説明

ポリアミド系延伸フィルム

【課題】ボイル処理やレトルト処理の可能な柔軟性、耐衝撃性、耐ピンホール性に優れ、長時間連続生産できるガスバリヤー性延伸フィルムを提供する。
【解決手段】メタキシリレンジアミンと、炭素数6〜12のα,ω−脂肪族ジカルボン酸を主原料として重合して得られるポリアミド樹脂(X)70〜99重量%と、スチレン−エチレン/ブチレンブロック共重合体(Y)30〜1重量%の混合物からなる樹脂を溶融混合して押し出した後、少なくとも一方向に延伸して得られる延伸フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイル処理やレトルト処理の可能な柔軟性、耐衝撃性、耐ピンホール性に優れたガスバリヤー性延伸フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスバリヤー包装材料としては、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアミド等をガスバリヤー層に利用した多層フィルムが使用されている。ポリアミドの中でも、メタキシリレンジアミンとアジピン酸を重縮合して得られるポリメタキシリレンアジパミド(以下ナイロンMXD6という)は、他のガスバリヤー性樹脂に対して、ボイル処理やレトルト処理を行った場合のガスバリヤー性の低下が少なく、また、ガスバリヤー性の回復も速いという特徴を有している。この特徴を活かして最近包装分野での利用が進んでいる。
【0003】
ナイロンMXD6は無延伸状態では耐衝撃性、柔軟性が低いという欠点がある。延伸することにより、耐衝撃性、柔軟性がある程度改善できることはすでに知られているが、不充分であり、更なる改善が要望されている。ナイロンMXD6と脂肪族ポリアミドの二種類のポリアミドからなるフィルムの生産に関しては、添加剤を用いて物性を改善する方法(特許文献1〜8参照)が提案されている。これらの提案により、機械物性はある程度改善できるが、耐ピンホール性の改善は不十分である。発明者らは、スチレン−ブタジエン共重合体中のポリブタジエン構造部分の二重結合を水素添加により飽和させた熱可塑性エラストマーを添加することで、耐衝撃性、柔軟性を改善する方法(特許文献9参照)を提案しているが、当該エラストマーは熱安定性が低く、長時間の生産運転では、ゲルやフィッシュアイが発生し、連続生産出来ないという問題点があった。
【特許文献1】特許第3021851号公報
【特許文献2】特開平7−117198号公報
【特許文献3】特開平7−276591号公報
【特許文献4】特許第2666663号公報
【特許文献5】特許第3021854号公報
【特許文献6】特許第3074883号公報
【特許文献7】特許第3136789号公報
【特許文献8】特許第3395474号公報
【特許文献9】特開2000−169603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ボイル処理やレトルト処理の可能な柔軟性、耐衝撃性、耐ピンホール性に優れ、長時間連続生産できるガスバリヤー性延伸フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ナイロンMXD6系多層フィルムの耐衝撃性の改善について、各種樹脂のブレンドについて検討し、特定の熱可塑性エラストマーとナイロンMXD6をブレンドすることにより、実用レベルの透明性を確保しながら更に柔軟性、耐衝撃性を改善し、更に長時間の連続生産が可能であることを見いだし、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(4)の発明に関する。
(1)メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミンと、炭素数6〜12のα,ω−脂肪族ジカルボン酸を70モル%以上含むジカルボン酸から得られるポリアミド樹脂(X)70〜99重量%と、スチレン−エチレン/ブチレンブロック共重合体(Y)30〜1重量%の混合物((X)と(Y)の合計は100重量%)からなる樹脂(混合樹脂)を溶融混合して押し出した後、少なくとも一方向に延伸して得られる延伸フィルム。
(2)前記(1)における混合樹脂層と脂肪族ポリアミド樹脂層からなる多層フィルムを少なくとも一方向に延伸して得られる延伸フィルム。
