説明

ボイル緑色野菜の製造方法

【発明の課題】緑色野菜のボイル後の緑色を維持して変色や退色を防止し、かつ保存性も良好なボイル緑色野菜を得るためのボイル野菜の製造方法を提供する。
【解決手段】緑色野菜を酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどの有機酸塩及びリン酸のアルカリ金属塩の群から選ばれる一種以上と、マスタード末やプルーンエキスを含有したpH6〜8.5の水溶液中でボイルするか、緑色野菜をボイルし、ボイル後の緑色野菜を、有機酸のアルカリ金属塩およびリン酸のアルカリ金属塩の群から選ばれる1種以上と共に、マスタードおよび/またはプルーンを含有する水溶液に浸漬することによる緑色野菜の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
緑色野菜のボイル後の緑色を維持して変色や退色を防止し、かつ保存性にも優れたボイル緑色野菜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロッコリー、アスパラガス、ホウレン草、枝豆、グリーンピースや絹さやなどの緑色野菜は、具材や付け合せ等の目的で様々な加工食品に用いられている。緑色野菜は加工に際して、野菜に含有される酵素の働きに起因する変質、例えば退色、変色、異臭発生などを防止するため、野菜を熱湯または蒸気で短時間加熱し、酵素を失活させるブランチング処理が通常行われている。
【0003】
緑色野菜の緑色は組織中に含まれるクロロフィルによるものであるが、クロロフィルは熱や酸に弱い。従って、従来から加工食品に用いられてきた緑色野菜はボイルによってその緑色が退色し、鮮やかさが失われ、褐色に変色するなど価値が著しく低下したものであった。
【0004】
また加熱調理後の緑色野菜は保存性が悪く、弁当などの加工食品に用いるには不向きであることから、保存性を向上させるために酸性の水溶液へ浸漬するなどの処理をすることが多かった。しかしながら、従来の酸性水溶液で処理すると保存性は改善されるものの緑色野菜中のクロロフィルが、酸などによりフェオフィチンやフェオホルバイドといった褐色成分に変化するため、緑色の退色がより一層顕著なものとなった。
【0005】
このような緑色野菜の変色や退色を防止する手段として、緑色野菜に凍結・解凍等の前処理をした後、アルカリ性溶液に浸漬し、その後多価陽イオンを含む溶液に浸漬する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながらこの方法は前処理後アルカリ性溶液に浸漬するものであり、食するには好ましくない風味が付き、浸漬処理後の緑色野菜の保存性が悪いなどの問題点があった。また、緑色野菜の組織の軟化が無いとしているが、その効果は必ずしも十分と言えるものではなかった。
【0006】
また別の手段として、緑黄色野菜に塩基性アミノ酸及びそれを主成分とするオリゴペプチドの少なくとも1種の化合物を添加し、加熱処理する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、該方法は処理後の緑色野菜の保存性が悪いという問題点を有していた。
【0007】
また、緑色野菜を酢酸ナトリウム、アミノ酸および酢酸ナトリウム以外の有機酸塩を含有し、pHが6.0〜7.0の水溶液中でブランチングする第一工程、次いで酢酸ナトリウムおよび糖類を含有し、さらに有機酸および/または酢酸ナトリウム以外の有機酸塩を含有するpH4.5〜6.5の水溶液中に浸漬する第二工程を含む緑色野菜の加工方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。しかし、この方法でも、ボイル後の緑色野菜の退色、変色を抑制するには、充分ではなかった・
【0008】
【特許文献1】特開2000−004821号公報
【特許文献2】特開2003−210130号公報
