説明

ポリエーテルエステルアミドの製造方法

【課題】外観色調に優れるポリエーテルエステルアミドの製造方法を提供する。
【解決手段】(a)炭素原子数6以上のアミノカルボン酸または炭素原子数6以上のラクタム、もしくはジアミンとジカルボン酸から合成される合計炭素原子数が6以上の塩、
(b)次式(I)〜(IV)から選ばれる1種もしくは2種以上のジオール化合物
【化1】


(ただし式中、R、Rはエチレンオキシド基およびプロピレンオキシド基の少なくとも1つを示し、Yは共有結合、炭素数1〜6のアルキレン基などを示し、X〜X12は水素、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン基、スルホン基、またはその金属塩を示す。)、および
(c)炭素原子数4〜20のジカルボン酸を重合せしめることを特徴とするポリエーテルエステルアミドの製造する際に、(b)成分として酸価が1.40 mgKOH/g 以下のジオール化合物を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は外観色調に優れるポリエーテルエステルアミドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂に帯電防止性を付与する方法として、特許文献1記載のポリアミド成分、ポリ(アルキレンオキシド)グリコール、ジカルボン酸からなるポリエーテルエステルアミドの添加が挙げられる。また、帯電防止剤としてポリエーテルエステルアミドを添加した熱可塑性樹脂組成物の外観色調は、このポリエーテルエステルアミドの外観色調に大きく影響される。
【0003】
近年、透明性を有する熱可塑性樹脂の需要が伸びてきているが、この透明用途では、従来にも増して外観に優れた熱可塑性樹脂が要求される。熱可塑性樹脂の良質外観の達成は、添加されるポリエーテルエステルアミドの外観色調がより低着色であることが要求されるが、特許文献1記載の手法で得られるポリエーテルエステルアミドでは、満足のいく外観色調のポリエーテルエステルアミドを得ることは不可能であった。
【特許文献1】特開2003−268104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明では、従来より優れた外観色調を備えたポリエーテルエステルアミドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記問題を鑑み、鋭意検討した結果、酸価がある一定値以下であるポリ(アルキレンオキシド)グリコールを使用することにより、ポリエーテルエステルアミドの外観色調向上が達成できることを見出した。またこのポリエーテルエステルアミドと熱可塑性樹脂からなる熱可塑性樹脂組成物も外観色調に優れることを見出し、本発明に到達した。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)(a)炭素原子数6以上のアミノカルボン酸または炭素原子数6以上のラクタム、もしくはジアミンとジカルボン酸から合成される合計炭素原子数が6以上の塩、
(b)次式(I)〜(IV)から選ばれる1種もしくは2種以上のジオール化合物
【0007】
【化1】

【0008】
(ただし式中、R、Rはエチレンオキシド基およびプロピレンオキシド基の少なくとも1つを示し、Yは共有結合、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜6のアルキリデン基、炭素数7〜17のシクロアルキリデン基、炭素数7〜17のアリールアルキリデン基、O、SO、SO、CO、S、CF、C(CF、またはNHを示し、X〜X12は水素、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン基、スルホン基、またはその金属塩を示す。)、および
(c)炭素原子数4〜20のジカルボン酸を重合せしめることを特徴とするポリエーテルエステルアミドの製造方法であって、(b)成分として酸価が1.40 mgKOH/g 以下のジオール化合物を使用することを特徴とするポリエーテルエステルアミドの製造方法、
(2)(b)成分として過酸化物価が3.0meq/g 以下のジオール化合物を使用することを特徴とする(1)記載のポリエーテルエステルアミドの製造方法、
(3)(b)成分としてカルボニル価が2.0μeq/kg 以下のジオール化合物を使用することを特徴とする(1)または(2)記載のポリエーテルエステルアミドの製造方法、
(4)(b)成分として、前記式(I)で表されるジオール化合物と、(II)〜(IV)の3種から選ばれる少なくとも1種のジオール化合物を併用することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか記載のポリエーテルエステルアミドの製造方法、
(5)(b)成分の分子量が300〜5,000であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか記載のポリエーテルエステルアミドの製造方法、
(6)(b)成分に、あらかじめ(b)成分の合計量に対して0.0002〜0.05重量%の酸化防止剤を含有させることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか記載のポリエーテルエステルアミドの製造方法、
