説明

ポリアクリレートポリオール、ポリエステルポリオール、およびイソシアネート官能性架橋剤を含んでいるコーティング組成物

a)オレフィン性不飽和モノマーの重合によって得られることができるポリアクリレートポリオールであって、該モノマーの少なくとも40重量%が、少なくとも4炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基を含んでいるポリアクリレートポリオール、b)エステル生成性官能基を有する構成ブロックのエステル化によって得られることができるポリエステルポリオールであって、該構成ブロックの少なくとも30重量%が、エステル生成性官能基につき少なくとも4炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基を含んでおり、該ポリエステルポリオールが280mgKOH/g超のヒドロキシ価および少なくとも2のヒドロキシ官能基を有するポリエステルポリオール、およびc)イソシアネート官能性架橋剤、を含んでいるコーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアクリレートコポリマーポリオール、ポリエステルポリオール、およびイソシアネート官能性架橋剤を含んでいるコーティング組成物に関する。本発明はさらに、該組成物を調製するための部材のキットおよび該組成物を施与する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上述のタイプのコーティング組成物は、特許文献1によって知られている。この文献は、ヒドロキシ価80〜280mgKOH/gを有するヒドロキシ官能性分枝鎖ポリエステル、ヒドロキシ官能性アクリルまたはメタクリルコポリマー、および架橋剤を含んでいる高固形分コーティング組成物に関する。
【0003】
特許文献2は、ヒドロキシ価40〜200mgKOH/gを有するヒドロキシ官能性ポリエステル、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートコポリマー、および架橋剤を含んでいるコーティング組成物を記載している。
【0004】
非常に高い固形分含有量が要求されるときには、これらの公知のコーティング組成物では、特性の満足すべきバランスが達成されることができない。たとえば、特許文献1の組成物中のヒドロキシ官能性アクリルまたはメタクリルコポリマーを犠牲にしてヒドロキシ官能性分枝鎖ポリエステルの割合を増加すると、該組成物のより低い揮発性有機含有量(VOC)がもたらされる。しかし、これはより長い乾燥時間およびコーティングの硬さの減少も同様にもたらし、垂れおよび/または吸塵の危険を伴う。したがって、非常に高い固形分含有量と非常に短い乾燥時間との満足すべき組み合わせが達成されることができない。コーティング操作の高い処理量の観点から、より長い乾燥時間は望ましくない。さらにその上、最もよく知られている、短い乾燥時間を得ようと高い硬化触媒仕込量を含ませたコーティング組成物は、乾燥中のコーティング内の気泡が安定化する問題を生じて、乾燥したコーティング層中にピンホールをもたらす。ピンホールは、コーティング層の外観および耐久性を損なう。
【特許文献1】国際公開第96/20968号パンフレット
【特許文献2】欧州特許出願公開第0688840号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、特性、すなわち施与粘度における揮発性有機溶媒の低い含有量、速い乾燥速度の満足すべきバランスを有し、良好な外観特性、特にピンホールの低い発生し易さ、および良好な硬さをもたらすコーティング組成物を提供しようとしている。加えて、該コーティング組成物は、自動車外面仕上げ塗装に要求される他の特性、たとえば可撓性、耐傷付き性、光沢、耐久性、耐化学薬品性および耐紫外線性を発現する硬化されたコーティングをも提供しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、今
a) オレフィン性不飽和モノマーの重合によって得られることができるポリアクリレートポリオールであって、該モノマーの少なくとも40重量%が、少なくとも4炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基を含んでいるポリアクリレートポリオール、
b) エステル生成性官能基を有する構成ブロックのエステル化によって得られることができるポリエステルポリオールであって、該構成ブロックの少なくとも30重量%が、エステル生成性官能基の1つ当り少なくとも4炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基を含んでおり、該ポリエステルポリオールが280mgKOH/g超のヒドロキシ価および少なくとも2のヒドロキシ官能基を有するポリエステルポリオール、および
c) イソシアネート官能性架橋剤
を含んでいるコーティング組成物を提供する。
【発明の効果】
【0007】
施与粘度における揮発性有機溶媒の低い含有量、速い乾燥速度、乾燥中のコーティング内の気泡の低い安定化し易さ、および良好な外観特性、特にピンホールの低い発生し易さを有することの満足すべきバランスを、本発明のコーティング組成物は提供する。加えて、該コーティング組成物は、自動車外面仕上げ塗装に要求される他の特性、たとえば良好な硬さおよび耐傷付き性、光沢、耐久性、耐化学薬品性および耐紫外線性を発現する硬化されたコーティングをも提供する。
【0008】
200〜400mgKOH/gの範囲にあるヒドロキシ価を有するポリエステルポリオールを含んでいるポリアクリレートポリオールを有さないコーティング組成物を、国際公開第2002/098942号は実証していることが注記されなければならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のコーティング組成物はポリアクリレートポリオールを含んでおり、該ポリアクリレートポリオールのモノマーの全重量当たり、モノマーの少なくとも40重量%が、少なくとも4炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基を含んでいる。「アルキル(アルケニル)基」の表現は、アルキル基、アルケニル基、および/またはこれらの混合を指す。「アルキレン(アルケニレン)基」は、アルキレン基、アルケニレン基、および/またはこれらの混合を包含する。従来技術において通常である通り、ポリアクリレートポリオールの語句は、アクリルおよび/またはメタクリルモノマーの(共)重合によって得られる、複数のヒドロキシ基を有するポリマーを指す。また、該ポリアクリレートポリオールの調製に、他のオレフィン性不飽和重合性モノマー、たとえばビニル芳香族モノマー、他のビニルモノマー、またはアリルモノマーが使用されてもよい。以降、「アクリレートおよび/またはメタクリレート」は、「(メタ)アクリレート」と表記される。
