説明

ポリエチレン繊維およびその製造法

繊維および該繊維の製造法が記載されている。該繊維は一般に分子量分布が約2〜約8のエチレンをベースにした重合体を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の具体化例は一般に繊維に関し、特にポリエチレンからつくられた繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献に反映されているように、低コスト、加工性および物理的性質のために一般に多くの繊維はプロピレンをベースにした重合体からつくられて来た。このような繊維をつくるためにエチレンをベースにした重合体を使用することも試みられた。しかしこのような試みは一般に適切な加工性および物理的性質を得るに至らなかった。従って繊維の製造に使用するためのエチレンをベースにした繊維を開発することが望まれている。
【発明の概要】
【0003】
本発明の具体化例には繊維並びに該繊維の製造法が含まれる。
【0004】
該繊維は一般に約2〜約8の分子量分布を示すエチレンをベースにした重合体を含んでいる。
【0005】
該方法は、一般に約2〜約8の分子量分布を示すエチレンをベースにした重合体をつくり、該エチレンをベースにした重合体を熔融状態に加熱し、該エチレンをベースにした重合体を押出して繊維にし、該繊維を所望の速度で紡糸する段階を含んでいる。
【発明を実施するための形態】
【0006】
序論並びに定義
次に本発明の詳細な説明を行う。添付特許請求の範囲の各項目はそれぞれ異なった発明を規定しており、これらは権利の侵害の目的に対して該特許請求の範囲の各項目に規定された種々の要素または限定に対する同等物を含むものとして認識される。文脈に依存して「本発明」という言葉に対する下記のすべての参照は或る場合には或る特定の具体化例にだけ適用することができる。他の場合には「本発明」と言う言葉に対する参照は、必ずしも全部ではないが、列挙された一つまたはそれ以上の主題にを参照するものとする。次に特定の具体化例、変形、実施例を含む本発明の各々に関してさらに詳細に説明を行うが、本発明はこれらの具体化例、変形、実施例に限定されるものではない。これらは、本特許における情報を入手可能な情報および技術と組み合わせた場合、当業界の専門家が利用できるようにするために記載されたものである。
【0007】
本明細書において使用される種々の言葉が下記に示されている。或る一つの特許請求の範囲に使用されている言葉が下記に定義されていない場合、その言葉は関連する業界における人々に対し出願時における印刷出版物および公告された特許の中に反映されている最も広範な定義を与えたものであると考えなければならない。さらに、特記しない限り本明細書に記載されたすべての化合物は置換基をもちまたはもたないことができ、これらの一覧の化合物はそれらの誘導体を含んでいる。
【0008】
さらにまた種々の範囲および/または数値的な限界は明示的に下記のように示すことができる。特記しない限り、終端の値は互いに交換し得るものとする。また任意の範囲は同様な大きさの明示された範囲または限界内に入る反復範囲を含んでいる。
【0009】
本発明の具体化例は一般にエチレンをベースにした重合体からつくられた繊維に関する。
【0010】
触媒系
オレフィン単量体を重合させるのに有用な触媒系は当業界の専門家に公知の任意の触媒系を含んでいる。触媒系は例えばメタロセン触媒系、単一部位触媒系、Ziegler−Natta触媒系、またはこれらの組合せを含んでいることができる。当業界においては公知のように、触媒系は以後の重合のために活性化することができ、支持材料が付随していることもいないこともできる。下記にこのような触媒系について簡単な説明を行うが、これらの説明は本発明の範囲をそのような触媒に限定するものではない。
【0011】
例えばZiegler−Natta触媒系は一般に金属成分(例えば1種の触媒)と1種またはそれ以上の他の成分、例えば触媒の支持体、助触媒、および/または1種またはそれ以上の電子供与体との組合せからつくられる。
【0012】
Ziegler−Natta触媒系の特定の例は一般に式
MR
によって表される金属成分を含んでいる。ここでMは遷移金属、Rはハロゲン、アルコキシまたはヒドロカルボキシル基であり、xは遷移金属の原子価である。例えばxは1〜4である。
【0013】
