説明

ホワイトバランス調整システム、内視鏡プロセッサ、補正とバランス調整キャップ

【課題】適切なホワイトバランス調整係数を算出する。
【解決手段】内視鏡プロセッサ20はDSP23および入力部27を有する。ホワイトバランス初期化の操作が入力部27に入力されるとき、DSP23がホワイトバランス初期化処理を実行する。ホワイトバランス初期化処理においてDSP23は撮像素子43から送信される画像信号に相当する画像に識別マークが含まれるか否かを判別する。識別マークが含まれるときに、DSP23は画像信号を用いてR、Bゲインを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子内視鏡により撮像された画像のホワイトバランス調整処理に用いるホワイトバランス調整係数を適切に算出させるホワイトバランス調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
光が照射されない体内を観察するために、電子内視鏡を有する内視鏡システムが用いられている。内視鏡システムでは、挿入管が体内に挿入され、照明された体内の生体組織などが撮像され、撮像された被写体像がモニタで観察可能である。
【0003】
被写体像はカラー撮像素子によって撮像され、電気信号である画像信号が生成される。カラー撮像素子では受光する光の帯域によって受光感度が異なるため、被写体の実際の色と異なる色で被写体がモニタに表示される。モニタに表示される被写体の色を実際の被写体の色に近付けるために、ホワイトバランス調整処理が画像信号に対して施すことが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
ホワイトバランス調整処理は、予め算出されたホワイトバランス調整係数をR信号成分およびB信号成分などの特定の色信号成分に対して乗じることにより実行される。適切なホワイトバランス調整処理を実行するためには、適切なホワイトバランス調整係数を算出することが必要である。
【0005】
白色の被写体の撮像により生成された画像信号に相当する画像が白色となるように、ホワイトバランス調整係数が算出される。それゆえ、適切なホワイトバランス調整係数を算出するためには、適切な白色の被写体を撮像する必要がある。
【0006】
適切な白色の被写体の撮像のために、専用のホワイトバランス調整キャップが用いられている。ホワイトバランス調整キャップは挿入管の先端に装着可能で、内面が白色に色付けられている。このようなホワイトバランス調整キャップを装着した状態で、白色に色づけられたキャップ内面を撮影することにより適切なホワイトバランス調整係数を算出することが可能である。
【0007】
しかし、白色の紙やガーゼなどの白色の被写体が専用の調整キャップの代わりに用いられることがある。しかし、紙やガーゼなどはホワイトバランス調整係数の算出に適した色温度と異なることや、全面が白色でないことが一般的である。このような代用の被写体の撮像により得られた画像信号では適切なホワイトバランス調整係数の算出が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−69615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明では、専用のホワイトバランス調整キャップを用いるときにホワイトバランス調整係数の算出を行うホワイトバランス調整システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のホワイトバランス調整システムは、電子内視鏡の挿入管の先端に設けられる撮像素子が生成する画像信号に相当する画像のホワイトバランスの調整に用いるホワイトバランス調整係数を算出するホワイトバランス調整システムであって、挿入管の先端に装着されるホワイトバランス調整キャップの撮影面に描かれるマークを記憶するメモリと、ホワイトバランス調整係数の算出の実行の入力操作を検知する入力部と、入力部にホワイトバランス調整係数の算出入力があったときに画像信号に基づいて画像信号に相当する画像である撮像画像にマークが含まれるか否かを判別する判別部と、判別部が撮像画像にマークが含まれていると判別するときに画像信号を用いてホワイトバランス調整係数を算出する算出部とを備えることを特徴としている。
【0011】
なお、メモリは撮像画像における特定の領域の位置を記憶し、判別部は撮像画像の特定の領域における部分画像がマークと一致するか否かを判別することにより撮像画像に前記マークが含まれるか否かを判別することが好ましい。
