説明

ポリエステルフィルム

【課題】耐加水分解性と密着性に優れた太陽電池バックシート用ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】ポリエステルを主成分とする第一の層と、該第一の層に隣接してポリエステルを主成分とする第二の層を設け、二軸延伸配向させたフィルムであって、厚みが50〜400μmである太陽電池バックシート用ポリエステルフィルムにおいて、それぞれの層の固有粘度と末端カルボキシル基濃度を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池バックシート用ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代のエネルギー源として太陽電池が注目を浴びるようになり、電気電子部品を始め大きいものでは建築分野まで開発が進められている。特に屋外で使用される太陽電池の場合、構成部品の一つに用いられる太陽電池バックシート用フィルムにおいては、自然環境に対する耐久性(特に、耐加水分解)が強く要求される。さらに、かかる太陽電池バックシートには、太陽電池から剥がれない高い密着性が要求される。
【0003】
ここで、引用文献1および2には、耐加水分解性に優れたポリエステルフィルムが記載されている。しかしながら、これらに記載のポリエステルフィルムは密着性に劣るという問題がある。一方、引用文献3には、密着性に優れたポリエステルフィルムが記載されている。しかしながら、引用文献3に記載のポリエステルフィルムは、耐加水分解性に劣るという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−204538号公報
【特許文献2】特開2007−70430号公報
【特許文献3】特開平9−208720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題を解決することを目的としたものであって、耐加水分解性および密着性の両方に優れた太陽電池バックシート用ポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで、耐加水分解性を付与するには末端カルボキシル基量を減らすことが考えられたが、末端カルボキシル量を減らすと密着性も低下してしまうことが分かった。かかる状況のもと、本発明者が検討を行った結果、ポリエステルフィルムを2層構成とし、一方の層は末端カルボキシ基量を減らし、他方の層は末端カルボキシ基量と固有粘度を特定の範囲にし、さらに、フィルム全体の厚さを調整することにより、耐加水分解性および密着性の両方に優れた太陽電池バックシート用ポリエステルフィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、以下の手段により、本発明の課題は達成された。
【0007】
(1)下記第一の層と、該第一の層に隣接して下記第二の層を設け、二軸延伸配向させたフィルムであって、厚みが50〜400μmである太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
第一の層:テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分を縮重合したポリエステルを主成分とし、固有粘度(IV)が0.55〜0.95、かつ、末端カルボキシル基濃度が20eq/t以下である。
第二の層:テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分を縮重合したポリエステルを主成分とし、固有粘度(IV)が0.65〜0.95、かつ、末端カルボキシル基濃度が25eq/t以上40eq/t未満であり、厚みが0.3μm以上20μm未満である。
(2)第一の層がチタン系触媒由来の化合物を含むポリエステルであることを特徴とする(1)記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
(3)第一の層と第二の層の溶融粘度の差が1〜100Pa・sであることを特徴とする、(1)または(2)に記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
(4)第二の層の末端カルボキシル基濃度が25eq/t以上38eq/t未満であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
(5)第二の層にコロナ処理、火炎処理、または、グロー放電処理がされていることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
(6)第一の層および第二の層の面配向度が、それぞれ、0.16〜0.18であることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
(7)第一の層がマグネシウム化合物を含むことを特徴とする、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
(8)第一の層が、置換基として、芳香環を有しない5価のリン酸エステルを含むことを特徴とする、(1)〜(7)のいずれか1項に記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
(9)第一の層がチタン系触媒由来の化合物を含み、かつ、該チタン系触媒が、有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体であることを特徴とする、(1)〜(8)のいずれか1項に記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
(10)第一の層に含まれるポリエステルの融点(Tm)が245〜260℃である、(1)〜(9)のいずれか1項に記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
(11)第一の層の厚さが、0.3〜20μmである、(1)〜(10)のいずれか1項に記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