【特許文献3】特開2006−158293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ボイル後の緑色野菜の緑色を維持し、かつ保存性も良好な緑色野菜を得るためのボイル野菜の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、緑色野菜をボイルする際に、様々な食品等を添加し、その結果、緑色野菜を、有機酸のアルカリ金属塩およびリン酸のアルカリ金属塩の群から選ばれる1種以上と、マスタードおよび/またはプルーンを含有する水溶液中でボイルするか、緑色野菜をボイルし、ボイル後の緑色野菜を、有機酸のアルカリ金属塩およびリン酸のアルカリ金属塩の群から選ばれる1種以上と共に、マスタードおよび/またはプルーンを含有する水溶液に浸漬することにより上記課題が解決されることを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明は下記の通りである。
項1.緑色野菜を、有機酸のアルカリ金属塩およびリン酸のアルカリ金属塩の群から選ばれる1種以上と共に、マスタードおよび/またはプルーンを含有する水溶液中でボイルするか、緑色野菜をボイルし、ボイル後の緑色野菜を、有機酸のアルカリ金属塩およびリン酸のアルカリ金属塩の群から選ばれる1種以上と共に、マスタードおよび/またはプルーンを含有する水溶液に浸漬することを特徴とするボイル緑色野菜の変色・退色抑制方法。
項2.緑色野菜を、有機酸のアルカリ金属塩およびリン酸のアルカリ金属塩の群から選ばれる1種以上と共に、マスタードおよび/またはプルーンを含有する水溶液中でボイルすることを特徴とするボイル緑色野菜の製造方法。
項3.緑色野菜をボイルし、ボイル後の緑色野菜を、有機酸のアルカリ金属塩およびリン酸のアルカリ金属塩の群から選ばれる1種以上と共に、マスタードおよび/またはプルーンを含有する水溶液に5〜120分間浸漬することを特徴とするボイル緑色野菜の製造方法。
項4.有機酸のアルカリ金属塩が、クエン酸三ナトリウムまたは酢酸ナトリウムである項2または3に記載のボイル緑色野菜の製造方法。
項5.水溶液のpHが6〜8.5である項2乃至4に記載のボイル緑色野菜の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
ボイル後の緑色野菜の緑色を維持し、かつ保存性も良好な緑色野菜を得るためのボイル野菜の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に用いる有機酸のアルカリ金属塩は、酢酸、乳酸、フマル酸、フィチン酸、クエン酸、グルコン酸等のナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられ、その中でも、クエン酸三ナトリウム、酢酸ナトリウムが、緑色野菜の緑色を維持する点では好ましい。有機酸のアルカリ金属塩の添加量は、本発明の緑色野菜のボイルに用いる水溶液に対して、0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%、更に好ましくは0.5〜1.5質量%である。0.01質量%以下であると、ボイル野菜の変色防止には不十分で、逆に5質量%より添加量が多い場合には、野菜の物性に影響するので、不適である。
【0014】
本発明に用いるリン酸のアルカリ金属塩は、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ポリリン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウムを挙げることができ、その中でもポリリン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウムが緑色野菜の緑色を維持する点では好ましい。リン酸塩のアルカリ金属塩の添加量は、本発明の緑色野菜のボイルに用いる水溶液に対して、0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%、更に好ましくは0.5〜1.5質量%である。0.01質量%以下であると、ボイル野菜の変色防止には不十分で、逆に5質量%より添加量が多い場合には、野菜の物性に影響するので、不適である。
【0015】
また、上記有機酸のアルカリ金属塩、リン酸のアルカリ金属塩と一緒に、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、塩化マグネシウム等も使用してよい。
【0016】
