説明

ポインティングデバイス

【課題】磁電変換素子型ポインティングデバイスの外形寸法を、操作部の操作性を損なうことなく、携帯型情報機器への搭載が実現可能な水準まで削減する。
【解決手段】ポインティングデバイス260は、基部と、基部に対して移動可能に基部上に支持される操作部194と、操作部194の保持部200に設置される磁石196と、磁石196の近傍で基部に設置される複数の磁電変換素子198とを備える。基部は、携帯型情報機器の回路基板340を備える。操作部194の弾性部202は、保持部200を実質的全周に渡って囲繞する主部分232と、主部分232の一端で保持部200に連結される第1連結部分234と、主部分232の他端で基部に連結される第2連結部分236とを、互いに一体に有する。携帯型情報機器に搭載したときに、携帯型情報機器の筐体350が、回路基板340と協働して、弾性部202の第2連結部分236を固定的に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ処理装置に組み込まれるポインティングデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータやワードプロセッサ等の、ディスプレイ及びキーボードを備えたデジタルデータ処理装置において、オペレータが手操作してアナログ的な情報を入力することにより、ディスプレイ上のカーソル移動データ等の座標データを指示する補助入力装置としてのポインティングデバイスを備えたものは周知である。特に、携帯可能な小型データ処理装置では、処理装置の筐体にポインティングデバイスを一体的に組み込んだ構成が一般的である。
【0003】
この種のポインティングデバイスとして、基部と、基部上に移動自在に支持される操作部と、基部に設置される磁電変換素子と、磁電変換素子に近接して操作部に設置される磁石とを具備するものが知られている。このポインティングデバイスでは、オペレータが操作部を基部上で任意の曲面方向へ移動操作することにより、磁石と磁電変換素子との相対的位置関係を変化させて磁電変換素子の出力電圧を変動させ、以って操作部の移動方向及び移動距離に対応したアナログ情報を入力することができる。
【0004】
また、上記構成に加えて、基部と操作部との間にスイッチ機構を装備し、オペレータが操作部を基部に向けて押し込むことによりスイッチ機構を作動させるようにしたポインティングデバイスも知られている(例えば特許文献1参照)。このポインティングデバイスでは、アナログ情報の入力に加えて、操作部を押下操作することにより、例えば搭載対象機器のディスプレイ上のポインタに関連してクリック操作を実施することができる。
【0005】
【特許文献1】特公平7−117875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、磁電変換素子型のポインティングデバイスは、座標データ入力に必要な操作部の移動量が少なく、かつ消費電力が比較的低いことから、電子手帳、携帯情報端末(PDA)、携帯電話等の、手持操作可能な種々の携帯型情報機器に、とりわけ有利に搭載できると考えられる。しかし、上記した従来の磁電変換素子型のポインティングデバイスにおいては、操作部を基部上で曲面方向へ移動させる構成を採用しているので、基部と操作部との相互係合部位に所要の曲率及び面積を有する曲面を形成する必要があり、結果としてポインティングデバイスの外形寸法を、携帯型情報機器への搭載を実現可能とする程度に削減することが困難になっていた。
【0007】
例えば、ディスプレイ部とキーボード部とが互いに蝶番連結された折り畳み可能な携帯型情報機器においては、キーボード部に設置したスイッチ類のキーボード部表面からの突出を極力排除することが、折り畳み時の機器の厚みを削減して携帯性を一層向上させる観点で望ましい。したがって、磁電変換素子型のポインティングデバイスをこのような携帯型情報機器のキーボード部に搭載する場合は、ポインティングデバイスの特に高さ方向の寸法を可及的に低減することが要求される。
【0008】
また、携帯型情報機器にポインティングデバイスを搭載する場合には、機器筐体の狭小な内部空間で、ポインティングデバイスと情報機器の主回路基板(実装基板)との電気的及び機械的接続を、確実かつ安定的に実現することが要求される。さらに、携帯型情報機器に磁電変換素子型のポインティングデバイスを搭載する場合、小型化されたポインティングデバイスの各種構成部品の取り扱いが煩雑になり、情報機器全体の組立作業性が悪化することが懸念される。
【0009】
さらに、クリック機能を有する磁電変換素子型のポインティングデバイスでは、操作部の押下操作に伴って、磁石と磁電変換素子との間に必然的に相対移動が生じる。このとき、両者の相対移動方向によっては、クリック操作の直前に、磁電変換素子の出力電圧の変動により、カーソル移動データ等のアナログデータの信号がポインティングデバイスから出力されてしまう懸念がある。そこで、適正なクリック操作を実施するためには、操作部を基部に対して正確に鉛直方向へ押し込むことが必要となり、そのための案内構造を追加装備するか、さもなければオペレータの熟練が要求されることになる。
【0010】
したがって本発明の目的は、磁電変換素子型のポインティングデバイスにおいて、操作部の操作性を損なうことなく、携帯型情報機器への搭載が実現可能な水準まで外形寸法を削減できるポインティングデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、複数のキートップを有するキーパネルとキーパネルを覆う筐体とを備えた携帯型情報機器に搭載されるポインティングデバイスであって、基部と、基部に対して変位可能に基部上に支持される操作部と、操作部に設置される磁石と、磁石の近傍で基部に設置される磁電変換素子とを具備し、操作部は、磁石を固定的に保持して基部上に移動可能に支持される保持部と、保持部に連結され、基部上での保持部の移動に伴い、保持部を移動範囲の原点位置に復帰させる弾性力を発揮する弾性部とを備え、弾性部は、保持部を実質的全周に渡って囲繞する主部分と、主部分の一端で保持部に重なるように延長されて保持部に連結される第1連結部分と、主部分の他端の第2連結部分とを、互いに一体に有し、主部分が、基部上での保持部の移動方向に関わらず一様な弾性力を発揮するように形成され、携帯型情報機器に搭載したときに、筐体が、弾性部の第2連結部分を固定的に保持すること、を特徴とするポインティングデバイスを提供する。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のポインティングデバイスにおいて、操作部の弾性部が、携帯型情報機器のキーパネルに一体化されているポインティングデバイスを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るポインティングデバイスによれば、操作部に設けた弾性部が、磁石を保持する保持部を実質的全周に渡って囲繞する主部分で、保持部の移動方向に関わらず一様な弾性力を発揮する構成であるから、基部と操作部との間に復帰ばねを介在させた従来の構成に比べて、操作性を損なうことなく、特に高さ方向の外形寸法を削減できる。しかも、携帯型情報機器に搭載したときに、携帯型情報機器の筐体が、弾性部の第2連結部分を固定的に保持するように構成したから、操作部の操作性を損なうことなく、携帯型情報機器への搭載が実現可能な水準までポインティングデバイスの外形寸法を削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図面において、同一又は類似の構成要素には共通の参照符号を付す。
図1は本発明の関連技術によるポインティングデバイス10の分解斜視図、図2はポインティングデバイス10の組立斜視図、図3はポインティングデバイス10の組立断面図である。ポインティングデバイス10は、パーソナルコンピュータ、パーソナルワードプロセッサ等のデータ処理装置や、電子手帳、携帯情報端末(PDA)、携帯電話等の携帯型情報機器において、ディスプレイ上の二次元座標データを指示する補助入力装置として機器筐体に一体的に組み込んだ構成で使用できるものである。
【0015】
ポインティングデバイス10は、基部12と、基部12に対して任意の水平方向へ変位可能に基部12上に支持される操作部14と、操作部14に設置される円板状の磁石(例えば永久磁石)16と、磁石16の近傍で基部12に設置される複数の磁電変換素子(例えばホール素子)18とを備える。操作部14は、磁石16を固定的に保持して基部12上に水平方向へ移動可能に支持される保持部20と、保持部20に連結され、基部12上での保持部20の水平移動に伴い、保持部20を水平移動範囲の原点位置に復帰させる弾性力を発揮する弾性部22とを備える。
【0016】
基部12は、図示しないCPU等の電子部品が実装される回路基板24と、回路基板24に固定的に連結される支持部材26とを備える。支持部材26は、回路基板24の表面24aから離隔した位置に、操作部14の保持部20を任意の水平方向へ摺動自在に支持する支持部分28を有する。なお、この形態において「水平方向」とは、回路基板24の略平坦な表面24aに実質的平行な方向を意味する。したがって支持部材26の支持部分28には、回路基板24から離れた側に、回路基板24の表面24aに実質的平行に広がる平坦かつ円形の支持面28aが形成される。支持面28aは、回路基板24の表面24aから突出した位置で、保持部20を任意の水平方向へ摺動自在に支持する。
【0017】
支持部材26にはさらに、支持面28aを囲繞するようにして、操作部14の保持部20の水平移動範囲を規定する円筒壁30が突設される。円筒壁30は、回路基板24の表面24aからの高さが支持面28aよりも高い位置まで突設され、後述するように弾性部22がその一部分で円筒壁210を包囲して支持部材26に取り付けられる。支持面28aの中心を通る円筒壁30の中心軸線は、ポインティングデバイス10の中心軸線Pを構成するとともに、支持面28a上での保持部20の水平移動範囲の原点位置を規定する。また支持部材26の外縁には、円筒壁30の反対側に突出する複数(図では4個)の弾性爪32が形成される。支持部材26は、回路基板24の対応位置に設けられた複数の穴34にそれら弾性爪32をスナップ式に嵌入することにより、回路基板24上の所定位置に固定的に組み付けられる。
【0018】
回路基板24の表面24aには、回路基板24と支持部材26の支持部分28との間に形成される空所の内部で、計4個の磁電変換素子18が中心軸線Pを中心とした等間隔分散配置で実装される。このような磁電変換素子18の配置構成により、ポインティングデバイス10は二次元座標系におけるアナログデータ信号を出力できるようになっている。
【0019】
基部12はさらに、支持部材26の外縁領域を実質的に遮蔽して回路基板24に固定的に連結されるカバー部材36を備える。カバー部材36は、円筒状の外周壁38と、外周壁38の軸線方向一端から径方向内方へ延長される円環状の端壁40とを備え、端壁40の内縁が、後述する操作部14の主要操作部分を水平移動可能に挿通させる中心開口42を画定する。カバー部材36の外周壁38の軸線方向他端には、端壁40の反対側に突出する複数(図では4個)の弾性爪44が一体的に連結される。カバー部材36は、矩形平板状の回路基板24の一組の対向外縁にそれら弾性爪44をスナップ式に嵌着することにより、回路基板24上の所定位置に固定的に組み付けられる。カバー部材36は、中心開口42を通して操作部14の主要操作部分を外方に突出させた状態で、操作部14を基部12から脱落しないように保持する。
【0020】
図示の形態では、操作部14の保持部20及び弾性部22は、別部材として個別に作製されて、互いに固定的に組み合わされる。保持部20は、操作部14を基部12上で水平移動操作する間に実質的に変形しない程度の剛性を有する段付き円筒状の部材からなり、その軸線方向一端側の大径部分に、磁石16を収容する凹所46が形成される。磁石16は、例えば接着剤を用いたり圧入したりすることにより、保持部20の凹所46に固定できる。保持部20は、凹所46を画定する円筒状の外周壁48の先端(図で下端)を、基部12の支持部材26の支持面28aに一様に当接した状態で、支持面28a上で360°全方位へ摺動しつつ平行移動できる。このような構成は、保持部20と支持面28aとの接触面間の摩擦を低減して、操作部14の水平移動操作性を向上させる点で有利である。
【0021】
弾性部22は、操作部14を基部12上で水平移動操作する間に比較的容易に弾性変形する椀状の部材からなり、保持部20の周囲に隙間を介して延長される主部分50と、主部分50の一端で保持部20に連結される第1連結部分52と、主部分50の他端で基部12に連結される第2連結部分54とを一体に有する。弾性部22の主部分50は、保持部20を実質的全周に渡って囲繞するとともに、無負荷状態で保持部20に対し同軸に配置される円錐台状又はドーム状の輪郭形状を有する。したがって弾性部22は、その主部分50が、基部12上での保持部20の水平移動に伴い弾性変形するとともに、変形量に対応する弾性力を、保持部20の水平移動方向に関わらず一様に発揮する。
【0022】
弾性部22の第1連結部分52は、円錐台状輪郭の主部分50の小径端から軸線方向へ皿状に突出して一体に延長され、その内側に形成される窪みに、保持部20の軸線方向他端側の小径部分56が固定的に嵌入される。弾性部22の第1連結部分52は、例えば接着剤により保持部20の小径部分56に固定できる。第1連結部分52は、保持部20の小径部分56を密接被覆して延び、その外面に、オペレータが操作部14を移動操作する際に例えば手の指先を接触させる操作面58が形成される。
【0023】
弾性部22の第2連結部分54は、円錐台状輪郭の主部分50の大径端から径方向及び軸線方向へフランジ状に突出して一体に延長され、その肉厚部分で、基部12を構成する支持部材26の円筒壁30の外側領域とカバー部材36の外周壁38及び端壁40との間に固定的に挟持かつ掛止される。第1及び第2連結部分52、54は、基部12上で保持部20が水平移動する間に実質的に変形することなく、弾性部22を保持部20及び基部12にそれぞれ固定的に連結する。
【0024】
なお弾性部22は、合成ゴム、天然ゴム等の種々の弾性材料から形成できる。特に、ポインティングデバイス10を搭載対象機器の主回路基板に実装する際にリフロー工程を実施することを考慮すれば、シリコンゴム等の、高温下でも性質が劣化し難い材料から形成することが有利である。
【0025】
上記した各種構成部品を適正に組み合わせた状態で、操作部14は、弾性部22の主部分50及び第1連結部分52を、基部12のカバー部材36の中心開口42に水平移動可能に挿通するとともに、保持部20の小径部分56及びそれを被覆する弾性部22の第1連結部分52を、基部12のカバー部材36の端壁40から外方に突出した位置に配置する。この状態でオペレータは、弾性部22の第1連結部分52に形成される操作面58を、例えば手指により操作して、保持部20を基部12上で水平移動させることができる。
【0026】
図3に示すように、操作部14の弾性部22が平衡状態にあるときには、保持部20及びその凹所46に保持される磁石16の中心軸線Qは、ポインティングデバイス10の中心軸線Pに合致する。この状態で保持部20は、基部12の支持部材26上で水平移動範囲の原点位置に位置決めされ、回路基板24上の4個の磁電変換素子18が磁石16から等距離の位置に配置される。この状態から、図4に示すように、オペレータが操作面58に指先を当接して保持部20を任意の水平方向へ平行移動させると、弾性部22の主部分50が、保持部20の移動方向及び移動距離に対応して、全周に渡り異なる形態の弾性変形を生じる。それにより弾性部22は、主部分50の全体で合力としての弾性力を発揮し、保持部20をその移動方向と反対の方向に付勢する。したがってオペレータは、弾性部22の主部分50が生ずるばね付勢力に抗して、操作部14を水平移動操作することになる。
【0027】
操作部14を図3の原点位置から図4に示す位置に水平移動操作すると、磁石16と各磁電変換素子18との相対的位置関係が変化し、各磁電変換素子18の出力電圧が変動する。各磁電変換素子18の出力電圧の変動は、回路基板24上の図示しないCPUでアナログ情報として処理されてデジタル座標データに変換され、回路基板24に設けられるコネクタ部(図示せず)を介して、搭載対象機器(図示せず)のデータ処理回路に出力される。このようにして、操作部14の保持部20の移動方向及び移動距離に対応して、例えば搭載対象機器のディスプレイ上のカーソルやポインタを所望方向に所望距離だけ移動することができる。
【0028】
図4のデータ入力位置から、オペレータが操作部14から指を離して操作力を解除すると、弾性部22の主部分50が生じているばね付勢力により、直ちに保持部20が磁石16と一体的に原点位置に向けて移動し、弾性部22の主部分50が平衡状態に到達した時点で原点位置に復帰する。なお、保持部20が原点位置に復帰する間に、磁石16の迅速な移動に伴って生じる各磁電変換素子18の出力電圧の急激な変動は、例えばCPUにおける処理フローでキャンセルしてデジタル座標データに変換しないように構成することができる。
