説明

ポリイミドおよびポリイミドフィルム

【課題】銅と近似した線熱膨張係数を持ち、耐熱性、高弾性率の水蒸気透過性の良いポリイミドフィルムを提供する。
【解決手段】成分(I):環上に夫々独立に、ハロゲン原子、含窒素原子基、炭素原子数1〜12の直鎖状または分岐状アルキル基又はアルコキシ基、炭素原子数2〜12の直鎖状または分岐状アルケニル基、ヒドロキシ基、ニトリル基、ニトロ基、カルボキシ基、アミド基および炭素原子数6〜12の芳香族基からなる群から選ばれる置換基有しても良い9,9−ビス(4−アミノフェニレン)で表される芳香族ジアミンと、成分(II):3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、p−フェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとを反応させて得られ、成分(I):成分(II)=0.1〜10.0モル%:99.9〜90.0モル%であるポリイミドからなるポリイミドフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリイミドおよびポリイミドフィルムに関する。より詳細には、本発明は、フルオレンまたはフルオレン誘導体から誘導される基を持つ芳香族ジアミンまたは芳香族テトラカルボン酸二無水物を原料とするポリイミドおよびポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは優れた耐熱性のみならず、耐薬品性、耐放射線性、電気絶縁性、優れた機械的性質などの特性を併せ持つ。そのため、フレキシブルプリント配線回路用基板、テープオートメーションボンディング用基材、半導体素子の保護膜、集積回路の層間絶縁膜等、様々な電子デバイスに現在広く利用されている。
【0003】
また、ポリイミドは、製造方法の簡便さ、高い膜純度、物性改良のしやすさの点で、非常に有用な材料であり、近年様々な用途毎に適した機能性ポリイミドの材料設計がなされている。
【0004】
ところで、工業的に用いられている構造のポリイミドの多くは有機溶媒に不溶であり、しかも、ガラス転移温度以上でも溶融しないので、通常、ポリイミドそのものを成型加工することは容易ではない。一般に、ポリイミドの合成は、ジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性有機溶媒中で、無水ピロメリット酸等の芳香族テトラカルボン酸二無水物とジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミンを原料に等モルで重合させ、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸(ポリアミック酸)を合成し、その後、このポリアミド酸を250〜350℃で加熱し、脱水・環化(イミド化)反応を進めることによって行われる。
【0005】
しかし、工業的に用いられている構造のポリイミドの多くでは、ポリアミド酸構造の時には有機溶媒に溶解し、ポリイミドになると溶解しなくなるため、ポリイミドの成形加工は、ポリアミド酸の溶液で利用し、その溶液を乾燥させることで所望のフィルムや成型物、コーティング膜が得られた後に加熱し、イミド化させることにより行われるのが一般的である。
【0006】
一方、ポリイミド/銅基板積層体をイミド化温度から室温へ冷却する過程で発生する熱応力は、しばしばカーリング、膜の剥離、割れ等の深刻な問題を引き起こす。最近では電子回路の高密度化に伴い、多層配線基板が採用されるようになってきたが、たとえ膜の剥離や割れに至らなくても、多層基板における応力の残留はデバイスの信頼性を著しく低下させる。
【0007】
熱応力低減の方策としては、ポリイミドの低膨張化が有効である。ほとんどのポリイミドは、線熱膨張係数が30〜100ppm/℃の範囲内にあるから、金属基板、例えば、銅の線熱膨張係数17ppm/℃よりもはるかに大きい。
【0008】
そのため、銅の値に近い、およそ25ppm/℃以下を示す低熱膨張性のポリイミドの研究開発がなされている。これまでに、ポリイミドの低熱膨張化には、一般に、その主鎖構造が直線的でしかも内部回転が束縛され、剛直であることが必要条件であると報告されている。
【0009】
現在のところ、実用的な低熱膨張性ポリイミドとしては3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンから製造されるポリイミドが最もよく知られている。このポリイミドからなるポリイミドフィルムは、膜厚や製造条件にもよるが、5〜10ppm/℃と非常に低い線熱膨張係数を示すことが知られている。
【0010】
しかしながら、低熱膨張係数を示すポリイミドは、上記したとおり、例外なく剛直で直線的な主鎖構造を有しているため、そのほとんどが、水蒸気透過性が悪く、製膜条件によっては発泡を起こし易い。
【0011】
また、接着剤と張り合わせる場合、線熱膨張係数が低すぎるとカールが発生する。特に化学閉環によるイミド化は面内配向が起こり易く剛直な主鎖構造の場合は、線熱膨張係数が低くなりすぎる。
【0012】
また、分子パッキングが過密な為、フィルムの水蒸気透過性が悪く、フィルム製造工程においてしばしば内部に気泡が発生する。この水蒸気透過性は、フレキシブル銅張積層(Flexible Copper Clad Laminates)工程(FCCL工程)においてもリードボンディングなどの工程において膨れなどを生じ易い。
【0013】
さらに、FCCL化後の銅との接着強度において、ガス発生の多いフィルムは接着面に微量のガスが溜まるため、接着性が劣る傾向にある。この水蒸気透過性を改善するため、一般的には、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどの屈曲構造分子を変性し、分子パッキングを抑制することによる対応をはかっている。しかし、その一方で、エーテル構造の導入を多くすると、耐熱性や引張弾性率が低下するという問題がある。
【0014】