本発明に用いるマスタードは、シロガラシ(ホワイトマスタード、学名Sinapis alba、シノニムBrassica hirtaまたはB. alba)またはクロガラシ(ブラックマスタード、学名B. nigra)の種子をすりつぶして粉末にしたものでよく、また、上記種子を搾油後、粉砕し、乾燥したものでもよい。本発明で用いるマスタード末の添加量は、本発明の緑色野菜のボイルに用いる水溶液に対して、0.001〜3質量%、好ましくは0.005〜1質量%、更に好ましくは0.01〜0.1質量%である。0.001質量%以下であると、ボイル野菜の変色防止には不十分で、逆に5質量%より添加量が多い場合には、マスタードの風味が強くなってしまうので、不適である。
【0017】
本発明に用いるプルーンとは、乾燥したプラム(西洋スモモ)を意味する。プラムは、バラ科(Rosaceae)サクラ属(Prunus)に分類され、杏や梅、アーモンドと近縁種になり、種子が付いたまま乾燥させても発酵しないプラムのみがプルーンとなる。本発明では、プルーンペースト、プルーンピューレ、プルーンジュースおよびプルーンエキスの形で用いることができる。本発明で用いるプルーンの添加量は、例えば、プルーンを水にて浸漬し、ろ過、減圧濃縮してBrix70ぐらいに調整されたプルーンエキスでは、本発明の緑色野菜のボイルに用いる水溶液に対して、0.001〜5質量%、好ましくは0.01〜3質量%、更に好ましくは0.03〜0.2質量%である。0.001質量%以下であると、ボイル野菜の変色防止には不十分で、逆に5質量%より添加量が多い場合には、プルーンの甘味が強くなってしまうので、不適である。
【0018】
本発明の緑色野菜のボイルに用いる水溶液のpHは6〜8.5、好ましくは6.2〜7.8であり、pHの調整には、酢酸、クエン酸等の有機酸、アミノ酸等を使用することができる。
【0019】
また、本発明の緑色野菜のボイルに用いる水溶液には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、シナモンパウダー、ブラックペパー等の香辛料;小麦粉等の穀粉;昆布エキス、ニボシ乾燥粉末、アサリエキス等の調味料の他に、抹茶、黒糖、ホウレン草パウダー、ローストオニオンなどを添加することが可能である。
【0020】
本発明においては、緑色野菜を、有機酸のアルカリ金属塩およびリン酸のアルカリ金属塩の群から選ばれる1種以上と共に、マスタードおよび/またはプルーンを含有する水溶液中でボイルすることによって、ボイル後の緑色野菜の緑色を維持し、かつ保存性も良好な緑色野菜を得ることができる。
【0021】
また、緑色野菜をボイルし、ボイル後の緑色野菜を、有機酸のアルカリ金属塩およびリン酸のアルカリ金属塩の群から選ばれる1種以上と共に、マスタードおよび/またはプルーンを含有する水溶液に浸漬することによっても、ボイル後の緑色野菜の緑色を維持し、かつ保存性も良好な緑色野菜を得ることができる。
【0022】
ボイル後の緑色野菜を、有機酸のアルカリ金属塩およびリン酸のアルカリ金属塩の群から選ばれる1種以上と共に、マスタードおよび/またはプルーンを含有する水溶液に浸漬する場合には、その浸漬時間は、5〜120分が好ましくは、より好ましくは10〜60分間である。5分以下では、充分な緑色退色防止効果が得られず、120分以上の浸漬は、それ以上の退色防止効果が向上を奏するものでなく、また実際の製造ライン上、長い浸漬時間は実用的でない。
【0023】
また、ボイル後の緑色野菜を浸漬する際の浸漬用液の水温は、約0〜30℃が好ましく、更に好ましくは約4〜20℃である。
【0024】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、特に記載のない限り「%」とは、「質量%」を意味するものとする。また、文中の「*」印は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製であることを意味する。文中の「※」印は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを意味する。
【0025】
実施例1
表1の試料を溶解させた溶液400部を沸騰させ、その沸騰している溶液にブロッコリー100部を投入し、2分間ボイルした。ボイルしたブロッコリーを室温(20℃)にて保存し、24時間後の退色の様子を観察した。
【0026】
なお、マスタード末、シナモンパウダー、小麦粉、抹茶、黒糖は市販品を、プルーンはJUICE CONCENTRATE ORGANIC PRUNE(三栄源エフ・エフ・アイ社製)、ホウレン草パウダーは、ホウレン草を洗浄後、凍結乾燥機にて乾燥し、乳鉢ですりつぶしたものを使用した。
【0027】
【表1】

