pSW207として同定されるプラスミドを発生させるためにpUC19中のPstIおよびXbaIサイトの間でサブクローン化した。プラスミドpSW207を使用して大腸菌(E.coli)KLP18(実施例3)を形質転換してKLP18/pSW207として同定される菌株を発生させた。KLP18/pSW207を、OD600nm=0.4〜0.5まで振盪しながら37℃でLB培地で増殖させ、その時点でIPTGを1mMの最終濃度まで添加し、培養を2〜3時間続行した。細胞を遠心分離によって収穫し、SDS−PAGEを、全可溶性タンパク質の20〜40%でペルヒドロラーゼ酵素の発現を確認するために行った。
【0238】
実施例6
ペルヒドロラーゼを発現する大腸菌(E.coli)KLP18形質転換体の発酵
発酵槽種培養物を、酵母抽出物(Amberex 695、5.0g/L)、KHPO(10.0g/L)、KHPO(7.0g/L)、クエン酸ナトリウム二水和物(1.0g/L)、(NHSO(4.0g/L)、MgSO七水和物(1.0g/L)およびクエン酸第二鉄アンモニウム(0.10g/L)を含有する0.5Lの種培地を2Lの振盪フラスコに装入することによって調製した。培地のpHを6.8に調整し、培地をフラスコ中で滅菌した。ポスト滅菌添加物は、グルコース(50質量%、10.0mL)および1mLアンピシリン(25mg/mL)原液を含んだ。種培地を、20%グリセロール中の大腸菌(E.coli)KLP18/pSW196または大腸菌(E.coli)KLP18/pSW207の1mL培養物で植菌し、35℃および300rpmで培養した。種培養物を、KHPO(3.50g/L)、FeSO七水和物(0.05g/L)、MgSO七水和物(2.0g/L)、クエン酸ナトリウム二水和物(1.90g/L)、酵母抽出物(Amberex 695、5.0g/L)、Biospumex153K消泡剤(0.25mL/L、Cognis Corporation,Monheim,Germany)、NaCl(1.0g/L)、CaCl二水和物(10g/L)、およびNIT微量要素溶液(10mL/L)を含有する35℃での8Lの培地と共に約1〜2OD550nmで14L発酵槽(Braun Biotech,Allentown,PA)に移した。微量要素溶液は、クエン酸一水和物(10g/L)、MnSO水和物(2g/L)、NaCl(2g/L)、FeSO七水和物(0.5g/L)、ZnSO七水和物(0.2g/L)、CuSO五水和物(0.02g/L)およびNaMoO二水和物(0.02g/L)を含有した。ポスト滅菌添加物は、グルコース溶液(50%w/w、80.0g)およびアンピシリン(25mg/mL)原液(16.00mL)を含んだ。グルコース溶液(50%w/w)を流加のために使用した。グルコース供給は、グルコース濃度が0.5g/Lに低下したときに開始し、0.31g供給/分でスタートし、漸次それぞれ毎時0.36、0.42、0.49、0.57、0.66、0.77、0.90、1.04、1.21、1.41、および1.63g/分に増やし;速度はその後一定のままであった。培地中のグルコース濃度を監視し、その濃度が0.1g/Lを超えた場合、供給速度を下げるかまたは一時的に停止した。誘導は、様々な菌株について16mLのIPTG(0.5M)の添加でOD550nm=56とOD550nm=80との間で開始した。溶解酸素(DO)濃度を、空気飽和の25%で制御した。DOは、先ず羽根車かき混ぜ速度(400〜1400rpm)によって、その後曝気速度(2〜10slpm)によって制御した。pHを6.8に調整した。NHOH(29%w/w)およびHSO(20%w/v)をpH調整のために使用した。頭部圧力は0.5バールであった。細胞をIPTG添加16時間後に遠心分離によって収穫した。
【0239】
実施例7
CE−7エステラーゼ/ペルヒドロラーゼ熱処理細胞抽出物の調製
サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)(KLP18/pSW196)またはサーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)MSB8(KLP18/pSW207)からのペルヒドロラーゼを発現する大腸菌(E.coli)形質転換体の細胞抽出物を、ジチオスレイトール(1mM)を含有する0.05Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中の細胞ペーストの懸濁液(20質量%湿潤細胞質量)を2回、16,000psi(約110MPa)の作動圧力を有するFrenchプレスに通すことによって調製した。