説明

ポリエチレンテレフタレート組成物およびその製造方法

【課題】耐加水分解性と伸度保持率に優れ、太陽電池用フィルムに適したポリエチレンテレフタレート組成物を提供する。
【解決手段】アルカリ金属含有量(A)、カルシウム元素含有量(M)およびリン元素含有量(P)が下記式(I)〜(IV)を満足し、湿熱処理前後のカルボン酸末端基増加量(ΔCOOH)が60当量/t以下、カルボン酸末端基量(COOH)が下記式(V)を満足し、かつ固有粘度が0.6以上0.75以下のポリエチレンテレフタレート組成物。1≦A≦3(mol/t)・・・(I)、3≦M≦15(mol/t)・・・(II)、1.5≦P≦5(mol/t)・・・(III)、2≦M/P≦5・・・(IV)、20<COOH≦40(当量/t)・・・(V)(Aはアルカリ金属元素含有量(mol/t)、Mはカルシウム元素含有量(mol/t)、Pはリン元素含有量(mol/t)、COOHはカルボン酸末端基量)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐加水分解性および伸度保持率に優れた太陽電池フィルム用途に適したポリエチレンテレフタレート組成物およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートは、機械特性、熱特性、耐薬品性、電気特性および成形性に優れ、様々な用途に用いられている。
【0003】
しかしながら、ポリエチレンテレフタレートは、加水分解により機械物性が低下するため、長期にわたって使用する場合あるいは湿気のある状態で使用する場合においては、加水分解を抑制すべく様々な検討がなされてきた。ポリエチレンテレフタレートの加水分解反応は、COOH末端基濃度に依存することがわかっており、固相重合や末端封鎖剤によりCOO末端基濃度を下げて耐加水分解性を改善する検討が多くなされている。
【0004】
例えば、3官能以上の架橋成分と末端封止剤を二軸押出機でコンパウンドすることによりCOOH末端基量を低減し、耐加水分解性を向上させる技術が提案されている(特許文献1参照。)。しかしながら、この提案は、初期の耐加水分解性には優れているが、リン化合物を使用していないため、加速度的に加水分解反応が進行し、長期の耐加水分解性を満足することは困難であり、さらに架橋成分をコンパウンドするため、不均一に反応して微小なゲル状異物が生成しやすく、フィルム用途には適さない。
【0005】
また、ポリエチレンテレフタレートの加水分解反応をリン化合物で抑制する方法についても検討がなされている。
【0006】
例えば、リン酸とリン酸アルカリ金属塩を併用することにより耐加水分解性を向上させる技術が提案されている(特許文献2参照。)。しかしながら、この提案の場合は、COOH末端基濃度が20eq/tを超えると耐加水分解性が大幅に低下する傾向がある。
【0007】
また、無機リン酸塩を含有するポリエステルの製造方法が提案されており、実施例ではリン酸が併用されている(特許文献3参照。)。しかしながら、この提案の場合は、リン酸と無機リン酸塩の比率とその適用量が不適切であるため、無機リン酸塩が異物化しやすく、短期間の耐加水分解性には優れるものの、太陽電池用途などに必要とされる長期にわたる耐加水分解性が不十分であり、異物によるフィルムの機械物性の低下があった。
【0008】
また別に、緩衝リンを含有するポリエチレンテレフタレートが提案されており、実施例ではリン化合物が併用されている(特許文献4参照。)。しかしながら、この提案の場合は、リン化合物の種類、その比率および適用量などの適正化が不十分であるため、太陽電池用途としては耐加水分解性と機械特性が不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−31439号公報
【特許文献2】WO2010−103945号公報
【特許文献3】特開2007−277548号公報
【特許文献4】特開2008−7750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明の目的は、COOH末端基量が多く、耐加水分解性と伸度保持率に優れた太陽電池フィルム用途として好適なポリエチレンテレフタレート組成物とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明のポリエチレンテレフタレート組成物は、アルカリ金属含有量(A)、カルシウム元素含有量(M)およびリン元素含有量(P)が下記式(I)〜(IV)を満足し、湿熱処理前後のカルボン酸末端基増加量(ΔCOOH)が60当量/t以下、カルボン酸末端基量(COOH)が下記式(V)を満足し、固有粘度が0.6以上0.75以下のポリエチレンテレフタレート組成物である。
1≦A≦3(mol/t) ・・・(I)
3≦M≦15(mol/t) ・・・(II)
1.5≦P≦5(mol/t) ・・・(III)
2≦M/P≦5 ・・・(IV)
20<COOH≦40(当量/t) ・・・(V)
