ボディエリアネットワークの改善
非ビーコンモード通信のための第1コーディネータ(10NB)及びビーコンモード通信のための第2コーディネータ(10B)によってサービスされる個別のネットワークから形成された無線センサシステム内においてネットワーク装置(11E、13)の通信を実行する方法であって、ネットワーク装置は、監視対象の少なくとも一つのエンティティと関連付けられており、且つ、この方法は、まず、すべてのネットワーク装置(11E、13)を第1コーディネータ(10NB)によってサービスされる第1ネットワークに配置するステップと、関連するネットワーク装置(11E)のセンサによってそのエンティティ又はそれぞれのエンティティの一つ又は複数のパラメータを監視するステップと、センサデータを第1ネットワーク内のネットワーク装置から第1コーディネータ(10NB)に送信するステップと、監視対象のパラメータを使用することにより、前述のエンティティに関連する非常事態の状態の開始又は終了を検出するステップと、前述のエンティティに関連する非常事態の状態の開始の検出に応答して、関連するネットワーク装置(11E)を第2ネットワークにハンドオーバーさせるステップと、センサデータを第2ネットワーク内のネットワーク装置から第2コーディネータ(10B)に送信するステップと、前述のエンティティに関連する非常事態の状態の終了の検出に応答して、関連するネットワーク装置を第1ネットワークにハンドオーバーさせるステップと、を有する。この方法は、例えば、IEEE802.15.6に従って稼働するMBANを使用する病院において患者の監視に適用可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーソナルエリアネットワークを含む無線センサネットワークに関し、更に詳しくは、但し、限定を伴うことなしに、人間又は動物の身体上に又はその周囲に配設されるか又はその内部に埋植される無線通信センサを含むボディエリアネットワークに関する。
【背景技術】
【0002】
様々なタイプの無線センサネットワークが提案されている。それらのうち、所謂ボディエリアネットワーク又はBANは、相対的に短い距離において情報を搬送するべく使用される無線パーソナルエリアネットワーク(Wireless Personal Area Network, WPA)の一例である。無線ローカルエリアネットワーク(Wireless Local Area Network, WLAN)とは異なり、WPANを介して実現される接続は、インフラストラクチャをほとんど又はまったく必要としない。この特徴により、様々な装置のために、小型で電力効率に優れた廉価なソリューションを実現可能である。特に興味深い点は、センサを使用して一人又は複数人の患者の状態を監視する医療BAN(Medical BAN, MBAN)の可能性である。検知されたデータをデータシンクに供給するべく主にセンサを利用しているBANが、無線センサネットワーク(Wireless Sensor Network, WSN)の一例である。但し、アクチュエータなどの更に能動的な装置をMBANに包含することも可能である。
【0003】
IEEE802.15.4規格は、低データレートのWPAN用の物理レイヤ(PHY)及びMAC(Medium Access Control)サブレイヤの仕様を規定している。IEEE802.15.4は、高データレートのWPAN用の規格であるIEEE802.15.3との間に、いくつかの類似点を具備する。IEEE Std 802.15.4-2006及びIEEE Std 802.15.3-2003は、本引用により、そのすべてが本明細書に包含される。
【0004】
IEEE802.15.4において想定されているタイプのWPANは、産業用の監視などのアプリケーションには好適であるが、MBANに必要とされる種類のデータ信頼性を提供しない。医療アプリケーションには、信頼性及びプロセスの自動化を向上させると共にヒューマンエラーを低減しつつ、人間の労働と関連した費用を低減するという要件が存在している。センサは、必要とされるインテリジェンスを提供可能であり、且つ、医療装置内において既に広く利用されている。これには、病院での回復治療、自宅治療、集中治療ユニット、及び高度な手術手技が含まれる。脈拍や体温などのための外部センサ、体液との接触状態となるセンサ、(切れ込みを通じて)カテーテル内において使用されるセンサ、外部アプリケーション用のセンサ、無線センサを有する使い捨て型のスキンパッチ、及び埋植可能なセンサを含む医療用途に利用される多くの異なるタイプのセンサが存在している。
【0005】
病院又は病室内のそれぞれの患者周辺の一つ又は複数のセンサのWPANは、患者の移動性、監視の柔軟性、現在監視されていない治療エリアへの監視の拡大、臨床過誤の低減、及び監視費用の全体的な低減を含む多数の臨床的な利益を提供可能であろう。身体着用型のセンサは、一人の患者の身体上において様々なセンサタイプを包含可能である。これらは、患者の身体に迅速に着脱される能力を必要としている。
【0006】
このようなセンサは、個別には、最低で患者当たりに1〜2kbpsのビットレートを具備可能であり、且つ、集合的には、10kbpsのビットレートを必要としよう。レンジは、わずかに数メートルで十分であろう。但し、医療WSNアプリケーションは、臨床環境においては、ミッションクリティカルなアプリケーションである。限られたデータ消失及び限られたレイテンシのための安定した無線リンク、患者及びセンサ密度のための能力、他の無線との共存、数日にもわたる連続動作のための電池寿命、及び身体着用型装置のための小さなフォームファクタは、医療WSN又はMBAN用の要件の例である。これらの要件は、前方誤り訂正(Forward Error Correction, FEC)及び適応再送要求(Adaptive Repeat reQuest, ARQ)、センサ情報レートのための低デューティサイクルのTDMA、及び相対的に効率的な小さなアンテナを含む時間及び周波数ドメインにおけるダイバーシティ及び誤り制御法などの技法を利用して満足させることができる。
【0007】
したがって、ボディエリアネットワーク、特に医療アプリケーション用のものの特性を規定することを目的とした更なるIEEE802.15.6規格を規定するための作業が進行中である。IEEE802.15.6の主要な要件の一つが、低電池消費量における医療アプリケーションの高信頼性である。これは、患者の生命が医療WSNアプリケーションの無線リンクの信頼性によって左右される非常事態の状況においては、特に重要である。IEEE802.15.4などの既存の規格は、商用アプリケーションのために設計されており、このような非常事態の救命シナリオを考慮してはいない。
【0008】
具体的には、ネットワーク装置によって消費される電力を増大させることなしに、このような非常事態の状況に関与するセンサなどのネットワーク装置との通信の信頼性を保証するというニーズが存在している。
【発明の概要】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、複数のネットワーク装置と、ネットワーク装置の第1のサブセットとの間において非ビーコンモード通信を実行するべく構成された第1コーディネータと、ネットワーク装置の第2のサブセットとの間においてビーコンモード通信を実行するべく構成された第2コーディネータと、を有する無線センサシステムが提供され、このシステムは、非常事態の状態がネットワーク装置との関係において存在するかどうかに応じて、ネットワーク装置のうちのいずれを第1又は第2サブセットに含めるかを判定する手段を具備する。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、複数のネットワーク装置と、ネットワーク装置の第1のサブセットとの間において非ビーコンモード通信を実行するべく構成された第1コーディネータと、ネットワーク装置の第2のサブセットとの間においてビーコンモード通信を実行するべく構成された第2コーディネータと、を有する無線センサシステムが提供され、このシステムは、非常事態の状態がネットワーク装置との関係において存在するかどうかに応じて、一つ又は複数のネットワーク装置を第1サブセットと第2サブセットの間においてハンドオーバーさせる手段を具備する。
【0011】
したがって、本発明のこれらの態様は、非ビーコンモードコーディネータとビーコンモードコーディネータの二重使用と、ビーコンモードコーディネータと非ビーコンモードコーディネータの間におけるハンドオーバーの能力を有するネットワーク装置と、を伴っており、これにより、相対的に高い信頼性のためのビーコン対応型のモードにより、センサデータなどの「非常事態」通信を可能にする。これらのコーディネータは、物理的に別個である必要はなく、共通ユニット内に設けることも可能であることに留意されたい。
【0012】
当業者には明らかなように、2つのコーディネータの使用は、少なくとも2つのネットワークの存在を意味しているが、請求項において、「システム」という用語は、任意の数のこの種のネットワークを包含するものと解釈されたい。「ネットワーク」という用語は、個別のコーディネータによって提供されるビーコンモードネットワーク及び非ビーコンモードネットワークのそれぞれのものを意味するべく使用されている。
【0013】
ここで、好ましくは、エンティティに関連する非常事態の状態は、システム内のセンサによって検知されるエンティティのパラメータの臨界レベルに関係している。
【0014】
以上の態様のいずれにおいても、好ましくは、ネットワーク装置に関連する非常事態の状態の存在の有無は、危険な状態にあるなんらかの種類のエンティティ(生体など)の監視にそのネットワーク装置が関与しているかどうかによって左右されることになる。
【0015】
システムが複数のエンティティ(病室内の複数の患者など)を監視するべく使用される際には、ネットワーク装置の個別のサブセットが、それぞれのエンティティを監視するべく割り当てられ、ネットワーク装置のそれぞれのサブセットは、一単位として、第1又は第2ネットワーク内に含まれるか、又は第1ネットワークと第2ネットワークの間においてハンドオーバーされる。したがって、非常事態の状態が、特定のエンティティを監視しているネットワーク装置のうちのわずかに一つと関連して存在するやいなや、そのエンティティを監視しているネットワーク装置のすべてが、好ましくは、一緒にハンドオーバーされる。
【0016】
前述のように、非常事態の状態の存在の有無は、好ましくは、個別のサブセット内のネットワーク装置のセンサによって検知される一つ又は複数のパラメータの臨界レベルに基づいて判定される。即ち、例えば、パラメータの検知された値が臨界レベルを超過しているかどうかが検出される。
【0017】
前述のシステムにおいて、好ましくは、第1及び第2コーディネータは、すべてのネットワーク装置が第1ネットワークに含まれている初期状態から開始し、非常事態の状態の開始(発生)に応答して、一つ又は複数のネットワーク装置を第1ネットワークから第2ネットワークにハンドオーバーし、且つ、非常事態の状態の終了(消滅)に応答して、一つ又は複数のネットワーク装置を第2ネットワークから第1ネットワークにハンドオーバーさせるべく構成されている。
【0018】
無線センサシステムは、通常、情報が、システム内において、それぞれがフレームコントロールフィールドを具備するフレーム内において無線送信され、フレームコントロールフィールド内の値を予め定義された値に設定することによって非常事態の状態の宣言が実行される。
【0019】
好ましくは、フレームは、異なるフレームタイプのフレームを含み、且つ、予め定義された値は、非常事態フレームタイプを表す。フレームコントロールフィールドは、非常事態の状態の存在の有無を通知する少なくとも一つのビットを含んでもよい。
【0020】
このようなフレームに基づいたシステムは、IEEE802.15.6に基づいたMBANを包含可能である。好適なアプリケーションにおいては、前述のエンティティは、生体であり、それぞれのセンサは、患者の生体の生命パラメータを検知するためのものであり、且つ、非常事態の状態は、医学的な非常事態である。
【0021】
ネットワーク装置は、同一のエンティティを監視するべく割り当てられた複数のネットワーク装置のうちの一つであってよく、この場合に、非常事態の状態は、そのネットワーク装置によって、又は同一のエンティティに割り当てられたネットワーク装置のうちの何れかによって、検知されたパラメータのレベルに従って判定可能である。
【0022】
通常は、ビーコンモード通信が、非常事態にあるネットワーク装置の相対的に重要な通信のために選択されることになり、且つ、非ビーコンモードは、非常事態にない他のネットワーク装置によって使用される。
【0023】
非常事態の状態の存在の有無の判定は、ネットワーク装置自体の内部において実行可能である。或いは、非常事態の状態の存在の有無の判定は、ネットワーク装置の外部において、例えば、第1及び第2コーディネータのいずれかによって実行することも可能であり、この場合には、ネットワーク装置は、このような判定の通知を受信するべく構成される。
【0024】
本発明の第3の態様によれば、少なくとも一つのエンティティを監視するセンサを含む複数のネットワーク装置を具備した無線センサシステム内におけるコーディネータが提供され、この無線センサシステムは、ネットワーク装置の同時ビーコンモード及び非ビーコンモード通信のために構成されており、コーディネータは、少なくとも一つのネットワーク装置のサブセットとの間の非ビーコンモード通信のために構成されており、且つ、エンティティの非常事態の状態が存在するという判定に応答して、サブセットの一つ又は複数のネットワーク装置をビーコンモード通信のための他のコーディネータにハンドオーバーさせる。
【0025】
したがって、非常事態の状態がエンティティに関連して存在する(即ち、始まった)という判定は、(その判定が、コーディネータ自体によって実行されたのか、或いは、コーディネータがサービスしているネットワーク装置のうちの一つといった他の場所からコーディネータに通知されたのかとは無関係に)、コーディネータが、非常事態に関連している一つ又は複数のネットワーク装置の責任をもう一つのコーディネータに移転することに結び付く。この結果、それらのネットワーク装置は、センサデータなどの相対的に信頼性の高い転送のためのもう一つのコーディネータとの間においてビーコンモード通信を実施可能である。
【0026】
この態様の変形によれば、少なくとも一つのエンティティを監視するセンサを含む複数のネットワーク装置を具備した無線センサシステム内におけるコーディネータが提供され、この無線センサシステムは、前述のネットワーク装置の同時ビーコンモード及び非ビーコンモード通信のための個別のネットワークを有するように構成されており、コーディネータは、前述のネットワーク装置のいくつかとの間の非ビーコンモード通信のために構成されており、且つ、それらのネットワーク装置の少なくとも一つの非常事態の状態の判定に応答して、少なくとも一つのネットワーク装置との間をビーコンモード通信に切り替えつつ、他のすべての装置を非ビーコンモード通信のための他のコーディネータにハンドオーバーさせる。したがって、この変形においては、オリジナルのコーディネータは、非常事態にある一つ又は複数のネットワーク装置の責任を保持し、非常事態にある一つ又は複数のネットワーク装置との間の相対的に信頼性の高い通信(例えば、保証タイムスロットを使用したもの)を可能にするビーコンモードに切り替える。
【0027】
本発明の第4の態様によれば、少なくとも一つのエンティティを監視するセンサを含む複数のネットワーク装置を具備した無線センサシステム内におけるコーディネータが提供され、この無線センサシステムは、ネットワーク装置の同時ビーコンモード及び非ビーコンモード通信のために構成されており、コーディネータは、少なくともネットワーク装置のサブセットとの間のビーコンモード通信のために構成されており、且つ、エンティティの非常事態の状態が存在していないという判定に応答して、ネットワーク装置の一つ又は複数を非ビーコンモード通信のための他のコーディネータにハンドオーバーさせる。
【0028】
したがって、エンティティに関連する非常事態の状態が終了したという判定は、(その判定が、コーディネータ自体によって実行されたのか、或いは、コーディネータがサービスしているネットワーク装置のうちの一つによるなどの他の場所からコーディネータに通知されたのかとは無関係に)、コーディネータが、もはや非常事態にはない一つ又は複数のネットワーク装置の責任をもう一つのコーディネータに移転することに結び付く。この結果、それらのネットワーク装置は、緊急ではないセンサデータなどの日常的な転送のためのもう一つのコーディネータとの間において非ビーコンモード通信を実施可能である。
【0029】
或いは、非常事態にある装置のグループのハンドオーバーは、例えば、患者の移動の結果として、それらの装置が既存のビーコンに基づいたコーディネータのレンジから離脱した場合に、実行することも可能である。これらのネットワーク装置は、一緒にレンジ内の他のコーディネータにハンドオーバーされ、このコーディネータは、好ましくは、ビーコンモードコーディネータである。
【0030】
コーディネータ間におけるハンドオーバーを実行する前に、特に、ビーコンモードコーディネータから非ビーコンモードコーディネータ又は他のビーコンモードコーディネータへのハンドオーバーの場合には、非常事態の状態の存在以外のその他の要因を考慮することも可能である。例えば、それぞれのコーディネータは、自身がサービスしているネットワーク装置のそれぞれの場所を認知可能であり、且つ、自身からの又はシステム内の他のコーディネータからのネットワーク装置の距離に基づいて、ハンドオーバーが適切であるかどうかを判定可能である。即ち、移動しているネットワーク装置が、サービスしているコーディネータのレンジ内に留まっている限り、ハンドオーバーを抑制可能である。更には、信号強度(例えば、SIRによって示されるもの)を考慮対象の更なる要因とし、これにより、SIRが所与の閾値を上回っている際には、ハンドオーバーが実行されないようにすることも可能である。
【0031】
本発明を実施することにより、グループ内の、且つ、非常事態の状態にある、すべてのネットワーク装置(例えば、同一の患者に装着されたすべてのセンサのグループ)を一緒にハンドオーバー可能である。この結果、高度な安定性を有する送信リンクによって患者を監視しつつ、病院内における患者の移動に追随可能である。
【0032】
本発明の更なる態様によれば、非ビーコンモード通信のための第1コーディネータと、ビーコンモード通信のための第2コーディネータと、によってサービスされる無線センサシステム内においてネットワーク装置の通信を実行する方法が提供され、ネットワーク装置は、監視対象の少なくとも一つのエンティティと関連付けられており、且つ、この方法は、まず、すべてのネットワーク装置を第1コーディネータによってサービスされている第1ネットワーク内に配置するステップと、関連するネットワーク装置のセンサによってそのエンティティ又はそれぞれのエンティティの一つ又は複数のパラメータを監視するステップと、センサデータを第1ネットワーク内のネットワーク装置から第1コーディネータに送信するステップと、監視対象のパラメータを使用することにより、エンティティに関連する非常事態の状態の開始又は終了を検出するステップと、そのエンティティに関連する非常事態の状態の開始の検出に応答して、関連するネットワーク装置を第2ネットワークにハンドオーバーさせるステップと、センサデータを第2ネットワーク内のネットワーク装置から第2コーディネータに送信するステップと、上記のエンティティに関連する非常事態の状態の終了の検出に応答して、関連するネットワーク装置を第1ネットワークにハンドオーバーさせるステップと、を有する。
【0033】
本発明の更なる態様は、無線センサシステムのネットワーク装置又はコーディネータのプロセッサによって実行された際に、それぞれ、上記のネットワーク装置又は上記のコーディネータのうちの一つを提供するソフトウェアを提供する。このようなソフトウェアは、コンピュータ可読媒体上に保存可能である。
【0034】
本発明を更に十分に理解するべく、且つ、本発明を実施可能な方法を更に明瞭に示すべく、以下、添付図面を参照するが、これは、例示を目的としたものに過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】IEEE802.15.4のWPANにおけるプロトコルレイヤを示す。
【図2】IEEE802.15.4のWPANの可能なPHY帯域を示す。
【図3】WPANのスター及びピアツーピアトポロジーを示す。
【図4】ビーコン対応型のIEEE802.15.4のWPANにおけるスーパーフレームの構造を示す。
【図5】IEEE802.15.4のWPANにおけるネットワーク装置とコーディネータの間におけるデータ転送の可能なモードを示す。
【図6】IEEE802.15.4のWPANにおけるネットワーク装置とコーディネータの間におけるデータ転送の可能なモードを示す。
【図7】IEEE802.15.4のWPANにおけるネットワーク装置とコーディネータの間におけるデータ転送の可能なモードを示す。
【図8】IEEE802.15.4のWPANにおけるネットワーク装置とコーディネータの間におけるデータ転送の可能なモードを示す。
【図9】IEEE802.15.4のWPANにおけるデータフレームに使用されるフレームフォーマットを示す。
【図10A】図9のフレームフォーマットにおけるフレームコントロールフィールドの構造を示す。
【図10B】図10Aのフレームコントロールフィールドにおけるフレームタイプビットの従来の規定値の表である。
【図11A】IEEE802.15.4においてMACコマンドフレームに使用されているフレームフォーマットの一部を示す。
【図11B】図11Aのフレームフォーマットにおけるコマンドフレーム識別子の従来の規定値の表である。
【図12】ビーコンコーディネータと非ビーコンコーディネータの両方を有する本発明を実施したWPANを示しており、ハンドオーバーの前の状態である。
【図13】ビーコンコーディネータと非ビーコンコーディネータの両方を有する本発明を実施したWPANを示しており、ハンドオーバーの後の状態である。
【図14】本発明の一実施例におけるセットアップ構成及びハンドオーバーのプロセスフローを示す。
【図15】本発明の一実施例におけるオリジナルのコーディネータに戻るためのハンドオーバーのプロセスフローを示す。
【図16】本発明の一実施例における場所に基づいたハンドオーバーのプロセスフローを示す。
【図17】本発明の一実施例における場所と信号/接続品質に基づいたハンドオーバーのプロセスフローを示す。
【図18】本発明の一実施例において提案されたフレームコントロールフィールドの新しい構造を示す。
【図19】図18のフレームコントロールフィールドにおけるフレームタイプビットの可能な値の表である。
【図20】本発明の他の実施例に従って変更されたフレームフォーマットのフレームコントロールフィールドの構造を示す。
【図21】図20のフレームコントロールフィールドのフレームタイプ値の表である。
【図22】本発明の他の実施例における図11A及び図11Bのコマンドフレーム識別子の変形を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の実施例について説明する前に、まず、無線ネットワークにおいて使用されるマルチアクセスプロトコルについて多少背景を説明した後に、現在開発中のIEEE802.15.6規格及び/又はMBANを含むボディエリアネットワークに関連すると思われるIEEE802.15.4の各部分について概説することとする。
【0037】
マルチアクセスとは、無線ネットワーク内の複数のネットワーク装置が同一の無線チャネルを共有する可能性を意味している。マルチアクセスを可能にするべく、無線ネットワークは、一般に、周波数分割(異なる周波数を使用することによって個別のネットワーク装置からの送信を別個に維持する方式)又は時分割(異なる時間において実行することによって送信を分離する方式)に基づいて編成される。周波数分割及び時分割の両方を同時に利用可能である。尚、この説明の残りの部分においては、時分割方式を参照しているが、当業者であれば、説明対象の技法に類似した技法は、周波数分割の場合にも適用可能であることを理解するであろう。
【0038】
時分割に基づいたネットワークは、通常、時間を「フレーム」と呼ばれる等しい時間間隔に分割する。ネットワーク装置に提供される情報の量に従ってそれなりの通信の信頼性(これは、所与の送信が正常に受信される確率を意味する)を提供する様々なプロトコルが考案されている。このようなプロトコルの一つが、ALOHAと呼ばれており、或いは、「ピュアALOHA」とも呼ばれるが、これは、ネットワーク装置が、互いに関する又は既定の時間基準に関する知識を具備していない無線ネットワークに適している。