(12)第一の層と第二の層の固有粘度の差が、0.01以上である、(1)〜(11)のいずれか1項に記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
(13)(1)〜(12)のいずれか1項に記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルムを用いた太陽電池。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、耐加水分解性および密着性の両方に優れた太陽電池バックシート用ポリエステルフィルムを提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の太陽電池の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本発明における「主成分」とは、最も含量比(重量)が多い成分をいい、通常は、90重量%以上が該成分であり、好ましくは99重量%以上が該成分であることをいう。
【0011】
本発明の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルムは、下記第一の層と、該第一の層に隣接して下記第二の層を設け、二軸延伸配向させたフィルムであって、厚みが50〜400μmであることを特徴とする。
第一の層:テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分を縮重合したポリエステルを主成分とし、固有粘度(IV)が0.55〜0.95、かつ、末端カルボキシル基濃度が20eq/t以下である。
第二の層:テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分を縮重合したポリエステルを主成分とし、固有粘度(IV)が0.65〜0.95、かつ、末端カルボキシル基濃度が25eq/t以上40eq/t未満であり、厚みが1μm以上20μm未満である。
以下、これらの詳細について、説明する。
【0012】
本発明で用いるポリエステルは、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分を縮重合したポリエステルを主成分とする。本発明で用いるポリエステルの製造方法は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、公知の方法を採用できる。好ましくは、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分を溶融重合させて製造する。特に、本発明において固有粘度0.60を超えるポリエステル樹脂を用いる場合には、溶融重合により得られたポリエステル樹脂を、さらに固相重合工程を経て得ることが好ましい。固相重合は、ポリエステルをペレット状などの小片形状にし、これを用いて好適に行なえる。固相重合は、通常、150〜250℃、より好ましくは170〜240℃、さらに好ましくは190〜230℃で1〜50時間、より好ましくは5〜40時間、さらに好ましくは10〜30時間の条件で行なうのが好ましい。また、固相重合は、真空中または窒素気流中で行なうことが好ましい。固相重合を行うことにより、低温で重合を進行させることができるため、末端カルボキシル基の低いポリエステル樹脂を得ることが出来る。固相重合は、バッチ式(容器内に樹脂を入れ、この中で所定の時間熱を与えながら撹拌する方式)で実施してもよく、連続式(加熱した筒の中に樹脂を入れ、これを加熱しながら所定の時間滞流させながら筒中を通過させて、順次送り出す方式)で実施してもよい。
【0013】
本発明では、このようなポリエステルを用いて、第一の層と第二の層の2層を設ける。通常は、溶融ラミネートや共押出といった溶融製膜によって設ける。より具体的には、本発明のポリエステルフィルムは、例えば、以下の方法により製造できる。すなわち、公知の手法により乾燥したまたは未乾燥のポリエステルチップを、溶融押出装置を用いて供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーをダイから押出す。第一の層と第二の層を設ける方法は、同時に共押出法でも、逐次法でもよいが、好ましくは共押出法である。その後、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。溶融押出工程においても、本発明においては、押出工程における押出機内でのポリエステルの滞留時間を短くすること、一軸押出機を使用する場合は原料をあらかじめ水分量が50ppm以下、好ましくは30ppm以下になるように十分乾燥すること、二軸押出機を使用する場合はベント口を設け、800パスカル以下、好ましくは300パスカル以下、さらに好ましくは200パスカル以下の減圧を維持すること等の方法を採用する。
本発明のポリエステルフィルムは、さらに、ポリエステルを溶融製膜して得られた未延伸のフィルムを2軸に延伸してなる。未延伸フィルムを同時2軸延伸法や逐次2軸延伸法などの周知の方法で2軸延伸フィルムを得ることが出来る。この場合の条件としては、延伸温度はポリエステルのガラス転移点(以下Tgと略称する場合がある)以上Tg+100℃の任意の条件を選ぶことができ、通常は80〜170℃の温度範囲が最終的に得られるフィルムの物性と生産性から好ましい。また延伸倍率はフィルムの長手方向、幅方向とも1.6〜5.0の範囲が選べるが、ここで面配向係数fnを調整する観点から、延伸倍率はフィルムの長手方向、幅方向共に2.5〜4.0の範囲で調整するのが好ましい。また、延伸速度は1000〜200000%/分であることが好ましい。更に延伸後にフィルムの熱処理を行うが、幅方向に延伸するテンターに接続する熱処理室で連続的に熱処理するか、別のオーブンで加熱することや、加熱ロールでも熱処理できる。熱処理条件は、温度が120〜245℃、時間が1〜60秒の範囲が通常用いられる。熱処理時に幅方向、長手方向に熱寸法安定性を良くする目的でリラックス処理が行われてもよい。
【0014】
本発明のポリエステルフィルムの厚みは、50〜400μmであり、60〜300μmが好ましく、75〜250μmがより好ましい。このような範囲とすることにより、太陽電池バックシートに必要なフィルム強度と剛性及び太陽電池のセルの保護に必要な水分バリア性を付与する。
