説明

ホットスポット応力測定用ひずみゲージ

【課題】 ホットスポット応力を測定するための位置決めおよび貼り付けが容易で、作業性が高く、簡易迅速に且つ適確なホットスポット応力の測定を実現する。
【解決手段】 やや細長い長方形に形成された可撓性を有する合成樹脂等のフィルム状の絶縁体からなるゲージベース1上に金属箔からなるゲージパターン2が形成される。ゲージベース1の長手方向の一端LEから第1の所定距離DAに配置される第1のグリッド部21(GA)およびこの第1のグリッド部21の両端に接続されるゲージタブ23a、23bを有する。さらに、ゲージベース1の長手方向の一端LEから前記長手方向について前記第1の所定距離DAよりも長い第2の所定距離DBに配置される第2のゲージ部GBとしての第2のグリッド部22およびこの第2のグリッド部22の両端に接続されるゲージタブ24a、24bを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物等の疲労寿命を予測するためにホットスポット応力を計測するためのホットスポット応力測定用ひずみゲージに関するものである。
【背景技術】
【0002】
橋脚やビルおよびクレーン等の構造物における疲労による損傷が問題となっており、このような構造物の寿命予測が重要視されてきている。構造物の疲労強度を検討し把握するためには、応力集中が損傷の原因となる溶接止端部の応力を把握することが必要となる。このような溶接止端部の疲労強度を検証するためにホットスポット応力が用いられる。ホットスポット応力を求めるためには、構造力学的にFEM(Finite Element Method:有限要素法)解析等を用いて算出する方法もあるが、最終的には実測によりホットスポット応力を求める方法を用いることが要求される。
実測によりホットスポット応力を求める方法には、例えば、溶接止端部から予め定められた間隔で2枚のひずみゲージを貼り付け、これら2点の応力の比から、いわゆる線形外挿法によって、ホットスポット応力、つまり溶接部の応力、を推定する方法がある。
この種のホットスポット応力を求める方法については、例えば、非特許文献1(「鋼構造物の疲労設計指針・同解説」、日本鋼構造協会発行、第283頁〜第291頁)に線形外挿法を用いる方法として具体的に説明されている。すなわち、2枚のひずみゲージを、溶接止端部からの距離の異なる予め定められた個所にそれぞれ貼り付け、これら2個所の応力から線形外挿法によってホットスポット応力を求めることが示されている。この非特許文献1には、線形外挿法を用いてホットスポット応力を求めるためのひずみゲージの貼り付け個所についてのいくつかの提案例も記載されており、2枚のひずみゲージを貼り付ける位置は、解析手法によって相違することが示されている。
【0003】
また、非特許文献2(「JWES 接合・溶接技術Q&A1000(No.Q04−2−19)」、社団法人日本溶接協会のホームページ、http://www-it.jwes.or.jp/qa/details.jsp?pg_no=0040020190)には、ホットスポット応力を求めるために、溶接止端から板厚tの0.5倍(0.5t)と1.5倍(1.5t)の位置における応力値を直線で結び、溶接止端位置に外挿した応力値を推定する方法(SR202B法と表記されている)について記載されている。
【0004】
【非特許文献1】「鋼構造物の疲労設計指針・同解説」、日本鋼構造協会発行(第283頁〜第291頁)
【非特許文献2】「JWES 接合・溶接技術Q&A1000(No.Q04−2−19)」、社団法人日本溶接協会のホームページ、URL(http://www-it.jwes.or.jp/qa/details.jsp?pg_no=0040020190)、2004年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような方法は、解析手法に従って予め決定された所定個所における応力値を計測するためのひずみゲージを貼り付ける際に、ひずみゲージを正しく位置決めしなければならず、また該当位置にひずみゲージを適正に貼り付けなければならないなど、熟練の作業が必要となっていた。しかも、ホットスポット応力は、基本的に2個所の測定値に基づいて算出するため、このようなホットスポット応力を求めるためには、各ひずみゲージで測定されたデータに基づく測定後のデータ処理によって応力を算出する必要があり、測定中にリアルタイムで結果を得ることができなかった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、ホットスポット応力を測定するための位置決めおよび貼り付けが容易で、作業性が高く、簡易で且つ適確なホットスポット応力の測定を実現することの可能なホットスポット応力測定用ひずみゲージを提供することを目的としている。
本発明の請求項1の目的は、ゲージベースの先端を溶接止端部に合わせて貼り付けるだけで、ホットスポット応力を測定するための適切な位置合わせが行われ、作業性が良く、簡易に且つ適確にホットスポット応力を測定することを可能とするホットスポット応力測定用ひずみゲージを提供することにある。
【0006】
本発明の請求項2の目的は、特に、簡単な構造で、簡易に且つ適確にホットスポット応力を測定することを可能とするホットスポット応力測定用ひずみゲージを提供することにある。
本発明の請求項3の目的は、特に、ゲージベース上に所定の抵抗値を有する固定抵抗を設けることにより、ホットスポット応力を算出するブリッジ回路を形成し、ゲージベースの先端を溶接止端部に合わせて貼り付けるだけで、ホットスポット応力を測定するための適切な位置合わせが行われ、且つブリッジ出力としてホットスポット応力を直接的に得ることができ、簡単な構成で、作業性が良く、簡易に且つ適確にホットスポット応力を測定することを可能とするホットスポット応力測定用ひずみゲージを提供することにある。
本発明の請求項4の目的は、特に、ゲージベース上にそれ自体でホットスポット応力を算出するブリッジ回路を形成し、ゲージベースの先端を溶接止端部に合わせて貼り付けるだけで、ホットスポット応力を測定するための適切な位置合わせが行われ、且つブリッジ出力としてホットスポット応力を直接的に得ることができ、極めて作業性が良く、簡易に且つ適確にホットスポット応力を測定することを可能とするホットスポット応力測定用ひずみゲージを提供することにある。
【0007】
本発明の請求項5の目的は、特に、ゲージ機能を阻害することなく、ゲージベース上にホットスポット応力を算出するブリッジ回路を形成することができるホットスポット応力測定用ひずみゲージを提供することにある。
本発明の請求項6の目的は、特に、簡単な構成で、ブリッジ出力としてホットスポット応力を直接的に得ることができるホットスポット応力測定用ひずみゲージを提供することにある。