【0012】
また、撮像画像にマークが含まれないと判別されるときには警告を発する警告部を備えることが好ましい。
【0013】
本発明の第1の内視鏡プロセッサは、電子内視鏡の挿入管の先端に設けられる撮像素子が生成する画像信号に相当する画像のホワイトバランスの調整に用いるホワイトバランス調整係数を算出する内視鏡プロセッサであって、画像信号を受信する画像受信部と、挿入管の先端に装着されるホワイトバランス調整キャップの撮影面に描かれるマークを記憶するメモリと、ホワイトバランス調整係数の算出の実行の入力操作を検知する入力部と、入力部に前記ホワイトバランス調整係数の算出入力があったときに画像信号に基づいて画像信号に相当する画像である撮像画像にマークが含まれるか否かを判別する判別部と、判別部が撮像画像にマークが含まれていると判別するときに画像信号を用いてホワイトバランス調整係数を算出する算出部とを備えることを特徴としている。
【0014】
本発明の第2の内視鏡プロセッサは、電子内視鏡の挿入管の先端に設けられる撮像素子が生成する画像信号に相当する画像のホワイトバランスの調整に用いるホワイトバランス調整係数を算出する内視鏡プロセッサであって、画像信号を受信する画像受信部と、挿入管の先端に装着されるホワイトバランス調整キャップの撮影面に描かれるマークを記憶するメモリからマークに相当するマークデータを受信するマーク受信部と、ホワイトバランス調整係数の算出の実行の入力操作を検知する入力部と、入力部にホワイトバランス調整係数の算出入力があったときに画像信号に基づいて画像信号に相当する画像である撮像画像にマークが含まれるか否かを判別する判別部と、判別部が撮像画像にマークが含まれていると判別するときに画像信号を用いてホワイトバランス調整係数を算出する算出部とを備えることを特徴としている。
【0015】
本発明のホワイトバランス調整キャップは、電子内視鏡の挿入管の先端に設けられる撮像素子が生成する画像信号に相当する画像のホワイトバランスの調整に用いるホワイトバランス調整係数を算出するために挿入管の先端に装着可能なホワイトバランス調整具であって、挿入管に装着された状態における撮像素子に相対する面に無彩色に色付けられた背景にマークが描かれることを特徴としている。
【0016】
なお、背景は白色に色付けられることが好ましい。
【0017】
また、マークは背景と異なる無彩色に色付けられることが好ましい。
【0018】
また、マークは黒色に色付けられることが好ましい。
【0019】
また、マークは内面の中央付近に描かれることが好ましい。
【0020】
また、マークは環状または円形状であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、専用のホワイトバランス調整具の撮影面が撮像されるときにホワイトバランス調整係数が算出される。したがって、適切なホワイトバランス調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態を適用したホワイトバランス調整システムを有する内視鏡プロセッサを含む内視鏡システムの内部構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】本実施形態のホワイトバランス調整キャップの外観図である。
【図3】窪部の底面の平面図である。
【図4】CPUおよびDSPにより実行されるホワイトバランス初期化処理を示す第1のフローチャートである。
【図5】CPUおよびDSPにより実行されるホワイトバランス初期化処理を示す第2のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態を適用したホワイトバランス調整システムを有する内視鏡プロセッサによって構成される内視鏡システムの内部構成を概略的に示すブロック図である。
【0024】
内視鏡システム10は、内視鏡プロセッサ20、電子内視鏡40、およびモニタ11によって構成される。内視鏡プロセッサ20は、電子内視鏡40、およびモニタ11に接続される。
【0025】
内視鏡プロセッサ20から被写体を照明するための照明光が電子内視鏡40に供給される。照明光を照射された被写体が電子内視鏡40により撮像される。電子内視鏡40の撮像により生成する画像信号が内視鏡プロセッサ20に送られる。
【0026】
内視鏡プロセッサ20では、電子内視鏡40から得られた画像信号に対して所定の信号処理が施される。所定の信号処理を施した画像信号はモニタ11に送信され、送信された画像信号に相当する画像がモニタ11に表示される。