粗抽出物を次に、20,000×gで遠心分離して細胞破片を除去し、浄化細胞抽出物を生成し、それを全可溶性タンパク質についてアッセイした(Bicinchoninic Acid Kit for Protein Determination,Sigma Aldrichカタログ# BCA1−KT)。浄化サーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)MSB8またはサーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)ペルヒドロラーゼ含有抽出物を75℃で20分間加熱し、引き続き氷/水浴中で5℃に直ちに冷却した。生じた混合物を遠心分離して沈澱タンパク質を除去し、上澄液を集め、全可溶性タンパク質について前述の通り分析した。熱処理上澄液のSDS−PAGEは、ペルヒドロラーゼが上澄液中に存在する全可溶性タンパク質の少なくとも約90%を構成することを示した。
【0240】
実施例8
T.ネアポリタナ(T.neapolitana)ペルヒドロラーゼ/トレハロース噴霧乾燥酵素粉末の温度安定性
重炭酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH=8.1)中の大腸菌(E.coli)KLP18/pSW196の様々な濃度の熱処理細胞抽出物タンパク質(PAGEにより≧90%T.ネアポリタナ(T.neapolitana)ペルヒドロラーゼ)、トレハロース(Cargill)、および、任意選択的に、界面活性剤としてのpolysorbate 80(p80)を含有する10セットの水性混合物を調製した(表1)。これらの溶液を、Buchi B−290ガラス室噴霧乾燥機(入口温度=170℃、出口温度=90℃、供給速度=3mL/分〜10mL/分)を用いて噴霧乾燥して10個の噴霧乾燥酵素粉末を製造し;粉末中の質量パーセントタンパク質を、BCA(ビシンコニン酸)タンパク質アッセイを用いて測定し、これらの粉末のガラス転移温度(Tg)を、変調示差走査熱量測定法を用いて測定した(表1)。
【0241】
【表2】

【0242】
噴霧乾燥酵素粉末を40℃で密封バイアル中に貯蔵し、1週間間隔でサンプリングし、サンプルを、25℃で重炭酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH7.2)中にT.ネアポリタナ(T.neapolitana)ペルヒドロラーゼ(50μgタンパク質/mL)、H(100mM)、トリアセチン(100mM)およびTURPINAL(登録商標)SL(500ppm)を含有する反応液にて5分で生成した過酢酸の濃度についてアッセイし、Karstら(下記)によって報告された分析方法の修正を用いて過酢酸の生成について分析した。
【0243】
反応混合物のサンプル(0.040mL)を予定の時間(5分)に取り出し、水中の5mMリン酸の0.960mLと直ちに混合し、希釈したサンプルのpHをpH4未満に調整することによって反応を停止させた。生じた溶液を、ULTRAFREE(登録商標)MC−フィルター装置(30,000 Normal Molecular Weight Limit(標準分子量限界)(NMWL),Millipore Corp,Billerica,MA;カタログ#UFC3LKT 00)を使用して12,000rpmで2分間の遠心分離によって濾過した。得られた濾液のアリコート(0.100mL)を、0.300mLの脱イオン水を含有する1.5mLスクリューキャップHPLCバイアル(Agilent Technologies,Palo Alto,CA;#5182−0715)に移し、次に0.100mLのアセトニトリル中20mMのMTS(メチル−p−トリルスルフィド)を加え、バイアルに蓋をし、光の不存在下での約25℃で10分の定温放置前に内容物を短く混合した。バイアルに次に、0.400mLのアセトニトリルと0.100mLのアセトニトリル中トリフェニルホスフィンの溶液(TPP、40mM)とを加え、バイアルに再び蓋をし、生じた溶液を混合し、光の不存在下に約25℃で30分間定温放置した。バイアルに次に、0.100mLの10mMのN,N−ジエチル−m−トルアミド(DEET;HPLC内部標準)を加え、生じた溶液を、MTSO(メチル−p−トリルスルホキシド)、MTSと過酢酸との反応によって生成する化学量論的酸化生成物についてHPLCによって分析した。対照反応を、バックグランドMTS酸化に関して過酢酸生成の速度を補正するための、過酸化水素によるアッセイ混合物におけるMTSの酸化の速度を測定するために、添加された抽出物タンパク質またはトリアセチンの不存在下に行った。HPLC法:Supelco Supelguard Discovery C8プレカラム(Sigma−Aldrich;カタログ#59590−U)付きSupelco Discovery C8カラム(10cm×4.0mm、5μm)(カタログ#569422−U);10マイクロリットル注入容量;1.0mL/分および周囲温度でCHCN(Sigma−Aldrich;カタログ#270717)および脱イオン水でのグラジエント法。