本発明の請求項7の目的は、特に、被溶接部材の状況に合わせて、簡易に、ブリッジ出力としてホットスポット応力を直接的に得ることができるホットスポット応力測定用ひずみゲージを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載した本発明に係るホットスポット応力測定用ひずみゲージは、上述した目的を達成するために、
可撓性を有するフィルム状の絶縁体からなるゲージベースと、
前記ゲージベースの所定方向の一端から前記所定方向についての第1の所定距離に配置されて前記ゲージベース上に設けられ前記所定方向についてのひずみを検出する第1のゲージ部と、
前記ゲージベースの前記一端から前記所定方向についての前記第1の所定距離とは異なる第2の所定距離に配置されて前記ゲージベース上に設けられ前記所定方向についてのひずみを検出する第2のゲージ部と、
を具備することを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載した本発明に係るホットスポット応力測定用ひずみゲージは、請求項1のホットスポット応力測定用ひずみゲージであって、
前記第1のゲージ部および第2のゲージ部が、前記ゲージベース上に配置されたそれぞれ前記第1の所定距離におけるひずみを検出するためのゲージ抵抗からなる第1のグリッド部および前記第2の所定距離におけるひずみを検出するためのゲージ抵抗からなる第2のグリッド部並びにこれら第1のグリッド部および第2のグリッド部に接続するための導電路を形成する配線接続部を有するゲージパターンにより形成されていることを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載した本発明に係るホットスポット応力測定用ひずみゲージは、上述した目的を達成するために、
可撓性を有するフィルム状の絶縁体からなるゲージベースと、
前記ゲージベースの所定方向の一端から前記所定方向についての第1の所定距離に配置されて前記ゲージベース上に設けられ前記第1の所定距離における前記所定方向についてのひずみに感応するゲージ抵抗からなる第1のゲージグリッド部と、
前記ゲージベースの前記一端から前記所定方向についての第1の所定距離に配置されて前記ゲージベース上に設けられ前記第1の所定距離における前記所定方向についてのひずみに感応するゲージ抵抗からなる第2のゲージグリッド部と、
前記ゲージベースの前記一端から前記所定方向についての第1の所定距離に配置されて前記ゲージベース上に設けられ前記第1の所定距離における前記所定方向についてのひずみに感応するゲージ抵抗からなる第3のゲージグリッド部と、
前記ゲージベースの前記一端から前記所定方向についての前記第1の所定距離とは異なる第2の所定距離に配置されて前記ゲージベース上に設けられ前記第2の所定距離における前記所定方向についてのひずみに感応するゲージ抵抗からなる第4のゲージグリッド部と、
前記第1のゲージグリッド部の一端と前記第2のゲージグリッド部の一端とを接続し、前記第2のゲージグリッド部の他端と前記第4のゲージグリッド部の一端とを接続し、前記第4のゲージグリッド部の他端と前記第3のゲージグリッド部の一端とを接続し、そして前記第1のゲージグリッド部の他端、前記第1のゲージグリッド部の一端と前記第2のゲージグリッド部の一端との接続個所、前記第4のゲージグリッド部の他端と前記第3のゲージグリッド部の一端との接続個所および前記第3のゲージグリッド部の他端、にそれぞれ接続するための導電路を形成する第1、第2、第3および第4の配線接続部と、
を具備し、且つ
前記第1の配線接続部は、固定抵抗の一端およびブリッジ入力の一端に接続され、前記第2の配線接続部は、ブリッジ出力の一端に接続され、前記第3の配線接続部は、前記ブリッジ入力の他端に接続され、そして前記第4の配線接続部は、前記固定抵抗の他端および前記ブリッジ出力の他端に接続されることを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載した本発明に係るホットスポット応力測定用ひずみゲージは、上述した目的を達成するために、
可撓性を有するフィルム状の絶縁体からなるゲージベースと、
前記ゲージベースの所定方向の一端から前記所定方向についての第1の所定距離に配置されて前記ゲージベース上に設けられ前記第1の所定距離における前記所定方向についてのひずみに感応するゲージ抵抗からなる第1のゲージグリッド部と、
前記ゲージベースの前記一端から前記所定方向についての第1の所定距離に配置されて前記ゲージベース上に設けられ前記第1の所定距離における前記所定方向についてのひずみに感応するゲージ抵抗からなる第2のゲージグリッド部と、
前記ゲージベースの前記一端から前記所定方向についての第1の所定距離に配置されて前記ゲージベース上に設けられ前記第1の所定距離における前記所定方向についてのひずみに感応するゲージ抵抗からなる第3のゲージグリッド部と、
前記ゲージベースの前記一端から前記所定方向についての前記第1の所定距離とは異なる第2の所定距離に配置されて前記ゲージベース上に設けられ前記第2の所定距離における前記所定方向についてのひずみに感応するゲージ抵抗からなる第4のゲージグリッド部と、
前記第1のゲージグリッド部の一端と前記第2のゲージグリッド部の一端とを接続し、前記第2のゲージグリッド部の他端と前記第4のゲージグリッド部の一端とを接続し、前記第4のゲージグリッド部の他端と前記第3のゲージグリッド部の一端とを接続し、そして前記第1のゲージグリッド部の他端、前記第1のゲージグリッド部の一端と前記第2のゲージグリッド部の一端との接続個所、前記第4のゲージグリッド部の他端と前記第3のゲージグリッド部の一端との接続個所および前記第3のゲージグリッド部の他端、にそれぞれ接続するための導電路を形成する第1、第2、第3および第4の配線接続部と、
前記第1の配線接続部と前記第4の配線接続部との間に接続されて前記ゲージベース上に設けられた固定抵抗と、
を具備し、且つ
前記第1の配線接続部は、ブリッジ入力の一端に接続され、前記第2の配線接続部は、ブリッジ出力の一端に接続され、前記第3の配線接続部は、前記ブリッジ入力の他端に接続され、そして前記第4の配線接続部は、前記ブリッジ出力の他端に接続されることを特徴としている。
【0012】
請求項5に記載した本発明に係るホットスポット応力測定用ひずみゲージは、請求項3または請求項4のホットスポット応力測定用ひずみゲージであって、
前記固定抵抗は、ゲージベース上に添設される、いわゆるチップ抵抗であることを特徴としている。
