説明

ポリアミノ官能性重合開始剤および対応するポリマーを製造するための組成物および方法

少なくとも2つの保護された第1級アミン基を含む重合開始剤を製造するための組成物および方法。こうした重合開始剤を用いて調製されたポリマーは重合開始剤の残基を含むことができ、はじめに少なくとも2つの保護された第1級アミン基を含むことができる。こうしたポリマーは脱保護プロセスを行うことができ、これにより1つ以上の保護されていない第1級アミン基を有するポリマーを得る。第1級アミン基を有するポリマーは、例えばタイヤ製造において、さまざまな潜在的な用途を有するゴム組成物に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の1つ以上の実施形態はポリアミノ官能性重合開始剤およびそれから製造されるポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、1つには環境問題への関心の高まりによって、自動車の燃料消費量を低減したいという需要が増えてきている。こうした需要に対応する1つの方法は、タイヤの転がり抵抗を低減することだった。さまざまなゴム添加剤の使用を含む、タイヤの転がり抵抗を低減するための各種方法が試みられてきた。また、ゴム組成物の濡れた路面上での性能は、カーボンブラック充填剤とともにシリカ等のような無機充填剤を用いることにより大幅に向上させることができることが知られている。従って、タイヤ製造に用いられるこうした充填剤との相互作用を増加させた添加剤およびポリマーが開発されてきた。しかしながら、依然として改善が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の1つの実施形態は、少なくとも2つの保護された第1級アミン基を含む重合開始剤であって、該重合開始剤がアルカリまたはアルカリ土類金属から選択される少なくとも1つの金属をさらに含み、該金属が該保護された第1級アミン基のいずれにも存在しないものに関する。
【0004】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つの重合開始剤の残基を含むポリマーを含む組成物であって、該重合開始剤が少なくとも2つの保護された第1級アミン基を含むものに関する。
【0005】
本発明のさらに別の実施形態はポリマーの製造方法に関する。この実施形態の方法は、少なくとも1つのタイプのモノマーを少なくとも1つの重合開始剤と組み合わせ、これによりポリマーを形成するステップを含む。重合開始剤は少なくとも2つの保護された第1級アミン基を含み、ポリマーは少なくとも1つの重合開始剤の残基を含む。
【0006】
本発明の1つ以上の実施形態によると、少なくとも2つの保護された第1級アミン基および少なくとも1つの金属を含む重合開始剤を提供する。重合開始剤はポリマーの製造に用いることができ、ポリマーは少なくとも1つの重合開始剤の残基を含有することができる。さらに、こうしたポリマーは、例えばタイヤ製造のような、さまざまな用途の使用に適したゴム組成物を形成するのに用いられるゴム成分の、少なくとも一部として用いることができる。
【0007】
上記のように、重合開始剤は少なくとも2つの保護された第1級アミン基を含むことができる。本明細書において用いる「第1級アミン基」の語は2つの水素原子を有するアミン基(すなわち、R−NH)を表す。また、本明細書において用いる「保護された第1級アミン基」の語は、その水素原子の片方または両方を保護基で置換した第1級アミン基を表す。本明細書において用いる「保護基」の語は、第1級アミン基の重合条件下での反応を阻害するが、脱保護プロセスによって除去可能である部分を表す。1つ以上の実施形態では、保護基は保護された第1級アミン基のリビングアニオン重合条件下での反応を防止するのに適切である。
【0008】
1つ以上の実施形態では、重合開始剤は保護された第1級アミン基1つ当たり少なくとも1つの保護基を含むことができる。他の実施形態では、重合開始剤上の保護された第1級アミン基はそれぞれ2つの保護基を含むことができる。適切な保護基は、置換または非置換シリル基またはシリレン基を含むことができる。1つ以上の実施形態では、少なくとも一部のシリルまたはシリレン基を置換シリルまたはシリレン基とすることができる。さらに、実質的にすべてのシリルまたはシリレン基を置換シリルまたはシリレン基とすることができる。こうした置換シリルまたはシリレン基は1つ以上のアルキルまたはアリール基を含むことができる。本明細書において用いる「アルキル」の語は、水素原子を炭化水素から除去することにより形成された一価の基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。本明細書において用いる「アリール」の語は、水素原子をアレーン中の炭素環(すなわち、単または多環式芳香族炭化水素)から除去することにより形成された一価の基を表し、ヘテロ原子を含むことができる。置換シリルまたはシリレン基に用いるのに適したアルキルまたはアリール基としては、いずれかの置換または非置換C〜C20アルキルまたはアリール基が挙げられる。さらに、用いるのに適したアルキル基は直鎖、分岐、または環状とすることができ、飽和であっても不飽和であってもよい。適切なアルキル置換基の例としては、これらに限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、シクロペンチル、およびシクロへキシル基が挙げられる。また、アリール基はその芳香族環上に低級アルキル基のような置換基を有することができ、例としては、フェニル、トリル、キシリル、およびナフチル基が挙げられる。用いるのに適した置換シリル基の具体例としては、これらに限定されないが、トリメチルシリル、トリエチルシリル、メチルジエチルシリル、ジメチルエチルシリル、およびtert−ブチルジメチルシリル基が挙げられる。置換シリレン基の具体例としては、これらに限定されないが、ジメチルシリレン、メチルエチルシリレン、およびジエチルシリレン基が挙げられる。
【0009】
1つ以上の実施形態では、使用に適した保護基は、相互に直接的にまたは間接的に結合し、環状構造を形成することができる。例えば、保護された第1級アミンに直接結合した2つのシリル原子は、結合アルキレンまたはアリーレン基によって相互に結合することができる。本明細書において用いる「アルキレン」の語は、2つの水素原子を炭化水素から除去することにより形成され、その自由原子価が二重結合に関与しない二価の基を表し、ヘテロ原子を含むことができる。本明細書において用いる「アリーレン」の語は、2つの水素原子をアレーン中の炭素環(すなわち、単または多環式芳香族炭化水素)から除去することにより形成された二価の基を表し、ヘテロ原子を含むことができる。使用に適した結合アルキレンおよびアリーレン基としては、いずれかの置換または非置換C〜C20アルキレンまたはアリーレン基が挙げられる。さらに、使用に適したアルキレン基は直鎖、分岐、または環状であり、飽和であっても不飽和であってもよい。1つ以上の実施形態では、結合基は直鎖C〜C12アルキレン基を含むことができる。また他の実施形態では、結合基は1,2−エチレン、1,3−n−プロピレン、および1,4−n−ブチレンからなる群から選択することができる。
【0010】
上記のように、重合開始剤は少なくとも1つの金属を含むことができる。各種実施形態では、重合開始剤の金属は上述の保護された第1級アミン基のいずれにも存在しない。1つ以上の実施形態では、金属は、重合開始剤を後述するもののような重合反応に用いる場合、初期重合の場所となるだろう重合開始剤上の位置に存在することができる。さらに、金属は炭素原子、ケイ素原子、スズ原子、または窒素原子上に存在することができる。1つ以上の実施形態では、金属は水素原子の代わりに重合開始剤中の第2級アミン基上に存在することができる。本明細書において用いる第2級アミン基の語は、ただ1つの水素原子を有するアミン基(すなわち、R−NH)を表す。
【0011】
重合開始剤の金属は、1〜4の範囲内、または1〜2の範囲内の原子価を有する金属から選択することができる。さらに、開始剤の金属はアルカリ金属またはアルカリ土類金属を含むことができる。適切な金属の例としては、これらに限定されないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムが挙げられる。1つ以上の実施形態では、重合開始剤の金属はリチウムを含む。
【0012】
1つ以上の実施形態では、重合開始剤は以下の構造:
式(I)
【化1】


を有することができ、式中、Y、Y、Y、およびYは独立して上述したもののような保護基とすることができる。1つ以上の実施形態では、Y、Y、Y、およびYはそれぞれ置換シリル基とすることができる。さらに、Y、Y、Y、およびYはそれぞれ保護基として用いるのに適していると上述したもののようなトリアルキル置換シリル基とすることができる。
【0013】
式(I)のRおよびRは独立して0〜20の炭素数を有する、いずれかの置換または非置換アルキレンまたはアリーレン基とすることができ、ヘテロ原子を含むことができる。さらに、RおよびRとして用いるのに適したアルキレン基は直鎖、分岐、または環状とすることができ、飽和であっても不飽和であってもよい。なお、Rおよび/またはRが「0」の炭素数を有する場合、こうしたアルキレンまたはアリーレン基は実際存在しない;よって、対応する隣接する窒素原子は相互に直接結合しているだろう。1つ以上の実施形態では、RおよびRは独立して直鎖C〜C12アルキレン基とすることができる。さらに、RおよびRは独立して飽和、非置換、直鎖C〜Cアルキレン基とすることができる。適切なアルキレン基の例としては、これらに限定されないが、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、およびドデカメチレン基が挙げられる。なお、RおよびR基の組成および構成にかかわらず、式(I)に示した隣接する窒素原子はRおよびR基中に存在するいずれかの末端または非末端炭素原子に結合することができる。1つ以上の実施形態では、隣接する窒素原子はRおよびR基の対応する末端炭素原子に結合することができる。さらに、各種実施形態では、RおよびRは同一構造を有するアルキレンまたはアリーレン基を含むことができる。
【0014】
上記式(I)中のMは重合開始剤に用いるのに適していると上述したいずれかの金属とすることができる。例えば、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属とすることができる。1つ以上の実施形態では、Mはリチウムとすることができる。さらに、上記式(I)中、Y、Y、Y、Y、R、および/またはRは相互に直接的にまたは間接的に結合し、1つ以上の環状構造を形成することができる。
【0015】
1つ以上の実施形態では、重合開始剤は以下の構造:
式(II)
【化2】


