説明

ポケット型チェーンホイールおよびポケット型チェーンホイールを含むチェーン伝動装置

本発明は、2つの群のポケット(3)を含むポケット型のスプロケットに関し、このスプロケットは、スプロケット軸(8)に対してα度の角度で通過するチェーン部分のチェーン部材(10)用に使用され、これらの群のポケット(3)は、相互に隣接し且つオフセット状態にある。スプロケットの所定の歯数における角度αが、使用部材の直径dおよびチェーン部材(10)の内側幅bのみによって決定されるように、チェーン部材とポケットとの間の接触が確実に歯の面の領域に限定されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻き上げ装置および吊り上げ装置のチェーン伝動装置(chain drive)用のポケット型チェーンホイールに関し、このチェーンホイールはホイール軸に対して角度αで通過する2つの群のチェーンリンク用ポケットを含み、このポケット群は相互に隣接し、かつ、オフセット状態に配置され、このチェーンホイールの内方で各ポケットが底部、側壁および2つの歯を形成する横手方向に延びたウェブによって形成され、対向するこのポケットの側壁間の距離Aは、ホイール軸方向に測定したチェーンリンクの延長部aよりも長くなっている。
【背景技術】
【0002】
上述のタイプのチェーンホイールは下記特許文献1から知られている。この公知のチェーンホイールにおいて、チェーンリンクは、ホイール軸の近くに配置された脚部によって底部でそして軸から離れて配置された脚部によってこの脚部に面したホイールの歯を形成する横手方向に延びたウェブの領域で支持され、この種の二重の支持によって、チェーンリンクの斜めの位置と一致する大きさの角度αが形成される。さらにポケットの側壁上のいずれかでチェーンリンクが支持されると効果的だと考えられている。つまり、公知のチェーンホイールでは、関連するその他のポケット型チェーンホイールの場合にも当てはまるように、角度αの大きさはチェーンホイールの寸法によって決まるが、これは例えば下記特許文献2から知られている。この特許文献に開示されているチェーンホイールにおいて、チェーンリンクは、一方で軸の近くに位置するその弓部から脚部への移行領域において歯の基部上で支持され、他方でウェブの座面上で支持され、このホイールの形状によって、この歯の中央の面がホイールの軸に対して45度から50度程度の所定の角度を成すようになっている(上記特許文献2、第2欄、13から26行目参照)。所定の角度は、下記特許文献3から知られているように、チェーンホイールを通過するチェーンのリンクによっても形成され、その角度は45度である(2頁、22行目参照)。軸から離れている脚部は、上記文献の図2(図は正確ではない)とは対照的に、伝動歯部の各頂上に配置される(上記文献中2頁、15から16行目参照)が、軸の近くに位置する脚部は各ポケット基部上で支持される。また、チェーンホイール軸に対して45度の角度を形成するチェーンリンクの中央面の位置またはチェーンの個々に連続するチェーンリンクの中央面間で90度のオフセットを形成するチェーンホイールも、下記特許文献4(1頁、97から102行目参照)によって達成されている。下記特許文献5では、チェーンリンクの中央面の位置が各チェーンホイール軸に対して45度ではないチェーンホイールが提案されている。しかしながら、このチェーンホイールでも、チェーンホイールを通過するチェーンリンクの角度位置は、特定のパラメータ(要因)に基づいて、チェーンホイールの形状によって決定される。
【特許文献1】ドイツ特許第4406623(C1)号明細書
【特許文献2】米国特許第5533938号明細書
【特許文献3】オランダ特許第7904559(A)号明細書(ドイツ実用新案第7918997(U)号明細書)
【特許文献4】米国特許第662768(A)号明細書
【特許文献5】米国特許第3415135(A)号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
種々の研究によって判明したように、上述の特許文献1から4のポケット型チェーンホイールにおいてチェーンリンクがホイールを通過する際、チェーンリンクにかかる負荷は、特許文献5のチェーンホイールを通過する際の負荷よりも小さいと想定される。その理由は、上述の特許文献1から4のホイールのポケットの底部はホイールの軸とほぼ平行で、かつ、このホイールのポケットの側壁はホイールの軸に対してほぼ垂直であるため、特許文献5のチェーンホイールにおいて一般的な状態とは対照的に、チェーンリンクがある程度自由に動くためと考えられているが、この動きによって、大きな負荷が掛かる場合、チェーンが磨耗による交換の前に破損してしまう恐れがないわけではない。