請求項6に記載した本発明に係るホットスポット応力測定用ひずみゲージは、請求項3〜5のいずれか1項のホットスポット応力測定用ひずみゲージであって、
前記第1のゲージグリッド部および前記第3のゲージグリッド部の定格抵抗値は前記固定抵抗の抵抗値とほぼ等しく且つ前記第2のゲージグリッド部および前記第4のゲージグリッド部の定格抵抗値は前記固定抵抗の半分の抵抗値であることを特徴としている。
請求項7に記載した本発明に係るホットスポット応力測定用ひずみゲージは、請求項1〜6のいずれか1項のホットスポット応力測定用ひずみゲージであって、
ホットスポット応力の測定対象とする非溶接部材の板厚をTとして、前記第1の所定距離を0.5Tとし、前記第2の所定距離を1.5Tとしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ホットスポット応力を測定するための位置決めおよび貼り付けが容易で、作業性が高く、簡易で且つ適確なホットスポット応力の測定を実現することの可能なホットスポット応力測定用ひずみゲージを提供することができる。
すなわち本発明の請求項1のホットスポット応力測定用ひずみゲージによれば、
可撓性を有するフィルム状の絶縁体からなるゲージベースと、前記ゲージベースの所定方向の一端から前記所定方向についての第1の所定距離に配置されて前記ゲージベース上に設けられ前記所定方向についてのひずみを検出する第1のゲージ部と、前記ゲージベースの前記一端から前記所定方向についての前記第1の所定距離とは異なる第2の所定距離に配置されて前記ゲージベース上に設けられ前記所定方向についてのひずみを検出する第2のゲージ部と、を具備することにより、
ゲージベースの先端を溶接止端部に合わせて貼り付けるだけで、ホットスポット応力を測定するための適切な位置合わせが行われ、作業性が良く、簡易に且つ適確にホットスポット応力を測定することが可能となる。
【0014】
また、本発明の請求項2のホットスポット応力測定用ひずみゲージによれば、請求項1のホットスポット応力測定用ひずみゲージにおいて、
前記第1のゲージ部および第2のゲージ部が、前記ゲージベース上に配置されたそれぞれ前記第1の所定距離におけるひずみを検出するためのゲージ抵抗からなる第1のグリッド部および前記第2の所定距離におけるひずみを検出するためのゲージ抵抗からなる第2のグリッド部並びにこれら第1のグリッド部および第2のグリッド部に接続するための導電路を形成する配線接続部を有するゲージパターンにより形成されるようにすることにより、
特に、簡単な構造で、簡易に且つ適確にホットスポット応力を測定することが可能となる。
【0015】
さらに、本発明の請求項3のホットスポット応力測定用ひずみゲージによれば、
可撓性を有するフィルム状の絶縁体からなるゲージベースと、前記ゲージベースの所定方向の一端から前記所定方向についての第1の所定距離に配置されて前記ゲージベース上に設けられ前記第1の所定距離における前記所定方向についてのひずみに感応するゲージ抵抗からなる第1のゲージグリッド部と、前記ゲージベースの前記一端から前記所定方向についての第1の所定距離に配置されて前記ゲージベース上に設けられ前記第1の所定距離における前記所定方向についてのひずみに感応するゲージ抵抗からなる第2のゲージグリッド部と、前記ゲージベースの前記一端から前記所定方向についての第1の所定距離に配置されて前記ゲージベース上に設けられ前記第1の所定距離における前記所定方向についてのひずみに感応するゲージ抵抗からなる第3のゲージグリッド部と、前記ゲージベースの前記一端から前記所定方向についての前記第1の所定距離とは異なる第2の所定距離に配置されて前記ゲージベース上に設けられ前記第2の所定距離における前記所定方向についてのひずみに感応するゲージ抵抗からなる第4のゲージグリッド部と、前記第1のゲージグリッド部の一端と前記第2のゲージグリッド部の一端とを接続し、前記第2のゲージグリッド部の他端と前記第4のゲージグリッド部の一端とを接続し、前記第4のゲージグリッド部の他端と前記第3のゲージグリッド部の一端とを接続し、そして前記第1のゲージグリッド部の他端、前記第1のゲージグリッド部の一端と前記第2のゲージグリッド部の一端との接続個所、前記第4のゲージグリッド部の他端と前記第3のゲージグリッド部の一端との接続個所および前記第3のゲージグリッド部の他端、にそれぞれ接続するための導電路を形成する第1、第2、第3および第4の配線接続部と、を具備し、且つ前記第1の配線接続部は、固定抵抗の一端およびブリッジ入力の一端に接続され、前記第2の配線接続部は、ブリッジ出力の一端に接続され、前記第3の配線接続部は、前記ブリッジ入力の他端に接続され、そして前記第4の配線接続部は、前記固定抵抗の他端および前記ブリッジ出力の他端に接続されるようにすることにより、
特に、ゲージベース上に所定の抵抗値を有する固定抵抗を設けることによって、ホットスポット応力を算出するブリッジ回路を形成し、ゲージベースの先端を溶接止端部に合わせて貼り付けるだけで、ホットスポット応力を測定するための適切な位置合わせが行われ、且つブリッジ出力としてホットスポット応力を直接的に得ることができ、簡単な構成で、作業性が良く、簡易に且つ適確にホットスポット応力を測定することが可能となる。
【0016】
また、本発明の請求項4のホットスポット応力測定用ひずみゲージによれば、
可撓性を有するフィルム状の絶縁体からなるゲージベースと、前記ゲージベースの所定方向の一端から前記所定方向についての第1の所定距離に配置されて前記ゲージベース上に設けられ前記第1の所定距離における前記所定方向についてのひずみに感応するゲージ抵抗からなる第1のゲージグリッド部と、前記ゲージベースの前記一端から前記所定方向についての第1の所定距離に配置されて前記ゲージベース上に設けられ前記第1の所定距離における前記所定方向についてのひずみに感応するゲージ抵抗からなる第2のゲージグリッド部と、前記ゲージベースの前記一端から前記所定方向についての第1の所定距離に配置されて前記ゲージベース上に設けられ前記第1の所定距離における前記所定方向についてのひずみに感応するゲージ抵抗からなる第3のゲージグリッド部と、前記ゲージベースの前記一端から前記所定方向についての前記第1の所定距離とは異なる第2の所定距離に配置されて前記ゲージベース上に設けられ前記第2の所定距離における前記所定方向についてのひずみに感応するゲージ抵抗からなる第4のゲージグリッド部と、前記第1のゲージグリッド部の一端と前記第2のゲージグリッド部の一端とを接続し、前記第2のゲージグリッド部の他端と前記第4のゲージグリッド部の一端とを接続し、前記第4のゲージグリッド部の他端と前記第3のゲージグリッド部の一端とを接続し、そして前記第1のゲージグリッド部の他端、前記第1のゲージグリッド部の一端と前記第2のゲージグリッド部の一端との接続個所、前記第4のゲージグリッド部の他端と前記第3のゲージグリッド部の一端との接続個所および前記第3のゲージグリッド部の他端、にそれぞれ接続するための導電路を形成する第1、第2、第3および第4の配線接続部と、前記第1の配線接続部と前記第4の配線接続部との間に接続されて前記ゲージベース上に設けられた固定抵抗と、を具備し、且つ
