説明

ポリアミド樹脂組成物

【課題】低コスト、かつガスバリア性に優れ、ゲル状物質の生成が少ないポリアミド樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】メタキシリレンジアミンを含むジアミン、および鉱酸濃度が20ppm以下のアジピン酸を含むジカルボン酸を、リン原子含有化合物(A)およびアルカリ金属化合物(B)存在下で溶融重縮合して得られるポリアミド(X)に、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウムおよびそれらの誘導体から選択される1種以上のカルボン酸塩類(C)を400〜10000ppmの濃度で混合してなるポリアミド樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメタキシリレン基を含有するポリアミドに関する。詳しくは、低コストかつ長時間連続した成形加工操作においてもゲルの発生が少ないポリアミドに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー主鎖にメタキシリレン基を含有するポリアミドは剛性が高く、熱的性質にも優れるため、エンジニアリングプラスチックとして広く利用されている。またメタキシリレン基をポリマー主鎖に持つことから酸素や炭酸ガス等を遮断する性能にも優れており、フィルム、ボトル、シート等の様々な包装材料のガスバリア材料としても利用されている。包装材料として利用される該ポリマーの低コスト化には、純度の低い安価なモノマー原料の利用可能とすることが良策だが、それには生成するポリマーが従来品と比べ着色や透明性に遜色無く、かつ長時間の成形加工時にも異物の生成が少ないものであることが不可欠である。
【0003】
メタキシリレン基含有ポリアミドにおけるジカルボン酸モノマーとしてはアジピン酸が広く利用されるが、アジピン酸の工業的な製造方法として、シクロヘキサノール、もしくはシクロヘキサノンとシクロヘキサノール混合物(KAオイル)を、鉱酸を用いて酸化させる方法が一般的に行われている。上記鉱酸としては硝酸が用いられることが多く、まれには塩酸、硝酸の混合酸およびホウ酸が用いられることもある。酸化反応で得られたアジピン酸の精製方法としては通常水洗法あるいはアルカリ化合物の添加による中和法が用いられるが、安価な水洗法を採用すると製品アジピン酸中に塩酸、硝酸、ホウ酸等の鉱酸が通常4〜10ppm残存する。上記濃度の鉱酸を含むアジピン酸を用いて常法によりポリアミドを製造すると、成形加工時において溶融混練時に高分子量重合物の架橋反応が促進され、経時と共に多量のゲル状物質が発生し易くなる。その為、フィルム成形時にはフィッシュアイの増加や、ゲルを起点としてフィルムの破断が生じ、生産性の低下などの問題が生じてしまう。本発明は上記濃度の硝酸を含むアジピン酸を用いて、長時間滞留させた場合においてもゲル状物質の生成が少なく、射出成形用材料、フィルム・シート等の包装材料、およびモノフィラメント、繊維用材料として工業的に有用なポリアミドを提供することにある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、低コスト、かつガスバリア性に優れ、ゲル状物質の生成が少ないポリアミド樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らはメタキシリレンジアミンとアジピン酸を用いたポリアミドに関し鋭意検討した結果、ステアリン酸カルシウム等の特定のカルボン酸塩類を400〜10000ppmの濃度で混合した場合において、高濃度の硝酸を含有するアジピン酸を用いて合成したポリアミドに対し、連続成形加工時の想定を越える過酷な条件での滞留操作を行った際においても、ゲル状物質の生成が抑制されることを発見し本発明に到達した。
すなわち、本発明はメタキシリレンジアミンを含むジアミン、および鉱酸濃度が20ppm以下のアジピン酸を含むジカルボン酸を、リン原子含有化合物(A)およびアルカリ金属化合物(B)存在下で溶融重縮合して得られるポリアミド(X)に、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウムおよびそれらの誘導体から選択される1種以上のカルボン酸塩類(C)を400〜10000ppmの濃度で混合してなるポリアミド樹脂組成物に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明のポリアミド樹脂組成物は原料の低コスト化、色調が良好で、かつ長時間の成形加工においてもゲル生成が少なくガスバリア材料として各種包装材料に利用できる非常に有用なものであり、その工業的価値は非常に高い。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のポリアミド樹脂組成物を構成するポリアミド(X)は、メタキシリレンジアミンを含むジアミンと鉱酸濃度が20ppm以下のアジピン酸を含むジカルボン酸とを重縮合して得られるポリアミドである。
