説明

ポリウレタン樹脂製造用触媒及びそれを用いたポリウレタン樹脂の製造方法

【課題】 新規なポリウレタン樹脂製造用触媒、及びそれを用いた、臭気問題や毒性、環境問題を引き起こすことなくポリウレタン製品を生産性、成形性良く得ることができる製造方法を提供する。
【解決手段】 ポリオールと有機ポリイソシアナートを、下記一般式(1)


で示されるシラアミン化合物を含有するポリウレタン樹脂製造用触媒の存在下で反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂製造用触媒及びそれを用いたポリウレタン樹脂の製造方法に関する。本発明の触媒は、エポキシ硬化剤、ウレタン原料、界面活性剤、繊維処理剤、紙力増強剤、樹脂改質剤、潤滑油添加剤等として有用であるが、とりわけ、ポリウレタン樹脂製造の際、揮発性のアミン触媒や有害の金属触媒をほとんど有しないポリウレタン樹脂を製造するための触媒として極めて有用である。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂はポリオールとポリイソシアネートとを触媒及び必要に応じて発泡剤、界面活性剤、難燃剤、架橋剤等の存在下に反応させて製造される。ポリウレタン樹脂の製造には数多くの金属系化合物や第3級アミン化合物を触媒として用いることが知られている。これら触媒は単独で使用又は併用することにより工業的にも多用されている。
【0003】
発泡剤として水及び/又は低沸点有機化合物を用いるポリウレタンフォームの製造においては、生産性、成形性に優れることから、これらの触媒のうち、とりわけ第3級アミン化合物が広く用いられている。このような第3級アミン化合物としては、例えば、従来公知のトリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N−メチルモルフォリン、N−エチルモルフォリン、N,N−ジメチルエタノールアミン等が挙げられる(例えば、非特許文献1参照)。金属系化合物は生産性、成形性が悪化することより、殆どの場合第3級アミン触媒と併用され、単独での使用は少ない。
【0004】
上記した第3級アミン触媒は、ポリウレタン製品から揮発性のアミンとして徐々に排出されるため、例えば、自動車内装材等では揮発性アミンによる臭気問題や、他の材料(例えば、表皮塩ビ)の変色問題を引き起こす。また、上記した第3級アミン触媒は、一般に悪臭が強いため、ポリウレタン樹脂製造時の作業環境が著しく悪化する。この問題を解決する方法として、これら揮発性の第3級アミン触媒に対し、分子内にポリイソシアネートと反応しうる1級及び2級のアミノ基や水酸基を有するアミン触媒(以下、反応型触媒と称する場合がある)や、第3級アミノ基を分子内に有する2官能の架橋剤を使用する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0005】
上記の反応型触媒を使用する方法では、当該触媒がポリイソシアネートと反応した形でポリウレタン樹脂骨格中に固定化されるため上記問題を回避できるとされている。確かに、この方法は、最終樹脂製品の臭気低減には有効であるが、これらのアミン触媒は樹脂化反応(ポリオールとポリイソシアネートの反応)の活性が劣るため、得られるポリウレタン樹脂の硬化性が低下する問題がある。また、上記の架橋剤を使用する方法は、最終樹脂製品の臭気の低減及びポリウレタン樹脂製造時の作業環境の改善には有効であるが、ポリウレタン樹脂の硬度等の物性が不充分である。
【0006】
これに対し、金属系触媒は上記第3級アミン触媒のような臭気問題や他の材料を劣化させる問題は起さないが、金属系触媒単独の使用では、上記したとおり、生産性、物性及び成形性が悪化し、更には製品中に残った重金属による毒性問題や環境問題が取り沙汰されて来ている。
【0007】
一方、特定のシラアミン化合物をポリウレタンフォームの製造用の触媒として用いることは公知である(例えば、特許文献5、6参照)。これら文献によれば、シラアミン化合物として、下記一般式(2)
【0008】
【化1】

(上記式中、R、Rは、同一又は異なって、アルキル−、シクロアルキル−、アルケニル−、及び/又はアラルキル・ラジカル等を表す。)
で示される構造を有する化合物を使用している。しかしながら、これらのシラアミン化合物は、分子内にポリイソシアネートと反応しうる1級及び2級のアミノ基や水酸基を有しないため、上記した第3級アミン触媒と同様、臭気問題や他の材料を劣化させる問題を引き起こすおそれがある。
【0009】
【特許文献1】特開昭46−4846号公報
【特許文献2】特公昭61−31727号公報
【特許文献3】特開平04−346965号公報
【特許文献4】特開昭63−265909号公報
【特許文献5】英国特許1,090,589号明細書
【特許文献6】米国特許3,620,984号明細書
【非特許文献1】岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版)日刊工業新聞社 p.118
