説明

ボイラ用給水装置

【課題】 水処理剤を使用することなく、ボイラの腐食と復水配管の腐食とをともに抑制できるボイラ用給水装置を実現する。
【解決手段】 復水を給水へ回収する復水配管10を備えたボイラ用給水装置1であって、給水経路3と、この給水経路3に設けられた濾過処理部4と、この濾過処理部4の下流側へ未濾過水を供給するバイパス経路7と、前記給水経路3に設けられた濾過水流量制御バルブ13と、前記バイパス経路7に設けられた未濾過水流量制御バルブ14と、濾過水と未濾過水とを混合した給水が、蒸気ボイラ2の腐食と前記復水配管10の腐食をともに抑制可能なアルカリ度となるように前記濾過水流量制御バルブ13および前記未濾過水流量制御バルブ14を開閉制御する制御部15と、を備えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、外部から供給される水道水,工業用水,地下水等の原水の水質を改質した給水をボイラへ供給する給水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給水を加熱して蒸気を生成するボイラへは、原水から不純物や溶存気体を除去し水質を改質した給水が供給されている。従来、ボイラ用給水装置としては、逆浸透膜を用いた逆浸透膜部により原水中に含まれている不純物等を濾過し、また原水中の溶存気体を脱気処理部によって除去し、ボイラでの使用に適した水質に改質するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平5−220480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、ボイラ用給水装置に逆浸透膜を組み込んだ場合、原水に含まれているアルカリ成分(炭酸水素塩,炭酸塩など)も除去されてしまう。アルカリ成分は、ボイラ内で熱分解により水酸化物イオンと炭酸ガスを生成し、水酸化物イオンは、ボイラ缶水のpHを上昇させ、ボイラの腐食を抑制する作用がある。一方、炭酸ガスは、蒸気とともに復水配管へ移行し、蒸気の凝縮水,すなわち復水へ溶解してそのpHを低下させ、復水配管の腐食を促進する作用がある。すなわち、アルカリ成分が除去された給水は、ボイラの腐食が促進されることがある反面、復水配管の腐食を抑制することができる。このため、ボイラの腐食を抑制する目的で、通常、アルカリ剤などを含む水処理剤を必要とする。
【0004】
これに対し、ボイラ用給水装置に逆浸透膜を組み込まない場合、原水に含まれているアルカリ成分をそのままボイラへ供給することができる。すなわち、原水中のアルカリ成分が十分に多い地域では、ボイラ缶水のpHを上昇させ、ボイラの腐食を抑制することができる反面、復水配管の腐食が促進されることがある。このため、復水配管の腐食を抑制する目的で、通常、中和型復水処理剤などの水処理剤を必要とする。
【0005】
このように、給水中のアルカリ成分は、ボイラおよび復水配管の腐食に対して促進と抑制という相反する作用を与えやすいため、水処理剤を使用することなく、ボイラの腐食と復水配管の腐食とをともに抑制できるボイラ用給水装置が望まれていた。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、水処理剤を使用することなく、ボイラの腐食と復水配管の腐食とをともに抑制できるボイラ用給水装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、復水を給水へ回収する復水配管を備えたボイラ用給水装置であって、給水経路と、この給水経路に設けられた濾過処理部と、この濾過処理部の下流側へ未濾過水を供給する未濾過水供給経路と、前記給水経路に設けられた濾過水流量制御バルブと、前記未濾過水供給経路に設けられた未濾過水流量制御バルブと、濾過水と未濾過水とを混合した給水が、ボイラの腐食と前記復水配管の腐食をともに抑制可能なアルカリ度となるように前記濾過水流量制御バルブおよび前記未濾過水流量制御バルブを開閉制御する制御部と、を備えて構成することを特徴とするものである。
【0008】
