説明

ボリコナゾールの製造方法

a)1−(2,4−ジフルオロフェニル)−2(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)エタノンを置換されたチオピリミジン誘導体とリフォマトスキー型カップリング反応させて所望の一対の(2R,3S)/(2S,3R)−鏡像異性体を得;
b)前記鏡像異性体からチオール誘導体を除去してボリコナゾールラセミ体を得;
c)光学的活性酸を用いて前記ボリコナゾールラセミ体を光学分割する段階を含む方法によって光学的に純粋なボリコナゾールを高収率で製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボリコナゾールの新しい製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
式Iで表されるボリコナゾール[(2R,3S)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−3−(5−フルオロピリミジン−4−イル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−オール]は、真菌感染症、例えば、カンジダ菌(candida)、白癬菌(trichophyton)、小胞子菌(microsporum)、または表皮菌(epidermophyton)によって誘発される人間の局所性真菌感染症;カンジダアルビカンス(candida albicans)によって誘発される粘膜感染症(例:鵞口瘡及びカンジダ症);及びアスペルギルス(aspergilus)によって誘発される全身性真菌感染症の治療または予防に有用な抗真菌薬である。
【化1】

【0003】
ボリコナゾールは2つの非対称の炭素原子を含むので、2対のジアステレオマー鏡像異性体からなる4種の立体異性体がボリコナゾールを製造する際に関与し、一般的にボリコナゾールは、a)(2R,3S)及び(2S,3R)の構造を有する一対の鏡像異性体を分離した後、;b)光学活性酸(例:R−(−)−10−カンファースルホン酸(camphosulfonic acid))を用いて(2R,3S)−立体異性体を分離することによって製造される。ボリコナゾールは、構造が特異で且つ塩基条件下で不安定であるので立体選択的な合成を行い難い。
【0004】
現在、ボリコナゾールを製造する方法としてはただ二つの方法が報告されている。その一つは、有機リチウム塩を用いるカップリング反応に基づいたものであり、他の一つは、リフォマトスキー型(Reformatsky−type)カップリング反応に基づいたものである。
【0005】
例えば、特許文献1及び特許文献2には、反応式Aに示すように、a)−70℃〜−50℃で4−クロロ−6−エチル−5−フルオロピリミジンの有機リチウム誘導体を1−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)エタノンに添加して鏡像異性体混合物を得てから;b)クロマトグラフィによって所望の鏡像異性体を分離することによって所望の一対の鏡像異性体を製造する方法が開示されている。
【化2】

【0006】
しかし、LDAまたはNaHMDSのような強塩基を用いる上記カップリング反応は、立体選択性がないので(2R,3S)/(2S,3R)及び(2R,3R)/(2S,3S)ジアステレオマーを1.1:1のモル比で生成し、所望の(2R,3S)/(2S,3R)−鏡像異性体一対が12〜25%という低い収率しか得られない。また、前記反応でリチウム塩を用いるためには、−78℃及び無水条件が必要であるため量産に不向きである。
【0007】
特許文献3には、反応式Bに示すように、異なる溶媒を用いることを除いては、前記反応式Aと同一の方法によって所望の一対の鏡像異性体を製造する方法が開示されている。
【0008】
【化3】

前記反応は、結晶化によって所望の鏡像異性体一対を分離することができるという長点があるが、前記反応式Aと同様な問題を有するとともに、所望の鏡像異性体の対が26%という低い収率でしか得られないという問題がある。
【0009】
前述の問題点を解決するために、特許文献4及び特許文献5には、リフォマトスキー型反応を行って立体選択性及び反応収率を向上させた後、パラジウム触媒の存在下で塩素置換基を還元的に除去することによってボリコナゾールを製造する方法が開示されている(参照:反応式C)。
【0010】
【化4】