(ここで、Aはポリエチレンテレフタレート組成物中のアルカリ金属元素含有量(mol/t)、Mはポリエチレンテレフタレート組成物中のカルシウム元素含有量(mol/t)、Pはポリエチレンテレフタレート組成物中のリン元素含有量(mol/t)、COOHは滴定法によって算出したポリエチレンテレフタレート組成物中のカルボン酸末端基量をそれぞれ表す。)
本発明のポリエチレンテレフタレート組成物の好ましい態様によれば、前記のアルカリ金属化合物は、カリウム化合物および/またはナトリウム化合物である。
【0012】
本発明のポリエチレンテレフタレート組成物の好ましい態様によれば、ポリエステルの全酸成分に対して、3官能以上の共重合成分を0.01mol%以上0.5mol%未満含有することである。
【0013】
また、本発明のポリエチレンテレフタレート組成物の製造方法は、エステル交換反応またはエステル化反応を経て、重縮合を行ってポリエチレンテレフタレートを製造する方法において、重縮合反応が開始するまでの任意の段階において、2種以上のリン化合物をリン元素含有量として1.5mol/t以上5mol/t以下となるように添加し、かつ、そのうちの1種のリン化合物がリン酸アルカリ金属塩であり、アルカリ金属化合物をアルカリ金属元素の含有量として1mol/t以上3mol/t以下となるように添加し、カルシウム化合物をカルシウム元素の含有量として5mol/t以上15mol/t以下となるように添加することを特徴とするポリエチレンテレフタレート組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐加水分解性に優れたポリエチレンテレフタレート組成物が得られる。また、本発明のポリエチレンテレフタレート組成物を二軸延伸フィルムとすることで、磁材用途、コンデンサーなどの電気材料用途、包装用途等の用途、特に、耐加水分解性および伸度保持率を必要とする太陽電池用フィルム用途に好適に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のポリエチレンテレフタレート組成物は、アルカリ金属含有量(A)、アルカリ土類金属元素含有量(M)およびリン元素含有量(P)が下記式(i)〜(IV)を満足し、湿熱処理前後のカルボン酸末端基増加量(ΔCOOH)が60当量/t以下、カルボン酸末端基量(COOH)が下記式(V)を満足し、かつ固有粘度が0.6以上0.75以下のポリエチレンテレフタレート組成物である。
1≦A≦3(mol/t) ・・・(I)
3≦M≦15(mol/t) ・・・(II)
1.5≦P≦5(mol/t) ・・・(III)
2≦M/P≦5 ・・・(IV)
20<COOH≦40(当量/t)・・・(V)
(ここで、Aはポリエチレンテレフタレート組成物中のアルカリ金属元素含有量(mol/t)、Mはポリエチレンテレフタレート組成物中のアルカリ土類金属元素含有量(mol/t)、Pはポリエチレンテレフタレート組成物中のリン元素含有量(mol/t)、COOHは滴定法によって算出したポリエチレンテレフタレート組成物中のカルボン酸末端基量をそれぞれ表す。)
本発明のポリエチレンテレフタレート組成物は、機械特性の点から、構成単位として95mol%以上がエチレンテレフタレート単位であることが好ましく、さらには、耐加水分解性の点から、99mol%以上がエチレンテレフタレート単位であることが好ましい。
【0016】
本発明のポリエチレンテレフタレート組成物は、伸度保持率の点から、3官能以上の共重合成分を全酸性分に対して0.01mol%以上0.5mol%未満含有することが好ましく、さらには、伸度保持率およびゲル化抑制の点から、0.05mol%以上0.3mol%以下であることが好ましい。
【0017】
3官能以上の共重合成分としては、トリメリット酸、シクロヘキサントリカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ピロメリット酸、ブタンテトラカルボン酸、長鎖脂肪族カルボン酸を3量体化したトリマー酸などの多価カルボン酸およびその無水物やエステル、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシヘキサンなどの多価アルコール、クエン酸、ジヒドロキシベンゼンカルボン酸、およびジヒドロキシナフタレンカルボン酸などの多価ヒドロキシカルボン酸およびその無水物やエステルなどを挙げることができ、特に、伸度保持率の点から、3官能の共重合成分であることが好ましい。
【0018】
このような3官能以上の共重合成分の添加方法としては、ハンドリング性および工程安定性の点から、多価カルボン酸エステルおよび多価アルコール成分の場合はエステル交換反応前に、多価カルボン酸の場合はエチレングリコールの溶液に、またはスラリーとして添加することが好ましい。
【0019】
本発明のポリエチレンテレフタレート組成物に含有されるアルカリ金属元素(A)の含有量は、耐加水分解性の点から、下記式(I)を満足する必要があり、さらには下記式(VI)を満足することが好ましい。
1≦A≦3(mol/t)・・・(I)
1≦A≦2(mol/t)・・・(VI)
アルカリ金属元素が1.0mol/ton未満では、十分な耐加水分解性が得られず、3.0mol/tonを超えると耐熱性が低下し、加水分解反応を促進する。