【0039】
ピュアALOHAプロトコルを使用するネットワークにおいては、任意のネットワーク装置が、時間フレーム内の任意のランダムな時点においてデータ送信を開始可能である。ネットワーク装置がランダムな時点においてデータ送信を開始可能であることに起因し、複数のネットワーク装置が、オーバーラップした時点においてデータ送信を開始可能であり、この結果、「衝突」が発生する。このような衝突に関与した送信は、誤りを伴って受信器に到来する。正常な受信を確認するアクノリッジメントを受信することなしに所定の時間が経過した後に、送信器は、送信を再試行する。これらの送信も、衝突に遭遇する可能性があり、且つ、したがって、こちらも不成功に終わる可能性がある。これらの端末は、誤りを伴うことなしに送信が受信され、且つ、アクノリッジされる時点まで、送信間の所定の時間間隔を伴って送信を継続する。衝突は、ネットワークのスループット効率を低減する。
【0040】
ALOHAプロトコルの一つの重要な変形は、「スロット型ALOHA(slotted ALOHA)」と呼ばれている。スロット型ALOHAを使用する通信ネットワークは、それぞれのフレームを一連のタイムスロットに分割する。このような通信ネットワークによれば、(一般的に)、それぞれのネットワーク装置は、スロットの何れかを使用することにより、自由に送信可能である。任意のネットワーク装置からのデータ送信は、いずれも、タイムスロット内において開始及び終了しなければならない。ネットワーク装置は、タイムスロットの期間よりも長いデータ送信をする場合には、そのデータ送信を、それぞれがタイムスロットの期間内にフィットする複数の更に短いデータ送信に分割しなければならない。固定されたスロット内に送信を閉じ込めることにより、衝突の確率が低減され、この結果、ネットワーク装置間の通信の信頼性が向上するが、衝突は、完全には回避されない。スロット型ALOHAの欠点は、スロットタイミングを知るために、すべてのネットワーク装置をそれぞれのフレームの開始時点に同期させることを要するという点にある。実際には、これは、ネットワーク装置が、それぞれのフレームの開始時点において、ブロードキャストされたタイミング基準信号又は「ビーコン」を聴取することにより、実現される。
【0041】
タイミング基準に対する要求を回避する代替プロトコルは、CSMA-CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)と呼ばれている。CSMA-CAにおいて、装置は、CAP内において送信を所望する場合には、常に、ランダムな期間にわたって待機する。ランダムなバックオフに続いて、チャネルがアイドル状態にあると判明した場合に、装置は、そのデータを送信する。ランダムなバックオフに続いて、チャネルがビジー状態にあると判明した場合には、装置は、チャネルに再度アクセスするべく試行する前に、別のランダムな期間にわたって待機する。
【0042】
TDMA(Time Division Multiple Access)と呼ばれる更なるプロトコルは、ネットワーク装置の排他的な使用のためのタイムスロットを割り当てて衝突の可能性を回避するべく、ネットワークコントローラ又はコーディネータを必要としている。但し、この方式は、中央コーディネータの設置を要するのみならず、すべてのネットワーク装置が、送信を開始する前に、ビーコンと、自身に割り当てられた一つ又は複数のスロットの通知と、を聴取(listen)することを必要としている。
【0043】
同一のネットワーク内において、例えば、それぞれ、アップリンク(即ち、コーディネータ又は基地局などの中央地点へのデータ送信)及びダウンリンク(センサなどのネットワーク装置へのデータ送信)において、異なるプロトコルを使用可能である。
【0044】
この観点において、WSNのダウンリンク用に提案された一つのプロトコルは、WiseMAC(Wireless sensor MAC)と呼ばれている。これは、ビーコンなし方式であり、それぞれのネットワーク装置は、同一の一定の期間を有する短い時間にわたって無線チャネルを聴取する。ネットワーク装置が活動を検出した場合には、ネットワーク装置は、データフレームが受信される時点まで、又はチャネルが再度アイドル状態になる時点まで、聴取を継続する。その一方で、コーディネータは、フレームのデータ部分が到達した際に受信器がウェークアップ状態になることを保証するべく、すべてのデータフレームの前にウェークアッププリアンブルを付加する。この結果、ネットワーク装置の電力消費量は、チャネルがアイドル状態にある際には、非常に低く維持される。
【0045】
IEEE802.15.4においては、後述するように、ビーコン対応型のトポロジーとビーコンなしトポロジーの両方が提供されている。ビーコン対応型トポロジーは、CSMA-CAを介したコンテンションに基づいたアクセス用のスロットと、ネットワーク装置の排他的な使用のためのTDMAに基づいて割り当てられた保証タイムスロット(GTS)の両方を含む「スーパーフレーム」によって置換された「フレーム」の概念を有するプロトコルの組合せを使用する。これは、GTSの割当による信頼性の高いデータ送信を提供するが、タイミング及びスロット割当情報について、コーディネータを聴取するべく、ネットワーク装置がパワーアップされた状態(ウェークアップした状態)に留まらなければならないという欠点を有している。
【0046】
要すれば、タイミング基準及び(スーパー)フレーム構造を提供するビーコンに基づいた通信プロトコルは、衝突の低減と、したがって、通信の信頼性の向上と、を可能にするが、これは、ネットワーク装置の電力消費量の犠牲によるものである。一方、ビーコンなし方式によれば、電力消費量を非アクティブ期間において非常に低く維持可能ではあるが、ビーコンに基づいた方式と比べて、保証されるスループットが小さく、且つ、レイテンシ時間(チャネルアクセスを得る時点までの遅延)が大きい。
【0047】
本発明は、ネットワーク装置の高度な信頼性と低電力消費量という両方の利益を組み合わせることができるIEEE802.15.6のためのチャネルアクセス方式を提案する。この方式の動作法について説明する前に、類似の構成がIEEE802.15.6に使用されると考えられることから、以下、IEEE802.15.4ネットワークの一般的な構成についてもう少し説明しておくこととする。
【0048】
図1は、無線トランシーバ及びその低レベルコントロールを含むPHYレイヤを介して物理媒体にアクセスする層状のOSIモデルの観点におけるIEEE802.15.4のWPANの概略的なアーキテクチャを示しており、これには、参照符号100が付与されている。図示のように、PHY用の2つの代替周波数帯域101、102が存在しており、これらが図2に示されている。低周波数帯域101は、868.3MHzを中心とする単一の20kb/sのチャネル及び/又は915MHzを中心とするそれぞれが40kb/sの10個のチャネルを提供する。高い周波数帯域102は、それぞれが250kb/sであり、且つ、2.44GHzの周波数を中心とする16個のチャネルを提供する。これらの帯域のうちのいずれが使用されるかは、当該地域の規制要件によって左右されることになる。
【0049】
このPHYに対するアクセスは、図1に参照符号105によって示されているMAC(Medium Access Control)サブレイヤによって提供される。したがって、この上位には、且つ、WPAN100の外部には、他のネットワークからのWPANに対するアクセスを許容するLLC(Link Layer Control)が提供されており、これは、IEEE802.2規格によるものであってもよく、或いは、他のタイプのものであってもよい。最後に、LLCより上方の上位レイヤ109は、ネットワークの構成、操作、及びメッセージのルーティングを提供するためのネットワークレイヤと、意図されている全体的な機能を提供するアプリケーションレイヤと、を含む。
【0050】
MACサブレイヤの一つのタスクは、ネットワークトポロジーを制御することにある。スター及びピアツーピアが、通信ネットワーク内における2つの既知のトポロジーであり、且つ、いずれも、IEEE802.15.4において提供されている。いずれの場合にも、トポロジーは、装置とコーディネータという2つの基本的な種類のネットワークノードを区別している。図3に示されているように、スタートポロジーにおいては、いくつかの装置11が、中央コーディネータ10と直接通信しており、ピアツーピア構成においては、装置11Aによるコミュニケータとの通信は、中継装置として機能する中間の装置11B及び11Cにより、一つ又は複数のホップに沿って実行される。コーディネータは、上位レイヤへのアクセスポイントとして機能しており、WSNの場合には、コーディネータは、センサによって収集されたデータ用のシンクとして機能する。それぞれの装置の通信レンジを相当に限定することができる場合には(数メートル)、ピアツーピアトポロジーによれば、相対的に大きなエリアをカバー可能である。トポロジーは、動的であってよく、装置のネットワークへの追加又は除去に伴って変化する。
【0051】
MBANの場合には、例えば、コーディネータがそれぞれの患者サイト(病院のベッドなど)に提供され、これにより、一人の患者上の装置と信号を交換する場合には、スターネットワークが適当であろう。ピアツーピアは、複数の患者に対してサービスするべく一つのコーディネータが提供される場合に、より適切なトポロジーであろう(コーディネータは、病室内の固定された地点に配置可能であろう)。したがって、装置11は、一般に、移動型となり、コーディネータは、移動型又は固定型であってよい。又、ピアツーピアネットワークは、ネットワークを迅速にセットアップ又は変更したり、或いは、ネットワークの自己組織化及び自己回復の実現が必要とされる高速で変化する環境に好適であろう。自己回復は、例えば、既存のコーディネータに障害が発生するか又は既存のコーディネータがネットワークを離脱した場合に、新しいコーディネータを確立するステップを包含可能である。
【0052】
病院などの同一の場所に、多数のスター及び/又はピアツーピアネットワークをセットアップ可能であり、そのそれぞれが、独自のコーディネータを有する。この場合には、相互干渉を回避すると共にデータの共有又は照合を許容するべく、個々のコーディネータが協働する必要がある。IEEE802.15.4においては、このようなネットワークをクラスタと呼んでおり、且つ、クラスタ用の全体的なコーディネータを確立するステップと、クラスタを分割及びマージするステップと、が提供されている。
【0053】
WPAN内のノードは、様々な能力のユニットによって構成可能である。一般に、コーディネータの役割は、なんらかの処理パワーを有する相対的に高機能な装置と、複数の供給源からの送信を同時に処理する能力を有するトランシーバと、を必要とすることになる。そして、この結果、電力の十分な供給を必要とすることになる(場合によっては、商用電源供給型であってよい)。一方、ネットワーク内の他の装置は、相対的に限られた処理能力を有し、電池電力のみへアクセス可能なものでよく、且つ、場合によっては、リレーホップとして機能することができないほどに単純なものであってもよい。非常にわずかな電力しか利用できない装置は、大部分の時間にわたってシャットダウン可能であり、且つ、例えば、センサデータを別のノードに送信する際にのみ、ときどき、「ウェークアップ」してもよい。したがって、IEEE802.15.4規格は、「フル機能」装置と「部分的機能」装置を区別している。電力の利用可能性は、センサが、身体内に埋植可能であり、且つ、したがって、大きな又は充電式の電池を具備することができないMBANの場合に、特有の課題である。
【0054】
前述のように、IEEE802.15.4は、ビーコン対応型及びビーコン非対応型のネットワークトポロジーを提供する。
【0055】
ビーコン対応型のネットワークにおいては、コーディネータが、ビーコンを定期的に送信し、且つ、装置が、そのビーコンを定期的に聴取し、ネットワークに対して同期化すると共にチャネルにアクセスする。チャネルアクセスは、図4に示されているスーパーフレーム構造による「スーパーフレーム」内において順番に送信される「フレーム」を単位としており、これは、コーディネータによって規定される。それぞれのスーパーフレーム30は、アクティブと非アクティブという2つの部分から構成されている。アクティブ部分は、コンテンションアクセス期間CAP36と、これに後続する、クオリティオブサービス要件を有するアプリケーション用の保証されたアクセスのための任意選択のコンテンションフリー期間CFP37と、に分割される。
【0056】
図4の垂直分割によって示されているように、スーパーフレームは、それぞれがコーディネータからの又は装置からのデータのフレームを搬送する能力を有する16個の等しく離隔したタイムスロットに分割される。したがって、一つのコーディネータと関連付けられた装置を考慮すれば、一つの装置のみが、スーパーフレーム内のそれぞれの連続したタイムスロットにおいて一つの時点においてコーディネータとの通信状態にあってよい。まず、コーディネータによって送信されるビーコンフレーム(以下を参照されたい)について、スロット31が到来する。この後に、いくつかのスロット32がCAP内において供給され、CSMA-CAを使用するコンテンション方式により、装置との間のデータ送信が許容される。
【0057】
次に、CFPの保証タイムスロットGTS33が後続し、ビーコンに基づいたネットワーク内における装置へのチャネルアクセスが許容され、且つ、図示されているように、これらのそれぞれは、複数の基本タイムスロットにわたって延長可能である。非アクティブ期間の満了後に、コーディネータが別のビーコンフレーム31を送信することにより、次のスーパーフレームがマーキングされる。装置は、スーパーフレームの非アクティブ期間34において、スリープ状態に移行可能である。したがって、非アクティブ期間34の長さを拡張することにより、装置の電池電力を可能な限り節約可能である。
【0058】
ビーコン非対応型のネットワークにおいては、コーディネータは、(例えば、ネットワークディスカバリのために)要求されない限り、同期化のためにビーコンを送信する必要はない。チャネルアクセスは、スーパーフレーム構造によって制限されてはおらず、且つ、装置は、非同期であって、CSMA-CAによってすべてのデータ転送が実行される。これらは、WiseMACなどのプロトコルに従って、その独自のスリープパターンを踏襲可能である。
【0059】
MBANアプリケーションの場合には、コーディネータは、監視対象の一つ又は複数の身体の外部に位置している。これは、PDA、携帯電話機、ベッドサイドのモニタステーション、或いは、場合によっては、一時的にコーディネータとして機能する十分に高機能なセンサであってよい。前述のように、ビーコン対応型ネットワーク内のコーディネータは、ネットワーク装置に対する同期化及びチャネルアクセスの提供を担当している。又、スーパーフレームの開始及び終了は、コーディネータによって規定される。コーディネータは、他のネットワークに対する潜在的な通信と、例えば、充電済みの電池の容易な交換による十分な電源に対するアクセスと、という2つの主要な機能を具備している。
【0060】
又、おそらくはいくつかのコーディネータを含むネットワークの全体的な監督のために中央治療及び監視ユニットを提供することも可能である。これは、複数の患者から非常事態データの連続した又は不定期のストリームを受信する能力を有する監視装置を具備した部屋の形態を有することができる。通常、中央ユニットには、患者のデータを継続的に観察及び監視する看護師又は医療専門家が待機することになる。彼らは、患者の状態の変化に応答して処置を講じることになる。中央治療及び監視ユニットは、一つの又はそれぞれのコーディネータに無線接続することも可能であり(この場合には、そのユニットは、MBANの一部と見なすことが可能であり)、或いは、それぞれのコーディネータに対する有線接続を具備することも可能である(したがって、この場合には、そのユニットは、MBANの外部に位置すると見なすことができる)。
【0061】
図5〜図8は、IEEE802.15.4ネットワーク内における装置とコーディネータの間のデータ転送を示している。IEEE802.15.4には、以下のような3つの基本的な転送タイプが規定されている。
(i)装置(送信器)がそのデータを送信する先である受信器としてのコーディネータに対するデータ転送―スター及びピアツーピアトポロジーの両方において使用される。
(ii)装置がデータを受信する送信器としてのコーディネータからのデータ転送―スター及びピアツーピアトポロジーの両方において使用される。
(iii)2つのピア間におけるデータ転送―ピアツーピアネットワークにおいてのみ使用される。
【0062】
図5及び図6は、それぞれ、ビーコン対応型及びビーコン非対応型の場合の両方における装置(ネットワーク装置11)とコーディネータ(コーディネータ10)からの転送を示す。相違点は、ビーコン対応型の場合には、装置1は、CFPにおいてCSMA-CAを使用して、又はCAPにおいてGTSを使用して、データ(データフレーム42)を送信する前に、コーディネータからビーコンフレーム41を受信するべく待機しなければならず、ビーコン非対応型の場合には、通常、ビーコンフレームが存在せず、且つ、装置11は、CSMA-CAを使用してデータフレーム42を自由に送信するという点にある。いずれの場合にも、コーディネータは、任意選択のアクノリッジメントフレーム又はACK43を送信することにより、データの正常な受信をアクノリッジする。これらの異なるタイプのフレームについては、更に詳細に後述する。
【0063】
受信器がなんらかの理由から受信したデータフレームを処理することができない場合には、そのメッセージはアクノリッジされない。送信器が所定の期間の後にアクノリッジメントを受信しない場合には、送信器は、その送信が不成功であったと仮定し、且つ、フレーム送信を再試行する。何回かの再試行の後に、アクノリッジメントが依然として受信されない場合には、送信器は、そのトランザクションを終了させるか又は再度試行するべく選択可能である。アクノリッジメントが不要である際には、送信器は、送信が成功したと仮定する。
【0064】
図7及び図8は、コーディネータ10から装置11へのデータ転送を示している。コーディネータがビーコン対応型WPAN(図7)においてデータを装置に転送すべく所望する際には、コーディネータは、データメッセージが保留中であるという旨をビーコンフレーム41内において通知する。装置は、定期的にビーコンフレームを聴取し、且つ、メッセージが保留中である場合には、データ要求(MAC命令)44を送信し、CSMA-CAによってデータを要求する。コーディネータ10は、アクノリッジメントフレーム43を送信することにより、データ要求の正常な受信をアクノリッジする。次いで、保留中のデータフレーム42が、スロット型のCSMA-CAを使用して、或いは、可能な場合には、アクノリッジメントの直後に、送信される。装置11は、任意選択のアクノリッジメントフレーム43を送信することにより、データの正常な受信をアクノリッジ可能である。この段階で、トランザクションが完了する。データトランザクションが正常に完了した際に、そのメッセージは、ビーコン内の保留メッセージのリストから除去される。
【0065】
ビーコン非対応型の場合には、特定の装置11用の準備が整ったデータを具備するコーディネータ10は、コンテンションに基づいて送信される関係する装置からのデータ要求44を待たなければならない。この要求を受信した際に、コーディネータは、アクノリッジメントフレーム43を送信する(これは、該当する場合には、準備されたデータが存在しないことを通知するべく使用することも可能である)。次いで、データフレーム42が送信され、これに応答し、装置11は、返信として別のアクノリッジメントフレーム43を送信可能である。
【0066】
わかりやすくするべく、以上の手順においては、装置とコーディネータの間のデータ転送のうちの前述のケース(i)及び(ii)のみが考慮されているが、ピアツーピアネットワークにおいては、前述のように、データ転送は、一般に、一つ又は複数の中間ノードを伴うメカニズム(iii)を介して実行されることになり、その結果、関係する衝突及び遅延が増大する。
【0067】
図5〜図8に示されているように、IEEE802.15.4ネットワーク内における通信には、以下のように4つの異なるタイプのフレームが関係している。
−ビーコンを送信するべくビーコンタイプのコーディネータによって使用されるビーコンフレーム41
―すべてのデータ転送用に使用されるデータフレーム42
−正常なフレームの受信を確認するべく使用されるアクノリッジメントフレーム43
−データ要求などのすべてのMACピアエンティティの制御転送を処理するべく使用されるMACコマンドフレーム44
【0068】
4つのフレームタイプのそれぞれの構造は、非常に類似しており、且つ、例として、データフレーム42が図9に示されている。この図において、2つの水平のバーは、MACサブレイヤと、PHYレイヤと、をそれぞれ表している。時間は左から右に進行し、且つ、フレームのそれぞれの連続したフィールドの時間長が、関係するフィールドの上方に示されている(単位:オクテット)。すべてのフレームは、特定順序のフィールドのシーケンスから構成されており、これらは、左から右に、PHYによって送信される順序において示されており、最も左側のビットが、時間的に最初に送信される。それぞれのフィールド内のビットには、0(最も左側であり、且つ、最下位である)からk−1(最も右側であり、且つ、最上位である)までが付番されており、この場合に、フィールドの長さは、kビットである。
【0069】
データフレーム42を介して送信されるデータは、上位レイヤに由来している。データペイロードは、MACサブレイヤに伝達され、且つ、MACサービスデータユニット(MSDU)と呼称される。MACペイロードには、先頭にMACヘッダMHRが付加され、且つ、末尾にMACフッタMFRが付加される。MHRは、フレームコントロールフィールド50(以下を参照されたい)、データシーケンスナンバ(DSN)、アドレス指定フィールド、及び任意選択の補助セキュリティヘッダを含む。MFRは、16ビットのフレームチェックシーケンスFCSから構成されている。MHR、MACペイロード、及びMFRが、一つのMACデータフレーム(即ち、MPDU)を形成する。MPDUは、PHYサービスデータユニットPSDUとしてPHYに伝達され、これが、PHYペイロードになる。PHYペイロードには、先頭に、プリアンブルシーケンス及びフレーム開始デリミタSFDを含む同期化ヘッダSHRと、オクテットを単位とするPHYペイロードの長さを含むPHYヘッダPHRと、が付加される。プリアンブルシーケンス及びデータSFDにより、受信器は、シンボル同期化を実現可能である。SHR、PHR、及びPHYペイロードが、一つのPHYパケット(PHYプロトコルデータユニットPPDU)を形成する。
【0070】
ビーコンフレーム41、アクノリッジメントフレーム43、及びMACコマンドフレーム44は、MACペイロードがそれぞれのケースにおいて異なる機能を具備し、アクノリッジメントフレームがMACペイロードを具備していないことを除いて、類似の構造を具備している。又、ビーコンフレーム41、アクノリッジメントフレーム43、及びMACコマンドフレーム44は、MACサブレイヤに由来しており、上位レイヤの関与を伴っていない。
【0071】
図10Aには、それぞれのタイプのフレーム内において使用されるフレームコントロールフィールド50が更に詳細に示されている。これは、図示のように、異なる目的のためのサブフィールドに割り当てられた16ビットから構成されている。具体的には、フィールドの最初の3ビットは、ビーコンフレーム41、データフレーム42、アクノリッジメントフレーム43、又はMACコマンドフレーム44というフレームタイプ51を表している。フレームタイプを表記する方法が図10Bに示されている。フレームタイプビット51に後続するのが、単一ビットのセキュリティ有効化サブフィールド52であり、これは、セキュリティがMACサブレイヤによって有効化されているかどうかを表している。これに後続しているのが、フレームペンディングサブフィールド53であり、これは、送信器が受信器用の更なるデータを具備しているかどうかを通知する。次が、アクノリッジメントが受信器に対して要求されているかどうかを通知するアクノリッジメント要求サブフィールド54である。この後に、更なるいくつかのサブフィールド55〜59が後続しており、これらは、アドレス指定のために使用されるか、又は現在のIEEE802.15.4の仕様においては予備とされている。
【0072】
前述のように、図10Bは、フレームタイプサブフィールド51の可能なビット値の表であり、IEEE802.15.4の仕様においては、値100〜111が使用されていないことを示している。
