説明

ポリアミド系多層フィルム

【課題】屈曲による耐ピンホール性とガスバリア性に優れ、かつ美麗な外観を有するポリアミド系多層フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】ポリアミド層(A層)、酸素バリア層(B層)及びポリアミド層(C層)が、この順で積層されたポリアミド系多層フィルムであって、
(A)層が、脂肪族ポリアミドを含有し、
(B)層が、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物を55〜95重量%、軟質重合体を5〜45重量%含有し、
(C)層が、脂肪族ポリアミドを含有する
ことを特徴とする、ポリアミド系多層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈曲による耐ピンホール性とガスバリア性に優れ、かつ美麗な外観を有するポリアミド系多層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド系樹脂からなるフィルムは強靭性を有するフィルムとして多方面で使用されている。その中でも、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物等のバリア層を含む多層フィルムはバリア性にも優れるフィルムとして広く利用されている。
【0003】
このような多層フィルムは、例えば市場に流通する食品等の包装フィルムとして用いられる場合、その搬送、運送等においてピンホールを生じる場合があった。このピンホールのために多層フィルムの優れたガスバリア性が阻害される結果となっていた。このため、市場からは更なる強靭性の向上、特に耐ピンホール性の向上が望まれている。
【0004】
このような市場からの要望に対し、ピンホールの発生を抑えるためにポリアミド層に軟質成分を配合し、ポリアミド層を柔軟化し、包装フィルムの屈曲性を改良することが試みられてきた。しかし軟質成分を配合することによって表面の光沢が低下して包装フィルムとしての意匠性が低下したりしていた。このため屈曲性を改良しつつバリア性と光沢の低下がないフィルムが強く望まれていた。
【特許文献1】特開2008−188776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、屈曲による耐ピンホール性とガスバリア性に優れ、かつ美麗な外観を有するポリアミド系多層フィルムを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記問題に鑑み、鋭意研究を行った結果、脂肪族ポリアミドを含有するポリアミド層(A層)、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物を55〜95重量%、軟質重合体を5〜45重量%含有する酸素バリア層(B層)及び脂肪族ポリアミドを含有するポリアミド層(C層)が、この順で積層されることにより、上記課題が解決されたポリアミド系多層フィルムが得られることを見出した。本発明はこのような知見に基づき、完成されたものである。すなわち、本発明は、以下のポリアミド系多層フィルムに係る。
【0007】
項1.ポリアミド層(A層)、酸素バリア層(B層)及びポリアミド層(C層)が、この順で積層されたポリアミド系多層フィルムであって、
(A)層が、脂肪族ポリアミドを含有し、
(B)層が、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物を55〜95重量%、軟質重合体を5〜45重量%含有し、
(C)層が、脂肪族ポリアミドを含有する
ことを特徴とする、ポリアミド系多層フィルム。
【0008】
項2.(A)層が、脂肪族ポリアミドを75〜100重量%、芳香族ポリアミドを0〜25重量%含有する、項1に記載のポリアミド系多層フィルム。
【0009】
項3.MD方向に2.5〜4.5倍、TD方向に2.5〜5倍に二軸延伸して得られる多層フィルムである、項1又は2に記載のポリアミド系多層フィルム。
【0010】
項4.(A)層及び(C)層の厚みが4μm以上、(B)層の厚みが2〜24μmであり、ポリアミド系多層フィルムの総膜厚が10〜80μmである、項1〜3のいずれかに記載のポリアミド系多層フィルム。
【0011】
項5.さらに一方の面にシール層を有する、項1〜4のいずれかに記載のポリアミド系多層フィルム。
【0012】
項6.項1〜5のいずれかに記載のポリアミド系多層フィルムの両端を、円筒状になるように接着して筒状物とし、さらに該筒状物の開口部の一端を接着して得られる包装用袋。
【0013】
項7.食品包装用である、項6に記載の包装用袋。
【0014】
項8.脂肪族ポリアミドを含有するポリアミド層(A層)用樹脂組成物、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物を55〜95重量%、軟質重合体を5〜45重量%含有する酸素バリア層(B層)用樹脂組成物、及び脂肪族ポリアミドを含有するポリアミド層(C層)用樹脂組成物を、この順になるように共押出により積層し、縦横2軸に延伸し、加熱処理することを特徴とする、ポリアミド系多層フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明のポリアミド系多層フィルムは、耐ピンホール性とガスバリア性に優れ、かつ美麗な外観を有するものである。このような優れた特徴を有する本発明のポリアミド系多層フィルムは、包装用フィルムとして好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