を有することができ、式中、Y、Y、Y、およびYは独立して上述したもののような保護基とすることができる。1つ以上の実施形態では、Y、Y、Y、およびYはそれぞれ置換シリル基とすることができる。さらに、Y、Y、Y、およびYはそれぞれ保護基として用いるのに適していると上述したもののようなトリアルキル置換シリル基とすることができる。
【0016】
式(II)のRおよびRは独立して0〜20の炭素数を有するいずれかの置換または非置換アルキレンまたはアリーレン基とすることができ、ヘテロ原子を含むことができる。さらに、RおよびRとして用いるのに適したアルキレン基は直鎖、分岐、または環状であり、飽和であっても不飽和であってもよい。なお、Rおよび/またはRが「0」の炭素数を有する場合、こうしたアルキレンまたはアリーレン基は実際存在しない;よって、対応する隣接する窒素原子およびX原子は相互に直接結合しているだろう。1つ以上の実施形態では、RおよびRは独立して直鎖C〜C12アルキレン基とすることができる。さらに、RおよびRは独立して飽和、非置換、直鎖C〜Cアルキレン基とすることができる。適切なアルキレン基の例としては、これらに限定されないが、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、およびドデカメチレン基が挙げられる。なお、RおよびR基の組成および構成にかかわらず、式(II)に示した隣接する窒素原子およびX原子はRおよびR基中に存在するいずれかの末端または非末端炭素原子に結合することができる。1つ以上の実施形態では、隣接する窒素原子およびX原子はRおよびR基の対応する末端炭素原子に結合することができる。さらに、各種実施形態では、RおよびRは同一構造を有するアルキレンまたはアリーレン基を含むことができる。
【0017】
式(II)のRは水素原子または1〜20の炭素数を有する、いずれかの置換もしくは非置換アルキルもしくはアリール基とすることができる。さらに、Rとして用いるのに適したアルキル基は直鎖、分岐、または環状であり、飽和であっても不飽和であってもよい。Rとして用いるのに適したアルキル基としては、これらに限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、シクロペンチル、シクロへキシル、ビニル、プロペニル、アリル、へキセニル、オクテニル、シクロペンテニル、およびシクロへキセニル基が挙げられる。
【0018】
さらに、各種実施形態では、Rは上述したもののような1つ以上の保護された第1級アミン基でさらに置換することができる。このような実施形態では、R置換基は式:−R−NYを有することができ、式中、Rは、上述の式(II)中のRまたはRのいずれかとして用いるのに適した、1〜20の炭素数を有するいずれかの置換または非置換のアルキレンまたはアリーレン基とすることができ、各Y基は、独立して上述の式(II)中のY、Y、Y、またはYのいずれかとして用いるのに適した、いずれかの保護基とすることができる。
【0019】
上記式(II)中のMは、上述の重合開始剤に用いるのに適したいずれかの金属とすることができる。例えば、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属とすることができる。1つ以上の実施形態では、Mはリチウムとすることができる。上記式(II)中のXは、少なくとも4の原子価を有するいずれかの原子とすることができる。1つ以上の実施形態では、Xは炭素、ケイ素、およびスズからなる群から選択することができる。さらに、上記式(II)中、Y、Y、Y、Y、R、R、および/またはRは相互に直接的にまたは間接的に結合し、1つ以上の環状構造を形成することができる。
【0020】
1つ以上の実施形態では、重合開始剤は以下の構造:
式(III)
【化3】


を有することができ、式中、Y、Y、Y、およびYは独立して置換または非置換のシリレン基とすることができる。1つ以上の実施形態では、Y、Y、Y、およびYはジアルキル置換シリレン基とすることができる。Y、Y、Y、およびYに適したアルキル置換基としては、いずれかのC〜C20、C〜C12、またはC〜C直鎖、分岐、または環状の、置換または非置換の、飽和または不飽和のアルキル基が挙げられる。1つ以上の実施形態では、Y、Y、Y、およびYのアルキル置換基は独立してC〜C直鎖、非置換、飽和アルキル基から選択することができる。1つ以上の実施形態では、Y、Y、Y、およびYはそれぞれジメチルシリレンとすることができる。
【0021】
式(III)のRおよびRは、独立して0〜20の炭素数を有するいずれかの置換または非置換のアルキレンまたはアリーレン基とすることができ、ヘテロ原子を含むことができる。さらに、RおよびRとして用いるのに適したアルキレン基は直鎖、分岐、または環状であり、飽和であっても不飽和であってもよい。なお、Rおよび/またはRの炭素数が「0」の場合、こうしたアルキレンまたはアリーレン基は実際存在しない;よって、対応する隣接する窒素原子は相互に直接結合することとなる。1つ以上の実施形態では、RおよびRは独立して直鎖C〜C12アルキレン基とすることができる。さらに、RおよびRは独立して飽和、非置換、直鎖のC〜Cアルキレン基とすることができる。適切なアルキレン基の例としては、これらに限定されないが、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、およびドデカメチレン基が挙げられる。なお、RおよびR基の組成および構成にかかわらず、式(III)に示した隣接する窒素原子はRおよびR基中に存在する、いずれかの末端または非末端炭素原子に結合することができる。1つ以上の実施形態では、隣接する窒素原子はRおよびR基の対応する末端炭素原子に結合することができる。さらに、各種実施形態では、RおよびRは同一構造を有するアルキレンまたはアリーレン基を含むことができる。
【0022】
式(III)のRおよびRは、独立して1〜20の炭素数を有するいずれかの置換または非置換のアルキレンまたはアリーレン基とすることができ、ヘテロ原子を含むことができる。さらに、RおよびRとして用いるのに適したアルキレン基は、直鎖、分岐、または環状であり、飽和であっても不飽和であってもよい。1つ以上の実施形態では、RおよびRは独立して直鎖C〜C12アルキレン基とすることができる。1つ以上の実施形態では、RおよびRは独立して1,2−エチレン、1,3−n−プロピレン、および1,4−n−ブチレンからなる群から選択することができる。なお、RおよびR基の組成および構成にかかわらず、式(III)に示した隣接するY基は、RおよびR基中に存在するいずれかの末端または非末端炭素原子に結合することができる。1つ以上の実施形態では、隣接するY基はRおよびR基の対応する末端炭素原子に結合することができる。さらに、各種実施形態では、RおよびRは同一構造を有するアルキレンまたはアリーレン基を含むことができる。
【0023】
上記式(III)中のMは重合開始剤に用いるのに適していると上述したいずれかの金属とすることができる。例えば、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属とすることができる。1つ以上の実施形態では、Mはリチウムとすることができる。
【0024】
1つ以上の実施形態では、重合開始剤は以下の構造:
式(IV)
【化4】


を有することができ、式中、Y、Y、Y、およびYは、独立して置換または非置換のシリレン基とすることができる。1つ以上の実施形態では、Y、Y、Y、およびYは、ジアルキル置換シリレン基とすることができる。Y、Y、Y、およびYに適したアルキル置換基としては、いずれかのC〜C20、C〜C12、またはC〜Cの直鎖または分岐の、置換または非置換の、飽和または不飽和のアルキル基が挙げられる。1つ以上の実施形態では、Y、Y、Y、およびYのアルキル置換基は独立してC〜C直鎖、非置換、飽和アルキル基から選択することができる。1つ以上の実施形態では、Y、Y、Y、およびYはそれぞれジメチルシリレンとすることができる。
【0025】
式(IV)のRおよびRは、独立して0〜20の炭素数を有するいずれかの置換または非置換のアルキレンまたはアリーレン基とすることができ、ヘテロ原子を含むことができる。さらに、RおよびRとして用いるのに適したアルキレン基は、直鎖、分岐、または環状であり、飽和であっても不飽和であってもよい。なお、Rおよび/またはRの炭素数が「0」の場合、こうしたアルキレンまたはアリーレン基は実際存在しない;よって、対応する隣接する窒素およびX原子は相互に直接結合することとなる。1つ以上の実施形態では、RおよびRは独立して直鎖C〜C12アルキレン基とすることができる。さらに、RおよびRは独立して飽和、非置換、直鎖C〜Cアルキレン基とすることができる。適切なアルキレン基の例としては、これらに限定されないが、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、およびドデカメチレン基が挙げられる。なお、RおよびR基の組成および構成にかかわらず、式(IV)に示した隣接する窒素およびX原子は、RおよびR基中に存在するいずれかの末端または非末端の炭素原子に結合することができる。1つ以上の実施形態では、隣接する窒素およびX原子は、RおよびR基の対応する末端炭素原子に結合することができる。さらに、各種実施形態では、RおよびRは、同一構造を有するアルキレンまたはアリーレン基を含むことができる。
【0026】
式(IV)のRは、水素原子または1〜20の炭素数を有するいずれかの置換もしくは非置換のアルキルもしくはアリール基とすることができる。さらに、Rとして用いるのに適したアルキル基は、直鎖、分岐、または環状であり、飽和であっても不飽和であってもよい。Rとして用いるのに適したアルキル基としては、これらに限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、シクロペンチル、シクロへキシル、ビニル、プロペニル、アリル、へキセニル、オクテニル、シクロペンテニル、およびシクロへキセニル基が挙げられる。
【0027】
さらに、各種実施形態では、Rは、上述の1つ以上の保護された第1級アミン基でさらに置換することができる。こうした実施形態では、R置換基は式:−R−NYを有することができ、式中、Rは、上述の式(IV)中のRまたはRのいずれかとして用いるのに適した、いずれかの置換または非置換アルキレンまたはアリーレン基とすることができ、各Y基は、独立して上述の式(IV)中のY、Y、Y、またはYのいずれかとして用いるのに適したもののうち、いずれかの保護基とすることができる。
【0028】
式(IV)のRおよびRは、独立して1〜20の炭素数を有する、いずれかの置換または非置換のアルキレンまたはアリーレン基とすることができ、ヘテロ原子を含むことができる。さらに、RおよびRとして用いるのに適したアルキレン基は、直鎖、分岐、または環状であり、飽和であっても不飽和であってもよい。1つ以上の実施形態では、RおよびR基は独立して直鎖C〜C12アルキレン基とすることができる。1つ以上の実施形態では、RおよびRは独立して1,2−エチレン、1,3−n−プロピレン、および1,4−n−ブチレンからなる群から選択することができる。なお、RおよびR基の組成および構成にかかわらず、式(IV)に示した隣接するY基はRおよびR基中に存在するいずれかの末端または非末端の炭素原子に結合することができる。1つ以上の実施形態では、隣接するY基はRおよびR基の対応する末端炭素原子に結合することができる。さらに、各種実施形態では、RおよびRは同一構造を有するアルキレンまたはアリーレン基を含むことができる。
【0029】
上記式(IV)中のMは、上述の重合開始剤に用いるのに適したいずれかの金属とすることができる。例えば、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属とすることができる。1つ以上の実施形態では、Mはリチウムとすることができる。さらに、上記式(IV)中のXは、少なくとも4の原子価を有するいずれかの原子とすることができる。1つ以上の実施形態では、Xは炭素、ケイ素、およびスズからなる群から選択することができる。
【0030】
1つ以上の実施形態に用いるのに適した重合開始剤の具体例としては、これらに限定されないが、シリル化ビス(ヘキサメチレン)トリアミン−リチウム、シリル化N−(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン−リチウム、シリル化ビス(テトラメチレン)トリアミン−リチウム、シリル化ビス(ペンタメチレン)トリアミン−リチウム、シリル化ビス(ヘプタメチレン)トリアミン−リチウム、シリル化ビス(オクタメチレン)トリアミン−リチウム、シリル化ビス(ノナメチレン)トリアミン−リチウム、シリル化1,8−ジアミノ−4−アザオクタン−リチウム、シリル化1,9−ジアミノ−4−アザノナン−リチウム、シリル化1,10−ジアミノ−4−アザデカン−リチウム、シリル化1,10−ジアミノ−5−アザデカン−リチウム、シリル化1,11−ジアミノ−4−アザウンデカン−リチウム、シリル化1,11−ジアミノ−5−アザウンデカン−リチウム、シリル化1,12−ジアミノ−4−アザドデカン−リチウム、シリル化1,12−ジアミノ−5−アザドデカン−リチウム、シリル化1,12−ジアミノ−6−アザドデカン−リチウム、シリル化1,13−ジアミノ−4−アザトリデカン−リチウム、シリル化1,13−ジアミノ−5−アザトリデカン−リチウム、シリル化1,13−ジアミノ−6−アザトリデカン−リチウム、シリル化4,4’−ジアミノ−ジフェニルアミン−リチウム、シリル化4,4’−ジ(アミノメチル)−ジフェニルアミン−リチウム、シリル化4,4’−ジ(アミノエチル)−ジフェニルアミン−リチウム、およびシリル化4,4’−ジアミノ−ジシクロへキシルアミン−リチウムが挙げられる。1つ以上の実施形態では、重合開始剤はシリル化ビス(ヘキサメチレン)トリアミン−リチウムを含む。
【0031】
上述の重合開始剤は、当技術分野において知られる、または今後見出されるいずれかの方法により調製することができる。1つ以上の実施形態では、上述の重合開始剤は、はじめに重合開始剤前駆体をシリル化剤と組み合わせ、シリル化重合開始剤前駆体を形成することにより調製することができる。1つ以上の実施形態では、得られたシリル化重合開始剤前駆体は少なくとも2つの保護された第1級アミン基を含むことができる。その後、シリル化重合開始剤前駆体を金属ドナーと組み合わせ、上述の重合開始剤を形成することができる。
【0032】
1つ以上の実施形態では、上記の重合開始剤前駆体は、少なくとも2つの第1級アミン基を有する化合物を含むことができる。さらに、重合開始剤前駆体は、少なくとも1つの第2級または第3級アミン基を含むこともできる。各種実施形態では、重合開始剤前駆体は以下の構造:
式(V)
【化5】