【0073】
MACコマンドフレーム44は、図11Aに示されているように、構造において極めて類似している。この場合には、ペイロードは、MACコマンドフレームによって表されるコマンドのタイプを識別するべく、コマンドフレーム識別子440を含む。IEEE802.15.4においては、図11Bの表に示されているように、様々なタイプのコマンドが規定されており、この図には、識別子440の可能な値が示されており、いくつかの値は、将来使用されるように予備となっている。
【0074】
本発明の背景の概説を以上において終了し、以下、本発明の基礎をなす原理について説明することとする。
【0075】
本発明は、例えば、それぞれの患者の身体上又はその周辺に配設されるか又はその内部に埋植されたセンサのMBANを介して患者が監視される状況に対処するものである。尚、以下の説明においては、「MBAN」又は「システム」という用語は、所与の場所に位置した無線装置の全体を意味するべく使用されており、この全体システム内に別個のネットワークが存在する場合も含む。
【0076】
要すれば、本発明は、ビーコン対応型通信とビーコンなし通信の両方が個別のコーディネータを介して共に実施されるシステムを提案する。これらのコーディネータは、通常は、システム内の別個のハードウェアとなるが、それぞれのハードウェア又はソフトウェアリソースの少なくとも一部分を共有するべく、一緒に配置することもできよう。以下においては、ビーコン対応型の通信を「ビーコンモード」と呼称し、且つ、ビーコンなし通信を「非ビーコンモード」と呼称する。
【0077】
センサの少なくともいくつかは、患者の生命を脅かす状況(非常事態の状態)を通知可能な心拍数などの一つ又は複数のパラメータの検知に関与しているものと仮定されている。本発明の実施例は、非常事態の状態の存在(開始)及び非常事態の状態の解消(終了)の宣言に応答して、ビーコンモード通信と非ビーコンモード通信の間を切り替える方法を提供する。
【0078】
説明対象の技法は、例えば、医療無線BANにおけるデュアルモードのビーコンに基づいた及びビーコンに基づいていないチャネルアクセス動作にフォーカスしており、ネットワーク装置(医療センサなどのBAN装置)が、個々のチャネルアクセスモードの欠点の影響を受けることなしに、両方のタイプのモードの利益を享受できるようにする。医学的な非常事態にあるネットワーク装置は、ビーコンに基づいたチャネルアクセスを利用するプライマリネットワークに転送され、非常事態にはないネットワーク装置は、非ビーコンモードのチャネルアクセスを利用するセカンダリコーディネータによって制御されるセカンダリネットワークにハンドオーバーされる。基本的に、所望の場合には、2つの直交チャネル上において動作することを提供する同一の物理的コーディネータ内において2つのモードが動作可能であり、そのため、一方のモードは他方と干渉しない。
【0079】
初期構成フェーズは、まず、その状態(非常事態又は非−非常事態)とは無関係に、すべての装置が、非ビーコンモードにおいて、一つのコーディネータの下において稼働しているという仮定に基づいている。この実施例においては、初期構成の後に、センサのグループが患者の身体に装着され、且つ、このセンサのグループのうちの一つのみが非常事態に移行した場合に、その患者と関連付けられている(例えば、同一の患者IDを具備する)センサのグループの全体が排他的なビーコンモードコーディネータにハンドオーバーされる。一人の患者に装着されたセンサのいずれもが非常事態の警戒状態を離脱した際には、すべてのセンサが、オリジナルの非ビーコンモードコーディネータに戻るようにハンドオーバーされる。従来のハンドオーバーメカニズムとは異なり、このタイプのハンドオーバーのトリガは、非常事態の状態の変化である(従来のハンドオーバーメカニズムは、通常、受信信号強度、受信信号品質、及び/又は基地局などのコーディネータタイプの装置からの距離に基づいている)。
【0080】
更には、本発明の実施例は、移動性の課題にも対処している。非常事態にあるセンサが移動性を有しており(例えば、患者が移動する)、且つ、コーディネータが、壁、天井、又は柱に固定されて相対的に静止した状態にあるシナリオを考えてみよう。このようなシナリオにおいては、ネットワーク装置は、地理的に移動するのに伴って、一つのコーディネータから他へハンドオーバーされる必要がある。後述するように、ハンドオーバーのためのトリガは、装置の場所と任意選択のアップリンク又はダウンリンクの受信信号品質の尺度の組合せに基づいている。ネットワーク装置の場所と任意選択の受信信号品質パラメータは、ビーコンモードコーディネータを必要とせずに、安定したハンドオーバーを提供する。例えば、ネットワーク計画を通じて、又は「歩行」試験が行われるネットワーク構成フェーズを通じて、最良の近隣コーディネータをそれぞれのBAN装置の場所と関連付け可能である。
【0081】
或いは、ミニマム計画法を採用することも可能であり、この場合には、隣接するコーディネータのカバレージエリアが、従来のマクロセルラー設計よりも格段に大きなオーバーラップを具備しており、且つ、隣接するコーディネータは、直交RFチャネルを利用する。格段に大きなオーバーラップしたカバレージエリアによれば、入念なネットワーク計画を必要とすることなしに、場所に基づいたハンドオフを手動又は自動で容易に構成可能である。例えば、自動的なハンドオフは、距離的に最も近いコーディネータによって実行可能である。装置の場所は、同一の患者に装着されたBAN装置のグループの平均的な場所であってよい。或いは、場所は、現在のアクティブなコーディネータから最も離れた装置の場所であってもよい。患者に装着された装置の組/グループの場合には、ハンドオーバートリガは、その装置の組/グループの全体に適用されることになろう。
【0082】
以下、本発明の実施例について、図12〜図22を参照し、説明することとする。
【0083】
まず、2つのスター又はピアツーピアネットワーク(トポロジー)が確立されており、ネットワークのうちの一つは、非常事態のためのプライマリコーディネータによって制御されており、且つ、他方のネットワークは、非−非常事態アプリケーションのためのセカンダリコーディネータを具備するものと仮定する。初期構成の後に、並行して稼働する2つのネットワークが得られるものと仮定する。プライマリコーディネータは、非常事態にあるネットワーク装置によって使用されるビーコンモードコーディネータである。セカンダリコーディネータは、任意のネットワーク装置によって使用可能であるが、プライマリコーディネータよりも信頼性が低い(保証のレベルが低いと共に/又は低速の)通信リンクを提供する非ビーコンモードコーディネータである。
【0084】
この説明においては、システム内の医療装置のみが「非常事態」となる能力を有しており、医療目的には使用されない他のネットワーク装置13が存在してもよいと仮定する。図12に示されている初期状態においては、すべてのネットワーク装置、即ち、非常事態にある装置11Eと非常事態にはない他の装置(医療又は非医療装置)13の両方が、非ビーコンモードコーディネータ10NBとの間において通信している。実線の両方向矢印は、一般に双方向である低優先順位リンク15を示しており、例えば、センサノードは、そのコーディネータから命令を受信し、且つ、自身が収集したセンサデータを送信する。別のビーコンモードコーディネータ10Bが存在しているが、これは、いずれかのネットワーク装置による通信のためには、まだ使用されていない。非常事態にある装置11Eを含むネットワーク装置が、非ビーコンモードコーディネータ10NBとの間においてピアツーピアリンクを使用していることに留意されたい。このトポロジーは、非ビーコンモードコーディネータによって割り当てられたGTSの欠如に加えて、非常事態にある任意の装置11Eとの間のデータ転送を低速化させる傾向を有することになる。したがって、ネットワーク装置の間(並びに、ネットワーク装置と非ビーコンモードコーディネータ10NBの間)のリンクは、「低優先順位」のリンク15として示されている。
【0085】
非常事態にあるネットワーク装置の通信の信頼性を増大させるべく、プライマリコーディネータを積極的に使用する。即ち、ネットワーク装置のうちの一つ又は複数が非常事態にあると認識された際に、図13に示されているように、(この例においては)スタートポロジーとTDMA-ALOHAなどのビーコンに基づいたチャネルアクセスを使用することにより、非常事態にある装置11Eとの間の通信をビーコンモードコーディネータ10Bに開始させ、これにより、非常事態通信のための新しいプライマリネットワークを形成する。このプライマリネットワークは、図の破線によって示されているように、非常事態にある装置11Eのそれぞれに対して高優先順位リンク14を提供する。尚、既に動作している非ビーコンモードコーディネータ10NBは、図に実線の矢印によって示されるように、非ビーコン型の技法を使用するセカンダリネットワークを提供し、これにより、低優先順位リンク15を提供するべく、使用される。非常事態トポロジーは、スター型又はビアツーピア型であってよいことに留意されたい。ピアツーピアトラフィックの場合には、ビーコンモードコーディネータと非常事態にある装置11Eの間のそれぞれの中間ノードも、高優先順位リンク14によってリンクされることになろう。
【0086】
尚、コーディネータ10NBは、元々、非ビーコンモードにあるものとして示されているが、セカンダリネットワークを形成する際に、このモードに切り替えることも可能であろう。その場合には、プライマリネットワークの利点は、輻輳していないチャネルと、(採用した場合に)ピアツーピアの代わりのスタートポロジーの使用となろう。
【0087】
このようなデュアルモードシステムに関係するプロトコルのいくつかについて説明する前に、後述する方式によってデュアルチャネルアクセス動作を実現するには、以下のような無線能力に関する特定の仮定及び考慮事項が存在している。
【0088】
1.すべての装置は、関係するコーディネータからビーコンを受信し、且つ、コーディネータを弁別可能であるものと仮定する。
【0089】
2.更なる仮定は、2つのコーディネータが別個のチャネルアクセスモードを提供可能であるというものであり、これは、これらのコーディネータのうちの一つが、保証スロットモード(例えば、TDMA-ALOHA)において動作可能であり、且つ、他方が、低電力の非保証モードにおいて動作することを意味する。
【0090】
3.したがって、このような動作においては、リンク(ネットワーク)の組の一つと他のものとの干渉が懸念事項ではないものと仮定する。
【0091】
4.又、関係するコーディネータの無線チャネルへのアクセス及び周波数帯域は、a.時間ドメインにおいて切り替えられるか、b.周波数ドメインにおいて切り替えらえるか、又はc.周波数ドメインと時間ドメインの両方において切り替えられるものと仮定する。
【0092】
プロトコル1:デュアルチャネルアクセスメカニズムのセットアップ構成及びハンドオーバー
図14は、前述の図12及び図13に示されている深刻な非常事態におけるデュアルチャネルアクセスメカニズムのセットアップ構成及びハンドオーバーのプロトコルを示している。図14(並びに、類似の以下の図)においては、垂直軸は、時間を表している。水平軸に沿って、個別の列には、様々な装置タイプが示されており、それぞれの個別の機能を区分している。第1列は、非ビーコンモードコーディネータ10NBを表しており、第2列は、非常事態の状態に移行する一つ又は複数のネットワーク装置11Eを表しており、第3列は、他のネットワーク装置13(医療及び非医療装置の両方)を表しており、これらのうちのいくつかは、非常事態に移行することも可能であり、したがって、非常事態にある医療ネットワーク装置11Eと同一のグループに移ることができ、最後の列は、ビーコンモードコーディネータ10Bである。プロセスフローは、以下のとおりである。
【0093】
S10:まず、セットアップ構成において、すべての装置が非ビーコン型のコーディネータに割り当てられる。したがって、図示のように、ビーコンモードにおいて動作している装置は存在しない。
【0094】
S11:一つ又は複数のネットワーク装置が、例えば、検知されたパラメータの値が臨界レベルに到達したことに起因して、非常事態を宣言したとしよう。この種のそれぞれの装置は、「非常事態」にあると表現される。尚、ネットワーク装置自体による非常事態の状態の初期判定の実行は、必須ではなく、なんらかの更に上位の装置から通知を受け取ることも可能である。
【0095】
S12:非常事態にある装置11Eが非常事態通知を非ビーコンモードコーディネータ10NBに供給するものと仮定する。この代わりに、例えば、システムが備える更に上位の制御ユニットにより、他の方法で供給することも可能であろう。
【0096】
S13:非ビーコンモードコーディネータ10NBは、関係するグループ内のすべての装置を識別する。例えば、病院内において同一の患者に装着されているすべての装置を、患者のID番号に基づいて、又はなんらかの他の方法により、グループ化可能である。したがって、ステップS12において、グループ内の装置のうちの一つのみが通知を供給することで十分であろう。
【0097】
S14及びS15:非常事態にある装置11Eは、ビーコンモードコーディネータ10Bによって形成されるビーコンネットワークに対して、グループとして、ハンドオーバー及び同期化するように命令される。したがって、非ビーコンモードコーディネータ10NBは、装置のグループのハンドオーバーを起動するべく、非常事態にある一つ又は複数の装置11Eに対するステップS14の命令のみならず、他の装置に対するステップ15に示されている命令をも送信する。
【0098】
S16及びS17:非常事態にある装置11Eと、同一グループ内の他のすべての装置とは、ビーコンモードコーディネータ10Bに同期化するための準備が整った状態となる。これらは、ネットワーク全体にブロードキャストされるビーコンモードコーディネータからの次のビーコン信号を聴取することにより、これを実行する。したがって、それ自体が非常事態を生成するか又は非常事態にある装置と同一のグループに属している第3列内の装置も、ビーコン対応型のネットワークに参加することができる。
【0099】
S18及びS19:ハンドオーバーが完了し、これ以降、装置のグループは、ビーコンネットワークに参加しており、したがって、高優先順位リンク上においてビーコンモードコーディネータ10Bのサービスを受ける。図14には示されていないが、グループ外の残りのすべての装置(非医療装置など)は、非ビーコンモードコーディネータ10NBによってサービスされている非ビーコンモードネットワーク内に留まる。
【0100】
したがって、本実施例においては、上述のハンドオーバーにおいて、一人の患者に装着されているすべてのセンサが、グループとして、ハンドオーバーされている。換言すれば、単一のセンサ装置が非常事態に移行した場合にも、すべての他のセンサ装置(又は、予め選択されたサブセット)が排他的なビーコンに基づいたネットワークにハンドオーバーされるものと仮定されている。
【0101】
プロトコル2:もはや「非常事態」の状態にはないネットワーク装置のハンドオーバー
ビーコンモードネットワークが動作している際に、装置のうちの一つ又はいくつかが非常事態から離脱することがある。このような場合には、センサ装置を、オリジナルのコーディネータに戻るようにハンドオーバーすることができる。オリジナルのコーディネータは、図15に示されているように、オリジナルの非ビーコンモードの非−非常事態ネットワークに戻るようにハンドオーバーする前に、同一の患者に装着されている同一のグループのすべての装置が非常事態から離脱していることを確認することになる。
【0102】
S20:初期状態において、ビーコンモードネットワークと非ビーコンモードネットワークが、それぞれ、いくつかの装置と共に稼働しているものと仮定する。
【0103】
S21:非常事態にあるネットワーク装置のグループのうちの一つ11Eが非常事態から離脱する。換言すれば、非常事態の状態は、少なくともその装置が関係している限り、例えば、その検知されたパラメータが、もはや臨界値ではなくなることに起因し、解消された状態となる。
【0104】
S22:その装置11Eは、非常事態離脱通知をビーコンモードコーディネータ10Bに送信する。
【0105】
S23:ビーコンモードコーディネータは、返信において、その状態を報告するように、同一グループ内の他の装置に対して要求を送信する(これは、当然のことながら、それぞれの装置が、自身の状態を認知するための十分な機能を具備するものと仮定しており、装置が自身で非常事態の状態を判定することができない代替構成においては、このステップと次のステップは、省略されることになろう)。
【0106】
S24:グループ内の他の装置は、自身の状態をコーディネータ10Bに対して報告する。即ち、それぞれは、自身がもはや非常事態にはないことを、例えば、対象のネットワーク装置によって検知される患者の生命パラメータの現在の値が許容可能なレンジ内にあることを確認する。
【0107】
S25:コーディネータ10Bは、非常事態にあるグループの装置11Eをビーコンモードネットワーク内に維持する必要性がもはや存在していないということを確信したら、ハンドオーバー要求をグループ内の装置のすべてに対して送信する。
【0108】
S26:グループ内の装置が非ビーコンモードに切り替わる。
【0109】
S27及びS28:装置11Eは、レンジ内の非ビーコンモードコーディネータを見出すべく試みる(この種のコーディネータが複数利用可能である場合には、最も近いコーディネータ又は最強の信号を供給するものを選択可能である)。非ビーコンモードコーディネータを見出した際に、装置11Eは、自身を非ビーコンモードネットワークに登録する。
【0110】
S29:この段階において、ハンドオーバーが完了しており、したがって、この段階において、装置のグループは、低優先順位リンク上において非ビーコンモードコーディネータ10NBとの通信を実施する。図示されてはいないが、ビーコンモードコーディネータ10Bを介した高優先順位リンクは、依然として非常事態にある他の装置の一つ又は複数のグループ、例えば、別の患者を監視している装置のグループのために維持可能である。
【0111】
プロトコル3:位置判定メカニズムに基づいたミニマム装置機能を伴うデュアルアクセスモード動作のハンドオーバープロトコル:センサ装置が移動性を有する
いくつかのシナリオにおいては、ネットワーク装置は、移動性を有することがあり、即ち、換言すれば、そのコーディネータとの関係において移動する能力を有することができる。例えば、病院においては、患者に装着されたセンサのそれぞれのグループは、患者が移動するか又は移動されるのに伴って、ベッド又は壁などに装着された静止状態のコーディネータとの関係において移動することになろう。
【0112】
この場合には、保証スロットを有するTDMA装置の排他的なグループを形成する新しいコーディネータ10Bによって既に受け入れられている一つの非常事態にある装置又は非常事態にある装置のグループは、そのコーディネータから離れるように移動を始めることがある(例えば、二人の非常事態にある患者のうちの一人が排他的なコーディネータから離れるように移動する)。このように移動した場合には、ビーコンモードコーディネータ10Bが、非常事態にある装置のためにサービスの質を維持することができなくなる可能性がある。この場合の主要な懸念事項は、移動しているセンサが連続的な更新又は従来のハンドオーバー手順を実行するべく試みた場合に、結果として、非常事態にある装置の電池が迅速に枯渇しうるという事実にある。
【0113】
このような状況を回避するべく、図16のセカンダリハンドオーバー方式を使用し、センサ装置の機能を可能な限り抑制することができる。即ち、非常事態にあるセンサ装置による動作及びシグナリングのニーズを極小化することにより、不要な電力消費を回避する。それぞれのセンサ及び他の利用可能なコーディネータの場所についてコーディネータに通知する能力を有する位置判定エンティティ(例えば、既存のUWB法)が存在しているものと仮定する。又、ビーコンモードコーディネータ10B(排他的な非常事態コーディネータ)が、それを超えた場合にハンドオーバーがトリガされる許容可能な送信レンジ又は安全アクセス半径を具備するものと仮定する。好ましくは、この半径は、信頼性の高い通信のための安全な距離である。安全半径を超えた直後に、装置は、依然として、コーディネータを聴取可能であるが、接続の品質は、ネットワーク装置がその安全半径を超えて更に離れるように移動するのに伴って、排他的な医学的非常事態の動作のためには許容不能なレベルにまで低下することになる。最後に、複数のネットワーク装置が同一の患者に装着されており、且つ、これらのネットワーク装置が、一つの装置が非常事態を宣言した場合にグループ内のすべての装置(即ち、同一の患者に装着されているセンサのいくつか又はすべて)が非常事態となるという意味において、グループとして取り扱われるものと仮定する。
【0114】
手順は以下のとおりである。
【0115】
S30:手順は、非常事態にあるいくつかのネットワーク装置11Eがビーコンモードコーディネータ10Bとプライマリネットワークを介して通信していると仮定される初期状態から始まる。
【0116】
S31:一つのネットワーク装置11E又は装置のグループが、通信のための安全半径の外に位置するように、コーディネータ10Bから離れるように移動したとしよう。通常、先程仮定したシナリオにおいては、これは、患者が移動した(又は、移動された)結果として発生することになる。
【0117】
S32:ビーコンモードコーディネータ10Bは、なんからの方法により、位置の変化を検出する(内部手段によるか、又は位置に関する通知を外部供給源から受けることによる)。
【0118】
S33:ビーコンモードコーディネータ10Bは、短期的な運動に対して反応することを回避するべく、短時間だけ待機する。即ち、ランダムな又は短期的な運動に基づいてハンドオーバーをトリガすることを回避する。
【0119】
S34:ビーコンモードコーディネータ10Bは、同一グループ内の他のセンサ(ネットワーク装置)の位置をチェックする。この場合にも、「グループ」とは、例えば、同一の患者に装着されているセンサの一部又は全部であってよい。
【0120】
S35:コーディネータ10Bは、グループが(依然として)安全半径の外に位置しているかどうかを判定する。この目的には、グループ内の装置の平均的な位置を使用可能であろう。安全半径内に位置している場合には(例えば、センサのグループが装着されている患者がコーディネータ10Bに近づくように戻ってきている場合には)、なにもしない。
【0121】
S36:グループがレンジ外に位置していると判定された場合には、ビーコンモードコーディネータ10Bは、センサのグループをハンドオーバーするためのコーディネータの最良の候補を判定する。これは、一般には、グループの現在の位置に最も近いコーディネータとなるが、判定においては、他のコーディネータの既存の負荷、グループの運動の傾向、及びその他の要因を考慮することも可能であろう。コーディネータは、ネットワーク装置(センサ)とは別個のタイプの装置である必要はなく、且つ、いくつかの実装においては、ネットワーク装置のいくつか又はすべては、コーディネータとして機能する能力を有し、これにより、選択可能なおそらくはいくつかの候補を提供可能であることに留意されたい。
【0122】
S37:コーディネータ10Bは、非常事態にあるセンサのグループに対してハンドオーバー要求を発行する。これは、グループが通信リンクを確立することになる最も近い(好ましくは、ビーコンモードの)近隣コーディネータの識別情報を含む。
【0123】
S38:センサのグループは、自身を新しいコーディネータ10’Bに登録してハンドオーバーを完了させる。これは、個別の装置のハンドオーバー以上のものであり、非常事態の状態にある装置のグループのハンドオーバーであって、実際には、患者自身がハンドオーバーされることに留意されたい。この結果、患者が、例えば、病院の周辺を移動するのに伴って、確実に、患者を監視し、患者に追随し、且つ、患者を追跡することができる。
【0124】
プロトコル4:位置判定メカニズム及び信号品質に基づいたミニマム装置機能を伴うデュアルアクセスモード動作のハンドオーバー手順
第4のプロトコル(図17)においては、第3のプロトコル(図16)について考慮したものと類似の状況を仮定している。相違点は、場所情報に加えて、ハンドオーバーに関する判定を支援するべく信号品質又は無線リンクの品質を更に監視するという点にある。
【0125】
S40〜S45:それぞれ、前述のステップS30〜S35のとおりである。
【0126】