1.ポリアミド系多層フィルム
本発明のポリアミド系多層フィルムは、ポリアミド層(A層)、酸素バリア層(B層)及びポリアミド層(C層)が、この順で積層されたポリアミド系多層フィルムであって、
(A)層が、脂肪族ポリアミドを含有し、
(B)層が、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物を55〜95重量%、軟質重合体を5〜45重量%含有し、
(C)層が、脂肪族ポリアミドを含有する
ことを特徴とする。
【0017】
すなわち、柔軟性つまり耐屈曲性を備えた酸素バリア層(B層)の両面を、ポリアミド層(A層)とポリアミド層(C層)でサンドイッチし、3層の積層構造を有している。そのため、優れた耐ピンホール性及びガスバリア性と、美麗な外観を有している。
【0018】
以下、本発明のポリアミド系多層フィルムの各構成について詳述する。なお、以下、ポリアミド系多層フィルムを単に多層延伸フィルムと略記することがある。
【0019】
(1)(A)層
本発明において、(A)層は、脂肪族ポリアミドを主成分として含有する。
【0020】
(1−1)脂肪族ポリアミド
脂肪族ポリアミドとしては、脂肪族ナイロン及びその共重合体が挙げられる。具体的には、ポリカプラミド(ナイロン−6)、ポリ−ω−アミノヘプタン酸(ナイロン−7)、ポリ−ω−アミノノナン酸(ナイロン−9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン−11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン−12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン−2,6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン−4,6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン−6,10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン−6,12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン−8,6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン−10,8)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン−6/12)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸共重合体(ナイロン−6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン−6/6,6)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン−12/6,6)、エチレンジアミンアジパミド/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン−2,6/6,6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン−6/6,6/6,10)、エチレンアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン−6/6,6/6,10)等を例示でき、これらのうち、2種以上の脂肪族ポリアミドを混合しても良い。
【0021】
好ましい脂肪族ポリアミドとしては、ナイロン−6、ナイロン-6,6、ナイロン−6/6,6(ナイロン6とナイロン6,6との共重合体)が挙げられ、より好ましくはナイロン−6、ナイロン−6/6,6であり、さらに好ましくはナイロン−6である。2種以上の脂肪族ポリアミドとしてはナイロン−6とナイロン−6/6,6の組み合わせ(重量比で50:50〜95:5程度)が好ましい。
【0022】
(1−2)芳香族ポリアミド
(A)層には、さらに、芳香族ポリアミドを含有していてもよい。
【0023】
芳香族ポリアミドとしては、例えば、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン等の芳香族ジアミンと、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる結晶性芳香族ポリアミドが挙げられる。好ましくは、ポリメタキシレンアジパミド(MXD−ナイロン)等の結晶性芳香族ポリアミドである。具体例としては、S−6007、S−6011(いずれも三菱ガス化学(株)製)が例示される。
【0024】
或いは、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンとテレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等のジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる非晶性芳香族ポリアミド(アモルファスナイロン)が挙げられる。好ましくはヘキサメチレンジアミン−テレフタル酸−ヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸の共重合体等である。具体例としては、シーラーPA(三井・デュポンポリケミカル(株)製)、ノバミッドX21(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)等が例示される。
【0025】
