説明

ポリエステル包装材料中における有機物質濃度の置換シクロデキストリン化合物による低下

【課題】熱可塑性ポリエステル樹脂によるボトル製造において、アルデヒド物質を含む反応性有機物質の形成を防止できるかまたは捕捉することができる熱可塑性樹脂に分散させた活性物質、及び熱可塑性飲料容器、チップ、プリフォーム等を製造する方法を提供する。
【解決手段】ポリエステルチップを製造する方法であって、(a)溶融ポリエステルを含むストリームを出口オリフィスを有するプロセスデバイスを通過させること、(b)置換シクロデキストリン化合物を液体を形成させること、(c)該液体を該プロセスデバイス中混合手段の近くで溶融ポリエステルのストリーム中に導入して、処理ストリームを形成すること、及び(d)該処理ストリームを該オリフィスを通過させ、該ポリエステルチップを形成する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
容器構造は、延伸熱可塑性ポリエステル樹脂材料から構成できる。このような樹脂は反応性有機物質の起源であることができ、それらは、梱包から例えば容器内に保持した食物中に流出することができる。アルデヒド物質を含むこのような反応性物質は、食物中に望ましくないオフオーダーまたはオフフレーバーを残し、または、水または飲料にオフテイストを残すことがある。本発明は、プリフォーム(予備的形成品)およびボトル製造方法において前記有機物質形成を防止できるかまたは前記有機物質を捕捉できる活性物質を塗布したポリエステルペレットまたはチップに関する。本発明はさらに、熱可塑性ポリエステルを含むポリエステルプリフォームおよび揮発性有機成分の形成を防止するかまたは捕捉するように作用できる前記熱可塑性樹脂に分散させた活性物質に関する。最後に、本発明は、熱可塑性飲料容器および前記チップ、プリフォームまたは容器を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム、成形容器、ボトル等の形状のポリエチレンテレフタレート(PET)包装材料が公知となっている。さらに、硬質または半硬質の熱可塑性飲料容器が、ペレットまたはチップ等から成形されたプリフォームから製造されてきた。二軸延伸吹込成形熱成形ポリエステル飲料容器が、J.Agranoff (Ed) Modern Plastics,Encyclopedia,Vol.16、No.10A、P.(84)pp.192−194に開示されている。これらの飲料容器は、一般的に、縮重合製品であるポリエステルから製造される。前記ポリエステルは、一般的に、ジハイドロキシ化合物と二酸化合物を金属触媒による縮合反応において反応させることによって、製造されている。エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオールおよび他のジオールのようなジハイドロキシ化合物は、二酸のような有機二酸化合物またはその低級ジエステルと共重合させることができる。このような二酸性の反応物質には、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、そのメチルジエステル等が含まれる。縮合/重合反応は、前記ジカルボン酸またはそのジメチルエステルとグリコール物質との間で熱駆動金属触媒反応において起こり、反応副生成物として水またはメタノールを放出し、高分子量のポリエステル物質を残す。バルクレジンは、将来の熱処理に適応させた便利なフレーク、チップまたはペレットとして形成される。バルクポリエステル物質は、容器中に直接射出吹込成形できる。これとは別に、前記ポリエステルは中間体プリフォームに成形して、次に吹込成形器に導入することができる。前記ポリエステルを加熱吹込み、飲料容器として適切な形状と容量とする。このプリフォームは、単層物質、二層または多層プリフォームであることができる。
【0003】
金属触媒を用いて、ニ酸化物質とジハイドロキシ化合物との重合反応を促進する。溶融相の始めにおいて、エチレングリコール、テレフタル酸またはそのエステル、および金属触媒を前記反応容器に添加する。当該技術において、エステル交換段階に適した種々の触媒が公知である。二価金属(例 マンガン、亜鉛、コバルトまたは酢酸カルシウム)と有機酸との塩が好適に−−−直接エステル化またはエステル交換触媒として使用され、それらは、それ自体として、前記重縮合反応を触媒する。アンチモン、ゲルマニウムおよびチタン化合物は、好適には、重縮合物触媒として使用される。使用できる触媒には、1種以上の金属単独または上記アンチモンとの混合物の有機および無機化合物が含まれるが、これにはゲルマニウムおよびチタンも含まれる。適切なアンチモン形状が使用でき、それらには、無機アンチモン酸化物および、酢酸アンチモン、シュウ酸アンチモン、アンチモングリコキシド(antimony glycoxide)、アンチモンブトキシド(antimony butoxide)およびアンチモンジブトキシド(antimony dibutoxide)のような有機アンチモン化合物が含まれる。アンチモン含有化合物は、高反応速度と低着色という望ましい組み合わせをもたらす触媒として商業的に広く用いられている。チタンは、下記の有機チタネートおよびチタン錯体から構成される群から選択できる:シュウ酸チタン、酢酸チタン、チタンブチラート、チタンベンゾアート、チタンイソプロプリレート、およびカリウムチタニルオキサレート。有機チタネートは、商業製造で一般的に使用されているというわけではない。重合が完了しかつ分子量が最大となった後溶融相終点において、前記製品をペレットとする。前記ペレットは、十分な強度のボトル樹脂を得るために、固体状態縮重合において処理し固有粘度を増加させる。前記触媒は、一般的に、金属二価または三価カチオンを含む。このような触媒を含むポリエステル材料の処理の結果、副生物が形成されることになる。このような副生物は、アセトアルデヒドとして通常分析されるアルデヒド物質のような反応性有機物質を含むことができる。アセトアルデヒド物質の形成は、飲料中のオフオーダーまたはオフテイストの原因となり、前記プラスチックに対して高濃度の黄色味を付与できる。ポリエステル製造業者らは、金属安定剤としてリン基剤の添加物を添加しアセトアルデヒド形成を低下させてきた。アルデヒド形成を低下させるためいろいろ試みられてきたが、これもまた、問題を生じてきた。Sb+1、Sb+2およびSb3+としてポリエステル中に製造由来触媒残渣として存在するアンチモンは、アルデヒド形成を防止するためまたはこのような物質を捕捉するために用いた前記添加物によってアンチモン金属Sbに還元できる。金属アンチモンの形成により、前記プラスチックに対してこの分散し細かく分割された金属残渣により灰色または黒色の外観が付与されることになる。
【0004】
高分子量熱可塑性ポリエステルは、上記に述べた触媒機構の結果としてまたは他の起源由来で多くの種類の比較的低分子量の(すなわち)1モル当たり実質的に500グラム未満の分子量の化合物を含むことができる。これらの化合物は、容器内部の食物、水または飲料中に抽出されることが可能である。これらの飲料に抽出されることができる物質は、一般的に、ポリエステル製造で用いたジオールまたは二酸化物の供給系統中の不純物を含む。さらに、抽出可能な物質は、前記重合反応、プリフォーム成形プロセスまたは熱成形吹込成形プロセスの副生物を含むことができる。前記抽出可能物質は、ホルムアルデヒド、蟻酸、アセトアルデヒド、酢酸、1,4−ジオキサン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、および他の反応性アルデヒド、ケトンおよび酸生成物を含む反応副生物物質を含むことができる。さらに、前記抽出可能物質は、残留ジエステル、ジオールまたは二酸物質を含有でき、メタノール、エチレングリコール、テレフタル酸、ジメチルテレフタル、2,6−ナフタレンジカルボン酸およびそのエステルまたはエーテルが含まれる。エチレングリコール1モルと1モルのテレフタル酸との反応により生成した(前記ポリエステル樹脂に比較して)比較的低分子量のオリゴマー性の線状または環状ジエステル、トリエステルまたはそれ以上のエステルが存在することもある。これらの比較的低分子量オリゴマーは、2モル以上のニ酸とともに2モル以上のジオールを含むことができる。Schiono,Journal of Polymer Science:Polymer Chemistry Edition,Vol.17,pp.4123−4127(1979)、John Wiley&Sons,Inc.は、ポリ(エチレンテレフタレート)オリゴマーを含むPET不純物をゲルろ過クロマトグラフィによって分離しかつ同定することを述べている。Bartlら、“Supercritical Fluid Extraction and Chromatography for the Determination of Oligomers and Poly(ethylene terephthalate) Films”、Analytical Chemistry, Vol.63,No.20,1991年10月15日、pp.2371−2377は、ポリエチレンテレフタレートフィルムから低オリゴマー不純物を分離同定する実験的超臨界流体操作を述べている。
【0005】
容器由来のこれら可溶性/抽出可能物質を含む食品または飲料は、敏感な消費者が摂取した時、認知できるほどのオフテイストすなわち味の変化またはある場合には味の低下を有することになる。前記抽出可能な化合物は、飲料からの香気分または香料分のいずれかの認知に付加できるかまたはそれらを妨害できる。さらに、ヒト消費用飲料に抽出できたあらゆる有機物質の毒性または発癌性に関して、実質的懸念が存在する。
【0006】
飲料容器製造に使用した組成物に関する技術は豊富でかつさまざまである。前記技術は、大筋で、二酸化炭素および酸素のような気体の透過性を低下させ、それによって貯蔵寿命を延長させる塗布および非塗布ポリオレフィン容器および塗布および非塗布ポリエステルに関する。前記技術は、また、製造方法およびボトル形状および底部構造に関する。Deafら、米国特許第5,330,808号は、ポリオレフィンボトルに対してフルオロエラストマーを添加し前記ボトル上に光沢表面を付与することを教示している。Visioliら、米国特許第5,350,788号は、リサイクルプラスチックの臭気低減方法を開示している。Visioliらは、また、リサイクルポリマーの比が大きいポリエチレン物質中で臭気捕捉剤として作用するポリアルキレンイミンおよびポリエチレンイミンを含む窒素化合物の用途を開示している。
【0007】
