説明

ホログラム光学素子およびその製造方法と、光源ユニット

【課題】光源から出射される放射角度の広い光の大部分を偏向して、明るい光を出射するホログラム光学素子22を実現する。
【解決手段】ホログラム感光材料22aを露光する2光束のうちの少なくとも一方の光束として、ホログラム感光材料22aに対する入射時に発散光となる光束を用い、ホログラム感光材料22aに対して2光束を同軸または略同軸で入射させる。これにより、ホログラム光学素子22の使用時には、光源から出射される発散光をホログラム光学素子22で回折、偏向させることができる。また、ホログラム光学素子22の光入射側の面に垂直な面内で、ホログラム光学素子22から出射される光線の延長線に対して一方側にできる偏向角だけでなく、他方の側の偏向角も実現することができ、光源から出射される放射角度の広い光の大部分をホログラム光学素子22にて偏向させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム感光材料を2光束で露光することにより体積位相型の透過型ホログラム光学素子を作製するホログラム光学素子の製造方法と、そのホログラム光学素子と、そのホログラム光学素子を用いた光源ユニットとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)は、従来から光源として多く用いられてきた蛍光管に比べ、コンパクトで消費電力が小さく、長寿命であることから、近年では様々な機器に用いられるようになってきている。このようなLEDは、一般に、放射角度が大きいので(例えば強度半値で±60度(全角120度)程度)、用途によってはLEDと集光レンズとを一体化して放射角度の小さな光源ユニットが実現されている。しかし、このように放射角度を小さくするために集光レンズを用いると、パッケージ(光源ユニット)の厚さが集光レンズを用いない場合に比べて約2倍にもなり、集光レンズの厚さ分だけパッケージの厚さが増大してしまう。
【0003】
そこで、例えば特許文献1では、図17(a)に示すように、LED101を包含する本体102の表面に、中間層103を介してフィルム状で透過型のホログラム光学素子104を貼り付け、LED101からの発散光をホログラム光学素子104で平行光に整形して射出するようにしている。ホログラム光学素子104はフィルム状であるので、これをLED101の前方に配置することにより、パッケージ全体の厚さを薄くして装置を小型化することが可能となる。
【0004】
【特許文献1】特開2002−292930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図17(b)に示すように、透過型のホログラム光学素子104は、基板上のホログラム感光材料104aに対して同じ側から参照光L1と物体光L2とを照射し、干渉縞を屈折率変調として記録することにより作製される。このとき、参照光L1と物体光L2とは異なる角度でホログラム感光材料104aに入射するので、作製されたホログラム光学素子104の使用時には、図17(a)に示すように、ホログラム光学素子104から光が角度を持って斜めに射出されることになる。
【0006】
ここで、図18に示すように、使用時にホログラム光学素子104に入射する光線(実線)と、ホログラム光学素子104から出射される光線(実線)の延長線(破線)とのなす角度のうち、鋭角となる角度θを偏向角と呼ぶことにする。また、説明の理解をしやすくするため、上記のホログラム光学素子104は、使用時にそこから出射される光が平行光であり、その出射光と露光時に同一方向となる光(例えば物体光L2)のホログラム感光材料104aに対する入射角度が0°となるように基板を配置して作製されているものとする。したがって、この場合、ホログラム光学素子104の使用時における偏向角θは、露光時に用いた参照光L1のホログラム感光材料104aに対する入射角度に等しくなる。なお、破線で示すホログラム光学素子104は、図17(b)の露光状態における位置を示している。
【0007】
図19は、図17(a)のホログラム光学素子104の使用時における偏向角と回折効率との関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。なお、このシミュレーションは、製造波長(参照光L1および物体光L2の波長)をλ0、ホログラム感光材料104a(例えばフォトポリマー)の屈折率をn、屈折率変調量をΔn、ホログラム感光材料104aの厚さをt、ホログラム感光材料104aに対する参照光L1の入射角度をθ1、ホログラム感光材料104aに対する物体光L2の入射角度をθ2、再生波長をλ1としたとき、λ0=532nm、n=1.5、Δn=0.008、t=35μm、θ1=0〜85°、θ2=0°、λ1=532nmとして得られたものである。また、このシミュレーションは、図17(a)の構成では、図18に示すように、ホログラム光学素子104の光入射面104bに垂直な面内で、ホログラム光学素子104から出射される光線の延長線に対して一方の側にのみ偏向角θができるという事実に基づき、偏向角θ(=θ1)の範囲を0〜85°の同一符号の範囲で行ったものである。
【0008】
このシミュレーション結果より、回折効率が例えば70%以上となる偏向角θの範囲は、ほぼ10°から60°までの50°となる。したがって、露光時の参照光L1の集光点P(図18参照)にLED101を配置して使用したときのLED101の放射角度をθ3とすると、図18での幾何学的関係よりθ3<θであることから、図17(a)の構成では、LED101から出射される光のうち、放射角度が全体で50°よりも確実に小さい範囲内(LED101からの出射光の光軸を基準とすると、そこから±25°よりも確実に小さい範囲内)の光しか高い回折効率で回折(偏向)されないことになる。その結果、図17(a)の構成では、明るい光を出射する光源ユニットを実現することができない。
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、光源から出射される光の大部分(放射角度の広い光)を偏向して明るい光を出射することができる光源ユニットと、その光源ユニットに用いられるホログラム光学素子と、そのホログラム光学素子の製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のホログラム光学素子の製造方法は、ホログラム感光材料を2光束で露光することにより体積位相型の透過型ホログラム光学素子を作製するホログラム光学素子の製造方法であって、2光束のうちの少なくとも一方の光束として、ホログラム感光材料に対する入射時に発散光となる光束を用い、ホログラム感光材料に対して2光束を同軸または略同軸で入射させることを特徴としている。
【0011】
ここで、作製された透過型ホログラム光学素子の使用時にホログラム光学素子に入射する光線と、ホログラム光学素子から出射される光線(ホログラム光学素子に入射した光線が回折、偏向されて出射される場合の出射光線)の延長線とのなす角度のうち、鋭角のものを偏向角と呼ぶことにする。すなわち、偏向角とは、入射光線がホログラム光学素子での回折によってどの程度偏向されて出射されるかを示す指標となるものである。また、2光束の軸としては、2光束をそれぞれ生成する光学系の光軸を考えることができる。
【0012】
本発明の製造方法によれば、ホログラム感光材料を露光する2光束のうちの少なくとも一方の光束が、ホログラム感光材料への入射時に発散光となる光束であるので、作製されたホログラム光学素子の使用時には、その発散光の出射ポイントに対応する位置に発光ダイオード(以下、LEDとも称する)のような一定の放射角度で光を出射する光源を配置して、光源から出射される光(発散光)をホログラム光学素子で偏向(回折)させることができる。
【0013】
また、露光時には、ホログラム感光材料に対して2光束を同軸または略同軸で入射させるので、作製されたホログラム光学素子の使用時には、ホログラム光学素子の光入射側の面に垂直な面内で、ホログラム光学素子から出射される光線の延長線に対して一方の側(プラス側)にできる偏向角だけでなく、他方の側(マイナス側)の偏向角も実現することができる。これにより、使用時に用いる光源として、プラス側およびマイナス側の偏向角の最大値まで放射角度を広げたものを用いることができる。言い換えれば、それ以上に放射角度の広い光源を用いた場合でも、光源から出射される光の大部分をホログラム光学素子にて偏向させて利用することができる。その結果、片側の偏向角のみ実現していた従来に比べて、明るい光を出射する光源ユニットを実現することができる。
【0014】
本発明のホログラム光学素子の製造方法において、上記2光束は、光路合成手段で光路合成された後、ホログラム感光材料に入射することが望ましい。
【0015】
このようにすることで、露光時に、別々の方向に進行する2光束を、光路合成手段での光路合成によってホログラム感光材料に対して同軸または略同軸で入射させることができる。また、光路合成手段を用いることにより、製造光学系をシンプルに構成することができ、シンプルな構成で上述した本発明の効果を得ることができる。なお、このような光路合成手段としては、例えば偏光ビームスプリッタやピンホールミラーを想定することができる。
【0016】
本発明のホログラム光学素子の製造方法において、上記光路合成手段として、入射光を偏光状態に応じて透過または反射させる偏光ビームスプリッタを用い、上記発散光を生成する光学系の光路中に、集光レンズと、上記偏光ビームスプリッタと、偏光状態変換手段とを配置し、上記偏光状態変換手段は、入射光の偏光状態を維持する第1の領域と、入射光の偏光状態を変換する第2の領域とを有しており、第1および第2の領域のうちの一方は、上記集光レンズの集光位置に位置し、他方は一方を光軸回りに取り囲むように形成されており、一方の光束を、上記集光レンズ、上記偏光ビームスプリッタ、上記偏光状態変換手段の第1および第2の領域のうちで上記集光レンズの集光位置に位置する領域を介してホログラム感光材料に入射させ、他方の光束を、上記偏光ビームスプリッタ、上記偏光状態変換手段の第1および第2の領域の両者を介してホログラム感光材料に入射させるようにしてもよい。なお、偏光状態変換手段の第1の領域は、例えば孔(空隙)や透明基板(ガラス基板またはプラスチック基板)で構成することが可能であり、第2の領域は、例えば1/2波長板で構成することが可能である。
【0017】
上記製法においては、一方の光束(例えばS偏光とする)は、集光レンズを介して偏光ビームスプリッタに入射してそこで反射され、偏光状態変換手段における集光レンズの集光位置で一旦集光され、そこから発散光となってホログラム感光材料に入射する。このとき、集光レンズの集光位置に偏光状態変換手段の第1の領域が位置していれば、第1の領域に入射した光は、偏光状態がそのまま維持されて(S偏光のまま)、ホログラム感光材料に入射する。一方、集光レンズの集光位置に偏光状態変換手段の第2の領域が位置していれば、第2の領域に入射した光は、偏光状態が変換されて(P偏光に変換されて)、ホログラム感光材料に入射する。