本発明の多層延伸フィルムにおける(A)層に芳香族ポリアミドを含有させる場合、脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドの好ましい組み合わせは、ナイロン−6とMXD−ナイロンの組み合わせ、ナイロン−6と非晶性芳香族ポリアミド(アモルファスナイロン)の組み合わせが挙げられる。
【0026】
(1−3)含有量
本発明の多層延伸フィルムにおける(A)層では、脂肪族ポリアミドの含有量が75〜100重量%、好ましくは80〜99重量%;芳香族ポリアミドの含有量が0〜25重量%、好ましくは1〜20重量%含有されるように調整することが好ましい。それぞれの含有量をこの範囲内に調整することで、より優れた延伸性を付与することができる。
【0027】
本発明の多層延伸フィルムにおける(A)層には、脂肪族ポリアミド及び芳香族ポリアミド以外にも、ピンホールの発生を抑制するために、本発明の効果を損なわない範囲で軟質重合体を含ませることもできる。
【0028】
このような軟質重合体としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタアクリル酸共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ポリオレフィン系樹脂に不飽和カルボン酸類をグラフト変性した変性ポリオレフィン系樹脂;アイオノマー樹脂;ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリエステルアミド等のポリアミド系エラストマー;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル又はメタクリル酸エチル等とエチレンの共重合体等のアクリル系又はメタクリル系エラストマー;ポリスチレンからなるハードセグメントと、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエンとポリイソプレンの共重合物、或いはこれらの水素添加物からなるソフトセグメントとから構成されるスチレン系エラストマー等のエラストマー;又はこれらの混合物が使用できる。具体的には、変性ポリオレフィンとして三井化学(株)製のアドマーNF587等が、スチレン−イソブチレン系ブロック共重合体として(株)カネカ製のSIBSTAR−073T等が使用できる。
【0029】
(2)(B)層
本発明において、(B)層は、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物を55〜95重量%、軟質重合体を5〜45重量%含有する。
【0030】
(2−1)エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物
エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物は、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体を、アルカリ触媒等によって鹸化することによって得られる。本発明で使用するエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物は、けん化の方法によって特に限定されない。
【0031】
このエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物は、特に制限はないが、エチレン含有量が55モル%以下、好ましくは20〜50モル%、より好ましくは25〜45モル%であり、酢酸ビニル成分のけん化度が90モル%以上、好ましくは95モル%以上のものを例示できる。具体的には、日本合成化学工業(株)製のソアノールや(株)クラレ製のエバール等が使用できる。なお、エチレン含有量及びけん化度は、例えば、NMR法等により求めることができる。
【0032】
なお、本発明では、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物は、単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。なお、二種以上を用いる場合のエチレン含有量及びけん化度は、その配合重量比から求めることができる。組成が異なる二種以上のエチレン−ビニルアルコール系共重合体をブレンドすることによって成形性と酸素バリア性をさらに一段と向上させることもできる。
【0033】
(2−2)軟質重合体
軟質重合体としてはエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物より弾性率の低いものを用いることができ、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタアクリル酸共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ポリオレフィン系樹脂に不飽和カルボン酸類をグラフト変性した変性ポリオレフィン系樹脂;アイオノマー樹脂;ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリエステルアミド等のポリアミド系エラストマー;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル又はメタクリル酸エチル等とエチレンの共重合体等のアクリル系又はメタクリル系エラストマー;ポリスチレンからなるハードセグメントと、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエンとポリイソプレンの共重合物、或いはこれらの水素添加物からなるソフトセグメントとから構成されるスチレン系エラストマー等のエラストマー;又はこれらの混合物等が使用できる。具体的には、変性ポリオレフィンとして三井化学(株)製のアドマーNF587等が、スチレン−イソブチレン系ブロック共重合体として(株)カネカ製のSIBSTAR−073T等が使用できる。
