説明

ポリエステル重合用触媒

【課題】本発明の課題は、得られるポリエステルの色相、特にb値が小さく、ポリエステル中のジエチレングリコール含有量、ポリエステル中の末端カルボキシ濃度も少ないポリエステルを製造することができるポリエステル製造用触媒を提供することである。
【解決手段】チタン化合物とリン化合物を反応させ得られたポリエステル製造用触媒であり、該ポリエステル製造用触媒の粒子径が、10μm以下であることを特徴とするポリエステル製造用重合触媒によって上記課題を解決することができる。pHを4.1以下に調整した溶媒中にて製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ポリエステルを重合するに当たり、好適な重合活性を有し、良好な品質を有するポリエステルを得ることができるポリエステル製造用の重合触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(以下PETと略する。)は、その優れた機械的性質、化学的性質から、繊維、フィルム、工業用樹脂、ボトル、カップ、トレイ等に成形されて広く用いられている。
【0003】
通常、芳香族ポリエステルはテレフタル酸などのジカルボン酸と、エチレングリコールなどの脂肪族ジオール類とを原料として製造される。具体的には、まず、芳香族ジカルボン酸類と脂肪族ジオール類とのエステル化反応により低次縮合物(エステル低重合体)を形成し、次いで重縮合触媒の存在下にこの低次縮合物を脱グリコール反応(液相重縮合)させて、高分子量化している。また、場合によっては固相重縮合を行い、更に分子量を高めている。ポリエステルの製造方法では、重縮合触媒として、従来アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物などが使用されている。しかしながら、アンチモン化合物を触媒として製造したポリエチレンテレフタレートは透明性、耐熱性の点でゲルマニウム化合物を触媒として製造したポリエチレンテレフタレートに劣っている。また、得られるポリエステル中のアセトアルデヒド含有量を低減させることも要望されている。また、ゲルマニウム化合物はかなり高価であるため、ポリエステルの製造コストが高くなるという問題があった。このため製造コストを下げるため、重縮合時に飛散するゲルマニウム化合物を回収して再利用するなどのプロセスが検討されている。
【0004】
ところでチタンはエステルの重縮合反応を促進する作用のある元素であることが知られており、チタンアルコキシド、四塩化チタン、シュウ酸チタニル、オルソチタン酸などが重縮合触媒として公知であり、このようなチタン化合物を重縮合触媒として利用するために多くの検討が行われている。しかしながら、従来のチタン系触媒を重縮合触媒に用いた場合、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物に比べ活性はあるものの、得られたポリエステルが著しく黄色に着色するなどの問題がある。
【0005】
上記着色問題を解決するために、コバルト化合物をポリエステルに添加して黄味を抑えることが一般的に行われている。確かにコバルト化合物を添加することによってポリエステルの色相(カラーb値)は改善することができるが、コバルト化合物を添加することによってポリエステルの溶融熱安定性が低下し、ポリマーの分解も起こりやすくなるという問題がある。
【0006】
その対策として、種々のチタン化合物が検討されてきた。例えば、水酸化チタンをポリエステル製造用触媒として用いること(例えば、特許文献1参照。)、またα−チタン酸をポリエステル製造用触媒として用いること(例えば、特許文献2参照。)が開示されている。しかしながら、前者の方法では水酸化チタンの粉末化が容易でなく、一方、後者の方法ではα−チタン酸が変質し易いため、その保存、取り扱いが容易でなく、したがっていずれも工業的に採用するには適当ではなく、更に、良好な色調(カラーb値)のポリマーを得ることも困難である。
【0007】
他には、リン化合物、周期律表第1A族及び第2A族の金属化合物、場合によってはゲルマニウムの共存下にポリエステル樹脂1トンあたりチタン原子として0.02〜1モルになるようチタン化号物を重縮合触媒として使用する方法も提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかし、あるように周期律表第1A族及び第2A族の金属化合物のようなエステル交換活性を有する金属化合物は、着色やアセトアルデヒド副生量増加の原因となる他、凝集異物となることから、ポリエステルに添加するのはできるだけ控えた方がよい(例えば、特許文献4参照。)。そこで、予めチタン化合物とリン化合物を反応させ、チタン化合物の触媒活性をコントロールすることが検討されてきた。
【0008】
たとえば、チタン化合物とリン化合物とを反応させて得られた生成物をポリエステル製造用触媒として使用すること(例えば、特許文献3参照。)が開示されている。確かに、この方法によれば、ポリエステルの溶融熱安定性を向上させ、色相も十分なポリマーを得ることができる。しかし、この方法により得られる触媒化合物は、粒子である。その粒子径により活性が異なり、ひいては、ポリマー品質へも影響する。また、粒子径が大きいと、ポリマー生産時、または、成形時に使用するフィルター詰まりの原因となる、などの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭48−002229号公報
【特許文献2】特公昭47−026597号公報
【特許文献3】特開平07−138354号公報