【0244】
【表3】

【0245】
T.ネアポリタナ(T.neapolitana)ペルヒドロラーゼ/トレハロース噴霧乾燥粉末のペルヒドロリシス活性は、40℃で8週間の貯蔵にわたって安定であった(表3)。
【0246】
【表4】

【0247】
実施例9
T.ネアポリタナ(T.neapolitana)ペルヒドロラーゼ/トレハロース噴霧乾燥酵素粉末の酵素粉末とトリアセチンとの混合物中での温度安定性
実施例8に記載されるように調製された噴霧乾燥酵素粉末を、トリアセチン中の噴霧乾燥粉末の混合物として40℃で8週間貯蔵されたときの安定性について評価した。噴霧乾燥酵素粉末をトリアセチンに加えて87.2gのトリアセチン中に0.200gのタンパク質を含有する混合物を生成した。生じた混合物を40℃で貯蔵し、十分撹拌された混合物の2.19gサンプルを、トリアセチンおよびタンパク質の生じた濃度が、それぞれ、100mMおよび50μg/mLである、pH7.2の50mM重炭酸ナトリウム緩衝液中に100mM過酸化水素およびTURPINAL(登録商標)SL(500ppm)を含有する100mL反応液中25℃で毎週アッセイした。表4のデータと実施例8、表3のデータとの比較は、トリアセチンとの混合物として貯蔵されたときにT.ネアポリタナ(T.neapolitana)ペルヒドロラーゼ/トレハロース噴霧乾燥酵素粉末の不安定性を実証する。
【0248】
【表5】

【0249】
実施例10
T.ネアポリタナ(T.neapolitana)ペルヒドロラーゼ/マルトデキストリン噴霧乾燥酵素粉末の温度安定性
50mM重炭酸ナトリウム(pH=8.1)中の大腸菌(E.coli)KLP18/pSW196の熱処理細胞抽出物タンパク質(34gタンパク質/L、PAGEにより≧90%T.ネアポリタナ(T.neapolitana)ペルヒドロラーゼ)および賦形剤としてのマルトデキストリン(66.7g/LのMALTRIN(登録商標)M100マルトデキストリン、14.7g/LのMALTRIN(登録商標)M250、14.7g/LのMALTRIN(登録商標)M040、Grain Processing Corporation,Muscatine,IA)を含有する水性混合物を調製した。この溶液を、噴霧乾燥機(GEA Niro、3−フィート直径、入口温度=226℃、出口温度=76℃、供給速度=60g/分)を用いて噴霧乾燥して噴霧乾燥酵素粉末を製造し;粉末中の質量パーセントタンパク質(20.3質量%)を、BCA(ビシンコニン酸)タンパク質アッセイを用いて測定し、この粉末のガラス転移温度(Tg=54℃)を、変調示差走査熱量測定法を用いて測定した。この溶液を噴霧乾燥して粉末を製造し、それを次に40℃で9週間貯蔵中の安定性について試験した。噴霧乾燥酵素粉末(40℃で貯蔵される)を1週間間隔でサンプリングし、25℃で50mM重炭酸塩緩衝液(pH7.2)中の50μgタンパク質/mLのT.ネアポリタナ(T.neapolitana)ペルヒドロラーゼ、H(100mM)、トリアセチン(100mM)およびTURPINAL(登録商標)SL(500ppm)を使用して活性についてアッセイし、Karstら(上記を参照)によって報告された分析方法の修正を用いて過酢酸の生成について分析した。T.ネアポリタナ(T.neapolitana)ペルヒドロラーゼ/マルトデキストリン噴霧乾燥粉末のペルヒドロリシス活性は、40℃での8週間の貯蔵にわたって安定であった(表5)。
【0250】
【表6】

【0251】
実施例11
酵素粉末とトリアセチンとの混合物中で貯蔵されるT.ネアポリタナ(T.neapolitana)ペルヒドロラーゼ/マルトデキストリン噴霧乾燥酵素粉末の温度安定性