【0034】
更に軟質重合体に酸素吸収能が付与されているとバリア性が低下することなく好ましい。酸素吸収能が付与されている軟質重合体は上記軟質重合体に酸素吸収剤が分散されたものや軟質重合体自体に酸素吸収能を持つものが例示される。
【0035】
軟質重合体に分散される酸素吸収剤としては、アスコルビン酸や鉄系の金属粉等が例示される。
【0036】
酸素吸収能を持つ軟質重合体としては共役二重結合やシクロヘキセン基を含有するゴム等であり、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム(BIR)等の共役ジエンの単独又は共重合体;スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレン−イソブチレン共重合体ゴム(IIR)、エチレン−プロピレン−ジエン系共重合体ゴム(EPDM)、スチレン−イソプレンブロック共重合体等の共役ジエンとこれと共重合可能な単量体との共重合体、これらの環化物等である。
【0037】
(2−3)含有量
本発明の多層延伸フィルムにおける(B)層では、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物の含有量が55〜95重量%、好ましくは65〜90重量%;軟質重合体の含有量が5〜45重量%、好ましくは10〜35重量%含有されるように調整する。エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物の含有量が55重量%より少なく、軟質重合体の含有量が45重量%より多い場合には、(B)層と(A)層や(C)層との層間強度が低くなり、実用上問題が生じる。一方、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物の含有量が95重量%より多く、軟質重合体の含有量が5重量%より少ない場合には、耐屈曲性の改善が不充分となり、耐ピンホール性を付与できない。
【0038】
なお、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物と軟質重合体は製造時にドライブレンドしても良いし、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物と軟質重合体が分散された状態の樹脂を購入して使用しても良い。
【0039】
また、本発明の多層延伸フィルムにおける(B)層には、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物及び軟質重合体以外にも、ピンホールの発生を抑制するために、本発明の効果を損なわない範囲で軟質成分を含ませることもできる。
【0040】
(3)(C)層
本発明において、(C)層は、脂肪族ポリアミドを主成分として含有する。この(C)層は、(A)層の説明で記載したものを用いることができる。また、(A)層と同じものを用いてもよいし、(A)層とは違うものを用いてもよい。
【0041】
(4)層構成
本発明のポリアミド系多層フィルムは、脂肪族ポリアミドを含有するポリアミド層(A層)、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物を55〜95重量%、軟質重合体を5〜45重量%含有する酸素バリア層(B層)及び脂肪族ポリアミドを含有するポリアミド層(C層)が、この順で積層されてなるものである。こうすることで、本発明のポリアミド系多層フィルムは、耐ピンホール性とガスバリア性に優れ、かつ美麗な外観を有するものである。
【0042】
なお、本発明のポリアミド系多層フィルムの各層中には、本発明の目的を阻害しない範囲で、異種のポリマーを混合していてもよいし、また、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、造核剤等の添加剤が添加されていてもよい。
【0043】
(A)層と(C)層は、上述のように、同一でもよいし、異なっていてもよいが、後述するポリアミド系多層フィルムの製造における簡便さ等の点から、同一であることが好ましい。
【0044】
以上のような層構成を有する本発明のポリアミド系多層フィルムの総膜厚は、用途にあわせて適宜設定することができ、特に限定されないが、通常10〜80μm程度、好ましくは12〜60μm程度である。
【0045】
また、各層の膜厚は、通常、(A)層及び(C)層は通常4μm程度、好ましくは4〜28μm程度、より好ましくは5〜25μm程度である。(A)層及び(C)層の厚みが4μm以上であることによって、耐ピンホール性等の優れた機能が本発明のポリアミド系多層フィルムに付与され得る。
【0046】
さらに、(B)層の厚みは、通常2〜24μm程度、好ましくは2〜20μm程度である。(B)層の厚みが2〜24μmであることによって、充分なバリア性と屈曲による耐ピンホール性が本発明のポリアミド系多層フィルムに付与されうる。
【0047】
なお、各層の厚み比率は、(B)層を1としたときに、(A)層及び(C)層が0.5〜10.0であることが好ましく、0.7〜7.0であることがより好ましい。
【0048】
また、本発明のポリアミド系多層フィルムの外層又は各層間には、必要に応じてシール層や接着樹脂層等を設けてもよい。
【0049】
2.製造方法