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、新規なポリウレタン樹脂製造用触媒、及びそれを用いた、臭気問題や毒性、環境問題を引き起こすことなくポリウレタン製品を生産性、成形性良く得ることができる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記問題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、以下に示す通り、ポリウレタン樹脂製造用触媒及びそれを用いたポリウレタン樹脂の製造方法である。
【0013】
[1]下記一般式(1)
【0014】
【化2】

(式中、R〜Rは各々独立して、水素原子、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、炭素数2〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜6のアミノアルキル基、炭素数2〜6のモノメチルアミノアルキル基、又は炭素数2〜6のジメチルアミノアルキル基を表し、nは1〜11の整数を表す。R、Rは各々独立して、水素原子、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数2〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜6のアミノアルキル基、炭素数2〜6のモノメチルアミノアルキル基、炭素数2〜6のジメチルアミノアルキル基で示される置換基を表し、RとRとが結合してピベラジン構造、イミダゾール構造、イミダゾリン構造を有する環状化合物となっても良い。)
で示されるシラアミン化合物からなるポリウレタン樹脂製造用触媒
[2]一般式(1)において、R〜Rが各々独立して、水素原子、メチル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、モノメチルアミノエチル基、モノメチルアミノプロピル基、ジメチルアミノエチル基、又はジメチルアミノプロピル基を表し、R、Rが各々独立して、水素原子、メチル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、モノメチルアミノエチル基、モノメチルアミノプロピル基、ジメチルアミノエチル基、又はジメチルアミノプロピル基を表す(但し、RとRとが結合してピペラジン構造を有する環状化合物となっても良い)ことを特徴とする上記[1]に記載のポリウレタン樹脂製造用触媒。
【0015】
[3]一般式(1)で示されるシラアミン化合物が、N,N−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ジメトキシシラン、ビス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ジエトキシシラン、トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)メトキシシラン、トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)エトキシシラン、メチルピペラジンプロピルトリメトキシシラン、及びメチルピペラジンプロピルトリエトキシシランからなる群より選ばれる1種又は2種以上のアミン化合物であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のポリウレタン樹脂製造用触媒。
【0016】
[4]ポリオールと有機ポリイソシアナートを、上記[1]乃至[3]のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒の存在下で反応させることを特徴とするポリウレタン樹脂の製造方法。
【0017】
[5]触媒の使用量が、ポリオール100重量部に対して0.01〜20重量部であることを特徴とする上記[4]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の触媒は、ポリウレタン樹脂から揮散するアミンがほとんどなく、通常のアミン触媒に起因する自動車インストルパネルのPVC変色、フォームからの揮発成分移行による窓ガラスの曇り現象防止に有効である。更には、汎用触媒であるトリエチレンジアミンと比較しても同等に近い樹脂化活性能を持つため軟質、硬質、半硬質、エラストマー等のポリウレタン製造用の触媒として極めて有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0020】
本発明の触媒は、上記一般式(1)で示されるシラアミン化合物からなる。
【0021】
上記一般式(1)で示されるシラアミン化合物の置換基R〜Rとしては、各々独立して、水素原子、メチル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、モノメチルアミノエチル基、モノメチルアミノプロピル基、ジメチルアミノエチル基、又はジメチルアミノプロピル基が好ましい。また、置換基R、Rとしては、各々独立して、水素、メチル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、モノメチルアミノエチル基、モノメチルアミノプロピル基、ジメチルアミノエチル基、又はジメチルアミノプロピル基が好ましく、RとRとが結合してピペラジン構造を有する環状化合物となっても良い。
【0022】