【0027】
次に、内視鏡プロセッサ20の構成について説明する。内視鏡プロセッサ20には光源システム21、撮像素子ドライバ22、DSP23、不揮発性メモリ24(メモリ)、システムコントローラ25、ROM26、および入力部27などが設けられる。
【0028】
光源システム21から出射される照明光は、電子内視鏡40に設けられるライトガイド41に入射される。照明光はライトガイド41により挿入管42の先端まで伝達される。伝達された照明光は、挿入管42の先端方向の被写体に照射される。
【0029】
照明光が照射された被写体の反射光による光学像が、挿入管42の先端に設けられた対物レンズ(図示せず)により、撮像素子43の受光面に結像する。撮像素子43は、一定の周期、例えば、1/60秒毎に1フィールドの画像信号を生成するように撮像素子ドライバ22に制御される。
【0030】
なお、撮像素子43の受光面には複数の画素(図示せず)が2次元状に配置される。各画素はRGBいずれかのカラーフィルタ(図示せず)によって覆われる。各画素では、カラーフィルタを透過した光成分の受光量に応じた画素信号が生成される。画像信号は、全画素において生成される画素信号によって構成される。
【0031】
生成された画像信号は、電子内視鏡40に設けられるAFE(図示せず)においてCDS処理およびAGC処理が施された後、デジタル信号に変換される。デジタル信号に変換された画像信号は、DSP23に送信される。
【0032】
DSP23では、ホワイトバランス調整処理、色補間処理、ガンマ補正処理などの所定のデータ処理が画像信号に対して施される。ここで、ホワイトバランス調整処理について詳細に説明する。
【0033】
前述のように、画像信号は、赤色光、緑色光、および青色光の受光量に応じたR画素信号成分、G画素信号成分、およびB画素信号成分によって構成される。ホワイトバランス調整処理では、R画素信号成分およびB画素信号成分にそれぞれ、Rゲイン(ホワイトバランス調整係数)およびBゲイン(ホワイトバランス調整係数)が乗じられる。
【0034】
後述するように、RゲインおよびBゲインはホワイトバランス初期化時に算出される。算出されたRゲインおよびBゲインは不揮発性メモリ24に格納される。被写体の観察時に、RゲインおよびBゲインはシステムコントローラ25を介してDSP23に伝達され、ホワイトバランス調整処理に用いられる。
【0035】
所定のデータ処理の施された画像信号がモニタ11に送信される。モニタ11には、受信した画像信号に相当する画像が表示される。前述のように、撮像素子43は1/60秒毎に1フィールドの画像信号を生成するように駆動され、モニタ11にも1/60秒毎に画像信号が送信される。1/60秒毎に表示する画像を切換えることにより、モニタ11には動画像が表示される。
【0036】
光源システム21、撮像素子ドライバ22、およびDSP23はシステムコントローラ25によって動作が制御される。なお、内視鏡プロセッサ20に設けられる各部位の動作もシステムコントローラ25によって制御される。システムコントローラ25にはROM26が接続されており、各部位の制御に必要なデータがROM26に格納される。ROM26に格納されたデータは必要に応じてシステムコントローラ25に読出される。
【0037】
システムコントローラ25には入力部27が接続される。入力部27は、キーボード(図示せず)、ボタン(図示せず)、スイッチ(図示せず)などによって構成される。入力部27によって内視鏡システム10に設けられる様々な機能の実行や調整を実行するための入力操作が検知される。検知された入力操作がシステムコントローラ25に伝達され、検知された入力操作に基づいて、システムコントローラ25により内視鏡プロセッサ20の各部位が制御される。
【0038】
次に、RゲインおよびBゲインの算出について以下に説明する。入力部27にホワイトバランス初期化の入力操作が行われると、R、Bゲイン算出のためのホワイトバランスの初期化処理が実行される。
【0039】
適切なR、Bゲインを算出するためには、均一に白色に色付けられた被写体を撮影する必要がある。均一に白色に色付けられた被写体として、図2に示すホワイトバランス調整キャップ30が用いられる。ホワイトバランス調整キャップ30は直方体状に形成され、装着面31に窪部32が設けられる。
【0040】