この反応においては、(2R,3S)/(2S,3R)−及び(2R,3R)/(2S,3S)−の一対の鏡像異性体が9:1のモル比で形成され、ボリコナゾール塩酸塩が65%という高収率で得られる。しかし、出発物質として用いられるピリミジン誘導体が未反応のまま残存する場合には、その除去が難しいために産物純度が低下する。
【0011】
また、論文([非特許文献1]、(株)ファイザー)は、反応式D及び表1に示すように、ピリミジン誘導体の塩素置換体がカップリング反応のパターンに否定的な影響を及ぼすと報告している。
【化5】


表1
【表1】

【0012】
特許文献4の実施例1(反応式C参照)によれば、(2R,3S)/(2S,3R)−及び(2R,3R)/(2S,3S)−鏡像異性体の一対が10:1のモル比で得られるが、その生成混合物は、未反応の式IVの化合物(7%)及び式XIの化合物と予想される未知の副生成物(14%)を含むことが分かる。従って、前記反応式Cの工程は不純な生成混合物を提供するので、再結晶による精製過程が必要になり、所望の産物の最終収率が40〜45%と低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】韓国特許第1993−0011039号
【特許文献2】欧州特許第0,440,372号
【特許文献3】PCT公開WO2006/065726号
【特許文献4】韓国公開特許第1999−0036174号
【特許文献5】米国特許第6,586,594B1号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Organic Process Research & DeVelopment 2001,5,28−36
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本発明の目的は、光学的に純粋なボリコナゾールを高収率で製造できる改善された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するために、本発明の一実施態様によれば、
a)式IVの化合物を式Vの化合物とリフォマトスキー型カップリング反応させて一対の(2R,3S)/(2S,3R)−鏡像異性体である式IIIの化合物を得る段階;
b)前記式IIIの化合物からチオール誘導体を除去して式IIのボリコナゾールラセミ体を得る段階;及び
c)光学的活性酸を用いて前記式IIの化合物を光学分割して式Iのボリコナゾールを単離する段階を含む、ボリコナゾールの製造方法を提供する:
【化6】

前記式中、RはC−Cアルキル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、イミダゾリル、1−メチルイミダゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジル、フェニル、またはハロゲン、ニトロ及びメトキシからなる群から選ばれる1つもしくは2つの置換基を有するフェニルである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の方法によれば、光学的に純粋なボリコナゾールを高収率で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明によれば、ボリコナゾールを下記反応式Eに示している工程によって製造することができる。
【化7】

前記式中、Rは前記定義と同一であり、好ましくはRは、フェニルまたは4−クロロフェニルである。
反応式Eで用いられる式V及び式IIIの化合物は、それぞれ結晶化が可能な、安定的で且つ新規な化合物である。次に反応式Eの製造方法を更に詳細に説明する。
【0019】
本発明の出発物質である式Vの化合物は、反応式Fに示す工程によって製造することができる。
【化8】

