説明

ポリエステルフィルム及びその製造方法

【課題】ポリエステルとポリイミドのブレンドフィルムにおいて、優れた寸法安定性およびガスバリア性を維持しつつ、フィルム内の水分量を減らし、破断強度を向上させた、耐加水分解性に優れたフィルムを提供する。
【解決手段】ポリエステル(A)を70〜99質量部とポリイミド(B)1〜30質量部を含む二軸配向ポリエステルフィルムであって、前記ポリイミド(B)のイミド化率が95%以上であり、該ポリエステルフィルムの25℃、相対湿度60%、24時間後の含水率が0.7重量%以下であるポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステルフィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリエステルとポリイミドのブレンドフィルムが、検討されている(特許文献1、特許文献2)。これは、これらのフィルムが、寸法安定性やガスバリア性に優れるからである。しかしながら、このようなフィルムは、フィルムの耐加水分解性が必ずしも十分ではない。そのため、このようなフィルムを、太陽電池素子のような、野外に長年に渡って置かれる素子に用いると、該フィルムの加水分解が進行し、フィルムの破断強度が著しく劣化するという問題がある。また、製膜した際のフィルムに残存する水分量が多いと、該水分が加水分解を進行させるという問題もある。
すなわち、ポリエステルとポリイミドのブレンドフィルムにおいて、加水分解を抑制し、破断強度を向上させる技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−221278号公報
【特許文献2】国際公開WO2007/040039パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記課題を解決することを目的としたものであって、ポリエステルとポリイミドのブレンドフィルムにおいて、優れた寸法安定性およびガスバリア性を維持しつつ、フィルム内の水分量を減らし、破断強度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる状況のもと、本願発明者が鋭意検討を行った結果、ポリイミドに含まれるポリアミコ酸が、酸触媒として、ポリエステルの耐加水分解性を悪化させていることを見出した。そして、本願発明者は、ポリアミコ酸をイミド化し環状骨格にすることでこの問題を解決し、本発明を完成するに至った。具体的には、上記課題は、以下の手段により、達成された。
(1)ポリエステル(A)を70〜99質量部とポリイミド(B)1〜30質量部を含む二軸配向ポリエステルフィルムであって、前記ポリイミド(B)のイミド化率が95%以上であり、該ポリエステルフィルムの25℃、相対湿度60%、24時間後の含水率が0.7重量%以下であるポリエステルフィルム。
(2)イミド化率が97%以上である、(1)に記載のポリエステルフィルム。
(3)イミド化率が99%以上である、(1)に記載のポリエステルフィルム。
(4)ポリイミド(B)がポリエーテルイミドである、(1)〜(3)のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
(5)前記ポリエステルフィルムを構成する樹脂の70〜99重量%がポリエステル(A)であり、1〜30重量%がポリイミド(B)である、(1)〜(4)のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
(6)前記ポリエステルフィルムを構成する樹脂の80〜99重量%がポリエステル(A)であり、1〜20重量%がポリイミド(B)である、(1)〜(4)のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
(7)前記ポリエステル(A)がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、および、これらの変性体、ならびにこれらの共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーを含んでいる、(1)〜(6)のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
(8)前記ポリエステル(A)の末端COOH濃度が、25(eq/ton)以下である、(1)〜(7)のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
(9)ポリエステルフィルムの25℃、相対湿度60%、24時間後の含水率が0.59重量%以下である(1)〜(8)のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
(10)ポリイミド(B)のペレットを180℃〜240℃で10時間以上加熱してイミド化したものを製膜してなる、(1)〜(9)のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
(11)温度85℃、相対湿度85%の雰囲気下で保存した場合において、保存後の破断伸度が保存前の破断伸度に対して50%となる保存時間が、3500時間以上であることを特徴とする(1)〜(10)のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
(12)太陽電池用ポリエステルフィルムである、(1)〜(11)のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
(13)(1)〜(12)のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムの表面に、ガスバリア層を有する封止フィルム。
(14)(1)〜(12)のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムまたは(13)に記載の封止フィルムを備えた太陽電池モジュール。
(15)ポリエステル(A)を70〜99質量部、ポリイミド(B)1〜30質量部の割合で含んだ二軸配向ポリエステルフィルムを製造する方法において、前記ポリイミド(B)を、180℃〜240℃、10〜50時間、熱処理することを含むポリエステルフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、フィルム中の含水量が少なく、破断伸度に優れたポリエステルとポリイミドのブレンドフィルムのフィルムを得ることが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明の太陽電池モジュールの基本構成を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0009】
本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステル(A)を70〜99質量部とポリイミド(B)1〜30質量部を含む二軸配向ポリエステルフィルムであって、前記ポリイミド(B)のイミド化率が95%以上であり、該ポリエステルフィルムの25℃、相対湿度60%、24時間後の含水率が0.7重量%以下であることを特徴とする。
従来から、ポリエステル(A)を70〜99質量部とポリイミド(B)1〜30質量部を含む二軸配向ポリエステルフィルムは、寸法安定性およびガスバリア性に優れていることが知られているが、かかるフィルムは、耐加水分解性に劣るという問題があった。しかしながら、本発明では、ポリイミド(B)のイミド化率を95%以上とし、かつ、該ポリエステルフィルムの25℃、相対湿度60%、24時間後の含水率を0.7重量%以下とすることによりかかる問題を解決したものである。
【0010】
本発明において、ポリエステル(A)としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸などの酸成分やジオール成分を構成単位(重合単位)とするポリマーで構成されたものを用いることができる。
【0011】
