説明

ポジティブ型感光性樹脂組成物

【課題】膜の機械的物性を向上させると同時に熱硬化時に膜収縮率が低く、高感度及び高解像度を有し、パターン形状が良好で、優れた残渣除去性を有するポジティブ型感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)特定構造の反復単位を有し、少なくとも一側の末端部に熱重合性官能基を有する第1ポリベンゾオキサゾール前駆体、(B)下記化学式3で表される反復単位を有する第2ポリベンゾオキサゾール前駆体、(C)感光性ジアゾキノン化合物、(D)シラン化合物、及び(E)溶媒を含むポジティブ型感光性樹脂組成物。


(化学式3において、Y3は熱重合が可能な基であり、Y4は芳香族有機基又は脂環式有機基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジティブ型感光性樹脂組成物に関するもので、より詳細には高感度及び高解像度を有し、パターン形状が良好で、高い残渣除去性を有し、膜収縮率が低く、特に熱硬化後の機械的物性に優れたポジティブ型感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、半導体装置の表面保護膜及び層間絶縁膜として、優れた耐熱性と電気的特性及び機械的特性を有するポリイミド樹脂が用いられた。このようなポリイミド樹脂は、感光性ポリイミド前駆体組成物の形態で使用するため、塗布が容易である。ポリイミド前駆体組成物を半導体装置上に塗布した後、紫外線によるパターニング、現像、熱イミド化処理等を施して、表面保護膜又は層間絶縁膜等を簡単に形成できる。これによって、従来の非感光性ポリイミド前駆体組成物に比べて、工程を大幅に短縮化できるという特徴がある。
【0003】
感光性ポリイミド前駆体組成物は、露光された部分が現像によって溶解するポジティブ型と、露光された部分が硬化して残るネガティブ型があるが、ポジティブ型の場合は、無毒性のアルカリ水溶液を現像液として使用できるので好ましい。ポジティブ型感光性ポリイミド前駆体組成物は、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸、感光性物質であるジアゾナフトキノン等を含む。しかし、ポジティブ型感光性ポリイミド前駆体組成物は、使用するポリアミド酸のカルボン酸がアルカリに対して溶解度が大きすぎるため、所望のパターンが得られないという問題点がある。
【0004】
これを解決するために、ポリアミド酸にエステル結合を介して、水酸基1つ以上を有するアルコール化合物を反応させる(例えば、特許文献1参照)等、カルボン酸の代わりにフェノール性水酸基を導入する物質が提案されているが、この物質は現像性が不十分で、膜減りや基材から樹脂が剥離するという問題点がある。
【0005】
他の方法としては、ポリベンゾオキサゾール前駆体にジアゾナフトキノン化合物を混合した材料(例えば、特許文献2参照)が最近注目されているが、ポリベンゾオキサゾール前駆体組成物を実際に使用する場合、特に現像時の未露光部の膜減り量が大きくて、現像後に所望のパターンを得ることが難しい。これを改善するために、ポリベンゾオキサゾール前駆体の分子量を大きくすれば、未露光部の膜減り量は小さくなるが、現像時露光部に現像残渣が生じて解像度が不良になり、露光部の現像時間が長くなるという問題がある。
【0006】
かかる問題点を解決するために、ポリベンゾオキサゾール前駆体組成物に特定のフェノール化合物を添加することによって現像時の未露光部の膜減り量が抑制されることが報告されている(特許文献3及び特許文献4)。しかしこの方法では、未露光部の減少量を抑制する効果が不十分であり、現像残渣を生じず同時に膜減り抑制効果を大きくするためのさらなる研究が要求されている。また、溶解度を調節するために用いるフェノールが熱硬化時の高温で分解したり副反応を起こす等の不具合が生じて、結果的に得られる硬化膜の機械的物性に大きい損傷を与えており、フェノール化合物と代替できる溶解調節剤の研究も要求されている。
【0007】
また、前記ポリイミド又はポリベンゾオキサゾール前駆体組成物を用いて形成された熱硬化膜は、半導体装置に持続的に残留し、表面保護膜として作用するので、引張強度、伸び率、ヤング率等の膜の機械的物性が特に重要な要因になる。特に半導体パッケージング方法が急速に発展しており、これに対応するために表面保護膜として用いられるポリイミド又はポリベンゾオキサゾール膜の機械的物性は大変重要である。しかし、一般に用いられるポリイミド、あるいはポリベンゾオキサゾール前駆体の場合、上記機械的物性、例えば、伸び率が適正水準未満であることが多く、これを解決するために、様々な添加剤を使用する方法、又は熱硬化時に架橋を起こす構造の前駆体化合物等を使用する方法が報告されている。
【0008】
しかし、これらの方法の場合、伸び率で代表される機械的物性を改善することはできるものの、感度、解像度等の光特性面で実用レベルに達していない。したがって、光特性の低下をもたらすことなく、優れた機械的物性を達成できる方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−307393号公報
【特許文献2】特公昭63−96162号公報
【特許文献3】特開平09−302221号公報
【特許文献4】特開2000−292913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の目的は、膜の機械的物性を向上させると同時に熱硬化時に膜収縮率が低く、高感度及び高解像度を有し、パターン形状が良好で、優れた残渣除去性を有する感光性樹脂組成物を提供することである。
【0011】
また本発明は、前記ポジティブ型感光性樹脂組成物を用いて製造した感光性樹脂膜を含む半導体素子を提供することである。
【0012】
本発明が目的とする技術的課題は、上記課題に限定されず、また他の技術的課題は以下の説明により当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施態様は、(A)下記化学式1で表される反復単位を有し、少なくとも一側の末端部に熱重合性官能基を有する第1ポリベンゾオキサゾール前駆体、(B)下記化学式3で表される反復単位を有する第2ポリベンゾオキサゾール前駆体、(C)感光性ジアゾキノン化合物、(D)シラン化合物、及び(E)溶媒を含む、ポジティブ型感光性樹脂組成物を提供する。
【0014】
【化1】

【0015】
(前記化学式1において、Xは芳香族有機基又は脂環式有機基であり、Y及びYは同じであるか異なっており、それぞれ独立して、芳香族有機基又は脂環式有機基であり、Xは芳香族有機基、脂環式有機基又は下記化学式2で表される構造を有する作用基であり、m及びnは各々のモル比率であって、m+nは100モル%であり、mは60〜100モル%であり、nは0〜40モル%である。)
【0016】
【化2】

【0017】
(前記化学式2において、R及びRは同じであるか異なっており、それぞれ独立して、置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のアリール基、置換又は非置換のアルコキシ基、及びヒドロキシ基からなる群より選択され、R及びRは同じであるか異なっており、それぞれ独立して、置換又は非置換のアルキレン基、若しくは置換又は非置換のアリーレン基であり、kは1〜50の整数である。)
【0018】
【化3】

【0019】
(前記化学式3において、X及びXは同じであるか異なっており、それぞれ独立して、芳香族有機基又は脂環式有機基であり、Yは芳香族有機基又は熱重合が可能な有機基であり、Yは芳香族有機基又は脂環式有機基であり、m及びnは各々のモル比率であって、m+nは100モル%、mは50〜100モル%であり、nは0〜50モル%である。)
本発明の他の実施態様によれば、前記ポジティブ型感光性樹脂組成物で製造された感光性樹脂膜を提供する。
【0020】
本発明のまた他の実施態様によれば、前記ポジティブ型感光性樹脂組成物で製造された感光性樹脂膜を含む半導体用素子を提供する。
【0021】
その他の本発明の実施態様の具体的な説明は以下の詳細な説明に含まれている。
【発明の効果】
【0022】
本発明のポジティブ型感光性樹脂組成物は、溶解調節剤として第2ポリベンゾオキサゾール前駆体を使用し、第1ポリベンゾオキサゾール前駆体の固形分含量を抑えることができ、膜の機械的物性を向上させると同時に高解像度を有し、パターン形状が良好で、優れた残渣除去性及び低い膜収縮率を有する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書において、特に言及されない限り、「置換された」とは化合物の少なくとも一つの水素がハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アミノ基、及びアルケニル基からなる群より選択される置換基に置換されたものを意味する。
【0024】
また、本明細書において、特に言及されない限り、「アルキル基」とは炭素数1乃至30のアルキル基を意味し、より好ましくは、炭素数1乃至15のアルキル基を意味し、「アリール基」とは炭素数6乃至30のアリール基を意味し、より好ましくは炭素数6乃至18のアリール基を意味し、「アルケニル基」とは炭素数2乃至30のアルケニル基を意味し、より好ましくは炭素数2乃至15のアルケニル基を意味し、「アルコキシ基」とは炭素数1乃至30のアルコキシ基を意味し、より好ましくは炭素数1乃至15のアルコキシ基を意味する。また、本明細書において、特に言及されない限り、アルキレン基は炭素数1乃至30のアルキレン基を意味し、より好ましくは炭素数1乃至15のアルキレン基を意味し、アリーレン基は炭素数6乃至30のアリーレン基を意味し、より好ましくは炭素数6乃至18のアリーレン基を意味する。
【0025】
以下、本発明の実施態様を詳細に説明する。しかし、これは実施態様を示したものにすぎず、本発明を何ら限定するものではなく、本発明の見解及び範囲は、特許請求の範囲の各請求項によってのみ定義されるものとする。
【0026】
本発明の一実施態様による感光性樹脂組成物は、(A)前記化学式1で表される反復単位を有し、少なくとも一側の末端部に熱重合性官能基を有する第1ポリベンゾオキサゾール前駆体、(B)前記化学式3で表される反復単位を有する第2ポリベンゾオキサゾール前駆体、(C)感光性ジアゾキノン化合物、(D)シラン化合物、及び(E)溶媒を含む。
【0027】
以下、各構成成分について詳しく説明する。
【0028】
(A)第1ポリベンゾオキサゾール前駆体
前記第1ポリベンゾオキサゾール前駆体は、下記化学式1の反復単位を有し、少なくとも一側の末端部に熱重合性官能基を有する。
【0029】
【化4】

