説明

ホログラム光学素子用原盤

【課題】ホログラム光学素子原盤について、原盤や複製用記録層の基板厚、及びホログラム光学素子の回折角の自由な設計が可能であり、複製の際に原盤直前に集光レンズを必要としないホログラム光学素子原盤を提供する。
【解決手段】本発明の原盤は、特定の方向からの再生光35の入射により、原盤に対して垂直方向に回折する1次回折光36aと、原盤に対して斜め方向に回折する1次回折光36bを生成する。原盤からの回折光同士の二光束干渉により、ホログラム光学素子を複製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム光学素子用原盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、およびBD(Blu-ray Disc)などのように、光情報記録再生用の光源の波長が異なり、複数規格の光ディスクが普及している。この記録再生機器をノートパソコンなどの電子機器に組み込む際には、小型化および薄型化が求められ、記録再生機器における各波長に対応した光ピックアップ装置も同様に小型化および薄型化することが求められている。さらには、各光ディスク用の記録再生機器を一体化し、全ての光ディスクの記録再生が行える記録再生機器を組み込む際には、光ピックアップの薄型化がより一層求められる。薄型化した光ピックアップ装置を提供するために、回折光学素子を用いて、光ディスクからの戻り光をフォーカス信号用の受光素子とトラック信号用の受光素子とに回折させる手法が提案されている。
【0003】
図15に、光ピックアップ装置の概略図を示す。光ピックアップ装置は、たとえば次のように構成される。光ピックアップ装置は、光源である半導体レーザ10,11と、ダイクロイックミラー12と、コリメータレンズ9と、回折格子8と、ビームスプリッタ5と、1/4波長板3と、対物レンズ2と、センサレンズ4と、回折光学素子6と、受光素子7とを含む。光ピックアップ装置において、半導体レーザ10から放射される光は、コリメータレンズ9によって略平行光にされ、回折格子8によって少なくとも0次透過光と、1次回折光とに回折される。回折格子8から出射された光は、ビームスプリッタ5を透過し、1/4波長板3によって円偏光に変換され、対物レンズ2によって集光されて光ディスク1上に照射される。光源である半導体レーザ11は半導体レーザ10とは異なる波長であり、ダイクロイックミラー12により半導体レーザ10の光軸と結合し、同様に光ディスク1上に照射される。光ディスク1からの反射光は再び1/4波長板3によって入射時と90°回転した直線偏光に変換され、ビームスプリッタ5により反射し、センサレンズ4によって集束し、回折光学素子6により一部回折され、受光素子7に入射する。受光素子7のそれぞれは、フォーカス信号用もしくはトラック信号用である。
【0004】
より薄型な光ピックアップ装置を提供するためには、光束分離に係る回折光学素子6の回折角を大きくする必要があるが、短波長の戻り光を大きい回折角で回折するためには回折光学素子6のピッチを微小化することが必要であり、フォトリソグラフィ技術による製作が非常に困難である。そのため、特開2005−11478号公報のように、二光束干渉法により屈折率格子を光記録材料に記録したホログラム光学素子を光ピックアップ装置の回折光学素子として用いることが注目されている。二光束干渉法で作成したホログラム光学素子は、回折角の自由な設計が可能であり、高い回折効率を実現することも可能である。また、フォトリソグラフィ技術で作成したレリーフ型ホログラム素子では、多層ディスク利用時において、非再生層からの反射光がレリーフ型ホログラム素子上で回折され、迷光が発生してしまう。二光束干渉法で作成した体積型ホログラム光学素子では、非再生層からの反射光が再生層からの反射光と位相状態が異なるために、体積型ホログラム光学素子上で回折されず、記録再生時の迷光を抑制することも可能である。
【0005】
このようなホログラム光学素子の作製は、フォーカス信号用やトラック信号用の光束に分離するためのセクターマスクを介し、光ピックアップの基となる0次透過光と同等の光束と、各受光素子へ入射する光束との二光束を光記録材料上で干渉させることで行う。複数の箇所に焦点位置を有するようなホログラム光学素子を作製するためには、煩雑な作製工程を必要とするため、光学素子を作製するための原盤を予め作製し、その原盤を介して、ホログラム光学素子を複製、大量製造する方法が注目されている。特開2005−11478号公報では前記セクターマスクを記録材料の直前に配置し、二光束干渉露光により原盤を作製し、ホログラム光学素子の複製を行っている。より詳細には、原盤と複製用記録材料を略密着させ、原盤の0次透過光と0次透過光から生じる1次回折光との二光束を同様に複製用記録材料上で干渉させることで複製を行っている。特開2005−331758号公報に記載された複製法においては、原盤の0次透過光と1次回折光とが複製用記録材料上で所望の重なりとなるよう、原盤上のホログラム領域間に隙間を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−11478号公報
【特許文献2】特開2005−331758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように二光束干渉法でホログラム光学素子を作製において、前記二光束はいずれも集束光であり、セクターマスクで切り欠いた円形状でない光束であるため、所望のホログラム光学素子となるよう重ね合わせることが困難である。特開2005−11478号公報においては、原盤と複製用記録材料を略密着させ複製を行っているが、回折角を大きくするよう二光束間の角度を大きくとると、前記略密着間にある原盤用並びに複製用記録材料用の基板が厚い場合、基板厚分の光路で二光束が離れるため、複製用記録材料内での二光束を重ね合わせるが困難となる。このように、基板の厚みと回折角とを十分自由に設計できないことが問題である。また、異なる複製法として特開2005−11478号公報において、原盤と複製用記録材料との間にリレーレンズ系を組むことで、原盤の0次透過光と1次回折光を複製する記録材料内で二光束干渉露光する方法が記載されている。この手法においては、リレーレンズと原盤との光軸調整が容易でなく、また1つのホログラム光学素子複製につき1対のリレーレンズを要するため、複製が非効率である。
【0008】
また、特開2005−331758号公報の実施例に記載されている複製法においては、原盤の0次透過光と1次回折光とが複製用記録材料上で所望の重なりとなるよう、原盤上のホログラム領域間に隙間を設けているが、原盤を再生する際に、集光レンズを使用しているため、1つの原盤に対し、1つの集光レンズを要するため、同様に原盤とレンズとの光軸調整が困難である。また、大量生産を図る際に、複数の同原盤を用意すると、原盤の数だけ集光レンズを必要とし、複製が非効率である。