前記式中、Rは前記定義と同一である。
4−クロロ−6−エチル−5−フルオロピリミジンは、チオール誘導体と容易に置換反応して95%以上の収率で結晶性チオエーテル誘導体に転換される。式Vの臭化化合物も99%以上の高収率で結晶性化合物として得られる。
【0020】
本発明工程の段階a)では、商業的に利用可能な式IVのエタノン化合物を式Vのピリミジン誘導体とリフォマトスキー型カップリング反応させて式IIIの一対の(2R,3S)/(2S,3R)−鏡像異性体が得られる。
【0021】
本発明の一実施態様によれば、式IIIの一対の鏡像異性体は、約9:1〜11:1のモル比の(2R,3S)/(2S,3R)−及び(2R,3R)/(2S,3S)−の形態が得られる。この工程では、前記反応式Dの式XIの化合物のような副生成物が生じない。また、式IIIの化合物の選択的結晶化のために所望の(2R,3S)/(2S,3R)−鏡像異性体対を遊離塩基混合物の形態で80%以上の収率で容易に得ることができる。
【0022】
立体選択性9:1及び塩酸塩産物の単離収率65%を示す塩素置換体を用いる既存の反応と比較する時、段階a)で副反応が起らず、所望の産物を結晶化によって高収率で単離することができる。
【0023】
本発明の段階b)では、段階a)で得られた式IIIの化合物からチオール誘導体を除去して式IIのボリコナゾールラセミ体を得る。
【0024】
一般的に、ラネーニッケル(Raney Nickel)触媒の存在下で加熱してチオエーテル置換体が除去され得る(Tetrahedron 55,5239〜5252(1973))。しかし、この方法を本発明の段階b)に適用すると、反応が緩慢に進行し、所望の式IIの化合物の収率が30%〜40%と低く、また、ラネーニッケルの可燃性のため量産に不向きであるという問題点がある。
【0025】
本発明によれば、経済的で且つ量産に適用可能な亜鉛及び水素供与体としてギ酸アンモニウムがこの段階で用いられる。一実施様態において、亜鉛/ギ酸アンモニウムを水と有機溶媒中で使用すると、式IIのボリコナゾールラセミ体が90%以上の収率及び98.5%の純度で得られる。よって、この工程は、塩素置換体の除去に通常用いられる高価のパラジウム金属触媒を用いてチオール誘導体を還元的に除去するのに比べて一層経済的で且つ効率的である。
【0026】
前記反応に用いられる亜鉛は、商業的に利用可能な亜鉛粉末或いは市販の亜鉛粉末を1N−塩酸溶液で処理して製造した活性化亜鉛であっても良い。この段階に用いられる亜鉛は式IIIの化合物に対して約3〜10当量、好ましくは、約5当量の量で用いられる。
【0027】
前記反応に用いられる有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;アセトニトリルなどのニトリル類;及びジメチルアセトアマイド、ジメチルポルムアマイドなどのアマイド類からなる群から選ばれた1種以上であっても良く、また、これを水と混合して用いることができ、テトラヒドロフランと水との混合物が好ましい。有機溶媒と水との体積比は約1〜5:1であっても良く、約3:2であることが好ましい。
【0028】
前記反応は、約50℃〜70℃で行われ、水素供与体であるギ酸アンモニウムは水溶液の形態で反応液に添加しても良い。
【0029】
前記反応は、式IIの化合物を高純度(>98.5%)及び高収率(90%)で得ることができ、高価のパラジウムまたは可燃性のあるラネーニッケルを用いるチオール誘導体の還元的除去反応と比較してみると、安価の亜鉛を用いて所望の化合物を量産することが可能であり、コスト面において遥かに経済的であるという利点がある。
【0030】
本発明工程の段階c)は、段階b)で得られた式IIの化合物を光学的活性酸を用いて光学分割する段階である。光学的活性酸を用いて化合物を光学分割する方法は当業界に広く知られており、かかる公知の光学分割法のうち任意の方法を用いて式Iのボリコナゾールを単離することができる。この段階で用いられる光学的活性酸の例としては、R−(−)−10−カンファースルホン酸のような酸付加塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
以下、本発明を下記実施例により更に詳細に説明する。但し、下記実施例は本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
製造例1:4−(1−ブロモ−エチル)−6−(4−クロロ−フェニルスルファニル)−5−フルオロピリミジンの製造
【0033】
<1−1>4−クロロ−6−エチル−5−フルオロピリミジンの製造
6−エチル−5−フルオロ−4−ヒドロキシピリミジン80gを240mlのジクロロメタンに溶解させてから78.24mlのトリエチルアミンを加え、これに57.4mlのオキシ塩化リンを30分間徐々に添加した。その結果得られた溶液を5時間還流させて前記反応を終結させた後、室温に冷却させた。次いで、これに352mlの3N塩酸を20℃以下に維持しながら添加した。その結果得られた水性混合物を100mlのジクロロメタンで抽出した。有機層を100mlの水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下で濃縮させてオイル状の標題化合物85.9g(収率:95%)を得た。