色の評価
◎:良好
○:ふち部で少し退色
△:ふち部および、他一部退色
×:大部分でかなり退色
【0028】
マスタード末添加区で緑色退色防止効果が認められた。また、ボイル後の野菜への味の影響はほとんど認められなかった。
【0029】
実施例2
表2の試料を溶解させた溶液300部を沸騰させ、その沸騰している溶液にインゲン80部を投入し、2分間ボイルした。ボイルしたインゲンを室温(25℃)にて保存し、24時間後の退色の様子を観察および菌数の測定をした。
生菌数測定は、滅菌水90gに試料10gをサンプリング、ストマッカーにて懸濁液を調製し、希釈平板法にて一般生菌数の測定を行いました。なお、培地は標準寒天培地(日水製薬製pH7.0)を用い、経日的に菌数を測定しました。判定は、35℃、48時間培養後の菌数カウントにより行った。
【0030】
【表2】

色の評価
○:全体的に緑色が残っている。
△:部分的に白っぽくなっている。
×:全体的に、白っぽい。
【0031】
マスタード、プルーンはインゲンのボイルによる緑色退色防止効果が認められ、特にマスタード末を使用するとは静菌効果も優れていることが判った。
【0032】
実施例3
表3の試料を溶解させた溶液400部を沸騰させ、その沸騰している溶液にブロッコリー100部を投入し、2分間ボイルした。ボイルしたブロッコリーを室温(25℃)にて保存し、24時間後の退色の様子を観察した。
【0033】
【表3】

サンキーパー※MY*は、グリセリン脂肪酸エステル製剤

色の評価
◎:ほとんど退色認められない。
○:わずかに退色が認められた。
△:一部分で退色が認められる。
×:大部分で退色が認められる。
【0034】
マスタード末、プルーン添加区で緑色退色防止効果が認められた。
【0035】
実施例4
表4の試料を溶解させた溶液200部を沸騰させ、その沸騰している溶液にインゲン50部を投入し、2分間ボイルした。ボイルしたインゲンを、冷蔵(約10℃)暗所で約18時間保存後、人工気象器(LH-300-RDSCT(株)日本医化機器製作所 社製)にて15℃、20000luxに保存して12時間後の退色の様子を観察した。
【0036】
【表4】

色の評価
◎:全体的にわずかに退色は認められるが、良好。微かに白い部分が認められる。
○:全体的に退色は認められ、僅かに白い部分が認められる。
△:全体的に退色は認められ、部分的に白色が認められる。
×:全体的に退色は認められ、かなり白色が認められる。
【0037】
強制的な強い光照射により、全体的にはじめより退色は認められ白色になるが、マスタード末0.01%添加で退色は一部認められるものの、退色を遅らせることが確認された。
【0038】
実施例5
表5の試料を溶解させた溶液200部を沸騰させ、その沸騰している溶液にインゲン38部を投入し、2分間ボイルした。ボイル後十分に水気を拭き取り、冷蔵(約10℃)暗所で約、18時間保存後、人工気象器(LH-300-RDSCT(株)日本医化機器製作所 社製)にて15℃、20000luxに保存し7時間後の退色の様子を観察した。
【0039】
【表5】

色の評価
◎:良好
○:全体的にはじめより退色は認められるが、良好。微かに白い部分が認められる。
△:全体的にはじめより退色は認められ、部分的に白色が認められる。
×:全体的にはじめより退色は認められ、かなり白色が認められる。
【0040】
光照射下で、3時間後、5時間後では、どの試験区においても退色の差がほとんど認められなかった。7時間後では、全体的にはじめより白色が認められたが、マスタード末、プルーン添加区で緑色退色防止効果が認められた。ただし、両者併用による相乗効果は確認されなかった。
【0041】
実施例6
表6の試料を溶解させた溶液300部を沸騰させ、その沸騰している溶液にインゲン80部を投入し、2分間ボイルした。ボイル後十分に水気を拭き取り、冷蔵(約10℃)暗所で約、18時間保存後、15℃、蛍光灯下(約1500lux)に保存し24時間後の退色の様子を観察した。
【0042】
【表6】