S46:プライマリコーディネータ10Bは、センサのグループとの間の無線リンクのSIR及び/又は品質が許容可能な閾値を下回っているかどうかを判定する。ここで、SIRは、単純に、センサ自身から受信されたアップリンク信号のものであってもよく、或いは、センサから報告を受けたダウンリンク上の信号強度の値であってもよいであろう。信号が許容可能である場合には、センサグループの移動とは無関係に、ハンドオーバーの必要性が(まだ)存在しておらず、したがって、なにもしない。
【0127】
S47:センサが安全半径の外に移動したのに加えて、その信号強度も許容不能に低い場合には、これは、ハンドオーバーが必要であることを意味している。コーディネータ10Bは、このために最良の候補を判定する。
【0128】
S48:使用するべき新しいコーディネータを規定したハンドオーバー要求がセンサのグループに対して発行される。
【0129】
S49:グループは、自身を新しいコーディネータ10’Bに登録し、ハンドオーバー手順を完了させる。
【0130】
非常事態の状態を宣言するには、非常事態の状態を他の無線ノードに伝達することが極めて重要である。以下、上述のプロトコルを、IEEE802.15.4に基づいて現在開発中のIEEE802.15.6などの通信規格に含める方法について、更に説明することとする。
【0131】
図18及び図19は、「非常事態」という名称が付与された新しいビットを追加することによって非常事態の状況を収容すると共にIEEE802.15.6に適合したものにするための本発明の一実施例におけるIEEE802.15.4のフレームフォーマットに対する第1の可能な変更を示している。この第1の可能な変更においては、IEEE802.15.4のフレームタイプに対するその他の変更を実施することなしに、新しい非常事態フレームタイプが許容されている。
【0132】
既に概説したように、IEEE802.15.4は、ビーコンフレーム41、データフレーム42、アクノリッジメントフレーム43、及びMACコマンドフレーム44を含む様々なフレームタイプを提供している。IEEE802.15.6において前述の手順を実装するための一つの方法は、非常事態の状態(又は、非−非常事態の状態)を宛先装置に宣言するべく、非常事態フレームという更なるフレームタイプを導入する。
【0133】
図18は、IEEE802.15.4について既に提案されている図10Aのフレームコントロールフィールド50に対応したフレームコントロールフィールド500の構造を示している。図18を図10Aと比較することによって理解されるように、ビット0〜2は、IEEE802.15.4と同様に、フレームタイプ501を表しているが、可能なフレームタイプ値は、図19に示されているように変更されている。以前の予備の値100〜111(図10Bを参照されたい)のうち、ビット値「111」が、この場合には、新しい非常事態フレームタイプを表すべく使用されている。値100〜110は、将来使用するための予備の値として残されている。
【0134】
フレームコントロールフィールド500の残りのサブフィールド内には、第7ビットが非常事態の状態のためのフラグとして新しく使用されていることを除いて(例えば、「1」=非常事態であり、且つ、「0」=非−非常事態である)、基本的に、図10Aのフレームコントロールフィールド50と同一の構成要素が存在している。ここで、第8ビットは、(図10Aのアクノリッジメント要求サブフィールドに対応した)アクノリッジメントポリシーを表すべく使用されている。セキュリティ有効化ビット502、フレームペンディングビット503、PAN ID圧縮506、宛先アドレス指定モード507、フレームバージョン508、及び発信元アドレス指定モード509の各サブフィールドは、IEEE802.15.4のフレームコントロールフィールド50と同一の機能を具備している。
【0135】
図20及び図21は、非常事態フレームタイプのみならず、所謂即時アクノリッジメントを含む相対的に柔軟なアクノリッジメントの提供、ネットワーク装置の電池状態の通知、及び「緊急事態」の通知を含むその他の新しい特徴を収容するための本発明の他の実施例におけるIEEE802.15.4のフレームフォーマットに対する第2の可能な変更を示している。
【0136】
図20のフレームコントロールフィールド500’のフォーマットは、主には、アクノリッジメントポリシー用の単一のビット505が、異なるアクノリッジメントタイプを定義するための2つのビットによって置換され、且つ、電池状態(即ち、残っている電荷又は電圧レベル)及び「緊急事態」の通知が、追加のビット(図には、「拡張ビット」0〜3という名称が付与されている)を必要とする新しいサブシールド511及び512によって表されているという点において、図18のフレームコントロールフィールド500と異なっている。図示のように、2つのビットが、それぞれ、「緊急事態」及び「電池レベル」のそれぞれに対して割り当てられており、これにより、それぞれについて最大で4つのレベルを定義可能である。これらの新しいサブフィールドの意味及び使用法は、本発明の範囲外であるが、ここでは、これらを本発明のビーコンモード/非ビーコンモードの切替えとの関連において使用することにより、BANの装置間の更に柔軟なシグナリングを提供可能であることに留意されたい。
【0137】
この場合におけるIEEE802.15.4の変更されたフレームタイプ値が図21に示されており、これを図10B及び図19と比較されたい。図19の実施例と比較した場合の相違点は、これまで予備とされていた値100及び101が、いまや、即時アクノリッジメントと遅延アクノリッジメントというアクノリッジメントの2つのタイプを表すべく使用されているという点にあり、即時アクノリッジメントとは、例えば、非常事態にある装置が、更に信頼性の高い通信のために、受信したデータのそれぞれの個別のフレームをアクノリッジするべく使用するものである。即時アクノリッジメントは、本出願人による同時係属中の出願の主題である。
【0138】
本発明の新しい機能を既に提案されたフレーム構造に含めるための更なる技法として、MACコマンドフレームのコマンドフレーム識別子(図11A及び図11Bを再度参照されたい)を使用可能である。図22は、MACコマンドフレーム44’に必要な変更を示しており、可能な値の表に、新しいコマンドタイプである「非常事態通知」及び「ハンドオーバー」が追加されており、これらは、これまで使用されていない0x0aと0x0bという値を有する。これらの新しいコマンドタイプの規定に加えて、コマンドフレーム識別子に後続するペイロードを使用し、コマンドの情報(コンテキスト)を付与する。図22に示されているMACコマンドフレーム44’の場合のペイロードの一例は、受信装置がハンドオーバーする一つ又は複数のコーディネータの最も適切な候補のIDであろう。「非常事態通知」コマンドタイプの場合の代替ペイロードは、非常事態の状態の持続時間などの関連する時間値(単位:ms)又は(既知のタイミング基準時点又はエポックからの)非常事態の状態が有効である時点までの時間(単位:ms)となろう。
【0139】
要すれば、本発明の実施例は、以下の特徴を提供可能である。
【0140】
・ネットワークのシステム内における排他的なTDMAに基づいたネットワークへの非常事態にある装置のハンドオーバーの概念。ハンドオーバーは、患者の身体に装着されたセンサ装置のグループのうちの一つの装置が非常事態に移行した際にトリガされる。一人の患者に装着されたMBANセンサのグループ全体がネットワーク間でハンドオーバーされる。
【0141】
・患者に装着されたセンサのグループの全体が非常事態を離脱した場合にハンドオーバーがトリガされる戻りのハンドオーバーメカニズム。
【0142】
・非常事態にある患者がコーディネータから離れるように移動し、センサがコーディネータからのアクセス半径を超えて移動した場合には、QoS及び無線リンクの品質が低下し得る。このような場合には、コーディネータがセンサの場所を認知し、且つ、場所に基づいたハンドオーバーがトリガされる。ハンドオーバーの判定を実行するべく、場所に加えて、一つの任意選択肢として、QoS、SIR、又は無線リンクの品質を考慮することも可能である。
【0143】
・IEEE802.15.6のための非常事態フレームを含む新しいコントロールフレーム構造。
【0144】
この結果、以下の利点を実現可能である。
【0145】
・本発明の実施例は、医療無線BANのデュアルモードのビーコン型及び非ビーコン型のチャネルアクセス動作を可能にし、この医療無線BANは、個々のチャネルアクセスモードの欠点(例えば、高チャネルアクセスレイテンシ及び高電力消費)の影響を受けることなしに、BAN装置が両方のモードタイプの利益(例えば、保証されたスループット及び低電力消費)を享受することを可能にする。
【0146】
・前述のデュアルモード動作は、特に医学的な非常事態の状況において、医療無線BANの通信の信頼性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明の実施例は、MBANを使用して非常事態の管理を円滑に実行する際に極めて重要な役割を果たすことができる。以下のシナリオに留意されたい。
【0148】
(i)心臓に問題を有する世界中の数億人の患者を、彼らの身体上においてMBANを形成する無線センサを利用することにより、病院において、又は自宅において、監視可能である。MBANは、このような患者に更なる移動性を提供可能である。但し、心機能の異常や心臓発作などの更に深刻なケースなどの状況にある患者のグループの場合には、信頼性の高い通信チャネルを確保して非常事態又はアラーム信号を見逃さないことを保証することが極めて重要である。本発明は、「非常事態アクノリッジメント」を送信することにより、関与しているすべてのエンティティに非常事態について認知させるための信頼性の高い非常事態トリガメカニズムを提供する。
【0149】
(ii)世界中で数億人の人々が糖尿病を患っている。最近、グルコースの測定のための埋植可能な又は非侵襲的な方法が検討されている。MBANを使用し、24時間にわたって患者のグルコースレベル情報を監視可能である。患者のグルコースレベルがチャートを逸脱し、且つ、患者のための非常ジオロケーション及びその他の必要な緊急的な医学的手順が必要とされる状況が存在する。
【0150】
(iii)MBANを使用することにより、データの消失によって生命が脅かされる可能性がある集中治療の状態にある患者を監視しつつ、検知データを収集可能である。
【0151】
(iv)医療システムにおける非常事態への応答の人件費及び効率が改善される。
【0152】
(v)医療MBANシステムにおける非常事態の認知度が改善される。
【0153】
(vi)非常事態応答プロセスを自動化することにより、人件費が低減される。
【0154】
(vii)主には、低データレートのアプリケーションが想定されているが、MBANは、個々のパケットの消失が致命的であると共に品質に影響を及ぼすストリーミングビデオ/オーディオデータの転送に適用することも可能であろう。非常事態の状況においては、誤ったデータは、疾病の診断に悪影響を付与するおそれがある。
【0155】
(viii)医療診断の場合には、MMR又はX線画像は、医師が患者を適切に診断するべく、非常に明瞭であることを要する。したがって、この場合にも、信頼性の高いデータ転送が不可欠である。
【0156】
要すれば、本発明は、非ビーコンモード通信のための第1コーディネータ(10NB)及びビーコンモード通信のための第2コーディネータ(10B)によってサービスされる無線センサネットワークシステム内においてネットワーク装置(11E、13)の通信を実行する技術を提供可能であり、ネットワーク装置は、監視される少なくとも一つのエンティティと関連付けられており、且つ、この方法は、まず、すべてのネットワーク装置(11E、13)を第1コーディネータ(10NB)によってサービスされる第1ネットワークに配置するステップと、関連するネットワーク装置(11E)のセンサによってそのエンティティ又はそれぞれのエンティティの一つ又は複数のパラメータを監視するステップと、センサデータを第1ネットワーク内のネットワーク装置から第1コーディネータ(10NB)に送信するステップと、監視対象のパラメータを使用することにより、上記のエンティティに関連する非常事態の状態の開始又は終了を検出するステップと、上記のエンティティに関連する非常事態の状態の開始の検出に応答して、関連するネットワーク装置(11E)を第2ネットワークにハンドオーバーさせるステップと、センサデータを第2ネットワーク内のネットワーク装置から第2コーディネータ(10B)に送信するステップと、上記のエンティティに関連する非常事態の状態の終了の検出に応答して、関連するネットワーク装置を第1ネットワークにハンドオーバーさせるステップと、を含む。
【0157】
本発明は、新しいネットワーク装置(センサ)、コーディネータ、又はこれらのためのハードウェアモジュールの形態をとることが可能であり、且つ、ネットワーク装置及び/又はそれぞれのコーディネータのプロセッサによって実行されるソフトウェアを置換又は変更することにより、実装可能である。
【0158】
したがって、本発明の実施例は、ハードウェアにおいて、或いは、一つ又は複数のプロセッサ上において稼働するソフトウェアとして、或いは、これらの組合せとして、実装可能である。又、本発明は、本明細書に記述されている技術のいずれかの一部又はすべてを実行する一つ又は複数の装置又は機器プログラム(例えば、コンピュータプログラム及びコンピュータプログラムプロダクト)として実施可能である。このような本発明を実施するプログラムは、コンピュータ可読媒体上に保存可能であり、或いは、例えば、一つ又は複数の信号の形態を有することも可能であろう。このような信号は、インターネットウェブサイトからダウンロード可能なデータ信号であってよく、或いは、搬送波信号上において、又は任意のその他の形態において、提供することも可能である。
【0159】
以上の説明は、非常事態の状態の存在の有無を参照しているが、これらは、患者などの監視対象のエンティティの唯一の2つの可能な状態ではない。例えば、「異常」などの第3の状態を導入し、患者(又は、更に正確には、特定の検知された生命パラメータの値)が、まだ非常事態の状態にはないが、懸念の原因を生成していることを意味することができよう。これは、明示的に宣言することも可能であり、或いは、非常事態の状態の終了を直ちに宣言せずに、むしろ、検知された値が正常な読取値に復帰する時点まで待機することにより、黙示的に規定することも可能であろう。換言すれば、患者が非常事態の状態に戻る場合には、非ビーコンモードコーディネータへのハンドオーバーを遅延させることが好ましいであろう。
【0160】
以上の説明は、MBANなどの無線センサシステム内におけるセンサ及びコーディネータのみを参照しているが、MBANは、これらの種類以外の他の装置を包含可能である。潜在的に、投薬メカニズムなどの患者の治療に介入するなんらかの手段を、コーディネータの無線による制御下において、ネットワーク内に配置可能であろう。したがって、ビーコンモードは、センサ及びその通信の制御に限定する必要はなく、例えば、薬剤を患者に供給して非常事態の状態にある生命パラメータ(例えば、心拍数)を安定化させるための命令に使用することも可能であろう。
【0161】
又、前述のように、MBANには、コーディネータとの(必ずしも、MBAN自体を介したものではない)通信状態にあるなんらかの形態の中央制御及び監視ユニットを提供することも可能である。このような中央制御ユニットは、例えば、非常事態の状態の開始又は解消の宣言に関与可能であろう。
【0162】
上述の説明は、患者の医学的な非常事態又は非−非常事態を判定するための技法に関するものであり、その理由は、これが、本発明の重要な用途として考えられるためである。但し、これは、唯一の可能な用途ではない。センサを使用し、非医学的な状況において生体を監視可能であろう。例えば、前述のものと同一の技法を使用することにより、リスクを有する任意の人物(例えば、高齢の又は虚弱な人々や子供、危険な環境にある人々など)を観察可能であろう。この場合には、非常事態の状態は、事故などのなんらかの形態の物理的な脅威を表すことになろう。この状況においては、脈拍、温度、加速度などの生命パラメータ用のセンサが特に有用であろう。非常事態の状態においては、可能な場合には、医療シナリオと同様に、ビーコンモード通信に切り替えることが望ましいであろう。
【0163】
人間の又はその他の生体のBAN以外にも、本発明を適用するための多くの可能性が存在している。一つの可能性は、ミッションクリティカルな産業環境(例えば、発電所)における多数の潜在的なシナリオなどの産業的な非常事態を検出する能力を有するシステムである。これは、工場の環境における多数の制御点に適用可能である。例えば、本発明者らは、工場の加熱設備内の温度センサ又は食品製造ライン用の圧力閾値を想定可能である。このようなシステムにおけるビーコンモード及び非ビーコンモードコーディネータの同時使用は、医学的な非常事態の場合と同様に、これらのシステム内における非常事態にも適用可能である。したがって、請求項における「エンティティ」という用語は、生物に加えて、このような任意の産業環境をも包含するものと解釈されたい。
【0164】
以上の説明においては、一例として、IEEE802.15.4及びIEEE802.15.6を参照しているが、本発明は、IEEE802.15.6に従って動作するかどうかとは無関係に、任意のタイプのフレームに基づいた無線センサネットワーク又はMBANに対して、且つ、医療ボディエリアネットワークではない場合にも、非常事態の状況における通信の信頼性の改善に対する要件を具備するその他のタイプのBANに対して、適用可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーソナルエリアネットワークを含む無線センサネットワークに関し、更に詳しくは、但し、限定を伴うことなしに、人間又は動物の身体上に又はその周囲に配設されるか又はその内部に埋植される無線通信センサを含むボディエリアネットワークに関する。
【背景技術】
【0002】
様々なタイプの無線センサネットワークが提案されている。それらのうち、所謂ボディエリアネットワーク又はBANは、相対的に短い距離において情報を搬送するべく使用される無線パーソナルエリアネットワーク(Wireless Personal Area Network, WPA)の一例である。無線ローカルエリアネットワーク(Wireless Local Area Network, WLAN)とは異なり、WPANを介して実現される接続は、インフラストラクチャをほとんど又はまったく必要としない。この特徴により、様々な装置のために、小型で電力効率に優れた廉価なソリューションを実現可能である。特に興味深い点は、センサを使用して一人又は複数人の患者の状態を監視する医療BAN(Medical BAN, MBAN)の可能性である。検知されたデータをデータシンクに供給するべく主にセンサを利用しているBANが、無線センサネットワーク(Wireless Sensor Network, WSN)の一例である。但し、アクチュエータなどの更に能動的な装置をMBANに包含することも可能である。
【0003】
IEEE802.15.4規格は、低データレートのWPAN用の物理レイヤ(PHY)及びMAC(Medium Access Control)サブレイヤの仕様を規定している。IEEE802.15.4は、高データレートのWPAN用の規格であるIEEE802.15.3との間に、いくつかの類似点を具備する。IEEE Std 802.15.4-2006及びIEEE Std 802.15.3-2003は、本引用により、そのすべてが本明細書に包含される。
【0004】
IEEE802.15.4において想定されているタイプのWPANは、産業用の監視などのアプリケーションには好適であるが、MBANに必要とされる種類のデータ信頼性を提供しない。医療アプリケーションには、信頼性及びプロセスの自動化を向上させると共にヒューマンエラーを低減しつつ、人間の労働と関連した費用を低減するという要件が存在している。センサは、必要とされるインテリジェンスを提供可能であり、且つ、医療装置内において既に広く利用されている。これには、病院での回復治療、自宅治療、集中治療ユニット、及び高度な手術手技が含まれる。脈拍や体温などのための外部センサ、体液との接触状態となるセンサ、(切れ込みを通じて)カテーテル内において使用されるセンサ、外部アプリケーション用のセンサ、無線センサを有する使い捨て型のスキンパッチ、及び埋植可能なセンサを含む医療用途に利用される多くの異なるタイプのセンサが存在している。
【0005】
病院又は病室内のそれぞれの患者周辺の一つ又は複数のセンサのWPANは、患者の移動性、監視の柔軟性、現在監視されていない治療エリアへの監視の拡大、臨床過誤の低減、及び監視費用の全体的な低減を含む多数の臨床的な利益を提供可能であろう。身体着用型のセンサは、一人の患者の身体上において様々なセンサタイプを包含可能である。これらは、患者の身体に迅速に着脱される能力を必要としている。
【0006】
このようなセンサは、個別には、最低で患者当たりに1〜2kbpsのビットレートを具備可能であり、且つ、集合的には、10kbpsのビットレートを必要としよう。レンジは、わずかに数メートルで十分であろう。但し、医療WSNアプリケーションは、臨床環境においては、ミッションクリティカルなアプリケーションである。限られたデータ消失及び限られたレイテンシのための安定した無線リンク、患者及びセンサ密度のための能力、他の無線との共存、数日にもわたる連続動作のための電池寿命、及び身体着用型装置のための小さなフォームファクタは、医療WSN又はMBAN用の要件の例である。これらの要件は、前方誤り訂正(Forward Error Correction, FEC)及び適応再送要求(Adaptive Repeat reQuest, ARQ)、センサ情報レートのための低デューティサイクルのTDMA、及び相対的に効率的な小さなアンテナを含む時間及び周波数ドメインにおけるダイバーシティ及び誤り制御法などの技法を利用して満足させることができる。
【0007】
したがって、ボディエリアネットワーク、特に医療アプリケーション用のものの特性を規定することを目的とした更なるIEEE802.15.6規格を規定するための作業が進行中である。IEEE802.15.6の主要な要件の一つが、低電池消費量における医療アプリケーションの高信頼性である。これは、患者の生命が医療WSNアプリケーションの無線リンクの信頼性によって左右される非常事態の状況においては、特に重要である。IEEE802.15.4などの既存の規格は、商用アプリケーションのために設計されており、このような非常事態の救命シナリオを考慮してはいない。
【0008】
具体的には、ネットワーク装置によって消費される電力を増大させることなしに、このような非常事態の状況に関与するセンサなどのネットワーク装置との通信の信頼性を保証するというニーズが存在している。
【発明の概要】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、複数のネットワーク装置と、ネットワーク装置の第1のサブセットとの間において非ビーコンモード通信を実行するべく構成された第1コーディネータと、ネットワーク装置の第2のサブセットとの間においてビーコンモード通信を実行するべく構成された第2コーディネータと、を有する無線センサシステムが提供され、このシステムは、非常事態の状態がネットワーク装置との関係において存在するかどうかに応じて、ネットワーク装置のうちのいずれを第1又は第2サブセットに含めるかを判定する手段を具備する。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、複数のネットワーク装置と、ネットワーク装置の第1のサブセットとの間において非ビーコンモード通信を実行するべく構成された第1コーディネータと、ネットワーク装置の第2のサブセットとの間においてビーコンモード通信を実行するべく構成された第2コーディネータと、を有する無線センサシステムが提供され、このシステムは、非常事態の状態がネットワーク装置との関係において存在するかどうかに応じて、一つ又は複数のネットワーク装置を第1サブセットと第2サブセットの間においてハンドオーバーさせる手段を具備する。
【0011】
したがって、本発明のこれらの態様は、非ビーコンモードコーディネータとビーコンモードコーディネータの二重使用と、ビーコンモードコーディネータと非ビーコンモードコーディネータの間におけるハンドオーバーの能力を有するネットワーク装置と、を伴っており、これにより、相対的に高い信頼性のためのビーコン対応型のモードにより、センサデータなどの「非常事態」通信を可能にする。これらのコーディネータは、物理的に別個である必要はなく、共通ユニット内に設けることも可能であることに留意されたい。
【0012】