または
式(VI)
【化6】


の少なくとも1つを有することができ、式中、R、R、R、およびXはそれぞれ式(I)〜(IV)に関して上述したものと同じとすることができ、その2つ以上は直接的にまたは間接的に結合し、1つ以上の環状構造を形成することができる。式(V)および(VI)中のRは水素原子または1〜20の炭素数を有する、いずれかの置換もしくは非置換アルキルもしくはアリール基とすることができる。さらに、Rとして用いるのに適したアルキル基は直鎖、分岐、または環状であり、飽和であっても不飽和であってもよい。Rとして用いるのに適したアルキル基としては、これらに限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、シクロペンチル、シクロへキシル、ビニル、プロペニル、アリル、へキセニル、オクテニル、シクロペンテニル、およびシクロへキセニル基が挙げられる。1つ以上の実施形態では、Rは水素原子とすることができる。
【0033】
1つ以上の実施形態に用いるのに適した重合開始剤前駆体の具体例としては、これらに限定されないが、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、N−(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、ビス(テトラメチレン)トリアミン、ビス(ペンタメチレン)トリアミン、ビス(ヘプタメチレン)トリアミン、ビス(オクタメチレン)トリアミン、ビス(ノナメチレン)トリアミン、1,8−ジアミノ−4−アザオクタン、1,9−ジアミノ−4−アザノナン、1,10−ジアミノ−4−アザデカン、1,10−ジアミノ−5−アザデカン、1,11−ジアミノ−4−アザウンデカン、1,11−ジアミノ−5−アザウンデカン、1,12−ジアミノ−4−アザドデカン、1,12−ジアミノ−5−アザドデカン、1,12−ジアミノ−6−アザドデカン、1,13−ジアミノ−4−アザトリデカン、1,13−ジアミノ−5−アザトリデカン、1,13−ジアミノ−6−アザトリデカン、4,4’−ジアミノ−ジフェニルアミン、4,4’−ジ(アミノメチル)−ジフェニルアミン、4,4’−ジ(アミノエチル)−ジフェニルアミン、および4,4’−ジアミノ−ジシクロへキシルアミンが挙げられる。1つ以上の実施形態では、重合開始剤前駆体はビス(ヘキサメチレン)トリアミンを含む。
【0034】
上記シリル化剤は、上述の重合開始剤前駆体と反応させ、重合開始剤前駆体上に1つ以上の置換または非置換シリル基を配置することができるいずれかのシリル含有化合物とすることができる。1つ以上の実施形態では、シリル化剤は、重合開始剤前駆体と反応させ、重合開始剤前駆体の第1級アミン基上に1つ以上の置換または非置換シリル基を配置することができる。各種実施形態では、シリル化剤は以下の構造:
式(VII)
【化7】


または
式(VIII)
【化8】


を有することができ、式中、YおよびYはそれぞれ式(I)〜(IV)のY、Y、Y、またはYのいずれかに関して上述したものと同じとすることができる。1つ以上の実施形態では、式(VII)のYはアルキル置換シリル基とすることができ、式(VIII)のYおよびYはそれぞれアルキル置換シリレン基とすることができる。AおよびAは、それぞれ独立してハロゲン原子、1〜20の炭素数を有するチオアルキル基、シアノ基、またはトリフルオロメチルスルホニル基とすることができる。1つ以上の実施形態では、AおよびAは塩素等のハロゲン原子とすることができる。式(VIII)のRは1〜20の炭素数を有するいずれかの置換または非置換のアルキレンまたはアリーレン基とすることができ、ヘテロ原子を含むことができる。さらに、Rとして用いるのに適したアルキレン基は直鎖、分岐、または環状であり、飽和であっても不飽和であってもよい。1つ以上の実施形態では、Rは直鎖C〜C12アルキレン基とすることができる。適切なアルキレン基の例としては、これらに限定されないが、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、およびドデカメチレン基が挙げられる。
【0035】
1つ以上の実施形態に用いるのに適したシリル化剤の具体例としては、これらに限定されないが、クロロトリメチルシラン、クロロトリエチルシラン、クロロメチルジエチルシラン、クロロジメチルエチルシラン、クロロトリイソプロピルシラン、クロロジメチルイソプロピルシラン、ジエチルイソプロピルシリルクロリド、tert−ブチルジメチルシリルクロリド、1,2−ビス(クロロジメチルシリル)エタン、クロロトリフェニルシラン、tert−ブチルジフェニルシリルクロリド、1,3−ビス(クロロジメチルシリル)プロパン、1,4−ビス(クロロジメチルシリル)ブタン、および1,2−ビス(クロロジメチルシリル)ベンゼンが挙げられる。1つ以上の実施形態では、シリル化剤は1,2−ビス(クロロジメチルシリル)エタン、1,3−ビス(クロロジメチルシリル)プロパン、1,4−ビス(クロロジメチルシリル)ブタン、1,2−ビス(クロロジメチルシリル)ベンゼン、またはこれらの混合物を含む。
【0036】
上記のように、金属ドナーはシリル化重合開始剤前駆体と組み合わせることができる。金属ドナーは有機アルカリ金属化合物または有機アルカリ土類金属化合物とすることができる。1つ以上の実施形態では、金属ドナーは有機リチウム化合物とすることができる。適切な有機リチウム化合物としては、これらに限定されないが、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチル−フェニルリチウム、4−フェニル−ブチルリチウム、シクロへキシルリチウム、およびシクロペンチルリチウムが挙げられる。1つ以上の実施形態では、金属ドナーはエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、およびこれらの混合物からなる群から選択することができる。各種実施形態では、金属ドナーはn−ブチルリチウムを含む。
【0037】
1つ以上の実施形態では、上述の重合開始剤は、まず上述の重合開始剤前駆体を上述のシリル化剤と組み合わせ、シリル化重合開始剤前駆体を形成することにより調製することができる。1つ以上の実施形態では、この初期工程に、重合開始剤前駆体に含まれる活性第1級アミンプロトン(すなわち、水素原子)1mol当たり、少なくとも0.5、少なくとも0.7、または少なくとも1.0molのシリル化剤中のシリル基を用いることができる。また、この初期工程は任意で少なくとも一部の金属ドナーの存在下で行うことができる。1つ以上の実施形態では、重合開始剤前駆体1mol当たり、少なくとも0.5、少なくとも0.7、または少なくとも1.0molの金属ドナーを用いることができる。
【0038】
第2工程では、シリル化重合開始剤前駆体を前記金属ドナーと組み合わせ、上述の重合開始剤を形成することができる。さらに、金属ドナーを初期工程に用いる場合、第2工程に用いる金属ドナーは初期工程に用いるものと同じであっても異なっていてもよい。1つ以上の実施形態では、シリル化重合開始剤前駆体1mol当たり、少なくとも0.5、少なくとも0.7、または少なくとも1.0molの金属ドナーを用いることができる。
【0039】
上述の手順の初期および第2工程の両方は、各種溶媒および/または試薬の存在下で行うことができる。上述のプロセスに用いるのに適したこうした溶媒および/または試薬の例としては、これらに限定されないが、ヘキサン、ジクロロメタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、およびジエチルエーテルが挙げられる。さらに、重合開始剤は1つ以上のルイス塩基の存在下で調製することができる。こうしたルイス塩基としては、これらに限定されないが、テトラヒドロフランまたは2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパンのようなエーテル化合物、およびトリエチルアミンまたはN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンのようなトリアルキルアミン化合物が挙げられる。重合開始剤の調製は窒素、アルゴン、等のような不活性ガスの雰囲気中、約−20〜約80℃の範囲内の温度で行うことができる。1つ以上の実施形態では、開始剤の調製は室温で行うことができる。
【0040】
上記のように、上述の重合開始剤を用い、重合開始剤から誘導される少なくとも1つのモノマー残基を含むポリマーを製造することができる。本明細書において用いる「残基」の語は、例えば、重合または架橋により、より大きな分子構造中に組み込まれた分子の残存部分を表す。
【0041】
ポリマーとしては、上述の重合開始剤から誘導される少なくとも1つのモノマー残基を含むいずれかのポリマーが想定される。1つ以上の実施形態では、重合開始剤残基は、ポリマーの開始末端モノマーに存在し得る。さらに、開始末端モノマー残基は、少なくとも2つの保護されたまたは保護されていないペンダント第1級アミン基を含むことができる。1つ以上の実施形態では、ポリマーの開始末端モノマーは少なくとも2つの保護されていない第1級アミン基を含む。さらに、ポリマーは1つ以上の不飽和C−C結合を含むことができる。
【0042】
1つ以上の実施形態では、ポリマーは共役ジエンモノマーから誘導される複数の残基を含むことができる。このようなものとして、1つ以上の実施形態では、ポリマーは共役ジエンモノマーのホモポリマーとすることができる。適切な共役ジエンモノマーの例としては、これらに限定されないが、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、および1,3−ヘキサジエンが挙げられる。1つ以上の実施形態では、共役ジエンモノマーは、1,3−ブタジエンおよび/またはイソプレンを含む。さらに、ポリマーは芳香族ビニルモノマーから誘導される複数の残基を含むことができる。このようなものとして、ポリマーは共役ジエンモノマーおよび芳香族ビニルモノマーのコポリマーとすることができる。適切な芳香族ビニルモノマーの例としては、これらに限定されないが、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4−シクロヘキシルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、2−ビニルピリジン、および4−ビニルピリジンが挙げられる。1つ以上の実施形態では、芳香族ビニルモノマーはスチレンを含む。さらに、1つ以上の実施形態では、ポリマーはスチレン−ブタジエンコポリマーを含む。
【0043】
上述の重合開始剤を用いて調製されたポリマーは以下の構造:
式(IX)
【化9】