【0015】
本発明のポリエステルフィルムは、特にヘイズの特定範囲はないが、フィルムの透明性が必要な場合には5%以下とすることができ、さらには、1%以下とすることができる。
【0016】
第一の層
本発明のポリエステルフィルムにおける第一の層は、上記ポリエステルを主成分とし、固有粘度(IV)が0.55〜0.95、かつ、末端カルボキシル基濃度が20eq/t以下である。
固有粘度を0.55未満では、耐加水分解性が悪化し、0.95を超えると製膜性が悪化する。固有粘度は、0.60〜0.90が好ましく、0.65〜0.85がより好ましい。
一方、末端カルボキシ基濃度が20eq/tを超えると耐加水分解性が悪化する。末端カルボキシ基濃度は、18〜8eq/tが好ましく、17〜10eq/tがより好ましい。
また、第一の層に含まれるポリエステルの融点(Tm)は、245〜260℃が好ましく、248〜258℃がより好ましい。245℃以上とすることにより、耐加水分解性をより向上させることができる。また、260℃以下とすることにより、溶融製膜時のポリマー温度を不必要に上げる必要がないことから、溶融製膜時の熱分解が抑えられる。
【0017】
第一の層は、通常、チタン系触媒由来の化合物を含んでいる。ここでいう、チタン系触媒由来の化合物とは、ポリエステル製造時の重縮合反応の触媒として添加するものを指し、チタン元素含有量は、第一の層に対し、20ppm以下であることが好ましく、より好ましくは10ppm以下であり、下限は例えば、1ppmであり、好ましくは2ppmである。チタン化合物の含有量が多すぎると、フィルム製造時に分解反応が起こりやすくなり、ポリエステルの分子量が低下して強度や耐熱性が劣るようになってしまい、加工工程での取り扱い性が悪くなったり、また太陽電池の部材として用いた時の耐候性、耐加水分解性が劣ったりするようになる場合がある。また、チタン元素含有量が少なすぎると、ポリエステル原料製造時の生産性が劣り、目的の重合度に達したポリエステル原料を得られない場合がある。また重縮合反応速度が遅くなって結果的に得られるポリエステルの末端カルボキシル基濃度が高くなってしまい、結果的に耐候性、耐加水分解性が劣るようになるという問題が発生する場合がある。
【0018】
本発明で触媒として添加して使用するチタン形触媒由来の化合物としては、有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体であることが好ましく、前記Ti系触媒としては、酸化物、水酸化物、アルコキシド、カルボン酸塩、炭酸塩、蓚酸塩、有機キレートチタン錯体、及びハロゲン化物等が挙げられる。Ti系触媒は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、二種以上のチタン化合物を併用してもよい。
Ti系触媒の例としては、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートテトラマー、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネート等のチタンアルコキシド、チタンアルコキシドの加水分解により得られるチタン酸化物、チタンアルコキシドと珪素アルコキシドもしくはジルコニウムアルコキシドとの混合物の加水分解により得られるチタン−珪素もしくはジルコニウム複合酸化物、酢酸チタン、蓚酸チタン、蓚酸チタンカリウム、蓚酸チタンナトリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸−水酸化アルミニウム混合物、塩化チタン、塩化チタン−塩化アルミニウム混合物、チタンアセチルアセトナート、有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体、等が挙げられる。
前記Ti系触媒の中でも、有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体の少なくとも1種を好適に用いることができる。有機酸としては、例えば、クエン酸、乳酸、トリメリット酸、リンゴ酸等を挙げることができる。中でも、クエン酸又はクエン酸塩を配位子とする有機キレート錯体が好ましい。
例えばクエン酸を配位子とするキレートチタン錯体を用いた場合、微細粒子等の異物の発生が少なく、他のチタン化合物に比べ、重合活性と色調の良好なポリエステル樹脂が得られる。更に、クエン酸キレートチタン錯体を用いる場合でも、エステル化反応の段階で添加することにより、エステル化反応後に添加する場合に比べ、重合活性と色調が良好で、末端カルボキシル基の少ないポリエステル樹脂が得られる。この点については、チタン触媒はエステル化反応の触媒効果もあり、エステル化段階で添加することでエステル化反応終了時におけるオリゴマー酸価が低くなり、以降の重縮合反応がより効率的に行なわれること、またクエン酸を配位子とする錯体はチタンアルコキシド等に比べて加水分解耐性が高く、エステル化反応過程において加水分解せず、本来の活性を維持したままエステル化及び重縮合反応の触媒として効果的に機能するものと推定される。
また、一般に、末端カルボキシル基量が多いほど耐加水分解性が悪化することが知られており、本発明の添加方法によって末端カルボキシル基量が少なくなることで、耐加水分解性の向上が期待される。
前記クエン酸キレートチタン錯体としては、例えば、ジョンソン・マッセイ社製のVERTEC AC−420など市販品として容易に入手可能である。
フィルム中のチタン触媒由来の元素の定量は、例えば、特開2007−204538号公報の段落番号0056の記載に従って行うことができる。
【0019】