前記第1の配線接続部は、ブリッジ入力の一端に接続され、前記第2の配線接続部は、ブリッジ出力の一端に接続され、前記第3の配線接続部は、前記ブリッジ入力の他端に接続され、そして前記第4の配線接続部は、前記ブリッジ出力の他端に接続されるようにすることにより、
特に、ゲージベース上にそれ自体でホットスポット応力を算出するブリッジ回路を形成し、ゲージベースの先端を溶接止端部に合わせて貼り付けるだけで、ホットスポット応力を測定するための適切な位置合わせが行われ、且つブリッジ出力としてホットスポット応力を直接的に得ることができ、極めて作業性が良く、簡易に且つ適確にホットスポット応力を測定することが可能となる。
【0017】
本発明の請求項5のホットスポット応力測定用ひずみゲージによれば、請求項3または請求項4のホットスポット応力測定用ひずみゲージにおいて、
前記固定抵抗は、ゲージベース上に添設される、いわゆるチップ抵抗であることにより、
特に、ゲージ機能を阻害することなく、ゲージベース上にホットスポット応力を算出するブリッジ回路を形成することが可能となる。
本発明の請求項6のホットスポット応力測定用ひずみゲージによれば、請求項3〜5のいずれか1項のホットスポット応力測定用ひずみゲージにおいて、
前記第1のゲージグリッド部および前記第3のゲージグリッド部の定格抵抗値は前記固定抵抗の抵抗値とほぼ等しく且つ前記第2のゲージグリッド部および前記第4のゲージグリッド部の定格抵抗値は前記固定抵抗の半分の抵抗値であることにより、
特に、簡単な構成で、ブリッジ出力としてホットスポット応力を直接的に得ることが可能となる。
【0018】
本発明の請求項7のホットスポット応力測定用ひずみゲージによれば、請求項1〜6のいずれか1項のホットスポット応力測定用ひずみゲージにおいて、
ホットスポット応力の測定対象とする非溶接部材の板厚をTとして、前記第1の所定距離を0.5Tとし、前記第2の所定距離を1.5Tとすることにより、
特に、非溶接部材の状況に合わせて、簡易に、ブリッジ出力としてホットスポット応力を直接的に得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施の形態に基づき、図面を参照して本発明のホットスポット応力測定用ひずみゲージを詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るホットスポット応力測定用ひずみゲージの構成を示す平面図であり、図2は、図1のホットスポット応力測定用ひずみゲージの使用状態を示す斜視図である。
図1および図2に示すホットスポット応力測定用ひずみゲージG1は、ゲージベース1およびゲージパターン2を備えている。ゲージパターン2は、第1のゲージリードグリッド部としての第1のグリッド部21、第2のゲージリードグリッド部としての第2のグリッド部22、ゲージタブ23a、23b、24aおよび24bを有している。
図1に示すように、ゲージベース1は、やや細長い長方形に形成された可撓性を有する合成樹脂等のフィルム状の絶縁体からなる。このゲージベース1上に形成される金属箔からなるゲージパターン2は、ゲージベース1の長手方向の一端LEから長手方向について第1の所定距離DA(図3(a)および(b)参照)に配置されるゲージ抵抗GAの第1のグリッド部21およびこの第1のグリッド部21の両端に接続されるゲージタブ23a、23b、並びに前記一端LEから前記長手方向について前記第1の所定距離DAよりも長い第2の所定距離DB(図3(a)および(b)参照)に配置されるゲージ抵抗GBの第2のグリッド部22およびこの第2のグリッド部22の両端に接続されるゲージタブ24a、24bを有している。
【0020】
第1のグリッド部21は、ゲージベース1の長手方向についての伸縮によって抵抗値が変化するように、図1に示すごとく、長手方向に沿って細長く且つ幅が狭い部分を多数平行に形成して、繰り返し折り返すパターンを形成し、前記長手方向の一端LEから第1の所定距離DAにその折り返しの中心線を位置させるとともに、折り返し端部については、抵抗値が充分に低くなるように広い幅に形成する。第2のグリッド部22は、やはり、ゲージベース1の長手方向についての伸縮によって抵抗値が変化するように、図1に示すごとく、長手方向に沿って細長く且つ幅が狭い部分を多数平行に形成して、繰り返し折り返すパターンを形成し、前記長手方向の一端LEから第2の所定距離DBにその折り返しの中心線を位置させるとともに、前記長手方向に直交する方向の折り返し端部については、抵抗値が充分に低くなるように広い幅に形成する。
第1のグリッド部21の両端は、抵抗値が充分に低くなるように幅広く形成した導通路を介して外部結線用のゲージタブ23aおよび23bにそれぞれ接続されている。このとき、第1のグリッド部21の両端からゲージタブ23aおよび23bへ引き出す導通路は、図1のように第2のグリッド部22と干渉しないように迂回して配置している。第2のグリッド部22の両端は、抵抗値が充分に低くなるように幅広く形成した導通路を介して外部結線用のゲージタブ24aおよび24bにそれぞれ接続されている。
【0021】
なお、この場合、第1のグリッド部21のゲージ抵抗GAの定格抵抗値と第2のグリッド部22のゲージ抵抗GBの定格抵抗値は、通常の構成であれば、外部に接続される測定回路および演算を簡単にするためにも、等しい値に設定することが望ましい。
このとき、導通路の配線パターンの幅を広くするだけで導通路の抵抗値を充分に低くすることができる場合には、ゲージパターン2全体を抵抗性金属からなる金属箔を用いて形成してもよい。あるいは、第1のグリッド部21および第2のグリッド部22を伸縮により抵抗値が変化する抵抗性金属を用いて形成し、ゲージパターン2の第1のグリッド部21および第2のグリッド部22以外のゲージタブ23a、23b、24a、24b、並びにそれらと第1のグリッド部21および第2のグリッド部22との間の導通路の部分を、より抵抗値の低い導電性金属を用いて形成するようにしても良い。
このようなホットスポット応力測定用ひずみゲージG1は、図2に示すようにして用いられる。すなわち、板状の第1の部材M1上に、やはり板状の第2の部材M2の端部を鉛直にして溶接した典型的な構造において、溶接部Wの溶接止端部HSに、ホットスポット応力測定用ひずみゲージG1の長手方向の一端LEを突き合わせた状態で、ホットスポット応力測定用ひずみゲージG1を第1の部材M1上に貼り付ける。