または
式(X)
【化10】


の少なくとも1つを有することができ、式中、R、R、R、Y、Y、Y、Y、およびXはすべて式(I)〜(IV)のR、R、R、Y、Y、Y、Y、およびXに関して上述したものと同じとすることができる。さらに、R、R、R、Y、Y、Y、および/またはYのいずれかを相互に直接的にまたは間接的に結合し、1つ以上の環状構造を形成することができる。
【0044】
式(IX)〜(X)の構造中、Polyは共役ジエンモノマーおよび/または芳香族ビニルモノマーから誘導される、複数の残基を含むポリマーとすることができる。1つ以上の実施形態では、Polyは共役ジエンモノマーのホモポリマーとすることができる。他の実施形態では、Polyは共役ジエンモノマーおよび芳香族ビニルモノマーのコポリマーとすることができる。適切な共役ジエンおよび芳香族ビニルモノマーとしては、上述したもの(例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、スチレン、等)が挙げられる。各種実施形態では、Polyはスチレン−ブタジエンコポリマーを含む。式(IX)および(X)の構造中、Zは重合開始剤に用いるのに適していると上述したもののようなアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属、または後述するもののような重合停止剤および/もしくは変性剤の残基を含むことができる。
【0045】
上述の重合開始剤を用いて調製されたポリマーは、約5〜約100MUの範囲内、または10〜80MUの範囲内のムーニー粘度(ML1+4、100℃)を有することができる。さらに、ポリマーは約5,000〜約500,000g/molの範囲内、または25,000〜250,000g/molの範囲内の数平均分子量(Mn)を有することができる。
【0046】
上述のポリマーは当技術分野において知られる、または今後見出される、いずれかの重合方法を用いて調製することができる。例えば、上述の重合開始剤をはじめに調製した後、上述した1つ以上のタイプのモノマーと組み合わせる第1の重合方法が考えられる。代替実施形態では、1つ以上のタイプのモノマーのごく一部を、あらかじめ調製した重合開始剤に添加し、これによりその後モノマーの残りの部分に添加することができるオリゴマーを形成する、第2の重合方法を用いることができる。また他の実施形態では、重合系において1つ以上のタイプのモノマーと共存させ、重合開始剤をその場で(in situ)形成する、第3の方法を用いることができる。どの方法を用いるかにかかわらず、用いられる重合開始剤の量はモノマー100g当たり、約0.2〜約20mmolの範囲内とすることができる。
【0047】
上記の第2重合方法では、前記のように調製された重合開始剤を1つ以上のタイプのモノマーを含む溶液に添加し、以下の構造:
式(XI)
【化11】


または
式(XII)
【化12】


のいずれかにより表される低分子量ポリマー(すなわち、オリゴマー)を形成することができるが、式中、R、R、R、Y、Y、Y、Y、およびXはそれぞれ式(IX)および(X)の構造に関して上述したものと同じとすることができ、Mは式(I)〜(IV)の構造に関して上述したものと同じとすることができ、Oliは約3〜約300の範囲内の繰り返し残基単位を有するオリゴマーを表す。さらに、R、R、R、Y、Y、Y、および/またはYのいずれかを相互に直接的にまたは間接的に結合し、1つ以上の環状構造を形成することができる。得られたオリゴマーを、上述のような1つ以上のタイプのモノマーを含む溶液に添加することでポリマーを得ることができる。
【0048】
上記の第3重合方法では、初期工程において重合開始剤を調製する際に形成されたシリル化化合物(すなわち、上述のシリル化重合開始剤前駆体)を、上述の金属ドナーとともに1つ以上のタイプのモノマーを含有する溶液に添加することでポリマーを得ることができる。金属ドナーおよびシリル化重合開始剤前駆体は、重合開始剤の考えられる調製方法に関して上述したものと実質的に同じとすることができる。
【0049】
上述のようなポリマーは、溶液重合、気相重合、またはバルク重合のいずれかにより製造することができる。1つ以上の実施形態では、ポリマーは溶液重合により調製することができる。さらに、1つ以上の実施形態では、ポリマーはリビングアニオン重合によって調製することができる。ポリマーを溶液重合により製造する場合、モノマーは、例えば、重合反応に対して実質的に不活性である炭化水素溶媒において重合することができる。使用に適した炭化水素溶媒の例としては、これらに限定されないが、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、およびこれらの混合物が挙げられる。1つ以上の実施形態では、重合中ヘキサンを溶媒として用いることができる。
【0050】
上述のポリマーの製造は、ランダム化剤の存在下で行うこともできる。ランダム化剤は、得られるポリマーの微細構造を制御することができ、得られるポリマーのビニル含有量(1,2−または3,4−付加構造中の共役ジエン残基)に影響を及ぼすことができる。ランダム化剤は、重合のいずれかの任意の段階で添加することができる。適切なランダム化剤の例としては、これらに限定されないが、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジテトラヒドロフリルプロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジピペリジノエタン、カリウム−tert−アミレート、カリウム−tert−ブトキシド、ナトリウム−tert−アミレートおよびこれらの混合物が挙げられる。用いられるランダム化剤の量は、用いられる重合開始剤1mol当たり、約0.01〜約100molの範囲内とすることができる。
【0051】
上述のポリマーを溶液重合により製造する場合、溶液中のモノマーの濃度は、重合系の総重量に対して約5〜約50重量パーセントの範囲内、または10〜30重量パーセントの範囲内とすることができる。さらに、重合中に共役ジエンモノマーおよび芳香族ビニルモノマーを両方用いる場合、モノマー混合物中の芳香族ビニル化合物の含有量は、約3〜約50重量パーセントの範囲内、または4〜45重量パーセントの範囲内とすることができる。また、重合系は、バッチシステムまたは連続システムであってもよい。
【0052】
上述のポリマーの製造中、重合温度は、約0〜約150℃の範囲内、または20〜130℃の範囲内とすることができる。また、重合は、自然に生じた圧力下で行ってもよいが、用いられるモノマーを実質的に液相に保持するのにちょうど十分な圧力下で行うこともできる。重合反応を自然に生じた圧力より高い圧力下で行う場合、反応系は不活性ガスで加圧することができる。さらに、モノマー、重合開始剤、および溶媒のような重合に用いられる出発材料は、水、酸素、二酸化炭素、およびプロトン化合物のような反応妨害物質を除去した後に用いることができる。
【0053】
リビング重合技術を用いる場合、重合開始剤から誘導された、その開始末端モノマー残基に存在する官能基および反対の末端上に重合活性末端を有するリビングポリマー(すなわち、式(IX)または(X)のZがアルカリ金属またはアルカリ土類金属であるポリマー)を得ることができる。1つ以上の実施形態では、重合活性末端は停止剤により所望の停止点で簡単に不活性化することができる。例えば、重合停止剤は重合系に添加することができる。適切な重合停止剤の例としては、これらに限定されないが、水、またはアルコール化合物のような活性プロトンを含有する他の化合物が挙げられる。こうした重合停止剤を用いる場合、得られた終了末端モノマー残基は水素原子とすることができる。あるいは、重合活性末端を変性剤で変性し、1つ以上の所望の官能基を有する変性終了末端モノマー残基を有するポリマーを得ることができる。例えば、カルボアニオン反応性化合物は1つ以上の所望の官能基を含有する変性剤として用いることができる。こうした場合では、ポリマーは式(IX)または(X)のZがポリマーの重合活性末端をカルボアニオン反応性化合物と反応させることにより生成される残基である場合に得ることができる。
【0054】
カルボアニオン反応性化合物は、窒素含有官能基、ケイ素含有化合物、および/またはスズ含有化合物とともに、カルボアニオン反応場所としてC=B(BはO、S、またはC原子を表す)またはエポキシ基の少なくとも1つを含む化合物とすることができる。C=Bまたはエポキシ基の少なくとも1つ、および窒素含有官能基を有するカルボアニオン反応性化合物の具体例としては、これらに限定されないが、4−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−ジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−ジメチルアミノベンズアルデヒド、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド、1,1−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)エチレン、1,1−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)エチレン、1,1−ジメトキシトリメチルアミン、4−ジメチルアミノベンジリデンアニリン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、4−ピリジルアミド、4−ピリジル−エチレンオキシド、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、ジシクロへキシルカルボジイミド、ε−カプロラクタム、N−メチル−ε−カプロラクタム、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルピロリドン、フェニルイソシアネート、フェニルチオイソシアネート、ジイソシアネート、およびフェニルメタンが挙げられる。1つ以上の実施形態では、変性剤は4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4−ビニルピリジン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、およびこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0055】
上記のように、変性剤(すなわち、カルボアニオン反応性化合物)は、選択的に、ケイ素含有化合物および/またはスズ含有化合物を含むことができる。1つ以上の実施形態では、こうした変性剤は式:
式(XIII)
【化13】


を有することができ、式中、Rは1〜20の炭素数を有するアルキル基、3〜20の炭素数を有するシクロアルキル基、6〜20の炭素数を有するアリール基、および7〜20の炭素数を有するアラルキル基からなる群から選択され;Zはスズまたはケイ素原子とすることができ;Xは塩素または臭素原子とすることができ;aは0〜3の整数であり、bは1〜4の整数であるが、ただし、a+b=4である。式(XIII)の構造を有する適切な変性剤の例としては、これらに限定されないが、四塩化スズ、RSnCl、RSnCl、およびRSnClが挙げられる。1つ以上の実施形態では、変性剤は四塩化スズを含む。
【0056】
1つ以上の実施形態では、変性剤は以下のアルコキシシラン構造:
式(XIV)
【化14】