また、上記チタン系触媒由来の化合物以外の金属化合物を含まないことが好ましいが、フィルムの生産性を向上すべく溶融時の体積固有抵抗値を低くするためマグネシウム、カルシウム、リチウム、マンガン等の金属を、第一の層に対し、例えば、100ppm以下、好ましくは60ppm以下、最も好ましくは50ppm以下であれば含有させることができる。下限値としては、特に定めるものではないが、例えば、5ppm以上とすることができる。この中でも、マグネシウム化合物を含むことがより好ましい。マグネシウム化合物を含むことにより、製膜性がより向上する傾向にある。マグネシウム化合物としては、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシド、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム等のマグネシウム塩が挙げられる。中でも、エチレングリコールへの溶解性の観点から、酢酸マグネシウムが最も好ましい。マグネシウム化合物の添加量としては、高い静電印加性を付与するためには、Mg元素換算値が50ppm以上となる量が好ましく、50ppm以上100ppm以下の範囲となる量がより好ましい。マグネシウム化合物の添加量は、静電印加性の付与の点で、好ましくは60ppm以上90ppm以下の範囲となる量であり、さらに好ましくは70ppm以上80ppm以下の範囲となる量である。
【0020】
第一の層は、また、置換基として、芳香環を有しない5価のリン酸エステルを含むことが好ましい。このような化合物を含むことにより、チタン系触媒の添加による熱分解をより効果的に抑制することが可能になる。置換基として、芳香環を有しない5価のリン酸エステルの例としては、置換基として芳香環を有しない5価のリン酸エステルの少なくとも一種を用いることができる。本発明における5価のリン酸エステルとしては、例えば、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリ−n−ブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリス(トリエチレングリコール)、リン酸メチルアシッド、リン酸エチルアシッド、リン酸イソプロピルアシッド、リン酸ブチルアシッド、リン酸モノブチル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル、リン酸トリエチレングリコールアシッド等が挙げられる。
5価のリン酸エステルの中では、炭素数2以下の低級アルキル基を置換基として有するリン酸エステル〔(OR)3−P=O;R=炭素数1又は2のアルキル基〕が好ましく、具体的には、リン酸トリメチル、リン酸トリエチルが特に好ましい。 特に、前記チタン化合物として、クエン酸又はその塩が配位するキレートチタン錯体を触媒として用いる場合、5価のリン酸エステルの方が3価のリン酸エステルよりも重合活性、色調が良好であり、更に炭素数2以下の5価のリン酸エステルを添加する態様の場合に、重合活性、色調、耐熱性のバランスを特に向上させることができる。リン化合物の添加量としては、P元素換算値が50〜90ppmの範囲となる量が好ましい。リン化合物の量は、より好ましくは60ppm〜80ppmとなる量であり、さらに好ましくは65ppm〜75ppmとなる量である。
【0021】
特に、本発明では、上記マグネシウム化合物と、上記置換基として、芳香環を有しない5価のリン酸エステルを併用することが好ましい。併用することにより、製膜に必要な静電印加性と溶融押し出し時の熱安定性の両立がより効果的に達成できる。本発明におけるエステル化反応工程においては、触媒成分である前記チタン化合物と、添加剤である前記マグネシウム化合物及びリン化合物とを、下記式(i)から算出される値Zが下記の関係式(ii)を満たすように、添加して溶融重合させる場合が好ましい。ここで、P含有量は芳香環を有しない5価のリン酸エステルを含むリン化合物全体に由来するリン量であり、Ti含有量は、有機キレートチタン錯体を含むTi化合物全体に由来するチタン量である。このように、チタン化合物を含む触媒系でのマグネシウム化合物及びリン化合物の併用を選択し、その添加タイミング、添加割合を制御することによって、チタン化合物の触媒活性を適度に高く維持しつつも、黄色味の少ない色調が得られ、重合反応時やその後の製膜時(溶融時)などで高温下に曝されても黄着色を生じ難い耐熱性を付与することができる。
(i)Z=5×(P含有量[ppm]/P原子量)−2×(Mg含有量[ppm]/Mg原子量)−4×(Ti含有量[ppm]/Ti原子量)
(ii)+0≦Z≦+5.0
これは、リン化合物はチタンに作用するのみならずマグネシウム化合物とも相互作用することから、3者のバランスを定量的に表現する指標となるものである。
前記式(i)は、反応可能な全リン量から、マグネシウムに作用するリン分を除き、チタンに作用可能なリンの量を表現したものである。値Zが正の場合は、チタンを阻害するリンが余剰な状況にあり、逆に負の場合はチタンを阻害するために必要なリンが不足する状況にあるといえる。反応においては、Ti、Mg、Pの各原子1個は等価ではないことから、式中の各々のモル数に価数を乗じて重み付けを施してある。
【0022】
また、後述する粒子や各種添加剤を配合するためにマスターバッチ法を利用するなどの方法を用いる場合などで本発明のポリエステルを製造するための触媒以外の金属成分としてアンチモンを含有することもできるが、本発明の優れた耐加水分解性、耐候性を得るためにアンチモンのフィルム全体に対する含有量はアンチモン金属として好ましくは30ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下とする。なおここでいう金属化合物には、後述するポリエステル中に配合する粒子は含まない。
【0023】
第一の層の面配向度は、0.16〜0.18が好ましく、0.165〜0.175がより好ましい。面配向度を0.16以上とすることにより、耐加水分解性能を向上させることができ、0.18以下とすることにより、耐電圧を向上させることができる。
【0024】
第一の層の厚さは、0.3〜20μmであることが好ましく、0.5〜15μmであることがより好ましい。このような厚さとすることにより、フィルムの耐加水分解性を低下させることなしに密着性が改善される。
【0025】
第二の層
本発明のポリエステルフィルムにおける第二の層は、上記ポリエステルを主成分とし、固有粘度(IV)が0.65〜0.95、かつ、末端カルボキシル基濃度が25eq/t以上40eq/t未満である。
固有粘度を0.65未満では、耐加水分解性が悪化し、0.95を超えると製膜性が悪化する。固有粘度は、0.68〜0.90が好ましく、0.70〜0.85がより好ましい。
一方、末端カルボキシ基濃度が25eq/t未満では密着性が悪化する傾向にあり、45eq/tを超えると耐加水分解性が悪化する。末端カルボキシ基濃度は、25eq/t以上38eq/t未満が好ましく、27〜36eq/tがより好ましい。