【0018】
これに対して、他方の光束(例えばP偏光とする)は、偏光ビームスプリッタに入射してそこを透過し、偏光状態変換手段の第1および第2の領域の両者を介してホログラム感光材料に入射する。このとき、他方の光束のうちで偏光状態変換手段の第1の領域に入射した光は、P偏光のまま出射され、第2の領域に入射した光は、そこでS偏光に変換されて出射される。
【0019】
したがって、偏光状態変換手段の第1の領域が集光レンズの集光位置に位置しているときには(第1の領域を光軸回りに取り囲むように第2の領域が形成されているときには)、ホログラム感光材料で第1の領域と対応する領域には、一方の光束がS偏光で入射し、他方の光束がP偏光で入射するので、これらは互いに干渉せず、干渉縞が形成されない。一方、ホログラム感光材料で(他方の光束の入射範囲内における)第2の領域と対応する領域には、2光束がともにS偏光で入射するので、これらが互いに干渉し、干渉縞が形成される。つまり、作製されたホログラム光学素子では、第1の領域と対応してホログラム非構成領域が形成され、そのホログラム非構成領域を光軸回りに取り囲むようにホログラム構成領域が形成される。
【0020】
また、偏光状態変換手段の第2の領域が集光レンズの集光位置に位置しているときには(第2の領域を光軸回りに取り囲むように第1の領域が形成されているときには)、ホログラム感光材料で第2の領域と対応する領域には、一方の光束がP偏光で入射し、他方の光束がS偏光で入射するので、これらは互いに干渉せず、干渉縞が形成されない。一方、ホログラム感光材料で(他方の光束の入射範囲内における)第1の領域と対応する領域には、2光束がともにP偏光で入射するので、これらは互いに干渉し、干渉縞が形成される。つまり、作製されたホログラム光学素子では、第2の領域と対応してホログラム非構成領域が形成され、そのホログラム非構成領域を取り囲むようにホログラム構成領域が形成される。
【0021】
このように、本発明の製法によれば、ホログラム光学素子において、ホログラム非構成領域を取り囲むようにホログラム構成領域を形成することができるので、例えば作製したホログラム光学素子をLEDなどの光源の前に配置して用いるときに、ホログラム非構成領域に入射した光は、そこで回折されずに透過し、ホログラム構成領域に入射した光はそこで回折されて出射される。
【0022】
ところで、図5のグラフからわかるように、例えばホログラム構成領域のみを有する透過型のホログラム光学素子においては、使用時における偏向角が小さい領域では回折効率が極端に低下し、取り出す光の強度が著しく低下する。
【0023】
しかし、本発明によれば、ホログラム光学素子においてホログラム構成領域のみならずホログラム非構成領域をも形成しているので、例えばホログラムが構成されていれば偏向角が小さくなると考えられる領域においては、ホログラム非構成領域とすることで、高い透過光量を得ることができ、取り出す光の強度が著しく低下するのを回避することができる。特に、本発明によれば、ホログラム非構成領域を取り囲むようにホログラム構成領域を形成することができるので、ホログラム光学素子から取り出される光の中心強度が著しく低下するのを回避することができる。
【0024】
また、光路合成手段として偏光ビームスプリッタを用いることにより、光路合成の容易な製造光学系を実現することができる。
【0025】
本発明のホログラム光学素子の製造方法において、上記偏光状態変換手段の第1の領域は、上記集光レンズの集光位置に位置し、第2の領域は第1の領域を光軸回りに取り囲むように形成されており、第2の領域は、1/2波長板で構成されており、第1の領域は、上記1/2波長板に形成される孔で構成されていてもよい。
【0026】
第2の領域を1/2波長板とし、第1の領域をその1/2波長板に形成される孔(空隙)とすることで、第1の領域を光軸回りに取り囲むように、第2の領域を容易に形成することができる。したがって、ホログラム光学素子の使用時に、取り出す光の中心強度が著しく低下するのを回避できる効果を容易に得ることができる。
【0027】
本発明のホログラム光学素子の製造方法において、上記偏光状態変換手段の第2の領域は、上記集光レンズの集光位置に位置し、第1の領域は第2の領域を光軸回りに取り囲むように形成されており、第1の領域は、透明基板で構成されており、第2の領域は、1/2波長板で構成されていてもよい。
【0028】
第1の領域を透明基板(例えばガラス基板またはプラスチック基板)とし、第2の領域を1/2波長板とすることで、第2の領域を光軸回りに取り囲むように、第1の領域を形成することができる。したがって、ホログラム光学素子の使用時に、取り出す光の中心強度が著しく低下するのを回避できる効果を容易に得ることができる。
【0029】
本発明のホログラム光学素子の製造方法において、上記光路合成手段として、孔を有する反射膜を透明基板上に形成したピンホールミラーを用い、上記発散光を生成する光学系の光路中に、集光レンズと、上記ピンホールミラーとを配置するとともに、上記反射膜の孔が上記集光レンズの集光位置に位置するように上記ピンホールミラーを配置し、一方の光束を、上記集光レンズ、上記ピンホールミラーの反射膜の孔を介してホログラム感光材料に入射させ、他方の光束を、上記ピンホールミラーに対して反射膜の孔よりも大きな光束径で上記反射膜の孔を含む領域に入射させ、上記反射膜にて反射された光束をホログラム感光材料に入射させるようにしてもよい。
【0030】
上記製法においては、一方の光束(例えばP偏光とする)は、集光レンズを介してピンホールミラーに入射し、その反射膜の孔の位置で一旦集光され、そこから発散光となってホログラム感光材料に入射する。これに対して、他方の光束(例えばP偏光とする)は、ピンホールミラーの反射膜の孔よりも大きな光束径で上記反射膜を含む領域に入射し、反射膜にて反射された光のみがホログラム感光材料に入射する(他方の光束のうちで反射膜の孔に入射した光は、そこを透過するため、ホログラム感光材料には入射しない)。
【0031】
したがって、ホログラム感光材料でピンホールミラーの反射膜の孔に対応する領域には、1光束のみ(一方の光束のみ)が入射するので、干渉縞は形成されない。一方、ホログラム感光材料で(他方の光束の入射範囲内における)ピンホールミラーの反射膜の形成領域に対応する領域には、2光束がともに同じ偏光状態(P偏光)で入射するので、2光束は互いに干渉し、干渉縞が形成される。つまり、作製されたホログラム光学素子では、ピンホールミラーの反射膜の孔と対応してホログラム非構成領域が形成され、そのホログラム非構成領域を光軸回りに取り囲むようにホログラム構成領域が形成される。
【0032】
このように、本発明の製法によれば、ホログラム光学素子において、ホログラム非構成領域を取り囲むようにホログラム構成領域を形成することができるので、例えば作製したホログラム光学素子をLEDなどの光源の前に配置して用いるときに、ホログラム非構成領域に入射した光は、そこで回折されずに透過し、ホログラム構成領域に入射した光はそこで回折されて出射される。
【0033】
ところで、図5のグラフからわかるように、例えばホログラム構成領域のみを有する透過型のホログラム光学素子においては、使用時における偏向角が小さい領域では回折効率が極端に低下し、取り出す光の強度が著しく低下する。
【0034】
しかし、本発明によれば、ホログラム光学素子においてホログラム構成領域のみならずホログラム非構成領域をも形成しているので、例えばホログラムが構成されていれば偏向角が小さくなると考えられる領域においては、ホログラム非構成領域とすることで、高い透過光量を得ることができ、取り出す光の強度が著しく低下するのを回避することができる。特に、本発明によれば、ホログラム非構成領域を取り囲むようにホログラム構成領域を形成することができるので、ホログラム光学素子から取り出される光の中心強度が著しく低下するのを回避することができる。
【0035】
また、ピンホールミラーは、透明基板上に反射膜が形成されたものであり、その薄型化が容易である。したがって、光路合成手段としてピンホールミラーを用いることにより、ピンホールミラーの配置角度に自由度が増し、その配置角度の調整次第で集光レンズをピンホールミラー側に近づけて配置することが可能となる。これにより、集光レンズのNA(開口数)を大きくする、言い換えれば、集光レンズの焦点距離を短くすることが可能となる。その結果、作製されたホログラム光学素子の使用時には、より広い放射角度の光をホログラム光学素子にて偏向させることが可能となり、より明るい光を出射する光源ユニットを実現することが可能となる。
【0036】
本発明のホログラム光学素子の製造方法において、ホログラム感光材料に入射する2光束をそれぞれ生成する光学系の光軸は、作製されたホログラム光学素子の使用時の光学系と同軸であることが望ましい。
【0037】
この場合、例えば、作製されたホログラム光学素子をLEDなどの光源の前に配置して使用するときに、露光時と同一軸上に光源を配置すれば、発光特性が軸対称(回転対称)となる光源ユニットを実現することができる。
【0038】
本発明のホログラム光学素子の製造方法において、ホログラム感光材料の露光時に用いる2光束の両者として、ホログラム感光材料に対する入射時に発散光となる光束を用いてもよい。
【0039】
この場合、使用時にホログラム光学素子に発散光を入射させた場合には、ホログラム光学素子での回折、偏向によって発散光が出射されるので、上記のホログラム光学素子は、使用時にそのような発散光が要求される光学系や光源ユニットに好適となる。
【0040】
本発明のホログラム光学素子の製造方法において、ホログラム感光材料の露光時に用いる2光束のうち、一方の光束として、ホログラム感光材料に対する入射時に発散光となる光束を用い、他方の光束として、ホログラム感光材料に対する入射時に収束光となる光束を用いてもよい。
【0041】
この場合、使用時にホログラム光学素子に発散光を入射させた場合には、ホログラム光学素子での回折、偏向によって収束光が出射されるので、上記のホログラム光学素子は、使用時にそのような収束光が要求される光学系や光源ユニットに好適となる。
【0042】
本発明のホログラム光学素子は、体積位相型の透過型ホログラム光学素子であって、上述した本発明の製造方法によって製造されてなることを特徴としている。
【0043】
本発明の製法によってホログラム光学素子が作製されているので、例えば、LEDなどの光源の前方にホログラム光学素子を配置して光源ユニットを構成した場合に、光源として放射角度の広いものを用いた場合でも、光源から出射される光の大部分をホログラム光学素子にて偏向させることができる。これにより、明るい光を出射する光源ユニットを実現することができる。