【0029】
上記構成を有するポインティングデバイス10によれば、基部12の支持部材26に設けた平坦な支持面28a上で、操作部14の保持部20を移動させる構成としたから、曲面状の支持面を採用した従来の構成に比べて、基部12の外形寸法を削減することができる。また操作部14に、保持部20を水平移動範囲の原点位置に復帰させる弾性部22を設けたから、保持部20を迅速かつ正確に原点位置に復帰させることができ、操作部14の操作性を向上させることができる。しかも弾性部22は、保持部20を実質的全周に渡って囲繞する主部分50で、保持部20の移動方向に関わらず一様な弾性力を発揮する構成であるから、基部と操作部との間に復帰ばねを介在させた従来の構成に比べて、操作性を損なうことなく、特に高さ方向の外形寸法を削減できる。保持部20の小径部分56を被覆する弾性部22の第1連結部分52は、基部12のカバー部材36から外方に突出した位置で操作面58を形成するので、オペレータが基部12上での操作部14の位置を触覚で容易に確認できる利点もある。このように、ポインティングデバイス10は、操作部14の操作性を損なうことなく、電子手帳、携帯情報端末(PDA)、携帯電話等の、手持操作可能な種々の携帯型情報機器への搭載が実現可能な水準まで、外形寸法を削減できる。
【0030】
図5及び図6は、本発明の関連技術によるポインティングデバイス60を、それぞれ分解斜視図及び組立断面図で示す。ポインティングデバイス60は、基部の回路基板に連結される支持部材の構成以外は、前述した関連技術によるポインティングデバイス10と実質的同一の構成を有するので、対応する構成要素には共通の参照符号を付してその説明を省略する。
【0031】
ポインティングデバイス60は、基部62と、基部62に対して任意の水平方向へ移動可能に基部62上に支持される操作部14と、操作部14に設置される磁石16と、磁石16の近傍で基部62に設置される複数の磁電変換素子18とを備える。基部62は、図示しないCPU等の電子部品が実装される回路基板24と、回路基板24に固定的に連結される支持部材64と、支持部材64を実質的に遮蔽して回路基板24に固定的に連結されるカバー部材36とから構成される。
【0032】
支持部材64は、円形の中心開口を画定する中空の円筒壁66を備える。さらに支持部材64は、その外縁に沿って、円筒壁66の反対側に突出する複数(図では4個)の弾性爪68を有し、それら弾性爪68により、回路基板24上の所定位置に固定的に組み付けられる。そして回路基板24の表面24aには、支持部材64の円筒壁66に包囲された円形領域に、操作部14の保持部20を任意の水平方向へ摺動自在に支持する平坦な支持面70が形成される。
【0033】
支持部材64の円筒壁66は、回路基板24の表面24aに形成される支持面70内での、操作部14の保持部20の水平移動範囲を規定する。また、支持面70の中心を通る円筒壁66の中心軸線は、ポインティングデバイス60の中心軸線Pを構成するとともに、支持面70上での保持部20の水平移動範囲の原点位置を規定する。保持部20は、大径部分の外周壁48の先端(図で下端)を、回路基板24上の支持面70に一様に当接した状態で、支持面70上で360°全方位へ摺動しつつ平行移動できる。そして、4個の磁電変換素子18は、支持面70の反対側に位置する回路基板24の裏面24bに、中心軸線Pを中心とした等間隔分散配置で実装される。
【0034】
ポインティングデバイス60は、前述したポインティングデバイス10と同様にして、基部62上で操作部14を水平移動操作することにより、アナログデータを入力することができる。このとき、操作部14に設けた弾性部22の作用により、保持部20を水平移動範囲の原点位置に迅速かつ正確に復帰させることができる。特にポインティングデバイス60では、基部62の回路基板24の表面24aに直接、操作部14の保持部20を搭載するとともに、磁電変換素子18を回路基板24の裏面24bに実装しているので、前述したポインティングデバイス10に比べて、高さ方向の寸法を一層効果的に削減することができる。
【0035】
なお上記構成では、支持部材64は、上記したように保持部20の水平移動範囲を規定するとともに、カバー部材36と協働して弾性部22の第2連結部分54を固定的に挟持するように作用する。したがって、カバー部材36の中心開口42の寸法を調整して中心開口42により保持部20の水平移動範囲を規定できるように構成するとともに、弾性部22の第2連結部分54とカバー部材36の連結強度を例えば一体成形等により向上させることによって、支持部材64を省略することもできる。
【0036】
図7及び図8は、本発明の関連技術によるポインティングデバイス80を、それぞれ分解斜視図及び組立断面図で示す。ポインティングデバイス80は、基部の回路基板に連結される支持部材の構成と、クリック機能を付加するためのスイッチ機構を内蔵した構成以外は、前述した関連技術によるポインティングデバイス10と実質的同一の構成を有するので、対応する構成要素には共通の参照符号を付してその説明を省略する。
【0037】
ポインティングデバイス80は、基部82と、基部82に対して任意の水平方向へ移動可能に基部82上に支持される操作部14と、操作部14に設置される磁石16と、磁石16の近傍で基部82に設置される複数の磁電変換素子18と、基部82と操作部14との間に配置されるスイッチ機構84とを備える。基部82は、図示しないCPU等の電子部品が実装される回路基板24と、回路基板24に固定的に連結される支持部材86と、支持部材86の外縁領域を実質的に遮蔽して回路基板24に固定的に連結されるカバー部材36とを備える。支持部材86は、回路基板24の表面24aから離隔した位置に、操作部14の保持部20を任意の水平方向へ摺動自在に支持する支持部分を構成する複数(図では4個)の弾性梁部分88を有する。支持部材86のそれら弾性梁部分88には、回路基板24から離れた側に、無負荷状態で回路基板24の表面24aに実質的平行に広がる平坦な支持面88aがそれぞれ形成される。
【0038】
支持部材86の複数の弾性梁部分88は、ポインティングデバイス80の中心軸線Pを中心として放射状に配置され、それらの径方向外端を支点として、互いに独立して弾性的に変位できる。各弾性梁部分88の基端すなわち径方向外端には、各々の支持面88aを囲繞するようにして、操作部14の保持部20の水平移動範囲を規定する円弧壁90がそれぞれ突設される。それら円弧壁90は、中心軸線Pを中心とする同一円周上に配置され、中心軸線Pが、複数の支持面88a上での保持部20の水平移動範囲の原点位置を規定する。保持部20は、大径部分の外周壁48の先端(図で下端)を、複数の弾性梁部分88の支持面88aに一様に当接した状態で、それら支持面88a上で360°全方位へ摺動しつつ平行移動できる。
【0039】
また、複数の弾性梁部分88のうちで所望の1つの弾性梁部分88には、その径方向内端の自由端に、支持面88aの反対側に局部的に隆起する押圧点92が形成される。押圧点92は、ポインティングデバイス80の中心軸線P上に整合して配置される。支持部材86は、その外縁に設けた複数(図では4個)の弾性爪94により、回路基板24上の所定位置に固定的に組み付けられる。
【0040】
回路基板24の表面24aには、回路基板24と支持部材86の複数の弾性梁部分88との間に形成される空所の内部で、クリック機能を付加するためのスイッチ機構84が実装される。スイッチ機構84は、可動接点と固定接点とを有する周知の開閉構造を備え、それら両接点がポインティングデバイス80の中心軸線Pに実質的に整合する位置に配置される。すなわち、スイッチ機構84の可動接点は、支持部材86の1つの弾性梁部分88に設けた押圧点92の直下に位置決めされる。そして、4個の磁電変換素子18は、スイッチ機構84の反対側に位置する回路基板24の裏面24bに、中心軸線Pを中心とした等間隔分散配置で実装される。つまり、基部82の回路基板24は、スイッチ機構84を操作部14の下方に位置決めして担持し、磁電変換素子18は、回路基板24を挟んでスイッチ機構84とは反対側に配置される。それにより、回路基板24と支持部材86との間の空所の所要寸法が削減される。
【0041】
なお、スイッチ機構84の構成は任意であり、可動接点がばねに担持されるメカニカルスイッチや、一対のフレキシブル回路基板を有するメンブレンスイッチ等、様々なものを採用できる。また、スイッチ機構84の外形寸法によっては、複数の磁電変換素子18を、回路基板24と複数の弾性梁部分88との間の空所内に設置することもできる。
【0042】
ポインティングデバイス80は、前述したポインティングデバイス10と同様にして、基部82上で操作部14を水平移動操作することにより、アナログデータを入力することができる。このとき、操作部14に設けた弾性部22の作用により、保持部20を水平移動範囲の原点位置に迅速かつ正確に復帰させることができる。さらにポインティングデバイス80では、図8に示す原点位置において、オペレータが操作部14の操作面58を例えば指先で押下して、保持部20の外周壁48の下端を複数の弾性梁部分88に押し付けることにより、それら弾性梁部分88の下方に位置するスイッチ機構84を閉成させることができる。この形態では、図9に示すように、操作部14を押下することにより、各弾性梁部分88が径方向外端を支点に弾性的に撓み、1つの弾性梁部分88に設けた押圧点92がその直下のスイッチ機構84を押圧して作動させる。
【0043】
スイッチ機構84が閉成作動すると、回路基板24上のCPUがクリック信号として処理して、搭載対象機器のデータ処理回路に出力する。このようにして、操作部14を原点位置で押下することにより、例えば搭載対象機器のディスプレイ上のポインタに関連してクリック操作を実施することができる。そして図9の押下位置から、オペレータが押下力を解除すると、複数の弾性梁部分88が弾性的に復原して、スイッチ機構84が開成されるとともに、操作部14が図8の原点位置に復帰する。なお、操作部14の水平移動操作中に、オペレータが操作部14に負荷する操作力によってスイッチ機構84を不用意に作動させてしまわないようにするために、支持部材86の材料や弾性梁部分88の寸法を適宜選択してそれら弾性梁部分88の弾性力を調整することが望ましい。
【0044】
上記したスイッチ機構を有するポインティングデバイスは、他の構成によっても実現できる。図10及び図11は、そのような本発明の関連技術によるポインティングデバイス100を、それぞれ分解斜視図及び組立断面図で示す。ポインティングデバイス100は、基部の回路基板に連結されてスイッチ機構を作動させる支持部材の構成以外は、前述した関連技術によるポインティングデバイス80と実質的同一の構成を有するので、対応する構成要素には共通の参照符号を付してその説明を省略する。
【0045】
ポインティングデバイス100は、基部102と、基部102に対して任意の水平方向へ移動可能に基部102上に支持される操作部14と、操作部14に設置される磁石16と、磁石16の近傍で基部102に設置される複数の磁電変換素子18と、基部102と操作部14との間に配置されるスイッチ機構84とを備える。基部102は、図示しないCPU等の電子部品が実装される回路基板24と、回路基板24に固定的に連結される第1支持部材104と、弾性部材106を介して第1支持部材104上に弾性変位可能に支持される第2支持部材108と、第1支持部材104を実質的に遮蔽して回路基板24に固定的に連結されるカバー部材36とを備える。
【0046】
第1支持部材104は、同心かつ周方向等間隔に配置される複数の円弧壁110を備え、それら円弧壁110によって円形の中心開口を画定する。さらに第1支持部材104は、その外縁に沿って、各円弧壁110の反対側に突出する複数(図では4個)の弾性爪112を有し、それら弾性爪112により、回路基板24上の所定位置に固定的に組み付けられる。例として圧縮コイルばねからなる弾性部材106は、第1支持部材104の複数の円弧壁110を同心状に取り巻いて配置される。
【0047】
第2支持部材108は、円板状の支持部分114と、支持部分114の外縁に沿って周方向等間隔に配置され、径方向外方へ延設される複数(図では4個)のフランジ部分116とを備える。第2支持部材108の支持部分114は、第1支持部材104の複数の円弧壁110によって画定される中心開口にがたつき無く軸線方向摺動自在に収容される寸法及び形状を有する。また、複数のフランジ部分116は、第1支持部材104の周方向へ隣り合う円弧壁110の間に各々ががたつき無く軸線方向摺動自在に受容される寸法及び形状を有する。
【0048】
第2支持部材108を第1支持部材104に適正に組み付けた状態で、複数のフランジ部分116は、複数の円弧壁110を取り巻いて配置された弾性部材106の上端に載せられる。この状態で、第2支持部材108の支持部分114は、回路基板24の表面24aから離隔した位置に配置される。支持部分114には、回路基板24から離れた側に、弾性部材106が無負荷の状態で回路基板24の表面24aに実質的平行に広がる平坦かつ円形の支持面114aが形成される。
【0049】
第2支持部材108の複数のフランジ部分116は、支持面114aを囲繞する円弧面をそれぞれに有し、第1支持部材104の複数の円弧壁110と協働して、操作部14の保持部20の水平移動範囲を規定する。支持面114aの中心を通るそれら円弧壁110の中心軸線は、ポインティングデバイス100の中心軸線Pを構成するとともに、支持面114a上での保持部20の水平移動範囲の原点位置を規定する。また、第2支持部材108の支持部分114には、中心軸線P上で支持面114aの反対側に局部的に隆起する押圧点118が形成される。保持部20は、その大径部分の外周壁48の先端(図で下端)を、第2支持部材108の支持面114aに一様に当接した状態で、支持面114a上で360°全方位へ摺動しつつ平行移動できる。
【0050】
ポインティングデバイス100は、前述したポインティングデバイス10と同様にして、基部102上で操作部14を水平移動操作することにより、アナログデータを入力することができる。このとき、操作部14に設けた弾性部22の作用により、保持部20を水平移動範囲の原点位置に迅速かつ正確に復帰させることができる。さらにポインティングデバイス100では、図11に示す原点位置において、オペレータが操作部14の操作面58を例えば指先で押下して、保持部20の外周壁48の下端を第2支持部材108の支持部分114に押し付けることにより、支持部分114の下方に位置するスイッチ機構84を閉成させることができる。この形態では、図12に示すように、操作部14を押下することにより、弾性部材106が第2支持部材108の複数のフランジ部分116を介して弾性的に圧縮され、支持部分114に設けた押圧点118がその直下のスイッチ機構84を押圧して作動させる。
【0051】
そして図12の押下位置から、オペレータが押下力を解除すると、弾性部材106が弾性的に復原して、スイッチ機構84が開成されるとともに、操作部14が図11の原点位置に復帰する。なお、操作部14の水平移動操作中に、オペレータが操作部14に負荷する操作力によってスイッチ機構84を不用意に作動させてしまわないようにするために、弾性部材106のばね定数を適宜調整することが望ましい。
【0052】
上記したポインティングデバイス10、60、80、100には、様々な修正及び変形を施すことができる。例えば、操作部14は、異種材料から別部材として個別に作製した保持部20及び弾性部22を互いに固定的に組み合わせた上記構成に代えて、図13に示すように、保持部20と弾性部22とを異種材料から一体的に成形した構成を採用することもできる。図13に示すポインティングデバイス10の変形例では、同一又は異なる樹脂材料から予め個別に成形された保持部20及びカバー部材36に対し、インサート成形工程により、ゴム材料からなる弾性部22を一体成形している。このような構成によれば、弾性部22の第1連結部分52と保持部20の小径部分56との連結強度を向上させることができるとともに、弾性部22をその第2連結部分54でカバー部材36と一体化できるので組立作業が容易になる利点がある。
【0053】
この場合、図14に示すように、保持部20がその小径部分56で、弾性部22の第1連結部分52を貫通して外部に突出し、その突出部分120に、別部材として形成したキートップ122を装着する構成とすることもできる。キートップ122の外面には、オペレータが操作部14を移動操作する際に例えば手の指先を接触させる操作面124が形成される。この構成では、上記したように保持部20と弾性部22とを一体的に成形することにより、保持部20の小径部分56と弾性部22の第1連結部分52との十分な連結強度を確保することができる。また、キートップ122の裏側に設けた凹部126に保持部20の突出部分120を圧入するだけで、キートップ122を保持部20に強固に固定的に連結することができる。この構成によれば、キートップ122の外面に種々の符号や図柄を印刷したり、キートップ122を着色したりすることにより、ポインティングデバイスの意匠性を向上させることができる。