【0008】
ポリアミド(X)を構成するジアミンは、メタキシリレンジアミンが70モル%以上含まれることが好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
ジアミン中のメタキシリレンジアミンが70モル%以上であると、それから得られるポリアミドは優れたガスバリア性を発現することができる。
メタキシリレンジアミン以外に使用できるジアミンとしては、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0009】
ポリアミド(X)を構成するジカルボン酸は、アジピン酸が70モル%以上含まれることが好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
アジピン酸が70モル%以上であると、ガスバリア性の低下や結晶性の過度の低下を避けることができる。
アジピン酸中の鉱酸濃度は20ppm以下の範囲が好ましく、さらに好ましくは15ppm以下である。鉱酸の種類は、硝酸、塩酸、硝酸および塩酸の混和物が特に一般的であり、より一般的には硝酸である。
アジピン酸中の鉱酸濃度が20ppmを超えると、ポリアミド(X)の製造時、ならびに成形加工時にゲルが多量に生成するため、品質や生産性の低下を起こす。
アジピン酸以外に共重合成分として使用できるジカルボン酸としては、セバシン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカンジカルボン酸、ウンデカン二酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、キシリレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸等が例示され、このうちの1種以上が好ましく使用されるが、これらに限定されるものではない。
【0010】
前記のジアミン、ジカルボン酸以外にも、ポリアミド(X)を構成する成分として、本発明の効果を損なわない範囲でε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類;アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類;パラ−アミノメチル安息香酸のような芳香族アミノカルボン酸等も共重合成分として使用できる。
【0011】
ポリアミド(X)の重縮合系内に添加されるリン原子含有化合物(A)としては、ジメチルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム、次亜リン酸エチル、フェニル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸ナトリウム、フェニル亜ホスホン酸カリウム、フェニル亜ホスホン酸リチウム、フェニル亜ホスホン酸エチル、フェニルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸ナトリウム、フェニルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム、フェニルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸ナトリウム、エチルホスホン酸カリウム、亜リン酸、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ピロ亜リン酸等が挙げられ、これらの中でも特に次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム等の次亜リン酸金属塩がアミド化反応を促進する効果が高く、かつ着色防止効果にも優れるため好ましく用いられ、特に次亜リン酸ナトリウムが好ましい。
本発明で使用できるリン原子含有化合物(A)はこれらの化合物に限定されない。
【0012】
リン原子含有化合物(A)の添加量は、ポリアミド(X)中のリン原子濃度換算で1〜400ppmであることが好ましく、より好ましくは3〜350ppmであり、さらに好ましくは5〜300ppmである。
1ppmを下回る場合、重合中にポリアミドが着色する傾向にあり好ましくない。
また400ppmを超える場合、ポリアミドのゲル化反応が促進されたり、リン原子含有化合物(A)に起因すると考えられるフィッシュアイが成形品中に混入する場合があり、成形品の外観が悪化する傾向があるため好ましくない。
【0013】
また、ポリアミド(X)の重縮合系内には、リン原子含有化合物(A)と併用してアルカリ金属化合物(B)を添加することが好ましい。
重縮合中のポリアミドの着色を防止するためにはリン原子含有化合物(A)を十分な量存在させる必要があるが、場合によってはポリアミドのゲル化を招く恐れがあるため、アミド化反応速度を調整するためにもアルカリ金属化合物(B)を共存させることが好ましい。
