説明

ボディセンサネットワークを用いる患者のバイタルパラメータのモニタリング

本発明は、オンボディセンサ1のセットと少なくとも1つのオフボディモニタリング装置2を持つボディセンサネットワークを用いて患者10の複数のバイタルパラメータをモニタリングする方法に関し、該方法は次のステップを有する:各オンボディセンサ1を用いて、バイタルパラメータを検知し、検知されたバイタルパラメータに関連するデータをオフボディモニタリング装置2へ伝送するステップ、及びオンボディセンサ1の少なくとも1つに対して、このオンボディセンサ1のオフボディモニタリング装置2に対する傾斜を測定するステップ。このようにして、ボディセンサネットワークを用いて患者10のバイタルパラメータをモニタリングするための、信頼できる簡便な可能性が提供され、これは患者10の身体によって生じるRF減衰によって引き起こされる性能問題を最小化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボディセンサネットワークを用いる患者のバイタルパラメータのモニタリングの分野、及び、特にオフボディモニタリング装置を用いるボディセンサネットワークのオンボディセンサ間のデータ伝送の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ボディセンサネットワーク(BSN)は、互いに無線で通信する、及び、患者などの人の身体の中若しくは上、又は身体のごく近傍に位置する、装置のネットワークである。ケーブルがないことによって実現される利便性のために、BSNは患者モニタリング、及び多くの他の用途のためにますます使用されるようになっている。患者モニタリングのために使用される典型的なBSNは、オンボディセンサのセットと、センサによって測定及び伝送されるバイタルサインデータを受信する1つのオフボディモニタリング装置から成る。モニタリング装置は通常は患者の身体から5メートル未満の距離内に位置する。
【0003】
患者モニタリングBSNは2GHzよりも高い周波数で通信することが好ましいが、これはこうした周波数帯域が、ライセンスコスト、データ伝送速度及びアンテナサイズの点で特に適しているからである。とは言っても、1GHzを上回る周波数において人体によって導入される高い減衰は、信頼できるBSNとって主要な課題である。高RF周波数は体内をほとんど伝搬しないので、人体の部位はしばしばBSN装置間の直接RF伝搬経路を、すなわち視程(visibility)又は見通し線(line‐of‐sight:LOS)を遮断する。LOSなしの2つの装置はしばしば通信することができるが、それらの間のnon‐LOSリンクは、LOSリンクよりもかなり信頼性が低い。
【0004】
non‐LOSを介する無線通信は、マルチパス伝搬とクリーピング波という2つの効果のためにそれでもやはり可能である。マルチパス伝搬のおかげで、LOSなしの装置は別の装置によって伝送される信号の多重反射を受信する。こうした反射は、伝送されたRF信号がユーザの環境、例えば床、壁、家具などに跳ね返るときに生じるので、これに大きく依存する。クリーピング波効果は、装置のRF信号を身体の輪郭に従って伝搬させる回折又は導波効果として理解されることができる。マルチパス伝搬とクリーピング波はともにオンボディBSN装置が通信するのを助ける。それにもかかわらず、患者モニタなどのオフボディ装置はクリーピング波から利益を得ることができず、環境からの反射だけに依存する。
【0005】
上記の通り、従来のボディセンサネットワーク、別名ボディエリアネットワーク(BAN)は、主に人体の接近によって導入される劣悪なRF伝搬条件により、健康モニタリングのために十分に信頼できない。減衰問題は医療BSNにとって特に悪影響を及ぼすが、これは他の種類のネットワークや他の応用分野でも確認されている。この問題に対処する従来の方法のほとんどは、パケット若しくはビット誤り率(PER及びBER)、受信信号強度、又は他の信号品質測定基準を用いて無線リンク上の条件をまずモニタリングすること、そしてリンク条件が悪化するときはいつでも対策を実行することに基づく受動的方法である。こうした対策は以下のものを含む。
【0006】
第一の従来の方法は、データを伝送するためにより良い条件を持つと評価された代替リンクを使用することである。従って装置はそのデータを宛先装置の代わりに中継装置へ送信する。ほとんどのパケットルーティングプロトコルはこれに基づく。さらに、別の従来の方法は受信装置においてより良い信号を確保するために送信電力を増すことである。これはダイナミックリンクアダプテーション、ダイナミックパワーマネジメント、若しくはダイナミックリンクパワーコントロールとして知られる。さらなる従来の可能性は、伝送エラー確率を減らすために、情報が物理的に伝送されるデータレートを減少させることである。例えば、この機構は無線技術で使用され、例えばダイナミックレートスケーリングと呼ばれる。