【0009】
本発明は上記事情を鑑みなされたもので、その目的は、光ピックアップ用のホログラム光学素子を複製するホログラム光学素子用原盤について、原盤や複製用記録材料の基板厚、及びホログラム光学素子の回折角の自由な設計が可能であり、複製の際に原盤直前に集光レンズを必要としないホログラム光学素子用原盤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るホログラム光学素子用原盤は、入射光が入射される第1ホログラム記録層を備え、入射光が入射されることで、ホログラム光学素子の第2ホログラム記録層に干渉縞を形成可能なホログラム光学素子用原盤である。上記第1ホログラム記録層は、入射光を回折し、第1回折光を射出する第1回折パターンと、入射光を回折し、第2回折光を射出する第2回折パターンとを含む。上記第1回折光の少なくとも一部と第2回折光の少なくとも一部とは互いに交差する。
【0011】
上記第1ホログラム記録層は、厚み方向に配列する第1主表面および第2主表面を含む。上記入射光は、第1主表面に入射され、第1回折光および第2回折光は、第2主表面から射出される。上記第1回折光は、第2主表面に対して垂直な方向に射出される光束を含み、第2回折光は、第2主表面に対して斜めに射出される光束を含む。好ましくは、上記入射光は、平面波であり、第1回折光は、第1焦点に集光し、第2回折光は、第2焦点に集光する。
【0012】
好ましくは、上記第1焦点および第1回折パターンとの間に位置し、第1回折光が通る第1領域と、第2焦点および第2回折パターンとの間に位置し、第2回折光が通る第2領域とが重なる。
【0013】
好ましくは、上記第1焦点と第2焦点とは、第1ホログラム記録層に対して平行な仮想平面上に配列する。
【0014】
好ましくは、上記第1ホログラム記録層に形成され、入射光を回折させると共に入射光が回折した回折光を第3焦点に集光させる第3回折パターンをさらに備える。上記第3焦点および第3回折パターンの間に位置し、第3回折パターンによって回折した第3回折光が通る第3領域と第1領域とは交差する。
【0015】
好ましくは、上記第1焦点、第2焦点および第3焦点は、第1ホログラム記録層に対して平行な仮想平面上に配列し、第3焦点は、第1焦点および第2焦点を通る仮想軸線から離れた位置に設けられる。
【0016】
好ましくは、上記第1回折パターンの一部と、第2回折パターンの一部および第3回折パターンの一部が互いに重なる。
【0017】
好ましくは、上記第1ホログラム記録層は二光束干渉法により干渉縞が記録される体積型ホログラムである。
【0018】
好ましくは、上記第1回折パターンおよび第2回折パターンが複数設けられる。
ホログラム光学素子用原盤の製造方法としては、たとえば、入射光を回折させる第1回折パターン、および入射光を回折させる第2回折パターンが形成された第1ホログラム記録層を備え、第1回折パターンによって回折した第1回折光の少なくとも一部と、第2回折パターンによって回折した第2回折光の少なくとも一部とが互いに交差するホログラム光学素子用原盤を準備する工程を備える。ホログラム光学素子用原盤の製造方法は、第1回折光および第2回折光が交差する位置に第2ホログラム記録層を配置する工程と、第1ホログラム記録層に対して所定の入射角度で光を入射し、第1回折光および第2回折光の干渉縞を第2ホログラム記録層に形成する工程とを備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明のホログラム光学素子用原盤によれば、光ピックアップ用のホログラム光学素子を複製する際に、原盤や複製用記録材料の基板厚、及びホログラム光学素子の回折角の自由な設計が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)はホログラム光学素子の概要を示す平面図であり、(b)はホログラム光学素子の側面図である。
【図2】(a)は、ホログラム光学素子の原盤を模式的に示す平面図であり、(b)は、ホログラム光学素子の製造工程を模式的に示す側面図である。
【図3】本発明のホログラム光学素子の原盤を示す模式図である。
【図4】本発明の原盤を用いたホログラム光学素子の製造方法を示す模式図である。
【図5】本発明の原盤を用いたホログラム光学素子の大量製造方法を示す模式図である。
【図6】本発明の原盤の作製方法、第1工程を示す模式図である。
【図7】本発明の原盤を作製するための、セクターマスクの構成例である。
【図8】本発明の原盤の作製方法、第2工程を示す模式図である。
【図9】本発明の原盤の作製方法、第3工程を示す模式図である。
【図10】本発明の原盤の作製方法、第4工程を示す模式図である。
【図11】本発明の原盤の作製方法、第5工程を示す模式図である。
【図12】カップリングプリズムを用いた、原盤の作製方法を説明するための図である。
【図13】(a)本発明の原盤を作製する製造装置を示す模式図であり、(b)は(a)に示す状態から駆動した後の製造装置を示す模式図である。
【図14】本発明の原盤を作製するための、第2の製造装置を示す模式図であり、(b)は、(a)に示す状態から駆動した状態を示す模式図である。
【図15】光ピックアップの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る光学素子について、ホログラム光学素子用原盤およびホログラム光学素子の製造方法などについて説明する。
【0022】
(ホログラム光学素子の原盤)
本発明のホログラム光学素子の原盤について、図1および図2を用いて説明する。図1(a)は、ホログラム光学素子の概要を示す平面図であり、図1(b)は、ホログラム光学素子の側面図である。
【0023】
図1(b)に示すように、ホログラム光学素子21は、ホログラム記録層23と、このホログラム記録層23の両側に配置され、ホログラム記録層23を封止する基板24とを含む。基板24は、ガラスやポリカーボネイトなどの透明基板であっても良い。あるいは、ホログラム記録層23の片面を保護膜で覆うようにしてもよい。図1(a)に示すように、ホログラム記録層23には、集合屈折率格子(集合回折パターン)22が形成されている。集合屈折率格子22は、複数の屈折率格子(回折パターン)22b,22c,22d1,22d2,22e1,22e2を含む。この図1に示す例においては、集合屈折率格子22の外周縁部は、円形となるように形成されている。
【0024】
ホログラム光学素子21に対し、0次透過光26が垂直に入射することで、各屈折率格子22b,22c,22d1,22d2,22e1,22e2から0次透過光26と、1次回折光27b,27c,27d1,27d2,27e1,27e2が出射される。