本発明において、上記一般式(1)で示されるシラアミン化合物としては、特に限定するものではないが、具体的には、N,N−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ジメトキシシラン、ビス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ジエトキシシラン、トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)メトキシシラン、トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)エトキシシラン、メチルピペラジンプロピルトリメトキシシラン、メチルピペラジンプロピルトリエトキシシラン等が好適なものとして例示される。
【0023】
本発明の触媒として用いられる上記式(1)で示されるシラアミン化合物は、文献既知の方法にて容易に製造できる。例えば、ハロゲン含有シラン化合物と一級アミンとの反応やハロゲン含有アミンとシラン化合物の反応による方法が挙げられる。
【0024】
本発明の触媒は、ポリオールとポリイソシアネートを、触媒及び必要に応じて発泡剤、界面活性剤、難燃剤、架橋剤等の存在下に反応させるポリウレタン樹脂の製造方法において、触媒として使用することができる。以下、本発明のポリウレタン樹脂の製造方法について説明する。
【0025】
本発明の製造方法において、触媒の使用量は、使用されるポリオール100重量部に対し、通常0.01〜20重量部、であるが、好ましくは0.05〜10重量部の範囲である。0.01重量部より少ないと触媒の効果が得られない場合がある。一方、20重量部を超えると、シラアミン化合物を増やした効果が得られないだけでなく、ポリウレタン樹脂の物性が悪化する場合がある。
【0026】
本発明の製造方法において、使用されるポリオールとしては、例えば、従来公知のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、更にはリン含有ポリオールやハロゲン含有ポリオール等の難燃ポリオール等が挙げられる。これらのポリオールは単独で使用することもできるし、適宜混合して併用することもできる。
【0027】
本発明の製造方法において、使用されるポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類、エチレンジアミン等のアミン類、エタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類等の、少なくとも2個以上の活性水素基を有する化合物を出発原料として、これにエチレンオキシドやプロピレンオキシドに代表されるアルキレンオキサイドの付加反応により製造されたものが挙げられる[例えば、Gunter Oertel,“Polyurethane Handbook”(1985) Hanser Publishers社(ドイツ),p.42−53参照]。
【0028】
本発明の製造方法において、使用されるポリエステルポリオールとしては、例えば、二塩基酸とグリコールの反応から得られるものや、ナイロン製造時の廃物、トリメチロールプロパン、ペンタエリストールの廃物、フタル酸系ポリエステルの廃物、廃品を処理し誘導したポリエステルポリオール等が挙げられる[岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987) 日刊工業新聞社 p.117参照]。
【0029】
本発明の製造方法において、使用されるポリマーポリオールとしては、例えば、上記ポリエーテルポリオールとエチレン性不飽和単量体(例えば、ブタジエン、アクリロニトリル、スチレン等)をラジカル重合触媒の存在下に反応させた重合体ポリオールが挙げられる。
【0030】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法において、使用される難燃ポリオールとしては、例えば、リン酸化合物にアルキレンオキシドを付加して得られるリン含有ポリオール、エピクロルヒドリンやトリクロロブチレンオキシドを開環重合して得られるハロゲン含有ポリオール、フェノールポリオール等が挙げられる。
【0031】
本発明の製造方法において、平均水酸基価が20〜1000mgKOH/gのポリオールが使用されるが、軟質ポリウレタン樹脂や半硬質ポリウレタン樹脂には20〜100mgKOH/gのものが好適に使用され、硬質ポリウレタン樹脂には100〜800mgKOH/gのものが好適に使用される。
【0032】
本発明の製造方法に使用されるポリイソシアネートは、従来公知のものであればよく、特に限定するものではないが、例えば、トルエンジイソシアネート(以下、TDIと称する場合がある)、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと称する場合がある)、ナフチレンジイシシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類、ジシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート類、及びこれらの混合体等が挙げられる。これらのうち好ましくはTDIとその誘導体又はMDIとその誘導体であり、これらは混合して使用しても差し支えない。
【0033】