【0010】
上述のように、ポリアクリレートポリオールのモノマーの少なくとも40重量%は、少なくとも4炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基を含んでいる。ポリアクリレートポリオールのモノマーの全重量当たり、好ましくはモノマーの少なくとも50重量%、より好ましくはモノマーの55〜80重量%は、少なくとも4炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基を含んでいる。少なくとも4炭素原子を有するアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基は直鎖または分枝鎖であることができる。環式のアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基は上記の利点をもたらさない。少なくとも4炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基を含んでいる好適なモノマーの例は、少なくとも4炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルコールを有する(メタ)アクリル酸のエステルである。このようなモノマーの例は、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、直鎖または分枝鎖のペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルまたはそれよりも高級アルキルの(メタ)アクリレートである。また、アルキル(アルケニル)で置換された脂環式またはビニル芳香族のモノマーが、これらが少なくとも4炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基を含んでいる限り、使用されてもよい。それらの例はt−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートまたはt−ブチルスチレンである。また、ビニルエステルも適しており、たとえばビニルデカノエートまたはビニルドデカノエートである。下記のヒドロキシ官能性モノマーが、少なくとも4炭素原子を有するアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基を含んでいる限りにおいて、これらも、たとえばヒドロキシブチル(メタ)アクリレートは、少なくとも4炭素原子を有するアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基を含んでいるモノマーのある割合を占めることができる。
【0011】
ポリアクリレートポリオールは、分子当たり少なくとも2の平均ヒドロキシ官能基を有する。ヒドロキシ官能性モノマーによってポリマー中へと、ヒドロキシ官能基は導入されることができる。好適なヒドロキシ官能性モノマーの例は、モノまたはジエチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステルである。該ヒドロキシアルキルエステルのアルキル基は、好適には1〜12炭素原子を有することができる。好適なヒドロキシ官能性モノマーの具体的な例は、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2および3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2、3および4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ならびにこれらの混合物である。さらなる例は、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸またはフマル酸とモノエポキシ化合物、たとえばエチレンオキシド、グリシジルエーテル、およびCardura E10のようなグリシジルエステル等との反応生成物である。たとえば、ポリマー中のグリシジルメタクリレート単位のエポキシ基は、水またはカルボン酸との反応による後重合反応でヒドロキシ官能基に転化されることができる。
【0012】
ポリアクリレートポリオールの残部は、他のエチレン性不飽和重合性モノマー、たとえば(メタ)アクリルモノマーおよび/またはビニルモノマーから構成される。これらの例として、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、およびビニルアセテートが挙げられることができる。また、環式アルコールの(メタ)アクリレート、たとえばシクロヘキシル(メタ)アクリレートまたはイソボルニル(メタ)アクリレートが使用されることができる。ポリアクリレートポリオールは、多不飽和モノマー、たとえばアリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、およびトリメチロールプロパントリアクリレート等の重合された単位を約10%までの少量有することもできる。
【0013】
ポリアクリレートポリオールを調製するためのモノマーは、好適にはFoxの式に従って計算されたポリアクリレートの理論的ガラス転移温度(Tg)が少なくとも−15℃、好ましくは少なくとも−5℃、より好ましくは少なくとも0℃であるように選択される。理論的Tgの好適な上限は125℃、好ましくは100℃、より好ましくは85℃である。低分子量ポリアクリレートポリオールの場合、実際のTgは理論的Tgよりも有意に低いことがあり得ることが注記されなければならない。
【0014】
ポリアクリレートポリオールのヒドロキシ価は、非揮発性物質当たり好適には少なくとも60mgKOH/g、好ましくは少なくとも85mgKOH/g、より好ましくは少なくとも120mgKOH/gである。ヒドロキシ価の好適な上限は200mgKOH/g、好ましくは180mgKOH/g、より好ましくは170mgKOH/gである。
【0015】
ポリアクリレートポリオールの数平均分子量(Mn)は、好適には少なくとも800、好ましくは少なくとも1,200、より好ましくは少なくとも1,500である。Mnの好適な上限は10,000、好ましくは7,000、より好ましくは5,000である。ポリアクリレートポリオールの多分散度(Mw/Mn)は、好適には3.2未満、好ましくは2.8未満、より好ましくは2.5未満である。
【0016】
非揮発性物質当たりの、ポリアクリレートポリオールの酸価は特に決定的に重要なパラメータではない。これは好適には少なくとも3mgKOH/g、好ましくは5mgKOH/g、より好ましくは7mgKOH/gである。酸価の好適な上限は30mgKOH/g、好ましくは25mgKOH/g、より好ましくは20mgKOH/gである。