当業者には明らかなように、2つのコーディネータの使用は、少なくとも2つのネットワークの存在を意味しているが、請求項において、「システム」という用語は、任意の数のこの種のネットワークを包含するものと解釈されたい。「ネットワーク」という用語は、個別のコーディネータによって提供されるビーコンモードネットワーク及び非ビーコンモードネットワークのそれぞれのものを意味するべく使用されている。
【0013】
ここで、好ましくは、エンティティに関連する非常事態の状態は、システム内のセンサによって検知されるエンティティのパラメータの臨界レベルに関係している。
【0014】
以上の態様のいずれにおいても、好ましくは、ネットワーク装置に関連する非常事態の状態の存在の有無は、危険な状態にあるなんらかの種類のエンティティ(生体など)の監視にそのネットワーク装置が関与しているかどうかによって左右されることになる。
【0015】
システムが複数のエンティティ(病室内の複数の患者など)を監視するべく使用される際には、ネットワーク装置の個別のサブセットが、それぞれのエンティティを監視するべく割り当てられ、ネットワーク装置のそれぞれのサブセットは、一単位として、第1又は第2ネットワーク内に含まれるか、又は第1ネットワークと第2ネットワークの間においてハンドオーバーされる。したがって、非常事態の状態が、特定のエンティティを監視しているネットワーク装置のうちのわずかに一つと関連して存在するやいなや、そのエンティティを監視しているネットワーク装置のすべてが、好ましくは、一緒にハンドオーバーされる。
【0016】
前述のように、非常事態の状態の存在の有無は、好ましくは、個別のサブセット内のネットワーク装置のセンサによって検知される一つ又は複数のパラメータの臨界レベルに基づいて判定される。即ち、例えば、パラメータの検知された値が臨界レベルを超過しているかどうかが検出される。
【0017】
前述のシステムにおいて、好ましくは、第1及び第2コーディネータは、すべてのネットワーク装置が第1ネットワークに含まれている初期状態から開始し、非常事態の状態の開始(発生)に応答して、一つ又は複数のネットワーク装置を第1ネットワークから第2ネットワークにハンドオーバーし、且つ、非常事態の状態の終了(消滅)に応答して、一つ又は複数のネットワーク装置を第2ネットワークから第1ネットワークにハンドオーバーさせるべく構成されている。
【0018】
無線センサシステムは、通常、情報が、システム内において、それぞれがフレームコントロールフィールドを具備するフレーム内において無線送信され、フレームコントロールフィールド内の値を予め定義された値に設定することによって非常事態の状態の宣言が実行される。
【0019】
好ましくは、フレームは、異なるフレームタイプのフレームを含み、且つ、予め定義された値は、非常事態フレームタイプを表す。フレームコントロールフィールドは、非常事態の状態の存在の有無を通知する少なくとも一つのビットを含んでもよい。
【0020】
このようなフレームに基づいたシステムは、IEEE802.15.6に基づいたMBANを包含可能である。好適なアプリケーションにおいては、前述のエンティティは、生体であり、それぞれのセンサは、患者の生体の生命パラメータを検知するためのものであり、且つ、非常事態の状態は、医学的な非常事態である。
【0021】
ネットワーク装置は、同一のエンティティを監視するべく割り当てられた複数のネットワーク装置のうちの一つであってよく、この場合に、非常事態の状態は、そのネットワーク装置によって、又は同一のエンティティに割り当てられたネットワーク装置のうちの何れかによって、検知されたパラメータのレベルに従って判定可能である。
【0022】
通常は、ビーコンモード通信が、非常事態にあるネットワーク装置の相対的に重要な通信のために選択されることになり、且つ、非ビーコンモードは、非常事態にない他のネットワーク装置によって使用される。
【0023】
非常事態の状態の存在の有無の判定は、ネットワーク装置自体の内部において実行可能である。或いは、非常事態の状態の存在の有無の判定は、ネットワーク装置の外部において、例えば、第1及び第2コーディネータのいずれかによって実行することも可能であり、この場合には、ネットワーク装置は、このような判定の通知を受信するべく構成される。
【0024】
本発明の第3の態様によれば、少なくとも一つのエンティティを監視するセンサを含む複数のネットワーク装置を具備した無線センサシステム内におけるコーディネータが提供され、この無線センサシステムは、ネットワーク装置の同時ビーコンモード及び非ビーコンモード通信のために構成されており、コーディネータは、少なくとも一つのネットワーク装置のサブセットとの間の非ビーコンモード通信のために構成されており、且つ、エンティティの非常事態の状態が存在するという判定に応答して、サブセットの一つ又は複数のネットワーク装置をビーコンモード通信のための他のコーディネータにハンドオーバーさせる。
【0025】
したがって、非常事態の状態がエンティティに関連して存在する(即ち、始まった)という判定は、(その判定が、コーディネータ自体によって実行されたのか、或いは、コーディネータがサービスしているネットワーク装置のうちの一つといった他の場所からコーディネータに通知されたのかとは無関係に)、コーディネータが、非常事態に関連している一つ又は複数のネットワーク装置の責任をもう一つのコーディネータに移転することに結び付く。この結果、それらのネットワーク装置は、センサデータなどの相対的に信頼性の高い転送のためのもう一つのコーディネータとの間においてビーコンモード通信を実施可能である。
【0026】
この態様の変形によれば、少なくとも一つのエンティティを監視するセンサを含む複数のネットワーク装置を具備した無線センサシステム内におけるコーディネータが提供され、この無線センサシステムは、前述のネットワーク装置の同時ビーコンモード及び非ビーコンモード通信のための個別のネットワークを有するように構成されており、コーディネータは、前述のネットワーク装置のいくつかとの間の非ビーコンモード通信のために構成されており、且つ、それらのネットワーク装置の少なくとも一つの非常事態の状態の判定に応答して、少なくとも一つのネットワーク装置との間をビーコンモード通信に切り替えつつ、他のすべての装置を非ビーコンモード通信のための他のコーディネータにハンドオーバーさせる。したがって、この変形においては、オリジナルのコーディネータは、非常事態にある一つ又は複数のネットワーク装置の責任を保持し、非常事態にある一つ又は複数のネットワーク装置との間の相対的に信頼性の高い通信(例えば、保証タイムスロットを使用したもの)を可能にするビーコンモードに切り替える。
【0027】
本発明の第4の態様によれば、少なくとも一つのエンティティを監視するセンサを含む複数のネットワーク装置を具備した無線センサシステム内におけるコーディネータが提供され、この無線センサシステムは、ネットワーク装置の同時ビーコンモード及び非ビーコンモード通信のために構成されており、コーディネータは、少なくともネットワーク装置のサブセットとの間のビーコンモード通信のために構成されており、且つ、エンティティの非常事態の状態が存在していないという判定に応答して、ネットワーク装置の一つ又は複数を非ビーコンモード通信のための他のコーディネータにハンドオーバーさせる。
【0028】
したがって、エンティティに関連する非常事態の状態が終了したという判定は、(その判定が、コーディネータ自体によって実行されたのか、或いは、コーディネータがサービスしているネットワーク装置のうちの一つによるなどの他の場所からコーディネータに通知されたのかとは無関係に)、コーディネータが、もはや非常事態にはない一つ又は複数のネットワーク装置の責任をもう一つのコーディネータに移転することに結び付く。この結果、それらのネットワーク装置は、緊急ではないセンサデータなどの日常的な転送のためのもう一つのコーディネータとの間において非ビーコンモード通信を実施可能である。
【0029】
或いは、非常事態にある装置のグループのハンドオーバーは、例えば、患者の移動の結果として、それらの装置が既存のビーコンに基づいたコーディネータのレンジから離脱した場合に、実行することも可能である。これらのネットワーク装置は、一緒にレンジ内の他のコーディネータにハンドオーバーされ、このコーディネータは、好ましくは、ビーコンモードコーディネータである。
【0030】
コーディネータ間におけるハンドオーバーを実行する前に、特に、ビーコンモードコーディネータから非ビーコンモードコーディネータ又は他のビーコンモードコーディネータへのハンドオーバーの場合には、非常事態の状態の存在以外のその他の要因を考慮することも可能である。例えば、それぞれのコーディネータは、自身がサービスしているネットワーク装置のそれぞれの場所を認知可能であり、且つ、自身からの又はシステム内の他のコーディネータからのネットワーク装置の距離に基づいて、ハンドオーバーが適切であるかどうかを判定可能である。即ち、移動しているネットワーク装置が、サービスしているコーディネータのレンジ内に留まっている限り、ハンドオーバーを抑制可能である。更には、信号強度(例えば、SIRによって示されるもの)を考慮対象の更なる要因とし、これにより、SIRが所与の閾値を上回っている際には、ハンドオーバーが実行されないようにすることも可能である。
【0031】
本発明を実施することにより、グループ内の、且つ、非常事態の状態にある、すべてのネットワーク装置(例えば、同一の患者に装着されたすべてのセンサのグループ)を一緒にハンドオーバー可能である。この結果、高度な安定性を有する送信リンクによって患者を監視しつつ、病院内における患者の移動に追随可能である。
【0032】
本発明の更なる態様によれば、非ビーコンモード通信のための第1コーディネータと、ビーコンモード通信のための第2コーディネータと、によってサービスされる無線センサシステム内においてネットワーク装置の通信を実行する方法が提供され、ネットワーク装置は、監視対象の少なくとも一つのエンティティと関連付けられており、且つ、この方法は、まず、すべてのネットワーク装置を第1コーディネータによってサービスされている第1ネットワーク内に配置するステップと、関連するネットワーク装置のセンサによってそのエンティティ又はそれぞれのエンティティの一つ又は複数のパラメータを監視するステップと、センサデータを第1ネットワーク内のネットワーク装置から第1コーディネータに送信するステップと、監視対象のパラメータを使用することにより、エンティティに関連する非常事態の状態の開始又は終了を検出するステップと、そのエンティティに関連する非常事態の状態の開始の検出に応答して、関連するネットワーク装置を第2ネットワークにハンドオーバーさせるステップと、センサデータを第2ネットワーク内のネットワーク装置から第2コーディネータに送信するステップと、上記のエンティティに関連する非常事態の状態の終了の検出に応答して、関連するネットワーク装置を第1ネットワークにハンドオーバーさせるステップと、を有する。
【0033】
本発明の更なる態様は、無線センサシステムのネットワーク装置又はコーディネータのプロセッサによって実行された際に、それぞれ、上記のネットワーク装置又は上記のコーディネータのうちの一つを提供するソフトウェアを提供する。このようなソフトウェアは、コンピュータ可読媒体上に保存可能である。
【0034】
本発明を更に十分に理解するべく、且つ、本発明を実施可能な方法を更に明瞭に示すべく、以下、添付図面を参照するが、これは、例示を目的としたものに過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】IEEE802.15.4のWPANにおけるプロトコルレイヤを示す。
【図2】IEEE802.15.4のWPANの可能なPHY帯域を示す。
【図3】WPANのスター及びピアツーピアトポロジーを示す。
【図4】ビーコン対応型のIEEE802.15.4のWPANにおけるスーパーフレームの構造を示す。
【図5】IEEE802.15.4のWPANにおけるネットワーク装置とコーディネータの間におけるデータ転送の可能なモードを示す。
【図6】IEEE802.15.4のWPANにおけるネットワーク装置とコーディネータの間におけるデータ転送の可能なモードを示す。
【図7】IEEE802.15.4のWPANにおけるネットワーク装置とコーディネータの間におけるデータ転送の可能なモードを示す。
【図8】IEEE802.15.4のWPANにおけるネットワーク装置とコーディネータの間におけるデータ転送の可能なモードを示す。
【図9】IEEE802.15.4のWPANにおけるデータフレームに使用されるフレームフォーマットを示す。
【図10A】図9のフレームフォーマットにおけるフレームコントロールフィールドの構造を示す。
【図10B】図10Aのフレームコントロールフィールドにおけるフレームタイプビットの従来の規定値の表である。
【図11A】IEEE802.15.4においてMACコマンドフレームに使用されているフレームフォーマットの一部を示す。
【図11B】図11Aのフレームフォーマットにおけるコマンドフレーム識別子の従来の規定値の表である。
【図12】ビーコンコーディネータと非ビーコンコーディネータの両方を有する本発明を実施したWPANを示しており、ハンドオーバーの前の状態である。
【図13】ビーコンコーディネータと非ビーコンコーディネータの両方を有する本発明を実施したWPANを示しており、ハンドオーバーの後の状態である。
【図14】本発明の一実施例におけるセットアップ構成及びハンドオーバーのプロセスフローを示す。
【図15】本発明の一実施例におけるオリジナルのコーディネータに戻るためのハンドオーバーのプロセスフローを示す。
【図16】本発明の一実施例における場所に基づいたハンドオーバーのプロセスフローを示す。
【図17】本発明の一実施例における場所と信号/接続品質に基づいたハンドオーバーのプロセスフローを示す。
【図18】本発明の一実施例において提案されたフレームコントロールフィールドの新しい構造を示す。
【図19】図18のフレームコントロールフィールドにおけるフレームタイプビットの可能な値の表である。
【図20】本発明の他の実施例に従って変更されたフレームフォーマットのフレームコントロールフィールドの構造を示す。
【図21】図20のフレームコントロールフィールドのフレームタイプ値の表である。
【図22】本発明の他の実施例における図11A及び図11Bのコマンドフレーム識別子の変形を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の実施例について説明する前に、まず、無線ネットワークにおいて使用されるマルチアクセスプロトコルについて多少背景を説明した後に、現在開発中のIEEE802.15.6規格及び/又はMBANを含むボディエリアネットワークに関連すると思われるIEEE802.15.4の各部分について概説することとする。
【0037】
マルチアクセスとは、無線ネットワーク内の複数のネットワーク装置が同一の無線チャネルを共有する可能性を意味している。マルチアクセスを可能にするべく、無線ネットワークは、一般に、周波数分割(異なる周波数を使用することによって個別のネットワーク装置からの送信を別個に維持する方式)又は時分割(異なる時間において実行することによって送信を分離する方式)に基づいて編成される。周波数分割及び時分割の両方を同時に利用可能である。尚、この説明の残りの部分においては、時分割方式を参照しているが、当業者であれば、説明対象の技法に類似した技法は、周波数分割の場合にも適用可能であることを理解するであろう。
【0038】
時分割に基づいたネットワークは、通常、時間を「フレーム」と呼ばれる等しい時間間隔に分割する。ネットワーク装置に提供される情報の量に従ってそれなりの通信の信頼性(これは、所与の送信が正常に受信される確率を意味する)を提供する様々なプロトコルが考案されている。このようなプロトコルの一つが、ALOHAと呼ばれており、或いは、「ピュアALOHA」とも呼ばれるが、これは、ネットワーク装置が、互いに関する又は既定の時間基準に関する知識を具備していない無線ネットワークに適している。
【0039】
ピュアALOHAプロトコルを使用するネットワークにおいては、任意のネットワーク装置が、時間フレーム内の任意のランダムな時点においてデータ送信を開始可能である。ネットワーク装置がランダムな時点においてデータ送信を開始可能であることに起因し、複数のネットワーク装置が、オーバーラップした時点においてデータ送信を開始可能であり、この結果、「衝突」が発生する。このような衝突に関与した送信は、誤りを伴って受信器に到来する。正常な受信を確認するアクノリッジメントを受信することなしに所定の時間が経過した後に、送信器は、送信を再試行する。これらの送信も、衝突に遭遇する可能性があり、且つ、したがって、こちらも不成功に終わる可能性がある。これらの端末は、誤りを伴うことなしに送信が受信され、且つ、アクノリッジされる時点まで、送信間の所定の時間間隔を伴って送信を継続する。衝突は、ネットワークのスループット効率を低減する。
【0040】
ALOHAプロトコルの一つの重要な変形は、「スロット型ALOHA(slotted ALOHA)」と呼ばれている。スロット型ALOHAを使用する通信ネットワークは、それぞれのフレームを一連のタイムスロットに分割する。このような通信ネットワークによれば、(一般的に)、それぞれのネットワーク装置は、スロットの何れかを使用することにより、自由に送信可能である。任意のネットワーク装置からのデータ送信は、いずれも、タイムスロット内において開始及び終了しなければならない。ネットワーク装置は、タイムスロットの期間よりも長いデータ送信をする場合には、そのデータ送信を、それぞれがタイムスロットの期間内にフィットする複数の更に短いデータ送信に分割しなければならない。固定されたスロット内に送信を閉じ込めることにより、衝突の確率が低減され、この結果、ネットワーク装置間の通信の信頼性が向上するが、衝突は、完全には回避されない。スロット型ALOHAの欠点は、スロットタイミングを知るために、すべてのネットワーク装置をそれぞれのフレームの開始時点に同期させることを要するという点にある。実際には、これは、ネットワーク装置が、それぞれのフレームの開始時点において、ブロードキャストされたタイミング基準信号又は「ビーコン」を聴取することにより、実現される。
【0041】
タイミング基準に対する要求を回避する代替プロトコルは、CSMA-CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)と呼ばれている。CSMA-CAにおいて、装置は、CAP内において送信を所望する場合には、常に、ランダムな期間にわたって待機する。ランダムなバックオフに続いて、チャネルがアイドル状態にあると判明した場合に、装置は、そのデータを送信する。ランダムなバックオフに続いて、チャネルがビジー状態にあると判明した場合には、装置は、チャネルに再度アクセスするべく試行する前に、別のランダムな期間にわたって待機する。
【0042】
TDMA(Time Division Multiple Access)と呼ばれる更なるプロトコルは、ネットワーク装置の排他的な使用のためのタイムスロットを割り当てて衝突の可能性を回避するべく、ネットワークコントローラ又はコーディネータを必要としている。但し、この方式は、中央コーディネータの設置を要するのみならず、すべてのネットワーク装置が、送信を開始する前に、ビーコンと、自身に割り当てられた一つ又は複数のスロットの通知と、を聴取(listen)することを必要としている。
【0043】
同一のネットワーク内において、例えば、それぞれ、アップリンク(即ち、コーディネータ又は基地局などの中央地点へのデータ送信)及びダウンリンク(センサなどのネットワーク装置へのデータ送信)において、異なるプロトコルを使用可能である。
【0044】
この観点において、WSNのダウンリンク用に提案された一つのプロトコルは、WiseMAC(Wireless sensor MAC)と呼ばれている。これは、ビーコンなし方式であり、それぞれのネットワーク装置は、同一の一定の期間を有する短い時間にわたって無線チャネルを聴取する。ネットワーク装置が活動を検出した場合には、ネットワーク装置は、データフレームが受信される時点まで、又はチャネルが再度アイドル状態になる時点まで、聴取を継続する。その一方で、コーディネータは、フレームのデータ部分が到達した際に受信器がウェークアップ状態になることを保証するべく、すべてのデータフレームの前にウェークアッププリアンブルを付加する。この結果、ネットワーク装置の電力消費量は、チャネルがアイドル状態にある際には、非常に低く維持される。
【0045】
IEEE802.15.4においては、後述するように、ビーコン対応型のトポロジーとビーコンなしトポロジーの両方が提供されている。ビーコン対応型トポロジーは、CSMA-CAを介したコンテンションに基づいたアクセス用のスロットと、ネットワーク装置の排他的な使用のためのTDMAに基づいて割り当てられた保証タイムスロット(GTS)の両方を含む「スーパーフレーム」によって置換された「フレーム」の概念を有するプロトコルの組合せを使用する。これは、GTSの割当による信頼性の高いデータ送信を提供するが、タイミング及びスロット割当情報について、コーディネータを聴取するべく、ネットワーク装置がパワーアップされた状態(ウェークアップした状態)に留まらなければならないという欠点を有している。
【0046】
要すれば、タイミング基準及び(スーパー)フレーム構造を提供するビーコンに基づいた通信プロトコルは、衝突の低減と、したがって、通信の信頼性の向上と、を可能にするが、これは、ネットワーク装置の電力消費量の犠牲によるものである。一方、ビーコンなし方式によれば、電力消費量を非アクティブ期間において非常に低く維持可能ではあるが、ビーコンに基づいた方式と比べて、保証されるスループットが小さく、且つ、レイテンシ時間(チャネルアクセスを得る時点までの遅延)が大きい。
【0047】
本発明は、ネットワーク装置の高度な信頼性と低電力消費量という両方の利益を組み合わせることができるIEEE802.15.6のためのチャネルアクセス方式を提案する。この方式の動作法について説明する前に、類似の構成がIEEE802.15.6に使用されると考えられることから、以下、IEEE802.15.4ネットワークの一般的な構成についてもう少し説明しておくこととする。
【0048】
図1は、無線トランシーバ及びその低レベルコントロールを含むPHYレイヤを介して物理媒体にアクセスする層状のOSIモデルの観点におけるIEEE802.15.4のWPANの概略的なアーキテクチャを示しており、これには、参照符号100が付与されている。図示のように、PHY用の2つの代替周波数帯域101、102が存在しており、これらが図2に示されている。低周波数帯域101は、868.3MHzを中心とする単一の20kb/sのチャネル及び/又は915MHzを中心とするそれぞれが40kb/sの10個のチャネルを提供する。高い周波数帯域102は、それぞれが250kb/sであり、且つ、2.44GHzの周波数を中心とする16個のチャネルを提供する。これらの帯域のうちのいずれが使用されるかは、当該地域の規制要件によって左右されることになる。
【0049】
このPHYに対するアクセスは、図1に参照符号105によって示されているMAC(Medium Access Control)サブレイヤによって提供される。したがって、この上位には、且つ、WPAN100の外部には、他のネットワークからのWPANに対するアクセスを許容するLLC(Link Layer Control)が提供されており、これは、IEEE802.2規格によるものであってもよく、或いは、他のタイプのものであってもよい。最後に、LLCより上方の上位レイヤ109は、ネットワークの構成、操作、及びメッセージのルーティングを提供するためのネットワークレイヤと、意図されている全体的な機能を提供するアプリケーションレイヤと、を含む。
【0050】
MACサブレイヤの一つのタスクは、ネットワークトポロジーを制御することにある。スター及びピアツーピアが、通信ネットワーク内における2つの既知のトポロジーであり、且つ、いずれも、IEEE802.15.4において提供されている。いずれの場合にも、トポロジーは、装置とコーディネータという2つの基本的な種類のネットワークノードを区別している。図3に示されているように、スタートポロジーにおいては、いくつかの装置11が、中央コーディネータ10と直接通信しており、ピアツーピア構成においては、装置11Aによるコミュニケータとの通信は、中継装置として機能する中間の装置11B及び11Cにより、一つ又は複数のホップに沿って実行される。コーディネータは、上位レイヤへのアクセスポイントとして機能しており、WSNの場合には、コーディネータは、センサによって収集されたデータ用のシンクとして機能する。それぞれの装置の通信レンジを相当に限定することができる場合には(数メートル)、ピアツーピアトポロジーによれば、相対的に大きなエリアをカバー可能である。トポロジーは、動的であってよく、装置のネットワークへの追加又は除去に伴って変化する。