【0004】
しかしながら、これまで示してきたようにチェーンリンクに掛かる負荷は大幅に軽減することができる、すなわち、上述の解決策とは対照的であるが、もしチェーンリンクがチェーンホイールに亘って走行するときにチェーンリンクによって形成される角度αが、チェーンホイールの形状ではなく、所定の歯数のときのホイールのチェーンリンク部材の直径dおよび内側幅bのみによって決まるのであれば、ホイールの歯を形成する横手方向に延びたウェブの高さHが確実にホイール軸から離れたチェーンリンクの長手方向に延びた脚部とこの脚部に面し、横手方向に延びたウェブによって形成された歯部の頂上の領域との接触を回避できるほど充分低くなり、かつ、ポケットの側壁が確実にホイール軸と平行なチェーンリンクの可能な動きを制限するためだけに機能するので、負荷を軽減することができる。
【0005】
これは実際には、本発明のチェーンホイールをチェーンリンクが通過する際、チェーンリンクがいわゆる「それ自体が安定する」斜めの位置を占め、かつ、所定の強制位置に起因する、いかなる追加の負荷にも晒されないことを意味する。接触領域、即ち本発明のチェーンホイールにおいて、力がチェーンホイールとそれを通過するチェーンのリンク間に伝える際に介在する接触領域は、歯部を形成する横手方向に延びたウェブの歯部フランクおよびこの歯部フランクに当接するチェーンリンクの弓形状セクションに限定され、ポケットの側壁は、いかなる純粋な支持機能も担うことなく、ホイール軸に対するチェーンストランドの動きを適度な範囲で維持する機能だけを有すればよい。チェーンリンクの動きに所定の自由が付与されれば、限界応力を防ぐことができる。もはやチェーンが交換前に疲労によって破損することを心配する必要はない。
【0006】
さらに、本発明は巻き上げ装置または吊り上げ装置のための、本発明のポケット型チェーンホイールを装備したチェーン伝動装置に関し、ポケット型チェーンホイールを通過するチェーンストランドの積載側および解放側は、そこに枢動自在な案内部材が割り当てられ、この案内部材の枢動軸およびチェーンホイールの軸はそれぞれ、出入りするチェーンストランドの長手方向の軸と垂直な平面に配設されている。案内部材の役割は、ポケット型チェーンホイールに入る前にそれぞれのチェーンリンクを安定させて制御不能な動きを減らし、チェーンストランドがポケット型チェーンホイールに安全に入れるようにすることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の更なる特徴および詳細は、従属請求項および添付図に示される以下の説明から明らかとなろう。
【0008】
図1および2は、着脱式または非着脱式に相互に結合可能なポケット型チェーンホイールの2つの半部である。2つの半部はそれぞれ5つのポケット3を形成し、このポケットの底部4が直線部分4aと、4bとを有し、これらの部分は約160度の角度βを囲んで、チェーンリンクの溶接ビードと、底部4との接触を回避している。
【0009】
ホイールの円周方向に相互にオフセット状態に配置されている、ポケット列の連続する各ポケット3は、フランク6を有する歯部5によって互いに離隔され、このフランクがチェーンストランドのチェーンリンクに力を伝達する。ノッチ部分への応力を軽減するために配設された小さな移行部7を除き、ポケット3の底部4および歯5のフランク6はポケット型チェーンホイールの軸8と平行に延び、これに対してポケット3の側壁9は軸8に対して垂直に配向されている。いずれにせよ、移行部の半径はチェーンのリンクの直径dの半分よりも小さくする必要があり、直径dは丸いスチール製リンクを用いているときは脚部の直径とし、断面D字状リンクを用いているときはD字状の断面に内接するリンクの直径dとする。実際には湾曲部の半径は、ほぼ0.1dから0.4d程度であるため、チェーンのリンクと、移行部とのあらゆる接触は回避される。
【0010】
図6から図9は、例示のためにいずれも直径dの単独のチェーンリンク10を示し、その角度αは、ポケット型チェーンリンクを通過する際のその部材の直径dおよびその内側幅bに基づいて、チェーンのリンクが呈する角度である。例えば角度αは、図6の内側幅b=1.1dであるチェーンリンクを有するチェーンの場合は約45度であるが、内側幅b=1.15d(図7)、1.25d(図8)および1.3d(図9)のチェーンリンクの場合は、約41度(図7)、約35度(図8)および約30度(図9)の角度を成す。図6から図9に示すように、チェーンリンクの所定の部材直径dおよびホイールの所定の歯数のときの、チェーンリンクの斜めの位置は、チェーンリンクの内側幅bのみによって決定される、すなわち、標準的な従来技術とは対照的に、ポケット型チェーンホイールの寸法によって決まるのではなく、相互に結合しているチェーンリンクの弓もしくはリンクの孤に亘る互いの接触状態によって決まる。通常の状態では、ホイールの軸から離れているほうのチェーンリンク10の長手方向の脚部11は、これらの脚部に面する歯5の頂上領域12と接触しないだけでなく、さらに、ポケット3の対向する側壁9と軸から離れた脚部11および軸に近い脚部13との間にも接触は生じない。換言すれば、対向する側壁9間の距離Aは、軸8の方向に測定したチェーンリンク10の外側幅aよりも大きい。実際には、Aは1.1a(aの1.1倍)より大きくなければならない。
