説明

ボビン用樹脂成形材料

【課題】耐トラッキング性を向上させる。
【解決手段】本発明は、ビス(2−オキサゾリン)化合物由来の構造単位を含み、分子内にアミド結合を有する共重合体を含有する、ボビン用樹脂成形材料、及び、これを成形してなるトランスボビンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボビン用樹脂成形材料に関する。
【背景技術】
【0002】
トランスはあらゆる種類の電気製品に使用されているが、近年はパソコン、携帯電話の普及に伴い急激にその市場は拡大している。テレビを中心とした家電製品には比較的大型のトランスが使用されており、ボビン素材としてはフェノール樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)の成形材料が使用されている。また、通信機器を始めとしたチップ化したトランスを使用する製品群においては、ボビン素材としてフェノール樹脂、LCP(全芳香族ポリエステル樹脂、通称、液晶ポリマー)の成形材料等が使用されている。ここで、フェノール樹脂は耐熱性、低反り性が、PET、PBT、LCPはボビンのツバ強度が優れていることが特徴である。トランスボビン用フェノール樹脂成形材料としては、例えば、特許文献1に記載のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−217815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年の機器の小型化、集積化の傾向により、電気・電子部品自体も薄肉小型化している。そのため、絶縁距離が短くなり、成形品の高度な耐トラッキング性が求められている。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、耐トラッキング性を向上させたボビン用樹脂成形材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、ビス(2−オキサゾリン)化合物由来の構造単位を含み、分子内にアミド結合を有する共重合体を含有する、ボビン用樹脂成形材料が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、上記のボビン用樹脂成形材料を成形してなるトランスボビンが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ビス(2−オキサゾリン)化合物由来の構造単位を含むとともに、分子内にアミド結合を有する共重合体を含有するため、これを用いた成型品の耐トラッキング性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、説明する。
本発明のボビン用樹脂成形材料は、ビス(2−オキサゾリン)化合物由来の構造単位を含み、分子内にアミド結合を有する共重合体を含有するものである。本発明において、該共重合体に含まれるアミド結合には、少なくとも、(A)ビス(2−オキサゾリン)化合物の2−オキサゾリン環が開環して形成されるアミド結合が含まれる。
【0010】
本発明において、(A)ビス(2−オキサゾリン)化合物としては、式(1)記載のものがある。
【0011】
【化1】

【0012】
〔式(1)中、Rは炭素間結合又は2価の炭化水素基を示し、R、R、R及びRはそれぞれ水素、アルキル基又はアリール基を示す。〕
【0013】
式(1)中Rが2価の炭化水素基のとき、2価の炭化水素基の具体例として、アルキレン基、シクロアルキレン基又はアリーレン基が挙げられる。
【0014】
式(1)で示すビス(2−オキサゾリン)化合物の具体例として、Rが炭素間結合のとき、例えば、2,2'−ビス(2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(5−メチル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(5,5'−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4,4,4',4'−テトラメチル−2−オキサゾリン)等を挙げることができる。また、式(1)で示すビス(2−オキサゾリン)化合物において、Rが2価の炭化水素基であるときは、例えば、1,2−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)エタン、1,4−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ブタン、1,6−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ヘキサン、1,8−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)オクタン、1,4−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)シクロヘキサン、1,2−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン、1,3−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン、1,4−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン、1,2−ビス(5−メチル−2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン、1,3−ビス(5−メチル−2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン、1,4−ビス(5−メチル−2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン、1,4−ビス(4,4'−ジメチル−2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン等を挙げることができる。これらは、単独で、又は二種類以上を併用して用いることができる。