Wyethら、米国特許第3,733,309号は、吹込金型に吹き込まれる1層のポリエステルを形成する吹込成形機を示している。Addleman,米国特許第4,127,633号は、加熱後蒸気または気体バリアを形成するポリビニリデンクロライドコポリマーラテックスを塗布したポリエチレンテレフタレートプリフォームを教示している。Halekら、米国特許第4,223,128号は、飲料容器に有用なポリエチレンテレフタレートポリマーの製造プロセスを教示している。Bonnebatら、米国特許第4,385,089号は、ニ軸延伸吹込成形技術を用いて、ボトル状のニ軸延伸、中空熱可塑形成物品を製造するプロセスを教示している。プリフォームを吹き込み成形し、次いで金型の高温壁に接触するように保持して、前記プリフォーム中の内部残留ストレスを少なくとも部分的に低減させる。前記プリフォームを冷却し次いで2回目の吹込成形操作で適切な大きさに吹き込む。Gartlandら、米国特許第4,463,121号は、増大衝撃耐性、高温、寸法安定性および改良離型性を有するポリエチレンテレフタレートポリオレフィン合金を教示している。Ryder、米国特許第4,473,515号は、改良射出吹込成形装置および方法を教示している。前記方法において、パリソンまたはプリフォームが高温熱可塑性物質から冷却ロッド上で形成される。前記プリフォームを冷却し、次いで、吹込成形位置に移される。前記パリソンを次いで延伸し、ニ軸延伸し、冷却し、次いで前記装置から取り出す。Nilsson、米国特許第4,381,277号は、プリフォームから積層熱可塑性フィルムを含む熱可塑性容器を製造する方法を教示している。前記プリフォームは熱可塑性層とバリア層を有し、予備形成形状から十分に変換されて容器に形成される。Jakobsenら、米国特許第4,374,878号は、容器製造に使用した管状プリフォームを教示している。前記プリフォームはボトルに変換される。Motill、米国特許第4,368,825号、Howard Jr.,米国特許第4,850,494号、Chang,米国特許第4,342、398号、Beck,米国特許第4,780,257号、Krishnakumarら、米国特許第4,334,627号、Snyderら、米国特許第4,318,489号、およびKrishnakumarら、米国特許第4,108,324号はそれぞれ、好適な形状または自己支持性底部構造を有するプラスチック容器またはボトルを教示している。Hirata、米国特許第4,370,368号は、改良された酸素、湿分または蒸気バリア性を得るための熱可塑性ビニリデンクロライドおよびアクリル性モノマーおよび他のビニルモノマーを含むプラスチックボトルを教示している。前記ボトルは、ボトル金型に水性ラテックスを流し込み、前記キャストラテックスを乾燥させるかまたはボトル形成前に前記水性ラテックスでプリフォームを塗布することによって製造できる。Kuhfussら、米国特許第4,459,400号は、包装材料を含むさまざまな適用において有用なポリ(エステル−アミド)組成物を教示している。Maruhashiら、米国特許第4,393,106号は、積層またはプラスチック容器および前記容器の製造方法を教示している。前記積層体は、塗布層中に成形可能なプラスチック材料を含んでいる。Smithら、米国特許第4,482,586号は、ポリイソフタレートポリマーを含むポリエステル物質の多層体で良好な酸素および二酸化炭素バリア性を有するものを教示している。Walles、米国特許第3,740,258号および4,615,914号は、プラスチック容器をプラスチックのスルホン化により処理して、有機物質および酸素のような気体の透過に対するバリア性能を改良することを教示している。Ruleら、米国特許第6,274,212号は、アセトアルデヒドの縮合により5または6員のブリッジを形成できる官能基をヘテロ原子に隣接して含む捕捉化合物を用いてアセトアルデヒドを捕捉することを教示している。Al−Malaika PCT WO2000/66659およびWeignerら、PCT WO 2001/00724は、アセトアルデヒドスキャベンジャーとしてのポリオール物質の用途を教示している。Woodら、米国特許第5,837,339号、5,883,161号および6,136,354号はそれぞれ、ポリエステル中で置換シクロデキストリンを用いてバリア性を得ることを教示している。
【0008】
さらに、我々は、前記ポリエステルが、炭酸飲料によって容器壁に発生した圧力に抵抗する高破裂圧を有するように開発され処方されていることを認識している。さらに、製造、充填および貯蔵時における応力亀裂に対するポリエステル材料の耐性を改良するためになんらかの実質的研究が行われた。
飲料製造業者は、長い間、改良バリア物質を求めてきた。この研究努力は、大部分が、二酸化炭素(CO)バリア、酸素(O)バリアおよび蒸気(HO)バリアに関していた。さらに最近になって、もともとボトル製造に携わってきた業者達は、前記樹脂または容器中に飲料に抽出可能かまたは飲料に溶解する物質の存在に対する感度を有意に高めてきた。この研究は、バルクプラチックを透過性の低いポリマーのポリマーコーティングまたは積層体によって改良し透過性を低下させるためであった。しかし、我々は、飲料容器のバルクポリマーレジンまたはポリエステル物質中に、プリフォーム製造プロセス中にポリエステル樹脂に含まれた金属触媒残渣を捕捉し、前記樹脂または容器中の触媒残渣が原因の触媒により発生した飲料抽出可能なまたは飲料溶解可能な物質を低下させる活性錯化化合物を導入することには思い至らなかった。
【0009】
こうした実質的技術全体をもってしても未だ、実質的に反応性有機物質の容器中食品または飲料への溶出を低下させることができまたはヒト消費を目的とした飲料中に入る抽出可能物質中の透過物通過を低下させることができる飲料容器用ニ軸延伸熱可塑性ポリマー物質を開発する必要が生じていた。
ポリエステル樹脂の安定化およびアセトアルデヒドのような反応性有機物の吸収は、かなりの注目を集めてきていた。この問題を解決する提案が提起されてきた。ひとつの提案は、WO 9744376、EP26713および米国特許第5,874,517号およびJP 57049620に示されているように、リン化合物および窒素複素環を含む活性安定化剤を用いることを必要としている。非常に注目された別の提案では、固体状態重縮合(SSP)プロセッシングを含んでいる。前記2回目の重合段階後の物質を水または脂肪族アルコールで処理して、分解により残留物を低下させる。最後に、アセトアルデヒドを、キシリレンジアミン物質および低分子量芳香族ポリアミドに基づく低分子量部分芳香族ポリアミド反応性化学物質によって捕捉できる。[米国特許第5,258,233号、6,042,908号および欧州特許0 714 832を参照、市販ポリアミドについてはWO9701427を参照、ポリエチレンイミンについては5,362784を参照、テレフタル酸のポリアミドについては、WO9728218を参照、およびゼオライトのような無機吸収剤の用途については、米国特許第4,391,971号を参照。]
【0010】
Bagrodia、米国特許第6,042,908号は、オゾン水の臭気改良のためにポリエステル/ポリアミド配合物を用いている。Hallock,米国特許第6,007,885号は、ポリマー物質中において酸素捕捉組成物を教示している。Ebner、米国特許第5,977、212号はまた、ポリマー中における酸素捕捉物質を教示している。Rooney、米国特許第5,958,254号は、ポリマー物質用遷移触媒を有していない酸素スキャベンジャーを教示している。Speer,米国特許第5,942,297号は、ポリマー系中において酸素スキャベンジャーと併用する広範囲製品吸光度を教示している。Palomo、米国特許第5,814,714号は、配合モノオレフィン/ポリエンインターポリマーを教示している。最後に、Visioli、米国特許第5,350,788号は、リサイクルプラスチック中の臭気低減方法を教示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ポリエステル飲料ポリマー中においてさまざまな捕捉物質を用いる技術を実施する際に、ポリエステル中のアルデヒド、ケトンおよび酸のような有機物質濃度を灰色または黒色金属残渣となるアンチモンを還元させることなく低下させる技術が、非常に必要とされている。特に、ポリエステル中アセトアルデヒド残渣低下が必要である。さらに、ポリエステル物質中にバリア性を導入するとともにポリエステル中におけるアセトアルデヒド濃度を低下させる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
我々は、ポリエステル樹脂およびポリエステル飲料容器を、反応性有機化学化合物形成を阻害するように作用する活性成分で製造できることを見出した。この活性成分は、また、前記容器物質に対して有機蒸気バリア性を付与する。我々は、少量の特定置換シクロデキストリン化合物をバルクポリエステル樹脂製造中に前記ポリエステルチップまたはペレット上に塗布できることを見出した。前記シクロデキストリン化合物を有するポリエステルチップを次いで、ポリエステルプリフォーム物品を射出成形する目的または直接ボトルを吹き込む目的で押し出し器に導入できる。押し出し中、前記シクロデキストリン化合物を設定した滞留時間中高温で溶融ポリマーと混合する。溶融押し出し温度において、シクロデキストリン化合物を金属触媒残渣の錯体または会合物と反応させ、かつ、アセトアルデヒドのようなアルデヒド物質を含む触媒産生反応性有機化合物の産生を防止する。前記シクロデキストリン化合物はまた、前記溶融プロセスにおいて形成されたアセトアルデヒドのような揮発性反応性物質と反応してそれを捕捉する。プリフォームまたは吹込成形滞留時間は、シクロデキストリンまたはポリマー分解を起こすことなく有効にアルデヒド濃度を低下させる結果となる。このようなアルデヒド濃度低下は、前記熱可塑性ポリマー中の主要なオフオーダーおよびオフフレーバーを低下または消失させる。
【0013】
我々は、上記熱可塑性ポリマー上に特定のシクロデキストリン物質を少量装填するとそれは決定的に、優れた捕捉およびバリア性を付与することを見出した。好適には、前記シクロデキストリンは、ポリエステルチップまたはペレット上でコーティング層として形成される。このようなコーティングは、好適には水溶液である溶媒中に一般的に前記シクロデキストリン化合物を分散させるかまたは溶解させ、この水溶液を、重縮合および好適にはSSP後において前記ポリマーチップまたはペレット上に分散またはスプレーすることによって、作成される。この量のシクロデキストリンは、前記ポリマー樹脂が市販上許容できないほど変色することなくまたはポリマー透明性または物理的性質が低下することなく、上記性質を付与するために十分である。前記シクロデキストリン化合物は、一般的に、飲料容器製造に使用したバルクポリマー物質に取り込ませるか、分散されるかまたは懸濁される。我々はまた、前記シクロデキストリン水溶液の純度は、アルデヒド低下、着色低下、およびアンチモン還元防止を達成する際に重要であることを見出した。いったん形成されると、シクロデキストリン水溶液を活性炭吸収剤、イオン交換樹脂またはナノろ過、逆浸透等設備を含むろ過装置に接触させることによって、前記溶液を精製できる。
【0014】
好適には、前記本発明の技術に利用したシクロデキストリン化合物は、置換β−またはα−シクロデキストリンを含む。好適なシクロデキストリン物質は、シクロデキストリン環中グルコース部の少なくとも1個の3−OH上で置換される。β−シクロデキストリン物質は、シクロデキストリン環を形成する7個のグルコース部を含む。このような水酸基のいずれも置換できる。シクロデキストリン物質の置換度(D.S.)は、約0.3から1.8の範囲であることができる、好適には、置換度は、約0.5から1.2の範囲であることができる。我々は、前記ポリマー物質中の金属触媒残渣の錯体化のためには、ベータまたはアルファシクロデキストリンが好適であることを見出した。さらに、置換度は、前記シクロデキストリンが溶融ポリマーに相溶性であることを確認する際に重要な役割を果たすが、シクロデキストリンが、触媒残渣錯体化に関与できないほど置換されてはいない。我々はさらに、金属触媒残渣を錯体化することによってアルデヒド形成防止に有用な置換シクロデキストリン物質の量は、バリア構造中で活性なシクロデキストリンの量未満であることを見出した。アルデヒド抑制用置換シクロデキストリンの有効量は、全ポリマー組成物に基づいて約100ppmから1,400ppmの範囲、好適には350ppmから900ppmの範囲である。置換シクロデキストリン物質の主要な機械的作用は、シクロデキストリン当たり1個を超える金属イオンが結合している金属触媒の配位錯体である。メタロシクロデキストリンは置換シクロデキストリン(6位が−OH)から形成されるが、これは、未修飾(天然)シクロデキストリンのニ級水酸基(3位および2位)を介して結合した2個のシクロデキストリンから構成されるが、その際プロトン1個を失いアルコキシドを産生し、金属イオンを配位し、最も単純なタイプのメタロシクロデキストリンを形成する。したがって、本発明目標の達成のため、シクロデキストリンの実質的および有効分画が触媒残渣錯体化用に利用可能でなければならない。相溶性のシクロデキストリン化合物を包接錯体または包接化合物を実質的に含まない溶融熱可塑体に導入する。