【0044】
本発明のホログラム光学素子は、体積位相型の透過型ホログラム光学素子であって、ホログラムが構成されないホログラム非構成領域と、ホログラムが構成されるホログラム構成領域とを有しており、ホログラム構成領域は、ホログラム非構成領域を取り囲むように形成されていることを特徴としている。
【0045】
上記の構成によれば、ホログラム構成領域がホログラム非構成領域を取り囲むように形成されてホログラム光学素子が構成されるので、そのホログラム光学素子を作製すべく、ホログラム感光材料を2光束で露光する際には、2光束のうちの少なくとも一方の光束として、ホログラム感光材料への入射時に発散光となる光束を用いながら、2光束を同軸または略同軸でホログラム感光材料に入射させる手法を採用することができる。
【0046】
これにより、ホログラム光学素子の使用時には、その発散光の出射ポイントに対応する位置にLEDのような一定の放射角度で光を出射する光源を配置して、光源から出射される光(発散光)をホログラム光学素子で偏向させることができる。しかも、ホログラム光学素子の使用時には、ホログラム光学素子の光入射側の面に垂直な面内で、ホログラム光学素子から出射される光線の延長線に対して一方の側(プラス側)にできる偏向角だけでなく、他方の側(マイナス側)の偏向角も実現することができる。これにより、使用時に用いる光源として、プラス側およびマイナス側の偏向角の最大値まで放射角度を広げたものを用いることができる。言い換えれば、それ以上に放射角度の広い光源を用いた場合でも、光源から出射される光の大部分をホログラム光学素子にて偏向させて利用することができる。その結果、片側の偏向角のみ実現していた従来に比べて、明るい光を出射する光源ユニットを実現することができる。
【0047】
また、本発明のように、ホログラム光学素子がホログラム構成領域とホログラム非構成領域とを有して構成されていれば、本来、ホログラムが構成されていれば偏向角が小さく、回折効率が極端に低下する領域と、本来なら偏向角が小さい領域の周囲に形成され、偏向角が大きく、回折効率が高い領域とを、ホログラム非構成領域およびホログラム構成領域にそれぞれ対応付けて本発明のホログラム光学素子を使用することができる。
【0048】
このように各領域を対応付けて本発明のホログラム光学素子をLEDなどの光源の前に配置して用いた場合、ホログラム非構成領域に入射した光は、そこで回折されずに透過し、ホログラム構成領域に入射した光はそこで回折されて出射される。したがって、ホログラム非構成領域からは高い透過光量の光を得ることができ、また、ホログラム構成領域からは高い回折効率で回折光を得ることができる。その結果、ホログラム光学素子から取り出す光の中心強度が著しく低下するのを回避することができる。
【0049】
本発明のホログラム光学素子において、ホログラム構成領域に入射する光線と、その光線がホログラム構成領域にて回折、偏向されて出射される場合の出射光線の延長線とのなす角度のうち、鋭角のものを偏向角とすると、ホログラム構成領域における偏向角の絶対値は、5°以上であることが望ましい。
【0050】
体積位相型の透過型ホログラム光学素子を構成する元となるホログラム感光材料が例えばフォトポリマーで構成されている場合、偏向角の絶対値が5°以上となる領域は回折効率が高いので、ホログラム構成領域から強度の十分な光を得ることができる。
【0051】
なお、ホログラム構成領域が取り囲むホログラム非構成領域は、本来ホログラムが構成されれば偏向角の絶対値が5°未満となる領域であり、本来なら回折効率が極端に低下する領域であるが、本発明ではその領域にホログラムが構成されていないので、高い透過光量によって強度の十分な光を得ることができる。
【0052】
本発明のホログラム光学素子において、ホログラム構成領域を構成する元となるホログラム感光材料は、フォトポリマーで構成されていることが望ましい。
【0053】
この場合、偏向角の絶対値が5°以上となるホログラム構成領域にて、高い回折効率を確実に実現することができ、ホログラム構成領域から強度の十分な光を確実に得ることができる。また、ホログラム感光材料としてフォトポリマーを用いれば、全てドライプロセスでホログラム光学素子を作製することができるため、製造工程が簡易となる。
【0054】
本発明のホログラム光学素子において、ホログラム構成領域に入射する光線と、その光線がホログラム構成領域にて回折、偏向されて出射される場合の出射光線の延長線とのなす角度のうち、鋭角のものを偏向角とすると、ホログラム構成領域における偏向角の絶対値は、ホログラム構成領域における1次光の回折効率が最大回折効率の50%以上となる角度であってもよい。
【0055】
この場合、ホログラム構成領域では、1次光の最大回折効率の50%以上の回折効率が確保されるので、ホログラム構成領域から強度の十分な光を得ることができる。なお、体積位相型の透過型ホログラム光学素子を構成する元となるホログラム感光材料は、例えばフォトポリマーや銀塩材料であってもよく、その他の材料であってもよい。
【0056】
本発明のホログラム光学素子は、回転対称であってもよい。ホログラム光学素子が回転対称、すなわち、ホログラム非構成領域およびホログラム構成領域が両者とも回転対称に構成されることにより、本発明のホログラム光学素子を一般的な同軸光学系に容易に適用することが可能となる。
【0057】
本発明のホログラム光学素子において、該ホログラム光学素子は、透明基板上に形成されたホログラム感光材料を2光束で露光することによって作製されており、上記透明基板は、該基板の一部にレンズ部が形成されたレンズ付き基板であり、上記レンズ部は、ホログラム非形成領域に対応して位置している構成であってもよい。
【0058】
例えば、LEDなどの光源の前に本発明のホログラム光学素子を、レンズ付き基板側が光源側となるように配置して用いる場合、光源から出射された光は、レンズ付き基板のレンズ部で屈折されてホログラム非構成領域に入射し、そこを透過する。一方、ホログラム構成領域では、上述の通り、入射光が回折、偏向されて出射される。したがって、ホログラム光学素子全体として、光学的パワーを有する薄型の光学素子を容易に実現することができる。
【0059】
本発明の光源ユニットは、光源と、光源の前方に配置される体積位相型の透過型ホログラム光学素子とを備え、上記ホログラム光学素子は、上述した本発明のホログラム光学素子で構成されていることを特徴としている。
【0060】
この構成では、例えば光源として放射角度の広いものを用いた場合でも、光源から出射される光の大部分は、本発明のホログラム光学素子にて偏向されて出射される。したがって、光源から出射される光を有効利用して、明るい光を出射する光源ユニットを実現することができる。
【0061】
本発明の光源ユニットにおいて、上記ホログラム光学素子を作製する元となるホログラム感光材料の露光時に用いる2光束の波長は、使用時の上記光源から出射される光のピーク波長の±20nm以内であることが望ましい。
【0062】
この場合、露光波長と使用波長(ピーク波長)とがほぼ等しいので、光源から出射された光をホログラム光学素子のホログラム構成領域にて効率よく回折させて偏向することができ、光利用効率の高い光源ユニットを実現することができる。
【発明の効果】
【0063】
本発明によれば、ホログラム光学素子の使用時には、ホログラム光学素子の光入射側の面に垂直な面内で、ホログラム光学素子から出射される光線の延長線に対して、偏向角を両側に形成することができる。これにより、放射角度の広い光源を用いた場合でも、光源から出射される光をほとんどホログラム光学素子にて偏向させて利用することができる。その結果、従来よりも明るい光を出射する光源ユニットを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0065】
(1.光源ユニットについて)
図2は、本実施形態に係る光源ユニットの概略の構成を示す断面図である。この光源ユニットは、光源モジュール1と、ホログラム基板2とを有しており、光源モジュール1から出射される光がホログラム基板2を介して外部に取り出される構成となっている。
【0066】
光源モジュール1は、筐体11内に光源12を有している。光源12は、例えばピーク波長(中心波長)が520nmの光を出射するLED(発光ダイオード)で構成されている。光源12は、放射角度が強度半値でも±60度(全角120度)となる広い放射角度特性を有しており、基板13上に形成された金属パターンからなる電極14上に実装されている。また、基板13上には、金属パターンからなる他の電極15が形成されており、光源12と電極15とはAuワイヤ16で接続されている。また、筐体11内部は、樹脂モールドされている。
【0067】
ホログラム基板2は、例えばガラスやプラスチック材料からなる透明な基板21上にホログラム光学素子22を有して構成されている。このホログラム基板2は、基板21に対してホログラム光学素子22が光源12側となるように、光源モジュール1の表面に粘着層(図示せず)を介して接着されている。この結果、ホログラム光学素子22は、光源12の前方に配置されることになる。ホログラム光学素子22は、体積位相型の透過型ホログラム光学素子で構成されている。
【0068】
したがって、光源12から出射された光(発散光)は、ホログラム光学素子22にて回折、偏向され、その後、基板21を透過して外部に出射される。これにより、射出角度の小さい良好な配向特性(偏向特性)の光源ユニットを実現することができる。また、ホログラム光学素子22は、薄型で安価であるので、そのようなホログラム光学素子22を用いることにより、光源ユニットを小型で安価に実現することができる。
【0069】
(2.ホログラム光学素子について)
次に、上記したホログラム光学素子22の詳細な構成について説明する。図3は、ホログラム光学素子22の詳細な構成を示す断面図である。ホログラム光学素子22は、ホログラム非構成領域31と、ホログラム構成領域32とを有している。
【0070】
ホログラム非構成領域31は、入射光を回折、偏向させるホログラムが構成されていない領域である。したがって、ホログラム非構成領域31は、そこに光が入射したときにその光を単に透過させる透過領域として機能する。一方、ホログラム構成領域32は、入射光を回折、偏向させるホログラムが構成されている領域である。より具体的には、ホログラム構成領域32には、光源12を点光源と考えたときの発光点に相当する点Pからの発散光を回折、偏向し、光軸に平行な光束として射出するようなホログラムが形成されている。なお、ホログラム光学素子22の使用時における光軸とは、点Pを通り、ホログラム光学素子22の光入射面22bに対して垂直な軸Aを指すものとする。
【0071】