窪部32は、使用が想定される様々な電子内視鏡40の挿入管42の外径より内径が長くなるように形成される。窪部32には、装着面31に平行な底面33が形成される。図3に示すように、底面33には白色に色付けられた背景に、黒色に色付けられた環状の識別マーク34が描かれる。識別マーク34は、底面33の中央に描かれる。また、識別マーク34の大きさは、使用が想定される電子内視鏡40の撮像範囲CAより小さくなるように定められる。
【0041】
ホワイトバランス初期化処理では、図2に示すホワイトバランス調整キャップ30が挿入管42の先端に装着されているかの判別が行われ、装着されている場合にR、Bゲインが算出される。
【0042】
ホワイトバランス初期化処理の実行入力を受信すると、前述のように撮像素子43およびDSP23などが駆動され、モニタ11にリアルタイムの動画像が表示される。また、DSP23では警告メッセージに相当する画像信号がシステムコントローラ25を介してROM26から読出される。DSP23では、警告メッセージが動画像にスーパーインポーズされる。
【0043】
警告メッセージをスーパーインポーズした画像信号がモニタ11に転送され、“調整キャップを装着して、識別マークを画像中央に映して下さい。”などの警告メッセージが表示される。警告メッセージは所定の時間経過後に消去される。
【0044】
警告メッセージの表示後、前述のように撮像素子43およびDSP23などが駆動され、モニタ11にリアルタイムの動画像が表示される。動画像の表示時に判別実行の操作を入力部27に対して入力すると、次のフィールドの画像信号を用いてホワイトバランス調整キャップ30が装着されているか否かの判別が実行される。
【0045】
ホワイトバランス調整キャップ30が装着されているか否かは、撮像範囲の中央付近に識別マーク34が位置付けられていることを判別することにより判別される。判別のために、識別マーク34の位置がシステムコントローラ25を介してROM26からDSP23に読出される。
【0046】
識別マーク34が中央付近に位置付けられていない場合には、警告メッセージがシステムコントローラ25を介してROM26から読出され、動画像上にスーパーインポーズされる。識別マーク34が中央付近に位置付けられている場合に、R、Bゲインの算出が開始される。
【0047】
識別マーク34が中央付近に位置付けられる、と判別したときの次のフィールドの画像信号を用いてR、Bゲインが算出される。対象となる画像信号がDSP23に送信されると、DSPでは、R、G、B画素信号成分の信号強度の平均値が算出される。
【0048】
G画素信号成分の平均値をR画素信号成分の平均値で除すことにより、Rゲインが算出される(正規化)。同様に、G画素信号成分の平均値をB画素信号成分の平均値で除すことにより、Bゲインが算出される(正規化)。算出されたR、Bゲインが不揮発性メモリ24に格納される。
【0049】
次に、システムコントローラ25およびDSP23において実行されるホワイトバランス初期化処理について、図4、5のフローチャートを用いて説明する。ホワイトバランス初期化処理は、前述のように、入力部27への操作入力により実行される。
【0050】
ステップS100では、システムコントローラ25は調整キャップ装着とマークの映しこみを促す上述の警告メッセージに相当する画像信号成分をROM26から読出し、DSP23に送信する。DSP23は警告メッセージを動画像上に重畳するスーパーインポーズ処理を実行し、動画像上に警告メッセージを表示させる。警告メッセージの表示後、ステップS101に進む。
【0051】
ステップS101では、システムコントローラ25はタイマ(図示せず)に計時を開始させる。計時を開始させると、ステップS102に進む。
【0052】
ステップS102では、システムコントローラ25はタイマの計測時間が所定の表示時間を経過しているか否かを判別する。所定の表示時間を経過していない場合にはステップS102に戻り、所定の表示時間を経過するまでステップS102を繰返す。所定の表示時間を経過している場合には、ステップS103に進む。所定の表示時間が経過するまでステップS102を繰返すことにより、警告メッセージを所定の表示時間だけ表示させることが可能である。
【0053】
ステップS103では、DSP23は警告メッセージのスーパーインポーズ処理を停止し、警告メッセージを動画像から消去する。警告メッセージの消去後、ステップS104に進む。
【0054】
ステップS104では、システムコントローラ25は識別マーク34のデータとして、識別マーク34を形成する画素のアドレスをROM26から読出し、DSP23に伝達する。識別マーク34のデータの読出し後、ステップS105に進む。なお、識別マーク34を形成する画素とは、前述の黒色の環状部分を形成する画素である。