遷移金属は例えば第IV族〜第VIB族(例えばチタン、バナジン、またはクロム)から選ぶことができる。一具体化例においてはRは塩素、臭素、またはカーボネート、エステル、またはアルコキシ基から選ぶことができる。触媒成分の例には例えばTiCl、 TiBr、Ti(OCCl、Ti(OCCl、Ti(OC13Cl、Ti(OCBrおよびTi(OC1225)Clが含まれる。
【0014】
当業界の専門家は、触媒は重合の促進に使用する前において何らかの方法で「活性化(賦活)」することができることを理解しているであろう。下記にさらに説明するように、賦活は触媒をZiegler−Natta賦活剤(Z−N賦活剤)と接触させることによって達成することができる。或る場合には賦活剤は「助触媒」とも呼ばれる。このようなZ−N賦活剤の具体化例には有機アルミニウム化合物、例えばトリメチルアルミニウム(TMA)、トリエチルアルミニウム(TEAl),およびトリイソブチルアルミニウム(TIBAl)が含まれる。
【0015】
Ziegler−Natta触媒系はさらに1種またはそれ以上の電子供与体、例えば内部電子供与体および/または外部電子供与体を含んでいることができる。内部電子供与体は得られる重合体のアタクティック形を減少させ、従って重合体中のキシレン可溶分を増加させために使用することができる。
【0016】
内部電子供与体には例えばアミン、アミド、エステル、ケトン、ニトリル、エーテル、フォスフィン、ジエーテル、スクシネート、フタレート、またはジアルコキシベンゼンが含まれる。(米国特許第5,945,366号明細書および米国特許第6,399,837号明細書参照。これらの特許は引用により本明細書に包含される。)
【0017】
外部電子供与体は生成するアタクティック重合体の量をさらに制御するために使用することができる。外部電子供与体は一官能性または多官能性のカルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸エステル、ケトン、エーテル、アルコール、ラクトン、有機燐化合物、および/または有機珪素化合物を含んでいることができる。一具体化例においては外部電子供与体は例えばジフェニルジメトキシシラン(DPMS)、シクロヘキシメチルジメトキシシラン(CDMS)、ジイソプロピルジメトキシランおよび/またはジシクロペンチル
ジメトキシシラン(CPDS)を含んでいることができる。外部電子供与体は使用する内部電子供与体と同一または相異なることができる。
【0018】
Ziegler−Natta触媒系(例えば触媒、賦活剤および/または電子供与体)の成分には、互いに組み合されまたは互いに分離されて、支持体が付随していることもいないこともできる。Z−N支持材料は例えば二ハロゲン化マグネシウム、例えば二塩化マグネシウムまたは二臭化マグネシウム、またはシリカを含んでいることができる。
【0019】
特定の一具体化例においては、Ziegler−Natta触媒はマグネシウムジアルコキシド化合物を、より強い塩素化剤および/またはチタネート化剤と順次接触させることによりつくられる。例えばZiegler−Natta触媒は例えば米国特許第6,734,134号明細書および米国特許第6,174,971号明細書に記載されたものを含んでいることができる。これらの特許は引用により本明細書に包含される。
【0020】
Ziegler−Natta触媒は一般にアルキルマグネシウム化合物をアルコールと接触させてマグネシウムアルコキシド化合物をつくる段階を含む方法によってつくられる。このような反応は例えば室温ないし約90℃の範囲の温度において最高約10時間反応させることによって起こる。アルコールは例えば約0.5〜約6または約1〜約3当量でアルキルマグネシウム化合物に加えることができる。
【0021】
アルキルマグネシウム化合物は下記式
MgR
で表すことができる。ここでRおよびRは独立にC〜C10アルキル基から選ばれる。アルキルマグネシウム化合物の本発明を限定しない例には例えばブチルエチルマグネシウム(BEM)、ジエチルマグネシウム、ジプロピルマグネシウムおよびジブチルマグネシウムが含まれる。
【0022】
アルコールは式
OH
によって表わすことができる。ここでRはC〜C20アルキル基から選ばれる。本発明を限定しないアルコールの例には例えばブタノール、イソブタノール、および2−エチルヘキサノールが含まれる。
【0023】
この方法は次にマグネシウムジアルコキシド化合物を第1の試薬と接触させて反応生成物「A」をつくる段階を含んでいることができる。このような反応は不活性溶媒の存在下において行うことができる。不活性溶媒としては種々の炭化水素を使用することができるが、選ばれる炭化水素は関与するすべての反応温度において液体の形に留まり、支持された触媒組成物をつくるのに用いられる成分は少なくとも部分的に該炭化水素に溶解しなければならない。従って、或る種の具体化例においては該成分は炭化水素に部分的にしか溶解しないが、この場合炭化水素は溶媒であると考えられる。