本発明について、用語“実質的に包接錯体を含まない”とは、ポリエステルチップまたはペレット上のコーティング中分散シクロデキストリン物質の量が、シクロデキストリン分子の中心孔中に錯体物質または“ゲスト化合物”を含まないことを意味している。本発明の第1の面は、プリフォームまたは飲料容器製造に際し使用した熱可塑性ポリエステル物質を大きな比率で含む熱可塑性ペレットまたはチップを含む。前記ペレットまたはチップは、コーティング外層、有効金属触媒スキャベンジャーおよび揮発性有機バリア−付与量のシクロデキストリン化合物を含む。このようなシクロデキストリン外側コーティングは、シクロデキストリン物質の水溶液から製造できる。前記水溶液は、シクロデキストリン物質を水性媒体に溶解させ溶液を形成させ前記溶液を精製することによって、製造できる。本発明の第2の面は、シクロデキストリン溶液を活性炭吸収剤、イオン交換樹脂または膜ろ過設備に接触させることによって精製シクロデキストリン溶液を形成させるプロセスを含む。本発明の第3の面は、前記ポリマーマトリックス内部に、射出成形時に形成されたアセトアルデヒドのような揮発性有機物質を低下させるためおよび前記熱可塑性ポリマーにバリア性質を導入するための有効量のシクロデキストリン化合物を有する熱可塑性プリフォームを含む。本発明の第4の面は、本発明のプリフォームから飲料容器を製造したことの結果として金属触媒スキャベンジャー性質および揮発性有機バリア性質を有する熱可塑性飲料容器を含む。最後に、本発明の第5の面は、プリフォーム段階を介して本発明の塗布ペレットまたはチップからポリエステル飲料容器を製造する方法を含む。これらの面のそれぞれにおいて、精製シクロデキストリン物質を使用した結果、ポリエステル容器内部の食品中でオフオーダーまたはオフフレーバーを産生する有機物質をほとんどまたは全く有していない透明で、実質的に水白色ポリエステル物質が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
我々は、ポリエステル物質の包装特性が、アルデヒドのような有機物質の形成を防止できるかまたは形成された有機物質を捕捉できる濃度の置換シクロデキストリン物質を用いて実質的に改良できることを見出した。我々はさらに、精製シクロデキストリン物質を用いることがポリエステル処理に好適であることを見出した。さらに我々は、好適な置換度、置換シクロデキストリンの濃度、および処理条件が高品質のポリエステル物質を産生することを見出した。我々は、ポリマーと修飾シクロデキストリン物質を混合することで、改良された反応性有機化合物性質とポリマー残渣(例 アセトアルデヒド)放出傾向低下が得られることを見出した。
【0016】
適切なポリエステルは、少なくとも60モルパーセントの、好適には少なくとも75モルパーセントの、さらに好適には少なくとも85モルパーセントのテレフタル酸(TA)またはC−Cジアルキルテレフタレートを含む二酸またはジエステル成分と、少なくとも60モルパーセントの、好適には少なくとも75モルパーセントの、さらに好適には少なくとも85モルパーセントのエチレングリコール(EG)を含むジオール成分を反応させることから製造される。また、ニ酸成分がTAであり、またはジアルキルテレフタレート成分がジメチルテレフタレート(DMT)であり、かつ、ジオール成分がEGである。全二酸/ジアルキルテレフタレート成分の総計モルパーセントは100モルパーセントであり、全ジオール成分のモルパーセントが総計100モルパーセントである。
【0017】
これとは別に、適切なポリエステルは、少なくとも60モルパーセントの、好適には少なくとも75モルパーセントの、さらに好適には少なくとも85モルパーセントの2,6−ナフタレンジカルボン酸(NDA)またはC−Cジアルキルナフタレート、を含むニ酸またはジエステル成分と、少なくとも60モルパーセントの、好適には少なくとも75モルパーセントの、さらに好適には少なくとも85モルパーセントのエチレングリコール(EG)を含むジオール成分の反応から製造される。
【0018】
ポリエステル成分をEG以外の1種以上のジオール成分によって修飾する時、上記ポリエステルの適切なジオール成分は、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、および1個以上の酸素原子を鎖中に含むジエチレングリコール、トリエチレングルコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングルコールまたはこれらの混合物等を含むジオールから選択できる。一般的に、これらのジオールは、2乃至18個、および好適には2乃至8個の炭素原子を含む。シクロ脂肪族ジオールは、それらのシスまたはトランス構造でまたは両形状の混合物として使用できる。
【0019】
前記ポリエステル成分をTA以外の1種以上の酸成分によって修飾する時、線状ポリエステルの適切な酸成分は、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカンジオン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、t−スチルベンジカルボン酸、4,4‘−ジ安息香酸、またはこれらの混合物またはそれらの無水物等のクラスから選択することができる。ポリエチレンナフタレートの場合、2,6−ナフタレンジカルボン酸を、上述のテレフタル酸の代わりに使用できる。
【0020】
飲料容器業界用一般的PET基剤ポリマーは、約97モルパーセントのPETおよび3モルパーセントのイソフタレートを有し、−−したがって、それは、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレートの共重合体である。ポリマー調製において、ジカルボン酸のジメチル、ジエチルまたはジプロピルエステルのようなその機能的酸誘導体を使用することがしばしば好適である。これらの酸の無水物または酸ハライドも実用的である場合使用することができる。これらの酸修飾剤は、一般的に、テレフタル酸に比較して結晶化速度を妨げる。
【0021】
ポリエチレンテレフタレートの従来の製造は当該技術で周知であり、約200乃至250℃の温度でエチレングリコール(EG)とテレフタル酸(TA)(またはジメチルテレフタレート−DMT)を反応させ、モノマーおよび水(DMTを用いる時、モノマーとメタノール)を形成する。前記反応は可逆的であるので、水(またはメタノール)を連続的に除去し、それによって前記反応をモノマー製造に向ける。前記モノマーは、主に、BHET(ビスハイドロキシエチレンテレフタレート)、一部MHET(モノハイドロキシエチレンテレフタレート)および他のオリゴマー性生成物および少量の未反応原料を含む。その後、BHETおよびMHETは重縮合反応を受けポリマーを形成する。TAとEGとの反応時、触媒を存在させる必要はない。DMTとEGの反応中エステル交換触媒を用いることが必要である。適切なエステル交換触媒を数種挙げてみると、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)およびマグネシウム(Mg)を含有する化合物が挙げられる。一般的に、前記重縮合反応時において、好適な触媒は、アンチモン塩または化合物の形状のアンチモンである。製造時ボトル等級のPET樹脂を不活性な室温で加熱し、樹脂中においてさらに重合を促進するかまたはSSP樹脂として処理することが多い。一般的に、ボトル等級のPET樹脂は、約0.70乃至約.85dL/gの固有粘度(IV)を有している。
【0022】
射出吹込成形プロセスを用いてポリエステルボトルを製造する。一般的に、2種の製造技術が用いられる。ひとつの方法では、プリフォームを、射出成形技術によってプリフォーム形状とするが、これは、ほぼ有用な大きさとなっておりボトルのネックおよびねじ込み式フタを有するが、最終ボトル形状よりも実質的に小さい閉管状形状のプリフォーム本体を有する。単一成分または多層プリフォームを用いることができる。次いで、このプリフォームを吹き込み成形器に入れ、そこで十分に加熱し前記プリフォームを適切な形状に膨張させ吹き込みする。これとは別に、前記樹脂を鋼鉄芯のロッド上で射出吹込成形できる。ボトルネックには、適切な形状とした受け入れクロージャー(キャップ)を形成し、樹脂は、吹込段階のために温度管理ロッド周辺に付与する。レジンを有するロッドを金型に割り出し、この樹脂をロッドから金型壁に対して吹き飛ばす。金型に接触させつつこの樹脂を冷却し、透明ボトルを形成する。最終ボトルを取り出し、ロッドは再度射出成形ステーションで動かす。このプロセスは、単一円筒形状ボトルに好適である。
【0023】
最も一般的な機械は4個のステーション装置を有しており、樹脂を射出し、樹脂を適切な形状に吹き込み、ロッドから形成された容器を除去し、前記プロセスを繰り返す前に芯ロッドを再調整できる。このような容器は、一般的に、金属ねじ込みキャップに適応させたねじ山を切ったネックを含むクロージャーアクセサリー部分を有するように製造される。前記ボトル底部は一般的に、4ローブまたは5ローブデザインのようなローブ付きデザインを有し、前記ボトルが安定に垂直位置に置けるようにできる。製造施設は継続的に改良されてきており、吹込ステーションを付加し生産量増大を図っている。
【0024】
シクロデキストリン
本発明の熱可塑性物質は、好適には一級炭素原子上に1置換基を有するシクロデキストリンを含むことができるシクロデキストリン化合物を含有する。このようなシクロデキストリン物質は、捕捉およびバリア性において熱可塑性ポリエステル物質に相溶性であることが明らかとされている。前記シクロデキストリン物質を熱可塑体に添加し、溶融処理時において、プリフォームおよび最終飲料容器中に捕捉性質およびバリア性を付与する。前記シクロデキストリン物質は時間、温度の良好な製造条件下で、相溶性で、燃焼せず、最終容器中ポリマー外観において曇または構造性の低下または透明性低下を生ずることがない。
【0025】
シクロデキストリン(CD)は、α(1−4)結合によって結合した少なくとも5個、好適には6個のグルコピラノース単位から構成される環状オリゴ糖である。12個までのグルコース残渣を有するシクロデキストリンが公知であるが、6,7および8個の残基を有する3種の最も一般的なホモログ(α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、およびγ−シクロデキストリン)が公知であり本発明において有用である。
【0026】
シクロデキストリンは、澱粉または澱粉様物質から極めて選択的な酵素合成によって製造される。それらは、一般的に、ドーナツ形状のリングになった6個、7個または8個のグルコースモノマーから構成されており、それらは、それぞれ、α、βおよびγシクロデキストリンと称されている(図1参照)。グルコースモノマーの特定結合により、硬く、短くなった円錐分子構造で特定容量の中空内部を有するシクロデキストリンが得られる。この内部空洞は、親水性外部に比較して広範囲の炭化水素物質にとって無極性であり(すなわち、前記親水性外部に比較して広範囲の炭化水素物質にとって誘引性であり、シクロデキストリンの重要な構造特性で、分子(例 芳香族、アルコール、ハロゲン化物およびハロゲン化水素、カルボン酸およびそれらのエステル等)を錯体化する能力を付与する。前記錯体化分子は、シクロデキストリン内部空洞に少なくとも部分的にはめ込むための寸法基準を充足せねばならず、その結果、包接錯体が生ずる。これらの錯体は、CDおよびゲストとの間に二次的な結合のみが生ずること、それでいてその安定性がシクロデキストリンとゲストの特徴に依存しながら極めて高くなりうるという点において、極めて珍しい。金属−シクロデキストリンの集合は、余りない珍しい分子系において全ての基本的結合様式(非特異的ファンデアワールス結合、水素結合および金属に対するリガンド結合)を示している。
【0027】
【表1】