ここで、上記のホログラムは、基板21(図2参照)上に保持されたフィルム状のホログラム感光材料22a(図1参照)を、干渉性を有する2光束で露光することにより形成されるものである。つまり、ホログラムは、2光束干渉によって形成される干渉縞で構成される。したがって、ホログラム非構成領域31は、上記干渉縞を有していない領域であり、ホログラム構成領域32は、上記干渉縞を有する領域であるとも言える。
【0072】
また、ホログラム光学素子22を作製する元となるホログラム感光材料22aとしては、フォトポリマー、銀塩材料、重クロム酸ゼラチンなどを用いることができるが、ここでは、ホログラム光学素子22をドライプロセスで容易に製造可能なフォトポリマー(例えばデュポン社製)を用いている。
【0073】
また、本実施形態では、ホログラム非構成領域31は光軸上に位置しており、ホログラム構成領域32は、ホログラム非構成領域31を光軸回りに取り囲むように形成されている。さらに、ホログラム非構成領域31およびホログラム構成領域32は両者とも、光軸に対して回転対称(軸対称)に形成されており、その結果、ホログラム光学素子22は全体として回転対称に構成されていることになる。このように、ホログラム光学素子22が回転対称に構成されていることにより、ホログラム光学素子22を一般的な同軸光学系に容易に適用することが可能となる。つまり、使用時の光学系と同軸となる位置にホログラム光学素子22を配置して使用することが可能となる。
【0074】
以上のように、ホログラム光学素子22が、ホログラム非構成領域31とホログラム構成領域32とを有し、ホログラム構成領域32がホログラム非構成領域31を光軸回りに取り囲むように形成される構成とすることにより、このホログラム光学素子22の作製時には、後述する製法を採用することが可能となる。つまり、ホログラム感光材料22aを露光する2光束のうちの少なくとも一方の光束として、ホログラム感光材料22aへの入射時に発散光となる光束を用いながら、2光束を同軸でホログラム感光材料22aに入射させる手法を採用することができる。なぜなら、2光束を同軸でホログラム感光材料22aに入射させる手法では、後述するように軸A付近にはホログラムを形成せずに、その周りにのみホログラムを形成することが可能だからである。
【0075】
なお、以下での説明の便宜上、ホログラム光学素子22の使用時にホログラム構成領域32に入射した光線と、その光線がホログラム構成領域32にて回折、偏向されて出射されるときの出射光線の延長線とのなす角度のうち、鋭角の角度θを偏向角と呼ぶことにする。
【0076】
(3.ホログラム光学素子の製造方法について)
次に、上述した構成のホログラム光学素子22の製造方法について説明する。図1は、ホログラム光学素子22を製造する際に用いる製造光学系の主要部の概略の構成を示す断面図である。
【0077】
本実施形態では、ホログラム構成領域32にて、光源12からの光(発散光)を回折、偏向して、光軸に平行な光束として射出するようにするため、ホログラム感光材料22aを露光する2光束のうちの一方の光束(例えば参照光L1)として、ホログラム感光材料22aへの入射時に発散光となる光束を用いる。このため、上記発散光を生成する光学系の光路中に、集光レンズ41と、偏光ビームスプリッタ(以下、PBSとも称する)42と、偏光状態変換部材43(偏光状態変換手段)とを配置している。
【0078】
集光レンズ41は、入射光(例えば平行光)を集光するものであり、所定のNAを有している。したがって、集光レンズ41の焦点距離は、所定の値に設定されている。PBS42は、入射光を偏光状態に応じて透過または反射させることにより、異なる方向から入射する2光束の光路を合成する光路合成手段であり、例えばP偏光を透過させ、S偏光を反射させる特性を有している。このようなPBS42を用いることにより、異なる方向から入射する2光束を、PBS42を介して同軸でホログラム感光材料22aに入射させることができる。
【0079】
このとき、露光時にホログラム感光材料22aに入射する2光束を生成する光学系の光軸のうちで共通部分を軸Bとすると、この製造光学系における軸Bは、作製されたホログラム光学素子22の使用時の光学系の軸A(図3参照)と同軸ともなっている。
【0080】
偏光状態変換部材43は、入射光の偏光状態を維持する第1の領域43aと、入射光の偏光状態を変換する第2の領域43bとを有している。第2の領域43bは、例えば1/2波長板で構成されており、第1の領域43aは、その1/2波長板に形成される孔で構成されている。また、第1の領域43aは、集光レンズ41の集光位置に位置し、第2の領域43bは、第1の領域43aを光軸(軸B)回りに取り囲むように形成されている。
【0081】
ここで、物体光L2として平行光を用いるとき、偏光状態変換部材43の第1の領域43aの大きさは、製造するホログラム光学素子22の焦点距離とホログラム構成領域32での回折による最低偏向角θminとに基づいて決定される。より具体的には、以下の通りである。
【0082】
図4は、偏光状態変換部材43からホログラム感光材料22aに入射する光の光路を拡大して示す説明図である。偏光状態変換部材43の第1の領域43aの大きさを規定する軸Bからの距離(半径)をh(mm)、ホログラム光学素子22の焦点距離、すなわち、集光レンズ41の集光位置からホログラム感光材料22aにおける光入射面22bまでの距離をfl(mm)、上記集光位置からホログラム感光材料22aにおけるホログラム構成領域32とホログラム非構成領域31との境界に対応する部分に入射する光線と軸Bとのなす角をφ(°)とすると、距離hは、以下のように表現される。
h=fltanφ
このとき、図4より、φ=θminであるので、
h=fltanθmin
となる。したがって、第1の領域43aの大きさがこれらのパラメータに基づいて決定されることがわかる。また、物体光L2が平行光のときは、第1の領域43aだけでなく、ホログラム非構成領域31の大きさも距離hで規定されることになる。
【0083】
上記の製造光学系には、集光レンズ41、PBS42、偏光状態変換部材43のほかに、レーザ光源、ビームスプリッタ、ビームエキスパンダ等も配置されている。したがって、レーザ光源から射出された可干渉性を有する光束は、ビームスプリッタにて2光束に分岐され、ビームエキスパンダによってそれぞれ所定の光束径に拡大される。なお、レーザ光による露光時間は、図示しないシャッタによりコントロールされる。
【0084】
上記2光束のうちの一方である参照光L1(ここではS偏光とする)は、平行光の状態から集光レンズ41で集光されて収束光となり、PBS42で反射された後、偏光状態変換部材43の第1の領域43aを介してホログラム感光材料22aにS偏光のままで入射する。ここで、第1の領域43aは、集光レンズ41の集光位置に配置されているので、参照光L1は、第1の領域43aの通過と同時に発散光となってホログラム感光材料22aに入射する。
【0085】
一方、上記2光束のうちの他方である物体光L2(ここではP偏光とする)は、平行光の状態でPBS42を透過し、参照光L1と同軸で偏光状態変換部材43の第1の領域43aおよび第2の領域43bの両方に入射し、これらの領域を介してホログラム感光材料22aに入射する。このとき、偏光状態変換部材43の第1の領域43aに入射した物体光L2は、そこで偏光状態が維持されて出射されるので、ホログラム感光材料22aにはP偏光のままで入射する。これに対して、第2の領域43bに入射した物体光L2は、そこで偏光状態が変換されて出射されるので、ホログラム感光材料22aにはS偏光の状態で入射する。
【0086】
つまり、ホログラム感光材料22aにおいて、第1の領域43aに対応する領域には、参照光L1がS偏光の状態で入射し、物体光L2がP偏光の状態で入射する。これらの光は偏光方向が異なっており、互いに干渉しないため、上記領域には干渉縞は形成されない。よって、上記領域は、ホログラム非構成領域31となる。すなわち、露光後の後処理(例えばベイク処理)をすると、上記領域は単なる透過領域として機能する。
【0087】
一方、ホログラム感光材料22aにおいて、物体光L2の入射範囲内で第2の領域43bに対応する領域には、参照光L1がS偏光の状態で入射し、物体光L2もS偏光の状態で入射する。これらの光は偏光方向が同じであり、互いに干渉するため、上記領域には干渉縞が形成される。よって、上記領域は、ホログラム構成領域32となる。つまり、ホログラム構成領域32は、光軸付近に形成されるホログラム非構成領域31を光軸回りに取り囲むように形成される。
【0088】
この結果、集光レンズ41の集光点に対応する位置に光源12を配置し、作製されたホログラム光学素子22を光源12の前方に配置すると、図3で示したように、光源12(点P)から出射される発散光の一部(ホログラム非構成領域31に入射した光)を透過させ、残り(ホログラム構成領域32に入射した光)を平行光に変換(偏向)して出射するホログラム光学素子22が得られることになる。
【0089】
(4.効果について)
以上のように、本実施形態では、ホログラム感光材料22aを露光する2光束のうちの一方の光束(上記の例では参照光L1)が、ホログラム感光材料22aへの入射時に発散光となる光束であるので、作製されたホログラム光学素子22の使用時には、その発散光の出射ポイントに対応する位置に光源12を配置して、光源12から出射される光(発散光)の一部をホログラム光学素子22で偏向、回折させることができる。
【0090】
また、図5は、ホログラム光学素子22の使用時における偏向角と回折効率(透過0次光、透過1次光)との関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。なお、同図では、ホログラム光学素子22の光入射面22bに垂直な面内で、ホログラム光学素子22から出射される光線の延長線に対して一方の側にできる偏向角をプラスの偏向角で、他方の側にできる偏向角をマイナスの偏向角で表現している。すなわち、図3の断面内においては、点Pから出射された光線であって軸Aよりも右側の光線がホログラム光学素子22(ホログラム構成領域32)に入射したときにできる偏向角をプラスの偏向角とすると、点Pから出射された光線であって軸Aよりも左側の光線がホログラム光学素子22(ホログラム構成領域32)に入射したときにできる偏向角がマイナスの偏向角となる。
【0091】
また、上記のシミュレーションでは、製造波長(参照光L1および物体光L2の波長)をλ0、ホログラム感光材料22a(フォトポリマー)の屈折率をn、屈折率変調量をΔn、ホログラム感光材料22aの厚さをt、ホログラム感光材料22aに対する参照光L1の入射角度をθ1、ホログラム感光材料に対する物体光L2の入射角度をθ2、再生波長をλ1としたとき、λ0=532nm、n=1.5、Δn=0.008、t=35μm、θ1=−85°〜85°、θ2=0°、λ1=532nmである。なお、ここでは、ホログラム非構成領域31に対応する偏向角0°付近の領域にもホログラムが形成されているものとしてシミュレーションを行っているが、実際にはホログラム非構成領域31が形成されているので(ホログラムが形成されていないので)、この領域での回折は起こらない。