(7)酸化防止剤がヒンダードフェノール系酸化防止剤であることを特徴とする(6)記載のポリエーテルエステルアミドの製造方法、
(8)金属触媒を用いて重合せしめることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか記載のポリエーテルエステルアミドの製造方法、
(9)金属触媒がチタン系,スズ系,ジルコニウム系,ハフニウム系,鉛系,亜鉛系,ゲルマニウム系およびアンチモン系から選択されるいずれかの金属触媒であることを特徴とする(8)記載のポリエーテルエステルアミドの製造方法、
(10)金属触媒がチタン系またはアンチモン系金属触媒であることを特徴とする(9)記載のポリエーテルエステルアミドの製造方法、および
(11)金属触媒がチタンアルコキシドまたは三酸化アンチモンであることを特徴とする(10)記載のポリエーテルエステルアミドの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、以下に説明するとおり、外観色調に優れたポリエーテルエステルアミドを得ることができ、従来通りの帯電防止性,機械特性を維持しつつ、外観色調が向上した熱可塑性樹脂組成物を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
まず、本発明で製造するポリエーテルエステルアミドの原料となる成分について説明する。本発明のポリエーテルエステルアミドは(a),(b),(c)を重合せしめてなるものである。
【0011】
以下に本発明のポリエーテルエステルアミドについて具体的に説明する。
【0012】
本発明のポリエーテルエステルアミドの重合に用いる(a)炭素原子数6以上のアミノカルボン酸または炭素原子数6以上のラクタム、もしくはジアミンとジカルボン酸から合成される合計炭素原子数が6以上の塩は、ポリエーテルエステルアミドのポリアミド形成成分である。
【0013】
炭素原子数6以上のアミノカルボン酸としてはω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナント酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノペルゴン酸、ω−アミノカプリン酸および11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられる。炭素原子数6以上のラクタムとしてはカプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタムおよびラウロラクタム等が挙げられる。ジアミンとジカルボン酸から合成される、合計炭素原子数が6以上の塩としては、ヘキサメチレンジアミン−アジピン酸塩、ヘキサメチレンジアミン−セバシン酸塩、ヘキサメチレンジアミン−デカンジカルボン酸塩、およびヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸塩等が挙げられる。特にカプロラクタム、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、ヘキサメチレンジアミン−アジピン酸塩が好ましく用いられ、より好ましくはカプロラクタムである。これらの(a)ポリアミド形成成分は1種もしくは必要に応じて2種以上用いることができる。
【0014】
(a)ポリアミド形成成分は、ポリエーテルエステルアミド構成単位に対して10〜90重量%、好ましくは20〜70重量%、より好ましくは30〜50重量%の範囲で用いられる。10〜90重量%の範囲ではポリエーテルエステルアミドの機械的性質および透明性が高くなるため好ましい。
【0015】
本発明におけるポリエーテルエステルアミドを構成する(b)ジオール化合物としては、次式(I)〜(IV)から選ばれる1種若しくは2種以上のジオール化合物が使用される。
【0016】
【化2】

(ただし式中、R、Rはエチレンオキシド基およびプロピレンオキシド基の少なくとも1つを示し、Yは共有結合、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜6のアルキリデン基、炭素数7〜17のシクロアルキリデン基、炭素数7〜17のアリールアルキリデン基、O、SO、SO、CO、S、CF、C(CF、またはNHを示し、X〜X12は水素、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン基、スルホン基、またはその金属塩を示す。)
【0017】
上記一般式(I)〜(IV)で示される化合物のうち、R、Rはエチレンオキシドであると重合性が良好であるので好ましい。また、X〜X12はそれぞれ同一または相違なる水素または炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、特に好ましくは水素である。数平均分子量は300〜5,000であり、特に900〜3,000の範囲が好ましく、1,000〜2,500の範囲がより好ましく、1,300〜1,700の範囲がさらに好ましい。式中のmおよびnはそれぞれ−R−、−R−の重合度を意味し、独立した値は求められないが、m+nの平均値は化合物の構造と数平均分子量から計算により求めることができるものである。数平均分子量が上記範囲にある場合に、得られるポリエーテルエステルアミドの帯電防止性、透明性の向上、重合時間の短縮や結晶化温度の向上を図ることができる。
【0018】