【0030】
化学式1において、Xは芳香族有機基又は脂環式有機基であり、Y及びYは同じであるか異なっており、それぞれ独立して、芳香族有機基又は脂環式有機基であり、Xは芳香族有機基、脂環式有機基又は下記化学式2で表される構造を有する作用基であり、m及びnは各々のモル比率であって、m+nは100モル%であり、mは60〜100モル%であり、nは0〜40モル%である。
【0031】
【化5】

【0032】
化学式2において、R及びRは同じであるか異なっており、それぞれ独立して、置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のアリール基、置換又は非置換のアルコキシ基、及びヒドロキシ基からなる群より選択され、R及びRは同じであるか異なっており、それぞれ独立して、置換又は非置換のアルキレン基、若しくは置換又は非置換のアリーレン基であり、kは1〜50の整数である。
【0033】
は芳香族有機基又は脂環式有機基を指す。芳香族有機基は4価であり、炭素数は好ましくは6〜18であり、より好ましくは6〜12である。具体的には、Xとしては、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、フルオレン、アントラセン、フェナントレン等の、芳香族炭化水素の芳香族環から水素原子を4つ除いた官能基、ここで、芳香族環の水素原子は置換または非置換のアルキル基で置換されていてもよい;フラン、チオフェン、ピロール等の五員複素環式化合物から水素原子を4つ除いた官能基;下記化5で表される官能基等が挙げられる。
【0034】
好適には、Xが芳香族有機基である場合、Xは下記化学式で表される官能基である。
【0035】
【化6】

【0036】
【化7】

【0037】
【化8】

【0038】
化4及び5において、AはO、CO、CR、SO、S、及び単結合からなる群より選択される。好ましくは、AはO、CR、SO及び単結合からなる群より選択される。R及びRは、同じであるか異なっており、それぞれ独立して、水素または置換もしくは非置換の炭素数が1〜18、より好ましくは1〜8、さらに好ましくは1〜4のアルキル基である。アルキル基に存在してもよい置換基としては、特に限定されるものではないが、ハロゲン原子、アルコキシル基、ヒドロキシアルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン化アルコキシル基、ニトロ基(−NO)、アミノ基(−NH)、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基などが例示できる。これらの置換基の種類は、複数個置換する場合には同種若しくは異種のいずれであってもよい。アルキル基に存在してもよい置換基は、好ましくはハロゲン原子であり、より好ましくは、フッ素原子、塩素原子であり、さらに好ましくはフッ素原子である。好ましくは、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基またはフルオロアルキル基であり、より好ましくは、それぞれ独立して、トリフルオロメチル基またはメチル基である。R〜Rは、同じであるか異なっており、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数が1〜18、より好ましくは1〜8、さらに好ましくは1〜4のアルキル基である。アルキル基に存在してもよい置換基としては、特に限定されるものではないが、ハロゲン原子、アルコキシル基、ヒドロキシアルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン化アルコキシル基、ニトロ基(−NO)、アミノ基(−NH)、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基などが例示できる。これらの置換基の種類は、複数個置換する場合には同種若しくは異種のいずれであってもよい。アルキル基に存在してもよい置換基は、好ましくはハロゲン原子であり、より好ましくは、フッ素原子、塩素原子であり、さらに好ましくはフッ素原子である。R〜Rは、好ましくはフルオロアルキル基であり、より好ましくはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基である。nは0〜2の整数であり、n及びnは同じであるか異なっており、好適には同じであり、それぞれ独立して0〜3の整数であり、好適には0または1である。RおよびRの芳香族環の結合位置は特に限定されるものではないが、Aの結合位置を1位とすると、各芳香族環の2、5、6位のいずれかであることが好ましい。化5の各ベンゼン環において、X1が結合する位置(酸素または窒素と結合する位置)は、特に限定されるものではないが、下記のようにAの結合位置を1位とすると、各芳香族環の3位および4位であることが好ましい。
【0039】
【化9】

【0040】
また、上記化4は、下記構造であることが好ましい。
【0041】
【化10】

【0042】
が、脂環式有機基である場合、脂環式有機基は4〜6価であることが好ましい。脂環式有機基としては、特に限定されるものではないが、炭素数3〜18、好ましくは炭素数3〜8の置換または非置換の炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどのようなシクロアルキル基などが挙げられる。炭化水素基に存在してもよい置換基としては、特に限定されるものではないが、ハロゲン原子、アルコキシル基、ヒドロキシアルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン化アルコキシル基、ニトロ基(−NO)、アミノ基(−NH)、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基などが例示できる。
好適には、Xが脂環式有機基である場合、Xは下記化学式で表される官能基である。
【0043】
【化11】

【0044】
上記式において、R及びR’は、それぞれ独立的に水素またはアルキル基であり、nは0乃至3の整数であり、Aはそれぞれ独立的にO、CO、CRR’(ここで、R及びR’は水素、アルキル、フルオロアルキルである)、SO、Sである。
【0045】
は、化4及び化5で表される官能基であることがより好ましい。Xとしては、上記官能基が1種であってもよいし、また異なる構造の官能基が2種以上存在してもよい。
【0046】
重合体中の下記構成単位;
【0047】
【化12】

【0048】
は代表的に、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−2−トリフルメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−5−ペンタフルオロエチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノ−4−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチルフェニル)−2’−(3−アミノ−4−ヒドロキシ−5−ペンタフルオロエチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノ−4−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチルフェニル)−2’−(3−ヒドロキシ−4−アミノ−5−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノ−4−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチルフェニル)−2’−(3−ヒドロキシ−4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノ−4−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチルフェニル)−2’−(3−ヒドロキシ−4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノ−4−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルフェニル)−2’−(3−ヒドロキシ−4−アミノ−5−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)−2’−(3−ヒドロキシ−4−アミノ−5−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパンからなる群より選択される化合物由来の官能基であることが好ましい。すなわち、上記化合物群は、化学式(1)の反復単位を有する第1ポリベンゾオキサゾール前駆体を製造する際に、単量体として用いられうる。該単量体は、1種単独であってもよいし、2種以上併用してもよい。
【0049】
は芳香族有機基、脂環式有機基、又は化学式2で表される構造を有する作用基である。
【0050】
が芳香族有機基である場合、芳香族有機基は2価であり、炭素数は好ましくは6〜18であり、より好ましくは6〜12である。具体的には、Xとしては、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、フルオレン、アントラセン、フェナントレン等の、芳香族炭化水素の芳香族環から水素原子を2つ除いた官能基、ここで、芳香族環の水素原子は置換または非置換のアルキル基で置換されていてもよい;フラン、チオフェン、ピロール等の五員複素環式化合物から水素原子を2つ除いた官能基;下記化100で表される官能基または化101で表される官能基等が挙げられる。好ましくは、Xは、ベンゼン、ナフタレンから水素原子を2つ除いた官能基、化100で表される官能基、または化101で表される官能基であることが好ましい。
【0051】
【化13】