色の評価
◎:良好、ほとんど退色認められない。
○:一部僅かに退色認められる。
△:部分的に退色認められる。
×:全体的に退色が認められる。
【0043】
蛍光灯照射下では、全体的にはじめより白色が認められたが、マスタード末、プルーン添加区で緑色退色防止効果が認められた。ただし、両者併用による相乗効果は確認されなかった。
【0044】
実施例7
表7の試料を溶解させた溶液300部を沸騰させ、その沸騰している溶液にアスパラガス80部を投入し、2分間ボイルした。ボイル後十分に水気を拭き取り、冷蔵(約10℃)暗所で約18時間保存後、15℃、蛍光灯下(約1500lux)に保存し24時間後の退色の様子を観察した。
【0045】
【表7】

色の評価
◎:緑色退色がほとんど認められない。
○:一部緑色退色が認められる。
△:部分的に退色が認められ、黄色見がかっている
×:全体的に退色が認められる。
【0046】
蛍光灯照射下では、全体的にはじめより黄色見がかっているが、マスタード末、プルーン添加区でかなりの緑色退色防止効果が認められた。ただし、両者併用による相乗効果は確認されなかった。
【0047】
実施例8
表8の試料を溶解させた溶液300部を沸騰させ、その沸騰している溶液にホウレン草80部を投入し、1分間ボイルした。ボイル後十分に水気を拭き取り、冷蔵(約10℃)暗所で約18時間保存後、15℃、蛍光灯下(約1500lux)にて保存し、24時間後の退色の様子を観察した。ホウレン草では、葉部の退色はほとんど認められず、茎の部分の退色で評価を行った。
【0048】
【表8】

色の評価
◎:良好、ほとんど退色が認められない。
○:一部僅かに退色が認められる。
△:部分的に退色が認められる。
×:全体的に退色が認められる。
【0049】
蛍光灯照射下では、全体的にはじめより白色が認められたが、マスタード末、プルーン添加区で緑色退色防止効果が認められた。
【0050】
実施例9
表9の試料を溶解させた溶液300部を沸騰させ、その沸騰している溶液にインゲン80部を投入し、2分間ボイルした。ボイル後十分に水気を拭き取り、冷蔵(約10℃)暗所で18時間保存後、15℃、蛍光灯下(約1500lux)にて保存し、24時間後の退色の様子を観察した。
【0051】
【表9】

色の評価
◎:良好、ほとんど退色が認められない。
○:一部僅かに退色が認められる。
△:部分的に退色が認められる。
×:全体的に退色が認められる。
【0052】
蛍光灯照射下では、全体的にはじめより白色が認められたが、マスタード末添加区で緑色退色防止効果が認められた。また、マスタード添加区では一般生菌数の増殖抑制効果が認められた。
実施例10
【0053】
表10の試料を溶解させた溶液400部を沸騰させ、その沸騰している溶液にピーマン100部を投入し、2分間ボイルした。ボイル後十分に水気を拭き取り、冷蔵(約10℃)暗所で約18時間保存後、蛍光灯下(約1500lux)に移し、24時間後の退色の様子を観察した。また20℃で保存し、経時的に菌数検査を行った。
【0054】
【表10】


色の評価
◎:良好、ほとんど退色認められない。
○:一部僅かに退色が認められる。
△:部分的に退色認められ、茶色身がかる。
×:大部分で退色が認められ、茶色身がかる。
【0055】
ピーマンにおいては、蛍光灯照射下では、全体的にはじめより茶色身がかり退色が認められたが、マスタード末添加区で明らかな緑色退色防止効果が認められた。また、マスタード添加区では一般生菌数の増殖抑制効果も認められた。
【0056】
実施例11
表11の試料を溶解させた溶液300部を沸騰させ、その沸騰している溶液にインゲン80部を投入し、2分間ボイルした。ボイル後十分に水気を拭き取り、冷蔵(約10℃)暗所で約18時間保存後、人工気象器(LH-300-RDSCT(株)日本医化機器製作所 社製)にて15℃、20000luxに保存して12時間後の退色の様子を観察した。
【0057】
【表11】