【0025】
0次透過光26は、焦点28aに集光する。1次回折光27bは、焦点28bに集光し、1次回折光27cは、焦点28cに集光する。1次回折光27d1,27d2は、焦点28dに集光し、1次回折光27e1,27e2は、焦点28eに集光する。なお、この図1(a),(b)に示す例においては、各焦点28a〜28eには、受光素子20a〜20eが配置されている。受光素子20a〜20eを、ホログラム記録層23に対して平行な仮想平面上に配置できるよう、各焦点28a〜28eは前記仮想平面上に配列する。
【0026】
図2(a)は、ホログラム光学素子を製造する際に用いる原盤32を模式的に示す平面図であり、図2(b)は、ホログラム光学素子の原盤32の側面図であり、原盤32とホログラム光学素子21との相対的な位置関係を示す側面図である。図2(a)に示された原盤32は、図1(a)に示すホログラム光学素子21の集合屈折率格子22を記録するための原盤であり、再生光と同等の光束を原盤32に照射することで、二光束干渉により、集合屈折率格子22の各屈折率格子を記録する。図2に示すように、原盤32は、ホログラム記録層33と、ホログラム記録層33を封止する基板34とを含む。基板34は、ガラスやポリカーボネイトなどの透明基板であっても良い。あるいは、ホログラム記録層33の片面を保護する保護膜で覆うようにしてもよい。
【0027】
図2(a)に示すうように、ホログラム記録層33には、集合屈折率格子(集合回折パターン)30が形成されており、集合屈折率格子30は、複数の屈折率格子(回折パターン)30a,30b,30c,30d1,30d2,30e1,30e2が形成されている。原盤32の屈折率格子30a,30b,30c,30d1,30d2,30e1,30e2に対し、特定の方向から平面波である再生光35を原盤32の一方の主表面から入射することで、再生光35が屈折率格子30a,30b,30c,30d1,30d2,30e1,30e2で回折する。そして、1次回折光36a,36b,36c,36d1,36d2,36e1,36e2が原盤32の他方の主表面から出射する。
【0028】
屈折率格子30a,30b,30c,30d1,30d2,30e1,30e2は、図1における焦点28a〜28eから、各焦点28a〜28eに対応する0次透過光26および1次回折光27b,27c,27d1,27d2,27e1,27e2の進行方向と反対の方向へ0次透過光26および1次回折光27b,27c,27d1,27d2,27e1,27e2を伸ばした各仮想光と、図2(b)に示すホログラム記録層33とが交差する位置に形成されている。そして、屈折率格子30aの一部と、屈折率格子30bの一部と、屈折率格子30d2の一部とが互いに重なっている。
【0029】
図2(b)において、焦点37a〜37eと、図1(b)の焦点28a〜28eとが一致している。そして、図1(b)に示す0次透過光26および各屈折率格子22b,22c,22d1,22d2,22e1,22e2は、図2(b)に示す1次回折光36a,36b,36c,36d1,36d2,36e1,36e2と重なる。
【0030】
屈折率格子30a,30b,30c,30d1,30d2,30e1,30e2は、再生光35と同等な光束と、1次回折光36a,36b,36c,36d1,36d2,36e1,36e2と同等な光束との二光束干渉により記録される。
【0031】
さらに、詳細については、後述するが、図1(a)および図2(b)において、集合屈折率格子22は、屈折率格子(第1回折パターン)30aからの1次回折光36aが通る位置にホログラム記録層23を配置すると、図1(a)に示す屈折率格子(第1回折パターン)22bは、図2(a)に示す屈折率格子30bからの1次回折光36bと、屈折率格子30aからの1次回折光36aとが交差する領域に形成される。
【0032】
図1(a)に示す屈折率格子22cは、図2(a)に示す屈折率格子30cからの1次回折光36cと屈折率格子30aからの1次回折光36aとが交差する領域に形成される。図1(a)に示す屈折率格子22d1は、図2(a)に示す1次回折光36aと、屈折率格子30d1からの1次回折光36d1とが交差する領域に形成される。図1(a)に示す屈折率格子22d2は、図2(a)に示す1次回折光36aと、屈折率格子(第3回折パターン)30d2からの1次回折光36d2とが交差する領域に形成される。図1(a)に示す屈折率格子22e1は、図2(a)に示す1次回折光36aと、屈折率格子30e1からの1次回折光36e1とが交差する領域に形成される。図1(a)に示す屈折率格子22e2は、図2(a)に示す1次回折光36aと、屈折率格子30e1からの1次回折光36e2とが交差する領域に形成される。
【0033】
なお、図2(a)に示す屈折率格子を適宜変更することで、ホログラム光学素子21の集合屈折率格子22を適宜変更することができる。
【0034】
(原盤を用いたホログラム光学素子の製造方法)
本発明の原盤を用いたホログラム光学素子の複製方法について、図3から図5を用いて説明する。図3は、ホログラム光学素子の製造方法を示す模式図である。なお、この図3から図5に示すホログラム光学素子の製造方法においては、説明をわかり易くするために、集合屈折率格子30のうち、屈折率格子30a,30bに着目して説明しており、図3は、図2の原盤32から放射される回折光の光束のうち、1次回折光36aおよび1次回折光36bのみを抜粋して示したものである。
【0035】
まず、原盤32を準備する。原盤32は、厚さ方向に配列する2つの主表面を含むホログラム記録層33と、ホログラム記録層33の各主表面に配置された基板34とを含む。そして、原盤32から所定の間隔をあけて複製用記録素子45を配置する。当然のことながら、複製用記録素子45を配置した後、原盤32を複製用記録素子45から間隔をあけて配置してもよい。複製用記録素子45は、厚さ方向に対向する2つの主表面を有する基板43と、基板43の主表面のうち、原盤32と対向する主表面に形成されたホログラム記録層46とを含む。
【0036】
そして、原盤32に対して、特定の方向から平面波である再生光35を入射させる。原盤32のホログラム記録層33には、屈折率格子30a,30bが記録されており、集束光が回折して、1次回折光36a、36bが屈折率格子30a,30bから放射される。
【0037】
1次回折光36aは、光ピックアップにおいて、ホログラム光学素子を透過する0次透過光と同等な光束であり、1次回折光36bは、光ピックアップにおいて、受光素子20bに入射する1次回折光と同等な光束である。1次回折光36aは、ホログラム記録層33の主表面のうち、複製用記録素子45と対向する主表面に対して垂直に進む光束を含む。