【0054】
或いは、図15に示すように、保持部20と弾性部22とを同一のゴム材料から一体成形することにより、操作部14を作製することもできる。この構成によれば、操作部14の部品点数が削減され、組立作業性が向上する。また、弾性部22の第1連結部分52における保持部20との組付強度を考慮する必要が無いので、操作部14の小形化を一層促進することができる。
【0055】
また、図16〜図20に示すように、弾性部による原点位置復帰機能を補助するための補助弾性部を、基部と操作部との間に配置することもできる。例えば、図16及び図17に示すポインティングデバイス10の変形例では、基部12の支持部材26と操作部14の保持部20との間に、補助弾性部として機能する板ばね128が設置されている。板ばね128は、円環状の基礎部分130と、基礎部分130の内周縁に沿って等間隔に配置され、中心軸線Pに向けて凸状に湾曲して径方向内方へ延設される複数(図では4個)の腕部分132とを有する。板ばね128の基礎部分130は、支持部材26の円筒壁30の内面に一様に接触して支持面28a上に搭載される寸法及び形状を有する。
【0056】
ポインティングデバイス10の構成部品を適正に組み合わせた状態で、板ばね128の複数の腕部分132は、それらの自由端で、保持部20の大径部分の外周壁48に当接される。そして、弾性部22と板ばね128との双方が平衡状態にあるときに、操作部14は基部12上で原点位置に位置決めされる(図17)。操作部14を図17の原点位置から水平移動操作すると、弾性部22の主部分50及び板ばね128の任意の腕部分132が、保持部20の移動方向及び移動距離に対応して弾性変形し、それにより保持部20をその移動方向と反対の方向に付勢する(図18)。
【0057】
図18のデータ入力位置から、オペレータが操作部14から指を離して操作力を解除すると、弾性部22の主部分50及び板ばね128の腕部分132が生じているばね付勢力により、直ちに保持部20が磁石16と一体的に原点位置に向けて移動し、弾性部22及び板ばね128の双方が平衡状態に到達した時点で原点位置に復帰する。このように、補助弾性部として板ばね128を用いることにより、保持部20を水平移動範囲の原点位置にさらに迅速かつ正確に復帰させることができる。また、ゴム製の弾性部22の経年劣化による操作性の低下を、板ばね128の作用により抑制することができる。
【0058】
上記した板ばね128の代わりに、図19及び図20に示すように、平坦形状に巻かれたコイルばね134を、補助弾性部として使用することもできる。この場合、コイルばね134は、その外方端136で支持部材26の円筒壁30の内面に嵌着され、その内方端138で、保持部20の大径部分の外周壁48に嵌着される。なお、保持部20の外周壁48の下端には、コイルばね134の内方端138を掛止するビード140を形成することが好ましい。そして、弾性部22とコイルばね134との双方が平衡状態にあるときに、操作部14は基部12上で原点位置に位置決めされる(図20)。操作部14を図20の原点位置から水平移動操作すると、弾性部22の主部分50及びコイルばね134が、保持部20の移動方向及び移動距離に対応して弾性変形し、それにより保持部20をその移動方向と反対の方向に付勢する。
【0059】
以上、説明したように、本発明に係る磁電変換素子型のポインティングデバイスは、その外形寸法を、操作部の操作性を損なうことなく、電子手帳、携帯情報端末(PDA)、携帯電話等の手持操作可能な携帯型情報機器へ搭載可能な水準まで削減できる。ところで、このような携帯型情報機器にポインティングデバイスを搭載する場合には、機器筐体の狭小な内部空間で、ポインティングデバイスと搭載対象機器の主回路基板(実装基板)との電気的及び機械的接続を確実かつ安定的に実現することが要求されている。
【0060】
図21及び図22は、そのような高機能の電気的接続構造及び機械的接続構造を有する本発明の関連技術によるポインティングデバイス150を示す。なおポインティングデバイス150は、電気的及び機械的接続構造の構成以外は、前述した関連技術によるポインティングデバイス80と実質的同一の構成を有するものとし、対応する構成要素には共通の参照符号を付してその説明を省略する。
【0061】
ポインティングデバイス150は、基部82の回路基板24に実装された磁電変換素子18及びスイッチ機構84を、搭載対象機器の主回路基板(実装基板)Mに電気的に接続するための2個のコネクタ152を備える。各コネクタ152は、絶縁部材154と、絶縁部材154に等間隔配置で整列支持される複数の端子156とを備える。矩形平板状の回路基板24の外縁近傍領域には、カバー部材36の弾性爪44を嵌着しない側の一組の対向外縁に沿って、複数のスルーホール158が、コネクタ152の端子156に対応する等間隔配置で整列してそれぞれ形成される。それらスルーホール158は、回路基板24上の磁電変換素子18及びスイッチ機構84に例えば印刷回路を介して電気的に接続される。
【0062】
各コネクタ152の絶縁部材154は、樹脂材料から一体成形される角棒状部材であり、例えばインサート成形工程により複数の端子156を埋設した状態に成形される。各端子156は、プレス工程により打ち抜いたピン状金属片をL字状に屈曲して形成される。各端子156は、その一端156aを絶縁部材154の頂面154aから突出させるとともに、他端156bを絶縁部材154の側面154bから突出させて、絶縁部材154に固定的に支持される。各コネクタ152の絶縁部材154の頂面154aには、端子配列方向の両端部位に、それぞれ位置決め突起160が形成される。他方、回路基板24には、各列のスルーホール158の配列方向両側に、位置決め突起160を受容する位置決め孔162が形成される。
【0063】
各コネクタ152は、絶縁部材154に設けた位置決め突起160を回路基板24の対応の位置決め孔162に嵌入するとともに、複数の端子156の一端156aを回路基板24の対応のスルーホール158に個別に挿入した状態で、回路基板24に装着される。このとき各コネクタ152は、複数の端子116の他端116bが回路基板24の外方へ張り出すように方向付けされる。この状態で、各端子156はその一端156aで、はんだ164により各スルーホール158に固着されて、磁電変換素子18及びスイッチ機構84に電気的に接続される。また各コネクタ152は、複数の端子156の他端156bを、実装基板Mの表面に設けた複数の電極(図示せず)にそれぞれ位置合せした状態で、はんだ166を介して実装基板Mに実装される。
【0064】
このように、上記構成を有するコネクタ152は、棒状の絶縁部材154に複数の端子156を埋設した極めて単純な構成を有するので、小形化及び狭ピッチ化が容易である利点を有する。しかも、回路基板24に設けた対応のスルーホール158に各端子156を固定するようにしたから、例えば電極パッドに端子をはんだ付けする構成に比べて、回路基板24上で各端子156の固定に要する面積を効果的に縮減できる利点がある。したがって、携帯型情報機器にポインティングデバイス150を搭載する場合に、機器筐体の狭小な内部空間で、ポインティングデバイス150と情報機器の主回路基板との電気的接続を確実かつ安定的に実現することが可能になる。
【0065】
なお、図示の形態では、ポインティングデバイス150の一対のコネクタ152と実装基板Mとの間のはんだ付けによる電気的及び機械的接続を補強するための機械的連結構造として、一対の取付部材168が使用されている。各取付部材168は、例えば板金材料から打ち抜きかつ折曲して形成され、一端のフック部分170と他端の脚部分172とを一体に有する。他方、基部82の支持部材86には、その外縁に沿って互いに対向する位置に、一対のフック受け174が延長形成されている。
【0066】
ポインティングデバイス150を実装基板Mに実装する際には、上記したように各コネクタ152をはんだ付けした後に、一対の取付部材168を、各々のフック部分170を対応のフック受け174に掛着して支持部材86に取り付ける。その状態で、各取付部材168の脚部分172を、はんだ176によって実装基板Mの表面の所望位置に固定する。このようにして、ポインティングデバイス150は、オペレータが操作部14に負荷する力に抗して、実装基板M上に強固に固定保持される。
【0067】
ポインティングデバイス150においては、回路基板24に形成される複数のスルーホール158に対し、回路基板24上で種々の電子部品を実装するために要する実装面積を効果的に拡大し得る特殊な形状のランドを形成することができる。例えば図23に示すように、回路基板24の各スルーホール158の開口縁158aに隣接して、開口縁158aと回路基板24の外縁24cとの間の部分でそれ以外の部分よりも狭い幅を有するランド178を、回路基板24の表面24aに形成することができる。このような形状のランド178を採用すれば、スルーホール158を回路基板24の外縁24cに可及的に近接して形成できるので、回路基板24上の電子部品実装面積を効果的に拡大できる。
【0068】
このような特徴的形状のランド178を有するスルーホール158に接続されたコネクタ152を備える回路基板24は、以下の方法で作製することが有利である。
まず、図24に示すように、図示しない電子部品を実装するための矩形の実装領域180と、実装領域180の両側に隣接する一対の捨て領域182とを有する回路基板24を用意する。このような捨て領域182は、電子部品の実装や回路の形成を行わない領域であって、一般的な基板実装工程で回路基板を搬送する際の支持及び位置決め用に使用されるものとして知られている。
【0069】
次いで、回路基板24の実装領域180に、各々の円環状のランド178が実装領域180から捨て領域182まで連続して広がるようにして、複数のランド付きスルーホール158を、実装領域180と捨て領域182との境界線184に沿って形成する。ここで、各スルーホール158は、例えば図25(a)に示すような、回路基板24の両面にランド178を有する両面めっきスルーホールとして、一般的な印刷回路板の製造方法によって形成することができる。さらに、スルーホール158を形成した後に、回路基板24の両面に、境界線184に沿って延びる溝186(図25(b))を形成することが有利である。
【0070】
次に、コネクタ152の複数の端子156を、それらの一端156aで、複数のスルーホール158に個別に挿入して、対応のランド178にはんだ付けする。それにより一対のコネクタ152を、捨て領域182を有する回路基板24の実装領域180に固定する。最後に、各コネクタ152を実装領域180に取り付けたままの状態で、境界線184上に形成した溝186に沿って、捨て領域182を実装領域180から折り取って分離する。このようにして、図26に示すように、一組の対向外縁24cに沿って取り付けた一対のコネクタ152を有する回路基板24が作製される。
【0071】
なお、上記したランド付きスルーホール158は、はんだ164による端子固着強度を確保できることを前提に、回路基板24の外縁24cに部分的に開口するような形状とすることもできる。この場合、各スルーホール158には、C形状のランドが形成されることになる。
【0072】
以上、図面を参照して幾つかの関連技術の形態を説明したが、本発明は、それら図示形態以外の様々な形態を採ることができる。例えば、本発明に係るポインティングデバイスの操作部の特徴的構成は、磁石16と複数の磁電変換素子18との位置関係が、図示形態とは逆の構成、すなわち基部12、62、82、102に設置した磁石16に対し、操作部14に設置した磁電変換素子18が変位するように構成されたポインティングデバイスにおいても、有効に採用でき、かつ同様に格別の作用効果を奏するものである。また、コネクタ付き回路基板の製造方法は、上記したポインティングデバイス150への適用に限らず、他の様々な電子機器における回路基板接続構造に適用できるものである。
【0073】
ところで、本発明に係る磁電変換素子型のポインティングデバイスは、例えば、ディスプレイ部とキーボード部とが互いに蝶番連結された折り畳み可能な携帯型情報機器(例えば携帯電話)に搭載することができる。この場合、ポインティングデバイスを含む各種スイッチ類の、キーボード部表面からの突出量を極力低減することが、折り畳み時の機器全体の厚みを削減して携帯性を一層向上させる観点で望ましい。図27〜図29は、このような携帯型情報機器のキーボード部に好適に搭載可能な低背構造を有する本発明の第1の実施形態によるポインティングデバイス190を示す。なおポインティングデバイス190は、前述した関連技術によるポインティングデバイス10と機能的に実質的同一の基本構造を有するものである。
【0074】
ポインティングデバイス190は、基部192と、基部192に対して任意の水平方向へ移動可能に基部192上に支持される操作部194と、操作部194に設置される円板状の磁石(例えば永久磁石)196と、磁石196の近傍で基部192に設置される複数の磁電変換素子(例えばホール素子)198とを備える。操作部194は、磁石196を固定的に保持して基部192上に水平方向へ移動可能に支持される保持部200と、保持部200に連結され、基部192上での保持部200の水平移動に伴い、保持部200を水平移動範囲の原点位置に復帰させる弾性力を発揮する弾性部202とを備える。
【0075】
基部192は、図示しないCPU等の電子部品が実装される回路基板204と、回路基板204に固定的に連結される支持部材206とを備える。支持部材206は、平面視で略正方形の板状部材であり、回路基板204の表面204aに隙間を介さずに搭載されるとともに、その中央の略円形の凹状領域に、操作部194の保持部200を任意の水平方向へ摺動自在に支持する支持部分208を有する。なお、この形態において「水平方向」とは、回路基板204の略平坦な表面204aに実質的平行な方向を意味する。したがって支持部材206の支持部分208には、回路基板204から離れた側に、回路基板204の表面204aに実質的平行に広がる平坦かつ円形の支持面208aが形成される。支持面208aは、回路基板204の表面204aから突出した位置で、保持部200を任意の水平方向へ摺動自在に支持する。
【0076】
支持部材206にはさらに、支持面208aを囲繞するようにして、操作部194の保持部200の水平移動範囲を規定する円筒壁210が突設される。円筒壁210は、回路基板204の表面204aからの高さが支持面208aよりも高い位置まで突設され、後述するように弾性部202がその一部分で円筒壁210を包囲して支持部材206に取り付けられる。支持面208aの中心を通る円筒壁210の中心軸線は、ポインティングデバイス190の中心軸線Pを構成するとともに、支持面208a上での保持部200の水平移動範囲の原点位置を規定する。また支持部材206の支持部分208には、その略中央で支持面208a及び円筒壁210の反対側に突出する1個の位置決めピン212が形成される。支持部材206は、回路基板204の対応位置に設けられた穴214に位置決めピン212を嵌入することにより、回路基板204上の所定位置に固定的に組み付けられる。なお、支持部材206を回路基板204に強固に固定するために、接着剤を補助的に用いることもできる。
【0077】
回路基板204の表面204aの反対側(すなわち裏面204b)には、計4個の磁電変換素子198が、中心軸線Pを中心とした等間隔分散配置で実装される。このような磁電変換素子198の配置構成により、ポインティングデバイス190は二次元座標系におけるアナログデータ信号を出力できるようになっている。
【0078】
基部192はさらに、支持部材206の外縁領域206aを実質的に遮蔽して支持部材206に固定的に連結されるカバー部材216を備える。カバー部材216は、支持部材206に対応する平面視略正方形状を有する薄板状部材であり、その端板部分216aの中央領域に、後述する操作部194の主要操作部分を水平移動可能に挿通させる略円形の中心開口218を有する。カバー部材216の外縁には、四辺に沿ってそれぞれ延長片220が端板部分216aに略直交する方向へ延設され、各延長片220に、板厚方向へ貫通する取付孔222が貫通形成される。カバー部材216は、支持部材206の四辺に沿って側方へ突設された複数の爪224を、それら延長片220の対応の取付孔222に、各延長片220の弾性変形を利用してスナップ式に嵌着することにより、支持部材206に固定的に組み付けられる。カバー部材216は、中心開口218を通して操作部194の主要操作部分を外方に突出させた状態で、操作部194を基部192から脱落しないように保持する。なお、このような構成を有するカバー部材216は、所望の板金材料から作製できる。
【0079】