(3)前記(1)における混合樹脂、接着性樹脂および熱可塑性樹脂をそれぞれ溶融して押し出して得た多層フィルムを、少なくとも一方向に延伸して得られる延伸フィルム。
(4)前記(1)〜(3)の延伸フィルムを他の熱可塑性樹脂フィルムにラミネートして得られるラミネートフィルム。
【発明の効果】
【0006】
本発明の延伸フィルムは、ガスバリヤー層として、MXナイロンに特定のエラストマーを添加した物を用いることにより、透明性、耐衝撃性、耐ピンホール性が優れており、しかも、ボイル処理或いはレトルト処理が可能なことから、食品、医薬、工業薬品、化粧品類、インキ等の包装材料として好適に用いることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明で使用するポリアミド樹脂(X)は、ジアミンに由来する構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来するものであり、かつジカルボン酸に由来する構成単位の70モル%以上が炭素数6〜12のα,ω−脂肪族ジカルボン酸に由来するものである。ポリアミド樹脂(X)は、例えば、メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミン成分と、炭素数6〜12のα,ω−脂肪族ジカルボン酸を70モル%以上含むジカルボン酸成分とを使用し、これらを重縮合して得られる。メタキシリレンジアミンに由来する構成単位は、90%モル%以上であるのが好ましく、100モル%であるのが更に好ましい。メタキシリレンジアミンに由来する構成単位が上記範囲内であることにより所定のガスバリヤー性を保持することが可能となる。
【0008】
重縮合に際しては、メタキシリレンジアミン以外のジアミンとして、パラキシリレンジアミン、オルソキシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、オルソフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン等を使用することができる。
【0009】
又、炭素数6〜12のα,ω−脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位が70モル%以上であることによりポリアミド樹脂の実用的な物性を得ることが可能となる。炭素数6〜12のα,ω−脂肪族ジカルボン酸として、アジピン酸、セバシン酸等を挙げることができる。これらのジカルボン酸は、単独でも2種以上混合しても使用可能である。これらのなかでもポリアミド樹脂(X)のガスバリヤー性の観点から、ジカルボン酸成分としてアジピン酸を使用することが特に望ましい。炭素数6〜12のα,ω−脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸として芳香族カルボン酸等を用いることができ、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸等を例示することができる。
【0010】
本発明で使用するスチレン−エチレン/ブチレンブロック共重合体(Y)は、スチレン系エラストマーの一種であり、ハードブロック(スチレン)とソフトブロック(エチレン/ブチレン)から構成されるブロック共重合体である。ここで、ソフトブロックの炭素鎖は直鎖である。また、耐熱性向上の観点から、ハードブロックが5〜30重量%であることが好ましい。該共重合体(Y)を使用することで、透明性、柔軟性および耐衝撃性に優れた延伸フィルムを、長時間の連続生産により得ることができる。
【0011】
ポリアミド樹脂(X)と共重合体(Y)の混合割合は、ポリアミド樹脂(X)/共重合体(Y) = 70〜99/30〜1(重量%)の範囲((X)と(Y)の合計は100重量%)で使用出来るが、90〜98/10〜2(重量%)の範囲が好ましい。ポリアミド樹脂(X)の量がこれより多いと、耐衝撃性が低くなってしまうし、共重合体(Y)の量が多いと、ガスバリヤー性の低下や透明性の悪化が起こり好ましくない。
【0012】
延伸フィルムの柔軟性や耐衝撃性を更に改善するため、必要に応じてポリアミド樹脂(X)と共重合体(Y)の混合物からなる樹脂(以下、混合樹脂と称す)にポリアミド樹脂(X)以外の脂肪族ポリアミド樹脂を添加してもかまわない。脂肪族ポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6−66等を用いることが出来る。