を有するケイ素含有化合物を含むことができ、式中、Aは(チオ)エポキシ、(チオ)イソシアネート、(チオ)ケトン、(チオ)アルデヒド、イミン、アミド、イソシアヌル酸トリエステル、(チオ)カルボン酸アルキルエステル、(チオ)カルボン酸の金属塩、カルボン酸無水物、カルボン酸のハロゲン化物、カルボン酸ジアルキルエステル、環状第3級アミン、非環状第3級アミン、ニトリル、ピリジン、硫化物、多硫化物、アミンのアルカリ金属塩、アミンのアルカリ土類金属、シラザン、およびジシラザン基からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有する一価の基とすることができ;Rは単結合または二価不活性アルキレン基とすることができ;R10およびR11は独立して1〜20の炭素数を有するアルキル基または6〜18の炭素数を有するアリール基とすることができ;nは0〜2の整数とすることができ;nが1より大きい場合、OR11基は互いに同じまたは異なっていてもよく;活性プロトンおよびオニウム塩は分子中に含まれていない。
【0057】
式(XIV)の官能基Aにおいて、イミンはケチミン、アルジミン、およびアミジンを含むことができ;(チオ)カルボン酸エステルはアクリレートまたはメタクリレートのような不飽和カルボン酸のエステルを含むことができ;非環状第3級アミンはN,N−分散アニリンのようなN,N−分散芳香族アミンを含み;環状第3級アミンは環の一部として(チオ)エーテルを含むことができる。(チオ)カルボン酸の金属塩の金属として、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Al、Sn、またはZnを用いることができる。さらに、A中の官能基はアミンのアルカリ金属塩、アミンのアルカリ土類金属塩、シラザン、またはジシラザンとすることができる。
【0058】
二価不活性アルキレン基として、Rは1〜20の炭素数を有するアルキレン基を含むことができる。アルキレン基は直鎖、分岐、または環状であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。1つ以上の実施形態では、Rのアルキレン基は直鎖とすることができる。Rとして用いるのに適したアルキレン基の例としては、これらに限定されないが、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、デカメチレン、およびドデカメチレン基が挙げられる。
【0059】
式(XIV)のR10およびR11は、独立して1〜20の炭素数を有するアルキル基、2〜20の炭素数を有するアルケニル基、6〜18の炭素数を有するアリール基、および/または7〜18の炭素数を有するアラルキル基を含むことができる。アルキル基およびアルケニル基は、直鎖、分岐、または環状であってもよく、例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、シクロペンチル、シクロへキシル、ビニル、プロペニル、アリル、へキセニル、オクテニル、シクロペンテニル、およびシクロへキセニル基が挙げられる。また、アリール基が存在する場合、そのアリール基は、芳香族環上に低級アルキル基のような置換基を有していてもよく、例としては、フェニル、トリル、キシリル、およびナフチル基が挙げられる。さらに、アラルキル基が存在する場合、そのアラルキル基は、芳香族環上に低級アルキル基のような置換基を有していてもよく、例としては、ベンジル、フェネチル、およびナフチルメチル基が挙げられる。
【0060】
式(XIV)のアルコキシシラン化合物中、(チオ)エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物の例としては、これらに限定されないが、2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、(2−グリシドキシエチル)メチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチル(メチル)ジメトキシシラン、およびこれらの化合物中のエポキシ基をチオエポキシ基で置き換えることにより得られた化合物が挙げられる。1つ以上の実施形態では、上記の変性剤は、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランおよび/または3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランを含むことができる。
【0061】
式(XIV)の構造を有するイミン基含有アルコキシシラン化合物の例としては、これらに限定されないが、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルエチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−エチリデン−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(シクロへキシリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、ならびにトリメトキシシリル化合物、メチルジメトキシシリル化合物、エチルジエトキシシリル化合物、メチルジメトキシシリル化合物、およびこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するエチルジメトキシシリル化合物が挙げられる。1つ以上の実施形態では、上記の変性剤はN−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミンおよび/またはN−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミンを含むことができる。
【0062】
式(XIV)の構造を有するイミン(アミジン)基含有アルコキシシラン化合物の例としては、これらに限定されないが、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−イソプロポキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、およびN−(3−メチルジエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾールが挙げられる。1つ以上の実施形態では、上記の変性剤はN−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾールを含むことができる。
【0063】
式(XIV)の構造を有するカルボン酸エステル基含有アルコキシシラン化合物の例としては、これらに限定されないが、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、および3−メタクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシランが挙げられる。1つ以上の実施形態では、上記の変性剤は3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを含むことができる。
【0064】
式(XIV)の構造を有するイソシアネート基含有アルコキシシラン化合物の例としては、これらに限定されないが、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、および3−イソシアナトプロピルトリイソプロポキシシランが挙げられる。1つ以上の実施形態では、上記の変性剤は3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランを含むことができる。
【0065】
式(XIV)の構造を有するカルボン酸無水物基含有アルコキシシラン化合物の例としては、これらに限定されないが、3−トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、および3−メチルジエトキシシリルプロピルコハク酸無水物が挙げられる。1つ以上の実施形態では、上記の変性剤は3−トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物を含むことができる。
【0066】
環状第3級アミン基および式(XIV)の構造を有するアルコキシシラン化合物の例としては、これらに限定されないが、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリメトキシ)シラン、(1−ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリメトキシ)シラン、(1−ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリエトキシ)シラン、2−(1−ヘキサメチレンイミノ)エチル(トリエトキシ)シラン、2−(1−ヘキサメチレンイミノ)エチル(トリメトキシ)シラン、3−(1−ピロリジニル)プロピル(トリエトキシ)シラン、3−(1−ピロリジニル)プロピル(トリメトキシ)シラン、3−(1−ヘプタメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、3−(1−ドデカメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(ジエトキシ)メチルシラン、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(ジエトキシ)エチルシラン、および3−[10−(トリエトキシシリル)デシル]−4−オキサゾリンが挙げられる。1つ以上の実施形態では、上記の変性剤は3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シランおよび/または(1−ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリメトキシ)シランを含むことができる。
【0067】
式(XIV)の構造を有する非環状第3級アミン基含有アルコキシシラン化合物の例としては、これらに限定されないが、3−ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3−ジメチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン、3−ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3−ジエチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン、2−ジメチルアミノエチル(トリエトキシ)シラン、2−ジメチルアミノエチル(トリメトキシ)シラン、3−ジメチルアミノプロピル(ジエトキシ)メチルシラン、および3−ジブチルアミノプロピル(トリエトキシ)シランが挙げられる。1つ以上の実施形態では、上記の変性剤は3−ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シランおよび/または3−ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シランを含むことができる。
【0068】
式(XIV)の構造を有するジシラザン基含有アルコキシシラン化合物の例としては、これらに限定されないが、N,N−ビス(トリメチルシリル)−3−アミノプロピル(トリエトキシ)シラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)−3−アミノプロピル(トリメトキシ)シラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)−3−アミノプロピル(ジエトキシ)メチルシラン、およびN,N−ビス(トリメチルシリル)−3−アミノプロピル(ジメトキシ)メチルシランが挙げられる。
【0069】
式(XIV)の構造を有する他の適切なアルコキシシラン化合物としては、これらに限定されないが、2−(トリメトキシシリルエチル)ピリジン、2−(トリエトキシシリルエチル)ピリジン、および2−シアノエチルトリエトキシシランが挙げられる。さらに、式(XIV)のアルコキシシラン化合物の前述の例のいずれかを単独でまたは2つ以上の組み合わせで用いてもよい。また、アルコキシシラン化合物の部分縮合物を用いてもよい。
【0070】
1つ以上の実施形態では、変性剤は以下の構造:
式(XV)
【化15】


を有するケイ素含有化合物を含むことができ、式中、R12およびR13はそれぞれ式(XIV)のR10およびR11について上記したものと同じとすることができ;pは0〜2の整数であり;1つ以上のOR13基が存在する場合、こうした基は互いに同じまたは異なるものとすることができる。
【0071】
式(XV)の構造を有する適切なアルコキシシラン化合物の例としては、これらに限定されないが、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、およびジビニルジエトキシシランが挙げられる。1つ以上の実施形態では、上記の変性剤はテトラエトキシシランを含むことができる。
【0072】
式(XV)のアルコキシシラン化合物は単独でまたは2つ以上の組み合わせで用いてもよい。また、アルコキシシラン化合物の部分縮合物を用いてもよい。
【0073】
1つ以上の実施形態では、重合活性末端の上述の変性剤での変性反応は溶液反応により行うことができる。こうした溶液は重合中に用いられるモノマーを含むこともできる。適切な溶媒としては重合中に用いるのに適した溶媒に関して上述したものが挙げられる。また、変性反応の反応系はとくに限定されず、バッチシステムまたは連続システムであってもよい。
【0074】
各種実施形態では、得られた変性ポリマーは開始末端モノマー残基の活性第1級アミン基についてイソシアネート基を有する化合物およびその縮合物から選択される少なくとも1つのイソシアネート化合物でさらに変性してもよい。開始末端モノマー残基のイソシアネート化合物での変性反応は溶液反応によって行うことができ、重合に用いられるモノマーをこうした溶液に含むこともできる。さらに、1つ以上の実施形態では、活性プロトンを有する化合物は、活性第1級アミン基を有するポリマー以外、反応溶液中に組み込まれない。また、重合活性末端はイソシアネート基に対して不活性であるので、式(IX)または(X)のZは、重合停止剤または上述の変性剤のような、カルボアニオン反応性化合物と反応させることにより生成された残基とすることができる。さらに、開始末端モノマー残基での変性反応の反応系はとくに限定されないが、バッチシステムまたは連続システムであってもよい。
【0075】
上記のように、上述の重合開始剤を用いて調製されたポリマーは重合開始剤から誘導された残基を含むことができる。よって、得られたポリマーは上述の保護された第1級アミン基を保持する重合開始剤の残基をはじめに含むことができる。従って、1つ以上の実施形態では、得られたポリマーは1つ以上の脱保護プロセスを行い、1つ以上の保護されていない第1級アミン基を有するポリマーを製造することができる。上述の保護基の少なくとも一部を除去し、少なくとも1つまたは少なくとも2つの保護されていない第1級アミン基を有するポリマーをもたらす、当技術分野において知られるまたは今後見出されるいずれかの脱保護プロセスを用いることができる。例えば、保護された第1級アミン基の脱保護のためポリマーのフッ化テトラ−n−ブチルアンモニウムでの処理を用いることができる。各種実施形態では、水蒸気脱溶媒(例えば、ポリマーの脱溶媒中)、酸性媒体での処理(例えば、HCl水溶液、HClアルコール溶液、またはその両方の混合物の添加)、アルコールでの凝固、または水素化を用いる方法を用いることができる。なお、しかしながら、得られたポリマー中の不飽和の保持が望ましくあり得る;従って、水素化はいくつかの実施形態では用いられない。よって、1つ以上の実施形態では、得られたポリマーは水蒸気脱溶媒、酸性媒体での処理、またはアルコールでの凝固による脱保護を行うことができる。従って、1つ以上の実施形態では、少なくとも2つの保護されていない第1級アミン基および複数のC−C二重結合を有するポリマーをもたらす。
【0076】
脱保護プロセスとして酸性媒体での処理を用いる場合、いずれかの既知のまたは今後見出される酸性媒体を用いることができる。適切な酸性媒体の例としては、これらに限定されないが、酢酸、プロピオン酸、ブチル酸、および吉草酸のような短鎖カルボン酸;ステアリン酸、パルミチン酸、およびオレイン酸のような少なくとも6の炭素鎖長を有する脂肪酸;C〜C50脂肪酸のような高級脂肪酸;ならびに塩酸およびフッ酸のようなハロゲン酸が挙げられる。1つ以上の実施形態では、初期ポリマーはステアリン酸との接触によって脱保護を行うことができる。
【0077】
上記のように、上述の重合開始剤を用いて調製されたポリマーをゴム組成物中のゴム成分の少なくとも一部として含めることができる。さらに、上述の重合開始剤を用いて調製された後に変性された変性ポリマーを、ゴム組成物中のゴム成分の少なくとも一部として含めることもできる。いずれの場合でも、ゴム成分中のポリマーおよび/または変性ポリマーの含有量は、ゴム組成物中のゴム成分の全重量に対して少なくとも5重量パーセント、少なくとも10重量パーセント、少なくとも20重量パーセント、少なくとも25重量パーセント、または少なくとも50重量パーセントの量とすることができる。本発明の特定の実施形態によるゴム組成物において、天然ゴム(「NR」)、非変性または他の変性スチレン−ブタジエンコポリマー(「SBR」)、ポリブタジエンゴム(「BR」)、ポリイソプレンゴム(「IR」)、ブチルゴム(「IIR」)、およびエチレン−プロピレンコポリマーを上述のポリマーおよび/または変性ポリマーに加えてゴム成分の一部として用いることもできる。1つ以上の実施形態では、ゴム組成物のゴム成分はさらに天然ゴムを含む。さらに、これらのタイプのゴムは単独でまたは2つ以上のブレンドで用いてもよい。
【0078】
ゴム組成物は加硫剤(すなわち、架橋剤)として硫黄を含有することもできる。よって、1つ以上の実施形態では、ゴム組成物は硫黄架橋性とすることができる。ゴム組成物の硫黄での架橋は、例えばタイヤおよびベルトのような、ゴム製品に用いるのに適した強度を有する組成物をもたらすことができる。
【0079】
1つ以上の実施形態では、ゴム組成物はカーボンブラックおよび/または無機充填剤を含有することもできる。カーボンブラックおよび/または無機充填剤は充填剤としてゴム成分100部当たり約10〜約100重量部(ゴム100当たりの部数、または「phr」)の範囲内の総重量で配合することができる。カーボンブラックとして、FEF、SRF、HAF、ISAF、およびSAFグレードを用いることができる。1つ以上の実施形態では、カーボンブラックはHAF、ISAF、および/またはSAFグレードを含む。
【0080】
上記の無機充填剤はシリカおよび/または以下の式:
式(XVI)
【化16】