H−NMR(300MHz,CDCl)δ(ppm):8.70(1H),2.90(2H),1.34(3H)
【0034】
<1−2>4−(4−クロロ−フェニルスルファニル)−6−エチル−5−フルオロピリミジンの製造
4−クロロ−6−エチル−5−フルオロピリミジン61.0gを600mlのアセトニトリルに加え、これに4−クロロチオフェノール60.4gを加えた後、温度を10℃に下げた。その結果、得られた溶液に66.1mlのジイソプロピルエチルアミンを加えた後、温度を室温に維持しながら2時間反応させた。その結果得られた混合物に100mlのジクロロメタンと300mlの水を加えて層を分離し、その得られた水性混合物を300mlのジクロロメタンで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥して減圧下で濃縮させた後、5℃で305mlのイソプロパノールと122mlの水で結晶化して白色の標題化合物85.6gを得た。次いで、減圧下で濾液をさらに濃縮させた後、5℃で30mlのイソプロパノールで結晶化して標題化合物12.3gを得ることで総97.9g(総収率:96%)を得た。
融点=44.1℃〜45.5℃
H−NMR(300MHz,CDCl)δ(ppm):8.61(1H),7.47(4H),5.34(1H),2.04(3H)
【0035】
<1−3>4−(1−ブロモ−エチル)−6−(4−クロロ−フェニルスルファニル)−5−フルオロピリミジンの製造
131gの4−(4−クロロ−フェニルスルファニル)−6−エチル−5−フルオロピリミジン、103.8gのN−ブロモコハク酸イミド及び7.98gのアゾビスイソブチロニトリルを850mlのジクロロエタンに溶解させた。その結果得られた混合物を2時間還流させてから室温に冷却させた。次いで、800mlの水、950mlの水に溶かした50gのメタ重亜硫酸ナトリウム及び500mlの塩水で順次洗浄した。その結果、得られた溶液を減圧下で濃縮した後、5℃で391mlのイソプロパノールで結晶化して白色の化合物を得、該化合物を5℃で50mlのイソプロパノールで洗浄して白色標題化合物150.7g(収率:89%)を得た。
融点=86.2℃〜87.5℃
H−NMR(300MHz,CDCl)δ(ppm):8.61(1H),7.47(4H),5.34(1H),2.04(3H)
【0036】
製造例2:4−(1−ブロモ−エチル)−6−(4−フェニルスルファニル)−5−フルオロピリミジンの製造
【0037】
<2−1>4−(フェニルスルファニル)−6−エチル−5−フルオロピリミジンの製造
4−クロロ−6−エチル−5−フルオロピリミジン40gを400mlのアセトニトリルに加え、これに28mlのチオフェノールを加えた後、温度を10℃に下げた。その結果得られた溶液に43.39mlのジイソプロピルエチルアミンを加えた後、温度を室温に維持しながら2時間反応させた。次いで、その結果得られた混合物に65mlのジクロロメタンと200mlの水を加えてから層を分離した後、その結果得られた水性混合物を200mlのジクロロメタンで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下で濃縮してオイル状の標題化合物63.6g(収率:95%)を得た。
H−NMR(300MHz,CDCl)δ(ppm):8.61(1H),7.59−7.42(5H),2.80(2H),1.30(3H)
【0038】
<2−2>4−(1−ブロモ−エチル)−6−(4−フェニルスルファニル)−5−フルオロピリミジンの製造
63.6gの4−(4−フェニルスルファニル)−6−エチル−5−フルオロピリミジン、72.8gのN−ブロモコハク酸イミド及び5.77gのアゾビスイソブチロニトリルを500mlのジクロロエタンに溶解させた。その結果、得られた混合物を2時間還流させてから室温に冷却させた後、次いで、700mlの水、480mlの水に溶かした21gのメタ重亜硫酸ナトリウム及び380mlの塩水で順次洗浄した。その結果得られた溶液を減圧下で濃縮した後、5℃で391mlのイソプロパノールで結晶化した。次いで、その結果得られた溶液を濾過してから乾燥して白色の標題化合物65g(収率:79%)を得た。
H−NMR(300MHz,CDCl)δ(ppm):8.62(1H),7.59−7.42(5H),5.36(1H),2.03(3H)
【0039】
実施例1:(2R,3S)/(2S,3R)−3−[6−(4−クロロ−フェニルスルファニル)−5−フルオロ−ピリミジン−4−イル]−2−(2,4−ジフルオロ−フェニル)−1−[1,2,4]トリアゾール−1−イル−ブタン−2−オールの製造
【0040】
1N塩酸により処理された60gの亜鉛粉末及び2.97gの鉛粉末を360mlのテトラヒドロフランに添加して攪拌した後、これに120mlのテトラヒドロフランに45.04gのヨウ素を溶かした溶液を10分間徐々に加えた。その結果得られた混合物を5℃に冷却させた後、これに320mlのテトラヒドロフランに40gの1−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)エタノンを溶かした溶液、及び製造例1で得られた82.24gの4−(1−ブロモ−エチル)−6−(4−クロロ−フェニルスルファニル)−5−フルオロピリミジンを1時間徐々に加えた。次いで、その結果得られた混合物を25℃まで昇温してから1時間反応させた。
