説明

ボイラ及びボイラの運転方法

【課題】 排ガスによる構成部品の腐食の抑制を適切に図ることができるボイラ、及びボイラの運転方法を提供する。
【解決手段】ボイラ1は、投入された燃料を燃焼させる燃焼炉3と、燃焼炉3から発生する排ガスを採取するプローブ31と、排ガス中で粒子状の塩を形成しているClの濃度を取得するガス分析部40と、ガス分析部40で取得された上記のClの濃度に基づいて、燃焼炉3に投入する燃料を調整する燃料制御部47及び燃料投入装置49と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ及びボイラの運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ボイラの排ガス流路上における部品の腐食を低減させるべく、排ガス流路上の腐食のモニタを行う方法が提案されている。例えば、特許文献1には排ガス流路上に設置して用いるプローブが開示されており、このようなプローブにより腐食をモニタしながら運転するといった方法が考えられる。このプローブ上には試料電極が設けられており、この方法では、上記試料電極を分極させて測定された分極抵抗に基づいて、試料電極の腐食速度を検知する。
【特許文献1】特開2005−91281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の方法では、プローブの試料電極の腐食速度と、実際のボイラの構成部品における腐食の進行とが、必ずしも正確にリンクしない場合もあり得るので、モニタされた腐食速度に基づいた運転を行っても、腐食抑制が適切に行われない場合があり得る。近年では特に、この種のボイラには、性状が安定しない燃料にも対応することが要求されており、ボイラの長寿命化のためには、排ガスによる部品の腐食をできるだけ抑制することが望まれている。
【0004】
そこで、本発明は、排ガスによる構成部品の腐食の抑制を適切に図ることができるボイラ、及びボイラの運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ボイラの排ガス流路上における部品の腐食に関して鋭意研究を行った。このようなボイラの部品の腐食には、排ガス中に存在するCl(塩素原子)が関与しているが、本発明者らは、排ガス中のClを含む化合物のうち、Clを含む粒子状の塩が、ボイラの部品の腐食の進行に大きな影響を与えており、Clを含むガスは、あまり大きな影響を与えないことを見出した。従って、部品の腐食のし易さを正確に推定するには、単に排ガス中のClの濃度をモニタするだけでは不十分であり、排ガス中で粒子状の塩を形成しているClの濃度をモニタする必要があることを見出した。
【0006】
このような知見に基づき、本発明のボイラは、投入された燃料を燃焼させる燃焼炉と、燃焼炉から発生する排ガス中で粒子状の塩を形成しているClの濃度を取得する濃度取得手段と、濃度取得手段で取得された濃度に基づいて、燃焼炉に投入する燃料を調整する燃料調整手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
このボイラでは、濃度取得手段により、排ガス中で粒子状の塩を形成しているClの濃度が取得される。この濃度は、排ガスが接触する部品の腐食の進行に大きな影響を与える量であり、部品の腐食のし易さを比較的正確に反映する。そして燃料調整手段では、取得された上記濃度に基づいて燃焼炉に投入される燃料が調整される。従って、このボイラによれば、部品の腐食の危険性に応じて燃料が調整されるといったことが可能になり、部品の腐食を適切に抑えることができる。
【0008】
また、濃度取得手段は、排ガス中にガス状で存在するClと粒子状の塩を形成しているClとを含めたClの濃度を測定する第1の測定手段と、排ガス中にガス状で存在するClの濃度を測定する第2の測定手段と、を有し、第1の測定手段で得られたClの濃度と、第2の測定手段で得られたClの濃度と、に基づいて粒子状の塩を形成しているClの濃度を得ることを特徴とすることとしてもよい。
【0009】
排ガス中で粒子状の塩を形成しているClの濃度は直接測定することが比較的困難であるが、これに対し、排ガス中にガス状で存在するClと粒子状の塩を形成しているClとを含めたClの濃度及び、ガス状で存在するClの濃度は比較的測定が容易である。従って、上記構成によれば、粒子状の塩を形成しているClの濃度を比較的容易に得ることができる。
【0010】
また、濃度取得手段は、排ガスの流路から排ガスを採取するガス採取手段を有し、ガス採取手段は、流路における排ガスの流動方向とは反対の方向に排ガスを吸引して採取することとしてもよい。この構成によれば、ガス採取手段により、適量のガスを採取することができる。
【0011】