により表される無機化合物を含むことができ、式中、Mはアルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム、およびジルコニウムからなる群から選択される金属、こうした金属の酸化物または水酸化物、これらの水和物、またはこれらの金属の少なくとも1つの炭酸塩とすることができ;w、x、yおよびzはそれぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、および0〜10の整数である。式(XVI)においてxおよびzが0である場合、無機化合物はアルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム、およびジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1つの金属、またはそれらの金属酸化物もしくは金属水酸化物であり得る。
【0081】
式(XVI)の構造を有する無機化合物の例としては、γ−アルミナまたはα−アルミナのようなアルミナ(Al);ベーマイトまたはダイアスポアのようなアルミナ一水和物(Al・HO);ギブサイトまたはバイヤライトのような水酸化アルミニウム[Al(OH)];炭酸アルミニウム[Al(CO];水酸化マグネシウム[Mg(OH)];酸化マグネシウム(MgO);炭酸マグネシウム(MgCO);タルク(3MgO・4SiO・HO);アタパルジャイト(5MgO・8SiO・9HO);チタンホワイト(TiO);チタンブラック(TiO2n−1);酸化カルシウム(CaO);水酸化カルシウム[Ca(OH)];酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al);クレイ(Al・2SiO);カオリン(Al・2SiO・2HO);ピロフィライト(Al・4SiO・HO);ベントナイト(Al・4SiO・2HO);ケイ酸アルミニウム(例えば、AlSiOおよびAl・3SiO・5HO);ケイ酸マグネシウム(例えば、MgSiOおよびMgSiO);ケイ酸カルシウム(CaSiO);ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al・CaO・2SiO);ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO);炭酸カルシウム(CaCO);酸化ジルコニウム(ZrO);水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)・nHO];炭酸ジルコニウム[Zr(CO];および水素、アルカリ金属、または各種ゼオライトのような電子電荷を補正するアルカリ土類金属を含む結晶アルミノシリケートが挙げられる。
【0082】
1つ以上の実施形態では、無機充填剤は湿式シリカまたは乾式シリカを含むシリカを含むことができる。各種実施形態では、無機充填剤は湿式シリカを含む。上記のゴム組成物中に配合されるシリカの量は約10〜100phrの範囲内とすることができる。
【0083】
さらに、1つ以上の実施形態では、ゴム組成物は混合成分として脂肪酸を含むことができる。こうした脂肪酸は少なくとも6つの炭素原子を有する脂肪酸、C〜C22脂肪酸、またはC23〜C50脂肪酸のような高級脂肪酸とすることができる。1つ以上の実施形態では、用いられる脂肪酸はステアリン酸を含む。上記のように、上述の重合開始剤を用いてはじめに調製されたポリマーは脱保護プロセスを行うことができる保護された第1級アミン基を含むことができ、こうした脱保護プロセスは酸性媒体での処理を含むことができる。1つ以上の実施形態では、上述のポリマーはゴム組成物の形成中に用いられる脂肪酸との接触によって脱保護を行うことができる。例えば、ゴム組成物中の成分として用いられるステアリン酸は、ゴム組成物のポリマー成分上に存在する保護されたアミン基の少なくとも一部を脱保護する役割を果たすことができる。1つ以上の実施形態では、脂肪酸は、上述の重合開始剤を用いて調製される、少なくとも2つの保護されていない第1級アミン基を有するポリマーをもたらす役割を果たすことができる。
【0084】
上記ゴム成分、架橋剤、および充填剤に加えて、ゴム組成物にはゴム産業において用いられる他の添加剤を配合してもよい。例えば、1つ以上の抗酸化剤、柔軟剤、シラン結合剤、加硫促進剤、および/または促進活性剤をゴム組成物に用いてもよい。ゴム組成物は、上述の重合開始剤で調製された、任意で変性されたポリマーを少なくとも含むゴム成分を各種添加剤と配合した後、それらを粉砕、加温、および押出することにより製造することができる。
【0085】
1つ以上の実施形態では、得られたゴム組成物は約20〜約150MUの範囲内、または40〜100MUの範囲内のムーニー粘度(ML1+4、100℃)を有することができる。ゴム組成物はタイヤ、ベルト、等のようなゴム製品に用いることができる。1つ以上の実施形態では、ゴム組成物はタイヤトレッドのようなタイヤの各種ゴム部材に用いられる。
【0086】
本発明はその各種実施形態の以下の実施例によりさらに例示することができるが、これらの実施例が例示の目的のためにのみ含まれ、とくに指示のない限り、本発明の範囲を限定することを意図しないことが理解されるだろう。
【実施例】
【0087】
試験例1―シリル化BHMT−Li開始剤の合成
ビス(ヘキサメチレン)トリアミン(「BHMT」)(8.8g、40.8mmol)(シグマアルドリッチ、米国ミズーリ州セントルイス;製品No.421960)およびトリエチルアミン(23.3mL、167.3mmol)のジクロロメタン(100mL)溶液に、1,2−ビス(クロロジメチルシリル)エタン(18.0g、83.7mmol)(シグマアルドリッチ、米国ミズーリ州セントルイス;製品No.267880)のジクロロメタン(100mL)溶液を30分間かけて一滴ずつ添加した。得られた混合物を次に室温で18時間激しく撹拌した。その後溶媒を約10mmHgの減圧下で3時間かけて除去した。ヘキサン(50mL)を次に残留物に添加し、ガラスフィルターを通してろ過した。次に、ろ過物を真空下で乾燥させ、黄白色の油であるシリル化BHMTを得た。この生成物はさらなる精製なしに用いた。
【0088】
その後、以下の成分:上で調製したシリル化BHMT(0.78g、1.56mmol)、無水ヘキサン(10.0mL)、およびn−ブチルリチウム(2.2mmol、1.38mLの1.6Mヘキサン溶液)を、クラウンシールを備え、乾燥し、窒素パージした、200mL容量を有するボトルに入れた。この溶液は後述する重合に用いる直前に調製し、約0.19Mのシリル化BHMT−Li溶液であると推定した。
【0089】
試験例2―シリル化APPD−Li開始剤の合成
N−(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン(「APPD」)(9.3g、70.7mmol)(シグマアルドリッチ、米国ミズーリ州セントルイス;製品No.11006)およびトリエチルアミン(40.4mL、290.0mmol)のジクロロメタン(200mL)溶液に、1,2−ビス(クロロジメチルシリル)エタン(31.2g、145.0mmol)(シグマアルドリッチ、米国ミズーリ州セントルイス;製品No.267880)のジクロロメタン(200mL)溶液を30分間かけて一滴ずつ添加した。得られた混合物を次に室温で18時間激しく撹拌した。その後溶媒を約10mmHgの減圧下で3時間かけて除去した。ヘキサン(50mL)を次に残留物に添加し、ガラスフィルターを通してろ過した。次に、ろ過物を真空下で乾燥させ、黄白色の油であるシリル化APPDを得た。この生成物はさらなる精製なしに用いた。
【0090】
その後、以下の成分:上で調製したシリル化APPD(0.65g、1.56mmol)、無水ヘキサン(3.0mL)、およびn−ブチルリチウム(3.0mmol、1.87mLの1.6Mヘキサン溶液)を、クラウンシールを備え、乾燥し、窒素パージした、200mL容量を有するボトルに入れた。この溶液は後述する重合に用いる直前に調製し、約0.61Mのシリル化APPD−Li溶液であると推定した。
【0091】
試験例3―シリル化nPPDA−Li開始剤の合成
N−プロピル−1,3−ジアミノプロパン(「nPPDA」)(40mL、0.29mol)(シグマアルドリッチ、米国ミズーリ州セントルイス;製品No.308153)およびトリエチルアミン(88.8mL、0.64mol)のジクロロメタン(250mL)溶液に、1,2−ビス(クロロジメチルシリル)エタン(68.6g、0.32mmol)(シグマアルドリッチ、米国ミズーリ州セントルイス;製品No.267880)のジクロロメタン(250mL)溶液を30分間かけて一滴ずつ添加した。得られた混合物を室温で18時間激しく撹拌した。その後溶媒を約10mmHgの減圧下で3時間かけて除去した。ヘキサン(100mL)を次に残留物に添加し、ガラスフィルターを通してろ過した。ろ過物を真空下で乾燥させ、黄白色の油であるシリル化nPPDAを得た。この生成物はさらなる精製なしに用いた。
【0092】
その後、以下の成分:上で調製したシリル化nPPDA(0.40g、1.56mmol)、無水ヘキサン(4.0mL)、およびn−ブチルリチウム(2.7mmol、1.70mLの1.6Mヘキサン溶液)を、クラウンシールを備え、乾燥し、窒素パージした、200mL容量を有するボトルに入れた。この溶液は後述する重合に用いる直前に調製し、約0.48Mのシリル化nPPDA−Li溶液であると推定した。
【0093】
試験例4―BHMT−SBRポリマーの重合
スチレン−ブタジエンゴム(「SBR」)の試料を、試験例1において調製したシリル化BHMT−Li開始剤を用い、以下の手順に従って調製した。クラウンシールを備え、乾燥し、窒素パージした、750mL容量を有するボトルに、56gの1,3−ブタジエン、14gのスチレン、および230gの無水ヘキサンを入れた。次に試験例1において調製したシリル化BHMT−Li溶液4.0mLおよび2,2−ビス(テトラヒドロフリル)プロパンの1.6Mヘキサン溶液0.15mLを、ボトルシールを通して注入した。ボトルを50℃の回転水槽に入れ、90分間重合させた。得られたポリマーセメントを16.7重量パーセントのジ−tert−ブチル−p−クレゾールを含有する2mLの2−プロパノールでクエンチした。セメントをドラム乾燥機で乾燥させ、BHMT−スチレン−ブタジエンゴム(「BHMT−SBR」)ポリマー試料を得た。得られたBHMT−SBRポリマー(ポリマーID「A」)の物理的特性のいくつかを以下の表1にまとめる。
【0094】
試験例5―APPD−SBRポリマーの重合
SBRの試料を、試験例2において調製したシリル化APPD−Li開始剤を用い、シリル化BHMT−Li溶液の代わりに試験例2において調製したスチレン化APPD−Li溶液1.0mLを用いた以外は試験例4と同じ手順を用いて調製した。得られたAPPD−SBRポリマー(ポリマーID「B」)の物理的特性のいくつかを以下の表1にまとめる。
【0095】
試験例6―nPPDA−SBRポリマーの重合
SBRの試料を試験例3において調製したシリル化nPPDA−Li開始剤を用い、シリル化BHMT−Li溶液の代わりに試験例3において調製したスチル化nPPDA−Li溶液1.6mLを用いた以外は試験例4と同じ手順を用いて調製した。得られたnPPDA−SBRポリマー(ポリマーID「C」)の物理的特性のいくつかを以下の表1にまとめる。
【0096】
試験例7―BHMT−SBR−DMIポリマーの重合
窒素でパージした撹拌18.9Lオートクレーブ型反応器に、317gの無水スチレン、1,270gの1,3−ブタジエン、および7,384gの無水ヘキサンを充填した。混合物を加熱し、50℃で保持し、次に試験例1において調製したシリル化BHMT(7.94g、15.9mmol)、2,2−ビス(テトラヒドロフリル)プロパン(3.27mL、1.6Mヘキサン溶液)、およびn−ブチルリチウム(9.92mL、1.6Mヘキサン溶液)を、反応器の注入ポートを通して所定の順で入れた。重合を60分間継続させた。その後、380gのセメント試料を反応器の底において針ポートを通して回収し、クラウンシールを備え、乾燥し、窒素パージした、750mL容量を有するボトルに入れた。
【0097】
次に、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(「DMI」)(0.065mL、0.60mmol)(Sigma−Aldrich、米国ミズーリ州セントルイス;製品No.40727)を、セメント試料を含有するボトルに入れた。ボトルを50℃の回転水槽に入れ、停止反応を30分間進行させた。得られたポリマーセメントを、16.7重量パーセントのジ−tert−ブチル−p−クレゾールを含有する2mLの2−プロパノールでクエンチした。得られたセメントをドラム乾燥機で乾燥させ、乾燥ポリマー試料を得た。得られたポリマー(ポリマーID「D」)の物理的特性のいくつかを以下の表1にまとめる。
【0098】
試験例8―比較SBRポリマーの重合
窒素でパージした撹拌18.9Lオートクレーブ型反応器に、317gの無水スチレン、1,270gの1,3−ブタジエン、および7,384gの無水ヘキサンを充填した。混合物を加熱し、50℃で保持し、次に2,2−ビス(テトラヒドロフリル)プロパン(2.98mL、1.6Mヘキサン溶液)、およびn−ブチルリチウム(9.02mL、1.6Mヘキサン溶液)を、反応器の注入ポートを通して所定の順で入れた。重合を60分間継続させた後、反応器の全内容物を約1重量パーセントのジ−tert−ブチル−p−クレゾールを含有する2−プロパノール中に滴下した。凝固セメントを次にドラム乾燥機で乾燥させ、乾燥ポリマー試料を得た。得られたポリマー(ポリマーID「E」)の物理的特性のいくつかを以下の表1にまとめる。
【表1】