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4'−ジフェニルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルスルホンジカルボン酸等を用いることができ、なかでも好ましくは、テレフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸を用いることができる。脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等を用いることができる。脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等を用いることができる。これらの酸成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0012】
ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2'−ビス(4'−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができ、なかでも、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール等を好ましく用いることができ、特に好ましくは、エチレングリコール等を用いることができる。これらのジオール成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0013】
ポリエステル(A)には、ラウリルアルコール、イソシアン酸フェニル等の単官能化合物が共重合されていてもよいし、トリメリット酸、ピロメリット酸、グリセロール、ペンタエリスリトール、2,4−ジオキシ安息香酸、等の3官能化合物などが、過度に分枝や架橋をせずポリマーが実質的に線状である範囲内で共重合されていてもよい。さらに酸成分、ジオール成分以外に、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸などを本発明の効果が損なわれない程度の少量であればさらに共重合せしめることができる。
【0014】
ポリエステル(A)としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(特に、ポリエチレン-2,6ナフタレート)が好ましい。また、これらの共重合体や変性体でもよく、他の熱可塑性樹脂とのポリマーアロイでもよい。ここでいうポリマーアロイとは高分子多成分系のことであり、共重合によるブロックコポリマーであってもよいし、混合などによるポリマーブレンドでもよい。本発明においては、これらポリマーの少なくとも1種を含んでいることが好ましい。
【0015】
本発明では、ポリエステル(A)の末端COOH濃度が、25(eq/ton)以下であることが好ましく、20(eq/ton)以下であることがより好ましく、17(eq/ton)以下であることがさらに好ましく、12(eq/ton)以下であることが特に好ましい。このような範囲にすることにより、ポリエステルの耐加水分解性が向上する。
【0016】
特に、上記ポリエステル樹脂とポリイミド系樹脂のポリマーアロイは混合割合によって耐熱性(ガラス転移温度)を制御できるため、使用条件に合わせたポリマー設計ができるため好ましい。ポリマーの混合割合は顕微FT−IR法(フーリエ変換顕微赤外分光法)を用いて調べることができる。
【0017】
たとえば、ポリエステルとポリイミドの場合、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)70質量部/重クロロホルム30質量部の混合溶液に溶解し1H核のNMRスペクトルを測定する。得られたスペクトルで、ポリエステルとポリイミドに特有の吸収(例えば、ポリエステルがポリエチレンテレフタレートであればテレフタル酸の芳香族プロトン、ポリイミドがポリエーテルイミドであればビスフェノールAの芳香族のプロトン)のピーク面積強度を求め、その比率とプロトン数よりブレンドのモル比を算出する。さらにポリマーの単位ユニットに相当する式量より質量比を算出する。このようにしてポリエステル成分およびポリイミド成分の混合割合が特定できる。
【0018】
本発明では、ポリイミドのイミド化率を95%以上に調整して用いるが、本発明におけるイミド化率は、97%以上であることが好ましく、99%以上であることがより好ましい。イミド化率が向上するに従って、本発明の効果がより効果的に発揮される。
ポリイミドとしては、例えば、下記一般式で示されるような構造単位を含有するものが好ましい。
【0019】
【化1】

【0020】
ただし、式中のR1は、
【0021】
【化2】

【0022】
【化3】

【0023】
などの脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基から選ばれた一種もしくは二種以上の基を表している。また、式中のR2は、
【0024】
【化4】

などの脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基から選ばれた一種もしくは二種以上の基を表している。
【0025】
溶融成形性やポリエステルとの親和性などの点から、下記一般式で示されるような、ポリイミド構成成分にエーテル結合を含有するポリエーテルイミドが特に好ましい。ポリエーテルイミド(B)は、イミド基からなるポリイミド構成成分にエーテル結合を含有する樹脂であり、下記一般式で示される。
【0026】
【化5】

(ただし、上記式中R3は、6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族または脂肪族残基、R4は6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族残基、2〜20個の炭素原子を有するアルキレン基、2〜20個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、および2〜8個の炭素原子を有するアルキレン基で連鎖停止されたポリジオルガノシロキサン基からなる群より選択された2価の有機基である。)
上記R3、R4としては、例えば、下記式群に示される芳香族残基を挙げることができる。
【0027】
【化6】

【0028】
本発明では、ポリエステル(A)との親和性、コスト、溶融成形性等の観点から、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とm−フェニレンジアミン、またはp−フェニレンジアミンとの縮合物である、下記式で示される繰り返し単位を有するポリマーが好ましい。
【0029】
【化7】

【0030】
【化8】

(nは2以上の整数、好ましくは20〜50の整数)
このポリエーテルイミドは、"ウルテム"(登録商標)の商品名で、SABICイノベーティブプラスチック社より入手可能であり、「Ultem1000」、「Ultem1010」、「Ultem1040」、「Ultem5000」、「Ultem6000」および「UltemXH6050」シリーズや「Extem XH」および「Extem UH」の登録商標名等で知られているものである。
【0031】
本発明のフィルムは、ポリエステル(A)とポリイミド(B)とを含み、ポリエステル(A)およびポリイミド(B)の総和に対して、ポリエステル(A)が70〜99質量%、ポリイミド(B)が1〜30質量%含有することが好ましい。ポリエステル(A)のさらに好ましい含有量は80〜99質量%であり、特に好ましい範囲は85〜99質量%である。また、ポリイミド(B)のさらに好ましい含有量は1〜20質量%であり、特に好ましい含有量は1〜15質量%である。ポリイミド(B)の含有量が1質量%以上とすることにより、フィルムのガラス転移温度上昇が十分であり、耐熱性、耐湿熱性や寸法安定性により優れたフィルムとすることができる。また、30質量%以下とすることにより、フィルムの製膜性が向上し、また、ポリエステル(A)中のポリイミド(B)の平均分散径を、以下に記載するような本発明の好ましい範囲に制御することが容易になる。さらに本発明のフィルムは、樹脂製分の99%が上記ポリエステル(A)とポリイミド(B)からなることが好ましい。
