説明

ポジ型放射感受性画像形成性要素

改善された感受性、高い解像度、及び、耐溶剤性を有するポジ型画像形成性要素が、ペンダントヒドロキシアリール基を有するビニルアセタール繰返し単位、及び、環状イミド基で置換されているカルボン酸アリールエステル基を含む繰返し単位を含む水不溶性ポリマーバインダーを用いて調製される。これらの画像形成性要素は、画像が形成され、現像されて、平版印刷版を含む様々な種類の要素を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版を製造するために使用され得るポジ型放射感受性画像形成性要素に関する。これらの画像形成性要素は、画像形成性層中に独特のポリ(ビニルアセタール)を含有する。本発明はまた、これらの要素を画像形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷では、画像領域として知られているインク受容領域は、親水性表面上に生成される。その表面を水で湿らし、インクを適用すると、親水性領域は水を保持してインクを弾き、インク受容領域は、そのインクを受け入れて水を弾く。次いで、インクは、画像が再現されるべき適切な材料の表面に転写される。場合によっては、インクはまず中間ブランケットに転写することができ、次に、このブランケットが、画像が再現されるべき材料の表面にインクを転写するために使用される。
【0003】
平版(又はオフセット)印刷版を製造するのに有用な画像形成性要素は、典型的には、基材(又は中間層)の親水性表面上に適用される1種又は複数の画像形成性層を備える。画像形成性層は、適当なバインダー内に分散した1種又は複数の放射感受性成分を含むことができる。画像形成に続いて、画像形成性層の露光領域又は非露光領域は、適当な現像液によって除去され、その下にある基材の親水性表面を露出させる。露光領域が除去される場合、要素はポジ型と見なされる。反対に、非露光領域が除去される場合、要素はネガ型と見なされる。それぞれの場合に、残存する画像形成性層の領域は、インク受容性であり、現像処理によって露出される親水性表面の領域は、水又は水性溶液(典型的には湿し水)を受け入れてインクを弾く。
【0004】
同様に、ボジ型組成物は、印刷回路板(PCB)の製造におけるレジストパターン、厚膜及び薄膜回路、レジスタ、キャパシタ、及びインダクタ、マルチチップデバイス、集積回路、及びアクティブ半導体デバイスを形成するために使用することができる。
【0005】
コンピュータからのデジタルデータを用いてオフセット印刷版又は印刷回路板を直接形成する「レーザダイレクト画像形成」法(LDI)が知られており、マスキング用写真フィルムを用いた従来の方法を上回る多数の利点をもたらす。より効率的なレーザ、改善された画像形成性組成物及びその成分から、この分野ではかなりの進展があった。
【0006】
ノボラック又は他のフェノール系ポリマーバインダー及びジアゾキノン画像形成成分を含有するポジ型画像形成性組成物は、平版印刷版及びフォトレジストの業界において長年にわたって普及してきた。種々のフェノール系樹脂及び赤外線吸収性化合物に基づく画像形成性組成物も周知である。
【0007】
感熱記録材料で有用である広範な感熱組成物は、独国特許第1,245,924号(Brinckman)に記載されており、それによって、所与の溶剤中の画像形成性層の任意の所与の部分の溶解度は、記録材料と接触状態で位置する画像オリジナルの背景部分から送られる又は反射される、短い持続時間の強い可視光及び/又は赤外線への間接的曝露による層の加熱によって増加させ得る。
【0008】
感熱画像形成性の単層又は多層要素も、国際公開第97/39894号(Hoareら)、国際公開第98/42507号(Westら)、国際公開第99/11458号(Nguengら)、米国特許第5,840,467号(Kitatani)、米国特許第6,060,217号(Nguengら)、米国特許第6,060,218号(Van Dammeら)、米国特許第6,110,646号(Uranoら)、米国特許第6,117,623号(Kawauchi)、米国特許第6,143,464号(Kawauchi)、米国特許第6,294,311号(Shimazuら)、米国特許第6,352,812号(Shimazuら)、米国特許第6,593,055号(Shimazuら)、米国特許第6,352,811号(Patelら)、米国特許第6,358,669号(Savariar-Hauckら)、及び米国特許第6,528,228号(Savariar-Hauckら)、並びに米国特許出願公開第2002/0081522号(Miyakeら)及び米国特許出願公開第2004/0067432A1号(Kistonら)に記載されている。
【0009】
感熱ポリビニルアセタールを含有するポジ型感熱画像形成性要素は、米国特許第6,255,033号、米国特許第6,541,181号(両方ともLevanonら)、米国特許第7,399,576号(Levanonら)、及び米国特許第7,544,462号(Levanonら)、国際公開第04/081662号(Memeteaら)、並びに米国特許出願公開第2009/0004599号(Levanonら)に記載されている。
【0010】
他のポジ型画像形成性要素は、同時係属で本願と同じ出願人による米国特許出願公開第2009/0162783号並びに米国特許出願第12/025,089号(Levanonらにより2008年2月4日に出願)、米国特許出願第12/125,084号(Levanonらにより2008年5月22日に出願)、米国特許出願第12/195,468号(Levanonらにより2008年8月21日に出願)、及び米国特許出願第12/339,469号(Levanonらにより2008年12月19日に出願)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】独国特許第1,245,924号
【特許文献2】国際公開第97/39894号
【特許文献3】国際公開第98/42507号
【特許文献4】国際公開第99/11458号
【特許文献5】米国特許第5,840,467号
【特許文献6】米国特許第6,060,217号
【特許文献7】米国特許第6,060,218号
【特許文献8】米国特許第6,110,646号
【特許文献9】米国特許第6,117,623号
【特許文献10】米国特許第6,143,464号
【特許文献11】米国特許第6,294,311号
【特許文献12】米国特許第6,352,812号
【特許文献13】米国特許第6,593,055号
【特許文献14】米国特許第6,352,811号
【特許文献15】米国特許第6,358,669号
【特許文献16】米国特許第6,528,228号
【特許文献17】米国特許出願公開第2002/0081522号
【特許文献18】米国特許出願公開第2004/0067432A1号
【特許文献19】米国特許第6,255,033号
【特許文献20】米国特許第6,541,181号
【特許文献21】米国特許第7,399,576号
【特許文献22】米国特許第7,544,462号
【特許文献23】国際公開第04/081662号
【特許文献24】米国特許出願公開第2009/0004599号
【特許文献25】米国特許出願公開第2009/0162783号
【特許文献26】米国特許出願第12/025,089号
【特許文献27】米国特許出願第12/125,084号
【特許文献28】米国特許出願第12/195,468号
【特許文献29】米国特許出願第12/339,469号
【特許文献30】米国特許出願公開第2008/0206678号
【特許文献31】米国特許出願公開第2005/0214677号
【特許文献32】英国特許第2,098,627号
【特許文献33】特開昭57-195697A
【特許文献34】米国特許第5,713,287号
【特許文献35】米国特許第4,973,572号
【特許文献36】米国特許第5,208,135号
【特許文献37】米国特許第5,244,771号
【特許文献38】米国特許第5,401,618号
【特許文献39】欧州特許出願公開第0823327A1号
【特許文献40】米国特許出願公開第2005/0130059号
【特許文献41】国際公開第2004/101280号
【特許文献42】米国特許第6,309,792号
【特許文献43】米国特許第6,264,920号
【特許文献44】米国特許第6,153,356号
【特許文献45】米国特許第5,496,903号
【特許文献46】欧州特許第823,327号
【特許文献47】欧州特許第1,024,958号
【特許文献48】米国特許第7,175,969号
【特許文献49】米国特許第5,488,025号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】「Glossary of Basic Terms in Polymer Science」、Pure Appl. Chem. 68、2287〜2311頁(1996年)
【非特許文献2】K.Henningら、Acta Polymerica 41(1990年)、第5号、285〜289頁
【非特許文献3】S.N.Ushakovら、Dokl. Akad. Nauk SSSR、141、1117〜1119頁、1961年
【非特許文献4】I.S.Varga、S.Wolkover、Acta Chim. Acad.Sci.Hung.、41、431頁 1964年
【非特許文献5】G.Jialanella及びI.Piirma、Polymer Bulletin 18、385〜389頁(1987年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
オフセット印刷版は近年、画像形成感度(画像形成スピード)及び画像解像度並びに一般の印刷室化学薬品に対する耐性(耐薬品性)に対して増大する性能要求の問題があった。多くの場合、1つの所望の特性を得るために用いられる組成物の特徴は、他の特性を必ずしも改善するとは限らない。前の2つの段落中の特許、公開、及び同時係属出願に記載された画像形成性要素は、当技術分野で有用な進歩を提供したが、さらなる改善が依然として望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、水不溶性ポリマー性バインダー及び放射吸収化合物を含む画像形成性層を基材上に有する基材を備えるポジ型画像形成性要素であって、
該ポリマーバインダーが、
a)ペンダントヒドロキシアリール基を含むビニルアセタール繰返し単位、及び、
b)環状イミド基で置換されているヒドロキシアリールエステル基を含む繰返し単位
を含み、
該ペンダントヒドロキシアリール基を含むビニルアセタール繰返し単位、及び、該環状イミド基で置換されているヒドロキシアリールエステル基を含む繰返し単位が、独立して、ポリマーバインダー中の全繰返し単位に基づいて、それぞれ、少なくとも10モル%及び25モル%の量でポリマーバインダー中に存在するポジ型画像形成性要素を提供する。
【0015】
大部分の実施形態において、ポリマーバインダーは、以下により詳細に記載される、以下の構造(Ia)及び(Ib)のそれぞれで表される繰返し単位:
【0016】
【化1】

【0017】
を含み、ここで、ポリマーバインダー中の全繰返し単位に基づいて、該構造(Ia)の繰返し単位は、約10から約35モル%で存在し、該構造(Ib)の繰返し単位は、約25から約60モル%で存在する。
【0018】
更に他の実施形態は、構造(Ia)及び(Ib)由来の繰返し単位に加えて、ポリマーバインダー中の全繰返し単位に基づいて、約25から約60モル%の以下の構造(Ic)で表される繰返し単位:
【0019】
【化2】

【0020】
並びに場合によって、最大25モル%の以下の構造(Id)で表される繰返し単位、場合によって最大10モル%の以下の構造(Ie)で表される繰返し単位、及び場合によって最大20モル%の以下の構造(If)で表される繰返し単位;
【0021】
【化3】