【0015】
本発明においては、中でも、1,3−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン由来の構造単位を含み、分子内にアミド結合を有する共重合体が特に好ましい。
【0016】
本発明においては、式(1)で示すビス(2−オキサゾリン)化合物と共に、モノ(2−オキサゾリン)化合物を併用することができる。かかるモノ(2−オキサゾリン)化合物の具体例としては、例えば、2−メチルオキサゾリン、2,4−ジメチルオキサゾリン、2−エチルオキサゾリン、2,5−ジメチルオキサゾリン、4,5−ジメチルオキサゾリン、2−フェニル−2−オキサゾリン、2−(m−トリル)オキサゾリン、2−(p−トリル)オキサゾリン、5−メチル−2−フェニルオキサゾリン等を挙げることができる。
【0017】
本発明において、化合物(A)に共重合させる化合物は、化合物(A)のオキサゾリン環に作用してオキサゾリン環を開環し、付加重合できる反応基を有する化合物であれば特に制限されないが、好ましくは、化合物(B)として、少なくともカルボキシル基又はアミノ基を分子内に含む化合物を用いることができる。
【0018】
具体的には、化合物(B)は、下記化合物(B−1)、(B−2)及び(B−3)からなる群から選択される少なくとも一以上の化合物を含むことが好ましい。
(B−1)分子内に少なくとも2つのカルボキシル基を有する化合物
(B−2)分子内に少なくとも2つのアミノ基を有する芳香族ポリアミン
(B−3)分子内にカルボキシル基とフェノール性水酸基とを有する化合物
【0019】
本発明において用いられる化合物(B−1)としては、例えば、一般式(2)で表すジカルボン酸が挙げられる。
【0020】
HOOC−R−COOH (2)
〔式(2)中、Rは脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を示す〕
【0021】
式(2)中、Rで表される脂肪族炭化水素基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基、エイコサメチレン基などの炭素数1〜20のアルキレン基、エテニレン基、メチルエテニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基などの炭素数1〜4の低級アルケニレン基、炭素数6〜38の不飽和脂肪酸の二量体残基などが挙げられる。式(2)中のRが脂肪族炭化水素基であるジカルボン酸の具体例としては、例えばマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンニ酸、エイコサンニ酸などの脂肪族飽和ジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸、ダイマー酸などが挙げられる。
式(2)中、Rで表される芳香族炭化水素基としては、例えばフェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基などの炭素数6〜14のアリーレン基などが挙げられる。式(2)中のRが芳香族炭化水素基であるジカルボン酸の具体例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。
これらは単独で、又は二種類以上を併用して用いることができる。
【0022】
本発明において、化合物(B−1)には、分子内に2つ以上の末端カルボキシル基を有する重合体も含まれる。かかる重合体の分子量は、特に限定されるものではないが、通常、約500〜5000の範囲が適当である。この重合体も、単独で、又は2種以上の混合物として、更には、上記例示したジカルボン酸との混合物として用いることができる。
【0023】
このような重合体は、(ポリ)アルキレングリコール、ポリカーボネートジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール等のジオールに、上記例示したジカルボン酸を常法に従って反応させて得ることができる。また、これ以外にも、末端カルボキシル基を有する種々の重合体を用いることができ、例えば、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体等を用いることができる。靱性を向上させるという観点からは、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体を用いると好ましい。
【0024】
本発明において、化合物(B−1)としては、耐トラッキング性の向上に加え、強度も向上できるという観点から、Rが脂肪族炭化水素基である脂肪族ジカルボン酸が好ましく、アジピン酸、アゼライン酸などがより好ましい。これらは単独で、又は二種類以上を併用して用いることができる。
【0025】
また、上記例示した末端カルボキシル基を有する重合体は、単独でビス(2−オキサゾリン)化合物と重合させてもよいが、靱性を向上させるという観点から、化合物(B−1)のRが脂肪族炭化水素基であるジカルボン酸、後述する化合物(B−2)の芳香族ポリアミンと組み合わせて用いることもできる。この場合、末端カルボキシル基を有する重合体としては、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体が好ましく、化合物(A)の重量に対して、5〜50重量%の範囲で用いるとより好ましい。