【0052】
【化14】

【0053】
上記BおよびBは、O、CO、CH、SO、S、及び単結合からなる群より選択される。化100の各ベンゼン環において、Xが結合する位置(窒素原子と結合する位置)は、特に限定されるものではないが、Bの結合位置を1位とすると、各芳香族環の3位および4位であることが好ましい。また、化101において、Xが結合する位置(窒素原子と結合する位置)は、特に限定されるものではないが、酸素原子が結合する位置を1位とすると、3位または4位であることが好ましい。
【0054】
が芳香族基である場合、XはXと同じ化合物由来であってもよいし、異なるものであってもよい。
【0055】
は、芳香族ジアミンから誘導される官能基であることが好ましい。芳香族ジアミンの具体的な例としては、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、ベンジジン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノ)フェノキシ]ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン等が挙げられるが、これに限定されない。すなわち、前記化合物群は、化学式1で表される反復単位を含む第1ポリベンゾオキサゾール前駆体を製造する際に、単量体として用いられうる。単量体は、1種単独であってもよいし、2種以上併用してもよい。
【0056】
は、下記化学式2で表される作用基であってもよい。
【0057】
【化15】

【0058】
前記化学式2において、R及びRは同じであるか異なっており、それぞれ独立して置換又は非置換の、好ましくは炭素数1〜18、より好ましくは1〜8、さらに好ましくは1〜4のアルキル基、置換又は非置換の、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは6〜12のアリール基、置換又は非置換の、好ましくは炭素数1〜18、より好ましくは1〜8、さらに好ましくは1〜4のアルコキシ基、及びヒドロキシ基からなる群より選択される。R及びRは同じであるか異なっており、それぞれ独立して置換又は非置換の、好ましくは炭素数1〜18、より好ましくは1〜8、さらに好ましくは1〜4のアルキレン基、若しくは置換又は非置換の好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは6〜12のアリーレン基である。アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキレン基、またはアリーレン基に存在してもよい置換基としては、特に限定されるものではないが、ハロゲン原子、アルコキシル基、ヒドロキシアルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン化アルコキシル基、ニトロ基(−NO)、アミノ基(−NH)、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基などが例示できる。kは1〜50の整数である。
【0059】
が化学式2で表される構造を有する作用基である場合、好適には、Xは、シリコンジアミンから誘導される官能基であることが好ましい。具体的には、ビス(4−アミノフェニルオキシ)ジメチルシラン、ビス(4−アミノフェニルオキシ)ジエチルシラン、ビス(4−アミノフェニルオキシ)ジプロピルシラン、ビス(4−アミノフェニルオキシ)ジフェニルシラン、1、3−ビス(アミノプロピルオキシ)ジメチルジシラン、1、3−ビス(アミノプロピルオキシ)ジエチルシラン、1、3−ビス(アミノプロピルオキシ)ジプロピルシラン、1、3−ビス(アミノプロピルオキシ)ジフェニルシラン等が挙げられるが、これに限定されない。すなわち、前記化合物群は、化学式1で表される反復単位を含む第1ポリベンゾオキサゾール前駆体を製造する際に、単量体として用いられうる。
【0060】
が脂環式有機基である場合、好適には、Xは、脂環式ジアミンから誘導される官能基であることが好ましい。脂環式ジアミンの具体的な例としては、シクロヘキシルジアミン、メチレンビスシクロヘキシルアミン等が挙げられるが、これに限定されない。
【0061】
また、芳香族ジアミン単量体は、単独又は混合して使用することができ、芳香族ジアミン単量体、シリコンジアミン単量体、又は脂環式ジアミンを適宜混合して使用することも可能である。
【0062】
が、脂環式有機基である場合、脂環式有機基は2〜6価であることが好ましい。脂環式有機基としては、特に限定されるものではないが、炭素数3〜18、好ましくは炭素数3〜8の置換または非置換の炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどのようなシクロアルキル基などが挙げられる。炭化水素基に存在してもよい置換基としては、特に限定されるものではないが、ハロゲン原子、アルコキシル基、ヒドロキシアルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン化アルコキシル基、ニトロ基(−NO)、アミノ基(−NH)、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基などが例示できる。Xが脂環式有機基である場合、XはXと同じであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0063】
好適には、Xが脂環式有機基である場合、Xは下記化学式で表される官能基である。
【0064】
【化16】

【0065】
上記式において、R及びR’は、それぞれ独立的に水素またはアルキル基であり、nは0乃至3の整数であり、Aはそれぞれ独立的にO、CO,CRR’(ここで、R及びR’は水素、アルキル、フルオロアルキルである)、SO、Sである。
【0066】
及びYは、代表的にジカルボン酸誘導体由来の官能基であってもよい。
【0067】
及びYが芳香族有機基である場合、芳香族有機基としては、例えば、化6〜8で表される官能基が挙げられる。
【0068】
【化17】

【0069】
【化18】

【0070】
【化19】

【0071】
前記化6〜8において、R10〜R13は同じであるか異なっており、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数が1〜18、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜4のアルキル基からなる群より選択されるものである。アルキル基に存在してもよい置換基としては、特に限定されるものではないが、ハロゲン原子、アルコキシル基、ヒドロキシアルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン化アルコキシル基、ニトロ基(−NO)、アミノ基(−NH)、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基などが例示できる。これらの置換基の種類は、複数個置換する場合には同種若しくは異種のいずれであってもよい。前記n、n、及びnは0〜4の整数であり、nは0〜3の整数であり、AはO、CR1415、CO、CONH、S、単結合及びSOからなる群より選択されるものである。好ましくは、AはO、SO及びCOからなる群より選択される。R14及びR15は同じであるか異なっており、それぞれ独立して、水素、置換又は非置換の炭素数が1〜18、より好ましくは1〜8、さらに好ましくは1〜4のアルキル基である。アルキル基に存在してもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシル基、ヒドロキシアルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン化アルコキシル基、ニトロ基(−NO)、アミノ基(−NH)、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基などが例示できる。これらの置換基の種類は、複数個置換する場合には同種若しくは異種のいずれであってもよい。化6または化8の各ベンゼン環において、Y及びYが結合する位置(炭素原子と結合する位置)は、特に限定されるものではないが、Aの結合位置を1位とすると、各芳香族環の4位であることが好ましい。
【0072】
好ましくはY及びYは下記官能基である。
【0073】
【化20】

【0074】
上記Aは、Aと同義である。Y及びYは、上記官能基が1種であってもよいし、また異なる構造の官能基が2種以上存在してもよい。
【0075】
及びYが誘導されるジカルボン酸誘導体の具体的な例としては、カルボニルハロゲン化物誘導体又はY(COOH)と1−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール等を反応させた活性エステル型誘導体の活性化合物が挙げられる。その例としては、4,4’−オキシジベンゾイルクロライド、ジフェニルオキシジカルボン酸クロライド、ビス(フェニルカルボン酸クロライド)スルホン、ビス(フェニルカルボン酸クロライド)エーテル、ビス(フェニルカルボン酸クロライド)フェノン、フタル酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライド、ジカルボン酸ジクロライド、ジフェニルオキシジカルボキシレートベンゾトリアゾール、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される化合物等が挙げられる。すなわち、前記化合物群は、化学式1で表される反復単位を含む第1ポリベンゾオキサゾール前駆体を製造する際に、単量体として用いられうる。該単量体は、1種単独であってもよいし、2種以上併用してもよい。
【0076】
及びYが、脂環式有機基である場合、脂環式有機基は2〜6価であることが好ましい。脂環式有機基としては、特に限定されるものではないが、炭素数3〜18、好ましくは炭素数3〜8の置換または非置換の炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどのようなシクロアルキル基が挙げられる。炭化水素基に存在してもよい置換基としては、特に限定されるものではないが、ハロゲン原子、アルコキシル基、ヒドロキシアルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン化アルコキシル基、ニトロ基(−NO)、アミノ基(−NH)、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基などが例示できる。
【0077】
とYは同じ構造(Y=Y)であってもよく、また異なる構造であってもよい。
【0078】
前記化学式1において、mは60〜100モル%であり、好ましくは80〜100モル%であり、nは0〜40モル%であり、好ましくは0〜20モル%である。
【0079】
第1ポリベンゾオキサゾール前駆体は、分枝鎖末端のいずれか一側又は両側に、反応性末端封鎖単量体から誘導された熱重合性官能基を有する。
【0080】
前記反応性末端封鎖単量体は、炭素−炭素二重結合を有するモノアミン類又はモノ無水物類、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。
【0081】
前記モノアミン類は、トルイジン、ジメチルアニリン、エチルアニリン、アミノフェノール、アミノベンジルアルコール、アミノインダン(aminoindan)、アミノアセトンフェノン、又はこれらの組み合わせ等を使用できるが、これに限定されない。
【0082】
前記モノ無水物類は、下記化9の5−ノルボネン−2,3−ジカルボン酸無水物、下記化10の3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、下記化11のイソブテニルコハク酸無水物、無水マレイン酸、無水アコニット酸(aconitic anhydride)、3,4,5,6−テトラハイドロフタル酸無水物(3,4,5,6−tetrahydrophthalic anhydride)、シス−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物(cis−1、2、3、6−tetrahydrophthalic anhydride)、イタコン酸無水物(itaconic anhydride:IA)、シトラコン酸無水物(citraconic anhydride:CA)、2,3−ジメチルマレイン酸無水物(2,3−dimethylmaleic anhydride:DMMA)、又はこれらの組み合わせ等を使用できるが、これに限定されない。
【0083】
【化21】

