説明

ポリウレタン発泡体及びそれを用いた導電性ローラ

【課題】表面に直接溶剤系塗料を塗布して、膨潤による不都合を生じることなく、良好に塗膜形成を行うことができ、かつ溶剤遮蔽層を必要とせず、直接弾性層上に溶剤系塗料を塗工して表面樹脂層を形成することができるポリウレタン発泡体を提供することを目的とする。
【解決手段】ポリオール成分とイソシアネート成分とを含むポリウレタン原料から機械撹拌発泡により得られるポリウレタン発泡体において、上記ポリオール成分として、水酸基価160mgKOH以上で平均官能基数2.5〜3のポリエステルポリオールを含有し、また上記イソシアネート成分として、NCO含有率1〜25%の変性TDI、変性MDI及び変性HDIの少なくとも1種を含み、かつ、メチルエチルケトンを用いた浸漬試験[JIS K6258(1993)、23℃、72時間]による体積変化率が、400%以下であることを特徴するポリウレタン発泡体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置に用いられる導電性ローラの構成材料として好適に用いられるポリウレタン発泡体及びそれを弾性層とした用いた導電性ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子写真装置に用いられる現像ローラ、トナー搬送ローラ、帯電ローラなどの導電性ローラに、ポリウレタン発泡体を弾性層として用いることが行われている。この場合特に帯電ローラや現像ローラでは、比較的微細な気泡を有する発泡体が得られることから機械撹拌発泡(メカニカルフロス法)により得られたポリウレタン発泡体が好ましく用いられ、通常このポリウレタン発泡体からなる弾性層上にローラ表面を構成する表面樹脂層を塗工成形して導電性ローラとされる。
【0003】
しかしながら、通常、ポリウレタン発泡体の表面に直接有機溶剤系の塗料を塗工するとポリウレタン発泡体が膨潤して、塗工した表面樹脂層に皺が発生してしまうため、従来、ポリウレタン発泡体を弾性層に用いて導電性ローラを得る場合は、弾性層表面に水系塗料を用いて溶剤遮蔽膜を塗工し、その上に溶剤系の塗料を用いて表面樹脂層を形成することが行われている(特許文献1等)。
【0004】
このように、導電性ローラを作製するに際し、機械撹拌発泡により得られたポリウレタン発泡体を弾性層として用いる場合、従来は、弾性層上に溶剤系塗料を塗工して表面樹脂層を形成する際に、弾性層の膨潤を防ぐために溶剤遮蔽層を形成する必要があった。このため、製造工程が増加し、また煩雑になり、これがコスト高を招く原因の1つとなっている。
【0005】
【特許文献1】特開平7−119733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、表面に直接溶剤系塗料を塗布して塗膜形成を行って、膨潤による不都合を生じることなく、良好に塗膜形成を行うことができ、導電性ローラの弾性層として用いた場合に溶剤遮蔽層を必要とせず、直接弾性層上に溶剤系塗料を塗工して表面樹脂層を形成することができるポリウレタン発泡体、及び該ポリウレタン発泡体を弾性層として用いた導電性ローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、ポリオール成分とイソシアネート成分とを含むポリウレタン原料から機械撹拌発泡によりポリウレタン発泡体を得る場合に、上記ポリオール成分として、水酸基価160mgKOH以上で平均官能基数2.5〜3のポリエステルポリオールを用い、また、上記イソシアネート成分として、NCO含有率1〜25%の変性TDI、変性MDI及び変性HDIの少なくとも1種を用いることにより、メチルエチルケトンを用いた浸漬試験[JIS K6258(1993)、23℃、72時間]による体積変化率が400%以下の良好な耐溶剤性を有するポリウレタン発泡体が得られることを見出した。
【0008】
そして、このように良好な耐溶剤性を有するポリウレタン発泡体であれば、これを導電性ローラの弾性層として用いることにより、該弾性層上に直接溶剤系塗料を塗布して表面樹脂層を成形しても、ローラ表面に皺が発生することなく、良好な表面状態を有するローラを確実に得ることができ、従来行われていた溶剤遮蔽層の形成を省略して、低コストで良好な性能を有する導電性ローラが得られることを見出し、本発明を完成したものである。
【0009】