【0026】
本発明において用いられる化合物(B−2)としては、単環式又は多環式のいずれであってもよく、具体例としては、例えば、o−、m−又はp−フェニレンジアミン、2,3−又は2,4−又は2,5−トルイレンジアミン、4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ジアミノビフェニル、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノトリフェニルメタン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、2,2',5,5'−テトラクロロ−4,4'−ジアミノビフェニル、4,4'−メチレンビスアニリン、4,4'−メチレンビス(2−クロロアニリン)、2,2'−ビス〔4−(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'−ビス(アミノフェニル)アミン等を挙げることができる。中でも、耐トラッキング性の向上に加え、強度も向上できるという観点から、4,4'−ジアミノジフェニルメタンが好ましい。これらは、単独で、又は二種類以上を併用して用いることができる。
【0027】
また、本発明では、上記した化合物(B−2)と共に、分子内に単一のアミノ基を有する芳香族化合物、特に、芳香族モノアミンを併用してもよい。かかる芳香族モノアミンも、単環式化合物であってもよいし、多環式化合物であってもよい。具体例として、アニリン、メチルアニリン、エチルアニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、α−ナフチルアミン、β−ナフチルアミン、ベンジルアミン等を挙げることができる。これらは、単独で、又は二種類以上を併用して用いることができる。
【0028】
また、本発明において用いられる化合物(B−3)としては、例えば、サリチル酸、シキミ酸、バニリン酸、フェノールフタリン、センダ−クロムAL、および2,5−ジヒドロキシ安息香酸等を挙げることができる。
【0029】
また、本発明においては、上記化合物(B−1)、(B−2)、(B−3)以外の化合物(B)として、(B−4)分子内にアミノ基とカルボキシル基とを含む化合物、(B−5)分子内にアミノ基とフェノール性水酸基とを含む芳香族化合物等を用いることができる。化合物(B−1)〜(B−5)は、単独で、又は二種類以上を併用して用いることができる。
【0030】
化合物(B−4)としては、例えば、アントラニル酸、p−アミノ安息香酸等の芳香族化合物を挙げることができる。また、化合物(B−5)としては、例えば、o−アミノフェノール、p−アミノフェノール等を挙げることができる。
【0031】
また、本発明において、化合物(A)と化合物(B−1)〜(B−5)との共重合体以外の樹脂を含んでいても良く、例えば、化合物(A)と、レゾール型フェノール樹脂又はノボラック型フェノール樹脂のフェノール樹脂;ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル等のビスフェノール型エポキシ化合物、フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、p−オキシ安息香酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル等のジグリシジルエステル型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物等のエポキシ化合物;ジアリルフタレート樹脂等との共重合体が挙げられる。
【0032】
本発明において、化合物(A)は、樹脂成形材料全体に対して、5〜70重量%用いることが好ましい。また、本発明において、化合物(B)は、化合物(A)1モルに対して5モル以下の割合で共重合させたものであることが好ましく、特に、0.10〜2.5モルの範囲が好ましい。また、化合物(B)は、化合物(A)の重量に対しては、10〜90重量%が好ましく、10〜70重量%がより好ましい。
【0033】
かかる共重合反応は、触媒下に行うことが好ましく、酸触媒を用いるとより好ましい。酸触媒としては、例えば、リン酸、硫酸、硝酸等のオキソ酸;塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫化水素等の水素酸等の鉱酸;メタンスルホン酸等のアルカンスルホン酸;ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のアレーンスルホン酸;リン酸エステル、亜リン酸エステル、ホスホン酸、亜ホスホン酸、ホスフィン酸、亜ホスフィン酸、酸性リン酸エステル等の有機リン化合物;スルホン酸エステル;ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等の硫酸エステル;塩化アルミニウム、塩化第二スズ等のルイス酸;ヨウ化メチル、塩化ブチル、臭化ブチル、臭化ベンジル等の有機ハロゲン化物等が挙げられるが、これらのうち、触媒能及び溶解性に優れるという点から、有機リン化合物又はスルホン酸エステルがより好ましい。これらは、単独で、又は二種類以上を併用して用いることができる。
【0034】
