説明

ボディリンス組成物

【課題】
スキンケア効果、特には肌のかさつき改善効果に優れ、しっとりとしたうるおい感を付与することが可能で、しかも継続して使用することにより、肌質そのものを改善することが可能なボディリンス組成物を提供する。
【解決手段】
次の成分(A)〜(D)を含んでなるボディリンス組成物:
(A)セリシン加水分解物 0.005〜5重量%
(B)常温で液状の油 55重量%以上
(C)HLBが7〜15であるエーテル型非イオン性界面活性剤 10〜30重量%
(D)水 0.5〜10重量%。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボディリンス組成物に関する。詳しくは、スキンケアを目的として、浴室で使用するインバスタイプの化粧料組成物であって、風呂上がり前の濡れた肌に直接塗布し、すすぎ流すなどの方法で使用することにより、その優れたスキンケア効果、特には肌のかさつき改善効果により、肌質そのものを改善し、しっとりとしたうるおいのある肌を得ることが可能な、ボディリンス組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、入浴時のスキンケア、特には、肌のモイスチュアバランス(水分と脂質と保湿成分のバランス)を整えかさつきを改善することを目的として、保湿剤や油分などを配合した入浴剤を含む温湯に浸かることにより、身体全体を斑なくケアする方法が行われている。入浴剤の剤型としては、粉末、顆粒、錠剤、液状(水性、油性)などがあるが、そのいずれにおいても肌のかさつき改善効果は十分でなく、また十分な効果が得られるまで保湿剤や油分などを配合すると、べたつきやぬるつきを生じて使用感が劣るという問題や、浴槽を汚すという問題があり、改善が望まれていた。
【0003】
一方、近年、風呂上がり前の濡れた肌に直接塗布し、すすぎ流すことによりスキンケア効果を狙ったボディリンスなる製品が提案されている(例えば、特許文献1〜3)。入浴剤同様、肌のかさつき改善を目的に、保湿剤や油分を配合し得るが、その使用法から明らかなように、保湿剤や油分が肌に過剰に残留することがなく、したがって、べたつきやぬるつきを生じることがない。さらに、浴槽の温湯に浸からず、シャワーだけで入浴を済ませる場合にも使用可能であるという利点がある。しかしながら、ボディリンスの多くは水中油型乳化物であり、肌に対して好ましい量の保湿剤や油分までも流し落されてしまうため、十分な効果は得られないでいた。
【0004】
これに対し、液状油をベースに界面活性剤を配合した、自己乳化型液状油性ボディリンスも提案されている(例えば、特許文献4〜6)。これらは、水分を全く配合しないか、あるいは少量配合するもので(このとき、水は、液状油中に可溶化あるいは微細乳化された状態で存在する)、透明の外観を有している。水と接触させることにより僅かな撹拌で転相が起こり、水中油型の乳化物を生成して水を白濁させる。このようなボディリンスを肌に塗布し、すすぎ流すことにより、適当量の油分が肌に残留するため、肌へのエモリエント効果(肌からの水分蒸散を防止してうるおいを保持し、皮膚を柔軟にする効果)により、肌のかさつき改善に一定の効果を発揮して、一時的にはしっとりとしたうるおい感を付与することができる。しかしながら、肌質そのものを改善する効果は持ち得なかった。また、保湿剤を配合し得るが、現に市場にあるボディリンスは肌への保湿効果が十分でなく、かさつき改善効果においても改善の余地があると考えられた。
【0005】
【特許文献1】特許第2626776号公報
【特許文献2】特許第2847190号公報
【特許文献3】特許第3610480号公報
【特許文献4】特許第3138399号公報
【特許文献5】特許第3942531号公報
【特許文献6】特開2008−37792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる現状に鑑みてなされたものであり、スキンケア効果、特には肌のかさつき改善効果に優れ、しっとりとしたうるおい感を付与することが可能で、しかも継続して使用することにより、肌質そのものを改善することが可能なボディリンス組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、次の成分(A)〜(D)を含んでなるボディリンス組成物である:
(A)セリシン加水分解物 0.005〜5重量%
(B)常温で液状の油 55重量%以上
(C)HLBが7〜15であるエーテル型非イオン性界面活性剤 10〜30重量%
(D)水 0.5〜10重量%。
【0008】
成分(A)の重量平均分子量は、1,000〜100,000であることが好ましい。
成分(B)は、流動パラフィン、ホホバ油、ローズヒップ油、パルミチン酸オクチル、2−エチルヘキサン酸セチル、イソステアリン酸コレステリルおよびトリエチルヘキサノインからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
