説明

ペースト状または半固体状の調剤を投与するための注射器

【課題】制御放出型の調剤を含む半固体状の生薬調剤の投与を容易化する注射器を提供することである。
【解決手段】半固体状の調剤を非経口的に注射するための注射器が、プランジャーと注射針(3)の台座(4)との間に、注射すべき該半固体状の物質のための中空のリザーバ(1)を含み、このリザーバ形成部材内に含有されていた用量が注射されたときにプランジャー(2)が台座(4)と直接接触され、リザーバ(1)を、該リザーバ(1)を収容する支持具またはケーシング(5、7)を使用して、台座(4)に当接させる状態で該台座(4)に直接取り付けることで、リザーバと注射針(3)とが相互に保持結合され、支持具またはケーシング(5、7)が、僅かな間隙、もしくは実質的な間隙を伴わずにリザーバ(1)を包囲し、かくして、該支持具またはケーシング(5、7)により、リザーバが軸方向において台座(4)に直接的にクランプ固定されると共に、リザーバがそうしたクランプ固定や半固体状の調剤の投与に帰因する圧力に対して補強される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常の注射剤の如き液体でもなければ、インプラントの如き固体でもなく、以下では半固体状の調剤として参照されるペースト状または非常に粘性の高い状態の薬剤または他の調剤の注射による非経口的な投与に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非経口的注入用の針により液体を非経口的に注入するための注射器には多くの様々な形態のものがある。しかし、これらの注射器は、実際上、半固体状の調剤を非経口的に投与するためには使用することができない。
【0003】
インプラント等の固体状の調剤を非経口的に投与するための装置もいろいろなものが知られている。これらの装置は直径が比較的大きなトロカールを使用し、そして、例えばトロカールを引き戻すことによりトロカールからその調剤を駆出できるようにするための駆出手段を伴っている。他の投与手段はカテーテルを使用するものである。
【0004】
また、セメントまたは他の材料を齲窩に沈着させることができる歯科学におけるペースト状の物質を投与すべく意図された注射器も既知である。そのような注射器の例が米国特許第4,121,587号及び第5,603,701号に開示されている。それらの特許公報にはある注射器本体が記載されており、その注射器本体内では、ペースト状の物質を駆出するのに必要な力を下向きに伝達するための相補的な固定のネジ部を通過するネジ切りされたロッドをベースとしたピストン移動手段により、針を通じてそのペースト状の物質を駆出するため、ピストンが移動する構成を有している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これらの注射器は非経口的な注入をすべての場合に適切に行えるものではなく、それがすべてのパーツを特別に設計したものであるか、あるいは、通常の注射器本体と共に使用すべく設計されたエレメントを有するものであるかに関わらず、それらの構成は非常に複雑であり、このことは、それらの注射器が多重使用に適したものではなく、特には、使い捨て式または再使用が不可能な注射器あるいはカルプルの形態であることを意味している。
【0006】
本発明の一つの目的は、これらの欠点を改善し、そして、好適には例えば1ml等の概して少量の、特には1ml未満または0.5ml未満から下は数マイクロリットルまでの半固体状あるいはペースト状の調剤を手操作で、もしくは自動的に注射することができる注射器を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、特には米国特許第5,595,760号に開示されているような制御放出型の調剤を含む半固体状の生薬調剤の投与を容易化することである。
【0008】
本発明の別の目的は、実際に送達される用量と沈着部位の位置との両者を高い正確度に維持した状態で、例えば皮下注射、皮内注射、または筋肉注射等の通常の方法を用いて、そのような調剤を注射することができる注射器を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、補助手段または力低減手段の助けを借りて、本注射器により半固体状の調剤を送達できるようにすることである。
【0010】
本発明の別の目的は、非常に低コストで大量生産できるように、これらの注射器を極めて単純な形態で提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、投与すべき半固体状の調剤の事前充填を極めて簡単に行えるようにすることである。
【0012】
本発明の別の目的は、容量により各調剤毎に特定のエレメントを生産する必要性を最小化することにより、異なる調剤量または可変的な調剤量の非経口的な投与を可能にする注射器アセンブリを提供することである。
【0013】
本発明の更に別の目的は、薬剤を非経口的に投与する場合に一般的に使用されるガラス、金属、または、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のプラスチックの如き広く知られた通常の材料を用いて、直径の小さな針を通じてペースト状の調剤を射出する際に注射器にかかる大きな力に耐え得る注射器を生産することである。
【0014】
本発明の別の目的は、針の端部が脈管の内腔を穿通していないことを操作者がチェックできるような、半固体状物質を投与するための注射器を提供することである。
【0015】
本発明の更に別の目的は、注射するまさにその瞬間まで針が無菌状態であることを保証できるような、特には半固体状の調剤を投与するための注射器を提供することである。
これらのうちの幾つかの目的、もしくはすべての目的は、本発明の様々な実施態様により達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第一の実施態様では、本発明の主題は、半固体状の調剤を非経口的に注射すべく意図された注射器、好適には余すことなく送達されるある用量の調剤が予め充填された注射器であって、該注射器は、ピストンと針の基部との間に位置し、注射すべき半固体状の調剤を含有するためのリザーバ(調剤収容部)を形成する中空のエレメントを含んでおり、該針の基部は、例えば一方の端部を介して該リザーバ内へ導入されることにより、該リザーバ形成エレメントの一方の端部との接触がもたらされ、従って、該リザーバ形成エレメントに含有れている該用量の注射の終了時には該ピストンと該基部との直接的な接触がもたらされ、そして、該リザーバ形成エレメントと該針は、該リザーバ形成エレメントを収容する支持具またはケーシングにより該基部で相互に保持結合される。