【0024】
適切な炭化水素溶媒には置換基をもったおよびもたない脂肪族炭化水素、および置換基をもったおよびもたない芳香族炭化水素が含まれる。例えば不活性溶媒はヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロフォルム、1−クロロブタン、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0025】
この反応はまた、例えば約0〜約100℃または約20〜約90℃の温度において約0.2〜約24時間または約1〜約4時間の間行うことができる。
【0026】
第1の試薬の本発明を限定しない例は一般に式
ClA(O
で表される。ここでAはチタン、珪素、アルミニウム、炭素、錫、およびゲルマニウムから選ばれ、RはC〜C10アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、およびイソプロピルから選ばれ、xは0または1、yはAの原子価−1である。本発明を限定しない第1の試薬の例には例えばクロロチタントリイソプロポキシドClTi(OPr)およびClSi(Me)が含まれる。
【0027】
この方法は次に生成物「A」を第2の試薬と接触させて反応生成物「B」をつくる段階を含んでいることができる。このような反応は不活性溶媒の存在下において行うことができる。不活性溶媒は上記に記載した任意の溶媒を含んでいることができる。この反応はまた、例えば約0〜約100℃または約20〜約90℃の温度において約0.2〜約36時間または約1〜約4時間の間行うことができる。
【0028】
第2の試薬は例えば約0.5〜約5または約1〜約4当量、或いは約1.5〜約2.5当量で反応生成物「A」に加えることができる。
【0029】
第2の試薬は下記式
TiCl/Ti(OR
によって表すことができる。ここでRはC〜C20アルキル基から選ばれる。本発明を限定しない第2の試薬の例には例えば塩化チタンとチタンアルコキシドとの配合物、例えばTiCl/Ti(OBu)が含まれる。この配合物は例えばTiCl:Ti(ORの当量が約0.5〜約6または約2〜約3であることができる。
【0030】
本発明方法は次に反応生成物「B」を第3の試薬と接触させて反応生成物「C」をつくる段階を含んでいることができる。このような反応は不活性溶媒の存在下において行うことができる。不活性溶媒は上記に記載した任意の溶媒を含んでいることができる。この反応はまた、例えば室温において行うことができる。
【0031】
第3の試薬の本発明を限定しない例はハロゲン化金属を含んでいる。ハロゲン化金属は当業界の専門家に公知の任意のハロゲン化金属、例えば四塩化チタンTiClを含んでいることができる。第3の試薬は例えば約0.1〜約5または約0.25〜約4、或いは約0.45〜約2.5の当量で加えることができる。
【0032】
本発明方法は次に反応生成物「C」を第4の試薬と接触させて反応生成物「D」をつくる段階を含んでいることができる。このような反応は不活性溶媒の存在下において行うことができる。不活性溶媒は上記に記載した任意の溶媒を含んでいることができる。この反応はまた、例えば室温において行うことができる。
【0033】
第4の試薬は例えば約0.1〜約5または約0.25〜約4、或いは約0.45〜約2.0の当量比で反応生成物「C」に加えることができる。
【0034】
第4の試薬の本発明を限定しない例はハロゲン化金属を含んでいる。ハロゲン化金属は上記に記載された任意のハロゲン化金属を含んでいることができる。
【0035】
本発明方法は次に反応生成物「D」を第5の試薬と接触させて触媒成分をつくる段階を含んでいることができる。第5の試薬は例えば約0.1〜約2または約0.5〜約1.2の当量で反応生成物「D」に加えることができる。
【0036】
第5の試薬の本発明を限定しない例は有機アルミニウムを含んでいる。有機アルミニウム化合物は下記式
AlR
をもつアルミニウムアルキルを含んでいることができる。ここでRはC〜C10アルキル化合物である。本発明を限定しないアルミニウムアルキル化合物の例は一般に例えばトリメチルアルミニウム(TMA)、トリイソブチルアルミニウム(TIBAl)、トリエチルアルミニウム(TEAl)、n−オクチルアルミニウム、およびn−ヘキシルアルミニウムを含んでいる。