実施例10に記載されるように調製された噴霧乾燥酵素粉末を、トリアセチン中の噴霧乾燥粉末の混合物として40℃で21週間貯蔵されたときの安定性について評価した。噴霧乾燥酵素粉末(1.235g、20.3質量%タンパク質)を109gのトリアセチンに加えた。生じた混合物を40℃で貯蔵し、十分撹拌された混合物の2.19gサンプルを、トリアセチンおよびタンパク質の生じた濃度が、それぞれ、100mMおよび50μg/mLである、pH7.2の50mM重炭酸ナトリウム緩衝液中に過酸化水素(100mM)およびTURPINAL(登録商標)SL(500ppm)を含有する100mL反応液中25℃で二重反復試験でアッセイした。表6のデータと実施例10、表5のデータとの比較は、トリアセチンとの混合物として貯蔵されたときにT.ネアポリタナ(T.neapolitana)ペルヒドロラーゼ/マルトデキストリン噴霧乾燥酵素粉末の安定性を実証する。
【0252】
【表7】

【0253】
実施例12
T.マリチマ(T.maritima)ペルヒドロラーゼ/マルトデキストリン噴霧乾燥酵素粉末の温度安定性
50mM重炭酸ナトリウム(pH=8.1)中に大腸菌(E.coli)KLP18/pSW207の熱処理細胞抽出物タンパク質(約21gタンパク質/L、PAGEにより≧90%T.マリチマ(T.maritima)ペルヒドロラーゼ)および賦形剤としてのマルトデキストリン(31g/LのマルトデキストリンDE 13−17および31g/LのマルトデキストリンDE 4−7、Aldrich)を含有する水性混合物を調製した。この溶液を、Buchi B−290ガラス室噴霧乾燥機(入口温度=170℃、出口温度=90℃、供給速度=4.5mL/分)を用いて噴霧乾燥して噴霧乾燥酵素粉末を製造し;粉末中の質量パーセントタンパク質(18.0質量%)を、BCA(ビシンコニン酸)タンパク質アッセイを用いて測定し、この粉末のガラス転移温度(Tg=90℃)を、変調示差走査熱量測定法を用いて測定した。この粉末を次に40℃で7週間の貯蔵中の安定性について試験した。噴霧乾燥酵素粉末(40℃で貯蔵される)を1週間間隔でサンプリングし、25℃で50mM重炭酸塩緩衝液(pH7.2)中の50μgタンパク質/mLのT.マリチマ(T.maritima)ペルヒドロラーゼ、H(100mM)、トリアセチン(100mM)およびTURPINAL(登録商標)SL(500ppm)を含む反応混合物に添加して活性についてアッセイし、Karstらによって報告された分析方法の修正を用いて過酢酸の生成について分析した。T.マリチマ(T.maritima)ペルヒドロラーゼ/マルトデキストリン噴霧乾燥粉末のペルヒドロリシス活性は、40℃での7週間の貯蔵にわたって安定であった(表7)。
【0254】
【表8】

【0255】
実施例13
酵素粉末とトリアセチンとの混合物中で貯蔵されたT.マリチマ(T.maritima)ペルヒドロラーゼ/マルトデキストリン噴霧乾燥酵素粉末の温度安定性
実施例12に記載されるように調製された噴霧乾燥酵素粉末を、トリアセチン中の噴霧乾燥粉末の混合物として40℃で7週間貯蔵されたときの安定性について評価した。噴霧乾燥酵素粉末(0.556g、18.0質量%タンパク質)を43.6gのトリアセチンに加えた。生じた混合物を40℃で貯蔵し、十分撹拌された混合物の2.21gサンプルを、トリアセチンおよびタンパク質の生じたコンセントレーションが、それぞれ、100mM、50μg/mLであった、pH7.2の50mM重炭酸ナトリウム緩衝液中に過酸化水素(100mM)およびTURPINAL(登録商標)SL(500ppm)を含有する100mL反応液中25℃で二重反復試験でアッセイした。表8のデータと実施例12、表7のデータとの比較は、トリアセチンとの混合物として貯蔵されたときにT.マリチマ(T.maritima)ペルヒドロラーゼ/マルトデキストリン噴霧乾燥酵素粉末の安定性を実証する。
【0256】
【表9】

【0257】
実施例14
枯草菌(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)31954TMペルヒドロラーゼを使用するプロピレングリコールジアセテートまたはエチレングリコールジアセテートのペルヒドロリシス
枯草菌(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)31954TM(KLP18/pSW194)からの野生型ペルヒドロラーゼを発現する形質転換体のホモジネートを、ジチオスレイトール(1mM)を含有する0.05Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中の細胞ペースト(20質量%湿潤細胞質量)の懸濁液から調製した。粗ホモジネートを遠心分離して細胞破片を除去し、浄化細胞抽出物を生成し、それを65℃で30分間熱処理した。生じた混合物を遠心分離し、熱処理した上澄液を32mg/mL全溶解固形分の濃度に30K MWCO(分子量カットオフ)膜で濃縮し;浄化した熱処理細胞抽出物のSDS−PAGEは、ペルヒドロラーゼが少なくとも85〜90%純度であることを示した。このコンセントレートに次に、おおよそ3:1比(wt/wt)のリン酸塩緩衝剤対熱処理細胞抽出物タンパク質をもたらすために固形分の1グラム当たり2.06グラムのNaHPOおよび1.17グラムNaHPOを加えた。この溶液を脱イオン水で30質量%だけ希釈し、次に、Buchi B−290実験室噴霧乾燥機を使用して噴霧乾燥し(180℃入口温度、70℃出口温度);生じた噴霧乾燥粉末は、25.5質量%タンパク質(Bradfordタンパク質アッセイ)を含有し、94.3質量%乾燥固形分であった。