【0022】
を含むポリマーバインダーの使用を含み、その構造(Ic)から(If)は、以下により詳細に説明される。
【0023】
本発明はまた、
A)本発明のポジ型画像形成性要素を画像様露光して、露光領域及び非露光領域を提供する段階、並びに
B)該画像様露光された要素を現像して、主に露光領域のみを除去する段階
を含む、画像形成された要素を製造する方法を提供する。
【0024】
本発明はまた、有用なポリマーバインダーとして本明細書で記載される独特のコポリマーを提供する。しかし、これらのコポリマーは、この唯一の使用に限定されない。以下に記載されるポリマーAからポリマーJは、本発明の代表的なコポリマーである。
【0025】
例えば、このような画像形成性要素は、約750から約1250nmの波長で画像形成させて、アルミニウム含有親水性基材を有する平版印刷版を提供し得る。
【0026】
本発明者らは、改善された感度(フォトスピード)及び高い画像解像度を有するポジ型の単層の感熱画像形成性要素に対する必要性が依然として存在することを発見した。それらが、この業界で既に使用されるポジ型印刷版と少なくとも同じ程度に良好である、印刷機用化学薬品、例えば、平版インキ、湿し水、及び洗浄で用いられる溶剤に対する耐性を有することも望ましい。
【0027】
本発明のポジ型放射感受性画像形成性要素は、改善された画像感度を示すことにより注目された問題を解決する。更に、本発明によって調製される画像形成された要素は、画像形成と現像の間の「予備加熱」工程を必要とすることなしに、長いランレングスを示す。更に、それらの印刷機用化学薬品に対する耐性も改善される。本発明者らは、本発明の画像形成性要素が、画像に改善された印刷適性及び高い解像度を提供することも見出した。これらの利点は、画像形成層中に記載された独特のクラスの水不溶性ポリマーバインダーを用いることによって達成された。これらのポリマーバインダーは、ペンダントヒドロキシアリール基を含むビニルアセタール繰返し単位、及び、環状イミド基で置換されているヒドロキシアリールエステル基を含む繰返し単位を含む。ペンダントヒドロキシアリール基を含むビニルアセタール繰返し単位、及び、環状イミド基で置換されているヒドロキシアリールエステル基を含む繰返し単位は、独立して、それぞれ、ポリマー中の全繰返し単位に基づいて、少なくとも10モル%及び25モル%の量でポリマーバインダー中に存在する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】以下に記載される通りのDMSO-d6中ポリマーA(及び内部標準)の1H NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
定義
特に断らない限り、本明細書で用いられる場合、「画像形成性要素」、「ポジ型放射感受性画像形成性要素」、「ポジ型画像形成性要素」、及び「平版印刷版原版」は、本発明の実施形態への言及であることが意味される。
【0030】
更に、特に断らない限り、「放射吸収化合物」、「一次ポリマーバインダー」、「二次ポリマーバインダー」、及び「現像性向上化合物」等の本明細書で記載される種々の成分は、それぞれの成分の混合物も指す。したがって、本願明細書の原文中の、冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」の使用は、1つの成分のみを指すことを必ずしも意味しない。
【0031】
特に断らない限り、パーセントは、重量パーセントを指す。重量パーセントは、配合物若しくは組成物の全固形分に、又は層の全乾燥コーティング重量に基づくことができる。
【0032】
「単層画像形成性要素」という用語は、画像形成に一層のみを必要とする画像形成性要素を指すが、以下により詳細に指摘されるように、このような要素は、様々な特性を提供する画像形成性層の下又は上に1層又は複数の層(トップコート等)も含み得る。
【0033】
本明細書で用いられる場合、「放射吸収化合物」という用語は、放射(電磁線)の特定の波長に感受性である化合物を指し、それらが配置される層内でフォトンを熱に変換し得る。これらの化合物は、「光熱変換材料」、「増感剤」、又は「光熱変換剤」としても知られ得る。
【0034】
ポリマーに関する任意の用語の定義の明確化のために、国際純正応用化学連合(「IUPAC」)により発行された「Glossary of Basic Terms in Polymer Science」、Pure Appl. Chem. 68、2287〜2311頁(1996年)が参照されるべきである。しかし、本明細書で示されるいずれの異なる定義も、統制するものと見なされるべきである。
【0035】
「ポリマー」という用語は、オリゴマーを含む高分子量及び低分子量のポリマーを指し、ホモポリマー及びコポリマーの両方を含み得る。
【0036】
「コポリマー」という用語は、同じモノマー由来であっても、2種以上の異なるモノマー由来である、又は2種以上の異なる種類の繰返し単位を有するポリマーを指す。
【0037】
「主鎖」という用語は、複数のペンダント基が結合している、ポリマー中の原子の鎖を指す。このような主鎖の例は、1種又は複数のエチレン性不飽和重合性モノマーの重合から得られる「すべて炭素」の主鎖である。しかし、他の主鎖は、ポリマーが一部の他の手段の縮合反応により形成される、ヘテロ原子を含み得る。
【0038】
用途
本明細書で記載される放射感受性組成物は、印刷回路板(PCB)製造におけるレジストパターン、薄膜及び厚膜回路、レジスタ、キャパシタ、及び、インダクタ、マルチチップデバイス、集積回路、及びアクティブ半導体デバイスを形成するために使用され得る。更に、それらは、ポジ型画像形成性要素を得るために使用され、これは次に、平版印刷版を得るために使用され得る。本組成物の他の用途は、当業者に容易に明らかである。したがって、本明細書で記載されるポリマーは、任意の特定の理由のためにバインダーを必要とするコーティング、塗料、及び他の配合物で使用され得る。
【0039】
放射感受性組成物
放射感受性組成物及び画像形成性要素は、以下に定義される繰返し単位を含む1種又は複数の水不溶性及び場合によってアルカリ溶液可溶性のポリマーバインダーを含む。これらのポリマーは、放射感受性組成物又は画像形成性層に存在する「一次」ポリマーバインダーと見なされる。有用なポリマーバインダーの重量平均分子量(Mw)は、一般に少なくとも5,000であり、最大500,000、典型的には約10,000から約100,000であることができる。最適Mwは、具体的なポリマー及びその用途によって変わり得る。
【0040】
ポリマーバインダーは、少なくとも、ペンダントヒドロキシアリール基を含むビニルアセタール繰返し単位、及び、環状イミド基で置換されているヒドロキシアリールエステル基を含む繰返し単位を含み、ここで、両方の種類の繰返し単位は、独立して、ポリマーバインダーの全繰返し単位に基づいて、それぞれ、少なくとも10モル%及び25モル%の量でポリマーバインダー中に存在する。
【0041】
上記の通りに、このようなポリマーバインダーは、しばしば以下の構造(Ia)及び(
Ib)のそれぞれ由来の基準繰返し単位:
【0042】
【化4】

【0043】
によって示すことができ、ここで、ポリマーバインダー中の全繰返し単位に基づいて、該構造(Ia)の繰返し単位は、約10から約35モル%(典型的には約15から約25モル%)で存在し、該構造(Ib)の繰返し単位は、約25から約60モル%(典型的には約25から約45モル%)で存在する。それぞれの構造の繰返し単位が存在し得るが、R及びR2基は異なる。
【0044】
構造(Ia)及び(Ib)において、Rは、置換又は非置換のヒドロキシアリール基、例えば、アリール基が環上に1から3個のヒドロキシル基を有する置換又は非置換のヒドロキシフェニル又はヒドロキシナフチル基である。典型的には、アリール環上に1個のみのヒドロキシル基が存在する。場合によってアリール基上に存在し得る他の置換基には、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、及び画像形成性要素中のポリマーバインダーの性能に悪影響を与えない任意の他の基が含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
R2は、環状イミド基で置換されている置換又は非置換のヒドロキシアリール基、例えば、限定されるものではないが、マレイミド、フタルイミド、テトラクロロフタルイミド、ヒドロキシフタルイミド、カルボキシフタルイミド、及びナフタルイミド基を含む、脂肪族又は芳香族イミド基等の環状イミド置換基を有する置換又は非置換のヒドロキシフェニル又はヒドロキシナフチル基である。R2上のさらなる場合による置換基には、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、及び画像形成性要素中の環状イミド基又はポリマーバインダーの特性に悪影響を与えない他の基が含まれるが、これらに限定されない。環状イミド置換基を有して、他の置換基は有しないヒドロキシフェニル基は、ポリマーバインダーにおいて有用である。
【0046】
一部の実施形態において、ポリマーバインダーは、構造(Ia)及び(Ib)由来の繰返し単位に加えて、ポリマーバインダー中の全繰返し単位に基づいて、約25から約60モル%(典型的には約30から約55モル%)の以下の構造(Ic)で表される繰返し単位:
【0047】
【化5】

【0048】
並びに場合によって、最大25モル%(典型的には約2から約15モル%)の以下の構造(Id)で表される繰返し単位、場合によって、最大10モル%(典型的には約5から約8モル%)の以下の構造(Ie)で表される繰返し単位、及び場合によって、最大20モル%(典型的には約5から約10モル%)の以下の構造(If)で表される繰返し単位:
【0049】
【化6】

【0050】
を含む。
【0051】
構造(Id)において、R1は、1から12個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の直鎖若しくは分岐のアルキル基(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、クロロメチル、トリクロロメチル、イソプロピル、イソブチル、t-ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、1-メチルブチル、イソヘキシル、及びドデシル基)、炭素環式環中に5から10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のシクロアルキル(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、及び4-クロロシクロヘキシル)、又は芳香族環中に6若しくは10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアリール基(例えば、フェニル、ナフチル、p-メチルフェニル、及びp-クロロフェニル)である。このような基は、アルキル、アルコキシ、及びハロゲン等の1個若しくは複数の置換基、又は当業者が容易に予想する、画像形成性要素中のポリマーバインダーの性能に悪影響を与えない任意の他の置換基で置換され得る。
【0052】
構造(Ie)において、R3は、-Ox-(CH2)y-COOH基(式中、xは、0又は1であり、yは、0、1、又は2である)で置換されているアリール基(フェニル又はナフチル基等)である。典型的には、xは1であり、yは1であり、アリール基はフェニル基である。このアリール基は、画像形成性要素中のポリマーバインダーの性能に悪影響を与えないアルキル、アルコキシ、又はハロゲン等のさらなる置換基を有し得る。
【0053】
構造(If)において、R4は、芳香族環中に6又は10個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリール基(フェニル又はナフチル等)であり、これは、アルキル、アルコキシ、及び当業者が、画像形成性要素中のポリマーバインダーの特性に悪影響を与えないと容易に予想する他のもの等の1個又は複数の置換基を有し得る。
【0054】
一部の実施形態において、ポリマーバインダーは、構造(Ia)から(If)のそれぞれで表される繰返し単位:
【0055】
【化7】



【0056】
(式中、R、R1、R2、R3、R4、x及びyは、上に定義された通りであり、ポリマーバインダー中の全繰返し単位に基づいて、kは、約15から約25モル%であり、lは、約25から約45モル%であり、mは、約30から約55モル%であり、nは、0から約15モル%であり、oは、0から約8モル%であり、pは、0から約10モル%である)
を含む。
【0057】
更に他の実施形態において、ポリマーバインダーは、構造(Ia)から(Id)のそれぞれで表される繰返し単位:
【0058】
【化8】

【0059】
(式中、R、R1、及びR2は、上に定義された通りである)
を含む。
【0060】
更に、他の実施形態は、構造(Ia)から(Ie)のそれぞれで表される繰返し単位:
【0061】
【化9】