【0041】
固体残渣を濾過してから380mlの酢酸エチルで洗浄した。これに380mlの飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて、その結果得られた水性混合物を除去した。次いで、有機層に1.2lの飽和重炭酸ナトリウム水溶液を加えてpHを7.6に維持した。その結果得られた水性混合物を100mlの塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し減圧下で濃縮した。その結果得られた濃縮物を25℃で200mlのイソプロパノールで結晶化した後、濾過して乾燥して遊離塩基形態の淡黄色の標題化合物72g(収率:82%)を得た。
融点=158.1℃〜159.6℃
H−NMR(300MHz,CDCl)δ(ppm):8.52(1H),7.9
4(1H),7.62−7.45(6H),6.87−6.79(2H),6.53(
1H),4.73(1H),4.19(1H),4.08(1H),1.09(3H)
【0042】
内部標準物質を用いた反応液のHPLC分析を行った結果、鏡像異性体の対の比率が10:1であり、結晶化固体のHPLC分析を行った結果、(2R,3S)/(2S,3R)−及び(2R,3R)/(2S,3S)−鏡像異性体の対の比率が99.8%:0.2%であった。
【0043】
実施例2:(2R,3S)/(2S,3R)−3−[6−(4−クロロ−フェニルスルファニル)−5−フルオロ−ピリミジン−4−イル]−2−(2,4−ジフルオロ−フェニル)−1−[1,2,4]トリアゾール−1−イル−ブタン−2−オールの製造
10gの1−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)エタノン及び20.56gの(1−ブロモ−エチル)−6−(4−クロロ−フェニルスルファニル)−5−フルオロピリミジンを用いたことと、鉛粉末を用いないこととを除いては、実施例1と同一の方法により淡黄色の標題化合物17.5g(収率:79%)を得た。
融点=158.1℃〜159.6℃
H−NMR(300MHz,CDCl)δ(ppm):8.52(1H),7.94(1H),7.62−7.45(6H),6.87−6.79(2H),6.53(1H),4.73(1H),4.19(1H),4.08(1H),1.09(3H)
内部標準物質を用いた反応液のHPLC分析結果、鏡像異性体の対の比が9.5:1であり、結晶化固体のHPLC分析を行った結果、(2R,3S)/(2S,3R)−及び(2R,3R)/(2S,3S)−鏡像異性体の対の比率が99.8%:0.2%であった。
【0044】
実施例3:(2R,3S)/(2S,3R)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−3−(5−フルオロピリミジン−4−イル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−オールの製造
1N塩酸により処理された13.3gの亜鉛粉末を300mlのテトラヒドロフランに溶解させて、1時間還流させた。その結果得られた溶液を50℃に冷却させ、これに実施例1または2で得られた(2R,3S)/(2S,3R)−3−[6−(4−クロロ−フェニルスルファニル)−5−フルオロ−ピリミジン−4−イル]−2−(2,4−ジフルオロ−フェニル)−1−[1,2,4]トリアゾール−1−イル−ブタン−2−オール20gを加えた。その結果得られた混合物に200mlの水に7.71gのギ酸アンモニウムを溶解させた溶液を徐々に30分間加えて4時間還流させた。次いで、反応液を室温に冷却させて濾過した後、200mlの酢酸エチルで洗浄した。その結果得られた残渣を200mlの飽和塩化アンモニウム水溶液で洗浄した後、水層を除去した。有機層を200mlの重炭酸ナトリウムと200mlの塩水で洗浄してから硫酸マグネシウムで乾燥した。その結果得られた残渣に200mlの酢酸エチルと100mlのヘキサンを加えた後、これに結晶化のために9mlの濃い塩酸を加えた。次いで、得られた固体混合物に200mlの酢酸エチルと200mlの重炭酸ナトリウムを加えて10分間攪拌した後、その結果得られた固体はセライトにより濾過除去した。その結果得られた有機層を200mlの5%の水酸化ナトリウム水溶液で洗浄して、減圧下で濃縮して結晶化された標題化合物12.7g(収率:90%)を得た。
H−NMR(300MHz,CDCl)δ(ppm):8.93(1H),8.62(1H),7.97(1H),7.60(1H),7.54(1H),6.87−6。80(2H),6.48(1H),4.42(1H),4.32(1H),4.13(1H),1.11(3H)
【0045】