従って、本発明は、ポリオール成分とイソシアネート成分とを含むポリウレタン原料から機械撹拌発泡により得られるポリウレタン発泡体において、上記ポリオール成分として、水酸基価160mgKOH以上で平均官能基数2.5〜3のポリエステルポリオールを含有し、また上記イソシアネート成分として、NCO含有率1〜25%の変性TDI、変性MDI及び変性HDIの少なくとも1種を含み、かつ、メチルエチルケトンを用いた浸漬試験[JIS K6258(1993)、23℃、72時間]による体積変化率が、400%以下であることを特徴するポリウレタン発泡体を提供する。
【0010】
また、本発明は、発泡弾性体からなる弾性層上に表面樹脂層を形成してなる導電性ローラにおいて、弾性層を上記本発明のポリウレタン発泡体で形成し、この弾性層上に直接溶剤系塗料を塗工して表面樹脂層を形成したことを特徴とする導電性ローラを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリウレタン発泡体によれば、耐溶剤性に優れるため、このポリウレタン発泡体を弾性層として用い、現像ローラ、トナー搬送ローラ、帯電ローラなどの導電性ローラを作製する場合に、弾性層上に溶剤遮蔽層を設ける必要なく、直接弾性層上に溶剤系塗料を塗工して表面樹脂層を成形することができ、低コストで良好な性能を有する導電性ローラを得ることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明のポリウレタン発泡体は、上述のように、ポリオール成分とイソシアネート成分とを含むポリウレタン原料から機械撹拌発泡により得られるものである。
【0013】
この場合、ポリオール成分としては、ポリエステルポリオールが用いられる。本発明で用いられるポリエステルポリオールは、水酸基価が160mgKOH以上、好ましくは300〜350mgKOH、平均官能基数2.5〜3のものである。この場合、ポリエステルポリオールの水酸基価が160mgKOH未満であると、耐溶剤性や圧縮永久歪みが悪化し、ローラ表面のしわの発生や、他部品との圧接部が接着し易くなり、本発明の目的を達成し得ない。また、ポリエステルポリオールの平均官能基数が上記範囲を逸脱する場合にも、同様の不都合を生じ易くなり、この場合も本発明の目的を達成し得ない。
【0014】
このポリエステルポリオールは、上記水酸基価及び平均官能基数を有するものであればよく、得られる発泡体の用途や形態、求められる特性などに応じて適宜選択され、特に制限させるものではないが、本発明では、特にテレフタル酸又はアジピン酸とメチル分岐を有するジオールとを重合させて得られる、分子鎖中に分岐メチル基を含有したポリエステルポリオールが特に好ましく用いられる。
【0015】
即ち、ポリエステルポリオールは、その性状が常温でペースト状又は固体であることが多く、このためイソシアネートと混合して機械撹拌発泡を行う際の取扱性に劣り、またポリエステルポリオールから得られるポリウレタンは硬くなり易いという欠点があるが、上記分岐メチル基含有ポリエステルポリオールを用いることにより、これらの問題を解消して取扱性よく機械撹拌発泡操作に供することができると共に、柔らかいポリウレタンを得ることが可能である。
【0016】
このような、分岐メチル基含有ポリエステルポリオールとして具体的には、3−メチルペンタンテレフタレートポリオール、3−メチルペンタンアジペートポリオール、3メチルペンタンイソフタレート、3−メチルペンタンセバシン酸エステルポリオールなどを例示することができる。
【0017】
なお、ポリオール成分としては、上記水酸基価及び平均官能基数を有するポリエステルポリオールを含んでいればよく、これらと他のポリオール成分とを併用することもできる。この場合、他のポリオール成分としては、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、ポリブタジエンポリオール、更には水酸基価、平均官能基数が上記範囲を逸脱したポリエステルポリオールを例示することができる。
【0018】
次に、上記イソシアネート成分としては、変性トリレンジイソシアネート(TDI)、変性ジフェニルメタンジイソアネート(MDI)、変性ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)から選ばれる1種又は2種以上が用いられる。この場合、変性体の種類は、特に制限されるものではなく、ポリオール変性体、ヌレート変性体、カルボジイミド変性体などが例示されるが、特にポリオール変性体が好ましく、ポリオール変性TDI、ポリオール変性MDI及びポリオール変性HDIから選ばれた1種又は2種以上のイソシアネートが好ましく用いられる。