また、本発明のボイラの運転方法は、ボイラの燃焼炉に燃料を投入する燃料投入工程と、燃焼炉から発生する排ガス中で粒子状の塩を形成しているClの濃度を取得する濃度取得工程と、濃度取得工程で取得された濃度に基づいて、燃料投入工程で投入する燃料を調整する燃料調整工程と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
この運転方法では、濃度取得工程により、排ガス中で粒子状の塩を形成しているClの濃度が取得される。この濃度は、排ガスが接触する部品の腐食の進行に大きな影響を与える量であり、部品の腐食のし易さを比較的正確に反映する。そして燃料調整工程では、取得された上記濃度に基づいて、燃料投入工程で燃焼炉に投入される燃料が調整される。従って、この方法によれば、部品の腐食の危険性に応じて燃料が調整されるといったことが可能になり、部品の腐食を適切に抑えることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のボイラ及びボイラの運転方法によれば、ボイラの構成部品の腐食を適切に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るボイラ及びボイラの運転方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1に示す外部循環型(Circulating Fluidized Bed型)の流動層型ボイラ1は、木屑、タイヤ、RPF等を燃料として用いるボイラであり、縦長円筒形状をなす流動層型の燃焼炉3を備えている。燃焼炉3の中間部には燃料を投入する燃料投入口3a、上部には燃焼ガスを排出するガス出口3bが設けられている。ガス出口3bには固気分離装置として機能するサイクロン7が接続されている。サイクロン7の排出口7aはガスラインを介して後段のガス処理系に接続されている。また、サイクロン7の底部出口からはダウンカマーと称されるリターンライン9が下方に延びており、リターンライン9の下端は燃焼炉3の中間部側面に接続されている。
【0016】
燃焼炉3内では、下部の給気ライン3cから導入される燃焼・流動用の空気により、上記投入口3aから投入された燃料を含む固形物が流動し、燃料は流動しながら約800〜900℃で燃焼する。サイクロン7には、燃焼炉3で発生した燃焼ガスが固体粒子を同伴しながら導入される。サイクロン7は、遠心分離作用により固体粒子と気体とを分離し、分離された固体粒子をリターンライン9を通して燃焼炉3に戻すと共に、固体粒子が除かれた燃焼ガスを排出口7aからガスラインを通じて後段のガス処理系に送出する。
【0017】
この燃焼炉3では「炉内ベット材」と呼ばれる固形物が発生し底部に溜まるが、この炉内ベット材で不純物(低融点物質等)が濃縮されて起こるベット材の焼結及び溶融固化、或いは不燃厨芥物による動作不良を抑制することが必要である。このため、燃焼炉3では、底部の排出口3dから炉内ベット材が定期的に外部に排出されている。また排出されたベット材は、循環ライン(図示せず)を通じて再び燃焼炉3に返送されている。また、このボイラ1に用いられるの燃料には、燃焼に不適である金属などの不適物が混入している場合が多いので、この不適物を燃焼炉3内から取り除くために、循環ライン上には、篩及び磁気分離装置を有する選別装置が設けられている。
【0018】
上記のガス処理系は、サイクロン7のガス排出口7aにガスラインを介して接続されたガス熱交換装置13と、このガス熱交換装置13の排出口13aにガスラインを介して接続されたバグフィルタ(集塵器)15とを備えている。ガス熱交換装置13には、排ガスの流路を横切るように水を流動させるボイラチューブ13bが設けられている。サイクロン24から送られた高温の排ガスがこのボイラチューブ13bに接触することで、排ガスの熱がチューブ内の水に回収され、発生した高温の水蒸気がボイラチューブ13bを通じて発電用のタービンに送られる。バグフィルタ15は、この可燃性ガスに未だ同伴している飛灰等の微粒子を除去する。バグフィルタ15の排出口15aから排出された清浄なガスはガスライン及びポンプ17を経由して煙突19から外部に排出される。
【0019】
上述の通り、このボイラ1では、木屑、タイヤ、RPF等が燃料として用いられており、燃焼炉3からは塩素を含んだ排ガスが発生する。このような塩素は、排ガスを構成する気体及び粒子に含まれている。この排ガスは、鉄を主成分とするボイラチューブ13bに接触しながらガス熱交換装置13を通過するので、排ガス中の粒子がボイラチューブ13bに付着し腐食させることが問題となる。また、上記燃料は、性状にムラがある廃棄物を含んでいるので、発生する排ガスの性状も一定ではなく、排ガスに起因するボイラチューブ13bの腐食のし易さも変動する。従って、ボイラ1の運転中には、ボイラチューブ13bに接触する排ガスをモニタし、ボイラチューブ13bの腐食のし易さが規定以上に高まったと判断される場合には、排ガスの性状を変更させるべく、燃料供給系を調整して投入される燃料の性状や量を変更するといった措置が必要である。