【0032】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、ポリイミド(B)がポリエステル(A)中で分散相を形成する。ポリエステル(A)中のポリイミド(B)の平均分散径は1〜50nmの範囲であることが好ましい。ポリイミド(B)の平均分散径が上記範囲未満または上記範囲より大きい場合は、本発明のポリエステルフィルムのガラス転移温度(Tg)を十分に上昇させることができず、フィルムに優れた耐熱性、耐湿熱性を付与することができないことがある。ポリイミド(B)の平均分散径は40nm以下であることがより好ましい。さらに好ましくは、30nm以下である。最も好ましくは、20nm以下である。ポリイミド(B)の平均分散径は3nm以上であることがより好ましい。さらに好ましくは5nm以上である。最も好ましくは8nm以上である。ポリイミド(B)の平均分散径は3〜40nmであることがより好ましい。さらに好ましくは5〜30nmである。最も好ましくは8〜20nmである。ポリイミド(B)の平均分散径が上記範囲内であることにより、製膜性がより安定しやすくなる場合がある。
【0033】
ここで、平均分散径とは、複数の観察面において得られる平均の円相当径である。
【0034】
ポリイミド(B)のポリエステル(A)中の平均分散径は、まずフィルムの切断面を透過型電子顕微鏡を用いて、加圧電圧100kVの条件下で観察し、倍率2万倍で写真を撮影する。次に得られた写真をイメ−ジアナライザ−に画像として取り込み、任意の100個の分散相を選択し、必要に応じて画像処理を行うことにより、分散径を求め、その数平均をもって平均分散径とする。
【0035】
より詳細には、平均分散径は次の通り求める。フィルムを(ア)長手方向に平行かつフィルム面に垂直な方向、(イ)幅方向に平行かつフィルム面に垂直な方向、(ウ)フィルム面に対して平行な方向に切断し、サンプルを超薄切片法で作製する。分散相のコントラストを明確にするために、オスミウム酸やルテニウム酸などで染色してもよい。切断面を透過型電子顕微鏡(日立製H−7100FA型)を用いて、加圧電圧100kVの条件下で観察し、倍率2万倍で写真を撮影する。得られた写真をイメ−ジアナライザ−に画像として取り込み、任意の100個の分散相を選択し、必要に応じて画像処理を行うことにより、次に示すようにして分散相の大きさを求める。(ア)の切断面に現れる各分散相のフィルム厚み方向の最大長さ(la)と長手方向の最大長さ(lb)、(イ)の切断面に現れる各分散相のフィルム厚さ方向の最大長さ(lc)と幅方向の最大長さ(ld)、(ウ)の切断面に現れる各分散相のフィルム長手方向の最大長さ(le)と幅方向の最大長さ(lf)を求める。次いで、分散相の形状指数I=(lbの数平均値+leの数平均値)/2、形状指数J=(ldの数平均値+lfの数平均値)/2、形状指数K=(laの数平均値+lcの数平均値)/2とし、分散相の平均分散径を(I+J+K)/3とする。さらに、I,J,Kの中から、最大値を平均長径L、最小値を平均短径Dと決定する。
【0036】
なお、画像解析を行う場合の方法を示す。各試料の透過型電子顕微鏡写真をスキャナーにてコンピューターに取り込んだ。その後、専用ソフト(プラネトロン社製 Image Pro Plus Ver. 4.0)にて画像解析を行った。トーンカーブを操作することにより、明るさとコントラストを調整し、その後ガウスフィルターを用いて得た画像の高コントラスト成分の円相当径のうちをランダムに100点観察し、その平均値を平均分散径とした。ここで、透過型電子顕微鏡写真のネガ写真を使用する場合には、上記スキャナーとして日本サイテックス社製 Leafscan 45 Plug-Inを用い、透過型電子顕微鏡のポジを使用する場合には、上記スキャナーとしてセイコーエプソン製 GT-7600Sを用いるが、そのいずれでも同等の値が得られる。
【0037】
画像処理の手順及びパラメータ:
平坦化1回
コントラスト+30
ガウス1回
コントラスト+30、輝度−10
ガウス1回
平面化フィルター:背景(黒)、オブジェクト幅(20pix)
ガウスフィルター:サイズ(7)、強さ(10)
また、ポリエステル中に形成された分散ドメインのうち、電界放出型電子顕微鏡を用いてエネルギー分散型X線分光法(TEM−EDX法)(energy dispersive X-ray spectroscopy)により、窒素原子(N)が検出されたドメインをポリイミド(B)のドメインとする。
【0038】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの溶融結晶化ピーク温度は200〜240℃である。好ましくは、205〜240℃、さらに好ましくは、210〜230℃である。溶融結晶化ピーク温度が200℃未満であると、本願の効果である高ヤング率と温度膨張係数や湿度膨張係数の大幅な低下を引き起こすことがあり、寸法安定性を制御することが困難となることがある。また、溶融結晶化ピーク温度が240℃を超えると、フィルムの溶融押出工程において結晶化が進行することがあり、ろ圧上昇して粗大異物が発生したり、フィルム破れが発生したりすることがある。例えば、磁気記録媒体用に使用する場合に、電磁変換特性が不良となることがある。溶融結晶化ピーク温度は、ポリエステルの溶融状態から冷却されるシーティングにおいて結晶化しやすさの指標となる。
【0039】
本発明の好ましい溶融結晶化ピーク温度を制御するためには、結晶核剤を0.2〜1質量%含有することが好ましい。さらに好ましい含有量は0.2〜0.7質量%であり、より好ましい含有量は0.3〜0.5質量%である。この結晶核剤の含有量として、0.1質量%未満では溶融結晶化ピークを制御するのに十分ではなく、一方、1質量%を超えると結晶化が進行しすぎて、フィルム延伸性が不良になったり、表面特性が不良となったりすることがある。ここで、結晶核剤とはポリエステルフィルムに用いられる樹脂組成物の溶融結晶化ピークを高温化することで、溶融状態からの結晶化が促進させる効果のある添加剤である。
【0040】
結晶核剤として、例えば、モンタン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩が挙げられる。また、4−第三ブチル安息香酸アルミニウム塩、アジピン酸ナトリウムなどのカルボン酸金属塩、ナトリウムビス(4−第三ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム−2,2'−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスフェートなどの酸性リン酸エステル金属塩、ジベンジルソルビトール、ビス(4−メチルベンジリデン)ソルビドールなどの多価アルコール誘導体なども好ましく例示される。本発明のポリエステルに適用する場合、中でも、モンタン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩が好ましく、特に、モンタン酸ナトリウムが相溶性や本発明の効果を発現する上で好ましい。
【0041】
ポリイミドを含有しないポリエステルでは、結晶核剤を含むことで未延伸シーティング工程で溶融結晶化が起こりやすくなり、それとともに延伸工程で配向結晶化も起こるため、延伸工程で過度に結晶化が進みすぎてフィルム破れが生じたり、高倍率延伸による高ヤング率化や寸法安定性向上が困難である場合がある。本発明の二軸配向ポリエステルフィルムにおいては、結晶核剤が延伸工程で配向結晶化を抑制して効果的に分子鎖配向を高める効果を奏する。つまり、本発明のポリイミドを含有するポリエステルでは、未延伸シートから延伸倍率が2倍程度までの低倍率領域では結晶化度が高くなりやすいが、それ以上の高倍率延伸領域において、ポリイミドを添加しない場合と比べて延伸における配向結晶化が抑制される傾向にある。したがって、配向結晶化が進むのを抑制しながら非晶分子鎖の緊張を高めやすく、温度膨張係数や湿度膨張係数のような分子鎖緊張に依存する特性を制御することができる。
【0042】
本発明のポリエステルフィルムは、25℃、相対湿度60%、24時間後の含水率が0.7重量%以下であるが、0.59重量%以下であることが好ましい。このような範囲とすることにより、耐加水分解性をより向上させることができる。