【0258】
反応(10mL全容積)は、プロピレングリコール(PGDA)またはエチレングリコールジアセテート(EGDA)、過酸化水素(100mM)および噴霧乾燥大腸菌(E.coli)KLP18/pSW194からの123μg/mLの熱処理抽出物タンパク質(枯草菌(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)31954TM野生型ペルヒドロラーゼを発現する)(上記の通り調製された)を含有する50mM重炭酸ナトリウム緩衝液(初期pH7.2)中23℃で行った。各反応条件についての対照反応を、添加された熱処理抽出物タンパク質の不存在下での過酸化水素によるトリアセチンの化学的ペルヒドロリシスによって生成する過酢酸の濃度を測定するために行った。反応液を1、5、および30分でサンプリングし、サンプルを、Karst誘導体化手順(Karstら、上記を参照)を用いて過酢酸について分析した;反応混合物のアリコート(0.040mL)を取り出し、0.960mLの水中5mMリン酸と混合し;pH4未満への希釈サンプルのpHの調整は反応を直ちに停止させた。生じた溶液を、ULTRAFREE(登録商標)MC−フィルター装置(30,000 Normal Molecular Weight Limit(標準分子量限界)(NMWL),Milliporeカタログ#UFC3LKT 00)を使用して12,000rpmで2分間の遠心分離によって濾過した。得られた濾液のアリコート(0.100mL)を、0.300mLの脱イオン水を含有する1.5mLスクリューキャップHPLCバイアル(Agilent Technologies,Palo Alto,CA;#5182−0715)に移し、次に0.100mLのアセトニトリル中20mMのMTS(メチル−p−トリルスルフィド)を加え、バイアルに蓋をし、光の不存在下での約25℃で10分の培養前に内容物を短く混合した。各バイアルに次に、0.400mLのアセトニトリルと0.100mLのアセトニトリル中トリフェニルホスフィンの溶液(TPP、40mM)とを加え、バイアルに再び蓋をし、生じた溶液を混合し、光の不存在下に約25℃で30分間培養した。各バイアルに次に、0.100mLの10mMのN,N−ジエチル−m−トルアミド(DEET;HPLC内部標準)を加え、生じた溶液をHPLCによって分析した。1分、5分および30分で生成した過酢酸濃度を表9にリストする。
【0259】
【表10】

【0260】
実施例15
T.マリチマ(T.maritima)およびT.ネアポリタナ(T.neapolitana)野生型および変異株ペルヒドロラーゼを使用するプロピレングリコールジアセテートまたはエチレングリコールジアセテートのペルヒドロリシス
サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)野生型ペルヒドロラーゼ(KLP18/pSW196)、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)C277S変異株ペルヒドロラーゼ(KLP18/pSW196/C277S)、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)C277T変異株ペルヒドロラーゼ(KLP18/pSW196/C277T)、サーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)野生型ペルヒドロラーゼ(KLP18/pSW228)、サーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)C277S変異株ペルヒドロラーゼ(KLP18/pSW228/C277S)、およびサーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)C277T変異株ペルヒドロラーゼ(KLP18/pSW228/C277T)を発現する形質転換体の細胞抽出物をそれぞれ、ジチオスレイトール(1mM)を含有する0.05Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中の細胞ペーストの懸濁液(20質量%湿潤細胞質量)を2回、16,000psi(約110MPa)の作動圧力を有するFrenchプレスに通すことによって調製した。