ペースト状重合性組成物
【課題】冷蔵保存をしなくても保存安定性に優れ、水の存在下においても良好な重合性を示し、重合後の変色も少ない歯牙の修復治療に用いるペースト状重合性組成物を提供する。
【解決手段】(b)アスコルビン酸化合物(d)酸基を有さない(メタ)アクリレート(e)酸と反応しないフィラーを含む第一ペーストと、(a)ポリマー構造を持たず、水と相溶又は水に溶解する過酸化物(c)酸基を有する(メタ)アクリレート(d)酸基を有さない(メタ)アクリレート(e)酸と反応しないフィラー(f)水を含む第二ペーストとから成るペースト状重合性組成物とする。
【解決手段】(b)アスコルビン酸化合物(d)酸基を有さない(メタ)アクリレート(e)酸と反応しないフィラーを含む第一ペーストと、(a)ポリマー構造を持たず、水と相溶又は水に溶解する過酸化物(c)酸基を有する(メタ)アクリレート(d)酸基を有さない(メタ)アクリレート(e)酸と反応しないフィラー(f)水を含む第二ペーストとから成るペースト状重合性組成物とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存安定性に優れ、水の存在下においても良好な重合性を示し、重合後の経時的な変色も少ない歯牙の修復治療に用いられるペースト状重合性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジカル重合性を有するメタクリレートやアクリレートのモノマー,それらのオリゴマー及びプレポリマーを含有するペースト状組成物を常温で重合させる重合触媒として有機過酸化物と芳香族第3級アミンの組み合わせが古くから用いられている(例えば、特許文献1参照。)。この組合せにおいては、ペースト状組成物に配合する有機過酸化物と芳香族第3級アミンの量を加減すると共に重合禁止材を併用することにより重合硬化時間を調整したり、重合前のペースト状組成物に保存安定性を与えている。
【0003】
しかしながら、有機過酸化物は半減期を持つ不安定な物質であるため、重合硬化時間を速めるために有機過酸化物を多量に配合しておくと、長期保存した場合に重合前にペースト状組成物自体がゲル化しやすく、反対に重合禁止材を多量に配合すると使用時の重合硬化時間が著しく長くなってしまうという問題があり、ペースト状組成物を長期保存するには冷蔵保存して有機過酸化物の劣化を遅らせるなどの対策を取らねばならなかった。また、芳香族第3級アミンのような還元剤は、重合後の組成物を黄褐色へ変色させてしまうので審美的に色が重要な歯牙の修復治療では問題であった。更に、有機過酸化物と芳香族第3級アミンの組み合わせは、口腔内のように水分の多い状況で使用すると十分な効果を得られないという問題もあった。
【0004】
重合後の組成物の変色を防ぐ方法として、ピリミジントリオン誘導体と有機金属化合物と有機ハロゲン化合物の3元系触媒を含むペースト状重合性組成物が開示されている(例えば特許文献2参照。)。これら3元系触媒は何れも半減期を持たないため、長期間保存した場合でも重合硬化時間が安定しているが、口腔内のように水分の多い状況では十分な重合硬化性を得ることができなかった。
【0005】
保存安定性を改善する方法としては、ヒドロペルオキシド,チオ尿素誘導体,銅化合物を組み合わせた歯科用組成物や(例えば、特許文献3参照。)、過酸化水素ポリビニルピロリドン複合体を用いた歯科用組成物(例えば、特許文献4参照。)等が開示されているが、これら歯科用組成物においても長期間良好な保存安定性を得ることができず、また、口腔内のように水分の多い状況では十分な重合硬化性を得ることができなかった。
【0006】
【特許文献1】特開昭62−246514号公報
【特許文献2】特開2003−105008号公報
【特許文献3】特開2007−056020号公報
【特許文献4】特開2008−088086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、冷蔵保存をしなくても保存安定性に優れ、水の存在下においても良好な重合性を示し、重合後の変色も少ない歯牙の修復治療に用いるペースト状重合性組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は前記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリマー構造を持たない過酸化物とアスコルビン酸を用いれば、水に対する溶解性が変動し難い上に、経時的な水の蒸発が起こり難く、また分子中に−OH基のような親水基を有する(メタ)アクリレートを配合しても、練和後の相溶性が安定していることを究明して本発明を完成した。
【発明の効果】
【0009】
冷蔵保存をしなくても保存安定性に優れており、水の存在下においても良好な重合性を示し、重合後の変色も少ないペースト状重合組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