本発明において、ポリエステルフィルムの含水率を低下させる方法としては、公知の方法を採用できる。例えば、イミド化率を上げること、二軸延伸を行って分子鎖を配向させること、ポリイミドの合成時に疎水性のモノマーを共重合させること、疎水性の低分子剤を添加すること等が挙げる。これらの中でも、イミド化率を上げることおよび/または二軸延伸を行って分子鎖を配向させることが、コストの観点から好ましい。
【0043】
本発明のポリエステルフィルムは、温度85℃、相対湿度85%の雰囲気下で保存した場合において、保存後の破断伸度が保存前の破断伸度に対して50%となる保存時間が、3500時間以上であることが好ましい。このような範囲とすることにより、太陽電池用シートとして用いた場合に、十分な効果を発揮する。
本発明のポリエステルフィルムの厚みは、二軸延伸後、50〜300μmであることが好ましい。
【0044】
本発明のポリエステルフィルムは、可視光の全光線透過率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上である。本発明のポリエステルフィルムの可視光の全光線透過率を、80%以上に制御するには、上述した添加物の添加量は5質量%未満にすることが好ましい。
【0045】
該可視光の全光線透過率が80%未満では太陽光を電気に変換する率(以下、電換効率と略称する場合がある)が低下しがちであり好ましくない。ここでいう可視光とは、人間の目に感じる電磁波であって、波長が大体350〜800nmの光線であり、太陽電池モジュールの電換効率上最も重要な光線である。なお、本発明における「可視光の全光線透過率」とは、波長550nmの光の透過率であってJIS K7105−1981に基づいて測定される値である。
【0046】
また、本発明にかかるポリエステルフィルムは同種または別のポリマー層が2層以上積層した構成であってもよい。また紫外線吸収剤や加水分解防止剤等が塗布や積層されていること、あるいは添加されていることは好ましい。
【0047】
本発明においては、上記ポリエステルフィルムの長手方向と幅方向の150℃での熱収縮率がいずれも(0±2)%以内であることが重要であり、好ましくは(0±1.7)%以内、さらに好ましくは(0±1.5)%以内であり、かつ長手方向と幅方向の150℃での熱収縮率値の差が2%以下、好ましくは1.5%以下であるポリエステルフィルムを用いることが重要なものである。
【0048】
ここで、「長手方向と幅方向の150℃での熱収縮率値の差(%)」とは、長手方向と幅方向の150℃での熱収縮率値(%)の差を求めて、その絶対値で示される値である。
【0049】
すなわち、ポリエステルフィルムをできるだけ低熱収縮化し、かつその長手方向と幅方向の熱収縮率値をできるだけバランスさせたものを使用することによって、本発明の目的である本発明のポリエステルフィルムの長時間使用後のガスバリア性の低下を抑え、太陽電池モジュールの経時による出力低下を改善させることができる。
【0050】
ここで、熱収縮率とはJIS C2151−1990に基づいて測定した150℃、30分間の収縮処理をして得られる値であり、収縮方向をプラスで、膨張方向をマイナスで表示したものである。
【0051】
この長手方向または幅方向の熱収縮率値のいずれかが、(0±2)%以内の範囲を外れると、ガスバリア性能の低下が大きくなり、太陽電池モジュールの経時による出力低下が許容範囲を外れ、本発明の効果を所望どおりに得ることが難しくなる。上記ポリエステルフィルムの長手方向と幅方向の150℃での熱収縮率値のいずれか一つが、(0±2)%以内を外れるようなものであれば、ガスバリア層などの皮膜層と、太陽電池素子を充填固定する充填接着樹脂層の間でポリエステルフィルムが、設置環境下での温度変化により、収縮、膨張の大きな寸法変化を繰り返し、封止フィルム全体にガスバリア性能をもたらした硬い上記金属などの被膜層に、大きな応力を繰り返し与えることとなる。その結果、ガスバリア層などの皮膜層に、亀裂や剥離等が発生して水蒸気のバリア性が低下してしまうためと考えられる。
さらにまた、長手方向と幅方向の熱収縮率値の差が2%を越えるようなポリエステルフィルムを使用した場合でも、同様の問題が発生し、本発明の所期の効果を得ることができなくなる。従って、この二つの要件を同時に満足することが、本発明において重要な要件である。
本発明のポリエステルフィルムが保有する上述のガスバリア性能は、ガスバリア層などの皮膜層によって実現されている。
【0052】
本発明のポリエステルフィルムは、好ましくは、ガスバリア層の付与により、数値的には、該本発明のポリエステルフィルム全体が、水蒸気透過率2.0g/m2 /24hr/0.1mm以下を示すガスバリア性を実現させることができる。すなわち、もし、本発明のポリエステルフィルムからガスバリア層を除去すれば、該水蒸気透過率値は上記の値よりも数倍〜数10倍も大きなものであり、封止フィルムの機能を果たすことはできない。なお、本発明者らの各種知見によれば、金属などの皮膜層を設けていない一般のポリエステルフィルムにあっては、通常、水蒸気透過率は7.2g/m2 /24hr/0.1mm程度である。
【0053】
そして、上述の本発明のポリエステルフィルムの水蒸気透過率の値は、強制的なエージング処理を行う以前の、いわば初期的な性能で示したものであるが、この性能は、さらに本発明のポリエステルフィルムを後述する特定のエージング処理に供した後においても、高い水蒸気透過率値で維持されるものである。
そのメカニズムは、上述のように特定のポリエステルフィルムを使用していることによりもたらされている。
【0054】
具体的性能として、本発明のポリエステルフィルムは、好ましくは、後述するエージング処理に供された後において、水蒸気透過率5.0g/m2 /24hr/0.1mm未満を示すという優れたエージング後のガスバリア性能を有するものである。
【0055】
本発明のポリエステルフィルムにおけるガスバリア性能は、酸素透過性能や水蒸気透過性能と対応する性能であるが、それらの中でより重要なのは、水蒸気バリア性能の方であって、特に、水蒸気透過性能によって本発明のポリエステルフィルムを評価することが最適である。上述した水蒸気透過率は、JIS Z0208−1973に基づいて測定した水蒸気透過率の初期値(エージング前の値)と、エージング処理後において同様の測定をした値であり、これら値で評価をするのが、初期性能レベルと、経時性能の変化レベルの両者を知ることができるので最適なのである。
【0056】
上記したような本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、たとえば次のように製造される。
本発明では、ポリエステルとポリイミドを混合する前に、ポリイミドのイミド化を行う。イミド化の方法としては、ポリイミドを180℃〜240℃で10時間以上加熱してイミド化する方法が好ましく採用される。通常は、ポリイミドをペレットの状態で加熱して、イミド化する。イミド化のための温度は、190℃〜240℃が好ましく、195〜220℃がさらに好ましい。また、加熱時間は、15時間以上が好ましく、20時間以上がより好ましく、30時間以上がさらに好ましく、45時間以上が特に好ましい。上限値は特に定めるものではないが、通常、100時間以下であり、より好ましくは70時間以下である。
ポリイミド化は、好ましくは、真空中または窒素気流下で行う。
【0057】
本発明では、通常、ポリイミドを、イミド化した後、ポリエステルと混合しても良いし、ポリエステルと混合した後にポリイミド化してもよい。
本発明において、例えば、ポリエステルとポリイミドとを混合する方法としては、溶融押出前に、ポリエステルとポリイミドの混合物を予備溶融混練(ペレタイズ)してマスターチップ化する方法や、溶融押出時に混合して溶融混練させる方法などがある。中でも、二軸押出機などのせん断応力のかかる高せん断混合機を用いて予備混練してマスターチップ化する方法などが好ましく例示される。その場合、通常の一軸押出機に該混合されたマスターチップ原料を投入して溶融製膜してもよいし、高せん断を付加した状態でマスターチップ化せずに直接にシーティングしてもよい。二軸押出機で混合する場合、分散不良物を低減させる観点から、3条二軸タイプまたは2条二軸タイプのスクリューを装備したものが好ましい。また、ポリエステルとポリイミドとを混合する場合、溶融粘度の差があるため、ポリイミド樹脂を高濃度に混合したマスターチップを作製することが好ましい。