【0020】
本発明で用いられるアルカリ金属元素(A)としては、ナトリウム、カリウムおよびリチウムなどが挙げられるが、中でも耐加水分解性の点から、ナトリウムとカリウムから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。アルカリ金属元素を含む化合物としては、耐加水分解性の点から、水酸化物またはリン酸塩であることが好ましく、さらにはポリエステルへの溶解性および耐加水分解性の点から、リン酸二水素アルカリ金属塩であることが好ましい。中でも、耐加水分解性の点から、リン酸二水素ナトリウムが好ましく用いられる。
【0021】
本発明のポリエチレンテレフタレート組成物に含有されるカルシウム元素(M)は、耐加水分解性の点から、下記式(II)を満足する必要があり、さらには下記式(VII)を満足することが好ましい。
3≦M≦15(mol/t)・・・(II)
6≦M≦10(mol/t)・・・(VII)
カルシウム元素が3mol/t未満では、エステル交換反応率が低下したり、COOH末端基増加により耐加水分解性が低下したりする。また、カルシウム元素が15mol/tを超える場合、カルシウム元素起因の異物が多量に生成したり、ポリエチレンテレフタレート組成物の耐熱性が低下する。
【0022】
本発明で用いられるカルシウム元素を含有する化合物としては、酢酸カルシウム、酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムなどを挙げることができるが、エステル交換反応性および耐加水分解性の点から、酢酸カルシウムが好ましく用いられる。
【0023】
本発明のポリエチレンテレフタレート組成物に含有されるリン元素は、耐加水分解性、耐熱性の点から、下記式(III)を満足する必要があり、さらには下記式(VIII)を満足することが好ましい。
1.5≦P≦5(mol/t)・・・(III)
2.0≦P≦4(mol/t)・・・(VIII)
リン元素が1.5mol/ton未満では十分な耐加水分解性を得られず、また、5.0mol/tonを超えると重縮合反応遅延によりCOOH末端基が増加しやすく、加水分解反応も促進する。
【0024】
リン元素を含む化合物としては、リン酸、リン酸エステルおよびリン酸アルカリ金属塩などを用いることができるが、耐加水分解性の点から、リン酸およびリン酸アルカリ金属塩を併用することが好ましい。
【0025】
本発明のポリエチレンテレフタレート組成物に含有されるカルシウム元素とリン元素のモル比は、耐加水分解性の点から下記式(IV)を満足する必要があり、さらには下記式(IX)を満足することが好ましい。
2≦M/P≦5・・・(IV)
3≦M/P≦4・・・(IX)
カルシウム元素とリン元素のモル比が2未満の場合、加水分解反応によるCOOH末端基増加に伴い、加速度的に耐加水分解性が低下したりする。また、カルシウム元素とリン元素のモル比が5を超える場合、耐熱性が低下しCOOH末端基が増加したりする。
【0026】
通常のエステル交換反応触媒に用いられるマグネシウム化合物やマンガン化合物をリン元素の2倍モル以上添加すると、溶融時の耐熱性が低下し、COOH末端基が増加する傾向にあり、一般的にはCOOH末端基が増加すると耐加水分解性も低下する。しかしながら、カルシウム化合物を用いた場合、良好な耐加水分解性を維持できることが判明した。これは、リン元素に対して余剰なカルシウム元素が、溶融時には熱分解反応に寄与し、冷却・固化した後はCOOH末端基と安定なキレート化合物を形成するため、成型物の耐加水分解性が良好になると考えられる。
【0027】
本発明のポリエチレンテレフタレート組成物は、耐加水分解性、他部材との接着性およびコーティング時の塗れ性の点から、COOH末端基量が下記式(V)を満足することが必要であり、好ましくは下記式(X)を満足することが好ましい。
20<COOH≦40(当量/t)・・・(V)
23≦COOH≦37(当量/t)・・・(X)
COOH末端基量が20当量/t以下の場合、他部材との接着性、コーティング時の塗れ性が低下する。さらには、COOH末端基量を20当量/ton以下にする場合、ポリエチレンテレフタレートの重縮合反応を低温で行う必要があるため重合時間が長時間化したり、重合1バッチあたりの仕込量を低減する必要があり、生産性が低下するという工程上の課題もある。また、COOH末端基量が40当量/tを超える場合、COOH末端基による加水分解促進効果がカルシウム元素によるCOOH末端基活性抑制効果を上回り、耐加水分解性が低下する。
【0028】
本発明のポリエチレンテレフタレート組成物は、耐加水分解性と伸度保持率の点から、カルボン酸末端基増加量(ΔCOOH)が60当量/ton以下であることが必要であり、さらには50当量/ton以下であることが好ましい。ΔCOOHが60当量/tonを超えると、十分な伸度保持率が得られない。また、ΔCOOHは、小さいほどポリマーの耐加水分解性が良好であることを示し、伸度保持率が良好になる。
【0029】