【0007】
他の方法は、無線リンクの実際の条件とは無関係に予防手段を適用する。最も関連するもののいくつかは以下の通りである。
【0008】
減衰の大きさを減らすために、オンボディオペレーション用に最適化されたアンテナが使用されることができる。さらに、受信装置においてより良い信号を確保するために、送信電力を恒久的に増加させることができる。さらに、あらゆる装置がその隣接装置全てから受信されるパケットを転送するようにフラッディングベースのパケットルーティングを用いることが、別の従来の可能性である。同じ情報が複数経路を介して並行して送信されるので、これがその宛先に到着する可能性はより高い。
【0009】
しかしながら、RF減衰問題に取り組む従来の最新の方法は、部分的に功を奏するのみであり、重要な欠点を示す。例えば、前述の最初の3つの方法は、これらが受動的手段に基づき、リンク条件の悪化を予測することができないので、情報の消失を完全に防ぐことができない。言い換えれば、これらは通常、問題が既に起こってしまったときに問題に対応する。予防手段はもっとうまくいかない。上述の4番目の方法は無線リンク条件のわずかな改善しか可能にしないが、5番目の方法はBSNの動作時間を劇的に減らし、6番目の方法はすぐに無線チャネルに過負荷をかける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、患者の身体によって生じるRF減衰によって引き起こされるBSN性能問題を最小化する、ボディセンサネットワークを用いて患者のバイタルパラメータをモニタリングするための、信頼できる簡便な可能性を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、オンボディセンサのセットと少なくとも1つのオフボディモニタリング装置を持つボディセンサネットワークを用いて患者の複数のバイタルパラメータをモニタリングする方法によって実現され、該方法は次のステップを有する。
各オンボディセンサを用いて、バイタルパラメータを検知し、検知されたバイタルパラメータに関連するデータをオフボディモニタリング装置へ伝送するステップと、
オンボディセンサの少なくとも1つに対して、このオンボディセンサのオフボディモニタリング装置に対する傾斜を測定するステップ。
【0012】
従って、本発明の基本的な概念は、オンボディセンサの少なくとも1つに対してセンサの傾斜が測定され、従って患者の身体又は患者の四肢の姿勢が検出されることができるということである。これは、以下でさらに詳細に記載されるように、1つのオンボディセンサからオフボディモニタリング装置への直接データ伝送経路とは異なるデータ伝送経路を用いる可能性をもたらす。
【0013】
本明細書で使用される"患者"という語は、人又は動物が健康であろうが病気であろうが、ボディセンサネットワークを使用する、すなわちオフボディモニタリング装置と通信するオンボディセンサを身につける、いかなる人又は動物をも意味すると理解されることに留意すべきである。
【0014】
上記で既にさらに述べた通り、オンボディセンサは好適には患者の身体の上若しくは中又はそのごく近傍に設けられる。さらに、従来のボディセンサネットワークについては、オンボディセンサはオフボディモニタリング装置へデータを伝送するだけでなく、互いにデータを共有することもできる、すなわちオンボディセンサから別のオンボディセンサへデータを伝送することもできることが好ましい。
【0015】
さらに、ボディセンサネットワークのオンボディセンサの全てが、オフボディモニタリング装置へデータを伝送するための伝送能力を持つことが好ましい。しかしながら、こうした直接伝送能力を持たない、すなわちオフボディモニタリング装置へデータを伝送するために別のオンボディセンサを常に使用する、さらなるオンボディセンサが設けられることも可能である。しかしながら、直接伝送能力のないこうしたオンボディセンサは、本発明にかかる方法が使用されるボディセンサネットワークの一部であり得るものの、以下では論じられない。
【0016】
本発明の好適な実施形態によれば、該方法は少なくとも1つのオンボディセンサの身体上位置を測定するステップをさらに有する。それに関して、身体上位置はこうしたオンボディセンサに対して測定され、それに対して傾斜もまた測定されることが特に好ましい。さらに、傾斜と身体上位置は複数のオンボディセンサに対して測定されることが特に好ましく、全てのオンボディセンサに対して測定されることが最も好ましい。
【0017】