【0038】
1次回折光36bは、ホログラム記録層33の主表面のうち、複製用記録素子45と対向する主表面に対して傾斜した方向に進む光束を含む。
【0039】
そして、1次回折光36bの少なくとも一部と、1次回折光36bの少なくとも一部とが交差し、互いに干渉する。
【0040】
1次回折光36a、36bが干渉する領域にホログラム記録層46を配置することで、ホログラム記録層46に屈折率格子22bが記録される。換言すれば、屈折率格子30aおよび焦点37aの間に位置し、1次回折光36aが通る領域と、屈折率格子30bおよび焦点37bの間に位置し、1次回折光36bが通る領域とが重なり、各領域が重なる部分に屈折率格子22bが形成される。なお、焦点37bと焦点37bとは、仮想平面S上に位置している。仮想平面Sは、ホログラム記録層33の主表面のうち、複製用記録素子45側に位置する主表面と平行である。
【0041】
複製用記録素子45の原盤32側の表面に、ガラスやポリカーボネイトなどの透明基板が設けてもよく、ホログラム記録層46を保護する保護膜で覆ってもよい。さらには、複製用記録素子45の原盤32側の表面にホログラム記録層46を整形した際の離型剤が塗付された状態でも良い。再生光35は回折光を生成した後、反射面49により反射される。これにより、再生光35は複製用記録素子45に入射しないため、不要な露光を防ぐことができる。
【0042】
なお、この図3は、原盤32を簡略化しており、屈折率格子30aからの1次回折光36aと、屈折率格子30bからの1次回折光36bとが完全に重なり合うように示されているが、これは、説明をわかり易くするために示したものであり、1次回折光36bは、1次回折光36aの一部と交差している。
【0043】
図2(a),(b)に示すように、ホログラム記録層33には、屈折率格子30bの他にも複数の屈折率格子30c〜30e2が形成されている。そして、図2(a),(b)に示すように、屈折率格子30cからの1次回折光36cと、屈折率格子30aの一部とが交差する。そして、1次回折光36cと屈折率格子30aの一部とが交差する領域に図3に示すホログラム記録層46が位置している。そして、ホログラム記録層46には、1次回折光36aの一部と1次回折光36cとによって形成される干渉縞によって、図1(a)に示す屈折率格子22cが形成される。
【0044】
同様に、図2(a),(b)に示す屈折率格子30aからの1次回折光36aの一部と、屈折率格子30d1,30d2からの1次回折光36d1,36d2とが交差する。そして、1次回折光36aの一部と1次回折光36d1,36d2とが交差する部分に、図3に示すホログラム記録層46が位置している。そして、1次回折光36aの一部と、1次回折光36d1,36d2との干渉縞によって、図1に示す屈折率格子22d1,22d2が形成される。
【0045】
同様に、図2(a),(b)に示す屈折率格子30aからの1次回折光36aの一部と、屈折率格子30e1,30e2からの1次回折光36e1,36e2とが交差する。そして、1次回折光36a1の一部と、1次回折光36e1,36e2とが交差する部分に、図3に示すホログラム記録層46が位置している。そして、1次回折光36aの一部と1次回折光36e1,36e2との干渉縞とによってホログラム記録層46に図1に示す
屈折率格子22e1,22e2が形成される。
【0046】
このように、図3の原盤32から回折される光束のうち、1次回折光36c,36d1,36d2,36e1,36e2も同様に再生光35を入射することにより生成され、複製用記録素子45上において、1次回折光36aと干渉することで、屈折率格子30c,30d1,30d2,30e1,30e2が記録される。この結果、ホログラム記録層46には、図1(a)に示す集合屈折率格子22が形成される。すなわち、原盤32は再生光35を入射することによりホログラム光学素子作製に必要な全光束を生成し、不要な光束を反射するマスクとして機能する。このとき、再生光35の原盤32に対する入射角は、1次回折光36b、および図4に図示しない、図3の1次回折光36c〜eと同等な光束の原盤32に対する回折角の最大値よりも大きいことが好ましい。より好ましくは、再生光35の原盤32に対する入射角を、反射面49の全反射角とする。
【0047】
図4は、ホログラム光学素子を大量に製造する製造方法を示す模式図である。なお、この図4においても、説明をわかり易くするために、集合屈折率格子30のうち、屈折率格子30a,30bに着目して説明しており、他の屈折率格子30c,30d1,30d2,30e1,30e2は図示していない。この図4に示す原盤51は、複数のホログラム光学素子21を一度に製造するときに製作する際に用いられるホログラム光学素子の原盤である。
【0048】
原盤51は、基板52と、基板52の主表面上に形成されたホログラム記録層53と、ホログラム記録層53上に配置された基板54とを含む。ホログラム記録層53には、複数の集合屈折率格子30が形成されている。なお、この図4においては、原盤51には互いに等しい複数の屈折率格子30a,30bが同一平面上に記録されている。なお、この図4には図示していないが、他の屈折率格子30c,30d1,30d2,30e1,30e2も各々複数形成されている。原盤51および複製用記録素子55を互いに間隔をあけて配置する。複製用記録素子55は、基板58と、基板58の主表面上に形成されたホログラム記録層56とを含む。
【0049】
そして、原盤51に対して、特定の方向から平面波である再生光35を入射させる。再生光35の入射により、互いに等しい複数の集束光である1次回折光36a、および複数の回折光36bが発生する。回折光36a、36bが干渉する領域において干渉縞を記録する複製用記録素子55を配置することで、ホログラム記録層56に互いに等しい複数の干渉縞57を一度に記録することができ、複数の屈折率格子22bが形成される。なお、ホログラム記録層56は、屈折率格子(干渉縞57)が記録される位置に、点状に塗布しても良い。
【0050】
同様に、図示しない集合屈折率格子30の屈折率格子30c,30d1,30d2,30e1,30e2からの1次回折光36c,36d1,36d2,36e1,36e2と、屈折率格子30aの1次回折光36aとの干渉縞が、ホログラム記録層56に記録される。また、複数の屈折率格子30aからの1次回折光36aによって、複数の屈折率格子が形成される。この結果、ホログラム記録層56には、集合屈折率格子22が形成される。
【0051】