【0099】
試験例9〜12―カーボンブラック充填剤を含むポリマーの配合
試験例4、5、6、および8において調製したポリマー試料A、B、C、およびEの一部を、以下の表2に示すレシピによる製剤を用い、65gスケールのブラベンダーミキサーにおいて配合した。得られたゴム製剤のムーニー粘度測定をASTM D−1646−89に従って行った。ゴム製剤を次に171℃で15分間硬化させた。硬化したゴム製剤の粘弾性を10Hzおよび60℃での0.25〜14.5%の変形について測定した。用いたポリマーのポリマーIDおよび得られた特性を以下の表3にまとめる。
【表2】

Continex N339(米国テキサス州ヒューストンのContinental Carbon Co.から市販)
Hyprene BO300(米国ミシシッピ州ジャクソンのErgon Refining,Inc.から市販)
微結晶ワックス
Stantoflex 13(米国ミズーリ州セントルイスのFlexsysから市販)
Perkacit DPG(米国ミズーリ州セントルイスのFlexsysから市販)
Perkacit MBTS(米国ミズーリ州セントルイスのFlexsysから市販)
Santocure TBBS(米国ミズーリ州セントルイスのFlexsysから市販)
【表3】

【0100】
表3に示した結果からわかるように、ポリマーCおよびEはそれぞれ、高いtanδ値に加えて、望ましくなく低いムーニー粘度を有する。こうした特徴は用いられるそれぞれの重合開始剤から形成される開始末端モノマー残基上にある第1級アミン基が少ないまたは存在しない結果である。
【0101】
試験例13〜17―天然ゴムおよびカーボンブラック充填剤を含むポリマーの配合
試験例4〜8において調製したポリマー試料A〜Eの一部を、表4に示すレシピによる製剤を用い、65gスケールのブラベンダーミキサーにおいて配合した。得られたゴム製剤のムーニー粘度測定をASTM D−1646−89に従って行った。ゴム製剤を次に160℃で15分間硬化させた。硬化したゴム製剤の粘弾性を15Hzおよび50℃での0.25〜25%の変形について測定した。用いたポリマーのポリマーIDおよび得られた特性を表5にまとめる。
【表4】

Continex N339(米国テキサス州ヒューストンのContinental Carbon Co.から市販)
Hyprene BO300(米国ミシシッピ州ジャクソンのErgon Refining,Inc.から市販)
微結晶ワックス
Stantoflex 13(米国ミズーリ州セントルイスのFlexsysから市販)
Perkacit DPG(米国ミズーリ州セントルイスのFlexsysから市販)
Perkacit MBTS(米国ミズーリ州セントルイスのFlexsysから市販)
Santocure TBBS(米国ミズーリ州セントルイスのFlexsysから市販)
【表5】

【0102】
表5に示した結果からわかるように、ポリマーCおよびEは、この場合もそれぞれ、高いtanδ値に加えて、望ましくなく低いムーニー粘度を有する。こうした特徴は用いられるそれぞれの重合開始剤から形成される開始末端モノマー残基上にある第1級アミン基が少ないまたは存在しない結果である。対照的に、ポリマーDはポリマーAおよびBと比べてムーニー粘度およびtanδ値の両方の向上を示す。これはポリマーDを1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンで変性したためであり得る。
【0103】
試験例18および19―天然ゴムおよびシリカ充填剤を含むポリマーの配合
試験例4および8において調製したポリマー試料AおよびEの一部を、表6に示すレシピによる製剤を用い、65gスケールのBrabenderミキサーにおいて配合した。得られたゴム製剤のムーニー粘度測定をASTM D−1646−89に従って行った。ゴム製剤を次に160℃で15分間硬化させた。硬化したゴム製剤の粘弾性を15Hzおよび50℃での0.25〜25%の変形について測定した。用いたポリマーのポリマーIDおよび得られた特性を表7にまとめる。
【表6】

Hi−Sil 190G(米国ペンシルバニア州ピッツバーグのPPG Industries,Inc.から市販)
Hyprene BO300(米国ミシシッピ州ジャクソンのErgon Refining,Inc.から市販)
Silquest A−1589(米国ニューヨーク州アルバニーのMomentive Performance Materials,Inc.から市販)
微結晶ワックス
Stantoflex 13(米国ミズーリ州セントルイスのFlexsysから市販)
Perkacit DPG(米国ミズーリ州セントルイスのFlexsysから市販)
Perkacit MBTS(米国ミズーリ州セントルイスのFlexsysから市販)
Santocure TBBS(米国ミズーリ州セントルイスのFlexsysから市販)
【表7】

【0104】
表7に示した結果からわかるように、ポリマーEはこの場合も、高いtanδ値に加えて、望ましくなく低いムーニー粘度を有する。こうした特徴は用いられる重合開始剤から形成される開始末端モノマー残基上に第1級アミン基が存在しない結果である。
【0105】
選択された定義
以下は定義された用語の排他的なリストであることを意図しないことが理解されるべきである。文脈における定義した用語の使用とともに、前述の記載では他の定義が提供されている場合もある。
【0106】
本明細書において用いる「a」、「an」、および「the」の語は1つ以上を意味する。
【0107】
本明細書において用いる「and/or」の語は、2つ以上の要素のリストに用いる場合、挙げられた要素のいずれか1つを単独で用いることができ、または挙げられた要素の2つ以上のいずれかの組み合わせを用いることができることを意味する。例えば、組成物が成分A、B、および/またはCを含有すると表される場合、組成物はAのみ;Bのみ;Cのみ;AおよびBを組み合わせて;AおよびCを組み合わせて;BおよびCを組み合わせて;またはA、B、およびCを組み合わせて含有することができる。
【0108】
本明細書において用いる「comprising」、「comprises」、および「comprise」の語は、その語の前に挙げられた主語からその語の後に挙げられた1つ以上の要素への転換に用いられる限定しない転換語であり、転換語の後に挙げられた1つのまたは複数の要素は必ずしも主語を構成する唯一の要素ではない。
【0109】
本明細書において用いる「containing」、「contains」、および「contain」は上で提供した「comprising」、「comprises」、および「comprise」と同じ限定しない意味を有する。
【0110】
本明細書において用いる「having」、「has」、および「have」は上で提供した「comprising」、「comprises」、および「comprise」と同じ限定しない意味を有する。
【0111】
本明細書において用いる「including」、「includes」、および「include」は上で提供した「comprising」、「comprises」、および「comprise」と同じ限定しない意味を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの保護された第1級アミン基と、アルカリまたはアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1つの金属とを含む重合開始剤であって、該少なくとも1つの金属が該保護された第1級アミン基のいずれにも存在しない、重合開始剤。
【請求項2】
前記保護された第1級アミン基が、それぞれ2つの保護基を含み、該保護基の1つ以上が置換シリルまたはシリレン基を含む、請求項1に記載の重合開始剤。
【請求項3】
前記保護基が、前記重合開始剤を用いて調製されたポリマーの水蒸気脱溶媒および/または酸性媒体での処理によって除去可能である、請求項2に記載の重合開始剤。
【請求項4】
前記少なくとも1つの金属がリチウムを含み、前記少なくとも1つの金属が前記重合開始剤中の第2級アミン基上に存在する、請求項1に記載の重合開始剤。
【請求項5】
前記重合開始剤が
式(I)
【化1】