また、第二の層に含まれるポリエステルの融点(Tm)は、245〜260℃が好ましく、248〜258℃がより好ましい。245℃以上とすることにより、耐加水分解性をより向上させることができる。また、260℃以下とすることにより、溶融製膜時のポリマー温度を不必要に上げる必要がないことから、溶融製膜時の熱分解が抑えられる。
【0026】
本発明では、第二の層は、コロナ処理、火炎処理、または、グロー放電処理を施すことが好ましく、経済性を考慮すると窒素コロナ処理を施すことがより好ましい。単独の処理だけでもでもよいが、複数の処理を重畳して施すことにより相乗効果が現れる場合もある。このような処理を施すことにより、表面処理を施すことによって、製膜時にフィルムに付着した物質やブリードアウトしたオリゴマーを除去することや、フィルム表面に微細な凹凸を形成してアンカー効果を付与したり、あるいは接着強度を高めるカルボキシル基やアミノ基、イミド基等の反応基を形成したり、反応性の極めて高いラジカルを生成するため、濡れ性の改善やフィルム表面に塗布あるいは接着させる層との密着性が大幅に改善される。
【0027】
コロナ放電処理とは、大気圧状態において一対の電極間に被処理材を挟み込み、両電極間に交流の高電圧を印加してコロナ放電を励起し、被処理材の表面をコロナ放電に曝すことで、被処理材の表面状態を改質する技術として知られている。コロナ処理は、自己放電方式、直流放電方式、交流放電方式等の従来公知の方法を採用できる。放電電極1と誘電体被覆ロール(処理ロール)は調整ボルトによって調整された一定の間隙(通常は1〜5mm、好ましくは、1.5〜3.5mm)をもって配置されている。基材ウェブを誘電体被覆ロールに密着させ、処理面側と電極間に、エアーギャップを設ける様に通過させながら放電を行うことにより、基材ウェブの電極面側の表面が処理される。また、特殊な処理方法として、空隙の中央にフィルムを通過させることによって、両面同時処理を行う事も可能である。誘電体被覆ロールのロール芯には、鉄又はアルミニウムが使用され、誘電体材料としてシリコーン、ハイバロン、EPT等の樹脂やセラミック、またはガラス等を使用する。電極としては、(耐蝕)アルミニウムやステンレス等の金属及びセラミックス等が使用されている。また、この場合の電極の形状としては、ワイヤー等のひも状のもの、矩形断面をもった板状のもの、薄板状のもの、先端部にR加工を施した板状のもの、その側面がテーパー状になった形状のもの、及びそれらの組合せからなるもの等が知られている。
【0028】
コロナ放電処理の程度は、濡れ張力が45〜60dyne/cmになるように処理するのが好ましい。放電処理の強度は10〜50W・min /m2が適当であり、空気中で処理しても良いが、アルゴン、ヘリウム、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行なうことが好ましく、CO、CO2 、O2 またはそれらの混合気体などを使用することができる。経済性を考慮すると特に窒素雰囲気中で行うのが好ましい。コロナ放電処理の雰囲気は、5〜40℃で相対湿度(RH)を80%以下とすることが好ましい。コロナ放電処理を大気中で行なう場合、オゾンや酸化窒素(NOx)が発生し、これが作業環境を悪化させるのみならず、電極やロール等を酸化する。かかる不都合を防止する観点から、本発明のコロナ放電処理装置には、上記オゾンや酸化窒素を速やかに排気するための装置を配することが好ましい。
【0029】
火炎処理は、クリーンバーナー社製フレーム処理装置やesseCI社製フレーム処理装置などを用いて表面処理する方法が好ましく使用される。この処理方法においても、他の表面処理と同様に、フレーム処理先端をフィルムに対して平行に高速で走行させる必要がある。
グロー放電処理は、0.001〜0.01Torr程度の低圧力において、コロナ放電よりも高い活性種を生み出させることができる。ただし、かかるプラズマ処理は、真空系で処理を行うために、連続処理が困難であり、生産性が著しく劣ることに加えて、設備自体も大がかりになる。そのため、マイクロウエーブされたグロー放電プラズマ、あるいは、上記コロナ放電を常温・大気圧下で放電極と被処理物の間に発生させて、惹起される強電界によって、大気圧下(通常760Torr)程度でプラズマを発生させる形態が好ましく使用される。
【0030】
第二の層の面配向度は、0.16〜0.18が好ましく、0.165〜0.175がより好ましい。面配向度を0.16以上とすることにより、耐加水分解性能を向上させることができ、0.18以下とすることにより、耐電圧を向上させることができる。
【0031】
第二の層の厚さは、49.7〜398μmであることが好ましく、49〜350μmであることがより好ましい。このような厚さとすることにより、太陽電池バックシートに必要なフィルム強度と剛性及び太陽電池のセルの保護に必要な水分バリア性を付与する。
【0032】
(第一の層と第二の層の関係)
本発明では、第一の層と第二の層の固有粘度の差が、0.01以上であることが好ましく、0.02以上であることがより好ましい。このような構成とすることにより、共押し出し時の第一と第二の層の接着強度が良好となる。
本発明では、第一の層と第二の層の溶融粘度の差が、1〜100Pa・sであることが好ましく、 5〜80Pa・sであることがより好ましい。1Pa・s以上とすることにより、密着性が向上する傾向にあり、100Pa・s以下とすることにより、延伸後にカールが発生するのをより効果的に抑制することが可能になる。
上述のとおり、第一の層および第二の層の面配向度は、それぞれ、0.16〜0.18であることが好ましいが、両者の差は、0.01以内であることが好ましい。
【0033】
本発明における第一の層または第二の層、好ましくは第二の層には、易滑性付与のための微粒子を添加してもよい。微粒子については、特開2007−204538号公報の0024〜0033の記載を参酌できる。
さらに、本発明における第一の層または第二の層、好ましくは第二の層には、スルホイソフタル酸等の極性基を導入してもよい。このような極性基を導入することにより、密着性を向上させることが可能になる。詳細については、特開平6−43617号公報を参酌することができる。