【0092】
図5のシミュレーション結果より、回折効率が例えば70%以上となる偏向角の範囲は、ほぼ−60°から60°までの120°となり、従来の2倍以上となる。このように、偏向角の範囲として従来の2倍以上の範囲を確保できるのは、上述したホログラム感光材料22aの露光時に、参照光L1および物体光L2を同軸でホログラム感光材料22aに入射させてホログラム光学素子22を作製していることによる。
【0093】
つまり、本実施形態では、ホログラム感光材料22aの露光時に、ホログラム感光材料22aに対して2光束を同軸で入射させているので、作製されたホログラム光学素子22の使用時には、ホログラム光学素子22の光入射面22bに垂直な面内で、プラス側にできる偏向角だけでなく、マイナス側の偏向角も実現することができる。これにより、使用時に用いる光源12として、プラス側およびマイナス側の偏向角で絶対値が最大となる偏向角に対応する角度まで放射角度を広げたものを用いることができる。言い換えれば、それ以上に放射角度の広い光源12を用いた場合でも、光源12から出射される光の大部分(プラス側の偏向角で絶対値が最大となる偏向角からマイナス側の偏向角で絶対値が最大となる偏向角の間の角度に対応する放射範囲の光)をホログラム光学素子22にて偏向させて利用することができる。その結果、片側の偏向角のみ実現していた従来に比べて、明るい光を出射する光源ユニットを実現することができる。
【0094】
また、露光時に用いる2光束をPBS42で光路合成した後、ホログラム感光材料22aに入射させているので、別々の方向に進行する2光束をホログラム感光材料22aに対して同軸で入射させることができる。また、PBS42を用いることによって製造光学系がシンプルな構成となり、そのようなシンプルな構成で上述した本発明の効果を得ることができるとともに、ホログラム光学素子22を容易にかつ安価に製造することができる。
【0095】
また、本実施形態では、ホログラム感光材料22aの露光時に、一方の光束(参照光L1)を、集光レンズ41、PBS42、偏光状態変換部材43の第1の領域43aを介してホログラム感光材料22aに入射させ、他方の光束(物体光L2)を、PBS42、偏光状態変換部材43の第1の領域43aおよび第2の領域43bの両者を介してホログラム感光材料22aに入射させている。これにより、上述のように、作製されたホログラム光学素子22においては、ホログラム非構成領域31を光軸回りに取り囲むようにホログラム構成領域32を形成することができる。
【0096】
したがって、作製されたホログラム光学素子22を光源12の前に配置して用いたときに、ホログラム非構成領域31に入射した光は、そこで回折されずに透過し、ホログラム構成領域32に入射した光はそこで回折されて出射される。よって、ホログラム非構成領域31では高い透過光量の光を得ることができ、ホログラム構成領域32では高い回折効率で光を回折させて外部に取り出すことができる。その結果、ホログラム光学素子22を介して得られる光の強度分布に極端にムラが生じるのを回避することができる。
【0097】
特に、図5でも示したように、ホログラム光学素子22において偏向角0°付近の領域にホログラムが形成されていたとすれば、そこは回折効率が極端に低下する領域となるが、本実施形態ではその領域をホログラム非構成領域31としているので、高い透過光量を確保して取り出す光の強度が著しく低下するのを回避することができる。つまり、ホログラム光学素子22から取り出される光の中心強度が著しく低下するのを回避することができる。
【0098】
また、本実施形態のように、ホログラム光学素子22を構成する元となるホログラム感光材料22aがフォトポリマーで構成されている場合、図5に示したように、偏向角の絶対値が5°以上となる領域は回折効率が高い。したがって、ホログラム構成領域32における偏向角の絶対値を5°以上とすれば、つまり、偏向角の絶対値が5°以上となるようにホログラム構成領域32を形成すれば、ホログラム構成領域32から十分な強度の光が得られるホログラム光学素子22を実現することができる。逆に、偏向角の絶対値が5°未満となる領域は、回折効率が極端に低下する領域であるので、この領域を本実施形態のようにホログラム非構成領域31に対応付けることで、その領域からは高い透過光量によって強度の十分な光を得ることができる。
【0099】
なお、ホログラム非構成領域31とホログラム構成領域32とを区別する偏向角の絶対値は、上記の5°には限定されず、例えば7°であってもよいし、10°であってもよい。要は、上記偏向角の絶対値は、ホログラム光学素子22を介して得られる光の強度分布に極端にムラが生じるのを回避できるような値であればよい。
【0100】
また、例えば、1次光の回折効率が最大回折効率の50%以上となるような偏向角がプラス側およびマイナス側の双方で実現されるように、ホログラム構成領域32が形成されていれば、そのホログラム構成領域32を介して強度の十分な光を得ることができると思われる。このことは、ホログラム感光材料22aがフォトポリマー以外の材料で構成されている場合でも同様である。
【0101】
例えば、図6は、銀塩材料からなるホログラム感光材料22aを露光して得られるホログラム光学素子22の使用時における偏向角と回折効率との関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。なお、上記のシミュレーションでは、λ0=532nm、n=1.5、Δn=0.06、t=5μm、θ1=−85°〜85°、θ2=0°、λ1=532nmである。
【0102】
このようなホログラム光学素子22を構成した場合、1次光の回折効率が最大回折効率の50%以上となる偏向角は、ホログラム感光材料22aとしてフォトポリマーを用いた場合に比べて、プラス側およびマイナス側でその絶対値が大きくなっているが、ホログラム構成領域32では、1次光の最大回折効率の50%以上の回折効率が確保されることに変わりはない。よって、ホログラム構成領域32における偏向角の絶対値は、ホログラム構成領域32における1次光の回折効率が最大回折効率の50%以上となる角度であれば、ホログラム感光材料22aの材料に関係なく、ホログラム構成領域32から強度の十分な光を得ることができると言える。
【0103】
また、本実施形態では、製造光学系において、偏光状態変換部材43の第1の領域43aは集光レンズ41の集光位置に位置し、第2の領域43bは第1の領域43aを光軸回りに取り囲むように形成されている。このような偏光状態変換部材43は、第2の領域43bを1/2波長板で構成し、第1の領域43aを1/2波長板に形成される孔で構成することで容易に実現することができる。このような偏光状態変換部材43の構成によれば、第1の領域43aを光軸回りに取り囲むように、第2の領域43bを容易に形成することができるので、作製されたホログラム光学素子22において、ホログラム非構成領域31を光軸回りに取り囲むように、ホログラム構成領域32を容易に形成することが可能となる。その結果、ホログラム光学素子22の使用時に、取り出す光の中心強度が著しく低下するのを回避できる上述の効果を容易に得ることができる。
【0104】
また、製造光学系における軸Bは、作製されたホログラム光学素子22の使用時の光学系の軸Aと同軸であるので、作製されたホログラム光学素子22の使用時に光源12を軸A上に配置すれば、発光特性が軸対称(回転対称)となる光源ユニットを実現することができる。
【0105】
また、本実施形態では、ホログラム感光材料22aの露光時に用いる2光束の波長(製造波長)は例えば532nmとなっており、使用波長、つまり光源12から出射される光の波長である520nmに近い。このように製造波長と使用波長とを近づけることにより、使用時に光源12から出射された光をホログラム光学素子22(特にホログラム構成領域32)にて効率よく回折させ、偏向することができ、光利用効率の高い光源ユニットを実現することができる。なお、露光波長が使用時の光源12から出射される光のピーク波長の±20nm以内であれば、上記の効果を得ることができる。
【0106】
(5.製造光学系の変形例1)
次に、本実施形態のホログラム光学素子22の作製に用いる製造光学系の変形例について、以下に説明する。
【0107】
図7は、本実施形態のホログラム光学素子22を製造する際に用いる製造光学系の主要部の他の構成を示す断面図である。この製造光学系は、偏光状態変換部材43の代わりに偏光状態変換部材44(偏光状態変換手段)を用いた以外は、図1の製造光学系と全く同様の構成である。
【0108】
偏光状態変換部材44は、入射光の偏光状態を維持する第1の領域44aと、入射光の偏光状態を変換する第2の領域44bとを有している。第1の領域44aは、透明基板(例えばガラス基板やプラスチック基板)で構成されており、第2の領域44bは、1/2波長板で構成されている。なお、第2の領域44bの大きさは、図4と同様の考察により、製造するホログラム光学素子22の焦点距離とホログラム構成領域32での回折による最低偏向角θminとに基づいて決定されることになる。また、第2の領域44bは集光レンズ41の集光位置に位置し、第1の領域44aは第2の領域44bを光軸回りに取り囲むように形成されている。
【0109】
図7の製造光学系においては、2光束のうちの一方である参照光L1(ここではS偏光とする)は、平行光の状態から集光レンズ41で集光されて収束光となり、PBS42で反射された後、偏光状態変換部材44の第2の領域44bに入射し、そこでP偏光に変換されてホログラム感光材料22aに入射する。ここで、第2の領域44bは、集光レンズ41の集光位置に配置されているので、参照光L1は、第2の領域44bの通過と同時に発散光となってホログラム感光材料22aに入射する。
【0110】
一方、上記2光束のうちの他方である物体光L2(ここではP偏光とする)は、平行光の状態でPBS42を透過し、参照光L1と同軸で偏光状態変換部材44の第1の領域44aおよび第2の領域44bの両方に入射し、これらの領域を介してホログラム感光材料22aに入射する。このとき、偏光状態変換部材44の第1の領域44aに入射した物体光L2は、そこで偏光状態が維持されて出射されるので、ホログラム感光材料22aにはP偏光のままで入射する。これに対して、第2の領域44bに入射した物体光L2は、そこで偏光状態が変換されて出射されるので、ホログラム感光材料22aにはS偏光の状態で入射する。
【0111】
つまり、ホログラム感光材料22aにおいて、第2の領域44bに対応する領域には、参照光L1がP偏光の状態で入射し、物体光L2がS偏光の状態で入射する。これらの光は偏光方向が異なっており、互いに干渉しないため、上記領域には干渉縞は形成されない。よって、上記領域は、ホログラム非構成領域31となり、単なる透過領域として機能する。