成分(C)は、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(POE付加モル数3〜20)およびポリオキシエチレンステアリルエーテル(POE付加モル数5〜30)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0009】
前記ボディリンス組成物は、さらに、pH調整剤を含んでなることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のボディリンス組成物は、(A)セリシン加水分解物と(B)常温で液状の油を併用することにより、肌のモイスチュアバランスを整え、スキンケア、特には肌のかさつき改善に優れた効果を発揮することができる。さらに、(C)HLBが7〜15であるエーテル型非イオン性界面活性剤を併用することにより、肌表面で瞬時に自己乳化し、(A)セリシン加水分解物(水に溶解して存在する)および(B)液状油の被膜性が向上し、肌のかさつき改善効果をより一層発揮することができる。本発明のボディリンス組成物を使用することにより、肌に、べたつきのない、しっとりとしたうるおい感を付与することができる。しかも、継続して使用することにより、肌質そのものを改善し、しっとりとしたうるおいのある肌を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のボディリンス組成物は、(A)セリシン加水分解物と、(B)常温で液状の油と、(C)HLBが7〜15であるエーテル型非イオン性界面活性剤と、(D)水とを、それぞれ特定量含んでなるものである。かかる組成のボディリンス組成物は、透明で美麗な外観を有する液状油性組成物で、自己乳化性に優れている。
【0012】
本発明において用いられる(A)成分のセリシン加水分解物は、繭糸に含まれる天然の絹タンパク質セリシンに由来するものである。セリシンのアミノ酸組成は、肌の角質層の水分調整にかかわる天然保湿因子(NMF:natural moisturizing factor)のアミノ酸組成と類似しており、特には親水性に富むセリンを多く(約30モル%)含んでいる。かかるセリシンは、保湿剤として優位であり、角質層の水和状態を改善すべく好ましく作用して、肌のかさつきを改善する。さらに、天然保湿因子のアミノ酸組成と類似のアミノ酸組成を有するセリシンは、肌に対して親和性があるため、肌表面に選択的に吸着、しかも造膜性に優れるため、肌表面を覆う被膜を形成し、より効果的に作用することができる。そしてさらに、肌へのエモリエント効果を有する(B)液状油と併用することにより、肌のモイスチュアバランスを相乗的に整え、肌のかさつき改善に優れた効果を発揮することができる。
【0013】
かかるセリシンは、蚕繭や生糸などから、加水分解物として容易に入手可能である。すなわち、本発明において用いられるセリシン加水分解物は、蚕繭、生糸などの原料を、例えば、塩酸、硫酸、リン酸などを使用した酸加水分解法、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどを使用したアルカリ加水分解法、または、微生物や植物由来のプロテアーゼを使用した酵素分解法に付すことにより、原料中のセリシンを部分加水分解して溶出し、得ることができる。これを公知のタンパク質分離精製手法に従って精製することによって、高純度のセリシン加水分解物の水溶液を得ることができる。さらに、熱風乾燥、減圧乾燥、または凍結乾燥などの処理に付して乾燥させ、固体としてもよい。
【0014】
セリシン加水分解物の重量平均分子量は、1,000〜100,000であることが好ましく、より好ましくは5,000〜50,000である。重量平均分子量が1,000未満であると、肌への保湿効果、およびかさつき改善効果が十分に得られない虞がある。重量平均分子量が100,000を超えると、水溶性が低下することにより、経時的にセリシン加水分解物が析出するなど、組成物の安定性が低下する虞がある。
【0015】
セリシン加水分解物の含有量は、組成物全量に対して0.005〜5重量%であることが求められ、好ましくは0.01〜5重量%である。含有量が0.005重量%未満であると、肌への保湿効果、およびかさつき改善効果が十分に得られない虞がある。含有量が5重量%を超えても、それ以上の効果は期待できず、経済的にも効率が悪い。
【0016】
本発明において用いられる(B)成分の常温で液状の油は、肌へのエモリエント効果により、肌のかさつき改善に寄与するものである。そして、肌への保湿効果を有する(A)セリシン加水分解物と併用することにより、肌のモイスチュアバランスを相乗的に整え、肌のかさつき改善に優れた効果を発揮することができる。