【0034】
(太陽電池)
本発明の太陽電池は、太陽光を電気に変換するシステムをいう。その構造の一例を図1に示す。すなわち、太陽光が入射する側からフロントシート層1、充填接着樹脂層2、太陽電池素子要部3、充填接着樹脂層4、バックシート層5が基本構成になる。本発明のポリエステルフィルムは、バックシート層に用いられる。この太陽電池は、住宅の屋根に組み込まれたり、農池、牧場、排水や下水処理施設、火山や温泉地域、ビルや塀に設置されるものや電子部品に用いられるものもある。該太陽電池モジュールは採光型やシースルー型等と呼ばれる光を透過し窓や高速道路、鉄道等の防音壁に用いられるものもある。本発明では、特にフレキシブルなタイプとすることができる。
【0035】
本発明のポリエステルフィルムが好ましく用いられる太陽電池としては、特に制限はないが、例えば、単結晶シリコン系太陽電池、多結晶シリコン系太陽電池、シングル接合型、またはタンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電池、カドミウムテルル(CdTe)等のII−VI族化合物半導体太陽電池、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池、色素増感型太陽電池、有機太陽電池等が挙げられる。中でも、本発明においては、上記太陽電池が、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池であることが好ましい。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0037】
本願実施例で用いた各種測定方法は以下のとおりである。
【0038】
(固有粘度(IV)の測定方法)
オルトクロロフェノール中、25℃で測定した溶液粘度から、下式で計算した値を用いた。
ηsp/C=[η]+K[η]2・C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1であり、Cは、溶媒100mlあたりの溶解ポリマ重量(g/100ml、通常1.2)、Kはハギンス定数(0.343とする)である。また、溶液粘度、溶媒粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。単位はdl/gで示した。
【0039】
(末端カルボキシ基濃度の測定方法)
いわゆる滴定法によって、末端カルボキシル基の量を測定した。すなわちポリエステルをベンジルアルコ−ルに溶解し、フェノ−ルレッド指示薬を加え、水酸化ナトリウムの水/メタノ−ル/ベンジルアルコ−ル溶液で滴定した。単位は、eq/t(当量/トン)で示した。
【0040】
(溶融粘度の測定方法)
A層及びB層の溶融粘度(Pa・s)は東洋精機製 キャピラリーレオメーターを用いて JIS K 7199 に準拠した測定により280℃せん断速度100sec-1における溶融粘度を求めた。
【0041】
(面配向度の測定方法)
アタゴ社(株)製アッベ屈折率計を用い、光源をナトリウムランプとして、フィルム屈折率の測定を行った。
fn= (nMD+nTD)/2 − nZD ・・・ (A)
上記式(A)におけるnMDは二軸配向フィルムの機械方向の屈折率を表し、nTDは機械方向と直交する方向の屈折率を表し、nZDはフィルム厚み方向の屈折率を表している。
【0042】
(ポリエステルの融点(Tm)の測定方法)
Tm(℃)はJIS K 7121に準じた測定により求めた。
【0043】
(耐加水分解性)
120℃、100%RHの雰囲気にてフィルムをエージングし、フィルムの機械的特性として破断伸度を測定した。エージング処理前後での破断伸度の保持率が50(%)となる時間で判定した。
破断伸度保持率=(処理前の破断伸度−処理後の破断伸度)÷処理前の破断伸度×100
○:50%となる時間が90時間以上
△:50%となる時間が75時間以上90時間未満
×:50%となる時間が75時間未満
【0044】
(貼り合わせ特性(密着性))
アニール処理した反射シートと、本発明のポリエステルフィルムをラミネート加工した後100cm2四方にカットして、平板上に置いた時、4角の浮き上がりを測定した。この平均値をカールとし、下記に判定した。
○:カールが0mm以上2mm未満
△:カールが2mm以上5mm未満
×:カールが5mm以上
【0045】
(製膜性)
製膜性を以下の基準で評価した。
○:溶融押出し時に吐出が安定し、フィルム厚み変動や外観異常がない。 △:溶融押出し時に吐出の僅かな変動見られるが、フィルム厚み変動や外観異常が実用上問題ない。
×:溶融押出し時に吐出の変動見られ、フィルム厚み変動や外観異常が実用上問題となる。
【0046】
(反射率)
日立製分光光度計 U−3410で、白色標準板に対しての分光反射率を測定したものであり、光波長範囲は300〜900nmとし、550nmの反射率を代表値とした。
【0047】
(耐電圧性)
製造したポリエステルフィルムの耐電圧性を以下の基準で評価した。
○:耐電圧が1000V以上のもの △:耐電圧が600以上1000V未満のもの ×:耐電圧が600V未満のもの
【0048】
(耐熱性)
製造したポリエステルフィルムの耐熱性を以下の基準で評価した。
○:150℃×30分の熱処理によりフィルムMDとTD寸法変化の平均値が0.1%未満のもの
△:150℃×30分の熱処理によりフィルムMDとTD寸法変化寸法変化が0.1%以上0.3%未満のもの
×:150℃×30分の熱処理によりフィルムMDとTD寸法変化が0.3%以上のもの
【0049】
(静電印加性)
樹脂を含水率50ppm以下に乾燥させた後、樹脂温度285℃の条件で、リップクリアランス4.5mm×幅0.8mのダイから押出すと共に、10℃に温調された直径1.5mのキャストロール(冷却ロール)上でキャストし、静電印加法により、印加電圧12KVで製膜を行なった。
○: 製膜速度50m/分以上の速度まで同伴エアーの巻き込み無しにキャスティグ出来るもの
△: 製膜速度30m/分以上50m/分未満まで同伴エアーの巻き込み無しにキャスティグ出来るもの
×: 製膜速度30m/分未満でエアー同伴が見られるもの
【0050】
(ヘイズの測定)
JISーK7105に準じ、日本電色工業社製積分球式濁度計NDHー300Aによりフィルムの濁度を測定した。