【0017】
上述のオレフィン性不飽和重合性モノマーの周知のフリーラジカル重合によって、ポリアクリレートポリオールは好適に調製されることができる。1以上の段階でおよび有機希釈剤の不存在下または存在下に、該重合は実施されることができる。有機希釈剤が使用されるならば、少なくとも4炭素原子を有するアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基を含んでいる揮発性希釈剤を使用することが好ましい。このような希釈剤の例は以下に記載される。
【0018】
好適なラジカル生成開始剤は従来技術で知られており、たとえばジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートおよびt−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート等、ならびにアゾ開始剤、たとえば2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)および2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)である。
【0019】
モノマーと開始剤との比によっておよび連鎖移動剤によって、ポリマーの分子量は調節されることができる。好適な連鎖移動剤の例は、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸、およびチオグリコールを含む。
【0020】
ポリアクリレートポリオールの調製のために、進歩した重合手法、たとえば基移動重合(GTP)、原子移動ラジカル重合(ATRP)、および可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合が使用されることもできる。
【0021】
本発明のコーティング組成物は、エステル生成性官能基を有する構成ブロックのエステル化によって得られることができるポリエステルポリオールを含んでおり、該構成ブロックの少なくとも30重量%が、エステル生成性官能基につき少なくとも4炭素原子、エステル生成性官能基につき好ましくは少なくとも5、より好ましくは少なくとも6炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基を有し、該ポリエステルポリオールは280mgKOH/g超のヒドロキシ価および少なくとも2のヒドロキシ官能基を有する。上述のように、当該エステル生成性官能基につき少なくとも4炭素原子を有するアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基は、直鎖または分枝鎖でなければならない。環式のアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基は、上記の利点をもたらさない。
【0022】
エステル生成性官能基を有する構成ブロックの公知の縮合および/または付加反応によって、ポリエステルポリオールは調製されることができる。エステル生成性官能基の例は、カルボン酸基、(環式)酸無水物基、カルボン酸エステル基、ヒドロキシ基、エポキシド基、オキセタン基、およびラクトン基である。ポリエステルを生成するために、使用される構成ブロックの少なくとも一部は、少なくとも2の官能基を有さなければならない。しかし、単官能性および3以上の官能性構成ブロックも同様に使用されることができる。
【0023】
ポリエステル構成ブロックの少なくとも30重量%が、エステル生成性官能基につき少なくとも4、好ましくは少なくとも5の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基を有することが必須である。
【0024】
好適なポリエステル構成ブロックの例は、そのカルボン酸基に連結された少なくとも4炭素原子を有するアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基を有するところのモノカルボン酸、たとえばペンタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、イソオクタン酸、ノナン酸、イソノナン酸、デカン酸またはこれらの異性体、たとえばバーサチック酸、12〜22炭素原子を有する高級脂肪酸、およびこれらの混合物である。8および10炭素原子を有する脂肪酸の商業的に入手可能な混合物が、具体的に挙げられることができる。このような混合物は、Cognis社からEdenor V85の商品表示下に入手可能である。
【0025】
同様に好適なのは、ジカルボン酸、たとえばセバシン酸、ドデカン二酸、オクテニルコハク酸、ドデシルコハク酸(任意の異性体または異性体の混合物)、ならびに脂肪酸2量体である。エステル生成性官能基につき少なくとも4炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基を有するカルボン酸無水物の例は、無水デカン酸、無水ドデカン酸、無水ドデシルコハク酸、および無水ドデセニルコハク酸である。
【0026】
ヒドロキシカルボン酸およびそれから誘導されたラクトン、たとえばガンマデカノラクトンも、これらがエステル生成性官能基につき少なくとも4炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基を有する限り、使用されることができる。ヒドロキシカルボン酸ならびにそれから誘導されたラクトンは、2のエステル生成性官能基を有することが注記されなければならない。
【0027】
好適なモノアルコールの例は、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、およびオクタノールである。そのアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基が脂肪酸から誘導されているところのこれらよりも長鎖のモノアルコール、すなわち脂肪族アルコールを使用することも可能である。好適なジオールは、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、およびこれらの異性体を包含する。
【0028】
エポキシド基は2のエステル基を生成する能力がある。したがって、エポキシド官能性構成ブロックは、少なくとも8炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基を要求する。これらの例は、エポキシ化オレフィン、脂肪族アルコールのグリシジルエーテル、および脂肪酸のグリシジルエステルである。バーサチック酸のグリシジルエステルが具体的に挙げられることができる。
【0029】