アルカリ金属化合物(B)としては、アルカリ金属水酸化物やアルカリ金属酢酸塩が好ましい。
本発明で用いることのできるアルカリ金属化合物(B)としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム等が挙げられるが、これらの化合物に限定されることなく用いることができる。
【0014】
ポリアミド(X)の重縮合系内にアルカリ金属化合物(B)を添加する場合、該化合物のモル数をリン原子含有化合物(A)のモル数で除した値が0.5〜1となるようにすることが好ましく、より好ましくは0.55〜0.95であり、さらに好ましくは0.6〜0.9である。
この値が0.5を下回る場合、リン原子含有化合物(A)のアミド化反応促進効果を抑制する効果が不足することがあり、場合によってはポリアミド中のゲルが多くなることがある。また1を超えるとリン原子含有化合物(A)のアミド化反応促進効果を抑制しすぎて、重縮合の進行が遅くなり、場合によってはポリアミド製造時の熱履歴が増加してポリアミドのゲルが多くなることがあるので好ましくない。
【0015】
ポリアミド(X)をそのまま成形加工して得られる成形品は、成形加工作業の経時とともにフィッシュアイ等の発生が増加し、製品の品質が不安定になったり、フィルムの破断により装置を停止せざるを得なくなり、生産効率が悪化することがある。
これは溶融混練部からダイス間において、ポリアミド(X)が局所的に滞留し続けることにより、過剰加熱されてゲル化し、かつ生成したゲルが流れ出すために起こると推測される。
【0016】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、成形加工中に起こるポリアミド(X)中のゲル化を防止するため、ポリアミド(X)に、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウムおよびそれらの誘導体から選択される1種以上のカルボン酸塩類(C)を400〜10000ppm混合してなるものであり、成形加工に適している。ここで該誘導体としては、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸ナトリウム等の12−ヒドロキシステアリン酸金属塩等が挙げられる。また、カルボン酸塩類(C)のより好ましい添加量はポリアミド樹脂組成物中の濃度として800〜5000ppmであり、さらに好ましくは1000〜3000ppmである。400ppmを下回る場合、ポリアミド(X)の熱劣化の抑制効果が不足し、ゲル化を防止できない場合がある。
また10000ppmを超える場合、ポリアミド(X)が押出機に食い込まなくなり成形不良を起こすことがある他、場合によっては着色や白化することがあるため好ましくない。
溶融したポリアミド(X)中に塩基性物質であるカルボン酸塩類(C)が存在すると、ポリアミド(X)の熱による変性が遅延し、最終的な変性物と考えられるゲルの生成を抑制すると推測される。
なお、前述のカルボン酸塩類(C)はハンドリング性に優れ、この中でもステアリン酸金属塩は安価である上、滑剤としての効果を有しており、成形加工をより安定化することできるため好ましい。
【0017】
カルボン酸塩類(C)とポリアミド(X)の混合は、従来公知の方法を用いることができるが、低コストでかつ熱履歴を受けない乾式混合が好ましく行われる。
例えば、タンブラーにポリアミド(X)とカルボン酸塩類(C)を入れ、回転させることで混合する方法が挙げられる。
本発明ではカルボン酸塩類(C)の形状に特に制限はないが、粉体でかつその粒径が小さい方が乾式混合にて樹脂組成物中に均一に分散させることが容易であるため、その粒径は0.2mm以下が好ましい。
また本発明では乾式混合後のポリアミド(X)とカルボン酸塩類(C)の分級を防止するために粘性のある液体を展着剤としてポリアミド(X)に付着させた後、カルボン酸塩類(C)を添加、混合する方法を採ることもできる。
展着剤としては、界面活性剤等が挙げられるが、これに限定されることなく公知のものを使用することができる。
【0018】
本発明のポリアミド樹脂組成物はフィルム、シート、ボトル等の各種包装材料はもちろん、モノフィラメント、成形材料等様々なものに使用することができる。
また包装材料を形成する際には他の熱可塑性樹脂材料や金属箔、板紙等と組み合わせて使用することができ、さらに本発明のポリアミド樹脂組成物と他の熱可塑性樹脂を溶融混合して使用することもできる。
【実施例】
【0019】
以下実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0020】
<実施例1>
(ポリアミド樹脂の製造)