【0017】
本発明において用いられる液状油は、常温(15〜25℃)でその性状を満足する限り特に限定されるものでなく、化粧料に通常用いられる油、例えば、炭化水素油、油脂、エステル油、脂肪酸、高級アルコールなどを用いることができる。炭化水素油として具体的には、流動パラフィン、スクワランなどを挙げることができ、油脂として具体的には、ヒマシ油、マカデミアンナッツ油、オリーブ油、アボカド油、サフラワー油、サンフラワー油、ホホバ油、ローズヒップ油などを挙げることができ、エステル油として具体的には、酢酸ラノリン、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、ステアリン酸イソセチル、ペンタエリトリット脂肪酸エステル、ジカプリン酸プロピレングリコール、イソステアリン酸コレステリル、トリエチルヘキサノイン、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリカプリン酸グリセリルなどを挙げることができ、脂肪酸として具体的には、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などを挙げることができ、高級アルコールとして具体的には、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノールなどを挙げることができる。さらに、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーン油、パーフルオロデカンなどのフッ素系油も使用可能である。これらは1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、効果の点から、流動パラフィン、ホホバ油、ローズヒップ油、パルミチン酸オクチル、2−エチルヘキサン酸セチル、イソステアリン酸コレステリル、トリエチルヘキサノインが好ましく、流動パラフィン、イソステアリン酸コレステリルがより好ましい。
【0018】
液状油の含有量は、組成物全量を100重量%にする量であり、55重量%以上であることが求められ、好ましくは60〜90重量%である。下限の55重量%は、他の成分の含有量から必然的に設定されるとともに、またそれ未満であると、肌へのエモリエント効果、およびかさつき改善効果が十分に得られない虞がある。
【0019】
本発明において用いられる(C)成分のHLBが7〜15であるエーテル型非イオン性界面活性剤は、組成物中の(D)水を(B)油に可溶化あるいは微細乳化させるとともに、使用時には、風呂上がり前の濡れた肌の水分による組成物の速やかな転相を可能とし、組成物中の(B)油を肌表面で乳化させるために用いられる。ボディリンス組成物を肌に塗布すると同時に自己乳化が起こるため、(A)セリシン加水分解物(水に溶解して存在する)および(B)液状油の被膜性が向上し、肌のかさつき改善に優れた効果をより一層発揮することができる。なおかつ、余分なセリシン加水分解物や液状油は流し落されるため、べたつきやぬるつきを生じることがない。
【0020】
本発明においては、乳化性、可溶化性、および分散性の点から、界面活性剤として非イオン性界面活性剤が選択される。また、界面活性剤が非イオン性であると、陰イオン性であるセリシン加水分解物(マイナスに電荷している)と直接結合することがなく、したがって適当量のセリシン加水分解物を肌に残存させることができる。さらに、非イオン性界面活性剤としては、耐酸性、耐アルカリ性、および耐熱性の点から、エーテル型非イオン性界面活性剤が選択される。そしてさらに、エーテル型非イオン性界面活性剤のHLBは7〜15であることが求められる。
【0021】
ここで、HLBとは、親水性と親油性のバランスを数値で表したものであり、0〜20までの値をとり、値が小さいほど親油性が高く、値が大きいほど親水性が高いことを意味する。HLBが7未満であると、水を油に可溶化あるいは微細乳化させることができず、組成物の安定性が低下したり、自己乳化性が不十分となったりする虞がある。HLBが15を超えると、基剤である液状油との相溶性が低く、組成物の安定性が低下する虞がある。エーテル型非イオン性界面活性剤のHLBが上記範囲内であることにより、透明で美麗な外観を有し、包水力が強く、自己乳化性に優れた液状油性組成物となる。HLBは実験的に測定されるほか、計算によっても算出可能である。HLBの算出法としては、アトラス法、グリフィン法、デイビス法、川上法などが知られている。本発明においてHLBの決定法は特に限定されるものはなく、いずれかの方法によればよい。
【0022】