【0028】
オリゴ糖リングは、短くなった円錐としての円環面(トーラス)を形成し、前記トーラスの狭い短部に各グルコース残基の一級水酸基を有している。ニ級グルコピラノース水酸基は広い端部に配置されている。トーラス内部は、メチレン(−CH−)およびエーテル(−O−)基の存在により疎水性である。
【0029】
親のシクロデキストリン分子および有用な誘導体は下記の式(環炭素は、従来の番号付けを示している)によって表すことができ、式中、何も書いていない結合は、この環状分子のバランスを示している:
【0030】
【化1】

【0031】
式中、n=6,7または8個のグルコース部位でありRおよびRは、一級または二級水酸基または置換基(メトキシ、アセチル等)をそれぞれ示している。上記に示したシクロデキストリン分子は、6位(一級基)および3位および2位(二級基)における反応に利用できる−OH基を有している。アルデヒド捕捉に使用するために好適なシクロデキストリン化合物はβ−シクロデキストリンであるが、置換シクロデキストリンを用いてバリア性を高めることができる。好適なシクロデキストリンは、前記オリゴマー中R一級水酸基の1個以上において置換されている。好適なシクロデキストリンは、まず第1にβ―CD、次いでα―CDであり、および6位において主に置換されている。
【0032】
熱可塑性ポリマーと相溶性の官能基を有する誘導体化したシクロデキストリン物質を製造するための好適な調製計画では、置換シクロデキストリン分子の最小限二級水酸基と前記一級水酸基における反応を含む。修飾シクロデキストリンがリガンドとして作用する配位化合物または金属錯体は、前記二級水酸基が誘導体を全く含まないことを必要としている。十分な数の一級水酸基が、前記ポリマーとの相溶性を有するためおよび前記プロセスにおける熱安定性を有するため、修飾されることを必要とする。一般的に、我々は、広範囲の官能基を持った側鎖(ペンダント)置換基部分を前記分子上で使用できることを見出した。これらの誘導体化シクロデキストリン分子は、アシル化シクロデキストリン、アルキル化シクロデキストリン、トシレート、メシレートおよび他の関連スルホ誘導体のようなシクロデキストリンエステル、ハイドロカルビル−アミノシクロデキストリン、アルキルホスホノおよびアルキルホスフェートシクロデキストリン、イミダゾイル置換シクロデキストリン、ピリジン置換シクロデキストリン、ハイドロカルビルイオウ含有官能基(置換)シクロデキストリン、シリコン含有官能基置換シクロデキストリン、カルボネートおよびカルボネート置換シクロデキストリン、カルボン酸および関連置換シクロデキストリンおよびその他を含む。前記置換基部分は、前記誘導体化物質に対する相溶性を付与する領域を含まなければならない。
【0033】
相溶性とする官能基として使用できるアシル基は、アセチル、プロピオニル、ブチリル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル、アクリロイルおよび他の周知の基を含む。シクロデキストリン分子の一級または二級環水酸基のいずれかにおける上記基の形成には、周知の反応を必要とする。前記アシル化反応は、適切な酸無水物、酸塩化物、および周知の合成プロトコールを用いて実施できる。過アシル化シクロデキストリンが製造できる。さらに、上記基で置換された利用可能な水酸基全てではないそれ未満を有するシクロデキストリンは、他の官能基で置換された利用可能なバランス水酸基の1個以上により製造できる。
【0034】
シクロデキストリン物質はまた、アルキル化剤と反応させ、アルキル化シクロデキストリン、シクロデキストリンエーテルを製造できる。アルキル化基を用いて、利用可能な水酸基を前記アルキル化剤と徹底的に反応させるための十分な反応条件を用い過アルキル化シクロデキストリンを製造できる。さらに、前記アルキル化剤に応じて、前記反応条件で用いたシクロデキストリン分子は、利用可能な全水酸基未満で置換されたシクロデキストリンを製造できる。アルキル化シクロデキストリン形成に有用なアルキル基の一般的例には、メチル、プロピル、ベンジル、イソプロピル、三級ブチル、アリル、トリチル、アルキル−ベンジルおよび他の一般的なアルキル基が含まれる。このようなアルキル基は、水酸基を適切な条件下でアルキルハロゲン化物またはアルキル化アルキル硫酸反応物質と前記水酸基を反応させることのような従来の調製方法を用いて製造できる。好適なシクロデキストリンは、メチル、エチル、n−プロピル、t−ブチル等のような単純な低級アルキルエーテルであり、過アルキル化されていないが約0.3乃至1.8の置換度を有している。
【0035】
トシル(4−メチルベンゼンスルホニル)メシル(メタンスルホニル)または他の関連アルキルまたはアリルスルホニル形成試薬を、熱可塑性樹脂用途のために相溶性にしたシクロデキストリン分子の製造において使用できる。前記シクロデキストリン分子の一級−OH基は、二級基よりもはるかに容易に反応させることができる。しかし、前記分子は、実質的にいかなる位置でも置換でき、有用な組成物を形成する。
【0036】
このようなスルホニル含有官能基を用いて、シクロデキストリン分子中あらゆるグルコース部分の二級水酸基または一級水酸基のいずれかを誘導体とすることができる。前記反応は、一級または二級水酸基と有効に反応できるスルホニルクロライド反応物質を用いて実施できる。前記スルホニルクロライドは、置換を要する分子中の標的水酸基の数に応じて、適切な分子比で使用される。(スルホニル部分を1個だけ有する置換化合物当たり)シンメトリ体または(スルホニル誘導体を含む基混合物で置換された一級および二級水酸基当たり)非シンメトリ体を、公知の反応条件を用いて調製できる。スルホニル基は、実験者が選択した一般的アシルまたはアルキル基と組み合わせできる。最後に、1置換シクロデキストリンも製造できるが、ここでは、前記環中1個のグルコース部分が、1個乃至3個のスルホニル置換基を含む。シクロデキストリン分子の残部は未反応のままである。
【0037】
ペンダント熱可塑性ポリマー含有部分を有するシクロデキストリンのアミノおよび他のアジド誘導体は本発明のシート、フィルムまたは容器に使用できる。前記スルホニル誘導体化シクロデキストリン分子を用いて、スルホニル基置換シクロデキストリン分子からアジド(N−1)イオンによるスルホン酸基の求核的排除を介してアミノ誘導体を産生できる。前記アジド誘導体をその後置換アミノ化合物に還元によって変換される。多数のこれらのアジドまたはアミノシクロデキストリン誘導体が、製造されている。このような誘導体は、シンメトリ置換アミン基(シクロデキストリン骨格上にシンメトリに配置された2個以上のアミノまたはアジド基を有するかまたはシンメトリに置換されたアミンまたはアジド誘導体化シクロデキストリン分子として製造できる。窒素含有基を産生する求核的排除反応により、6位炭素原子の一級水酸基は、窒素含有基の導入に最も可能性の高い部位である。本発明で有用であることができる窒素含有基の例は、アセチルアミノ基(−NHAc)、メチルアミノ、エチルアミノ、ブチルアミノ、イソブチルアミノ、イソプロピルアミノ、ヘキシルアミノ、および他のアルキルアミノ置換基を含むアルキルアミノを含む。前記アミノまたはアルキルアミノ置換基はさらに、前記窒素原子と反応する他の化合物と反応させ、さらに、前記アミン基を誘導体化する。他の可能な窒素含有置換基は、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ピペリジノ、ピペリヂノ、四級置換アルキルまたはアリルアンモニウムクロライド置換基のようなジアルキルアミノを含む。シクロデキストリンのハロゲン誘導体は、相溶性誘導体と置換されたシクロデキストリン分子の製造用供給ストックとして製造できる。このような化合物において、一級または二級水酸基は、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨードまたは他の置換基のようなハロゲン基と置換される。ハロゲン置換の最も可能性の高い位置は、6位の一級水酸基である。
【0038】
ハイドロカルビル置換ホスホノまたはハイドロカルビル置換ホスフェート基を用いてシクロデキストリン上に相溶性誘導体を導入できる。一級水酸基において、シクロデキストリン分子はアルキルホスフェート、アリルホスフェート基に置換できる。この2および3二級水酸基は、アルキルホスフェート基を用いて分枝状にできる。
【0039】
シクロデキストリン分子は、ペンダントイミダゾール基、ヒスチジン、イミダゾール基、ピリジノおよび置換ピリジノ基を含む複素環核によって置換できる。
【0040】
シクロデキストリン誘導体をイオウ含有官能基で修飾して、シクロデキストリン上に相溶性置換基を導入できる。上記のスルホニルアシル化基と異なり、スルフィドリル化学に基づいて製造されたイオウ含有基を用いてシクロデキストリンを誘導体とすることができる。このようなイオウ含有基には、メチルチオ(−SMe)、プロピルチオ(−SPr)、t−ブチルチオ(−S−C(CH)、ハイドロキシエチルチオ(−S−CHCHOH)、イミダゾリルメチルチオ、フェニルチオ、置換フェニルチオ、アミノアルキルチオおよびその他が含まれる。上記のエーテルまたはチオエーテル化学に基づき、ハイドロキシルアルデヒドケトンまたはカルボン酸官能基で終わる置換基を有するシクロデキストリンを調製できる。このような基には、ハイドロキシエチル、3−ハイドロキシプロピル、メチルオキシエチルおよび対応するオキセム異性体、ホルミルメチルおよびそのオキセム異性体、カビルメトキシ(−O−CH−CHH)およびカルビルメトキシメチルエステル(−O−CHCO−CH)が含まれる。
【0041】
ケイ素含有相溶性官能基を有するシクロデキストリン誘導体が調製できる。ケイ素基は、一般的に、単一置換ケイ素原子または置換基を有する繰り返しケイ素−酸素骨格を有する基を称する。一般的に、前記ケイ素置換基中ケイ素原子のかなりの割合がハイドロカルビル(アルキルまたはアリル)置換基を有している。ケイ素置換物質は一般的に、向上した熱および酸化安定性と化学的不活性を有している。さらに、前記ケイ素基は、耐候性を高め誘電強度を付加し、表面張力を向上させる。ケイ素基の分子構造は、前記ケイ素基が単一ケイ素原子を有するかまたは2個ないし20個のケイ素原子を前記ケイ素部分に有しており、線状または分枝状であり、多数の繰り返しケイ素−酸素基を有し、さらに、種々の官能基で置換できる。この発明目的のため、単純なケイ素含有置換基部分が好適であり、トリメチルシリル、混合メチル−フェニルシリル基等を含む。我々は、あるβ−CDとアセチル化およびハイドロキシアルキル誘導体が商業的に利用可能であることを認識している。
【0042】
好適には、本発明の技術で使用した前記シクロデキストリン化合物は、置換βまたはα―シクロデキストリンを含む。好適なシクロデキストリン物質は、シクロデキストリン環中のグルコース部分の6−OHにおいて実質的に置換されている。シクロデキストリン環中のグルコース部分の3−および2−位における遊離水酸基が、金属触媒錯体形成に重要である。シクロデキストリン物質の置換度(D.S.)は、約0.3から1.8の範囲であることができる、 好適には、置換度は、約0.5から1.2の範囲であることができる。さらに、置換度は、シクロデキストリンがポリマー溶融物と相溶性であるがシクロデキストリンが触媒残渣錯体化に関与できないほどに確実に置換されないようにする上で、重要な役割を果たしている。我々はさらに、金属触媒残渣を錯体化することによってアルデヒド形成を防止する際に有用な置換シクロデキストリン物質の量が揮発性有機化合物のためのバリア構造に一般的に使用されるシクロデキストリンの量よりも少ないことを見出した。アルデヒド抑制用置換シクロデキストリンの有効量は、ポリマー組成物全体に基づき、約100ppmから1400ppm、好適には350ppmから900ppmの範囲である。我々は、置換シクロデキストリン物質の機械的作用は触媒残渣と配位錯体を形成する1個以上の二級水酸基であり、1個を超える金属イオンがシクロデキストリン当たり結合しているメタロシクロデキストリンを形成すると考えている。プリフォームおよびボトル製造中の有機残渣形成防止において有用なシクロデキストリン量はバリア適用において使用されるものよりも少なく、その少ない量においてさえもシクロデキストリン物質がある程度のバリア性を付与できると信じている。本出願に開示した濃度によれば、再生アセトアルデヒド形成は前記ポリエステル中で実質的に減少し、ある程度のバリア性が達成される。これらの結果を達成するため、実質的かつ有効シクロデキストリン分画が、触媒残渣錯体化に利用できなければならず、本発明の目標を達成する。相溶性シクロデキストリン化合物を、包接錯体または包接化合物を実質的に含まない溶融熱可塑体中に導入する。本発明において、用語“実質的に包接錯体を含まない”とは、ポリエステルチップまたはペレット上コーティング中の分散シクロデキストリン物質の量がシクロデキストリン分子の中心孔中において錯体物質または“ゲスト化合物”を含まないことを意味する。触媒残渣以外の物質は、シクロデキストリン分子の中心孔または開口部を占有できるが、十分な非占有シクロデキストリンが、前記触媒をそのアルデヒド−生成役割から除去するために利用可能でなければならない。
【0043】