硝酸10ppmを含有するアジピン酸10kg(68.4mol)、次亜リン酸ナトリウム一水和物8.71g(81.2mmol)および酢酸ナトリウム4.55g(55.5mmol)を内容積50リットルのステンレス製反応缶に仕込み、170℃に加熱してアジピン酸を溶融した。溶融後、メタキシリレンジアミン9.3kg(68.4mol)を徐々に滴下し、かつ内温を240℃まで上昇させた。滴下時間は2.5時間要した。滴下終了後、内温を260℃に上昇させ、260℃に到達した時点で缶内を減圧にした。260℃で20分間反応を継続した。反応終了後、缶内を窒素で微加圧にし、5穴を有するダイヘッドからストランドを押出し、ペレタイザーでペレット化した。得られたペレットを内容積150リットルのタンブラーに仕込み、減圧下に205℃で2時間固相重合を行った。上記反応で得られたポリメタキシリレンアジパミドの相対粘度は3.70で分子量は42000であった。
(ポリアミド樹脂組成物の調製)
得られたポリメタキシリレンアジパミド2kgに対して、ステアリン酸カルシウム1200mgを加え、撹拌混合してポリアミド樹脂組成物1を得た。
(フィルムの製造)
次いで、25mmφ単軸押出機、600メッシュのフィルターを設けたヘッド、Tダイからなるフィルム押出機、冷却ロール、巻き取り機等を備えた引き取り装置を使用して、押出機からポリアミド樹脂組成物1を3kg/hの吐出速度に保持しつつフィルム状に押し出し、引き取り速度を調節して幅15cm、厚み300ミクロンのフィルムとし、巻き取り機にて巻き取った。また押出機ヘッドの樹脂圧力を観察し、その変化の有無を確認した。
(溶融滞留サンプルの作成)
次いで、フィルムを30mmφの同心円状に切り取とった後、同様に調整した円状フィルムを四枚に重ね、同径にくり抜いた穴を持つ1mm厚の100×100mmテフロン(登録商標)シートに重ねたフィルムをはめ込み、さらに上下を1mm厚の100×100mmテフロンシートにて挟み込んだ。
ついで、中央部に3mm厚の120×120mmの溝を持つ15×150×150mm金属板にテフロンシートで挟み込んだフィルムを中央に配置し、溝の無い15×150×150mm金属板にて蓋をした後、金属板同士をボルトで固定した。
60T熱プレス機にて同金属板を挟んだ状態で290℃にて24時間加熱を続けた。
加熱の終了後に金属板を取り出して間接水冷し、十分に冷却されてから滞留サンプル1を取り出した。
(樹脂の溶解ならびに濾過)
次いで、滞留サンプル1を100mg秤量し、60℃にて30分恒温乾燥機にて乾燥させ、乾燥した1を20mlの純度99%以上のヘキサフルオロイソプロパノール(以下「HFIP」と称す)に24時間浸漬後、さらに48時間緩やかに撹拌し、予め秤量した300ミクロン孔径のポリテトラフルオロエチレン製メンブレンフィルターを通し減圧濾過した。
メンブレンフィルターに残った残渣をHFIPにて洗浄した後、残渣の付着したフィルターを60℃にて30分恒温乾燥機にて乾燥した。
次いで、乾燥させた残渣とフィルターの総重量を秤量し、予め秤量したフィルター重量との差から、滞留サンプル1のHFIP不溶成分量(ゲル量)を算出した。
ゲル分率は滞留サンプル1に対するHFIP不溶成分の重量%として求めた。結果を表1に示す。
【0021】
<実施例2>
実施例1と同様のポリアミド樹脂を用い、ステアリン酸カルシウムの添加量を1600mgとした以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレスによる溶融滞留を実施し、滞留サンプル2を得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
【0022】
<実施例3>
実施例1と同様のポリアミド樹脂を用い、ステアリン酸カルシウムの添加量を2000mgとした以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレスによる溶融滞留を実施し、滞留サンプル3を得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
【0023】
<実施例4>
実施例1と同様のポリアミド樹脂を用い、ステアリン酸カルシウムの添加量を16000mgとした以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレスによる溶融滞留を実施し、滞留サンプル4を得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
【0024】
<実施例5>
実施例1と同様のポリアミド樹脂を用い、ステアリン酸カルシウムに代わって、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムと酸化マグネシウムの1:1の混合物を添加量800mgとして添加した以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレスによる溶融滞留を実施し、滞留サンプル5を得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