【0022】
このような状態で、ゲージタブ23aと23bとの間にあらわれる第1のグリッド部21によるゲージ抵抗GAおよびゲージタブ24aと24bとの間にあらわれる第2のグリッド部22によるゲージ抵抗GBをリード線等を介して外部のブリッジ回路等を構成する計測回路に接続し、溶接止端部HSにおけるホットスポット応力を計測する。
次に、このようなホットスポット応力測定用ひずみゲージG1におけるホットスポット応力の測定原理を図3を参照し具体的な例に基づいて説明する。
図3には、(a)溶接部の断面および溶接止端部HSからの距離に応じた応力の計測値並びに溶接止端部HSにおけるホットスポット応力の推定値をそれぞれ組み合わせて模式的に示す模式図と、(b)図3(a)の模式図における適正な貼り付け位置に対応して示された図1と同様のホットスポット応力測定用ひずみゲージG1の平面図とを示している。
図3(a)に示すように、溶接止端部HSから第1の所定距離DAの位置PAおよび該第1の所定距離DAよりも長い第2の所定距離DBの位置PBそれぞれにおける応力εおよびεを直線で結び、その延長線上として溶接止端部HSにおける応力εを次式より推定する。
【0023】
ε=(ε−ε)/2+ε (1)
なお、溶接止端部HSから位置PAまでの第1の所定距離DAおよび溶接止端部HSから位置PBまでの第2の所定距離DBとしてそれぞれ設定すべき値は、解析手法によって異なり、且つ第1の部材M1および第2の部材M2等の材料の板厚T[mm]によっても変動する。
例えば、第1の所定距離DAを0.5T[mm]とし、第2の所定距離DBを1.5T[mm]とすると、次式によって溶接止端部HSにおけるホットスポット応力を算出することができる。
ε=1.5ε−0.5ε (2)
例えば、第1の部材M1および第2の部材M2の板厚Tが10[mm]である場合には、溶接止端部HSから5[mm]と15[mm]の位置に第1のゲージ部と第2のゲージ部を配置する。本実施例に係るホットスポット応力測定用ひずみゲージG1は、図1および図3(b)に示されているように、予め1枚のひずみゲージにおけるゲージベース1上に2つのゲージ部を配置している。すなわち第1のゲージ部である第1のグリッド部21および第2のゲージ部である第2のグリッド部22を、ゲージベース1の長手方向の一端LEから5[mm]および15[mm]の位置にそれぞれ形成している。
【0024】
このようなホットスポット応力測定用ひずみゲージG1は、ゲージベース1の長手方向の一端LEを溶接止端部HSに突き合わせて、第1の部材M1上に貼り付けることにより、溶接止端部HSから第1の所定距離DAである5[mm]の位置PAに第1のグリッド部21が正しく配置され、そして溶接止端部HSから第2の所定距離DBである15[mm]の位置PBに第2のグリッド部22が正しく配置される。したがって、本実施の形態に係るホットスポット応力測定用ひずみゲージG1は、板厚T[mm]の部材M1およびM2に最適に形成されたホットスポット応力測定用ひずみゲージであるということができる。
これら第1の所定距離DAおよび第2の所定距離DBの最適位置は、解析手法により異なるが、溶接止端部HSの近傍の2個所の応力を求めて、一端LEにおけるホットスポット応力を推定する手法は、基本的に同様であるので、原理的には、どのような解析手法にも対応することが可能である。
図4は、本発明の第2の実施の形態に係るホットスポット応力測定用ひずみゲージの構成を示す平面図である。
【0025】
図4に示すホットスポット応力測定用ひずみゲージG2は、ゲージベース3およびゲージパターン4を備えている。ゲージパターン4は、第1のグリッド部41、第2のグリッド部42、第3のグリッド部43、第4のグリッド部44、第1のゲージタブ(A)45、第2のゲージタブ(B)46、第3のゲージタブ(C)47、第4のゲージタブ(D)48および第5のゲージタブ(E)49を有している。
図4に示すように、ゲージベース3は、やや細長い長方形に形成された可撓性を有する合成樹脂等のフィルム状の絶縁体からなる。ゲージパターン4は、ゲージベース3上に敷設される金属箔により形成されている。ゲージパターン4における第1のゲージ部としての第1のグリッド部41は、ゲージベース3の長手方向の一端LEから該長手方向について第1の所定距離DA(図5(a)および(b)参照)に配置される。ゲージパターン4における第2のゲージ部としての第2のグリッド部42は、やはり一端LEから長手方向について第1の所定距離DAに、第1のグリッド部41の一端に隣接して配置される。ゲージパターン4における第3のゲージ部としての第3のグリッド部43も、一端LEから長手方向について第1の所定距離DAに、第1のグリッド部41の他端に隣接して配置される。
【0026】
すなわち、これら第1のグリッド部41、第2のグリッド部42および第3のグリッド部43は、いずれも一端LEから長手方向について第1の所定距離DAに配置されるので、図4に示されるように、共通の中心軸に対して第2のグリッド部42−第1のグリッド部41−第3のグリッド部43の順で順次配置される。ゲージパターン4における第4のゲージ部としての第4のグリッド部44は、ゲージベース3の長手方向の一端LEから該長手方向について第1の所定距離DAよりも長い第2の所定距離DB(図5(a)および(b)参照)に配置される。第1のグリッド部41の一端は、第1のゲージタブ(A)45に接続され、第1のグリッド部41の他端は、第2のゲージタブ(B)46に接続される。第3のグリッド部43の一端は、第3のゲージタブ(C)47に接続され、第3のグリッド部43の他端は、第4のゲージタブ(D)48に接続される。第2のグリッド部42の一端は、第1のグリッド部41から第2のゲージタブ(B)46への導通路に共通に接続され、そして第2のグリッド部42の他端は、第5のゲージタブ(E)49に接続される。第4のグリッド部44の一端は、第3のゲージタブ(C)47に共通に接続され、そして第4のグリッド部44の他端は、第5のゲージタブ(E)49に接続される。
【0027】
第1のグリッド部41、第2のグリッド部42および第3のグリッド部43は、ゲージベース3の長手方向についての伸縮によって抵抗値が変化するように、図4に示すごとく、長手方向に沿って細長く且つ幅が狭い部分を多数平行に形成して、繰り返し折り返すパターンを形成し、前記長手方向の一端LEから第1の所定距離DAにその中心線を位置させるとともに、前記長手方向に直交する方向については、抵抗値が充分に低くなるように広い幅に形成する。第4のグリッド部44は、やはり、ゲージベース1の長手方向についての伸縮によって抵抗値が変化するように、図4に示すごとく、長手方向に沿って細長く且つ幅が狭い部分を多数平行に形成して、ジグザグ状に繰り返し折り返すパターンを形成し、前記長手方向の一端LEから第2の所定距離DBにそのジグザグの中心線を位置させるとともに、前記長手方向に直交する方向については、抵抗値が充分に低くなるように広い幅に形成する。
