説明

ボルト及び製造方法

【課題】 本発明の課題は、超音波等で軸力測定ができる安価な軸力測定ボルトのボルト頭部及び端面の形状及び製造方法を発明し、提供することである。
【解決手段】 ボルト頭部が多角形状であり、その頭部上面が外部多角形状に頂点位置を合わせた多角形状の溝を頭部上面内部にもち、上面内部の多角溝の内側は平面部が形成されており、前記ボルト上面の多角外部と多角溝内側平面部との高さは同じか多角溝内側平面部が若干高い位置であり、これらの前記ボルトの頭部は冷間圧造機において2〜4段工程で加工し、同時に軸部及びボルト先端部のカット平面部が形成されており、前記ボルトの先端部は垂直な平面から転造加工で軸部のねじ加工と同時に先端内部に平面部を残し、外側を伸ばしながらC面部を形成させる。本発明ボルトは超音波等の軸力測定器具や超音波式の軸力制御締め付け機を用いることができる切削や研磨工程なしの安価な軸力測定ボルトを製作することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波等での軸力測定ボルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、軸力測定ボルトとしては、超音波等の軸力測定器具を用いてボルト頭部平面と端部平面とで軸力測定することが一般的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、超音波等の軸力測定器具を用いるには前記両平面部を形成するのに切削及び研磨して形成するか、冷間圧造で両平面部を形成するかであるが、切削及び研磨はコスト高であり、また冷間圧造の2段工程で平面部を形成させるには頭部6角の対角の張りが悪くなるので、より多段工程で平面部を加工するか、頭部に凹部形状の平面部を形成させ対角を張らせるかであるが、多段工程はコスト高であり、凹部形状は超音波等のセンサ−部の大きさが凹部に入る大きさに限定されてしまう。また軸力がかかった時に頭部平面部にそりの影響で軸力測定に誤差があらわれることがあり、挿入性でボルト端部にC面部を形成させるが、冷間圧造の場合では多段工程でないと平面部とC面部が形成できない。あるいは切削加工等となり、軸力測定ボルトはやはりコストが高いという問題があった。
【0004】
従って、本発明の課題はコストが安いボルト頭部及び端部の形状及び製造方法を発明し、安価な軸力測定ボルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するための手段として、ボルト頭部が多角形状であり、その頭部上面が外部多角形状に頂点位置を合わせた多角形状の溝を頭部上面内部にもち、その多角形状は6〜12の範囲で形成されており、上面内部の多角溝の内側は多角形状または円形状の平面部が形成されている。前記ボルト上面の多角外部と多角溝内側平面部との高さは同じか多角溝内側平面部が若干高い位置であり、多角溝内側平面部の直径は多角外部2面巾の1/5から4/5の範囲であり、多角溝底面は軸部に対して頭部上面側に−30°から+30°の範囲で傾斜し、多角溝深さは頭部高さの1/2以内で形成されている。これらの前記ボルトの頭部は冷間圧造機において2〜4段工程で加工し、同時に軸部及びボルト先端部のカット平面部が形成されている。カット平面部は頭部平面部と平行度が0.1mm以下で平均粗さRzを12.5以下とする。前記ボルトの先端部は垂直な平面から転造加工で軸部のねじ加工と同時に先端内部に平面部を残し、外側を伸ばしながらC面部を形成させる。本発明ボルトは冷間圧造2〜4段工程加工及び転造加工で形成させ、安価な軸力測定ボルトを製作することである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の軸力測定ボルトは冷間圧造機を用い2段工程でボルト多角頭部にその頭部上面が外部多角形状に頂点位置を合わせた多角形状の溝とその内側に平面部を形成させることによって頭部多角対角を充分に張らせ、ボルト上面の多角外部と多角溝内側平面部との高さは同じか若干高いので、超音波等のセンサーの大きさに関係なく測定ができ、また軸力がかかった時に頭部多角形状の溝でそりを吸収し、平面部にそりの影響がでない超音波等での軸力測定が可能となる。