また、特許文献1では、他のポリイミド鎖を混合して水蒸気透過性の向上を行った例があるが、混合による改善はポリイミドフィルムの安定製造の面に問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2006−183040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
そこで、本発明は、銅と近似した線熱膨張係数を持ち、かつ、耐熱性を損なうことなく高弾性率で水蒸気透過性の良いポリイミドおよびポリイミドフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を積み重ねた結果、フルオレンまたはフルオレン誘導体から誘導される基を持つ、特定の芳香族ジアミンまたは特定の芳香族テトラカルボン酸二無水物と、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、p−フェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとを、特定のモル比で反応させて得られるポリイミド前駆体をイミド化して製造されるポリイミドフィルムは、銅と近似した線熱膨張係数を持ち、かつ、耐熱性を損なうことなく高弾性率で水蒸気透過性の良いポリイミドフィルムであることを知得し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(5)である。
【0018】
(1)成分(I):下記式(1)で表される芳香族ジアミンと、
成分(II):3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、p−フェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとを反応させて得られ、
当該成分(I)と当該成分(II)との合計量に対して、当該成分(I)が0.1〜10.0モル%であり、かつ、当該成分(II)が99.9〜90.0モル%であるポリイミド:
【化1】


ただし、式(1)中、R,R,RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、含窒素原子基、炭素原子数1〜12の直鎖状または分岐状アルキル基、炭素原子数2〜12の直鎖状または分岐状アルケニル基、炭素原子数1〜12の直鎖状または分岐状アルコキシ基、ヒドロキシ基、ニトリル基、ニトロ基、カルボキシ基、アミド基および炭素原子数6〜12の芳香族基からなる群から選ばれる。
【0019】
(2)成分(III):下記式(2)で表される芳香族テトラカルボン酸二無水物と、
成分(II):3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、p−フェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとを反応させて得られ、
当該成分(III)と当該成分(II)との合計量に対して、当該成分(III)が0.1〜2.5モル%であり、かつ、当該成分(II)が99.9〜97.5モル%であるポリイミド:
【化2】


ただし、式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、含窒素原子基、炭素原子数1〜12の直鎖状または分岐状アルキル基、炭素原子数2〜12の直鎖状または分岐状アルケニル基、炭素原子数1〜12の直鎖状または分岐状アルコキシ基、ヒドロキシ基、ニトリル基、ニトロ基、カルボキシ基、アミド基および炭素原子数6〜12の芳香族基からなる群から選ばれる。
【0020】
(3)上記(1)に記載のポリイミドからなるポリイミドフィルム。
【0021】
(4)上記(2)に記載のポリイミドからなるポリイミドフィルム。
【0022】
(5)水蒸気透過度が10〜100g/m/dayであり、50〜200℃の平均線熱膨張係数が10〜25ppm/℃であり、明確なガラス転移温度がなく、かつ、引張弾性率が5.0GPa以上である、上記(3)または(4)に記載のポリイミドフィルム。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、銅と近似した線熱膨張係数を持ち、かつ、耐熱性を損なうことなく高弾性率で水蒸気透過性の良いポリイミドフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、これらは本発明の実施形態の一例であり、これらの内容に限定されるものでない。
【0025】
[ポリイミドおよびポリイミドフィルム]
本発明は、「成分(I):下記式(1)で表される芳香族ジアミンと、成分(II):3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、p−フェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとを反応させて得られ、当該成分(I)と当該成分(II)との合計量に対して、当該成分(I)が0.1〜10.0モル%であり、かつ、当該成分(II)が99.9〜90.0モル%であるポリイミド」(以下、「ポリイミド(1)」という場合がある。)または「成分(III):下記式(2)で表される芳香族テトラカルボン酸二無水物と、成分(II):3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、p−フェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとを反応させて得られ、当該成分(III)と当該成分(II)との合計量に対して、当該成分(III)が0.1〜2.5モル%であり、かつ、当該成分(II)が99.9〜97.5モル%であるポリイミド」(以下、「ポリイミド(2)」という場合がある。)、およびポリイミド(1)またはポリイミド(2)からなるポリイミドフィルムである。
【0026】
【化3】

【0027】
ただし、式(1)、(2)中、R,R,R,R,RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、含窒素原子基、炭素原子数1〜12の直鎖状または分岐状アルキル基、炭素原子数2〜12の直鎖状または分岐状アルケニル基、炭素原子数1〜12の直鎖状または分岐状アルコキシ基、ヒドロキシ基、ニトリル基、ニトロ基、カルボキシ基、アミド基および炭素原子数6〜12の芳香族基からなる群から選ばれる。
