説明

ポット

【課題】真空二重構造による断熱性能を最大限発揮することができ、かつ従来と同等以上の位置決め性能を確保できるポットを提供することを課題とする。
【解決手段】ポット本体1の開口部4を構成する環状の肩部材5、胴部材6及び底板7等からなる外装体を有し、前記肩部材5と胴部材6の内側に内容器8を収納し、前記内容器8と胴部材6の間に円筒状の断熱体24を介在するとともに該断熱体24の上端部を前記肩部材5の支持部で、また下端部を前記外装体の底面でそれぞれ支持してなるポットの断熱体取付け構造において、前記外装体に前記断熱体の周り止め支持部として、前記断熱体の下端部を挟み込む形状のリブ36を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気湯沸かし器等のポットの一般的な構成は、ポット本体の開口部を構成する環状の肩部材及び胴部材の内側に内容器を収納し、該内容器のフランジを該肩部材の開口部内面に設けた段部とその段部の内周から下方に延びた内周リブで支持させ、該内容器の底部と前記底板との間を連結部材で連結一体化した構成がとられる。このようなポットにおいて、その保温効率を上げるために、前記内容器と胴部材の間に真空二重ジャケット等でなる円筒状の断熱体を介在させることが従来から行われている(特許文献1参照)。
【0003】
前記のような断熱体を介在させた場合、断熱体と内容器との芯合わせを行うため、断熱体の上端縁の一部に位置決め用の切り欠きを設けて製品センターに位置する支持リブに係合させることにより断熱体の周方向の位置決めを行うようにしている。
【0004】
【特許文献1】特許第3980529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記のように断熱体の上端縁の一部に切り欠きを設けると、その部分は真空二重構造にすることができず断熱性能を犠牲にしなければならないという問題がある。そこで本発明は、真空二重構造による断熱性能を最大限発揮することができ、かつ従来と同等以上の位置決め性能を確保できるポットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明のポットは、ポット本体の開口部を構成する環状の肩部材、胴部材及び底板等からなる外装体を有し、前記肩部材と胴部材の内側に内容器を収納し、前記内容器と胴部材の間に円筒状の断熱体を介在するとともに該断熱体の上端部を前記肩部材の支持部で、また下端部を前記外装体の底面でそれぞれ支持してなるポットの断熱体取付け構造において、前記外装体に前記断熱体の周り止め支持部として、前記断熱体の下端部を挟み込む形状のリブを設けたことを特徴とする。
【0007】
また前記課題を解決するため、本発明のポットは、ポット本体の開口部を構成する環状の肩部材、胴部材及び底板等からなる外装体を有し、前記肩部材と胴部材の内側に内容器を収納し、前記内容器と胴部材の間に円筒状の断熱体を介在するとともに該断熱体の上端部を前記肩部材の支持部で、また下端部を前記外装体の底面でそれぞれ支持してなるポットの断熱体取付け構造において、前記肩体に前記断熱体の周り止め支持部として、前記断熱体の上端部を挟み込む形状のリブを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポットでは、断熱材に切り欠き等の形状を別途設けることなく断熱体の周り止めを確実に行うことができるため、従来に比べ真空二重構造による断熱部分が増加し、断熱効果が向上すると共に、部品点数を増やすことなく簡単に断熱体の周り止めを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0010】
図1に示した電気ポットは、ポット本体1にヒンジ軸2により蓋3を開閉自在に取付けたものである。ポット本体1はその開口部4を構成する環状の肩部材5と、胴部材6及び金属板からなる底板7を有する。肩部材5と胴部材6との内側に内容器8が収納される。内容器8は上端部に外向きのフランジ9が設けられるとともに底面部にヒーター11が装着され、そのヒーター11の下方に遮熱板12が設けられる。また、底面部に設けた排出口13にポンプ14の入口20が接続される。ポンプ14は遮熱板12に取付けられる。前記の肩部材5、胴部材6、底板7等は全体としてポット本体1の外装体Aを形成する。胴部材6は胴と底部材から形成される場合もある。