【0019】
ここで、本発明では、上記イソシアネート成分として用いられる変性TDI、変性MDI、変性HDIは、いずれもNCO含有率が1〜25%、この好ましくは4〜10%のものが用いられる。この場合、NCO含有率が1%未満であると、反応点少なく圧縮永久歪みの低下や硬化不良を招く場合があり、一方25%を超えると反応が非常に速くなってメカニカルフロス法で成型することが困難になる場合がある。
【0020】
この本発明のポリウレタン発泡体には、上記ポリオール成分及びイソシアネート成分の他に、必要に応じて、整泡剤、導電剤、架橋剤、界面活性剤、触媒等の公知の添加剤を適量添加することができる。
【0021】
上記整泡剤としては、ポリジメチルシロキサン−ポリエチレンオキサイド共重合体、ポリジメチルシロキサン−ポリプロピレンオキサイド共重合体、ポリジメチルシロキサン−ポリエチレンアジペート共重合体などが例示される。
【0022】
上記導電剤としては、公知のイオン導電剤又は電子導電剤を用いることができる。イオン導電剤としては、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム(例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム(例えば、ステアリルトリメチルアンモニウム)、ベンジルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸ジメチルエチルアンモニウムなどの過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エチル硫酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩などのアンモニウム塩、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、トリフルオロメチル硫酸塩、スルホン酸塩などが例示される。
【0023】
また、電子導電剤としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボン;SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン;酸化処理を施したインク用カーボン、熱分解カーボン、天然グラファイト、人造グラファイト;酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物;ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属などが例示される。
【0024】
上記触媒としては、例えば、有機金属触媒のジブチルチンジラウレート、ジブチルチンジアセテート、スタナスオクトエート、ジブチルチンマーカプチド、ジブチルチンチオカルボキシレート、ジブチルチンジマレニート、ジオクチルチンマーカプチド、ジオクチルチンチオカルボキシレート、フェニル水銀、プロピオン酸銀、オクテン酸錫、アミン触媒のトリエチルアミン、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン、ジメチルアミノエタノール、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7等が好ましく用いられる。これらの触媒は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
本発明のポリウレタン発泡体は、上記イソシアネート成分、ポリオール成分、及び必要に応じて添加される上記添加剤を混合し、機械撹拌発泡させて金型内に注型し、所望の形態に発泡成形することにより得られるものである。この場合、上記各成分の混合は、特に制限されるものではないが、上記触媒、整泡剤及びイオン導電剤はポリオール成分に予め混合した後にイソシアネート成分と混合することが好ましく、またカーボンブラックを用いる場合には、カーボンブラックをイソシアネート成分に予め混合した後にポリオール成分と混合することが好ましい。また、発泡成形の諸条件は、用いられる各成分の種類や得ようとする発泡体の密度や用途、形態などに応じて適宜通常の条件を採用すればよい。