【特許文献4】特開2002−226562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の技術背景を踏まえチタン元素を含む触媒であって、得られるポリエステルの色相、特にb値が小さく、ポリエステル中のジエチレングリコール含有量、ポリエステル中の末端カルボキシ濃度も少ないポリエステル、特に好適にはポリエチレンテレフタレートを製造することができるポリエステル製造用触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明はチタン化合物とリン化合物を反応させ得られたポリエステル製造用触媒であり、該ポリエステル製造用触媒の粒子径が、10μm以下であることを特徴とするポリエステル製造用重合触媒であり、上記課題は本発明によって解決することができる。なお本発明の触媒はpHを4.1以下に調整した溶媒中にて製造することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、重縮合活性が良好であって、得られるポリエステルの色相が良好で、ポリエステル中に含まれるジエチレングリコール量、末端カルボキシ濃度が少ないポリエステルを得ることができる。このようなポリエステルは繊維、ボトル等の射出成形品、フィルム等の用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明のポリエステル製造用触媒にはpH4.1以下に調整した溶媒中でチタン化合物とリン化合物を反応させて製造する。
【0014】
(1)チタン化合物について
本発明で使用するチタン化合物としては、一般的に、ポリエステル用重合触媒として使用可能なチタン化合物を使用することができるが、下記一般式(I)で表されるチタン化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種を含むチタン化合物を使用することが望ましい。
【0015】
【化1】

[上記式中、R、R、R及びRはそれぞれ同一若しくは異なるアルキル基又はフェニル基を示し、mは1〜4の整数を示し、かつmが2、3又は4の場合、2個、3個又は4個のR及びRは、それぞれ同一の基であっても異なる基であってもよい。]
【0016】
ここで、一般式(I)で表されるチタン化合物としては、具体的にはテトライソプロポキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラフェノキシチタン、オクタアルキルトリチタネート、又はヘキサアルキルジチタネートなどが好ましく用いられる。
【0017】
また、一般的なポリエステル重合用チタン化合物としては、チタンテトラエトキシド、チタンテトラメトキシド、チタンテトラキスアセチルアセトナート錯体、チタンテトラキス(2,4−ヘキサンジオナト)錯体、チタンテトラキス(3,5−ヘプタンジオナト)錯体、チタンジメトキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジエトキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジイソプロポキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジノルマルプロポキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジブトキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジヒドロキシビスグリコレート、チタンジヒドロキシビスラクテート、チタンジヒドロキシビス(2−ヒドロキシプロピオネート)、乳酸チタン、チタンオクタンジオレート、チタンジメトキシビストリエタノールアミネート、チタンジエトキシビストリエタノールアミネート、チタンジブトキシビストリエタノールアミネート、ヘキサメチルジチタネート、ヘキサエチルジチタネート、ヘキサプロピルジチタネート、ヘキサブチルジチタネート、ヘキサフェニルジチタネート、オクタメチルトリチタネート、オクタエチルトリチタネート、オクタプロピルトリチタネート、オクタブチルトリチタネート、オクタフェニルトリチタネート、ヘキサアルコキシジチタネート、オクタアルキルトリチタネートなどが挙げられる。
これらのチタン化合物の中でもテトライソプロポキシチタン、テトラプロポキシチタン又はテトラ−n−ブトキシチタンを好ましく採用することができる。
【0018】
(2)リン化合物について
本発明で使用するリン化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェートなどのリン酸エステル類、トリフェニルホスファイト、トリスドデシルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイトなどの亜リン酸エステル類、メチルアッシドホスフェート、イソプロピルアッシドホスフェート、ブチルアッシドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、ジオクチルホスフェートなどの酸性リン酸エステル及びリン酸、ポリリン酸などのリン化合物が挙げられる。これらのリン化合物の中でもホスホン酸及び/又はホスホン酸エステル化合物を好ましく採用することができ、ホスホン酸モノエステル化合物をより好ましく採用することができる。
【0019】
(3)pH4.1以下の溶媒について
本発明で用いる溶媒とはポリエステル製造の際に原料として用いる化合物を溶媒として用いることが、ポリエステル中に不要な共重合や、不純物の混入を防ぐことができる点で好ましい。具体的には、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコールなどを挙げることができる。またpH4.1以下に調整するには、これらの溶媒に可溶な酸性化合物を添加することが好ましい。具体的には、塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸や、酢酸、プロピオン酸、安息香酸等の低分子の有機カルボン酸を好適に挙げることができる。
過小な測定評価方法は、溶液そのまま、或いは必要に応じて水で倍に希釈してpHメーターなどで測定することができる。