請求項1に記載の発明では、前記制御部により、前記濾過水流量制御バルブと前記未濾過水流量制御バルブとが開閉制御され、アルカリ成分が除去された濾過水とアルカリ成分が除去されていない未濾過水との混合割合が調節される。これにより、濾過水と未濾過水とを混合した給水のアルカリ度が調整され、この結果、ボイラの腐食と復水配管の腐食とがともに抑制可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、濾過水と未濾過水とを混合した給水の水質検出手段を備えることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2に記載の発明では、前記水質検出手段の検出結果に基づいて、前記制御部により前記濾過水流量制御バルブおよび前記未濾過水流量制御バルブが開閉制御され、濾過水と未濾過水との混合割合が調節される。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、濾過水と未濾過水とを任意の割合で混合することができるので、ボイラ給水のアルカリ度を所定の値に調整することができる。この結果、水処理剤を使用することなく、ボイラの腐食と復水配管の腐食とをともに抑制することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、前記水質検出手段の検出結果に基づいて濾過水と未濾過水との混合割合が調節できるので、給水のアルカリ度をより正確に調整することができる。この結果、水処理剤を使用することなく、ボイラの腐食と復水配管の腐食とをより効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
つぎに、この発明の実施の形態に係るボイラ用給水装置を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
(実施形態1)
まず、この発明の第一実施形態について説明する。図1は、この発明を実施するボイラ用給水装置の構成を示す概略的な説明図である。
【0015】
図1において、ボイラ用給水装置1は、水道水,工業用水,地下水等の水源から供給される原水が貯留されている原水タンク(図示省略)から、蒸気ボイラ2へ給水を供給するものであり、給水を流す給水経路3を備えている。この給水経路3は、濾過処理部4,給水タンク5およびポンプ6を上流側から下流側へ向かってこの順に備えている。前記給水経路3は、前記濾過処理部4の上流側に原水中の硬度成分を除去する軟水化処理部(図示省略)などの水質改質部を備えている。
【0016】
前記濾過処理部4は、濾過膜により、前記給水経路3を流れる給水中に含まれる不純物の除去を行う。濾過膜としては、逆浸透膜(以下、「RO膜」と云う。)やナノ濾過膜(以下、「NF膜」と云う。)などを挙げることができる。かかる濾過膜によって除去される不純物には、炭酸水素塩,炭酸塩,水酸化物などのアルカリ成分も含まれる。
【0017】
ここで、前記RO膜と前記NF膜について説明する。前記RO膜は、分子量が数十程度のイオン類を濾別可能な液体分離膜である。また、前記NF膜は、2nm程度より小さい粒子や高分子(分子量が最大数百程度のもの)の透過を阻止することができる液体分離膜であり、濾過機能の点において、限外濾過膜(分子量が1,000〜300,000程度のものを濾別可能な膜)と前記RO膜との中間に位置する機能を有するものである。
【0018】
前記ボイラ用給水装置1において、前記濾過処理部4の上流側の前記給水経路3は、前記給水タンク5とバイパス経路7(未濾過水供給経路)で接続されている。さらに、前記ボイラ用給水装置1は、前記蒸気ボイラ2から蒸気供給配管8を介して負荷機器9へ供給された蒸気が凝縮することにより生成した復水を回収する復水配管10を備えている。この復水配管10は、前記給水タンク5と接続されている。
【0019】
ここで、前記負荷機器9は、前記蒸気ボイラ2で発生した蒸気を用いて所要の熱交換をするための熱交換器である。
【0020】
前記給水タンク5には、貯留された給水を循環させる循環経路11の両端部がそれぞれ接続されており、この循環経路11には、脱気処理部12が接続されている。この脱気処理部12は、前記蒸気ボイラ2や前記復水配管10の溶存酸素による腐食を抑制する目的で、復水が混合された給水に含まれる溶存酸素を除去するものである。前記脱気処理部12には、たとえばスプレー塔や充填塔内へ給水を噴霧するとともに、この塔内を減圧して排気する塔式脱酸素装置,スプレー塔や充填塔内へ給水を噴霧するとともに、この塔内へ窒素ガスを供給して接触させる窒素置換式脱酸素装置,気体は透過するが液体は透過しない脱気膜に対し、この膜の一方の側へ給水を通水し、他方の側を減圧する膜式脱酸素装置などを使用することができる。
【0021】