【0028】
上記含窒素原子基は、窒素原子を含む1価の基であれば特に限定されないが、遊離原子価が窒素原子上にあるものが好ましく、具体的には、例えば、アミノ基(−NH)、モノメチルアミノ基(−NHCH)、ジメチルアミノ基(−N(CH)等が挙げられる(以下同じ)。
【0029】
上記炭素数1〜12の直鎖状または分岐状アルキル基は、一般式がC2n+1−(n:1〜12の自然数)で表される基であれば特に限定されず、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、1−プロピル基(n−プロピル基)、2−プロピル基(イソプロピル基)等が挙げられる(以下同じ)。
【0030】
上記炭素数2〜12の直鎖状または分岐状アルケニル基は、一般式がC2n−1−(n:2〜12の自然数)で表される基であれば特に限定されず、遊離原子価は不飽和炭素原子上にあっても飽和炭素原子上にあってもよく、具体的には、例えば、ビニル基、アリル基等が挙げられる(以下同じ)。
【0031】
上記炭素数1〜12の直鎖状または分岐状アルコキシ基は、一般式がC2n+1O−(n:1〜12の自然数)で表されるものであれば特に限定されず、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる(以下同じ)。
【0032】
〈成分(I)〉
上記成分(I)は、上記式(1)で表される芳香族ジアミンからなる。R,R,RおよびRは上記のとおり、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、含窒素原子基、炭素原子数1〜12の直鎖状または分岐状アルキル基、炭素原子数2〜12の直鎖状または分岐状アルケニル基、炭素原子数1〜12の直鎖状または分岐状アルコキシ基、ヒドロキシ基、ニトリル基、ニトロ基、カルボキシ基、アミド基および炭素原子数6〜12の芳香族基からなる群から選ばれるが、R,R,RおよびRが同時に、水素原子、炭素原子数1〜12の直鎖状または分岐状アルキル基、炭素原子数2〜12の直鎖状または分岐状アルケニル基または炭素原子数1〜12の直鎖状または分岐状アルコキシ基であるのが好ましく、R,R,RおよびRが同時に、水素原子またはメチル基であるのがより好ましく、R,R,RおよびRが同時に、水素原子であるのがさらに好ましい。
【0033】
〈成分(II)〉
上記成分(II)は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、p−フェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルからなるものである。
【0034】
上記成分(II)中、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物のモル数(MBPTC)とピロメリット酸二無水物のモル数(MPMDA)との量比は、特に限定されないが、MBPTC:MPMDAが、1:1.1〜1:0.5であるのが好ましく、1:0.9〜1:0.7であるのがより好ましく、1:0.8であるのがさらに好ましい。
【0035】
上記成分(II)中、p−フェニレンジアミンのモル数(MPPDA)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルのモル数(MDAPE)との量比は、特に限定されないが、MPPDA:MDAPEが1:0.5〜1:2であるのが好ましく、1:0.7〜1:1.4であるのがより好ましく、1:0.9〜1:1.1であるのがさらに好ましく、1:1であるのがいっそう好ましい。
【0036】
しかしながら、上記成分(II)に含まれるテトラカルボン酸二無水物として、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物またはピロメリット酸二無水物の一部に代えて、以下に掲げるテトラカルボン酸二無水物を、1種類単独で、または2種類以上を混合して、使用してもよい:
【0037】
エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物;および、
【0038】
1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2,6,6−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物および/または1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物;等。
【0039】
また、上記成分(II)に含まれるジアミンとして、p−フェニレンジアミンまたは4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの一部に代えて、以下に掲げるジアミンを、1種類単独で、または2種類以上を混合して、使用してもよい:
【0040】
脂肪族ジアミン;ベンゼン系芳香族ジアミノ化合物、複素芳香族ジアミノ化合物、非ベンゼン系芳香族ジアミノ化合物などの芳香族ジアミン;等。
【0041】
上記脂肪族ジアミンとしては、炭素数2〜15の鎖式炭化水素化合物の2個の水素基をそれぞれアミノ基で置換した化合物が好ましく、具体的には、例えば、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミンなどが挙げられる。
【0042】
上記ベンゼン系芳香族ジアミノ化合物としては、ベンゼン核を1個または縮合もしくは非縮合のベンゼン核を2〜10個有する化合物が好ましく、例えば、以下に掲げるものが挙げられる:
【0043】
m−フェニレンジアミンなどのフェニレンジアミン;2−メチル1,4−ジアミノベンゼンなどのフェニレンジアミンにメチル基、エチル基等のアルキル基が結合したフェニレンジアミン誘導体;
【0044】