熱形成操作のいずれかに使用された原材料は、チップ形状またはペレット化熱可塑性ポリエステルである。前記熱可塑性ポリエステルは、溶融物の形状で製造され、バルクポリマーに変換される。前記溶融物は、有用なペレットまたは他の小径のチップ、フレークまたは粒子に容易に小さくできる。前記ペレット、チップ、フレークまたは粒状ポリエステルを次に、誘導体シクロデキストリン物質と均一になるまで混合し、乾燥させ水分を除去し、次に、修飾または誘導体シクロデキストリンおよびポリエステル物質の均一分散物または溶液が得られる条件下で溶融押し出しを行う。生成したポリエステルペレットは一般的に、実質的には透明、均一および従来の大きさである。前記ペレットは好適には、約0.01乃至約0.14wt%のシクロデキストリン化合物、好適には約0.035乃至約0.09wt%のシクロデキストリン化合物を含有し、次に、修飾シクロデキストリン物質を含むポリエステルペレットを射出成形技術により従来のプリフォームまたはパリソンに導入できる。これらの技術の生成物は、同様の割合で物質を含む。
【0044】
前記シクロデキストリン化合物は、チップまたはペレットまたは類似構造物に有効量のシクロデキストリンまたは置換シクロデキストリンを含有する液体コーティング組成物を塗布することによって、チップまたはペレット上に導入できる。このようなコーティング組成物は一般的に液体媒体を用いて形成される。液体媒体には、水性媒体または有機溶媒媒体を含む。水性媒体は、一般的に、水を添加物または他の成分と組み合わせてコーティング可能水性分散液または溶液を形成させることによって、作製される。溶媒基剤分散液は有機溶媒に基づいており、コーティング技術に基づく公知の対応する溶媒を用いて、作製できる。本発明の液体コーティング組成物は、フラッドコーティング、スプレイコーティング、流体化ベッドコーティング、静電気的コーティングまたは十分量のシクロデキストリンをペレット、チップまたはフレークに装填して最終ポリエステルボトル中でスキャベンジャーまたはバリア物質として作用させることができる他のあらゆるコーティングプロセスを含む一般的な全てのコーティング技術を用いてポリエステルペレット、チップまたはフレークと接触させることができる。最終コーティングの量と厚さを注意深くコントロールすることによって、スキャベンジャーおよびバリア性を物質廃棄物もなく最適化でき、熱可塑性ボトルの透明性と色を保持し、ポリエステルの物理的性質を最適化する。コーティング水溶液中のシクロデキストリン物質は、前記シクロデキストリンを約1.0から約50wt%、前記シクロデキストリンを約3.0から約40wt%まで含むことができる。一般に、前記コーティングはペレット、チップまたはフレークに適用され、前記溶液または分散液の液体担体部分を通常ポリエステル上に加熱放置して乾燥コーティングを生じさせることによって、除去される。溶液または液体媒体は乾燥すると、実質的に全く前記ペレット上に残らない。通常、塗布ポリエステルは、デシケータ乾燥機中で乾燥させ、射出成形前に微量の残留水を除去する。一般的に、PETチップは、50ppmまたはそれ以下の湿分まで乾燥させる。十分なシクロデキストリンを、最終完成プリフォームまたはパリソンが最終的にポリエステル総量に対して約1,400ppm未満のシクロデキストリン化合物を含有する吹込成形ポリエステル飲料容器となるように、ポリエステルチップ、ペレットまたはフレークに添加する。この量より多いシクロデキストリン化合物量がポリエステル中に存在すると、再生アセトアルデヒド低下、透明性に影響を及ぼし、黄色化を来たす。好適には、ポリエステル物質中物質量は、ポリエステル物質中シクロデキストリン化合物約350ppm乃至900ppmの範囲にわたる。
【0045】
プリフォームまたはパリソンの製造時および最終容器製造時、注意しなければならない。プリフォーム製造時およびその後の容器製造時、溶融ポリマーを十分な時間設定温度に溶融ポリマーを保持し適切な捕捉性を得ることおよび完全にシクロデキストリン物質をポリマーマトリックス中に分散させるという観点からの十分な熱履歴が達成されなければならない。しかし、前記段階の時間と温度は、シクロデキストリン物質が熱分解して捕捉能およびバリア性の喪失とポリマー黄色化が起こる程(すなわち、シクロデキストリンの環開裂)長くなってはいけない。ポリマー曇りは前記プリフォーム再加熱温度以下の溶融点を有するシクロデキストリン誘導体が選択されなければ、延伸吹込成形時に生ずる。プリフォーム再加熱温度を超える溶融点を有するシクロデキストリンは、ニ軸延伸ボトルに微小空洞を産生し、前記ポリマーにどんよりした外観を付与するであろう。したがって、使用設備に応じて、前記熱可塑性ポリマーは約260℃、好適には約270℃から290℃の温度で約90秒、好適には約120±30秒の総計滞留時間だけ溶融形状に保持され、シクロデキストリン物質がアセトアルデヒド生成を確実に防止する間、射出成形時確実に適切に金属残渣を錯体化する。総滞留時間は、射出成形機械のサイクル時間から決定される。
【0046】
我々はまた、シクロデキストリン物質が本発明の目標達成に重要であることを見出した。上記にも述べたように、シクロデキストリン物質を水溶液の形状でポリエステルペレットまたはチップに適用する。このような溶液は、シクロデキストリン物質を水性媒体に溶解させるかまたは懸濁させることによって作製される。前記水溶液は、微量の不純物を除去したシクロデキストリン物質から調製される。これらの不純物は、線状澱粉、糖および多糖前駆体物資を産生するシクロデキストリン物質の酵素製造からまたはシクロデキストリン物質と誘導体形成に使用した反応物質との合成反応から生じる。置換シクロデキストリン物質中に不在物として存在し射出成形PETにオフ黄色を生じる物質は、鉄、塩化ナトリウム、酢酸、酢酸鉄、酢酸ナトリウム、フルフラール、線状澱粉および糖、脱水線状澱粉、レボグルコサン、レボグルコセノンおよびタンパク質を含む。
【0047】
我々は、これらのシクロデキストリン不純物が、シクロデキストリン水溶液を活性炭または活性炭吸収剤と接触させること、前記シクロデキストリン水溶液をイオン交換樹脂と接触させることまたは前記水溶液をナノろ過または逆浸透設備に接触させることを含む精製技術を用いて効果的に除去できることを見出した。我々は、これらの技術を用いて、シクロデキストリン水溶液中不純物濃度をポリエステル物質中における色産生、望ましくない有機物質形成またはアンチモン還元に寄与しない程度にまで低下させることを見出した。
【0048】
このような精製プロセスにおいて、前記シクロデキストリン水溶液は、水溶液中シクロデキストリン約3乃至50wt%の濃度に調製される。このような
水溶液は、吸収剤1キログラム当たり約10乃至350リットルの速度で前記活性炭吸収剤または樹脂吸着剤に接触させることができる。前記溶液が前記吸収剤と接触する滞留時間を調整し、実質的に不純物を除去できるようにする。しかし、前記溶液は、一般に、約0.5乃至24時間前記吸収剤と接触するように保持される。
【0049】
ナノろ過または逆浸透処理において、前記水性シクロデキストリン物質を適切な精製設備に入れ、シクロデキストリン物質中実質的割合の不純物がフィルターまたは逆浸透膜を確実に通過できる適切な圧力と適切な時間だけ保持し、一方、シクロデキストリン物質は、リジェクト水溶液中に保持する。この観点からして、フィルターまたは膜の1平方メートル当たり約700乃至1,200リットルの溶液を前記設備に約125乃至2,000リットル/時間の速度で通過させる。フィルターまたは膜を通過した溶出物は、供給流の約60乃至98%を含む。一般的に、ナノろ過または逆浸透設備は、約125乃至600psiの内圧で稼動する。
【0050】
Dowex SD−2(三級アミン官能基マクロ孔スチレンジビニルベンゼンコポリマー)のような脱色樹脂を用いて、シクロデキストリン水溶液からPET黄色原因物質を除去する。Dowex Monosphere77(弱塩基アニオンレジン)、Dowex MAC−3(弱カチオンレジン)およびDowex88(強酸カチオン)のような他のレジンもまた、Dowex SD−2とともに(インフロント)使用できる。これらのレジンは、レジンft当たり2乃至25リットル/分のフローで稼動させることができる。
【0051】
下記に、オフカラー生成能力に基づき乾燥シクロデキストリンを熱安定性について評価する方法を概説している。この方法は、シクロデキストリン塗布PETチップを射出成形する処理法を模倣している。約2mLの25wt%シクロデキストリン溶液を20mLの上部スペースを有するバイアル(または均等物)に入れる。実験室ホットプレート(または均等物)を適度な温度で用いてバイアルを加熱することによって、前記溶液から水を蒸発させる。前記バイアルを加熱しながら定期的に攪拌し、バイアル内部を布クズを含まないワイプによりふき取り、濃縮物を除去する。残渣が粘性になり発泡し始めた時、バイアルを熱からはずして静かに回転させ、前記バイアル内壁を均等に塗布した。塗布バイアルを60℃のオーブンに約10分間入れ、残留水を全て除去することによってシクロデキストリン残渣を完全に固化した。前記透明CD残渣は蒸発が完了した時発泡しわずかに曇ることがある。乾燥したとき前記バイアルを除去し、オーブンを280℃に加熱する。前記バイアルを280℃のオーブンに正確に2分間だけ入れ(バイアルをオーブンに入れるともしオーブン温度が低下するならば、オーブン温度が270℃を超えた時のみタイミングを見計らう。バイアルを除去し、室温まで冷却させる。シクロデキストリン残渣は無色からわずかにオフ黄色となっているべきである。
【0052】
図面の詳細な説明
図1は、種々のシクロデキストリン分子の大きさを概念的に示した一般的な等尺性図面である。図1は、α、β、またはγ−シクロデキストリンを示し、シクロデキストリン環の外部の大きさと透過物またはポリマー不純物のトラップ部位として作用できる内孔の大きさを示している。図1は、一級およびニ級水酸基が環状形態の端に存在することを示している。
図2は、実質的に透明な容量2リットルの炭酸飲料容器の側面図である。全体を20で示した前記容器は、本体22、土台24およびフタ部分26を含む。前記容器の全形状が、熱可塑吹込成形操作により形成される。土台24は、ボトル製造時に形成された自己支持性土台である。このようなボトルは、パリソン形成時に形成されたもうひとつの熱可塑性物質を有するパリソンから調製された第2層17を有するかまたは液体コーティング物質に由来する第2層17を有することができる。液体コーティング物質は、パリソンコーティングまたはボトルコーティングのいずれかである。
図3−7は、下記の実験の章で検討する。
【0053】
実験セクション
これまでの説明は、前記適用の種々の態様および本発明の物質のアセトアルデヒド低下およびバリアおよび錯体化性質を示している。下記の実施例および
データはさらに、本発明を例示し、最良の形態を含んでいる。
【0054】
試験方法
固有粘度(IV)は、一般的無晶性ポリマー組成物0.2グラムをジクロロ酢酸20ミリリットルと温度25℃で混合し、その相対的粘度(RV)をUbbelhode粘度計を用いて決定する。RVは、式IV=[(RV−1)×0.691]+0.063を用いてIVに変換する。ポリマーチップの色は、Minolta Chroma−meter CR−310分光光度計を用いてASTM D6290−98を用いて測定し、1個以上のCIE L*、a*およびb*標準単位として報告した。プリフォームの曇りは、また、この機器を用いて測定した。
【0055】
シクロデキストリンを用いたPETレジン中におけるアセトアルデヒド低下
アセトアルデヒドは、本発明の望ましくない有機化合物阻害性質にとって良好なモデルである。表1は、重縮合物無晶ポリエチレンテレフタレート中におけるアセトアルデヒド(AA)低下を示し分析試験結果を含んでいる(実施例1−21)。Wacker Biochem Corporation製造のさまざまなシクロデキストリン化合物(未修飾および修飾)を、溶融重縮合ポリエチレンテレフタレート中に溶融PETをバッチ反応容器から押し出す2分前に添加し、冷水でクエンチさせ、ペレットとしてチップ化した(チップとも称される)。この試験は、アセトアルデヒド除去についてさまざまなシクロデキストリンを評価するために行った。溶融レジン押し出し前のこの特定バッチプロセスにおけるアセトアルデヒド濃度バランスは、約60ppmである。シクロデキストリン化合物は、前記プロセスの最後の2分間に添加させ、反応容器ミキサーにより分散される。2分後、ポリエチレンテレフタレートを前記ミキサーから押し出す。バッチ反応容器からクエンチ水中に出る溶融レジンの流れは、ヌードルと称される。前記反応容器から溶融レジンを水切りするため、数分が必要である。前記ヌードルサンプルを極低温的に冷却し、10メッシュまたはそれより細かく粉砕し、ガラスサンプル瓶に入れ、すぐに密封する。顆粒化PETサンプル0.25+/−0.002gを22mlのガラスバイアルに入れる。このバイアルを、テフロン表面のブチルゴム隔壁およびアルミニウムクリンプトップを用いてすぐにふたをする。バイアルを90分間160℃に加熱することによって前記上部空間にサンプルからアセトアルデヒドを脱着し、ついで、静止上部空間ガスクロマトグラフィによってフレームイオン化検出を用いてアセトアルデヒドについて分析する。0.05wt%および0.10wt%の未修飾β―シクロデキストリン化合物を有する物質は、全ヌードル押し出し物について透明であった。
【0056】
【表2】