【0011】
図10および11は、丸いスチール製リンク10から成るチェーンストランド14が巻かれた上述のタイプのポケット型チェーンホイール15を示し、このチェーンホイールは、巻き上げ装置および吊り上げ装置用のチェーン伝動装置の一部を形成する。チェーンストランド14の積載側および解放側は、それぞれに割り当てられた枢動軸16および17を中心に回転自在な2つの案内部材18および19を有し、この各案内部材は、案内ウェブ20を含み、チェーンストランドの出入り動作を効果的に促し、さらにそれ自体はすでに知られているが、チェーンストランドが入る際、反作用によってチェーンストランドの上昇を抑える。図10から判るように、枢動軸16、17およびホイール軸8は、シート面(sheet plane)に垂直なこれら軸の共同面(joint plane)に位置する。斜めに入るチェーンストランド14では図12から判るように、この共同面は3つの軸8、16および17すべての共同面ではなく、軸16および8ならびに17および8のそれぞれの共同面を意味する。
【0012】
チェーンリンク10の形状に適合させてないこの新規のチェーンホイールのポケット3によって、丸いスチール製リンク10から成るチェーンストランド14を、断面D字状リンク22から成るチェーンストランド21と容易に交換できるようになる。特に断面D字状リンク22から成るチェーンストランド21を使用する場合、図13および14に示すように案内部材18および19を案内部材23、24に置き換え、このとき、案内溝25を案内ウェブ20の代わりに設けると好適であることが判明している。案内溝25の最大幅Bは意図的に、ポケット3の側壁9間の距離Aよりも小さくなるように選択されており、図10から12の解決策のときと同様に、チェーンリンク22がポケット型チェーンホイール15へ確実に中央から入るようにする。
【0013】
原則として、案内ウェブおよび案内溝を省略することが可能である。その場合でも、ポケット3の側壁9がホイールを通過するチェーンストランドの横方向の走行、すなわち、ホイール軸8と平行に延びる走行を、チェーンホイールが規定する「角度の拘束」をチェーンリンクに強いることなく、防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】2つの部分から成るポケット型チェーンホイールの、ホイール半部のポケットの、正面図である。
【図2】図1のホイール半部の上面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図1から3の2つの部分から成るポケット型チェーンホイールの正面図である。
【図5】図4のポケット型チェーンホイールの上面図である。
【図6】内側幅bが1.1dであるリンクを有する、チェーンのためのポケット型チェーンホイールの断面図である。
【図7】内側幅bが1.15dであるリンクを有する、チェーンのためのポケット型チェーンホイールの断面図である。
【図8】内側幅bが1.25dであるリンクを有する、チェーンのためのポケット型チェーンホイールの断面図である。
【図9】内側幅bが1.3dであるリンクを有する、チェーンのためのポケット型チェーンホイールの断面図である。
【図10】丸いスチール製チェーンを装備し、且つ、図1から9のポケット型チェーンホイールを有するチェーン伝動装置部分の正面図である。
【図11】図10のチェーン伝動装置部分の上面図である。
【図12】変形チェーン伝動装置部分の正面図である。
【図13】断面D字状のチェーンを装備し、かつ、図1から9のポケット型チェーンホイールを有するチェーン伝動装置部分の正面図である。