【0112】
一方、ホログラム感光材料22aにおいて、物体光L2の入射範囲内における第1の領域44aに対応する領域には、参照光L1がP偏光の状態で入射し、物体光L2がP偏光の状態で入射する。これらの光は偏光方向が同じであり、互いに干渉するため、上記領域には干渉縞が形成される。よって、上記領域は、ホログラム構成領域32となる。
【0113】
このように、偏光状態変換部材43の代わりに偏光状態変換部材44を用いて露光を行った場合であっても、ホログラム構成領域32は、光軸付近に形成されるホログラム非構成領域31を光軸回りに取り囲むように形成される。したがって、図7の製造光学系を用いても、図3と同じホログラム光学素子22を得ることができ、上述した本発明の効果を得ることができる。
【0114】
特に、第1の領域44aを透明基板とし、第2の領域44bを1/2波長板とすることで、第2の領域44bを光軸回りに取り囲むように、第1の領域44aを容易に形成することができる。したがって、作製されたホログラム光学素子22において、ホログラム非構成領域31を光軸回りに取り囲むように、ホログラム構成領域32を容易に形成することができ、ホログラム光学素子22の使用時に、取り出す光の中心強度が著しく低下するのを回避できる本発明の効果を容易に得ることができる。
【0115】
(6.製造光学系の変形例2)
図8は、本実施形態のホログラム光学素子22を製造する際に用いる製造光学系の主要部のさらに他の構成を示す断面図である。この製造光学系は、PBS42および偏光状態変換部材43の代わりにピンホールミラー45を用い、それに応じて集光レンズ41の位置や参照光L1および物体光L2のピンホールミラー45に対する入射方向を適宜設定した点以外は、図1の製造光学系と同様の構成である。
【0116】
ピンホールミラー45は、異なる方向から入射する2光束の光路を合成して射出する光路合成手段である。このピンホールミラー45は、孔51aを有する反射膜51を透明基板52上に形成した平板状のミラーで構成されている。図8の製造光学系では、発散光(例えば参照光L1)を生成する光学系の光路中に、集光レンズ41とピンホールミラー45とが配置されている。しかも、反射膜51の孔51aが集光レンズ41の集光位置に位置するようにピンホールミラー45が配置されている。
【0117】
この状態で、一方の光束(例えばP偏光の参照光L1)を、集光レンズ41、ピンホールミラー45の反射膜51の孔51aを介してホログラム感光材料22aに入射させ、他方の光束(例えばP偏光の物体光L2)を、ピンホールミラー45に対して反射膜51の孔51aよりも大きな光束径で、反射膜51の孔51aを含む領域に入射させる。
【0118】
このとき、ピンホールミラー45の孔51aが集光レンズ41の集光位置に位置しているので、参照光L1は孔51aの位置で一旦集光され、そこから発散光となってホログラム感光材料22aにP偏光のまま入射する。また、物体光L2のうち、反射膜51(孔51a以外の部分)にて反射された光は、参照光L1と同軸でホログラム感光材料22aにP偏光の状態で入射するが、反射膜51の孔51aに入射した光は、そこを透過するため、ホログラム感光材料22aには入射しない。
【0119】
したがって、ホログラム感光材料22aにおいて、ピンホールミラー45の反射膜51の孔51aに対応する領域には、1光束のみ(参照光L1のみ)が入射するので、干渉縞は形成されない。一方、ホログラム感光材料22aにおいて、物体光L2の入射範囲内におけるピンホールミラー45の反射膜51の形成領域(孔51aを除く)に対応する領域には、2光束がともに同じ偏光状態(上記の例ではP偏光)で入射するので、2光束は互いに干渉し、干渉縞が形成される。つまり、作製されたホログラム光学素子22では、ピンホールミラー45の反射膜51の孔51aと対応してホログラム非構成領域31が形成され、そのホログラム非構成領域31を光軸回りに取り囲むようにホログラム構成領域32が形成される。
【0120】
このように、図8の製造光学系を用いてホログラム光学素子22を作製する場合でも、露光時の2光束の一方として発散光を用いながら、ホログラム感光材料22aに対して2光束を同軸で入射させることができるとともに、ホログラム非構成領域31を光軸回りに取り囲むようにホログラム構成領域32を形成することができる。したがって、図8の製造光学系を用いてホログラム光学素子22を作製した場合でも、その使用時には光源12からの光の大部分を有効利用して明るい光源ユニットを実現できる、ホログラム光学素子22を介して得られる光の強度分布に極端にムラが生じるのを回避することができるなど、上述した本発明の効果を得ることができる。
【0121】
また、ピンホールミラー45は、透明基板52上に反射膜51が形成されたものであり、その薄型化が容易である。したがって、光路合成手段としてピンホールミラー45を用いることにより、ピンホールミラー45の配置角度に自由度が増す。したがって、例えば、ピンホールミラー45の反射面がホログラム感光材料22aにおける光入射面22bと平行に近づく方向にピンホールミラー45を傾けて配置する(ピンホールミラー45の反射面と軸Bとの交差角度がより垂直に近づくようにする)ことも可能となる。
【0122】
これにより、集光レンズ41をピンホールミラー45に近づけて配置することが可能となるので、例えば集光レンズ41のNAを大きくする、言い換えれば、集光レンズ41の焦点距離を短くすることが可能となる。その結果、作製されたホログラム光学素子22の使用時には、発散光の集光点に対応する位置に配置される光源12から出射される光のうち、より広い放射角度の光をホログラム光学素子22にて回折、偏向させることが可能となり、より明るい光を出射する光源ユニットを実現することが可能となる。
【0123】
(7.製造光学系の変形例3)
以上では、露光時にホログラム感光材料22aに2光束を同軸で入射させる例について説明したが、完全な同軸でなくてもよい。例えば、図9は、露光時にホログラム感光材料22aに入射する2光束が略同軸となる製造光学系の主要部の構成を示す断面図である。なお、同図では、露光時にホログラム感光材料22aに入射する2光束のうち、参照光L1を生成する光学系の光軸を軸B1とし、物体光L2を生成する光学系の光軸を軸B2としている。また、図10は、その製造光学系によって製造されたホログラム光学素子22の概略の構成を示す断面図である。
【0124】
ホログラム光学素子22は、例えば軸B1に対するピンホールミラー45の傾斜角度、およびピンホールミラー45に対する物体光L2の入射角度を適切に設定してホログラム感光材料22aを露光することにより、作製することができる。したがって、このような製造光学系では、ピンホールミラー45は、露光時に別々の方向に進行する2光束がホログラム感光材料22aに対して略同軸で入射するように、2光束の光路を合成する光路合成手段として機能する。
【0125】
このように露光時にホログラム感光材料22aに2光束を略同軸で入射させるようにしても、プラス側およびマイナス側に偏向角の大きいホログラム光学素子22を得ることは可能であり、そのホログラム光学素子22を用いて光源12からの光の大部分(放射角度の広い光)を利用することが可能である。したがって、このような露光方法であっても、明るい光を出射する光源ユニットを実現することができる。
【0126】
なお、露光時の2光束の軸B1・B2の交差角度は、例えば5°以下であってもよいし、10°以下であってもよい。要は、作製されたホログラム光学素子22において、プラス側およびマイナス側の両方の偏向角を実現できる交差角度であればよい。
【0127】
(8.ホログラム光学素子の他の構成について)
図11は、ホログラム光学素子22の他の構成を示すものであって、使用時に入射した点P(光源12)からの発散光が、光射出面22cに対して垂直以外の角度で平行に射出されるホログラム光学素子22の概略の構成を示す断面図である。
【0128】
このホログラム光学素子22は、図1、図7または図8の製造光学系において、軸Bに対して基板21(図2参照)が垂直以外の角度で傾くようにホログラム感光材料22aを位置させ、これを2光束で露光することにより作製することが可能である。このようにして作製されるホログラム光学素子22を光源12と組み合わせて光源ユニットを構成することで、光源ユニットを軸A方向に小型化することができる。
【0129】
なお、同図では、製造光学系の軸Bと使用時の光学系の軸Aとは同軸とはなっていないが、軸Aと軸Bとが同軸となるようにホログラム光学素子22を配置して使用する、つまり、軸Aに対してホログラム光学素子22を傾けて使用することも勿論可能である。
【0130】
(9.ホログラム基板の他の構成について)
図12は、ホログラム基板2の他の構成を示す断面図である。このホログラム基板2は、基板21の代わりに同じく透明な基板23を用い、その上にホログラム光学素子22を形成したものであるが、基板23がレンズ部23aを有している点で、平板状の基板21とは異なっている。また、使用時には、ホログラム基板2は、ホログラム光学素子22に対して基板23が光入射側に位置するように光学系中に配置される。
【0131】
レンズ部23aは、所定の光学的パワーを有しており、基板23においてホログラム光学素子22のホログラム非構成領域31と対応する位置に形成されている。このようなホログラム基板2は、レンズ部23a付きの基板23上にホログラム感光材料22aを貼り付けて2光束で露光することにより得られる。なお、基板23上にホログラム感光材料22aを貼り付ける場合、そのホログラム感光材料22aは、予めホログラム非構成領域31に対応する部分が除去された状態で基板23(レンズ部23a)と位置決めされて貼り付けられる。つまり、図12では、ホログラム非構成領域31が孔で構成されていることになる。なお、このようなホログラム感光材料22aを用いてホログラム光学素子22を作製する場合でも、ホログラム感光材料22aの露光方法自体は、上述した各種の方法を用いることができる。
【0132】
図12のようにホログラム基板2を構成した場合、基板23のレンズ部23aにて入射光を偏向(屈折)させた後に、その光をホログラム非構成領域31に入射させ、そこを透過させることができる。したがって、ホログラム構成領域32での入射光の回折、偏向を併せて考えると、ホログラム基板2全体として1つの集光レンズと等価なものを実現することができる。なお、レンズ部23aを設けることにより、ホログラム基板2全体の厚みが著しく増加することはない。
【0133】
(10.その他)
なお、本実施形態では、ホログラム感光材料22の露光を単色(532nm)の光で行った例について説明したが、露光時にRGBのレーザ光を用い、RGBに対応した3種類の干渉縞をホログラム感光材料22aに形成することにより、RGBの3色の光を回折するホログラム光学素子22を作製してもよい。この場合、RGBの出射光の強度ピークの波長がホログラム光学素子22におけるRGBの回折ピーク波長に近い光源12を用いることにより、配向特性の良好な薄型の白色光源モジュールを実現することができる。