さらに、本発明の好適な実施形態によれば、該方法は、傾斜と身体上位置が測定されている少なくとも1つのオンボディセンサと、オフボディモニタリング装置との間の直接データ伝送経路の品質を測定するステップを有し、該品質は、オンボディセンサの傾斜と身体上位置に基づいて計算される。これに関して、"直接データ伝送経路"として、中継地として別のオンボディセンサを必要とせずに各オンボディセンサからオフボディモニタリング装置へ直接データを伝送する可能性をもたらすような経路が意味される。さらに、直接データ伝送経路の品質を測定することに関して、複数の品質クラスのうちの1つに品質を分類することが特に好ましい。例えば、直接データ伝送経路の品質を"高信頼"、"中位"、又は"低信頼"と分類することが可能である。
【0018】
本発明の別の好適な実施形態によれば、該方法は、第一のオンボディセンサとオフボディモニタリング装置との間の直接データ伝送経路の品質が所定値未満である場合、別のオンボディセンサを介して第一のオンボディセンサのデータをオフボディモニタリング装置へ送ることを決定するステップをさらに有する。上記の例に関して、オンボディセンサとオフボディモニタリング装置間の直接データ伝送経路の品質が"低信頼"であると分類される場合、この経路はもう使用されず、代わりにオフボディモニタリング装置へのデータ伝送のための中継地として別のオンボディセンサを使用することが決定される。
【0019】
前述の場合にどの他のオンボディセンサを使用するかを決定するために、本発明の好適な実施形態によれば、該方法は、第一のオンボディセンサのデータを、第二のオンボディセンサを介してオフボディモニタリング装置へ送るステップをさらに有し、第二のオンボディセンサの品質は第一のオンボディセンサの品質よりも良い。一例として、第二のオンボディセンサの品質は、使用されるために少なくとも"中位"であると分類されなければならないことが決定されることができる。
【0020】
さらに、本発明の別の好適な実施形態によれば、該方法は、各々他のオンボディセンサの予想残り動作時間に基づいて他のオンボディセンサのセットから第二のオンボディセンサを選ぶステップをさらに有する。これは例えば、好適な電池式オンボディセンサの場合、電池残量のためにより長い予想残り動作時間を持つようなオンボディセンサが中継地として使用される場合、ボディセンサネットワークのより長い総実行時間が得られることを意味する。
【0021】
本発明の別の好適な実施形態によれば、該方法は、他のオンボディセンサの各々を介する各データ伝送経路のホップ、すなわちリンクの数に基づいて、他のオンボディセンサのセットから第二のオンボディセンサを選ぶステップをさらに有する。この手段は、リンク、すなわちホップの数が少ない経路が、各経路の信頼性を向上させ、全体の電力消費を最小化し、データ伝送待ち時間を削減するので、好ましい。
【0022】
さらに、本発明の好適な実施形態によれば、該方法は、オンボディセンサの傾斜によって検出される患者の姿勢に関連して、少なくとも2つの異なるデータ伝送経路の性能をモニタリング及び記憶するステップを有する。さらに、これに関して、該方法は、他のオンボディセンサの各々を有する各データ伝送経路の記憶された性能に基づいて、他のオンボディセンサのセットから第二のオンボディセンサを選ぶステップを有することが好ましい。この場合、データ伝送経路の性能は異なる方法で、例えばパケット誤り率に基づいて測定されることができる。
【0023】
さらに、上述の方法はまた、オンボディセンサのセットと少なくとも1つのオフボディモニタリング装置を持つ、患者の複数のバイタルパラメータをモニタリングするためのボディセンサネットワークによっても扱われ、オンボディセンサは各々、バイタルパラメータを検知し、検知されたバイタルパラメータに関連するデータをオフボディモニタリング装置へ伝送するように構成され、オンボディセンサの少なくとも1つは傾斜センサを有する。
【0024】
従って、本発明にかかるボディセンサネットワークは、上記のような患者のバイタルパラメータをモニタリングするための方法に関し、オンボディセンサの傾斜を測定するために、このオンボディセンサは傾斜センサを有する。既に上述した通り、そのデータをオフボディモニタリング装置へ直接伝送せず、別のオンボディセンサを介して伝送するオンボディセンサがさらにあってもよい。こうしたセンサは、存在してもよいが、以下では論じられない。
【0025】
一般的に、傾斜センサの異なる可能性がある。しかしながら本発明の好適な実施形態によれば、傾斜センサは加速度計、ジャイロメータ、又は/及び磁力計を有する。傾斜を検知するためのこれらの装置は全て、微小装置として製造されることができ、従ってオンボディセンサの中に容易に組み込まれることができる。
