説明

ホモジナイザーまたは高圧ポンプの膜式ポンプヘッド

本願はホモジナイザーまたは高圧ポンプの膜式ポンプヘッド(1)に関するものである。この膜式ポンプヘッド(1)は、少なくとも1つのポンプヘッド(1)がポンプハウジング(2)の内部に配備される。膜式ポンプヘッド(1)はまた、製品の入口(20)および出口(7)を備えた製品チャンバ(3)と、作動するピストン(9)が内部に配置された流体圧作動チャンバ(4)とを含む。製品チャンバ(3)および流体圧作動チャンバ(4)は二重の膜(5)によって隔離される。この膜(5)は、ピストン(9)の長手方向に対して15〜75゜の角度に配向される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのポンプヘッドをポンプハウジング内部に配備したホモジナイザー(均質化装置)または高圧ポンプの膜式ポンプヘッドであって、さらに、製品の入口および出口を備えた製品チャンバと、作動するピストンが内部に配置された流体圧作動チャンバとを含み、製品チャンバおよび流体圧作動チャンバが二重の膜によって隔離された膜式ポンプヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
均質化は工業的な工程であり、かなりの期間にわたって使用されてきた。その目的は、例えばミルクのような脂肪乳濁液において最大寸法の脂肪粒体をより小さい寸法の脂肪粒体に砕き、これにより脂肪乳濁液を安定化させることである。例えばミルクに関しては、これはクリームの凝固が防止されることを意味しており、今日では消費者が消費するミルク全体の大部分は均質化されたものである。
【0003】
均質化は、通常は、高い入口圧力にある脂肪乳濁液が非常に狭い間隙を通して高速度で圧送されるようにして、機械的工程で行われる。脂肪乳濁液の脂肪粒体はその後、とりわけ脂肪乳濁液が極めて高速度で間隙を出る時に生じる乱流によって砕かれる。この高速度の流速は間隙後方に低い静圧力を発生し、これによりキャビテーション気泡が発生する。これらのキャビテーション気泡は破裂時にきわめて高圧で瞬間的な圧力パルスを発生し、このパルスが脂肪粒体の細胞膜を破壊するのに必要とされるかなり大きな力を与える。
【0004】
市販され、一般に入手可能なホモジナイザーは、均質化に必要とされる高圧力を生み出すピストンポンプと、実際に均質化が行われる逆圧(counter pressure)装置とによって基本的に構成されている。ピストンポンプは、通常は、駆動モーターの回転運動を直線運動に変換する機械的構造とされる。ピストンポンプのピストンは、この直線運動によって駆動される。
【0005】
ピストンポンプのピストンは、機械内部に発生する高圧力に耐えて機能するピストンシールを備えている。食品関係においては、例えば製品の一部をシールから漏出させてシールの潤滑を行うことは不可能であるので、シールの寿命は受入れがたいほどに短縮されてしまう。衛生上の欠点に加えて、これは製品の大きな損失を生むことになる。シールを有効なものとするには、さらに加えて、たとえシールが周囲の機械構造における鋼材と同程度の応力を受けるとしても、シールを比較的柔軟な材料で構成しなければならない。これもまた短寿命にする作用因子となる。
【0006】
ホモジナイザーに使用されている今日のピストンポンプは、さらに製造費がきわめて高価となる鍛造ポンプブロックを備えている。
【0007】
流体圧で駆動される、すなわち通常のピストンポンプで圧送される作動流体によって駆動される膜式ポンプは、ピストンポンプと同様なシール問題の影響を受けることはない。これは、作動流体を圧送するピストンに備えられるピストンシールが作動流体の僅かな管理された漏れを許容され、その漏洩した作動流体がシールとピストンとを潤滑するからである。これが可能なのは、作動流体が二重の膜によって製品から隔離されているからである。このようなシール概念は、ほとんど無制限のピストンシール寿命を与える。
【0008】
膜式ポンプヘッドは、通常は、ホモジナイザーに適用することができない。何故なら、膜の直径は、既存ピストンの行程容積に対応するためにきわめて大きくならざるを得ず、その結果、膜式ポンプヘッドを備えたピストンポンプは従来のピストン機械に比べてかなり大きなピストン中心間距離を必要とすることになるからである。
【0009】
両側に等しい圧力が作用するために圧力が均等化される膜式ポンプヘッドの膜が、ヘッドを製品チャンバと流体圧作動チャンバとに分割している。その結果、膜は通常のピストンシールが受ける圧力差の影響は受けない。それ故に、圧力差を受けたならば発生する高圧力に耐えることができないであろう材料で膜を作ることができるようになる。その結果、膜式ポンプヘッドは、従来のピストンポンプで生じ得るかなり高い圧力に耐えることも可能になる。