【0062】
(式中、R、R1、R2、R3、x、及びyは、上に定義された通りである)
を含むポリマーバインダーの使用を包含する。
【0063】
構造(Ia)及び(Ib)、及び場合によって(Ic)、(Id)、(Ie)、又は(If)で表される繰返し単位を含む一次ポリマーバインダーは、図示された繰返し単位によって定義されるもの以外の繰返し単位を含んでもよく、このようなさらなる繰返し単位は、当業者に容易に明らかである。したがって、本発明で有用なポリマーバインダーは、特に構造(Ia)から(If)で定義される繰返し単位に限定されない。
【0064】
また、異なる置換基を有する構造(Ia)、(Ib)、(Id)、(Ie)、及び(If)中の繰返し単位の定義されたクラスのいずれか由来の複数の種類の繰返し単位があってもよい。例えば、異なるR基を有する複数の種類の繰返し単位があってもよく、異なるR1基を有する複数の種類の繰返し単位があってもよく、異なるR2基を有する複数の種類の繰返し単位があってもよく、異なるR3基を有する複数の繰返し単位があってもよく、又は異なるR4基を有する複数の種類の繰返し単位があってもよい。更に、一次ポリマーバインダー中の繰返し単位の数及び種類は、一般に無作為配列であるが、特定の繰返し単位のブロックが存在してもよい。
【0065】
一次ポリマーバインダーは一般に、画像形成性層の全乾燥重量に基づいて、約40から約95重量%(典型的には約50から約80重量%)で存在する。
【0066】
本発明で使用される一次ポリマーバインダーは、ジメチルスルホキシド(DMSO)若しくはN-メチルピロリドン(NMP)又はこれらの溶媒とγ-ブチロラクトン(BLO)との混合物中塩基性触媒、例えば、金属水酸化物、金属アルコキシド、及び環状アミンの存在下でヒドロキシ-置換芳香族酸のアルキルエステル又はアリールエステルと、ポリビニルアルコールとのエステル交換によって調製され得る。
【0067】
一次ポリマーバインダーの一部の実施形態は、芳香族環上に環状イミド(フタルイミド基等)で置換されているペンダントヒドロキシアリール基を有する。このようなポリマーは、DMSO若しくはNMP、又はこれらの溶媒とBLOとの混合物中塩基性触媒、例えば、金属水酸化物、金属アルコキシド、又は環状アミンの存在下でヒドロキシル-置換芳香族酸のアルキルエステル又はアリールエステルの環状イミド誘導体と、ポリビニルアルコールとのエステル交換によって、或いはDMSO若しくはNMP、又はこれらの溶媒とBLOとの混合物中塩基性触媒、例えば、金属水酸化物、金属アルコキシド、又は環状アミンの存在下でヒドロキシル-置換芳香族酸のアルキルエステル又はアリールエステルの環状イミド誘導体の混合物と、ポリビニルアルコールとのエステル交換によって調製され得る。
【0068】
(Acta Polymerica 41(1990年)、第5号、285〜289頁)において、K.Henningらにより、p-トルエンスルホン酸又はイオン交換樹脂の存在下において酸性触媒下でp-ヒドロキシ安息香酸及びo-ヒドロキシ安息香酸(サリチル酸)のエチレン-ビニルアルコールコポリマーによるエステル化が記載されている。これらの反応は、低いエステル変換、すなわち、p-ヒドロキシ安息香酸の場合で20%、サリチル酸でわずか10〜12%をもたらす。
【0069】
ポリビニルアルコールを4-アミノ-2-ヒドロキシ-ベンゾイルクロリドと反応させることによって合成されるエステルは、非常に低い変換、すなわち、得られるポリマー中10モル%より低いエステル単位で得られた(S.N.Ushakovら、Dokl. Akad. Nauk SSSR、141、1117〜1119頁、1961年)。同様のエステル化のレベルが、2-ヒドロキシ-4-アミノサリチル酸のメチルエステルを塩基性触媒反応(NaOCH3)下でポリビニルアルコールとエステル交換させた場合に見られた(I.S.Varga、S.Wolkover、Acta Chim. Acad.Sci.Hung.、41、431頁 1964年)。
【0070】
ポリ(ビニルアルコール-co-没食子酸ビニル)の合成が、G.Jialanella及びI.Piirma、Polymer Bulletin 18、385〜389頁(1987年)により記載されており、ここでは、カリウムt-ブトキシドの存在下でDMSO中3,4,5-トリヒドロキシベンゾエートをエステル交換させた。この合成ポリマーは水溶性であり、これは、その変換が低かったことを示唆する。
【0071】
本発明に有用なポリマーの合成のために、本発明者らは、ポリビニルアルコール(PVA)を溶解させることができる有機溶媒-NMP又はDMSO中ヒドロキシ安息香酸のメチルエステル又はフェニルエステルと、PVAとのエステル交換のために塩基性触媒反応を用いた。用いた触媒は、ナトリウムメトキシド、カリウムt-ブトキシド、乾燥KOH、及びDBU{1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン(98%)}のような環状アミンであった。エステル交換の反応前にPVAを乾燥させることが重要である。本発明者らは、PVAのポリ(ビニルアルコール-co-ヒドロキシ-置換アリールエステル)のコポリマーへの変換が、o-ヒドロキシ安息香酸(サリチル酸)の場合に非常に高く、ここで、それは、3-又は4-ヒドロキシ置換安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、及び没食子酸のエステルについての10〜20%の低い変換に比べて、85〜90%に達することを知って驚いた。芳香族環上のニトロ基のような電子求引性基を有するo-ヒドロキシ安息香酸のエステルが、PVAとのエステル交換反応で用いられる場合、その変換はまた非常に低い。
【0072】
本明細書で記載される一次ポリマーバインダーは、単独で、又は本明細書で「二次ポリマーバインダー」と特定される、他のアルカリ可溶性ポリマーバインダーと混合して使用され得る。これらのさらなるポリマーバインダーには、他のポリ(ビニルアセタール)、例えば、それらの公報は参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,255,033号及び米国特許第6,541,181号(上記)、国際公開第04/081662号(やはり上記)、並びに米国特許出願公開第2008/0206678号(Levanonら)に記載されたポリ(ビニルアセタール)が含まれる。
【0073】
一次ポリマーバインダーと一緒に使用され得る二次ポリマーバインダーの種類は、特に限定されない。一般に、画像形成性要素のポジ型放射感受性を低下させない観点から、二次ポリマーバインダーは一般に、アルカリ可溶性ポリマーでもある。
【0074】
他の有用な二次ポリマーバインダーには、フェノール系樹脂(ノボラック樹脂、例えば、フェノールとホルムアルデヒドの縮合ポリマー、m-クレゾールとホルムアルデヒドの縮合ポリマー、p-クレゾールとホルムアルデヒドの縮合ポリマー、m-/p-混合クレゾールとホルムアルデヒドの縮合ポリマー、フェノール、クレゾール(m-、p-、又はm-/p-混合物)とホルムアルデヒドの縮合ポリマー、及びピラガロールとアセトンの縮合コポリマーを含む)が含まれる。更に、フェノール基を側鎖に含む化合物を共重合させることによって得られるコポリマーが使用され得る。このようなポリマーバインダーの混合物も使用され得る。
【0075】
他の有用な二次ポリマーバインダーの例には、主鎖及び/又は側鎖(ペンダント基)上に、以下に示される(1)から(5)の酸性基を有するポリマーの以下のクラスが含まれる。
【0076】
(1)スルホンアミド(-SO2-NH-R’)、
(2)置換スルホンアミド系酸性基(以後、活性イミド基と称される)[-SO2NHCOR’、-SO2NHSO2R’、-CONHSO2R’等]、
(3)カルボン酸基(-CO2H)、
(4)スルホン酸基(-SO3H)、及び
(5)リン酸基(-OPO3H2)。
【0077】
上記の基(1)〜(5)におけるR’は、水素又は炭化水素基を表す。
【0078】
基(1)スルホンアミド基を有する代表的な二次ポリマーバインダーは、例えば、スルホンアミド基を有する化合物由来の主たる構成成分として最低限の構成単位からなるポリマーである。したがって、このような化合物の例には、その分子中に少なくとも1個の水素原子が窒素原子及び少なくとも1個の重合性不飽和基に結合している少なくとも1個のスルホンアミド基を有する化合物が含まれる。これらの化合物の中には、m-アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N-(p-アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、及びN-(p-アミノスルホニルフェニル)アクリルアミドがある。したがって、m-アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N-(p-アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、又はN-(p-アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等のスルホンアミド基を有する重合性モノマーのホモポリマー又はコポリマーが使用され得る。
【0079】
基(2)活性イミド基を有する二次ポリマーバインダーの例は、主たる構成成分として活性イミド基を有する化合物由来の繰返し単位を含むポリマーである。このような化合物の例には、以下の構造式で定義される部分を有する重合性不飽和化合物が含まれる。
【0080】
【化10】