溶解細胞を12,000×gで30分間遠心分離し、浄化細胞抽出物を生成し、それを全可溶性タンパク質についてアッセイした(Bradfordアッセイ)。上澄液を75℃で20分間加熱し、引き続き2分間氷浴中で急冷した。沈澱タンパク質を11,000×gで10分間の遠心分離によって除去した。生じた熱処理抽出物タンパク質上澄液のSDS−PAGEは、CE−7酵素が調製物中の全タンパク質のおおよそ85〜90%を占めることを示した。熱処理抽出物タンパク質上澄液をドライアイスで凍結させ、使用まで−80℃で貯蔵した。
【0261】
第1セットの反応(10mL全容積)は、プロピレングリコールジアセテート(PGDA)またはエチレングリコールジアセテート(EGDA)(100mM)、過酸化水素(100mM)および大腸菌(E.coli)KLP18/pSW196(サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)野生型ペルヒドロラーゼ)、大腸菌(E.coli)KLP18/pSW196/C277S(サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)C277S変異株ペルヒドロラーゼ)、大腸菌(E.coli)KLP18/pSW196/C277T(サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)C277T変異株ペルヒドロラーゼ)、大腸菌(E.coli)KLP18/pSW228(サーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)野生型ペルヒドロラーゼ)、大腸菌(E.coli)KLP18/pSW228/C277S(サーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)C277S変異株ペルヒドロラーゼ)、および大腸菌(E.coli)KLP18/pSW228/C277T(サーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)C277T変異株ペルヒドロラーゼ)(上記の通り調製された)の1つからの25μg/mLの熱処理抽出物タンパク質を含有する10mM重炭酸ナトリウム緩衝液(初期pH8.1)中20℃で行った。各反応条件についての対照反応を、添加された抽出物タンパク質の不存在下での過酸化水素によるトリアセチンの化学的ペルヒドロリシスによって生成する過酢酸の濃度を測定するために行った。反応液を1、5、および30分でサンプリングし、サンプルを、Karst誘導体化手順(Karstら、上記を参照)およびHPLC分析方法(上記を参照)を用いて過酢酸について分析した。1分、5分および30分で生成した過酢酸濃度を表10にリストする。
【0262】
【表11】

【0263】
第2セットの反応(10mL全容積)は、プロピレングリコールジアセテート(PGDA)またはエチレングリコールジアセテート(EGDA)(2mM)、過酸化水素(10mM)および大腸菌(E.coli)KLP18/pSW196(サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)野生型ペルヒドロラーゼ)、大腸菌(E.coli)KLP18/pSW196/C277S(サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)C277S変異株ペルヒドロラーゼ)、大腸菌(E.coli)KLP18/pSW196/C277T(サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)C277T変異株ペルヒドロラーゼ)、大腸菌(E.coli)KLP18/pSW228(サーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)野生型ペルヒドロラーゼ)、大腸菌(E.coli)KLP18/pSW228/C277S(サーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)C277S変異株ペルヒドロラーゼ)、および大腸菌(E.coli)KLP18/pSW228/C277T(サーモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)C277T変異株ペルヒドロラーゼ)(上記の通り調製された)の1つからの10μg/mLの熱処理抽出物タンパク質を含有する10mM重炭酸ナトリウム緩衝液(初期pH8.1)中20℃で行った。