本発明のポリアミド系多層フィルムの製造方法は特に指定されないが、例えば、各層の原料を170〜270℃のシリンダー温度に設定された押出機で溶融混錬し、各層の順になるようにTダイより冷却水が循環するチルロール上に共押出せしめ、フラット状の多層フィルムを得る。
【0050】
得られたフィルムは、一軸延伸又は二軸延伸(同時二軸延伸、逐次二軸延伸)しても良い。延伸倍率は例えば、縦延伸(MD)2.5〜4.5倍、横延伸(TD)2.5〜5.0倍である。
【0051】
例えば、逐次二軸延伸の場合、50〜80℃のロール延伸機により2.5〜4.5倍に縦延伸し、更に50〜150℃の雰囲気のテンター延伸機により2.5〜5.0倍に横延伸せしめ、引き続いて同テンターにより100〜240℃雰囲気中で熱処理して得ることができる。本発明の多層延伸フィルムは、同時二軸延伸、逐次二軸延しても良く、得られた多層延伸フィルムは、必要ならばその両表面又は片表面にコロナ放電処理を施すこともできる。
【0052】
本発明のポリアミド系多層フィルムの「屈曲による耐ピンホール性」については、後述の実施例に記載のゲルボフレックステスターを用いて評価する。本発明の多層フィルムでは、5℃の条件下において1000回屈曲の耐ピンホール性の評価で発生するピンホール数が10個以下、好ましくは8個以下、より好ましくは5個以下である。
【0053】
本発明のポリアミド系多層フィルムの「酸素バリア性」については、後述の実施例に記載の方法により評価する。具体的には、20℃×65%RHの条件下でASTM D 3985に準拠して測定した酸素透過度が、100ml/m・day・MPa以下、好ましくは50ml/m・day・MPa以下である。
【0054】
本発明のポリアミド系多層フィルムの「外観」については、後述の実施例に記載の方法により評価する。具体的には、JIS Z 8741に準拠して測定した光沢度が、180%以上、好ましくは190%以上である。
【0055】
さらに、本発明のポリアミド系多層フィルムは、優れた層間強度も有している。具体的には、幅10mmでフィルムを切り出し、(A)層と(B)層の界面で、23℃×65%RHの条件下にて、速度200mm/分でT字剥離試験を行う。この場合の剥離強度(N/10mm)は、0.6N/10mm以上、好ましくは0.8N/10mm以上である。
【0056】
本発明のポリアミド系多層フィルムは、屈曲による耐ピンホール性に優れているので、重量物の包装、とりわけ、餅、ウインナー等の食品の包蔵等に好適である。また、低温の状態で輸送される冷凍食品の包装に好適である。さらに、本発明のポリアミド系多層フィルムは、高い透明性を有しているため、食品包装物としたとき内容物(食品)の目視が容易で、本発明のポリアミド系多層フィルムに印刷した時の見栄えが良く意匠性に優れている。
【0057】
本発明のポリアミド系多層フィルムを包装用袋とする場合、例えば、該フィルムの両端を、円筒状になるように接着して筒状物とし、さらに、該筒状物の開口部の一端を接着して、包装用袋を製造する。接着する方法は、公知の方法を採用することができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を挙げて、本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
以下の実施例及び比較例で使用する原料樹脂等を以下に示す。
脂肪族ポリアミド:UBEナイロン1022FDX04、宇部興産(株)製
結晶性芳香族ポリアミド:MX−ナイロンS6011、三菱ガス化学(株)製
非晶性芳香族ポリアミド:シーラーPA3426、三井・デュポンポリケミカル(株)製
エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物:ソアノールDC3203、日本合成化学工業(株)製
軟質重合体1(スチレン−イソブチレン系ブロック共重合体):SIBSTAR−073T、(株)カネカ製
軟質重合体2(ポリイソプレン環化物)
軟質重合体3(変性ポリオレフィン):アドマーNF587、三井化学(株)製
【0060】
[実施例1]
脂肪族ポリアミド(100重量%)をポリアミド層(A)及びポリアミド層(C)用の樹脂とした。
【0061】
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(90重量%)及び軟質重合体1(10重量%)を配合して、酸素バリア層(B)用の樹脂組成物とした。
【0062】
各層を構成する樹脂を、(A)層/(B)層/(C)層の順序になるように、Tダイスより冷却水が循環するチルロール上に共押出しせしめて、フラット状の3層フィルムを得た。この3層フィルムを、65℃のロール延伸機により3.0倍に縦延伸し、次いで110℃の雰囲気のテンター延伸機により4.0倍に横延伸し、さらに同テンターにより210℃の雰囲気中で熱処理して厚さ15μmのフィルムを得た。各層の厚みは、6/3/6(μm)であった。
【0063】
[実施例2]
脂肪族ポリアミド(90重量%)及び結晶性芳香族ポリアミド(10重量%)を配合して、ポリアミド層(A)及びポリアミド層(C)用の樹脂組成物とした。
【0064】
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(70重量%)及び軟質重合体2(30重量%)を配合して、酸素バリア層(B)用の樹脂組成物とした。
【0065】
実施例1と同様にして、A/B/Cの厚み15μmの3層フィルムを得た。各層の厚みは、5/5/5(μm)であった。
【0066】
[実施例3]
脂肪族ポリアミド(92重量%)及び非晶性芳香族ポリアミド(8重量%)を配合して、ポリアミド層(A)及びポリアミド層(C)用の樹脂組成物とした。