本発明のポリエチレンテレフタレート組成物は、耐加水分解性と伸度保持率の点から、固有粘度を0.6以上0.75以下とする必要があり、さらに好ましくは耐加水分解性と生産性の点から0.65以上0.7以下である。固有粘度が0.6未満の場合、COOH末端基は低減できるが重合度が不十分となるため、二軸延伸フィルムとした場合に十分な伸度保持率を得ることができない。また、固有粘度が0.75を超える場合は、重合反応時間が長時間化し、COOH末端基が増加するため、十分な耐加水分解性が得られない。COOH末端基の増加を抑制しつつ、固有粘度を0.6以上とする方法として、固有粘度0.6未満で重合反応を終了し、固相重合を行うこと方法もあるが、固相重合を行う分コストアップし、適用する用途が限られる。
【0030】
このようなポリエチレンテレフタレート組成物の製造方法としては、エステル化反応またはエステル交換反応を行った後、重縮合反応を行って製造することができる。
エステル交換反応を経て重縮合反応を行う場合、エステル交換反応触媒としては、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、テトラブトキシチタネート、酢酸アルミニウムおよび酢酸リチウムなどの公知の触媒を用いることができる。なかでも、エステル交換反応触媒としては、耐加水分解性の点から、酢酸カルシウムを用いることが好ましい。酢酸カルシウム以外のエステル交換搬送触媒を用いる場合は、耐加水分解性の点から、金属元素量として20ppm以下とし、不足する触媒活性を酢酸カルシウムで補うことが好ましい。
【0031】
本発明において、3官能以上の共重合成分の添加方法としては、共重合成分の末端基の種類によって添加時期を変更することがエステル交換反応性、重縮合反応性およびハンドリング性の点から好ましい。具体的には、末端基がOH基の場合はエステル交換反応前から重縮合反応開始までの任意の時期に添加することが好ましく、末端基がCOOH基の場合はエステル交換反応後に添加することが好ましく、そして末端基がエステル基の場合はエステル交換反応前に添加することが好ましい。また、ヒドロキシカルボン酸のようにOH基とCOOH基を同時に有する化合物の場合は、エステル交換反応性、重縮合反応性の点から、COOH基の場合の添加方法に従って添加することが好ましい。
【0032】
重縮合反応で使用する重縮合反応触媒としては、公知の化合物を使用することができる。例えば、重縮合反応触媒として、三酸化アンチモン、チタンアルコキシド、チタンキレート化合物および二酸化ゲルマニウムなどを挙げることができ、なかでも重縮合反応性および耐熱性の点から、三酸化アンチモンであることが好ましく用いられる。
【0033】
リン化合物およびアルカリ金属化合物としては、耐加水分解性の点から、リン酸とリン酸アルカリ金属塩のエチレングリコール溶液またはスラリーとして添加することが好ましい。
【0034】
重縮合反応条件としては、重合反応性の点から、最終到達温度を286℃以上295℃以下とすることが好ましい。285℃以下の温度で重合するとCOOH末端基の生成量が少なく耐加水分解性は向上するが、固有粘度を0.6以上0.75以下とする場合、重合反応時間が長くなり生産性が低下する。
【0035】
エステル化反応を経て、重縮合反応を行い、ポリエチレンテレフタレート組成物を得る場合には、重縮合反応性の点から、3官能以上の共重合成分をエステル化反応終了後から重縮合反応開始までの間に添加することが好ましい。また、エステル化反応の場合は、未反応のCOOH末端基が多く残るため、エチレングリコールを添加することにより、COOH末端基をエチレングリコールでエステル化し、COOH末端基量を低減することができる。このときのエチレングリコールの量としては、COOH末端基量低減、重合反応性の点から、ポリエチレンテレフタレート組成物に含まれる全酸成分に対して、0.1モル倍以上0.3モル倍以下とすることが好ましい。エチレングリコールの添加量が0.3モル倍を超えると、よりCOOH末端基を低減することが可能になるが、重合反応時間も長くなるため、生産性を考慮し、バランスをとる必要がある。
【0036】
次に、本発明のポリエチレンテレフタレート組成物の具体的な製造方法を述べるが、本発明はこれに限定されるものではなく、その他多官能化合物においても同様の方法で製造することができる。
【0037】
ポリエチレンテレフタレートの製造のため、モノマーとして、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールを仕込む。エステル交換反応触媒としては、酢酸カルシウム1水和物を用い、重合触媒である三酸化アンチモンも同時に添加する。温度150℃窒素雰囲気下で溶融後、攪拌しながら230℃の温度まで昇温し、メタノールを留出させながらエステル交換反応を行う。このとき、酢酸カルシウム1水和物の添加量は、エステル交換反応性と耐加水分解性の点から、ポリエチレンテレフタレート組成物100質量部に対して0.05質量部以上0.26質量部以下であれば十分である。また、三酸化アンチモンの添加量としては、重縮合反応性の点からポリエチレンテレフタレート組成物に対して0.020質量部以上0.035質量部以下であれば十分である。