即ち本発明は、
(a)ポリマー構造を持たず、水と相溶又は水に溶解する過酸化物
(b)アスコルビン酸化合物
(c)酸基を有する(メタ)アクリレート
(d)酸基を有さない(メタ)アクリレート
(e)酸と反応しないフィラー
(f)水
を含むことを特徴とするペースト状重合組成物である。
【0011】
このペースト状重合性組成物は、
(b)アスコルビン酸化合物
(d)酸基を有さない(メタ)アクリレート
(e)酸と反応しないフィラー
を含む第一ペーストと、
(a)ポリマー構造を持たず、水と相溶又は水に溶解する過酸化物
(c)酸基を有する(メタ)アクリレート
(d)酸基を有さない(メタ)アクリレート
(e)酸と反応しないフィラー
(f)水
を含む第二ペーストと
から成る態様であることが好ましく、更に、
第一ペースト中に(g)酸と反応するフィラーを含み、
第二ペースト中に(h)ポリカルボン酸を含むことが好ましい。
【0012】
本発明で使用する(a)ポリマー構造を持たず、水と相溶または水に溶解する過酸化物は、ペルオキソ二硫酸カリウム,ペルオキソ二硫酸ナトリウム,ペルオキソ二硫酸アンモニウム,tert−ブチルハイドロパーオキサイド,ステアロイルパーオキサイド,コハク酸パーオキサイド等を挙げることができる。これ等は2種以上を混合して使用してもよい。特に水への溶解性と優れた重合特性からペルオキソ二硫酸カリウム,tert−ブチルハイドロパーオキサイドが好ましい。
【0013】
(b)アスコルビン酸化合物は、L(+)−アスコルビン酸 、L(+)−アスコルビン酸カルシウム、L(+)−アスコルビン酸ナトリウム、デヒドロアスコルビン酸、イソアスコルビン酸、イソアスコルビン酸ナトリウム、(+)−5,6−O−イソプロピリデン-L-アスコルビン酸、2,6−ジ−O−パルミトイル−L−アスコルビン酸、6−O−パルミトイル−L−アスコルビン酸、D−アラボアスコルビン酸等が挙げられる。特に組成物中での安定性の点から、イソアスコルビン酸ナトリウムが好ましい。なお、これらアスコルビン酸化合物は含水塩であってもよい。またこれ等は2種以上を混合して使用してもよい。
【0014】
(c)酸基を有する(メタ)アクリレート化合物は、重合反応によって硬化することで組成物の機材の一部となり、同時に歯質や歯科用修復物の材料であるジルコニア及びアルミナ等のセラミックス、または貴金属を含む合金への接着性を歯質接着性組成物に与える効果がある。本発明での(メタ)アクリレート化合物とは、アクリレートまたはメタクリレート化合物の各種のモノマー,オリゴマー,プレポリマーを意味している。酸基を有する(メタ)アクリレート化合物は酸基としては、リン酸基またはカルボキシル基を1個または複数個有する(メタ)アクリレートであることが好ましい。リン酸基はカルボキシル基よりも強い酸性を示すことから、歯面のスメアー層の溶解や歯質脱灰の効果が高く、特にエナメル質に対して高い接着性の向上効果を発揮する。
【0015】
リン酸基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]ハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニルハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルプロパン−2−ジハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルプロパン−2−フェニルハイドロジェンホスフェート、ビス[5−{2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニル}ヘプチル]ハイドロジェンホスフェート等が挙げられる。中でも10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェートが接着性及び(メタ)アクリレート化合物自体の安定性の点から特に好ましい。これらのリン酸基を有する(メタ)アクリレート化合物は2種以上を混合して用いてもよい。
【0016】
カルボキシル基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸、4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸無水物、4−(メタ)アクリロキシデシルトリメリット酸、4−(メタ)アクリロキシデシルトリメリット酸無水物、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシピロメリット酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸などが挙げられる。中でも4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸,4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸無水物が接着性の点から特に好ましい。これらのカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート化合物は2種以上を混合して用いてもよい。