【図14】図13のチェーン伝動装置部分の上面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻き上げ装置および吊り上げ装置のチェーン伝動装置用のポケット型チェーンホイールであり、ホイール軸(8)に対して角度αでホイールを通過するチェーンリンク(10;22)のための2つの群のポケット(3)を含み、前記ポケット(3)の群が相互に隣接し、かつ、オフセット状態に配置され、このチェーンホイールの内方で各ポケットが底部(4)、側壁(9)および2つの歯(5)を形成する横手方向に延びたウェブによって形成され、かつ、対向するこのポケット(3)の側壁(9)間の距離(A)は、ホイールの軸(8)の方向に平行に測定したチェーンリンク(10;22)の長さ(a)よりも長いポケット型チェーンホイールにおいて、ホイールの所定の歯数での角度αがチェーンリンク(10;22)の部材の直径dおよび内側幅bのみによって決まり、ホイールの歯(5)を形成する横手方向に延びたウェブの高さHがホイール軸から離れたチェーンリンクの長手方向に延びた脚部とこの脚部に面した横手方向に延びたウェブによって形成された歯部の頂上の領域との接触を回避できるほど充分低く、かつ、ポケットの側壁(9)が確実にチェーンリンク(10;22)の起こりえるホイール軸(8)に対する平行な動きを制限するためだけに機能することを特徴とするポケット型チェーンホイール。
【請求項2】
対向するポケット(3)の側壁(9)間の距離(A)が、ホイール軸(8)方向で測定したチェーンリンク(10;22)の延長部(a)の1.1倍よりも長いことを特徴とする請求項1に記載のポケット型チェーンホイール。
【請求項3】
ポケット(3)の底部(4)と、これに面し且つホイール軸の近くに位置するチェーンリンク(10;22)の長手方向の脚部(13)との接触を回避するためのポケットの底部が、2つの部分(4a、4b)からなり、これらの部分は、相互に鈍角βを囲み、且つ、その互いに反対の方向に向いた端部がホイールの歯のフランク(6)へと延びていることを特徴とする請求項1または2に記載のポケット型チェーンホイール。
【請求項4】
ポケット(3)の底部(4)が軸(8)と平行に延び、かつ、ポケット(3)の側壁(9)がホイール軸(8)に対して垂直に延びていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のポケット型チェーンホイール。
【請求項5】
歯(5)のフランク(6)およびポケット(3)の底部(4)が、半径を有する湾曲範囲(7)を介して、ポケット(3)の側壁(9)に移行し、この半径は、前記範囲(7)と、チェーンリンク(10;22)との間のいかなる接触も回避することができるほど、充分小さいことを特徴とする請求項4に記載のポケット型チェーンホイール。
【請求項6】
歯(5)のフランク(6)と、ポケット(3)の底部(4)との間の移行部(7)およびポケットの側壁(9)が、0.4d以下の半径を有することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のポケット型チェーンホイール。
【請求項7】
ポケット型チェーンホイール(1、2)を通過するチェーンストランド(14;21)の積載側および解放側がそれらに割り当てられた枢動自在な案内部材(18、19;23、24)を有し、この案内部材の枢動軸(16、17)およびチェーンホイールの軸(8)がそれぞれ、出入りするチェーンストランド(14;21)の長手方向に延びた軸に対して垂直面に配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のポケット型チェーンホイールを含むチェーン伝動装置。
【請求項8】
案内部材(18、19;23、24)が、案内ウェブ(20)または案内溝(25)を含み、その長さLが少なくともチェーンストランド(14;21)のチェーンリンク(10;22)間の間隔tの2.5倍であることを特徴とする請求項7に記載のチェーン伝動装置。
【請求項9】
案内部材(18、19;23、24)が、その枢動軸(16、17)の下方に位置する部分および上方に位置する部分を含み、この下方部分が少なくともチェーンの間隔の2倍の長さを有することを特徴とする請求項7または8に記載のチェーン伝動装置。
【請求項10】
チェーンストランド(14;21)のリンク(10;22)が1.1から1.4dの内側幅bを有することを特徴とする請求項7から9のいずれかに記載のチェーン伝動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2008−540954(P2008−540954A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510519(P2008−510519)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【国際出願番号】PCT/EP2006/004859
【国際公開番号】WO2006/120036
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(507387859)
【Fターム(参考)】