【0038】
エステル交換反応終了後、ポリエチレンテレフタレート組成物100質量部に対して、リン酸を0.019質量部(リン原子1.9mol/tonに相当)とリン酸二水素ナトリウム2水和物0.027質量部(リン原子1.7mol/ton、ナトリウム原子1.7mol/tonに相当)をエチレングリコール0.5質量部に溶解したエチレングリコール溶液を添加する。このとき、伸度保持率を70%以上とするために、ポリエチレンテレフタレート組成物に対して、リン原子量1.5mol/ton以上5.0mol/ton以下、ナトリウム金属原子量1.0mol/ton以上3.0mol/ton以下とする必要がある。
【0039】
重縮合反応は、最終到達温度290℃、真空度0.1Torrで行い、固有粘度0.65相当の溶融粘度に達した時点で吐出し、ストランドカッターによりチップ化する。このとき、吐出時の溶融粘度を固有粘度0.60以上0.75以下相当とすることにより、OCP不溶物0.5質量%未満を達成することができる。
【0040】
得られたポリマーチップを、150℃の温度で4時間、真空度0.1Torrで乾燥し、結晶化させる。このときの乾燥と結晶化の条件としては、140℃以上160℃以下の温度で4時間以上減圧乾燥すれば十分である。
【0041】
このようにして得られたポリエチレンテレフタレート組成物は、通常の押出機を用い、Tダイを用いて押出し、二軸延伸しフィルムとすることができる。得られたポリエチレンテレフタレート組成物からなるフィルムは、太陽電池用途等の湿度変化の大きい環境で使用する用途に供給する上で、伸度保持率が50%以上であることが好ましく、さらには、長期間使用する用途に供給する上で、伸度保持率60%以上とすることがより好ましい。特に、伸度保持率が70%以上の場合、片面のみを他部材と張り合わせた露出の多い太陽電池用部材として適用することが可能となるため好ましい態様である。伸度保持率を50%以上とするためには、本発明のポリエチレンテレフタレート組成物を原料として使用することはもちろんであるが、さらに伸度保持率を高めるには、押出機へのチップ供給を窒素雰囲気下で行う、Tダイから押出されるまでの時間を短くするなどのCOOH末端基低減処方や、フィルムの延伸倍率を実効面倍率で10倍以上、特に12倍以上とすることなどが有効である。
【0042】
このようにして製造された本発明のポリエチレンテレフタレート組成物からなるフィルムは、本発明のポリエチレンテレフタレート組成物などの太陽電池用フィルムなどの用途で必要とされる耐加水分解性および伸度保持率が良好となる。
【0043】
本発明のポリエチレンテレフタレート組成物は、耐加水分解性に優れるため、包装用フィルム、電気絶縁用フィルム、金属ラミネート用フィルムおよび太陽電池バックシート用フィルムなどに好適に用いることができる。
【実施例】
【0044】
(A.固有粘度)
ポリマー0.1gをo−クロロフェノール10mlに100℃の温度で20分で溶解し、25℃の温度で測定した。測定は3回行い、その平均値を測定値とした。
【0045】
(B.ポリマー中のリン元素含有量とカルシウム元素含有量の定量)
理学電機(株)製蛍光X線分析装置(型番:3270)を用いて測定した。
【0046】
(C.ポリマー中のアルカリ金属量の定量)
原子吸光分析法(日立製作所製:偏光ゼーマン原子吸光光度計180−80。フレーム:アセチレン−空気)によって定量を行った。測定は3回行い、その平均値を測定値とした。
【0047】
(D.カルボン酸末端基量)
未延伸シートサンプルを採取し、Mauliceの方法によって測定した。(文献M.J.Maulice,F.Huizinga.Anal.Chim.Acta,22 363(1960))測定は3回行い、その平均値を測定値とした。
【0048】
(E.耐加水分解性評価:ΔCOOH)
厚み150μmの未延伸シートを採取し、温度155℃、水蒸気中で4時間処理した。測定装置として、PRESSER COOKER 306SIII(HIRAYAMA製作所(株)製)を用いた。カルボン酸末端基増加量(ΔCOOH)は、乾燥前のポリマーの処理前後のサンプルで評価を行った。
【0049】
(F.伸度保持率の算出)
二軸延伸されたフィルムを用いて、温度125℃、湿度100%RHで、72時間間処理し、湿熱処理前後のフィルム伸度を測定し、処理前のサンプルに対する処理後の伸度保持率を百分率で計算した。
【0050】
フィルムの伸度は、ASTM−d882に規定された方法に従って、インストロンタイプの引張試験機を用いて、下記条件によって測定した。
・測定装置:オリエンテック(株)製フィルム強伸度測定装置
“テンシロンAMF/RTA−100”
・試料サイズ:幅10mm×試長間100mm
・引張速度:200mm/分
・測定環境:温度23℃、湿度65%RH
太陽電池用途において適用可能と考えられる伸度保持率50%以上を合格とした。
【0051】
(実施例1)