【0013】
前記混合樹脂には必要に応じて、帯電防止剤、滑剤、耐ブロッキング剤、安定剤、染料、顔料等を加えてもかまわない。
【0014】
樹脂を混合する際に、原料となる各樹脂は、ドライブレンドでも使用できるし、あらかじめ、単軸、あるいは二軸押出機を用いて溶融混練した後、用いる事もできる。
【0015】
上記で得られた混合樹脂を溶融混合して押し出した後、少なくとも一方向に延伸することにより、柔軟性及び耐衝撃性が改善された延伸フィルムが得られる。
延伸条件については特に制約はなく、一軸延伸でも二軸延伸でもよい。二軸延伸の場合は逐次延伸でも同時延伸でもよい。延伸倍率は用途に応じて選択できるが、通常、2.5〜5倍程度である。通常の延伸温度は90〜120℃ぐらいである。また、延伸した温度以上、樹脂の融点以下の温度で熱固定をすることが好ましい。
【0016】
本発明で得られる延伸フィルムは、単層でも充分な耐衝撃性、柔軟性を有しているが、他の脂肪族ポリアミド、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂からなる層と組み合わせて多層構成とすることで、更に耐衝撃性、柔軟性を改善されたフィルムを得ることが出来る。
【0017】
実際の使用に際しては、前記混合樹脂からなるバリヤー層を多層延伸フィルムの1層として用いるのが一般的である。多層延伸フィルムの製造方法としては、例えば、通常のTダイ法、円筒ダイ法(インフレーション法)等の製膜法により得られた多層フィルム(原反フィルム)を延伸することにより得られる。延伸方法としては、同時二軸延伸法あるいは逐次二軸延伸法を用いることが出来る。
【0018】
多層延伸フィルムの製造方法としては、例えば、混合樹脂と脂肪族ポリアミド樹脂をそれぞれ溶融して押し出して得た多層フィルムを、少なくとも一方向に延伸して延伸フィルムを得ることも出来る。この場合、共押出Tダイ法、共押出円筒ダイ法(インフレーション法)等の製膜法により得られた多層フィルム(原反フィルム)を延伸することにより得られる。延伸方法としては、同時二軸延伸法あるいは逐次二軸延伸法を用いることが出来る。
この多層延伸フィルムの層構成は、混合樹脂からなる(V)層と、脂肪族ポリアミド樹脂からなる(W)層からなり、(W)/(V)/(W)、(W)/(V)、(W)/(V)/(W)/(V)/(W)、(W)/(V)/(W)/(V)等の構成が可能であるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
(W)層を形成する脂肪族ポリアミド樹脂としては、アミド結合を持つ鎖状のポリアミド樹脂であればよく、具体例としては、ε−カプロラクタムの単独重合体、ポリヘキサメチレンアジバミド、および、ε−カプロラクタムまたはヘキサメチレンアジバミドを主成分とし、これと共重合可能な化合物2〜10モル%とからなる共重合体、等が挙げられる。ε−カプロラクタムまたはヘキサメチレンアジバミドと共重合可能な化合物としては、脂肪族ジアミン類と、脂肪族ジカルボン酸類とのナイロン塩が挙げられる。脂肪族ジアミン類の具体例としては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン等が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸類の具体例としては、アジピン酸、セバシン酸、コルク酸、グルタール酸、アゼライン酸、β−メチルアジピン酸、デカメチレンジカルボン酸、ドデカメチレンジカルボン酸、ピメリン酸等が挙げられる。これらの中では、ε−カブロラクタムの単独重合体であるナイロン−6、またはナイロン66と称されるポリヘキサメチレンアジバミドが、安価に入手でき、かつ、二軸延伸操作を円滑に遂行し得るので好ましい。更にこれらを共重合したナイロン6,66も好適に用いることができる。
【0020】
また、混合樹脂、接着性樹脂および熱可塑性樹脂を、それぞれ溶融して押し出して得た多層原反フィルムを、少なくとも一方向に延伸して延伸フィルムを得ることも出来る。この場合も、共押出Tダイ法、共押出円筒ダイ法(インフレーション法)等の製膜法により得られた多層フィルム(原反フィルム)を延伸することにより得られる。延伸方法としては、同時二軸延伸法あるいは逐次二軸延伸法を用いることが出来る。