【0017】
好適には、外辺のシェルを形成する該支持具またはケーシングは、該リザーバ形成エレメントの外面を僅かな間隙で、もしくは実質的な間隙を伴わずに取り囲んでおり、従って、後者は、半固体状の調剤の注射及び圧縮中に発生しがちな高圧による損傷を受けることなく、薄い壁及び/又は強度の低い材料で造ることができる。
【0018】
好適には、該リザーバ形成エレメント(以後、リザーバ又はリザーバチューブと記す)は円筒状を為しており、該支持具またはケーシングからなる中空体の内側へ挿入され、ロックされる。従って、特には圧力に対する該注射器の保護及び機械的な抵抗性をもたらすのはケーシングである。
【0019】
一つの特に好適な実施態様では、該円筒状のリザーバは、一定の内径及び外径を有するまっすぐな中空のチューブであってよい。
【0020】
このケースでは、リザーバの内径は、リザーバにつながる針の内側の孔の内径に近いか、あるいはその内径と丁度同じであることが好ましい。リザーバの内径が針の孔の内径よりも大きい場合には、その針を収容する側のリザーバの端部に向けて、一様な円錐状または漏斗状の狭まりを設けるのが有利である。そのテーパ角度は、例えば、120゜未満であろう。
【0021】
一般的に、注射すべきペースト状の調剤を含有する注射器の円筒状のリザーバは、必要な容量に応じてできるだけ小さな直径を有していることが好ましい。
【0022】
半固体状の調剤の粘度及びその容量に応じて、特には0.2mmから1.2乃至1.5mmまでの範囲の針の内径を想定することができる。好適には、リザーバの内径も、従って注射器のピストンの直径も、0.2mmから5mmまでの範囲で変動するであろう。そのときには、7cmの最大長さを有するピストン・ストロークを用いて、1乃至10μlから0.5mlまたは1mlまでの容量を注射することができよう。リザーバの外径は例えば6mmまたは7mmに標準化されていてよく、これにより、先述の様々な内径をもたらすことができる。
【0023】
リザーバがチューブ状を為しているケースでは、内圧に対する抵抗性を高めるため、リザーバを2本のチューブで構成し、1本のチューブをもう一方のチューブ内に配置してもよい。
【0024】
別の実施態様では、そのようなチューブ状のリザーバを2本もしくはそれ以上のチューブで構成して、1本のチューブを別のチューブの後ろ側に配置し、ケーシングによりこの配置を保持してもよく、そのような実施態様の場合には、特に、異なる容量の投与を可能にする注射器の形成を容易化することができる。
【0025】
有利には、ケーシングが2つの部材からなり、そのうちの一方の部材が中空体を形成し、リザーバ形成部材がそこへ導入され、そして、もう一方の部材がその中空体を包含して該リザーバをトラップするように為し、更に、一方の部材にはピストンロッドが通過するための開口を設けておき、そして、もう一方の部材には針が通過するための開口を設けておいてもよい。
【0026】
このケースでは、該第二のケーシング部材の開口が、リザーバの内径に略等しい直径を有するピストンロッドのためのガイドを形成していることが好ましい。
【0027】
また、この第二の部材が把持手段または指掛け部を含んでいてもよい。
【0028】
場合によっては、ピストンロッドの端部に作用を及ぼす操作者の手がケーシング内に正確にピストンを押し込むことができるようにするため、該第一または第二のケーシング部材に把持領域を設けることにより、1本の指の力、または手のひらの力を用いて注射を行えるようにしてもよい。
【0029】
一つの変形態様では、注射に要する力を下向きに伝達するため、または、手操作による力を機械的な手段、あるいは駆動補助手段、もしくは他の何らかの駆動手段、特には気体式、バネ式、または電気機械式の手段で置き換えるため、該第一または第二の部材にそのような手段を配置してもよい。
【0030】
例えば、該第二の部材の開口は、ピストンロッドの螺旋移動を可能化するため、該ロッドに設けられたネジ山と噛み合うようにネジ切りされているのが有利であろう。
【0031】
一つの変形態様として、該第二の部材が外辺ネジを有していて、中心にピストンロッドを有する内面ネジ切りブッシュがそこで螺旋状に回転できるように為されていてもよい。
【0032】
そのような装置の特に有利な一つの実施態様では、リザーバが針から軸方向に分離するのを防止できるようにケーシングが設計され、該リザーバ形成部材と針は、結合形成や、クリップによる締め付け、または他の何らかの積極的な組み立て手段を何も用いることなく、該ケーシングによりアセンブリを確実化すると共に、そのコンポーネントの分解に寄与する力に対する抵抗性が確実化された状態で、針の基部で組み立てられる。
【0033】
また、そのような実施態様は、使用後に分解する際、注射器を構成する部材の分離をも容易化するであろう。
【0034】
ピストンロッドに固定されていてもよく、もしくは固定されていなくてもよいピストンは、好適には、該ピストンがその注射終了位置に達したときに使用されずに残留する容量をできるだけ少なくするため、針の基部の形状、もしくは、針と同一の側にあるリザーバの端部の形状と適合する形状を有している。注射器が円錐台形または漏斗状の端部を有している場合には、ピストンがそれと相応する形状を有していることが有利である。
【0035】
更に、リザーバチューブの一定の直径及び一定の長さ、及び、恐らくは、リザーバチューブとケーシング部材との間にクランプされるべく意図された針の基部の一定の直径及び一定の長さが決まりさえすれば、調剤用量の全範囲をカバーするように提供される複数のリザーバに対して同一のケーシングを使用することができる。
【0036】