【0081】
N-(p-トルエンスルホニル)メタクリルアミド及びN-(p-トルエンスルホニル)アクリルアミドは、このような重合性化合物の例である。
【0082】
基(3)から(5)のいずれかを有する二次ポリマーバインダーには、所望の酸性基、又は重合後にこのような酸性基に変換され得る基を有するエチレン性不飽和重合性モノマーを反応させることによって容易に調製されるものが含まれる。
【0083】
二次ポリマーバインダーは、少なくとも2,000の重量平均分子量及び少なくとも500の数平均分子量を有し得る。典型的には、重量平均分子量は、約5,000から約300,000であり、数平均分子量は、約800から約250,000であり、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、約1.1から約10である。
【0084】
二次ポリマーバインダーの混合物は、1種又は複数の一次ポリマーバインダーと使用され得る。二次ポリマーバインダーは、放射感受性組成物又は画像形成性層中の全ポリマーバインダーの乾燥重量に基づいて、少なくとも1重量%及び最大50重量%、典型的には約5から約30重量%の量で存在し得る。
【0085】
放射感受性組成物は、現像性向上化合物も含み得る。国際公開第2004/081662号(Memeteaら)には、必要な画像形成エネルギーを低減させるように、ポジ型組成物及び要素の感受性を向上させるための酸性の性質の種々の現像性向上化合物の使用が記載されている。
【0086】
酸性現像性向上化合物(ADEC)、例えば、カルボン酸又は環状酸無水物、スルホン酸、スルフィン酸、アルキル硫酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸エステル、フェノール、スルホンアミド、又はスルホンイミドは、更に改善された現像許容度及び印刷持続性を可能にし得る。このような化合物の代表的な例は、これらの酸性現像性向上化合物に関して参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2005/0214677号(上記)の段落番号[0030]から[0036]で提供される。このような化合物は、放射感受性組成物又は画像形成性層の全乾燥重量に基づいて、約0.1から約30重量%の量で存在し得る。
【0087】
放射感受性組成物は、やはり参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2009/0162783号に記載された通りの1種又は複数の現像性向上化合物(DEC)を含有する現像性向上組成物も含み得る。代表的な現像性向上化合物は、以下の構造(DEC):
[HO-C(=O)]m-A-[N(R4)(R5)]n (DEC)
で定義され得る。
【0088】
構造DECにおいて、R4及びR5は、同一である又は異なっている、水素或いは1から6個の炭素原子を有する置換もしく非置換の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭化水素環中に5から10個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のシクロアルキル基、又は芳香族環中に6、10、若しくは14個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアリール基であることができる。一部の実施形態において、R4及びR5は、同一である又は異なっている、置換又は非置換のアリール基(フェニル又はナフチル基等)であることができ、Aが-[N(R4)(R5)]nに直接結合したアルキレン基を含む場合、R4及びR5の少なくとも一方が、置換又は非置換のアリール基であることが特に有用である。
【0089】
他の実施形態において、R4及びR5は、同じである又は異なっている、水素或いは1から6個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の直鎖若しくは分岐のアルキル基(上記の通りの)、置換若しくは非置換のシクロヘキシル基、又は置換若しくは非置換のフェニル若しくはナフチル基であることができる。
【0090】
構造(DEC)において、Aは、分子鎖中に少なくとも1個の炭素、窒素、硫黄、又は酸素原子を有する置換又は非置換の有機連結基であり、ここで、Aはまた、-[N(R4)(R5)]nに直接結合した置換又は非置換のアリーレン基(置換又は非置換のフェニレン基等)を含む。したがって、Aには、1種又は複数のアリーレン(例えば、芳香族環中に6又は10個の炭素原子を有する)、シクロアルキレン(例えば、炭素環式環中に5から10個の炭素原子を有する)、アルキレン(例えば、直鎖及び分岐の基を含めて、分子鎖中に1から12個の炭素原子を有する)、オキソ、チオ、アミド、カルボニル、カルボンアミド、スルホンアミド、エテニレン(-CH=CH-)、エチニレン(-C≡C-)、セレノ基、又はそれらの任意の組合せが含まれ得る。一部の特に有用な実施形態において、Aは、置換又は非置換のアリーレン基(置換又は非置換のフェニレン基等)からなる。
【0091】
構造(DEC)において、mは、1から4(典型的には1又は2)の整数であり、nは、1から4(典型的には1又は2)の整数であり、m及びnは、同じである又は異なっていることができる。
【0092】
なお他の実施形態において、現像性向上化合物は、以下の構造(DEC1):
[HO-C(=O)]m-B-A-[N(R4)(R5)]n (DEC1)
(式中、R4及びR5は、上に定義された通りであり、Aは、-[N(R4)(R5)]nに直接結合した置換又は非置換のフェニレンを有する有機連結基であり、Bは、単結合又は分子鎖中に少なくとも1個の炭素、酸素、硫黄、又は窒素原子を有する有機連結基であり、mは、1又は2の整数であり、nは、1又は2の整数である)で定義され得る。「B」有機連結基は、Bがアリーレン基を含むことが必要とされないことを除いて、Aが上に定義されるのと同じに定義することができ、通常Bは、存在する場合、Aと異なる。
【0093】
本明細書で記載されるアリール(及びアリーレン)、シクロアルキル、及びアルキル(及びアルキレン)基は、限定されるものではないが、ヒドロキシ、メトキシ及び他のアルコキシ基、アリールオキシ基(フェニルオキシ、チオアリールオキシ基等)、ハロメチル、トリハロメチル、ハロ、ニトロ、アゾ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ基(チオメチル等)、シアノ、アミノ、カルボキシ、エテニル及び他のアルケニル基、カルボキシアルキル、アリール基(フェニル等)、アルキル基、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロアリール、及びヘテロ脂環式基を含む、場合によって最大4個の置換基を有し得る。
【0094】
画像形成性要素は、現像性向上化合物として、1種又は複数のアミノ安息香酸、ジメチルアミノ安息香酸、アミノサリチル酸、インドール酢酸、アニリノ二酢酸、N-フェニルグリシン、又はこれらの任意の組合せを含み得る。例えば、このような化合物には、4-アミノ安息香酸、4-(N,N’-ジメチルアミノ)安息香酸、アニリノ(二)酢酸、N-フェニルグリシン、3-インドール酢酸、及び4-アミノサリチル酸が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0095】
上記の1種又は複数の現像性向上化合物は、一般に約1から約30重量%、又は典型的には約2から約20重量%の量で存在する。
【0096】
多くの実施形態において、放射感受性組成物及び画像形成性要素は、約40から約95重量%の範囲で存在する上記の一次ポリマーバインダー、約1から約30重量%の範囲で存在する1種又は複数の現像性向上化合物、及び約0.1から約30重量%の範囲で存在する赤外線吸収化合物である1種又は複数の放射吸収化合物を有し得る。
【0097】
構造(DEC)又は(DEC1)の1種又は複数の現像性向上化合物を、米国特許出願公開第2005/0214677(上記)の段落番号[0030]から[0036]で提供された、1種又は複数の酸性現像性向上化合物(ADEC)と組み合わせて用いることもできる。
【0098】
ある場合には、これらの酸性現像性向上化合物の少なくとも2種が、構造(DEC)又は(DEC1)で上記された1種又は複数(例えば、2種)の現像性向上化合物と組み合わせて用いられる。
【0099】
上記の現像性向上化合物の2種の組合せにおいて、構造(DEC)又は(DEC1)で表される1種又は複数の化合物の1種又は複数の(ADEC)現像性向上化合物に対するモル比は、約0.1:1から約10:1、より典型的には約0.5:1から約2:1であり得る。
【0100】
また更に、構造(DEC)又は(DEC1)で記載される現像性向上化合物は、以下の構造(BDEC):
(R7)s-N-[(CR8R9)t-OH]v (BDEC)
(式中、tは、1から6であり、sは、0、1、又は2であり、vは、1から3であり、但し、s及びvの合計は3である)で定義され得る塩基性現像性向上化合物と組み合わせて用いられ得る。sが1である場合、R7は、水素、又はアルキル、アルキルアミン、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアミン、若しくはヘテロアリール基であり、sが2である場合、複数のR7基は、同じである又は異なっている、アルキル、アルキルアミン、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アリールアミン、若しくはヘテロアリール基であることができ、或いは2個のR7基は、窒素原子と一緒になって、置換又は非置換のヘテロ環式環を形成し得る。R8及びR9は、独立して、水素又はアルキル基である。
【0101】
このような有機BDEC化合物の例は、N-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン、1-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、N-フェニルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2-[ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)-エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)-エチレンジアミン、3-[(2-ヒドロキシエチル)フェニルアミノ]プロピオニトリル、及びヘキサヒドロ-1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)-s-トリアジンである。これらの化合物の2種以上の混合物も有用である。
【0102】
上記の現像性向上化合物の2種の組合せにおいて、構造(DEC)又は(DEC1)で表される1種又は複数の化合物の1種又は複数の(BDEC)現像性向上化合物に対するモル比は、約0.1:1から約10:1、より典型的には約0.5:1から約2:1であり得る。
【0103】
更にまた、構造(DEC)又は(DEC1)によって上記された化合物は、任意の適当なモル比で、ADEC化合物として上に特定された1種又は複数の化合物と、及び構造(BDEC)によって上に特定された1種又は複数の化合物と組み合わせて用いられ得る。
【0104】
本放射感受性組成物は、画像形成性層のために以下に記載される他の場合による追加物を含み得る。
【0105】
画像形成性要素
画像形成性要素は、ポジ型画像形成性要素であり、本明細書で記載される一次ポリマーバインダーは一般に、単一の画像形成性層中のポリマーバインダーとして存在する。
【0106】
一般に、画像形成性要素は、画像形成性層を形成すべき適当な基材への、1種又は複数の一次ポリマーバインダー、放射吸収化合物(以下に記載)、場合によって現像性向上組成物、及び他の場合による追加物を含有する放射感受性組成物の配合物の適当な適用によって形成される。この基材は通常、配合物の適用前に以下に記載されるように様々な方法で処理又はコーティングされる。例えば、基材は、処理して、改善された接着性又は親水性のための「中間層」を得ることができ、画像形成性層は、その中間層の上に適用される。
【0107】
基材は一般に、親水性表面、又は画像形成側の適用された画像形成配合物よりも親水性である表面を有する。基材は、平版印刷版等の画像形成性要素を調製するために従来用いられているいずれの材料からも構成され得る支持体を含む。通常はシート、フィルム、又は箔の形態であり、強く、安定で、柔軟であり、色記録がフルカラー画像を正しく重ね合わせるように、使用条件下で寸法変化に耐性である。典型的には、支持体は、ポリマーフィルム(ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースエステルポリマー、及びポリスチレンフィルム等)、ガラス、セラミックス、金属シート若しくは箔、又は硬い紙(樹脂コート紙及び金属化紙を含む)、或いはこれらの材料の任意の薄層状物(ポリエステルフィルム上へのアルミニウム箔の薄層状物等)を含む任意の自立性材料であり得る。金属支持体には、アルミニウム、銅、亜鉛、チタン、及びこれらの合金のシート又は箔が含まれる。
【0108】
ポリマーフィルム支持体は、親水性を向上させるために「下塗り」層(“subbing” layer)で片面若しくは両面を改質することもでき、又は紙支持体は、平面性を向上させるために同様にコーティングすることもできる。下塗り層の材料の例には、アルコキシシラン、アミノ-プロピルトリエトキシシラン、グリシジオキシプロピル-トリエトキシシラン、及びエポキシ官能性ポリマー、並びにハロゲン化銀写真フィルムで使用される従来の親水性下塗り材(ゼラチン並びに他の天然及び合成親水性コロイド、並びに塩化ビニリデンコポリマーを含むビニルポリマー等)が含まれるが、これらに限定されない。
【0109】
基材の一つは、物理的グレイニング、電気化学的グレイニング及び化学的グレイニング、その後の陽極酸化処理を含む、当技術分野で公知の技術を用いてコーティング又は処理され得るアルミニウム支持体から構成される。アルミニウムシートは、機械的又は電気化学的にグレイニングされ、リン酸又は硫酸及び従来の手順を用いて陽極酸化処理される。
【0110】
場合による中間層は、例えば、シリケート、デキストリン、フッ化カルシウムジルコニウム、ヘキサフルオロケイ酸、リン酸塩/フッ化ナトリウム、ポリ(ビニルホスホン酸)(PVPA)、ビニルホスホン酸コポリマー、ポリ(アクリル酸)、若しくはアクリル酸コポリマーの溶液、又は英国特許第2,098,627号及び特開昭57-195697A号(両方ともHertingら)に記載された通りの縮合アリールスルホン酸のアルカリ塩によるアルミニウム支持体の処理によって形成され得る。グレイニング及び陽極酸化処理されたアルミニウム支持体は、公知の手順を用いて、ポリ(アクリル酸)で処理して、表面の親水性を改善させることができる。
【0111】
基材の厚さは、変化させることができるが、印刷からの磨耗に耐えるのに十分であり、印刷形体の周りに巻きつけるのに十分薄くあるべきである。一部の実施形態は、約100から約600μmの厚さを有する処理されたアルミニウム箔を含む。
【0112】
基材の裏側(非画像形成側)は、静電防止剤及び/又は滑り層若しくは艶消し層でコーティングして、画像形成性要素の取扱い及び「感触」を改善することができる。
【0113】
基材は、その上に適用される放射感受性組成物を有する円筒面であり、したがって、印刷機の一体部分であることもできる。このような画像形成された円筒の使用は、例えば、米国特許第5,713,287号(Gelbart)に記載されている。
【0114】
画像形成性層(及び放射感受性組成物)は典型的には、1種又は複数の放射吸収化合物も含む。これらの化合物は、約150から約1500nmの任意の適当なエネルギー形態(例えば、UV、可視、及びIR線)に感受性であることができるが、それは典型的には、赤外線に感受性であり、したがって、放射吸収化合物は、一般に約700から約1400nm、典型的には約750から約1250nmの放射を吸収する赤外線吸収化合物(「IR吸収化合物」)として知られている。画像形成性層は一般に、画像形成性要素における最外層である。
【0115】
適切なIR染料の例には、アゾ染料、スクアリリウム染料、クロコネート染料、トリアリールアミン染料、チアゾリウム染料、インドリウム染料、オキソノール染料、オキサゾリウム染料、シアニン染料、メロシアニン染料、フタロシアニン染料、インドシアニン染料、インドトリカルボシアニン染料、ヘミシアニン染料、ストレプトシアニン染料、オキサトリカルボシアニン染料、チオシアニン染料、チアトリカルボシアニン染料、クリプトシアニン染料、ナフタロシアニン染料、ポリアニリン染料、ポリピロール染料、ポリチオフェン染料、カルコゲノピリロアリーリデン及びビ(カルコゲノピリロ)-ポリメチン染料、オキシインドリジン染料、ピリリウム染料、ピラゾリンアゾ染料、オキサジン染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、キノンイミン染料、メチン染料、アリールメチン染料、ポリメチン染料、スクアリン染料、オキサゾール染料、クロコニン染料、ポルフィリン染料、及び前記染料のクラスの任意の置換形態又はイオン形態が含まれるが、これらに限定されない。適切な染料は、例えば、米国特許第4,973,572号(DeBoer)、米国特許第5,208,135号(Patelら)、米国特許第5,244,771号(Jandrue Sr.ら)、及び米国特許第5,401,618号(Chapmanら)、並びに欧州特許出願公開第0823327A1号(Nagasakaら)に記載されている。
【0116】
アニオン性発色団を有するシアニン染料も有用である。例えば、シアニン染料は、2個のヘテロ環式基を有する発色団を有し得る。別の実施形態において、シアニン染料は、約2個からのスルホン酸基、例えば、米国特許出願公開第2005/0130059号(Tao)に記載された通りの2個のスルホン酸基及び2個のインドレニン基等を有し得る。
【0117】
適切なシアニン染料の有用なクラスの一般的記述は、国際公開第2004/101280号(Munnellyら)の[0026]における式で示される。
【0118】