また2段工程で同時に軸部と先端部のカット平面部を形成させ、軸部と先端部を転造加工で、ねじ加工しながら同時に先端内部に平面部を最大限残しながらC面部を形成させれば、先端内部の平面部の面積が従来のC面加工より大きくとれるので、従来のC面加工に比べて超音波等での軸力測定が正確となり、また先端部の平面部が内部に形成されているので、打コン等のキズがつきにくいので、超音波軸力測定時の打コン等による反射ノイズの影響が減る。本発明ボルトはコストが通常ボルトとあまり変わらず安価で製作できるので、通常ボルトとしても利用でき、その場合は検査等での軸力測定はいつでもボルトを選ばずできる。又超音波式の軸力制御締め付け機を利用すれば軸力安定締め付けも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の一実施形態によるボルトを図1に示す。図1に示すボルト頭部が6角形状(5)であって、その頭部上面が外部6角形状に頂点位置を合わせた6角形状の溝(3)を上面内部に形成し、6角形状の溝(3)底面は軸部に対して頭部上面側に−30°(Xa)から+30°(Xb)以内で傾斜している。6角形状溝深さ(Ya、Yb、Yc)は頭部高さの1/2以内とする。前記ボルト上面内部の6角溝の内側は多角形状又は円形状の平面部(6)が形成されており、平面部(6)の直径は6角外部2面巾の1/5から4/5の範囲とする。前記ボルト上面の6角外部(5)と6角溝内側平面部(6)との高さは同じか6角溝内側平面部(6)が若干高い位置である。前記ボルトの製造方法は冷間圧造機において2〜4段工程で加工し、また同時に軸部と先端部のカット平面部(4a)を形成させる。カット平面部は頭部平面部と平行度が0.1mm以下で平均粗さRzを12.5以下とする。その後転造加工で軸部(2)と先端部の垂直なカット平面(4a)を軸部(2)のねじ加工をしながら同時に先端内部に平面部(4b)を最大限残し、外側を伸ばしながらC面部(7)が形成されている。
【実施例】
【0010】
図1に示すボルト頭部が6角形状(5)であって、その頭部上面が外部6角形状に頂点位置を合わせた6角形状の溝(3)を上面内部に形成し、望ましくは各コーナー部においては型寿命のために若干のR形状とする。6角形状の溝底面角度は軸部に対して頭部上面側に−30°(Xa)から+30°(Xb)以内で望ましくは+1°〜+2°傾斜させ内側を深く外側を浅くすれば、超音波軸力測定時の反射ノイズが減少し、頭部6角の対角の張り(8)も良くなる。6角形状溝深さ(Yb)は頭部高さの1/2以内で、望ましくは1/8くらいとする。前記ボルト上面内部の6角溝の内側は、多角形状又は円形状の望ましくは円形状の平面部(6)が形成されており、平面部(6)の直径は6角外部2面巾の1/5から4/5の範囲とし、望ましくは1/2くらいとする。前記ボルト上面の6角外部(5)と6角溝内側平面部(6)との高さは同じか望ましくは6角溝内側平面部(6)が若干高い位置とする。前記ボルトの製造方法は冷間圧造機において望ましくは2段工程で加工し、同時に軸部と先端部のカット平面部(4a)を形成させる。カット平面部は頭部平面部と平行度が0.1mm以下で平均粗さRzを12.5以下とする。その後転造加工で軸部(2)と先端部の垂直なカット平面(4a)を軸部(2)のねじ加工をしながら同時に先端内部に平面部(4b)を最大限残し、外側を伸ばしながらC面部(7)が形成されているので従来のC面加工の先端平面部(44)(444)に比べて面積が大きくとれ、超音波等での軸力測定が正確となる。
【0011】
本発明は図面に示した態様に限定されることなく、本発明の範囲を逸脱しない限り色々の変更を施すことができる。例えば、本発明の一実施形態では6角形状ボルトだが、6〜12角の範囲で外部多角形状と内部溝多角形状が同じ頂点部位置なら多角形状ボルトでも良い。内部溝多角形状の各コーナー部においては型寿命のために若干のR形状としても良い。内部溝底面角度は超音波の反射波の誤動作を少なくするためなので、−30°〜+30°の範囲ならボルト形状(長さ・径等)に応じて最良な角度に変更しても良い。また頭部首下側にはつばやフランジがついているものでもついていなくてもよく、座金が組み込まれていてもいなくても良い。ボルト上面内部の6角溝の内側の平面部は溝外側が多角形状で内側は多角形状でも円形状でも良い。本発明ボルトの頭部でボルト端面部は平面でも転造加工で先端内部に平面部を最大限残したC面部を付けても良い。ボルト端面部に本発明の転造加工で先端内部に平面部を最大限残したC面部を付けた場合は、従来のC面加工の先端平面部に比べて面積が大きくとれ、超音波等での軸力測定が正確となるので、ボルト頭部は従来研磨ボルトや従来凹部冷間加工の平面部でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1〜図6は本発明の一実施例を示すものである。