【0017】
(d)酸基を有さない(メタ)アクリレート化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレートが挙げられ、これらのモノマーあるいはオリゴマーあるいはプレポリマーが好適に使用できる。また、ウレタン結合を持つ(メタ)アクリレートとして、ジ−2−(メタ)アクリロキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、1,3,5−トリス[1,3−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2−プロポキシカルボニルアミノヘキサン]−1,3,5−(1H,3H,5H)トリアジン−2,4,6−トリオン、2,2−ビス−4−(3−(メタ)アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−フェニルプロパン等があり、その他2,2’−ジ(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンと2−オキシパノンとヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとから成るウレタンオリゴマーの(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールとヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとから成るウレタンオリゴマーの(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは2種以上を混合して使用することができる。
【0018】
(e)酸と反応しないフィラーはペースト状重合性組成物の強度を高めるために配合される。具体的には、無水ケイ酸、バリウムガラス、アルミナガラス、カリウムガラス等のガラス類、長石、ヒュームドシリカ、含水ケイ酸、石英等の粉末がある。これらの充填材は(メタ)アクリレートと化学的に結合させるために、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン等のシランカップリング剤で表面処理されていてもよい。また、前記のフィラーを予め(メタ)アクリレート化合物と混合して重合硬化させた後、粉砕して作製した有機無機複合フィラーも使用することができる。中でも、無水ケイ酸,含水ケイ酸は長期間保存した場合でも重合前のペースト状重合性組成物がゲル化するのを防止する効果がある。これらは2種以上を混合して使用することができる。
【0019】
(f)水は、(a)ポリマー構造を持たず、水と相溶又は水に溶解する過酸化物を溶解して活性化させるために配合されている。
【0020】
本発明に係るペースト状重合性組成物は、(b)アスコルビン酸化合物と(c)酸基を有する(メタ)アクリレートが共存すると保存性が悪くなるので、(b)アスコルビン酸化合物と(c)酸基を有する(メタ)アクリレートは分けて配合することが好ましい。
【0021】
例えば、(b)アスコルビン酸化合物、(d)酸基を有さない(メタ)アクリレート、
(e)酸と反応しないフィラーを含む第一ペーストと、
(a)ポリマー構造を持たず、水と相溶又は水に溶解する過酸化物、(c)酸基を有する(メタ)アクリレート、(d)酸基を有さない(メタ)アクリレート、(e)酸と反応しないフィラー、(f)水を含む第二ペーストとから成る態様であることが好ましい。
【0022】
更に本発明に係るペースト状重合性組成物は、第一ペースト中に(g)酸と反応するフィラーを含み第二ペースト中に(h)ポリカルボン酸を含むことが好ましい。(g)酸と反応するフィラーは、組成物中の酸基を有する(メタ)アクリレート化合物や(h)ポリカルボン酸と(f)水の存在下でセメント反応を起こすための充填材であり、(c)酸基を有する(メタ)アクリレートや(h)ポリカルボン酸とは分けて配合する必要がある。具体的にはフルオロアルミノシリケートガラス粉末や合成ゼオライト粉末を挙げることができる。
【0023】
(h)ポリカルボン酸は、アクリル酸,メタクリル酸,2−クロロアクリル酸,3−クロロアクリル酸,アコニット酸,メサコン酸,マレイン酸,イタコン酸,フマール酸,グルタコン酸及びシトラコン酸の中から選ばれた2種以上を含む共重合体または単独重合体であって、重合可能なエチレン性不飽和二重結合を含まない重量平均分子量5,000〜40,000であるものが好ましい。重量平均分子量が5,000未満の場合は硬化体の強度が低くなりやすく、また歯質への接着力も低下する傾向があり、40,000を超える場合には、操作性が悪化する傾向がある。