なお、本発明において、ジオール化合物の数平均分子量は、試料1gを過剰なアセチル化剤、例えば無水酢酸と加熱してアセチル化を行い、生成したアセチル化物を中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg数)をA、アセチル化前の試料1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg数)をBとしたときに、次式(V)によって計算できる。
数平均分子量=11200/〔[A/(1−0.00075×A)]−B〕 ・・・(V)
【0019】
ここで、2種類以上のジオール成分を併用する場合の数平均分子量は、2種類以上のジオール成分を混合して上記の方法で数平均分子量を求めてもよいし、それぞれのジオール成分の数平均分子量から計算で求めた値であってもよい。
【0020】
また、一般式(III)で示される化合物が重合性の点で優れ好ましい。一般式(III)のYとしては、共有結合、炭素数1〜6のアルキレン基およびSOが好ましく、特に好ましくは炭素数1〜6のアルキレン基である。
【0021】
一般式(III)で示されるジオール化合物の具体的な例としては、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(1,3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックまたはランダム共重合体やエチレンオキシドとテトラヒドロフランのブロックまたはランダム共重合体等および、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、2,2−ビス(4,4’−ヒドロキシフェニル−3,3’−スルホン酸ナトリウム)プロパン、ビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールS、4,4’−(ヒドロキシ)ビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフルオロメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アミン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ハイドロキノン、および1,4−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム等のエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド付加物、ジヒドロキシナフタレン、およびそれらのブロック共重合体等が挙げられる。
【0022】
これらの(b)ジオール化合物は、1種もしくは必要に応じて2種以上用いることができる。また、2種以上使用する際には、前記式(I)で表されるジオール化合物と、(II)〜(IV)の3種から選ばれる少なくとも1種のジオール化合物を併用することが好ましい。このようにジオール化合物を併用することで、帯電防止性の向上を図ることができる。
【0023】
(b)ジオール化合物として好ましく使用できるのは、ハイドロキノンのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールSのエチレンオキシド付加物、ジヒドロキシナフタレンのエチレンオキシド付加物およびそれらブロック共重合体であり、特にビスフェノールAのエチレンオキシド付加物およびそのブロック共重合体が重合性、経済性の点で好ましい。
【0024】
本発明におけるポリエーテルエステルアミドを構成する(c)炭素原子数4〜20のジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、および3−スルホイソフタル酸ナトリウム等の芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、およびジシクロヘキシル−4,4’−ジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、およびドデカンジ酸(デカンジカルボン酸)等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられ、特にテレフタル酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、セバシン酸、アジピン酸、ドデカンジ酸が重合性、色調、透明性および物性の点から好ましく用いられる。
【0025】
(c)ジカルボン酸は(b)ジオール化合物と1:1のモル比で反応するが、使用するジカルボン酸の種類により、仕込比を1:1または適宜変更して供給される。
【0026】
(b)ジオール化合物、(c)ジカルボン酸から誘導されるポリエーテルエステル形成成分は、ポリエーテルエステルアミド構成単位に対して10〜90重量%、好ましくは30〜80重量%、より好ましくは50〜70重量%の範囲で用いられる。ポリエーテルエステル形成成分が上記範囲である場合にポリエーテルエステルアミドの透明性および機械的性質が優れるため好ましい。
【0027】
また、(b)ジオール化合物は水酸基末端の酸化反応によって、過酸化物、アルデヒド、カルボキシル基が生じる。本発明者らは、この様な酸化反応により生成された構造が、ジオール化合物内で増加することによって、ポリエーテルエステルアミドの着色傾向が強くなることを見いだした。ジオール化合物の酸化は、ジオール化合物自身の着色を生じないが、これを含む重合体を製造した際のポリエーテルエステルアミドの着色要因となるため、ポリエーテルエステルアミドの外観色調を制御するためには、ジオール化合物の酸価,過酸化物価,カルボニル価量の把握が重要となる。