【図1】本発明ボルトの正面図
【図2】本発明ボルトの上面図
【図3】図2におけるA−A断面図
【図4】従来研磨ボルトの正面図
【図5】従来凹部ボルトの正面図
【図6】従来凹部ボルトの上面図
【図7】図2における本発明ボルトの多角溝底面が軸部に対して頭部上面側に−30°以内のA−A断面図
【図8】図2における本発明ボルトの多角溝底面が軸部に対して頭部上面側に+30°以内のA−A断面図
【図9】従来研磨ボルト等の頭部平面形状と本発明先端部の転造加工での内部平面部とC面部の断面図
【図10】従来凹部ボルト等の頭部平面形状と本発明先端部の転造加工での内部平面部とC面部の断面図
【図11】従来研磨ボルトの平面部とC面部の断面図
【図12】従来凹部ボルトの内部平面部とC面部の断面図
【図13】本発明ボルトの内部平面部とC面部の断面図
【図14】本発明ボルトの転造加工正面片側図
【図15】本発明ボルトの転造加工側面図
【符号の説明】
【0012】
1 本発明ボルトの頭部
2 ねじ部
3 6角形状溝部
4a 先端転造加工前平面部
4b 転造加工端面平面部
5 6角形状外部
6 頭部6角形状溝内側平面部
7 先端転造加工C面部
8 頭部6角対角の張り部
11 従来研磨ボルトの頭部
22 ねじ部
44 研磨加工端面平面部
55 6角トリム形状外部
66 頭部研磨平面部
111 従来凹ボルトの冷間圧造加工頭部
222 ねじ部
444 冷間圧造加工端面平面部
555 6角リセス形状外部
666 6角リセス形状内部の平面部
Xa 多角溝底面の角度(軸部に対して頭部上面側に−30°以内)
Xb 多角溝底面の逆角度(軸部に対して頭部上面側に+30°以内)
9a ねじ部C面部同時転造加工ダイス固定側
9b ねじ部C面部同時転造加工ダイス移動側
Yc 6角形状溝部深さ
Ya Xa側6角形状溝部最大深さ
Yb Xb側6角形状溝部最大深さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波等で軸力が測定できるボルトであって、ボルト頭部が多角形状であり、その頭部上面が外部多角形状に頂点位置を合わせた多角形状の溝を頭部上面内部にもつことを特徴とするボルト。
【請求項2】
前記多角形状は6〜12の範囲で形成されている請求項1に記載のボルト。
【請求項3】
前記ボルト上面内部の多角溝の内側は多角形状または円形状の平面部が形成されている請求項1または2に記載のボルト。
【請求項4】
前記ボルト上面の多角外部と多角溝内側平面部との高さは同じか多角溝内側平面部が若干高い位置である請求項1〜3に記載のボルト。
【請求項5】
前記ボルト上面の多角溝内側平面部の直径は多角外部2面巾の1/5から4/5の範囲である請求項1〜4に記載のボルト。
【請求項6】
前記ボルトの多角溝底面は軸部に対して頭部上面側に−30°から+30°の範囲で傾斜している請求項1〜5に記載のボルト。
【請求項7】
前記ボルトの多角溝深さは頭部高さの1/2以内である請求項1〜6に記載のボルト。
【請求項8】
前記ボルトを冷間圧造機において2〜4段工程で加工する請求項1〜7に記載のボルトの製造方法。
【請求項9】
前記ボルトのように超音波等で軸力測定ができるボルトであって、ボルト先端部が垂直な平面から転造加工で軸部のねじ加工と同時に先端内部に平面部を残し、外側を伸ばしながらC面部を形成させたことを特徴とするボルト。
【請求項10】
前記ボルトの軸部と先端部を同時転造加工で形成させる請求項9に記載のボルトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−292717(P2006−292717A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−254102(P2005−254102)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(591171677)株式会社メイドー (10)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】