3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジエニルスルホン、3,4’−ジアミノジエニルスルホン、4,4’−ジアミノジエニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジエニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(p−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(p−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4−メチル−2,4−ビス(p−アミノフェニル)−1−ペンテン、4−メチル−2,4−ビス(p−アミノフェニル)−2−ペンテン、イミノジアニリン、4−メチル−2,4−ビス(p−アミノフェニル)ペンタン、ビス(p−アミノフェニル)ホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノアゾベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニル尿素、4,4’−ジアミノジフェニルアミドなどの、2つのアミノフェニル基が、エーテル結合、スルホニル結合、チオエーテル結合、炭素数1〜6個のアルキレンもしくはその誘導体基(例えば、アルキレン基の水素原子の1以上がハロゲン原子等で置換されたもの)による結合、イミノ結合、アゾ結合、ホスフィンオキシド結合、アミド結合、ウレイレン結合またはその他結合基を介してフェニル基同士が結合したジアミノジフェニル化合物;
【0045】
1,3−ビス(m−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(p−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(p−アミノフェノキシ)ベンゼンなどの、2つのアミノフェニル基と1つのフェニレン基が何れも他の結合基(ジアミノジフェニル化合物の項で挙げた結合基)を介して結合したジアミノトリフェニル化合物;
【0046】
1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレンなどのジアミノナフタレン;5または6−アミノ−1−(p−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダンなどのアミノフェニルアミノインダン;
【0047】
4,4’−ビス(p−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2’−ビス[p−(p’−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンおよび2,2’−ビス[p−(p’−アミノフェノキシ)ビフェニル]プロパン、2,2’−ビス[p−(m−アミノフェノキシ)フェニル]ベンゾフェノンなどのジアミノテトラフェニル化合物;および、
【0048】
これらの芳香族ジアミンの水素原子がハロゲン原子、メチル基、メトキシ基、シアノ基およびフェニル基からなる群から選択される少なくとも1種の置換基により置換された化合物;等。
【0049】
〈成分(III)〉
上記成分(III)は、上記式(2)で表される芳香族テトラカルボン酸二無水物からなる。RおよびRは、上記のとおり、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、含窒素原子基、炭素原子数1〜12の直鎖状または分岐状アルキル基、炭素原子数2〜12の直鎖状または分岐状アルケニル基、炭素原子数1〜12の直鎖状または分岐状アルコキシ基、ヒドロキシ基、ニトリル基、ニトロ基、カルボキシ基、アミド基および炭素原子数6〜12の芳香族基からなる群から選ばれるが、RおよびRが同時に、水素原子、炭素原子数1〜12の直鎖状または分岐状アルキル基、炭素原子数2〜12の直鎖状または分岐状アルケニル基または炭素原子数1〜12の直鎖状または分岐状アルコキシ基であるのが好ましく、RおよびRが同時に、水素原子またはメチル基であるのがより好ましく、RおよびRが同時に、水素原子であるのがさらに好ましい。
【0050】
〈ポリイミド(1)〉
成分(I)と成分(II)との合計量に対して、成分(I)が0.1〜10.0モル%であり、かつ、成分(II)が99.9〜90.0モル%である。この範囲内であると、水蒸気透過度が必要十分な範囲となり、製膜性も確保される。成分(I)と成分(II)との合計量に対する成分(I)の割合は、2.0〜8.0モル%がより好ましく、4.5〜6.5モル%がさらに好ましい(ここで、モル%の計算上、小数点第2位を四捨五入して小数点第1位までを求める)。
成分(I)に含まれる芳香族ジアミンのモル数(MFL)および成分(II)に含まれるジアミンの合計モル数(MDA)の合計(MFL+MDA)と、成分(II)に含まれるテトラカルボン酸無水物の合計モル数(MTC)との比は、(MFL+MDA):MTCが、1:0.90〜1:1.10であるのが好ましく、1:0.95〜1:1.05であるのがより好ましく、1:0.99であるのがさらに好ましい。
【0051】
〈ポリイミド(2)〉
成分(III)と成分(II)との合計量に対して、成分(III)が0.1〜2.5モル%であり、かつ、成分(II)が99.9〜97.5モル%である。この範囲内であると、水蒸気透過度が必要十分な範囲となり、製膜性も確保される。成分(III)と成分(II)との合計量に対する成分(III)の量は、1.0〜2.5モル%がより好ましい(ここで、モル%の計算上、小数点第2位を四捨五入して小数点第1位までを求める)。
成分(II)に含まれるジアミンの合計モル数(MDA´)と、成分(I)に含まれる芳香族テトラカルボン酸無水物のモル数(MFL´)および成分(II)に含まれるテトラカルボン酸無水物の合計モル数(MTC´)の合計(MFL´+MTC´)との比は、MDA´:(MFL´+MTC´)が、1:0.90〜1:1.10であるのが好ましく、1:0.95〜1:1.05であるのがより好ましく、1:0.99であるのがさらに好ましい。
【0052】