エステル生成性官能基につき少なくとも4炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基を有する上記の構成ブロックに加えて、他のエステル生成性構成ブロックが、これらの構成ブロックの全重量当たりで計算されて70重量%未満の量で使用される限り、ポリエステルポリオールの調製に使用されることができる。
【0030】
脂環式ポリオールの例は、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、ビスヒドロキシメチルトリシクロデカン、およびこれらの混合物を含む。脂肪族ポリオールの例は、グリセロール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、プロポキシル化ペンタエリスリトール、エトキシル化トリメチロールプロパン、ジメチロールプロピオン酸、およびこれらの混合物を含む。
【0031】
好まれるジオールは、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ジメチロールプロピオン酸、および1,4−シクロヘキサンジメタノールを包含する。
【0032】
好適な環式ポリカルボン酸は、芳香族ポリカルボン酸および脂環式ポリカルボン酸を包含する。芳香族ポリカルボン酸の例は、イソフタル酸、フタル酸、トリメリット酸、およびこれらの混合物を含む。同様に含まれるのは、これらのエステルまたは酸無水物、たとえば無水フタル酸、無水トリメリット酸、およびこれらの混合物である。脂環式ポリカルボン酸の例は、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、およびこれらの混合物を含む。同様に含まれるのは、これらのエステルまたは酸無水物、たとえば無水テトラヒドロフタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、およびこれらの混合物である。
【0033】
非環式ポリカルボン酸の例は、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、およびこれらの混合物を含む。同様に含まれるのは、これらのエステルまたは酸無水物、たとえばマロン酸のジメチルエステルおよびジエチルエステル、無水コハク酸、およびこれらの混合物である。
【0034】
上述のように、ポリエステルポリオールのヒドロキシ価は280mgKOH/g超であり、ヒドロキシ官能基数は少なくとも2である。所望のヒドロキシ価およびヒドロキシ官能基数を得るために、過剰のヒドロキシ官能性構成ブロックがポリエステルポリオールの調製に好適に用いられる。ポリエステルポリオールが、分枝鎖のまたはデンドリマー性のポリエステルであることも好まれる。分子当たり3以上のエステル生成性官能基を有する構成ブロックによって、分枝は得られる。
【0035】
ヒドロキシ価の好適な上限は380mgKOH/g、好ましくは350mgKOH/gである。好ましくは、ヒドロキシ官能基数は2〜4、より好ましくは2〜3.5の範囲にある。
【0036】
ポリエステルポリオールの酸価は特に決定的に重要なパラメータではないが、一般には25mgKOH/g未満である。典型的にはポリエステルポリオールの酸価は15mgKOH/g未満である。
【0037】
施与粘度におけるコーティング組成物中の揮発性有機希釈剤の低い含有量を得るために、ポリエステルポリオールは好適には4,000未満、好ましくは2,000未満、より好ましくは1,600未満、最も好ましくは500〜1,200の数平均分子量Mnを有する。ポリエステルポリオールの多分散度(Mw/Mn)は好適には2.5未満、好ましくは2未満、より好ましくは1.7未満である。
【0038】
何らかの理論に拘束されることを望むわけではないが、ポリアクリレートポリオール中の少なくとも4炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基を含んでいる特定のモノマーは、エステル生成性官能基につき少なくとも4炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基を有するポリエステル構成ブロックと組み合わされて、特定の範囲内の表面張力を有するコーティング組成物をもたらすと考えられる。さらに、この特定の表面張力の範囲は、乾燥されたコーティング中のピンホールの生成に対する本発明のコーティング組成物の感度の減少をもたらすと考えられる。
【0039】
コーティング組成物への使用に適したイソシアネート官能性架橋剤は、少なくとも2のイソシアネート基を含んでいるイソシアネート官能性化合物である。好ましくは、イソシアネート官能性架橋剤はポリイソシアネート、たとえば脂肪族、脂環式または芳香族のジ、トリもしくはテトライソシアネートである。ジイソシアネートの例は、1,2−プロピレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ω,ω’−ジプロピルエーテルジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4−メチル−1,3−ジイソシアナトシクロヘキサン、トランスビニリデンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(Desmodur(商標)W)、トルエンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI(商標))、1,5−ジメチル−2,4−ビス(2−イソシアナトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリエチル−2,4−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、4,4’−ジイソシアナトジフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジイソシアナトジフェニル、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジイソシアナトジフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアナトジフェニル、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、およびジイソシアナトナフタレンを含む。トリイソシアネートの例は、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、1,8−ジイソシアナト−4−(イソシアナトメチル)オクタン、およびリシントリイソシアネートを含む。ポリイソシアネートの付加物およびオリゴマー、たとえばビウレット、イソシアヌレート、アロファネート、ウレトジオン、ウレタン、およびこれらの混合物も包含される。