テレフタル酸ジメチル100質量部、エチレングリコール57.5質量部、酢酸カルシウム1水和物0.12質量部、および三酸化アンチモン0.025質量部をエステル交換反応装置に仕込み、温度150℃、窒素雰囲気下で溶融後、攪拌しながら230℃の温度まで3時間かけて昇温し、メタノールを留出させ、エステル交換反応を行った。
【0052】
エステル交換反応終了後、リン酸0.019質量部(1.9mol/ton相当)とリン酸二水素ナトリウム2水和物0.027質量部(1.7mol/ton相当)を、エチレングリコール0.5質量部に溶解したエチレングリコール溶液を添加した。
【0053】
得られた反応物を重合装置に移行し、温度を230℃から290℃まで昇温しながら減圧を行い、重縮合反応を最終到達温度290℃で、真空度0.1Torrで行った。このようにして固有粘度0.60、COOH末端基22当量/tonのポリエチレンテレフタレート組成物を得た。得られたポリエチレンテレフタレート組成物について、耐加水分解性の評価を行ったところ、処理前のポリエチレンテレフタレート組成物のCOOH末端基が22当量/tonであり、温度155℃水蒸気下で4時間処理したあとのCOOH末端基が54当量/ton(ΔCOOH=32当量/ton)と良好であった。ポリエチレンテレフタレート組成物中のアルカリ金属元素含有量、カルシウム元素含有量を測定したところ、ナトリウム元素が1.7mol/ton、カルシウム元素が6.8mol/tonであった。リン元素含有量を測定したところ、添加量がリン酸二水素ナトリウム1.7mol/tonで、リン酸1.9mol/tonと合計でリン元素3.6mol/tonに相当するが、ポリエチレンテレフタレート組成物から検出されたリン元素量は3.1mol/tonであった。これは、重合反応中にリン化合物の一部が反応系外へ飛散したためと考えられる。
【0054】
得られたポリエチレンテレフタレート組成物を、160℃の温度で6時間乾燥し、結晶化させたのち、窒素雰囲気下で押出機に供給し、押出温度280℃でTダイからキャスティングドラム(20℃)を用いて急冷し、静電印加法を用いてシート化した後に、縦延伸温度90℃、縦延伸倍率3.8倍で縦延伸したのち、横延伸温度110℃、横延伸倍率3.8倍で延伸し、熱処理を210℃の温度で3秒行い、実効倍率で面倍率13.2倍の二軸延伸フィルムを得た。
【0055】
このときの押出機のフィルターには、400メッシュの金網を使用し、ポリマー供給からTダイからの吐出まで、滞留時間は約3分であった。
【0056】
さらに、得られた二軸延伸フィルムを、温度125℃、湿度100%RHで、72時間処理の前後でフィルム伸度を比較し、伸度保持率を算出したところ、55%と太陽電池用途等に供しても問題ないレベルであった。結果を表1に示す。
【0057】
(実施例2〜12、比較例1〜10)
添加物の種類、添加量、固有粘度および重合温度を、表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリエチレンテレフタレート組成物および二軸延伸フィルムを得た。
【0058】
実施例2においては、リン酸二水素ナトリウム2水和物の代わりにリン酸二水素カリウムを使用したところ、ΔCOOHが増加する傾向にあったが、伸度保持率53%と太陽電池用途等に供しても問題ないレベルであった。
【0059】
実施例3においては、酢酸カルシウム1水和物の添加量を0.56質量部、リン酸二水素ナトリウムの添加量を0.016質量部に変更し、さらにリン酸の添加量をポリエチレンテレフタレート中のリン元素量の総量として1.6mol/tonとなるように0.008質量部に変更し、M/Pを2.0としたところ、ΔCOOHが増加する傾向にあったが、伸度保持率が53%と太陽電池用途等に供しても問題ないレベルであった。
【0060】
実施例4においては、酢酸カルシウム1水和物の添加量を0.26質量部に変更したところ、ポリエチレンテレフタレート組成物のCOOH末端基量増加に伴い、ΔCOOHも増加する傾向にあるが、伸度保持率50%と太陽電池用途等に供しても問題ないレベルであった。
【0061】
実施例5〜7においては、固有粘度をそれぞれ0.65、0.70、および0.75と変更したところ、固有粘度が高くなる分、重合時間も長くなりポリエチレンテレフタレート組成物のCOO末端基が増加し、さらにΔCOOH末端基も増加する傾向にあるが、伸度保持率はそれぞれ72%、70%および63%と太陽電池用途等に供しても問題ないレベルであった。実施例1に対してCOOH末端基、ΔCOOHともに増加傾向にあるにも関わらず、伸度保持率が向上しているのは、固有粘度を高くしたことにより分子量が増大しているため、分子鎖が切断されても一定の分子量を保つことが可能となり、機械特性の低下幅が小さくなったと推定される。
【0062】
実施例8は、酢酸カルシウム1水和物の添加量を0.17質量部に変更したところ、実施例5に比べカルシウム元素含有量が多い分、COOH末端基が増加しΔCOOHも増加する傾向にあるが、伸度保持率においては70%と太陽電池用途等に供しても問題ないレベルであった。
【0063】