【0084】
【化22】

【0085】
【化23】

【0086】
下記化12〜16は、第1ポリベンゾオキサゾール前駆体の末端に位置する熱重合性官能基の代表的な例である。このような前記熱重合性官能基は加熱する工程で架橋されることができる。
【0087】
【化24】

【0088】
(前記化12において、R16はH、CHCOOH、又はCHCH=CHCHである。)
【0089】
【化25】

【0090】
(前記化13において、R17及びR18は同じであるか異なっており、それぞれ独立してH又はCHである。)
【0091】
【化26】

【0092】
【化27】

【0093】
(前記化15において、R19はH又はCHであり、R20はCH又は酸素原子である。)
【0094】
【化28】

【0095】
(前記化16において、R21及びR22は同じであるか異なっており、それぞれ独立して、H、CH又はOCOCHである。)
前記第1ポリベンゾオキサゾール前駆体は、重量平均分子量(Mw)が3,000〜300,000であることが好ましく、5,000〜100,000であることがより好ましく、5,000〜50,000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が3,000未満である場合は、十分な物性が得られない場合がある。300,000を超過する場合は、有機溶媒に対する溶解性が低くなり、取り扱いが非常に難しくなる場合がある。本明細書において、重量平均分子量はガスクロマトグラフィーにより測定された値を採用する。
【0096】
第1ポリベンゾオキサゾール前駆体は、各単量体を用いて重合することによって得ることができる。
【0097】
(B)第2ポリベンゾオキサゾール前駆体
第2ポリベンゾオキサゾール前駆体は、下記化学式3で表される反復単位を有する。
【0098】
【化29】

【0099】
前記化学式3において、X及びXは同じであるか異なっており、それぞれ独立して芳香族有機基又は脂環式有機基であり、Yは、熱重合が可能な有機基であり、Yは芳香族有機基又は脂環式有機基であり、m及びnは各々のモル比率であって、m+nは100モル%であり、mは50〜100モル%であり、nは0〜50モル%であり、好ましくは前記mは60〜100モル%であり、nは0〜40モル%である。
【0100】
及びXは芳香族有機基又は脂環式有機基を指す。芳香族有機基は4価であり、炭素数は好ましくは6〜18であり、より好ましくは6〜12である。具体的には、Xとしては、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、フルオレン、アントラセン、フェナントレン等の、芳香族炭化水素の芳香族環から水素原子を4つ除いた官能基、ここで、芳香族環の水素原子は置換または非置換のアルキル基で置換されていてもよい;フラン、チオフェン、ピロール等の五員複素環式化合物から水素原子を4つ除いた官能基;下記化17で表される官能基または下記化18で表される官能基等が挙げられる。
【0101】
好適には、X及びXが芳香族有機基である場合、X及びXは下記化学式で表される官能基である。
【0102】
【化30】

【0103】
【化31】

【0104】
【化32】

【0105】
化17及び18において、AはO、CO、CR2627、SO、SO、及び単結合からなる群より選択される。好ましくは、AはO、CR2627、SO及び単結合からなる群より選択される。この時、R26及びR27は、同じであるか異なっており、それぞれ独立して、水素または置換もしくは非置換の炭素数が1〜18、より好ましくは1〜8、さらに好ましくは1〜4のアルキル基である。アルキル基に存在してもよい置換基としては、特に限定されるものではないが、ハロゲン原子、アルコキシル基、ヒドロキシアルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン化アルコキシル基、ニトロ基(−NO)、アミノ基(−NH)、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基などが例示できる。これらの置換基の種類は、複数個置換する場合には同種若しくは異種のいずれであってもよい。好ましくはハロゲン原子であり、より好ましくは、フッ素原子、塩素原子であり、さらに好ましくはフッ素原子である。好ましくは、R26及びR27はそれぞれ独立して、アルキル基またはフルオロアルキル基であり、より好ましくはフルオロアルキル基であり、さらに好ましくはトリフルオロメチル基である。R23〜R25は、同じであるか異なっており、それぞれ独立して、置換又は非置換のアルキル基からなる群より選択されるものであり、前記n10は0〜2の整数であり、前記n11及びn12は同じであるか独立して0〜3の整数であり、好ましくは0または1である。アルキル基に存在してもよい置換基としては、特に限定されるものではないが、ハロゲン原子、アルコキシル基、ヒドロキシアルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン化アルコキシル基、ニトロ基(−NO)、アミノ基(−NH)、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基などが例示できる。これらの置換基の種類は、複数個置換する場合には同種若しくは異種のいずれであってもよい。R24およびR25の芳香族環の結合位置は特に限定されるものではないが、Aの結合位置を1位とすると、各芳香族環の2、5、6位のいずれかであることが好ましい。化18の各ベンゼン環において、Xが結合する位置(酸素または窒素と結合する位置)は、特に限定されるものではないが、Aの結合位置を1位とすると、3位および4位であることが好ましい。
【0106】
また、上記化17は、下記構造であることが好ましい。
【0107】
【化33】

【0108】
及びXが、脂環式有機基である場合、脂環式有機基は4〜6価であることが好ましい。脂環式有機基としては、特に限定されるものではないが、炭素数3〜18、好ましくは炭素数3〜8の置換または非置換の炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどのようなシクロアルキル基が挙げられる。炭化水素基に存在してもよい置換基としては、特に限定されるものではないが、ハロゲン原子、アルコキシル基、ヒドロキシアルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン化アルコキシル基、ニトロ基(−NO)、アミノ基(−NH)、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基などが例示できる。
【0109】
及びXは化17または化18で表される官能基であることがより好ましい。Xは、上記官能基が1種であってもよいし、また異なる構造の官能基が2種以上存在してもよい。
【0110】
化学式3中の下記構成単位;
【0111】
【化34】

【0112】
は代表的に、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−2−トリフルメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−5−ペンタフルオロエチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノ−4−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチルフェニル)−2’−(3−アミノ−4−ヒドロキシ−5−ペンタフルオロエチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノ−4−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチルフェニル)−2’−(3−ヒドロキシ−4−アミノ−5−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノ−4−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチルフェニル)−2’−(3−ヒドロキシ−4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノ−4−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチルフェニル)−2’−(3−ヒドロキシ−4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノ−4−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチルフェニル)−2’−(3−ヒドロキシ−4−アミノ−5−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)−2’−(3−ヒドロキシ−4−アミノ−5−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパンからなる群より選択される化合物が由来の官能基であることが好ましい。すなわち、前記化合物群は、化学式3で表される反復単位を含む第2ポリベンゾオキサゾール前駆体を製造する際に、単量体として用いられうる。単量体は、1種単独であってもよいし、2種以上併用してもよい。
【0113】
が、熱重合が可能な有機基である。熱重合が可能な有機基としては、炭素−炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。具体的にはジカルボン酸誘導体から誘導される官能基であることが好ましい。
【0114】
前記ジカルボン酸誘導体としては、カルボニルハロゲン化合物誘導体又はY(COOH)と1−ヒドロキシ−1、2、3−ベンゾトリアゾール等を反応させた活性エステル型誘導体の活性化合物があり、熱重合が可能なように構造内に炭素−炭素二重結合を有することが好ましい。
【0115】
また、テトラカルボン酸二無水物の加アルコール分解を介して得られたテトラカルボン酸ジエステルジカルボン酸の誘導体も使用することができる。この場合、テトラカルボン酸二無水物を熱重合官能基を有するアルコール化合物で加アルコール分解して得られたテトラカルボン酸ジエステルジカルボン酸を使用することが好ましい。
【0116】
具体的には、Yは、下記化19で表される。
【0117】
【化35】