【0134】
なお、本実施形態のホログラム光学素子22では、ホログラム構成領域32がホログラム非構成領域31の回りにリング状で形成されるので、ホログラム光学素子22を結像レンズ(例えば安価で薄型のピックアップの対物レンズなど)として用いることも可能となる。
【0135】
なお、本実施形態の手法でホログラム光学素子22を一旦作製した後は、これをマスターホログラムとして用いることにより、これとのコンタクトコピーで複製ホログラムを作製することも可能である。
【0136】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、以下での説明の便宜上、実施の形態1と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。本実施形態では、使用時にホログラム光学素子22のホログラム構成領域32にて回折、偏向されて出射される光が軸Aと平行でない場合、より詳しくは、ホログラム感光材料22aの露光時に用いる2光束として、両方ともホログラム感光材料22aに対する入射時に発散光となる光束を用いた場合について説明する。
【0137】
図13は、本実施形態のホログラム光学素子22の詳細な構成を示す断面図である。本実施形態のホログラム光学素子22は、点Pからの発散光をホログラム構成領域32にて回折、偏向したときに、上記発散光よりも放射角度(発散角度)の小さい光束が射出されるようにホログラム構成領域32を形成した点以外は、実施の形態1と同様の構成である。したがって、このホログラム光学素子22では、その使用時に、あたかも、軸A上の点であって点Pからより離れた位置の点Qに光源12が配置されてそこから光が出射されているかのような偏向角が実現されている。
【0138】
図14は、本実施形態のホログラム光学素子22を製造する際に用いる製造光学系の主要部の概略の構成を示す断面図である。この製造光学系は、露光時にホログラム感光材料22aに入射する2光束が両方とも発散光となるように構成されている。つまり、一方の発散光を生成する光学系の光路中には、集光レンズ41と、ピンホールミラー45とが配置されている。このとき、ピンホールミラー45は、反射膜51の孔51aが集光レンズ41の集光位置に位置するように配置されている。また、集光レンズ41の集光位置は、後述する集光レンズ46の集光位置よりもホログラム感光材料22aに光学的に近い位置となっている。これに対して、他方の発散光を生成する光学系の光路中には、集光レンズ46と、中央に孔47aを有するピンホール47(スペイシャルフィルタ)と、上記のピンホールミラー45とが配置されている。このとき、ピンホール47の孔47aは、集光レンズ46の集光位置に位置している。
【0139】
このような製造光学系において、一方の光束(例えばP偏光の参照光L1)を、集光レンズ41、ピンホールミラー45の反射膜51の孔51aを介してホログラム感光材料22aに入射させ、他方の光束(例えばP偏光の物体光L2)を、集光レンズ46、ピンホール47の孔47a、ピンホールミラー45を介してホログラム感光材料22aに入射させる。
【0140】
このとき、ピンホールミラー45の孔51aが集光レンズ41の集光位置に位置しているので、参照光L1は孔51aの位置で一旦集光され、そこから発散光となってホログラム感光材料22aにP偏光のまま入射する。また、ピンホール47の孔47aは集光レンズ46の集光位置に位置しているので、物体光L2は孔47aの位置で一旦集光され、そこから発散光となって、反射膜51の孔51aよりも大きな光束径でピンホールミラー45に入射する。そして、反射膜51(孔51a以外の部分)にて反射された光は、参照光L1と同軸でホログラム感光材料22aにP偏光の状態で入射するが、反射膜51の孔51aに入射した光は、そこを透過するため、ホログラム感光材料22aには入射しない。
【0141】
したがって、ホログラム感光材料22aにおいて、ピンホールミラー45の反射膜51の孔51aに対応する領域には、1光束のみ(参照光L1のみ)が入射するので、干渉縞は形成されない。一方、ホログラム感光材料22aにおいて、物体光L2の入射範囲内におけるピンホールミラー45の反射膜51の形成領域(孔51aを除く)と対応する領域には、2光束がともに同じ偏光状態(上記の例ではP偏光)で入射するので、2光束は互いに干渉し、干渉縞が形成される。つまり、作製されたホログラム光学素子22では、ピンホールミラー45の反射膜51の孔51aと対応してホログラム非構成領域31が形成され、そのホログラム非構成領域31を光軸回りに取り囲むようにホログラム構成領域32が形成される。
【0142】
しかも、ホログラム構成領域32は、発散光同士の干渉によって形成されるので、使用時にはホログラム構成領域32から発散光が出射される。より詳しくは、本実施形態では、製造光学系における集光レンズ41の集光位置は、集光レンズ46の集光位置よりもホログラム感光材料22aに光学的に近い位置となっているので、露光時の参照光L1の集光位置に対応する位置に光源12を配置したときには、光源12からの発散光よりも発散角度の小さい光(物体光L2と同じ光路の光)がホログラム構成領域32から出射される。
【0143】
このように、図14の製造光学系を用いてホログラム光学素子22を作製する場合には、露光時に用いる2光束は両者とも、ホログラム感光材料22aに対する入射時に発散光となる光束となるが、この場合であっても、ホログラム感光材料22aに対して2光束を同軸で入射させることができるとともに、ホログラム非構成領域31を光軸回りに取り囲むようにホログラム構成領域32を形成することができる。したがって、図14の製造光学系を用いてホログラム光学素子22を作製した場合でも、その使用時には光源12からの光の大部分を有効利用して明るい光源ユニットを実現できる、ホログラム光学素子22を介して得られる光の強度分布に極端にムラが生じるのを回避することができるなど、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0144】
また、本実施形態では、作製されたホログラム光学素子22の使用時には、光源12からの発散光よりも発散角度の小さい光がホログラム構成領域32から出射されるので、使用時にそのような光が要求される光学系に本実施形態のホログラム光学素子22は好適となる。
【0145】
〔実施の形態3〕
本発明のさらに他の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、以下での説明の便宜上、実施の形態1・2と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。本実施形態では、使用時にホログラム光学素子22のホログラム構成領域32にて回折、偏向されて出射される光が軸Aと平行でない場合、より詳しくは、ホログラム感光材料22aの露光時に用いる2光束として、ホログラム感光材料22aに対する入射時に発散光となる光束(例えば参照光L1)と収束光となる光束(例えば物体光L2)とを用いた場合について説明する。
【0146】
図15は、本実施形態のホログラム光学素子22の詳細な構成を示す断面図である。本実施形態のホログラム光学素子22は、点Pからの発散光をホログラム構成領域32にて回折、偏向したときに、全体として収束光が射出されるようにホログラム構成領域32を形成した点以外は、実施の形態1と同様の構成である。
【0147】
図16は、本実施形態のホログラム光学素子22を製造する際に用いる製造光学系の主要部の概略の構成を示す断面図である。この製造光学系は、露光時にホログラム感光材料22aに入射する2光束の一方が発散光となり、他方が収束光となるように構成されている。つまり、一方の発散光を生成する光学系の光路中には、集光レンズ41と、ピンホールミラー45とが配置されている。このとき、ピンホールミラー45は、反射膜51の孔51aが集光レンズ41の集光位置に位置するように配置されている。これに対して、他方の収束光を生成する光学系の光路中には、集光レンズ48と、上記のピンホールミラー45とが配置されている。このとき、集光レンズ48の集光位置は、ホログラム感光材料22aに対して集光レンズ41の集光位置とは反対側に設定されている。
【0148】
このような製造光学系において、一方の光束(例えばP偏光の参照光L1)を、集光レンズ41、ピンホールミラー45の反射膜51の孔51aを介してホログラム感光材料22aに入射させ、他方の光束(例えばP偏光の物体光L2)を、集光レンズ48、ピンホールミラー45を介してホログラム感光材料22aに入射させる。
【0149】
このとき、ピンホールミラー45の孔51aが集光レンズ41の集光位置に位置しているので、参照光L1は孔51aの位置で一旦集光され、そこから発散光となってホログラム感光材料22aにP偏光のまま入射する。また、物体光L2は集光レンズ48にて集光され、反射膜51の孔51aよりも大きな光束径でピンホールミラー45に入射する。このとき、物体光L2のうち、反射膜51(孔51a以外の部分)に入射した光はそこで反射され、参照光L1と同軸でホログラム感光材料22aにP偏光の状態で収束光として入射するが、反射膜51の孔51aに入射した光はそこを透過するため、ホログラム感光材料22aには入射しない。
【0150】
したがって、ホログラム感光材料22aにおいて、ピンホールミラー45の反射膜51の孔51aに対応する領域には、1光束のみ(参照光L1のみ)が入射するので、干渉縞は形成されない。一方、ホログラム感光材料22aにおいて、物体光L2の入射範囲内におけるピンホールミラー45の反射膜51の形成領域(孔51aを除く)と対応する領域には、2光束がともに同じ偏光状態(上記の例ではP偏光)で入射するので、2光束は互いに干渉し、干渉縞が形成される。つまり、作製されたホログラム光学素子22では、ピンホールミラー45の反射膜51の孔51aと対応してホログラム非構成領域31が形成され、そのホログラム非構成領域31を光軸回りに取り囲むようにホログラム構成領域32が形成される。
【0151】
しかも、ホログラム構成領域32は、発散光と収束光との干渉によって形成されるので、露光時の参照光L1の集光位置に対応する位置に発散光を出射する光源12を配置したときには、使用時にはホログラム構成領域32から収束光が出射される。
【0152】