有機リン化合物としては、従来公知のものでよく、特に制限はないが、例えば、リン酸メチル、リン酸ジメチル、リン酸トリフェニル等のリン酸エステル;亜リン酸、亜リン酸メチル、亜リン酸フェニル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリフェニル等の亜リン酸エステル;フェニルホスホン酸、メチルホスホン酸等のホスホン酸;メチル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸等の亜ホスホン酸;ジメチルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸等のホスフィン酸;ジメチル亜ホスフィン酸、ジフェニル亜ホスフィン酸、フェニルメチル亜ホスフィン酸等の亜ホスフィン酸;ラウリルアシッドホスフェイト、トリデシルアシッドホスフェイト、ステアリルアシッドホスフェイト等の酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルの塩類等が挙げられる。中でも亜リン酸エステルが好ましい。
【0035】
スルホン酸エステルとしては、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、メタンスルホン酸n−ブチル等のアルカンスルホン酸アルキルエステル;ベンゼンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸n−ブチル、ドデシルベンゼンスルホン酸メチル、ナフタレン−α−スルホン酸メチル等のアレーンスルホン酸アルキルエステルが好ましい。
【0036】
本発明において、上記の触媒は、樹脂成形材料全体に対して、0.1〜20重量%の範囲で用いることができ、より好ましくは、0.5〜10重量%の範囲で用いられる。
【0037】
このようにして得られる化合物(A)と化合物(B)との共重合体は、本発明の樹脂成形材料全体中、10〜80重量%含むことが好ましく、20〜70重量%含むことがより好ましい。
【0038】
本発明の樹脂成形材料には、無機基材を配合することができる。これにより、耐熱性、寸法精度を向上させることができる。無機基材としては特に限定されないが、例えば、ガラス繊維、炭酸カルシウム、クレー、タルク、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛等が挙げられるが、強度を向上させるという点では、ガラス繊維が好ましい。また、良好な難燃性が得られるという観点からは、クレー、水酸化アルミニウム、ホウ酸亜鉛が好ましい。これらを単独又は二種類以上を併用して用いることができる。上記無機基材の配合量としては特に限定されないが、樹脂成形材料全体に対して、10〜90重量%とすることが好ましく、30〜70重量%とすることがより好ましい。
【0039】
本発明の樹脂成形材料には、有機基材を配合することができる。これにより、溶融時の粘度を調整し成形性を向上させることができる。有機基材としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂硬化物の粉砕物、紙繊維基材にフェノール樹脂やメラミン樹脂などを含浸させた積層板や化粧板の粉砕物、あるいは、木紛、パルプ、布粉砕粉、紙粉砕粉など、セルロースやコットン等の植物繊維またはその粉砕物、椰子ガラ粉、モミガラ粉などの植物果殻粉砕物等が挙げられる。上記有機基材の配合量としては特に限定されないが、樹脂成形材料全体に対して、0.1〜10重量%であることが好ましい。さらに好ましくは1〜5重量%である。これにより、熱溶融時に適度な流動性を得ることができる。
【0040】
また、本発明の樹脂成形材料には、硬化物の表面抵抗率を下げるため、カーボンブラック等の顔料を含むことができる。その配合量は、特に限定されないが、樹脂成形材料全体に対して、0.1〜1重量%であることが好ましい。
【0041】
その他、本発明の樹脂成形材料においては、通常の熱硬化性の成形材料に用いられる安定剤、内部離型剤、難燃剤等の任意の添加剤を用いることができる。
【0042】
本発明の樹脂成形材料を製造する方法は、化合物(A)と、化合物(B)とを配合し、さらに必要に応じて他の無機基材、有機基材、触媒、顔料、離型剤を加えて混合した後、加熱ロールなどの装置により溶融混練し、冷却後粉砕または造粒して製造する。混練時の加熱温度は、触媒の使用の有無、用いる触媒の種類やその使用量のほか、材料の選択及びその使用量にもよるが、50℃以上、好ましくは70〜200℃とする。反応時間も、反応温度や、触媒の使用の有無、用いる触媒の種類やその使用量のほか、材料の選択及びその使用量にもよるが、通常、1分〜2時間である。
【0043】
次に、本発明のトランスボビンについて説明する。
本発明のトランスボビンは、上記の本発明の樹脂成形材料を成形してなるものである。ここで成形方法としては特に限定されないが、射出成形、トランスファー成形、圧縮成形等の方法を用いることができる。例えば、破砕顆粒又は造粒された樹脂成形材料をトランスファー成形又は射出成型で成形する際は、金型温度150〜200℃で成形することで、本発明のトランスボビンを得ることができる。
【0044】
本発明の樹脂成形材料は、厚み25μmのアルミカップに入れ、175℃雰囲気下で成型したものは、耐トラッキング性が400V以上であり、より好ましくは、600V以上とすることができる。
また、上記のように成形された成形体のガラス転移温度は、80℃以上とすることができ、好ましくは、100〜250℃とすることができ、より好ましくは、150〜300℃とすることができる。
また、上記成形体の貯蔵弾性率は、2×10Pa以上とすることができ、好ましくは、1×10〜1×1011Pa、より好ましくは5×10〜5×1010Pa、さらに好ましくは、6×10〜1×1010Paとすることができる。
また、上記成形体の曲げ弾性率は、2×10Pa以上とすることができ、好ましくは、1×10〜1×1011Pa、より好ましくは5×10〜5×1010Pa、さらに好ましくは、7×10〜1×1010Paとすることができる。
また、上記成形体の曲げ強さは、5×10Pa以上とすることができ、好ましくは、7×10〜2×10Paとすることができる。