【0051】
MBANの場合には、例えば、コーディネータがそれぞれの患者サイト(病院のベッドなど)に提供され、これにより、一人の患者上の装置と信号を交換する場合には、スターネットワークが適当であろう。ピアツーピアは、複数の患者に対してサービスするべく一つのコーディネータが提供される場合に、より適切なトポロジーであろう(コーディネータは、病室内の固定された地点に配置可能であろう)。したがって、装置11は、一般に、移動型となり、コーディネータは、移動型又は固定型であってよい。又、ピアツーピアネットワークは、ネットワークを迅速にセットアップ又は変更したり、或いは、ネットワークの自己組織化及び自己回復の実現が必要とされる高速で変化する環境に好適であろう。自己回復は、例えば、既存のコーディネータに障害が発生するか又は既存のコーディネータがネットワークを離脱した場合に、新しいコーディネータを確立するステップを包含可能である。
【0052】
病院などの同一の場所に、多数のスター及び/又はピアツーピアネットワークをセットアップ可能であり、そのそれぞれが、独自のコーディネータを有する。この場合には、相互干渉を回避すると共にデータの共有又は照合を許容するべく、個々のコーディネータが協働する必要がある。IEEE802.15.4においては、このようなネットワークをクラスタと呼んでおり、且つ、クラスタ用の全体的なコーディネータを確立するステップと、クラスタを分割及びマージするステップと、が提供されている。
【0053】
WPAN内のノードは、様々な能力のユニットによって構成可能である。一般に、コーディネータの役割は、なんらかの処理パワーを有する相対的に高機能な装置と、複数の供給源からの送信を同時に処理する能力を有するトランシーバと、を必要とすることになる。そして、この結果、電力の十分な供給を必要とすることになる(場合によっては、商用電源供給型であってよい)。一方、ネットワーク内の他の装置は、相対的に限られた処理能力を有し、電池電力のみへアクセス可能なものでよく、且つ、場合によっては、リレーホップとして機能することができないほどに単純なものであってもよい。非常にわずかな電力しか利用できない装置は、大部分の時間にわたってシャットダウン可能であり、且つ、例えば、センサデータを別のノードに送信する際にのみ、ときどき、「ウェークアップ」してもよい。したがって、IEEE802.15.4規格は、「フル機能」装置と「部分的機能」装置を区別している。電力の利用可能性は、センサが、身体内に埋植可能であり、且つ、したがって、大きな又は充電式の電池を具備することができないMBANの場合に、特有の課題である。
【0054】
前述のように、IEEE802.15.4は、ビーコン対応型及びビーコン非対応型のネットワークトポロジーを提供する。
【0055】
ビーコン対応型のネットワークにおいては、コーディネータが、ビーコンを定期的に送信し、且つ、装置が、そのビーコンを定期的に聴取し、ネットワークに対して同期化すると共にチャネルにアクセスする。チャネルアクセスは、図4に示されているスーパーフレーム構造による「スーパーフレーム」内において順番に送信される「フレーム」を単位としており、これは、コーディネータによって規定される。それぞれのスーパーフレーム30は、アクティブと非アクティブという2つの部分から構成されている。アクティブ部分は、コンテンションアクセス期間CAP36と、これに後続する、クオリティオブサービス要件を有するアプリケーション用の保証されたアクセスのための任意選択のコンテンションフリー期間CFP37と、に分割される。
【0056】
図4の垂直分割によって示されているように、スーパーフレームは、それぞれがコーディネータからの又は装置からのデータのフレームを搬送する能力を有する16個の等しく離隔したタイムスロットに分割される。したがって、一つのコーディネータと関連付けられた装置を考慮すれば、一つの装置のみが、スーパーフレーム内のそれぞれの連続したタイムスロットにおいて一つの時点においてコーディネータとの通信状態にあってよい。まず、コーディネータによって送信されるビーコンフレーム(以下を参照されたい)について、スロット31が到来する。この後に、いくつかのスロット32がCAP内において供給され、CSMA-CAを使用するコンテンション方式により、装置との間のデータ送信が許容される。
【0057】
次に、CFPの保証タイムスロットGTS33が後続し、ビーコンに基づいたネットワーク内における装置へのチャネルアクセスが許容され、且つ、図示されているように、これらのそれぞれは、複数の基本タイムスロットにわたって延長可能である。非アクティブ期間の満了後に、コーディネータが別のビーコンフレーム31を送信することにより、次のスーパーフレームがマーキングされる。装置は、スーパーフレームの非アクティブ期間34において、スリープ状態に移行可能である。したがって、非アクティブ期間34の長さを拡張することにより、装置の電池電力を可能な限り節約可能である。
【0058】
ビーコン非対応型のネットワークにおいては、コーディネータは、(例えば、ネットワークディスカバリのために)要求されない限り、同期化のためにビーコンを送信する必要はない。チャネルアクセスは、スーパーフレーム構造によって制限されてはおらず、且つ、装置は、非同期であって、CSMA-CAによってすべてのデータ転送が実行される。これらは、WiseMACなどのプロトコルに従って、その独自のスリープパターンを踏襲可能である。
【0059】
MBANアプリケーションの場合には、コーディネータは、監視対象の一つ又は複数の身体の外部に位置している。これは、PDA、携帯電話機、ベッドサイドのモニタステーション、或いは、場合によっては、一時的にコーディネータとして機能する十分に高機能なセンサであってよい。前述のように、ビーコン対応型ネットワーク内のコーディネータは、ネットワーク装置に対する同期化及びチャネルアクセスの提供を担当している。又、スーパーフレームの開始及び終了は、コーディネータによって規定される。コーディネータは、他のネットワークに対する潜在的な通信と、例えば、充電済みの電池の容易な交換による十分な電源に対するアクセスと、という2つの主要な機能を具備している。
【0060】
又、おそらくはいくつかのコーディネータを含むネットワークの全体的な監督のために中央治療及び監視ユニットを提供することも可能である。これは、複数の患者から非常事態データの連続した又は不定期のストリームを受信する能力を有する監視装置を具備した部屋の形態を有することができる。通常、中央ユニットには、患者のデータを継続的に観察及び監視する看護師又は医療専門家が待機することになる。彼らは、患者の状態の変化に応答して処置を講じることになる。中央治療及び監視ユニットは、一つの又はそれぞれのコーディネータに無線接続することも可能であり(この場合には、そのユニットは、MBANの一部と見なすことが可能であり)、或いは、それぞれのコーディネータに対する有線接続を具備することも可能である(したがって、この場合には、そのユニットは、MBANの外部に位置すると見なすことができる)。
【0061】
図5〜図8は、IEEE802.15.4ネットワーク内における装置とコーディネータの間のデータ転送を示している。IEEE802.15.4には、以下のような3つの基本的な転送タイプが規定されている。
(i)装置(送信器)がそのデータを送信する先である受信器としてのコーディネータに対するデータ転送―スター及びピアツーピアトポロジーの両方において使用される。
(ii)装置がデータを受信する送信器としてのコーディネータからのデータ転送―スター及びピアツーピアトポロジーの両方において使用される。
(iii)2つのピア間におけるデータ転送―ピアツーピアネットワークにおいてのみ使用される。
【0062】
図5及び図6は、それぞれ、ビーコン対応型及びビーコン非対応型の場合の両方における装置(ネットワーク装置11)とコーディネータ(コーディネータ10)からの転送を示す。相違点は、ビーコン対応型の場合には、装置1は、CFPにおいてCSMA-CAを使用して、又はCAPにおいてGTSを使用して、データ(データフレーム42)を送信する前に、コーディネータからビーコンフレーム41を受信するべく待機しなければならず、ビーコン非対応型の場合には、通常、ビーコンフレームが存在せず、且つ、装置11は、CSMA-CAを使用してデータフレーム42を自由に送信するという点にある。いずれの場合にも、コーディネータは、任意選択のアクノリッジメントフレーム又はACK43を送信することにより、データの正常な受信をアクノリッジする。これらの異なるタイプのフレームについては、更に詳細に後述する。
【0063】
受信器がなんらかの理由から受信したデータフレームを処理することができない場合には、そのメッセージはアクノリッジされない。送信器が所定の期間の後にアクノリッジメントを受信しない場合には、送信器は、その送信が不成功であったと仮定し、且つ、フレーム送信を再試行する。何回かの再試行の後に、アクノリッジメントが依然として受信されない場合には、送信器は、そのトランザクションを終了させるか又は再度試行するべく選択可能である。アクノリッジメントが不要である際には、送信器は、送信が成功したと仮定する。
【0064】
図7及び図8は、コーディネータ10から装置11へのデータ転送を示している。コーディネータがビーコン対応型WPAN(図7)においてデータを装置に転送すべく所望する際には、コーディネータは、データメッセージが保留中であるという旨をビーコンフレーム41内において通知する。装置は、定期的にビーコンフレームを聴取し、且つ、メッセージが保留中である場合には、データ要求(MAC命令)44を送信し、CSMA-CAによってデータを要求する。コーディネータ10は、アクノリッジメントフレーム43を送信することにより、データ要求の正常な受信をアクノリッジする。次いで、保留中のデータフレーム42が、スロット型のCSMA-CAを使用して、或いは、可能な場合には、アクノリッジメントの直後に、送信される。装置11は、任意選択のアクノリッジメントフレーム43を送信することにより、データの正常な受信をアクノリッジ可能である。この段階で、トランザクションが完了する。データトランザクションが正常に完了した際に、そのメッセージは、ビーコン内の保留メッセージのリストから除去される。
【0065】
ビーコン非対応型の場合には、特定の装置11用の準備が整ったデータを具備するコーディネータ10は、コンテンションに基づいて送信される関係する装置からのデータ要求44を待たなければならない。この要求を受信した際に、コーディネータは、アクノリッジメントフレーム43を送信する(これは、該当する場合には、準備されたデータが存在しないことを通知するべく使用することも可能である)。次いで、データフレーム42が送信され、これに応答し、装置11は、返信として別のアクノリッジメントフレーム43を送信可能である。
【0066】
わかりやすくするべく、以上の手順においては、装置とコーディネータの間のデータ転送のうちの前述のケース(i)及び(ii)のみが考慮されているが、ピアツーピアネットワークにおいては、前述のように、データ転送は、一般に、一つ又は複数の中間ノードを伴うメカニズム(iii)を介して実行されることになり、その結果、関係する衝突及び遅延が増大する。
【0067】
図5〜図8に示されているように、IEEE802.15.4ネットワーク内における通信には、以下のように4つの異なるタイプのフレームが関係している。
−ビーコンを送信するべくビーコンタイプのコーディネータによって使用されるビーコンフレーム41
―すべてのデータ転送用に使用されるデータフレーム42
−正常なフレームの受信を確認するべく使用されるアクノリッジメントフレーム43
−データ要求などのすべてのMACピアエンティティの制御転送を処理するべく使用されるMACコマンドフレーム44
【0068】
4つのフレームタイプのそれぞれの構造は、非常に類似しており、且つ、例として、データフレーム42が図9に示されている。この図において、2つの水平のバーは、MACサブレイヤと、PHYレイヤと、をそれぞれ表している。時間は左から右に進行し、且つ、フレームのそれぞれの連続したフィールドの時間長が、関係するフィールドの上方に示されている(単位:オクテット)。すべてのフレームは、特定順序のフィールドのシーケンスから構成されており、これらは、左から右に、PHYによって送信される順序において示されており、最も左側のビットが、時間的に最初に送信される。それぞれのフィールド内のビットには、0(最も左側であり、且つ、最下位である)からk−1(最も右側であり、且つ、最上位である)までが付番されており、この場合に、フィールドの長さは、kビットである。
【0069】
データフレーム42を介して送信されるデータは、上位レイヤに由来している。データペイロードは、MACサブレイヤに伝達され、且つ、MACサービスデータユニット(MSDU)と呼称される。MACペイロードには、先頭にMACヘッダMHRが付加され、且つ、末尾にMACフッタMFRが付加される。MHRは、フレームコントロールフィールド50(以下を参照されたい)、データシーケンスナンバ(DSN)、アドレス指定フィールド、及び任意選択の補助セキュリティヘッダを含む。MFRは、16ビットのフレームチェックシーケンスFCSから構成されている。MHR、MACペイロード、及びMFRが、一つのMACデータフレーム(即ち、MPDU)を形成する。MPDUは、PHYサービスデータユニットPSDUとしてPHYに伝達され、これが、PHYペイロードになる。PHYペイロードには、先頭に、プリアンブルシーケンス及びフレーム開始デリミタSFDを含む同期化ヘッダSHRと、オクテットを単位とするPHYペイロードの長さを含むPHYヘッダPHRと、が付加される。プリアンブルシーケンス及びデータSFDにより、受信器は、シンボル同期化を実現可能である。SHR、PHR、及びPHYペイロードが、一つのPHYパケット(PHYプロトコルデータユニットPPDU)を形成する。
【0070】
ビーコンフレーム41、アクノリッジメントフレーム43、及びMACコマンドフレーム44は、MACペイロードがそれぞれのケースにおいて異なる機能を具備し、アクノリッジメントフレームがMACペイロードを具備していないことを除いて、類似の構造を具備している。又、ビーコンフレーム41、アクノリッジメントフレーム43、及びMACコマンドフレーム44は、MACサブレイヤに由来しており、上位レイヤの関与を伴っていない。
【0071】
図10Aには、それぞれのタイプのフレーム内において使用されるフレームコントロールフィールド50が更に詳細に示されている。これは、図示のように、異なる目的のためのサブフィールドに割り当てられた16ビットから構成されている。具体的には、フィールドの最初の3ビットは、ビーコンフレーム41、データフレーム42、アクノリッジメントフレーム43、又はMACコマンドフレーム44というフレームタイプ51を表している。フレームタイプを表記する方法が図10Bに示されている。フレームタイプビット51に後続するのが、単一ビットのセキュリティ有効化サブフィールド52であり、これは、セキュリティがMACサブレイヤによって有効化されているかどうかを表している。これに後続しているのが、フレームペンディングサブフィールド53であり、これは、送信器が受信器用の更なるデータを具備しているかどうかを通知する。次が、アクノリッジメントが受信器に対して要求されているかどうかを通知するアクノリッジメント要求サブフィールド54である。この後に、更なるいくつかのサブフィールド55〜59が後続しており、これらは、アドレス指定のために使用されるか、又は現在のIEEE802.15.4の仕様においては予備とされている。
【0072】
前述のように、図10Bは、フレームタイプサブフィールド51の可能なビット値の表であり、IEEE802.15.4の仕様においては、値100〜111が使用されていないことを示している。
【0073】
MACコマンドフレーム44は、図11Aに示されているように、構造において極めて類似している。この場合には、ペイロードは、MACコマンドフレームによって表されるコマンドのタイプを識別するべく、コマンドフレーム識別子440を含む。IEEE802.15.4においては、図11Bの表に示されているように、様々なタイプのコマンドが規定されており、この図には、識別子440の可能な値が示されており、いくつかの値は、将来使用されるように予備となっている。
【0074】
本発明の背景の概説を以上において終了し、以下、本発明の基礎をなす原理について説明することとする。
【0075】
本発明は、例えば、それぞれの患者の身体上又はその周辺に配設されるか又はその内部に埋植されたセンサのMBANを介して患者が監視される状況に対処するものである。尚、以下の説明においては、「MBAN」又は「システム」という用語は、所与の場所に位置した無線装置の全体を意味するべく使用されており、この全体システム内に別個のネットワークが存在する場合も含む。
【0076】
要すれば、本発明は、ビーコン対応型通信とビーコンなし通信の両方が個別のコーディネータを介して共に実施されるシステムを提案する。これらのコーディネータは、通常は、システム内の別個のハードウェアとなるが、それぞれのハードウェア又はソフトウェアリソースの少なくとも一部分を共有するべく、一緒に配置することもできよう。以下においては、ビーコン対応型の通信を「ビーコンモード」と呼称し、且つ、ビーコンなし通信を「非ビーコンモード」と呼称する。
【0077】
センサの少なくともいくつかは、患者の生命を脅かす状況(非常事態の状態)を通知可能な心拍数などの一つ又は複数のパラメータの検知に関与しているものと仮定されている。本発明の実施例は、非常事態の状態の存在(開始)及び非常事態の状態の解消(終了)の宣言に応答して、ビーコンモード通信と非ビーコンモード通信の間を切り替える方法を提供する。
【0078】
説明対象の技法は、例えば、医療無線BANにおけるデュアルモードのビーコンに基づいた及びビーコンに基づいていないチャネルアクセス動作にフォーカスしており、ネットワーク装置(医療センサなどのBAN装置)が、個々のチャネルアクセスモードの欠点の影響を受けることなしに、両方のタイプのモードの利益を享受できるようにする。医学的な非常事態にあるネットワーク装置は、ビーコンに基づいたチャネルアクセスを利用するプライマリネットワークに転送され、非常事態にはないネットワーク装置は、非ビーコンモードのチャネルアクセスを利用するセカンダリコーディネータによって制御されるセカンダリネットワークにハンドオーバーされる。基本的に、所望の場合には、2つの直交チャネル上において動作することを提供する同一の物理的コーディネータ内において2つのモードが動作可能であり、そのため、一方のモードは他方と干渉しない。
【0079】
初期構成フェーズは、まず、その状態(非常事態又は非−非常事態)とは無関係に、すべての装置が、非ビーコンモードにおいて、一つのコーディネータの下において稼働しているという仮定に基づいている。この実施例においては、初期構成の後に、センサのグループが患者の身体に装着され、且つ、このセンサのグループのうちの一つのみが非常事態に移行した場合に、その患者と関連付けられている(例えば、同一の患者IDを具備する)センサのグループの全体が排他的なビーコンモードコーディネータにハンドオーバーされる。一人の患者に装着されたセンサのいずれもが非常事態の警戒状態を離脱した際には、すべてのセンサが、オリジナルの非ビーコンモードコーディネータに戻るようにハンドオーバーされる。従来のハンドオーバーメカニズムとは異なり、このタイプのハンドオーバーのトリガは、非常事態の状態の変化である(従来のハンドオーバーメカニズムは、通常、受信信号強度、受信信号品質、及び/又は基地局などのコーディネータタイプの装置からの距離に基づいている)。
【0080】
更には、本発明の実施例は、移動性の課題にも対処している。非常事態にあるセンサが移動性を有しており(例えば、患者が移動する)、且つ、コーディネータが、壁、天井、又は柱に固定されて相対的に静止した状態にあるシナリオを考えてみよう。このようなシナリオにおいては、ネットワーク装置は、地理的に移動するのに伴って、一つのコーディネータから他へハンドオーバーされる必要がある。後述するように、ハンドオーバーのためのトリガは、装置の場所と任意選択のアップリンク又はダウンリンクの受信信号品質の尺度の組合せに基づいている。ネットワーク装置の場所と任意選択の受信信号品質パラメータは、ビーコンモードコーディネータを必要とせずに、安定したハンドオーバーを提供する。例えば、ネットワーク計画を通じて、又は「歩行」試験が行われるネットワーク構成フェーズを通じて、最良の近隣コーディネータをそれぞれのBAN装置の場所と関連付け可能である。
【0081】
或いは、ミニマム計画法を採用することも可能であり、この場合には、隣接するコーディネータのカバレージエリアが、従来のマクロセルラー設計よりも格段に大きなオーバーラップを具備しており、且つ、隣接するコーディネータは、直交RFチャネルを利用する。格段に大きなオーバーラップしたカバレージエリアによれば、入念なネットワーク計画を必要とすることなしに、場所に基づいたハンドオフを手動又は自動で容易に構成可能である。例えば、自動的なハンドオフは、距離的に最も近いコーディネータによって実行可能である。装置の場所は、同一の患者に装着されたBAN装置のグループの平均的な場所であってよい。或いは、場所は、現在のアクティブなコーディネータから最も離れた装置の場所であってもよい。患者に装着された装置の組/グループの場合には、ハンドオーバートリガは、その装置の組/グループの全体に適用されることになろう。
【0082】
以下、本発明の実施例について、図12〜図22を参照し、説明することとする。
【0083】
まず、2つのスター又はピアツーピアネットワーク(トポロジー)が確立されており、ネットワークのうちの一つは、非常事態のためのプライマリコーディネータによって制御されており、且つ、他方のネットワークは、非−非常事態アプリケーションのためのセカンダリコーディネータを具備するものと仮定する。初期構成の後に、並行して稼働する2つのネットワークが得られるものと仮定する。プライマリコーディネータは、非常事態にあるネットワーク装置によって使用されるビーコンモードコーディネータである。セカンダリコーディネータは、任意のネットワーク装置によって使用可能であるが、プライマリコーディネータよりも信頼性が低い(保証のレベルが低いと共に/又は低速の)通信リンクを提供する非ビーコンモードコーディネータである。
【0084】
この説明においては、システム内の医療装置のみが「非常事態」となる能力を有しており、医療目的には使用されない他のネットワーク装置13が存在してもよいと仮定する。図12に示されている初期状態においては、すべてのネットワーク装置、即ち、非常事態にある装置11Eと非常事態にはない他の装置(医療又は非医療装置)13の両方が、非ビーコンモードコーディネータ10NBとの間において通信している。実線の両方向矢印は、一般に双方向である低優先順位リンク15を示しており、例えば、センサノードは、そのコーディネータから命令を受信し、且つ、自身が収集したセンサデータを送信する。別のビーコンモードコーディネータ10Bが存在しているが、これは、いずれかのネットワーク装置による通信のためには、まだ使用されていない。非常事態にある装置11Eを含むネットワーク装置が、非ビーコンモードコーディネータ10NBとの間においてピアツーピアリンクを使用していることに留意されたい。このトポロジーは、非ビーコンモードコーディネータによって割り当てられたGTSの欠如に加えて、非常事態にある任意の装置11Eとの間のデータ転送を低速化させる傾向を有することになる。したがって、ネットワーク装置の間(並びに、ネットワーク装置と非ビーコンモードコーディネータ10NBの間)のリンクは、「低優先順位」のリンク15として示されている。
【0085】
非常事態にあるネットワーク装置の通信の信頼性を増大させるべく、プライマリコーディネータを積極的に使用する。即ち、ネットワーク装置のうちの一つ又は複数が非常事態にあると認識された際に、図13に示されているように、(この例においては)スタートポロジーとTDMA-ALOHAなどのビーコンに基づいたチャネルアクセスを使用することにより、非常事態にある装置11Eとの間の通信をビーコンモードコーディネータ10Bに開始させ、これにより、非常事態通信のための新しいプライマリネットワークを形成する。このプライマリネットワークは、図の破線によって示されているように、非常事態にある装置11Eのそれぞれに対して高優先順位リンク14を提供する。尚、既に動作している非ビーコンモードコーディネータ10NBは、図に実線の矢印によって示されるように、非ビーコン型の技法を使用するセカンダリネットワークを提供し、これにより、低優先順位リンク15を提供するべく、使用される。非常事態トポロジーは、スター型又はビアツーピア型であってよいことに留意されたい。ピアツーピアトラフィックの場合には、ビーコンモードコーディネータと非常事態にある装置11Eの間のそれぞれの中間ノードも、高優先順位リンク14によってリンクされることになろう。