TDIとその誘導体としては、例えば、2,4−TDIと2,6−TDIの混合物又はTDIの末端イソシアネートプレポリマー誘導体を挙げることができる。MDIとその誘導体としては、例えば、MDIとその重合体のポリフェニルポリメチレンジイソシアネートの混合体、及び/又は末端イソシアネート基をもつジフェニルメタンジイソシアネート誘導体を挙げることができる。
【0034】
これらポリイソシアネートの内、軟質ポリウレタン樹脂や半硬質ポリウレタン樹脂製品にはTDIとその誘導体及び/又はMDIとその誘導体が好適に使用され、硬質ポリウレタン樹脂にはMDIとその重合体のポリフェニルポリメチレンジイソシアネートの混合体が好適に使用される。
【0035】
これらポリイソシアネートとポリオールの混合割合としては、特に限定されるものではないが、イソシアネートインデックス(イソシアネート基/イソシアネート基と反応しうる活性水素基)で表すと、一般に60〜400の範囲が好ましい。
【0036】
本発明の製造方法において、触媒として、上記一般式(1)で示されるシラアミン化合物に加えて、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その他の有機金属触媒、カルボン酸金属塩触媒、第3級アミン触媒、及び第4級アンモニウム塩触媒からなる群より選ばれる触媒(以下、その他の触媒と称する)を併用しても良い。
【0037】
有機金属触媒としては、従来公知のものであればよく、特に限定するものではないが、例えば、スタナスジアセテート、スタナスジオクトエート、スタナスジオレエート、スタナスジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジラウレート、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト等が挙げられる。
【0038】
カルボン酸金属塩触媒としては、従来公知のものであればよく、特に限定するものではないが、例えば、カルボン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩が挙げられる。カルボン酸としては、特に限定するものではないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、2−エチルヘキサン酸、アジピン酸等の脂肪族モノ及びジカルボン酸類、安息香酸、フタル酸等の芳香族モノ及びジカルボン酸類等が挙げられる。また、カルボン酸塩を形成すべき金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属が好適な例として挙げられる。
【0039】
第3級アミン触媒としては、従来公知のものであればよく、特に限定するものではないが、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチル−(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン、1,3,5−トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−ジメチルアミノプロピルイミダゾール等の第3級アミン化合物類が挙げられる。
【0040】
第4級アンモニウム塩触媒としては、従来公知のものであればよく、特に限定するものではないが、例えば、テトラメチルアンモニウムクロライド等のテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物、水酸化テトラメチルアンモニウム塩等のテトラアルキルアンモニウム水酸化物、テトラメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムギ酸塩、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩等のテトラアルキルアンモニウム有機酸塩類が挙げられる。
【0041】
本発明の製造方法において、上記したその他の触媒の使用量は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて使用すればよく、特に限定するものではないが、上記一般式(1)で示されるシラアミン化合物1重量部に対し、通常0〜100重量部の範囲、好ましくは0.01〜10重量部の範囲で使用される。
【0042】
本発明の製造方法において、上記一般式(1)で示されるシラアミン化合物は、上記したとおり、単独で又はその他の触媒と混合して使用することができるが、混合調整にあたっては、必要ならば、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール又は水等の溶媒が使用できる。溶媒の量は、特に限定するものではないが、好ましくは触媒の全量に対して3重量倍以下である。3重量倍を超えると、フォームの物性に影響を及ぼし、経済上の理由からも好ましくない。このように調整された触媒は、ポリオールに添加して使用しても良いし、種々のアミン触媒を別々にポリオールに添加しても良く、特に限定されるものではない。
【0043】