また、上記成形体の曲げたわみ量は、1mm以上とすることができ、好ましくは1〜5mm、より好ましくは1.5〜3.5mmとすることができる。
また、上記成形体のシャルピー衝撃強度は、2kJ/m以上とすることができ、好ましくは、3〜5kJ/m、より好ましくは、3.5〜4.5kJ/mとすることができる。
なお、本発明において、耐トラッキング性は、IEC法60112第4版JIS C2134に基づき測定したものである。ガラス転移温度及び貯蔵弾性率は、上記アルミカップで成形したものを厚さ1mm程度に切り出し、DMA法(引っ張り、正弦波モード、JIS K7244−4)により測定したものである。貯蔵弾性率は、25℃、10Hzにおける貯蔵弾性率である。曲げ強さ、曲げ弾性率、たわみ量、シャルピー衝撃試験は、JIS K 6911に基づき25℃で測定したものである。
【0045】
このように本発明によれば、ビス(2−オキサゾリン)化合物由来の構成単位を含み、分子内にアミド結合を有する共重合体を含むため、耐トラッキング性に優れ、かつ、強度とのバランスに優れたトランスボビン用の樹脂成形材料とすることができる。また、本発明の樹脂成形材料は、ハロゲン系難燃剤を使用せずに高い難燃性を有するため、環境負荷や人体への健康被害の懸念もない。
【0046】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0047】
実施例1〜3
1,3−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン(1,3−PBO)と、アジピン酸とを表1に示すように配合した後、組成物全体を100重量部としたとき亜リン酸トリフェニルの配合割合が2重量部となるように加え、ロールにて100℃で加熱混練し、樹脂成形材料を得た。その後、厚み25μmのアルミカップに加えて175℃雰囲気下で1時間加熱し、成形した。
【0048】
実施例4
アジピン酸に代えてジフェニルジアミノメタンを表1で示すように配合した以外は、実施例1〜3と同様に成形した。
【0049】
実施例5
アジピン酸に代えてCTBN(カルボキシル基末端ポリブタジエン−アクリロニトリル、宇部興産社製、CTBN1008SP)を表1で示すように配合した後、組成物全体を100重量部としたとき亜リン酸トリフェニルの配合割合が5重量部となるように加えた以外は、実施例1〜3と同様に成形した。
【0050】
実施例6
アジピン酸に代えサリチル酸を表1で示すように配合した以外は、実施例1〜3と同様に成形した。
【0051】
[評価]
実施例1〜6で得られた成形体について、耐トラッキング性、ガラス転移温度、弾性率を下記の方法により測定した。結果を表1に示す。
1.耐トラッキング性
IEC法60112第4版JIS C2134に基づき測定した。
2.ガラス転移温度
厚さ1mm程度に切り出し、DMA法(引っ張り、正弦波モード、JIS K7244−4)により測定した。なお、表1中、RTは、室温(25℃)である。
3.貯蔵弾性率
厚さ1mm程度に切り出し、DMA法(JIS K 6911)により25℃、10Hzで測定した。
【0052】
【表1】

【0053】
実施例7〜9、比較例1
表2に示した配合からなる材料をロールにて100℃で加熱混練し、樹脂成形材料を得た。試験片をトランスファー成形(金型温度:175℃、反応時間:1時間)により作成した。曲げ強さ、曲げ弾性率、たわみ量及びシャルピー衝撃試験をJIS K6911に基づき25℃で測定した。また、耐トラッキング性は、IEC法60112第4版JIS C2134に基づき測定した。結果を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
表1、2で示すように、本発明の樹脂成形材料は、耐トラッキング性が高く、かつ強度に優れるため、耐電圧に優れ、高い強度を有するトランス用ボビンを得ることができる。なお、実施例5の成形品では、貯蔵弾性率が低いものの靱性に優れていることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビス(2−オキサゾリン)化合物由来の構造単位を含み、分子内にアミド結合を有する共重合体を含有する、ボビン用樹脂成形材料。
【請求項2】
前記ビス(2−オキサゾリン)化合物が、1,3−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼンである、請求項1に記載のボビン用樹脂成形材料。
【請求項3】
前記共重合体が、(A)ビス(2−オキサゾリン)化合物と、(B)少なくともカルボキシル基又はアミノ基を分子内に含む化合物との共重合体である、請求項1又は2に記載のボビン用樹脂成形材料。
【請求項4】
前記化合物(B)が、下記化合物(B−1)、(B−2)及び(B−3)からなる群から選択される少なくとも一以上の化合物を含む、請求項3に記載のボビン用樹脂成形材料。
(B−1)分子内に少なくとも2つのカルボキシル基を有する化合物
(B−2)分子内に少なくとも2つのアミノ基を有する芳香族ポリアミン
(B−3)分子内にカルボキシル基とフェノール性水酸基とを有する化合物
【請求項5】
前記化合物(B)が脂肪族ジカルボン酸を含む、請求項3又は4に記載のボビン用樹脂成形材料。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか1項に記載のボビン用樹脂成形材料を成形してなる、トランスボビン。

【公開番号】特開2012−207089(P2012−207089A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72698(P2011−72698)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】