【0058】
混練部ではポリエステル樹脂の融点+10〜65℃の温度範囲が好ましい。さらに好ましい温度範囲はポリエステル樹脂の融点+15〜55℃であり、より好ましい温度範囲はポリエステル樹脂の融点+20〜45℃である。混練部の温度範囲を好ましい範囲にすることは、せん断応力を高めやすく、分散不良物の低減に寄与する。そのときの滞留時間は1〜5分の範囲が好ましい。また、スクリュー回転数を100〜500回転/分とすることが好ましく、さらに好ましくは200〜400回転/分の範囲である。スクリュー回転数を好ましい範囲に設定することでも、高いせん断応力が付加され易く、分散不良物を低減しやすくなる。また、二軸押出機の(スクリュー軸長さ/スクリュー軸径)の比率は20〜60の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは30〜50の範囲である。
さらに、二軸スクリューにおいて、混練力を高めるためにニーディングパドルなどによる混練部を設けることが好ましく、その混練部を好ましくは2箇所以上、さらに好ましくは3箇所以上設けたスクリュー形状にするとよい。この際、原料の混合順序には特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後単軸あるいは2軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。また、プラスチック成形加工学会誌「成形加工」第15巻第6号、382〜385頁(2003年)に記載された超臨界流体を利用する方法なども好ましく例示することができる。
【0059】
フィルム化する場合、通常の一軸押出機に該混合されたマスターチップ原料を投入して溶融製膜してもよいし、高せん断を付加した状態でマスターチップ化せずに直接にシーティングしてもよい。
【0060】
二軸配向ポリエステルフィルムを製造するには、たとえばポリエステルのペレットを、押出機を用いて溶融し、口金から吐出した後、冷却固化してシート状に成形する。このとき、繊維焼結ステンレス金属フィルターによりポリマーを濾過することが、ポリマー中の未溶融物を除去するために好ましい。
【0061】
本発明のポリエステルフィルムは、光安定化剤を含有することが好ましい。光安定化剤を含有することで、紫外線劣化を防ぐことができる。光安定化剤とは、紫外線などの光線を吸収して熱エネルギーに変換する化合物、フィルム等が光吸収して分解して発生したラジカルを捕捉し、分解連鎖反応を抑制する材料などが挙げられる。
【0062】
光安定化剤として好ましくは、紫外線などの光線を吸収して熱エネルギーに変換する化合物である。このような光安定化剤をフィルム中に含有することで、長期間継続的に紫外線の照射を受けても、フィルムによる部分放電電圧の向上効果を長期間高く保つことが可能になったり、フィルムの紫外線による色調変化、強度劣化等が防止される。例えば紫外線吸収剤は、ポリエステルの他の特性が損なわれない範囲であれば、有機系紫外線吸収剤、無機系紫外線吸収剤、及びこれらの併用のいずれも、特に限定されることなく好適に用いることができる。一方、紫外線吸収剤は、耐湿熱性に優れ、フィルム中に均一分散できることが望まれる。
【0063】
前記紫外線吸収剤の例としては、有機系の紫外線吸収剤として、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系等の紫外線安定剤などが挙げられる。具体的には、例えば、サリチル酸系のp−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、ベンゾフェノン系の2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン、ベンゾトリアゾール系の2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2Hベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、シアノアクリレート系のエチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート)、トリアジン系として2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、ヒンダードアミン系のビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、そのほかに、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、及び2,4−ジ・tert−ブチルフェニル−3’,5’−ジ・tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、などが挙げられる。
これらの紫外線吸収剤のうち、繰り返し紫外線吸収に対する耐性が高いという点で、トリアジン系紫外線吸収剤がより好ましい。なお、これらの紫外線吸収剤は、上述の紫外線吸収剤単体でフィルムに添加してもよいし、有機系導電性材料や、非水溶性樹脂に紫外線吸収剤能を有するモノマーを共重合させた形態で導入してもよい。
【0064】
光安定化剤のポリエステルフィルム中における含有量は、ポリエステルフィルムの全質量に対して、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、より好ましくは0.3質量%以上7質量%以下であり、さらに好ましくは0.7質量%以上4質量%以下である。これにより、長期経時での光劣化によるポリエステルの分子量低下を抑止でき、その結果発生するフィルム内の凝集破壊に起因する密着力低下を抑止できる。
【0065】
更に、本発明のポリエステルフィルムは、前記光安定化剤の他にも、例えば、易滑剤(微粒子)、紫外線吸収剤、着色剤、熱安定剤、核剤(結晶化剤)、難燃化剤などを添加剤として含有することができる。
【0066】
続いて、上記シートを長手方向と幅方向の二軸に延伸して、熱処理する。延伸工程は、各方向において2段階以上に分けることが好ましい。すなわち再縦、再横延伸を行う方法が高密度記録の磁気テープとして最適な高強度のフィルムが得られ易いために好ましい。
【0067】
延伸形式としては、長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行うなどの逐次二軸延伸法や、同時二軸テンター等を用いて長手方向と幅方向を同時に延伸する同時二軸延伸法、さらに、逐次二軸延伸法と同時二軸延伸法を組み合わせた方法などが包含される。
【0068】
本発明では、特に同時二軸延伸法を用いることが好ましい。本発明では、結晶核剤を含むポリエステルとポリイミドの組成物からなる未延伸フィルムにおいて、通常のポリエステルフィルムより結晶化を高めているため、逐次二軸延伸では最初の長手方向または横方向の延伸において結晶化が進みやすく、その次の延伸工程における延伸、および結果的にトータルの延伸倍率として高倍率化、高配向化が困難になることがある。同時二軸延伸では、長手方向と幅方向に一気に配向結晶化と分子配向が進みやすくなるため好ましい。さらに、逐次二軸延伸法に比べて同時二軸延伸法は、製膜工程で長手方向、幅方向に結晶が均一に成長するため、安定して高倍率に延伸しやすい。なお、ここでいう同時二軸延伸とは、長手方向と幅方向の延伸が同時に行われる工程を含む延伸方式である。必ずしも、すべての区間で長手方向と幅方向が同時に延伸されている必要はなく、長手方向の延伸が先にはじまり、その途中から幅方向にも延伸を行い(同時延伸)、長手方向の延伸が先に終了し、残りを幅方向のみ延伸するような方式でもよい。延伸装置としては、例えば同時二軸延伸テンターなどが好ましく例示され、中でもリニアモータ駆動式の同時二軸テンターが破れなくフィルムを延伸する方法として特に好ましい。
【0069】