色の評価
◎:全体的に退色は認められるが、良好。微かに白い部分が認められる。
○:全体的に退色は認められ、僅かに白い部分が認められる。
△:全体的に退色は認められ、部分的に白い部分が認められる。
×:全体的に退色は認められ、かなり白色が認められる。
【0058】
強制的な強い光照射により、全体的にはじめより退色は認められるが、マスタード末0.01%、プルーン0.03%添加で退色は一部認められるものの、退色を遅らせることが確認された。
【0059】
実施例12
表12の試料を溶解させた溶液300部を沸騰させ、その沸騰している溶液にインゲン80部を投入し、2分間ボイルした。ボイル後十分に水気を拭き取り、冷蔵(約10℃)暗所で約18時間保存後、15℃、蛍光灯下(約1500lux)に保存し24時間後の退色の様子を観察した。
【0060】
【表12】

色の評価
◎:全体的に退色は認められるが、良好。微かに白い部分が認められる。
○:全体的に退色は認められ、僅かに白い部分が認められる。
△:全体的に退色は認められ、部分的に白色が認められる。
×:全体的に退色が認められる。
【0061】
光照射により、全体的にはじめより退色は認められ白色になるが、マスタード末0.01%添加で退色は一部認められるものの、退色を遅らせることが確認された。また、リン酸塩でpHを調整した場合、トリポリリン酸ナトリウムでpH調整を行った試験区では、若干退色が遅れることが認められた。
【0062】
実施例13
表13の試料を溶解させた溶液300部を沸騰させ、その沸騰している溶液にインゲン80部を投入し、2分間ボイルした。ボイル後十分に水気を拭き取り、冷蔵(約10℃)暗所で18時間保存後、15℃、蛍光灯下(約1500lux)にて保存し、24時間後の退色の様子を観察した。
【0063】
【表13】

サンスゲン※*は、酢酸ナトリウムと氷酢酸製剤

色の評価
◎:全体的に退色は認められるが、ほとんど緑色が残っている。
○:全体的に退色は認められるが、かなり緑色が残っている。
△:全体的に退色は認められるが、一部緑が残っている。
×:全体的に退色は認められ、かなり白色が認められる。
【0064】
全体的にはじめより退色は認められるが、白色になるが、マスタード末0.01%、プルーン0.05%添加で退色は一部認められるものの、退色を遅らせることが確認された。
【0065】
実施例14
表14の試料を溶解させた溶液300部を沸騰させ、その沸騰している溶液にインゲン80部を投入し、2分間ボイルした。ボイル後十分に水気を拭き取り、冷蔵(約10℃)暗所で18時間保存後、15℃、蛍光灯下(約1500lux)にて保存し、24時間後の退色の様子を観察した。
【0066】
【表14】


サンスゲン※*: 酢酸ナトリウム、氷酢酸よりなる酸味料製剤

色の評価
◎:全体的に退色は認められるが、ほとんど緑が残っている。
○:全体的に退色は認められるが、かなり緑色が残っている。
△:全体的に退色は認められるが、一部緑が残っている。
×:全体的に退色は認められ、かなり白色が認められる。
【0067】
全体的にはじめより退色は認められるが、白色になるが、マスタード末0.01%、プルーン0.05%添加で退色は一部認められるものの、退色を遅らせることが確認された。
【0068】
実施例15
冷凍インゲン80部を沸騰水400部に投入し、30秒間ボイルする。表15の試料を溶解させた溶液400部に、ボイル後水気を切ったインゲン80部を投入し、20分間浸漬した。浸漬液の水温は、約24℃であった。浸漬後十分に水気を拭き取り、冷蔵(約10℃)暗所で約18時間保存後、蛍光灯下(約1500lux)に移し、24時間後の退色の様子を観察した。
【0069】
【表15】