本発明に係る注射器の一実施例は、支持体すなわちケーシングが内圧に対してリザーバを補強する作用を成し、及び/又は、ケーシングがリザーバとの間で注射針をクランプする作用を成すものであり、例えば基部とリザーバとの間もしくはピストンとリザーバとの間にシールを使用しないでシール問題を解決するために、あるいは、半固体状の調剤から所定の距離にシールを取り付け、リザーバと基部もしくはピストンとの間に極僅かな調剤の損失を伴う狭い隙間を形成することによってシール問題を解決するために、有利且つ有益に使用することができる。また、同時に、調剤を保存するために、保存中、貯蔵中、注射中において、シールを形成しながら、注射針の基部およびピストンを、同一の材料、好ましくは注射針と同じ材料、例えばステンレス・スチールによって形成することが有益である。すなわち、例えば、リザーバ、基部、ピストンといった全ての構成部材がステンレス・スチールによって形成されている場合には、あるいは、リザーバがガラスチューブの形態を成していれば、ガラスおよびスチールによって形成されている場合には、調剤と注射器との間の接触は、実質的に或いは完全に、ステンレス・スチールに限定しても良い。
【0037】
注射針の基部およびピストンは、同じ材料、例えばステンレス・スチールによって形成されていることが望ましい。
【0038】
血管内への注射の危険を避けるために、半固体状の調剤を注射するための装置、特に本発明に係る前述した装置は、血液が血管から引き出されるかどうかをチェックできる手段を有していることが望ましい。これは、液体の調剤の場合に行なわれるようにピストンを引くことなく、達成される。
【0039】
第1に、好ましくない解決策は、カテーテル注射針、すなわち、非経口的な刺入を目的とし且つ正確な注射のための第2の注射針をその孔内に有する注射針を、装置に取り付けることである。この場合、外側に開口している領域であれば、2つの注射針間の空間によって、血液を毛細管作用によって引き出すことができる。このような解決策は、注射針の直径および長さが増大するため、好ましくない。
【0040】
装置は、操作者が視認できる領域を備えた通路を有していることが望ましい。この場合、操作者が視認できる前記領域は、注射針の内孔に連通するとともに、注射針が血管ルーメン内に刺入された際には毛細管作用もしくは真空或いは血圧によって血液の視認を可能にする。
【0041】
血液がそれ自身の圧力下で或いは毛細管作用によって引き出される場合には、血液の流れを可能にするものの半固体調剤の流れを実質的に不可能にするような圧力低下を形成する通路によって、注射針の内孔を外気に連通させる対策が講じられる。
【0042】
そのような実施例においては、例えば0.3mmよりも小さい直径を有する小径孔を注射針の壁部に形成しても良い。これによって、血液が引き出される状態を見ることができる。しかしながら、このような解決策は、実現が困難であることから、望ましくない。
【0043】
第2の実施例において、注射針からの血液の通路は、リザーバ内に形成されたチャンバ内に通じていても良く、また、長尺な圧力低下通路、例えば注射針の基部に設けられたネジとリザーバの透明壁の補助的な面との間に形成された螺旋状の通路を有していても良い。適切な場合には、このネジは血液表示領域で終端しており、このネジの端部は、小径孔によって直接に或いは表示領域を介して、外気と連通している。
【0044】
非常に有益な他の実施例において、注射針の内部および注射器の内部は真空圧下に維持され、血液の引き出しが圧力差によって表示領域に現れる。この場合、表示領域は、前述したネジの形態を成しているか、もしくは、大気と連通するネジを備えている。
【0045】
有益な実施例において、注射針は、キャップ、パッケージあるいは他の収縮可能、変形可能、折り畳み可能な保護部材によって覆われていても良い。このような保護部材は、注射針を外部から隔離するとともに、注射時には注射針によって穿孔され、注射針の非経口的な刺入時には、注射針の大部分の長さにわたって、好ましくは注射針の全長にわたって移動される。
【0046】
そのような穿孔可能な保護部材によって、注射器の内部を真空下に維持することができる。保護部材が設けられた注射器を操作者が皮膚に押し当ててピストンを押圧すると、注射針は、保護部材を穿孔して、真空損失を実質的に生じることなく、表皮に刺入される。その結果、血管ルーメン内への刺入時には、血液が注射針内に引き込まれて前述したように表示領域へと導かれる。
【0047】
このようなパッケージは、例えば、注射針の周囲で或いは注射針にシールされるプラスチックによって形成されたチューブもしくは袋から成る。
【0048】
注射針を外部から完全に隔離するこのような非常に薄いパッケージは、例えばヒートシールによって、注射針の端部で任意にシールされても良い。これにより、注射針の端部もしくは斜面がプラグの形態で閉じられる。この場合、装置は、従来の液体注射のために使用できる。
【0049】
毛細管作用によって生じ得る血液の引き出しを見ることが望まれる場合には、圧力低下通路を外気に接続する孔をパッケージの内部に連通させて、非無菌雰囲気と注射針の内部とを実際に連通させないようにする対策を講じても良い。
【0050】
パッケージすなわち保護部材が、非常に柔らかく、従って、壊れやすいチューブまたは袋体によって形成される場合には、一般的な保護のために、取り外し可能な硬いキャップを設けても良い。このようなキャップは、このパッケージすなわち保護部材の上部に配置される。
【0051】
そのようなパッケージすなわち保護部材は、他の機能として、リザーバ内の非水和状態の調剤を真空パッケージするために、注射器内を真空に維持できても良い。その後、液状の注射媒体を収容するリザーバや袋内に注射針を押し込むことによって、水和を生じさせることができ、所望量の液体を調剤に戻して、調剤を半固体状にすることができる。
【0052】
注射器を形成する各種の部材が装着される前に、リザーバを予め充填することが特に望ましい。この事前充填は、所定量の調剤をピストンと注射針との間の空間全体に充填して、注射前に注射器を清浄する必要性を無くすように成されることが特に有益である。薬物の粘度によっては、ピストンを引き戻して吸引し、注射領域をチェックする手の動きを避ける必要があるかもしれない。これは、薬物内にキャビテーションを形成する作用を成し、同質でない薬物の沈殿物を生じさせる虞がある。この場合、ピストンに接続されていないピストンロッドが使用される。
【0053】
このような充填は、調剤の種類、すなわち、半固体状の調剤や、半固体状態に成り得る調剤、例えば、同時もしくは連続的にリザーバ内に導入される粉末と半固体状のペーストを形成できる液体とから形成される調剤に応じて行なわれても良い。
【0054】
充填は、ピストンもしくは隔壁によって一時的に塞がれるチューブすなわちリザーバの一方の端部に充填ノズルを接続する工程により実現されることが有益である。その後、調剤の充填時に前記ピストンもしくは隔壁が取り外された後、前記チューブすなわちリザーバは、その端部に配置される注射針の基部によって塞がれる。