【0028】
本発明では、ポリエーテルエステルアミドを重合する際に、ジオール化合物として、酸価が1.40mgKOH/g以下のものを使用することが重要である。このようなジオール化合物を使用することで、得られるポリエーテルエステルアミドの色調を改善することができる。ここで、ジオール化合物の酸価は、ジオール化合物中のカルボキシル基量の指標であり、本発明では、1.40mgKOH/g以下である必要がある。好ましくは0.50mgKOH/g以下、さらに好ましくは0.10mgKOH/g以下、最も好ましくは0.05mgKOH/g以下の範囲にすることにより、優れた外観色調のポリエーテルエステルアミドを得ることができる。
ここで酸価は、下記の通り求める。試料(ジオール化合物)Bgを、イソプロパノール30mlに溶解させ、0.1N水酸化カリウムエタノール標準液で中和するのに必要な量をAml,0.1Nアルコール性水酸化カリウム液の力価をfとして、次式によって計算する。
酸価=(A×f×5.611)/B
【0029】
さらに、本発明においては、(b)ジオール化合物として、過酸化物量の指標である過酸化物価が3.0meq/g以下のものを使用するのが好ましい。さらに好ましくは2.0meq/g以下、より好ましくは1.2meq/g以下であり、本範囲を満たすことにより、さらに優れた外観色調のポリエーテルエステルアミドを得ることができる。
【0030】
ここで過酸化物価は、以下の通り求める。試料Bgをイソプロパノールと酢酸(特級)を4:1で混合した溶剤25mlに溶解させたものに、ヨウ化カリウム1gを混合し、0.005Nチオ硫酸ナトリウムの滴定で変色するのに必要な0.005Nチオ硫酸ナトリウムの使用量をAml,0.005Nチオ硫酸ナトリウムの力価をfとして、次式によって計算する。
過酸化物価=(A×f×10)/B
【0031】
また、本発明においては、(b)ジオール化合物としてカルボニル量の指標となるカルボニル価が、2.0μeq/kg以下であるものが好ましく使用でき、さらに好ましくは1.0μeq/kg以下、より好ましくは0.5μeq/kg以下であり、本範囲を満たすことにより、さらに優れた外観色調のポリエーテルエステルアミドを得ることができる。
【0032】
ここでカルボニル価は、下記の方法で求める。試料Bgに0.05%2・4−ジニトロフェニルヒドラジン5mlと4.3%トリクロロ酢酸溶液3mlを混ぜ、さらに60℃で30分加熱し、冷却後に4%水酸化カリウム溶液10mlを加え、440nmで吸光度を測定し、検量線より求めたカルボニル化合物の量をAとして、次式によって計算する。
カルボニル価=A/B
【0033】
本発明のポリエーテルエステルアミドの重合方法は特に限定されず、例えば(a)ポリアミド形成成分と(c)ジカルボン酸を反応させて両末端がカルボン酸基のポリアミドプレポリマーを製造後、ポリアミドプレポリマー、(b)ポリ(アルキレンオキシド)グリコールを真空下で反応させる方法がある。このポリアミドプレポリマーの平均分子量は特に制限はないが、200〜15,000が好ましく、より好ましくは500〜5,000である。
【0034】
他の手法として、(a)、(b)、(c)の各化合物を反応槽に仕込み、水の存在下または非存在下に220〜260℃の温度で、常圧または加圧下で反応させることにより、ポリアミドプレポリマーを生成させ、その後真空下で反応を進める方法などを利用することができる。
【0035】
ここで真空下とは、好ましくは約2kPa以下、より好ましくは0.67kPa以下、最も好ましくは0.13kPa以下をいう。
【0036】
ポリエーテルエステルアミドの重合反応においては、金属触媒を用いることが可能であり、これら金属触媒として、テトラブチルチタネート等のテトラアルキルチタネートやシュウ酸チタンカリウム等のシュウ酸チタン金属塩のようなチタン系触媒、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズラウレート、モノブチルスズオキサイドのようなスズ系触媒、酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキサイド、ジルコニウムイソプロポキサイド等のジルコニウム系触媒、ハフニウムテトラエトキサイド等のハフニウム系触媒、酢酸鉛等の鉛系触媒、酢酸亜鉛等の亜鉛系触媒、酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム触媒、三酸化アンチモン等のアンチモン系触媒がある。これらは1種または必要に応じて2種以上組み合わせてもよい。
【0037】
本発明で使用する金属触媒は、チタン系、またはアンチモン系が好ましく、チタンアルコキシドまたは三酸化アンチモンが特に好ましい。
【0038】
また、本発明における金属触媒の添加量としては、特に制限はないが、重合性の観点から、(a)ポリアミド形成成分および(b)ジオール化合物の合計100重量%に対し、0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜1重量%である。
【0039】