各反応条件についての対照反応を、添加された抽出物タンパク質の不存在下での過酸化水素によるトリアセチンの化学的ペルヒドロリシスによって生成する過酢酸の濃度を測定するために行った。反応液を5分でサンプリングし、サンプルを、Karst誘導体化手順(Karstら、上記を参照)およびHPLC分析方法(上記を参照)を用いて過酢酸について分析した。5分で生成した過酢酸濃度を表11にリストする。
【0264】
【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素およびカルボン酸エステルを含む調合物中に存在する該酵素のペルヒドロリシス活性を安定化させるための方法であって、
(a)CE−7酵素として構造上分類され、ペルヒドロリシス活性を有する少なくとも1つの酵素、少なくとも1つのオリゴ糖賦形剤、および任意選択的に少なくとも1つの界面活性剤を含む水性調合物を備える工程と;
(b)(a)の水性調合物を噴霧乾燥して、カルボン酸エステルおよび酵素粉末を含む調合物中に存在する少なくとも1つの該酵素のペルヒドロリシス活性を実質的に保持する該酵素粉末を製造する工程と;
を含む、上記方法。
【請求項2】
少なくとも1つのオリゴ糖賦形剤が、少なくとも約1250の数平均分子量および少なくとも約9000の質量平均分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つのオリゴ糖賦形剤が、マルトデキストリン、キシラン、マンナン、フコイダン、ガラクトマンナン、キトサン、ラフィノース、スタキオース、ペクチン、イヌリン、レバン、グラミナン、アミロペクチン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つのオリゴ糖賦形剤がマルトデキストリンである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つのオリゴ糖賦形剤がトレハロースである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
カルボン酸エステルが、モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン、モノプロピオニン、ジプロピオニン、トリプロピオニン、モノブチリン、ジブチリン、トリブチリン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
カルボン酸エステルがトリアセチンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの界面活性剤が存在し、ポリソルベート 80である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つのオリゴ糖賦形剤が、少なくとも約1700の数平均分子量および少なくとも約15000の質量平均分子量を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの酵素が、配列番号6、配列番号7、配列番号19、および配列番号20からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、ここで配列番号19または配列番号20のアミノ酸残基277が、アラニン、バリン、セリン、およびスレオニンからなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
a)CE−7酵素として構造上分類され、ペルヒドロリシス活性を有する少なくとも1つの酵素;
b)少なくとも1つのオリゴ糖賦形剤;および
c)任意選択的に少なくとも1つの界面活性剤
の噴霧乾燥調合物を含む酵素粉末であって、
ここで上記少なくとも1つのオリゴ糖賦形剤が、カルボン酸エステルおよび酵素粉末を含む調合物中に存在する、上記少なくとも1つの酵素のペルヒドロリシス活性を安定化させる、上記酵素粉末。
【請求項12】
少なくとも1つのオリゴ糖賦形剤が、少なくとも約1250の数平均分子量および少なくとも約9000の質量平均分子量を有する、請求項11に記載の酵素粉末。
【請求項13】