〈引張弾性率〉
本発明のポリイミドフィルムの引張弾性率は、ASTM D882に準ずる測定方法によって測定した値で、5.0GPa以上であることが好ましい。この範囲であると、引張り強さが十分なものとなる。引張弾性率は大きいほどよく、5.8GPa以上がより好ましく、6.0GPa以上がさらに好ましく、6.3GPa以上がいっそう好ましく、6.5GPa以上がよりいっそう好ましい。
【0053】
〈線熱膨張係数〉
本発明のポリイミドフィルムの線熱膨張係数は、TMA法により、荷重0.5g、昇温速度5.0℃/分における試験片の伸びより50℃〜200℃の範囲での平均値として求めた値で、10〜25ppm/℃の範囲内であることが好ましい。この範囲内であると、銅の線熱膨張係数である17ppm/℃に近いため、ポリイミド/銅基板積層体として用いたときにの熱応力の低減を図ることができる。
【0054】
〈ガラス転移温度〉
本発明のポリイミドフィルムのガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気中、昇温速度20℃/分の条件で加熱し、比熱の変化点より測定したものである。本発明のポリイミドフィルムには、明確なガラス転移温度がないことが好ましい。
【0055】
〈水蒸気透過度〉
本発明のポリイミドフィルムの水蒸気透過度は、JIS K 7129:2008(A法)に準拠した測定方法により、測定温度40℃、測定面積50cm、相対湿度90%、高湿側100%、低湿側10%、測定下限値0.2g/m/dayとして測定した値で、10〜100g/m/dayであることが好ましい。この範囲内であると、水蒸気透過度が必要十分であり、発泡を起こしにくくなるため、安定製造のために有利である。
水蒸気透過度は25〜100g/m/day以上がより好ましく、40〜100g/m/day以上がさらに好ましく、50〜100g/m/day以上がいっそう好ましい。
【0056】
[ポリイミドおよびポリイミドフィルムの製造方法]
本発明のポリイミドを製造する手段としては、低い線熱膨張係数並びに高弾性率を確保する為に、面内配向性を高める手段として、触媒を用いて脱水・環化(イミド化)をする化学イミド化法を用いるのが好ましい。例えば、有機溶媒中で酸、ジアミン成分を5〜40℃で3〜10時間で重合し、その後、0℃以下の温度で脱水剤と脱水触媒を混合して、ガラス板上に製膜し、不活性ガス雰囲気または減圧下に通常200℃〜400℃、好ましくは250℃〜350℃の温度で0.5〜15時間、好ましくは1〜5時間熱処理をする方法を用いる。
【0057】
この際に用いられる溶媒としてはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の非プロトン系極性溶媒、クレゾール類等のフェノール系溶媒、ジグライム等のグリコール系溶媒が挙げられる。これらの溶媒は単独あるいは2種以上混合して用いる事ができる。溶媒使用量に特に制限はないが、生成するポリイミドの含有量が5〜40質量%とするのが望ましい。
【0058】
化学的に脱水閉環させる為の脱水剤、脱水触媒としては、無水酢酸とピコリンとの組合せ、トリフルオロ無水酢酸とピコリンとの組合せ等が例示できる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0060】
〈測定方法〉
実施例および比較例のポリイミドフィルムの線熱膨張係数、機械的靱性、ガラス転移温度および水蒸気透過度は、下記の方法により測定した。
(1)引張弾性率
引張弾性率は、島津製オートグラフAGS−J500Nを用い縦90mm×横10mmの短冊状試験片を使用して、ASTM D882に準じ、チャック間距離50mm、引張り速度50.8mm/min、23℃で測定した。
(2)線熱膨張係数
TMA法により、荷重0.5g、昇温速度5.0℃/分における試験片の伸びより50℃〜200℃の範囲での平均値として線熱膨張係数を求めた。
(3)ガラス転移温度
ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気中、昇温速度20℃/分の条件で加熱し、比熱の変化点より測定した。明確なガラス転移温度がなかったものを「検出なし」とした。
(4)水蒸気透過度
Lyssy製L80シリーズ水蒸気透過度計を用いJIS K 7129:2008(A法)に準ずる手法により測定した。測定条件は、測定温度40℃、測定面積50cm、相対湿度90%、高湿側100%、低湿側10%、測定下限値0.2g/m/dayとした。
【0061】
[実施例1]
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管を備えた反応容器に、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(BAFL)17.4g(0.05モル)、p−フェニレンジアミン48.6g(0.45モル)および4,4’−ジアミノジフェニルエーテル100g(0.50モル)を仕込み、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)1932gを投入して完全に溶解した。
その後、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物161.7g(0.55モル)を投入し、室温下で重合させ、さらに、ピロメリット酸二無水物(PMDA)96.36g(0.442モル)を加えて、粘度約1500ポイズのポリイミド前駆体を調整した。
この前駆体に無水酢酸およびβ−ピコリンを加え、平滑なガラス板にキャストし、キュアすることで、膜厚30μmのポリイミドフィルムを得た。
得られたポリイミドフィルムについて、引張弾性率、線熱膨張係数、ガラス転移温度および水蒸気透過度を、上記した測定方法によって、測定した。測定結果は表1の実施例1の欄に示す。
【0062】
[実施例2]