【0020】
(4)触媒の製造方法について
本発明のポリエステル重合用触媒は、pHが4.1以下に調整した溶媒に、チタン化合物とリン化合物とを加えた後、70〜200℃で反応させた触媒である。pHが4.1を超える場合には、粒子径が大きくなり、重合活性は向上するが、得られるポリエステルポリマーの色相(主にcol−b)が悪化するため、好ましくない。本発明のポリエステルには、上記のチタン化合物とリン化合物を反応させた触媒を、全ジカルボン酸成分に対し、チタン金属元素として1〜30ミリモル%含有する必要がある。該チタン金属元素が1ミリモル%未満ではポリエステルの生産性が低下し、目標の分子量のポリエステルが得られない。また、該チタン金属元素が30ミリモル%を超える場合は熱安定性が逆に低下し、溶融成形時の分子量低下が大きくなり、色相も悪化するなど、品質の優れた成形体が得られない。チタン金属元素量は1〜12ミリモル%の範囲が好ましく、2〜10ミリモル%の範囲が更に好ましい。
上述のようにpH4.1以下の溶媒を用い、その溶媒中にてチタン化合物とリン化合物を反応させることによりポリエステル製造用重合触媒の平均粒子径を10μm以下にすることができる。より好ましくは平均粒子径が0.10μm以上10μm以下である。pHを小さくすることにより、平均粒子径をより小さくすることができる。
【0021】
(5)触媒について(補填)
これらの製造方法により共重合芳香族ポリエステルを製造する際に、上記のチタン化合物とリン化合物を反応させた触媒(α)以外に、必要に応じて、エステル交換触媒、重縮合触媒、及び安定剤などを使用することができる。これらの触媒、安定剤などは共重合芳香族ポリエステル、特に公知のポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートの触媒、安定剤などとして知られているものを用いることができる。
【0022】
(6)本発明のポリエステル製造用重合触媒を用いたポリエステルの製造方法について
(6−1)原料のグリコール成分
本発明において用いられるグリコール成分としてはアルキレングリコールを挙げる事ができ、具体的にはエチレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール(テトラメチレングリコール)、ネオペンチレングリコール、ヘキサメチレングリコールを挙げる事ができる。
その中でも特に、エチレングリコールを主たる対象とする場合が好ましく、この時には例えば1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、へキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリ(オキシ)エチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリメチレングリコール等のアルキレングリコールの1種、又は2種以上を混合して用いてもよく、目的により任意に選ぶことができる。
【0023】
更に共重合芳香族ポリエステルの構成する高分子鎖が実質的に線状である範囲内で3価以上の多官能化合物、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等を共重合してもよい。また、必要に応じて単官能化合物、例えばデシルアルコール、ドデシルアルコール、2−フェニルエタノールなどを用いても良い。
【0024】
(6−2)原料のジカルボン酸成分
本発明において用いられるジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸を挙げることができ、具体的にはテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸を挙げることができる。
その中でもテレフタル酸を主たる対象とする場合が好ましく、この時には、例えば2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;ヘキサヒドロテレフタル酸等のごとき脂環族ジカルボン酸;アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸等のごとき脂肪族ジカルボン酸等で示されるジカルボン酸成分の1種、又は2種以上を混合して用いてもよく、目的により任意に選ぶことができる。
【0025】
更に共重合芳香族ポリエステルの構成する高分子鎖が実質的に線状である範囲内で3価以上の多官能化合物、例えばトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリカルバリル酸又は没食子酸等を共重合してもよい。また、必要に応じて単官能化合物、例えば安息香酸、トルイル酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸、о−ベンゾイル安息香酸などを用いても良い。他にも、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ安息香酸のようなヒドロキシカルボン酸又はそのアルキルエステル等を少量使用しても良い。
【0026】
(6−3)他の共重合成分
また、共重合成分として、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪酸ジカルボン酸;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールなどの脂肪族ジオール;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族ジオール;ナフタレンジオール、ビスフェノールA、レゾルシンなどの芳香族ジオール;p−オキシ安息香酸、m―オキシ安息香酸、サリチル酸、マンデル酸、ヒドロアクリル酸、グリコール酸、3―オキシプロピオン酸、アシアチン酸、キノバ酸などオキシカルボン酸を例示することができる。
【0027】