【0011】
前記の肩部材5には、図5に示したように、前記開口部4の内面に突き出した段部15
が設けられるとともに、その段部15の内周から下方に延び下端が自由端となる内周リブ
16が設けられる。また前記段部15より下方において開口部4と同径の外周リブ17が
内周リブ16に対して同芯円状に設けられる。外周リブ17の下端も自由端となっている
。内周リブ16は段部15の強度を確保するために上下方向に所要の長さをもつように形
成されるが、外周リブ17はこれより短く形成される。また、内周リブ16と外周リブ17との間には多数の補強リブ18が全周にわたり放射状に設けられる(図2参照)。
【0012】
前記の補強リブ18は後述の断熱体24を嵌合する際の便宜のために内周リブ16側から外周リブ17側に傾斜したガイド辺(※「補強リブ18の傾斜辺を指すので「片」よりも「辺」が適当)19を有する(図5、図6参照)。また、前記の開口部4の外周にも放射方向の補強兼用の支持リブ21が全周にわたり多数設けられる(図2、図3参照)。この支持リブ21の大部分には、断熱体24の上端縁を嵌合支持するための小凹部22が設けられる(図6参照)。なお、肩部材5の前部にノーズ部23が設けられる(図1参照)。
【0013】
前記内容器8が肩部材5と胴部材6の内側に収納され、そのフランジ9が段部15にシー
ル部材10を介して支持される。また、その内容器8の外側に所要の間隔をおいて円筒状の断熱体24が嵌められる。断熱体24は、図5に示したように、内胴25と外胴26を所要のすき間をおいて内外に嵌合し、その上下両端部27、28(図2参照)をシーム溶接等の手段を用いて密着させて溶接一体化し、内部の空気を排除して真空とした真空二重ジャケットからなる。その外胴26には周方向の補強ビード29が多数設けられる。また、上下両端部において内胴25にテーパ−部31が設けられる(図5参照)。
【0014】
前記断熱体24は、図5に示したように、そのテーパー部31を補強リブ18のガイド辺19に沿わせるとともに、上端部27を外周リブ17の外周面に嵌合させる。この外周リブ17が径方向の位置決め支持部となって、断熱体24の内容器8に対する芯合わせが行われる。芯合わせされた状態の内容器8の外周面と断熱体24の内周面との間隔をtで表す(図6参照)。この間隔tは、断熱体24の各種の設計条件に応じて任意に設定されるが、前記の間隔tより小さい間隔t1が必要な場合は、図7に示したように、外周リブ17の位置を内周リブ16側へ寄せた位置に設定する。このように設定すると、内周リブ16の径や段部15の幅を変えることなく、外周リブ17の径を変えるだけで断熱体24を相対的に小径に設計することができる。逆に間隔tより大きい間隔t2が必要な場合は、同dに示したように、内周リブ16から離した位置に外周リブ17を設けることにより断熱体24を相対的に大径に設計することができる。外周リブ17の位置を前記のように変更しても、内周リブ16や段部15の幅には何ら影響がないことは前述の場合と同様である。
【0015】
また、前記の断熱体24は、前述のように肩部材5の外周リブ17によって内容器8に対
する芯合わせが行われるほか、その上端縁を支持リブ21の下端に突き当てることにより
、上下方向の位置決めが行われる。
【0016】
図9は、支持リブ21の小凹部22の位置、即ち断熱体24の上端縁が当る位置を、前
記段部15の上面(フランジ9の支持面)よりその厚さdだけ下位に設定した状態を示し
ている。このような関係に設定すると、段部15より高い開口部4の部分に矢印Aで示し
たように破断や溶断が万一発生した場合に、内容器8はそのフランジ9、段部15、段部
15の外周面に繋がっている支持リブ21を通じて肩部材5で支持され、落下することが
防止される。
【0017】
次に、その他の構造について、図2から図4の組立て途中の状態を示した図面を参照しながら説明する。これらの図面は実際の組立て時の状態に合わせて各部材の上下を逆に表しているが、説明の混乱を避けるために、各部材の上下関係は、図1に示した正立状態における上下関係をもって示すこととする。
【0018】
図2は、肩部材5に内容器8を挿入し、その内容器8が落ち込まないように適宜な治具を