延伸工程後の熱処理は、1段階で実施してもよいが、温度膨張係数や湿度膨張係数を本発明の範囲に制御するには、過度な熱処理による分子鎖配向の緩和を起こさず、効果的に熱処理を施すことが望ましいので、熱処理温度を制御して多段階で実施することが好ましい。多段階とは、熱処理温度を変更して2段階以上で実施することである。
【0070】
熱処理温度はポリエステルの融点を目安にして決定することができる。熱処理温度は、[ポリエステル(A)の融点(Tm)−100]〜(Tm−50)℃が好ましく、熱処理時間は0.5〜10秒の範囲で行うのが好ましい。特に、1段目の熱処理温度を好ましくは(Tm−75)〜(Tm−50)℃、さらに好ましくは(Tm−75)〜(Tm−60)℃に設定して、2段目の熱処理温度を1段目より低温に設定するとよい。好ましくは(Tm−100)〜(Tm−75)℃、さらに好ましくは(Tm−100)〜(Tm−85)℃に設定する。さらに、1段目または/および2段目の熱処理工程において幅方向に1〜5%の弛緩率で弛緩処理するとさらに好ましい。
【0071】
そして、このようにして製造されたポリエステルフィルムはロールに巻き取られる。さらに、本発明の効果である寸法安定性や保存安定性を高めるために、巻き取られたフィルムをロールごと一定の温度条件下で熱処理することも好ましい。一定の温度条件下とは、ある温度条件に設定された熱風オーブンやゾーンにフィルムをロールごと設置することである。フィルムをロールのまま熱処理することで、フィルムの内部構造のひずみが除去されやすく、クリープ特性等の寸法安定性が改良されやすい。例えば、フィルムを巻き取って保存したり、磁気テープなどの磁気記録媒体用に使用された場合にテープに巻き取った状態で保存したり、テープを走行させて使用したりするときには、フィルムの長手方向に張力が付加され、長手方向にクリープ変形などを起こすことがあるが、クリープ特性等の寸法安定性が改良されると、保存安定性が格段に向上しやすい。
【0072】
なお、本発明においては、ポリエステルフィルムやそのポリエステルフィルムに、必要に応じて、熱処理、マイクロ波加熱、成形、表面処理、ラミネート、コーティング、印刷、エンボス加工、エッチング、などの任意の加工を行ってもよい。
その他、本発明のポリエステルフィルムの製造方法の詳細は、特開2009−221278号公報の段落番号0075〜0088の記載を採用できる。
【0073】
本発明のポリエステルフィルムは、好ましくは、太陽電池モジュール用封止フィルムとして用いることができる。本発明における太陽電池モジュールとは太陽光を電気に変換するシステムをいい、そのモジュール構造の一例を図1に示す。すなわち、図1は、本発明の太陽電池モジュールの基本構成の一例を示した概略断面図であり、1は太陽光の入射側(表面)に存在するものであって本発明のポリエステルフィルムからなるフロントシート層であり、2は充填接着樹脂層、3は太陽電池素子、4は太陽光の非入射側(裏面)に存在するものであって本発明のポリエステルフィルムからなるバックシート層である。このように、太陽光が入射する側からフロントシート層1、充填接着樹脂層2(表側)、太陽電池素子3、充填接着樹脂層2(裏側)、バックシート層4が基本構成であり、かかる太陽電池モジュールは、住宅の屋根に組み込まれたりして使用され、あるいは、ビルや塀に設置されるものや電子部品に用いられるものがある。また、該太陽電池モジュールは、採光型やシースルー型等と呼ばれる光を透過し、窓や高速道路、鉄道等の防音壁にも用いられるものもある。また、柔軟性のあるタイプも実用化されている。
【0074】
ここで、フロントシート層1とは、太陽光を効率良く入射させ、かつ内部の太陽電池素子を保護する目的で設けられる層である。充填接着樹脂層は、フロントシートとバックシートの間に太陽電池素子を収納、封止するための接着、充填を目的とした層で、耐候性、耐水性(耐加水分解性)、透明性、接着性等が要求される。好適な例としては、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂(以下、EVAと略称する場合がある)、ポリビニルブチラール、エチレン酢酸ビニル部分酸化物、シリコン樹脂、エステル系樹脂、オレフィン系樹脂等が用いられるが、EVAが最も一般的である。また、バックシート層は太陽電池モジュールの裏面側の太陽電池素子を保護することを目的として使用されるもので、水蒸気の遮断性、絶縁性を有し、さらに良好な機械特性等も要求される。さらに、フロントシート側から入射した太陽光を反射し該太陽光を再利用する白色タイプや、意匠性等を考慮して黒色等の着色を施したり、バックシート側からも太陽光を入射できる透明タイプなどもあるが、本発明はこれら全てに使用することができるものである。ここで、透明タイプは、全光線透過率が好ましくは80%以上であること、より好ましくは85%以上であることが、太陽光の入射量を大きくできて、採光型やシースルー型の太陽電池へ採用する上で好ましいものである。
封止フィルムに付与するガスバリア層は、先に製造した本発明にかかるポリエステルフィルムの少なくとも片面に設けることが好ましい。また、ガスバリア層は、無機層のみからなっていてもよいが、有機層と無機層を交互に積層した有機無機積層型のガスバリア層を設けることが好ましい。有機無機積層型ガスバリア層は、例えば、特開2009−076436号公報の記載、特に、段落番号0015〜0040の記載を参酌できる。
【0075】
また、本発明にかかる封止フィルムの別なる実施形態として、上記で製造した封止フィルムの少なくとも片面(少なくとも太陽光の入射面)に、耐候性フィルムとして、例えば、フッ素系フィルムを積層する。積層方法は、前述の別のフィルムにガスバリア層を設けて、それを本発明にかかるポリエステルフィルムに積層する方法と同様の方法を用いることができる。つまり、本発明にかかるポリエステルフィルムの少なくとも片面に、接着剤を介して、耐候性フィルムを積層することができる。この場合、接着剤は紫外線吸収剤を含有するもので透明性の高いものが好ましい。接着剤はウレタン系、アクリル系、エポキシ系、エステル系、フッ素系等が使用できる。また接着剤層の厚さは1〜30μmの範囲が接着力と透明性の点で好ましい。また該フッ素系フィルムに易接着処理が施されていることはむしろ好ましい。
【0076】
次に、本発明にかかる太陽電池モジュールの製造方法について説明する。例えば、図1に示す構成でシステム化する。例えば、フロントシート層1に透明な板ガラスを準備し、バックシート層4には上記で得た封止フィルムを準備する。太陽電池素子3の両側を充填接着樹脂層2(例えば厚さ100〜1000 μmのEVA)を介して上記のフロントシート層1、封止フィルム(好ましくは、金属などの被膜層(ガスバリア層)を接着側にして)を積層することによって製造することができる。
【0077】
また、本発明では軽量化の目的で、前述の構成でフロント層に封止フィルムを用いることもできる。
【0078】
ここで、積層方法は、従来から知られている各種の方法を用いることができるが、真空ラミネートが、皺、気泡等の欠陥が発生しにくく、かつ均等に積層できるので好ましい。ラミネート温度は通常100〜180℃の範囲とするのがよい。
【0079】
さらに、電気を取り出せるリード線を付与して外装材で固定して、太陽電池モジュールを製造することができる。
【実施例】
【0080】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0081】
テレフタル酸ジメチル194質量部とエチレングリコール124質量部とをエステル交換反応装置に仕込み、内容物を140℃に加熱して溶解した。その後、内容物を撹拌しながら酢酸マグネシウム四水和物0.3質量部および三酸化アンチモン0.05質量部を加え、140〜230℃でメタノールを留出しつつエステル交換反応を行った。次いで、リン酸トリメチルの5質量%エチレングリコール溶液を1質量部(リン酸トリメチルとして0.05質量部)添加した。
【0082】
トリメチルリン酸のエチレングリコール溶液を添加すると反応内容物の温度が低下する。そこで余剰のエチレングリコールを留出させながら反応内容物の温度が230℃に復帰するまで撹拌を継続した。このようにしてエステル交換反応装置内の反応内容物の温度が230℃に達した後、反応内容物を重合装置へ移行した。
【0083】