【0037】
重合法
本明細書の他の部分に記載されているように、ポリオレフィン組成物をつくるために触媒系が使用される。上記のようにして、或いは当業界の専門家には公知の方法でひとたび触媒系がつくられると、この組成物を用いて種々の処理を行うことができる。重合工程に使用される装置、処理条件、反応物、添加物、および他の材料は、つくられる重合体の所望の組成および性質に依存し、与えられた処理工程において変化するであろう。このような処理は例えば溶液相、気相、スラリ相における処理、塊状処理、高圧処理またはこれらの組合せを含むことができる。(米国特許第5,525,678号明細書;同第6,420,580号明細書;同第6,380,328号明細書;同第6,359,072号明細書;同第6,346,586号明細書;同第6,340,730号明細書;同第6,339,134号明細書;同第6,300,436号明細書;同第6,274,684号明細書;同第6,271,323号明細書;同第6,248,845号明細書;同第6,245,868号明細書;同第6,245,705号明細書;同第6,242,545号明細書;同第6,211,105号明細書;同第6,207,606号明細書;同第6,180,735号明細書号明細書;および同第6,147,173号明細書参照のこと。これらの特許は引用により本明細書に包含される。)
【0038】
或る種の具体化例においては、上記処理には一般に1種またはそれ以上のオレフィン単量体を重合させ重合体をつくる処理が含まれる。オレフィン単量体は例えばC〜C30のオレフィン単量体またはC〜C12のオレフィン単量体(例えばエチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、メチルペンテン、ヘキセン、オクテンおよびデセン)を含むことができる。これらの単量体は例えばオレフィン性不飽和単量体、C〜C18ジオレフィン、共役または非共役ジエン、ポリエン、ビニル単量体および環式オレフィンを含んでいることができる。
【0039】
本発明を限定しない他の単量体の例としては例えばノルボルネン、ノルボルナジエン、イソブチレン、イソプレン、ビニルベンゾシクロブタン、およびシクロペンテンが含まれる。生じた重合体は例えば単独重合体、共重合体、または三元重合体を含んでいることができる。
【0040】
溶液法の例は米国特許第4,271,060号明細書、同第5,001,205号明細書、同第5,236,998号明細書、および同第5,589,555号明細書に記載されている。これらの特許は引用により本明細書に包含される。
【0041】
気相重合法の一例は連続循環系を含んでおり、この場合循環させるガス流(また循環流または流動化媒体として知られている)は反応器中で重合熱により加熱される。この熱は、反応器の外部にある冷却系により循環系の他の部分で循環ガス流から除去される。1種またはそれ以上の単量体を含む循環ガス流は、反応条件下において触媒の存在する流動床を通して連続的に循環させることができる。循環ガス流は一般に流動床から取り出され、反応器へと循環して戻される。同時に重合体生成物が反応器から取り出され、新しい単量体を添加して重合した単量体と取り換えることができる。気相法の反応器の圧力は例えば約100〜約500psig、または約200〜約400psig、または約250〜約350psigの間で変化することができる。気相法の反応器の温度は例えば約30〜約
120℃、または約60〜約115℃、または約70〜約110℃、または約70〜約95℃の範囲で変化することができる。(例えば米国特許第4,543,399号明細書;同第4,588,790号明細書;同第5,028,670号明細書;同第5,317,036号明細書;同第5,352,749号明細書;同第5,405,922号明細書;同第5,436,304号明細書;同第5,456,471号明細書;同第5,462,999号明細書;同第5,616,661号明細書:同第5,627,242号明細書;同第5,665,818号明細書;同第5,677,375号明細書、および 同第5,668,228号明細書参照。これらの特許は引用により本明細書に包含される。)
【0042】