嵌めて肩部材5と共に内容器8を上下反転した状態を示している。図2には、前述した肩部材5の内周リブ16、外周リブ17、補強リブ18、支持リブ21が表わされ、またノーズ部23の安全弁セット32、安全弁セット32の接続チューブ33、吐出口34が表わされている。また、内容器8の底面に固定された遮熱板12上に前記のポンプ14が固定され、そのポンプ14が出口管35を有することが表わされている。また、その内容器8の外側に嵌合される前記の断熱体24も表わされている。
【0019】
前述のように内容器8の底面側から断熱体24が間隔tをおいて嵌合され、外周リブ17
の外周面によって芯合わせが行われるとともに、支持リブ21により上下方向の位置決め
が行われる。さらに断熱体24の下端縁を胴部材6の底部に設けた周り止めリブ36に係合させることにより断熱体24の周方向の位置決めを行う(図3参照)。上記周り止めリブ36は図11に示すように、上面視略コ字状でかつ中心部に断熱体24を挟み込む溝部36aを有しており、胴部材6の底部に2箇所設けられている。また断熱体24の下端部には浅い凹部38を設けており、前記溝部36aに断熱体24を、前記凹部38が前記周り止めリブ36の間に来るように挟み込むことによって断熱体24の周方向の位置決めができ、それによりチップ管閉塞端部37の位置及び下端縁の一部に設けた浅い凹部38の位置が決められる。浅い凹部38は、前記ポンプ14の出口管35の位置に合致し、その出口管35に接続されたエルボ形の継手チューブ39が凹部38の部分を非接触状態で跨ぎ越し、断熱体24の外側において水位管41に接続される。水位管41は断熱体24の外側面に沿って立ち上がり、その上端は前記安全弁セット32の接続チューブ33に接続される。すなわち、前記の凹部は断熱体24の周り止めと前記継手チューブ39との干渉防止という二つの作用を有している。前記の凹部38は断熱体24の下端縁の一部を径方向内側へ折り返して形成される(図4参照)。上記構造により、断熱材24に余計な細工を施すことなく周り止めができるので上下方向の真空二重部分を最大限確保でき、コストアップすることなく周り止めを行うことができる。
【0020】
前記の断熱体24を嵌合した後、図3に示すように、胴部材6が被せられ、その上端部が
前記肩部材5の下端に嵌合される。胴部材6の底面部中央には異形の開口部43が設けられ、その下面において開口部43の外周に底板嵌合部44が設けられる。その底板嵌合部44に前記の底板7が当てられ(図2参照)、内容器8の遮熱板12に一端が固定された一対の連結金具45、45に対し底板7の下面からビス30をねじ込んで、底板7を連結金具45、45に対して締付ける。これにより、内容器8が肩部材5の段部15に押し付けられ、さらに肩部材5が胴部材6に押し付けられるため各部材が結合一体化される。
【0021】
図11及び図12に示したように、胴部材6の底面部内面には前記の開口部43の周りにおいて部分的な環状リブ46の外側面に外向き放射方向の板状支持リブ47が多数設けられ、また環状リブ46の間に所要数の立体形支持リブ47’が設けられる。立体形支持リブ47’は底面部の下面から上面に立体形に突き出した中空の凸形リブであり、前記の支持リブ47と同じ高さの凸形平面が形成される。これらの支持リブ47、47’の径方向の長さはその範囲内に断熱体24の下端縁が全周にわたって着座支持されるように形成される。立体形支持リブ47’は、板状支持リブ47に比べ大きい圧縮強度を発揮する。このため、ポットの落下時の衝撃等によって断熱体24による荷重が作用した場合、板状支持リブ47による場合に比べ、立体形支持リブ47’が大きい耐衝撃性を発揮する。断熱体24の下端縁を所要数の立体形支持リブ47’のみで支持するようにしてもよいが、図示のように、板状支持リブ47と立体形支持リブ47’の混合で支持するようにしてもよい。
【0022】
前記の胴部材6の正面の左右に若干の膨出部48、48’が設けられ、その膨出部48、48’間は緩やかな凹曲面49となっている。ポットの前方から見て右側の膨出部48の内側に前記の水位管41が臨み(図12参照)、また左側の膨出部48’の内側にチップ管閉塞端部37が臨むように胴部材6の位置が定められる。前記のように、水位管41とポンプ14の出口管35と継手チューブ39が断熱体24の下端縁を跨ぎ越す部分においては前述のように浅い凹部38が設けられるが、その浅い凹部38の両側に立体形支持リブ47’、47’が配置される。両側の立体形支持リブ47’、47’により断熱体24の下端縁が安定よく支持され、前記凹部38と出口管35又は継手チューブ39とのすき間を確実に保持することができる。