この多層延伸フィルムとしては、混合樹脂層(A)、接着剤層(B)、熱可塑性樹脂層(C)が、(A)/(B)/(C)の順で積層された3種3層フィルムや、(C)/(B)/(A)/(B)/(C)の順で積層された3種5層フィルムの構成が一般的であるが、(A)/(B)/(A)/(B)/(C)のような構成も可能である。
【0021】
(C)層を形成する熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル;エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等が挙げられる。
【0022】
(B)層を形成する接着剤樹脂としては、変性ポリオレフィンとして、無水マレイン酸グラフト変性したエチレン−酢酸ビニル共重合体、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及びポリプロピレンの各々の無水マレイン酸グラフト変性した物、又はこれを主体とする組成物等を使用することが出来る。
【0023】
本発明により得られる多層延伸フィルムは、ボイル処理あるいはレトルト処理を行っても、ガスバリヤー性の低下が少なく、また回復も速いので、加工肉食品、ボイル物食品、レトルト食品等の食品用包装材料、その他各種の包装材料として使用できる。また、成形して深絞り容器として利用することも可能である。
【0024】
本発明の延伸フィルムの全体の厚さは、10μm以上40μm以下が好ましい。全体の厚さが、10μm未満のときは、酸素ガスバリア性と耐屈曲ピンホール性のバランスが悪く、耐摩耗性も悪いので包装用途として満足なフィルムは得られない。また、40μmを越えるときは、フィルムが硬くなり、更にシーラント層を張り合わせる場合には、フィルム全体が非常に厚くなり軟包装用途には適さなくなる。
多層延伸フィルムの場合は、前記混合樹脂からなる層の厚みは、複数ある場合は併せて3〜20μmが適切である。これにより多層フィルムとしての酸素透過率が2〜15cc/m・day・atmを達成することができる。混合樹脂層の厚みがこれより薄いとバリア性が悪くなるし、厚いと耐ピンホール性、耐衝撃性、柔軟性が低下するので好ましくない。
【0025】
また、本発明の延伸フィルム(単層、多層)に、他の熱可塑性樹脂フィルムをラミネートして得られるラミネートフィルムも各種包装材料として使用できる。
ラミネートに際しては、接着剤を使用してもよい。また、本発明の延伸フィルムの両面にラミネートしてもよい。使用できる熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、これらの共重合体およびアイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、変性ポリオレフィン樹脂等が挙げられ、これらは単独でも混合物でも使用できる。該熱可塑性樹脂フィルムは、単層でも多層でもよく、延伸フィルムでも未延伸フィルムでもよい。また、接着剤としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン及びポリプロピレンの各々の無水マレイン酸グラフト変性物、又はこれらを主体とする組成物等からなるものを使用することが出来る。
【0026】
包装形態としては、ヒートシールによる袋状、或いはクリップ等の金属により結索してもよく、特に制限はない。チューブ状フィルムの場合には、所定寸法にカットして、必要ならば一開口部をヒートシールや結索してそのまま使用すればいい。
【実施例】
【0027】
本実施例及び比較例において、以下に示す測定法及び評価法を採用した。
(1)くもり価(HAZE)
測定は、ASTM D1003に準じて行った。
使用した測定機器は、日本電色工業(株)製色差・濁度測定器(型式:COH−300A)である。
(2)酸素透過率
測定は、ASTM D3985に準じて行った。
使用した測定機器は、モダンコントロールズ社製酸素透過率測定装置(型式:OX−TRAN 10/50A)であり、測定条件は、23℃、相対湿度60%である。
(3)衝撃穴あけ強度
測定は、ASTM D781に準じて行った。