【0010】
均質化のために膜式ポンプヘッドを使用する装置は、米国特許第6174144号明細書に記載されている。それにおいて、複数のポンプヘッドは流体圧作動チャンバおよび製品チャンバが形成されるように平行に配置され、また、1つの製品チャンバおよび1つの流体圧作動チャンバはそれぞれ1つの膜によって隔離されている。各個の流体圧作動チャンバ内では1つのピストンが作動し、また、ピストンと平行となるように膜が配向されている。この実施例では、ピストン行程容積で要求される直径の膜に適した空間とするならば、ポンプブロックはかなり大きく高価となるであろう。これは、ポンプブロックの横断面が膜の直径と同程度に大きくなければならないからであり、それに加えて、膜を固定するための空間が必要となるからである。同様に、この実施例は膜に対する比較的具合の悪い加圧状態および比較的大きな流量損失を生じるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6174144号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の1つの目的は、ポンプブロックを大きくし過ぎることなく、膜式ポンプの利点を全て満たすホモジナイザーの膜式ポンプヘッドを提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、ポンプブロックをかなり簡単に製造できるようにして、それによりかなり安価にすることである。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、膜に対する具合の良い加圧状態を実現することである。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、ピストンと膜との間において生じる流量損失を最小限に減らすことである。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、ピストン中心間距離を維持したまま膜式ポンプヘッドを既存のピストンポンプに取付けできるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
これらのおよびその他の目的は、冒頭に記載した形式の膜式ポンプヘッドに対し、ピストンの長手方向に対して15〜75゜の角度で膜を配向するという特徴を与える本発明によって達成された。
【0018】
本発明の好ましい実施例は、特許請求の範囲の欄に記載した従属請求項の特徴を与えたものである。
【0019】
添付図面を参照して、本発明の1つの好ましい実施例を以下に非常に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】膜式ポンプヘッドの概略図である。
【図2】本発明によるポンプブロックの一部断面とした頂平面図である。
【図3】本発明によるポンプブロックの一部断面とした側立面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0021】
図1は、基本的に示される膜式ポンプヘッド1を示す。この膜式ポンプヘッド1はポンプハウジング2を含み、ポンプハウジング2は内部に製品チャンバ3および流体圧作動チャンバ4を形成されている。製品チャンバ3および流体圧作動チャンバ4は膜5で隔離されている。
【0022】
製品チャンバ3は製品入口20に連結されている。製品入口20はバルブ6を備えている。製品チャンバ3は製品出口7にも連結されている。製品出口7はバルブ8を備えている。
【0023】
作動流体、好ましくはオイルで充満された流体圧作動チャンバ4の内部でピストン9が作動する。ピストン9は、ポンプハウジング2に対してシール10でシールされている。シール10は高圧力に耐える形式のシールであり、作動流体によって絶えず潤滑されている。作動流体の過剰となる量は導管11を通して作動流体容器12に導かれるようになされており、作動流体容器12は必要に応じて導管13および一方向バルブ14を通して流体圧作動チャンバ4に作動流体を補充する。
【0024】