図示実施形態では、操作部194の保持部200及び弾性部202は、別部材として個別に作製されて、互いに固定的に組み合わされる。保持部200は、操作部194を基部192上で水平移動操作する間に実質的に変形しない程度の剛性を有する中空円筒状の部材からなり、その円筒状の外周壁226の内側に、磁石196を収容する空洞部226aが形成される。磁石196は、例えば接着剤を用いたり圧入したりすることにより、保持部200の空洞部226aに固定できる。保持部200は、外周壁48の軸線方向一端(図で下端)に径方向外方へ延設したフランジ部分228の軸線方向端面を、基部192の支持部材206の支持面208aに一様に当接した状態で、支持面208a上で360°全方位へ摺動しつつ平行移動できる。このような構成は、保持部200と支持面208aとの接触面間の摩擦を低減して、操作部194の水平移動操作性を向上させる点で有利である。
【0080】
保持部200には、磁石196と弾性部202との間に介在するヨーク230が取り付けられる。ヨーク230は、平面視で略円形の蓋状部材であり、その円板状の端壁部分230aで、保持部200に収容された磁石196を一面(図で上面)から遮蔽するとともに、端壁部分230aの外縁から延設される円筒状の周壁部分230bで、保持部200の外周壁226を包囲して保持部200に取り付けられる。ヨーク230は、例えば接着剤を用いたり圧入したりすることにより、保持部200の外周壁226に固定できる。ヨーク230は所望の磁性金属材料からなり、磁石196と磁電変換素子198との間で磁路を積極的に閉じることにより、弾性部202を通した外部への磁気漏洩を防止するように作用する。このようなヨーク230は、低背型のポインティングデバイス190に特に有効に装備されるものである。
【0081】
弾性部202は、操作部194を基部192上で水平移動操作する間に比較的容易に弾性変形する椀状の部材からなり、保持部200の周囲に隙間を介して延長される主部分232と、主部分232の一端で保持部200に連結される第1連結部分234と、主部分232の他端で基部192に連結される第2連結部分236とを一体に有する。弾性部202の主部分232は、保持部200を実質的全周に渡って囲繞するとともに、無負荷状態で保持部200に対し同軸に配置される円錐台状又はドーム状の輪郭形状を有する。したがって弾性部202は、その主部分232が、基部192上での保持部200の水平移動に伴い弾性変形するとともに、変形量に対応する弾性力を、保持部200の水平移動方向に関わらず一様に発揮する。
【0082】
弾性部202の第1連結部分234は、円錐台状輪郭の主部分232の小径端から軸線方向へ皿状に突出して一体に延長され、その内側に形成される窪みに、保持部200に取り付けたヨーク230が固定的に嵌入される。弾性部202の第1連結部分234は、例えば接着剤を用いたり圧入したりすることによりヨーク230に固定できる。第1連結部分234は、ヨーク230の端壁部分230a及び周壁部分230bを密接被覆して延び、その外面に、オペレータが操作部194を移動操作する際に例えば手の指先を接触させる操作面238が形成される。
【0083】
弾性部202の第2連結部分236は、円錐台状輪郭の主部分232の大径端から径方向及び軸線方向へフランジ状に突出して一体に延長され、その肉厚部分で、基部192を構成する支持部材206の円筒壁210の外側環状溝領域210aとカバー部材216の端板部分216aとの間に固定的に挟持かつ掛止される。第1及び第2連結部分234、236は、基部192上で保持部200が水平移動する間に実質的に変形することなく、弾性部202を保持部200及び基部192にそれぞれ固定的に連結する。
【0084】
なお弾性部202は、合成ゴム、天然ゴム等の種々の弾性材料から形成できる。特に、ポインティングデバイス190を搭載対象機器の主回路基板に実装する際にリフロー工程を実施することを考慮すれば、シリコンゴム等の、高温下でも性質が劣化し難い材料から形成することが有利である。
【0085】
上記した各種構成部品を適正に組み合わせた状態で、操作部194は、弾性部202の主部分232及び第1連結部分234を、基部192のカバー部材216の中心開口218に水平移動可能に挿通するとともに、ヨーク230を介して保持部200に連結される弾性部202の第1連結部分234を、基部192のカバー部材216の端板部分216aから外方に突出した位置に配置する。この状態でオペレータは、弾性部202の第1連結部分234に形成される操作面238を、例えば手指により操作して、保持部200を基部192上で水平移動させることができる。
【0086】
図29に示すように、操作部194の弾性部202が平衡状態にあるときには、保持部200及びその空洞部226aに保持される磁石196の中心軸線Qは、ポインティングデバイス190の中心軸線Pに合致する。この状態で保持部200は、基部192の支持部材206上で水平移動範囲の原点位置に位置決めされ、回路基板204上の4個の磁電変換素子198が磁石196から等距離の位置に配置される。この状態から、オペレータが操作面238に指先を当接して保持部200を任意の水平方向へ平行移動させると、弾性部202の主部分232が、保持部200の移動方向及び移動距離に対応して、全周に渡り異なる形態の弾性変形を生じる。それにより弾性部202は、主部分232の全体で合力としての弾性力を発揮し、保持部200をその移動方向と反対の方向に付勢する。したがってオペレータは、弾性部202の主部分232が生ずるばね付勢力に抗して、操作部194を水平移動操作することになる。
【0087】
このように、ポインティングデバイス190は、前述したポインティングデバイス10における基部12及び操作部14と機能的に同一の基部192および操作部194を備えるので、ポインティングデバイス10と同様の操作により、操作部194の移動方向及び移動距離に対応したアナログ情報を入力することができる。しかも、基部192及び操作部194を構成する各構成要素を薄型化するとともに、磁電変換素子198を回路基板204の裏面204bに実装する構成としたから、ポインティングデバイス10に比べて、全体として低背化を実現したポインティングデバイス190が提供される。
【0088】
図30〜図32は、ポインティングデバイス190に比べてさらなる低背化を可能にする本発明の第2の実施形態によるポインティングデバイス240を示す。ポインティングデバイス240は、基部の回路基板に連結される支持部材の構成以外は、前述した第1実施形態によるポインティングデバイス190と実質的同一の構成を有するので、対応する構成要素には同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0089】
ポインティングデバイス240は、基部242と、基部242に対して任意の水平方向へ変位可能に基部242上に支持される操作部194と、操作部194に設置される磁石196と、磁石196の近傍で基部242に設置される複数の磁電変換素子198とを備える。基部242は、図示しないCPU等の電子部品が実装される回路基板204と、回路基板204に固定的に連結される支持部材244と、支持部材244の外縁領域244aを実質的に遮蔽して支持部材244に固定的に連結されるカバー部材216とから構成される。
【0090】
支持部材244は、平面視で略正方形の板状部材であり、回路基板204の表面204aに隙間を介さずに搭載されるとともに、その中央の略円形の凹状領域に、操作部194の保持部200を任意の水平方向へ摺動自在に支持する支持部分246を有する。支持部材244の支持部分246には、回路基板204から離れた側に、回路基板204の表面204aに実質的平行に広がる平坦かつ円形の支持面246aが形成される。支持面246aは、回路基板204の表面204aから突出した位置で、保持部200を任意の水平方向へ摺動自在に支持する。
【0091】
支持部材244はさらに、回路基板204の表面204aからの高さが支持面246aよりも低い位置まで凹設され、支持面246aを囲繞する方向に円弧状に延びる複数(図では4個)の溝248を有する。図示の形態では、支持部材244の支持部分246と外縁領域244aとが、支持面246aの周方向へ等間隔配置された複数(図では4個)の連結片250のみによって互いに一体的に連結され、それにより、支持面246aを囲繞する同一円周上に、連結片250を介して互いに分離された複数の溝248が、板厚方向へ貫通形成される。
【0092】
支持面246aの中心を通る複数の溝248の中心軸線は、ポインティングデバイス240の中心軸線Pを構成するとともに、支持面246a上での保持部200の水平移動範囲の原点位置を規定する。保持部200は、そのフランジ部分228の軸線方向端面を、支持部材244の支持面246aに一様に当接した状態で、支持面246a上で360°全方位へ摺動しつつ平行移動できる。
【0093】
また、支持部材244の支持部分246には、その略中央で支持面246aの反対側に突出する1個の位置決めピン252が形成される。支持部材244は、回路基板204の対応位置に設けられた穴214に位置決めピン252を嵌入することにより、回路基板204上の所定位置に固定的に組み付けられる。なお、カバー部材216は、支持部材244の四辺に沿って側方へ突設された複数の爪254を、各延長片220の対応の取付孔222にスナップ式に嵌着することにより、支持部材244に固定的に組み付けられる。
【0094】
支持部材244の複数の溝248には、弾性部202の第2連結部分236が挿入される。すなわち、弾性部202の第2連結部分236は、その肉厚部分で、支持部材244の複数の溝248とカバー部材216の端板部分216aとの間に固定的に挟持かつ掛止される。したがって、弾性部202の第2連結部分236には、支持部材244の複数の連結片250に対応する位置に、連結片250を受容する切欠き236aが形成される。弾性部202の第1及び第2連結部分234、236は、基部242上で保持部200が水平移動する間に実質的に変形することなく、弾性部202を保持部200及び基部242にそれぞれ固定的に連結する。
【0095】
ポインティングデバイス240は、前述したポインティングデバイス190と同様にして、基部242上で操作部194を水平移動操作することにより、アナログデータを入力することができる。特にポインティングデバイス240では、基部242を構成する支持部材244に、ポインティングデバイス190で支持部材206に設けた円筒壁210の代わりに、支持面246aよりも低い位置まで凹設される複数の溝248を形成し、これら溝248に第2連結部分236を挿入して弾性部202を支持部材244に取り付ける構成としたから、支持部材244のさらなる薄型化が可能となる。したがってポインティングデバイス240では、前述したポインティングデバイス190に比べて、高さ方向の寸法を一層効果的に削減することができる。
【0096】
図33及び図34は、上記したポインティングデバイス240に比べてさらなる低背化を可能にする本発明の第3の実施形態によるポインティングデバイス260を示す。ポインティングデバイス260は、基部の構成以外は、前述した第1実施形態によるポインティングデバイス190と実質的同一の構成を有するので、対応する構成要素には同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0097】
ポインティングデバイス260は、基部262と、基部262に対して任意の水平方向へ変位可能に基部262上に支持される操作部194と、操作部194に設置される磁石196と、磁石196の近傍で基部262に設置される複数の磁電変換素子198とを備える。基部262は、図示しないCPU等の電子部品が実装される回路基板264と、操作部194の弾性部202を基部262に固定的に連結するためのカバー部材216とから構成される。したがって基部262は、操作部194の保持部200を摺動自在に支持する支持部材を備えない構成となっている。
【0098】
回路基板264は、その表面264aの所望の円形領域に、操作部194の保持部200を任意の水平方向へ摺動自在に支持する平坦な支持面266を有する。回路基板264はさらに、支持面266を囲繞する方向に円弧状に延びる複数(図では4個)の溝孔268を有する。それら溝孔268は、支持面266を囲繞する同一円周上に互いに分離して配置され、板厚方向へ貫通形成される。隣接する溝孔268の間には、回路基板264の一部分として連結片270が形成される。
【0099】
支持面266の中心を通る複数の溝孔268の中心軸線は、ポインティングデバイス260の中心軸線Pを構成するとともに、支持面266上での保持部200の水平移動範囲の原点位置を規定する。保持部200は、そのフランジ部分228の軸線方向端面を、回路基板264上の支持面266に一様に当接した状態で、支持面266上で360°全方位へ摺動しつつ平行移動できる。そして、4個の磁電変換素子198は、支持面266の反対側で回路基板264の裏面264bに、中心軸線Pを中心とした等間隔分散配置で実装される。なお、カバー部材216は、その四辺に延設した延長片220のそれぞれに、取付孔222(図27)の代わりに差込片272を有し、それら差込片272を、回路基板264の対応位置に貫通形成したスリット274に挿入して適宜折曲することにより、回路基板264に固定される。
【0100】
回路基板264の複数の溝孔268には、弾性部202の第2連結部分236が挿入される。すなわち、弾性部202の第2連結部分236は、その肉厚部分で、回路基板264の複数の溝孔268とカバー部材216の端板部分216aとの間に固定的に挟持かつ掛止される。したがって、弾性部202の第2連結部分236には、回路基板264の複数の連結片270に対応する位置に、連結片270を受容する切欠き236aが形成される。弾性部202の第1及び第2連結部分234、236は、基部262上で保持部200が水平移動する間に実質的に変形することなく、弾性部202を保持部200及び基部262にそれぞれ固定的に連結する。
【0101】
ポインティングデバイス260は、前述したポインティングデバイス190、240と同様にして、基部262上で操作部194を水平移動操作することにより、アナログデータを入力することができる。特にポインティングデバイス260では、支持部材206、244を省略して、基部262の回路基板264の表面264aに直接、支持面266を形成して操作部194の保持部200を搭載する構成としたから、前述したポインティングデバイス190、240に比べて、高さ方向の寸法を一層効果的に削減することができる。
【0102】
図35〜図37は、低背型でかつクリック機能を有する本発明の第4の実施形態によるポインティングデバイス280を示す。ポインティングデバイス280は、基部の回路基板に連結される支持部材の構成と、クリック機能を付加するためのスイッチ機構を内蔵した構成以外は、前述した第1実施形態によるポインティングデバイス190と実質的同一の構成を有するので、対応する構成要素には同一の参照符号を付してその説明を省略する。なおポインティングデバイス280は、前述した関連技術によるポインティングデバイス80と機能的に実質的同一の基本構造を有するものである。
【0103】
ポインティングデバイス280は、基部282と、基部282に対して任意の水平方向へ変位可能に基部282上に支持される操作部194と、操作部194に設置される磁石196と、磁石196の近傍で基部282に設置される複数の磁電変換素子198と、基部282と操作部194との間に配置されるスイッチ機構284とを備える。基部282は、図示しないCPU等の電子部品が実装される回路基板204と、回路基板204に固定的に連結される支持部材286と、支持部材286の外縁領域286aを実質的に遮蔽して支持部材286に固定的に連結されるカバー部材216とを備える。
【0104】
支持部材286は、平面視で略正方形の板状部材であり、その中央の略円形の凹状領域に、操作部194の保持部200を任意の水平方向へ摺動自在に支持する支持部分として機能する複数(図では4個)の弾性梁部分288を、回路基板204の表面204aから離隔した位置に備える。支持部材286のそれら弾性梁部分288には、回路基板204から離れた側に、無負荷状態で回路基板204の表面204aに実質的平行に広がる平坦な支持面288aがそれぞれ形成される。それら支持面288aは互いに協働して、回路基板204の表面204aから突出した位置で、保持部200を任意の水平方向へ摺動自在に支持する。
【0105】
支持部材286の複数の弾性梁部分288は、ポインティングデバイス280の中心軸線Pを中心として放射状に配置され、それらの径方向外端を支点として、互いに独立して弾性的に変位できる。特にこの形態では、各弾性梁部分288を、支持部材286の平面視で略正方形輪郭の各頂点部位から径方向へ延設したので、小型化かつ薄型化した支持部材286において、弾性梁部分288の長さを最大限に確保できる。その結果、弾性梁部分288の弾性力の増加及びスイッチ作動時の押下操作力の軽減を図ることができる。
【0106】