図5は、ホログラム光学素子の製造装置を示す模式図である。レーザ光を射出する光源60から発振したレーザ光はスペイシャルフィルタおよびコリメータレンズ(図示せず)によりコリメートされ、ミラー61によりエキスパンダレンズ62へ導かれる。アパーチャ63、およびカップリングプリズム64を透過し、原盤51へ入射する。原盤51に再生光が入射することにより、前記のように複数の1次回折光が回折され、回折光同士による干渉縞がホログラム記録層に屈折率格子として記録される。なお、カップリングプリズム64はなくてもよい。
【0052】
なお、ホログラム記録層に対して二光束干渉露光をする際、記録層内に含まれる酸素が光重合反応の妨げるため、露光前にLEDなどのインコヒーレントな光をホログラム光学素子が記録される領域に一時照射する。記録に用いるレーザ光をコヒーレント長以上離し、前記記録される領域を照射しても良いが、同光源を使用する場合、コヒーレント長以上の光路長とするため複数のミラーを介する必要があり、迷光の原因にもなりやすいため、別光源を使用することが好ましい。また、複製用記録層を二光束干渉露光した後、更なる反応を抑制するために、前記インコヒーレント光を同様に照射する。この照射により、記録した干渉縞を固定することができる。図5には前記インコヒーレント光を発生する光源を図示しないが、例えば複製用記録素子55の原盤51と略密着しない面の直前に配置し、二光束干渉露光する際には、記録光軸上に配置されないよう退避可能に駆動すると良い。また、例えば前記回折光の妨げとならない位置に前記インコヒーレント光を発生する光源を配置し、前記回折光の妨げとならない位置に配置したミラーを介し、前記複製用記録素子55の原盤51と略密着しない面から前記記録される領域を照射しても良い。
【0053】
(原盤の作製方法)
本発明の原盤の作製方法について、図6〜図11を用いて説明する。図6(a)は原盤の作製方法の第1工程を模式的に示す側面図であり、(b)は、原盤の作製方法の第1工程を模式的に示す平面図である。
【0054】
まず、第1の記録光72aと参照光73の二光束干渉露光により、原盤用記録素子74のホログラム記録層75に第1の屈折率格子30aを記録する。第1の記録光72aは、レーザ光をセクターマスク70a、および対物レンズ71を透過させることで生成する。ここでは第1の記録光72aは、図3の1次回折光36a(図2(b)に示す0次透過光26)と同等な光束としている。第1の記録光72aも、1次回折光36aと同様に、焦点78aに集光する。
【0055】
ホログラム記録層75は、基板76の主表面上に平板状に形成されており、第1の記録光72aが照射される第1主表面と、第1主表面と反対側に位置する第2主表面とを含む。
【0056】
ホログラム記録層75の第1主表面は、第1の記録光72aの光軸に対し垂直となるように配置されている。参照光73は、ホログラム光学素子の複製に用いる再生光と同じ入射角度で原盤へ入射する平行光である。また、ホログラム記録層75において、二光束を入射する表面は、ガラスやポリカーボネイトなどの透明基板であっても良く、ホログラム記録層75を保護する保護膜で覆われていても良く、またホログラム記録層75を整形した際の離型剤が塗付された状態でも良い。
【0057】
なお、図7(a)〜(e)は、セクターマスクを示す平面図である。図7(a)に示す
セクターマスク70aは、屈折率格子30aを形成する際に用いられるマスクであって、セクターマスク70aには、第1の記録光72aが通る円形状の穴部が形成されている。
【0058】
図8(a)は原盤の作製方法の第2工程を模式的に示す側面図であり、図8(b)は、原盤の製作方法の第2工程を模式的に示す平面図である。なお、図8(b)は、第2の記録光72cの光軸方向から原盤用記録素子74を見たときの平面図である。第2の記録光72cおよび参照光73の二光束干渉露光により、原盤用記録素子74のホログラム記録層75に第2の屈折率格子30cを記録する。第2の記録光72cは、レーザ光をセクターマスク70c、および対物レンズ71を透過させることで生成する。第2の記録光72cは、図2(a)の回折光36cと同等な光束としている。第2の記録光72cも、焦点78cに集光する。
【0059】
ここで、図8(a)に示す原盤用記録素子74は、図6(a)に示す状態から紙面に対して垂直な仮想軸線を中心に回転させるとともに、対物レンズ71に近接するようにシフトさせている。
【0060】
図8(a)中の焦点78a1は、原盤用記録素子74と同様に、図6(a)に示す焦点78aを原盤用記録素子74と同様に回転およびシフトさせたときの位置である。
【0061】
焦点78a1および焦点78cは、ホログラム記録層75の主表面と平行な仮想平面S上に配列する。焦点78a1および焦点78cの相対的な位置関係は、図1(b)に示す受光素子20aおよび受光素子20cの相対的な位置関係と一致する。
【0062】
参照光73は、ホログラム記録層75に対し第1工程と同じ入射角度で入射する平行光である。すなわち、ホログラム記録層75の主表面に対して参照光73が同方向に入射するよう、原盤用記録素子74をシフト、傾斜、回転させた量と同じだけ参照光73をシフト、傾斜、回転させている。このため、図6(a)および図7(a)に示すいずれの状態においても、参照光73が、ホログラム記録層75に入射する入射角度は一致している。さらに、ホログラム記録層75の主表面に対して垂直な方向からホログラム記録層75を見たときに、参照光73が参照光73に対して入射する平面的な方向も一致している。
【0063】
すなわち、ホログラム記録層75を基準とすると、参照光73は、常に同一の入射角度および方向からホログラム記録層75に入射している。なお、図8(a)に示すセクターマスク70cには、図7(c)に示すように、セクターマスク70aの開口部の一部に相当するような穴部が形成されている。
【0064】
図9(a)は原盤の作製方法の第3工程を模式的に示す側面図であり、図9(b)は、原盤の作製方法の第3工程を模式的に示す平面図である。なお、この図9(b)は、第3の記録光72bの光軸方向から原盤用記録素子74を平面視した平面図である。第3の記録光72bと参照光73の二光束干渉露光により、原盤用記録素子74のホログラム記録層75に第3の屈折率格子30bを記録する。第3の記録光72bは、レーザ光をセクターマスク70b、および対物レンズ71を透過させることで生成する。ここでは第3の記録光72bは、図3の回折光36bと同等な光束としており、第3の記録光72bは、焦点78bに集光する。セクターマスク70bは、図7(b)に示すように、セクターマスク70aに形成された穴部の一部に相当する穴部が形成されている。第3の記録光72bは、セクターマスク70bに形成された穴部を通る。
【0065】
この図9に示すように屈折率格子30bを形成するときには、図8に示す状態から原盤用記録素子74を移動させる。図9(a)に示す焦点78a2,78c1は、図8(a)に示す焦点78a1,78cを原盤用記録素子74の移動と共に移動させたときの仮想点である。そして、焦点78b,78a2,78c1同士の相対的な位置関係は、図1(b)に示す焦点28b,28a,28c同士の相対的な位置関係となっている。