本発明の製造方法において、必要であれば、発泡剤を使用することができる。発泡剤としては、特に限定するものではないが、例えば、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(HCFC−141b)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)等のフロン系化合物、HFE−254pc等のハイドロフルオロエーテル類、低沸点炭化水素、水から選ばれる1種以上であり混合物を使用することができる。低沸点炭化水素としては、通常、沸点が通常−30〜70℃の炭化水素が使用され、その具体例としては、プロパン、ブタン、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0044】
発泡剤の使用量は、所望の密度やフォーム物性に応じて決定されるが、具体的には、得られるフォーム密度が、通常5〜1000kg/m、好ましくは10〜500kg/mとなるように選択される。
【0045】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法において、必要であれば、整泡剤として界面活性剤を用いることができる。使用される界面活性剤としては、例えば、従来公知の有機シリコーン系界面活性剤が挙げられ、具体的には、有機シロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体、シリコーン−グリース共重合体等の非イオン系界面活性剤、又はこれらの混合物等が例示される。それらの使用量は、ポリオール100重量部に対して通常0.1〜10重量部である。
【0046】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法において、必要であれば、架橋剤又は鎖延長剤を用いることができる。架橋剤又は鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン等の低分子量の多価アルコール類、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の低分子量のアミンポリオール類、又はエチレンジアミン、キシリレンジアミン、メチレンビスオルソクロルアニリン等のポリアミン類を挙げることができる。
【0047】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法において、必要であれば、難燃剤を用いることができる。使用される難燃剤としては、例えば、リン酸とアルキレンオキシドとの付加反応によって得られるプロポキシル化リン酸、プロポキシル化ジブチルピロリン酸等の含リンポリオールの様な反応型難燃剤、トリクレジルホスフェート等の第3リン酸エステル類、トリス(2−クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート等のハロゲン含有第3リン酸エステル類、ジブロモプロパノール、ジブロモネオペンチルグリコール、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン含有有機化合物類、酸化アンチモン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸アルミニウム等の無機化合物等が挙げられる。その量は特に限定されるものではなく、要求される難燃性に応じて異なるが、通常ポリオール100重量部に対して4〜20重量部である。
【0048】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法において、必要であれば、着色剤や、老化防止剤、その他従来公知の添加剤等も使用できる。これらの添加剤の種類、添加量は、使用される添加剤の通常の使用範囲でよい。
【0049】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法は、上記原料を混合した混合液を急激に混合、攪拌した後、適当な容器又はモールドに注入して発泡成型することにより行われる。混合、攪拌は一般的な攪拌機や専用のポリウレタン発泡機を使用して実施すれば良い。ポリウレタン発泡機としては高圧、低圧及びスプレー式の機器が使用できる。
【0050】
ポリウレタン樹脂製品としては、発泡剤を使用しないエラストマーや発泡剤を使用するポリウレタンフォームが挙げられる。ポリウレタンフォーム製品としては、軟質、半硬質、硬質などが挙げられるが、特に自動車内装材として用いられる軟質のカーシート、半硬質のインスツルメントパネルやハンドル及び硬質フォームにて製造される断熱材が好ましい。
【実施例】
【0051】
以下、実施例、比較例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0052】
合成例1(シラアミン化合物Aの合成):
【0053】
【化3】

1Lのセパラブルフラスコに3−クロロプロピルトリメトキシシラン(アルドリッチ社製)201.8g(1.0mol)、1−メチルピペラジン(和光純薬工業社製)102.5g(1.0mol)、トリエチルアミン104.7g(1.0mol)を仕込んだ。窒素置換後、攪拌しながら120℃まで昇温した。24時間熟成反応を行った後、析出したトリエチルアミンの塩酸塩をろ過により除去した。得られた反応液から溶媒を除去し、目的化合物(メチルピペラジンプロピルトリメトキシシラン)を194.1g得た(収率74%)。