または
式(II)
【化2】


のいずれかの構造を有し、式中、Y、Y、Y、およびYは独立して置換シリルまたはシリレン基であり;RおよびRは独立して0〜20の炭素数を有するいずれかのアルキレンまたはアリーレン基であり、ヘテロ原子を含むことができ;Rは水素原子または1〜20の炭素数を有するアルキルもしくはアリール基であり、ヘテロ原子を含むことができ;Y、Y、Y、Y、R、R、および/またはRは相互に直接的にまたは間接的に結合し、1つ以上の環状構造を形成することができ;Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり;Xは炭素原子、ケイ素原子、またはスズ原子である、請求項1に記載の重合開始剤。
【請求項6】
前記重合開始剤が式(I)の構造を有し、式中、Mはリチウムである、請求項5に記載の重合開始剤。
【請求項7】
前記重合開始剤が
式(III)
【化3】


または
式(IV)
【化4】


のいずれかの構造を有し、式中、Y、Y、Y、およびYはそれぞれジアルキル置換シリレン基であり、RおよびRはそれぞれ1〜20の炭素数を有するアルキレンまたはアリーレン基であり、ヘテロ原子を含むことができる、請求項5に記載の重合開始剤。
【請求項8】
、Y、Y、およびYがそれぞれジメチルシリレンである、請求項7に記載の重合開始剤。
【請求項9】
およびRが、それぞれ独立して1,2−エチレン、1,3−n−プロピレン、および1,4−n−ブチレンからなる群から選択される、請求項7に記載の重合開始剤。
【請求項10】
およびRがそれぞれ直鎖C〜Cアルキレン基であり、RおよびRが同一構造を有する、請求項5に記載の重合開始剤。
【請求項11】
前記重合開始剤がシリル化ビス(ヘキサメチレン)トリアミン−リチウムを含む、請求項1に記載の重合開始剤。
【請求項12】
少なくとも1つの重合開始剤の残基を含むポリマーを含む組成物であって、該重合開始剤が少なくとも2つの保護された第1級アミン基を含む、組成物。
【請求項13】
前記重合開始剤がアルカリ金属またはアルカリ土類金属から選択される少なくとも1つの金属を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1つの金属がリチウムを含み、前記少なくとも1つの金属が前記重合開始剤中の第2級アミン基上に存在する、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記保護された第1級アミン基がそれぞれ2つの保護基を含み、該保護基の1つ以上が置換シリル基を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
前記保護基が前記重合開始剤の前記残基にペンダントし、前記保護基が前記ポリマーの水蒸気脱溶媒および/または酸性媒体での処理によって除去可能である、請求項12に記載の組成物。
【請求項17】
前記重合開始剤の前記残基が前記ポリマーの開始末端位置に存在する、請求項12に記載の組成物。
【請求項18】
前記ポリマーが、開始末端モノマー残基上に存在する少なくとも2つの保護されていない第1級アミン基を含み、前記ポリマーが複数の保護されていないC−C結合を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項19】
前記ポリマーが、共役ジエン化合物のホモポリマー、または共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物のコポリマーを含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項20】
前記共役ジエン化合物が1,3−ブタジエンおよび/またはイソプレンを含み、前記芳香族ビニル化合物がスチレンを含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記ポリマーが
式(IX)
【化5】


または
式(X)
【化6】


のいずれかの構造を有し、式中、Y、Y、Y、およびYは独立して置換シリル基または水素原子であり;RおよびRは独立して0〜20の炭素数を有するいずれかのアルキレンまたはアリーレン基であり、ヘテロ原子を含むことができ;Rは水素原子または1〜20の炭素数を有するアルキルもしくはアリール基であり、ヘテロ原子を含むことができ;Y、Y、Y、Y、R、R、および/またはRは相互に直接的にまたは間接的に結合し、1つ以上の環状構造を形成することができ;Zはアルカリ金属、アルカリ土類金属、または重合停止剤の残基であり;Xは炭素原子またはスズ原子であり;Polyは共役ジエン化合物のホモポリマーまたは共役ジエン化合物および芳香族ビニル化合物のコポリマーである、請求項12に記載の組成物。
【請求項22】
前記ポリマーが式(IX)の構造を有し、式中、Y、Y、Y、およびYはそれぞれ水素原子であり、RおよびRはそれぞれ直鎖C〜Cアルキレン基であり、RおよびRは同一構造を含み、Zは重合停止剤の残基であり、該重合停止剤はカルボアニオン反応性化合物を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記ポリマーが約5〜約100MUの範囲内のムーニー粘度(ML1+4、100℃)を有し、前記ポリマーが約5,000〜約500,000g/molの範囲内の数平均分子量(「Mn」)を有する、請求項12に記載の組成物。
【請求項24】
前記重合開始剤が
式(I)
【化7】


または
式(II)
【化8】


のいずれかの構造を有し、式中、Y、Y、Y、およびYは独立して置換シリルまたはシリレン基であり;RおよびRは独立して0〜20の炭素数を有するいずれかのアルキレンまたはアリーレン基であり、ヘテロ原子を含むことができ;Rは水素原子または1〜20の炭素数を有するアルキルもしくはアリール基であり、ヘテロ原子を含むことができ;Y、Y、Y、Y、R、R、および/またはRは相互に直接的にまたは間接的に結合し、1つ以上の環状構造を形成することができ;Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり;Xは炭素原子、ケイ素原子、またはスズ原子である、請求項12に記載の組成物。
【請求項25】
前記重合開始剤が式(I)の構造を有し、式中、Mはリチウムであり、RおよびRはそれぞれ直鎖C〜Cアルキレン基であり、RおよびRは同一構造を含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記重合開始剤が
式(III)
【化9】


または
式(IV)
【化10】


のいずれかの構造を有し、式中、Y、Y、Y、およびYはそれぞれジメチルシリレンであり、RおよびRはそれぞれ1〜20の炭素数を有するアルキレンまたはアリーレン基であり、ヘテロ原子を含むことができ、RおよびRはそれぞれ直鎖C〜Cアルキレン基であり、RおよびRは同一構造を含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物が少なくとも1つの追加のゴム成分をさらに含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物がゴム100重量部当たり少なくとも20重量部(phr)の前記ポリマーを含み、前記ゴム成分が天然ゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、およびスチレン−ブタジエンコポリマーゴムからなる群から選択される、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記組成物がカーボンブラックおよび/または無機充填剤を約10〜約100phrの範囲内の量でさらに含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項30】
前記組成物が少なくとも1つの脂肪酸をさらに含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項31】
前記組成物が硫黄架橋性である、請求項27に記載の組成物。
【請求項32】
前記組成物が約20〜約150MUの範囲内のムーニー粘度(ML1+4、100℃)を有する、請求項27に記載の組成物。
【請求項33】
少なくとも1つのタイプのモノマーを少なくとも1つの重合開始剤と組み合わせ、これによりポリマーを形成するステップを含み、該重合開始剤は少なくとも2つの保護された第1級アミン基を含み、該ポリマーは少なくとも1つの該重合開始剤の残基を含む、ポリマーの製造方法。
【請求項34】
前記モノマーが共役ジエン化合物または共役ジエン化合物および芳香族ビニル化合物の混合物を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記共役ジエン化合物が1,3−ブタジエンおよび/またはイソプレンを含み、前記芳香族ビニル化合物がスチレンを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記重合開始剤がはじめに前記モノマーの第1部と組み合わされ、これによりオリゴマーを形成し、該オリゴマーがその後前記モノマーの第2部と組み合わされ、これにより前記ポリマーを形成する、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも1つのアルカリ金属またはアルカリ土類金属を重合開始剤前駆体と組み合わせることで、前記重合開始剤が前記モノマーとともにその場で(in situ)形成される、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記重合開始剤が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属から選択される少なくとも1つの金属を含み、該少なくとも1つの金属が前記重合開始剤中の第2級アミン基上に存在する、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記重合開始剤が前記モノマー100g当たり約0.2〜約20mmolの量で存在する、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記保護された第1級アミン基がそれぞれ2つの保護基を含み、該保護基ははじめ前記重合開始剤の前記残基にペンダントしたままであり、前記ポリマーの少なくとも一部に少なくとも1つの脱保護プロセスを行うステップをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
前記脱保護プロセスが、水蒸気脱溶媒および/または酸性媒体での処理を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記重合開始剤が
式(I)
【化11】


または
式(II)
【化12】


のいずれかの構造を有し、式中、Y、Y、Y、およびYは独立して置換シリル基であり;RおよびRは独立して0〜20の炭素数を有するいずれかのアルキレンまたはアリーレン基であり、ヘテロ原子を含むことができ;Rは水素原子または1〜20の炭素数を有するアルキルもしくはアリール基であり、ヘテロ原子を含むことができ;Y、Y、Y、Y、R、R、および/またはRは相互に直接的にまたは間接的に結合し、1つ以上の環状構造を形成することができ;Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり;Xは炭素原子、ケイ素原子、またはスズ原子である、請求項33に記載の方法。
【請求項43】
前記重合開始剤が
式(III)
【化13】


または
式(IV)
【化14】


のいずれかの構造を有し、式中、Y、Y、Y、およびYはそれぞれジメチルシリレンであり、RおよびRはそれぞれ1〜4の炭素数を有する直鎖アルキレン基であり、RおよびRはそれぞれ直鎖C〜Cアルキレン基であり、RおよびRは同一構造を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記ポリマーおよび/または前記開始剤が、少なくとも1つのルイス塩基の存在下で調製される、請求項33に記載の方法。
【請求項45】
以下の式:
式(IX)
【化15】


または
式(X)
【化16】


の少なくとも1つにより定義され、式中、Y、Y、Y、およびYは独立して置換シリル基または水素原子であり;RおよびRは独立して0〜20の炭素数を有するいずれかのアルキレンまたはアリーレン基であり、ヘテロ原子を含むことができ;Rは水素原子または1〜20の炭素数を有するアルキルもしくはアリール基であり、ヘテロ原子を含むことができ;Y、Y、Y、Y、R、R、および/またはRは相互に直接的にまたは間接的に結合し、1つ以上の環状構造を形成することができ;Zはアルカリ金属、アルカリ土類金属、または重合停止剤の残基であり;Xは炭素原子またはスズ原子であり;Polyは共役ジエン化合物のホモポリマーまたは共役ジエン化合物および芳香族ビニル化合物のコポリマーである、官能性ポリマー。

【公表番号】特表2013−504662(P2013−504662A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528921(P2012−528921)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/048390
【国際公開番号】WO2011/031943
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】