【0118】
上記官能基は、トランス−3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロフタロイルクロライド等から誘導される。
【0119】
また、Yは、下記化20〜21で表される官能基であってもよい。
【0120】
【化36】

【0121】
【化37】

【0122】
前記化20及び21において、R28〜R35は同じであるか異なっており、それぞれ独立して、置換又は非置換の好ましくは炭素数1〜18、より好ましくは炭素数1〜8、さらに好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、及び置換又は非置換の好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜12のアリール基からなる群より選択される。ここで、アルキル基、アリール基に存在してもよい置換基としては、特に限定されるものではないが、ハロゲン原子、アルコキシル基、ヒドロキシアルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン化アルコキシル基、ニトロ基(−NO)、アミノ基(−NH)、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基などが例示できる。これらの置換基の種類は、複数個置換する場合には同種若しくは異種のいずれであってもよい。R28〜R33は好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、R34およびR35は好ましくはフェニル基である。n13、n14、n17、及びn18は同じであるか独立して0〜4の整数であり、より好ましくは0または1である。R28、R29、R32及びR33の結合位置は、特に限定されるものではないが、AまたはAの結合位置を1位とすると、各芳香族環において3位であることが好ましい。n15、n16、n19、及びn20は同じであるか独立して2〜20の整数、より好ましくは2〜8の整数であり、A及びAは同じであるか独立してO、CO、SOである。
【0123】
また、より具体的には、前記Yは下記化22〜27で示される官能基であることができる。
【0124】
【化38】

【0125】
【化39】

【0126】
【化40】

【0127】
【化41】

【0128】
【化42】

【0129】
【化43】

【0130】
前記Yはジカルボン酸誘導体由来の官能基であることが好ましい。前記ジカルボン酸誘導体の具体的な例としては、カルボニルハロゲン化物誘導体又はY(COOH)と1−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール等を反応させた活性エステル型誘導体の活性化合物等が挙げられる。その例としては、4,4’−オキシジベンゾイルクロライド、ジフェニルオキシジカルボン酸クロライド、ビス(フェニルカルボン酸クロライド)スルホン、ビス(フェニルカルボン酸クロライド)エーテル、ビス(フェニルカルボン酸クロライド)フェノン、フタル酸フタル酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド、フタル酸イソフタル酸ジクロライド、ジカルボン酸ジクロライド、ジフェニルオキシジカルボキシレートベンゾトリアゾール、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるものがある。すなわち、前記化合物群は、化学式3で表される反復単位を含む第2ポリベンゾオキサゾール前駆体を製造する際に、単量体として用いられうる。該単量体は、1種単独であってもよいし、2種以上併用してもよい。
【0131】
が芳香族有機基である場合、芳香族有機基としては、例えば、下記化28〜30で表される官能基が挙げられる。
【0132】
【化44】

【0133】
【化45】

【0134】
【化46】

【0135】
前記化28〜30において、前記R36〜R39は同じであるか異なっており、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数が1〜18、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜4のアルキル基からなる群より選択される。アルキル基に存在してもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシル基、ヒドロキシアルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン化アルコキシル基、ニトロ基(−NO)、アミノ基(−NH)、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基などが例示できる。これらの置換基の種類は、複数個置換する場合には同種若しくは異種のいずれであってもよい。n21、n23、及びn24は0〜4の整数であり、n22は0〜3の整数であり、AはO、CR4041、CO、CONH、S、及びSOからなる群より選択される。R40及びR41は同じであるか異なっており、それぞれ独立して、置換又は非置換の炭素数が1〜18、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜4のアルキル基であり、好ましくはアルキル基またはフルオロアルキル基である。アルキル基に存在してもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシル基、ヒドロキシアルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン化アルコキシル基、ニトロ基(−NO)、アミノ基(−NH)、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基などが例示できる。これらの置換基の種類は、複数個置換する場合には同種若しくは異種のいずれであってもよい。化30の各ベンゼン環において、Yが結合する位置(炭素原子と結合する位置)は、特に限定されるものではないが、Aの結合位置を1位とすると、各芳香族環の4位であることが好ましい。
【0136】
は、好ましくは下記官能基である。
【0137】
【化47】

【0138】
上記Aは、Aと同義である。Yは、上記官能基が1種であってもよいし、また異なる構造の官能基が2種以上存在してもよい。
【0139】
が、脂環式有機基である場合、脂環式有機基は2〜6価であることが好ましい。脂環式有機基としては、特に限定されるものではないが、炭素数3〜18、好ましくは炭素数3〜8の置換または非置換の炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどのようなシクロアルキル基が挙げられる。炭化水素基に存在してもよい置換基としては、特に限定されるものではないが、ハロゲン原子、アルコキシル基、ヒドロキシアルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン化アルコキシル基、ニトロ基(−NO)、アミノ基(−NH)、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基などが例示できる。
【0140】
前記第2ポリベンゾオキサゾール前駆体は、分枝鎖末端のいずれか一側又は両側に熱重合性官能基を有することが好ましい。この場合、前記熱重合性官能基は、第1ポリベンゾオキサゾール前駆体の製造時に使用される末端封鎖単量体と同一の単量体から誘導される。
【0141】
第2ポリベンゾオキサゾール前駆体は、各単量体を用いて重合することによって得ることができる。
【0142】
前記第2ポリベンゾオキサゾール前駆体化合物は、感光性樹脂組成物にパターンを形成する際、アルカリ水溶液による現像時露光部の溶解速度及び感度を向上させることができ、さらに、現像時に現像残渣(scum)を生じることなく高解像度でパターニングできるようにする溶解調節剤の役割を果たす。また、この化合物は、化学式3のようなポリアミック酸エステル化合物であって、硬化時に分解、あるいは蒸発することなくポリベンゾオキサゾール化合物に硬化されるので、従来使用していた感光性樹脂組成物に比べて、高温硬化時に膜収縮率が著しく低い。また、この化合物の主骨格には熱重合性官能基が高密度で配置されており、第1ポリベンゾオキサゾール前駆体末端の熱重合性末端封鎖基と効率良く反応して架橋度を急激に増加させ、その結果、生成された熱硬化膜の機械的物性を高くする役割を果たす。
【0143】
前記第2ポリベンゾオキサゾール前駆体化合物は3,000〜30,000の重量平均分子量を有することが好ましく、5,000〜15,000の重量平均分子量を有することがより好ましい。分子量が3,000未満の場合は、現像時の膜厚損失が非常に大きく、十分な架橋を形成できず、膜の機械的物性が劣化する場合がある。また、30,000を超える場合は、現像時の溶解調節効果がなく、現像後残渣が残る場合がある。
【0144】
前記第2ポリベンゾオキサゾール前駆体化合物は、第1ポリベンゾオキサゾール前駆体100重量部に対して1〜30重量部が好ましく、5〜20重量部がより好ましい。1重量部未満では、溶解低下効果が弱くなり、非露光部の残膜率が減少して解像度が低下し、架橋促進効果を期待できず、優れた機械的物性の硬化膜を得ることができない場合がある。また、30重量部を超える場合は、硬化後膜の架橋度が高すぎて、膜が損傷しやすくなる場合がある。
【0145】
(C)感光性ジアゾキノン化合物
前記感光性ジアゾキノン化合物は、1,2−ベンゾキノンジアジド又は1,2−ナフトキノンジアジド構造を有する化合物を好適に使用することができる。これは米国特許第2,772,975号、第2,797,213号、第3,669,658号に記載の公知物質である。
【0146】
前記感光性ジアゾキノン化合物の代表的な例としては、下記化31、33〜35で表される化合物がある。
【0147】
【化48】