本発明で使用される金属触媒は、原料と一括して添加する方法以外に、減圧開始前に添加してもよく、また(b)ジオール化合物を最初から他の原料と一括して添加せずに減圧重合開始前に金属触媒とともに添加する方法であってもよい。また、重合触媒を予め原料一成分とのスラリーとしておくと、反応器内に添加した際の均一分散性の観点から好ましい。
【0040】
本発明のポリエーテルエステルアミドは本発明の効果を損なわない程度に、重合前および/または重合後に酸化防止剤、熱分解防止剤、紫外線吸収剤、耐加水分解改良剤、着色剤、導電剤、難燃剤、補強材、充填剤、滑剤、核剤、離型剤、可塑剤、接着助剤、粘着剤等の添加剤を任意に含有せしめることができる。また、スルホン酸金属塩やアニオン系、カチオン系、非イオン系の界面活性剤等の帯電防止剤を添加して帯電防止性を一層向上させることもできる。
【0041】
(b)ジオール化合物の酸化を抑制する方法として、(b)ジオール化合物の製造を窒素雰囲気下で実施することが挙げられるが、あらかじめ(b)ジオール化合物の製造時に酸化防止剤を含有させることで、さらに酸化抑制効果を得ることができる。
【0042】
本発明では、あらかじめ(b)ジオール化合物製造時に含有させる酸化防止剤の量に制限はないが、(b)ジオール成分の全体に対して、好ましくは0.0001〜0.1重量%、より好ましくは0.001〜0.05重量%、さらに好ましくは0.01〜0.03重量%である。この範囲を満たすことにより、(b)ジオール化合物の酸化を抑制、すなわち酸価,過酸化物価,カルボニル価をより低量化でき、より優れた外観色調のポリエーテルエステルアミドを得ることができる。
【0043】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられ、これらを併用して使用することもできる。中でもヒンダードフェノール系酸化防止剤が、酸化防止効果が高く好ましい。また、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤または硫黄系酸化防止剤を併用することもできる。
【0044】
本発明で用いるヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、1,1,3−トリス(2−メチル−1−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス(2,4―ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレン−ジ−フォスフォナイト、ビス−[3,3−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)−ブタノイックアシッド]−グリコールエステル、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノ−ル)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2, 2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、2, 4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−O−クレゾール、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましく用いられるが、とりわけ3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましい。
【0045】
本発明で用いるリン系酸化防止剤としては、トリスノニルフェネルフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスホナイト−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジジフォスファスピロ[5,5]ウンデカンが好ましく用いられるが、とりわけビス(2,6,ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジジフォスファスピロ[5,5]ウンデカンが好ましい。
【0046】
本発明で用いる硫黄系酸化防止剤としては、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、2−メルカプトベンズイミダゾール、ジドデシル3,3’−チオジプロピオネート、ジオクタデシル3,3’−チオジプロピオネート、ジトリデシル3,4’−チオジプロピオネート、2,2−ビス[[3−(ドデシルチオ)−1−オキソプロポキシ]メチル]−1,3−プロパンジイルエステルが好ましく用いられるが、とりわけジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)が好ましい。
【0047】
本発明のポリエーテルエステルアミドは、通常の熱可塑性樹脂やゴムの成形に利用される一般的な成形方法の適用が可能であり、例えば、射出成形、押出成形、ブロー成形、カレンダー加工、シート成形、コーティング被覆等を用いることができる。
【0048】