【0051】
(フィルムの強度)
90mm角の試験片を作製し、島津製作所製恒温槽付き面衝撃試験機(ハイドロショット)を使用し、打抜き速度5m/秒、打抜きポンチ直径13mm、ダイス直径3インチの条件にて23℃の亀裂発生エネルギーを測定した。
エネルギーが1J未満のものを×、1以上2J未満のものを△、2J以上を○と評価した。
【0052】
(延伸適性)
フィルムを逐次二軸延伸した時のフィルムの厚み精度が10μmを超えるものを×、5μm以上10μm以下を△、5μm未満を○とした。
【0053】
(ポリエステルの製造)
[反応物生成工程]
(1)エステル化反応
第一エステル化反応槽に、高純度テレフタル酸4.7トンとエチレングリコール1.8トンを90分かけて混合してスラリー形成させ、3800kg/hの流量で連続的に第一エステル化反応槽に供給した。さらにクエン酸がTi金属に配位したクエン酸キレートチタン錯体(VERTEC AC−420、ジョンソン・マッセイ社製)のエチレングリコール溶液を連続的に供給し、反応槽内温度250℃、攪拌下で平均滞留時間約4.3時間で反応を行なった。このとき、クエン酸キレートチタン錯体は、Ti添加量が元素換算値で9ppmとなるように連続的に添加した。このとき、得られたオリゴマーの酸価は600eq/トンであった。
この反応物を第二エステル化反応槽に移送し、攪拌下、反応槽内温度250℃で、平均滞留時間で1.2時間反応させ、酸価が200eq/トンのオリゴマーを得た。第二エステル化反応槽は内部が3ゾーンに仕切られており、第2ゾーンから酢酸マグネシウムのエチレングリコール溶液を、Mg添加量が元素換算値で67ppmになるように連続的に供給し、続いて第3ゾーンから、リン酸トリメチルのエチレングリコール溶液を、P添加量が元素換算値で65ppmになるように連続的に供給した。
(2)重縮合反応
上記で得られたエステル化反応生成物を連続的に第一重縮合反応槽に供給し、攪拌下、反応温度270℃、反応槽内圧力2.67×10-3MPa(20torr)で、平均滞留時間約1.8時間で重縮合させた。
更に、第二重縮合反応槽に移送し、この反応槽において攪拌下、反応槽内温度276℃、反応槽内圧力6.67×10-4MPa(5torr)で滞留時間約1.2時間の条件で反応(重縮合)させた。
次いで、更に第三重縮合反応槽に移送し、この反応槽では、反応槽内温度278℃、反応槽内圧力2.0×10-4MPa(1.5torr)で、滞留時間1.5時間の条件で反応(重縮合)させ、ペレット化(直径3mm、長さ4mm)することにより、固有粘度0.63dl/g、末端COOH基濃度22当量/トンの反応生成物(ポリエチレンテレフタレート;以下、PETと略記する。)を得た。
【0054】
上記製造方法において、原料のジカルボン酸、ジオール、触媒とその添加量、Mg化合物の添加量、リン化合物の添加量等を表1に記載のとおりに代え、表1に記載の樹脂A〜Sを製造した。
【0055】
(3)固相重合
本願実施例でもちいるポリエステル樹脂のうち、表1に記載した特定の樹脂については、さらに固相重合工程を経て得た。固相重合は、ペレット状のポリエステルを、210℃で、真空下(50Pa)あるいは窒素気流下で行った。
樹脂A:上記重縮合反応により得られたIV=0.63の樹脂を、真空下(50Pa)で210℃×18時間の固相重合処理を行なった。
樹脂B:上記重縮合反応の第三重縮合反応槽の滞留時間を0.3時間にすることにより、IV=0.50の樹脂を得た。
樹脂C:上記重縮合反応の第三重縮合反応槽の滞留時間を1.2時間にすることにより、IV=0.60の樹脂を得た。
樹脂D:上記重縮合反応により得られたIV=0.63の樹脂を、真空下(50Pa)で210℃×9時間の固相重合処理を行なった。
樹脂E:上記重縮合反応により得られたIV=0.63の樹脂を、窒素フロー下で210℃×27時間の固相重合処理を行なった。
樹脂F:上記重縮合反応により得られたIV=0.63の樹脂を、窒素フロー下(50Pa)で210℃×42時間の固相重合処理を行なった。
樹脂G:上記重縮合反応により得られたIV=0.63の樹脂を、真空下(50Pa)で210℃×60時間の固相重合処理を行なった。
樹脂H:上記重縮合反応の触媒をGe(55ppm)に変更することにより得られたIV=0.63の樹脂を、真空下(50Pa)で210℃×22時間の固相重合処理を行なった。
樹脂I:上記重縮合反応の触媒をGe(55ppm)に変更し、更に第三重縮合反応槽の滞留時間を0.5時間にすることにより、IV=0.55の樹脂を得た。
樹脂J:上記重縮合反応の触媒をGe(55ppm)に変更し、更に第三重縮合反応槽の滞留時間を1.8時間にすることにより、IV=0.65の樹脂を得た。
樹脂K:樹脂Jを真空下(50Pa)で210℃×16時間の固相重合処理を行なった。
樹脂L:樹脂Jを真空下(50Pa)で210℃×36時間の固相重合処理を行なった。
樹脂M:樹脂Jを真空下(50Pa)で210℃×55時間の固相重合処理を行なった。
樹脂N:上記重縮合反応の触媒をSb(150ppm)に変更することにより得られたIV=0.63の樹脂を、真空下(50Pa)で210℃×12時間の固相重合処理を行なった。
樹脂O:上記重縮合反応の際にMg化合物を添加しなかった。更に得られた樹脂を、真空下(50Pa)で210℃×16時間の固相重合処理を行なった。
樹脂P:上記重縮合反応の際にP化合物を添加しなかった。更に得られた樹脂を、真空下(50Pa)で210℃×11時間の固相重合処理を行なった。
樹脂Q:上記重縮合反応時に酸成分の3モル%をスルホイソフタル酸に変更し、得られたIV=0.63の樹脂を、真空下(50Pa)で210℃×17時間の固相重合処理を行なった。
樹脂R:上記重縮合反応時に酸成分の6モル%をスルホイソフタル酸に変更し、得られたIV=0.63の樹脂を、真空下(50Pa)で210℃×17時間の固相重合処理を行なった。
樹脂S:樹脂Rの触媒をSbに変更し、得られたIV=0.63の樹脂を、真空下(50Pa)で210℃×11時間の固相重合処理を行なった。
【0056】
(第一の層と第二の層を積層したポリエステルフィルムの製造)
(1)共押出し