このようなオリゴマーおよび付加物の例は、ジイソシアネート、たとえばヘキサメチレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネートの2分子とジオール、たとえばエチレングリコールとの付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートの3分子と水1分子との付加物(Bayer社からDesmodur Nの商標下に入手可能)、トリメチロールプロパンの1分子とトルエンジイソシアネートの3分子との付加物(Bayer社からDesmodur Lの商標下に入手可能)、トリメチロールプロパンの1分子とイソホロンジイソシアネートの3分子との付加物、ペンタエリスリトールの1分子とトルエンジイソシアネートの4分子との付加物、m−α,α,α’,α’−テトラメチルキシレンジイソシアネートの3モルとトリメチロールプロパンの1モルとの付加物、1,6−ジイソシアナトヘキサンのイソシアヌレート3量体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート3量体、1,6−ジイソシアナトヘキサンのウレトジオン2量体、1,6−ジイソシアナトヘキサンのビウレット、1,6−ジイソシアナトヘキサンのアロファネート、およびこれらの混合物である。さらにその上、イソシアネート官能性モノマー、たとえばα,α’−ジメチル−m−イソプロペニルベンジルイソシアネートの(コ)ポリマーは使用に適している。
【0040】
コーティング組成物は、特に低分子量バインダーが任意的に1以上の反応性希釈剤と組み合わされて使用されるときは、揮発性希釈剤なしに使用され施与されることができる。あるいは、コーティング組成物は任意的に揮発性希釈剤を含んでいてもよい。好ましくは全組成物当たり揮発性有機溶媒500g/l未満、より好ましくは480g/l未満、最も好ましくは420g/l以下を、コーティング組成物は含んでいる。該組成物の非揮発性含有量は、通常、固形含有量と呼ばれ、好ましくは全組成物当たり50重量%超、より好ましくは54重量%超、最も好ましくは60重量%超である。
【0041】
好適な揮発性有機希釈剤の例は、炭化水素、たとえばトルエン、キシレン、Solvesso 100、ケトン、テルペン、たとえばジペンテンもしくは松根油、ハロゲン化炭化水素、たとえばジクロロメタン、エーテル、たとえばエチレングリコールジメチルエーテル、エステル、たとえばエチルアセテート、エチルプロピオネート、またはエーテルエステル、たとえばメトキシプロピルアセテートもしくはエトキシエチルプロピオネートである。また、これらの化合物の混合物が使用されることもできる。
【0042】
希釈剤は、少なくとも4炭素原子を有するアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基を含んでいることが好まれる。好ましくは、揮発性希釈剤の少なくとも60重量%、より好ましくは80重量%、最も好ましくは90重量%超が、少なくとも4炭素原子を有するアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基を含んでいる。少なくとも4炭素原子を有するアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基を含んでいる揮発性希釈剤の例は、エステル、たとえばn−ブチルフォーメート、n−ブチルアセテート、n−ブチルプロピオネート、n−ブチルブチレート、これに対応するt−ブチル、sec−ブチル、およびイソブチルのエステル、直鎖または分枝鎖のペンタノール、ヘキサノール、もしくはオクタノール、たとえば2−エチルヘキサノールのエステル、ケトン、たとえばメチルアミルケトンもしくはメチルイソアミルケトン、4超の炭素原子を有する脂肪族炭化水素、少なくとも4炭素原子を有するアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基を含んでいる置換基を有する芳香族炭化水素、エーテル、たとえばジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジオクチルエーテル、ならびにアルコール、たとえば直鎖または分枝鎖のブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、およびオクタノールである。アルコールは、イソシアネート官能性架橋剤とのその反応性の故に、揮発性希釈剤として低度に好まれる。
【0043】
所望であれば、コーティング組成物中に1以上のいわゆる「規制免除溶媒(exempt solvent)」を含めることが可能である。規制免除溶媒とは、スモッグを生成する大気中の光化学反応に関与しない揮発性有機化合物である。これは有機溶媒であり得るが、日光の存在下に窒素酸化物と反応するのに非常に長い時間を要するので、その反応性は無視してよいと、米国環境保護庁はみなしている。塗料およびコーティングへの使用が承認されている規制免除溶媒の例は、アセトン、メチルアセテート、パラクロロベンゾトリフルオリド(Oxsol 100の名称下に商業的に入手可能)、および揮発性メチルシロキサンを含む。また、三級ブチルアセテートは規制免除溶媒とみなされている。
【0044】
本発明に従うコーティング組成物中には、上記の成分に加えて他の成分が存在することができる。このような化合物は、主成分のバインダーおよび/または反応性希釈剤であることができ、任意的に前述のヒドロキシ官能性化合物および/またはイソシアネート官能性架橋剤と架橋されることができる反応性基を含んでいてもよい。その例は、ヒドロキシ官能性バインダー、たとえばポリエーテルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリオール、セルロースアセトブチレート、ヒドロキシ官能性エポキシ樹脂、アルキド、およびデンドリマー性ポリオール、たとえば国際特許出願公開第93/17060号に記載されたものを含む。また、ヒドロキシ官能性オリゴマーおよびモノマー、たとえばヒマシ油、トリメチロールプロパン、およびジオールが存在してもよい。国際公開第98/053013号に記載されたような分枝鎖ジオール、たとえば2−ブチルエチル−1,3−プロパンジオールが特に挙げられることができる。潜在的なヒドロキシ官能性化合物、たとえば二環式オルトエステル、スピロオルトエステル、またはスピロオルトシリケートの基を含んでいる化合物を、コーティング組成物は含んでいることもできる。これらの化合物およびその使用方法は国際公開第97/31073号および国際公開第2004/031256号に記載されている。
【0045】
最後に、ケトン樹脂、アスパルギン酸エステル、ならびに潜在性または非潜在性アミノ官能性化合物、たとえばオキサゾリジン、ケチミン、アルジミン、ジイミン、二級アミン、およびポリアミンが存在することができる。これらおよび他の化合物は当業者に知られており、とりわけ米国特許第5214086号に挙げられている。