【0023】
なお、断熱体24の周り止め用リブについては、前記実施例に限定されるものではなく、例えば図13に示すように、断熱材24の下端縁と略直交し、断熱材24の下端縁が食い込む溝部49aを設けた周り止めリブ49を胴部材6の底部に設けてもよいし、図14に示すように、断熱材の上端縁と略直交し、断熱材24の上端縁が食い込む溝部50aを設けた周り止めリブ50を肩部材5に設けてもよい。いずれの場合も断熱材24が溝部49aまたは50aに差し込まれ、かつ溝部49aまたは50aの下端面に断熱材24が食いこむことにより余計な細工を施すことなく周り止めができる。したがって上下方向の真空二重部分を最大限確保でき、コストアップすることなく周り止めを行うことができる。なお前記周り止めリブ49または50は1個だけ設けてもよいが、リブに加わる力の分散を考慮すると3個から5個設けるのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態の断面図
【図2】同上の分解斜視図
【図3】同上の一部省略斜視図
【図4】同上の断熱体の斜視図
【図5】同上の一部省略断面図
【図6】同上の一部省略断面図
【図7】同上の一部省略断面図
【図8】同上の一部省略断面図
【図9】同上の一部省略断面図
【図10】同上の一部省略断面図
【図11】同上の一部省略斜視図
【図12】同上の横断平面図
【図13】別の実施形態の一部省略断面図
【図14】さらに別の実施形態の一部省略断面図
【符号の説明】
【0025】
1 ポット本体
2 ヒンジ軸
3 蓋
4 開口部
5 肩部材
6 胴部材
7 底板
8 内容器
9 フランジ
10 シール部材
11 ヒーター
12 遮熱板
13 排出口
14 ポンプ
15 段部
16 内周リブ
17 外周リブ
18 補強リブ
19 ガイド辺
20 入口
21 支持リブ
22 小凹部
23 ノーズ部
24 断熱体
25 内胴
25’ ブランク
26 外胴
27、27a、27b 上端部
28、28a、28b 下端部
29 補強ビード
30 ビス
31 テーパー部
32 安全弁セット
33 接続チューブ
34 吐出口
35 出口管
36 周り止めリブ
36a 溝部
37 チップ管閉塞端部
38 凹部
39 継手チューブ
41 水位管
43 開口部
44 底板嵌合部
45 連結金具
46 環状リブ
47 板状支持リブ
47’ 立体形支持リブ
48、48’ 膨出部
49、50 周り止めリブ
49a,50a 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポット本体の開口部を構成する環状の肩部材、胴部材及び底板等からなる外装体を有し、前記肩部材と胴部材の内側に内容器を収納し、前記内容器と胴部材の間に円筒状の断熱体を介在するとともに該断熱体の上端部を前記肩部材の支持部で、また下端部を前記外装体の底面でそれぞれ支持してなるポットの断熱体取付け構造において、前記外装体に前記断熱体の周り止め支持部として、前記断熱体の下端部を挟み込む形状のリブを設けたことを特徴とするポット。
【請求項2】
ポット本体の開口部を構成する環状の肩部材、胴部材及び底板等からなる外装体を有し、前記肩部材と胴部材の内側に内容器を収納し、前記内容器と胴部材の間に円筒状の断熱体を介在するとともに該断熱体の上端部を前記肩部材の支持部で、また下端部を前記外装体の底面でそれぞれ支持してなるポットの断熱体取付け構造において、前記肩体に前記断熱体の周り止め支持部として、前記断熱体の上端部を挟み込む形状のリブを設けたことを特徴とするポット。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2009−213702(P2009−213702A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61327(P2008−61327)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】