第1のグリッド部41の両端は、抵抗値が充分に低くなるように幅広く形成した導通路を介して第1および第2のゲージタブ45および46にそれぞれ接続されている。第2のグリッド部42の一端は、抵抗値が充分に低くなるように幅広く形成した第1のグリッド部41から第2のゲージタブ46への導通路に接続され、第2のグリッド部42の他端は、抵抗値が充分に低くなるように幅広く形成した導通路を介して第5のゲージタブ49に接続されている。
【0028】
第3のグリッド部43の一端は、抵抗値が充分に低くなるように幅広く形成した導通路を介して第3のゲージタブ47に接続され、第3のグリッド部43の他端は、抵抗値が充分に低くなるように幅広く形成した導通路を介して第4のゲージタブ48に接続されている。第4のグリッド部44の一端は、抵抗値が充分に低くなるように幅広く形成した導通路を介して第3のゲージタブ47に接続され、第4のグリッド部44の他端は、抵抗値が充分に低くなるように幅広く形成した導通路を介して第5のゲージタブ49に接続されている。このとき、第1〜第4のグリッド部41〜44の両端から第1〜第5のゲージタブ45〜49へ引き出す導通路および各ゲージタブ45〜49は、図4のように互いに干渉したり、第1〜第4のグリッド部41〜44と干渉したりしないように適宜迂回して配置している。
なお、この場合、第1のグリッド部41のゲージ抵抗GA1の定格抵抗値と第3のグリッド部43のゲージ抵抗GA3の定格抵抗値は互いに等しく、第2のグリッド部42のゲージ抵抗GA2の定格抵抗値は、第1のグリッド部41のゲージ抵抗GA1の定格抵抗値の1/2とし、そして第2のグリッド部42のゲージ抵抗GA2の定格抵抗値と第4のグリッド部44のゲージ抵抗GB1の定格抵抗値は互いに等しく設定する。
【0029】
この場合にも、導通路の配線パターンの幅を広くするだけで導通路の抵抗値を充分に低くすることができる場合には、ゲージパターン4全体を抵抗性金属からなる金属箔を用いて形成してもよく、ゲージパターン4の第1〜第4のグリッド部41〜44を伸縮により抵抗値が変化する抵抗性金属を用いて形成し、ゲージパターン4の第1〜第4のグリッド部41〜44以外のゲージタブ45〜49およびそれらと第1〜第4のグリッド部41〜44との間の導通路の部分を、より抵抗値の低い導電性金属を用いて形成するようにしても良い。
このようなホットスポット応力測定用ひずみゲージG2は、ホットスポット応力測定用ひずみゲージG1とほぼ同様に図2に示すようにして用いられる。すなわち、板状の第1の部材M1上に、やはり板状の第2の部材M2の端部を溶接した典型的な構造において、溶接部Wの溶接止端部HSに、ホットスポット応力測定用ひずみゲージG2の長手方向の一端LEを突き合わせた状態で、ホットスポット応力測定用ひずみゲージG2を第1の部材M1上に貼り付ける。このような状態で、第1〜第5のゲージタブ45〜49に固定抵抗およびリード線等を接続してブリッジ回路からなる計測回路を構成し、溶接止端部HSにおけるホットスポット応力を計測する。
【0030】
次に、このようなホットスポット応力測定用ひずみゲージG2におけるホットスポット応力の測定原理を図5および図6を参照し具体的な例に基づいて説明する。
図5には、(a)溶接部の断面および溶接止端部HSからの距離に応じた応力の計測値並びに溶接止端部HSにおけるホットスポット応力の推定値をそれぞれ組み合わせて模式的に示す模式図と、(b)図5(a)の模式図における適正な貼り付け位置に対応して示された図4と同様のホットスポット応力測定用ひずみゲージG2の平面図とを示している。図5のホットスポット応力測定用ひずみゲージG2は、ゲージパターン4自体でホイートストンブリッジ回路をほぼ構成し、外部からブリッジ電源入力を与えるだけで、ブリッジ出力として溶接止端部HSにおけるホットスポット応力を直接的に得るものであり、図6に、図5のホットスポット応力測定用ひずみゲージG2を用いたホイートストンブリッジ回路の回路構成を示している
この場合、第1のゲージタブ(A)45と第4のゲージタブ(D)48の間に、第1のグリッド部41のゲージ抵抗GA1および第3のグリッド部43のゲージ抵抗GA3の定格抵抗値と等しい抵抗値を有する固定抵抗Rを接続する必要があり、予めゲージベース3上にチップ抵抗素子等を実装しておくことが望ましい。この固定抵抗Rは、ホットスポット応力測定用ひずみゲージG2の外部回路への接続時に、通常の抵抗素子を外部接続によって接続するようにしてもよい。
【0031】
この場合も、図5(a)に示すように、溶接止端部HSから第1の所定距離DAの位置PAおよび該第1の所定距離DAよりも長い第2の所定距離DBの位置PBそれぞれにおける応力εおよびεを直線で結び、その延長線上として溶接止端部HSにおける応力εを推定する。但し、この場合は、予め図6に示すようなホイートストンブリッジを構成しており、第1のグリッド部41のゲージ抵抗GA1および第3のグリッド部43のゲージ抵抗GA3の定格抵抗値と、第1のゲージタブ(A)45と第4のゲージタブ(D)48の間に接続される固定抵抗Rの抵抗値とが等しく、第2のグリッド部42のゲージ抵抗GA2および第4のグリッド部44のゲージ抵抗GB1の定格抵抗値が、固定抵抗Rの抵抗値の1/2に設定されている。
図6に示すホイートストンブリッジは、第1のゲージタブ(A)45と第2のゲージタブ(B)46との間に第1のグリッド部41のゲージ抵抗GA1が接続され、第2のゲージタブ(B)46と第3のゲージタブ(C)47との間に第2のグリッド部42のゲージ抵抗GA2と第4のグリッド部44のゲージ抵抗GB1の直列回路が接続され、第3のゲージタブ(C)47と第4のゲージタブ(D)48との間に第3のグリッド部43のゲージ抵抗GA3が接続され、第4のゲージタブ(D)48と第1のゲージタブ(A)45との間に固定抵抗Rが接続され、そして第2のグリッド部42のゲージ抵抗GA2と第4のグリッド部44のゲージ抵抗GB1の直列接続点が第5のゲージタブ(E)49に引き出されている。
【0032】
ブリッジ電源は、第1のゲージタブ(A)45と第3のゲージタブ(C)47との間に入力され、第2のゲージタブ(B)46と第4のゲージタブ(D)48との間から溶接止端部HSにおけるホットスポット応力に応じた値がブリッジ出力として出力される。
すなわち、
εGA1=ε (3)
εGA3=ε (4)
εGA2=0.5ε (5)
εGB1=0.5ε (6)