【0024】
更に本発明に係るペースト状重合性組成物には、必要に応じて通常用いられている光重合開始剤、増粘剤、顔料、安定剤、抗菌剤等を配合することも可能である。
【0025】
以下実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0026】
『第一ペーストと第二ペーストの調整』
各実施例及び比較例に用いた第一ペーストと第二ペーストの配合を表2に示す。試験に際しては、第一ペースト1gと第二ペースト1gを練和紙上に量り採り、スパチュラを用いて40秒間練和操作を行うことで均一に混合したものを使用した。
【0027】
表2中の略語はそれぞれ以下の通りである。
IA酸Na:イソアスコルビン酸ナトリウム
IA酸:イソアスコルビン酸
p−アミン:p−トリルジエタノールアミン
N−AcTU:N−アセチルチオ尿素
AcCu:アセチルアセトン銅
UDMA:ジ−2−メタクリロキシエチル−2、2、4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
CLVX−S:粒子径5μm以下高純度結晶性石英フィラー(株式会社龍森社製)
AS−A200:親水性ヒュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製)
ガラスI:フルオロアルミノシリケートガラス粉末I(調整方法は後述する)
ガラスII:フルオロアルミノシリケートガラス粉末II(調整方法は後述する)
CQ:カンファーキノン
BHT:ブチルヒドロキシトルエン
tert−BHPO:tert−ブチルハイドロパーオキサイド
KPS:ペルオキソ二硫酸カリウム
BPO:ベンゾイルパーオキサイド
CHPO:クメンヒドロペルオキシド
4−META:4−メタクリロキシエチルトリメリット酸無水物
MDP:2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート
PAA:ポリアクリル酸(平均分子量14,000)
【0028】
『フルオロアルミノシリケートガラス粉末の調整』
(g)酸と反応するフィラーであるフルオロアルミノシリケートガラス粉末I及びII(表2におけるガラスI及びガラスII)の配合を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
フルオロアルミノシリケートガラス粉末Iについては、原料を十分混合し1200℃の高温電気炉中で5時間保持しガラスを溶融させた。溶融後冷却し、ボールミルを用いて10時間粉砕し、200メッシュ(ASTM)ふるいを通過させた後の粉末をフルオロアルミノシリケートガラス粉末とした。フルオロアルミノシリケートガラス粉末IIについては、1100℃で溶融した以外はフルオロアルミノシリケートガラス粉末Iと同様の操作を行った。
【0031】
<硬化時間>
JIS T6609−2:2005(歯科用ウォーターベースセメント−第2部:レジン添加型セメント)5.5 硬化時間試験に準拠して測定を行った。ただし配合の違いによる硬化性の差異を検出しやすくするため、測定は23℃で行った。
また実施例及び比較例それぞれの試料を室温(23℃)で1年間保存した後にも同様の測定を行った。結果を表2に示す。
【0032】
<曲げ試験>
JIS T6609−2:2005(歯科用ウォーターベースセメント−第2部:レジン添加型セメント)5.12 曲げ試験に準拠して曲げ試験を行った。結果を表2に示す。
【0033】
<変色確認試験>
JIS T6514:2005(歯科充(てん)填用コンポジットレジン)4.4 色調安定性に準拠し、分光測色計(商品名:CM−3610d,コニカミノルタセンシング株式会社製)を用いて、37℃の蒸留水中に7日間浸漬させた前後の色調変化(ΔE)を測定した。結果を表2に示す。なおΔEが小さいほど色調変化が小さいことを意味する。
【0034】
【表2】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存安定性に優れ、水の存在下においても良好な重合性を示し、重合後の経時的な変色も少ない歯牙の修復治療に用いられるペースト状重合性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジカル重合性を有するメタクリレートやアクリレートのモノマー,それらのオリゴマー及びプレポリマーを含有するペースト状組成物を常温で重合させる重合触媒として有機過酸化物と芳香族第3級アミンの組み合わせが古くから用いられている(例えば、特許文献1参照。)。この組合せにおいては、ペースト状組成物に配合する有機過酸化物と芳香族第3級アミンの量を加減すると共に重合禁止材を併用することにより重合硬化時間を調整したり、重合前のペースト状組成物に保存安定性を与えている。