(6−4)添加剤
必要に応じて他の添加剤、例えば、整色剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、アルカリ金属 または アルカリ土類金属 および その化合物から選ばれる少なくとも1種を使用してもよい。
【0028】
本発明において使用されるアルカリ金属の化合物は、下記に限定されるものではないが、具体的には、塩化カリウム、カリウムミョウバン、ギ酸カリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸水素二カリウム、クエン酸二水素カリウム、グルコン酸カリウム、コハク酸カリウム、酪酸カリウム、シュウ酸二カリウム、シュウ酸水素カリウム、ステアリン酸カリウム、フタル酸カリウム、フタル酸水素カリウム、メタリン酸カリウム、リンゴ酸カリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、亜硝酸カリウム、安息香酸カリウム、酒石酸水素カリウム、重シュウ酸カリウム、重フタル酸カリウム、重酒石酸カリウム、重硫酸カリウム、硝酸カリウム、酢酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸カリウムナトリウム、炭酸水素カリウム、乳酸カリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、ギ酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸二水素ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、酪酸ナトリウム、シュウ酸二ナトリウム、シュウ酸水素ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、フタル酸ナトリウム、フタル酸水素ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、酒石酸水素ナトリウム、重シュウ酸ナトリウム、重フタル酸ナトリウム、重酒石酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、乳酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、水酸化リチウム、塩化リチウム、ギ酸リチウム、クエン酸三リチウム、クエン酸水素二リチウム、クエン酸二水素リチウム、グルコン酸リチウム、コハク酸リチウム、酪酸リチウム、シュウ酸二リチウム、シュウ酸水素リチウム、ステアリン酸リチウム、フタル酸リチウム、フタル酸水素リチウム、メタリン酸リチウム、リンゴ酸リチウム、リン酸三リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸二水素リチウム、亜硝酸リチウム、安息香酸リチウム、酒石酸水素リチウム、重シュウ酸リチウム、重フタル酸リチウム、重酒石酸リチウム、重硫酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、乳酸リチウム、硫酸リチウム又は硫酸水素リチウム等を例示することができる。これらは、単一の種類の化合物を用いても又は複数の種類の化合物を併用してもかまわない。またその中でも、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸二カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸二ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムカリウム、酢酸リチウム、炭酸二リチウム又は炭酸水素リチウムが好ましく用いることができ、好ましくはリチウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩を、より好ましくはナトリウム塩又はカリウム塩を、特に好ましくカリウム塩を用いることである。一方アニオン種側から見ると、これらの中で酢酸塩、炭酸塩または 水酸化物が好ましい。
【0029】
本発明において使用されるアルカリ土類金属の化合物は、下記に制限されるものではないが、具体的には塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、コハク酸カルシウム、酪酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、塩化マグネシウム、ギ酸マグネシウム、コハク酸マグネシウム、酪酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム又は硫酸マグネシウム等を例示することができる。これらは単一の種類の化合物を用いても又は複数の種類の化合物を併用してもかまわない。その中でも、酢酸マグネシウム、又は酢酸カルシウムを用いることが好ましい。好ましくはカルシウム塩又はマグネシウム塩を、より好ましくはカルシウム塩を用いることである。一方アニオン種側から見ると、これらの中で酢酸塩、炭酸塩 または 水酸化物が好ましい。またアルカリ金属塩とアルカリ土類金属塩を併用しても構わない。
【0030】