【0026】
さらに、本発明の好適な実施形態によれば、オンボディセンサの少なくとも1つは、その身体上位置が中に記憶される記憶装置を有する。このようにして、各オンボディセンサの身体上位置が容易かつ信頼できる方法で測定されることができる。
【0027】
さらに、本発明の好適な実施形態によれば、≧2GHzのオンボディセンサとオフボディ通信装置間の無線通信のための通信周波数が提供される。上記でさらに記載した通り、この周波数範囲は、ライセンスコスト、データ伝送速度、及びアンテナサイズの点で適しているため好ましく、後者は特に装着に便利なオンボディセンサにとって関連性がある。
【0028】
結果として、本発明は、上記でさらに記載された受動的及び予防的方法などの他の方法の重要な欠点なく、患者の身体によって生じるRF減衰によって引き起こされるBSN性能問題を最小化する可能性をもたらす。本発明の好適な実施形態によれば、これは、患者の姿勢及び両装置の身体上位置に基づいて別のBSN装置を介してBSN装置のデータを送ることにある、予測的方法を用いて実現される。この場合、従って装置データの経路は、装置と他の近隣装置間の無線リンクの品質の評価の結果としてではなく、身体姿勢に強く関連する身体上の装置位置及びその傾斜の結果として、決定される。こうした測定基準は、突然の通信障害に対する無線リンクの脆弱性を明らかにし、いかなる劣化が起こる前にどのリンクが最も信頼できるかを決定する権限をBSNに与える。
【0029】
身体上位置情報は、好適にはBSN装置、例えば胸部ECGセンサ又は耳SpO2センサに含まれる機能性記述から推論される。最も実用的な場合、BSN装置の機能性はそれが装着されている身体の点を示す。傾斜情報は好適には、好適にはBSN装置に内蔵される傾斜センサの出力信号を処理する既存アルゴリズムを用いて得られる。
【0030】
提案された解決法は、BSN装置、すなわちセンサ上で局所的に得られる傾斜情報を用いる。そのため、これらの装置は好適には傾斜感受性ハードウェア、例えば3D加速度計チップ、及び傾斜計算ソフトウェアを有する。こうしたセンサは、サイズ、処理能力及び電力消費の点で実現可能であることが証明されている。
【0031】
本発明は、BSNの信頼性を向上させる可能性をもたらし、その性能が姿勢変化によって生じるRF減衰にあまり依存しないようにする。従って、BSNの最も重要な問題がこのようにして対処される。他の既存の方法とは対照的に、本発明は通信障害が起こる前にそれを防ぐ。さらに、本発明はパケット再送、ダイナミックリンクアダプテーションなどといった他の方法と同時に使用されることができる。
【0032】
本発明のこれらの及び他の態様は、以降に記載の実施形態から明らかとなり、それを参照して解明される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態にかかる患者のバイタルパラメータをモニタリングするためのボディセンサネットワークの略図を示す。
【図2】かかるボディセンサネットワークのオンボディセンサをより詳細に概略的に示す。
【図3】ベッドにうつ伏せに横たわっている患者のための、本発明の一実施形態にかかる3クラスリンク分類システムを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1から、本発明の一実施形態にかかる患者10の複数のバイタルパラメータをモニタリングするためのボディセンサネットワークが見られる。このネットワークは、患者10によって装着されるオンボディセンサ1のセットと、オフボディモニタリング装置2を有し、オンボディセンサ1は各々、ECG信号又は血圧信号などのバイタルパラメータを検知し、各バイタルパラメータに関連するデータを、無線接続4を介してオフボディモニタリング装置2へ伝送するように構成される。
【0035】
さらに、図2から見られる通り、オンボディセンサ1は各々、バイタルパラメータを実際に検知するための検知ユニット5と、好適には加速度計、ジャイロメータ、又は/及び磁力計である傾斜センサ3を有する。さらに、オンボディセンサ1は各々、中にその各々の身体上位置、すなわちECGセンサの場合は"胸部"が記憶される記憶装置6を有する。オンボディセンサ1は各々、オフボディモニタリング装置2へ、又は別のオンボディセンサ1へデータを送信するため、及び別のオンボディセンサ1からデータを受信するための、送信器/受信器ユニット7も有する。
【0036】