【0057】
これらのデータは、有用なポリエステル機械的特性を保持しつつ限定置換度を有するシクロデキストリン物質が、アセトアルデヒド形成低下とある例ではポリエステル中色形成低下に寄与することを示している。
【0058】
【表3】

【0059】
表3のデータは、限定置換度を有するシクロデキストリン物質の少量装填は、優れたアセトアルデヒド低下を付与することを示している。これらのデータは、低濃度の最適置換シクロデキストリン物質による実験をさらに行えば、優れた結果が得られることを示唆している。
【0060】
当該技術で周知の従来の連続プロセス重縮合操作によって調製したポリエチレンテレフタレート基剤ポリエステルを、置換シクロデキストリンの後期添加を含むプロセスと組み合わせて用いることができる。前記シクロデキストリン誘導体物質を、ポリエステル製造の後期段階で添加できる。たとえば、液体担体中に分散させたシクロデキストリンを当初重合した後ではあるがそれが重縮合反応容器から出る前に溶融ポリエステルに添加し、その後、ペレット化または他の形状の形態に形成される。
【0061】
本発明はさらに、連続パイロットライン(40kg/時間ポリエステル生産量)プロセスを用いて市販等級で公称固有粘度0.84dl/g、ジエチレングリコール含量<2.0%、密度1.39g/ccおよび溶融点244℃を有するコポリマー包装レジン(KoSa 1102)を製造する。シクロデキストリン粉末をポリエステルフロー中に、ポンプで組み入れ可能でトリアセチルβ−シクロデキストリンおよびオイル担体(Emery3004)を含むスラリーを用いて運搬する。このトリアセチルベータシクロデキストリン(Wacker Biochem CorporationのW7TA)は、差分スキャニングカロリメトリ(DSC)による溶融点191℃、フェノールフタレイン指示薬を用いた水酸化ナトリウム滴定による残留酢酸1200ppm、イオンクロマトグラフィによるアセテート400ppmを有しており、マトリックス支援レーザーデソープションタイムオブフライトマススペクトロメトリ(Matrix Assisted Laser Desorption Time of Flight Mass Spectrometry)(MALDI−TOF/MS)により分析すると、過アセチル化ベータシクロデキストリン96%を含有し、残り4%が、1個の遊離水酸基を有するシクロデキストリン部分を含むことがわかった。トリアセチルβ−シクロデキストリンを担体中に混合する前に、105℃の真空オーブンで1mmHgで16時間乾燥させた。アセチルシクロデキストリン誘導体は、低せん断混合を用いて担体オイル中に分散させた。この混合物は、密度1.05g/CCを有していた。
【0062】
連続プロセスパイロットラインの運転中、スラリーを溶融ポリエステル中にマイクロプロセッサー制御シリンジポンプ(ISCO、500Dシリンジポンプ)を用いてポンプで入れ、粘性スラリーを正確に計器で測定した。シクロデキストリン/オイル担体スラリーを、反応容器から出る直前に前記ポリエステルに完全にスラリーを混ぜるために使用したインラインバフル混合チェンバーの前で、前記ポリエステル溶融物中に導入し、水をクエンチさせポリエステルヌードルをチップにした。反応容器を出る前の285℃のポリエステルフロー中のシクロデキストリンの滞留時間は、1乃至2分であった。シクロデキストリン装填を2回(0.20重量%および0.25重量%)を、上記の後期添加プロセスによって行った。ポンプは、ポリエステルレジンに基づき0.20%および0.25%のシクロデキストリン装填のため、1時間当たりそれぞれ152mLおよび190mLを計器で測定するようにプログラムした。下記の無晶性ポリエステル試験結果が、対照ポリエステルおよびシクロデキストリン含有ポリエステルサンプル2個から得られた。
【0063】
【表4】

【0064】
無晶性チップ材料をその後、真空中210℃の温度で16時間25Kタンブラーを用いるSSP(固体状態重合)に供した。結晶化した物質を、再度、IV,CIE色およびアセトアルデヒド含量について調べ、データを下記に示した。
【0065】
【表5】

【0066】
シクロデキストリン含有レジンは、対照よりも10−17%速いSSP速度を示した。CD含有結晶化レジンサンプルは、見てわかるほどの黄色を有し、そのことは、上記表中b*が高いことで示されている。
【0067】
【表6】

【0068】
シクロデキストリン含有プリフォームは、対照プリフォームよりも有意に黄色が強かった(約13ユニット高い)。プリフォームアセトアルデヒドは、それぞれ、シクロデキストリン0.20wt%および0.25wt%について37%および50%低下していた。
【0069】
本方法は、もしポリエステル/アセチルシクロデキストリン誘導体混合物が固体状態重合に供されるならば望ましくなく、その理由は、望ましくない色が高温での延伸時に発生するかもしれないからである。トリアセチルβ−シクロデキストリンを含有するSSP処理ポリエステルチップに発生したオフカラーは、シクロデキストリン分子の分解が原因である。当初、シクロデキストリン構造環が酸加水分解と同様グルコシド結合の複素環開裂により開き、レボグルコサン単位を一端に有する多糖が形成されることになる。多糖の存在は、非特異的な脱水および脱アセチル化を起こし、強度に着色された物質を形成する。グルコシド単位のひとつに二重結合が形成されている線状小分子化オリゴ糖から水または酢酸を除去し、その後、ハイドロキシアセトアルデヒド分子を除去すると、結合した二重結合を有する線状構造が形成される。これらの着色化合物はSSP処理チップ中にオフ黄色(b)を付与する。シクロデキストリンのそれと同様セルローストリアセテートの熱分解反応も当該技術で周知である。少量の酢酸が存在すると上記分解プロセスが促進される。上記に示した実験データに基づき、もうひとつの後期添加ポリエステルバッチを低(60ppm)残留酢酸を有し同等のアセチル置換を有するアセチルベータシクロデキストリンにより製造した。後期添加サンプル2個は、対照ポリエステルと0.25wt%アセチルベータシクロデキストリン含有ポリエステルであった。チップを、先の実施例と同様にSSP処理に供し、前記物質についてIV,色およびアセトアルデヒド含量について調べ、データを下記に示した。
【0070】
【表7】