【0055】
これにより、どのような半固体調剤であっても、同じ工程および同じ充填装置を使用することが可能になる。
また、本発明は、本発明に係る装置を使用した非経口注射によって半固体調剤を投与する工程に関する。
【0056】
そのような工程においては、注射領域で血液の引き込みが無いことを確認するために、注射針を刺入した後、暫くの間、半固体状の調剤を排出することを待つことが望ましい。
また、本発明の他の効果および特徴は、添付図面を参照しながら、例示として示す以下の実施例により、明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
図1は、半固体状の調剤を投与するための注射器を示している。この注射器はリザーバチューブ1を備えており、リザーバチューブ1は、例えばガラス、又はポリエチレン又はポリプロピレンプラスチックによって形成され、断面が円形の円筒形状を有する管状部品の形態を成している。リザーバチューブ1内では、ピストン2が移動できる。従来のタイプの注射針3が基部4に固定されている。基部又は台座4は、注射針3が貫通する部位に、細い円筒形部分に繋がる径方向フランジを有している。注射針の孔は図示されていない。台座4は、そのフランジ部がリザーバチューブ1の端部に圧接されるまで、リザーバチューブ1の端部内に押し込められる。流体が特に粘性を有している場合でも、流体の流れを促進して、注射の終端でピストン2が台座と密着して隙間(死空間)の発生が抑えられるように、図の断面で見られる台座は、ピストン2の近傍に、ピストン2の凸状の円錐端部と略一致する凹状の円錐台形状を有している。リザーバチューブ1と、台座4を有する注射針3とから成るアセンブリは、管状の第1のケーシング部材5内に押し込められる。第1のケーシング部材5の前端部6は閉じられており、この前端部には、注射針3の直径よりも大きい直径を有する中央通路が設けられている。ケーシング部材5の長さは、該アセンブリが部材5内に押し込められた際に、チューブ1の後端が部材5の下端から極僅かに突出するような長さになっていても良い。
【0058】
第1のケーシング部材には、第2のケーシング部材であるカップ形状を成すカップ部材7が取り付けられる。カップ部材7は、リザーバチューブ1の内径と略同一の直径を有する中央通路を有するとともに、横方向タブすなわち指当て部を有している。カップ部材7は、例えば相補的なネジ山によって、部材5にねじ込まれている。ねじ込みの終端で、リザーバチューブ1の後端がカップ形状のカップ部材7の底部に圧接されるとともに、リザーバチューブ1の前端が台座4のフランジ部をケーシング部材5の底部6に対して当て付け、また、組み立てられたアセンブリの無菌状態がシール8によって確保され、結果として、注射針とリザーバとが互いに軸方向に固定されて移動不可能となる。
【0059】
このシール8は図1のように配置されても良い。このように配置されると、リザーバチューブ1と本体5との間の隙間や、台座4とこれに対応するリザーバチューブ1の端部との間の隙間に通じる通路の形成を防止でき、リザーバチューブ1と本体5との間の隙間を無菌化する必要がなくなる。
【0060】
支持面10で終端するピストンロッド9は、好ましくはその直径がリザーバチューブ1の内径よりも僅かに小さいロッド9の前端がピストン2に当接するまで、組み立てられた注射器内に押し込まれる。したがって、ロッド9が押し込まれると、ロッド9は、ピストン2に固定されることなく、ピストン2を押し進める。これにより、ピストンと台座との間の空間11内に収容された調剤を吐き出すことができる。
【0061】
無菌化のため、着脱自在なキャップ12を設けても良い。
【0062】
ここで説明した注射器は予め有利に充填されていても良い。このような事前充填は、既に半固体状態が得られた調剤を使用して、例えば、ペーストが形成できるように有効成分の粉末を液体と混合することによって実現されても良い。また、充填は、フランス特許出願第96/06886号に開示されているように、注射直前に再びペースト状に水和させることができる乾燥粉末を使用して実現されても良い。
【0063】
事前充填は、以下の方法によって実現されることが望ましい。組み立てられていない状態の管状のリザーバチューブ1は、その上端部すなわち台座4を収容する端部に位置決めされたピストン2を受ける。この端部は、ペースト状の調剤を供給するノズルと対向するように配置される。ノズルは、所望の量の調剤を供給し、これにより、ピストン2が最終位置に達してペースト状の調剤が空間11内に完全に充填されるまで、ピストン2をチューブ内に漸進的に押し戻す。次に、台座4がこの端部内に押し込まれ、アセンブリが本体5,7内に嵌め込まれる。
【0064】
あるいは、チューブは、注射針とそのキャップとを支持する中空体すなわちケーシング内への挿入時に、予めパッケージに包まれてシールされ、そのアセンブリが第2のパッケージ内に一緒に保持されても良い。
【0065】
このようにして、半固体状の調剤を収容してその後注射できる注射器が製造される。この注射器は、非常に構造が簡単であり、また、従来の注射器と比べて低コストな部材から成る。使用される材料は、プラスチック、ガラス、又は金属から成っていても良い。注射器の部材の全ては、残留物が調剤と接触する問題を生じ易い接着、クリップ固定、ネジ固定を用いることなく組み立てられる。また、注射器は、使用後に、完全に分解することができる。
【0066】
半固体状の調剤及びその容積に起因して、この注射器は、力を低減(ギアダウン)する任意の機構を使用することなく手動で扱うことができる。すなわち、端部10を親指で押してロッド9を移動させることにより、最大50Nの力、好ましくは30Nよりも少ない力で、注射を手動で行なうことができる。
【0067】
製品の硬さや、注射される容量、あるいは、注射針の直径に起因して、30Nを超える力あるいは50Nをも超える力が必要な場合には、本発明に係る注射器に補助装置を有利に設けても良い。
【0068】
図2は、カップ部材7と交換可能なカップ状の部品13を示している。このカップ状の部品13は、ケーシング部材5の端部に同様の方法でねじ込むことができるとともに、ネジ付きのピストンロッド15が螺合可能なネジ付きの通路14を有している。ネジ付きのロッド15を回転させてこのロッド15をリザーバチューブ1内で移動させるだけで、ピストン2を押し進めて調剤を吐き出すことができる。このような力の低減(ギアダウン)によって、200N級の力を引き出すことができる。また、ネジのピッチにより、一部分量だけを目盛りで正確に投与することができる。