このように、図16の製造光学系を用いてホログラム光学素子22を作製する場合には、露光時に用いる2光束の一方が発散光であり、他方が収束光となるが、この場合であっても、ホログラム感光材料22aに対して2光束を同軸で入射させることができるとともに、ホログラム非構成領域31を光軸回りに取り囲むようにホログラム構成領域32を形成することができる。したがって、図16の製造光学系を用いてホログラム光学素子22を作製した場合でも、その使用時には光源12からの光の大部分を有効利用して明るい光源ユニットを実現できる、ホログラム光学素子22を介して得られる光の強度分布に極端にムラが生じるのを回避することができるなど、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0153】
また、本実施形態では、作製されたホログラム光学素子22の使用時には、光源12として発散光を出射するものを用いているにもかかわらず、ホログラム構成領域32からはそこでの回折、偏向によって収束光が出射されるので、使用時にそのような光が要求される光学系に本実施形態のホログラム光学素子22は好適となる。
【0154】
なお、以上の各実施の形態で説明した構成や手法を適宜組み合わせてホログラム光学素子ひいては光源ユニットを構成したり、ホログラム光学素子を製造することも勿論可能である。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明の製法により作製されるホログラム光学素子は、例えば光源ユニットをはじめとする各種の照明装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】本発明の実施の一形態に係る光源ユニットに適用されるホログラム光学素子を製造する際に用いる製造光学系の主要部の概略の構成を示す断面図である。
【図2】上記光源ユニットの概略の構成を示す断面図である。
【図3】上記ホログラム光学素子の詳細な構成を示す断面図である。
【図4】上記製造光学系の偏光状態変換部材からホログラム感光材料に入射する光の光路を拡大して示す説明図である。
【図5】上記ホログラム光学素子の使用時における偏向角と回折効率との関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【図6】他のホログラム光学素子の使用時における偏向角と回折効率との関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【図7】上記製造光学系の主要部の他の構成を示す断面図である。
【図8】上記製造光学系の主要部のさらに他の構成を示す断面図である。
【図9】上記製造光学系の主要部のさらに他の構成を示す断面図である。
【図10】図9の製造光学系によって製造されたホログラム光学素子の概略の構成を示す断面図である。
【図11】上記ホログラム光学素子の他の構成を示す断面図である。
【図12】上記光源ユニットに適用されるホログラム基板の他の構成を示す断面図である。
【図13】本発明の他の実施の形態に係るホログラム光学素子の詳細な構成を示す断面図である。
【図14】上記ホログラム光学素子を製造する際に用いる製造光学系の主要部の概略の構成を示す断面図である。
【図15】本発明のさらに他の実施の形態に係るホログラム光学素子の詳細な構成を示す断面図である。
【図16】上記ホログラム光学素子を製造する際に用いる製造光学系の主要部の概略の構成を示す断面図である。
【図17】(a)は、従来の光源ユニットの概略の構成を示す断面図であり、(b)は、上記光源ユニットに用いられるホログラム光学素子の製造方法を示す断面図である。
【図18】上記ホログラム光学素子における偏向角の概念を模式的に示す説明図である。
【図19】上記ホログラム光学素子の使用時における偏向角と回折効率との関係をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0157】
12 光源
22 ホログラム光学素子
22a ホログラム感光材料
23 基板
23a レンズ部
31 ホログラム非構成領域
32 ホログラム構成領域
41 集光レンズ
42 PBS(光路合成手段)
43 偏光状態変換部材(偏光状態変換手段)
43a 第1の領域
43b 第2の領域
44 偏光状態変換部材(偏光状態変換手段)
44a 第1の領域
44b 第2の領域
45 ピンホールミラー(光路合成手段)
51 反射膜
51a 孔
L1 参照光
L2 物体光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラム感光材料を2光束で露光することにより体積位相型の透過型ホログラム光学素子を作製するホログラム光学素子の製造方法であって、
2光束のうちの少なくとも一方の光束として、ホログラム感光材料に対する入射時に発散光となる光束を用い、
ホログラム感光材料に対して2光束を同軸または略同軸で入射させることを特徴とするホログラム光学素子の製造方法。
【請求項2】
上記2光束は、光路合成手段で光路合成された後、ホログラム感光材料に入射することを特徴とする請求項1に記載のホログラム光学素子の製造方法。
【請求項3】
上記光路合成手段として、入射光を偏光状態に応じて透過または反射させる偏光ビームスプリッタを用い、
上記発散光を生成する光学系の光路中に、集光レンズと、上記偏光ビームスプリッタと、偏光状態変換手段とを配置し、
上記偏光状態変換手段は、
入射光の偏光状態を維持する第1の領域と、
入射光の偏光状態を変換する第2の領域とを有しており、
第1および第2の領域のうちの一方は、上記集光レンズの集光位置に位置し、他方は一方を光軸回りに取り囲むように形成されており、
一方の光束を、上記集光レンズ、上記偏光ビームスプリッタ、上記偏光状態変換手段の第1および第2の領域のうちで上記集光レンズの集光位置に位置する領域を介してホログラム感光材料に入射させ、
他方の光束を、上記偏光ビームスプリッタ、上記偏光状態変換手段の第1および第2の領域の両者を介してホログラム感光材料に入射させることを特徴とする請求項2に記載のホログラム光学素子の製造方法。
【請求項4】
上記偏光状態変換手段の第1の領域は、上記集光レンズの集光位置に位置し、第2の領域は第1の領域を光軸回りに取り囲むように形成されており、
第2の領域は、1/2波長板で構成されており、
第1の領域は、上記1/2波長板に形成される孔で構成されていることを特徴とする請求項3に記載のホログラム光学素子の製造方法。
【請求項5】
上記偏光状態変換手段の第2の領域は、上記集光レンズの集光位置に位置し、第1の領域は第2の領域を光軸回りに取り囲むように形成されており、
第1の領域は、透明基板で構成されており、
第2の領域は、1/2波長板で構成されていることを特徴とする請求項3に記載のホログラム光学素子の製造方法。
【請求項6】
上記光路合成手段として、孔を有する反射膜を透明基板上に形成したピンホールミラーを用い、
上記発散光を生成する光学系の光路中に、集光レンズと、上記ピンホールミラーとを配置するとともに、上記反射膜の孔が上記集光レンズの集光位置に位置するように上記ピンホールミラーを配置し、
一方の光束を、上記集光レンズ、上記ピンホールミラーの反射膜の孔を介してホログラム感光材料に入射させ、
他方の光束を、上記ピンホールミラーに対して反射膜の孔よりも大きな光束径で上記反射膜の孔を含む領域に入射させ、上記反射膜にて反射された光束をホログラム感光材料に入射させることを特徴とする請求項2に記載のホログラム光学素子の製造方法。
【請求項7】
ホログラム感光材料に入射する2光束をそれぞれ生成する光学系の光軸は、作製されたホログラム光学素子の使用時の光学系と同軸であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のホログラム光学素子の製造方法。
【請求項8】
ホログラム感光材料の露光時に用いる2光束の両者として、ホログラム感光材料に対する入射時に発散光となる光束を用いることを特徴とする請求項1または2に記載のホログラム光学素子の製造方法。
【請求項9】
ホログラム感光材料の露光時に用いる2光束のうち、一方の光束として、ホログラム感光材料に対する入射時に発散光となる光束を用い、他方の光束として、ホログラム感光材料に対する入射時に収束光となる光束を用いることを特徴とする請求項1または2に記載のホログラム光学素子の製造方法。
【請求項10】
体積位相型の透過型ホログラム光学素子であって、
請求項1から9のいずれかの製造方法によって製造されてなることを特徴とするホログラム光学素子。
【請求項11】
体積位相型の透過型ホログラム光学素子であって、
ホログラムが構成されないホログラム非構成領域と、
ホログラムが構成されるホログラム構成領域とを有しており、
ホログラム構成領域は、ホログラム非構成領域を取り囲むように形成されていることを特徴とするホログラム光学素子。
【請求項12】
ホログラム構成領域に入射する光線と、その光線がホログラム構成領域にて回折、偏向されて出射される場合の出射光線の延長線とのなす角度のうち、鋭角のものを偏向角とすると、
ホログラム構成領域における偏向角の絶対値は、5°以上であることを特徴とする請求項11に記載のホログラム光学素子。
【請求項13】
ホログラム構成領域を構成する元となるホログラム感光材料は、フォトポリマーで構成されていることを特徴とする請求項12に記載のホログラム光学素子。
【請求項14】
ホログラム構成領域に入射する光線と、その光線がホログラム構成領域にて回折、偏向されて出射される場合の出射光線の延長線とのなす角度のうち、鋭角のものを偏向角とすると、
ホログラム構成領域における偏向角の絶対値は、ホログラム構成領域における1次光の回折効率が最大回折効率の50%以上となる角度であることを特徴とする請求項11に記載のホログラム光学素子。
【請求項15】
回転対称であることを特徴とする請求項10から14のいずれかに記載のホログラム光学素子。
【請求項16】
該ホログラム光学素子は、透明基板上に形成されたホログラム感光材料を2光束で露光することによって作製されており、
上記透明基板は、該基板の一部にレンズ部が形成されたレンズ付き基板であり、
上記レンズ部は、ホログラム非形成領域に対応して位置していることを特徴とする請求項10から15のいずれかに記載のホログラム光学素子。
【請求項17】
光源と、
光源の前方に配置される体積位相型の透過型ホログラム光学素子とを備え、
上記ホログラム光学素子は、請求項10から16のいずれかに記載のホログラム光学素子で構成されていることを特徴とする光源ユニット。
【請求項18】
上記ホログラム光学素子を作製する元となるホログラム感光材料の露光時に用いる2光束の波長は、使用時の上記光源から出射される光のピーク波長の±20nm以内であることを特徴とする請求項17に記載の光源ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−275867(P2008−275867A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118892(P2007−118892)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】