【0026】
本発明のポリウレタン発泡体は、上述のように、特定のポリオール成分とイソシアネート成分とを含むポリウレタン原料を機械撹拌発泡(メカニカルフロス法)させたものであり、それによりメチルエチルケトンを用いた浸漬試験[JIS K6258(1993)、23℃、72時間]による体積変化率が400%以下、好ましくは200〜300%の優れた耐溶剤性を付与したものである。この場合、上記体積変化率が400%を超えると、ポリウレタン発泡体上に溶剤系塗料を塗工して塗膜を形成した場合に、発泡体の膨潤により塗膜に皺が発生し易くなり、本発明の目的を達成し得ない。なお、この浸漬試験は、上記本発明の組成のポリウレタン原料から未発泡で成形したエラストマーを試験片として用いることができる。
【0027】
本発明のポリウレタン発泡体は、上記のように、電子写真装置に用いられる現像ローラ、トナー搬送ローラ、帯電ローラなどの導電性ローラに弾性層として好適に用いられるものである。この場合、本発明ポリウレタン発泡体は、芯金の周囲に弾性層として形成され、その上に表面樹脂層が形成されて導電性ローラが構成されるが、この場合、上述のように、本発明のポリウレタン発泡体を弾性層として用いることにより、弾性層表面に溶剤遮蔽層を形成することなく、直接弾性層上に溶剤系塗料を塗工して表面樹脂層を形成することができるものである。なお、特に制限されるものではないが、このように導電性ローラの弾性層とする場合には、本発明のポリウレタン発泡体は独立気泡を有するものであることが好ましい。
【0028】
ここで、上記表面樹脂層としては、ローラの用途等に応じて選択される公知の樹脂を用いて形成することができ、例えばウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂などが例示される。
【0029】
この表面樹脂層には、ローラの用途等に応じて適宜な添加剤を配合することができ、例えば上記弾性層で例示したものと同様の導電剤や樹脂の硬化剤などを必要に応じて適量添加することができる。
【0030】
また、この表面樹脂層には、ローラの表面粗さを調製するため樹脂粒子などを配合分散させることもできる。この場合、樹脂粒子は、表面樹脂層を形成する樹脂の種類や表面樹脂層の厚さなどに応じて適宜選定することができる。具体的には、例えばウレタン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、シリカ粒子、ポリアミド樹脂粒子、ナイロン樹脂粒子などが例示され、これらの1種又は2種以上を用いることができる。また、粒子の形状や大きさ、粒度分布なども適宜選定され、特に制限されるものではないが、通常は球形、角型、針型の粒子が好ましく用いられ、また粒径はD50=1〜50μm、特にD50=5〜20であることが好ましい。
【0031】
この表面樹脂層は、上記各成分を有機溶剤に配合分散した塗料をローラの上記弾性層上に塗工することにより形成されるが、この場合塗料の溶剤としては、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、メチルシクロヘキサンなど、用いる樹脂の種類等に応じて適宜な有機溶剤を用いることができるが、特にMEKを溶剤とした塗料とすることが好ましい。
【実施例】
【0032】
以下、実施例,比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0033】
[実施例1〜3及び比較例1〜5]
下記表1〜3に示した配合組成のポリウレタンフォームを発泡成形し、芯金(6mmφ)の外周にポリウレタンフォームからなる弾性層(厚さ3mm)を形成した。この際、ポリオール、整泡剤、イオン導電剤、触媒を混合したA液と、イソシアネート及びカーボンブラックを混合したB液とを予め調製し、これらA液とB液とを機械撹拌して混合すると共に発泡させ、芯金をセットした金型内に注型して芯金の外周に密度0.64g/cm3のポリウレタンフォーム弾性層を形成した。また、同様の組成で未発泡の試験片(20×50×2mm)を成形し、下記浸漬試験に供した。なお、表1〜3中の配合部数は全て質量部であり、また各表中の水酸基価の単位は(mgKOH)である。また、表1〜3中のイソシアネート成分及びポリオール成分の詳細は下記の通りである。
【0034】
ポリオール変性トリレンジイソシアネート(*1)
旭硝子ウレタン株式会社製 試作品「BS 008」