【0054】
合成例2(シラアミン化合物Cの合成):
【0055】
【化4】

1Lのセパラブルフラスコに3−クロロプロピルトリエトキシシラン(アルドリッチ社製)240.8g(1.0mol)、ジメチルアミン(アルドリッチ社製)45.08g(1.0mol)、トリエチルアミン104.7g(1.0mol)を仕込んだ。窒素置換後、攪拌しながら120℃まで昇温した。24時間熟成反応を行った後、析出したトリエチルアミンの塩酸塩をろ過により除去した。得られた反応液から溶媒を除去し、N,N−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシランを188.4g得た(収率76%)。
【0056】
実施例1:
窒素置換した200mlの三角フラスコに、ジエチレングリコール(DEG)の濃度が0.15mol/Lになるように調製したDEG含有ベンゼン溶液50mlを採取し、これに合成例1で合成したシラアミン化合物を91.85mg(0.35mmol)を加え、A液とした。次に、窒素置換した100mlの三角フラスコに、2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)の濃度が0.15mol/Lになるように調製したTDI含有ベンゼン溶液50mlを採取し、B液とした。A液及びB液をそれぞれ30℃にて30分間保温後、B液をA液に加えて、攪拌しながら反応を開始した。反応開始後、10分毎に反応液を約10ml採取し、未反応のイソシアナートを過剰のジ−n−ブチルアミン(DBA)溶液と反応させ、残存したDBAを0.2N塩酸エタノール溶液で逆滴定して未反応イソシアナート量を定量した。
【0057】
反応速度定数k(l/mol・h)は、ポリイソシアネートとアルコールの反応(樹脂化反応)が各々の濃度に1次であると仮定して求めた。また、触媒あたりの速度定数Kc(l/eq・mol・h)は反応速度定数kを触媒濃度で除することで求めた。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

実施例2及び実施例3:
触媒として表1に示したシラアミン化合物を使用した以外は、実施例1と同じ手法を用いた。結果を表1にあわせて示す。
【0059】
比較例1:
触媒としてトリエチレンジアミン33.3%ジプロピレングリコール溶液(東ソー社製TEDA−L33)を使用した以外は、実施例1と同じ手法を用いた。結果を表1にあわせて示す。
【0060】
実施例4:
窒素置換した200mlの三角フラスコに、水の濃度が0.078mol/Lになるように調製した水含有ベンゼン溶液100mlを採取し、これに合成例1で合成したシラアミン化合物を91.85mg(0.35mmol)を加え、A液とした。次に、窒素置換した100mlの三角フラスコに、2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)の濃度が0.78mol/Lになるように調製したTDI含有ベンゼン溶液10mlを採取し、B液とした。A液及びB液をそれぞれ30℃にて30分間保温後、B液をA液に加えて、攪拌しながら反応を開始した。反応開始後、10分毎に反応液を約10ml採取し、未反応のイソシアナートを過剰のジ−n−ブチルアミン(DBA)溶液と反応させ、残存したDBAを0.2N塩酸エタノール溶液で逆滴定して未反応イソシアナート量を定量した。
【0061】
反応速度定数k(l/mol・h)は、ポリイソシアネートと水の反応(泡化反応)が各々の濃度に1次であると仮定して求めた。また、触媒あたりの速度定数Kc(l2/eq・mol・h)は反応速度定数kを触媒濃度で除することで求めた。結果を表1にあわせて示す。
【0062】
実施例5及び実施例6:
触媒として表1に示したシラアミン化合物を使用した以外は、実施例4と同じ手法を用いた。結果を表1にあわせて示す。
【0063】
比較例2:
触媒としてトリエチレンジアミン33.3%ジプロピレングリコール溶液(東ソー社製TEDA−L33)を使用した以外は、実施例4と同じ手法を用いた。結果を表1に示す。表1の結果から、各触媒の泡化/樹脂化活性比[=樹脂化反応の速度定数/泡化反応の速度定数×10]を求めた。その結果を表2に示す。
【0064】
【表2】

表2から明らかなように、本発明のシラアミン化合物は、L33に匹敵する泡化/樹脂化活性比(樹脂化反応選択性)を発現する。
【0065】
実施例7:
ポリオール、水、整泡剤を表3に示した原料配合比にてプレミックスAを調合した。プレミックスA148.1gを500mlポリエチレンカップに取り、触媒として合成例1で合成したシラアミン化合物を1.5g添加し、25℃に温度調整した。別容器で25℃に温度調整したポリイソシアネート液を、イソシアネートインデックス[=イソシアネート基/OH基(モル比)×100]が105となる量を、プレミックスAのカップの中に入れ、素早く攪拌機にて5000rpmで5秒間攪拌した。混合攪拌した混合液を40℃に温度調節した2リットルのポリエチレンカップに移し発泡中の反応性を測定した。
また、得られた成型フォームから、フォーム密度を測定し比較した。結果を表4に示す。なお、各測定項目の測定方法は以下のとおりである。
【0066】
(1)反応性の測定項目:
クリームタイム:発泡開始時間、フォームが上昇開始する時間を目視にて測定した。