整色剤については、本発明の製造方法によって得られるポリエステル中には、その全質量を基準として整色剤を0.1〜10質量ppm含有していてもよい。なおその整色剤とは、有機の多芳香族環系染料又は顔料を表し、具体的にはアントラキノン系染料であることが好ましく、青色系整色用色素、紫色系整色用色素、赤色系整色用色素、橙色系整色用色素等が挙げられる。これらは単一種で用いても複数種を併用して用いても良いが、青色系整色用色素と紫色系整色用色素を質量比90:10〜40:60の範囲で併用することが好ましい。ここで青色系整色用色素とは、一般に市販されている整色用色素の中で「Blue」と表記されているものであって、具体的には溶液中の可視光吸収スペクトルにおける最大吸収波長が580〜620nm程度にあるものを示す。同様に紫色系整色用色素とは市販されている整色用色素の中で「Violet」と表記されているものであって、具体的には溶液中の可視光吸収スペクトルにおける最大吸収波長が560〜580nm程度にあるものを示す。これらの整色用色素としては油溶染料が特に好ましく、具体的な例としては、青色系整色用色素には、C.I.Solvent Blue 11、C.I.Solvent Blue 25、C.I.Solvent Blue 35、C.I.Solvent Blue 36、C.I.Solvent Blue 45 (Polysynthren Blue)、C.I.Solvent Blue 55、C.I.Solvent Blue 63、C.I.Solvent Blue 78、C.I.Solvent Blue 83、C.I.Solvent Blue 87、C.I.Solvent Blue 94等が挙げられる。紫色系整色用色素には、C.I.Solvent Violet 8、C.I.Solvent Violet 13、C.I.Solvent Violet 14、C.I.Solvent Violet 21、C.I.Solvent Violet 27、C.I.Solvent Violet 28、C.I.Solvent Violet 36等が挙げられる。
【0031】
ここで青色系整色用色素と紫色系整色用色素を併用する場合、質量比90:10より青色系整色用色素の質量比が大きい場合は、得られるポリエステル組成物のカラーa*値が小さくなって緑色を呈し、40:60より青色整色用色素の質量比が小さい場合は、カラーa*値が大きくなって赤色を呈してくる為好ましくない。該整色用色素は、青色系整色用色素と紫色系整色用色素を質量比80:20〜50:50の範囲で併用することが更に好ましい。
【0032】
(6−5)ポリエステルの製造:エステル化反応/エステル交換反応
液相重縮合工程(A)においては、上記のようなポリカルボン酸又はそのエステル誘導体(以下、単に「ポリカルボン酸」ということがある)と、ポリオールとを重縮合させてポリエステルを製造するが、この液相重縮合工程では、通常まずポリカルボン酸とポリオールとをエステル化反応させ〔エステル化反応工程(A−1)〕、次いで液相重縮合反応〔重縮合反応工程(A−2)〕させる。具体的には、まずポリカルボン酸とポリオールとをエステル化反応工程(A−1)に供給する。この際、ポリカルボン酸1モルに対して1.02〜3.0モルのポリオールを用いる。
【0033】
必要に応じてエステル交換触媒をポリカルボン酸1モルに対して1〜60ミリモル%添加するのが好ましい。エステル交換触媒が全ポリカルボン酸成分に対して1ミリモル%未満ではエステル交換反応が不十分なものとなり、これに続く液相重縮合反応及び固相重縮合反応速度の低下をもたらすことがある。エステル交換触媒を全酸成分に対して60ミリモル%を越えて添加すると触媒残渣による析出粒子の影響により得られたポリエステルを例えばボトル等に成形した際、大きく固有粘度の低下をもたらし好ましくないことがある。
【0034】
エステル化反応は、通常、反応温度190〜280℃、好ましくは200〜260℃、の条件下で行われる。また、反応温度をグリコール成分の沸点以上にするため、加圧下で反応することもできる。ポリカルボン酸を用いる場合、このようなエステル化反応は、ポリカルボン酸及びポリオール以外の添加物を添加せずに実施することも可能である。エステル交換反応にて製造する場合においても、このエステル化反応に準じた温度、圧力条件で行うことが好ましく採用することができる。
【0035】
エステル交換反応の際には通常エステル交換触媒を用いる。そのエステル交換触媒としては、チタン化合物や、一般的なアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属系触媒として、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等を挙げることができる。ボトル用のポリエチレンテレフタレートを製造するにあたっては、チタン化合物Aを用いることが望ましい。アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属系触媒をエステル交換触媒として用いるには、チタン化合物と対比し大量に添加する必要があるが、ボトルに成形した際、ボトル胴部の結晶化度が高くなり、白化を引き起こす原因となり好ましくない。その点チタン化合物は、活性が極めて高いため、少量で済み、ボトル胴部の白化を避けることができる。
【0036】
さらにこのようなエステル化反応は、後述する重縮合触媒の共存下に実施することも可能であるが、さらにトリメチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ベンジルジメチルアミンなどの第3級アミン、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウムなどの第4級アンモニウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基性化合物を少量添加して実施することができる。
【0037】
(6−6)ポリエステルの製造:溶融重合反応
このようにして得られたエステル化物は、液相重縮合反応器に供給される。液相重縮合反応器では、重縮合触媒の存在下に減圧下で、得られるポリエステルの融点以上の温度に加熱し、この際生成するポリオールを系外に留去させながら重縮合させる。
本発明では、上記のような液相重縮合工程(A)において、25℃のo−クロロフェノール中で測定される固有粘度が、0.80〜1.50dL/g、好ましくは0.80〜1.20dL/gであるポリエステルを製造する。
【0038】