実施例4:(2R,3S)/(2S,3R)−3−[6−(4−フェニルスルファニル)−5−フルオロ−ピリミジン−4−イル]−2−(2,4−ジフルオロ−フェニル)−1−[1,2,4]トリアゾール−1−イル−ブタン−2−オールの製造
1N塩酸により処理された19.42gの亜鉛粉末及び0.96gの鉛粉末を162mlのテトラヒドロフランに加えて攪拌した。これに51mlのテトラヒドロフランに14.6gのヨウ素を溶解させた溶液を10分間徐々に加えた。その結果得られた混合物を5℃に冷却させた後、これに135mlのテトラヒドロフランに1−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)エタノン12.96gを溶解させた溶液と、製造例2で得られた24gの4−(1−ブロモ−エチル)−6−(4−フェニルスルファニル)−5−フルオロピリミジン及び1.18gのヨウ素を1時間徐々に加えた。次いで、その結果得られた混合物を25℃に昇温して2時間反応させた。
固体残渣を濾過して380mlの酢酸エチルで洗浄した。これに120mlの飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて水層を除去した。有機層に380mlの飽和重炭酸ナトリウム水溶液を加えて、pHを7.6に維持した。次いで、その結果得られた有機層を120mlの塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥してから減圧下で濃縮した。その結果得られた濃縮物を25℃で240mlのイソプロパノールで結晶化してから濾過した後、乾燥して淡黄色の標題化合物19.33g(収率:72.8%)を得た。
H−NMR(300MHz、DMSO)δ(ppm):8.86(1H),8.67(1H),7.62−7.45(6H),7.31(2H),6.93(1H),4.73(1H),4.431H),3.91(1H),1.08(3H)
内部標準物質を用いた反応液のHPLC分析結果、鏡像異性体の対の比率が9:1であり、結晶化された固体のHPLC分析を行った結果、(2R,3S)/(2S,3R)−及び(2R,3R)/(2S,3S)−鏡像異性体の対の比率が99.9%:0.1%であった。
【0046】
実施例5:(2R,3S)/(2S,3R)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−3−(5−フルオロピリミジン−4−イル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−オールの製造
1N塩酸により処理された3.58gの亜鉛粉末を75mlのテトラヒドロフランに溶解させて1時間還流させた。その結果得られた溶液を50℃に冷却させ、これに実施例4で得られた5gの(2R,3S)/(2S,3R)−3−[6−(4−フェニルスルファニル)−5−フルオロ−ピリミジン−4−イル]−2−(2,4−ジフルオロ−フェニル)−1−[1,2,4]トリアゾール−1−イル−ブタン−2−オールを加えた。その結果得られた混合物に、50mlの水に2.07gのギ酸アンモニウムを溶解させた溶液を徐々に30分間加えた後、4時間還流させた。その結果得られた反応液を室温に冷却させた後、濾過してから50mlの酢酸エチルで洗浄した。次いで、得られた残渣を50mlの飽和塩化アンモニウム水溶液で洗浄した後、50mlの重炭酸ナトリウムと50mlの塩水でさらに洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥してから減圧下で濃縮した。得られた残渣に50mlの酢酸エチルと25mlのヘキサンを加えた後、これに結晶化のために2.2mlの濃い塩酸を加えた。その結果得られた固体混合物に50mlの酢酸エチルと50mlの重炭酸ナトリウムを加えてから10分間攪拌した後、得られた固体はセライトにより濾過除去した。濾液を5%の水酸化ナトリウム水溶液50mlで洗浄した後、減圧下で濃縮してから結晶化された標題化合物3.9g(収率:81%)を得た。
H−NMR(300MHz,CDCl)δ(ppm):8.93(1H),8.62(1H),7.97(1H),7.60(1H),7.54(1H),6.87−6.80(2H),6.48(1H),4.42(1H),4.32(1H),4.13(1H),1.11(3H)
【0047】
実施例6:(2R,3S)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−3−(5−フルオロピリミジン−4−イル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−オール(R)−カンシル酸塩の製造
230mlのアセトンに実施例3または5で得られた(2R,3S)/(2S,3R)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−3−(5−フルオロピリミジン−4−イル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−オール10gを溶解させた後、これに75mlのメタノールに6.64gのR−(−)−10−カムファースルホン酸を溶解させた溶液を加えた。その結果得られた混合物を1時間還流させた後、結晶化するために徐々に室温に冷却して20℃で一晩中攪拌した。その結果得られた溶液を濾過してから乾燥して白色の標題化合物6g(収率:36%)を得た。