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管を備えた反応容器に、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(BAFL)34.8g(0.10モル)、p−フェニレンジアミン43.2g(0.40モル)および4,4’−ジアミノジフェニルエーテル100g(0.50モル)を仕込み、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)1986gを投入して完全に溶解した。
その後、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物161.7g(0.55モル)を投入し、室温下で重合させ、さらに、ピロメリット酸二無水物(PMDA)96.36g(0.442モル)を加えて、粘度約1500ポイズのポリイミド前駆体を調整した。
この前駆体に無水酢酸およびβ−ピコリンを加え、平滑なガラス板にキャストし、キュアすることで、膜厚30μmのポリイミドフィルムを得た。
得られたポリイミドフィルムについて、引張弾性率、線熱膨張係数、ガラス転移温度および水蒸気透過度を、上記した測定方法によって、測定した。測定結果は表1の実施例2の欄に示す。
【0063】
[実施例3]
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管を備えた反応容器に、9,9−ビストルイジンフルオレン(BTFL)37.6g(0.10モル)、p−フェニレンジアミン43.2g(0.40モル)および4,4’−ジアミノジフェニルエーテル100g(0.50モル)を仕込み、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)1988gを投入して完全に溶解した。
その後、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物161.7g(0.55モル)を投入し、室温下で重合させ、さらにピロメリット酸二無水物(PMDA)96.36g(0.442モル)を加えて、粘度約1500ポイズのポリイミド前駆体を調整した。
この前駆体に無水酢酸およびβ−ピコリンを加え、平滑なガラス板にキャストし、キュアすることで、膜厚30μmのポリイミドフィルムを得た。
得られたポリイミドフィルムについて、引張弾性率、線熱膨張係数、ガラス転移温度および水蒸気透過度を、上記した測定方法によって、測定した。測定結果は表1の実施例3の欄に示す。
【0064】
[実施例4]
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管を備えた反応容器に、p−フェニレンジアミン54.0g(0.50モル)および4,4’−ジアミノジフェニルエーテル100g(0.50モル)を仕込み、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)1983gを投入して完全に溶解した。
その後、4,4’−(フルオレン−9,9−ジイル)ビス(無水フタル酸)23g(0.05モル)および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物147.0g(0.50モル)を投入し、室温下で重合させ、さらにピロメリット酸二無水物(PMDA)96.36g(0.442モル)を加えて、粘度約1500ポイズのポリイミド前駆体を調整した。
この前駆体に無水酢酸およびβ−ピコリンを加え、平滑なガラス板にキャストし、キュアすることで、膜厚30μmのポリイミドフィルムを得た。
得られたポリイミドフィルムについて、引張弾性率、線熱膨張係数、ガラス転移温度および水蒸気透過度を、上記した測定方法によって、測定した。測定結果は表1の実施例4の欄に示す。
【0065】
[実施例5]
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管を備えた反応容器に、9,9’−ビスフルオロアニリンフルオレン(BFAF)38.4g(0.10モル)、p−フェニレンジアミン43.3g(0.40モル)および4,4’−ジアミノジフェニルエーテル100g(0.50モル)を仕込み、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)1995gを投入して完全に溶解した。
その後、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物161.75g(0.55モル)を投入し、室温下で重合させ、さらにピロメリット酸二無水物(PMDA)96.36g(0.442モル)を加えて、粘度約1500ポイズのポリイミド前駆体を調製した。
この前駆体に無水酢酸およびβ−ピコリンを加え、平滑なガラス板にキャストし、キュアすることで、膜厚30μmのポリイミドフィルムを得た。
得られたポリイミドフィルムについて、引張弾性率、線熱膨張係数、ガラス転移温度および水蒸気透過度を、上記した測定方法によって、測定した。測定結果は表1の実施例5の欄に示す。
【0066】
[実施例6]
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管を備えた反応容器に、9,9−ビスフェニルアニリンフルオレン(BPAF)50.1g(0.10モル)、p−フェニレンジアミン43.3g(0.40モル)および4,4’−ジアミノジフェニルエーテル100g(0.50モル)を仕込み、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)2050gを投入して完全に溶解した。
その後、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物161.75g(0.55モル)を投入し、室温下で重合させ、さらにピロメリット酸二無水物(PMDA)96.36g(0.442モル)を加えて、粘度約1500ポイズのポリイミド前駆体を調製した。
この前駆体に無水酢酸およびβ−ピコリンを加え、平滑なガラス板にキャストし、キュアすることで、膜厚30μmのポリイミドフィルムを得た。
得られたポリイミドフィルムについて、引張弾性率、線熱膨張係数、ガラス転移温度および水蒸気透過度を、上記した測定方法によって、測定した。測定結果は表1の実施例6の欄に示す。
【0067】
[実施例7]