スラリ相の処理法は一般に、液体の重合媒質中に固体の粒子状重合体を含む懸濁液をつくり、これに単量体および随時水素を触媒と共に加える段階を含んでいる。この懸濁液(希釈剤を含むことができる)を間欠的にまたは連続的に反応器から取り出し、ここで揮発性の成分を重合体から分離し、随時蒸溜した後反応器へと循環させることができる。重合媒質に使用される液化された希釈剤は例えばC〜Cのアルカン(例えばヘキサンまたはイソブタン)を含んでいることができる。使用される媒質は一般に反応条件下において液体であり、比較的不活性である。塊状相処理法はスラリ相処理法と似ているが、塊状相処理法においては液体媒質がまた反応物(例えば単量体)である点が異なっている。しかし、或る一つの方法を塊状相法、スラリ相法、あるいは塊状スラリ相法で行うことができる。
【0043】
一特定の具体化例においては、一つまたはそれ以上のループ反応器の中でスラリ相法または塊状相法を連続的に行うことができる。触媒はスラリまたは乾燥した自由流動性の粉末として反応器のループに規則的に注入することができ、反応器自身の中には例えば成長する重合体粒子を希釈剤中に含むスラリを充たして循環させることができる。随時水素(または例えば他の連鎖終結剤)を例えば得られた重合体の分子量を制御するための処理工程に加えることができる。ループ反応器は例えば約27〜約50バール、または約35〜約45バールの圧力、および例えば約38〜約121℃の温度に保つことができる。反応熱は任意の適当な手段により、例えば二重ジャケット付きパイプまたは熱交換器により、ループの壁を通して除去することができる。
【0044】
別法として、他のタイプの重合法を用いることができる。例えば撹拌した反応器を直列、並列またはこれらを組合せた方法で連結して使用することができる。重合体は、反応器から取り出された際、例えば添加物の添加および/または押出しのようなさらに他の処理を行うために重合体回収系へと送られる。
【0045】
重合体生成物
上記処理工程を経てつくられた重合体(およびその配合物)は、これだけには限定されないが、例えば直鎖低密度ポリエチレン、エラストマー、プラストマー(plastomer)、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリプロピレン共重合体を含んでいることができる。
【0046】
本明細書においては特記しない限りすべての試験法は出願時における現行の方法である。
【0047】
本発明の重合体は狭い分子量分布(M/M)をもっていることができる。本明細書において使用される「狭い分子量分布」と言う言葉は、例えば約1.5〜約80または約2.0〜約7.5、或いは約2.0〜約7.0の分子量分布をもつ重合体について参照される。
【0048】
一つまたはそれ以上の具体化例において、重合体はエチレンをベースにした重合体を含
んでいる。本明細書において使用される「エチレンをベースにした」という言葉は、「エチレン重合体」または「ポリエチレン」と言う言葉と互いに入れ換えて使用され、重合体の全重量に関し例えば少なくとも約50重量%、または少なくとも70重量%、または少なくとも75重量%、または少なくとも80重量%、または少なくとも85重量%、または少なくとも90重量%のポリエチレンを有する重合体を意味する。
【0049】
エチレンをベースにした重合体は密度(ASTM D−792で測定)が例えば約0.86〜約0.98g/cc、または約0.88〜約0.965g/cc、または約0.90〜約0.965g/cc、または約0.925〜約0.97g/ccであることができる。
【0050】
エチレンをベースにした重合体はメルトインデックス(MI)(ASTM D−1238により測定)が例えば約0.01〜約100dg/分、または約0.01〜約25dg/分、または約0.03〜約15dg/分、または約0.05〜約10dg/分であることができる。
【0051】
一つまたはそれ以上の具体化例において、この重合体は高密度ポリエチレンを含んでいる。本明細書において使用される「高密度ポリエチレン」と言う言葉は例えば約0.94〜約0.97g/ccの密度を有するエチレンをベースにした重合体を意味する。
【0052】
一つまたはそれ以上の具体化例において、エチレンをベースにした重合体はZiegler−Natta触媒からつくられる。
【0053】
一つまたはそれ以上の具体化例において、エチレンをベースにした重合体は単峰的である。本明細書において使用される単峰的(uni−modal)という言葉はGPCのグラフで単一の分子量ピークを示すことを意味する。
【0054】
一つまたはそれ以上の具体化例において、エチレンをベースにした重合体は実質的に直鎖である。
【0055】
重合体生成物の用途