カルボン酸エステルが、モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン、モノプロピオニン、ジプロピオニン、トリプロピオニン、モノブチリン、ジブチリン、トリブチリン、およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項11または12に記載の酵素粉末を含む調合物。
【請求項14】
第1の成分および第2の成分を含む殺菌調合物であって、該第1の成分が請求項13に記載の調合物を含み、該第2の成分が過酸化水素および任意選択的に過酸化水素安定剤の水溶液を含む、上記調合物。
【請求項15】
第1の成分および第2の成分を含むランドリーケア調合物であって、該第1の成分が請求項13に記載の調合物を含み、該第2の成分が過酸化水素および任意選択的に過酸化水素安定剤の水溶液を含む、上記調合物。
【請求項16】
(a)CE−7酵素として構造上分類され、ペルヒドロリシス活性を有する少なくとも1つの酵素、少なくとも1つのオリゴ糖賦形剤、および任意選択的に少なくとも1つの界面活性剤を含む水性調合物を備える工程と;
(b)(a)の水性調合物を、噴霧乾燥して酵素粉末を製造する工程と;
(c)(b)の酵素粉末を、カルボン酸エステル、および過酸素源を含む水溶液と組み合わせる工程と;
を含む殺菌またはランドリーケア調合物の製造方法。
【請求項17】
少なくとも1つの酵素が、配列番号6、配列番号7、配列番号19、および配列番号20からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、ここで配列番号19または配列番号20のアミノ酸残基277が、アラニン、バリン、セリン、およびスレオニンからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つのオリゴ糖賦形剤が、少なくとも約1250の数平均分子量および少なくとも約9000の質量平均分子量を有する、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
(a)(1)(i)請求項11または12に記載の酵素粉末、および
(ii)カルボン酸エステル、
を含む調合物;および
(2)過酸素源;
を含む、反応成分一式を備える工程と;
(b)該反応成分を適した水性反応条件下に組み合わせ、それによってペルオキシカルボン酸を生成させる工程と;
を含むカルボン酸エステルからのペルオキシカルボン酸の生成方法。
【請求項20】
酵素的に生成するペルオキシカルボン酸組成物を使用する硬表面または無生物物体の殺菌方法であって、
(a)(1)(i)請求項11または12に記載の酵素粉末、および
(ii)カルボン酸エステル、
を含む調合物;および
(2)過酸素源;
を含む、反応成分一式を備える工程と;
(b)該反応成分を適した水性反応条件下に組み合わせ、それによってペルオキシカルボン酸生成物が形成させる工程と;
(c)任意選択的に該ペルオキシカルボン酸生成物を希釈する工程と;
(d)上記硬表面または無生物物体を工程(b)または工程(c)で生成したペルオキシカルボン酸と接触させ、それによって該表面または該無生物物体を殺菌する工程と;
を含む、上記方法。
【請求項21】
酵素的に生成するペルオキシカルボン酸組成物を使用する漂白、汚れ除去、臭気軽減、衛生化または殺菌のための衣料品もしくは繊維製品の処理方法であって、
(a)(1)(i)請求項11または12に記載の酵素粉末、および
(ii)カルボン酸エステル、
を含む調合物;および
(2)過酸素源;
を含む、反応成分一式を備える工程と;
(b)該反応成分を適した水性反応条件下に組み合わせ、それによってペルオキシカルボン酸生成物を形成させる工程と;
(c)任意選択的に該ペルオキシカルボン酸生成物を希釈する工程と;
(d)上記衣料品もしくは繊維製品を工程(b)または工程(c)で生成したペルオキシカルボン酸と接触させる工程と;
を含み、
ここで、該衣料品もしくは繊維製品が汚れを除去され、脱臭され、殺菌され、漂白されるか、またはそれらの組み合わせである、
上記方法。

【公表番号】特表2012−504420(P2012−504420A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530231(P2011−530231)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/059231
【国際公開番号】WO2010/039959
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】