【0020】
また、ボイラ1の排ガス中には、腐食の原因とされるCl(塩素原子)が、例えば、NaCl、KCl、ZnClといった粒子状の塩を形成した状態や、例えば、HCl、Cl等のガス(気体)の分子を形成した状態で存在する。ここで、本発明者らの研究によれば、ボイラ1の排ガス中に存在するClの化合物の中でも、特に、Clを含む粒子状の塩がボイラチューブ13bに付着して腐食を発生させる主たる原因である一方、Clを含むガスは鉄製部品の腐食にあまり影響を与えないことが判った。更には、Clを含む粒子状の塩の中でも、粒径が小さい(粒径1μm以下)の微細粒子は、特に、腐食の原因となりやすいことが判明した。そして、ボイラチューブ13b等の鉄製部品の腐食のし易さは、排ガス中で粒子状の塩を形成しているClの濃度に高い相関関係があることを見出した。
【0021】
また、一般的にボイラから発生する排ガスにおいて、Clを含む塩の粒子の粒径の分布は小さい粒径に偏っており、Clを含む塩の粒子の大部分は粒径1μm以下の粒子の中に含まれている。従って、ボイラ1においても、排ガス中でClを含む粒子状の塩は、粒径が小さいものがほとんどであり、大部分は粒径1μm以下の粒子を形成していると考えることができる。
【0022】
以上の知見に基づき、ボイラ1の運転においては、所定の粒径以下(例えば、ここでは、粒径1μm以下)の粒子状の塩を形成しているClの濃度をモニタし、この濃度に基づいて、投入する燃料の調整を行うこととして、ボイラチューブ13bの腐食の抑制を図っている。
【0023】
具体的に、このような運転を可能にするため、ボイラ1は、ボイラチューブ13bの近傍を流動する排ガスを採取するためのモニタリングプローブ31と、このプローブ31で採取された排ガスを分析するガス分析装置40と、ガス分析装置40からの信号に基づいて処理を行う燃料制御部47と、燃料制御部47からの制御信号に応じて投入口3aに燃料を投入する燃料投入装置49と、を備えている。
【0024】
図2に示すように、上記プローブ31は、ガス熱交換部13のボイラチューブ13bよりも上流側の位置において、円柱形状をなす先端側をガス熱交換部13の内部に水平に突出させるように設けられている。プローブ31は、高温の排ガスに接触する外管33と、外管33の内側に同心に設けられた内管35と、その内管35の更に内側に設けられたガス採取管37とを有している。
【0025】
ガス熱交換部13の外側にあるプローブ31の基端側には、外管33に冷却水を供給する給水口33aと、内管35から冷却水を排出する排水口35aとが設けられている。給水口33aから導入された冷却水は、外管33と内管35との間を先端側に流動し、更に、内管35とガス採取管37との間を基端側に流動して、排水口35aから排出される。この冷却水によって、排ガスに晒されるプローブ31が冷却され、高温による損傷が防止される。
【0026】
上記ガス採取管37は、先端を下方に屈曲させ、外管33の先端側の下側面に設けられたガス採取口33aから、基端側のガス取出し口37bまで延在している。このガス採取管37によってガス熱交換部13の内部と外部とが連通されているので、ガス取出し口37bからの吸引により、ガス熱交換部13内を流動する排ガスを、排ガスに含まれる粒子と一緒に採取することができる。
【0027】
ここで、ガス熱交換部13におけるプローブ31の位置においては、排ガスは下向きに流動しているのに対し、ガス採取口33aは上記の通りプローブ31の下側面に設けられ、ガス採取口37aからは排ガスの流れに逆らって上向きにガスが吸引される。このように、プローブ31外側面の下流側にガス採取口33aを設けた構成によれば、排ガス中の大粒径の粒子は、重量が大きいのでガス採取口37aには吸い込まれず、その一方で、軽量の小粒径の粒子はプローブ31の側面を回り込んでガス採取口37aから吸い込まれる。
【0028】
従って、このプローブ31によれば、ガス採取管37の吸引力を適宜調整することで、所望の粒径以下の粒子のみを選択的に採取するといったことが可能である。ここでは、粒径1μm以下の粒子のみを採取すべくガス採取管37の吸引力が調整されている。また、ガス採取口37aが排ガスの流動方向に対向しないことから、大きい粒子が取り込まれることによるガス採取管37の閉塞が防止されるという効果もある。このようなガス採取管37で採取された排ガスは、粒径1μm以下の粒子を含んでおり、ガス取出し口37bを通じて、ガス分析装置40に送られる。
【0029】
図3に示すように、ガス分析装置40は、第1分析部41と、第2分析部42とを備えている。ガス分析装置40に導入された排ガスは2つに分けられ、上記第1及び第2の分析部41,42にそれぞれ導入される。