本発明において、ポリエーテルエステルアミドは、エラストマーとしてこのまま用いてもよく、更に、種々の熱可塑性樹脂と混合して用いることも可能である。熱可塑性樹脂に混合することにより、熱可塑性樹脂の機械物性の向上や帯電防止性の付与が可能である。さらに、この熱可塑性樹脂が透明性スチレン系樹脂の場合、ポリエーテルエステルアミドの屈折率と透明性スチレン系樹脂の屈折率との差を0.03以下、好ましくは0.02以下に調整することにより、透明性に優れる樹脂組成物を製造することができる。ポリエーテルエステルアミドの屈折率の調整は、共重合成分の変更により可能である。屈折率はポリエーテルエステルアミド中の芳香族や、ハロゲン等の屈折率を変動させる成分の量を加減することにより行うことができる。
【0049】
屈折率を低くする場合には、例えば芳香環やハロゲン等の屈折率を高くするものを含有しない化合物もしくは含有量の低い化合物を用いるか、そのような成分を含有する成分の共重合量を減らして重合を行い、ポリエーテルエステルアミド中の芳香環やハロゲン等の含有量を減少させる方法があり、逆に屈折率を高くする場合には、芳香環やハロゲン等の含有量を増量する方法がある。
【0050】
熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、変性ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、エチレン/プロピレン樹脂、エチレン/1−ブテン樹脂、エチレン/プロピレン/非共役ジエン樹脂、エチレン/アクリル酸エチル樹脂、エチレン/メタクリル酸グリシジル樹脂体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル樹脂、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル樹脂、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸樹脂、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラストマー等のエラストマー、あるいはこれら熱可塑性樹脂の2種以上の混合物が挙げられるが、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂が好ましく、さらに好ましくは、スチレン系樹脂である。
【0051】
上記熱可塑性樹脂のなかで、スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル共重合体、ゴム強化スチレン系樹脂、およびゴム強化スチレン系樹脂とポリフェニレンオキシドとのポリマーブレンド体(変性ポリフェニレンオキシド樹脂)などが挙げられる。
【0052】
また、ゴム強化スチレン系樹脂としては、ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体と必要に応じ他の単量体をグラフト重合してなるグラフト(共)重合体を好ましく挙げることができ、これはゴム状重合体の存在下に、芳香族ビニル単量体および必要に応じ他のビニル系単量体を、公知の塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合または乳化重合に供することにより得られる。
【0053】
このようなゴム強化スチレン系樹脂としては、例えば、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエンゴム−スチレン共重合体)、AAS樹脂(アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体)、MBS樹脂(メチルメタクリレート−ブタジエンゴム−スチレン共重合体)、およびAES樹脂(アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体)などが挙げられる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により本発明の構成、効果をさらに詳細に説明する。特に断らない限り、部数および%は重量部および重量%を意味する。なお、外観色調はカラーコンピューター(スガ試験株式会社製S&M カラーコンピューター SM−7)を用いて黄色度YIの測定を行った。
【0055】
また、表面固有抵抗は、射出成形機(住友重機社製 プロマット40/25)を使用し、シリンダー温度210℃で溶融し、温度40℃の金型に射出圧を下限圧+10g/cmで射出することによって、80mm角,厚み3mmの角板を製造した後、超絶縁抵抗計(東亜電波工業社製SM−10E)を用い、温度23℃,湿度50%RHの環境で測定を行った。
【0056】
[実施例1]ポリエーテルエステルアミド(A−1)
カプロラクタム45部、数平均分子量が1,500であり、酸価:1.20mgKOH/g 、過酸化物価:3.5meq/g、カルボニル価:2.3μeq/kgであるビスフェノールAのエチレンオキシド付加物50部、テレフタル酸5.82部、酸化防止剤(イルガノックス1098:チバスペシャルティケミカルズ(株)製 以下同様)0.5部をヘリカルリボン攪拌翼を供えた反応容器に仕込み、Nパージして260℃で60分間加熱攪拌して透明な均質溶液とした後、0.07kPa以下まで減圧した。
【0057】
テトラブチルチタネート0.1部を加えて、圧力は0.07kPa以下、温度は260℃の条件で、攪拌トルクが11kg・m(11r/min)になった時点で反応を終了した。反応時間は2.1時間であり、得られたポリエーテルエステルアミドの外観色調は、YI:65.7,表面固有抵抗値:10.1×1012Ωであった。このポリエーテルエステルアミドは、着色が抑制されており、外観色調に優れると共に、帯電防止剤の基本特性となる表面固有抵抗は従来と同品質であった。