使用した測定機器は、東測精密工業(株)製フィルムインパクト試験機(型式:ITF−60)であり、測定条件は、23℃、相対湿度50%RHである。
(4)柔軟性試験(耐ピンホール性試験)
使用した測定機器は、理学工業(株)製ゲルボーフレックステスターであり、測定条件は、23℃、相対湿度50%RHである。所定回数(1000回)の屈曲を行い、ピンホールテスターでピンホールの個数/624cm当たり を数えた。
(5)引張強度試験
測定は、ASTM D882 に準じて行った。
使用した測定機器は東洋精機(株)製 ストログラフ V1-Cであり、測定条件は、23℃、相対湿度50%である。
(6)厚み測定
以下の厚み測定機を使用して多層構成の各層の厚みを測定した。
測定機器:グンゼ製 多層膜厚測定装置 DC-8200
【0028】
<実施例1>
ナイロンMXD6(三菱ガス化学(株)製、商品名MXナイロン6011、N−MXD6と略記することがある)97重量部と、スチレン系エラストマー(クレイトンポリマージャパン(株)製スチレン−エチレン/ブチレンブロック共重合体、商品名:クレイトンG1657)3重量部を、ドライブレンドし、混合樹脂を作製した。これをシリンダー径が20mmの押出機(東洋精機製作所製 ラボプラストミル)から押し出して、Tダイ−冷却ロール法により厚み250μmの原反フィルムを作製した。得られた原反フィルムを、(株)東洋製作所製の二軸延伸装置(テンター法)を用いて、延伸温度100度でTD及びMD方向に、それぞれ、4.0倍に二軸延伸して延伸フィルムを得た。表1に得られたフィルムの透明性(くもり価)、衝撃穴あけ強度、耐ピンホール性、酸素透過率測定結果を示した。
【0029】
<実施例2>
実施例1で得られた延伸フィルムを表基材フィルムとし、またLLDPEフィルム[ユニラックスLS722C(商品名)、出光石油化学(株)、厚さ50μm]をシーラントフィルムとして、両者をドライラミネートしてラミネートフィルムを得た。表2に得られたフィルムの透明性(くもり価)、衝撃穴あけ強度、耐ピンホール性、酸素透過率測定結果を示した。
【0030】
<実施例3>
あらかじめ、バリヤー層用の樹脂として、ナイロンMXD6(三菱ガス化学(株)製、商品名MXナイロン6011、N−MXD6と略記することがある)97重量部と、スチレン系エラストマー(クレイトンポリマージャパン(株)製スチレン−エチレン/ブチレンブロック共重合体、商品名:クレイトンG1657)3重量部を、ドライブレンドし、混合樹脂を作製した。シリンダー径が45mmの押出機から直鎖状低密度ポリエチレン(C層を形成、三井石油化学(株)製、商品名:ウルトゼックス2022L、LLDPEと略記することがある)、シリンダー径が40mmの押出機から接着性ポリエチレン(B層を形成、三井石油化学(株)製、商品名:アドマーNF300、Tieと略記することがある)及びシリンダー径が30mmの押出機からバリヤー層用の混合樹脂(A層を形成)を押出し、層構成がC層/B層/A層/B層/C層の順になるようにフィードブロックを介して多層溶融状態を形成させ、円筒ダイ−水冷インフレーション法により、多層フィルムを作製した。得られた多層フィルムを、チューブラー法で同時二軸延伸し、更に熱固定を行って多層延伸フィルムを得た。表3に作製した多層延伸フィルムの層構成、厚さとフィルムの透明性(くもり価)、衝撃穴あけ強度、耐ピンホール性、酸素透過率測定結果を示した。
【0031】
<実施例4>
あらかじめ、バリヤー層用の樹脂として、ナイロンMXD6(三菱ガス化学(株)製、商品名MXナイロン6011、N−MXD6と略記することがある)97重量部と、スチレン系エラストマー(クレイトンポリマージャパン(株)製スチレン−エチレン/ブチレンブロック共重合体、商品名:クレイトンG1657)3重量部を、ドライブレンドし、混合樹脂を作製した。この混合樹脂(V層を形成)と、ポリ−ε−カプロアミド(宇部興産(株)社製、ウベナイロン1022FDX04)(W層を形成)を、65mmφ押出機3台を使用して別々に255℃で溶融させ、Tダイ内で積層させて3層構造(W/V/W)の積層フィルムとして押出し、30℃のキャストロールにピニング装置を用いて密着急冷し、W/V/W=50/50/50μmの多層フィルムを得た。得られた多層フィルムを、ロール式延伸機にて低速側の加熱ロール温度85℃、縦軸方向に3倍延伸し、ついでこのフィルムの端部をテンタークリップで保持し、テンターオーブン内で、100〜120℃の条件下で、横軸方向に3.3倍に延伸した後、215℃で10秒間の熱固定処理を行った。延伸条件、および得られた多層延伸フィルムの評価結果を表4に示した。