【0030】
第1分析部41では、導入された排ガスが、ガス吸収部412で吸収液に吹き込まれる。排ガス中に含まれていたClのうち、ガス吸収部412の吸収液には、粒径1μm以下の粒子状の塩を形成していたCl、及びガスの状態で存在していたClの両方が吸収されClイオンとして溶解する。この吸収液は、ろ過部413に送られてろ過処理され、固体成分とろ液とに分離される。分離された固体成分は系外に排出され、ろ液は、ろ液分析部414に送られる。ろ液分析部414では、ろ液中のClイオン濃度a2が測定されると共に、ろ液の体積a3が測定される。これらの測定値a2,a3は、第1演算部415に送られる。一方、ガス吸収部412で吸収液を通過したガスは、ガス量測定部416に送られ、体積a1が測定される。測定値a1は、第1演算部415に送られる。
【0031】
第1演算部415では、入力された測定値a1,a2,a3に基づいて、下式(1)の演算を行い、得られた値aを第3演算部43に送る。
a=a2・a3/a1 …(1)
ここで、値aの意味を考えると、値aは、排ガス中のClの濃度を示しており、このClは、粒径1μm以下の粒子状の塩を形成していたClと、ガスの状態で存在していたClとの両方を合わせたものである。
【0032】
一方、第2分析部42では、導入された排ガスがフィルタ420を通過する。このフィルタ420では、排ガスと一緒に導入された粒子が除去される。従って、排ガスに含まれていたClのうち、粒径1μm以下の粒子状の塩を形成していたClは、フィルタ420によって系外に取り除かれることになる。一方、フィルタ420を通過したガスは、ガス吸収部422に送られ、吸収液に吹き込まれる。ガス吸収部422で得られる吸収液には、排ガス中にガスの状態で存在していたClが吸収されClイオンとして溶解する。この吸収液は吸収液分析部424に送られ、Clイオン濃度b2が測定されると共に、吸収液の体積b3が測定される。これらの測定値b2,b3は、第2演算部425に送られる。一方、ガス吸収部422で吸収液を通過したガスは、ガス量測定部426に送られ、体積b1が測定される。測定値b1は、第2演算部425に送られる。
【0033】
第2演算部425では、入力された測定値b1,b2,b3に基づいて、下式(2)の演算を行い、得られた値bを第3演算部43に送る。
b=b2・b3/b1 …(2)
ここで、値bの意味を考えると、値bは、排ガス中のClの濃度を示しており、この場合のClには、排ガス中にガスの状態で存在していたClのみが含まれる。
【0034】
第3演算部43では、入力された値a,bに基づいて、下式(3)の演算を行い、得られた値Dを信号として出力し燃料制御部47に送る。
D=a−b …(3)
ここで、値Dは、排ガス中で粒径1μm以下の粒子状の塩を形成していたClの濃度を示すことになる。従って、Dが大きいほど、排ガスにはボイラチューブ13bの腐食の原因となる物質が多く含まれ、ボイラチューブ13bがより腐食し易い状態であることを意味する。
【0035】
以上のような仕組みにより、プローブ31及びガス分析装置41では、排ガス中で粒径1μm以下の粒子状の塩を形成しているClの濃度が自動的に測定され燃料制御部47に送られる(濃度取得工程)。本来、粒子状の塩を形成しているClの濃度(値D)を単独で、直接測定することは困難であるところ、このガス分析装置41では、比較的測定が容易な上記値aと値bとを測定し、両者の差を算出することにより、必要な値Dを算出することができる。その後、燃料制御部47では、ガス分析装置41から送られたDの値を、予め定められた規定値とを比較し、規定値以上の場合は、燃料投入装置49に燃料投入量の調整を指示する所定の制御信号を送出する。
【0036】
燃料投入装置49は燃料を搬送するスクリュー部を有しており、燃料制御部47からの制御信号に応じてスクリュー部を回転させることで、燃料を所望の速度で搬送し燃料投入口3aから燃焼炉3内に投入する(燃料投入工程)。燃料投入装置49は、燃料制御部47から上記所定の制御信号を受信すると、燃料投入装置49はスクリュー部の回転を減速させる。これにより、燃焼炉3内への燃料供給が減少し(燃料調整工程)、燃焼炉3から発生する排ガスが減少し、ボイラチューブ13bの腐食が発生し難い状態に移行する。なお、上記制御信号を受信した場合、燃料投入装置49は、スクリュー部を停止させることとしてもよい。
【0037】
ボイラ1及び上述の運転方法によれば、排ガス中で粒径1μm以下の粒子状の塩を形成しているClの濃度を基準として、燃焼炉3に投入される燃料が調整されるので、ボイラチューブ13bの腐食の危険性に応じてボイラチューブ13bに接触する排ガスが調整される。従って、ボイラチューブ13bの腐食を抑制し、ボイラの長寿命化を図ることができる。また、ボイラチューブ13bへのデポジットの付着が抑制されることで、排ガスの流路の閉塞に起因する運転トラブルの抑制や、ボイラチューブ13bの伝熱効率の向上といった効果もある。