【0071】
表5に示した黄色b*は、表7中よりも2.5単位大きい。シクロデキストリン中で当初酢酸残留が低かったことでオフ黄色が改良されたにも関わらず、いかなるオフカラーも商業的には望ましくない。我々は、結晶チップを溶解し低分子量物質(シクロデキストリンおよびPETオリゴマー)をPETポリマーから分離しおよび低分子量分画をMALDI−TOF/MSにより分析した後、結果がSSP中アセチルシクロデキストリンがPETポリマーをエステル交換したことを示していることに気づいた。この反応は、酢酸を反応生成物として産生し、シクロデキストリン分解を触媒する。アセチルシクロデキストリン誘導体は後期添加として添加され固体状態重合中長時間(14乃至18時間)高温(210℃)に供されると、グルコシド構造を喪失し不飽和物が蓄積しているシクロデキストリン環の開裂に起因して、結晶チップに望ましくない色を付けることがある。しかし、熱安定かつ相溶性シクロデキストリン誘導体が重縮合の後期段階においてポリエステル中にオフカラーを発生させることなく溶融ポリエステルに射出することができるということが明らかになった。
【0072】
表8は、水性アセチルβ−シクロデキストリンが塗布された市販のKoSa無晶性重縮合PETペレット上で得られたアセトアルデヒド(AA)低下を示している。−0.10%、0.15%および0.20%重量の3種のアセチルβ−シクロデキストリンコーティングを用いた。前記0.20%アセチルβ−シクロデキストリンコーティングはAAを52%だけ低下させ、他のコーティング重量はAA低下にそれほど有効でなかった。無晶性チップにシクロデキストリン水溶液を塗布し、シクロデキストリン装填重量百分率を付与した。シクロデキストリン水溶液コーティング(5wt%)を調製する。前記コーティング溶液重量のアリコットをガラス瓶(既に風袋を有している)に入れたレジンチップの容積中心に置く。移したコーティング溶液の量は、ガラス瓶の内表面におけるコーティング損失を調整している。フタをした瓶を約30rpmで15分間、ボトルローラーミル上で回転させ、PETチップ上にシクロデキストリンコーティングを均等に配置する。コーティング後、チップを105℃の真空オーブンで1mmHgで16時間乾燥させる。乾燥チップを次いで成形し、Atlasミキサー/モールダー中で270℃、2分間アセトアルデヒド濃度を試験する。混合は低せん断で行い、溶融物を次に2分後混合チェンバーから射出する。ポリエチレンテレフタレートサンプル複合体(各Atlas試験を3回)を各サンプルから作製し、次いで、各サンプルを3重に分析した。溶融状態におけるレジン混合時間は、最適AA低下のために重要である。このことは、ある最小限の混合時間が、プリフォームを成形するとき、射出金型溶融相中で必要であろう。市販射出成形機のための混合/成形サイクル時間は、プリフォーム空洞数および射出サイクル時間に応じて一般的に2から3分である。
【0073】
【表8】

【0074】
市販のPETボトル等級レジンは、射出成形プリフォームに使用前に処理されたSSPである。このSSPプロセスは、AAおよびカルボキシル末端基を低下させ、所望のIVを達成し、したがって、最終吹込ボトルの物理的性質を改善する。表7のPETペレットは、ガラス瓶中のアセチルβ−シクロデキストリンによりシクロデキストリン粉末をぺレットに付着するように回転させ次いで真空オーブン乾燥させる(105℃@1mmHg圧力で14時間により残留PET湿分を除去する)ことによって乾燥塗布される。また、真空乾燥により、ペレットアセトアルデヒド濃度を約1ppmまで低下させる。真空乾燥時、非SSP PETペレット中の高AA濃度は、ペレットから外側のCDコーティングを介して滲出して出て行く。乾燥塗布チップサンプルおよび対照サンプルは、同一乾燥条件下で試行し、次いで、Atlas Molder Mixerで270℃で2分間、成形した。成形サンプルを極低温で採取し極低温で10メッシュ以下に粉砕し、次いで、サンプル制御温度150℃で90分間フレームイオン化検出とともに静止上部空間ガスクロマトグラフィにより分析した。このコーティング方法は、前記技術を商業的に適用することがCDコーティングおよび乾燥前にチップ中に高濃度のAAがある時達成可能であることを明らかにしている。アセチル置換ベータ−シクロデキストリン(SD=1.1)を用いて50%を超える低下である約4.1ppmのアセトアルデヒド濃度が達成された。
【0075】
表9において、PETペレットは、アセチルβ−シクロデキストリンとハイドロキシプロピルβ−シクロデキストリンの水溶液によって塗布された。当初、PETチップにCD水溶液を塗布し、次いで、120℃で14時間、2mmHgで真空乾燥させた。乾燥後、PETチップは、Killion一軸中等度せん断押し出し機(PET溶融温度282℃)中に押し出した。Killion押し出し機中におけるPET滞留時間は、約30秒であった。前記押し出し機が各サンプル実験平衡に到達した時、押し出し物を、液体窒素で極低温に冷却し採取し、10メッシュに粉砕し、次いで、静止上部空間ガスクロマトグラフィによりアセトアルデヒドを分析した(実線グラフ結果は、図3参照)。
【0076】
上記の一軸押し出し物を、もう一回実験室規模のAtlas Mixing Molder中で処理した。Atlas上での成形用に、一軸押し出しサンプルを10メッシュにより粉砕後液体窒素で極低温に冷却し、上述のように真空オーブンで乾燥させ湿分と残留アセトアルデヒドを除去することによって成形し、次いで、Atlas Molder Mixer上で270℃で2分間成形しアセトアルデヒドを再生した。成形サンプルをまた、極低温で採取し、極低温で10メッシュに粉砕し、次いで、静止上部空間ガスクロマトグラフィによりアセトアルデヒドを分析した(パターングラフ結果)。全試験サンプルは3重に分析した。
【0077】
【表9】

【0078】
これらのデータは、中等度せん断および短時間の滞留時間(Killion押し出し機上での約30秒)におけるCDの分散が、対照に比較してアセトアルデヒドレベル低下にそれほど効果的でないことを示しており、一方、低度せん断および長時間の滞留時間(Atlas Molder Mixer上での約120秒)におけるCDの分散が、対照に比較して実質的にアセトアルデヒドレベルを低下させることを示している。ハイドロキシプロピル置換β−シクロデキストリンおよびアセチル置換β−シクロデキストリンの両者ともに、シクロデキストリン塗布チップを長滞留時間および低せん断で処理する時低下アセトアルデヒドレベルを達成できる。特に、Atlas処理後(すなわち、低せん断長滞留時間)においてアセトアルデヒド55%低下を達成することは、市販の射出成形機がCD塗布PETチップ処理に理想的に適していることを示している。
【0079】
上記と同様のサンプル調製技術を用いてさらに実験を行い、Atlas Molder Mixer、成形温度および時間を一定に保ちつつ混合速度は変化させ、AA低下を評価した。表10および11は、40および140rpmの2種の混合速度についての実験データを示している。表10中において対照に比較して最高のアセトアルデヒド低下は、40rpmにおいて約33ppmから約13ppmにアセトアルデヒド濃度が低下したことを示している。表10において、140RPMでは、実質的アセトアルデヒド低下がまた達成された。成形温度(275℃)および時間(2分)を一定に保ち、次いで、低せん断混合速度(40rpm対140rpm)を変化させても、種々のCD塗布PETチップから得られたAA低下に有意に影響を及ぼさなかった。
【0080】
【表10】

【0081】
【表11】

【0082】
下記の実施例では、2種のシクロデキストリン(未修飾α−シクロデキストリンおよびアセチルβ−シクロデキストリンDS=1.1)をKoSaから得られた市販のレジンPolyclear1101上に塗布した。シクロデキストリンコーティング水溶液が(5wt%)作成された。コーティング溶液アリコット(重量で測定)を、1ガロンのガラス瓶(既に風袋を有している)中2.5Kgのレジンチップの容積中心に置く。移したコーティング溶液の量は、ガラス瓶の内表面におけるコーティング損失を調整している。フタをした瓶を約30rpmで15分間、ボトルローラーミル上で回転させ、PETチップ上にシクロデキストリンコーティングを均等に配置する。ボトルローラーコーティング操作後ボトルフタを除去し、ガラス瓶を130℃で稼動し約2mmHgの真空オーブン中に16時間入れ、コーティング操作に由来する水分を除去する。塗布PETチップを除去し、瓶の重量を計る、チップコーティングの正確な重量は、瓶内表面に残っているCDコーティング重量を測定した後で決定する。先に乾燥した塗布チップサンプルと対照を、175℃のArburgインラインドライヤー中で少なくとも4時間乾燥させる。対照とともに各塗布レジン変化体をArburg単一空洞射出成形機で射出成形した(プリフォーム48グラム)。射出成形は、すべてのサンプルについて275℃で実施した。プリフォームIV,色およびAAは三重測定し、平均値を報告した。プリフォーム中心部分からAA分析用サンプルを除去した。プリフォームサンプルは、極低温で10メッシュ以下に粉砕し、次いで、フレームイオン化検出とともに静止上部空間ガスクロマトグラフィをサンプル制御温度160℃で90分間用いて分析した。プリフォームデータは、表12に要約した。
【0083】
【表12】

【0084】
アセチル誘導体から得られた高黄色b*値は、残留酢酸、アセテートおよび鉄が原因であった。黄色は、アセチルβシクロデキストリン水溶液を活性炭で処理し酢酸およびアセテート濃度を低下させることによって、低下した。アセテートおよび鉄挟雑物は、逆浸透またはナノろ過によって効果的に除去できる。残留酢酸は、高b*値産生に寄与する主要挟雑物である。未修飾α―シクロデキストリンは、レジンとのその相溶性により射出成形ポリエステルプリフォームにおける曇の原因である。アセチルβ(DS=1.1)は、再生されたアセトアルデヒドを未修飾α−シクロデキストリンよりもより効果的に低下させた。アセチルβ−シクロデキストリン350ppm濃度は、再生アセトアルデヒド30.4%を低下させた。
【0085】
上記に示した実験データに基づき、好適なシクロデキストリン置換基、ポリエステル中好適な置換シクロデキストリン濃度、および好適な置換度を定義することに注目した。メチルエーテル置換基は、他の単純なエーテルおよびエステル置換基のモデルとして選択した。メチル化ベータシクロデキストリン(Meβ)物質を、約250ppm、500ppmおよび600ppmの量で使用した。Meβ水溶液(4.8wt%)を、0.83dL/gのKoSa 1101チップ上に塗布し、適切なCDコーティング重量を付与した。塗布チップを140℃で14時間真空乾燥させた。乾燥サンプルを次いで、Atlas Molder Mixer上で275℃、280℃で2分間成形した。成形サンプルを、極低温で採取し、極低温で10メッシュ以下に粉砕し、次に、フレームイオン化検出とともに静止上部空間ガスクロマトグラフィをサンプル制御温度150℃で90分間用いて分析した。これらの実験は、下記表12および13ならびに図6および7に示した結果をもたらした。
【0086】
【表13】