【0067】
ゲルタイム:反応が進行し液状物質より、樹脂状物質に変わる時間を測定した。
【0068】
ライズタイム:フォームの上昇が停止する時間を目視にて測定。
【0069】
(2)フォームコア密度
モールド成型フォームの中心部を7×7×5cmの寸法にカットし、寸法、重量を正確に測定してコア密度を算出した。
【0070】
(3)フォームの臭気
フォームコア密度を測定したフォームから5×5×5cm寸法のフォームをカットしマヨネーズ瓶の中に入れ蓋をした後、10人のモニターにそのフォームの臭いを嗅いで貰い、臭いの強さを測定した。
【0071】
○:殆ど臭い無し、△:臭気あり、×:強い臭気有り。
【0072】
【表3】

【0073】
【表4】

実施例8〜実施例10及び比較例3、比較例4:
触媒としてシラアミン化合物の代わりに表4に示す配合比にてシラアミン化合物及び/又はアミン化合物を使用した以外は、実施例7と同じ手法を用いた。結果を表4にあわせて示す。
【0074】
実施例7〜実施例10は本発明の触媒を用いた例であるが、フォームからアミン触媒の臭気はほとんどしない。加えて樹脂化活性が高く、反応プロファイルも一般に触媒として使用されているL33に近いため、L33の代替が可能である。一方、比較例3、比較例4は通常の第3級アミン触媒を用いた例であるが、フォームからアミン触媒の臭気が確認され、アミン触媒に起因する自動車インストルパネルのPVC変色、窓ガラスの曇り現象を防止することができない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、R〜Rは各々独立して、水素原子、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、炭素数2〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜6のアミノアルキル基、炭素数2〜6のモノメチルアミノアルキル基、又は炭素数2〜6のジメチルアミノアルキル基を表し、nは1〜11の整数を表す。R、Rは各々独立して、水素原子、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数2〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜6のアミノアルキル基、炭素数2〜6のモノメチルアミノアルキル基、炭素数2〜6のジメチルアミノアルキル基で示される置換基を表し、RとRとが結合してピベラジン構造、イミダゾール構造、イミダゾリン構造を有する環状化合物となっても良い。)
で示されるシラアミン化合物からなるポリウレタン樹脂製造用触媒
【請求項2】
一般式(1)において、R〜Rが各々独立して、水素原子、メチル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、モノメチルアミノエチル基、モノメチルアミノプロピル基、ジメチルアミノエチル基、又はジメチルアミノプロピル基を表し、R、Rが各々独立して、水素原子、メチル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、モノメチルアミノエチル基、モノメチルアミノプロピル基、ジメチルアミノエチル基、又はジメチルアミノプロピル基を表す(但し、RとRとが結合してピペラジン構造を有する環状化合物となっても良い)ことを特徴とする請求項1に記載のポリウレタン樹脂製造用触媒。
【請求項3】
一般式(1)で示されるシラアミン化合物が、N,N−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ジメトキシシラン、ビス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ジエトキシシラン、トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)メトキシシラン、トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)エトキシシラン、メチルピペラジンプロピルトリメトキシシラン、及びメチルピペラジンプロピルトリエトキシシランからなる群より選ばれる1種又は2種以上のアミン化合物であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリウレタン樹脂製造用触媒。
【請求項4】
ポリオールとポリイソシアナートを、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒の存在下で反応させることを特徴とするポリウレタン樹脂の製造方法。
【請求項5】
触媒の使用量が、ポリオール100重量部に対して0.01〜20重量部であることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。


【公開番号】特開2008−56850(P2008−56850A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237844(P2006−237844)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】