【0038】
また、排ガス中には、粒径1μm以上の大きい飛灰の粒子も大量に含まれているが、このような大きい飛灰は、粒子状の塩を形成しているClをあまり含んでいないと考えられる。そこで、上記プローブ31では採取する粒子を、粒径1μm以下のものに限ることとし、飛灰の大きい粒子は採取しない仕組みを採用している。従って、大量に存在する大きい飛灰粒子を除外することができ、ガス分析装置40では、適切な量のサンプルの分析により、精度が高い濃度を算出することができる。
【0039】
また、前述した通り、塩を形成しているClの大部分は粒径1μm以下の小さい粒子を形成していることから、上記プローブ31によって粒径1μm以下の粒子に限定して採取しても、粒子状の塩を形成しているClの粒子の大部分を採取することができる。従って、粒子状の塩を形成しているClの粒子のすべてを採取する場合に比べても、遜色なくボイラチューブ15bの腐食のし易さを推定することができる。
【0040】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、燃料投入装置49として、木屑、タイヤ、RPF等の廃棄物系の燃料と、塩素の発生が少ない石炭等の燃料と、を適宜混合して燃焼炉3に投入可能な装置を採用してもよい。この場合、燃料制御部47から燃料投入量の調整を指示する所定の制御信号を受信したときに、燃料投入装置49は、石炭等の混合割合を増加する操作を行うことで、発生する排ガス中の塩素を低減させるようにしてもよい。
【0041】
また、実施形態では、排ガス中で塩を形成し粒径1μm以下の粒子として存在するClの濃度Dを、ガス分析装置41によって自動的に算出しているが、プローブ31から採取された排ガスを、ガス分析装置40、第1分析部41、及び第2分析部42と同様の手法を用いた手作業の分析によって濃度Dを算出してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係るボイラの一実施形態を示す図である。
【図2】(b)は、図1のボイラにおいて、ガス熱交換部に取り付けられたプローブを拡大して示す断面図であり、(a)は、そのII-II断面図である。
【図3】図1のボイラに用いられるガス分析装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0043】
1…ボイラ、3…燃焼炉、31…モニタリングプローブ(ガス採取手段)、40…ガス分析部(濃度取得手段)41…第1分析部(第1の測定手段)、42…第2分析部(第2の測定手段)、47…燃料制御部(燃料調整手段)、49…燃料投入装置(燃料調整手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入された燃料を燃焼させる燃焼炉と、
前記燃焼炉から発生する排ガス中で粒子状の塩を形成しているClの濃度を取得する濃度取得手段と、
前記濃度取得手段で取得された前記濃度に基づいて、前記燃焼炉に投入する燃料を調整する燃料調整手段と、を備えたことを特徴とするボイラ。
【請求項2】
前記濃度取得手段は、
前記排ガス中にガス状で存在するClと前記粒子状の塩を形成しているClとを含めたClの濃度を測定する第1の測定手段と、
前記排ガス中にガス状で存在するClの濃度を測定する第2の測定手段と、を有し、
前記第1の測定手段で得られたClの濃度と、前記第2の測定手段で得られたClの濃度と、に基づいて前記粒子状の塩を形成しているClの濃度を得ることを特徴とする請求項1に記載のボイラ。
【請求項3】
前記濃度取得手段は、
前記排ガスの流路から前記排ガスを採取するガス採取手段を有し、
前記ガス採取手段は、前記流路における排ガスの流動方向とは反対の方向に前記排ガスを吸引して採取することを特徴とする請求項1又は2に記載のボイラ。
【請求項4】
ボイラの燃焼炉に燃料を投入する燃料投入工程と、
前記燃焼炉から発生する排ガス中で粒子状の塩を形成しているClの濃度を取得する濃度取得工程と、
前記濃度取得工程で取得された前記濃度に基づいて、前記燃料投入工程で投入する燃料を調整する燃料調整工程と、を備えたことを特徴とするボイラの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−261523(P2008−261523A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−103098(P2007−103098)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】