本発明のこの実施形態によれば、オンボディセンサ1の各々の傾斜と身体上位置に基づいて、オンボディセンサ1の各々とオフボディモニタリング装置2との間の直接データ伝送経路の品質が計算される。このようにして、各経路でデータを実際に送信することなく、各直接データ伝送経路の品質が測定され、"高信頼"、"中位"、又は"低信頼"であると分類される。オンボディセンサ1とオフボディモニタリング装置2間のデータ伝送経路の品質が所定値未満であることが測定される場合、例えば本発明の実施形態に従って少なくとも"中位"であると測定されない場合、不十分な直接データ伝送経路を持つオンボディセンサ1のデータを、より良い品質の直接データ伝送経路を持つ別のオンボディセンサ1を介して、オフボディモニタリング装置2へ送ることが決定される。
【0037】
従って、本発明の好適な実施形態にかかるBSNのオンボディセンサ1はその身体上位置とその傾斜を知ることができる。前述の通り、オンボディセンサ1は好適には、例えばECGの場合は"胸部"、SpO2の場合は"指"、…など、オンボディセンサ1の各記憶装置6に記憶される、その局所的に利用可能な機能性情報から、その位置を推定する。さらに、オンボディセンサ1はその傾斜を得るために、その局所傾斜感受性ハードウェア、例えば加速度計、ジャイロメータ、又は磁力計の信号を解釈し、これはそれらの異なる無線リンクのLOSを身体がどの程度遮っているはずであるかを示す。
【0038】
本明細書に記載の本発明の実施形態によれば、オンボディセンサ1は、傾斜センサ3として小さな低電力3D加速度計チップを特徴とし、これは、地面に対するオフボディモニタリング装置2の傾斜がわかっているという条件で、地面に対する、従ってオフボディモニタリング装置2に対するオンボディセンサ1の傾斜を得ることを可能にする。地面に対する加速度計の傾斜の情報を含む、3つの加速度計信号のDC成分が解析される。重力は地面に向かって等加速度を生じるので、その加速度計の3軸上の投影は、これらの軸、従って各オンボディセンサ1の傾斜を明らかにする。このようにして、患者10が仰向けに横たわっているとき、胸部装着式のオンボディセンサ1はそれが上を向いていることを検出する。一方、患者10がベッドで寝返りを打ち、うつ伏せになる場合、同じオンボディセンサ1はそれが下を向いていることを検出する。正確な傾斜計算のために、BSNセットアップ中にオンボディセンサ1を較正することが好ましく、これは、患者が所定の姿勢、例えば立位を保ちながら、患者行動、例えばボタンを押すことを要してなされ得る。
【0039】
オンボディセンサ1はそれらの位置及び傾斜情報を互いに共有する。これは患者の姿勢をより良く推定することを可能にし、BSN内の代替データ伝送経路の数、及びそれらの通信障害に対する脆弱性についての情報を与える。図3は上述の3クラス分類システムを示し、ここでは以下に従って、ベッド8にうつ伏せに横たわっている患者10に対してリンクが"高信頼"(実線)、"中位"(破線)、又は"低信頼"(点線)と分類される。
【0040】
リンクa:オンボディセンサ1aは胸部装着式装置であり、下を向いていることを検出する。従って、患者10はうつ伏せに横たわっていることが検出され、これはオンボディセンサ1aを発端とする全てのオフボディリンク、すなわちリンクaを低信頼とする。クリーピング波効果のおかげで、オンボディセンサ1aを発端とする、各々オンボディセンサ1b及び1cへのオンボディリンク、すなわちリンクd及びリンクeは、リンクaよりは現在の身体姿勢による影響が少ない。
【0041】
リンクb及びリンクc:オンボディセンサ1b及びオンボディセンサ1cはともに、それらが腕装着式であることを検出する。その位置において、腕による身体被覆は、オンボディセンサ1b、1cの傾斜とは関係なく、十分に支障があるとは見なされない。従って両オンボディセンサはそれらのオフボディリンク、すなわちリンクb及びリンクcを、高信頼と評価する。
【0042】
リンクd:オンボディセンサ1aは、オンボディセンサ1bが上腕に位置する装置であることを検出する。いかなる姿勢においても胸部と上腕の間が接近していることにより、オンボディセンサ1aはクリーピング波が信頼できるリンクを維持するために十分であると見なし、従ってオンボディセンサ1bの傾斜とは関係なく、リンクdを高信頼と評価する。
【0043】
リンクe:オンボディセンサ1aは、オンボディセンサ1cが手首に位置する装置であることを検出する。異なる姿勢にわたる手首の可動性により、オンボディセンサ1aはクリーピング波が信頼できるリンクを維持するために十分であるかもしれないと見なし、従ってオンボディセンサ1cの傾斜とは関係なく、リンクeを中位と評価する。
【0044】
リンクf:オンボディセンサ1b及びオンボディセンサ1cは、それらがともに腕装着式装置であることを検出する。それらの近接性及び腕による限られた被覆のために、すなわち、ユーザが腕を体幹の下にして横たわっているとは考えにくいため、リンクfは高信頼と評価される。
【0045】