【0087】
【表14】

【0088】
これらのデータは、実質的に6−OH位で置換され適切な濃度で使用された正確な置換度を有する置換シクロデキストリン物質を使用すると、実質的に対照非塗布チップ未満の残留アセトアルデヒドレベルを達成できることを示している。シクロデキストリン錯体について最も一般的化学量論比は、1:1または2:1(ゲストアセトアルデヒド:ホストシクロデキストリン)である。この基準を用いて理論アセトアルデヒド濃度(ppm)低下をPET中重量%シクロデキストリン装填(すなわち、1:1の錯体比として)の関数として計算すると、メチル化シクロデキストリン置換基(DS=0.6およびDS=1.8)の両者について直線関係が得られる。前記理論的関係は数学的に、Meβ(DS=0.6)の一定塗布重量がアセトアルデヒド除去用Meβ(DS=1.8)の同一コーティング重量よりも効果的であることを示しており、それは、分子量差に由来している。表13および14中の275℃成形温度実験データについて調べると、シクロデキストリン装填とアセトアルデヒドの間にもうひとつの関係が計算できる。実験試験に基づくと、他のMeβシクロデキストリン置換分子量(Meβ(DS=1.8)はより大きな分子量を有している)に対してひとつのMeβシクロデキストリン置換分子量を重量で換算すると、実験的に、Meβ(DS=0.6)がMeβ(DS=1.8)よりも>40%効果的である。特に、2乃至3ppmに残留アセトアルデヒドレベルを達成できることは、驚くべき結果である。
【0089】
下記の実施例において、再生アセトアルデヒド濃度を、2種の異なるボトル等級PETレジン(KoSaポリクリア1101および3301)中で実験的に調べた。PETレジン1101は、3301(0.75dL/gのIV)レジンよりも高分子量(0.83dL/gのIV)のレジンである。波長分散X線蛍光により、1101および3301は、それぞれ、アンチモン濃度317ppmおよび264ppmを示す。この実験において、前記2種のボトル等級レジンは、2種のMeβシクロデキストリン(DS=0.6およびDS=1.8)を同様の重量で塗布されかつ3種の異なる温度で成形され水性であった。コーティング後、チップを120℃で1mmHgで14時間真空乾燥させると、ポリエステル中に500乃至600ppmのシクロデキストリンが結果として生成した。乾燥塗布チップサンプルおよび同一乾燥条件で乾燥させた対照サンプルは、Atlas Molder Mixer上で270℃、275℃および280℃で2分間成形させた。成形サンプルを極低温で採取し、極低温で10メッシュ以下に粉砕し、次に、フレームイオン化検出とともに静止上部空間ガスクロマトグラフィをサンプル制御温度150℃で90分間用いて分析した。表15は、残留アセトアルデヒド濃度(三重測定の平均)をレジンタイプ、成形温度および置換度の関数として示している。
【0090】
【表15】

【0091】
ボトルレジン1101および3301は、一定の温度で異なる濃度のアセトアルデヒドを産生する(1101は3301よりも高い)が、Meβ(DS=0.6)を塗布し成形した時ほとんど同等の再生アセトアルデヒドを達成する。Meβ(DS=0.6)によるアセトアルデヒド低下百分率(%)は、特定温度でレジンによって当初産生されたアセトアルデヒド濃度に依存している。このことは、280℃においてCDコーティング試験をした場合としない場合の1101および3301レジンを比較すればわかる。レジン1101は、一定温度で射出成形した時3301よりも多量のアセトアルデヒドを産生するが、Meβ(DS=0.6)により塗布された両レジンはともに同一アセトアルデヒド濃度にまで低下する。射出成形温度が高くなると、塗布チップよりも非塗布CDチップにおいてよりアセトアルデヒド産生に影響を及ぼす。AA低下百分率(%)は、低射出温度よりも高射出温度において一定レジンに対して大きくなる。
【0092】
下記の実施例において、3種のシクロデキストリン誘導体をKoSa3301PETチップに先に述べたようにして塗布した。アセチルβおよびMeβ(DS=1.8)は活性炭で処理し色原因となる不純物を除去し、Meβ(DS=0.6)は、Dowex SD−2により処理し、色原因となる不純物を除去した。各塗布サンプルおよび対照ペアをArburgインラインドライヤーで175℃で少なくとも4時間乾燥させた。各塗布レジン変化体を対照とともにArburg単一空洞射出成形機で射出成形(プリフォーム48g)した。射出成形は、全サンプルについて270℃で実行した。プリフォームIV,色、曇りおよびAAは3重測定し、平均値を報告した。AA分析用サンプルは、プリフォーム中心から除去した。プリフォームサンプルを極低温で10メッシュ以下に粉砕し、次に、フレームイオン化検出とともに静止上部空間ガスクロマトグラフィをサンプル制御温度160℃で90分間用いて分析した。プリフォームデータは、表16に要約してある。
【0093】
【表16】

【0094】
Meβ(DS=0.6)は、Meβ(DS=1.8)およびアセチルCD誘導体のいずれよりも再生アセトアルデヒドをより効果的に低下させた。Meβ(DS=0.6)によって得られた高曇り価(45.9)を前記物質中に不注意に導入された挟雑物について追跡した。Meβ(DS=1.8)が、他の誘導体に比較して最大曇りb*とIV結果をもたらした。
【0095】
下記の実施例において、2種のシクロデキストリン誘導体をKoSa3301PETチップに先に述べたようにして塗布した。Meβ(DS=0.6)およびMeβ(DS=1.8)は、活性炭で処理し、色原因となる不純物を除去した。対照3301およびシクロデキストリン塗布サンプルは、射出成形前に140℃で6時間、真空ドライヤー中で乾燥させた。各塗布レジン変化体を対照とともに、Nissei ASB250射出成形機上で射出成形した(プリフォーム50.5グラム)。射出成形機バレルゾーン温度(設定および実際)プロフィールを表16に示した。プリフォームIV,bおよびAAは3重測定し、平均値を報告した。AA分析のサンプルは、プリフォームのリングから除去した。プリフォームサンプルを極低温で10メッシュ以下に粉砕し、次に、フレームイオン化検出とともにサンプルガスクロマトグラフィをサンプル制御温度160℃で90分間用いて分析した。
プリフォームデータは、表17に要約してある。
【0096】
【表17】

【0097】
Meβ(DS=0.6)の低コーティング重量(0.09%)は、Meβ(DS=1.8)の高コーティング重量(0.12%)と同一レベルに再生アセトアルデヒドを低下させた。Meβ(DS=1.8)および3301対照に比較して、Meβ(DS=0.6)は高b*オフ黄色を有し、視覚的にも曇っていた。オフカラーおよび曇りは、シクロデキストリン上に高融点とポリエステルとの低相溶性を付与するメチルエーテル官能基が少数しか存在しないことに関連している。メチル化シクロデキストリン誘導体は両者ともに、3301対照ポリエステルに比較して実際のエクストルーダーゾーン1温度を低下(5℃低下)させた。測定したポリエステルレジン射出溶融温度は、Me塗布チップサンプル両者について非塗布チップ対照に対して4℃だけ低下した。Meβ(DS=1.8)塗布チッププリフォームが3301対照に比べて透明、低黄色b*値およびわずかに低いIVを産生した。
【0098】
シクロデキストリン化合物の性質、熱可塑性ポリエステル物質、ペレットまたはチップ、パリソンまたはプリフォーム、飲料容器および飲料容器製造方法についての説明は、満足できる製造についての詳細を提供し、有機化合物捕捉およびバリア性の目的のためシクロデキストリン物質をポリエステル熱可塑体に取り込ませる技術についての理解となる基盤を付与する。しかし、本発明の多くの態様が本発明の精神と範囲から逸脱することなく実施できるので、本発明は、下記の付属請求の範囲にある。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】誘導体化を行わないシクロデキストリン分子の大きさをグラフで示した。中心孔は、透過物または上記挟雑物を吸収するための部位として作用できるシクロデキストリン分子内部の親水性空間、中心孔または容積を含む。ニ級水酸基は、2個のシクロデキストリン部分を二級水酸基を介して結合させることによってメタロシクロデキストリン配位錯体を形成し、金属イオンを配置するためのアルコキシドを産生できる。図において、α、β、またはγ−シクロデキストリンが示されている。このようなシクロデキストリンは,分子外辺部に形成された水酸基を有しており、それらは、アセトアルデヒドのような揮発性有機物質との反応に利用可能である。
【図2】本発明の容量2リットルのポリエステルボトルシクロデキストリン化合物が形成されたの等尺性の図面である。
【図3】置換シクロデキストリン物質を用いたアセトアルデヒド低下データの棒グラフである。
【図4】置換シクロデキストリン物質を用いたアセトアルデヒド低下データの棒グラフである。
【図5】ポリエステルレジン中で制御した非置換β−シクロデキストリン量を用いることの重要性を示したアセトアルデヒド低下データの棒グラフである。
【図6】メチルエーテル置換、メチルエーテル濃度および成形温度の重要性を示したアセトアルデヒド低下データの棒グラフである。
【図7】メチルエーテル置換およびメチルエーテル濃度の重要性を示したアセトアルデヒド低下データの棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルチップを製造する方法であって、
(a)溶融ポリエステルを含むストリームを出口オリフィスを有するプロセスデバイスを通過させること、
(b)置換シクロデキストリン化合物を含む液体を形成させること、
(c)前記置換シクロデキストリンを含む液体を、前記プロセスデバイス中混合手段の近くで溶融ポリエステルのストリーム中に導入して、処理ストリームを形成すること、および
(d)前記処理ストリームを前記オリフィスを通過させ、前記ポリエステルチップを形成させること、から成る方法。
【請求項2】
前記液体が、置換シクロデキストリン化合物を1.0乃至50重量パーセント含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記液体が、溶融ポリエチレンテレフタレートを含みかつ前記混合手段が前記オリフィス近位である請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記混合手段が次に前記オリフィスに隣接している請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記液体がオイルを含む請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記ポリエステルが、少なくとも60重量%のポリエチレンテレフタレート単位と40重量%までの他のポリマーを含む請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記ポリエステルが、少なくとも60重量%のポリエチレンナフタレート単位と40重量%までの他のポリマーを含む請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記シクロデキストリン化合物が、シクロデキストリン中グルコースの6位において実質的に少なくとも1個の−OH基上に置換基を有する請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記シクロデキストリン化合物が6−O−メチルエーテルを含む請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記シクロデキストリン化合物が6−Oアセチルエステルを含む請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記置換シクロデキストリン化合物が、ポリエステルレジン100万部当た350重量部乃900重量部の量0.5乃至1.2の置換度を含む請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記液体が、粉末化シクロデキストリン化合物を押し出し機デバイス中で溶融ポリエステルストリーム中に導入されることによって形成される請求項3記載の方法。
【請求項13】
前記チップが、チップ形成後SSPプロセッシングに供される請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−239991(P2008−239991A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85760(P2008−85760)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【分割の表示】特願2004−511374(P2004−511374)の分割
【原出願日】平成14年12月9日(2002.12.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(598162160)セルレジン テクノロジーズ,エルエルシー (3)
【出願人】(504414271)インヴィスタ・ノース・アメリカ・エス・エー・アール・エル (1)
【氏名又は名称原語表記】ARTEVA NORTH AMERICA S.A.R.L.
【住所又は居所原語表記】Talstrasse 80,8001 Zurich CH
【Fターム(参考)】