【0067】
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(80重量%)及び軟質重合体1(20重量%)を配合して、酸素バリア層(B)用の樹脂組成物とした。
【0068】
実施例1と同様にして、A/B/Cの厚み15μmの3層フィルムを得た。各層の厚みは、5/5/5(μm)であった。
【0069】
[実施例4]
脂肪族ポリアミド(97重量%)及び結晶性芳香族ポリアミド(3重量%)を配合して、ポリアミド層(A)及びポリアミド層(C)用の樹脂組成物とした。
【0070】
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(60重量%)及び軟質重合体1(40重量%)を配合して、酸素バリア層(B)用の樹脂組成物とした。
【0071】
実施例1と同様にして、A/B/Cの厚み25μmの3層フィルムを得た。各層の厚みは、9/7/9(μm)であった。
【0072】
[実施例5]
脂肪族ポリアミド(85重量%)及び結晶性芳香族ポリアミド(15重量%)を配合して、ポリアミド層(A)及びポリアミド層(C)用の樹脂組成物とした。
【0073】
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(70重量%)及び軟質重合体2(30重量%)を配合して、酸素バリア層(B)用の樹脂組成物とした。
【0074】
実施例1と同様にして、A/B/Cの厚み25μmの3層フィルムを得た。各層の厚みは、5/15/5(μm)であった。
【0075】
[実施例6]
脂肪族ポリアミド(89重量%)及び非晶性芳香族ポリアミド(11重量%)を配合して、ポリアミド層(A)及びポリアミド層(C)用の樹脂組成物とした。
【0076】
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(80重量%)及び軟質重合体2(20重量%)を配合して、酸素バリア層(B)用の樹脂組成物とした。
【0077】
実施例1と同様にして、A/B/Cの厚み45μmの3層フィルムを得た。各層の厚みは、15/15/15(μm)であった。
【0078】
[比較例1]
脂肪族ポリアミド(95重量%)及び結晶性芳香族ポリアミド(5重量%)を配合して、ポリアミド層(A)及びポリアミド層(C)用の樹脂組成物とした。
【0079】
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(100重量%)を酸素バリア層(B)用の樹脂とした。
【0080】
実施例1と同様にして、A/B/Cの厚み15μmの3層フィルムを得た。各層の厚みは、5/5/5(μm)であった。
【0081】
[比較例2]
脂肪族ポリアミド(88重量%)及び非晶性芳香族ポリアミド(12重量%)を配合して、ポリアミド層(A)及びポリアミド層(C)用の樹脂組成物とした。
【0082】
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(98重量%)及び軟質重合体1(2重量%)を配合して、酸素バリア層(B)用の樹脂組成物とした。
【0083】
実施例1と同様にして、A/B/Cの厚み15μmの3層フィルムを得た。各層の厚みは、6/3/6(μm)であった。
【0084】
[比較例3]
脂肪族ポリアミド(93重量%)及び結晶性芳香族ポリアミド(7重量%)を配合して、ポリアミド層(A)及びポリアミド層(C)用の樹脂組成物とした。
【0085】
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(40重量%)及び軟質重合体1(60重量%)を配合して、酸素バリア層(B)用の樹脂組成物とした。
【0086】
実施例1と同様にして、A/B/Cの厚み20μmの3層フィルムを得た。各層の厚みは、7/6/7(μm)であった。
【0087】
[比較例4]
脂肪族ポリアミド(100重量%)をポリアミド層(A)及びポリアミド層(C)用の樹脂とした。
【0088】
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(80重量%)及び結晶性芳香族ポリアミド(20重量%)を配合して、酸素バリア層(B)用の樹脂組成物とした。
【0089】
実施例1と同様にして、A/B/Cの厚み15μmの3層フィルムを得た。各層の厚みは、5/5/5(μm)であった。
【0090】
[比較例5]
脂肪族ポリアミド(88重量%)、結晶性芳香族ポリアミド(7重量%)及び軟質重合体3(5重量%)を配合して、ポリアミド層(A)及びポリアミド層(C)用の樹脂組成物とした。
【0091】
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(100重量%)を酸素バリア層(B)用の樹脂とした。
【0092】
実施例1と同様にして、A/B/Cの厚み15μmの3層フィルムを得た。各層の厚みは、5/5/5(μm)であった。
【0093】
[比較例6]
UBEナイロン(80重量%)及び非晶性芳香族ポリアミド(20重量%)を配合して、ポリアミド層(A)及びポリアミド層(C)用の樹脂組成物とした。
【0094】
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(100重量%)を酸素バリア層(B)用の樹脂とした。
【0095】
実施例1と同様にして、A/B/Cの厚み25μmの3層フィルムを得た。各層の厚みは、5/15/5(μm)であった。
【0096】
[比較例7]