前述のリンク分類を考えると、オンボディセンサ1b及びオンボディセンサ1cはそれらのデータをオフボディモニタリング装置2へ直接送信することを決定する。リンクd及びリンクbは高信頼と見なされるので、オンボディセンサ1aはそのデータをオンボディセンサ1bを介して送信することを決定する。従って、オンボディセンサ1a、1b、1cは、代替経路の一部である全リンクの評価に主に基づいて、それらのデータを送信する装置を変更することを決定する。
【0046】
同じリンク評価を持つ2つ以上の代替経路が見つかる場合、装置はそれらの1つをランダムに、又は次のような任意の追加測定基準を用いて選び得る。
予想残り動作時間、又は、同等に、データ経路に関与する装置の充電残量。長い残り動作時間を持つ装置は、好適には他の装置のデータを転送するために選ばれるものとする。そのため、各装置は好適にはその電池負荷及び/又は電力消費プロファイルをモニタリングする。
ホップの最小数、これはリンクすなわちホップの数が少ない経路が好まれることを意味する。少数のホップは経路の信頼性を向上させ、全体の電力消費を最小化し、データ伝送待ち時間を削減する。
性能履歴、これは同様の代替経路間の決定が、患者の姿勢に関連する全BSNリンクの性能履歴に基づいてなされ得ることを意味する。これはBSN装置がそれらの異なるリンクの性能をモニタリングして記憶するとき、例えばパケット誤り率に基づくときに好まれる。
【0047】
身体減衰問題を最小化する本発明の効果は、正確な測距又は/及び位置情報で増強されることができる。センチメートルスケールの測距又は/及び位置決めは、BSNが無線データ伝送のためにUWB(超広帯域)技術を使用するときに利用可能であり得る。この実施形態によれば、オフボディモニタリング装置、例えばベッドサイド患者モニタが非常に近いことを検出する装置は、上記のような姿勢に基づくルーティングを無視してオフボディモニタリング装置へ直接そのデータを送信することを決定し得る。患者モニタは一般的には患者の身体から少なくとも50cmから100cm離れているが、この距離は、患者搬送中に患者モニタが患者又はそのベッドに取り付けられる場合は数センチメートルになり得る。正確な測距又は/及び位置情報はまた、オンボディリンクの障害脆弱性分類も精緻化し、従って最適経路の選択を可能にし得る。
【0048】
本明細書に記載の姿勢依存ルーティングは、好適には"ルーティングマネージャ"と呼ばれ得るソフトウェアコンポーネントとして実装される。ルーティングマネージャが実装される通信スタック層に応じて、以下の実装オプションが好まれる。
【0049】
これに関して、一実施形態は"アプリケーションレベル実装"である。ルーティングマネージャは通信スタックの上位のアプリケーションとして実装される。これは装置のタイプ、すなわちその身体上の配置、及びその地面に対する傾斜を発見するために他のローカルアプリケーションとインターフェースをとる。同じ情報はそれらの遠隔アプリケーションから他のBSN装置についても読み出される。最終的に、ルーティングマネージャはまた、そのルーティングテーブルを管理するネットワーキング(NWK)層とも、直接又は管理ツールを介してインターフェースをとる。
【0050】
別の実施形態は"層間実装(cross layer implementation)"である。この場合、ルーティングマネージャはネットワーキング(NWK)層内に実装され、その主要タスクはデータルーティングを扱うことである。前の実装と同様に、これもまたローカル装置と遠隔装置のアプリケーション層において利用可能な情報を使用する。ルートマネージャは機能するために他のスタック層からの情報を必要とするため、この実装は層間と名付けられる。
【0051】
本発明は図面及び前述の説明において詳細に図示され記載されているが、かかる図示及び記載は説明又は例示であって限定とは見なされないものである。本発明は開示された実施形態に限定されない。
【0052】
開示された実施形態への他の変更は、図面、開示、及び添付の請求項の考察から、請求された発明を実践する上で当業者によって理解され、もたらされることができる。請求項において、"有する"という語は他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞"a"又は"an"は複数を除外しない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。請求項における任意の参照符号はその範囲を限定するものと解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オンボディセンサのセットと少なくとも1つのオフボディモニタリング装置を持つボディセンサネットワーク用いて患者の複数のバイタルパラメータをモニタリングする方法であって、