【0003】
しかしながら、有機過酸化物は半減期を持つ不安定な物質であるため、重合硬化時間を速めるために有機過酸化物を多量に配合しておくと、長期保存した場合に重合前にペースト状組成物自体がゲル化しやすく、反対に重合禁止材を多量に配合すると使用時の重合硬化時間が著しく長くなってしまうという問題があり、ペースト状組成物を長期保存するには冷蔵保存して有機過酸化物の劣化を遅らせるなどの対策を取らねばならなかった。また、芳香族第3級アミンのような還元剤は、重合後の組成物を黄褐色へ変色させてしまうので審美的に色が重要な歯牙の修復治療では問題であった。更に、有機過酸化物と芳香族第3級アミンの組み合わせは、口腔内のように水分の多い状況で使用すると十分な効果を得られないという問題もあった。
【0004】
重合後の組成物の変色を防ぐ方法として、ピリミジントリオン誘導体と有機金属化合物と有機ハロゲン化合物の3元系触媒を含むペースト状重合性組成物が開示されている(例えば特許文献2参照。)。これら3元系触媒は何れも半減期を持たないため、長期間保存した場合でも重合硬化時間が安定しているが、口腔内のように水分の多い状況では十分な重合硬化性を得ることができなかった。
【0005】
保存安定性を改善する方法としては、ヒドロペルオキシド,チオ尿素誘導体,銅化合物を組み合わせた歯科用組成物や(例えば、特許文献3参照。)、過酸化水素ポリビニルピロリドン複合体を用いた歯科用組成物(例えば、特許文献4参照。)等が開示されているが、これら歯科用組成物においても長期間良好な保存安定性を得ることができず、また、口腔内のように水分の多い状況では十分な重合硬化性を得ることができなかった。
【0006】
【特許文献1】特開昭62−246514号公報
【特許文献2】特開2003−105008号公報
【特許文献3】特開2007−056020号公報
【特許文献4】特開2008−088086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、冷蔵保存をしなくても保存安定性に優れ、水の存在下においても良好な重合性を示し、重合後の変色も少ない歯牙の修復治療に用いるペースト状重合性組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は前記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリマー構造を持たない過酸化物とアスコルビン酸を用いれば、水に対する溶解性が変動し難い上に、経時的な水の蒸発が起こり難く、また分子中に−OH基のような親水基を有する(メタ)アクリレートを配合しても、練和後の相溶性が安定していることを究明して本発明を完成した。
【発明の効果】
【0009】
冷蔵保存をしなくても保存安定性に優れており、水の存在下においても良好な重合性を示し、重合後の変色も少ないペースト状重合組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
即ち本発明は、
(a)ポリマー構造を持たず、水と相溶又は水に溶解する過酸化物
(b)アスコルビン酸化合物
(c)酸基を有する(メタ)アクリレート
(d)酸基を有さない(メタ)アクリレート
(e)酸と反応しないフィラー
(f)水
を含むことを特徴とするペースト状重合組成物である。
【0011】
このペースト状重合性組成物は、
(b)アスコルビン酸化合物
(d)酸基を有さない(メタ)アクリレート
(e)酸と反応しないフィラー
を含む第一ペーストと、
(a)ポリマー構造を持たず、水と相溶又は水に溶解する過酸化物
(c)酸基を有する(メタ)アクリレート
(d)酸基を有さない(メタ)アクリレート
(e)酸と反応しないフィラー
(f)水
を含む第二ペーストと
から成る態様であることが好ましく、更に、
第一ペースト中に(g)酸と反応するフィラーを含み、
第二ペースト中に(h)ポリカルボン酸を含むことが好ましい。
【0012】
本発明で使用する(a)ポリマー構造を持たず、水と相溶または水に溶解する過酸化物は、ペルオキソ二硫酸カリウム,ペルオキソ二硫酸ナトリウム,ペルオキソ二硫酸アンモニウム,tert−ブチルハイドロパーオキサイド,ステアロイルパーオキサイド,コハク酸パーオキサイド等を挙げることができる。これ等は2種以上を混合して使用してもよい。特に水への溶解性と優れた重合特性からペルオキソ二硫酸カリウム,tert−ブチルハイドロパーオキサイドが好ましい。
【0013】
(b)アスコルビン酸化合物は、L(+)−アスコルビン酸 、L(+)−アスコルビン酸カルシウム、L(+)−アスコルビン酸ナトリウム、デヒドロアスコルビン酸、イソアスコルビン酸、イソアスコルビン酸ナトリウム、(+)−5,6−O−イソプロピリデン-L-アスコルビン酸、2,6−ジ−O−パルミトイル−L−アスコルビン酸、6−O−パルミトイル−L−アスコルビン酸、D−アラボアスコルビン酸等が挙げられる。特に組成物中での安定性の点から、イソアスコルビン酸ナトリウムが好ましい。なお、これらアスコルビン酸化合物は含水塩であってもよい。またこれ等は2種以上を混合して使用してもよい。