膜5は、通常、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)のような熱可塑性材料、または食品との使用を承認されている他の材料で作られる。このような膜5は、通常は8000時間の寿命を有している。膜5は作動流体で支持され、圧力が均等化される、すなわち両側に等しい圧力が作用するので、極端な力や応力の影響を受けることはない。膜5は食品用の機器に使用されるので、二重の膜5が使用される。両方の膜5の間は真空とされる。真空空間の一方の側端は一方向バルブ15に連結され、他側端は毛細管チューブ16に連結され、毛細管チューブ16は圧力センサー17に連結されている。膜5の一方が破損または破裂して漏れが発生したとするならば、毛細管チューブ16の圧力は上昇し、圧力センサー17は膜5に欠陥が生じたという趣旨の警報を発する。
【0025】
材料工学の観点から、膜5はその直径のほぼ1/10しか動くことができない。その結果、膜式ポンプヘッド1の行程容積、すなわちピストン9の変位を決めるのは膜5の直径となる。均質化工程は或る大きさの行程容積を必要とするので、通常のピストンポンプと同じ行程長さをピストン9に与える膜の直径が必要となる。
【0026】
既存のホモジナイザーに膜式ポンプヘッド1のための空間を与えるために、図2から明らかとなるように、膜5はピストン9の長手方向に対して15〜75゜に配向された。膜5はピストン9の長手方向に対して45゜に配向されることが好ましい。膜5をピストン9の長手方向に対して15〜75゜、好ましくは45゜に配向することで、ポンプハウジング2の寸法は最小限に抑えられることになる。例えば、同じポンプハウジング2において、膜5がピストン9の長手方向に対して90゜に配向された場合よりも、約30%ほど直径の大きな膜5を備えることが可能になる。本発明によれば、膜5は機械の全体寸法に影響を与えない方法で配置される。膜5はその移動方向に物理的な移動限界を有するので、通常、これはねじ結合用の追加の面積部分のある必然的に大きな直径を必要とすることになる。
【0027】
ピストン9の長手方向に対して膜5を15〜75゜、好ましくは45゜に配向する点において、膜5に対する流れの角度が非常に有利となるので、膜5のより具合の良い加圧状態が得られることになる。流れの角度が有利となることにより、ピストン9と膜5との間における流量損失はさらに小さくなり、これはホモジナイザーの全体的なエネルギー消費を減少させる。
【0028】
ポンプブロック18はホモジナイザーに含まれる複数のポンプハウジング2で構成される。図2において、3つのポンプハウジング2が図示され、それらのポンプハウジング2が結合されてポンプブロック18を形成している。各ポンプハウジング2は隣接のポンプハウジング2によって支持されており、このことは従来のピストンポンプまたは膜式ポンプに使用されているポンプハウジングよりもポンプハウジング2を小さくできるようにする。ポンプブロック18の2つの最外側部分は補強される必要がある。本発明によりポンプハウジング2を共に一体化することにより、加圧時に漏洩を起こさないように各ポンプハウジング2の剛性を十分に大きくしなければならないという必要性はなくなる。
【0029】
本発明は、結合体に十分に大きな弾性特性を与えるタイロッド19によってポンプブロック18を一体部材として保持できるようにすると同時に、その一体部材(即ち結合体)が小さな空間しか占めないことを可能にする。ピストン9の長手方向に対して15〜75゜、好ましくは45゜に膜5を配向することにより、膜5が加圧された時にポンプブロック18を一緒に保持するタイロッド19に作用する力の約30%ほどの減少が達成されることになる。これらのタイロッド19は、クランク機構のポンプブロックを膜5のシール面に固定してシールを行うタイロッド(図示せず)と共に作用する。タイロッド19に作用する30%ほど小さい力は材料の消耗を軽減し、また、タイロッド19およびポンプブロック18の両方を小さな寸法にし向ける。
【0030】
本発明は、タイロッド19または結合ボルトの本数の削減を可能にし、その結果、膜式ポンプヘッド1を緊締するために、関連する円環状のクランプ面積部分と共に多数のボルトが必要とされる従来の円形状の膜式ポンプヘッド1よりも、ポンプブロック18の外径はかなり小型になる。本発明はまた、ポンプブロック18を結合するボルトに代えて、タイロッド19を使用可能にする。これによれば、結合体に必要とされる弾性特性を得ることも可能になる。本発明は必要とされるボルトまたはタイロッド19が少ない本数で済む点で、ポンプブロック18に必要な作動流体ダクトを一体化するための空間も形成できることになる。
【0031】
膜式ポンプのピストン9が後退方向へ移動するとき、流体圧作動チャンバ4の内部空間は増大する。これはさらに膜5をピストン9と同じ方向へ移動させる。製品入口20のバルブ6は開かれ、製品が製品チャンバ3内部へ吸入される。膜式ポンプのピストン9が前進方向へ移動するとき、流体圧作動チャンバ4の空間は減少する。これはさらに膜5をピストン9と同じ方向へ移動させる。製品出口7のバルブ8は開かれ、製品は製品出口7を通して製品チャンバ3から流出する。