HPLC分析結果、前記化合物の光学純度は>99.9%であった。
【0048】
実施例7:(2R,3S)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−3−(5−フルオロピリミジン−4−イル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−オール(ボリコナゾール)の製造
50mlの水及び50mlのジクロロメタンの混合物に実施例6で得られた(2R,3S)−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−3−(5−フルオロピリミジン−4−イル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−オール(R)−カムシル酸塩10gを加えた後、これに40%の水酸化ナトリウム溶液を徐々に添加してpHを11〜12に調節した。有機層を分離して硫酸マグネシウムで乾燥してから減圧下で有機溶媒を除去した。次いで、その結果得られた溶液を18mlのイソプロパノールで結晶化させて0℃に冷却してから2時間攪拌した後、乾燥して白色の標題化合物5.56g(収率:93%)を得た。
融点=134℃
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ(ppm):9.04(1H)、8.84(1H),8.23(1H),7.61(1H),7.28(1H),7.17(1H),6.91(1H)、5.97(1H),4.80(1H),4.34(1H)、3.93(1H),1.1(3H)
HPLC分析結果、前記化合物の光学純度は>99.9%であった。
【0049】
比較例:(2R,3S)/(2S,3R)−(2R,3R)/(2S,3S)−3−(4−クロロ−5−フルオロピリミジン−6−イル)−2−(2、4−ジフルオロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−オール塩酸塩の製造
1N塩酸により処理された5.29gの亜鉛粉末及び0.26gの鉛粉末を33.5mlのテトラヒドロフランに加えて攪拌した後、これに10.6mlのテトラヒドロフランに3.98gのヨウ素を溶解させた溶液を10分間徐々に加えながら45℃に昇温した。その結果得られた混合物を2℃に冷却させた後、これに30mlのテトラヒドロフランに3.53gの1−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)のエタノン、5gの6−(1−ブロモ−エチル)−4−クロロ−5−のフルオロピリミジンを溶解させた溶液及び0.32gのヨウ素を10分間徐々に加えた。次いで、その結果得られた混合物を25℃に昇温してから1時間反応させた。
反応液に4.67gの氷酢酸と12mlの水を加えた後、固体金属残渣を濾過して除去し、テトラヒドロフランを減圧下で除去した。
その結果得られた残渣を66mlの酢酸エチルで2回抽出した後、その抽出液を12mlの水に4.67gのエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物を溶解させた溶液及び30mlの塩水で順次洗浄した。有機層を40mlになるように濃縮した後、これに4.3mlのイソプロパノールに0.86gの塩酸を溶解させた溶液を25℃で加えた。
得られた結晶を濾過した後、10mlの酢酸エチルで洗浄してから乾燥することで、黄色結晶の標題化合物2.81g(収率:42%)を得た。
融点=126〜130℃
H−NMR(300MHz、DMSO−d)δ(ppm):8.84(1H),8.
73(1H),7.93(1H),7.28(1H),7.20(1H),6.91(1H),4.82(1H),4.54(1H),3.93(1H),1.14(3H)
内部標準物質を用いた反応液のHPLC分析結果、鏡像異性体の対の比率が10:1であり、14.39%の未知の副反応物が生成された。また、結晶化された塩酸塩のHPLC分析を行った結果、(2R,3S)/(2S,3R)−及び(2R,3R)/(2S,3S)−鏡像異性体の対の比率が94.4%:4.8%であった。
【0050】
以上、本発明を前記具体的な実施例と関連して述べたが、添付された特許請求の範囲によって定義された本発明の範囲内で当分野における熟練者が本発明を多様に変形及び変化させ得ることを勿論のことである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)式IVの化合物を式Vの化合物とリフォマトスキー型カップリング反応させて一対の(2R,3S)/(2S,3R)−鏡像異性体である式IIIの化合物を得る段階;
b)前記式IIIの化合物からチオール誘導体を除去して式IIのボリコナゾールラセミ体を得る段階;及び
c)光学的活性酸を用いて前記式IIの化合物を光学分割して、式Iのボリコナゾールを単離する段階を含む、ボリコナゾールの製造方法:
【化1】