【0014】
(c)酸基を有する(メタ)アクリレート化合物は、重合反応によって硬化することで組成物の機材の一部となり、同時に歯質や歯科用修復物の材料であるジルコニア及びアルミナ等のセラミックス、または貴金属を含む合金への接着性を歯質接着性組成物に与える効果がある。本発明での(メタ)アクリレート化合物とは、アクリレートまたはメタクリレート化合物の各種のモノマー,オリゴマー,プレポリマーを意味している。酸基を有する(メタ)アクリレート化合物は酸基としては、リン酸基またはカルボキシル基を1個または複数個有する(メタ)アクリレートであることが好ましい。リン酸基はカルボキシル基よりも強い酸性を示すことから、歯面のスメアー層の溶解や歯質脱灰の効果が高く、特にエナメル質に対して高い接着性の向上効果を発揮する。
【0015】
リン酸基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]ハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフェニルハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルプロパン−2−ジハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルプロパン−2−フェニルハイドロジェンホスフェート、ビス[5−{2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニル}ヘプチル]ハイドロジェンホスフェート等が挙げられる。中でも10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェートが接着性及び(メタ)アクリレート化合物自体の安定性の点から特に好ましい。これらのリン酸基を有する(メタ)アクリレート化合物は2種以上を混合して用いてもよい。
【0016】
カルボキシル基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸、4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸無水物、4−(メタ)アクリロキシデシルトリメリット酸、4−(メタ)アクリロキシデシルトリメリット酸無水物、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸、1,4−ジ(メタ)アクリロイルオキシピロメリット酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸などが挙げられる。中でも4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸,4−(メタ)アクリロキシエチルトリメリット酸無水物が接着性の点から特に好ましい。これらのカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート化合物は2種以上を混合して用いてもよい。
【0017】
(d)酸基を有さない(メタ)アクリレート化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレートが挙げられ、これらのモノマーあるいはオリゴマーあるいはプレポリマーが好適に使用できる。また、ウレタン結合を持つ(メタ)アクリレートとして、ジ−2−(メタ)アクリロキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、1,3,5−トリス[1,3−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2−プロポキシカルボニルアミノヘキサン]−1,3,5−(1H,3H,5H)トリアジン−2,4,6−トリオン、2,2−ビス−4−(3−(メタ)アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−フェニルプロパン等があり、その他2,2’−ジ(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンと2−オキシパノンとヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとから成るウレタンオリゴマーの(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールとヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとから成るウレタンオリゴマーの(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは2種以上を混合して使用することができる。