各オンボディセンサを用いて、バイタルパラメータを検知し、前記検知されたバイタルパラメータに関連するデータを前記オフボディモニタリング装置へ伝送するステップと、
前記オンボディセンサの少なくとも1つに対して、このオンボディセンサの前記オフボディモニタリング装置に対する傾斜を測定するステップとを有する方法。
【請求項2】
少なくとも1つのオンボディセンサの身体上位置を測定するステップをさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記傾斜及び前記身体上位置が測定されている少なくとも1つのオンボディセンサと、前記オフボディモニタリング装置との間の直接データ伝送経路の品質を測定するステップをさらに有し、前記品質は前記オンボディセンサの前記傾斜及び前記身体上位置に基づいて計算される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第一のオンボディセンサと前記オフボディモニタリング装置との間の直接データ伝送経路の品質が所定値未満である場合、前記第一のオンボディセンサのデータを別のオンボディセンサを介して前記オフボディモニタリング装置へ送ることを決定するステップをさらに有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第一のオンボディセンサのデータを第二のオンボディセンサを介して前記オフボディモニタリング装置へ送るステップをさらに有し、前記第二オンボディセンサの品質は前記第一オンボディセンサの品質よりも良い、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
各々他のオンボディセンサの予想残り動作時間に基づいて、他のオンボディセンサのセットから前記第二のオンボディセンサを選ぶステップをさらに有する、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
他のオンボディセンサの各々を介する各データ伝送経路のホップの数に基づいて、他のオンボディセンサのセットから前記第二のオンボディセンサを選ぶステップをさらに有する、請求項4乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記オンボディセンサの傾斜によって検出される前記患者の姿勢に関連して少なくとも2つの異なるデータ伝送経路の性能をモニタリング及び記憶するステップをさらに有する、請求項4乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
他のオンボディセンサの各々を有する各データ伝送経路の前記記憶された性能に基づいて他のオンボディセンサのセットから前記第二のオンボディセンサを選ぶステップをさらに有する、請求項4乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
患者の複数のバイタルパラメータをモニタリングするためのボディセンサネットワークであって、
オンボディセンサのセットと少なくとも1つのオフボディモニタリング装置を持ち、
前記オンボディセンサが各々、バイタルパラメータを検知し、前記検知されたバイタルパラメータに関連するデータを前記オフボディモニタリング装置へ伝送し、
前記オンボディセンサの少なくとも1つが傾斜センサを有する、ボディセンサネットワーク。
【請求項11】
前記傾斜センサが加速度計、ジャイロメータ、又は/及び磁力計を有する、請求項10に記載のボディセンサネットワーク。
【請求項12】
前記オンボディセンサの少なくとも1つが、その身体上位置が中に記憶される記憶装置を有する、請求項10又は11に記載のボディセンサネットワーク。
【請求項13】
≧2GHzの前記オンボディセンサと前記オフボディ通信装置間の無線接続のための通信周波数が提供される、請求項10乃至12のいずれか一項に記載のボディセンサネットワーク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−500084(P2012−500084A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523475(P2011−523475)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【国際出願番号】PCT/IB2009/053641
【国際公開番号】WO2010/020945
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】