本発明の重合体およびその配合物は当業界の専門家には公知の用途、例えば成形操作(例えばフィルム、シート、パイプおよび繊維の押出しおよび同時押出し、並びに吹込み成形、射出成形および回転成形)に有用である。フィルムは押出しまたは同時押出し、或いは積層化によってつくられた吹込み、配向または注型されたフィルムを含み、これらは例えば収縮フィルム、接着フィルム、伸長フィルム、密封フィルム、配向フィルム、および食品が接触する用途および接触しない用途に使用されるスナック類の包装、頑丈な用途に使用される袋、食料品用の袋、焼成食品および冷凍食品用の包装、医療用の包装、産業用ライニング材、および膜としての用途をもっている。繊維は縦切りされたフィルム、モノフィラメント、熔融紡糸品、溶液紡糸品、および熔融吹込み繊維を含み、これらは織物または不織布の形で例えばサック、袋、ロープ、撚り糸、絨毯の裏地、絨毯用の糸、フィルター、おむつ用繊維布、医療用衣類、および土工用補強繊維の製造に使用される。押出し製品は医療用の管、針金およびケーブルの被覆品、シート、例えば熱成形シート(輪郭成形用シートおよびプラスティックスの波板を含む)、土工用の補強膜、および池のライニング材を含んでいる。成形製品は例えば瓶、槽、大きな中空製品、頑丈な食品容器、および皿類の形をした単一層および多層の構造物を含んでいる。
【0056】
特に本発明の具体化例は糸およびフィラメントを含む繊維の製造に有用である。本明細書において使用される「糸」と言う言葉は、短い繊維からこれを連続的に一緒に紡糸してつくられた繊維を意味する。「フィラメント」という言葉は液体の重合体から押出して直
接つくられた連続した糸を意味する。一つまたはそれ以上の具体化例においては、本発明の製品は繊維(例えばフィラメント、本明細書では特定の具体化例においてはこれを糸と称することもある)を含んでいる。本明細書に記載した糸およびフィラメントは当業界の専門家に公知の用途、例えば絨毯および織物の用途に使用することができる。
【0057】
一つまたはそれ以上の本発明の具体化例においては繊維をつくるために上述のエチレンをベースにした重合体が使用される。本発明の具体化例からつくられた繊維は、ポリプロピレン単独重合体を用いてつくった製品に比べ、一般に改善された弾力性、低い光沢、および柔らかな風合を生じることが観察された。
【0058】
本発明の特定の具体化例においては、繊維は柔らかな風合の繊維を含んでいる。本明細書において使用される「柔らかな風合の繊維」という言葉は、一般に手触り(hand)と称せられる繊維布の柔らかな触感を意味する。一般に裏地のデニールと低いモジュラスの両方が繊維および繊維布の「柔らかな」手触りに寄与する。上記のエチレンをベースにした重合体は著しく改善された繊維の紡糸性をもつことができ、従ってエチレンをベースにした重合体から細いデニールの繊維をつくり得ることが見出だされた。本明細書に記載された柔らかな手触りをもった繊維は当業界の専門家に公知の用途、例えばおむつを含む不織布の用途に使用することができる。本明細書に使用される「不織布」と言う言葉は、織り操作または編み操作以外の手段によりつくられた繊維布を記述するのに用いられる。
【0059】
一つまたはそれ以上の具体化例においては、エチレンをベースにした重合体によりつくられた繊維は、延伸比3:1において例えば約2.0〜約3.3g/デニール、または約2.0〜約3.0g/デニールの最大荷重における強力を示す。
【0060】
一つまたはそれ以上の具体化例においては、この繊維は最大荷重において延伸比3:1における%伸びが例えば約250〜約325%、または約250〜約300%、または約250〜約275%である。
【0061】
また、上記のエチレンをベースにした重合体によりつくられた繊維はγ線の放射による滅菌に対して抵抗性を示す。γ線の放射による滅菌については米国特許第5,554,437号明細書を参照のこと。この特許は引用により本明細書に包含される。
【実施例】
【0062】
TOTAL PETROCHEMICALS USA,Inc.から6450として市販されているZiegler−Natta法によってつくられた密度が0.962g/cc、分子量分布が6.0のポリエチレンから重合体「A」をつくった。
【0063】
重合体「B」は、TOTAL PETROCHEMICALS USA,Inc.から3762として市販されているZiegler−Natta法によってつくられたポリプロピレンからつくった。
【0064】
重合体の試料からモノフィラメントをつくり、解析を行った。二段階ゴデット(godet)アセンブリーを用い、これをそれぞれ80℃、85℃および90℃に加熱し、前方紡糸速度770m/分で紡糸を行って十分に配向した繊維(FOY)をつくった。最高紡糸速度の測定値は2000m/分であったた。3:1、5:1、および最高7:1の延伸比(DR)でFOY繊維を紡糸した。