【0018】
(e)酸と反応しないフィラーはペースト状重合性組成物の強度を高めるために配合される。具体的には、無水ケイ酸、バリウムガラス、アルミナガラス、カリウムガラス等のガラス類、長石、ヒュームドシリカ、含水ケイ酸、石英等の粉末がある。これらの充填材は(メタ)アクリレートと化学的に結合させるために、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン等のシランカップリング剤で表面処理されていてもよい。また、前記のフィラーを予め(メタ)アクリレート化合物と混合して重合硬化させた後、粉砕して作製した有機無機複合フィラーも使用することができる。中でも、無水ケイ酸,含水ケイ酸は長期間保存した場合でも重合前のペースト状重合性組成物がゲル化するのを防止する効果がある。これらは2種以上を混合して使用することができる。
【0019】
(f)水は、(a)ポリマー構造を持たず、水と相溶又は水に溶解する過酸化物を溶解して活性化させるために配合されている。
【0020】
本発明に係るペースト状重合性組成物は、(b)アスコルビン酸化合物と(c)酸基を有する(メタ)アクリレートが共存すると保存性が悪くなるので、(b)アスコルビン酸化合物と(c)酸基を有する(メタ)アクリレートは分けて配合することが好ましい。
【0021】
例えば、(b)アスコルビン酸化合物、(d)酸基を有さない(メタ)アクリレート、
(e)酸と反応しないフィラーを含む第一ペーストと、
(a)ポリマー構造を持たず、水と相溶又は水に溶解する過酸化物、(c)酸基を有する(メタ)アクリレート、(d)酸基を有さない(メタ)アクリレート、(e)酸と反応しないフィラー、(f)水を含む第二ペーストとから成る態様であることが好ましい。
【0022】
更に本発明に係るペースト状重合性組成物は、第一ペースト中に(g)酸と反応するフィラーを含み第二ペースト中に(h)ポリカルボン酸を含むことが好ましい。(g)酸と反応するフィラーは、組成物中の酸基を有する(メタ)アクリレート化合物や(h)ポリカルボン酸と(f)水の存在下でセメント反応を起こすための充填材であり、(c)酸基を有する(メタ)アクリレートや(h)ポリカルボン酸とは分けて配合する必要がある。具体的にはフルオロアルミノシリケートガラス粉末や合成ゼオライト粉末を挙げることができる。
【0023】
(h)ポリカルボン酸は、アクリル酸,メタクリル酸,2−クロロアクリル酸,3−クロロアクリル酸,アコニット酸,メサコン酸,マレイン酸,イタコン酸,フマール酸,グルタコン酸及びシトラコン酸の中から選ばれた2種以上を含む共重合体または単独重合体であって、重合可能なエチレン性不飽和二重結合を含まない重量平均分子量5,000〜40,000であるものが好ましい。重量平均分子量が5,000未満の場合は硬化体の強度が低くなりやすく、また歯質への接着力も低下する傾向があり、40,000を超える場合には、操作性が悪化する傾向がある。
【0024】
更に本発明に係るペースト状重合性組成物には、必要に応じて通常用いられている光重合開始剤、増粘剤、顔料、安定剤、抗菌剤等を配合することも可能である。
【0025】
以下実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0026】
『第一ペーストと第二ペーストの調整』
各実施例及び比較例に用いた第一ペーストと第二ペーストの配合を表2に示す。試験に際しては、第一ペースト1gと第二ペースト1gを練和紙上に量り採り、スパチュラを用いて40秒間練和操作を行うことで均一に混合したものを使用した。
【0027】
表2中の略語はそれぞれ以下の通りである。
IA酸Na:イソアスコルビン酸ナトリウム
IA酸:イソアスコルビン酸
p−アミン:p−トリルジエタノールアミン
N−AcTU:N−アセチルチオ尿素
AcCu:アセチルアセトン銅
UDMA:ジ−2−メタクリロキシエチル−2、2、4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
CLVX−S:粒子径5μm以下高純度結晶性石英フィラー(株式会社龍森社製)
AS−A200:親水性ヒュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製)
ガラスI:フルオロアルミノシリケートガラス粉末I(調整方法は後述する)
ガラスII:フルオロアルミノシリケートガラス粉末II(調整方法は後述する)
CQ:カンファーキノン
BHT:ブチルヒドロキシトルエン
tert−BHPO:tert−ブチルハイドロパーオキサイド
KPS:ペルオキソ二硫酸カリウム