HLBが7〜15であるエーテル型非イオン性界面活性剤として具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(POE付加モル数3〜20)、ポリオキシエチレンセチルエーテル(POE付加モル数5〜30)、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(POE付加モル数5〜30)、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(POE付加モル数5〜23)、ポリオキシエチレンヘキシルデシルエーテル(POE付加モル数10〜30)、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル(POE付加モル数5〜25)、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル(POE付加モル数10〜25)、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル(POE付加モル数5〜30)、ポリオキシエチレンデシルペンタデシルエーテル(POE付加モル数10〜30)、ポリオキシエチレンデシルテトラデシルエーテル(POE付加モル数10〜25)、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル(POE付加モル数5〜30)、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンデシルエーテル(POE付加モル数3〜30)などを挙げることができる。これらは1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。特に、粘度や比重などの性質が異なる2種以上の液状油を組み合わせて用いる場合には、それに応じた2種以上の界面活性剤を組み合わせて用いることが好ましい。なかでも、使用実績が高く、安全性および安定性ともに確認されている点で、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(POE付加モル数3〜20)、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(POE付加モル数5〜30)が好ましい。
【0023】
エーテル型非イオン性界面活性剤の含有量は、組成物全量に対して10〜30重量%であることが求められ、好ましくは12〜20重量%である。含有量が10重量%未満であると、自己乳化性が不十分となり、肌のかさつき改善効果が十分に得られない虞がある。含有量が30重量%を超えると、肌表面への界面活性剤の付着量が多くなり、べたつきなど好ましくない使用感を生じる虞がある。
【0024】
本発明において用いられる(D)成分の水は、(A)セリシン加水分解物、および必要に応じて用いられる任意の水性成分を溶解するために用いられる。その含有量は、組成物全量に対して0.5〜10重量%であることが求められ、好ましくは1〜8重量%である。含有量が0.5重量%未満であると、所定量のセリシン加水分解物を溶解することができず、セリシン加水分解物が析出するなど、組成物の安定性が低下する虞がある。含有量が10重量%を超えると、透明性が得られず、外観が損なわれる虞がある。
【0025】
本発明のボディリンス組成物は、以上に説明した(A)セリシン加水分解物、(B)常温で液状の油、(C)HLBが7〜15であるエーテル型非イオン性界面活性剤、および(D)水を必須成分として含んでなるものであるが、本発明の効果を損なわない範囲内で必要に応じて、通常の化粧料などに用いられる他の成分、例えば、イオン性界面活性剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、金属封鎖剤、保湿剤、防腐剤、香料、各種美容成分、粉体、油性増粘剤などを適宜含有させてもよい。
【0026】
本発明のボディリンス組成物は、公知の方法により調製することができる。例えば、油性成分と水性成分とにわけ、それぞれを適温で溶解後、水性成分を油性成分に徐々に添加して混合、均一化し、しかる後に冷却すればよい。
【0027】
かくして、本発明のボディリンス組成物を得ることができる。組成物中、水は、エーテル型非イオン性界面活性剤によって液状油中に可溶化あるいは微細乳化された状態で存在する。形成される逆ミセルが極めて微細であるため、透明性が高く、美観的に優れた液状組成物となる。また、自己乳化性を有するため、それを水と接触させることにより、僅かな撹拌で転相が起こり、水中油型の乳化物を生成して水を白濁させる。
【0028】
かかる組成物は、浴室で使用するインバスタイプの化粧料、すなわちボディリンスとして極めて有用である。その使用方法は、典型的には、風呂上がり前の濡れた清潔な肌に直接塗布し、すすぎ流すというものである。この際、ボディリンス組成物の使用量は、塗布する範囲によっても異なるが、全身に対し、1〜5mlであることが好ましく、より好ましくは1.5〜2.5mlである。また、ボディリンス組成物を温湯で希釈して、風呂上がり前の肌にかけるなどの方法で使用してもよい。