前記濾過処理部4よりも上流側であって、前記バイパス経路7の接続箇所よりも下流側の前記給水経路3には、濾過水流量制御バルブ13が設けられている。また、前記バイパス経路7には、未濾過水流量制御バルブ14が設けられている。これら濾過水流量制御バルブ13と未濾過水流量制御バルブ14は、制御部15により開閉制御される。この制御部15は、前記濾過処理部4で濾過された濾過水と前記バイパス経路7からの未濾過水とを混合した給水が、前記蒸気ボイラ2の腐食と前記復水配管10の腐食をともに抑制可能なアルカリ度となるように、前記濾過水流量制御バルブ13および前記未濾過水流量制御バルブ14の開閉制御を行うものである。ここにおいて、アルカリ度は、JIS K0101に規定される酸消費量(pH4.8)に相当するMアルカリ度や、同じく酸消費量(pH8.3)に相当するPアルカリ度のいずれかを指標として用いるのが好適である。
【0022】
つぎに、この第一実施形態のボイラ用給水装置1の作用について説明する。前記原水タンクから供給される給水は、前記給水経路3上において、前記軟水化処理部(図示省略)で軟水化され、また前記濾過処理部4で不純物(アルカリ成分を含む各種イオン類,懸濁物質など)が除去されて水質が改質され、前記給水タンク5に貯留される。さらに、前記給水タンク5内の給水は、前記循環経路11を循環しながら前記脱気処理部12により脱気処理される。そして、水質が改質された前記給水タンク5内の給水は、前記ポンプ6を駆動させることにより、前記蒸気ボイラ2へ供給される。
【0023】
前記蒸気ボイラ2では、給水を加熱して蒸気が生成され、この蒸気が前記蒸気供給配管8を介して前記負荷機器9へ供給される。そして、前記負荷機器9を通過した蒸気は、潜熱を失って一部が凝縮水へ変わり、この凝縮水は、前記復水配管10を通って前記給水タンク5へ還流する。
【0024】
ここで、給水のアルカリ度が低い場合、前記蒸気ボイラ2内の缶水のpHが適切な値(具体的には、pH11〜12)まで上昇しにくく(すなわち、熱分解によって生成する水酸化物と炭酸ガスの量が少なくなる。)、前記蒸気ボイラ2において、缶体下部の缶寄せ部や水管部などの腐食が促進されてしまう。一方、給水のアルカリ度が高い場合、前記蒸気ボイラ2内の缶水のpHが上昇しやすい(すなわち、熱分解によって生成する水酸化物と炭酸ガスの量が多くなる。)が、蒸気中へ炭酸ガスが持ち込まれやすくなり、前記復水配管10の腐食が促進されてしまう。そこで、この第一実施形態のボイラ用給水装置1では、前記蒸気ボイラ2の腐食と前記復水配管10の腐食とをともに抑制することができるよう、前記給水タンク5内の給水のアルカリ度が所定の値(たとえば、Mアルカリ度で5〜20mg/リットル)に調整される。
【0025】
前記給水タンク5内の給水のアルカリ度の調整は、具体的には、前記制御部15により、前記濾過水流量制御バルブ13と前記未濾過水流量制御バルブ14を制御して、前記給水タンク5へ流入する濾過水と未濾過水の各流量を調節し、これら濾過水と未濾過水の混合割合を調節することにより行われる。
【0026】
以上のように、前記ボイラ用給水装置1は、アルカリ成分が除去された濾過水とアルカリ成分が除去されていない未濾過水とを任意の割合で混合して、アルカリ度を調整した給水を前記蒸気ボイラ2へ供給できるように構成しているので、水処理剤を使用することなく、前記蒸気ボイラ2の腐食と前記復水配管10の腐食とをともに抑制することができる。
【0027】
(実施形態2)
つぎに、この発明の第二実施形態について説明する。図2は、第二実施形態に係るボイラ用給水装置の構成を示す概略的な説明図である。
【0028】
図2に示す第二実施形態のボイラ用給水装置20の基本的な構成は、前記第一実施形態のボイラ用給水装置1と同一であり、以下の説明では、前記第一実施形態のボイラ用給水装置1と異なる部分について説明する。
【0029】
前記ボイラ用給水装置20では、前記バイパス経路7は、下流側端部が、前記濾過処理部4の下流側の前記給水経路3に接続されている。そして、この給水経路3には、前記バイパス経路7の下流側端部を接続した箇所の下流側に、水質計21(水質検出手段)が設けられている。この水質計21は、たとえばJIS K0101に規定される酸消費量(pH4.8)や酸消費量(pH8.3)の測定を自動化したアルカリ度計を使用することができる。具体的には、このアルカリ度計では、滴定による終点を、光学的方法(指示薬による検水の変色を透過率変化で検出),あるいは電気化学的方法(検水のpH変化をpH計で検出)などで検出する。そして、ロードセルにより検水の重量変化から検出する方法、あるいは色素を添加した滴定液を使用し、検水の色相変化から光学的に検出する方法などによって滴定量を求める。また、前記水質計21には、電気伝導度計やpH計を使用することもできる。この場合、予め給水のアルカリ度と電気伝導度,もしくはpHとの相関を求めておくことが好ましい。そして、前記水質計21の検出結果は、前記制御部15へ入力されるようになっている。