【0032】
製品および作動流体は二重の膜5により密閉状態で隔離され区分されているので、特別な無菌ホモジナイザーを製造するために将来必要とされることはない。無菌機械におけるのと同様に、ピストン9の何れの部分も製品に全く接触しない。ピストン9を殺菌する必要がなく、ホモジナイザーの全体的な殺菌時間を減少できる。この結果、無菌ホモジナイザーの蒸気消費は最小限に抑えられる。
【0033】
今日のホモジナイザーは最も一般的に水冷ピストン9を備えている。これは、水冷ピストンが連続的に水洗されて冷却および潤滑が行われ、これによりシール10の寿命が延長されるからである。従来のピストンポンプを膜式ポンプに交換することで、水冷の必要性はなくなり、ホモジナイザーの水消費は根本的に減少されることになる。
【0034】
本発明による膜式ポンプヘッド1は二重の膜5を有するので、同時に両方の膜5が破損する可能性はない。その結果、一方の膜5に欠陥が生じたことを示す警報が発せられた場合でも生産を停止する必要はなく、通常の生産停止時間内に膜5を交換することができる。一般に、実際にはルーチンワークとして、所定の予め定められた時間を経過した後に膜5は交換されるべきである。
【0035】
従来のホモジナイザーは最も一般的には25MPa(250バール)の圧力で作動する。膜式ポンプヘッド1を備えたホモジナイザーは、特に膜5が金属製であるならば、かなりの高圧力で作動できる。従って、現在技術のホモジナイザーよりも実質的に高い圧力で作動するホモジナイザーを将来製造することが可能である。
【0036】
前述の説明から明らかとなるように、本発明は、膜式ポンプの全ての利点を満たし、また、既存のホモジナイザーに組込むことのできるホモジナイザーの膜式ポンプヘッドを実現するのである。膜がピストンの長手方向に対して角度を付される点で、既存の膜式ポンプが示すよりも小型のポンプブロックを得ることができる。さらに、ポンプブロックは簡単に製造でき、これにより一層安価にできると同時に、製造時に環境に与える影響は小さくなる。本発明による膜式ポンプヘッドはさらに具合の良い膜の加圧状態を示し、また、流量損失が減少されてホモジナイザーの全体的なエネルギー消費は減少される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポンプヘッド(1)をポンプハウジング(2)の内部に配備したホモジナイザーまたは高圧ポンプの膜式ポンプヘッド(1)であり、さらに、製品の入口(20)および出口(7)を備えた製品チャンバ(3)と、作動するピストン(9)が内部に配置された流体圧作動チャンバ(4)とを含み、製品チャンバ(3)および流体圧作動チャンバ(4)が二重の膜(5)によって隔離された膜式ポンプヘッド(1)であって、ピストン(9)の長手方向に対して15〜75゜の角度に膜(5)が配向されたことを特徴とする膜式ポンプヘッド(1)。
【請求項2】
ピストン(9)の長手方向に対して45゜の角度に膜(5)が配向されたことを特徴とする請求項1に記載の膜式ポンプヘッド(1)。
【請求項3】
複数のポンプハウジング(2)がポンプブロック(18)を形成し、ポンプブロック(18)はタイロッド(19)によって一体部材として保持されることを特徴とする請求項1に記載の膜式ポンプヘッド(1)。
【請求項4】
膜(5)が熱可塑性材料で作られたことを特徴とする請求項1に記載の膜式ポンプヘッド(1)。
【請求項5】
膜(5)がポリテトラフルオロエチレンで作られたことを特徴とする請求項4に記載の膜式ポンプヘッド(1)。
【請求項6】
膜(5)が金属で作られたことを特徴とする請求項1に記載の膜式ポンプヘッド(1)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2012−518740(P2012−518740A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551034(P2011−551034)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【国際出願番号】PCT/SE2010/000034
【国際公開番号】WO2010/098707
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(591007424)テトラ ラバル ホールデイングス エ フイナンス ソシエテ アノニム (190)
【Fターム(参考)】