【0069】
2つのケーシング部材5と7または13とが十分に強度のある材料によって形成されていれば、リザーバチューブ1、ピストン2、台座4は、それ程変形や亀裂を生じることなく、非常に高い圧力に耐えることができる。
【0070】
図3はギアダウンの他の形態を示している。この形態において、第2のケーシング部材16は、ネジ無しの孔を有するとともに、ケーシング部材5の外面の雄ネジに螺合可能な雌ネジを内面に有している。また、第2のケーシング部材16は第2の雄ネジを外面に有しており、この第2の雄ネジには、ブッシュもしくはスリーブの形態を成し且つ内面に雌ネジが形成された部材17が螺合することができる。ブッシュまたはスリーブには、その内側に、ピストンロッドとして作用する円柱状のロッド18が設けられている。部材17を部材16の外面の雄ネジに螺合すると、部材17が移動されてピストンが押し進められ、ミリメートル級の移動および対応する目盛りによって、注射および正確な調量を行なうことができる。
【0071】
図4は、部材13に良く似た第2のケーシング部材19が横方向アーム20を有し且つピストンロッド21が横方向アーム22で終端している装置を示している。使用者は、2つのアーム20,22を手で握持して全ての力を出すことができる。
【0072】
図5は、後側に変位した横方向アーム24を備える第2のケーシング部材23を概略的に示している。横方向アーム24にはレバー25が蝶着されており、レバー25の一端部をアーム24と一緒に手で握持することができる。また、レバー25の他端部はピストンロッド26に蝶着されている。したがって、レバーの作用により、必要な力を低減することができる。
【0073】
図1に示された注射器は、調剤の事前充填の終端でのピストン2の位置を異ならせることにより、異なる量の半固体状調剤を収容することができる。注射すべき量が僅かな場合には、ケーシング5,7を変更しなくても、外径が同じで内径が小さいリザーバチューブ1を使用することができる。この場合、台座4およびピストン2は変更される。
【0074】
図6は、僅かな量を注射できる他の実施例を示している。この実施例において、ケーシング部材5の内部空間は、1つのチューブによって占められておらず、2つの連続するチューブのアセンブリによって占められている。具体的には、第1のリザーバチューブ27は、非常に小さな直径を有しており、台座29を有する注射針28まで延びている。小径のピストン30は、チューブ27の後部から突出するロッド31の押し込み力により、チューブ27内で移動できる。チューブ27は、同一の外径を有し且つ大きな内径を有する第2のチューブ28と並列されている。チューブ28内ではピストンロッド9が移動できる。図1に示された注射器と同様に、カップ部材7は、チューブ27,28を互いに接触させるように保持して、アセンブリを結合させる。
【0075】
図7は他の実施例を示している。この実施例では、大径のリザーバチューブ1を使用して僅かな量の調剤を収容するため、予め充填される調剤によって満たされる適当なリザーバを形成するように、注射針3の台座32が、リザーバチューブ1内で長い距離にわたって延びている。ピストンは、例えば、リザーバチューブ1内に突出し且つ所定の位置でピストンを保持する隔壁35を貫通する金属ロッド34の形態を成していても良い。
【0076】
また、図6および図7で説明した実施例は、注射針の孔の内径と等しいか或いは僅かに異なっている、例えば注射針の孔の内径よりも僅かに大きい内径のリザーバの製造に特に良く適合する。
【0077】
また、注射針の端部の面取り傾斜面で終端し且つピストンを形成する小径のロッドが貫通可能な単一の管状部品によって、リザーバおよび注射針を構成することも考えられる。この場合、ピストンは、その移動経路の端部すなわち注入行為の最後で、注射針の前側の自由端近傍に達して、注射針の内側に調剤を実質的に残さないように構成されていることが望ましい。
【0078】
図8は、図1に係る注射器の詳細な実施例を示している。
【0079】
しかしながら、この実施例において、第2のケーシング部材はカップ部材7を有していない。すなわち、部品5の外面の雄ネジ山37にリング36が固定され、リング36は指当て部38を有している。リザーバチューブ1は、ネジもしくはクリップ固定によって部品5の端部に固定されたプラグ39によって、所定位置に保持されている。
【0080】
図9は、図8に示された装置と類似するが、部品36が設けられていない装置を示している。部品36の代わりに、内面に雌ネジが形成されたブッシュ形状の部品40が部材5のネジ山37に螺合されるように構成されている。ブッシュ形状の部品40の底部41は、ピストンロッド9の端部10に圧接することができる。これらは、ブッシュ40がネジ山37にねじ込まれて移動される際には、様々な位置をとって、ピストンを押し進めるとともに、半固体状の調剤を注射することができる。これらのネジのネジ山は、例えば30秒の注入時間を超えないように形成される。この場合、台座4とリザーバチューブ1との間にシールが配置されることは言うまでもない。アセンブリを締結すると、シールの圧縮が得られ、無菌状態を確保できる。リザーバ(ガラス)の長手方向での正確さが欠ける場合には、力を測定するネジ機構を設けることが望ましい。
【0081】
この時、注射時に装置を安定させるため、本体5の前端部に、指当て部もしくは他の握持手段42を有利に設けても良い。
【0082】
血管内への注射の危険を避けるために、リザーバと注射針とピストンとを備える半固体調剤を注射するための本発明に係る装置は、真空を形成し且つ空洞形成の危険を冒さないために、ピストンを後方に引き戻すことなく、注射領域をチェックできるように形成されることができる。
【0083】
図10は、そのような構成を達成できる注射針の台座の実施例を示している。
【0084】
注射針3を収容する台座43は、台座4と同様に、リザーバチューブ1の端部に当接する外周フランジ44と、チューブ内に挿入される延在部45とを有している。延在部45の端部は、透明なリザーバチューブ1と対向しており、流れを最適化できるようにピストンの前端のテーパに対応する円錐形状を有している。この延在部45は、ネジ山46すなわち螺旋状の溝をその表面に有しており、ネジ山46とリザーバチューブ1の対応内面との間に空隙を形成することができる。孔48は、この螺旋状の通路によって形成された空隙49を外気に連通させる。このように、リザーバチューブ1の内部は、孔48と、ネジ山46によって規定され且つ制御された圧力低下をもって細長い通路を形成する螺旋状の空隙49とによって、外気と連通する。注射針3の内孔との連通は、例えば、ペースト状の調剤51と台座43との間に小さな空隙50を残すことによって、あるいは、ネジ山46の内側端部を注射針の内部空間に連通させるように台座を貫通する孔によって、果たされても良い。