【0046】
コーティング組成物はさらに、コーティング組成物に普通に使用される他の成分、添加剤または助剤を含んでいることができ、たとえば顔料、染料、界面活性剤、顔料分散助剤、レベリング剤、湿潤剤、クレーター防止剤、消泡剤、垂れ防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、およびフィラーである。
【0047】
好まれる実施態様では、本発明のコーティング組成物は、ヒドロキシ基とイソシアネート基との間の硬化反応を触媒するための硬化触媒も含んでいる。このような触媒は当業者に知られている。コーティング組成物の非揮発性物質当たりで計算されて、一般に0〜10重量%、好ましくは0.001〜5重量%の量で、より好ましくは0.01〜1重量%の量で、該触媒は使用される。好適な触媒は塩基性触媒、たとえば三級アミン、および金属に基づいた触媒を包含する。好適な金属は亜鉛、コバルト、マンガン、ジルコニウム、ビスマス、およびスズを包含する。コーティング組成物がスズに基づいた触媒を含んでいることが好まれる。スズに基づいた触媒の周知の例は、ジメチルスズジラウレート、ジメチルスズジバーサテート、ジメチルスズジオレエート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、およびスズオクトエートである。
【0048】
コーティング組成物がさらにポットライフ延長剤を含んでいることも好まれる。コーティング組成物のポットライフ、すなわち全成分の混合と粘度が高くなり過ぎて該組成物が施与されることができなくなる時点との間の時間を、ポットライフ延長剤は伸ばす。ポットライフ延長剤は好適には、上述の硬化触媒と同じような量で存在することができる。好まれるポットライフ延長剤は、コーティング組成物の乾燥速度に、限定された悪影響のみを及ぼすか、または全く悪影響を及ぼさない。したがって、これらのポットライフ延長剤は、ポットライフと乾燥速度とのバランスを改良する。好適なポットライフ延長剤の例は、カルボン酸基含有化合物、たとえば酢酸、プロピオン酸またはペンタン酸である。芳香族カルボン酸基含有化合物、特に安息香酸が好まれる。
【0049】
他の好適なポットライフ延長剤は、ジカルボニル化合物、たとえば2,4−ペンタンジオン、フェノール性化合物、三級アルコール、たとえば三級ブタノールおよび三級アミルアルコール、ならびにチオール基含有化合物である。
【0050】
上述のポットライフ延長剤の組み合わせ、たとえば芳香族カルボン酸基含有化合物とチオール基含有化合物との組み合わせを使用することも可能である。
【0051】
コーティング組成物中のポリアクリレートポリオールとポリエステルポリオールとの重量比は、非揮発性物質当たり好適には95:5〜40:60、好ましくは90:10〜50:50、より好ましくは80:20〜60:40である。
【0052】
本発明に従うコーティング組成物中のイソシアネート官能性基とイソシアネートに反応性である基、普通にはヒドロキシ基との当量比は、好ましくは0.5〜4.0、より好ましくは0.7〜2.5、最も好ましくは0.8〜1.2である。一般に、コーティング組成物中のヒドロキシ官能性バインダーとイソシアネート官能性架橋剤との重量比は、非揮発性含有量当たり85:15〜55:45、好ましくは75:25〜65:35である。コーティング組成物が、該コーティング組成物の非揮発性物質当たりイソシアネート官能性架橋剤少なくとも30重量%を含んでいることが特に好まれる。
【0053】
ヒドロキシ官能性バインダーおよびイソシアネート官能性架橋剤を含んでいるコーティング組成物に普通であるように、本発明に従う組成物は限定されたポットライフを有する。したがって、該組成物は好適には多成分組成物として、たとえば二成分組成物としてまたは三成分組成物として提供される。したがって、本発明は、
(i) オレフィン性不飽和モノマーの重合によって得られることができるポリアクリレートポリオールであって、該モノマーの少なくとも40重量%が、少なくとも4炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基を含んでいるポリアクリレートポリオール、および
エステル生成性官能基を有する構成ブロックのエステル化によって得られることができるポリエステルポリオールであって、該構成ブロックの少なくとも30重量%が、エステル生成性官能基につき少なくとも4炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基を含んでおり、該ポリエステルポリオールが280mgKOH/g超のヒドロキシ価および少なくとも2のヒドロキシ官能基を有するポリエステルポリオール
を含んでいるバインダー成分、ならびに
(ii) イソシアネート官能性架橋剤を含んでいる架橋成分
を含んでいるコーティング組成物を調製するための部材のキットにも関する。
【0054】
好まれる実施態様では、バインダー成分はさらに上記の硬化触媒を含んでいる。コーティング組成物がポットライフ延長剤も含んでいるならば、該ポットライフ延長剤はバインダー成分中にまたは任意的な希釈剤成分中に含まれていることが好まれる。
【0055】
任意的な揮発性希釈剤は、部材のキットの成分のいずれかまたは双方中に含まれていることができる。あるいは、揮発性希釈剤を含んでいる第三の希釈剤成分を提供することが可能である。あるいは、希釈剤成分が使用されるならば、硬化触媒およびポットライフ延長剤のいずれかまたは双方は該希釈剤成分中に含まれていてもよい。
【0056】
本発明のコーティング組成物は、部材のキットの成分を混合することによって調製されることができる。
【0057】
基体上へのコーティング組成物の施与は、当業者に知られた任意の方法によることができ、たとえばロール掛け法、スプレー法、はけ塗り法、流し塗り法、浸漬法、およびローラー塗り法による。好ましくは、記載されたようなコーティング組成物はスプレー法によって施与される。
【0058】
本発明のコーティング組成物は、任意の基体に施与されることができる。基体は、例として金属、たとえば鉄、鋼、およびアルミニウム、プラスチック、木材、ガラス、合成物質、紙、皮革、または他のコーティング層であることができる。該他方のコーティング層は本発明のコーティング組成物から構成されることができ、または別のコーティング組成物であることができる。本発明のコーティング組成物は、クリアコート、ベースコート、着色トップコート、プライマー、およびフィラーとして特段の有用性を示す。本発明のコーティング組成物がクリアコートであるときは、好ましくは着色および/または特殊効果付与ベースコートの上に施与される。この場合、該クリアコートは、典型的には自動車の外面上に施与されるような多層ラッカーコーティングの仕上げ層を形成する。ベースコートは、水媒体性ベースコートであってもまたは溶剤媒体性ベースコートであってもよい。