【0086】
尚、コーディネータ10NBは、元々、非ビーコンモードにあるものとして示されているが、セカンダリネットワークを形成する際に、このモードに切り替えることも可能であろう。その場合には、プライマリネットワークの利点は、輻輳していないチャネルと、(採用した場合に)ピアツーピアの代わりのスタートポロジーの使用となろう。
【0087】
このようなデュアルモードシステムに関係するプロトコルのいくつかについて説明する前に、後述する方式によってデュアルチャネルアクセス動作を実現するには、以下のような無線能力に関する特定の仮定及び考慮事項が存在している。
【0088】
1.すべての装置は、関係するコーディネータからビーコンを受信し、且つ、コーディネータを弁別可能であるものと仮定する。
【0089】
2.更なる仮定は、2つのコーディネータが別個のチャネルアクセスモードを提供可能であるというものであり、これは、これらのコーディネータのうちの一つが、保証スロットモード(例えば、TDMA-ALOHA)において動作可能であり、且つ、他方が、低電力の非保証モードにおいて動作することを意味する。
【0090】
3.したがって、このような動作においては、リンク(ネットワーク)の組の一つと他のものとの干渉が懸念事項ではないものと仮定する。
【0091】
4.又、関係するコーディネータの無線チャネルへのアクセス及び周波数帯域は、a.時間ドメインにおいて切り替えられるか、b.周波数ドメインにおいて切り替えらえるか、又はc.周波数ドメインと時間ドメインの両方において切り替えられるものと仮定する。
【0092】
プロトコル1:デュアルチャネルアクセスメカニズムのセットアップ構成及びハンドオーバー
図14は、前述の図12及び図13に示されている深刻な非常事態におけるデュアルチャネルアクセスメカニズムのセットアップ構成及びハンドオーバーのプロトコルを示している。図14(並びに、類似の以下の図)においては、垂直軸は、時間を表している。水平軸に沿って、個別の列には、様々な装置タイプが示されており、それぞれの個別の機能を区分している。第1列は、非ビーコンモードコーディネータ10NBを表しており、第2列は、非常事態の状態に移行する一つ又は複数のネットワーク装置11Eを表しており、第3列は、他のネットワーク装置13(医療及び非医療装置の両方)を表しており、これらのうちのいくつかは、非常事態に移行することも可能であり、したがって、非常事態にある医療ネットワーク装置11Eと同一のグループに移ることができ、最後の列は、ビーコンモードコーディネータ10Bである。プロセスフローは、以下のとおりである。
【0093】
S10:まず、セットアップ構成において、すべての装置が非ビーコン型のコーディネータに割り当てられる。したがって、図示のように、ビーコンモードにおいて動作している装置は存在しない。
【0094】
S11:一つ又は複数のネットワーク装置が、例えば、検知されたパラメータの値が臨界レベルに到達したことに起因して、非常事態を宣言したとしよう。この種のそれぞれの装置は、「非常事態」にあると表現される。尚、ネットワーク装置自体による非常事態の状態の初期判定の実行は、必須ではなく、なんらかの更に上位の装置から通知を受け取ることも可能である。
【0095】
S12:非常事態にある装置11Eが非常事態通知を非ビーコンモードコーディネータ10NBに供給するものと仮定する。この代わりに、例えば、システムが備える更に上位の制御ユニットにより、他の方法で供給することも可能であろう。
【0096】
S13:非ビーコンモードコーディネータ10NBは、関係するグループ内のすべての装置を識別する。例えば、病院内において同一の患者に装着されているすべての装置を、患者のID番号に基づいて、又はなんらかの他の方法により、グループ化可能である。したがって、ステップS12において、グループ内の装置のうちの一つのみが通知を供給することで十分であろう。
【0097】
S14及びS15:非常事態にある装置11Eは、ビーコンモードコーディネータ10Bによって形成されるビーコンネットワークに対して、グループとして、ハンドオーバー及び同期化するように命令される。したがって、非ビーコンモードコーディネータ10NBは、装置のグループのハンドオーバーを起動するべく、非常事態にある一つ又は複数の装置11Eに対するステップS14の命令のみならず、他の装置に対するステップ15に示されている命令をも送信する。
【0098】
S16及びS17:非常事態にある装置11Eと、同一グループ内の他のすべての装置とは、ビーコンモードコーディネータ10Bに同期化するための準備が整った状態となる。これらは、ネットワーク全体にブロードキャストされるビーコンモードコーディネータからの次のビーコン信号を聴取することにより、これを実行する。したがって、それ自体が非常事態を生成するか又は非常事態にある装置と同一のグループに属している第3列内の装置も、ビーコン対応型のネットワークに参加することができる。
【0099】
S18及びS19:ハンドオーバーが完了し、これ以降、装置のグループは、ビーコンネットワークに参加しており、したがって、高優先順位リンク上においてビーコンモードコーディネータ10Bのサービスを受ける。図14には示されていないが、グループ外の残りのすべての装置(非医療装置など)は、非ビーコンモードコーディネータ10NBによってサービスされている非ビーコンモードネットワーク内に留まる。
【0100】
したがって、本実施例においては、上述のハンドオーバーにおいて、一人の患者に装着されているすべてのセンサが、グループとして、ハンドオーバーされている。換言すれば、単一のセンサ装置が非常事態に移行した場合にも、すべての他のセンサ装置(又は、予め選択されたサブセット)が排他的なビーコンに基づいたネットワークにハンドオーバーされるものと仮定されている。
【0101】
プロトコル2:もはや「非常事態」の状態にはないネットワーク装置のハンドオーバー
ビーコンモードネットワークが動作している際に、装置のうちの一つ又はいくつかが非常事態から離脱することがある。このような場合には、センサ装置を、オリジナルのコーディネータに戻るようにハンドオーバーすることができる。オリジナルのコーディネータは、図15に示されているように、オリジナルの非ビーコンモードの非−非常事態ネットワークに戻るようにハンドオーバーする前に、同一の患者に装着されている同一のグループのすべての装置が非常事態から離脱していることを確認することになる。
【0102】
S20:初期状態において、ビーコンモードネットワークと非ビーコンモードネットワークが、それぞれ、いくつかの装置と共に稼働しているものと仮定する。
【0103】
S21:非常事態にあるネットワーク装置のグループのうちの一つ11Eが非常事態から離脱する。換言すれば、非常事態の状態は、少なくともその装置が関係している限り、例えば、その検知されたパラメータが、もはや臨界値ではなくなることに起因し、解消された状態となる。
【0104】
S22:その装置11Eは、非常事態離脱通知をビーコンモードコーディネータ10Bに送信する。
【0105】
S23:ビーコンモードコーディネータは、返信において、その状態を報告するように、同一グループ内の他の装置に対して要求を送信する(これは、当然のことながら、それぞれの装置が、自身の状態を認知するための十分な機能を具備するものと仮定しており、装置が自身で非常事態の状態を判定することができない代替構成においては、このステップと次のステップは、省略されることになろう)。
【0106】
S24:グループ内の他の装置は、自身の状態をコーディネータ10Bに対して報告する。即ち、それぞれは、自身がもはや非常事態にはないことを、例えば、対象のネットワーク装置によって検知される患者の生命パラメータの現在の値が許容可能なレンジ内にあることを確認する。
【0107】
S25:コーディネータ10Bは、非常事態にあるグループの装置11Eをビーコンモードネットワーク内に維持する必要性がもはや存在していないということを確信したら、ハンドオーバー要求をグループ内の装置のすべてに対して送信する。
【0108】
S26:グループ内の装置が非ビーコンモードに切り替わる。
【0109】
S27及びS28:装置11Eは、レンジ内の非ビーコンモードコーディネータを見出すべく試みる(この種のコーディネータが複数利用可能である場合には、最も近いコーディネータ又は最強の信号を供給するものを選択可能である)。非ビーコンモードコーディネータを見出した際に、装置11Eは、自身を非ビーコンモードネットワークに登録する。
【0110】
S29:この段階において、ハンドオーバーが完了しており、したがって、この段階において、装置のグループは、低優先順位リンク上において非ビーコンモードコーディネータ10NBとの通信を実施する。図示されてはいないが、ビーコンモードコーディネータ10Bを介した高優先順位リンクは、依然として非常事態にある他の装置の一つ又は複数のグループ、例えば、別の患者を監視している装置のグループのために維持可能である。
【0111】
プロトコル3:位置判定メカニズムに基づいたミニマム装置機能を伴うデュアルアクセスモード動作のハンドオーバープロトコル:センサ装置が移動性を有する
いくつかのシナリオにおいては、ネットワーク装置は、移動性を有することがあり、即ち、換言すれば、そのコーディネータとの関係において移動する能力を有することができる。例えば、病院においては、患者に装着されたセンサのそれぞれのグループは、患者が移動するか又は移動されるのに伴って、ベッド又は壁などに装着された静止状態のコーディネータとの関係において移動することになろう。
【0112】
この場合には、保証スロットを有するTDMA装置の排他的なグループを形成する新しいコーディネータ10Bによって既に受け入れられている一つの非常事態にある装置又は非常事態にある装置のグループは、そのコーディネータから離れるように移動を始めることがある(例えば、二人の非常事態にある患者のうちの一人が排他的なコーディネータから離れるように移動する)。このように移動した場合には、ビーコンモードコーディネータ10Bが、非常事態にある装置のためにサービスの質を維持することができなくなる可能性がある。この場合の主要な懸念事項は、移動しているセンサが連続的な更新又は従来のハンドオーバー手順を実行するべく試みた場合に、結果として、非常事態にある装置の電池が迅速に枯渇しうるという事実にある。
【0113】
このような状況を回避するべく、図16のセカンダリハンドオーバー方式を使用し、センサ装置の機能を可能な限り抑制することができる。即ち、非常事態にあるセンサ装置による動作及びシグナリングのニーズを極小化することにより、不要な電力消費を回避する。それぞれのセンサ及び他の利用可能なコーディネータの場所についてコーディネータに通知する能力を有する位置判定エンティティ(例えば、既存のUWB法)が存在しているものと仮定する。又、ビーコンモードコーディネータ10B(排他的な非常事態コーディネータ)が、それを超えた場合にハンドオーバーがトリガされる許容可能な送信レンジ又は安全アクセス半径を具備するものと仮定する。好ましくは、この半径は、信頼性の高い通信のための安全な距離である。安全半径を超えた直後に、装置は、依然として、コーディネータを聴取可能であるが、接続の品質は、ネットワーク装置がその安全半径を超えて更に離れるように移動するのに伴って、排他的な医学的非常事態の動作のためには許容不能なレベルにまで低下することになる。最後に、複数のネットワーク装置が同一の患者に装着されており、且つ、これらのネットワーク装置が、一つの装置が非常事態を宣言した場合にグループ内のすべての装置(即ち、同一の患者に装着されているセンサのいくつか又はすべて)が非常事態となるという意味において、グループとして取り扱われるものと仮定する。
【0114】
手順は以下のとおりである。
【0115】
S30:手順は、非常事態にあるいくつかのネットワーク装置11Eがビーコンモードコーディネータ10Bとプライマリネットワークを介して通信していると仮定される初期状態から始まる。
【0116】
S31:一つのネットワーク装置11E又は装置のグループが、通信のための安全半径の外に位置するように、コーディネータ10Bから離れるように移動したとしよう。通常、先程仮定したシナリオにおいては、これは、患者が移動した(又は、移動された)結果として発生することになる。
【0117】
S32:ビーコンモードコーディネータ10Bは、なんからの方法により、位置の変化を検出する(内部手段によるか、又は位置に関する通知を外部供給源から受けることによる)。
【0118】
S33:ビーコンモードコーディネータ10Bは、短期的な運動に対して反応することを回避するべく、短時間だけ待機する。即ち、ランダムな又は短期的な運動に基づいてハンドオーバーをトリガすることを回避する。
【0119】
S34:ビーコンモードコーディネータ10Bは、同一グループ内の他のセンサ(ネットワーク装置)の位置をチェックする。この場合にも、「グループ」とは、例えば、同一の患者に装着されているセンサの一部又は全部であってよい。
【0120】
S35:コーディネータ10Bは、グループが(依然として)安全半径の外に位置しているかどうかを判定する。この目的には、グループ内の装置の平均的な位置を使用可能であろう。安全半径内に位置している場合には(例えば、センサのグループが装着されている患者がコーディネータ10Bに近づくように戻ってきている場合には)、なにもしない。
【0121】
S36:グループがレンジ外に位置していると判定された場合には、ビーコンモードコーディネータ10Bは、センサのグループをハンドオーバーするためのコーディネータの最良の候補を判定する。これは、一般には、グループの現在の位置に最も近いコーディネータとなるが、判定においては、他のコーディネータの既存の負荷、グループの運動の傾向、及びその他の要因を考慮することも可能であろう。コーディネータは、ネットワーク装置(センサ)とは別個のタイプの装置である必要はなく、且つ、いくつかの実装においては、ネットワーク装置のいくつか又はすべては、コーディネータとして機能する能力を有し、これにより、選択可能なおそらくはいくつかの候補を提供可能であることに留意されたい。
【0122】
S37:コーディネータ10Bは、非常事態にあるセンサのグループに対してハンドオーバー要求を発行する。これは、グループが通信リンクを確立することになる最も近い(好ましくは、ビーコンモードの)近隣コーディネータの識別情報を含む。
【0123】
S38:センサのグループは、自身を新しいコーディネータ10’Bに登録してハンドオーバーを完了させる。これは、個別の装置のハンドオーバー以上のものであり、非常事態の状態にある装置のグループのハンドオーバーであって、実際には、患者自身がハンドオーバーされることに留意されたい。この結果、患者が、例えば、病院の周辺を移動するのに伴って、確実に、患者を監視し、患者に追随し、且つ、患者を追跡することができる。
【0124】
プロトコル4:位置判定メカニズム及び信号品質に基づいたミニマム装置機能を伴うデュアルアクセスモード動作のハンドオーバー手順
第4のプロトコル(図17)においては、第3のプロトコル(図16)について考慮したものと類似の状況を仮定している。相違点は、場所情報に加えて、ハンドオーバーに関する判定を支援するべく信号品質又は無線リンクの品質を更に監視するという点にある。
【0125】
S40〜S45:それぞれ、前述のステップS30〜S35のとおりである。
【0126】
S46:プライマリコーディネータ10Bは、センサのグループとの間の無線リンクのSIR及び/又は品質が許容可能な閾値を下回っているかどうかを判定する。ここで、SIRは、単純に、センサ自身から受信されたアップリンク信号のものであってもよく、或いは、センサから報告を受けたダウンリンク上の信号強度の値であってもよいであろう。信号が許容可能である場合には、センサグループの移動とは無関係に、ハンドオーバーの必要性が(まだ)存在しておらず、したがって、なにもしない。
【0127】
S47:センサが安全半径の外に移動したのに加えて、その信号強度も許容不能に低い場合には、これは、ハンドオーバーが必要であることを意味している。コーディネータ10Bは、このために最良の候補を判定する。
【0128】
S48:使用するべき新しいコーディネータを規定したハンドオーバー要求がセンサのグループに対して発行される。
【0129】
S49:グループは、自身を新しいコーディネータ10’Bに登録し、ハンドオーバー手順を完了させる。
【0130】
非常事態の状態を宣言するには、非常事態の状態を他の無線ノードに伝達することが極めて重要である。以下、上述のプロトコルを、IEEE802.15.4に基づいて現在開発中のIEEE802.15.6などの通信規格に含める方法について、更に説明することとする。
【0131】
図18及び図19は、「非常事態」という名称が付与された新しいビットを追加することによって非常事態の状況を収容すると共にIEEE802.15.6に適合したものにするための本発明の一実施例におけるIEEE802.15.4のフレームフォーマットに対する第1の可能な変更を示している。この第1の可能な変更においては、IEEE802.15.4のフレームタイプに対するその他の変更を実施することなしに、新しい非常事態フレームタイプが許容されている。
【0132】
既に概説したように、IEEE802.15.4は、ビーコンフレーム41、データフレーム42、アクノリッジメントフレーム43、及びMACコマンドフレーム44を含む様々なフレームタイプを提供している。IEEE802.15.6において前述の手順を実装するための一つの方法は、非常事態の状態(又は、非−非常事態の状態)を宛先装置に宣言するべく、非常事態フレームという更なるフレームタイプを導入する。
【0133】
図18は、IEEE802.15.4について既に提案されている図10Aのフレームコントロールフィールド50に対応したフレームコントロールフィールド500の構造を示している。図18を図10Aと比較することによって理解されるように、ビット0〜2は、IEEE802.15.4と同様に、フレームタイプ501を表しているが、可能なフレームタイプ値は、図19に示されているように変更されている。以前の予備の値100〜111(図10Bを参照されたい)のうち、ビット値「111」が、この場合には、新しい非常事態フレームタイプを表すべく使用されている。値100〜110は、将来使用するための予備の値として残されている。
【0134】
フレームコントロールフィールド500の残りのサブフィールド内には、第7ビットが非常事態の状態のためのフラグとして新しく使用されていることを除いて(例えば、「1」=非常事態であり、且つ、「0」=非−非常事態である)、基本的に、図10Aのフレームコントロールフィールド50と同一の構成要素が存在している。ここで、第8ビットは、(図10Aのアクノリッジメント要求サブフィールドに対応した)アクノリッジメントポリシーを表すべく使用されている。セキュリティ有効化ビット502、フレームペンディングビット503、PAN ID圧縮506、宛先アドレス指定モード507、フレームバージョン508、及び発信元アドレス指定モード509の各サブフィールドは、IEEE802.15.4のフレームコントロールフィールド50と同一の機能を具備している。
【0135】
図20及び図21は、非常事態フレームタイプのみならず、所謂即時アクノリッジメントを含む相対的に柔軟なアクノリッジメントの提供、ネットワーク装置の電池状態の通知、及び「緊急事態」の通知を含むその他の新しい特徴を収容するための本発明の他の実施例におけるIEEE802.15.4のフレームフォーマットに対する第2の可能な変更を示している。
【0136】
図20のフレームコントロールフィールド500’のフォーマットは、主には、アクノリッジメントポリシー用の単一のビット505が、異なるアクノリッジメントタイプを定義するための2つのビットによって置換され、且つ、電池状態(即ち、残っている電荷又は電圧レベル)及び「緊急事態」の通知が、追加のビット(図には、「拡張ビット」0〜3という名称が付与されている)を必要とする新しいサブシールド511及び512によって表されているという点において、図18のフレームコントロールフィールド500と異なっている。図示のように、2つのビットが、それぞれ、「緊急事態」及び「電池レベル」のそれぞれに対して割り当てられており、これにより、それぞれについて最大で4つのレベルを定義可能である。これらの新しいサブフィールドの意味及び使用法は、本発明の範囲外であるが、ここでは、これらを本発明のビーコンモード/非ビーコンモードの切替えとの関連において使用することにより、BANの装置間の更に柔軟なシグナリングを提供可能であることに留意されたい。
【0137】
この場合におけるIEEE802.15.4の変更されたフレームタイプ値が図21に示されており、これを図10B及び図19と比較されたい。図19の実施例と比較した場合の相違点は、これまで予備とされていた値100及び101が、いまや、即時アクノリッジメントと遅延アクノリッジメントというアクノリッジメントの2つのタイプを表すべく使用されているという点にあり、即時アクノリッジメントとは、例えば、非常事態にある装置が、更に信頼性の高い通信のために、受信したデータのそれぞれの個別のフレームをアクノリッジするべく使用するものである。即時アクノリッジメントは、本出願人による同時係属中の出願の主題である。
【0138】
本発明の新しい機能を既に提案されたフレーム構造に含めるための更なる技法として、MACコマンドフレームのコマンドフレーム識別子(図11A及び図11Bを再度参照されたい)を使用可能である。図22は、MACコマンドフレーム44’に必要な変更を示しており、可能な値の表に、新しいコマンドタイプである「非常事態通知」及び「ハンドオーバー」が追加されており、これらは、これまで使用されていない0x0aと0x0bという値を有する。これらの新しいコマンドタイプの規定に加えて、コマンドフレーム識別子に後続するペイロードを使用し、コマンドの情報(コンテキスト)を付与する。図22に示されているMACコマンドフレーム44’の場合のペイロードの一例は、受信装置がハンドオーバーする一つ又は複数のコーディネータの最も適切な候補のIDであろう。「非常事態通知」コマンドタイプの場合の代替ペイロードは、非常事態の状態の持続時間などの関連する時間値(単位:ms)又は(既知のタイミング基準時点又はエポックからの)非常事態の状態が有効である時点までの時間(単位:ms)となろう。
【0139】
要すれば、本発明の実施例は、以下の特徴を提供可能である。
【0140】
・ネットワークのシステム内における排他的なTDMAに基づいたネットワークへの非常事態にある装置のハンドオーバーの概念。ハンドオーバーは、患者の身体に装着されたセンサ装置のグループのうちの一つの装置が非常事態に移行した際にトリガされる。一人の患者に装着されたMBANセンサのグループ全体がネットワーク間でハンドオーバーされる。
【0141】
・患者に装着されたセンサのグループの全体が非常事態を離脱した場合にハンドオーバーがトリガされる戻りのハンドオーバーメカニズム。
【0142】
・非常事態にある患者がコーディネータから離れるように移動し、センサがコーディネータからのアクセス半径を超えて移動した場合には、QoS及び無線リンクの品質が低下し得る。このような場合には、コーディネータがセンサの場所を認知し、且つ、場所に基づいたハンドオーバーがトリガされる。ハンドオーバーの判定を実行するべく、場所に加えて、一つの任意選択肢として、QoS、SIR、又は無線リンクの品質を考慮することも可能である。
【0143】
・IEEE802.15.6のための非常事態フレームを含む新しいコントロールフレーム構造。
【0144】
この結果、以下の利点を実現可能である。
【0145】
・本発明の実施例は、医療無線BANのデュアルモードのビーコン型及び非ビーコン型のチャネルアクセス動作を可能にし、この医療無線BANは、個々のチャネルアクセスモードの欠点(例えば、高チャネルアクセスレイテンシ及び高電力消費)の影響を受けることなしに、BAN装置が両方のモードタイプの利益(例えば、保証されたスループット及び低電力消費)を享受することを可能にする。
【0146】
・前述のデュアルモード動作は、特に医学的な非常事態の状況において、医療無線BANの通信の信頼性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明の実施例は、MBANを使用して非常事態の管理を円滑に実行する際に極めて重要な役割を果たすことができる。以下のシナリオに留意されたい。