【0030】
前記ボイラ用給水装置20の作用は、前記第一実施形態のボイラ用給水装置1と基本的には同じであり、異なる部分についてのみ説明する。
【0031】
前記ボイラ用給水装置20では、前記濾過処理部4の上流側の前記給水経路3を流れる給水(未濾過水)が、前記バイパス経路7を介して前記濾過処理部4の下流側の前記給水経路3へ供給されて濾過水と混合される。そして、この濾過水と未濾過水とが混合された給水の水質(Mアルカリ度,Pアルカリ度,電気伝導度,pHなど)が、前記水質計21によって検出される。そして、この検出結果に基づいて、前記制御部15により前記濾過水流量制御バルブ13および前記未濾過水流量制御バルブ14が開閉制御される。この制御により、給水のアルカリ度がより正確に調整される。この結果、水処理剤を使用することなく、前記蒸気ボイラ2の腐食と前記復水配管10の腐食とをより効果的に抑制することができる。
【0032】
(実施形態3)
前記ボイラ用給水装置20における前記水質計21は、前記給水タンク5と前記蒸気ボイラ2とを接続する前記給水経路3に設けられていてもよい。あるいは、前記水質計21は、前記循環経路11に設けられていてもよい。このように構成すると、濾過水と未濾過水,さらに復水が混合された給水の水質をより正確に検出できるので、給水のアルカリ度を所望の値に精度よく調整することができる。
【0033】
(実施形態4)
前記ボイラ用給水装置1,20では、未濾過水を供給するための未濾過水供給経路は、前記バイパス経路7により構成され、未濾過水として前記濾過処理部4よりも上流側の前記給水経路3を流れる給水が利用されているが、この給水経路3以外の外部経路から未濾過水を供給してもよい。
【0034】
(実施形態5)
前記ボイラ用給水装置1,20において、復水に含まれる溶存酸素濃度が十分に低い場合には、前記脱気処理部12を前記濾過処理部4と前記給水タンク5とを接続する前記給水経路3に設けてもよい。
【0035】
(実施形態6)
前記濾過水流量制御バルブ13は、前記濾過処理部4の下流側に設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明に係るボイラ用給水装置の第一実施形態の構成を示す概略的な説明図である。
【図2】この発明に係るボイラ用給水装置の第二実施形態の構成を示す概略的な説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1,20 ボイラ用給水装置
2 蒸気ボイラ(ボイラ)
3 給水経路
4 濾過処理部
7 バイパス経路(未濾過水供給経路)
10 復水配管
13 濾過水流量制御バルブ
14 未濾過水流量制御バルブ
15 制御部
21 水質計(水質検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
復水を給水へ回収する復水配管を備えたボイラ用給水装置であって、
給水経路と、この給水経路に設けられた濾過処理部と、この濾過処理部の下流側へ未濾過水を供給する未濾過水供給経路と、前記給水経路に設けられた濾過水流量制御バルブと、前記未濾過水供給経路に設けられた未濾過水流量制御バルブと、濾過水と未濾過水とを混合した給水が、ボイラの腐食と前記復水配管の腐食をともに抑制可能なアルカリ度となるように前記濾過水流量制御バルブおよび前記未濾過水流量制御バルブを開閉制御する制御部と、を備えて構成する
ことを特徴とするボイラ用給水装置。
【請求項2】
濾過水と未濾過水とを混合した給水の水質検出手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のボイラ用給水装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−239649(P2006−239649A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−62271(P2005−62271)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】