より、次式によって溶接止端部HSにおけるホットスポット応力εが得られる。
ε=εGA1+εGA3−(εGA2+εGB1
=1.5ε−0.5ε (7)
このように、図4(図5および図6)のホットスポット応力測定用ひずみゲージG2は、ゲージベース3の長手方向の一端LEから該長手方向について第1の所定距離DAに第1〜第3のゲージ部である第1〜第3のグリッド部41〜43を設け、ゲージベース3の長手方向の一端LEから該長手方向について第1の所定距離DAよりも長い第2の所定距離DBに第4のゲージ部である第4のグリッド部44を設けている。第1のグリッド部41のゲージ抵抗GA1および第3のグリッド部43のゲージ抵抗GA3の定格抵抗値は、固定抵抗Rの抵抗値と等しく、且つ第2のグリッド部42のゲージ抵抗GA2と第4のグリッド部44のゲージ抵抗GB1の定格抵抗値は、固定抵抗Rの1/2の抵抗値と等しい。
【0033】
溶接止端部HSに、ホットスポット応力測定用ひずみゲージG2の長手方向の一端LEを突き合わせた状態で、ホットスポット応力測定用ひずみゲージG2を第1の部材M1上に貼り付ける。このようにすると、溶接止端部HSから第1の所定距離DAの位置PAに第1〜第3のグリッド部41〜43が位置し、そして第1の所定距離DAよりも長い第2の所定距離DBの位置PBに第4のグリッド部44が位置する。
すなわち、ホットスポット応力測定用ひずみゲージG2は、長手方向の一端LEを溶接止端部HSに突き合わせた状態で、被溶接部材(M1等)に貼り付けるだけで、適正な測定点である溶接止端部HSから第1の所定距離DAの位置PAおよび第2の所定距離DBの位置PBに合わせて、それぞれ第1〜第3のグリッド部41〜43によるゲージ抵抗GA1〜GA3および第4のグリッド部44によるゲージ抵抗GB1を配置してホイートストンブリッジを構成する。そこで、予め第1のゲージタブ(A)45と第4のゲージタブ(D)48の間に固定抵抗Rを接続しておき、第1のゲージタブ(A)45と第3のゲージタブ(C)47との間にブリッジ電源を入力すれば、第2のゲージタブ(B)46と第4のゲージタブ(D)48との間から、溶接止端部HSにおけるホットスポット応力に応じた値がブリッジ出力として出力される。即ち、データ処理が不要となり、その場で、リアルタイムにホットスポット応力を求めることができる。
【0034】
例えば、第1のグリッド部41のゲージ抵抗GA1および第3のグリッド部43のゲージ抵抗GA3の定格抵抗値並びに固定抵抗Rの抵抗値が120Ωである場合には、第2のグリッド部42のゲージ抵抗GA2と第4のグリッド部44のゲージ抵抗GB1の定格抵抗値は、半分の60Ωとなる。
図6に示すようなホイートストンブリッジの第1のゲージタブ(A)45と第4のゲージタブ(D)48の間に接続される固定抵抗Rは、ブリッジ電源や測定値処理部等の外部測定回路への接続の際に、測定回路側に追加するか、ゲージパターン4上にチップ抵抗等の抵抗器を配置実装するかして設けられる。この固定抵抗Rとしては、抵抗温度係数の極力小さいものを選ぶことが望ましい。
このように構成したホットスポット応力測定用ひずみゲージを使用すれば、測定後の煩雑なデータ処理が不要となり、測定値からホットスポット応力を直ちに求めることができる。
【0035】
上述した本発明の第1および第2の実施の形態に係るホットスポット応力測定用ひずみゲージは、ひずみゲージのゲージ部の配置をホットスポット応力の算出手法に適合させているので、予め被溶接部材の種々の板厚に最適化したものを作成しておき、使用に際しては、板厚に応じたホットスポット応力測定用ひずみゲージを用意し、図2のようにひずみゲージの先端を溶接止端部に突き合わせてひずみゲージを貼るだけで済む。このため、ひずみゲージを貼る位置を測定したり、位置ずれが生じないように貼るなどの注意も不要となる。
また、上述したホットスポット応力測定用ひずみゲージは、複数の個所を測定する場合にも、簡易に貼り付けることができ、作業性もよく効果的である。また、複数の作業者がひずみゲージを貼り付ける作業を行う場合に、作業者によるバラツキも少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るホットスポット応力測定用ひずみゲージの構成を示す平面図である。
【図2】図1のホットスポット応力測定用ひずみゲージの使用状態を示す斜視図である。
【図3】図1のホットスポット応力測定用ひずみゲージの原理を説明するための図であり、このうち、図3(a)は、溶接部の断面および溶接止端部HSからの距離に応じた応力の計測値並びに溶接止端部HSにおけるホットスポット応力の推定値をそれぞれ組み合わせて模式的に示す模式図、図3(b)は、模式図における適正な貼り付け位置に対応して示された図1と同様のホットスポット応力測定用ひずみゲージG1の平面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るホットスポット応力測定用ひずみゲージの構成を示す平面図である。
【図5】図4のホットスポット応力測定用ひずみゲージの原理を説明するための図であり、このうち図5(a)は、溶接部の断面および溶接止端部HSからの距離に応じた応力の計測値並びに溶接止端部HSにおけるホットスポット応力の推定値をそれぞれ組み合わせて模式的に示す模式図、図5(b)は、模式における適正な貼り付け位置に対応して示された図4と同様のホットスポット応力測定用ひずみゲージG1の平面図である。
【図6】図5のホットスポット応力測定用ひずみゲージG2を用いたホイートストンブリッジ回路の等価的な回路構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0037】
G1,G2 ホットスポット応力測定用ひずみゲージ
1,3 ゲージベース
2,4 ゲージパターン
21,41 第1のグリッド部
22,42 第2のグリッド部
23a,23b,24a,24b ゲージタブ
43 第3のグリッド部
44 第4のグリッド部
45 第1のゲージタブ(A)
46 第2のゲージタブ(B)
47 第3のゲージタブ(C)
48 第4のゲージタブ(D)
49 第5のゲージタブ(E)
GA,GB,GA1,GA2,GA3 ゲージ抵抗
R 固定抵抗
HS 溶接始端部
LE ゲージベースの長手方向の一端
W 溶接部
M1、M2 板状の第1、第2の部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するフィルム状の絶縁体からなるゲージベースと、
前記ゲージベースの所定方向の一端から前記所定方向についての第1の所定距離に配置されて前記ゲージベース上に設けられ前記所定方向についてのひずみを検出する第1のゲージ部と、