支持部材286にはさらに、隣り合う弾性梁部分288の間にそれぞれ扇形に広がる取付部分290が形成される。それら取付部分290の径方向内縁には、各弾性梁部分288の支持面288aを囲繞するようにして、操作部194の保持部200の水平移動範囲を規定する円弧壁292が突設される。各円弧壁292は、回路基板204の表面204aからの高さが各支持面288aよりも高い位置まで突設され、後述するように弾性部202が第2連結部分236で全ての円弧壁292を包囲して支持部材286に取り付けられる。それら円弧壁292は、中心軸線Pを中心とする同一円周上に配置され、中心軸線Pが、複数の支持面288a上での保持部200の水平移動範囲の原点位置を規定する。保持部200は、そのフランジ部分228の軸線方向端面を、複数の弾性梁部分288の支持面288aに一様に当接した状態で、それら支持面288a上で360°全方位へ摺動しつつ平行移動できる。
【0107】
また、複数の弾性梁部分288のうちで所望の1つの弾性梁部分288には、その径方向内端の自由端に、支持面288aの反対側に局部的に隆起する押圧点294が形成される。押圧点294を有する弾性梁部分288は、他の弾性梁部分288よりも若干長く、ポインティングデバイス280の中心軸線Pを越える位置まで延設される。それにより押圧点294は、ポインティングデバイス280の中心軸線P上に整合して配置される。
【0108】
さらに、支持部材286の互いに対向する一対の取付部分290には、円弧壁292の反対側に位置決めピン296が突設される。支持部材286は、それら位置決めピン296を、回路基板204の対応位置に設けられた穴298に嵌入することにより、回路基板204上の所定位置に固定的に組み付けられる。なお、カバー部材216は、支持部材286の四辺に沿って側方へ突設された複数の爪300を、各延長片220の対応の取付孔222にスナップ式に嵌着することにより、支持部材286に固定的に組み付けられる。
【0109】
弾性部202の第2連結部分236は、その肉厚部分で、支持部材286の各円弧壁292の外側環状溝領域292aとカバー部材216の端板部分216aとの間に固定的に挟持かつ掛止される。弾性部202の第1及び第2連結部分234、236は、基部282上で保持部200が水平移動する間に実質的に変形することなく、弾性部202を保持部200及び基部282にそれぞれ固定的に連結する。
【0110】
回路基板204の表面204aには、回路基板204と支持部材286の複数の弾性梁部分288との間に形成される空所の内部で、クリック機能を付加するためのスイッチ機構284が実装される。スイッチ機構284は、可動接点と固定接点とを有する周知の開閉構造を備え、それら両接点がポインティングデバイス280の中心軸線Pに実質的に整合する位置に配置される。すなわち、スイッチ機構284の可動接点は、支持部材286の1つの弾性梁部分288に設けた押圧点294の直下に位置決めされる。そして、4個の磁電変換素子198は、スイッチ機構284の反対側に位置する回路基板204の裏面204bに、中心軸線Pを中心とした等間隔分散配置で実装される。つまり、基部282の回路基板204は、スイッチ機構284を操作部194の下方に位置決めして担持し、磁電変換素子198は、回路基板204を挟んでスイッチ機構284とは反対側に配置される。それにより、回路基板204と支持部材286との間の空所の所要寸法が削減される。
【0111】
なお、スイッチ機構284の構成は任意であり、可動接点がばねに担持されるメカニカルスイッチや、一対のフレキシブル回路基板を有するメンブレンスイッチ等、様々なものを採用できる。また、スイッチ機構284の外形寸法によっては、複数の磁電変換素子198を、回路基板204と複数の弾性梁部分288との間の空所内に設置することもできる。
【0112】
上記構成を有するポインティングデバイス280では、図37に示す原点位置において、オペレータが操作部194の操作面238を例えば指先で押下して、保持部200のフランジ部分228を複数の弾性梁部分288に押し付けることにより、それら弾性梁部分288の下方に位置するスイッチ機構284を閉成させることができる。この実施形態では、操作部194を押下することにより、各弾性梁部分288が径方向外端を支点に弾性的に撓み、長尺の弾性梁部分288に設けた押圧点294がその直下のスイッチ機構284を押圧して作動させる。
【0113】
このように、ポインティングデバイス280は、前述したポインティングデバイス80における基部82及び操作部14と機能的に同一の基部282及び操作部194を備えるので、ポインティングデバイス80と同様の操作により、操作部194の移動方向及び移動距離に対応したアナログ情報を入力できるとともに、例えば搭載対象機器のディスプレイ上のポインタに関連してクリック操作を実施することができる。しかも、基部282及び操作部194を構成する各構成要素を薄型化したから、ポインティングデバイス80に比べて、全体として低背化を実現したポインティングデバイス280が提供される。
【0114】
図38〜図40は、ポインティングデバイス280に比べてさらなる低背化を可能にする本発明の第5の実施形態によるポインティングデバイス310を示す。ポインティングデバイス310は、基部の回路基板に連結される支持部材の構成以外は、前述した第4実施形態によるポインティングデバイス280と実質的同一の構成を有するので、対応する構成要素には同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0115】
ポインティングデバイス310は、基部312と、基部312に対して任意の水平方向へ変位可能に基部312上に支持される操作部194と、操作部194に設置される磁石196と、磁石196の近傍で基部312に設置される複数の磁電変換素子198とを備える。基部312は、図示しないCPU等の電子部品が実装される回路基板204と、回路基板204に固定的に連結される支持部材314と、支持部材314の外縁領域314aを実質的に遮蔽して支持部材314に固定的に連結されるカバー部材216とから構成される。
【0116】
支持部材314は、平面視で略正方形の板状部材であり、その中央の略円形の凹状領域に、操作部194の保持部200を任意の水平方向へ摺動自在に支持する支持部分として機能する複数(図では4個)の弾性梁部分316を、回路基板204の表面204aから離隔した位置に備える。支持部材314のそれら弾性梁部分316には、回路基板204から離れた側に、無負荷状態で回路基板204の表面204aに実質的平行に広がる平坦な支持面316aがそれぞれ形成される。それら支持面316aは互いに協働して、回路基板204の表面204aから突出した位置で、保持部200を任意の水平方向へ摺動自在に支持する。
【0117】
支持部材314の複数の弾性梁部分316は、ポインティングデバイス310の中心軸線Pを中心として放射状に配置され、それらの径方向外端を支点として、互いに独立して弾性的に変位できる。特にこの形態では、各弾性梁部分316を、支持部材314の平面視で略正方形輪郭の各頂点部位から径方向へ延設したので、小型化かつ薄型化した支持部材314において、弾性梁部分316の長さを最大限に確保できる。その結果、弾性梁部分316の弾性力の増加及びスイッチ作動時の押下操作力の軽減を図ることができる。また、この実施形態では、全ての弾性梁部分316が同一の長さを有し、中心軸線Pの周囲に対称に配置される。
【0118】
支持部材314にはさらに、隣り合う弾性梁部分316の間にそれぞれ扇形に広がる取付部分318が形成される。それら取付部分318の径方向外縁には、各弾性梁部分316の支持面316aを囲繞する方向に円弧状に延びる複数(図では4個)の溝320が凹設される。各溝320は、回路基板204の表面204aからの高さが支持面316aよりも低い位置まで凹設される。それら溝320は、中心軸線Pを中心とする同一円周上に配置され、中心軸線Pが、複数の支持面316a上での保持部200の水平移動範囲の原点位置を規定する。保持部200は、そのフランジ部分228の軸線方向端面を、複数の弾性梁部分316の支持面316aに一様に当接した状態で、それら支持面316a上で360°全方位へ摺動しつつ平行移動できる。
【0119】
また、複数の弾性梁部分316のうちで所望の1つの弾性梁部分316には、その径方向内端の自由端に、支持面316aの反対側に局部的に隆起する押圧点322が形成される。押圧点322は、ポインティングデバイス310の中心軸線Pから径方向へずれた位置に配置される。そして、回路基板204の表面204aに実装されるスイッチ機構284は、支持部材314の1つの弾性梁部分316に設けた押圧点322の直下に位置決めされる。
【0120】
さらに、支持部材314の互いに対向する一対の取付部分318には、溝320の反対側に位置決めピン324が突設される。支持部材314は、それら位置決めピン324を、回路基板204の対応位置に設けられた穴298に嵌入することにより、回路基板204上の所定位置に固定的に組み付けられる。なお、カバー部材216は、支持部材314の四辺に沿って側方へ突設された複数の爪326を、各延長片220の対応の取付孔222にスナップ式に嵌着することにより、支持部材314に固定的に組み付けられる。
【0121】
支持部材314の複数の溝320には、弾性部202の第2連結部分236が挿入される。すなわち、弾性部202の第2連結部分236は、その肉厚部分で、支持部材314の複数の溝320とカバー部材216の端板部分216aとの間に固定的に挟持かつ掛止される。したがって、弾性部202の第2連結部分236には、支持部材314の複数の弾性梁部分316に対応する位置に、弾性梁部分316の一部分を受容する切欠き236aが形成される。弾性部202の第1及び第2連結部分234、236は、基部312上で保持部200が水平移動する間に実質的に変形することなく、弾性部202を保持部200及び基部312にそれぞれ固定的に連結する。
【0122】
上記構成を有するポインティングデバイス310は、前述したポインティングデバイス280と同様にして、基部312上で操作部194を水平移動操作することによりアナログデータを入力できるとともに、操作部194を押下操作することにより例えば搭載対象機器のディスプレイ上のポインタに関連してクリック操作を実施することができる。特にポインティングデバイス310では、基部312を構成する支持部材314に、ポインティングデバイス280で支持部材286に設けた複数の円弧壁290の代わりに、支持面316aよりも低い位置まで凹設される複数の溝320を形成し、これら溝320に第2連結部分236を挿入して弾性部202を支持部材314に取り付ける構成としたから、支持部材314のさらなる薄型化が可能となる。したがってポインティングデバイス310では、前述したポインティングデバイス280に比べて、高さ方向の寸法を一層効果的に削減することができる。
【0123】
なお、ポインティングデバイス310においては、図39に示すように、支持部材314の各弾性梁部分316及び各取付部分318に、支持面316a上での操作部194の保持部200の水平移動範囲を規定する円弧状のリブ328を突設することもできる。これらのリブ328は、弾性部202の固定には関与しないので、支持面316aからの突出高さを可及的に削減でき、したがって支持部材314の薄型化を妨げないものである。
【0124】
さらに、ポインティングデバイス310では、支持部材314に設けた複数の弾性梁部分316を、全て同一の寸法及び形状に形成して中心軸線Pの周囲に対象に配置したので、オペレータが操作部194に押下力を加えたときの弾性梁部分316からの反発力が平衡し、結果として正確なスイッチ押下操作を遂行可能とする利点が得られる。特に、図41に示すように、スイッチ機構284を押圧するための押圧点322を、1つの弾性梁部分316上で、水平移動範囲の原点位置にある保持部200のフランジ部分228に重畳する位置に配置すれば、操作部194の保持部200から複数の弾性梁部分316に加えられる押下力を、無駄なくスイッチ機構284に伝達することができる。その結果、オペレータによる押下操作力が軽減され、スイッチ操作性が向上する。
【0125】
上記のように押圧点322をポインティングデバイス310の中心軸線Pからずれた位置に配置する構成では、支持部材314と回路基板204との間に、組立時に互いに合致させるべき方向性が生じる。したがって、図42に示すように、互いに対向する一対の弾性梁部分316に押圧点322を設けたり(図42(a))、全ての弾性梁部分316に押圧点322を設けたり(図42(b))することが、組立作業性を向上させる観点で有利である。
【0126】
クリック機能を有する上記したポインティングデバイス280、310においては、操作部194を押下操作する際に、操作部194を基部282、312及びスイッチ機構284に対して正確に鉛直方向(すなわち操作部194の水平移動方向に略直交する方向)へ変位させることが、カーソル移動データ等のアナログデータの意図しない入力を回避する点で肝要である。そこで、ポインティングデバイス280、310に、操作部194をスイッチ機構284に対して鉛直方向に案内する案内部分を設けることが有利である。
【0127】
図43及び図44は、そのような案内部分を有したポインティングデバイス310の変形例を示す。この変形例では、支持部材314に設けた複数の取付部分318の各々に、径方向内方へ扇形に延長される案内部分330が一体的に形成される。それら案内部分330は、それぞれの内周縁330aが、保持部200のフランジ部分228の外径寸法よりも僅かに大きな直径の、ポインティングデバイス310の中心軸線Pを中心とした同一円周上に配置される。また、各案内部分330の表面330bは、無負荷時の弾性梁部分316の支持面316aと同一の平面上に配置され、複数の支持面316aと協働して、保持部200を任意の水平方向へ摺動自在に支持する。
【0128】
このような構成によると、保持部200が水平移動範囲の原点位置にあるときに操作部194を押下操作すれば、保持部200のフランジ部分228が支持部材314の複数の案内部分330によってスイッチ機構284に対し鉛直方向へ正確に案内される。この間、磁石196と複数の磁電変換素子198との間に水平方向への相対移動は生じないので、カーソル移動データ等のアナログデータの意図しない入力が回避される。また、保持部200が水平移動範囲の原点位置から移動している間は、操作部194に押下力を負荷しても、保持部200のフランジ部分228が支持部材314の案内部分330に干渉するので、弾性梁部分316を押し下げることができない。したがってこの構成によれば、クリック操作等を行う際のスイッチ操作位置を、保持部200の水平移動範囲の原点位置のみに特定することができる。
【0129】
ところで、前述した本発明の種々の関連技術による磁電変換素子型のポインティングデバイスを、携帯電話等の携帯型情報機器に搭載する場合、小型化されたポインティングデバイスの各種構成部品の取り扱いが煩雑になり、情報機器全体の組立作業性が悪化することが懸念される。図45〜図55は、本発明に係るポインティングデバイスを搭載した携帯型情報機器であって、それ自体の組立作業性を向上させる構造を有する携帯型情報機器の主要部を示す。
【0130】
図45は、本発明の一実施形態によるポインティングデバイスを搭載可能な携帯型情報機器(例えば携帯電話)の構成部品である回路基板340及びキーパネル342を示す。この携帯型情報機器は、前述した第3実施形態によるポインティングデバイス260を、組立作業性を向上させる構造の下で搭載したものとして図示されており、対応する構成要素には同一の参照符号を付してその説明を省略する。なお、ポインティングデバイス260に代えて、前述した第4実施形態によるポインティングデバイス280を搭載することによっても、図示の携帯型情報機器が構成されることは理解されよう。
【0131】
図45(a)に示すように、回路基板340は、その表面340aに、携帯型情報機器の主入力部である複数のスイッチ344を、所定の整列配置で搭載して備えている。さらに回路基板340には、表面340aの所定位置に、ポインティングデバイス260の弾性部202を取り付けるための複数(図で4個)の円弧状の溝孔346が形成される。各溝孔346は、図33に示す回路基板264の溝孔268に対応し、それら溝孔346に囲繞される円形領域に、操作部194の保持部200を任意の水平方向へ摺動自在に支持する平坦な支持面266が画定される。回路基板340の裏面340bには、支持面266に対応する位置に、4個の磁電変換素子198が、ポインティングデバイス260の中心軸線Pを中心とした等間隔分散配置で実装される(図45(b))。
【0132】
キーパネル342は、例えばゴム等の弾性材料から一体成形された薄板状部材であり、その表面342aには、回路基板340の複数のスイッチ344に対応する位置に複数のキートップ348が突設される。さらにキーパネル342には、回路基板340の支持面266に対応する位置に、ポインティングデバイス260の弾性部202が一体的に形成される。つまり、弾性部202は、その第2連結部分236で、複数のキートップ348を有するキーパネル342に一体に連結される。そして、弾性部202の主部分232及び第1連結部分234が、キーパネル342の表面342aに突設されるとともに、第2連結部分236の複数の肉厚部分236bが、キーパネル342の裏面342bに突設される。