上記のような液相重縮合反応は、重縮合触媒の存在下に行われる。重縮合触媒としては、上記のチタン化合物とリン化合物を反応させた触媒(α)を用いることで、品質の優れたポリエチレンテレフタレートを得ることができる。この触媒は、全ジカルボン酸成分に対し、チタン金属元素として1〜30ミリモル%含有する必要がある。該チタン金属元素が1ミリモル%未満ではポリエステルの生産性が低下し、目標の分子量のポリエステルが得られない。また、該チタン金属元素が30ミリモル%を超える場合は熱安定性が逆に低下し、溶融成形時の分子量低下が大きくなり、色相も悪化するなど、品質の優れた成形体が得られない。チタン金属元素量は1〜12ミリモル%の範囲が好ましく、2〜10ミリモル%の範囲が更に好ましい。
そのほか、二酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシドなどのゲルマニウム化合物、三酸化アンチモンなどのアンチモン触媒又はチタニウムテトラブトキシドなどのチタン触媒も、必要に応じ併用することができる。
【0039】
このようにして、最終液相重縮合反応器から得られたポリエステル(a)は、通常、溶融押出成形法によって粒状(チップ状)に成形される。得られるポリエステルの固有粘度は0.40〜1.50dL/gであることが必要である。固有粘度が0.40dL/g未満の場合得られるポリエステルを例えばボトルに成形する際、ボトルとしての強度が劣るばかりでなく、溶融粘度が低いためにブロー成形性の点で劣り好ましくない。1.50dL/gを越える場合には、溶融重合段階での着色が大きくなる。さらに、溶融粘度が高いためにボトルプリフォームを射出成形する際困難となり、成形温度を高くせざるをえなくなり、ポリマーの着色が大きくなり好ましくない。また、分解生成物であるアルデヒド類の発生も多くなりボトル成形後に充填した飲料物の味覚を損なうという問題点も生じるため好ましくない。
【0040】
このような問題を解決するため溶融重縮合したポリエステル(a){プレポリマー}を固相重縮合することにより固有粘度を上げる方法が一般的である。その際、最終的に得られるポリエステルの物性を損なわないようするためにはプレポリマーの固有粘度を0.50〜1.50dL/gの範囲とすることが好ましい。プレポリマーの固有粘度が0.50dL/g未満の場合、溶融重縮合反応終了後ポリマーをチップ化する際、割れチップが多発し、形状の均一性がなくなり固相重縮合反応後のポリマー品質にばらつきが生じるだけでなく、固相重縮合への負荷が増加し、生産性が低下するという点で好ましくない。プレポリマーの固有粘度が1.50dL/gを越える場合には前述の通り溶融重縮合段階での着色、分解によるアルデヒド類の発生、ボトルプリフォームを射出成形の点で好ましくない。
【0041】
(6−7)ポリエステルの製造:固相重合反応
・予備結晶化工程
本発明では、液相重縮合工程で得られたポリエステル(a)は、固相重縮合に先立って、該ポリエステル(a)を昇温結晶化温度(Tc)以上で、かつ融点未満の温度に1〜30分間保つ予備結晶化工程(B)を行ってもよい。この予備結晶化工程は、ポリエステル(a)を、乾燥状態で昇温結晶化温度(Tc)〜融点未満の温度、好ましくはTcより10℃高くかつ融点より40℃以上低い温度下に、1〜60分間、好ましくは5〜40分間保つことによって行われる。たとえばポリエステルがポリエチレンテレフタレートである場合には、具体的に、160〜200℃温度で1〜40分間加熱する。
この予備結晶化工程は、空気中あるいは不活性ガス雰囲気中で行われるが、不活性ガス雰囲気中で行われることが好ましく、酸素濃度が20ppm以下の不活性ガス雰囲気中で行われることがより好ましい。不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、炭酸ガスなどが挙げられる。
【0042】
この予備結晶化の工程においては、はじめからこの温度下で結晶化の処理する前に、ポリエステルの粘着温度以下、例えば100℃以下の温度で予備処理を行い、又は必要に応じてこの予備処理を減圧下で行い、ポリエステル(a)に含まれている低沸点成分を除去しておくことが好ましい。予備処理工程においては不活性ガス雰囲気下、又は不活性ガス流通下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては上述のものを使用することが出来る。
予備結晶化されたポリエステル(a)は、結晶化度が20〜50%であることが望ましい。予備結晶化工程では、いわゆるポリエステルの固相重縮合反応は進行せず、予備結晶化されたポリエステル(a)の固有粘度は、液相重縮合工程(A)で得られたポリエステル(a)の固有粘度とほぼ同じである。
【0043】
・固相重縮合工程
本発明では、前記のようにして得られたポリエステル(a)、又は予備結晶化されたポリエステル(a)を固相重縮合する。
固相重縮合工程は、少なくとも1段からなり、重縮合温度が通常190〜240℃、好ましくは195〜225℃である。固相重縮合工程は、空気中あるいは前記と同様の不活性ガス雰囲気中又は真空中で行われるが、不活性ガス雰囲気中又は真空中で行われることが好ましい。不活性ガス雰囲気中で実施する場合、酸素濃度が50ppm以下、好ましくは20ppm以下の不活性ガス雰囲気中で行われることがより好ましい。
このようして得られたポリエステル(b)の固有粘度は、通常0.50〜1.50dL/gであることが望ましい。
上記のような製造方法により得られたポリエステル形成物は、ホルムアルデヒド含有率が、1.0ppm以下、好ましくは0.5ppm以下であり、アセトアルデヒド含有率が10.0ppm以下、好ましくは7.5ppm以下、より好ましくは6.0ppm以下である。また他のアルデヒド、例えばナフチルアルデヒド、プロピオンアルデヒド、アクロレイン、ベンズアルデヒドなどの含有量も少なくすることができる。
【0044】
(6−8)ポリエステルの成形体の製造