前記ゲージベースの前記一端から前記所定方向についての前記第1の所定距離とは異なる第2の所定距離に配置されて前記ゲージベース上に設けられ前記所定方向についてのひずみを検出する第2のゲージ部と、
を具備することを特徴とするホットスポット応力測定用ひずみゲージ。
【請求項2】
前記第1のゲージ部および第2のゲージ部は、前記ゲージベース上に配置されたそれぞれ前記第1の所定距離におけるひずみを検出するためのゲージ抵抗からなる第1のグリッド部および前記第2の所定距離におけるひずみを検出するためのゲージ抵抗からなる第2のグリッド部並びにこれら第1のグリッド部および第2のグリッド部に接続するための導電路を形成する配線接続部を有するゲージパターンにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載のホットスポット応力測定用ひずみゲージ。
【請求項3】
可撓性を有するフィルム状の絶縁体からなるゲージベースと、
前記ゲージベースの所定方向の一端から前記所定方向についての第1の所定距離に配置されて前記ゲージベース上に設けられ前記第1の所定距離における前記所定方向についてのひずみに感応するゲージ抵抗からなる第1のゲージグリッド部と、
前記ゲージベースの前記一端から前記所定方向についての第1の所定距離に配置されて前記ゲージベース上に設けられ前記第1の所定距離における前記所定方向についてのひずみに感応するゲージ抵抗からなる第2のゲージグリッド部と、
前記ゲージベースの前記一端から前記所定方向についての第1の所定距離に配置されて前記ゲージベース上に設けられ前記第1の所定距離における前記所定方向についてのひずみに感応するゲージ抵抗からなる第3のゲージグリッド部と、
前記ゲージベースの前記一端から前記所定方向についての前記第1の所定距離とは異なる第2の所定距離に配置されて前記ゲージベース上に設けられ前記第2の所定距離における前記所定方向についてのひずみに感応するゲージ抵抗からなる第4のゲージグリッド部と、
前記第1のゲージグリッド部の一端と前記第2のゲージグリッド部の一端とを接続し、前記第2のゲージグリッド部の他端と前記第4のゲージグリッド部の一端とを接続し、前記第4のゲージグリッド部の他端と前記第3のゲージグリッド部の一端とを接続し、そして前記第1のゲージグリッド部の他端、前記第1のゲージグリッド部の一端と前記第2のゲージグリッド部の一端との接続個所、前記第4のゲージグリッド部の他端と前記第3のゲージグリッド部の一端との接続個所および前記第3のゲージグリッド部の他端、にそれぞれ接続するための導電路を形成する第1、第2、第3および第4の配線接続部と、
を具備し、且つ
前記第1の配線接続部は、固定抵抗の一端およびブリッジ入力の一端に接続され、前記第2の配線接続部は、ブリッジ出力の一端に接続され、前記第3の配線接続部は、前記ブリッジ入力の他端に接続され、そして前記第4の配線接続部は、前記固定抵抗の他端および前記ブリッジ出力の他端に接続されることを特徴とするホットスポット応力測定用ひずみゲージ。
【請求項4】
可撓性を有するフィルム状の絶縁体からなるゲージベースと、
前記ゲージベースの所定方向の一端から前記所定方向についての第1の所定距離に配置されて前記ゲージベース上に設けられ前記第1の所定距離における前記所定方向についてのひずみに感応するゲージ抵抗からなる第1のゲージグリッド部と、
前記ゲージベースの前記一端から前記所定方向についての第1の所定距離に配置されて前記ゲージベース上に設けられ前記第1の所定距離における前記所定方向についてのひずみに感応するゲージ抵抗からなる第2のゲージグリッド部と、
前記ゲージベースの前記一端から前記所定方向についての第1の所定距離に配置されて前記ゲージベース上に設けられ前記第1の所定距離における前記所定方向についてのひずみに感応するゲージ抵抗からなる第3のゲージグリッド部と、
前記ゲージベースの前記一端から前記所定方向についての前記第1の所定距離とは異なる第2の所定距離に配置されて前記ゲージベース上に設けられ前記第2の所定距離における前記所定方向についてのひずみに感応するゲージ抵抗からなる第4のゲージグリッド部と、
前記第1のゲージグリッド部の一端と前記第2のゲージグリッド部の一端とを接続し、前記第2のゲージグリッド部の他端と前記第4のゲージグリッド部の一端とを接続し、前記第4のゲージグリッド部の他端と前記第3のゲージグリッド部の一端とを接続し、そして前記第1のゲージグリッド部の他端、前記第1のゲージグリッド部の一端と前記第2のゲージグリッド部の一端との接続個所、前記第4のゲージグリッド部の他端と前記第3のゲージグリッド部の一端との接続個所および前記第3のゲージグリッド部の他端、にそれぞれ接続するための導電路を形成する第1、第2、第3および第4の配線接続部と、
前記第1の配線接続部と前記第4の配線接続部との間に接続されて前記ゲージベース上に設けられた固定抵抗と、
を具備し、且つ
前記第1の配線接続部は、ブリッジ入力の一端に接続され、前記第2の配線接続部は、ブリッジ出力の一端に接続され、前記第3の配線接続部は、前記ブリッジ入力の他端に接続され、そして前記第4の配線接続部は、前記ブリッジ出力の他端に接続されることを特徴とするホットスポット応力測定用ひずみゲージ。
【請求項5】
前記固定抵抗は、ゲージベース上に添設される、いわゆるチップ抵抗であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のホットスポット応力測定用ひずみゲージ。
【請求項6】
前記第1のゲージグリッド部および前記第3のゲージグリッド部の定格抵抗値は前記固定抵抗の抵抗値とほぼ等しく且つ前記第2のゲージグリッド部および前記第4のゲージグリッド部の定格抵抗値は前記固定抵抗の半分の抵抗値であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載のホットスポット応力測定用ひずみゲージ。
【請求項7】
ホットスポット応力の測定対象とする非溶接部材の板厚をTとして、前記第1の所定距離を0.5Tとし、前記第2の所定距離を1.5Tとしたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のホットスポット応力測定用ひずみゲージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−264856(P2009−264856A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113258(P2008−113258)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000142067)株式会社共和電業 (52)
【Fターム(参考)】