【0133】
図46(a)に示すように、キーパネル342に形成した弾性部202には、磁石196を収容した保持部200及び保持部200に取り付けられたヨーク230が、第1連結部分234の裏側の凹所に固定的に受容される。この状態でキーパネル342は、その裏面342bを回路基板340の表面340aに接触させて、各キートップ348と各スイッチ344とが整合する所定の相対位置関係で回路基板340に組み付けられる。このとき、弾性部202の第2連結部分236に形成した複数の肉厚部分236bが、回路基板340の対応の溝孔346にそれぞれ嵌入される。それにより保持部200は、回路基板340の支持面266上に適正に位置決めして摺動可能に載置される。さらに、回路基板340に組み付けられたキーパネル342に、携帯型情報機器の筐体350を被せることにより、弾性部202の第2連結部分236が、回路基板340と筐体350との間に固定的に挟持かつ掛止される(図46(b))。このようにして、携帯型情報機器に一体的に組み込まれたポインティングデバイス260が完成する。
【0134】
上記構成によれば、ポインティングデバイス260の本来の構成要素である弾性部202と回路基板264とを、ポインティングデバイス260を搭載する携帯型情報機器の必須の構成要素であるキーパネル342と回路基板340とに、それぞれ一体化したから、ポインティングデバイス260自体の独立した構成部品の点数が削減される。しかも、ポインティングデバイス260を組み立てる際に、携帯型情報機器の主要部品を装備した大判のキーパネル342及び回路基板340に対して、他の小寸の構成部品群を組み合わせていくことができるので、ポインティングデバイス260自体の組立作業性、及びポインティングデバイス260を搭載した携帯型情報機器の組立作業性が、著しく向上する。
【0135】
上記した携帯型情報機器は、回路基板340とキーパネル342とを組み合わせた後に筐体350を取り付ける構成となっているが、先にキーパネルに筐体を取り付け、次いでキーパネルを回路基板に組み付ける手順が採られる場合がある。図47は、このような手順に対応できる変形例としてのキーパネル342及び筐体350を示す。
【0136】
この変形例では、キーパネル342に一体成形された弾性部202は、その第2連結部分236の肉厚部分236bを、キーパネル342の表面342aに突設して備えている(図47(a))。これに対応して、筐体350の裏面350aには、弾性部202を挿入する開口部352の周囲に、第2連結部分236の肉厚部分236bをそれぞれに受容する複数の溝354が形成される(図47(b))。そこで、キーパネル342を、弾性部202及び複数のキートップ348を筐体350に設けた開口部352及び複数のキー孔356にそれぞれ挿入しつつ、筐体350に組み付ける。このとき、弾性部202の第2連結部分236に形成した複数の肉厚部分236bが、筐体350の対応の溝354にそれぞれ嵌入される。
【0137】
このようにして筐体350を取り付けたキーパネル342は、弾性部202に磁石196、保持部200及びヨーク230を受容した状態で、その裏面342bを回路基板340の表面340aに接触させて、各キートップ348と各スイッチ344とが整合する所定の相対位置関係で回路基板340に組み付けられる。それにより、保持部200は、回路基板340の支持面266上に適正に位置決めして摺動可能に載置され、弾性部202の第2連結部分236は、回路基板340と筐体350との間に固定的に挟持かつ掛止される(図48)。このようにして、携帯型情報機器に一体的に組み込まれたポインティングデバイス260が完成する。
【0138】
図49〜図51は、本発明の関連技術による携帯型情報機器(例えば携帯電話)の構成部品である回路基板360、キーパネル362及び筐体364を示す。この携帯型情報機器は、前述した関連技術によるポインティングデバイス10に類似した構成を有するポインティングデバイス366を、組立作業性を向上させる構造の下で搭載したものであり、ポインティングデバイス10に対応する構成要素には同一の参照符号を付してその説明を省略する。なお、ポインティングデバイス10ではなく、前述した本発明の関連技術によるポインティングデバイス80に類似したポインティングデバイスを搭載することによっても、図示の携帯型情報機器が構成されることは理解されよう。
【0139】
図49に示すように、回路基板360は、その表面360aに、携帯型情報機器の主入力部である複数のスイッチ368を、所定の整列配置で搭載して備えている。また、キーパネル362は、例えばゴム等の弾性材料から一体成形された薄板状部材であり、その表面362aには、回路基板360の複数のスイッチ368に対応する位置に複数のキートップ370が突設される。
【0140】
筐体364は、樹脂材料から一体成形された薄板状部材であり、キーパネル362の複数のキートップ370に対応する位置に複数のキー孔372が貫通形成される。さらに筐体364には、その表面364aの所定位置に凹状領域が設けられ、この凹状領域の底部に、ポインティングデバイス366の支持部材26が一体的に形成される。つまり、支持部材26は、その円筒壁30の外側領域にて、複数のキー孔372を有する筐体364に一体に連結される。そして、支持部材26の支持面28a及び円筒壁30が、筐体364の表面364a側に配置される。
【0141】
図50及び図51に示すように、筐体364に形成した支持部材26には、磁石16を収容した保持部20及び保持部20に取り付けられた弾性部22が、保持部20の軸線方向端縁を支持面28a上に摺動可能に載置した状態で搭載される。さらに、弾性部22の第2連結部分54を覆うようにして、環状のカバー部材36を筐体364に取り付けることにより、弾性部22の第2連結部分54が、筐体364上で固定的に掛止される。
【0142】
この状態で、回路基板360、キーパネル362及び筐体364を、それぞれのスイッチ368、キートップ370及びキー孔372が互いに整合する所定の相対位置関係で相互に組み付ける。このとき、キーパネル362は、筐体364に形成した支持部材26に重畳しない輪郭形状を有し、また回路基板360の裏面360bには、支持部材26の支持面28aに対応する位置に、4個の磁電変換素子18が、ポインティングデバイス366の中心軸線Pを中心とした等間隔分散配置で実装されている。このようにして、携帯型情報機器に一体的に組み込まれたポインティングデバイス366が完成する。
【0143】
上記構成によれば、ポインティングデバイス366の本来の構成要素である支持部材26と回路基板24とを、ポインティングデバイス366を搭載する携帯型情報機器の必須の構成要素である筐体364と回路基板360とに、それぞれ一体化したから、ポインティングデバイス366自体の独立した構成部品の点数が削減される。しかも、ポインティングデバイス366を組み立てる際に、携帯型情報機器の主要部品を装備した大判の筐体364及び回路基板360に対して、他の小寸の構成部品群を組み合わせていくことができるので、ポインティングデバイス366自体の組立作業性、及びポインティングデバイス366を搭載した携帯型情報機器の組立作業性が、著しく向上する。
【0144】
さらに上記構成では、図51に示すように、回路基板360の表面360aと筐体364に形成した支持部材26との間に空間を形成することができるので、回路基板360上の電子部品の実装可能領域が拡大される利点がある。なお、上記構成において、ポインティングデバイス366にクリック機能を有するスイッチ機構を付加する場合は、支持部材26の代わりに、図52に示すように、前述したポインティングデバイス310における複数の弾性梁部分316を有する支持部材314を、筐体364に一体成形すればよい。
【0145】
図53〜図55は、本発明の他の関連技術による携帯型情報機器(例えば携帯型キーボード)の構成部品である下部パネル380、メンブレンシート382、スイッチパネル384及びキートップ386を示す。この携帯型情報機器は、前述した関連技術によるポインティングデバイス10に類似した構成を有するポインティングデバイス388を、組立作業性を向上させる構造の下で搭載したものであり、ポインティングデバイス10に対応する構成要素には同一の参照符号を付してその説明を省略する。なお、ポインティングデバイス10ではなく、前述した本発明の関連技術によるポインティングデバイス80に類似したポインティングデバイスを搭載することにより、図示の携帯型情報機器が構成されることは理解されよう。
【0146】
図53に示すように、スイッチパネル384は、樹脂材料から一体成形された薄板状部材であり、メンブレンシート382に形成された複数のスイッチ(図示せず)に対応する位置に複数の開口部390が貫通形成される。さらにスイッチパネル384には、その表面384aの所定位置に凸状領域が設けられ、この凸状領域の底部に、ポインティングデバイス388の支持部材26が一体的に形成される。つまり、支持部材26は、その円筒壁30の外側領域にて、複数の開口部390を有するスイッチパネル384に一体に連結される。そして、支持部材26の支持面28a及び円筒壁30が、スイッチパネル384の表面384a側に配置される。
【0147】
図54及び図55に示すように、スイッチパネル384に形成した支持部材26には、磁石16を収容した保持部20及び保持部20に取り付けられた弾性部22が、保持部20の軸線方向端縁を支持面28a上に摺動可能に載置した状態で搭載される。さらに、弾性部22の第2連結部分54を覆うようにして、カバー部材36をスイッチパネル384に取り付けることにより、弾性部22の第2連結部分54が、スイッチパネル384上で固定的に掛止される。
【0148】
この状態で、メンブレンシート382とスイッチパネル384とを、それぞれのスイッチと開口部390とが互いに整合する所定の相対位置関係で相互に組み付けて、下部パネル380上に載置する。このとき、メンブレンシート382とスイッチパネル384との間には、磁電変換素子18を実装した回路基板24が、支持部材26の支持面28aの反対側に形成される空間に磁電変換素子18を挿入した状態で配置されている。さらに、スイッチパネル384の各開口部390に設置されるスイッチ作動機構(図示せず)に対応のキートップ386を組み付けるとともに、ポインティングデバイス388の弾性部22にキートップ392を取り付ける。このようにして、携帯型情報機器に一体的に組み込まれたポインティングデバイス388が完成する。
【0149】
上記構成においても、ポインティングデバイス388の本来の構成要素である支持部材26を、ポインティングデバイス388を搭載する携帯型情報機器の必須の構成要素であるスイッチパネル384に一体化したから、ポインティングデバイス388自体の独立した構成部品の点数が削減されるとともに、ポインティングデバイス388自体の組立作業性、及びポインティングデバイス388を搭載した携帯型情報機器の組立作業性が、著しく向上する。
【0150】
ところで、前述したクリック機能を有する種々の形態によるポインティングデバイス80、100、150、280、310は、操作部14、194を、基部82、102、282、312に対して鉛直方向へ押下操作することにより、スイッチ機構84、284を作動させるように構成される。この構成では、操作部14、194の押下操作に伴って、保持部20、200に保持された磁石16、196が基部82、102、282、312上の複数の磁電変換素子18、198に対して必然的に移動する。このときの磁石16、196の移動方向が、複数の磁電変換素子18、198に対して水平方向成分を含んでいる場合には、クリック操作の直前に、それら磁電変換素子18、198の出力電圧の変動により、カーソル移動データ等のアナログデータの信号がポインティングデバイス80、100、280、310から出力されてしまう懸念がある。そこで、適正なクリック操作を実施するためには、操作部14、194を基部82、102、282、312に対して正確に鉛直方向へ押し込むことが必要となり、そのための案内構造を追加装備するか、さもなければオペレータの熟練が要求されることになる。
【0151】
これに対し、図56〜図58に示す本発明の第6の実施形態によるポインティングデバイス400は、低背型でかつ適正なクリック操作を極めて容易に実施できる構造を有する。ポインティングデバイス400は、基部402と、基部402に対して任意の水平方向へ変位可能に基部402上に支持される操作部404と、操作部404に設置される円環状の磁石(例えば永久磁石)406と、磁石406の近傍で基部402に設置される複数の磁電変換素子(例えばホール素子)408と、基部402と操作部404との間に配置されるスイッチ機構410とを備える。操作部404は、磁石406を固定的に保持して基部402上に水平方向へ移動可能に支持される保持部412と、保持部412に連結され、基部402上での保持部412の水平移動に伴い、保持部412を水平移動範囲の原点位置に復帰させる弾性力を発揮する弾性部414と、保持部412から独立して、基部402上に、水平方向に略直交する鉛直方向へ移動可能に配置される作動部416とを備えて構成される。
【0152】
基部402は、図示しないCPU等の電子部品が実装される回路基板418と、回路基板418に固定的に連結される支持部材420とを備える。支持部材420は、平面視で略正方形の板状部材であり、その中央の略円形の凹状領域に、操作部404の保持部412を任意の水平方向へ摺動自在に支持する円環状の支持部分422を有するとともに、支持部分422の中心に形成される円形の開口424にスイッチ機構410を挿入した状態で、回路基板418の表面418aに隙間を介さずに搭載される。なお、この実施形態において「水平方向」とは、回路基板418の略平坦な表面418aに実質的平行な方向を意味する。したがって支持部材420の支持部分422には、回路基板418から離れた側に、回路基板418の表面418aに実質的平行に広がる平坦かつ円環状の支持面422aが形成される。支持面422aは、回路基板418の表面418aから突出した位置で、保持部412を任意の水平方向へ摺動自在に支持する。
【0153】
支持部材420にはさらに、支持面422aを囲繞するようにして、操作部404の保持部412の水平移動範囲を規定する円筒壁426が突設される。円筒壁426は、回路基板418の表面418aからの高さが支持面422aよりも高い位置まで突設され、後述するように弾性部414がその一部分で円筒壁426を包囲して支持部材420に取り付けられる。開口424の中心を通る円筒壁426の中心軸線は、ポインティングデバイス400の中心軸線Pを構成するとともに、支持面422a上での保持部412の水平移動範囲の原点位置を規定する。支持部材420は、例えば接着剤を用いて、回路基板418上の所定位置に固定的に組み付けられる。
【0154】
回路基板418の表面418aには、平面視で略円形輪郭を有するスイッチ機構410が、中心軸線Pを中心として搭載される。また、回路基板418の裏面418bには、計4個の磁電変換素子408が、中心軸線Pを中心とした等間隔分散配置で実装される。このような磁電変換素子408の配置構成により、ポインティングデバイス400は二次元座標系におけるアナログデータ信号を出力できるようになっている。つまり、基部402の回路基板418は、スイッチ機構410を操作部404の下方に位置決めして担持し、磁電変換素子408は、回路基板418を挟んでスイッチ機構410とは反対側に配置される。それにより、回路基板418と支持部材420との間の空所の所要寸法が削減される。
【0155】
基部402はさらに、支持部材420の外縁領域420aを実質的に遮蔽して支持部材420に固定的に連結されるカバー部材428を備える。カバー部材428は、支持部材420に対応する平面視略正方形状を有する薄板状部材であり、その端板部分428aの中央領域に、後述する操作部404の主要操作部分を水平移動可能に挿通させる略円形の中心開口430を有する。カバー部材428の外縁には、四辺に沿ってそれぞれ延長片432が端板部分428aに略直交する方向へ延設され、各延長片432に、板厚方向へ貫通する取付孔434が貫通形成される。カバー部材428は、支持部材420の四辺に沿って側方へ突設された複数の爪436を、それら延長片432の対応の取付孔434に、各延長片432の弾性変形を利用してスナップ式に嵌着することにより、支持部材420に固定的に組み付けられる。カバー部材428は、中心開口430を通して操作部404の主要操作部分を外方に突出させた状態で、操作部404を基部402から脱落しないように保持する。なお、このような構成を有するカバー部材428は、所望の板金材料から作製できる。
【0156】