上記のポリエステルの製造方法にて得られたポリエステルは、種々の成形体を製造することができる。たとえば、ボトルなどの中空成形体を成形するには、まず乾燥工程を経たポリエステル(c)を射出成形機などの成形機に供給して中空成形体用プリフォームを成形する。この中空成形体用プリフォームのアセトアルデヒド含有率は、通常10.0ppm以下、好ましくは7.5ppm以下、より好ましくは6.0ppmである。次に、このプリフォームを所定形状の金型に挿入し延伸ブロー成形して中空成形体を成形する。この中空成形体のアセトアルデヒド含有率は、通常10.0ppm以下、好ましくは7.5ppm以下、より好ましくは6.0ppm以下である。もちろん成形体とは中空成形体用プリフォームに限定される事はなく、フィルム、シート、繊維、角柱、平板、チップ等も含まれる。
本発明の方法により製造された中空成形体用プリフォームは、該中空成形体用プリフォームを形成するポリエステル中のアセトアルデヒド含有率が極めて低いため、飲料充填用容器形成用プリフォーム材料や飲料充填用容器(ボトル)として好適に用いられる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれによりなんら限定を受けるものでは無い。なお、実施例・比較例中の各物性値は以下の方法により求めた。なお実施例、比較例において「部」とは重量部を表す。
【0046】
(1)固有粘度(IV)
固有粘度数は、チップまたはプリフォームのボトル口部(口栓部と同義である。)天面に相当する部分から切り出した試料を一定量計量し、o−クロロフェノールに0.012g/mlの濃度に溶解した後、一旦冷却させ、その溶液をウベローデ式粘度計を用いて35℃の温度条件で測定した溶液粘度から算出した。
【0047】
(2)Col−L,a,b(色相)
非晶ポリマー(固相重縮合工程を行っていないもの等)は170℃×3時間窒素雰囲気下の乾燥機中で熱処理し、結晶化させた後、カラーマシン社製CM−7500型カラーマシンで測定した。結晶化ポリマー(固相重縮合工程を行ったもの等)はそのままカラーマシン社製CM−7500型カラーマシンで測定した。
【0048】
(3)金属含有濃度分析(触媒)
本発明の触媒のチタン,リン原子濃度は、乾燥したサンプルを走査電子顕微鏡(SEM,日立計測機器サービスS570型)にセットし、それに連結したエネルギー分散型X線マイクローアナライザー(XMA,堀場EMAX−7000)にて定量分析を実施した。
【0049】
(4)触媒の平均粒径
平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置 SALD−2000(島津製作所)を用いて測定した。
【0050】
(5)ジエチレングリコール(DEG)含有量
ヒドラジンヒドラート(抱水ヒドラジン)を用いてポリエステル試料チップを分解し、この分解生成物中のジエチレングリコールの含有量をガスクロマトグラフィー(ヒューレットパッカード社製(HP6850型))を用いて測定した。
【0051】
(6)末端カルボキシ濃度(COOH)
ポリマーサンプルを粉砕して精秤した後ベンジルアルコールに溶解し、水酸化カリウムによる中和滴定により求めた。それをポリエステル1×10g(1トン)当たりのカルボキシル基の当量濃度の数値(eq/T)に換算した。
【0052】
(7)pH測定
実施例・比較例で用いるエチレングリコールのpHは、エチレングリコール試料を同容量の水で希釈し、株式会社堀場製作所製のpHメーター(D−25型)を用いて測定を行った。測定の都度pH=4.01、6.86、9.18の3種のpH校正液により補正を行い測定した。
【0053】
[実施例1]
エチレングリコール571.3重量部に酢酸を0.105重量%(0.6g)添加した。この溶液のpHを測定したところ、2.2だった。この溶液にエチレングリコール中に15.5重量%に調整したモノブチルホスフェート溶液を24.0重量部を入れて混合攪拌した中に、チタンテトラブトキシド4.1重量部をゆっくり添加し、窒素雰囲気下、徐々に昇温して120℃の温度で1時間攪拌保持したのち、得られた懸濁液を室温まで放冷した。得られた触媒をαとする。この触媒溶液のpHを測定したところ2.2であり、触媒溶液中の触媒粒子の平均粒子径は7.4μmであった。
【0054】
[実施例2]
実施例1において、攪拌保持する反応時間を1時間から3時間に変更するほかは実施例1と同様に実施した。この触媒溶液のpHを測定したところ2.8であり、触媒粒子の平均粒子径は8.8μmであった。得られた触媒をβとする。
【0055】
[実施例3]
実施例1において、攪拌保持する反応温度を120℃から150℃に変更するほかは実施例1と同様に実施した。この触媒溶液のpHを測定したところ1.9であり、触媒粒子の平均粒子径は6.7μmであった。
【0056】
[実施例4]
実施例1において、攪拌保持する反応温度を120℃から180℃に変更するほかは実施例1と同様に実施した。この触媒溶液のpHを測定したところ1.9であり、触媒粒子の平均粒子径は6.9μmであった。
【0057】
[実施例5]
重合触媒αを調整する際、エチレングリコール571.3重量部に酢酸を0.018重量%(0.1g)添加する以外、実施例1と同様に実施した。酢酸のエチレングリコール溶液のpHを測定したところ、3.6だった。触媒粒子の平均粒子径は9.7μmであった。
【0058】
[実施例6]
重合触媒αを調整する際、エチレングリコール571.3重量部に酢酸を0.053重量%(0.3g)添加する以外、実施例1と同様に実施した。酢酸のエチレングリコール溶液のpHを測定したところ、2.4だった。触媒粒子の平均粒子径は8.0μmであった。
【0059】
[実施例7]
重合触媒αを調整する際、エチレングリコール571.3重量部に酢酸を0.158重量%(0.9g)添加する以外、実施例1と同様に実施した。酢酸のエチレングリコール溶液のpHを測定したところ、1.9だった。触媒粒子の平均粒子径は6.4μmであった。
【0060】
[比較例1]
実施例1において、モノブチルホスフェート溶液を加える前のエチレングリコール溶液として酢酸を添加していないものを用いるほかは、実施例1と同様に実施した。この触媒溶液のpHを測定したところ8.9であり、触媒粒子の平均粒子径は16.7μmであった。