ジフェニルメタンジイソシアネート(*2)
BASF INOACポリウレタン製 「MP102」

ポリエステルポリオール(*3)
株式会社クラレ製 「クラレポリオール F−510」

ポリエステルポリオール(*4)
株式会社クラレ製 「クラレポリオール F−750」

ポリエステルポリオール(*5)
株式会社クラレ製 「クラレポリオール F−1010」

ポリエーテルポリオール(*6)
旭硝子ウレタン株式会社製 「エクセノール 420」

ポリエーテルポリオール(*7)
三洋化成工業株式会社 「サンニックス FA951」

ポリエーテルポリオール(*8)
旭硝子ウレタン株式会社製、試作品「エクセノール 430」

ポリエーテルポリオール(*9)
旭硝子ウレタン株式会社製、試作品「エクセノール 828」

ポリマーポリオール(*10)
三井化学ポリウレタン株式会社 「アクトコール POP−34/28」

ポリエステルポリオール(*11)
三井化学ポリウレタン株式会社 「U−2410T」
【0035】
得られた、上記試験片を用い、JIS K6258(1993)の規定に従って、下記条件でメチルエチルケトンに対する浸漬試験を行って、体積変化率を算出した。また、ローラ弾性層表面のアスカーC硬度を測定した。これらの結果を表1〜3に示す。
【0036】
次いで、この弾性層上に下記組成の塗料を塗布して、厚さ10μmの表面樹脂層を形成し、導電性ローラを得た。
塗料組成
ウレタン樹脂(日本ポリウレタン社製「N5196」) 100質量部
カーボンブラック 35質量部
ウレタン粒子(大日本インキ社製「バーノック」、球状、D50=10μm) 10質量部
メチルエチルケトン 350質量部
イソシアネート硬化剤(日本ポリウレタン社製「コロネートHX」) 20質量部
【0037】
得られた各ローラにつき、JIS B 0601(2001)に従って輪郭曲線の算術平均高さ(Ra)を測定し、表面粗さを調べた。また、各ローラを現像ローラとしてプリンタカートリッジに装着し、このカートリッジをヒューレット・パッカード社製のレーザービームプリンタ「Laser Jet4050」にセットして黒ベタ画像を印刷し、画像濃度の均一性を、○、△、×の3段階で評価した。結果を表1〜3に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
上記表1の通り、本発明に規定のイソシアネート及びポリオールを用いて、JIS B 0601(2001)に規定の浸漬試験による体積変化率400%以下(276〜340%)に調整した実施例1〜3のポリウレタン発泡体は、これを弾性層として用い、その上に直接溶剤系塗料を塗工して表面樹脂層を形成した場合でも、ローラの表面粗さをRa=1.1〜1.4μmの良好な状態に制御することができ、良好な画像が得られる高性能な現像ローラが得られることを確認した。
【0042】
これに対し、表2,3に示されているように、本発明の規定を逸脱するイソシアネート及びポリオールを用いた比較例1〜5のポリウレタン発泡体は、JIS B 0601(2001)に規定の浸漬試験による体積変化率が410〜546%と、膨潤による体積変化が大きくなっている。このため、これらポリウレタン発泡体を弾性層として用い、その上に直接溶剤系塗料を塗工して表面樹脂層を形成した導電性ローラは、ローラの表面粗さがRa=2〜2.8μmと粗くなってしまい、良好な画像を得ることが困難である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分とイソシアネート成分とを含むポリウレタン原料から機械撹拌発泡により得られるポリウレタン発泡体において、
上記ポリオール成分として、水酸基価160mgKOH以上で平均官能基数2.5〜3のポリエステルポリオールを含有し、また上記イソシアネート成分として、NCO含有率1〜25%の変性TDI、変性MDI及び変性HDIの少なくとも1種を含み、
かつ、メチルエチルケトンを用いた浸漬試験[JIS K6258(1993)、23℃、72時間]による体積変化率が、400%以下であることを特徴するポリウレタン発泡体。
【請求項2】
上記ポリエステルポリオールが、分子鎖中に分岐メチル基を有するものである請求項1記載のポリウレタン発泡体。
【請求項3】
上記イソシアネート成分が、ポリオール変性TDI、ポリオール変性MDI及びポリオール変性HDIの少なくとも1種を含むものである請求項1記載のポリウレタン発泡体。
【請求項4】
上記ポリオール成分に触媒、整泡剤、イオン導電剤を混合してイソシアネート成分と反応させて得られた請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリウレタン発泡体。
【請求項5】
上記イソシアネート成分に導電材としてカーボンブラックを混合してポリオール成分と反応させて得られた請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリウレタン発泡体。
【請求項6】
フォーム密度が0.5〜0.8g/cm3である請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリウレタン発泡体。
【請求項7】
独立気泡からなる発泡体である請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリウレタン発泡体。
【請求項8】
発泡弾性体からなる弾性層上に表面樹脂層を形成してなる導電性ローラにおいて、上記弾性層を請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリウレタン発泡体で形成し、この弾性層上に直接溶剤系塗料を塗工して表面樹脂層を形成したことを特徴とする導電性ローラ。

【公開番号】特開2008−280448(P2008−280448A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126658(P2007−126658)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】