【0055】
ステップS105では、システムコントローラ25は画像信号に含まれる水平同期信号および垂直同期信号をカウントするHカウンタ(図示せず)およびVカウンタ(図示せず)を起動し、水平同期信号および垂直同期信号の認識を開始する。HカウンタおよびVカウンタの起動後、ステップS106に進む。
【0056】
ステップS106では、システムコントローラ25は判別実行の操作が入力部27に入力されているか否かを判別する。判別実行の操作が入力されていない場合にはステップS106に戻り、判別実行の操作が入力されるまでステップS106を繰返す。判別実行の操作が入力されている場合には、ステップS107に進む。
【0057】
ステップS107では、システムコントローラ25はVカウンタによりカウントされた垂直同期信号がリセット状態、すなわち、画像信号を構成する画素信号の最後の行の受信を終了しているか否かを判別する。リセット状態で無い場合にはステップS107に戻り、以後リセット状態になるまでステップS107を繰返す。リセット状態である場合には、ステップS108に進む。
【0058】
ステップS108では、DSP23は黒の一致数をゼロにリセットする。なお、黒の一致数とは、電子内視鏡40から受信する画像信号を構成する画素信号成分において、識別マーク34の位置と同じ位置であって黒色である画素の個数である。黒の一致数のリセット後、ステップS109に進む。
【0059】
図5に示すように、ステップS109では、システムコントローラ25はH、Vカウンタによりカウントされた水平同期信号および垂直同期信号が、ステップS104において読出された識別マーク34を構成するいずれかの画素のアドレスに対応するH、V同期信号と一致するか否かを判別する。
【0060】
いずれかの画素のアドレスと一致する場合には、ステップS110に進む。すべての画素のアドレスと一致しない場合には、ステップS110およびステップS111をスキップして、ステップS112に進む。
【0061】
ステップS110では、ステップS109における水平同期信号および垂直同期信号に対応するアドレスの画素信号がDSP23に受信されている。DSP23は受信した画素信号の輝度信号成分が第1の閾値未満であるか否かを判別する。なお、第1の閾値は、黒色の画素と判別可能な適切な値に定められる。
【0062】
輝度信号成分が第1の閾値未満である場合には画素が黒色であると判別して、ステップS111に進む。輝度信号成分が第1の閾値以上である場合にはステップS111をスキップして、ステップS112に進む。
【0063】
ステップS111では、DSP23は黒の一致数に+1をインクリメントする。インクリメント後、ステップS112に進む。
【0064】
ステップS112では、システムコントローラ25はVカウンタによりカウントされた垂直同期信号がリセット状態であるか否か、すなわち、1フィールドの画像信号を構成するすべての画素信号に対する判別が終了しているか否かを判別する。
【0065】
リセット状態で無い場合には、ステップS109に戻る。以後、ステップS112においてリセット状態となるまで、ステップS109〜ステップS112を繰返す。リセット状態である場合には、ステップS113に進む。
【0066】
ステップS113では、DSP23は黒の一致数が第2の閾値を超えるか否かを判別する。なお、第2の閾値は、ゼロより大きく、識別マーク34を形成する画素の数より小さい所定の値に定められる。
【0067】
黒の一致数が第2の閾値以下である場合には、調整キャップが装着されていないか若しくはマークが中央に映しこまれていないと判断されるため、ステップS100に戻る。以後、黒の一致数が第2の閾値を超えるまで、ステップS100〜ステップS113を繰返す。黒の一致数が第2の閾値を超える場合には、調整キャップが装着され、かつマークが中央に映しこまれていると判断されるため、ステップS114に進む。
【0068】
ステップS114では、DSP23は1フィールドの画像信号を構成するすべてのR画素信号成分、G画素信号成分、およびB画素信号成分ごとに平均値を算出する。平均値を算出すると、ステップS115に進む。
【0069】
ステップS115では、DSP23はG画素信号成分の平均値をR画素信号成分の平均値で除すことによりRゲインを算出する。また、DSP23はG画素信号成分の平均値をB画素信号成分の平均値で除すことによりBゲインを算出する。R、Bゲインを算出すると、ステップS116に進む。
【0070】