BPO:ベンゾイルパーオキサイド
CHPO:クメンヒドロペルオキシド
4−META:4−メタクリロキシエチルトリメリット酸無水物
MDP:2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート
PAA:ポリアクリル酸(平均分子量14,000)
【0028】
『フルオロアルミノシリケートガラス粉末の調整』
(g)酸と反応するフィラーであるフルオロアルミノシリケートガラス粉末I及びII(表2におけるガラスI及びガラスII)の配合を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
フルオロアルミノシリケートガラス粉末Iについては、原料を十分混合し1200℃の高温電気炉中で5時間保持しガラスを溶融させた。溶融後冷却し、ボールミルを用いて10時間粉砕し、200メッシュ(ASTM)ふるいを通過させた後の粉末をフルオロアルミノシリケートガラス粉末とした。フルオロアルミノシリケートガラス粉末IIについては、1100℃で溶融した以外はフルオロアルミノシリケートガラス粉末Iと同様の操作を行った。
【0031】
<硬化時間>
JIS T6609−2:2005(歯科用ウォーターベースセメント−第2部:レジン添加型セメント)5.5 硬化時間試験に準拠して測定を行った。ただし配合の違いによる硬化性の差異を検出しやすくするため、測定は23℃で行った。
また実施例及び比較例それぞれの試料を室温(23℃)で1年間保存した後にも同様の測定を行った。結果を表2に示す。
【0032】
<曲げ試験>
JIS T6609−2:2005(歯科用ウォーターベースセメント−第2部:レジン添加型セメント)5.12 曲げ試験に準拠して曲げ試験を行った。結果を表2に示す。
【0033】
<変色確認試験>
JIS T6514:2005(歯科充(てん)填用コンポジットレジン)4.4 色調安定性に準拠し、分光測色計(商品名:CM−3610d,コニカミノルタセンシング株式会社製)を用いて、37℃の蒸留水中に7日間浸漬させた前後の色調変化(ΔE)を測定した。結果を表2に示す。なおΔEが小さいほど色調変化が小さいことを意味する。
【0034】
【表2】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリマー構造を持たず、水と相溶又は水に溶解する過酸化物
(b)アスコルビン酸化合物
(c)酸基を有する(メタ)アクリレート
(d)酸基を有さない(メタ)アクリレート
(e)酸と反応しないフィラー
(f)水
を含むことを特徴とするペースト状重合性組成物。
【請求項2】
(b)アスコルビン酸化合物
(d)酸基を有さない(メタ)アクリレート
(e)酸と反応しないフィラー
を含む第一ペーストと
(a)ポリマー構造を持たず、水と相溶又は水に溶解する過酸化物
(c)酸基を有する(メタ)アクリレート
(d)酸基を有さない(メタ)アクリレート
(e)酸と反応しないフィラー
(f)水
を含む第二ペーストと
から成る請求項1に記載のペースト状重合性組成物。
【請求項3】
第一ペースト中に(g)酸と反応するフィラーを含み、
第二ペースト中に(h)ポリカルボン酸を含む
請求項2に記載のペースト状重合性組成物。
【請求項1】
(a)ポリマー構造を持たず、水と相溶又は水に溶解する過酸化物
(b)アスコルビン酸化合物
(c)酸基を有する(メタ)アクリレート
(d)酸基を有さない(メタ)アクリレート
(e)酸と反応しないフィラー
(f)水
を含むことを特徴とするペースト状重合性組成物。
【請求項2】
(b)アスコルビン酸化合物
(d)酸基を有さない(メタ)アクリレート
(e)酸と反応しないフィラー
を含む第一ペーストと
(a)ポリマー構造を持たず、水と相溶又は水に溶解する過酸化物
(c)酸基を有する(メタ)アクリレート
(d)酸基を有さない(メタ)アクリレート
(e)酸と反応しないフィラー
(f)水
を含む第二ペーストと
から成る請求項1に記載のペースト状重合性組成物。
【請求項3】
第一ペースト中に(g)酸と反応するフィラーを含み、
第二ペースト中に(h)ポリカルボン酸を含む
請求項2に記載のペースト状重合性組成物。
【公開番号】特開2011−213829(P2011−213829A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82223(P2010−82223)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000181217)株式会社ジーシー (279)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000181217)株式会社ジーシー (279)
【Fターム(参考)】
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