UBEナイロン(85重量%)及び結晶性芳香族ポリアミド(15重量%)を配合して、ポリアミド層(A)及びポリアミド層(C)用の樹脂組成物とした。
【0097】
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物(100重量%)を酸素バリア層(B)用の樹脂とした。
【0098】
実施例1と同様にして、A/B/Cの厚み45μmの3層フィルムを得た。各層の厚みは、15/15/15(μm)であった。
【0099】
[試験例1]
実施例1〜6及び比較例1〜7において得られたポリアミド系多層フィルムについて、耐屈曲性、酸素バリア性、外観及び層間強度について評価を行った。結果を表1及び2に示す。
【0100】
[耐屈曲性]
理化学工業(株)製のゲルボフレックステスターを用いて測定した。折り径150mm、長さ300mmの筒状に製袋したフィルムをゲルボフレックステスターに装着し、捻り角度440°で15.0cmの屈曲直線運動を5℃の条件下で1000回繰り返した後、それぞれ浸透液を用いてピンホールの数を調べた。なお、ピンホール数の測定はサンプルの中央部における300cmの箇所で行った。3枚のサンプルについてピンホールの数を測定し、その平均値を表1に示す。
【0101】
[酸素バリア性]
酸素透過度(ガスバリア性)の測定は、MODERN CONTROL社製のOX−TRAN 200型を使用し、JIS K 7126に準拠して、20℃×65%RHにおける酸素透過度を測定した。
【0102】
[外観]
JIS Z 8741に準拠し、光沢度を測定した。
【0103】
[層間強度]
幅10mmでフィルムを切り出し、(A)層と(B)層の界面で、23℃×65%RHの条件下にて、速度200mm/分でT字剥離試験を行った。
【0104】
【表1】

【0105】
【表2】

【0106】
表1より、実施例1〜6のフィルムは、いずれの試験においても優れた特性を有することがわかった。一方、比較例1〜7のフィルムは、すべての特性を満足できるものはなかった。
【0107】
特に、実施例のフィルムは、特許文献1(特開2008−188776号公報)に記載されるような、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物からなるバリア層を有する比較例1、2,4、6、7のフィルムと比べて屈曲による耐ピンホール性において顕著に優れていることがわかった。
【0108】
なお、比較例3のフィルムは、(A)層及び(C)層と(B)層の層間強度が低く、実用上好ましくないことが分かった。また、比較例5のフィルムは、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物からなるバリア層を有するポリアミド系多層フィルムにおいて、(A)層及び(C)層に変性ポリオレフィンを含有させることにより、屈曲による耐ピンホール性の向上をはかっているが、逆に光沢度が悪化しており、包装用袋に使用するには好ましくないことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド層(A層)、酸素バリア層(B層)及びポリアミド層(C層)が、この順で積層されたポリアミド系多層フィルムであって、
(A)層が、脂肪族ポリアミドを含有し、
(B)層が、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物を55〜95重量%、軟質重合体を5〜45重量%含有し、
(C)層が、脂肪族ポリアミドを含有する
ことを特徴とする、ポリアミド系多層フィルム。
【請求項2】
(A)層が、脂肪族ポリアミドを75〜100重量%、芳香族ポリアミドを0〜25重量%含有する、請求項1に記載のポリアミド系多層フィルム。
【請求項3】
MD方向に2.5〜4.5倍、TD方向に2.5〜5倍に二軸延伸して得られる多層フィルムである、請求項1又は2に記載のポリアミド系多層フィルム。
【請求項4】
(A)層及び(C)層の厚みが4μm以上、(B)層の厚みが2〜24μmであり、ポリアミド系多層フィルムの総膜厚が10〜80μmである、請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド系多層フィルム。
【請求項5】
さらに一方の面にシール層を有する、請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド系多層フィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリアミド系多層フィルムの両端を、円筒状になるように接着して筒状物とし、さらに該筒状物の開口部の一端を接着して得られる包装用袋。
【請求項7】
食品包装用である、請求項6に記載の包装用袋。
【請求項8】
脂肪族ポリアミドを含有するポリアミド層(A層)用樹脂組成物、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物を55〜95重量%、軟質重合体を5〜45重量%含有する酸素バリア層(B層)用樹脂組成物、及び脂肪族ポリアミドを含有するポリアミド層(C層)用樹脂組成物を、この順になるように共押出により積層し、縦横2軸に延伸し、加熱処理することを特徴とする、ポリアミド系多層フィルムの製造方法。


【公開番号】特開2010−131950(P2010−131950A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312657(P2008−312657)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】