【0029】
なお、本発明のボディリンス組成物に多量の水を加えて生成される水中油型乳化物のpHは、4〜7であることが好ましく、より好ましくは4〜5である。pHがこの範囲内であると、洗浄料によりアルカリ側に傾いた肌表面のpHを、健康な肌表面のpHである弱酸性(4.5〜6.5)に戻すことができ、肌に対する負担を軽減させることができる。また、原料の品質バラツキに影響されることなく組成物の品質を安定に保つためにも、pH調整剤あるいはpH緩衝剤を含有させておくことが好ましい。かかるpH調整剤あるいはpH緩衝剤は特に限定されるものでなく、例えば、乳酸、アスコルビン酸、コハク酸、フマル酸、L−リンゴ酸、DL−リンゴ酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、リン酸、メタリン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸一ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、DL−酒石酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸一水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、L−酒石酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、エタノールアミン、トリエタノールアミンなどを挙げることができる。なかでも、使用実績が高く、安全性および安定性ともに確認されている点で、クエン酸ナトリウム、クエン酸一ナトリウムが好ましい。
【0030】
本発明のボディリンス組成物は、肌への保湿効果およびエモリエント効果に優れ、もって、肌のかさつき改善に顕著に優れた効果を発揮することができる。本発明のボディリンス組成物は、使用後の肌に、べたつきのない、しっとりとしたうるおい感を付与することができる。しかも、継続して使用することにより、肌質そのものを改善し、しっとりとしたうるおいのある肌を得ることができる。これは、肌に対して日々供給されるセリシン加水分解物が、角質層の水和状態を改善し、肌そのものの保湿能力を回復するためと考えられる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0032】
1.実施例1〜6および比較例1〜6
(1)セリシン加水分解物の調製
生糸からなる絹織物を、0.2重量%炭酸ナトリウム(pH11〜12)で95℃にて2時間処理し、セリシンを部分加水分解して抽出した。得られた抽出液を平均孔径0.2μmのフィルターで濾過し、凝集物を除去した後、濾液を逆浸透膜により脱塩し、濃度約0.2重量%の無色透明のセリシン加水分解物精製液を得た。この精製液を、エバポレーターを用いて濃度約2重量%まで濃縮した後、凍結乾燥して、セリシン加水分解物の粉末を得た。このセリシン加水分解物の分子量分布は5,000〜70,000、平均分子量は30,000で、アミノ酸組成としてセリンを35モル%含有していた。
【0033】
(2)ボディリンス組成物の調製
前述のセリシン加水分解物を用いて、表1および表2に示す処方の実施例1〜6および比較例1〜6の組成物を調製した。また、セリシン加水分解物以外の成分については、医薬品用、医薬部外品用、化粧品用などとして市販されているものを用いた。
調製は、油性成分と水性成分を別々に溶解後、水性成分を油性成分に添加して、混合、均一化することにより行った。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
(3)肌に対する使用試験
専門パネラー3名および肌のかさつきを日常的に感じる成人パネラー3名の計6名を1群とする12群に、実施例1〜6および比較例1〜6の組成物をそれぞれ1種、風呂上がり前の濡れた肌に直接塗布し、すすぎ流す方法で、1日1回、2週間継続して使用させ、以下の項目について評価した。
【0037】
a.保湿感(しっとりとしたうるおい感)
初日使用後の保湿感について、使用前と比較して良い、変わらない、悪い、の3段階で官能評価し、以下の基準に従って判定した。
<判定基準>
◎:パネラー6名中5〜6名が良いと認めた
○:パネラー6名中3〜4名が良いと認めた
△:パネラー6名中1〜2名が良いと認めた
×:パネラー6名中1名も良いと認めなかった
さらに、2週間継続使用後の保湿感について、前記同様に官能評価し、判定した。結果は、表1および表2に示される通りであった。
なお、官能評価は、初日使用後および2週間継続使用後のいずれも、使用から約12時間後に行った。