低分子量IR吸収染料に加えて、ポリマーに結合したIR染料部分を用いることができる。更に、IR染料カチオンを同様に用いることができ、すなわち、そのカチオンは、側鎖中にカルボキシ、スルホ、ホスホ、又はホスホノ基を含むポリマーとイオン的に相互作用する染料塩のIR吸収部分である。
【0119】
近赤外吸収シアニン染料も有用であり、例えば、米国特許第6,309,792号(Hauckら)、米国特許第6,264,920号(Achilefuら)、米国特許第6,153,356号(Uranoら)、及び米国特許第5,496,903号(Watanabeら)に記載されている。適切な染料は、従来の方法及び出発物質を用いて形成することができる又はAmerican Dye Source(カナダ国ケベック州ベウルフェ(Baie D’Urfe))及びFEW Chemicals(独国)を含む様々な商業的供給元から得ることができる。近赤外ダイオードレーザビーム用の他の有用な染料は、例えば、米国特許第4,973,572号(上記)に記載されている。
【0120】
有用なIR吸収化合物は、当技術分野で周知であるように、可溶化基で表面官能基化されているカーボンブラック等のカーボンブラックを含む顔料であることもできる。親水性の非イオン性ポリマーにグラフト化されているカーボンブラック、例えば、FX-GE-003(Nippon Shokubai製)、又はアニオン性基で表面官能基化されているカーボンブラック、例えば、CAB-O-JET(登録商標)200若しくはCAB-O-JET(登録商標)300(Cabot Corporation製)も有用である。他の有用な顔料には、ヘリオゲングリーン、ニグロシン塩基、酸化鉄(III)、酸化マンガン、プルシアンブルー、及びパリスブルーが含まれるが、これらに限定されない。顔料粒子のサイズは、画像形成性層の厚さ以下であるべきであり、好ましくは顔料粒子のサイズは、画像形成性層の厚さの半分未満である。
【0121】
画像形成性要素において、放射吸収化合物は、一般に約0.1から約30重量%の乾燥範囲で存在し、又はそれは、約0.5から約15重量%の量で存在するIR染料である。この目的に必要な特定の量は、使用される具体的な化合物に応じて、当業者に容易に明らかである。
【0122】
或いは、放射吸収化合物は、画像形成性層と熱的に接触している別個の層に含めてもよい。したがって、画像形成の間に、別個の層における放射吸収化合物の作用は、該化合物が元々含まれていない画像形成性層に移すことができる。
【0123】
画像形成性層(及び放射感受性組成物)は、着色剤染料又はUV若しくは可視光感受性成分である1種若しくは複数のさらなる化合物も含み得る。アルカリ性現像液に可溶性である着色剤染料が有用である。着色剤染料に有用な極性基には、エーテル基、アミン基、アゾ基、ニトロ基、フェロセニウム基、スルホキシド基、スルホン基、ジアゾ基、ジアゾニウム基、ケト基、スルホン酸エステル基、リン酸エステル基、トリアリールメタン基、オニウム基(スルホニウム、ヨードニウム、及びホスホニウム基等)、窒素原子がヘテロ環式環に組み込まれている基、及び正に帯電した原子を含む基(第四級化アンモニウム基等)が含まれるが、これらに限定されない。着色剤染料として有用な正に帯電した窒素原子を含む化合物には、例えば、テトラアルキルアンモニウム化合物及び第四級化ヘテロ環式化合物、例えば、キノリニウム化合物、ベンゾチアゾリウム化合物、ピリジニウム化合物、及びイミダゾリウム化合物が含まれる。さらなる詳細及び溶解抑制剤として有用な代表的な化合物は、例えば、米国特許第6,294,311号(上記)に記載されている。有用な着色剤染料には、トリアリールメタン染料、例えば、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン、ブリリアントグリーン、ビクトリアブルーB、ビクトリアブルーR、及びビクトリアピュアブルーBO、BASONYL(登録商標)バイオレット610及びD11(PCAS、仏国ロンジュモー(Longjumeau))が含まれる。これらの化合物は、現像された画像形成性要素中の非露光(非画像形成)領域と露光(画像形成)領域とを区別する対比染料として作用し得る。
【0124】
着色剤染料が画像形成性層に存在する場合、その量は広範に変わり得るが、一般には、約0.5重量%から約30重量%の量で存在する。
【0125】
画像形成性層(及び放射感受性組成物)は、分散剤、保湿剤、殺生物剤、可塑剤、コーティング適性又は他の特性のための界面活性剤、粘度上昇剤、充填剤及び増量剤、pH調整剤、乾燥剤、消泡剤、保存剤、酸化防止剤、現像補助剤、レオロジー変性剤若しくはこれらの組合せ、又は平版印刷分野で一般的に使用される任意の他の追加物を含む種々の添加剤を従来の量で更に含むことができる。
【0126】
ポジ型画像形成性要素は、従来のコーティング法又はラミネーション法を用いて、基材(及びその上に設けられた任意の他の親水性層)の表面の上に画像形成性層(放射感受性組成物)配合物を適用することによって調製され得る。したがって、配合物は、所望の成分を適当なコーティング溶剤に分散又は溶解させることによって適用することができ、得られた配合物は、適当な装置及び手順、例えば、スピンコーティング、ナイフコーティング、グラビアコーティング、ダイコーティング、スロットコーティング、バーコーティング、ワイヤロッドコーティング、ローラーコーティング又は押出ホッパーコーティングを用いて基材に適用される。配合物は、適当な支持体(例えば、印刷機械上印刷シリンダー)上にスプレーすることによっても適用され得る。
【0127】
画像形成性層のコーティング重量は、約0.5から約3.5g/m2、典型的には約1から約3g/m2である。
【0128】
層配合物をコーティングするために使用される溶剤の選択は、配合物中のポリマーバインダー及び他のポリマー材料並びに非ポリマー成分の性質に依存する。一般に、画像形成性層配合物は、当技術分野で周知の条件及び技術を用いて、アセトン、メチルエチルケトン、又は別のケトン、テトラヒドロフラン、1-メトキシ-2-プロパノール、N-メチルピロリドン、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、γ-ブチロラクトン、及びこれらの混合物からコーティングされる。
【0129】
中間の乾燥工程は、他の配合物をコーティングする前に溶剤を除去するために、様々な層配合物の適用の間で用いられ得る。乾燥工程はまた、様々な層の混合を防止する際に役立ち得る。
【0130】
ポジ型画像形成性要素を調製する代表的な方法は、以下に実施例で説明される。
【0131】
画像形成性層配合物を基材上で乾燥させた(すなわち、コーティングは、自立性であり、指触乾燥状態である)後、要素は、約40から約90℃(典型的には約50から約70℃)で少なくとも4時間、好ましくは少なくとも20時間、又は少なくとも24時間加熱処理され得る。最大加熱処理時間は数日であり得るが、加熱処理のための最適な時間及び温度は、日常の実験によって容易に決定され得る。この加熱処理は、「調整」工程としても知られ得る。このような処理は、例えば、欧州特許第823,327号(Nagaskaら)及び欧州特許第1,024,958号(McCulloughら)に記載されている。
【0132】
熱処理の間に、画像形成性要素は、原版からの水分除去に対して有効なバリアを示す水不透過性シート材料中に包まれ又は入れられることも望ましい場合がある。このシート材料は、画像形成性要素(又はそのスタック)の形状にぴったり合うように十分に柔軟性であり、一般に画像形成性要素(又はそのスタック)と密接に接触している。例えば、水不透過性シート材料は、画像形成性要素又はそのスタックの端部の周囲に密封される。このような水不透過性シート材料は、画像形成性要素又はそのスタックの端部の周囲に密封されるポリマーフィルム又は金属箔を含む。この方法のより詳細は、米国特許第7,175,969号(Rayら)に提供されている。
【0133】
画像形成及び現像
本発明の画像形成性要素は、限定されるものではないが、印刷版原版、印刷シリンダー、印刷スリーブ及び印刷テープ(可撓性印刷ウェブを含む)を含む任意の有用な形態を有し得る。例えば、画像形成性部材は、平版印刷版を形成するための平版印刷版原版である。
【0134】
印刷版原版は、適切な基材上に配置された必要な画像形成性層を有する任意の有用な大きさ及び形状(例えば、正方形又は長方形)のものであり得る。印刷シリンダー及びスリーブは、円筒形態で基材及び画像形成性層を有する輪転印刷部材として知られている。使用され得る中空又は中実の金属コアは、印刷スリーブ用の基材として使用され得る。
【0135】
使用中に、画像形成性要素は、放射感受性組成物中に存在する放射吸収化合物に応じて、約150から約1500nmの波長の放射、例えば、UV線、可視光線、又は赤外線の適切な供給源に曝露される。大部分の実施形態について、画像形成は、約700から約1400nmの波長の赤外線レーザを用いて行われる。画像形成部材を露光するために使用されるレーザは、ダイオードレーザシステムの信頼性及び維持管理の少なさのために、ダイオードレーザであり得るが、他のレーザ、例えば、気体又は固体レーザも使用され得る。レーザ画像形成のための出力、強度及び露光時間の組合せは、当業者に容易に明らかである。目下、市販のイメージセッターで使用される高性能レーザ又はレーザダイオードは、約750から約1250nmの範囲の1つ又は複数の波長の赤外線を放出する。
【0136】
画像形成装置は、プレートセッターとしてだけ機能する又は平版印刷機中に直接組み込むことができる。後者の場合、印刷は、画像形成直後に始まり、それにより印刷機セットアップ時間を相当減少させることができる。画像形成装置は、画像形成性部材をドラム型の内側又は外側の円筒面に取り付けて、平床型記録器として又はドラム記録器として構成され得る。有用な画像形成装置は、約830nmの波長の近赤外線を放出するレーザダイオードを備える、Eastman Kodak Company(カナダ国ブリティッシュコロンビア州バーナビー(Burnaby))から入手できるKodak Trendsetterイメージセッターのモデルとして入手できる。他の適切な画像形成供給源には、1064nmの波長で作動するCrescent 42T Platesetter(Gerber Scientific、Chicago、ILから入手できる)及びScreen PlateRite 4300シリーズ又は8600シリーズのプレートセッター(Screen、Chicago、ILから入手できる)が含まれる。放射のさらなる有用な供給源には、要素が印刷版シリンダーに付着している間に、要素を画像形成するために使用され得るダイレクト画像形成印刷機が含まれる。適切なダイレクト画像形成印刷機の例には、Heidelberg SM74-DI印刷機(オハイオ州デイトン所在のHeidelbergから入手できる)が含まれる。
【0137】
IR画像形成スピードは、約30から約1500mJ/cm2又は典型的には約40から約300mJ/cm2であり得る。
【0138】
レーザ画像形成が通常実施されるが、画像形成は、像様方式で熱エネルギーを提供する任意の他の手段で提供され得る。例えば、画像形成は、例えば、米国特許第5,488,025号(Martinら)に記載された、「感熱印刷」として知られる感熱ヘッド(感熱印刷ヘッド)を用いて行われ得る。感熱プリントヘッドは市販されている(例えば、Fujitsu Thermal Head FTP-040 MCS001及びTDK Thermal Head F415 HH7-1089として)。
【0139】
画像形成は一般に、ダイレクトデジタル画像形成を用いて行われる。画像信号は、コンピュータ上のビットマップデータファイルとして記憶される。このようなデータファイルは、ラスター画像プロセッサ(RIP)又は他の適切な手段によって生成され得る。ビットマップは、カラーの色相、並びにスクリーンの頻度及び角度を規定するために構成される。
【0140】
画像形成性要素の画像形成により、画像形成(露光)領域と非画像形成(非露光)領域とからなる潜像を含む画像形成された要素が生成する。画像形成された要素を適切な現像液で現像することにより、主に画像形成性層及びその下側の任意の層の露光領域のみが除去され、基材の親水性表面が露出する。したがって、このような画像形成性要素は、「ポジ型」(例えば、「ポジ型」平版印刷版原版)である。
【0141】
したがって、現像は、画像形成性層の画像形成(露光)領域を除去するために十分であるが、画像形成性層の非画像形成(非露光)領域を除去するためには十分長くない時間行われる。画像形成性層の画像形成(露光)領域は、これらが、画像形成性層の非画像形成(非露光)領域よりも容易に現像液内で除去され、溶解し、又は分散するので、現像液中「可溶性」又は「除去可能」であると記述される。したがって、「可溶性」という用語は、「分散性」も意味する。
【0142】
画像形成された要素は一般に、従来の処理条件を用いて現像される。水性アルカリ性現像液及び有機溶剤含有現像液の両方が使用され得る。本発明の方法の大部分の実施形態において、ポジ型の画像形成された要素を処理するために一般的に使用される比較的高いpHの水性アルカリ性現像液が使用される。
【0143】
このような水性アルカリ性現像液は、一般に少なくとも9、典型的には少なくとも11のpHを有する。有用な水性アルカリ性現像液には、3000ディベロッパー、9000ディベロッパー、GoldStarディベロッパー、GoldStar Plusディベロッパー、GoldStar Premiumディベロッパー、GREENSTARディベロッパー、ThermalProディベロッパー、PROTHERMディベロッパー、MX1813ディベロッパー、及びMX1710ディベロッパー(すべてEastman Kodak Companyから入手できる)、並びにFuji HDP7ディベロッパー(Fuji Photo)及びEnergy CTPディベロッパー(Agfa)が含まれる。これらの組成物にはまた一般に、界面活性剤、キレート剤(エチレンジアミン四酢酸の塩等)、及び種々のアルカリ性剤(無機メタケイ酸塩、有機メタケイ酸塩、水酸化物、及び炭酸水素塩等)が含まれる。
【0144】
ネガ型の画像形成された要素を処理するために一般に使用される現像液を使用することも可能であり得る。このような現像液は一般に、水と混和性である1種又は複数の有機溶剤を含有する単相溶液である。有用な有機溶剤は、フェノールとエチレンオキシド及びプロピレンオキシドとの反応生成物[エチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)等]、ベンジルアルコール、6個以下の炭素原子を有する酸とエチレングリコールのエステル及び6個以下の炭素原子を有する酸とプロピレングリコールのエステル、並びにエチレングリコール、ジエチレングリコール、及びプロピレングリコールのエーテル(6個以下の炭素原子を有するアルキル基を有する)、例えば、メトキシエタノール及び2-ブトキシエタノールである。有機溶剤は一般に、全現像液重量に基づいて、約0.5から約15%の量で存在する。このような現像液は、pHにおいて中性、アルカリ性、又はわずかに酸性であり得る。これらの現像液の大部分は、pHにおいてアルカリ性、例えば、最大11である。
【0145】
代表的な有機溶剤含有現像液には、ND-1ディベロッパー、955ディベロッパー、「ツーインワン」ディベロッパー、956ディベロッパー、及び980ディベロッパー(Eastman Kodak Companyから入手できる)、HDN-1ディベロッパー(Fujiから入手できる)、並びにEN 232ディベロッパー(Agfaから入手できる)が含まれる。
【0146】
一般に、現像液は、現像液を収容するアプリケータで、画像形成された要素を擦る又は拭うことによって、画像形成された要素に適用される。或いは、画像形成された要素は、現像液でブラシをかけ得る、又は現像液は、露光領域を除去するのに十分な力で該要素にスプレーすることによって適用され得る。更にまた、画像形成された要素は、現像液中に浸漬させ得る。すべての場合に、現像された画像は、印刷室化学薬品に優れた耐性を有する平版印刷版において生成する。現像は、適当なローラ、ブラシ、槽、及び必要に応じて、溶液の供給、廃棄、又は再循環のための配管系統を収容する適切な装置で行われ得る。
【0147】
現像に続いて、画像形成された要素は、水ですすぎ洗いされ、適当な方式で乾燥させ得る。乾燥した要素は、従来のゴム引き溶液(好ましくは、アラビアゴム)で処理することもできる。
【0148】
画像形成され、現像された要素は、得られた画像形成された要素のランレングスを増加させるために行われ得る露光後焼付け操作において焼付けすることもできる。焼付けは、例えば、約220℃から約260℃で約1から約10分間、又は約120℃で約30分間行われ得る。
【0149】
印刷は、平版インキ及び湿し水を画像形成された要素の印刷表面に適用することによって行われ得る。インキは、画像形成性層の非画像形成(非露光又は非除去)領域で吸収され、湿し水は、画像形成及び現像処理で露出された基材の親水性表面で吸収される。次いで、インクは、適当な受容材料(布、紙、金属、ガラス、又はプラスチック等)に転写され、その上に画像の所望の印象を提供する。必要に応じて、インクを画像形成された部材から受容材料に転写するために、中間の「ブランケット」ローラを用いることができる。画像形成された部材は、必要に応じて、従来の清浄手段及び化学薬品を用いて、印象間を清浄にすることができる。
【0150】
本発明は、少なくとも以下の実施形態を提供する:
1.水不溶性ポリマー性バインダー及び放射吸収化合物を含む画像形成性層を基材上に有する基材を備えるポジ型画像形成性要素であって、
該ポリマーバインダーが、
a)ペンダントヒドロキシアリール基を含むビニルアセタール繰返し単位、及び、
b)環状イミド基で置換されているヒドロキシアリールエステル基を含む繰返し単位
を含み、
該ペンダントヒドロキシアリール基を含むビニルアセタール繰返し単位及び、環状イミド基で置換されているヒドロキシアリールエステル基を含む繰返し単位が、独立して、該ポリマーバインダー中の全繰返し単位に基づいて、それぞれ、少なくとも10モル%及び25モル%の量で該ポリマーバインダー中に存在するポジ型画像形成性要素。
【0151】
2.該ポリマーバインダーが、以下の構造(Ia)及び(Ib)のそれぞれで表される繰返し単位:
【0152】
【化11】