【0148】
(i)心臓に問題を有する世界中の数億人の患者を、彼らの身体上においてMBANを形成する無線センサを利用することにより、病院において、又は自宅において、監視可能である。MBANは、このような患者に更なる移動性を提供可能である。但し、心機能の異常や心臓発作などの更に深刻なケースなどの状況にある患者のグループの場合には、信頼性の高い通信チャネルを確保して非常事態又はアラーム信号を見逃さないことを保証することが極めて重要である。本発明は、「非常事態アクノリッジメント」を送信することにより、関与しているすべてのエンティティに非常事態について認知させるための信頼性の高い非常事態トリガメカニズムを提供する。
【0149】
(ii)世界中で数億人の人々が糖尿病を患っている。最近、グルコースの測定のための埋植可能な又は非侵襲的な方法が検討されている。MBANを使用し、24時間にわたって患者のグルコースレベル情報を監視可能である。患者のグルコースレベルがチャートを逸脱し、且つ、患者のための非常ジオロケーション及びその他の必要な緊急的な医学的手順が必要とされる状況が存在する。
【0150】
(iii)MBANを使用することにより、データの消失によって生命が脅かされる可能性がある集中治療の状態にある患者を監視しつつ、検知データを収集可能である。
【0151】
(iv)医療システムにおける非常事態への応答の人件費及び効率が改善される。
【0152】
(v)医療MBANシステムにおける非常事態の認知度が改善される。
【0153】
(vi)非常事態応答プロセスを自動化することにより、人件費が低減される。
【0154】
(vii)主には、低データレートのアプリケーションが想定されているが、MBANは、個々のパケットの消失が致命的であると共に品質に影響を及ぼすストリーミングビデオ/オーディオデータの転送に適用することも可能であろう。非常事態の状況においては、誤ったデータは、疾病の診断に悪影響を付与するおそれがある。
【0155】
(viii)医療診断の場合には、MMR又はX線画像は、医師が患者を適切に診断するべく、非常に明瞭であることを要する。したがって、この場合にも、信頼性の高いデータ転送が不可欠である。
【0156】
要すれば、本発明は、非ビーコンモード通信のための第1コーディネータ(10NB)及びビーコンモード通信のための第2コーディネータ(10B)によってサービスされる無線センサネットワークシステム内においてネットワーク装置(11E、13)の通信を実行する技術を提供可能であり、ネットワーク装置は、監視される少なくとも一つのエンティティと関連付けられており、且つ、この方法は、まず、すべてのネットワーク装置(11E、13)を第1コーディネータ(10NB)によってサービスされる第1ネットワークに配置するステップと、関連するネットワーク装置(11E)のセンサによってそのエンティティ又はそれぞれのエンティティの一つ又は複数のパラメータを監視するステップと、センサデータを第1ネットワーク内のネットワーク装置から第1コーディネータ(10NB)に送信するステップと、監視対象のパラメータを使用することにより、上記のエンティティに関連する非常事態の状態の開始又は終了を検出するステップと、上記のエンティティに関連する非常事態の状態の開始の検出に応答して、関連するネットワーク装置(11E)を第2ネットワークにハンドオーバーさせるステップと、センサデータを第2ネットワーク内のネットワーク装置から第2コーディネータ(10B)に送信するステップと、上記のエンティティに関連する非常事態の状態の終了の検出に応答して、関連するネットワーク装置を第1ネットワークにハンドオーバーさせるステップと、を含む。
【0157】
本発明は、新しいネットワーク装置(センサ)、コーディネータ、又はこれらのためのハードウェアモジュールの形態をとることが可能であり、且つ、ネットワーク装置及び/又はそれぞれのコーディネータのプロセッサによって実行されるソフトウェアを置換又は変更することにより、実装可能である。
【0158】
したがって、本発明の実施例は、ハードウェアにおいて、或いは、一つ又は複数のプロセッサ上において稼働するソフトウェアとして、或いは、これらの組合せとして、実装可能である。又、本発明は、本明細書に記述されている技術のいずれかの一部又はすべてを実行する一つ又は複数の装置又は機器プログラム(例えば、コンピュータプログラム及びコンピュータプログラムプロダクト)として実施可能である。このような本発明を実施するプログラムは、コンピュータ可読媒体上に保存可能であり、或いは、例えば、一つ又は複数の信号の形態を有することも可能であろう。このような信号は、インターネットウェブサイトからダウンロード可能なデータ信号であってよく、或いは、搬送波信号上において、又は任意のその他の形態において、提供することも可能である。
【0159】
以上の説明は、非常事態の状態の存在の有無を参照しているが、これらは、患者などの監視対象のエンティティの唯一の2つの可能な状態ではない。例えば、「異常」などの第3の状態を導入し、患者(又は、更に正確には、特定の検知された生命パラメータの値)が、まだ非常事態の状態にはないが、懸念の原因を生成していることを意味することができよう。これは、明示的に宣言することも可能であり、或いは、非常事態の状態の終了を直ちに宣言せずに、むしろ、検知された値が正常な読取値に復帰する時点まで待機することにより、黙示的に規定することも可能であろう。換言すれば、患者が非常事態の状態に戻る場合には、非ビーコンモードコーディネータへのハンドオーバーを遅延させることが好ましいであろう。
【0160】
以上の説明は、MBANなどの無線センサシステム内におけるセンサ及びコーディネータのみを参照しているが、MBANは、これらの種類以外の他の装置を包含可能である。潜在的に、投薬メカニズムなどの患者の治療に介入するなんらかの手段を、コーディネータの無線による制御下において、ネットワーク内に配置可能であろう。したがって、ビーコンモードは、センサ及びその通信の制御に限定する必要はなく、例えば、薬剤を患者に供給して非常事態の状態にある生命パラメータ(例えば、心拍数)を安定化させるための命令に使用することも可能であろう。
【0161】
又、前述のように、MBANには、コーディネータとの(必ずしも、MBAN自体を介したものではない)通信状態にあるなんらかの形態の中央制御及び監視ユニットを提供することも可能である。このような中央制御ユニットは、例えば、非常事態の状態の開始又は解消の宣言に関与可能であろう。
【0162】
上述の説明は、患者の医学的な非常事態又は非−非常事態を判定するための技法に関するものであり、その理由は、これが、本発明の重要な用途として考えられるためである。但し、これは、唯一の可能な用途ではない。センサを使用し、非医学的な状況において生体を監視可能であろう。例えば、前述のものと同一の技法を使用することにより、リスクを有する任意の人物(例えば、高齢の又は虚弱な人々や子供、危険な環境にある人々など)を観察可能であろう。この場合には、非常事態の状態は、事故などのなんらかの形態の物理的な脅威を表すことになろう。この状況においては、脈拍、温度、加速度などの生命パラメータ用のセンサが特に有用であろう。非常事態の状態においては、可能な場合には、医療シナリオと同様に、ビーコンモード通信に切り替えることが望ましいであろう。
【0163】
人間の又はその他の生体のBAN以外にも、本発明を適用するための多くの可能性が存在している。一つの可能性は、ミッションクリティカルな産業環境(例えば、発電所)における多数の潜在的なシナリオなどの産業的な非常事態を検出する能力を有するシステムである。これは、工場の環境における多数の制御点に適用可能である。例えば、本発明者らは、工場の加熱設備内の温度センサ又は食品製造ライン用の圧力閾値を想定可能である。このようなシステムにおけるビーコンモード及び非ビーコンモードコーディネータの同時使用は、医学的な非常事態の場合と同様に、これらのシステム内における非常事態にも適用可能である。したがって、請求項における「エンティティ」という用語は、生物に加えて、このような任意の産業環境をも包含するものと解釈されたい。
【0164】
以上の説明においては、一例として、IEEE802.15.4及びIEEE802.15.6を参照しているが、本発明は、IEEE802.15.6に従って動作するかどうかとは無関係に、任意のタイプのフレームに基づいた無線センサネットワーク又はMBANに対して、且つ、医療ボディエリアネットワークではない場合にも、非常事態の状況における通信の信頼性の改善に対する要件を具備するその他のタイプのBANに対して、適用可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のネットワーク装置と、前記ネットワーク装置の第1のサブセットとの間において非ビーコンモード通信を実行するべく構成された第1コーディネータと、前記ネットワーク装置の第2のサブセットとの間においてビーコンモードの通信を実行するべく構成された第2コーディネータと、を有する無線センサシステムであって、
非常事態の状態が前記ネットワーク装置に関連して存在するかどうかに応じて、前記ネットワーク装置のうちのいずれを前記第1または第2のサブセットに含めるかを判定する手段を具備する無線センサシステム。
【請求項2】
複数のネットワーク装置と、前記ネットワーク装置の第1のサブセットとの間において非ビーコンモード通信を実行するべく構成された第1コーディネータと、前記ネットワーク装置の第2のサブセットとの間においてビーコンモードの通信を実行するべく構成された第2コーディネータと、を有する無線センサシステムであって、
非常事態の状態が前記ネットワーク装置に関連して存在するかどうかに応じて、一つ又は複数のネットワーク装置を前記第1サブセットと前記第2サブセットの間においてハンドオーバーさせる手段を具備する無線センサシステム。
【請求項3】
前記ネットワーク装置を使用して一つ又は複数のエンティティを監視し、前記非常事態の状態は、前記ネットワーク装置によって監視される前記エンティティに影響を及ぼす非常事態である請求項1又は2に記載の無線センサシステム。
【請求項4】
前記ネットワーク装置のそれぞれは、それぞれが個別のエンティティを監視する複数のグループのうちの一つに割り当てられており、且つ、前記非常事態の状態は、前記グループによって監視される前記エンティティに影響を及ぼす非常事態であり、一つのグループの前記ネットワーク装置は、一単位として、前記第1及び第2サブセット内に含まれ、または、前記第1及び第2のサブセット間においてハンドオーバーされる請求項3に記載の無線センサシステム。
【請求項5】
前記非常事態の状態の前記存在の有無は、前記ネットワーク装置のセンサによって検知される一つ又は複数のパラメータの臨界レベルに基づいて判定される請求項3又は4に記載の無線センサシステム。
【請求項6】
前記第1及び第2コーディネータは、すべてのネットワーク装置が前記第1サブセットに含まれる初期状態から始まり、前記非常事態の状態の開始に応答して一つ又は複数のネットワーク装置を前記第1サブセットから前記第2サブセットにハンドオーバーし、且つ、前記非常事態の状態の終了に応答して一つ又は複数のネットワーク装置を前記第2サブセットから前記第1サブセットにハンドオーバーさせるべく構成されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の無線センサシステム。
【請求項7】
少なくとも一つのエンティティを監視するセンサを含む複数のネットワーク装置を具備する無線センサシステム内におけるコーディネータであって、前記無線センサシステムは、前記ネットワーク装置の同時ビーコンモード及び非ビーコンモード通信のための個別のネットワークを有するように構成されており、前記コーディネータは、少なくとも前記ネットワーク装置のサブセットとの間の非ビーコンモード通信のために構成されており、且つ、前記サブセットの前記ネットワーク装置の少なくとも一つに関連して非常事態の状態が存在するという判定に応答し、前記サブセットをビーコンモード通信のための他のコーディネータにハンドオーバーする、コーディネータ。
【請求項8】
少なくとも一つのエンティティを監視するセンサを含む複数のネットワーク装置を具備する無線センサシステム内におけるコーディネータであって、前記無線センサシステムは、前記ネットワーク装置の同時ビーコンモード及び非ビーコンモード通信のための個別のネットワークを有するように構成されており、前記コーディネータは、少なくとも前記ネットワーク装置のサブセットとの間の非ビーコンモード通信のために構成されており、且つ、前記サブセットの非常事態の状態の変化に応答し、前記サブセットを他のコーディネータにハンドオーバーさせる、コーディネータ。
【請求項9】
前記ネットワーク装置のサブセットは、非常事態の状態にあるエンティティと関連付けられており、且つ、前記コーディネータは、更に、前記サブセットが前記コーディネータの許容可能なレンジ外に存在するという判定及び/又は前記サブセットの信号品質が既定の閾値を下回っているという判定に応答し、前記サブセットを、好ましくはビーコンモードコーディネータである他のコーディネータにハンドオーバーさせる請求項8に記載のコーディネータ。
【請求項10】
少なくとも一つのエンティティを監視し、且つ、(i)第1コーディネータとの間の非ビーコンモード通信と、(ii)第2コーディネータとの間のビーコンモード通信と、の間において選択することにより、通信を実行するべく適合された無線センサシステム内において使用されるネットワーク装置であって、
前記モード(i)又は(ii)は、非常事態の状態が前記エンティティに関連して存在するかどうかに応じて、前記システムの動作中に動的に選択される、ネットワーク装置。
【請求項11】
前記ネットワーク装置は、同一のエンティティを監視するべく割り当てられた複数のネットワーク装置のうちの一つであり、且つ、前記非常事態の状態は、前記ネットワーク装置により、又は前記同一のエンティティに割り当てられた前記ネットワーク装置のうちのいずれかにより、検知されたパラメータのレベルに従って判定される請求項10に記載のネットワーク装置。
【請求項12】
前記ネットワーク装置は、前記非常事態の状態が存在するという判定に応答し、モード(ii)を選択し、且つ、前記非常事態の状態がもはや存在していないという判定に応答し、モード(i)を選択する請求項9又は10に記載のネットワーク装置。
【請求項13】
それぞれのエンティティが生体である請求項3、4、又は5に記載のシステム、請求項7、8、又は9に記載のコーディネータ、又は請求項10から12のいずれかに記載のネットワーク装置。
【請求項14】
前記生体の一つ又は複数の医療パラメータを監視するべく適用される請求項13に記載のシステム、コーディネータ、又はネットワーク装置。
【請求項15】
非ビーコンモード通信のための第1コーディネータと、ビーコンモード通信のための第2コーディネータと、によってサービスされる個別のネットワークから形成された無線センサシステム内においてネットワーク装置の通信を実行する方法であって、前記ネットワーク装置は、監視対象の少なくとも一つのエンティティと関連付けられている、方法であって、
前記ネットワーク装置のすべてを前記第1コーディネータによってサービスされる第1ネットワーク内に配置するステップと、
前記関連付けられたネットワーク装置のセンサによって前記一つのエンティティ又はそれぞれのエンティティの一つ又は複数のパラメータを監視するステップと、
センサデータを前記第1ネットワーク内の前記ネットワーク装置から前記第1コーディネータに送信するステップと、
前記監視対象のパラメータを使用することにより、前記エンティティに関連した非常事態の状態の開始又は終了を検出するステップと、
前記エンティティに関連した前記非常事態の状態の開始の検出に応答して、前記関連付けられたネットワーク装置を前記第2ネットワークにハンドオーバーさせるステップと、
センサデータを前記第2ネットワーク内の前記ネットワーク装置から前記第2コーディネータに送信するステップと、
前記エンティティに関連する前記非常事態の状態の終了の検出に応答し、前記関連付けられたネットワーク装置を前記第1ネットワークにハンドオーバーさせるステップと、
を有する方法。
【請求項1】
複数のネットワーク装置と、前記ネットワーク装置の第1のサブセットとの間において非ビーコンモード通信を実行するべく構成された第1コーディネータと、前記ネットワーク装置の第2のサブセットとの間においてビーコンモードの通信を実行するべく構成された第2コーディネータと、を有する無線センサシステムであって、
非常事態の状態が前記ネットワーク装置に関連して存在するかどうかに応じて、前記ネットワーク装置のうちのいずれを前記第1または第2のサブセットに含めるかを判定する手段を具備する無線センサシステム。
【請求項2】
複数のネットワーク装置と、前記ネットワーク装置の第1のサブセットとの間において非ビーコンモード通信を実行するべく構成された第1コーディネータと、前記ネットワーク装置の第2のサブセットとの間においてビーコンモードの通信を実行するべく構成された第2コーディネータと、を有する無線センサシステムであって、
非常事態の状態が前記ネットワーク装置に関連して存在するかどうかに応じて、一つ又は複数のネットワーク装置を前記第1サブセットと前記第2サブセットの間においてハンドオーバーさせる手段を具備する無線センサシステム。
【請求項3】
前記ネットワーク装置を使用して一つ又は複数のエンティティを監視し、前記非常事態の状態は、前記ネットワーク装置によって監視される前記エンティティに影響を及ぼす非常事態である請求項1又は2に記載の無線センサシステム。
【請求項4】
前記ネットワーク装置のそれぞれは、それぞれが個別のエンティティを監視する複数のグループのうちの一つに割り当てられており、且つ、前記非常事態の状態は、前記グループによって監視される前記エンティティに影響を及ぼす非常事態であり、一つのグループの前記ネットワーク装置は、一単位として、前記第1及び第2サブセット内に含まれ、または、前記第1及び第2のサブセット間においてハンドオーバーされる請求項3に記載の無線センサシステム。
【請求項5】
前記非常事態の状態の前記存在の有無は、前記ネットワーク装置のセンサによって検知される一つ又は複数のパラメータの臨界レベルに基づいて判定される請求項3又は4に記載の無線センサシステム。
【請求項6】
前記第1及び第2コーディネータは、すべてのネットワーク装置が前記第1サブセットに含まれる初期状態から始まり、前記非常事態の状態の開始に応答して一つ又は複数のネットワーク装置を前記第1サブセットから前記第2サブセットにハンドオーバーし、且つ、前記非常事態の状態の終了に応答して一つ又は複数のネットワーク装置を前記第2サブセットから前記第1サブセットにハンドオーバーさせるべく構成されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の無線センサシステム。
【請求項7】
少なくとも一つのエンティティを監視するセンサを含む複数のネットワーク装置を具備する無線センサシステム内におけるコーディネータであって、前記無線センサシステムは、前記ネットワーク装置の同時ビーコンモード及び非ビーコンモード通信のための個別のネットワークを有するように構成されており、前記コーディネータは、少なくとも前記ネットワーク装置のサブセットとの間の非ビーコンモード通信のために構成されており、且つ、前記サブセットの前記ネットワーク装置の少なくとも一つに関連して非常事態の状態が存在するという判定に応答し、前記サブセットをビーコンモード通信のための他のコーディネータにハンドオーバーする、コーディネータ。
【請求項8】
少なくとも一つのエンティティを監視するセンサを含む複数のネットワーク装置を具備する無線センサシステム内におけるコーディネータであって、前記無線センサシステムは、前記ネットワーク装置の同時ビーコンモード及び非ビーコンモード通信のための個別のネットワークを有するように構成されており、前記コーディネータは、少なくとも前記ネットワーク装置のサブセットとの間の非ビーコンモード通信のために構成されており、且つ、前記サブセットの非常事態の状態の変化に応答し、前記サブセットを他のコーディネータにハンドオーバーさせる、コーディネータ。
【請求項9】
前記ネットワーク装置のサブセットは、非常事態の状態にあるエンティティと関連付けられており、且つ、前記コーディネータは、更に、前記サブセットが前記コーディネータの許容可能なレンジ外に存在するという判定及び/又は前記サブセットの信号品質が既定の閾値を下回っているという判定に応答し、前記サブセットを、好ましくはビーコンモードコーディネータである他のコーディネータにハンドオーバーさせる請求項8に記載のコーディネータ。
【請求項10】
少なくとも一つのエンティティを監視し、且つ、(i)第1コーディネータとの間の非ビーコンモード通信と、(ii)第2コーディネータとの間のビーコンモード通信と、の間において選択することにより、通信を実行するべく適合された無線センサシステム内において使用されるネットワーク装置であって、
前記モード(i)又は(ii)は、非常事態の状態が前記エンティティに関連して存在するかどうかに応じて、前記システムの動作中に動的に選択される、ネットワーク装置。
【請求項11】
前記ネットワーク装置は、同一のエンティティを監視するべく割り当てられた複数のネットワーク装置のうちの一つであり、且つ、前記非常事態の状態は、前記ネットワーク装置により、又は前記同一のエンティティに割り当てられた前記ネットワーク装置のうちのいずれかにより、検知されたパラメータのレベルに従って判定される請求項10に記載のネットワーク装置。
【請求項12】
前記ネットワーク装置は、前記非常事態の状態が存在するという判定に応答し、モード(ii)を選択し、且つ、前記非常事態の状態がもはや存在していないという判定に応答し、モード(i)を選択する請求項9又は10に記載のネットワーク装置。
【請求項13】
それぞれのエンティティが生体である請求項3、4、又は5に記載のシステム、請求項7、8、又は9に記載のコーディネータ、又は請求項10から12のいずれかに記載のネットワーク装置。
【請求項14】
前記生体の一つ又は複数の医療パラメータを監視するべく適用される請求項13に記載のシステム、コーディネータ、又はネットワーク装置。
【請求項15】
非ビーコンモード通信のための第1コーディネータと、ビーコンモード通信のための第2コーディネータと、によってサービスされる個別のネットワークから形成された無線センサシステム内においてネットワーク装置の通信を実行する方法であって、前記ネットワーク装置は、監視対象の少なくとも一つのエンティティと関連付けられている、方法であって、
前記ネットワーク装置のすべてを前記第1コーディネータによってサービスされる第1ネットワーク内に配置するステップと、
前記関連付けられたネットワーク装置のセンサによって前記一つのエンティティ又はそれぞれのエンティティの一つ又は複数のパラメータを監視するステップと、
センサデータを前記第1ネットワーク内の前記ネットワーク装置から前記第1コーディネータに送信するステップと、
前記監視対象のパラメータを使用することにより、前記エンティティに関連した非常事態の状態の開始又は終了を検出するステップと、
前記エンティティに関連した前記非常事態の状態の開始の検出に応答して、前記関連付けられたネットワーク装置を前記第2ネットワークにハンドオーバーさせるステップと、
センサデータを前記第2ネットワーク内の前記ネットワーク装置から前記第2コーディネータに送信するステップと、
前記エンティティに関連する前記非常事態の状態の終了の検出に応答し、前記関連付けられたネットワーク装置を前記第1ネットワークにハンドオーバーさせるステップと、
を有する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公表番号】特表2012−519993(P2012−519993A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552509(P2011−552509)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【国際出願番号】PCT/GB2010/050157
【国際公開番号】WO2010/100443
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【国際出願番号】PCT/GB2010/050157
【国際公開番号】WO2010/100443
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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