【0148】
化31において、R42〜R44は同じであるか異なっており、それぞれ独立して、水素、或いは置換又は非置換の炭素数1〜18、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜4のアルキル基であり、好ましくはCHである。D〜Dはそれぞれ独立してOQであってもよく、Qは水素、又は下記化32−1又は32−2であってもよく、この時、Qが全て水素であることはできず、n25〜n27は同じであるか異なっており、それぞれ独立して1〜3の整数であり、好ましくは1である。上記アルキル基に存在してもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシル基、ヒドロキシアルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン化アルコキシル基、ニトロ基(−NO)、アミノ基(−NH)、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基などが例示できる。これらの置換基の種類は、複数個置換する場合には同種若しくは異種のいずれであってもよい。
【0149】
【化49】

【0150】
【化50】

【0151】
【化51】

【0152】
化33において、R45は水素、或いは置換又は非置換の炭素数1〜30、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜8のアルキル基であり、D〜DはOQであってもよく、Qは化31に定義されているものと同じであり、前記n28〜n30は同じであるか異なっており、それぞれ独立して1〜3の整数である。上記アルキル基に存在してもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシル基、ヒドロキシアルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン化アルコキシル基、ニトロ基(−NO)、アミノ基(−NH)、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基などが例示できる。これらの置換基の種類は、複数個置換する場合には同種若しくは異種のいずれであってもよい。
【0153】
【化52】

【0154】
化34において、AはCO又はCR4647であり、R46及びR47は同じであるか異なっており、それぞれ独立して置換又は非置換の炭素数1〜30、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜8のアルキル基であり、D〜D10は同じであるか異なっており、それぞれ独立して、水素、置換又は非置換の炭素数1〜18、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜4のアルキル基、OQ、及びNHQからなる群より選択され、前記Qは化31に定義されているものと同じであり、前記n31、n32、n33、及びn34は同じであるか異なっており、それぞれ独立して1〜4の整数であり、n31+n32及びn33+n34はそれぞれ独立して5以下の整数であり、但し、前記D〜Dのうちの少なくとも一つはOQであり、一つの芳香族環にはOQが1〜3個含まれており、他の一つの芳香族環にはOQが1〜4個含まれている。上記アルキル基に存在してもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシル基、ヒドロキシアルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン化アルコキシル基、ニトロ基(−NO)、アミノ基(−NH)、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基などが例示できる。これらの置換基の種類は、複数個置換する場合には同種若しくは異種のいずれであってもよい。
【0155】
【化53】

【0156】
化35において、R48〜R55は同じであるか異なっており、それぞれ独立して水素、或いは置換又は非置換の炭素数1〜30、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜8のアルキル基であり、n35及びn36は同じであるか異なっており、それぞれ独立して1〜5の整数であり、より好ましくは2〜4の整数である。Qは化31に定義されたものと同じである。上記アルキル基に存在してもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシル基、ヒドロキシアルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン化アルコキシル基、ニトロ基(−NO)、アミノ基(−NH)、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基などが例示できる。これらの置換基の種類は、複数個置換する場合には同種若しくは異種のいずれであってもよい。
【0157】
感光性ジアゾキノン化合物は、前記第1ポリベンゾオキサゾール前駆体100重量部に対して5〜100重量部が好ましい。感光性ジアゾキノン化合物の含量が前記範囲内である場合、露光時の残渣を生じることなくパターンが良好に形成され、現像時膜厚の損失がなく、良好なパターンを得ることができる。
【0158】
(D)シラン化合物
シラン化合物は、感光性樹脂組成物と基板との密着力を向上させることができる。
【0159】
前記シラン化合物としては下記化36で表されるものを使用することができる。
【0160】
【化54】

【0161】
化36において、R55はビニル基、置換又は非置換の炭素数1〜18、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜4のアルキル基、及び置換又は非置換のアリール基からなる群より選択され、好ましくは3−(メタ)クリルオキシプロピル、p−スチリル、又は3−(フェニルアミノ)プロピルである。
【0162】
56〜R58は同じであるか異なっており、それぞれ独立して、置換又は非置換のアルコキシ基、置換又は非置換のアルキル基、及びハロゲン原子からなる群より選択され、この時、R56〜R58のうちの少なくとも一つはアルコキシ基又はハロゲン原子であり、好ましくは前記アルコキシ基は、炭素数1〜8のアルコキシ基であり、前記アルキル基は炭素数1〜20のアルキル基である。
【0163】
前記シラン化合物の代表的な例としては、下記化37及び38で表される化合物;トリメトキシ[3−(フェニルアミノ)プロピル]シラン等のアリール基を有するシラン化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン等の炭素−炭素不飽和結合を含有するシラン化合物がある。好ましくは、トリメトキシ[3−(フェニルアミノ)プロピル]シラン、ビニルトリメトキシシラン又はビニルトリエトキシシランであり、最も好ましくは、ビニルトリメトキシシラン又はビニルトリエトキシシランである。
【0164】
【化55】

【0165】
化37において、R59はNH又はCHCONHであり、R60〜R62は同じであるか異なっており、それぞれ独立して、置換又は非置換のアルコキシ基であり、好ましくは前記アルコキシ基はOCH又はOCHCHであり、n37は1〜5の整数である。
【0166】
【化56】

【0167】
化38において、R63〜R66は同じであるか異なっており、それぞれ独立して、置換又は非置換のアルキル基、及び置換又は非置換のアルコキシ基からなる群より選択され、好ましくはCH又はOCHであり、前記R67及びR68は同じであるか異なっており、それぞれ独立して置換又は非置換のアミノ基であり、好ましくはNH又はCHCONHであり、前記n38及びn39は同じであるか異なっており、それぞれ独立して1〜5の整数である。
【0168】
前記シラン化合物は、前記第1ポリベンゾオキサゾール前駆体100重量部に対して0.1〜30重量部を用いることができる。前記シラン化合物の含量が前記範囲内である場合、上下部膜層との接着力に優れ、現像後残膜が残ることなく、光特性(透過率)及び引張強度、延伸び率、ヤング率等の膜の機械的物性を向上させることができるので好ましい。
【0169】
(E)溶媒
本発明で用いる溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N、N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル−1,3−ブチレングリコールアセテート、1,3−ブチレングリコール−3−モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート等が挙げられる。このような溶媒は単独又は2種以上併用して使用することができる。
【0170】
前記溶媒は、第1ポリベンゾオキサゾール前駆体100重量部に対して100〜400重量部が好ましい。上記範囲では十分な厚さの膜をコーティングすることができ、溶解度及びコーティング性が優れていて好ましい。
【0171】
(F)その他の添加剤
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)〜(E)の成分以外の(F)その他の添加剤をさらに含むことができる。
【0172】
上記その他の添加剤としては、酸触媒または熱により酸を発生する酸発生化合物(熱潜在酸発生剤)がある。酸触媒としては、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸のようなアリルスルホン酸;トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロブタンスルホン酸のようなパーフルオロアルキルスルホン酸;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸のようなアルキルスルホン酸;及びこれらの混合物を好適に使用することができる。酸発生化合物としては、前記酸触媒となりうる化合物のオニウム塩として塩の形やイミドスルホナートのような共有結合の形が挙げられる。
【0173】
前記酸触媒または熱潜在酸発生剤は、ポリベンゾオキサゾール前駆体の環化反応のための触媒であって、硬化温度を低くしても環化反応を円滑に行うことができる。
【0174】
また、膜厚ムラを防止し、現像性を向上させるため、適量の界面活性剤又はレベリング剤を添加剤としてさらに用いることも可能である。このような界面活性剤あるいはレベリング剤としては、例えば、ポリオキシエチレンウラリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル等があり、市販品としては、メガファックスF171、F173、R−08(大日本インキ化学工業株式会社製商品名)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム株式会社商品名)、オルガノシロキサンポリマーKP341、KBM303、KBM403、KBM803(信越化学工業株式会社製商品名)等が挙げられる。
【0175】
本発明のポジティブ型感光性樹脂組成物を利用してパターンを形成する工程は、ポジティブ型感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布する工程;前記塗布された組成物を乾燥させて、感光性ポリベンゾオキサゾール前駆体膜を形成する工程;前記ポリベンゾオキサゾール前駆体膜を露光する工程;前記露光されたポリベンゾオキサゾール前駆体膜をアルカリ水溶液で現像して感光性樹脂膜を製造する工程;及び、前記感光性樹脂膜を加熱処理する工程を含む。感光性樹脂組成物を塗布し、露光及び現像してパターンを形成する工程上の条件等は、当該分野で公知であるので詳細な説明は省略する。
【0176】
本発明の他の実施態様によれば、前記感光性樹脂組成物を利用して製造された感光性樹脂膜が提供される。
【0177】
本発明の他の実施態様によれば、ポジティブ型感光性樹脂組成物を利用して製造された感光性樹脂膜を含む半導体素子が提供される。本発明の組成物は、半導体素子において絶縁膜、パッシベーション層又はバッファーコーティング層に有用に用いることができる。即ち、本発明の組成物は、半導体装置の表面保護膜及び層間絶縁膜に有用に用いることができる。
【実施例】
【0178】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、これは例示的なものに過ぎず、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
【0179】
<合成例1>ポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−A)の合成
撹拌機、温度調節装置、窒素ガス注入装置及び冷却器を備えた4つ口フラスコに窒素を流しながら、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフロオロプロパン17.4gと、1、3−ビス(アミノプロピルオキシ)ジメチルシラン0.86gをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)280gに入れて溶解する。これにより得られた溶液中の固形分含量は9重量%であった。
【0180】
固体が完全溶解するとピリジン9.9gを前記溶液に投入し、0〜5℃を維持しながら4、4’−オキシジベンゾイルクロライド13.3gをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)142gに入れて溶解した溶液を30分間徐々に滴下した。積荷後に0〜5℃で1時間反応させ、温度を常温に上昇させて1時間攪拌した後、反応を終了した。
【0181】
これに、5−ノルボネン−2,3−ジカルボン酸無水物1.6gを投入し、70℃で24時間攪拌して反応を終了した。反応混合物を水/メタノール=10/1(体積比)の溶液に投入して沈殿物を生成し、沈殿物をろ過して水で十分に洗浄した後、温度80℃の真空雰囲気で24時間以上乾燥して、重量平均分子量10,700の下記化1a(n及びmはモル比であってm=0.95であり、n=0.05である)で表されるポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−A)を製造した。
【0182】
【化57】