【0032】
<比較例1>
ナイロンMXD6のみを用いた以外は、実施例1と同様にして延伸フィルムを作製した。表1に得られたフィルムの透明性(くもり価)、衝撃穴あけ強度、耐ピンホール性、酸素透過率測定結果を示した。
【0033】
<比較例2>
あらかじめ、バリヤー層用の樹脂として、ナイロンMXD6(三菱ガス化学(株)製、商品名MXナイロン6011、N−MXD6と略記することがある)60重量部と、スチレン系エラストマー(クレイトンポリマージャパン(株)製スチレン−エチレン/ブチレンブロック共重合体、商品名:クレイトンG1657)40重量部を、ドライブレンドし、混合樹脂を作製した。これを用いて、実施例1と同一の装置を用いて延伸フィルムを作製した。表1に得られたフィルムの透明性(くもり価)、衝撃穴あけ強度、耐ピンホール性、酸素透過率測定結果を示した。
【0034】
<比較例3>
比較例1で得られた延伸フィルムを用いて、実施例2と同様にしてラミネートフィルムを得た。表2に得られたフィルムの透明性(くもり価)、衝撃穴あけ強度、耐ピンホール性、酸素透過率測定結果を示した。
【0035】
<比較例4>
バリヤー層用の樹脂として、ナイロンMXD6のみを用いた以外は、実施例3と同様にして多層延伸フィルムを作製した。表3に作製した多層延伸フィルムの層構成、厚さとフィルムの透明性(くもり価)、衝撃穴あけ強度、耐ピンホール性、酸素透過率測定結果を示した。
【0036】
<比較例5>
スチレン系エラストマーとして、スチレン−ブタジエン共重合体中のポリブタジエン構造部分の二重結合を水素添加により飽和させた熱可塑性エラストマー(旭化成(株)製、商品名:タフテックM1943)を用いた以外は、実施例4と同様にして多層延伸フィルムを作製した。延伸条件、および得られた多層延伸フィルムの評価結果を表4に示した。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミンと、炭素数6〜12のα,ω−脂肪族ジカルボン酸を70モル%以上含むジカルボン酸から得られるポリアミド樹脂(X)70〜99重量%と、スチレン−エチレン/ブチレンブロック共重合体(Y)30〜1重量%の混合物((X)と(Y)の合計は100重量%)からなる樹脂を溶融混合して押し出した後、少なくとも一方向に延伸して得られる延伸フィルム。
【請求項2】
メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミンと、炭素数6〜12のα,ω−脂肪族ジカルボン酸を70モル%以上含むジカルボン酸から得られるポリアミド樹脂(X)70〜99重量%と、スチレン−エチレン/ブチレンブロック共重合体(Y)30〜1重量%の混合物((X)と(Y)の合計は100重量%)からなる樹脂層と脂肪族ポリアミド樹脂層からなる多層フィルムを少なくとも一方向に延伸して得られる延伸フィルム。
【請求項3】
メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミンと、炭素数6〜12のα,ω−脂肪族ジカルボン酸を70モル%以上含むジカルボン酸から得られるポリアミド樹脂(X)70〜99重量%と、スチレン−エチレン/ブチレンブロック共重合体(Y)30〜1重量%の混合物((X)と(Y)の合計は100重量%)からなる樹脂、接着性樹脂および熱可塑性樹脂をそれぞれ溶融して押し出して得た多層フィルムを、少なくとも一方向に延伸して得られる延伸フィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の延伸フィルムを他の熱可塑性樹脂フィルムにラミネートして得られるラミネートフィルム。

【公開番号】特開2008−49489(P2008−49489A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225486(P2006−225486)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】