【0059】
橋梁、パイプライン、工業用プラントもしくは工業用ビルディング、石油およびガス設備、または船舶のようなコーティング対象物に、該コーティング組成物は適している。特に、自動車および大型輸送乗物、たとえば列車、バス、および飛行機を仕上げ塗装または再仕上げ塗装するのに該組成物は適している。
【0060】
施与されたコーティング組成物は、たとえば0〜60℃の温度で非常に効果的に硬化されることができる。所望であれば、コーティング組成物は、たとえば60〜120℃の範囲の温度でオーブン硬化されてもよい。あるいは、硬化は(近)赤外線放射によって支援されてもよい。高められた温度で硬化する前に、施与されたコーティング組成物は任意的にフラッシュオフ段階に付されてもよい。
【0061】
本明細書で使用されるコーティング組成物の語句は、接着剤組成物としてのその使用方法も包含することが理解されなければならない。
【0062】
実施例
【0063】
使用された原料物質および略語

【0064】
全般の方法
【0065】
サンプルを125℃まで60分間加熱した後の重量損失を測定することによって、組成物の固形分含有量は測定された。
【0066】
標準物としてポリスチレンを使用するサイズ排除クロマトグラフィーによって、分子量は測定された。
【0067】
ポリアクリレートポリオールの調製
【0068】
加熱および冷却手段、撹拌機、ならびに配量ポンプ付きのオートクレーブ中で、重合が実施された。溶媒の全量の約50〜70重量%がオートクレーブ中に入れられた。該溶媒が160℃まで加熱され、この温度で表1に示された重量比のモノマーの混合物および該モノマーの全重量当たり4.6重量%の重合開始剤(表1の開始剤1)が、配量ポンプによって4時間にわたって添加された。該ポンプおよび配管が溶媒(溶媒の全量の約1〜5重量%)ですすがれ、温度が125℃まで下げられた。溶媒(溶媒の全量の約2〜10重量%)とモノマーの重量当たり0.3重量%のさらなる開始剤(表1の開始剤2)との混合物が添加され、この反応混合物がさらに125℃に1時間保持された。ポリマーは最終固形分含有量まで溶媒で希釈され、室温まで冷却された。キシレンとn−ブチルアセテートとの60:40混合物が使用された比較例AAを除いて、溶媒はn−ブチルアセテートであった。
【0069】
表1および表2に示された酸価およびOH価は、それぞれのポリマーの非揮発性含有量当たりで、すなわち溶媒を除いて計算された。理論的ガラス転移温度(Tg)は℃単位で示される。固形分含有量は、ポリマー溶液の重量%単位で示される。ポリオールの平均ヒドロキシ官能基数はf(OH)として表1および表2に示される。実施例および比較例に使用されたポリアクリレートポリオールのモノマー組成および特性が、以下の表1にまとめられる。
【表1】

【0070】
ポリエステルポリオールの調製
【0071】
撹拌機、加熱装置、熱電対、充填カラム、凝縮器および水分離器を備えた反応容器中で、表2に示された重量割合のポリエステル構成ブロックが加熱された。さらに、該構成ブロック当たりで計算されて1重量%の量の85重量%水性リン酸が触媒として添加された。不活性ガス下に温度が徐々に240℃まで上げられた。カラムの頂部温度が102℃を超えないような速度で、反応水が留去された。表2に列挙されたパラメータに到達するまで、反応は行われた。溶媒を含んでいない得られたポリエステルポリオールの特性が表2に提示される。TMPとエプシロンカプロラクトンとに基づいた、市販の低分子量3官能性ポリオールであるCAPA 3031が、比較の目的のために表2に入れられた。
【表2】

【0072】
コーティング組成物の調製
【0073】
表3に示された重量割合の成分を混合することによって、クリアコート組成物の最初の一組が調製された。ヒドロキシ基とイソシアネート基とのモル比は全ての場合に1:1であった。表3に挙げられた成分に加えて、全てのクリアコート組成物は以下の添加剤を含有していた。
安息香酸1.5重量部
ジブチルスズジラウレート0.021〜0.030重量部
BYK 331の0.1重量部
ヒンダードアミン光安定剤1重量部、および
Tinuvin 1130の0.6重量部。
組成物の全樹脂固形分当たりで、添加剤の量は計算された。
【表3】

1)規制免除溶媒は、米国法下のVOC含有量の計算のために考慮に入れられない溶媒である。実施例3の規制免除溶媒は、2−エチルヘキシルアセテート14.4g、2−メトキシプロピルアセテート13.7g、パラクロロベンゾトリフルオリド16.1g、およびアセトン18.1gからなっていた。
2)実施例3のVOC値は、揮発性有機化合物として規制免除溶媒を考慮に入れないで追加的に計算された。
【0074】
ベースコート層を予めコーティングされた金属板上にコーティングロボットによって、クリアコート組成物はスプレー塗布された。層厚さ勾配をもって、該クリアコートは施与された。フラッシュオフ期間後に、サンプルは60℃のオーブン中で55分間乾燥され、その後室温に放置され完全に硬化された。硬化後に、80μmのクリアコート層厚さのところの4cmの領域でピンホールの数が計数された。一般的な外観を判定するために、エナメル耐久性(EHO)が目視で測定された。以下の様相、すなわち光沢、しわ寄り、流れ、および像の鮮映性/明瞭性が考慮に入れられた。これらの様相は1〜10の尺度(1=非常に悪い外観、10=優れた外観)に基づく一つの点数へとまとめられた。
【表4】

【0075】
本発明に従う実施例1〜3および比較例C1〜C6の最初の一組は、ポリアクリレートポリオールのモノマー組成の影響を実証する。ポリアクリレートポリオールが、少なくとも4炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基を含んでいるモノマー40重量%未満を有している全ての比較例においては、全ての比較例のサンプルが、容認できないほど高い数のピンホールを有するコーティングをもたらす。本発明に従う実施例1〜3は、たとえあったとしても比較例より有意に低い量のピンホールを示す。これらのクリアコートの他の特性は、同じようなレベル上にあった。いわゆる規制免除溶媒が使用されるときにも本発明の効果が存在することを、実施例3は実証する。
【0076】
表5に示された重量割合の成分を混合することによって、クリアコート組成物の第二の組が調製された。全ての場合に、ヒドロキシ基とイソシアネート基とのモル比は1:1であった。全ての場合にVOCは420g/lであった。表5に挙げられた成分に加えて、全てのクリアコート組成物は以下の添加剤を含有していた。
安息香酸1.5重量部
ジブチルスズジラウレート0.035重量部
BYK 331の0.1重量部
ヒンダードアミン光安定剤1重量部、および
Tinuvin 1130の0.6重量部。
組成物の全樹脂固形分当たりで、添加剤の量は計算された。
【表5】

【0077】