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管を備えた反応容器に、p−フェニレンジアミン54.0g(0.50モル)および4,4’−ジアミノフェニルエーテル100g(0.50モル)を仕込み、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)1950gを投入して完全に溶解した。
その後、4,4’−(フルオレン−9,9’−ジイル)ビス(無水フタル酸)46g(0.10モル)および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物132.1g(0.45モル)を投入し、室温下で重合させ、さらにピロメリット酸二無水物(PMDA)96.36g(0.442モル)を加えて、粘度約1500ポイズのポリイミド前駆体を調製した。
この前駆体に無水酢酸およびβ−ピコリンを加え、平滑なガラス板にキャストし、キュアすることで、膜厚30μmのポリイミドフィルムを得た。
得られたポリイミドフィルムについて、引張弾性率、線熱膨張係数、ガラス転移温度および水蒸気透過度を、上記した測定方法によって、測定した。測定結果は表1の実施例7の欄に示す。
【0068】
[比較例1]
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管を備えた反応容器に、p−フェニレンジアミン54g(0.50モル)および4,4’−ジアミノジフェニルエーテル100g(0.50モル)を仕込み、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)1877gを投入して完全に溶解した。
その後、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物161.7g(0.55モル)を投入し、室温下で重合させ、さらにピロメリット酸二無水物(PMDA)96.36g(0.442モル)を加えて粘度約1500ポイズのポリイミド前駆体を調整した。
この前駆体に無水酢酸およびβ−ピコリンを加え、平滑なガラス板にキャストし、キュアすることで、膜厚30μmのポリイミドフィルムを得た。
得られたポリイミドフィルムについて、引張弾性率、線熱膨張係数、ガラス転移温度および水蒸気透過度を、上記した測定方法によって、測定した。測定結果は表1の比較例1の欄に示す。
【0069】
[比較例2]
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管を備えた反応容器に、p−フェニレンジアミン108g(1.0モル)を仕込み、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)1821gを投入して完全に溶解した。
その後、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物291.6(0.992モル)を投入し、室温下で重合させ、粘度約1500ポイズのポリイミド前駆体を調整した。
この前駆体に無水酢酸およびβ−ピコリンを加え、平滑なガラス板にキャストし、キュアすることで、膜厚30μmのポリイミドフィルムを得た。
得られたポリイミドフィルムについて、引張弾性率、線熱膨張係数、ガラス転移温度および水蒸気透過度を、上記した測定方法によって、測定した。測定結果は表1の比較例2の欄に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
〈実施例1の説明〉
実施例1は、成分(I)として、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンを0.05モル、成分(II)として、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物およびピロメリット酸二無水物を合計1.942モル、使用するものである。
成分(I)と成分(II)との合計に対して、成分(I)は2.5モル%、成分(II)は97.5モル%であった。
表1から明らかなように、引張弾性率、線熱膨張係数、ガラス転移温度および水蒸気透過度のいずれも良好であった。
【0072】
〈実施例2の説明〉
実施例2は、成分(I)として、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンを0.10モル、成分(II)として、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物およびピロメリット酸二無水物を合計1.892モル、使用するものである。
成分(I)と成分(II)との合計に対して、成分(I)は5.0モル%、成分(II)は95.0モル%であった。
表1から明らかなように、引張弾性率、線熱膨張係数、ガラス転移温度および水蒸気透過度のいずれも良好であった。
【0073】
〈実施例3の説明〉
実施例3は、成分(I)として、9,9−ビストルイジンフルオレンを0.10モル、成分(II)として、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物およびピロメリット酸二無水物を合計1.892モル、使用するものである。
成分(I)と成分(II)との合計に対して、成分(I)は5.0モル%、成分(II)は95.0モル%であった。
表1から明らかなように、引張弾性率、線熱膨張係数、ガラス転移温度および水蒸気透過度のいずれも良好であった。
【0074】
〈実施例4の説明〉
実施例4は、成分(III)として、4,4’−(フルオレン−9,9−ジイル)ビス(無水フタル酸)を0.05モル、成分(II)として、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物およびピロメリット酸二無水物を合計1.942モル、使用するものである。
成分(III)と成分(II)との合計に対して、成分(III)は2.5モル%、成分(II)は97.5モル%であった。
表1から明らかなように、引張弾性率、線熱膨張係数、ガラス転移温度および水蒸気透過度のいずれも良好であった。
【0075】