【0085】
リザーバチューブ1および本体5は透明材料によって形成されているため、注射針が血管に突き刺さった場合には、血液は、血圧によって注射針の孔を通じて引き出され、空間50内、ネジ山46の螺旋状の通路内、あるいは、空間47内に収容された空気を吐き出して空気と取って代わる。この場合、血液の到達を広い領域にわたって見ることができる。
【0086】
注射のために調剤がピストンによって押し進められると、僅かな量の調剤がネジの螺旋状の隙間に入り込むが、それは、小さな流路断面と長さが長い隙間とに起因する圧力低下によって急速に抑えられる。
【0087】
一例が図11〜図15に示されている。
【0088】
注射器の分野においては、無菌パッケージする時および注射器が使用される時の両方において注射針を保護する着脱可能なキャップによって注射針を取り囲むことが一般的に行われている。しかしながら、キャップを取り付けてから注射するまでの間に注射針の無菌状態を保つ方法が存在しない。この問題は、前述した半固体調剤注射器や他の任意のタイプの注射器においては、注射針の周囲に柔軟なパッケージを設けることによって解決可能である。前記柔軟なパッケージは、注射針の1つの部材、例えば注射針の台座もしくはリザーバを形成する部材の前側部分に、密閉されたシール状態で固定されることが望ましく、注射開始時に注射針によって穿孔され、その後、注射針が注射領域の組織内に刺入される際に、収縮され、すなわち、圧縮される。
【0089】
このような覆いは、覆いと注射針との間に僅かな空間を残すことが望ましい。
また、この注射針の覆いの存在により、注射針の内部と注射針が注射器のリザーバ内に突出する空間とが真空下に維持されることが特に好ましい。
【0090】
これにより、注射針が血管に突き刺された際には、血液を注射針内に急速に引き込んだ後にこの目的のために設けられた表示領域内に引き込む吸引作用を提供することができる。
【0091】
特に、図11は、その一端が台座4の内側の面にシールされた薄いプラスチック製のチューブキャップ52を示している。このチューブキャップは、台座4のこの内側の面から延びる注射針3の部位を取り囲んでいる。このチューブは、それ自身、注射針の先端を取り囲む領域53内でシールされている。
【0092】
変形例として、このチューブキャップを着脱自在にして、注射針を開放できるようにしても良い。しかしながら、他の変形例として、このチューブは、注射器が患者の表皮に押し当てられてその端部53が注射針によって穿孔された際に、変形して収縮されるように形成されていても良い。
【0093】
特に図12および図13に示されるように、注射針を密接して取り囲むそのようなチューブの代わりに、非常に薄いプラスチック製のパッケージ54を設けても良い。このパッケージ54の一端は、台座4を密閉シールした状態で取り囲んでいる。また、パッケージ54の他端部55は閉じられている。このような袋体は、例えば図13に示されるように、注射針3と袋体それ自身との間に非常に小さな空間56を形成する断面形状を有していても良い。
【0094】
注射器の内側、したがって、袋体の内側および空間56は、真空下で包装されることが望ましい。
注射を行なう場合には、図14に示されるように、袋体の底部55は注射針3の先端によって穿孔され、注射針が押し進められるにつれて、パッケージ54が表皮に圧接されて収縮される。皮膚を突き刺すために袋体を貫通する注射針の通路は、注射針が血管に刺入される際に血液が注射針を通じて吸引されて表示領域に達するように、真空を破壊してはならない。前記表示領域は、例えば、リザーバ内の注射針の出口と一部分量の半ペースト状の調剤との間に形成された自由空間、あるいは、注射針の内部に連通する任意の他の可視領域である。前記可視領域は、例えば領域49と類似する領域であるが、この領域は外気に連通してはならないため、48のような孔がない。
【0095】
図15は、注射針のパッケージが台座4のフランジと注射器本体5の底部との間にシール状態でクランプされている本発明に係る注射器を概略的に示している。この場合、注射針のパッケージは、柔軟であり、注射針を取り囲む屈曲可能なプラスチックであることが望ましい。この台座4は、リザーバチューブ1内に入る部位に、ネジ山46に類似するが外気に開口しないネジ58を有している。組立体は、カップ部材7によって、所定位置に保持されている。カップ部材7は、リザーバチューブ1の後端の周囲に、リザーバチューブ1とケーシング5との間で真空シールを形成する環状シール59から成る介挿体を有している。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】ピストンロッドを引き抜いた状態における本発明の第1の実施例に係る注射器の長手方向断面の概略図である。
【図2】本発明の変形例に係るネジ付きピストンおよび後側ケーシング部品の概略図である。
【図3】ピストンロッドおよび後側ケーシング部品の他の構成を示す概略断面図である。
【図4】ピストンロッドおよび後側ケーシング部品の他の構成であって、力を低減するための構成を示す概略断面図である。
【図5】ピストンロッドおよび後側ケーシング部品の他の構成であって、ピストンロッドがレバー機構から分離されている状態を示す概略断面図である。
【図6】2つの連続する管状部材を備えた他の実施例に係る注射器の概略断面図である。
【図7】2つの同軸な管状部材を備えた本発明の他の実施例の概略断面図である。
【図8】本発明の一実施例に係る注射器の更に詳細な断面図である。
【図9】力を低減する随意的な手段を備えた注射器の他の実施例の更に詳細な断面図である。
【図10】血液の引き込みの表示が可能な本発明に係る注射器の前端部の部分断面図である。
【図11】管状の覆いを有する本発明に係る注射器の注射針の概略図である。
【図12】袋状の覆いを有する本発明に係る注射器の前端部の概略図である。
【図13】図12の覆い及び注射針の断面図である。
【図14】注射時における図12の覆い及び注射針の概略図である。
【図15】注射針を保護する覆いを有する本発明に係る他の実施例の概略断面図である。