【0153】
(式中、該ポリマーバインダーの全繰返し単位に基づいて、該構造(Ia)の繰返し単位は、約10から約35モル%で存在し、該構造(Ib)の繰返し単位は、約25から約60モル%で存在し、Rは、置換又は非置換のヒドロキシアリール基であり、R2は、環状イミド基で置換されている置換又は非置換のヒドロキシアリール基である)を含む、実施形態1に記載の要素。
【0154】
3.Rが、置換又は非置換のヒドロキシフェニル基であり、R2が、環状イミド基で置換されているヒドロキシフェニル基である、実施形態2に記載の要素。
【0155】
4.該ポリマーバインダーが、該ポリマーバインダー中の全繰返し単位に基づいて、約25から約60モル%の以下の構造(Ic)で表される繰返し単位:
【0156】
【化12】

【0157】
並びに場合によって、最大25モル%の以下の構造(Id)で表される繰返し単位、場合によって、最大10モル%の以下の構造(Ie)で表される繰返し単位、及び場合によって、最大20モル%の以下の構造(If)で表される繰返し単位:
【0158】
【化13】

【0159】
(式中、R1は、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基であり、R3は、-Ox-(CH2)y-COOH基(ここで、xは、0又は1であり、yは、0、1、又は2である)で置換されているアリール基であり、R4は、置換又は非置換のアリール基である)を更に含む、実施形態1又は2に記載の要素。
【0160】
5.該ポリマーバインダー中の全繰返し単位に基づいて、該構造(Ia)で表される繰返し単位が、約15から約25モル%で存在し、該構造(Ib)で表される繰返し単位が、約25から約45モル%で存在する、実施形態2から4のいずれかに記載の要素。
【0161】
6.該ポリマーバインダーが、構造(Ia)から(If)のそれぞれで表される繰返し単位:
【0162】
【化14】


【0163】
(式中、Rは、ヒドロキシフェニル基であり、R1は、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基であり、R2は、環状イミド基で置換されているヒドロキシフェニル基であり、R3は、-Ox-(CH2)y-COOH基(ここで、xは、0又は1であり、yは、0、1、又は2である)で置換されているアリール基であり、R4は、置換又は非置換のアリール基であり、該ポリマーバインダー中の全繰返し単位に基づいて、kは、約15から約25モル%であり、lは、約25から約45モル%であり、mは、約30から約55モル%であり、nは、0から約15モル%であり、oは、0から約8モル%であり、pは、0から約10モル%である)を含む、実施形態1から5のいずれかに記載の要素。
【0164】
7.該ポリマーバインダーが、画像形成性層の全乾燥重量に基づいて、約40から約95重量%で存在し、該放射吸収化合物が、それが位置している該層の全乾燥重量に基づいて、約0.1から約30重量%で存在する赤外線吸収化合物である、実施形態1から6のいずれかに記載の要素。
【0165】
8.該画像形成性層中に着色剤染料又はUV若しくは可視光感受性成分、或いは両方を更に含む、実施形態1から7のいずれかに記載の要素。
【0166】
9.現像性向上化合物を更に含む、実施形態1から8のいずれかに記載の要素。
【0167】
10.該ポリマーバインダーが、構造(Ia)から(Id)のそれぞれで表される繰返し単位:
【0168】
【化15】

【0169】
(式中、Rは、置換又は非置換のヒドロキシフェニル基であり、R1は、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基であり、R2は、環状イミド基で置換されているヒドロキシフェニル基である)
を含む、実施形態1から5及び7から9のいずれかに記載の要素。
【0170】
11.該ポリマーバインダーが、構造(Ia)から(Ie)のそれぞれで表される繰返し単位:
【0171】
【化16】


【0172】
(式中、Rは、置換又は非置換のヒドロキシフェニル基であり、R1は、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基であり、R2は、環状イミド基で置換されているヒドロキシフェニル基であり、R3は、-Ox-(CH2)y-COOH基(ここで、xは、0又は1であり、yは、0、1、又は2である)で置換されているアリール基である)
を含む、実施形態1から5及び7から9のいずれかに記載の要素。
【0173】
12.該ポリマーバインダーが、構造(Ia)から(If)のそれぞれで表される繰返し単位:
【0174】
【化17】


【0175】
(式中、Rは、置換又は非置換のヒドロキシフェニル基であり、R1は、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基であり、R2は、環状イミド基で置換されているヒドロキシフェニル基であり、R3は、-Ox-(CH2)y-COOH基(ここで、xは、0又は1であり、yは、0、1、又は2である)で置換されているアリール基であり、R4は、置換又は非置換のアリール基である)
を含む、実施形態1から9のいずれかに記載の要素。
【0176】
13.A)実施形態1から12のいずれかに記載のポジ型画像形成性要素を画像様露光して、露光領域及び非露光領域を提供する段階、並びに
B)該画像様露光された要素を現像して、主に露光領域のみを除去する段階
を含む、画像形成された要素を製造する方法。
【0177】
14.該画像形成性要素が、約750から約1250nmの波長で画像形成されて、アルミニウム含有親水性基材を有する平版印刷版を提供する、実施形態13に記載の方法。
【0178】
以下の実施例は、本発明の実施を説明する手段として提示されるが、本発明はそれにより限定されることを意図しない。
【実施例】
【0179】
以下の成分を、実施例の調製及び使用において使用した。特に断らない限り、該成分は、Aldrich Chemical Company(ウィスコンシン州、ミルウォーキー)から入手できる:
ABAは、4-アミノ安息香酸を表す。
BF-03は、Chang Chun Petrochemical Co. Ltd. (台湾国)から入手した、加水分解度98% (Mw=15,000)のポリ(ビニルアルコール)を表す。
BLOは、γ-ブチロラクトンを表す。
BPA 1100は、Georgia Pacificから入手したレゾール樹脂である。
クリスタルバイオレット(C.I.42555)は、Basic Violet 3(λmax=588nm)である。
DBUは、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン(98%)を表す。
DHBAは、2,4-ジヒドロキシ安息香酸を表す。
ジオキソランは、1,3-ジオキソランである。
DMABAは、4-(ジメチルアミノ)安息香酸を表す。
DMSOは、ジメチルスルホキシドを表す。
t-BuOKは、カリウムt-ブトキシドを表す。
Poval 103は、Kuraray Corp.から入手した加水分解度98%ポリ(ビニルアルコール)(Mw=15,000)である。
LB9900は、Hexion AGから入手したレゾール樹脂である。
マラカイトグリーンは、Basic Green 4である。
MEKは、メチルエチルケトンを表す。
MSAは、メタンスルホン酸(99%)を表す。
NMPは、N-メチルピロリドンを表す。
Polyfox(登録商標)PF 652は、界面活性剤(Omnova)である。
PMは、LyondellBasell Industries(オランダ国)製のArcosolve(登録商標)PMとして入手し得る1-メトキシ-2-プロパノールを表す。
RX-04は、ポリ(スチレン-co-無水マレイン酸)樹脂である。
S0094は、FEW Chemicals(仏国)から入手した赤外線吸収染料(λmax=813nm)である。
サリチルサリチル酸は、Acros Organics(Geel、ベルギー国)から入手した。
Sudan Black Bは、中性ジアゾ染料(C.U.26150)である。
RAR 62は、アシロイルアミド、アクリロニトリル、及びフェニルマレイミド由来のコポリマーを表す。
TEAは、トリエタノールアミンを表す。
TMOFは、トリメチルオルトホルメートを表す。
ビクトリアブルーRは、トリアリールメタン染料(Basic Blue 11、C.I.44040)である。
【0180】
4-フタルイミドサリチル酸メチルエステル(化合物I)の調製:
【0181】
化合物I
【化18】