【0183】
<合成例2>ポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−B)の合成
撹拌機、温度調節装置、窒素ガス注入装置、及び冷却器を備えた4つ口フラスコに窒素を流しながら、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン10.1g入れ、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)111.1gを入れて溶解した。これによって得られた溶液中の固形分含量は9重量%であった。
【0184】
固体が完全溶解するとピリジン4.2gを前記溶液に投入し、0〜5℃を維持しながら、トランス−3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロフタロイルクロライド5.78gをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)100gを入れて溶解した溶液を30分間徐々に滴下した。滴下後、0〜5℃で1時間反応させ、温度を常温に上昇させて1時間反応させた。
【0185】
これに5−ノルボネン−2,3−ジカルボン酸無水物1.2gを投入し、70℃で24時間攪拌して反応を終了した。反応混合物を水/メタノール=10/1(体積比)の溶液に投入して沈殿物を生成し、この沈殿物をろ過して水で十分に洗浄した後、温度80℃の真空下で24時間以上乾燥させて、重量平均分子量7,500の下記化1bで表されるポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−B)を製造した。
【0186】
【化58】

【0187】
<合成例3>ポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−B)の合成
撹拌機、温度調節装置、窒素ガス注入装置及び冷却器を備えた4つ口フラスコに窒素を流しながら、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン10.1gをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)111.1gに入れて溶解した。これによって得られた溶液中の固形分含量は9重量%であった。
【0188】
固体が完全溶解するとピリジン4.2gを前記溶液に投入し、0〜5℃を維持しながら、トランス−3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロフタロイルクロライド2.89g、4,4’−オキシジベンゾイルクロライド3.9gをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)100gに入れて溶解した溶液を30分間徐々に滴下した。滴下後、0〜5℃で1時間反応させ、温度を常温に上昇させて1時間反応させた。
【0189】
これに5−ノルボネン−2,3−ジカルボン酸無水物1.2gを投入し、70℃で24時間攪拌して反応を終了した。反応混合物を水/メタノール=10/19(体積比)の溶液に投入して沈殿物を生成し、沈殿物をろ過して水で十分に洗浄した後、温度80℃の真空雰囲気で24時間以上乾燥して、重量平均分子量6,800の下記化1c(n及びmはモル比であって、m=0.5であり、n=0.5である)で表されるポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−B)を製造した。
【0190】
【化59】

【0191】
<合成例4>ポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−B)の合成
撹拌機、温度調節装置、窒素ガス注入装置及び冷却器を備えた4つ口フラスコに窒素を流しながら、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン10.1gをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)111.1gに入れて溶解した。これによって得られた溶液中の固形分含量は9重量%であった。
【0192】
固体が完全溶解するとピリジン4.2gを投入し、0〜5℃を維持しながらトランス−3,6−エンドメチレン−1、2、3、6−テトラヒドロフタロイルクロライド4.34g、4,4’−オキシジベンゾイルクロライド1.95gをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)100gに入れて溶解した溶液を30分間徐々に滴下した。滴下後、温度0〜5℃で1時間反応させ、温度を常温に上昇させて1時間反応させた。
【0193】
これに5−ノルボネン−2、3−ジカルボン酸無水物1.2gを投入し、70℃で24時間攪拌して反応を終了した。反応混合物を水/メタノール=10/1(体積比)の溶液に投入して沈殿物を生成し、沈殿物をろ過して水で十分に洗浄した後、温度80℃の真空雰囲気で24時間以上乾燥して、重量平均分子量7,000の下記化1d(n及びmはモル比であって、m=0.8であり、n=0.2である)で表されるポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−B)を製造した。
【0194】
【化60】

【0195】
<合成例5>ポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−B)の合成
撹拌機、温度調節装置、窒素ガス注入装置及び冷却器を備えた4つ口フラスコに窒素を流しながら、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン10.1g入れ、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)111.1gに入れて溶解した。これによって得られた溶液中の固形分含量は9重量%であった。
【0196】
固体が完全溶解するとピリジン4.2gを投入し、0〜5℃を維持しながらトランス−3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロフタロイルクロライド6.18gをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)100gに入れて溶解した溶液を30分間徐々に滴下した。滴下後、0〜5℃で1時間反応させ、温度を常温に上昇させて1時間反応させた。
【0197】
これに5−ノルボネン−2,3−ジカルボン酸無水物1.2gを投入し、70℃で24時間攪拌して反応を終了した。反応混合物を水/メタノール=10/1(容積比)の溶液に投入して沈殿物を生成し、沈殿物をろ過して水で十分に洗浄した後、80℃の真空下で24時間以上乾燥して、重量平均分子量9,100の下記化1eで表されるポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−B)を製造した。
【0198】
【化61】

【0199】
<合成例6>ポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−B)の合成
撹拌機、温度調節装置、窒素ガス注入装置及び冷却器を備えた4つ口フラスコに窒素を流しながら、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン10.1gを入れ、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)111.1gを入れて溶解した。これによって得られた溶液中の固形分含量は9重量%であった。
【0200】
固体が完全溶解するとピリジン4.2gを投入し、0〜5℃を維持しながらトランス−3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロフタロイルクロライド3.09g、4,4’−オキシベンゾイルクロライド4.16g、及びN−メチル−2−ピロリドン(NMP)100gを入れて溶解した溶液を30分間徐々に滴下した。滴下後、0〜5℃で1時間反応させ、温度を常温に上昇させて1時間反応させた。
【0201】
これに5−ノルボネン−2,3−ジカルボン酸無水物を1.2gを投入し、70℃で24時間攪拌して反応を終了した。反応混合物を水/メタノール=10/1(体積比)の溶液に投入して沈殿物を生成し、沈殿物をろ過して水で十分洗浄した後、80℃の真空雰囲気で24時間以上乾燥して、重量平均分子量9,900の下記化1f(n及びmはモル比であって、m=0.5であり、n=0.5である)で表されるポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−B)を製造した。
【0202】
【化62】

【0203】
(実施例1)
合成例1で得られたポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−A)10gをγ−ブチロラクトン(GBL)35.0gに添加して溶解した後、下記化31aの構造を有する感光性ジアゾキノン1g、下記化36aのトリメトキシ[3−(フェニルアミノ)プロピル]シラン0.02g、合成例2で得られた第2ポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−B)0.5gを入れて溶解した後、0.45μmのフルオロ樹脂製フィルタでろ過して、ポジティブ型感光性樹脂組成物を得た。
【0204】
【化63】