移行後、反応系を230℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を0.1kPaまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。最終温度、最終圧力に到達した後、2時間(重合を始めて3時間)反応させたところ、重合装置の撹拌トルクが所定の値(重合装置の仕様によって具体的な値は異なるが、本重合装置にて固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレートが示す値を所定の値とした)を示した。そこで反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングして固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレートのPETペレット(X)を得た。
【0084】
SABICイノベーティブプラスチック社製のポリエーテルイミド"Ultem1010"のペレットは、真空下で、下記表に示す時間加熱処理を行った。
【0085】
温度290℃に加熱されたニーディングパドル混練部を3箇所設けた同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に、得られたPETペレット(X)と上記加熱処理を行ったポリエーテルイミドペレットを表1に記載の配合割合で、供給し、スクリュー回転数300回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてブレンドチップ(I)を作製した。
【0086】
295℃に加熱された押出機を用い、ブレンドチップ(I)を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。なお、未延伸フィルムのガラス転移温度(Tg)は90℃であった。
【0087】
この未延伸フィルムを、リニアモータ式クリップを有する同時二軸テンターを用いて、二軸延伸した。長手方向および幅方向に同時に、温度105℃、延伸速度6,000%/分で3.1倍×3.1倍延伸し、70℃まで冷却した。続いて、温度180℃で長手方向および幅方向に同時に1.4×1.7倍に再延伸した。その後、温度200℃で5秒間熱処理後、温度160℃で幅方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを作製した。なお、二軸延伸フィルムのガラス転移温度(Tg)は115℃であり、融点(Tm)は255℃であった。
【0088】
また、ポリイミドを、Ultem1010から、三井化学社製の熱可塑性ポリイミド、オーラムPL450Cに変更した以外は、実施例5と同様にしてフィルムを製膜した(実施例13)。
【0089】
得られたフィルムについて、イミド化率、ポリエステル末端COOH濃度、含水率、破断伸度の半減期、保存安定性をそれぞれ、測定した。
【0090】
(フィルム中のポリイミド化率の測定方法)
イミド化率は、プロトンNMRにて次のように測定した。サンプル20mgをNMRサンプル管に入れ、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d6、0.05%TMS混合品)0.53mlを添加し、完全に溶解させた。この溶液を、日本電子製NMR測定器(ECA500)にて500MHzのプロトンNMRを測定した。イミド化率は、イミド化前後で変化しない構造に有来するプロトンを決め、このプロトンのピーク積算値と、9.5−10.0ppm付近に現れるアミック酸のNH基に由来するプロトンピーク積算値とを用いて、その比率から求めた。
単位は、mol%で示した。
【0091】
(フィルム中のポリエステル末端COOH濃度の測定方法)
ポリエステル末端COOH濃度は、特開2001−201471号公報の方法を参酌して、プロトンNMRにて測定した。
単位は、eq/tonで示した。
【0092】
(フィルムの含水率の測定方法)
フィルムの含水率は、7mm×35mmの大きさに切断したフィルムを、温度25℃、湿度60%RHの雰囲気にて24時間以上保持し、その湿度における平衡状態になった後、水分測定器、試料乾燥装置(CA−03、VA−05、共に三菱化学(株))にて、カールフィッシャー法で測定し、水分量(g)を試料質量(g)で除して算出した。
単位は、重量%で示した。
【0093】
(フィルムの破断伸度の半減期の測定方法)
破断伸度保持率半減期は、得られたポリエステルフィルムに対して、85℃、相対湿度85%の条件で保存処理(加熱処理)を行ない、保存後のポリエステルフィルムが示す破断伸度[%]が、保存前のポリエステルフィルムが示す破断伸度[%]に対して50%となる保存時間(破断伸度保持時間)を測定することにより評価した。
破断伸度(%)は、ポリエステルフィルムから、1cm×20cmの大きさのサンプル片を切り出し、このサンプル片をチャック間5cm、20%/分にて引っ張って求めた。
破断伸度保持率半減期が長い程、ポリエステル樹脂組成物及びこれを用いて得られたポリエステルフィルムの耐加水分解性に優れていることを示す。
単位は、時間で示した。
【0094】
(寸法安定性)
次の2つの条件でそれぞれ幅寸法(lC、lD)を測定し、次式にて寸法変化率を算出した。次の基準で寸法安定性を評価した。23℃65%RHで24時間経過後lCを測定して、40℃20%RHの環境下で10日間カートリッジを保管後、23℃65%RHで24時間経過後にlDを測定する。フィルムの長手方向の端から30m地点から切り出したサンプル、100m地点から切り出したサンプル、170m地点から切り出したサンプルの3点を測定した。×を不合格とする。
【0095】
幅寸法変化率(ppm)=106×(|lC−lD|/lC
○:幅寸法変化率の最大値が100(ppm)未満
△:幅寸法変化率の最大値が100(ppm)以上150(ppm)未満
×:幅寸法変化率の最大値が150(ppm)以上
【0096】
これらの結果を下記表に示した。
【0097】
【表1】

【0098】
上記結果から明らかなとおり、ポリエステルとポリイミドを含むポリエステルフィルムであって、イミド化率が95%以上のもののみが、優れた寸法安定性に加えて、破断伸度の半減期が長いポリエステルフィルムが得られることがわかった。特に、破断伸度の半減期は、イミド化率が94%の場合(比較例2)が2500時間であるのに対し、イミド化率が95%(実施例1)になると、3500時間と、1000時間も長くなる。これは、太陽電池のような長期に屋外で使用される素子に用いる場合に、極めて有益なものとなる。また、イミド化率を95%以上としても、ポリイミドとポリエステルの配合比が本発明の範囲外となる場合(比較例4)、破断伸度の半減期が2500時間と劣ることが分かった。さらに、実施例13の結果からの明らかなとおり、ポリイミドの種類に関わらず、本発明の効果を奏することが確認された。
【0099】
太陽電池モジュールの製造
上記で得られたポリエステルフィルムの片面に6000J/m2 のコロナ放電処理を施した。一方、別に12μm厚さのPET−BO(東レ製"ルミラー"P11)を準備し、該フィルムの片面に酸化アルミニウムをスパッタリング法で600オングストロームの厚さに形成させた。
【0100】
このスパッタリングフィルムのスパッタ面に2液型ウレタン系の接着剤("アドコート"76P1:東洋モートン社製)を塗布し、PET−BO−1のコロナ処理面に積層した。ここで、接着剤は、主剤100質量部に対し硬化剤1質量部の割合で混合し、酢酸エチルで20質量%の溶液になるよう調整した。塗布方法はグラビアロール法を用い、塗布厚みが3μmになるよう調整した。乾燥温度は100℃とした。積層は加熱プレスロール方式で行い、温度60℃、圧力1kg/cm(線圧)とした。さらに接着剤を60℃で3日間硬化せしめた。得られた封止フィルムの全光線透過率は88%であった。また、水蒸気透過率(未エージング処理品)は0.3g/m2 /24hr/0.1mmであった。