【0065】
結果を下記表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
このポリエチレン繊維は改善された加工性および機械的性質を示した(例えば最大荷重における強力はDRが3:1において2.2g/デニールからDRが7:1において3g/デニールまでの範囲にあり、最大荷重における%伸びはDRが3:1において278%からDRが7:1において54%までの範囲にある)。事実、このポリエチレン繊維は、DRが3:1において251%からDRが5:1において92%までの範囲の破断時伸びをもつポリプロピレン繊維と同等な強力および最大の伸びをもっていた。
【0068】
上記説明は本発明の具体化例に関するものでああるが、本発明の基本的な範囲を逸脱することなく他の具体化例およびさらに異なった具体化例を考案することができ、この場合本発明の範囲は下記特許請求の範囲によって決定されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量分布が約2〜約8のエチレンをベースにした重合体を含んで成ることを特徴とする繊維。
【請求項2】
該エチレンをベースにした重合体は直鎖であることを特徴とする請求項1記載の繊維。
【請求項4】
該エチレンをベースにした重合体はZiegler−Natta触媒によりつくられることを特徴とする請求項1記載の繊維。
【請求項5】
該ポリエチレン樹脂はZiegler−Natta触媒によってつくられ、該Ziegler−Natta触媒は、アルキルマグネシウム化合物をアルコールと接触させてマグネシウムジアルコキシド化合物をつくり;該マグネシウムジアルコキシド化合物を多数の第1の試薬と接触させて反応生成物「A」をつくり;反応生成物「A」を遷移金属およびハロゲンを含んで成る第2の試薬と接触させて反応生成物「B」をつくり;
反応生成物「B」を第1のハロゲン化金属を含んで成り且つ第2の試薬より強いハロゲン化剤である第3の試薬と接触させて反応生成物「C」をつくり;随時、該反応生成物「C」を第2のハロゲン化金属を含んで成り且つ第3の試薬より強いハロゲン化剤である第4の試薬と接触させて反応生成物「D」をつくり;反応生成物「D」を有機アルミニウム化合物を含んで成る第5の試薬と接触させてZiegler−Natta触媒をつくる方法によりつくられることを特徴とする請求項1記載の繊維。
【請求項6】
エチレンをベースにした重合体は単峰的であることを特徴とする請求項1記載の繊維。
【請求項7】
エチレンをベースにした重合体は少なくとも約0.94g/ccの密度を示すことを特徴とする請求項1記載の繊維。
【請求項8】
該繊維は柔らかな手触りをもった繊維であることを特徴とする請求項1記載の繊維。
【請求項9】
該繊維は細いデニールのモノフィラメントであり、Ziegler−Natta法でつくられたポリプロピレン単独重合体と同じ方法でつくられた繊維に比べγ線の放射による滅菌に対し大きな抵抗性を示すことを特徴とする請求項1記載の繊維。
【請求項10】
該繊維は延伸比3:1において約2.0g/デニール〜約3.3g/デニールの最大荷重における強力を示すことを特徴とする請求項1記載の繊維。
【請求項11】
該繊維は延伸比3:1において約250%〜約275%の最大荷重における伸びを示すことを特徴とする請求項1記載の繊維。
【請求項12】
分子量分布が約2〜約8のエチレンをベースにした重合体を用い;該エチレンをベースにした重合体を熔融状態に加熱し;このエチレンをベースにした重合体を押出して繊維にし;該繊維を所望の紡糸速度で紡糸することを特徴とする繊維の製造法。

【公表番号】特表2012−510570(P2012−510570A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538722(P2011−538722)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/066169
【国際公開番号】WO2010/065486
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(391024559)フイナ・テクノロジー・インコーポレーテツド (98)
【氏名又は名称原語表記】FINA TECHNOLOGY, INCORPORATED
【Fターム(参考)】