色の評価
◎:全体的に退色は認められるが、ほとんど緑色が残っている。
○:全体的に退色は認められるが、かなり緑色が残っている。
:全体的に退色は認められるが、一部緑が残っている。
×:全体的に退色は認められ、かなり白色が認められる。
【0070】
全体的にはじめより退色は認められ白色になるが、マスタード末0.05%、プルーン0.1%添加で退色は一部認められるものの、退色を遅らせることが確認された。
【0071】
実施例16
ホウレン草80部を沸騰水400部に投入し、30秒間ボイルする。表16の試料を溶解させた溶液400部に、ボイル後水気を切りしたホウレン草80部を投入し、20分間浸漬した。浸漬液の水温は、約20℃であった。浸漬後十分に水気を拭き取り、冷蔵(約10℃)暗所で約18時間保存後、蛍光灯下(約1500lux)に移し、24時間後の退色の様子を観察した。ホウレン草では、葉部の退色はほとんど認められず、茎の部分の退色で評価を行った。
【0072】
【表16】


色の評価
◎:良好、ほとんど退色が認められない。
○:一部僅かに退色が認められる。
△:部分的に退色が認められる。
×:全体的に退色が認められる。
【0073】
蛍光灯照射下では、全体的にはじめより白色が認められたが、マスタード末、プルーン添加区で緑色退色防止効果が認められた。
実施例17
【0074】
約2.5〜3.0cm四方にカットしたピーマン80部を沸騰水400部に投入し、10秒間ボイルする。表17の試料を溶解させた溶液400部に、ボイル後、水気を切ったピーマン80部を投入し、20分間浸漬した。浸漬液の水温は、約20℃であった。浸漬後十分に水気を拭き取り、冷蔵(約10℃)暗所で約18時間保存後、蛍光灯下(約1500lux)に移し、24時間後の退色の様子を観察した。また20℃で保存し、経時的に菌数検査を行った。
【0075】
【表17】


色の評価
◎:良好、ほとんど退色認められない。
○:一部僅かに退色が認められる。
△:部分的に退色認められ、茶色身がかる。
×:大部分で退色が認められ、茶色身がかる。
【0076】
ピーマンにおいては、蛍光灯照射下では、全体的にはじめより茶色身がかり退色が認められたが、マスタード末、プルーン添加区で明らかな緑色退色防止効果が認められた。
実施例18
【0077】
約2.5〜3.0cm四方にカットしたピーマン80部を沸騰水400部に投入し、10秒間ボイルする。表18の試料を溶解させた溶液400部に、ボイル後水気を切ったピーマン80部を投入し、20分間浸漬した。浸漬液の水温は、約10℃であった。浸漬後十分に水気を拭き取り、冷蔵(約10℃)暗所で約18時間保存後、蛍光灯下(約1500lux)に移し、48時間後の退色の様子を観察した。また20℃で保存し、経時的に菌数検査を行った。
【0078】
【表18】


色の評価
◎:良好、ほとんど退色認められない。
○:一部僅かに退色が認められる。
△:部分的に退色認められ、茶色身がかる。
×:大部分で退色が認められ、茶色身がかる。
【0079】
ピーマンにおいては、蛍光灯照射下では、全体的にはじめより茶色身がかり退色が認められたが、マスタード末添加区で明らかな緑色退色防止効果および、一般生菌数の増殖抑制効果が認められた。
実施例19
【0080】
約5.5〜7.5cmにカットしたアスパラガス80部を沸騰水400部に投入し、1分間ボイルし、ボイル後、流水冷却する。表19の試料を溶解させた溶液400部に、例火薬後、水気を切ったアスパラガス80部を投入し、60分間浸漬した。浸漬液の水温は、約10℃であった。浸漬後十分に水気を拭き取り、冷蔵(約10℃)暗所で約18時間保存後、蛍光灯下(約1500lux)に移し、24時間後の退色の様子を観察した。また20℃で保存し、経時的に菌数検査を行った。
【0081】
【表19】