【0066】
すなわち、焦点78b,78a2,78c1同士間の間隔が受光素子20b,20a,20c同士間の間隔となるように、原盤用記録素子74は図8に示す状態から移動している。
【0067】
参照光73は、ホログラム記録層75に対し第1工程と同じ入射角度で入射する平行光である。すなわち、ホログラム記録層75面に対して参照光73が同方向に入射するよう、原盤用記録素子74をシフト、傾斜、回転させた量と同じだけ参照光73をシフト、傾斜、回転させている。
【0068】
図10(a)は、原盤の作製方法の第4工程を模式的に示す側面図であり、図10(b)は、原盤の作製方法の第4工程を示す平面図である。次に、第4の記録光72dと参照光73の二光束干渉露光により、原盤用記録素子74のホログラム記録層75に第4の屈折率格子30d(30d1,30d2)を記録する。第4の記録光72dは、レーザ光をセクターマスク70d、および対物レンズ71を透過させることで生成する。セクターマスク70dは、図7(d)に示すように、セクターマスク70aに形成された穴部の一部に相当する穴部が形成されている。第4の記録光72dは、セクターマスク70aに形成された穴部を通る。ここでは第4の記録光72dは、図3の回折光36dと同等な光束としている。また、記録光72dの焦点78dが、ホログラム記録層75面に対して平行な仮想平面S上に位置している。
【0069】
ここで、図10(a)に示す焦点78a3は、上記図9(a)に示す焦点78a2を原盤用記録素子74の移動と共に移動させたときの仮想点である。そして、焦点78a3と焦点78dとの相対的な位置関係は、図1(b)に示す受光素子20aと受光素子20dとの相対的な位置となるように、原盤用記録素子74が移動している。
【0070】
すなわち、焦点78dと焦点78a3との間の間隔と、図1(a)に示す受光素子20aと受光素子20dとの間隔とが一致するように、原盤用記録素子74を第1工程の状態からシフト、傾斜、回転して配置している。参照光73は、ホログラム記録層75に対し第1工程と同じ入射方向で入射する平行光である。すなわち、ホログラム記録層75の主表面に対して参照光73が同方向に入射するよう、原盤用記録素子74をシフト、傾斜、回転させた量と同じだけ参照光73をシフト、傾斜、回転させている。
【0071】
図11(a)は、原盤の作製方法の第5工程を模式的に示す側面図であり、図11(b)は、原盤の作製方法の第5工程を模式的に示す側面図である。第5の記録光72eと参照光73の二光束干渉露光により、原盤用記録素子74のホログラム記録層75に第5の屈折率格子30e(30e1,30e2)を記録する。第5の記録光72eは、レーザ光をセクターマスク70e、および対物レンズ71を透過させることで生成する。セクターマスク70eは、図7(e)に示すように、セクターマスク70aに形成された穴部の一部に相当する穴部が形成されている。図11(a),(b)において、第5の記録光72eは、図3の回折光36eと同等な光束としている。また、記録光72eは記録光72aの集光位置を通りホログラム記録層75の主表面に対して平行な仮想平面S上の焦点78eに集光する。
【0072】
図11(a)において、焦点78a4は、図10(a)に示す焦点78a3を原盤用記録素子74の移動と共に移動させたときの仮想点である。
【0073】
焦点78eと焦点78aとの相対的な位置関係は、図1(b)に示す受光素子20eと受光素子20aとの相対的な位置関係と一致している。
【0074】
すなわち、焦点78a4と、焦点78eとの間隔が、図1(b)に示す受光素子20aと受光素子20eとの間隔と等しくなるように、原盤用記録素子74を第1工程の状態からシフト、傾斜、回転して配置している。参照光73は、ホログラム記録層75に対し第1工程と同じ入射角度で入射する平行光である。すなわち、ホログラム記録層75面に対して参照光73が同方向に入射するよう、原盤用記録素子74をシフト、傾斜、回転させた量と同じだけ参照光73をシフト、傾斜、回転させている。
【0075】
以上の工程により、回折格子の作製を行う。この第1工程から、第5工程は順不同であっても良い。図6〜11において対物レンズ71の直前にセクターマスク70を配置しているが、対物レンズ71の直後、原盤用記録素子74の直前であってもよい。対物レンズを全て等しいものとしているが、記録光72aを記録する対物レンズ71と、記録光72b〜eを記録する対物レンズ71は異なるものであっても良い。また、図7(a)〜(e)に示した各セクターマスクは、光ピックアップにおける各受光素子へ導きたい1次回折光成分を切り欠いたものであり、前記第1工程においては、0次透過光と同等に円形状に切り欠いたマスクを使用するか、もしくはセクターマスクを使用しなくとも良い。勿論、5方向以上の回折光束を回折させることのできるホログラム光学素子、および3方向以下の回折光束を回折させることのできるホログラム光学素子を作製する場合においても、同手法により作製することができる。
【0076】
なお、記録層内に含まれる酸素が光重合反応の妨げるため、露光前にLEDなどのインコヒーレントな光を屈折率格子が記録される領域に一時照射している。また、屈折率格子の二光束干渉露光後、更なる反応を抑制するために、前記インコヒーレント光を同様に照射する。この照射により、記録した屈折率格子を固定することができる。ホログラム光学素子の作製時においては、上述した反射面49(図3参照)を設ける必要がある。このため、原盤の製造における二光束干渉露光後に、基板に反射面を形成する処理を行なう。なお、当該反射面が形成された基板76(図6参照)が、図3の基板42に該当する。
【0077】
反射面49は、ホログラム記録層75の露光工程後に当該反射面が形成される面に対し、コーティング処理を施すことにより生成する。もしくは、特定の入射角度に対し反射率の高い反射板を別途用意し、露光工程後のホログラム記録層75に重ね貼りすることで、当該反射板の反射面を反射面49とする。なお、反射板を用いる方法では、反射板をホログラム記録層75に重ね貼りせずとも、基板とホログラム記録層75との間に挿入することで、同等の効果が得られる。
【0078】
図12は、カップリングプリズムを用いた、原盤の作製方法を説明するための図である。図12を参照して、カップリングプリズム93を用いる方法は、参照光73の入射角がもともと基板76の反射角に相当する場合、および基板76の下面76aに反射面が設けられている場合に限られる。当該反射面は特定の入射角(出射角)に対して強く反射が生じる。したがって、図12に示すとおりカップリングプリズム94をホログラム記録層(原盤用記録材料)75の露光工程において密着させることにより、カップリングプリズム94の入射面、出射面が上記特定の角度から逸れる。このため、参照光73を透過させることができる。