上記フィルムを用いて太陽電池モジュールを製造した。フロントシート層として、4mm厚さの、一般に白板ガラスとよばれるフラットガラス(旭ガラス製:フロート板ガラス)を準備した。上記の皮膜層(ガスバリア性能の付与層)側に400μm厚さのEVAシート/太陽電池素子(結合膜で結合されたPIN型太陽素子)/400μm厚さのEVAシート/ガラス板を電気的なリード線を取って、真空ラミネート方式で熱圧着した。該ラミネート温度は135℃であった。
得られた太陽電池モジュール用封止フィルムと、該封止フィルムを用いた太陽電池モジュールについて、ガスバリア性能(エージング後)、耐加水分解性、耐候性について、以下の方法に従って、評価した。
【0101】
(エージング後の水蒸気透過率)
30cm角の封止フィルムの四方を厚さ2mmの金属板で両面を挟み込むよう固定し、該四方に1kgの加重をかけ一定テンションをかけた。この状態で、85℃×93%RHの雰囲気に2000時間エージングした。このエージング前後の水蒸気透過率をJIS Z0208−1973に基づいて測定した。測定条件は温度40℃、湿度90%RHとした。
【0102】
初期の水蒸気透過率を、ガスバリア層に水酸化アルミニウムを用い、膜厚を600オングストロームになるようスパッタリングで形成することによって、0.5g/m2 /24hr/0.1mm以下に制御したときに、上記エージング処理後の該透過率を測定して評価した。各実施例・比較例について試料のn数は3とし、平均値を各実施例・比較例のエージング後の水蒸気透過率とした。
【0103】
評価基準は、以下の通りの3段階とし、表中では、「優れている」を「○」印、「普通」を「△」印、「劣る」を「×」印で、それぞれ表記した。
・優れている(○印):水蒸気透過率が5g/m2 /24hr/0.1mm未満。
・普通(△印):水蒸気透過率が5g/m2 /24hr/0.1mm以上、6.25/m2 /24hr/0.1mm未満。
・劣る(×印):水蒸気透過率が6.25g/m2 /24hr/0.1mm以上。
【0104】
(耐加水分解性)
80mm×200mmのサイズの封止フィルムに、引張強度が測定できるよう予め10mm幅(150mm長)の切り込みを入れた。この封止フィルムを、恒温恒湿槽の中に入れて、85℃×93%RHの雰囲気で2000時間エージングした。該エージング前後の破断強度をJIS C2151に基づいて測定した。
エージングなしの破断強度を100%としたときの比率(保持率)で比較評価した。
評価基準は、以下の通りの3段階とし、表中では、「優れている」を「○」印、「普通」を「△」印、「劣る」を「×」印で、それぞれ表記した。
・優れている(○印):保持率が30%以上。
・普通(△印):保持率が24%以上、30%未満。
・劣る(×印):保持率が24%未満。
【0105】
(耐候性)
促進試験機アイスーパーUWテスターを用い、下記のサイクルを5サイクル行い、上記引張試験の方法で保持率を求め比較評価した。1サイクル:温度60℃、湿度50%RHの雰囲気で8時間紫外線照射した後、結露状態(温度35℃、湿度100%RH)に4時間エージングした。評価基準は、以下の通りの3段階とし、表中では、「優れている」を「○」印、「普通」を「△」印、「劣る」を「×」印で、それぞれ表記した。
・優れている(○印):保持率が30%以上。
・普通(△印):保持率が24%以上、30%未満。
・劣る(×印):保持率が24%未満。
【0106】
(太陽電池モジュールの出力評価)
JIS C8917−1998に基づいて、太陽電池モジュールの環境試験を行い、試験前後の光起電力の出力を測定し、下記の出力低下率(%)で示した。
・(試験前の光起電力値−試験後の光起電力値)/試験前の光起電力値×100(%)
評価は、「合格」と「不合格」の2段階評価とし、出力低下値が10%以下のものを「合格」と判定した。
【0107】
【表2】

【0108】
上記結果から明らかなとおり、ポリエステルとポリイミドを含むポリエステルフィルムであって、イミド化率が95%以上のものを用いた封止フィルムは、ガスバリア性(水蒸気透過率)、耐加水分解性および耐候性に優れており、太陽電池用のシートとして好適に用いられることが分かった。また、本発明の封止フィルムを用いた太陽電池モジュールの出力評価は何れも合格であった。
【符号の説明】
【0109】
1:フロントシート層
2:充填接着樹脂層
3:太陽電池素子
4:バックシート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル(A)を70〜99質量部とポリイミド(B)1〜30質量部を含む二軸配向ポリエステルフィルムであって、前記ポリイミド(B)のイミド化率が95%以上であり、該ポリエステルフィルムの25℃、相対湿度60%、24時間後の含水率が0.7重量%以下であるポリエステルフィルム。
【請求項2】
イミド化率が97%以上である、請求項1に記載のポリエステルフィルム。
【請求項3】
イミド化率が99%以上である、請求項1に記載のポリエステルフィルム。
【請求項4】
ポリイミド(B)がポリエーテルイミドである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
【請求項5】
前記ポリエステルフィルムを構成する樹脂の70〜99重量%がポリエステル(A)であり、1〜30重量%がポリイミド(B)である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
【請求項6】
前記ポリエステルフィルムを構成する樹脂の80〜99重量%がポリエステル(A)であり、1〜20重量%がポリイミド(B)である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
【請求項7】
前記ポリエステル(A)がポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、および、これらの変性体、ならびにこれらの共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーを含んでいる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
【請求項8】
前記ポリエステル(A)の末端COOH濃度が、25(eq/ton)以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
【請求項9】
ポリエステルフィルムの25℃、相対湿度60%、24時間後の含水率が0.59重量%以下である請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
【請求項10】
ポリイミド(B)のペレットを180℃〜240℃で10時間以上加熱してイミド化したものを製膜してなる、請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
【請求項11】
温度85℃、相対湿度85%の雰囲気下で保存した場合において、保存後の破断伸度が保存前の破断伸度に対して50%となる保存時間が、3500時間以上であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
【請求項12】
太陽電池用ポリエステルフィルムである、請求項1〜11のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムの表面に、ガスバリア層を有する封止フィルム。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムまたは請求項13に記載の封止フィルムを備えた太陽電池モジュール。
【請求項15】
ポリエステル(A)を70〜99質量部、ポリイミド(B)1〜30質量部の割合で含んだ二軸配向ポリエステルフィルムを製造する方法において、前記ポリイミド(B)を、180℃〜240℃、10〜50時間、熱処理することを含むポリエステルフィルムの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−256254(P2011−256254A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131006(P2010−131006)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】