図示実施形態では、操作部404の保持部412及び弾性部414は、別部材として個別に作製されて、互いに固定的に組み合わされる。保持部412は、操作部404を基部402上で水平移動操作する間に実質的に変形しない程度の剛性を有する円環状の部材からなる。保持部412の軸線方向一端面(図で上端面)には、同心円状に突設された内周壁438と中間壁440との間に、磁石406を収容する環状凹部442が形成される。磁石406は、例えば接着剤を用いたり圧入したりすることにより、保持部412の環状凹部442に固定できる。保持部412は、その軸線方向他端面を、基部402の支持部材420の支持面422aに一様に当接した状態で、支持面422a上で360°全方位へ摺動しつつ平行移動できる。
【0157】
弾性部414は、操作部404を基部402上で水平移動操作する間に比較的容易に弾性変形する椀状の部材からなり、保持部412の周囲に隙間を介して延長される主部分444と、主部分444の一端で保持部412に連結される第1連結部分446と、主部分444の他端で基部402に連結される第2連結部分448とを一体に有する。弾性部414の主部分444は、保持部412を実質的全周に渡って囲繞するとともに、無負荷状態で保持部412に対し同軸に配置される円錐台状又はドーム状の輪郭形状を有する。したがって弾性部414は、その主部分444が、基部402上での保持部412の水平移動に伴い弾性変形するとともに、変形量に対応する弾性力を、保持部412の水平移動方向に関わらず一様に発揮する。
【0158】
弾性部414の第1連結部分446は、円錐台状輪郭の主部分444の小径端から径方向内方へ円環状に一体に延長され、その内側に形成される窪みに、磁石406を保持した保持部412の内周壁438と中間壁440とが固定的に嵌入される。弾性部414の第1連結部分446は、例えば接着剤を用いたり圧入したりすることにより保持部412に固定できる。さらに第1連結部分446は、その中央に、保持部412の内周壁438及び中間壁440に対して同心に貫通形成される円筒状の受容穴450を有する。第1連結部分446は、保持部412及び磁石406の軸線方向一端面を密接被覆して延び、その外面に、オペレータが操作部404を移動操作する際に例えば手の指先を接触させる操作面452が形成される。
【0159】
弾性部414の第2連結部分448は、円錐台状輪郭の主部分444の大径端から径方向及び軸線方向へフランジ状に突出して一体に延長され、その肉厚部分で、基部402を構成する支持部材420の円筒壁426の外側環状溝領域426aとカバー部材428の端板部分428aとの間に固定的に挟持かつ掛止される。第1及び第2連結部分446、448は、基部402上で保持部412が水平移動する間に実質的に変形することなく、弾性部414を保持部412及び基部402にそれぞれ固定的に連結する。
【0160】
なお弾性部414は、合成ゴム、天然ゴム等の種々の弾性材料から形成できる。特に、ポインティングデバイス400を搭載対象機器の主回路基板に実装する際にリフロー工程を実施することを考慮すれば、シリコンゴム等の、高温下でも性質が劣化し難い材料から形成することが有利である。
【0161】
作動部416は、基部402上で鉛直移動操作される間に実質的に変形しない程度の剛性を有する円柱状の部材からなる。作動部416の軸線方向一端(図で下端)には、径方向外方へ突縁部分416aが一体的に延設される。また、作動部416の軸線方向他端には、オペレータが作動部416を押下操作する際に例えば手の指先を接触させる押下操作面454が形成される。作動部416は、弾性部414から分離されて、弾性部414の第1連結部分446に設けた受容穴450に隙間を介して受容される。このとき作動部416は、その突縁部分416aが、保持部412の内周壁438から径方向内方へ僅かに突設された肩部分438aに、磁石406とは反対側で係合できるように方向付けされる。作動部416の突縁部分416aが保持部412の肩部分438aに係合した状態で、作動部416の押下操作面454は、弾性部414の操作面452の中央で僅かに隆起して配置される。
【0162】
作動部416の軸線方向一端面(図で下端面)には、その中央に、局部的に隆起する押圧点456が形成される。押圧点456は、ポインティングデバイス400の中心軸線P上に整合して配置される。操作部404を基部402に適正に組み付けた状態で、作動部416は、その押圧点456を、支持部材420の開口424内に配置されたスイッチ機構410に当接して、操作部404内で鉛直方向へ移動可能に、スイッチ機構410に支持される。
【0163】
なお、スイッチ機構410の構成は任意であり、可動接点がばねに担持されるメカニカルスイッチや、一対のフレキシブル回路基板を有するメンブレンスイッチ等、様々なものを採用できる。また、スイッチ機構410の外形寸法によっては、複数の磁電変換素子408を、支持部材420の開口424内に設置することもできる。
【0164】
上記した各種構成部品を適正に組み合わせた状態で、操作部404は、弾性部414の主部分444及び第1連結部分446並びに作動部416の押下操作面454を含む部分を、基部402のカバー部材428の中心開口430に水平移動可能に挿通するとともに、カバー部材428の端板部分428aから外方に突出した位置に配置する。この状態でオペレータは、弾性部414の第1連結部分446に形成される操作面238を、例えば手指により操作して、保持部412を基部402上で水平移動させることができるとともに、作動部416の押下操作面454を、例えば手指により押下操作して、作動部416を基部402上で鉛直移動させることができる。
【0165】
図58に示すように、操作部404の弾性部414が平衡状態にあるときには、保持部412及びその環状凹部442に保持される磁石406並びに作動部416の中心軸線Qは、ポインティングデバイス400の中心軸線Pに合致する。この状態で保持部412は、基部402の支持部材420上で水平移動範囲の原点位置に位置決めされ、回路基板418上の4個の磁電変換素子408が磁石406から等距離の位置に配置される。この状態から、オペレータが操作面452に指先を当接して保持部412を任意の水平方向へ平行移動させると、弾性部414の主部分444が、保持部412の移動方向及び移動距離に対応して、全周に渡り異なる形態の弾性変形を生じる(図59(a))。それにより弾性部414は、主部分444の全体で合力としての弾性力を発揮し、保持部412をその移動方向と反対の方向に付勢する。したがってオペレータは、弾性部414の主部分444が生ずるばね付勢力に抗して、操作部404を水平移動操作することになる。
【0166】
また、図58に示す原点位置において、オペレータが操作部404の作動部416の押下操作面454を例えば指先で押下して、作動部416の押圧点456をスイッチ機構410に押し付けることにより、スイッチ機構284を閉成させることができる(図59(b))。このとき、保持部412は、支持部材420の支持面422a上に静止支持されているので、オペレータの押下操作力が弾性部414の操作面452に負荷されたとしても、保持部412すなわち磁石406の鉛直方向移動は確実に回避される。
【0167】
このように、ポインティングデバイス400では、操作部404に実質的水平方向への操作力を負荷することにより、保持部412の移動方向及び移動距離に対応したアナログ情報を入力できるとともに、原点位置にある操作部404に実質的鉛直方向への押下操作力を負荷することにより、例えば搭載対象機器のディスプレイ上のポインタに関連してクリック操作を実施することができる。しかも押下操作時には、基部402に対する保持部412の鉛直方向移動を確実に防止できるので、磁石406と複数の磁電変換素子408との相対移動が排除される。したがってポインティングデバイス400では、適正なクリック操作を極めて容易に実施できる。
【0168】
また、ポインティングデバイス400では、前述した第4実施形態によるポインティングデバイス280と同様に、基部402及び操作部404を構成する各構成要素を薄型化したから、全体として低背化を実現することができる。なお、第5実施形態によるポインティングデバイス310と同様に、支持部材420に、弾性部414の第2連結部分448を取り付ける環状の溝を、円筒壁426に代えて形成することにより、さらなる低背化を実現することもできる。
【0169】
図60及び図61は、低背型でかつ適正なクリック操作を極めて容易に実施できる本発明の第7の実施形態によるポインティングデバイス460を示す。ポインティングデバイス460は、操作部の作動部の構成以外は、前述した第6実施形態によるポインティングデバイス400と実質的同一の構成を有するので、対応する構成要素には同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0170】
ポインティングデバイス460は、基部402と、基部402に対して任意の水平方向へ変位可能に基部402上に支持される操作部462と、操作部462に設置される磁石406と、磁石406の近傍で基部402に設置される複数の磁電変換素子408と、基部402と操作部462との間に配置されるスイッチ機構410とを備える。基部402は、図示しないCPU等の電子部品が実装される回路基板418と、回路基板418に固定的に連結される支持部材420と、支持部材420の外縁領域420aを実質的に遮蔽して支持部材420に固定的に連結されるカバー部材428とを備える。
【0171】
操作部462は、磁石406を保持して基部402上に水平移動可能に支持される保持部412と、保持部412をその水平移動範囲の原点位置に復帰させる弾性部414と、保持部412から独立して、基部402上に、水平方向に略直交する鉛直方向へ移動可能に配置される作動部464とを備えて構成される。作動部464は、弾性部414の第1連結部分446に一体的に連結されて、受容穴450内に収容される。詳述すれば、作動部464は、その軸線方向一端(図で下端)に径方向外方へ延設された突縁部分464aにて、弾性部414の第1連結部分446の受容穴450を画定する内周壁に、例えば弾性部414と同一の材料から一体的に成形される。
【0172】
作動部464の軸線方向他端には、オペレータが作動部464を押下操作する際に例えば手の指先を接触させる押下操作面466が形成される。作動部464に押下力が負荷されない状態では、作動部464の押下操作面466は、弾性部414の操作面452の中央で僅かに隆起して配置される。また、作動部464に押下力が負荷されたときには、弾性部414と作動部464との相互連結領域が弾性変形しつつ、作動部464が弾性部414の受容穴450内で鉛直方向へ移動する。なお、作動部464に押下力が負荷されたときに、弾性部414と作動部464との相互連結領域が障害無く弾性変形できるように、図示のように保持部412の内周壁438(図56)を省略することが望ましい。
【0173】
作動部464の軸線方向一端面(図で下端面)には、その中央に、局部的に隆起する押圧点468が形成される。押圧点468は、ポインティングデバイス460の中心軸線P上に整合して配置される。操作部462を基部402に適正に組み付けた状態で、作動部464は、その押圧点468を、支持部材420の開口424内に配置されたスイッチ機構410に当接して、操作部462内で鉛直方向へ移動可能に、スイッチ機構410に支持される。
【0174】
上記構成を有するポインティングデバイス460は、前述したポインティングデバイス400と同様にして、操作部462に実質的水平方向への操作力を負荷することにより、基部402上での保持部412の移動方向及び移動距離に対応したアナログ情報を入力できる(図62(a))。また、図61に示す原点位置において、オペレータが操作部462の作動部464の押下操作面466を例えば指先で押下して、作動部464の押圧点468をスイッチ機構410に押し付けることによりスイッチ機構410を作動させることができる(図62(b))。このとき、基部402に対する保持部412の鉛直方向移動が確実に防止されるので、例えば搭載対象機器のディスプレイ上のポインタに関連して、適正なクリック操作を極めて容易に実施できる。特にポインティングデバイス460では、操作部462の弾性部414と作動部464とを一体化したので、部品点数が削減され、組立作業性が向上する利点が得られる。
【0175】
押下操作専用の作動部416、464を有する上記したポインティングデバイス400、460においては、押下操作時に、作動部416、464を正確に鉛直方向へ移動させることだけでなく、保持部412を支持部材420上で無意識に水平方向へ移動させないようにすることが、カーソル移動データ等のアナログデータの意図しない入力を回避する点で肝要である。そこで、ポインティングデバイス400、460に、作動部416、464をスイッチ機構410の直上の限られた位置でのみ鉛直方向に案内する案内部分を設けることが有利である。
【0176】
図63は、そのような案内部分を有したポインティングデバイス460の変形例を示す。この変形例では、支持部材420に設けた開口424が、作動部464の突縁部分464aの外径寸法よりも僅かに大きな径寸法を有するように形成されている。また、作動部464に押下力を負荷しない状態では、作動部464の底面が支持部材420の支持面422aよりも回路基板418の表面418aから僅かに遠い位置に配置されるように形成されている。
【0177】
このような構成によると、作動部464に押下力を負荷しないようにして操作部462を水平移動操作すれば、作動部464が支持部材420に干渉することなく、保持部412が支持面422a上で所望の水平方向へ円滑に摺動する(図63(a))。保持部412が水平移動している間に、作動部464に押下力を加えたとしても、作動部464が支持部材420の支持面422aに衝突するので、スイッチ機構410を作動させることができない。また、保持部412が水平移動範囲の原点位置にあるときに作動部464を押下操作すれば、作動部464の突縁部分464aが、支持部材420の開口424によってスイッチ機構410の直上で鉛直方向へ正確に案内される(図63(b))。この間、操作部462に無意識に水平方向分力が負荷されたとしても、作動部464が開口424内で支持部材420に衝突するので、保持部412は水平方向へ移動しない。したがってこの構成によれば、クリック操作等を行う際のスイッチ操作位置を、保持部412の水平移動範囲の原点位置のみに特定できるとともに、スイッチ操作時にカーソル移動データ等のアナログデータの意図しない入力を確実に回避できる。
【0178】
また、弾性部414に一体成形した作動部464を有する上記したポインティングデバイス460においては、図64に他の変形例として示すように、作動部464に、弾性部414から独立したキートップ470を装備することができる。この場合、作動部464は、弾性部414に連結される突縁部分464aの近傍領域のみを弾性部414と一体的に成形するとともに、この一体成形部分の、弾性部414の操作面452側に、キートップ470を固定することにより構成できる(図65(a))。そしてキートップ470には、操作面452に近接するその軸線方向端面に、作動部464を鉛直方向へ押圧操作するための押圧操作面472が形成される。
【0179】
この構成によれば、弾性部414とは異なる材料から作製されるキートップ470を装備することにより、作動部464の視認性及び押下操作性、並びに操作部462全体の意匠性を向上させることができる。特に、図示のように、キートップ470の軸線方向他端面の中央に押圧ピン474を突設し、この押圧ピン474を、作動部464の一体成形部分の中央に設けた貫通孔464bに挿通して、その先端を作動部464からスイッチ機構410に向けて突出させることが好ましい。この構成によれば、弾性部414よりも硬質の材料から形成されるキートップ470の押圧ピン474により、スイッチ機構410を正確に作動させることができる。
【0180】
さらに、操作部462の寸法の増加を許容できる場合は、図65(b)に示すように、磁石406の内径寸法よりも大きな外径の押下操作面476を有するキートップ478を、作動部464に装備することもできる。この構成では、作動部464の視認性及び押下操作性を一層向上させることができる。
【0181】
図66及び図67は、押下操作専用の作動部を有する本発明の第8の実施形態によるポインティングデバイス480を示す。ポインティングデバイス480は、操作部の構成以外は、前述した第6実施形態によるポインティングデバイス400と実質的同一の構成を有するので、対応する構成要素には同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0182】
ポインティングデバイス480は、基部402と、基部402に対して任意の水平方向へ変位可能に基部402上に支持される操作部482と、操作部482に設置される磁石484と、磁石484の近傍で基部402に設置される複数の磁電変換素子408と、基部402と操作部482との間に配置されるスイッチ機構410とを備える。基部402は、図示しないCPU等の電子部品が実装される回路基板418と、回路基板418に固定的に連結される支持部材420と、支持部材420の外縁領域420aを実質的に遮蔽して支持部材420に固定的に連結されるカバー部材428とを備える。スイッチ機構410は、回路基板418上でポインティングデバイス480の中心軸線Pからずれた位置に搭載され、支持部材420は、スイッチ機構410に対応する位置に開口424を有する。