【0079】
(原盤を作製する装置)
本発明の原盤を作製する装置について、図13(a),(b)および、図14(a),(b)を用いて説明する。図13(a)は、本発明の原盤を作製するための、製造装置の模式図である。原盤の製造装置は、たとえば次のように構成される。
【0080】
原盤の製造装置は、レーザ光を射出する光源80と、光源80からのレーザ光をレーザ光L1およびレーザ光L2に分岐するビームスプリッタ(分岐器)81と、レーザ光L1を集光して、記録光L3とする対物レンズ87を備える。さらに、原盤の製造装置は、記録光L3とレーザ光L2とが交差するようにレーザ光L2を反射する反射機器88と、原盤用記録材料90を保持すると共に、記録光L3およびレーザ光L2とが原盤用記録材料90において交差するように原盤用記録材料90を保持する原盤用記録材料90とを備える。原盤の製造装置は、反射機器88の駆動を制御する制御部92と、ビームスプリッタ81から分岐したレーザ光L1を対物レンズ87に向けて反射するミラー89とをさらに備える。反射機器88は、可動ミラー83と、ミラー82と、パラボラミラー85と、回転ミラー84と、セクターマスク86と、対物レンズ87とを備える。
【0081】
光源80は、レーザ光(光ビーム)を出射する。ミラー89は、ビームスプリッタ81によって分岐したレーザ光L1をセクターマスク86および対物レンズ87に向けて反射する。対物レンズ87は、ミラー89によって反射されたレーザ光L1を集光して、記録光L3としている。保持器93は、原盤用記録材料90を支持しており、保持器93は、図13(a)に示す対物レンズ87に近接、対物レンズ87から離間する方向に移動可能に設けられ、回転中心線を中心に回転可能に設けられると共に、回転中心線が傾斜するよう傾斜可能に設けられている。原盤用記録材料90は感光材である。保持器93の回転中心線は、初期状態においては、記録光L3の光軸と平行となっている。そして、保持器93の回転中心線が記録光L3に対して斜めとなるように傾斜することで保持器93は、記録光L3に対する原盤用記録材料90の傾斜角度を調整する。保持器93は、回転することで、原盤用記録材料90に照射される記録光L3の位置を変えることができる。
【0082】
光源80から発振したレーザ光は、ビームスプリッタ81を透過するレーザ光L1と、ビームスプリッタ81によって反射させられたレーザ光L2とに分岐する。この図13(a)に示す例においては、ビームスプリッタ81は、光源80からの光ビームをレーザ光L1と、レーザ光L1の進行方向と垂直な進行方向に進むレーザ光L2とに分岐しているが、レーザ光L1およびレーザ光L2の分岐角度は適宜設定される。
【0083】
可動ミラー83は、ビームスプリッタ81によって分岐したレーザ光L2を反射する位置と、ビームスプリッタ81から分岐したレーザ光L2から離れた位置との間を移動可能に設けられている。ミラー82は、可動ミラー83がレーザ光L2を反射する位置から退避したときに、レーザ光L2を反射可能な位置に設けられている。
【0084】
回転ミラー84は、可動ミラー83によって反射されたレーザ光L2から離れた位置に設けられており、回転ミラー84は、ミラー82によって反射されたレーザ光L2をパラボラミラー85に向けて反射するように配置されている。
【0085】
回転ミラー84は、反射面が回転可能に設けられており、レーザ光L2の反射角度を調整することができる。これにより、パラボラミラー85に入射するレーザ光L2の入射方向を調整することができ、パラボラミラー85によって反射するレーザ光L2の反射方向を適宜調整することができる。
【0086】
図13(a)に示す状態は、上記図6(a),(b)に示す製造工程に相当する状態を示しており、記録光L3は、図6の第1の記録光72aに相当する。
【0087】
セクターマスク86は、予め複数用意されており、原盤用記録材料90に形成する干渉縞(屈折率格子)に合わせて適宜取り替えられる。対物レンズ87は、レーザ光L1を集光する集光レンズである。なお、記録光L3の焦点は、原盤用記録材料90に対して、対物レンズ87と反対側に位置している。
【0088】
図13(a)に示す状態においては、可動ミラー83はレーザ光L2を反射し、可動ミラー83で反射したレーザ光L2が原盤用記録材料90の主表面に特定の一定方向から入射している。具体的には、原盤用記録材料90の主表面に対して垂直な方向から原盤用記録材料90の主表面を見たときに、原盤用記録材料90を基準として、レーザ光L2が原盤用記録材料90に入り込む平面方向の方向は予め定められており、さらに、レーザ光L2が原盤用記録材料90に入射する入射角度も予め定められている。図6(a)において記録光L3が第1の記録光72aに相当し、レーザ光L2が参照光73に相当する。記録光L3とレーザ光L2とを干渉させて、干渉縞(屈折率格子)を原盤用記録材料90に記録する。
【0089】
このように、屈折率格子30aを形成した後、さらに、屈折率格子30b等を原盤用記録材料90に形成するときには、図13(b)に示すように、制御部92は、保持器93を対物レンズ87に向けてシフトする方向、Z軸線と平行な仮想軸線を中心に回転する方向および保持器93の回転中心線が記録光L3の光軸と交差するように傾斜する方向のいずれかの方向に、予め設定された移動量だけ移動させる。さらに、制御部92は可動ミラー83をレーザ光L2の光軸上から離れるように退避させ、制御部92は、セクターマスク86を取り替える。なお、セクターマスク86の具体例は、たとえば、図7に示されている。そして、ミラー82がレーザ光L2を回転ミラー84に向けて反射する。回転ミラー84の姿勢は、パラボラミラー85からの指令に基づいて、予め定められた姿勢となっている。
【0090】
そして、回転ミラー84によって反射したレーザ光L2は、パラボラミラー85によって反射され、原盤用記録材料90に入射される。
【0091】
ここで、図13(a)および図13(b)に示すように、可動ミラー83によって反射したレーザ光L2が原盤用記録材料90に入り込むときの入射方向と、パラボラミラー85によって反射したレーザ光L2が原盤用記録材料90に入り込むときの入射方向とは、一致している。すなわち、パラボラミラー85によって反射したレーザ光L2が原盤用記録材料90に入射するときの入射角度は予め定められた特定の入射角度になっており、原盤用記録材料90の主表面に対して垂直な方向から主表面をみたときに、レーザ光L2が原盤用記録材料90に入り込む平面方向も、予め定められた方向となっている。具体的には、原盤用記録材料90の回転に伴い、回転ミラー84も追従して回転する。これにより、パラボラミラーからのレーザ光L2は、常に原盤用記録材料90の主表面の同じ位置に、同一の入射角度で、かつ、原盤用記録材料90の回転方向(θ方向)にも等しい角度で、原盤用記録材料90に入射する。すなわち、原盤用記録材料90を基準とすると、レーザ光L2は常に同じ方向から同じ位置に向けて入射している。