【0205】
(前記化31aにおいて、Q、Q及びQ3のうちの二つは下記化32−1で置換されており、もう一つは水素である。)
【0206】
【化64】

【0207】
【化65】

【0208】
(実施例2)
ポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−B)0.5gをポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−B)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法でポジティブ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0209】
(実施例3)
ポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−B)0.5gをポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−B)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法でポジティブ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0210】
(実施例4)
ポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−B)0.5gをポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−B)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法でポジティブ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0211】
(実施例5)
ポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−B)0.5gをポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−B)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法でポジティブ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0212】
(実施例6)
合成例1で得られたポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−A)10gをγ−ブチロラクトン(GBL)35.0gに添加して溶解した後、前記化31aの構造を有する感光性ジアゾキノン1g、前記化36aのトリメトキシ[3−(フェニルアミノ)プロピル]シラン0.02g、合成例2で得られたポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−B)1.1gを入れて溶解した後、0.45μmのフルオロ樹脂製フィルタでろ過してポジティブ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0213】
(実施例7)
合成例2で得られたポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−B)1.1gを合成例3で得られたポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−B)に変更したこと以外は実施例6と同様の方法でポジティブ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0214】
(実施例8)
合成例2で得られたポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−B)1.1gを合成例4で得られたポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−B)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法でポジティブ型感光性樹脂組成物を製造した。
【0215】
(比較例1)
合成例2で得られたポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−B)0.5gを用いないこと以外は実施例1と同様の方法でポジティブ型感光性樹脂組成物を得た。
【0216】
(比較例2)
合成例2で得られたポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−B)0.5gを下記化39の4−n−ヘキシルレゾルシノール化合物に変更したこと以外は前記実施例1と同様の方法でポジティブ型感光性樹脂組成物を得た。
【0217】
【化66】

【0218】
(比較例3)
合成例2で得られたポリベンゾオキサゾール前駆体(PBO−B)0.5gを下記化40のビスフェノール−A化合物に変更したこと以外は前記実施例1と同様の方法でポジティブ型感光性樹脂組成物を得た。
【0219】
【化67】

【0220】
物性測定
前記実施例1〜8及び比較例1〜3により製造された感光性ポリベンゾオキサゾール前駆体組成物を8インチウエハーにミカサ製(1H−DX2)スピンコーターを利用してコーティングして塗布した後、130℃のホットプレート上で2分間加熱して、感光性ポリイミド前駆体フィルムを製造した。
【0221】
前記ポリイミド前駆体フィルムに様々な大きさのパターンが刻まれたマスクを介して、日本Nikon社製I−line stepper(NSR i10C)で露光した後、常温で2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に40秒、2パドル(puddle)を介して露光部を溶解除去した後、蒸留水で30秒間洗浄した。次いで、得られたパターンを電気炉を利用して酸素濃度1000ppm以下で150℃/30分、引き続き、320℃/30分硬化を行ってパターンが形成されたフィルムを製造した。
【0222】
完成されたフィルムパターンの解像度は、光学顕微鏡を利用して確認することができ、予備焼成、現像、硬化後の膜厚の変化は、KMAC社製(ST4000−DLX)装備を利用して測定し、その結果を下記表1に示す。
【0223】
また、現像後の膜厚に対する減少率は、現像性及び最終膜厚に影響を与えており、現像時にも膜厚減少が小さくなる必要があるが、これを測定するために予備焼成を行ったフィルムを2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液に各々の時間で浸漬し、水で洗浄する現像方法を利用して、膜厚の変化を測定し、その結果を下記表1に示す。
【0224】
さらに、感度及び解像度を測定して、その結果を下記表1に示す。
【0225】
感度は露光及び現像後10umL/Sパターンが1対1の線幅で形成される露光時間を求め、これを最適露光時間とした。解像度は、前記最適露光時間における最小パターンサイズを解像度として測定した。
【0226】
また、パターンを形成した後、窒素雰囲気で120℃で30分加熱し、320℃まで1時間昇温して320℃で1時間加熱して硬化膜を作製した。硬化前の膜厚と比べて硬化後の膜厚が大きく減少する。この場合、硬化後の膜厚は硬化後の膜がバッファーコーティング層、層間絶縁膜、表面保護膜として作用するため非常に重要であり、このため、硬化前後の膜厚の変化が小さいことが有利である。この程度をベーク(bake)前の膜厚と、ベーク後の膜厚との差の百分率である収縮率で表し、膜厚の測定はKMAC社製(ST4000−DLX)装備を利用して測定し、その結果を下記表1に示す。
【0227】
【表1】

【0228】
前記表1を参照すれば、溶解調節剤として第2ポリベンゾオキサゾール前駆体化合物を用いた実施例1〜8は、比較例1〜3と比較して、硬化後の膜厚減少が大きく改善されており、感度、解像度、収縮率、現像時の膜厚減少等の光特性面でも優れている。
【0229】
硬化後のフィルムの機械的物性を測定するために硬化後のフィルムが覆われているシリコンウエハーを2%フッ酸(HF)溶液に30分間浸してフィルムを分離した後、6.0cm×1.0cmのリボン模様に切り取って機械的物性を測定するための試片を作製した。この試片を万能材料試験機(instron series IX)を利用して引張強度、伸び率、ヤング率等の機械的物性を測定し、その結果を下記表2に示す。
【0230】
【表2】

【0231】
前記表2を参照すれば、実施例1〜8の感光性樹脂組成物は、比較例1〜3と比較して、極めて優れた機械的物性、特に優れた伸び率を示すことが分かる。
【0232】
また、フェノール系溶解調節剤を用いるか、溶解調節剤を用いない比較例1、2、3と比較すると、極めて優れた機械的物性を有する膜を提供できることが分かる。
【0233】
以上、本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施例には限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲で定義されている本発明の基本概念を利用して多様な変形及び改良が可能であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記化学式1で表される反復単位を有し、少なくとも一側の末端部に熱重合性官能基を有する第1ポリベンゾオキサゾール前駆体、
(B)下記化学式3で表される反復単位を有する第2ポリベンゾオキサゾール前駆体、
(C)感光性ジアゾキノン化合物、
(D)シラン化合物、及び
(E)溶媒;を含むことを特徴とするポジティブ型感光性樹脂組成物。
【化1】

(化学式1において、Xは芳香族有機基又は脂環式有機基であり、Y及びYは同じであるか異なっており、それぞれ独立して、芳香族有機基又は脂環式有機基であり、Xは芳香族有機基、脂環式有機基又は下記化学式2で表される構造を有する作用基であり、m及びnは各々のモル比率であって、m+nは100モル%であり、mは60〜100モル%であり、nは0〜40モル%である。)
【化2】

(化学式2において、R及びRは同じであるか異なっており、それぞれ独立して、置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のアリール基、置換又は非置換のアルコキシ基、及びヒドロキシ基からなる群より選択され、R及びRは同じであるか異なっており、それぞれ独立して、置換又は非置換のアルキレン基、若しくは置換又は非置換のアリーレン基であり、kは1〜50の整数である。)
【化3】

(化学式3において、X及びXは同じであるか異なっており、それぞれ独立して、芳香族有機基又は脂環式有機基であり、Yは熱重合が可能な有機基であり、Yは芳香族有機基又は脂環式有機基であり、m及びnは各々のモル比率であって、m+nは100モル%、mは50〜100モル%であり、nは0〜50モル%である。)
【請求項2】
前記第1ポリベンゾオキサゾール前駆体は3,000〜300,000の重量平均分子量(Mw)を有することを特徴とする請求項1に記載のポジティブ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記第2ポリベンゾオキサゾール前駆体は、少なくとも一側の末端に熱重合性官能基を有することを特徴とする請求項1または2に記載のポジティブ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記第2ポリベンゾオキサゾール前駆体は3,000〜30,000の重量平均分子量(Mw)を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポジティブ型感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル−1,3−ブチレングリコールアセテート、1,3−ブチレングリコール−3−モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポジティブ型感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂組成物は、前記(A)第1ポリベンゾオキサゾール前駆体100重量部に対して、前記(B)第2ポリベンゾオキサゾール前駆体1〜30重量部と、前記(C)感光性ジアゾキノン化合物5〜100重量部と、前記(D)シラン化合物0.1〜30重量部と、及び前記(E)溶媒100〜400重量部と、を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポジティブ型感光性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポジティブ型感光性樹脂組成物を利用して形成される感光性樹脂膜。
【請求項8】
請求項7に記載の感光性樹脂膜を含む半導体素子。

【公開番号】特開2010−97220(P2010−97220A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−240394(P2009−240394)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】