【0182】
200グラムの(4-アミノサリチル酸のメチルエステル)及び183gの無水フタル酸を、機械式撹拌機を備えた2リットルの丸底ガラス製容器に入れた。次いで、1.0kgの酢酸をこの反応容器に入れた。混合物を撹拌下6時間加熱還流させた。次いで、加熱を止め、反応混合物を室温に冷却した。沈殿生成物をろ別し、フィルター上で水及びアルコールで洗浄し、乾燥させた。化合物Iの収率は、90%であった。融点218〜219℃。
【0183】
ポリマーAの調製:
蒸留カラム、機械式撹拌機及び温度計を備えた丸底反応容器において、BF-03(50g)を800gのDMSO中に高温(80〜90℃)で溶解させた。次いで、この溶液に、250gのDMSO中99gの化合物Iを添加し(70〜80℃で)、化合物Iが溶解したとき、この反応混合物に19gのt-BuOKを撹拌下で添加した。真空をかけて、エステル交換反応が真空下(生成したt-ブタノール及びメタノールの排出)、70〜80℃で20〜24時間進行した。次いで、反応混合物を室温に冷却して、23gのメタンスルホン酸で中和した。アセタール化のために、メタノール中サリチル酸アルデヒドのジメチルアセタールを用いた(このアセタールは、50gのメタノール中30.6gのサリチル酸アルデヒドを29.3gのTMOFと少量の酸性触媒-1.5gのメタンスルホン酸の存在下で混合することによって生成させた)。このアセタールを反応混合物に50℃で添加して、メタノールを真空中蒸留除去した。蒸留後、反応混合物をTEAでpH6〜7に中和し、次いで、10容量の水中に沈殿させた。沈殿ポリマーをろ別し、水、水:エタノール混合物、最後にエタノールで洗浄した。ポリマーを真空中60℃で24時間乾燥させた。収量は約145gであった[1H NMRによってK=27モル%、l=32モル%。DMSO-d6中ポリマーA(及び内部標準)の1H NMRスペクトルを図1に示す]。
【0184】
ポリマーBの調製:
115.5gの化合物I及び34.5gのサリチル酸アルデヒドを用いた以外は、ポリマーAを作製するために記載した通りに、ポリマーBを調製した。収量は約156gであった(1H NMRによって、k=25モル%、l=36モル%)。
【0185】
ポリマーCの調製:
83gの化合物I及び41.8gのサリチル酸アルデヒドを用いた以外は、ポリマーAを作製するために記載した通りに、ポリマーCを調製した。収量は約148.5gであった(1H NMRによって、k=35モル%、l=27モル%)。
【0186】
ポリマーDの調製:
メタノール中サリチル酸アルデヒドのジメチルアセタールの添加に代えて、3.95gの2-ホルミル安息香酸及び32.6gのサリチル酸アルデヒドを反応混合物に添加し、続いて100gのアニソールを添加し、水:アニソール共沸混合物を蒸留除去した以外は、ポリマーAを作製するために記載した通りに、ポリマーDを調製した。ポリマーDを、ポリマーAについて行った通りに分離した。収量は約146gであった(1H NMRによって、k=23モル%、l=32モル%、o=5モル%)。
【0187】
ポリマーEの調製:
メタノール中サリチル酸アルデヒドのジメチルアセタールの添加に代えて、3.95gの4-カルボキシベンズアルデヒド及び32.6gのサリチル酸アルデヒドを反応混合物に添加し、続いて100gのアニソールを添加した以外は、ポリマーAを作製するために記載した通りに、ポリマーEを調製した。水:アニソール共沸混合物を蒸留除去した。ポリマーEを、ポリマーAについて行った通りに分離した。収量は約145gであった(1H NMRによって、k=23モル%、l=32モル%、o=5モル%)。
【0188】
ポリマーFの調製:
メタノール中サリチル酸アルデヒドのジメチルアセタールの添加に代えて、5gの2-ホルミルフェノキシ酢酸及び32.6gのサリチル酸アルデヒドを反応混合物に添加し、続いて100gのアニソールを添加した以外は、ポリマーAを作製するために記載した通りに、ポリマーFを調製した。水:アニソール共沸混合物を蒸留除去した。ポリマーFを、ポリマーAについて行った通りに分離した。収量は約146gであった(1H NMRによって、k=23モル%、l=32モル%、o=6モル%)。
【0189】
ポリマーGの調製:
蒸留カラム、機械式撹拌機及び温度計を備えた0.5リットル丸底反応容器において、ポリ(ビニルアルコール)(15.5g、Kuraray Poval 103)を190gのDMSO中に高温(80〜90℃)で溶解させた。PVAの溶解後、この溶液を50℃に冷却し、5gのDMSOで希釈した0.4gのメタンスルホン酸を溶液に添加し、続いて、5gのDMSOで希釈した3.5gのTMOFを添加した。真空をかけて、メタノール及びギ酸メチルを排気した。蒸留の間に、反応混合物の温度を80℃に上昇させ、真空を下げて、反応混合物に34.76gの化合物Iを添加し、続いて15gのDMSOで希釈した7.3gのDBUを添加した。次いで、真空をかけて、反応混合物の温度を90〜95℃に上昇させた。反応混合物の非常にわずかの沸騰が見られ、反応混合物を90〜95℃で更に5から6時間撹拌した。反応混合物を60℃に冷却し、真空を下げて、60gのDMSO中に希釈した4.5gのMSAを反応混合物に添加した。次いで、8.16gのサリチル酸アルデヒド及び7.2gのTMOFを添加し、20gのDMSOで希釈した。反応混合物を70〜80℃で更に2時間撹拌し、次いで、それを40℃に冷却し、50gのDMSAで希釈した2.5gのTEAを添加した。中和した反応混合物を25〜30℃に冷却し、10容量の水中で沈殿させた。得られたポリマーを、フィルター上で2回、脱イオン水、次いで、エタノール、最後に水で洗浄した。ポリマーを真空オーブン中で乾燥させて、49gの収量を得た(1H NMRによって、k=22モル%、l=37モル%)。
【0190】
ポリマーHの調製:
DMSO中で反応を行うことに代えて、1:1の比のDMSO及びBLOの混合物(90gのDMSO及び90gのBLO)を用いて、他の試薬すべてをBLOに希釈して(DMSOに希釈したことに代えて)添加した以外は、ポリマーGを作製するために記載した通りに、ポリマーHを調製した。エステル交換反応の時間は、6時間に代えて3時間であった。ポリマーHの収量は50.5gであった。1H NMRによって、ポリマーHは、ポリマーGのものと同様の構造を有する。
【0191】
ポリマーIの調製:
10gのポリマーHを、70gの1,3-ジオキソランに室温で溶解させた。この溶液を15℃に冷却し、10gの1,3-ジオキソラン中に希釈した2.7gのp-トシルイソシアネートを反応混合物にゆっくりと添加した。反応混合物を室温で更に2時間撹拌し、次いで、ポリマーを1リットルの脱イオン水中に沈殿させた。沈殿ポリマーをろ過し、フィルター上で水、次いでエタノールで洗浄した。ポリマーを真空オーブン中60℃で一晩乾燥させて、収量11.7gのポリマーIを得た(1H NMRによって、k=22モル%、l=37モル%、p=6モル%)。
【0192】
ポリマーJの調製:
TEAを室温に冷却した反応混合物へ添加する(MSAの中和のために)前に、13.2gのp-トシルイソシアネートを反応混合物にゆっくり添加し、その混合物を室温で更に2時間撹拌した以外は、ポリマーHを作製するために記載した通りに、ポリマーJを調製した。ポリマーを水中に沈殿させ、フィルター上で水及びアルコールで洗浄し、真空オーブン中60℃で一晩乾燥させた。収量は56gであった(1H NMRによって、k=22モル%、l=37モル%、p=9モル%)。
【0193】
(発明例1)
本発明の画像形成性要素を、以下の仕方で調製した。放射感受性組成物は、以下の成分を用いて調製した:
ポリマーA 9.02g
LB9900(PM中49%) 0.136g
マラカイトグリーンシュウ酸塩 0.024g
S0094IR染料 0.030g
スダンブラックB 0.024g
DHBA:サリチルサリチル酸(1:1重量比) 0.196g
Polyfox(登録商標)PF652(PM中10%) 0.036g
BLO 3.00g
MEK 4.50g
PM 7.32g
【0194】
この組成物をろ過し、慣用法の手段でリン酸ナトリウム及びフッ化ナトリウムの水溶液を用いて処理を施した、電気化学的に粗くして、陽極酸化処理したアルミニウム基材に適用し、得られた画像形成性層コーティングをGlunz&Jensen「Unigraph Quartz」オーブン中130℃で30秒間乾燥させた。画像形成性層の乾燥コーティング重量は約1.5g/m2であった。
【0195】
得られた画像形成性要素を、間紙を用いて60℃及び30%RHで48時間調整した。次いで、それを、Kodak(登録商標)Lotem 400 Quantumイメージャー上で60mJ/cm2から180mJ/cm2のエネルギーの範囲で露光し、3%の水酸化カリウム溶液を用いてGlunz&Jensen「InterPlater 85HD」プロセッサ中23℃で30秒間現像した。水で洗浄後、得られた印刷版を、感度(クリアリングポイント(Clearing Point):露光領域が所与の温度及び時間で現像液により完全に除去される最低画像形成エネルギー、リニアリティポイント:200lpiスクリーンで50%ドットが50%±0.2%ドットとして再生されるエネルギー)、非画像形成(非露光)領域中のシアン密度減少(CDL)について評価した。結果を以下のTable I(表1)及びII(表2)に示す。
【0196】
(発明例2)
本発明の別の画像形成性要素を、以下の成分を有する放射感受性組成物を用いて及び発明例1の手順に従って調製した:
ポリマーB 0.902g
LB9900(PM中49%) 0.290g
クリスタルバイオレット 0.019g
S0094IR染料 0.030g
マラカイトグリーンシュウ酸塩 0.009g
DHBA 0.192g
スダンブラックB 0.024g
Polyfox(登録商標)PF652(PM中10%) 0.036g
MEK 4.54g
PM 5.11g
BLO 3.64g
ジオキソラン 4.54g
【0197】
この画像形成性要素を用いて得た結果を、以下のTable I(表1)及びII(表2)に示す。
【0198】
(発明例3)
本発明の別の画像形成性要素を、以下の成分を有する放射感受性組成物を用いて及び発明例1の手順に従って調製した:
ポリマーC 0.848g
LB9900(PM中49%) 0.193g
赤外線染料S0094 0.030g
クリスタルバイオレット 0.024g
スダンブラックB 0.024g
DHBA 0.167g
Polyfox(登録商標)PF652(PM中10%) 0.036g
MEK 3.85g
PM 4.38g
BLO 3.08g
ジオキソラン 3.85g
【0199】
この画像形成性要素を用いて得た結果を、以下のTable I(表1)及びII(表2)に示す。
【0200】
(発明例4)
本発明の別の画像形成性要素を、以下の成分を有する放射感受性組成物を用いて及び発明例1の手順に従って調製した:
ポリマーD 0.902g
LB9900(PM中49%) 0.118g
S0094IR染料 0.030g
スダンブラックB 0.012g
クリスタルバイオレット 0.024g
2,4-ジヒドロキシ安息香酸 0.095g
Polyfox(登録商標)PF652(PM中10%) 0.036g
BLO 2.73g
ジオキソラン 3.42g
PM 3.94g
MEK 3.42g
【0201】
この画像形成性要素を用いて得た結果を、以下のTable I(表1)及びII(表2)に示す。
【0202】
(発明例5)
本発明の別の画像形成性要素を、以下の成分を有する放射感受性組成物を用いて及び発明例1の手順に従って調製した:
ポリマーE 0.902g
LB9900(PM中49%) 0.122g
S0094IR染料 0.030g
クリスタルバイオレット 0.024g
スダンブラックB 0.013g
2,4-ジヒドロキシ安息香酸 0.165g
Polyfox(登録商標)PF652(PM中10%) 0.036g
BLO 2.93g
ジオキソラン 3.66g
PM 4.22g
MEK 3.66g
【0203】
この画像形成性要素を用いて得た結果を、以下のTable I(表1)及びII(表2)に示す。
【0204】
(発明例6)
本発明の別の画像形成性要素を、以下の成分を有する放射感受性組成物を用いて及び発明例1の手順に従って調製した:
ポリマーF 0.902g
LB9900(PM中49%) 0.122g
S0094IR染料 0.030g
クリスタルバイオレット 0.024g
スダンブラックB 0.012g
ABA 0.136g
Polyfox(登録商標)PF652(PM中10%) 0.036g
BLO 2.85g
ジオキソラン 3.56g
PM 4.11g
MEK 3.56g
【0205】
この画像形成性要素を用いて得た結果を、以下のTable I(表1)及びII(表2)に示す。
【0206】
(発明例7)
本発明の別の画像形成性要素を、以下の成分を有する放射感受性組成物を用いて及び発明例1の手順に従って調製した:
ポリマーB 0.902g
BPA(PM中23%) 0.163g
RX04 0.041g
S0094IR染料 0.030g
ビクトリアブルーR 0.014g
スダンブラックB 0.027g
ABA 0.177g
Polyfox(登録商標)PF652(PM中10%) 0.036g
BLO 3.36g
ジオキソラン 4.20g
PM 4.47g
MEK 3.36g
【0207】
この画像形成性要素を用いて得た結果を、以下のTable I(表1)及びII(表2)に示す。
【0208】
(発明例8)
本発明の別の画像形成性要素を、以下の成分を有する放射感受性組成物を用いて及び発明例1の手順に従って調製した:
ポリマーG 0.902g
BPA(PM中23%) 0.163g
RX04 0.041g
S0094IR染料 0.030g
ビクトリアブルーR 0.014g
スダンブラックB 0.027g
ABA 0.177g
Polyfox(登録商標)PF652(PM中10%) 0.036g
BLO 3.36g
ジオキソラン 4.20g
PM 4.47g
MEK 4.20g
【0209】
この画像形成性要素を用いて得た結果を、以下のTable I(表1)及びII(表2)に示す。
【0210】
(発明例9)
今度は以下のコーティング溶液を用いて及び60℃及びRH29%で2日間間紙によって調整しなかった以外は、発明例1の通りに別の画像形成性要素を調製した。
ポリマーG 0.902g
BPA(PM中23%) 0.078g
RX04 0.078g
S0094IR染料 0.030g
ビクトリアブルーR 0.014g
スダンブラックB 0.027g
ABA 0.177g
Polyfox(登録商標)PF652(PM中10%) 0.036g
BLO 3.19g
ジオキソラン 3.99g
PM 4.50g
MEK 3.99g
【0211】
この画像形成性要素を用いて得た結果を、以下のTable I(表1)及びII(表2)に示す。
【0212】
(発明例10)
本発明の別の画像形成性要素を、以下の成分を有する放射感受性組成物を用いて及び発明例1の手順に従って調製した:
ポリマーG 0.902g
THPE 0.071g
RX04 0.078g
S0094IR染料 0.030g
ビクトリアブルーR 0.014g
スダンブラックB 0.027g
ABA 0.177g
Polyfox(登録商標)PF652(PM中10%) 0.036g
BLO 3.19g
ジオキソラン 3.99g
PM 4.50g
MEK 3.99g
【0213】
(発明例11)
本発明の別の画像形成性要素を、以下の成分を有する放射感受性組成物を用いて及び発明例1の手順に従って調製した:
ポリマーH 0.802g
RAR62 0.348g
S0094IR染料 0.030g
ビクトリアブルーR 0.014g
スダンブラックB 0.027g
ABA 0.177g
Polyfox(登録商標)PF652(PM中10%) 0.036g
BLO 3.19g
ジオキソラン 3.99g
PM 4.50g
MEK 3.99g
【0214】
(発明例12)
本発明の別の画像形成性要素を、以下の成分を有する放射感受性組成物を用いて及び発明例1の手順に従って調製した:
ポリマーI 0.762g
BPA1100 0.12g
S0094IR染料 0.026g
ビクトリアブルーR 0.011g
スダンブラックB 0.021g
ABA 0.11g
Polyfox(登録商標)PF652(PM中10%) 0.031g
BLO 2.69g
ジオキソラン 3.24g
PM 3.50g
MEK 3.24g
【0215】
(発明例13)
本発明の別の画像形成性要素を、以下の成分を有する放射感受性組成物を用いて及び発明例1の手順に従って調製した:
ポリマーJ 0.79g
BPA1100 0.12g
S0094IR染料 0.026g
ビクトリアブルーR 0.011g
スダンブラックB 0.021g
ABA 0.081g
Polyfox(登録商標)PF652(PM中10%) 0.031g
BLO 2.69g
ジオキソラン 3.24g
PM 3.50g
MEK 3.24g
【0216】
この画像形成性要素を用いて得た結果を、以下のTable I(表1)及びII(表2)に示す。
【0217】
(比較例1〜3)
3つの比較のポジ型印刷版原版を、本発明の画像形成性要素と比較した。比較例1は、Eastman Kodak Companyから入手できる市販の要素である、Kodak SWORD ULTRA感熱印刷版を用い、比較例2は、市販の要素である、Fuji PhotoのLH-PJE印刷版を用いた。Kodak Sword Ultra感熱印刷版は、本発明の範囲外である主たるポリマーバインダーを含有する画像形成性層を備える。Fuji PhotoのLH-PJE印刷版は、やはり本発明の範囲外である単層の画像形成性層を有する。
【0218】
比較例3は、同時係属出願で、本出願人と同じ米国特許出願第12/339,469号(Levanon、Bylina、Kampel、Postel、Rubin、及びKurtser)の発明例4に従って調製した(したがって、比較例3に記載したポリマーGは、本発明の上記のポリマーGと同じではない)。放射感受性組成物は、以下の成分を用いて調製した:
ポリマーG 10.02g
S0094IR染料 0.34g
スダンブラックB 0.14g
クリスタルバイオレット 0.27g
2,4-ジヒドロキシ安息香酸 2g
NMP 70g
PM 86g
【0219】
【表1】

