説明

ボイルオフガス送出設備の運転方法

【課題】圧縮機から吐出されるボイルオフガスの温度を圧縮機下流側の配管設備で決まる適正温度に設定して、外気温度に関係なく常に圧縮機の高効率運転を可能とするボイルオフガス送出装置の運転方法を提供する。
【解決手段】LNGタンク11内で発生したボイルオフガスを、サクションクーラー13内で直接LNGにて冷却し、圧縮機15で加圧して送出ガス配管17に送り出すボイルオフガス送出設備10の運転方法において、圧縮機15の吐出配管16に温度計21を設け、温度計21の信号を取込む温度調節計22の出力によって、サクションクーラー13へ供給するLNGのバルブ20を制御して、圧縮機15から吐出されるボイルオフガスの温度制御をすることにより、圧縮機15から吐出されるイルオフガスの温度を圧縮機15の下流側の配管設備16、17の材質で決まる適正温度に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LNGタンク内で発生したボイルオフガスをサクションクーラー内で直接LNGにて冷却し、圧縮機で加圧して送出ガス配管に送り出すボイルオフガス送出設備の運転方法に関し、詳細には、圧縮機の入口側ボイルオフガスの温度制御から圧縮機の吐出側ボイルオフガスの温度制御に変更することで、圧縮機の高効率運転を行なう運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LNG(液化天然ガス)基地では、LNGタンク内に貯留されたLNGを蒸発器に供給して気化させ天然ガスとし、送出ガス配管を介して需要家に送り出している。また、LNG基地では、LNGタンク内で自然気化して発生したボイルオフガス(以下、単にBOGという場合がある。)を圧縮機に供給し送出ガス圧力まで加圧して送出ガス配管に送り出し、蒸発器で発生させた天然ガスと合流させている。ここで、圧縮機にBOGを供給する場合、圧縮機の上流側にLNGタンク内から払い出されるLNGを用いてBOGを冷却するサクションクーラー(以下、単にS/Cという場合がある。)を設置し、一定温度に冷却したBOGを圧縮機に供給している。これによって、圧縮機の高効率運転を行なうことができ、更に圧縮機から流出するBOGの温度を送出ガス配管の許容温度範囲となるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−146094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
S/C内で冷却されるBOGの温度制御は、S/CのBOG出口側の温度計の信号を取込む温度調節計により、ある一定の温度設定にてBOG冷却用のLNG量をS/C内で散布しBOGを冷却している。
【0005】
そして、冷却されたBOGは圧縮機にて加圧し送出ガス配管に送り出しているが、この圧縮機は一般に断熱構造となっていないため、圧縮によるBOGの温度上昇に加えて、S/Cから圧縮機までの配管と圧縮機に吸熱が外部から加わり、圧縮機から吐出するBOG(以下、吐出ガスと称す。)の温度は季節によって変動する。例えば、夏季では圧縮機の吐出ガスの温度は圧縮機下流側の配管設備の材質の許容温度範囲内に保持されるが、冬季に比べて大きく上昇する。従って、夏季では圧縮機下流側の配管設備の材質の最低許容範囲付近において圧縮機の吐出ガスの温度制御を行えば、圧縮機に供給されるBOGの温度を更に低下させることができる。このため、年間を通じて圧縮機に供給されるBOGの温度を一定に制御する運転状況下では、圧縮機の高効率運転が実施されていないという問題がある。
【0006】
本発明は係る事情に鑑みてなされたもので、圧縮機の吐出ガスの温度を圧縮機下流側の配管設備の材質で決まる適正温度に設定し、外気温度に関係なく常に一定温度に保持し、圧縮機の高効率運転を可能とするボイルオフガス送出設備の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う本発明に係るボイルオフガス送出設備の運転方法は、LNGタンク内で発生したボイルオフガスを、サクションクーラー内で直接LNGにて冷却し、圧縮機で加圧して送出ガス配管に送り出すボイルオフガス送出設備の運転方法において、
前記圧縮機の吐出配管に温度計を設け、該温度計の信号を取込む温度調節計の出力によって、前記サクションクーラーへ供給する前記LNGのバルブを制御して、前記圧縮機から吐出されるボイルオフガスの温度制御をすることにより、該圧縮機から吐出されるボイルオフガスの温度を該圧縮機の下流側の配管設備の材質で決まる適正温度に設定する。
圧縮機の吐出配管に設けた温度計の信号を取込む温度調節計の出力に基づいて、S/Cに供給するLNGのバルブ開度を制御し、S/Cから外部に排出するBOG温度をカスケード制御するので、圧縮機の吐出ガス温度を一定に保ちながら圧縮機の下流側の配管設備の材質で決まる適正温度に設定することができる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載のボイルオフガス送出設備の運転方法において、圧縮機から吐出される吐出ガスの温度を圧縮機下流側の配管設備の材質で決まる適正温度に設定することで、圧縮機の高効率運転を可能とする。例えば、圧縮機の吐出ガスの温度にて温度調節計により、冬季の圧縮機の吐出ガス温度程度に設定し制御した場合は、年間を通じて冬季を除く季節では圧縮機に供給されるBOGの単位体積当りの質量が増加し、単位時間当たりの圧縮機で処理するBOG量が増加する。このことにより、年間を通じてLNGタンク内で発生するBOGを本発明の運転方法で運用した場合は、圧縮機の年間総運転時間を短縮させることができ、また、圧縮機の総消費電力原単位を下げることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の一実施の形態に係るボイルオフガス送出設備の運転方法が適用されるボイルオフガス送出設備の説明図である。
【0010】