【0038】
b.角層水分含有量
使用前および2週間継続使用後の角層水分含有量を、SKICON−200(IBS社製)を用い、室温23℃、湿度55%の恒温恒湿室内にて測定し、下記の基準に従って判定した。結果は、表1および表2に示される通りであった。
<判定基準>
◎:パネラー6名のコンダクタンス上昇率の平均が40%以上
○:パネラー6名のコンダクタンス上昇率の平均が25%以上、40%未満
△:パネラー6名のコンダクタンス上昇率の平均が10%以上、25%未満
×:パネラー6名のコンダクタンス上昇率の平均が10%未満
なお、2週間継続使用後の角層水分含有量の測定は、使用から約12時間後に行った。
【0039】
c.経皮水分蒸散量(TEWL)
使用前および2週間継続使用後の経皮水分蒸散量を、テヴァメーターTM210(インテグラル社製)を用い、室温23℃、湿度55%の恒温恒湿室内にて測定し、下記の基準に従って判定した。結果は、表1および表2に示される通りであった。
<判定基準>
◎:パネラー6名の水分蒸散量低下率の平均が40%以上
○:パネラー6名の水分蒸散量低下率の平均が25%以上、40%未満
△:パネラー6名の水分蒸散量低下率の平均が10%以上、25%未満
×:パネラー6名の水分蒸散量低下率の平均が10%未満
なお、2週間継続使用後の経皮水分蒸散量の測定は、使用から約12時間後に行った。
【0040】
表1および表2から明らかなように、実施例1〜6の組成物では、すべての項目において肌のかさつき改善結果が認められたのに対し、比較例1〜6の組成物では、効果が認められなかった。
また、実施例1〜6および比較例1〜6の組成物を温湯で希釈して、風呂上がり前の肌にかける方法で使用試験を実施した場合も、同様の結果であった。
【0041】
2.実施例7および比較例7
下記処方の実施例7および比較例7の組成物を調製し、前述の1(3)と同様の方法にて使用試験を実施した。比較例7は実施例7のイソステアリン酸コレステリルとセリシンを水に代替した処方とした。その結果、実施例7では肌のかさつき改善効果が認められ、比較例7では効果が認められなかった。
【0042】
実施例7
(1)流動パラフィン 約70(重量%)
(2)イソステアリン酸コレステリル 3
(3)ホホバ油 0.5
(4)ローズヒップ油 0.5
(5)POE(4)ラウリルエーテル(HLB:9.6) 20
(6)セリシン 1
(7)ローヤルゼリーエキス 0.1
(8)水溶性コラーゲン 0.1
(9)BHT 0.1
(10)精製水 2
(11)エタノール 適量
(12)パラベン 適量
(13)クエン酸 適量
(14)クエン酸ナトリウム 適量
【0043】
なお、実施例1〜7について上記使用試験期間中に皮膚刺激性を訴えたパネラーはいなかった。また、分離や凝集などの状態変化は見られず、安全性、安定性が良いことが示された。
比較例1〜7については上記使用試験期間中に皮膚刺激性を訴えたパネラーはおらず、安全性は示された。しかし、分離や凝集などの状態変化が見られるなど、組成物としての安定性を欠くものがあった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(D)を含んでなるボディリンス組成物:
(A)セリシン加水分解物 0.005〜5重量%
(B)常温で液状の油 55重量%以上
(C)HLBが7〜15であるエーテル型非イオン性界面活性剤 10〜30重量%
(D)水 0.5〜10重量%。
【請求項2】
成分(A)の重量平均分子量が1,000〜100,000である、請求項1に記載のボディリンス組成物。
【請求項3】
成分(B)が、流動パラフィン、ホホバ油、ローズヒップ油、パルミチン酸オクチル、2−エチルヘキサン酸セチル、イソステアリン酸コレステリルおよびトリエチルヘキサノインからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載のボディリンス組成物。
【請求項4】
成分(C)が、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(POE付加モル数3〜20)およびポリオキシエチレンステアリルエーテル(POE付加モル数5〜30)からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜3いずれか一項に記載のボディリンス組成物。
【請求項5】
さらに、pH調整剤を含んでなる、請求項1〜4いずれか一項に記載のボディリンス組成物。

【公開番号】特開2010−64970(P2010−64970A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231001(P2008−231001)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】