色の評価
◎:良好、ほとんど退色認められない。
○:一部僅かに退色が認められる。
△:部分的に退色認められ、黄色身がかる。
×:全体的に、黄色身がかる。
【0082】
アスパラガスにおいては、蛍光灯照射下では、全体的にはじめより黄色身がかり退色が認められたが、マスタード末、プルーン添加区で明らかな緑色退色防止効果が認められた。
実施例20
【0083】
一房、約15g程度になるようにカットしたブロッコリーを沸騰水400部に投入し、10秒間ボイルする。表20の試料をあらかじめ溶解させ約4℃で保存していた溶液400部に、ボイル後水気を切ったピーマン80部を投入し、60分間浸漬した。浸漬液の水温は、約4℃で行った。浸漬後十分に水気を拭き取り、20℃で保存、退色の様子を観察、また経時的に菌数検査を行った。
【0084】
【表20】


色の評価
◎:良好、ほとんど退色認められない。
○:一部僅かに退色が認められる。
△:部分的に退色認められ、茶色身がかる。
×:大部分で退色が認められ、茶色身がかる。
【0085】
ピーマンにおいては、蛍光灯照射下では、全体的にはじめより茶色身がかり退色が認められたが、マスタード末、プルーン添加区で明らかな緑色退色防止効果が認められた。
実施例21
【0086】
冷凍ブロッコリーを沸騰水400部に投入し、1分間ボイルする。表21の試料をあらかじめ溶解させ約4℃で保存していた溶液400部に、ボイル後水気を切ったブロッコリー80部を投入し、60分間浸漬した。浸漬時の水温も、約10度以下で行った。浸漬後十分に水気を拭き取り、20℃で保存、48時間後の退色の様子を観察、また35℃で保存し、10時間後の菌数検査を行った。
【0087】
【表21】


色の評価
◎:良好、ほとんど退色が認められない。
○:一部僅かに退色が認められる。
△:部分的に退色が認められる。
×:全体的に退色が認められる。
【0088】
マスタード末添加区で緑色退色防止効果および、一般生菌数の増殖抑制効果が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0089】
ボイル後の緑色野菜の緑色を維持し、かつ保存性も良好な緑色野菜を得るためのボイル野菜の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】実施例10の無添加区の写真
【図2】実施例10の試料1の写真

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑色野菜を、有機酸のアルカリ金属塩およびリン酸のアルカリ金属塩の群から選ばれる1種以上と共に、マスタードおよび/またはプルーンを含有する水溶液中でボイルするか、緑色野菜をボイルし、ボイル後の緑色野菜を、有機酸のアルカリ金属塩およびリン酸のアルカリ金属塩の群から選ばれる1種以上と共に、マスタードおよび/またはプルーンを含有する水溶液に浸漬することを特徴とするボイル緑色野菜の変色・退色抑制方法。
【請求項2】
緑色野菜を、有機酸のアルカリ金属塩およびリン酸のアルカリ金属塩の群から選ばれる1種以上と共に、マスタードおよび/またはプルーンを含有する水溶液中でボイルすることを特徴とするボイル緑色野菜の製造方法。
【請求項3】
緑色野菜をボイルし、ボイル後の緑色野菜を、有機酸のアルカリ金属塩およびリン酸のアルカリ金属塩の群から選ばれる1種以上と共に、マスタードおよび/またはプルーンを含有する水溶液に5〜120分間浸漬することを特徴とするボイル緑色野菜の製造方法。
【請求項4】
有機酸のアルカリ金属塩が、クエン酸三ナトリウムまたは酢酸ナトリウムである請求項2または3に記載のボイル緑色野菜の製造方法。
【請求項5】
水溶液のpHが6〜8.5である請求項2乃至4記載のボイル緑色野菜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−33971(P2009−33971A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198266(P2007−198266)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】