〈実施例5の説明〉
実施例5は、成分(I)として、9,9’−ビスフルオロアニリンフルオレン(BFAF)を0.10モル、成分(II)として、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物およびピロメリット酸二無水物を合計1.892モル、使用するものである。
成分(I)と成分(II)との合計に対して、成分(I)は5.0モル%、成分(II)は95.0モル%であった。
表1から明らかなように、引張弾性率、線熱膨張係数、ガラス転移温度および水蒸気透過度のいずれも良好であった。
【0076】
〈実施例6の説明〉
実施例6は、成分(I)として、9,9’−ビスフェニルアニリンフルオレン(BPAF)を0.10モル、成分(II)として、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物およびピロメリット酸二無水物を合計1.892モル、使用するものである。
成分(I)と成分(II)との合計に対して、成分(I)は5.0モル%、成分(II)は95.0モル%であった。
表1から明らかなように、引張弾性率、線熱膨張係数、ガラス転移温度および水蒸気透過度のいずれも良好であった。
【0077】
〈実施例7の説明〉
実施例7は、成分(III)として、4,4’−(フルオレン−9,9−ジイル)ビス(無水フタル酸)を0.10モル、成分(II)として、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物およびピロメリット酸二無水物を合計1.892モル、使用するものである。
成分(III)と成分(II)との合計に対して、成分(III)は5.0モル%、成分(II)は95.0モル%であった。
表1から明らかなように、引張弾性率、線熱膨張係数、ガラス転移温度および水蒸気透過度のいずれも良好であった。
【0078】
〈比較例1の説明〉
比較例1は、成分(I)または成分(III)に相当する成分を使用せず、成分(II)に相当する成分のみによってポリイミドが合成されるものである。
ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とのモル比は、1.00:0.992であった。
引張弾性率、線熱膨張率およびガラス転移温度は良好であったが、水蒸気透過度が十分ではなかった。
【0079】
〈比較例2の説明〉
比較例2は、成分(I)、成分(II)および成分(III)に相当する成分のいずれも使用せず、ジアミンとしてp−フェニレンジアミンを1.0モル、テトラカルボン酸二無水物として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を0.992モル使用して、ポリイミドが合成されるものである。
ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とのモル比は、1.00:0.992であった。
引張弾性率、線熱膨張率およびガラス転移温度は良好であったが、水蒸気透過度が不十分であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(I):下記式(1)で表される芳香族ジアミンと、
成分(II):3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、p−フェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとを反応させて得られ、
該成分(I)と該成分(II)との合計量に対して、該成分(I)が0.1〜10.0モル%であり、かつ、該成分(II)が99.9〜90.0モル%であるポリイミド:
【化1】


ただし、式(1)中、R,R,RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、含窒素原子基、炭素原子数1〜12の直鎖状または分岐状アルキル基、炭素原子数2〜12の直鎖状または分岐状アルケニル基、炭素原子数1〜12の直鎖状または分岐状アルコキシ基、ヒドロキシ基、ニトリル基、ニトロ基、カルボキシ基、アミド基および炭素原子数6〜12の芳香族基からなる群から選ばれる。
【請求項2】
成分(III):下記式(2)で表される芳香族テトラカルボン酸二無水物と、
成分(II):3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、p−フェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとを反応させて得られ、
該成分(III)と該成分(II)との合計量に対して、該成分(III)が0.1〜2.5モル%であり、かつ、該成分(II)が99.9〜97.5モル%であるポリイミド:
【化2】


ただし、式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、含窒素原子基、炭素原子数1〜12の直鎖状または分岐状アルキル基、炭素原子数2〜12の直鎖状または分岐状アルケニル基、炭素原子数1〜12の直鎖状または分岐状アルコキシ基、ヒドロキシ基、ニトリル基、ニトロ基、カルボキシ基、アミド基および炭素原子数6〜12の芳香族基からなる群から選ばれる。
【請求項3】
請求項1に記載のポリイミドからなるポリイミドフィルム。
【請求項4】
請求項2に記載のポリイミドからなるポリイミドフィルム。
【請求項5】
水蒸気透過度が10〜100g/m/dayであり、50〜200℃の平均線熱膨張係数が10〜25ppm/℃であり、明確なガラス転移温度がなく、かつ、引張弾性率が5.0GPa以上である、請求項3または4に記載のポリイミドフィルム。

【公開番号】特開2012−77285(P2012−77285A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150803(P2011−150803)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(591067794)JFEケミカル株式会社 (220)
【Fターム(参考)】