【符号の説明】
【0097】
1 リザーバチューブ
2 ピストン
3 注射針
4 台座
5,7 ケーシング部材
8 シール
9 ロッド
13 カップ部材(第2ケーシング部材)
15 ロッド
16 カップ部材(第2ケーシング部材)
17 ねじ切りブッシュ
18 ロッド
46 ねじ
48,49 孔(空隙)
52 チューブキャップ
54 パッケージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半固体状の調剤を非経口的に注射するための注射器であって、
プランジャ(2)と注射針(3)の台座(4)との間に注射すべき前記半固体状の調剤を収納するための中空のリザーバ(1)を有し、前記台座は前記リザーバ(1)の一方の端部と接触状態に置かれており、従って、リザーバに収納されている用量の注射が終了するとプランジャ(2)と台座(4)とが直接接触し、リザーバ(1)を、該リザーバ(1)を収容する支持具またはケーシング(5、7)を使用して、台座(4)に当接させる状態で該台座(4)に直接取り付けることにより、リザーバと注射針(3)とが相互に保持結合される注射器において、
前記支持具またはケーシング(5、7)が、僅かな間隙、もしくは実質的な間隙を伴わずにリザーバ(1)を包囲し、かくして、該支持具またはケーシング(5、7)により、リザーバが軸方向において台座(4)に直接的にクランプ固定されると共に、リザーバがそうしたクランプ固定や半固体状の調剤の投与に帰因する圧力に対して補強される注射器。
【請求項2】
投与する全用量が予め充填されている請求項1に記載の注射器。
【請求項3】
前記台座(4)がリザーバ(1)の一方の端部に導入される請求項1または2に記載の注射器。
【請求項4】
前記部材またはリザーバ(1)は円筒状を為しており、前記注射器の保護及び機械的な抵抗性、特には圧力に対する抵抗性をもたらす前記支持具またはケーシングからなる中空体(5)の内側に導入され、ロックされる請求項1に記載の注射器。
【請求項5】
前記円筒状のリザーバ(1)が、一定の内径及び外径を有するまっすぐな中空のチューブである請求項1から4までのいずれか1項に記載の注射器。
【請求項6】
前記リザーバ(1)の内径が、前記リザーバに延びる前記注射針(3)の内側の孔の内径に近いか、あるいはその内径と等しいことを特徴とする請求項5に記載の注射器。
【請求項7】
前記注射針を収容する側の前記リザーバ(1)の端部に向けて、一様な円錐状または漏斗状の狭まりが設けられている請求項1から6までのいずれか1項に記載の注射器。
【請求項8】
前記注射針(3)の内径が0.2mmから1.2mmまでの範囲であり、そして、前記リザーバ(1)の内径、従って、前記注射器のプランジャ(2)の直径が、0.2mmから5mmまでの範囲である請求項1から7までのいずれか1項に記載の注射器。
【請求項9】
前記プランジャ(2)のストロークが、1乃至10μl及び、500μlまでの容量を注射するため、7cmの最大長さを有している請求項8に記載の注射器。
【請求項10】
前記リザーバ(1)の外径が標準化され、特には6mmに標準化されており、これにより先述の様々な内径を提供できるように為されている請求項8及び9のいずれか1項に記載の注射器。
【請求項11】
前記リザーバ(1)が2本のチューブ(1、32)からなり、内圧に対する抵抗性を高めるため、1本のチューブがもう一方のチューブ内に配置されている請求項5から10までのいずれか1項に記載のチューブ状のリザーバを有する注射器。
【請求項12】
前記チューブ状のリザーバ(1)が2本もしくはそれ以上の本数のチューブ(27、28)からなり、1本のチューブが別のチューブの後ろ側に配置され、特には異なる容量の投与を可能にする注射器の形成を容易化するため、それらのチューブが前記ケーシングによりこの位置に保持される請求項5から10までのいずれか1項に記載のチューブ状のリザーバを有する注射器。
【請求項13】
前記ケーシング(5、7)が2つの部材からなり、そのうちの一方の部材(5)は、前記リザーバ形成部材が導入される中空体を形成し、そして、もう一方の部材(7)は前記中空体を包含して前記リザーバをトラップし、更に、それらの部材のうちの一方(7)にはプランジャロッド(9)が通過するための開口が設けられており、そして、もう一方の部材(5)には前記注射針(3)が通過するための開口が設けられている請求項1から12までのいずれか1項に記載の注射器。
【請求項14】
前記第二のケーシング部材(7)に設けられた前記開口が、前記リザーバの内径に略等しい直径を有するプランジャロッド(9)に対するガイドを形成している請求項13に記載の注射器。
【請求項15】
前記第二の部材(7)が把持手段または指掛け部(38)を含んでいる請求項14に記載の注射器。
【請求項16】
注射に要する力を下向きに伝達するため、または、手操作による力を機械的な手段、あるいは駆動補助手段、もしくは他の何らかの駆動手段、特には気体式、バネ式、または電気機械式の手段で置き換えるため、前記第一または第二の部材(5、7)にそのような手段が配置されている請求項1から15までのいずれか1項に記載の注射器。
【請求項17】
前記第二の部材(13)に設けられた前記開口が、プランジャロッドの螺旋移動を可能化するため、前記ロッドに設けられたネジ山(15)と噛み合うようにネジ切りされている請求項16に記載の注射器。
【請求項18】
前記第二の部材(16)が周辺ネジ部を有しており、中心にプランジャロッド(18)を有する内面ネジ切りブッシュ(17)がそのネジ部上を螺旋状に回転できるように為されている請求項17に記載の注射器。
【請求項19】
前記リザーバ(1)が前記注射針(3)から離れて軸方向に分離するのを防止できるように前記ケーシングを設計し、リザーバ(1)を形成する前記部材と前記注射針(3)が、結合形成やクリップによる締め付け、または他の何らかの積極的な組み立て手段を何も用いることなく、前記ケーシング(5、7)により、アセンブリを確実化すると共に、そのコンポーネントの分解に寄与する力に対する抵抗性が確実化された状態で、注射針の台座(4)において組み立てられる請求項1から18までのいずれか1項に記載の注射器。
【請求項20】
プランジャロッド(9、15、18)に固定されていてもよく、もしくは固定されていなくてもよい前記プランジャ(2)が、流動に対する抵抗性を最小化することができる形状であって、且つ、前記プランジャ(2)がその注射終了位置に達したときに使用されずに残留する容量をできるだけ少なくするため、注射針の台座(4)の形状、もしくは前記注射針と同一の側にある前記リザーバの端部の形状と適合する形状を有している請求項1から19までのいずれか1項に記載の注射器。