前記式中、RはC−Cアルキル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、イミダゾリル、1−メチルイミダゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジル、フェニル、またはハロゲン、ニトロ及びメトキシからなる群から選ばれる1つもしくは2つの置換基を有するフェニルである。
【請求項2】
前記段階b)が亜鉛とギ酸アンモニウムを用いて行われる、請求項1に記載の式Iのボリコナゾールの製造方法。
【請求項3】
前記亜鉛が前記式IIIの化合物に対して3〜10当量の量で用いられる請求項2に記載の式Iのボリコナゾールの製造方法。
【請求項4】
式Vで表される化合物:
【化2】

前記式中、RはC−Cアルキル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、イミダゾリル、1−メチルイミダゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジル、フェニル、またはハロゲン、ニトロ及びメトキシからなる群から選ばれる1つもしくは2つの置換基を有するフェニルである。
【請求項5】
(i)4−(1−ブロモ−エチル)−6−(4−フェニルスルファニル)−5−フルオロピリミジン、または(ii)4−(1−ブロモ−エチル)−6−(4−クロロ−フェニルスルファニル)−5−フルオロピリミジンである請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
式IIIの鏡像異性体の化合物:
【化3】

前記式中、RはC−Cアルキル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、イミダゾリル、1−メチルイミダゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジル、フェニル、またはハロゲン、ニトロ及びメトキシからなる群から選ばれる1つもしくは2つの置換基を有するフェニルである。
【請求項7】
(i)(2R,3S)/(2S,3R)−3−[6−(4−フェニルスルファニル)−5−フルオロ−ピリミジン−4−イル]−2−(2,4−ジフルオロ−フェニル)−1−[1,2,4]トリアゾール−1−イル−ブタン−2−オール、または(ii)(2R,3S)/(2S,3R)−3−[6−(4−クロロ−フェニルスルファニル)−5−フルオロ−ピリミジン−4−イル]−2−(2,4−ジフルオロ−フェニル)−1−[1,2,4]トリアゾール−1−イル−ブタン−2−オールである請求項6に記載の鏡像異性体の化合物。

【公表番号】特表2010−535197(P2010−535197A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519158(P2010−519158)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【国際出願番号】PCT/KR2008/004516
【国際公開番号】WO2009/020323
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(599139534)ハンミ ファーム. シーオー., エルティーディー. (56)
【Fターム(参考)】