実施例9は、リン酸二水素ナトリウム2水和物を0.034質量部に変更し、リン酸の添加量をポリエチレンテレフタレート中のリン元素の総量として3.1mol/tonになるように0.013質量部に変更したところ、実施例5に比べ、ナトリウム元素含有量が多い分、ΔCOOHが増加する傾向にあるが、伸度保持率は56%と太陽電池用途等に供しても問題ないレベルであった。
【0064】
実施例10は、実施例8に対してリン酸の添加量をポリエチレンテレフタレート中のリン元素の総量として4.5mol/tonになるように0.034質量部にしたところ、リン元素含有量が多い分、ΔCOOHが増加する傾向にあるが、伸度保持率は58%と太陽電池用途等に供しても問題ないレベルであった。
【0065】
実施例11は、リン酸二水素ナトリウム2水和物の添加量を0.044質量部に変更し、リン酸の添加量をポリエチレンテレフタレート中のリン元素の総量として3.1mol/tonになるように0.007質量部に変更する以外は実施例5と同様にしてポリエチレンテレフタレート組成物および二軸延伸フィルムを得た。実施例5に比べアルカリ金属であるナトリウムの含有量が多い分COOHが高く、ΔCOOHも増加する傾向にあるが、伸度保持率51%と太陽電池用途等に供しても問題ないレベルであった。
【0066】
実施例12はリン酸の代わりにリン酸トリメチル(TMPA)を0.027質量部に変更する以外は実施例5と同様にしてポリエチレンテレフタレート組成物および二軸延伸フィルムを得た。実施例5に比べCOOHが高く、ΔCOOHも増加する傾向にあるが、伸度保持率55%と太陽電池用途等に供しても問題ないレベルであった。結果を表1に示す。
【0067】
比較例1は、酢酸カルシウム1水和物の代わりに酢酸マンガン4水和物を使用したところ、ΔCOOHが大幅に増加し、伸度保持率も30%と十分な耐加水分解性を得ることができなかった。
【0068】
比較例2と3は、酢酸カルシウム1水和物の添加量をそれぞれ0.04質量部、0.30質量部に変更し、M/Pを変更したところ、いずれもΔCOOHが大幅に増加し、伸度保持率30%と十分な耐加水分解性を得ることができなかった。
【0069】
比較例4は、重合温度を285℃に変更し、固有粘度を0.58dl/gに変更したところ、COOH末端基が19当量/ton、ΔCOOHが36当量/tonとポリエチレンテレフタレート組成物の特性は良好であった。これは、重合温度を285℃に下げ、固有粘度を0.58としたことにより重合時の熱履歴が低減されたためと推定する。しかしながら、重合温度を低くした分、重合反応時間が長時間化し、生産性が低下する傾向にあり、さらに固有粘度が0.58と低いため、十分な分子量を維持できず、二軸延伸フィルムの伸度保持率30%と十分な耐加水分解性を得ることができなかった。
【0070】
比較例5は、重合温度を300℃と高温にしたため、COOH末端基が40当量/tonを超え、実施例7と比較してΔCOOHも大幅に増加し、伸度保持率40%と十分な耐加水分解性を得ることができなかった。
【0071】
比較例6〜8は、リン酸二水素ナトリウム2水和物とリン酸の添加量を変更したところ、実施例5と比較して、大幅にΔCOOHが増加し、伸度保持率10〜20%と十分な耐加水分解性を得ることができなかった。これは、リン元素の添加量が本発明の範囲からはずれているため、加水分解反応抑制効果が十分に発現しなかったためと推定される。
【0072】
比較例9は、リン酸二水素ナトリウム2水和物の添加量を0.009質量部に変更し、リン酸の添加量をポリエチレンテレフタレート中のリン元素の総量として3.1mol/tonになるように0.029質量部に変更したこと以外は、実施例5と同様にしてポリエチレンテレフタレート組成物および二軸延伸フィルムを得た。アルカリ金属であるナトリウムの含有量が0.6mol/tonと本発明の範囲からはずれているため、大幅にΔCOOHが増加し、伸度保持率10%と十分な耐加水分解性を得ることができなかった。
【0073】
比較例10は、固有粘度を0.80に変更したこと以外は、実施例5と同様にしてポリエチレンテレフタレート組成物および二軸延伸フィルムを得た。得られたポリエチレンテレフタレート組成物は、固有粘度が高く、重合時間が長くなったためCOOHが45当量/tonまで増加し、固有粘度、COOHともに本発明の範囲からはずれることになったため、ΔCOOHが大幅に増加し、伸度保持率も20%と十分な耐加水分解性を得ることができなかった。結果を表1に示す。
【0074】
(実施例13)
リン酸二水素ナトリウム2水和物とリン酸を添加した後に、さらにトリメリット酸無水物(TMA)を、全酸成分に対して0.1mol%になるように、10質量%エチレングリコール溶液として添加したこと以外は、実施例6と同様にしてポリエチレンテレフタレート組成物および二軸延伸フィルムを得た。得られたポリエチレンテレフタレート組成物は、実施例6と比較してほぼ同等のCOOH末端基、ΔCOOH、および固有粘度を示しているが、伸度保持率は72%と向上する傾向にある。これは、トリメリット酸無水分を共重合し、架橋構造を導入することにより、一部の分子鎖が切断された場合でもポリマー全体としてネットワークを構成しているため、機械強度の低下を抑制できていると推定される。結果を表1に示す。
【0075】