【請求項21】
一定の直径及び一定の長さのリザーバチューブ(1)を有する一組の注射器からなる部分を形成し、調剤用量の全範囲をカバーするように提供される複数のリザーバに対して同一のケーシング(5、7)が使用できるように為されている請求項1から20までのいずれか1項に記載の注射器。
【請求項22】
前記注射針の台座(4)と前記プランジャ(2)が同一の材料、特にはステンレス鋼でできている請求項1から21までのいずれか1項に記載の注射器。
【請求項23】
脈管内へ注射する危険性を回避するため、前記注射器が、脈管から血液が引き出されているかどうかのチェックを可能にする手段(46、47、48)を含んでおり、このチェックが前記プランジャを引き上げる必要性を伴わずに達成される請求項1から22までのいずれか1項に記載の注射器。
【請求項24】
カテーテル注射針により、ある領域が外部に開放している限り、毛細管効果で血液の引き出しが可能に為されている請求項23に記載の注射器。
【請求項25】
前記注射器が操作者により視認され得る領域(46、49)からなる通路を有しており、前記通路は前記注射針の内側の孔と連通していて、万一前記注射針が脈管の内腔に穿通した場合、この通路を通じて、圧力、毛細管効果、または真空の作用により、血液が見られる状態に為されている請求項1から24までのいずれか1項に記載の注射器。
【請求項26】
万一血液が毛細管効果により移動させられた場合、前記注射針の内部の孔が経路(46、48、49)を介して外気と連通するように為されており、これにより、血液の流れが制限された状態で空気の流れが可能となるが、前記半固体状の調剤の実質的な流れは起こり得ないような圧力降下がもたらされる請求項25に記載の注射器。
【請求項27】
前記注射針(3)から生じる血液用の前記通路が前記リザーバ(1)を経て延び、そして、細長い圧力降下経路(46)を含んでいる請求項25及び26のいずれか1項に記載の注射器。
【請求項28】
前記細長い経路(46)が、前記注射針の台座(4)に設けられたネジ山または溝と前記リザーバ(1)の透明な壁部における相補的な表面(もしくはその逆)との間にあり、このネジ山(4)がその端部で、直接または表示領域を通じて、直径の小さな孔(48)を介して外気と連通している請求項27に記載の注射器。
【請求項29】
血液の引き出しが圧力差により表示領域に現れてくるように、前記注射針と前記リザーバの内部が真空下に維持されている請求項25に記載の注射器。
【請求項30】
前記注射器が大気と連通していない表示領域を含んでいる請求項29に記載の注射器。
【請求項31】
前記注射針が、外部から前記注射針を隔離し、そして、注射時には前記注射針により貫通されるチューブキャップ(52)、パッケージ(54)、または他の可撓性の保護部材によりカバーされており、このキャップ、パッケージ、または保護部材が、前記注射針の穿通中に移動させて前記注射針の全長もしくは殆どの長さを穿通できるように収縮可能、変形可能、または折り曲げ可能に為されている請求項1から30までのいずれか1項に記載の注射器。
【請求項32】
前記注射器の内部が真空下にある請求項31に記載の注射器。
【請求項33】
前記パッケージが、前記注射針(3)の周囲もしくは前記注射針の上部で密封されたプラスチック製のチューブキャップ(52)またはパッケージ(54)からなっている請求項31及び32のいずれか1項に記載の注射器。
【請求項34】
前記注射針(3)を外部から完全に隔離する前記チューブキャップ(52)が、前記注射針の端部をプラグの様式で完全に孤立させるため、特にはヒートシールにより、前記注射針の端部で密封されている請求項33に記載の注射器。
【請求項35】
前記圧力降下通路を外部環境につなげる前記孔が、非無菌の大気と前記注射針の内部との間に連通が事実上存在しないような形態で、実際にこのパッケージの内部に現れる請求項31に記載の注射器。
【請求項36】
前記キャップ、パッケージ、または保護部材が、前記リザーバ(1)のフロントエンドに固定されている請求項31から35までのいずれか1項に記載の注射器。
【請求項37】
前記調剤の前記容量が、注射をする前に前記注射器をパージする必要性を伴わずに、前記プランジャと前記注射針との間のスペース全体を占めるように予め充填が行われる請求項2から36までのいずれか1項に記載の注射器。
【請求項38】
前記プランジャ(2)が前記プランジャロッドに一体化されておらず、前記プランジャロッドにより注射方向に押し戻される請求項1から37までのいずれか1項に記載の注射器。
【請求項39】
前記リザーバと前記ケーシング(5、7)の間に存在する隙間とのあらゆる連通を防止するため、前記リザーバ(1)と前記ケーシング(5、7)との間にシール(8)が差し挟まれている請求項1から37までのいずれか1項に記載の注射器。
【請求項40】
請求項1から39までのいずれか1項に記載の注射器に調剤を充填する方法であって、充填ノズルが前記チューブまたはリザーバ(1)に接続され、前記プランジャ(2)または隔壁により栓をされ、そして、前記プランジャ(2)が前記調剤の充填により変位され、次いで、前記チューブが前記注射針の台座(4)により栓をされる方法。
【請求項41】
前記チューブを予めパッケージに包装し、そして、前記注射針を含有し且つ前記注射針(3)を外部から完全に隔離するチューブキャップを担持した前記ケーシングの前記中空体にそれを導入することによりそれに栓が為され、このすべてが第二のパッケージの内部にある請求項40に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2009−45501(P2009−45501A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309811(P2008−309811)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【分割の表示】特願2000−573789(P2000−573789)の分割
【原出願日】平成11年9月17日(1999.9.17)
【出願人】(505474717)ソシエテ ド コンセイユ ド ルシェルシェ エ ダアップリカーション シャンティフィック(エス.セー.エール.アー.エス.) (41)
【Fターム(参考)】