ステップS116では、システムコントローラ25はステップS115において算出したR、Bゲインを不揮発性メモリ24に格納する。不揮発性メモリ24へのR、Bゲインの格納後、ホワイトバランス初期化処理を終了する。
【0071】
以上のように、本実施形態のホワイトバランス調整システムによれば、識別マーク34が撮像されていない場合には、R、Bゲインの算出を開始させないことが可能である。すなわち、識別マーク34が描かれた専用のホワイトバランス調整キャップを装着した場合にのみ、R、Bゲインの算出を実行させることが可能である。それゆえ、適切なR、Bゲインが算出されるので、通常観察時における画像の色再現性の向上が可能である。
【0072】
なお、本実施形態において、ROM26に格納された識別マーク34を形成する画素が黒色であるか否かを判別することによって、撮像された画像に識別マーク34が含まれるか否かを判別する構成であるが、他の公知のいかなる方法によって撮像された画像に識別マーク34が含まれるか否かを判別してもよい。
【0073】
例えば、パターンマッチングによりROM26に格納された識別マーク34の形状と撮像された画像に含まれるマークの形状とが一致するか否かを判別する構成であってもよい。パターンマッチングなどの方法によれば、識別マーク34の撮影される位置を調整する必要が無く、利便性が向上される。ただし、本実施形態のような方法が簡便で正確である。
【0074】
また、本実施形態において、撮像素子43によりRGB画素信号成分が生成される構成だが、他の色信号成分が生成されてもよい。他の色信号成分が生成される場合には、R、Bゲインの代わりに生成される色信号成分に適したホワイトバランス調整係数がホワイトバランス初期化処理によって算出され、ホワイトバランス処理に用いられる。
【0075】
また、本実施形態において、識別マーク34の位置は内視鏡プロセッサ20のROM26に記憶される構成であるが、電子内視鏡40に設けられるROM(図示せず)に記憶される構成であってもよい。電子内視鏡40に記憶される場合には、電子内視鏡40と内視鏡プロセッサ20を接続した状態でホワイトバランス初期化処理の実行時に電子内視鏡40から内視鏡プロセッサ20に読出させればよい。
【0076】
また、本実施形態において、ホワイトバランス調整キャップ30を装着せずにホワイトバランス初期化処理を実行した場合、および識別マーク34の位置合わせが不十分である場合に、警告メッセージが発せられる構成である。しかし、警告メッセージを発しなくても、ホワイトバランス調整キャップ30が装着されていない場合に、R、Bゲインの算出を開始させないことが可能である。
【0077】
また、本実施形態において、ホワイトバランス調整キャップ30の窪部32の底面33における識別マーク34の背景は白色に色付けられる構成であるが、黒以外の他の無彩色に色付けられていても、適切なR、Bゲインを算出することは可能である。
【0078】
また、本実施形態において、識別マーク34は黒色であるが、背景と異なる色であれば他の色であってもよい。ただし、識別マーク34が有彩色である場合には、識別マーク34を構成する全画素をR、Bゲインの算出から除外する必要がある。識別マーク34が無彩色である場合には、本実施形態のようにR、Bゲインの算出にそのまま用いることが可能である。
【0079】
また、本実施形態において、識別マーク34が撮影画像に含まれると判別される位置は撮像範囲の中央付近であるが、撮像範囲の何れの位置であってもよい。
【0080】
また、本実施形態において、識別マーク34は環状であるがどのような形状の記号や文字形状であってもよい。ただし、環状や円形であれば、ホワイトバランス調整キャップ30の角度によらず、一定の判別精度を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0081】
10 内視鏡システム
20 内視鏡プロセッサ
23 DSP
24 不揮発性メモリ
25 システムコントローラ
26 ROM
27 入力部
30 ホワイトバランス調整キャップ
33 底面
34 識別マーク
40 電子内視鏡
43 撮像素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子内視鏡の挿入管の先端に設けられる撮像素子が生成する画像信号に相当する画像のホワイトバランスの調整に用いるホワイトバランス調整係数を算出するホワイトバランス調整システムであって、
前記挿入管の先端に装着されるホワイトバランス調整キャップの撮影面に描かれるマークを記憶するメモリと、