【0183】
操作部482は、磁石484を保持して基部402上に水平移動可能に支持される保持部486と、保持部486をその水平移動範囲の原点位置に復帰させる弾性部488と、保持部486から独立して、基部402上に、鉛直方向へ移動可能に配置される作動部490とを備えて構成される。保持部486は、中央に収容溝492を有する板状部材であり、収容溝492に近接する位置に、支持部材420の開口424に対応する寸法の開口494が形成される。保持部486の開口494は、保持部486が基部402上で水平移動範囲の原点位置にあるときに、支持部材420の開口424に整合かつ重畳して配置される。保持部486は、収容溝492に円板状の磁石484を固定的に収容して、弾性部488に取り付けられる。保持部486は、その軸線方向端面を、支持部材420の支持面422aに一様に当接した状態で、支持面422a上で360°全方位へ摺動しつつ平行移動できる。
【0184】
弾性部488は、保持部486の周囲に隙間を介して延長される主部分496と、主部分496の一端で保持部486に連結される第1連結部分498と、主部分496の他端で基部402に連結される第2連結部分500とを一体に有する。弾性部488は、その主部分496が、基部402上での保持部486の水平移動に伴い弾性変形するとともに、変形量に対応する弾性力を、保持部486の水平移動方向に関わらず一様に発揮する。弾性部488の第1連結部分498には、オペレータが操作部482を移動操作する際に例えば手の指先を接触させる操作面502が形成される。さらに第1連結部分498は、保持部486の開口494に対応する位置に、円筒状の受容穴504を有する。
【0185】
作動部490は、軸線方向一端(図で下端)に径方向外方へ延設された突縁部分490aにて、弾性部488の第1連結部分498に一体的に連結されて、受容穴504内に収容される。作動部490の軸線方向他端には、オペレータが作動部490を押下操作する際に例えば手の指先を接触させる押下操作面506が形成される。また、作動部490の軸線方向一端面(図で下端面)には、その中央に、局部的に隆起する押圧点508が形成される。操作部482を基部402に適正に組み付けた状態で、作動部490は、その押圧点508を、支持部材420の開口424内に配置されたスイッチ機構410に当接して、操作部482内で鉛直方向へ移動可能に、スイッチ機構410に支持される。
【0186】
上記構成を有するポインティングデバイス480は、前述したポインティングデバイス460と同様にして、操作部482に実質的水平方向への操作力を負荷することにより、基部402上での保持部486の移動方向及び移動距離に対応したアナログ情報を入力できる。また、図67に示す原点位置において、オペレータが操作部482の作動部490の押下操作面506を例えば指先で押下して、作動部490の押圧点508をスイッチ機構410に押し付けることによりスイッチ機構410を作動させることができる。このとき、基部402に対する保持部486の鉛直方向移動が確実に防止されるので、例えば搭載対象機器のディスプレイ上のポインタに関連して、適正なクリック操作を極めて容易に実施できる。特にポインティングデバイス480では、中心軸線Pからずれた位置に作動部490を配置したので、単純な円板形状の磁石484を使用できる利点が得られる。また、回路基板418上に複数のスイッチ機構410を搭載するとともに、操作部482にそれらスイッチ機構410に対応する複数の作動部490を設けることができるので、多様な機能性をポインティングデバイス480に付加することができる。
【0187】
クリック機能を有する前述した種々の実施形態によるポインティングデバイスでは、操作部の正確な鉛直移動操作を可能にする案内部分を設ける等、構造上の工夫により、スイッチ押下操作時にアナログデータの意図しない入力を回避することができる。しかし、このような案内構造に代えて、又は補足的に追加して、ポインティングデバイスから出力される信号処理上の工夫により、スイッチ押下操作時にアナログデータの意図しない入力を回避することもできる。図68は、そのような工夫を施した本発明の関連技術による信号処理方法を示す。
【0188】
例えば前述した第6実施形態によるポインティングデバイス400において、作動部416を押下操作してスイッチ機構410を作動させると、回路基板418に実装したCPUが、スイッチ機構410から受け取ったオン信号をクリック信号として処理して、ポインティングデバイス400を搭載したデータ処理装置の処理機構に出力する。ここで、図68に示すように、スイッチ機構410がオン状態にある間は、仮に保持部412が水平移動したとしても、CPUがカーソル移動データ信号を出力しないように、信号処理プログラムを設定する。それにより、スイッチ押下操作時に、意図しないアナログデータ入力を回避することができる。
【0189】
さらにポインティングデバイス400では、作動部416の押下操作を解除した後にも、保持部412に無意識の水平移動が生じたときに、カーソル移動データ信号が出力されてしまう場合がある。そこで、図68に示すように、スイッチ機構410がオフ状態になった後に、所定時間Tの間は、仮に保持部412が水平移動したとしても、CPUがカーソル移動データ信号を出力しないように、信号処理プログラムを設定することが有利である。それにより、スイッチ押下操作の解除後にも、意図しないアナログデータ入力を回避することができる。なお、この構成における時間Tは、ポインティングデバイスの操作性を考慮して様々に設定できる。例えば、パーソナルコンピュータ等で多用されるダブルクリック操作の間に、ディスプレイ画面上でポインタを一定位置に容易に保持し得る程度の時間に設定することができる。
【0190】
以上、低背化及び操作性向上を主目的とした幾つかの好適な実施形態を説明したが、それら実施形態においても図示構成以外の様々な形態を採ることができる。例えば、本発明に係る低背型ポインティングデバイスの特徴的構成は、磁石と複数の磁電変換素子との位置関係が、図示実施形態とは逆の構成、すなわち基部に設置した磁石に対し、操作部に設置した磁電変換素子が変位するように構成されたポインティングデバイスにおいても、有効に採用でき、かつ同様に格別の作用効果を奏するものである。また、上記した種々の低背型ポインティングデバイスに、前述したコネクタ付き回路基板の製造方法を適用することもできる。さらに、前述したポインティングデバイスの出力信号処理方法は、図示実施形態による磁電変換素子型のポインティングデバイスへの適用に限らず、他の様々なアナログデータ入力構造を有するポインティングデバイスに適用できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0191】
本発明は、電子手帳、携帯情報端末(PDA)、携帯電話等の、手持操作可能な種々の携帯型情報機器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0192】
【図1】本発明の関連技術によるポインティングデバイスの分解斜視図である。
【図2】図1のポインティングデバイスの組立斜視図である。
【図3】図2の線III−IIIに沿ったポインティングデバイスの縦断面図で、操作部が原点位置にある状態を示す。
【図4】図3に対応する縦断面図で、操作部を水平移動させた状態を示す。
【図5】本発明の関連技術によるポインティングデバイスの分解斜視図である。
【図6】図5のポインティングデバイスの縦断面図で、操作部が原点位置にある状態を示す。
【図7】本発明の関連技術によるポインティングデバイスの分解斜視図である。
【図8】図7のポインティングデバイスの縦断面図で、操作部が原点位置にある状態を示す。
【図9】図8に対応する縦断面図で、操作部を押下操作した状態を示す。
【図10】本発明の関連技術によるポインティングデバイスの分解斜視図である。
【図11】図10のポインティングデバイスの縦断面図で、操作部が原点位置にある状態を示す。
【図12】図11に対応する縦断面図で、操作部を押下操作した状態を示す。
【図13】変形例によるポインティングデバイスの縦断面分解図である。
【図14】他の変形例によるポインティングデバイスの縦断面分解図である。
【図15】さらに他の変形例によるポインティングデバイスの縦断面分解図である。
【図16】さらに他の変形例によるポインティングデバイスの分解斜視図である。
【図17】図16のポインティングデバイスの縦断面図で、操作部が原点位置にある状態を示す。
【図18】図17に対応する縦断面図で、操作部を水平移動させた状態を示す。
【図19】さらに他の変形例によるポインティングデバイスの分解斜視図である。
【図20】図19のポインティングデバイスの縦断面図で、操作部が原点位置にある状態を示す。
【図21】本発明の関連技術によるポインティングデバイスを、実装基板に実装した状態で示す組立斜視図である。
【図22】図21のポインティングデバイスの分解斜視図である。
【図23】図21のポインティングデバイスにおけるコネクタ付き回路基板の平面図である。
【図24】図23の回路基板の製造工程を説明する図で、コネクタを取り付ける前段階の回路基板の平面図である。
【図25】図24の回路基板の(a)部分拡大断面図、及び(b)部分拡大平面図である。
【図26】図23の線XXVI−XXVIに沿った回路基板の断面図である。
【図27】本発明の第1実施形態によるポインティングデバイスの分解斜視図である。
【図28】図27のポインティングデバイスの組立斜視図である。
【図29】図28の線XXIX−XXIXに沿ったポインティングデバイスの縦断面図で、操作部が原点位置にある状態を示す。
【図30】本発明の第2実施形態によるポインティングデバイスの分解斜視図である。
【図31】図30のポインティングデバイスにおける支持部材の斜視図である。
【図32】図30のポインティングデバイスの縦断面図で、操作部が原点位置にある状態を示す。
【図33】本発明の第3実施形態によるポインティングデバイスの分解斜視図である。
【図34】図33のポインティングデバイスの縦断面図で、操作部が原点位置にある状態を示す。
【図35】本発明の第4実施形態によるポインティングデバイスの分解斜視図である。
【図36】図35のポインティングデバイスにおける支持部材の図で、(a)上方から見た斜視図、及び(b)下方から見た斜視図である。
【図37】図35のポインティングデバイスの縦断面図で、(a)図36の線XXXVIIA−XXXVIIAに沿って示す図、及び(b)図36の線XXXVIIB−XXXVIIBに沿って示す図である。
【図38】本発明の第5実施形態によるポインティングデバイスの分解斜視図である。
【図39】図38のポインティングデバイスにおける支持部材の図で、(a)上方から見た斜視図、及び(b)下方から見た斜視図である。
【図40】図38のポインティングデバイスの縦断面図で、(a)図41の線XXXXA−XXXXAに沿って示す図、及び(b)図41の線XXXXB−XXXXBに沿って示す図である。
【図41】図38のポインティングデバイスの変形例における支持部材の底面図である。
【図42】(a)図38のポインティングデバイスの他の変形例における支持部材の平面図、及び(b)さらに他の変形例における支持部材の平面図である。
【図43】図38のポインティングデバイスの変形例における支持部材の平面図である。
【図44】図43の支持部材を備えた変形例によるポインティングデバイスの縦断面図である。
【図45】本発明の関連技術による携帯型情報機器の主要構成要素を示す分解斜視図で、(a)上方から見た図、及び(b)下方から見た図である。
【図46】図45の主要構成要素の組立時の縦断面図で、(a)筐体組み付け前、及び(b)筐体組み付け後の状態を示す。
【図47】本発明の関連技術による携帯型情報機器の主要構成要素を示す分解斜視図で、(a)上方から見た図、及び(b)下方から見た図である。
【図48】図47の主要構成要素の組立時の縦断面図である。
【図49】本発明の関連技術による携帯型情報機器の主要構成要素を示す分解斜視図である。
【図50】図49に示す筐体にポインティングデバイスの構成要素を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図51】図49の主要構成要素の組立時の図で、図50の線XXXXXI−XXXXXIに沿って示す縦断面図である。
【図52】図49に示す筐体の変形例の拡大斜視図である。
【図53】本発明の関連技術による携帯型情報機器の主要構成要素を示す分解斜視図である。
【図54】図53の主要構成要素の組立時の斜視図である。
【図55】図53の主要構成要素の組立時の図で、図54の線XXXXXV−XXXXXVに沿って示す縦断面図である。
【図56】本発明の第6実施形態によるポインティングデバイスの分解斜視図である。
【図57】図56のポインティングデバイスの組立斜視図である。
【図58】図57の線XXXXXVIII−XXXXXVIIIに沿ったポインティングデバイスの縦断面図で、操作部が原点位置にある状態を示す。
【図59】図56のポインティングデバイスの縦断面図で、(a)水平移動操作時、及び(b)押下操作時の状態を示す。
【図60】本発明の第7実施形態によるポインティングデバイスの分解斜視図である。
【図61】図60のポインティングデバイスの組立斜視図である。
【図62】図60のポインティングデバイスの縦断面図で、(a)水平移動操作時、及び(b)押下操作時の状態を示す。
【図63】図60のポインティングデバイスの変形例の縦断面図で、(a)水平移動操作時、及び(b)押下操作時の状態を示す。
【図64】図60のポインティングデバイスの他の変形例の分解斜視図である。
【図65】(a)図64の変形例の縦断面図、及び(b)他の変形例の縦断面図である。
【図66】本発明の第8実施形態によるポインティングデバイスの組立斜視図である。
【図67】図66のポインティングデバイスの、線XXXXXXVII−XXXXXXVIIに沿った縦断面図である。
【図68】本発明の関連技術による信号処理方法を示す線図である。
【符号の説明】
【0193】
190、240、260、280、310、400、460、480 ポインティングデバイス
192、242、262、282、312、402 基部
194、404、462、482 操作部
196、406、484 磁石
198、408 磁電変換素子
200、412 保持部
202、414、488 弾性部
204、340、360、418 回路基板
206、244、286、314、420 支持部材
216、428 カバー部材
232、444、496 主部分
234、446、498 第1連結部分
236、448、500 第2連結部分
238、452、502 操作面
284、410 スイッチ機構
350、364 筐体
470、478 キートップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のキートップを有するキーパネルと該キーパネルを覆う筐体とを備えた携帯型情報機器に搭載されるポインティングデバイスであって、
基部と、該基部に対して変位可能に該基部上に支持される操作部と、該操作部に設置される磁石と、該磁石の近傍で該基部に設置される磁電変換素子とを具備し、
前記操作部は、前記磁石を固定的に保持して前記基部上に移動可能に支持される保持部と、該保持部に連結され、該基部上での該保持部の移動に伴い、該保持部を移動範囲の原点位置に復帰させる弾性力を発揮する弾性部とを備え、
前記弾性部は、前記保持部を実質的全周に渡って囲繞する主部分と、該主部分の一端で該保持部に重なるように延長されて該保持部に連結される第1連結部分と、該主部分の他端の第2連結部分とを、互いに一体に有し、該主部分が、該基部上での該保持部の移動方向に関わらず一様な前記弾性力を発揮するように形成され、
前記携帯型情報機器に搭載したときに、前記筐体が、前記弾性部の前記第2連結部分を固定的に保持すること、
を特徴とするポインティングデバイス。
【請求項2】
前記操作部の前記弾性部が、前記携帯型情報機器の前記キーパネルに一体化されている、請求項1に記載のポインティングデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68】
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【公開番号】特開2008−33963(P2008−33963A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263166(P2007−263166)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【分割の表示】特願2001−318509(P2001−318509)の分割
【原出願日】平成13年10月16日(2001.10.16)
【出願人】(501398606)富士通コンポーネント株式会社 (848)
【Fターム(参考)】