【0061】
[比較例2]
実施例3において、モノブチルホスフェート溶液を加える前のエチレングリコール溶液として酢酸を添加していないものを用いるほかは、実施例3と同様に実施した。この触媒溶液のpHを測定したところ8.9であり、触媒粒子の平均粒子径は15.7μmであった。
【0062】
[比較例3]
実施例4において、モノブチルホスフェート溶液を加える前のエチレングリコール溶液として酢酸を添加していないものを用いるほかは、実施例4と同様に実施した。この触媒溶液のpHを測定したところ8.9であり、触媒粒子の平均粒子径は16.0μmであった。
【0063】
[比較例4]
比較例3において、チタンテトラブトキシドをゆっくり添加し、120℃の温度で1時間攪拌保持する雰囲気を窒素雰囲気下から空気雰囲気下に変更するほかは、比較例3と同様に実施した。この触媒溶液のpHを測定したところ8.9であり、触媒粒子の平均粒子径は15.7μmであった。実施例1〜7、比較例1〜4の結果を表1に纏めた。
【0064】
【表1】

【0065】
[参考実施例1]
予め200部のオリゴマーが滞留する反応器内に、撹拌下、窒素雰囲気で250℃、常圧下に維持された条件下に、173部の高純度テレフタル酸と93部のエチレングリコールとを混合して調製されたスラリーを一定速度供給し、反応で発生する水とエチレングリコールを反応器外に留去しながら、エステル化反応を3時間行いエステル化反応を完結させた。この時のエステル化率は、98%以上で、生成されたオリゴマーの重合度は、約5〜9であった。
このエステル化反応で得られたオリゴマー200部を重縮合反応槽に移し、重縮合触媒として、実施例1で得られた重縮合用触媒αをテレフタル酸に対してチタン原子が4mmol%になる量にて投入した。引続き重縮合反応槽内の反応温度を250から280℃、又、反応圧力を常圧から30Paにそれぞれ段階的に上昇及び減圧し、反応で発生する水、エチレングリコールを重縮合反応槽外に除去しながら重縮合反応を行った。
重縮合反応の進行度合いを、重縮合反応槽内の撹拌翼への負荷をモニターしなから確認し、所望の重合度に達した時点で、反応を終了した。その後、系内の反応物を吐出部からストランド状に連続的に押出し、冷却,カッティングして、約3mm程度の粒状ペレットを得た。この時の重縮合反応時間は、189分間であった。得られたポリエチレンテレフタレートの品質を表2に示した。
【0066】
[参考実施例2、3]
重縮合触媒として、実施例2〜5と同様の操作にて得られた触媒粒子径が7.8μm、3.4μmの重縮合用触媒を使用した以外、参考実施例1と同様に実施した。得られたポリエチレンテレフタレートの品質を表2に示した。
【0067】
[参考比較例1,2]
重縮合触媒として、比較例1〜4と同様の操作にて得られた触媒粒子径が13.9μm、11.3μmの重縮合触媒を使用した以外、参考実施例1と同様に実施した。得られたポリエチレンテレフタレートの品質を表2に示した。
【0068】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によれば、重縮合活性が良好であって、得られるポリエステルの色相が良好で、ポリエステル中に含まれるジエチレングリコール量、末端カルボキシ濃度が少ないポリエステルを得ることができる。このようなポリエステルは繊維、ボトル等の射出成形品、フィルム等の用途に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン化合物とリン化合物を反応させ得られたポリエステル製造用触媒であり、該ポリエステル製造用触媒の粒子径が、10μm以下であることを特徴とするポリエステル製造用重合触媒。
【請求項2】
pHを4.1以下に調整した溶媒に、チタン化合物及びリン化合物を添加し、反応させ得られた請求項1記載のポリエステル製造用重合触媒。
【請求項3】
チタン化合物及びリン化合物を、70℃〜200℃で反応させることを特徴とする請求項1又は2記載のポリエステル製造用重合触媒。
【請求項4】
チタン化合物として下記一般式(I)で表されるチタン化合物を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のポリエステル製造用重合触媒。
【化1】

[上記式中、R、R、R及びRはそれぞれ同一若しくは異なるアルキル基又はフェニル基を示し、mは1〜4の整数を示し、かつmが2、3又は4の場合、2個、3個又は4個のR及びRは、それぞれ同一の基であっても異なる基であってもよい。]
【請求項5】
リン化合物として、ホスホン酸及び/又はホスホン酸エステル化合物を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のポリエステル製造用重合触媒。
【請求項6】
リン化合物として、ホスホン酸モノエステル化合物を用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のポリエステル製造用重合触媒。
【請求項7】
溶媒がpHを4.1以下に調整したエチレングリコールであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載のポリエステル製造用重合触媒。
【請求項8】
ポリエステル製造用触媒の平均粒子径が0.10μm以上10.0μm以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載のポリエステル製造用重合触媒。

【公開番号】特開2011−168635(P2011−168635A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31152(P2010−31152)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】