上記ポリエステル樹脂を含水率50ppm以下に乾燥させた後、第1の層用樹脂を直径150mmの1軸混練押出機のホッパーに投入し、N2気流下、285℃の条件で、第2の層用樹脂を直径30mmの1軸混練押出機のホッパーに投入し、N2気流下、285℃の条件で溶融し、フィードブロックを用いて2種2層あるいは2種3層構造の未延伸フィルムを10m/分の速度で押出した。この溶融体(メルト)をギアポンプ、濾過器(孔径10μm)を通した後、下記条件のもとに、幅0.8mのダイから押出すと共に、10℃に温調された直径1.5mのキャストロール(冷却ロール)上でキャストした。
(2)延伸
上記方法で冷却ロール上に押出し、固化した未延伸フィルムに対し、以下の方法で逐次2軸延伸を施し、下記表に記載の厚みのフィルムを得た。なお、延伸は、縦延伸を95℃で、横延伸を140℃で縦延伸、横延伸の順に行なった。その後、210℃で10秒間熱固定した後、205℃で横方向に3%緩和した。延伸後、両端を10cmずつトリミングした後、両端に厚み出し加工を施した後、コロナ放電処理を行い、直径30cmの樹脂製巻芯に3000m巻き付けた。なお、幅は1.5m、巻長は2000mであった。厚みの異なるフィルムは、吐出量一定の条件で未延伸フィルムの製膜速度を調整することにより得た。
【0057】
<延伸方法>
(a)縦延伸
未延伸フィルムを周速の異なる2対のニップロールの間に通し、縦方向(搬送方向)に延伸した。なお、予熱温度90℃、延伸温度を90℃、延伸倍率を3.5倍、延伸速度を3000%/秒として実施した。
(b)横延伸
縦延伸した前記フィルムに対し、テンターを用いて下記条件にて横延伸した。
<条件>
・予熱温度:95℃
・延伸温度:95℃
・延伸倍率:3.9倍
・延伸速度:70%/秒
(3)熱固定・熱緩和
横延伸後、210℃で10秒間熱固定した後、205℃で横方向に3%緩和した。
(4)巻き取り
延伸後、両端を10cmずつトリミングした後、両端に厚み出し加工を施した後、直径30cmの樹脂製巻芯に3000m巻き付けた。なお、幅は1.5m、巻長は2000mとした。
【0058】
【表1】

【0059】
上記表1において、触媒の欄には、金属の種類と、金属の添加量(元素換算値)を示している。また、Mg化合物およびリン化合物は、それぞれ、マグネシウム、リンの元素換算量で示している。
【0060】
【表2】

【符号の説明】
【0061】
1 フロントシート層
2 充填接着樹脂層
3 太陽電池素子要部
4 充填接着樹脂層
5 バックシート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記第一の層と、該第一の層に隣接して下記第二の層を設け、二軸延伸配向させたフィルムであって、厚みが50〜400μmである太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
第一の層:テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分を縮重合したポリエステルを主成分とし、固有粘度(IV)が0.55〜0.95、かつ、末端カルボキシル基濃度が20eq/t以下である。
第二の層:テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分を縮重合したポリエステルを主成分とし、固有粘度(IV)が0.65〜0.95、かつ、末端カルボキシル基濃度が25eq/t以上40eq/t未満であり、厚みが0.3μm以上20μm未満である。
【請求項2】
第一の層がチタン系触媒由来の化合物を含むポリエステルであることを特徴とする請求項1記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
【請求項3】
第一の層と第二の層の溶融粘度の差が1〜100Pa・sであることを特徴とする、請求項1または2に記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
【請求項4】
第二の層の末端カルボキシル基濃度が25eq/t以上38eq/t未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
【請求項5】
第二の層にコロナ処理、火炎処理、または、グロー放電処理がされていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
【請求項6】
第一の層および第二の層の面配向度が、それぞれ、0.16〜0.18であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
【請求項7】
第一の層がマグネシウム化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
【請求項8】
第一の層が、置換基として、芳香環を有しない5価のリン酸エステルを含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
【請求項9】
第一の層がチタン系触媒由来の化合物を含み、かつ、該チタン系触媒が、有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
【請求項10】
第一の層に含まれるポリエステルの融点(Tm)が245〜260℃である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
【請求項11】
第一の層の厚さが、0.3〜20μmである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
【請求項12】
第一の層と第二の層の固有粘度の差が、0.01以上である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルム。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルムを用いた太陽電池。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−44088(P2012−44088A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185924(P2010−185924)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】