【0220】
Table I(表1)に示した結果は、本発明の範囲内の、画像形成性層中にポリ(ビニルアセタール-co-ヒドロキシアリールエステル)バインダーを含有する本発明によって調製された画像形成性要素が、調整した及び調整しない印刷版原版の両方について、優れた画像形成スピード及び画像形成されない領域における低い重量損失を実証したことを示す。
【0221】
発明例1〜13及び比較例1〜3の画像形成性要素を、以下の試験を用いて評価した:
【0222】
UVウォッシュに対する耐性試験1:Varn UVウォッシュの滴を、画像形成され、現像された印刷版上に10分間隔で最大20分間載せ、次いで、滴を布で除去した。除去された印刷層の量を測定した。
【0223】
UVウォッシュに対する耐性試験2:ジアセトンアルコール(DAA)と水の比4:1の混合物の滴を、画像形成され、現像された印刷版上に10分間隔で最大20分間載せ、次いで、滴を布で除去した。除去された印刷層の量を測定した。
【0224】
アルコール-サブ湿し水溶液に対する耐性:2-ブトキシエタノール(BC)と水の比4:1の混合物の滴を、画像形成され、現像された印刷版上に10分間隔で最大20分間載せ、次いで、滴を布で除去した。除去された印刷層の量を測定した。
【0225】
これらの試験の結果を以下のTable II(表2)に示す。結果は、本発明の範囲内の、環状イミド部分を有する一次バインダーポリ(ビニルアセタール-co-ヒドロキシアリールエステル)コポリマーを含有する組成物が、広範な印刷機用化学薬品に対する優れた耐溶剤性を有する画像形成性要素を提供したことを示す。
【0226】
本発明を、その特定の好ましい実施形態を特に参照して詳細に説明してきたが、変形及び変更が、本発明の精神及び範囲内で行われ得ることが理解される。
【0227】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水不溶性ポリマーバインダー及び放射吸収化合物を含む画像形成性層を基材上に有する基材を備えるポジ型画像形成性要素であって、
ポリマーバインダーは、
a)ペンダントヒドロキシアリール基を含むビニルアセタール繰返し単位、及び
b)環状イミド基で置換されているヒドロキシアリールエステル基を含む繰返し単位
を含み、
ペンダントヒドロキシアリール基を含むビニルアセタール繰返し単位、及び、環状イミド基で置換されているヒドロキシアリールエステル基を含む繰返し単位は、独立して、ポリマーバインダー中の全繰返し単位に基づいて、それぞれ、少なくとも10モル%及び25モル%の量でポリマーバインダー中に存在する、ポジ型画像形成性要素。
【請求項2】
ポリマーバインダーが、以下の構造(Ia)及び(Ib)のそれぞれで表される繰返し単位:
【化1】

(式中、ポリマーバインダー中の全繰返し単位に基づいて、構造(Ia)の繰返し単位は、約10から約35モル%で存在し、構造(Ib)の繰返し単位は、約25から約60モル%で存在し、Rは、置換又は非置換のヒドロキシアリール基であり、R2は、環状イミド基で置換されている置換又は非置換のヒドロキシアリール基である)
を含む、請求項1に記載の要素。
【請求項3】
Rが、置換又は非置換のヒドロキシフェニル基であり、R2が、環状イミド基で置換されているヒドロキシフェニル基である、請求項2に記載の要素。
【請求項4】
ポリマーバインダーが、ポリマーバインダー中の全繰返し単位に基づいて、約25から約60モル%の以下の構造(Ic)で表される繰返し単位:
【化2】

並びに場合によって、最大25モル%の以下の構造(Id)で表される繰返し単位、場合によって、最大10モル%の以下の構造(Ie)で表される繰返し単位、及び場合によって、最大20モル%の以下の構造(If)で表される繰返し単位:
【化3】


(式中、R1は、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基であり、R3は、-Ox-(CH2)y-COOH基(ここで、xは、0又は1であり、yは、0、1、又は2である)で置換されているアリール基であり、R4は、置換又は非置換のアリール基である)
を更に含む、請求項2又は3に記載の要素。
【請求項5】
ポリマーバインダー中の全繰返し単位に基づいて、構造(Ia)で表される繰返し単位が、約15から約25モル%で存在し、構造(Ib)で表される繰返し単位が、約25から約45モル%で存在する、請求項2から4のいずれかに記載の要素。
【請求項6】
ポリマーバインダーが、構造(Ia)から(If)のそれぞれで表される繰返し単位:
【化4】



(式中、Rは、置換又は非置換のヒドロキシフェニル基であり、R1は、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基であり、R2は、環状イミド基で置換されているヒドロキシフェニル基であり、R3は、-Ox-(CH2)y-COOH基(ここで、xは、0又は1であり、yは、0、1、又は2である)で置換されているアリール基であり、R4は、置換又は非置換のアリール基であり、ポリマーバインダー中の全繰返し単位に基づいて、kは、約15から約25モル%であり、lは、約25から約45モル%であり、mは、約30から約55モル%であり、nは、0から約15モル%であり、oは、0から約8モル%であり、pは、0から約10モル%である)
を含む、請求項1に記載の要素。
【請求項7】
ポリマーバインダーが、画像形成性層の全乾燥重量に基づいて、約40から約95重量%で存在し、放射吸収化合物が、それが位置する層の全乾燥重量に基づいて、約0.1から約30重量%で存在する赤外線吸収化合物である、請求項1から6のいずれかに記載の要素。
【請求項8】
ポリマーバインダーが、構造(Ia)から(Id)のそれぞれで表される繰返し単位:
【化5】


(式中、Rは、置換又は非置換のヒドロキシフェニル基であり、R1は、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基であり、R2は、環状イミド基で置換されているヒドロキシフェニル基である)
を含む、請求項1に記載の要素。
【請求項9】
ポリマーバインダーが、構造(Ia)から(Ie)のそれぞれで表される繰返し単位:
【化6】


(式中、Rは、置換又は非置換のヒドロキシフェニル基であり、R1は、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基であり、R2は、環状イミド基で置換されているヒドロキシフェニル基であり、R3は、-Ox-(CH2)y-COOH基(ここで、xは、0又は1であり、yは、0、1、又は2である)で置換されているアリール基である)
を含む、請求項1に記載の要素。
【請求項10】
ポリマーバインダーが、構造(Ia)から(If)のそれぞれで表される繰返し単位:
【化7】


(式中、Rは、置換又は非置換のヒドロキシフェニル基であり、R1は、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基であり、R2は、環状イミド基で置換されているヒドロキシフェニル基であり、R3は、-Ox-(CH2)y-COOH基(ここで、xは、0又は1であり、yは、0、1、又は2である)で置換されているアリール基であり、R4は、置換又は非置換のアリール基である)
を含む、請求項1に記載の要素。
【請求項11】
A)請求項1から10のいずれかに記載のポジ型画像形成性要素を画像様露光して、露光領域及び非露光領域を提供する段階、並びに
B)画像様露光された要素を現像して、主に露光領域のみを除去する段階
を含む、画像形成された要素を製造する方法。
【請求項12】
画像形成性要素が、約750から約1250nmの波長で画像形成されて、アルミニウム含有親水性基材を有する平版印刷版を提供する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
a)ペンダントヒドロキシアリール基を含むビニルアセタール繰返し単位、及び、
b)環状イミド基で置換されているヒドロキシアリールエステル基を含む繰返し単位
を含むコポリマーであって、
ペンダントヒドロキシアリール基を含むビニルアセタール繰返し単位、及び、環状イミド基で置換されているヒドロキシアリールエステル基を含む繰返し単位は、独立して、コポリマー中の全繰返し単位に基づいて、それぞれ、少なくとも10モル%及び25モル%の量でコポリマー中に存在するコポリマー。
【請求項14】
以下の構造(Ia)及び(Ib)のそれぞれで表される繰返し単位:
【化8】

(式中、コポリマー中の全繰返し単位に基づいて、構造(Ia)の繰返し単位は、約10から約35モル%で存在し、構造(Ib)の繰返し単位は、約25から約60モル%で存在し、Rは、置換又は非置換のヒドロキシアリール基であり、R2は、環状イミド基で置換されている置換又は非置換のヒドロキシアリール基である)
を含む、請求項13に記載のコポリマー。
【請求項15】
Rが、置換又は非置換のヒドロキシフェニル基であり、R2が、環状イミド基で置換されているヒドロキシフェニル基である、請求項14に記載のコポリマー。
【請求項16】
コポリマー中の全繰返し単位に基づいて、約25から約60モル%の以下の構造(Ic)で表される繰返し単位:
【化9】

並びに場合によって、最大25モル%の以下の構造(Id)で表される繰返し単位、場合によって、最大10モル%の以下の構造(Ie)で表される繰返し単位、及び場合によって、最大20モル%の以下の構造(If)で表される繰返し単位:
【化10】

(式中、R1は、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基であり、R3は、-Ox-(CH2)y-COOH基(ここで、xは、0又は1であり、yは、0、1、又は2である)で置換されているアリール基であり、R4は、置換又は非置換のアリール基である)
を更に含む、請求項14に記載のコポリマー。
【請求項17】
コポリマー中の全繰返し単位に基づいて、構造(Ia)で表される繰返し単位が、約15から約25モル%で存在し、構造(Ib)で表される繰返し単位が、約25から約45モル%で存在する、請求項14に記載のコポリマー。
【請求項18】
構造(Ia)から(If)のそれぞれで表される繰返し単位:
【化11】


(式中、Rは、置換又は非置換のヒドロキシフェニル基であり、R1は、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のシクロアルキル、又は置換若しくは非置換のアリール基であり、R2は、環状イミド基で置換されているヒドロキシフェニル基であり、R3は、-Ox-(CH2)y-COOH基(ここで、xは、0又は1であり、yは、0、1、又は2である)で置換されているアリール基であり、R4は、置換又は非置換のアリール基であり、コポリマー中の全繰返し単位に基づいて、kは、約15から約25モル%であり、lは、約25から約45モル%であり、mは、約30から約55モル%であり、nは、0から約15モル%であり、oは、0から約8モル%であり、pは、0から約10モル%である)
を含む、請求項13に記載のコポリマー。

【図1】
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【公表番号】特表2013−504097(P2013−504097A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528813(P2012−528813)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/046726
【国際公開番号】WO2011/031508
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】