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係るボイルオフガス送出設備の運転方法が適用されるボイルオフガス送出設備10は、LNGタンク11内で発生したBOGを直接LNGにて冷却するサクションクーラー13と、サクションクーラー13内で冷却されるBOGを加圧して送出ガス配管17に送り出す圧縮機15を有している。また、ボイルオフガス送出設備10は、LNGタンク11から排出されるBOGをサクションクーラー13に供給するBOG配管12と、圧縮機15で圧縮したBOGを送出ガス配管17に吐出する吐出配管16とを有している。
【0011】
サクションクーラー13には、LNGタンク11内のBOGがBOG配管12を介して流入する。一方、サクションクーラー13内には、LNGタンク11から図示しないLNG払い出し配管ラインを介して払い出されるLNGが散布されて、流入したBOGは、サクションクーラー13内で散布されるLNGで冷却される。そして、サクションクーラー13内で冷却されたBOGは、圧縮機吸入配管14を介して外部に排出される。なお、サクションクーラー13には、散布されたLNGが底部に溜まるため、図示しない重質分ポンプにより図示しないLNG受入ラインに戻される。
【0012】
ここで、圧縮機吸入配管14には温度計18が設けられ、温度計18の信号を取込む温度調節計19の出力に基づいて温度コントロールバルブ20のバルブ開度が調節され、サクションクーラー13内に散布されるLNG量が制御されている。これにより、サクションクーラー13内で冷却されて外部に排出されるBOGの温度が一定に保たれる。
【0013】
圧縮機15は、サクションクーラー13で冷却されて供給されるBOGを加圧し送出ガス配管17に送り出しているが、圧縮機15をより高効率運転するには、圧縮機15の吐出ガスの温度にて、圧縮機15の入口側のBOGの温度を制御することが望ましい。このため、吐出配管16に温度計21を設け、温度計21の信号を取込む温度調節計22と温度調節計19との組合せによりカスケード制御し、圧縮機15の吐出ガス温度を年間を通じて一定に保つ運転方法により、圧縮機15の高効率運転が可能となる。
【0014】
以上のような構成とすることで、LNGタンク内11で発生したBOGを送出ガス圧力まで加圧して送出ガス配管17へ送り出し、図示しない蒸発器で蒸発させた天然ガスと合流させて需要家に供給することができる。
【0015】
続いて、本発明の一実施の形態に係るボイルオフガス送出設備10の運転方法について説明する。
ここで、LNG基地においては、圧縮機15は複数台設置されているため、吐出配管16に設置する温度計21と温度計21の信号を取込む温度調節計22の運用方法は、以下のようになる。
【0016】
例えば、圧縮機15を1台運転して運用する場合は、一つの圧縮機15の吐出配管16に温度計21を設け、温度計21の信号を取込む温度調節計22と温度調節計19との組合せにより温度コントロールバルブ20をカスケード制御することで、圧縮機15からの吐出ガスの温度を圧縮機15下流側の配管設備(吐出配管16および送出ガス配管17)の材質で決まる適正温度に設定することができ、圧縮機15をより高効率運転することができる。また、圧縮機15を2台運転して運用する場合は、圧縮機15の吐出ガス温度の低い方が圧縮機15下流側の配管設備の材質の最低許容最低温度に近い値となるので、吐出ガス温度の低い方の圧縮機15に接続された吐出配管16に温度計21と温度調節計22を設けてカスケード制御することにより、圧縮機15からの吐出ガスの温度を圧縮機15下流側の配管設備の材質で決まる適正温度に設定することができ、圧縮機15をより高効率運転することができる。
【0017】
例えば、レシプロ型の圧縮機において、前記運用を行った場合には、圧縮機15で1回の加圧動作で処理される容積は一定なので、BOGの体積が減少すると、圧縮機15の1回の加圧動作で処理されるBOGの質量(BOG処理量)は増加し、また、消費電力も増加することになる。しかし、LNGタンク11内で年間を通じて発生するBOG量を本発明にて処理すると、圧縮機15の単位時間当たりのBOG処理量は増加しているので、年間の圧縮機15の総運転時間を減少させることができる。これによって、圧縮機15および付帯装置の運転に要する消費電力を削減することが可能となり、ボイルオフガス送出設備10の運転コストを低減することができる。
【0018】
以上、本発明に係る一実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
例えば、レシプロ型圧縮機を例に説明したが、ターボ型圧縮機を使用しても良い。また、BOGの温度計に熱電対または、抵抗測温体を使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態に係るボイルオフガス送出設備の運転方法が適用されるボイルオフガス送出設備の説明図である。
【符号の説明】
【0020】
10:ボイルオフガス送出設備、11:LNGタンク、12:BOG配管、13:サクションクーラー、14:圧縮機吸入配管、15:圧縮機、16:吐出配管、17:送出ガス配管、18:温度計、19:温度調節計、20:温度コントロールバルブ、21:温度計、22:温度調節計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LNGタンク内で発生したボイルオフガスを、サクションクーラー内で直接LNGにて冷却し、圧縮機で加圧して送出ガス配管に送り出すボイルオフガス送出設備の運転方法において、
前記圧縮機の吐出配管に温度計を設け、該温度計の信号を取込む温度調節計の出力によって、前記サクションクーラーへ供給する前記LNGのバルブを制御して、前記圧縮機から吐出されるボイルオフガスの温度制御をすることにより、該圧縮機から吐出されるボイルオフガスの温度を該圧縮機の下流側の配管設備の材質で決まる適正温度に設定することを特徴とするボイルオフガス送出設備の運転方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−64126(P2008−64126A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−239205(P2006−239205)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(598166696)北九州エル・エヌ・ジー株式会社 (5)
【Fターム(参考)】