【0092】
図13(b)に示すレーザ光L1は、図8(a)に示す第2の記録光72bに相当し、レーザ光L2が参照光73に相当する。そして、記録光L3とレーザ光L2とを干渉させて、干渉縞(屈折率格子)を原盤用記録材料90に形成する。
【0093】
さらに、複数種類の干渉縞を原盤用記録材料90に形成するときには、制御部92は、回転ミラー84および保持器93を移動させる。
【0094】
具体的には、原盤用記録材料90の回転に伴い、回転ミラー84も追従して回転する。これにより、パラボラミラーからのレーザ光L2は、常に原盤用記録材料90の主表面の同じ位置に、同一の入射角度で、かつ、原盤用記録材料90の回転方向(θ方向)にも等しい角度で、原盤用記録材料90に入射する。
【0095】
そして、記録光L3とレーザ光L2とが新たな干渉縞(屈折率格子)を原盤用記録材料90に形成する。このようにして、複数の屈折率格子が原盤用記録材料90に形成される。
【0096】
たとえば、図9(a),(b)に示すように、屈折率格子30cが原盤用記録材料90に形成される。同様に、屈折率格子30cを形成した後、制御部92が保持器93および回転ミラー84を移動させて、レーザ光L1およびレーザ光L2を原盤用記録材料90上において干渉させることで、さらに、原盤用記録材料90に、屈折率格子30dや屈折率格子30eを形成する。
【0097】
図14(a),(b)は、上記図13(a),(b)に示された原盤を作製する装置の変形例を示す模式図である。図14(a),(b)に示す原盤を作製する装置においては、図13(a),(b)に示すパラボラミラー85に代えて、複数の固定ミラー91が採用されている。
【0098】
今回開示された実施の形態は例示であって、上記内容のみに制限されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、ホログラム光学素子用原盤に適用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 光ディスク、2 対物レンズ、3 1/4波長板、4 センサレンズ、5 ビームスプリッタ、6 回折光学素子、7 受光素子、8 回折格子、9 コリメータレンズ、10,11 半導体レーザ、12 ダイクロイックミラー、20a〜20e 受光素子、22b,22c,22d1,22d2,22e1,22e2 屈折率格子、22 集合屈折率格子、23 ホログラム記録層、24 基板、26 0次透過光、27b,27c,27d1,27d2,27e1,27e2 1次回折光、28a,28b,28c,28d,28e 焦点、30a,30b,30c,30d1,30d2,30e1,30e2 屈折率格子、30 集合屈折率格子、32 原盤、33 ホログラム記録層、34 基板、35 再生光、36a,36b,36c,36d1,36d2,36e1,36e2 1次回折光、45 複製用記録素子、46,53 ホログラム記録層、49 反射面、51 原盤、52,54 基板、55 複製用記録素子、56 ホログラム記録層、57 干渉縞、58 基板、60 光源、61 ミラー、62 エキスパンダレンズ、63 アパーチャ、64 カップリングプリズム、70a,70b,70c,70d,70e セクターマスク、71 対物レンズ、72a,72b,72c,72d,72e 記録光、73 参照光、74 原盤用記録素子、75 ホログラム記録層、80 光源、81 ビームスプリッタ、82 ミラー、83 可動ミラー、84 回転ミラー、85 パラボラミラー、86 セクターマスク、87 対物レンズ、90 原盤用記録材料、91 固定ミラー、92 制御部、93 保持器、L1 レーザ光、L2 レーザ光、L3 記録光、S 仮想平面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光が入射される第1ホログラム記録層を備え、前記入射光が入射されることで、ホログラム光学素子の第2ホログラム記録層に干渉縞を形成可能なホログラム光学素子用原盤において、
前記第1ホログラム記録層は、前記入射光を回折し、第1回折光を射出する第1回折パターンと、前記入射光を回折し、第2回折光を射出する第2回折パターンとを含み、
前記第1回折光の少なくとも一部と前記第2回折光の少なくとも一部とは互いに交差し、
前記第1ホログラム記録層は、厚み方向に配列する第1主表面および第2主表面を含み、
前記入射光は、前記第1主表面に入射され、前記第1回折光および前記第2回折光は、前記第2主表面から射出され、
前記第1回折光は、前記第2主表面に対して垂直な方向に射出される光束を含み、
前記第2回折光は、前記第2主表面に対して斜めに射出される光束を含む、ホログラム光学素子用原盤。
【請求項2】
前記入射光は、平面波であり、
前記第1回折光は、第1焦点に集光し、前記第2回折光は、第2焦点に集光する、請求項1に記載のホログラム光学素子用原盤。
【請求項3】
前記第1焦点と前記第2焦点とは、前記第1ホログラム記録層に対して平行な仮想平面上に配列する、請求項2に記載のホログラム光学素子用原盤。
【請求項4】
前記第1焦点および前記第1回折パターンとの間に位置し、前記第1回折光が通る第1領域と、前記第2焦点および前記第2回折パターンとの間に位置し、前記第2回折光が通る第2領域とが重なり、
前記第1ホログラム記録層に形成され、前記入射光を回折させると共に前記入射光が回折した回折光を第3焦点に集光させる第3回折パターンをさらに備え、
前記第3焦点および前記第3回折パターンの間に位置し、前記第3回折パターンによって回折した第3回折光が通る第3領域と前記第1領域とは交差する、
前記第1回折パターンの一部と、前記第2回折パターンの一部および前記第3回折パターンの一部が互いに重なる、請求項2に記載のホログラム光学素子用原盤。
【請求項5】
前記第1回折パターンおよび前記第2回折パターンが複数設けられた、請求項1から請求項4のいずれかに記載のホログラム光学素子用原盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−14803(P2012−14803A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151124(P2010−151124)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】