【0025】
<実施例6>
実施例1と同様のポリアミド樹脂を用い、ステアリン酸カルシウムに代わって、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムと酸化マグネシウムの1:1の混合物を添加量2000mgとして添加した以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレスによる溶融滞留を実施し、滞留サンプル6を得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
【0026】
<比較例1>
硝酸30ppmを含有するアジピン酸を用いて実施例1と同様にポリメタキシリレンアジパミドを製造し、ステアリン酸カルシウムの添加量を2000mgとした以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレスによる溶融滞留を実施し、滞留サンプル7を得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
【0027】
<比較例2>
硝酸30ppmを含有するアジピン酸を用いて実施例1と同様にポリメタキシリレンアジパミドを製造し、ステアリン酸カルシウムに代わって12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムと酸化マグネシウムの1:1の混合物を添加量2000mgとして添加した以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレスによる溶融滞留を実施し、滞留サンプル8を得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
【0028】
<比較例3>
実施例1と同様のポリアミド樹脂を用い、ステアリン酸カルシウムを添加しなかった事以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレスによる溶融滞留を実施し、滞留サンプル9を得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
【0029】
<比較例4>
実施例1と同様のポリアミド樹脂を用い、ステアリン酸カルシウムの添加量を400mgとした以外は実施例1と同様にしてフィルム化と熱プレスによる溶融滞留を実施し、滞留サンプル10を得、実施例1と同様にHFIPへの不溶成分の分量を測定した。
結果を表1に示す。
【0030】
<比較例5>
実施例1と同様のポリアミド樹脂を用い、ステアリン酸カルシウムの添加量を30000mgとした以外は実施例1と同様にしてフィルム化を行った。尚、成形フィルムの白化が見られたため、HFIP不溶成分量(ゲル量)の算出は行わなかった。
結果を表1に示す。
【0031】
表1記載の略称は、それぞれ以下のものを表す。
StCa:ステアリン酸カルシウム
EMS6:12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムおよび酸化マグネシウム1:1混合物
【表1】

【0032】
実施例1〜6では、本発明のポリアミド樹脂組成物は色調が良好で、フィッシュアイの基となるゲルの少ないものであり、さらに全ての例で押出中の樹脂圧力は安定していた。
一方、ステアリン酸カルシウムを添加しなかった比較例3やその添加量が少なかった比較例4では、ゲルが多量に発生し、ゲル成分が多量にHFIP不溶成分として残った様子が観察された。また30ppmの硝酸を含有するアジピン酸を使用した場合(比較例1、2)もゲル成分が多量にHFIP不溶成分として残った。また、15000ppmのステアリン酸カルシウムを添加した場合(比較例5)では成形フィルムの白化が見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタキシリレンジアミンを含むジアミン、および鉱酸濃度が20ppm以下のアジピン酸を含むジカルボン酸を、リン原子含有化合物(A)およびアルカリ金属化合物(B)存在下で溶融重縮合して得られるポリアミド(X)に、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウムおよびそれらの誘導体から選択される1種以上のカルボン酸塩類(C)を400〜10000ppmの濃度で混合してなるポリアミド樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−159334(P2010−159334A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1671(P2009−1671)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】