前記ホワイトバランス調整係数の算出の実行の入力操作を検知する入力部と、
前記入力部に前記ホワイトバランス調整係数の算出実行の入力があったときに、前記画像信号に基づいて、前記画像信号に相当する画像である撮像画像に前記マークが含まれるか否かを判別する判別部と、
前記判別部が、前記撮像画像に前記マークが含まれていると判別するときに前記画像信号を用いて前記ホワイトバランス調整係数を算出する算出部とを備える
ことを特徴とするホワイトバランス調整システム。
【請求項2】
前記メモリは、前記撮像画像における特定の領域の位置を記憶し、
前記判別部は、前記撮像画像の特定の領域における部分画像が前記マークと一致するか否かを判別することにより、前記撮像画像に前記マークが含まれるか否かを判別する
ことを特徴とする請求項1に記載のホワイトバランス調整システム。
【請求項3】
前記撮像画像に前記マークが含まれないと判別されると、警告を発する警告部を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のホワイトバランス調整システム。
【請求項4】
電子内視鏡の挿入管の先端に設けられる撮像素子が生成する画像信号に相当する画像のホワイトバランスの調整に用いるホワイトバランス調整係数を算出する内視鏡プロセッサであって、
前記画像信号を受信する画像受信部と、
前記挿入管の先端に装着されるホワイトバランス調整キャップの撮影面に描かれるマークを記憶するメモリと、
前記ホワイトバランス調整係数の算出の実行の入力操作を検知する入力部と、
前記入力部に前記ホワイトバランス調整係数の算出実行の入力があったときに、前記画像信号に基づいて、前記画像信号に相当する画像である撮像画像に前記マークが含まれるか否かを判別する判別部と、
前記判別部が、前記撮像画像に前記マークが含まれていると判別するときに前記画像信号を用いて前記ホワイトバランス調整係数を算出する算出部とを備える
ことを特徴とする内視鏡プロセッサ。
【請求項5】
電子内視鏡の挿入管の先端に設けられる撮像素子が生成する画像信号に相当する画像のホワイトバランスの調整に用いるホワイトバランス調整係数を算出する内視鏡プロセッサであって、
前記画像信号を受信する画像受信部と、
前記挿入管の先端に装着されるホワイトバランス調整キャップの撮影面に描かれるマークを記憶するメモリから前記マークに相当するマークデータを受信するマーク受信部と、
前記ホワイトバランス調整係数の算出の実行の入力操作を検知する入力部と、
前記入力部に前記ホワイトバランス調整係数の算出実行の入力があったときに、前記画像信号に基づいて、前記画像信号に相当する画像である撮像画像に前記マークが含まれるか否かを判別する判別部と、
前記判別部が、前記撮像画像に前記マークが含まれていると判別するときに前記画像信号を用いて前記ホワイトバランス調整係数を算出する算出部とを備える
ことを特徴とする内視鏡プロセッサ。
【請求項6】
電子内視鏡の挿入管の先端に設けられる撮像素子が生成する画像信号に相当する画像のホワイトバランスの調整に用いるホワイトバランス調整係数を算出するために、前記挿入管の先端に装着可能なホワイトバランス調整具であって、
前記挿入管に装着された状態における前記撮像素子に相対する面に、無彩色に色付けられた背景にマークが描かれる
ことを特徴とするホワイトバランス調整具。
【請求項7】
前記背景は白色に色付けられることを特徴とする請求項6に記載のホワイトバランス調整具。
【請求項8】
前記マークは、背景と異なる無彩色に色付けられることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のホワイトバランス調整具。
【請求項9】
前記マークは、黒色に色付けられることを特徴とする請求項8に記載のホワイトバランス調整具。
【請求項10】
前記マークは、前記内面の中央付近に描かれることを特徴とする請求項6〜請求項9のいずれか1項に記載のホワイトバランス調整具。
【請求項11】
前記マークは、環状または円形状であることを特徴とする請求項6〜請求項10のいずれか1項に記載のホワイトバランス調整具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−152314(P2012−152314A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12735(P2011−12735)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】