表5のクリアコート組成物は、上記のように施与され乾燥された。垂れ長さの測定のために、板はパンチ穴を設けられた。目視で乾燥した板の層厚さ80μmのところのパンチ穴から下へのクリアコートの垂れ長さが測定された。硬化後2時間、1日後、および3日後に、サンプルのペルソー(Persoz)硬度が測定された。その結果が秒単位で示される。60℃で硬化した後、熱いコーティング表面上に指を押し付けることによって、高温粘着性が測定された。1〜10の尺度(1=非常に粘着性、10=粘着性でない。)に基づいて、その結果が報告される。
【表6】

【0078】
本発明に従う実施例4および5ならびに比較例C7〜C10の第二の組は、ポリエステルポリオールの構成ブロックおよび特性の影響を実証する。本発明に従う実施例4および5は、全般に良好な特性を示す。比較例C7では、わずか270mgKOH/g、すなわち本発明に従って要求される値よりわずかに下のヒドロキシ価を有するポリエステルポリオールが使用された。最初の硬化後に、許容できないほど低い初期ペルソー硬度および粘着性の表面を、これはもたらす。さらにより低いヒドロキシ価および2未満のヒドロキシ官能基を有するポリエステルポリオールが使用されている比較例C8において、これらの不利点はさらにより明白である。さらにその上、比較例C8の垂れの性向は許容できない。また、ヒドロキシ価は280mgKOH/g超であっても、ポリエステルポリオールの官能基数が2未満であると、たとえば比較例C9におけるように、初期および最終のペルソー硬度は低すぎる。構成ブロックの少なくとも30重量%が、エステル生成性官能基につき少なくとも4炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル(アルケニル)またはアルキレン(アルケニレン)基を有するという要件を満たさないポリエステルポリオールが使用されると、ピンホールの生成は、許容できないレベル上にある。このことは、比較例C10から推測されることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) オレフィン性不飽和モノマーの重合によって得られることができるポリアクリレートポリオールであって、該モノマーの少なくとも40重量%が、少なくとも4炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル、アルケニル、アルキレンまたはアルケニレン基を含んでいるポリアクリレートポリオール、
b) エステル生成性官能基を有する構成ブロックのエステル化によって得られることができるポリエステルポリオールであって、該構成ブロックの少なくとも30重量%が、エステル生成性官能基の1つ当り少なくとも4炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル、アルケニル、アルキレンまたはアルケニレン基を含んでおり、該ポリエステルポリオールが280mgKOH/g超のヒドロキシ価および少なくとも2のヒドロキシ官能基を有するポリエステルポリオール、および
c) イソシアネート官能性架橋剤
を含んでいるコーティング組成物。
【請求項2】
クリアコート組成物であることを特徴とする、請求項1に従うコーティング組成物。
【請求項3】
さらに硬化触媒を含んでいることを特徴とする、請求項1または2に従うコーティング組成物。
【請求項4】
硬化触媒が金属に基づいた硬化触媒であることを特徴とする、請求項3に従うコーティング組成物。
【請求項5】
さらに少なくとも1のポットライフ延長剤を含んでいることを特徴とする、請求項3に従うコーティング組成物。
【請求項6】
ポットライフ延長剤が、カルボン酸、チオール官能性化合物、またはこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項5に従うコーティング組成物。
【請求項7】
(i) オレフィン性不飽和モノマーの重合によって得られることができるポリアクリレートポリオールであって、該モノマーの少なくとも40重量%が、少なくとも4炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル、アルケニル、アルキレンまたはアルケニレン基を含んでいるポリアクリレートポリオール、および
エステル生成性官能基を有する構成ブロックのエステル化によって得られることができるポリエステルポリオールであって、該構成ブロックの少なくとも30重量%が、エステル生成性官能基の1つ当り少なくとも4炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル、アルケニル、アルキレンまたはアルケニレン基を含んでおり、該ポリエステルポリオールが280mgKOH/g超のヒドロキシ価および少なくとも2のヒドロキシ官能基を有するポリエステルポリオール
を含んでいるバインダー成分、ならびに
(ii) イソシアネート官能性架橋剤を含んでいる架橋剤成分
から成る、請求項1〜6のいずれか1項に従うコーティング組成物を調製するための部材のキット。
【請求項8】
バインダー成分が、さらに硬化触媒を含んでいることを特徴とする、請求項7に従う部材のキット。
【請求項9】
バインダー成分が、さらにポットライフ延長剤を含んでいることを特徴とする、請求項7または8に従う部材のキット。
【請求項10】
さらに揮発性希釈剤を含んでいる希釈剤成分を含んでいることを特徴とする、請求項7に従う部材のキット。
【請求項11】
希釈剤成分が、さらに硬化触媒およびポットライフ延長剤を含んでいることを特徴とする、請求項10に従う部材のキット。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に従うコーティング組成物が使用されることを特徴とする、コーティング組成物を基体に施与する方法。
【請求項13】
コーティング組成物が、多層ラッカーコーティングにおけるトップコートとして施与されることを特徴とする、請求項12に従う方法。
【請求項14】
基体が自動車または大型輸送乗物であることを特徴とする、請求項12に従う方法。
【請求項15】
自動車または大型輸送乗物を仕上げ塗装または再仕上げ塗装するのに使用されることを特徴とする、請求項12に従う方法。

【公表番号】特表2009−504864(P2009−504864A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526497(P2008−526497)
【出願日】平成18年8月16日(2006.8.16)
【国際出願番号】PCT/EP2006/065352
【国際公開番号】WO2007/020269
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(500286643)アクゾ ノーベル コーティングス インターナショナル ビー ヴィ (67)
【Fターム(参考)】