(実施例14)
ビスヒドロキシエチレンテレフタレート114質量部(PET100質量部相当)が、あらかじめ仕込まれたエステル化反応装置にテレフタル酸86質量部と、エチレングリコール37質量部からなるスラリーをスネークポンプを用いて3時間かけて供給し、反応物の温度を245℃〜255℃にコントロールしながらエステル化反応を行った。
【0076】
エステル化反応終了後、得られたビスヒドロキシエチレンテレフタレート114質量部(PET100質量部相当)を重合缶に移行し、酢酸カルシウム1水和物0.12質量部、三酸化アンチモン0.025質量部およびエチレングリコール9.7質量部(全酸成分に対して0.3モル倍量)を順次添加し、缶内温度が230℃に復帰した時点で、リン酸0.019質量部(1.9mol/ton相当)とリン酸二水素ナトリウム2水和物0.027質量部(1.7mol/ton相当)をエチレングリコール0.5質量部に溶解したエチレングリコール溶液を添加し、280℃の温度まで昇温しながら減圧し、重縮合反応を最終到達温度290℃、真空度0.1Torrで行い、固有粘度が0.65、COOH末端基30eq/tonで、ΔCOOHが48当量/tonのポリエチレンテレフタレート組成物を得た。得られたポリエチレンテレフタレート組成物を、実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを得た。直重法であるため、実施例5に比べてCOOHが高く、ΔCOOHが増加する傾向にあるが、伸度保持率が66%と太陽電池用途等に供しても問題ないレベルであった。結果を表1に示す。
【0077】
(実施例15)
酢酸カルシウム1水和物の代わりに水酸化カルシウム0.024質量部を添加し、リン酸二水素ナトリウムの添加量を0.016質量部に変更し、さらにリン酸の添加量をポリエチレンテレフタレート中のリン元素量の総量として1.6mol/tonとなるように0.008質量部に変更する以外は実施例15と同様にしてポリエチレンテレフタレート組成物および二軸延伸フィルムを得た。得られたポリエチレンテレフタレート組成物は、実施例14に比べCOOHが高く、ΔCOOHが増加する傾向にあったが伸度保持率60%と太陽電池用途等に供しても問題ないレベルであった。結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
(表1において、Caはカルシウム、Mgはマグネシウム、Naはナトリウム、TMPAはリン酸トリメチル、TMAはシリメリット酸無水物を、それぞれ表す。)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属元素含有量(A)、カルシウム元素含有量(M)およびリン元素含有量(P)が下記式(I)〜(IV)を満足し、湿熱処理前後のカルボン酸末端基増加量(ΔCOOH)が60当量/t以下であり、カルボン酸末端基量(COOH)が下記式(V)を満足し、かつ固有粘度が0.6dl/g以上〜0.75dl/g以下であることを特徴とするポリエチレンテレフタレート組成物。
1≦A≦3(mol/t) ・・・(I)
3≦M≦15(mol/t) ・・・(II)
1.5≦P≦5(mol/t) ・・・(III)
2≦M/P≦5 ・・・(IV)
20<COOH≦40(当量/t) ・・・(V)
(ここで、Aはポリエチレンテレフタレート組成物中のアルカリ金属元素含有量(mol/t)、Mはポリエチレンテレフタレート組成物中のカルシウム元素含有量(mol/t)、Pはポリエチレンテレフタレート組成物中のリン元素含有量(mol/t)、COOHは滴定法によって算出したポリエチレンテレフタレート組成物中のカルボン酸末端基量をそれぞれ表す。)
【請求項2】
アルカリ金属化合物が、カリウム化合物および/またはナトリウム化合物であることを特徴とする請求項1記載のポリエチレンテレフタレート組成物。
【請求項3】
ポリエステルの全酸成分に対して、3官能以上の共重合成分を0.01mol%以上0.5mol%未満含有することを特徴とする請求項1または2記載のポリエチレンテレフタレート組成物。
【請求項4】
エステル交換反応またはエステル化反応を経て、重縮合を行ってポリエチレンテレフタレートを製造する方法において、重縮合反応が開始するまでの任意の段階において、2種以上のリン化合物をリン元素含有量として1.5mol/t以上5mol/t以下となるように添加し、かつ、そのうちの1種のリン化合物がリン酸アルカリ金属塩であり、アルカリ金属化合物をアルカリ金属元素の含有量として1mol/t以上3mol/t以下となるように添加し、カルシウム化合物をカルシウム元素の含有量として5mol/t以上15mol/t以下となるように添加することを特徴とするポリエチレンテレフタレート組成物の製造方法。

【公開番号】特開2012−211211(P2012−211211A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76159(P2011−76159)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】