【0058】
[実施例2]ポリエーテルエステルアミド(A−2)
数平均分子量が1,500であるビスフェノールAのエチレンオキシド付加物50部を酸価:1.20mgKOH/g 、過酸化物価:2.7meq/g、カルボニル価:2.5μeq/kgに変更した以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。
【0059】
反応時間は2.3時間であり、得られたポリエーテルエステルアミドの外観色調は、YI:62.3,表面固有抵抗値:9.3×1012Ωであった。このポリエーテルエステルアミドは(A−1)と比較し、YIに若干の減少が見られ、外観色調が向上した。また、表面固有抵抗への影響は無かった。
【0060】
[実施例3]ポリエーテルエステルアミド(A−3)
数平均分子量が1,500であるビスフェノールAのエチレンオキシド付加物50部を酸価:1.20mgKOH/g、過酸化物価:2.7meq/g、カルボニル価:1.9μeq/kgに変更した以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。
【0061】
反応時間は2.1時間であり、得られたポリエーテルエステルアミドの外観色調は、YI:60.5,表面固有抵抗値:10.8×1012Ωであった。このポリエーテルエステルアミドは(A−2)と比較し、YIに若干の減少が見られ、より外観色調に優れていた。また、表面固有抵抗への影響は無かった。
【0062】
[実施例4]ポリエーテルエステルアミド(A−4)
数平均分子量が1,500であるビスフェノールAのエチレンオキシド付加物50部を酸価:0.45mgKOH/g、過酸化物価:1.8meq/g、カルボニル価:0.9μeq/kgに変更した以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。
【0063】
反応時間は2.2時間であり、得られたポリエーテルエステルアミドの外観色調は、YI:50.9,表面固有抵抗値:9.4×1012Ωであった。このポリエーテルエステルアミドは(A−3)と比較し、さらにYIの減少が見られ、より外観色調に優れていた。また、表面固有抵抗への影響は無かった。
【0064】
[実施例5]ポリエーテルエステルアミド(A−5)
数平均分子量が1,500であるビスフェノールAのエチレンオキシド付加物50部を酸価:0.04mgKOH/g、過酸化物価:0.5meq/g、カルボニル価:0.2μeq/kgに変更した以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。
【0065】
反応時間は2.4時間であり、得られたポリエーテルエステルアミドの外観色調は、YI:38.7であった。このポリエーテルエステルアミドは(A−4)と比較し、YIに著しい減少が見られ、より外観色調に優れていた。また、表面固有抵抗への影響は無かった。
【0066】
[実施例6]ポリエーテルエステルアミド(A−6)
数平均分子量が1,500であるビスフェノールAのエチレンオキシド付加物50部を、あらかじめ酸化防止剤を0.015%含有し、酸価:0.02mgKOH/g、過酸化物価:0.1meq/g、カルボニル価:0.1μeq/kgである数平均分子量が1,500のビスフェノールAのエチレンオキシド付加物を50部と変更した。さらに酸化防止剤を0.49部と変更した以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。
【0067】
反応時間は2.2時間であり、得られたポリエーテルエステルアミドの外観色調は、YI:30.5,表面固有抵抗値は10.7×1012Ωであった。このポリエーテルエステルアミドは(A−5)と比較し、YIがさらに減少し、特に外観色調に優れていた。また、表面固有抵抗への影響は無かった。
【0068】
[実施例7]ポリエーテルエステルアミド(A−7)
数平均分子量が1,500であるビスフェノールAのエチレンオキシド付加物50部を、数平均分子量が1,800であり、酸価:1.20mgKOH/g、過酸化物価:3.4meq/g、カルボニル価:2.1μeq/kgであるビスフェノールAのエチレンオキシド付加物に変更した。さらにテレフタル酸5.82部を4.85部に変更した以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。
【0069】
反応時間は2.2時間であり、得られたポリエーテルエステルアミドの外観色調は、YI:63.2,表面固有抵抗値は8.2×1012Ωであった。このポリエーテルエステルアミドは(A−1)と比較し、YI,表面固有抵抗ともに、ほぼ同程度であった。
【0070】
[実施例8]ポリエーテルエステルアミド(A−8)
数平均分子量が1,500であるビスフェノールAのエチレンオキシド付加物50部を、数平均分子量が900であり、酸価:1.20mgKOH/g、過酸化物価:3.2meq/g、カルボニル価:2.2μeq/kgであるビスフェノールAのエチレンオキシド付加物に変更した。さらにテレフタル酸5.82部を9.70部に変更した以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。
【0071】
反応時間は2.4時間であり、得られたポリエーテルエステルアミドの外観色調は、YI:69.8,表面固有抵抗値は50.2×1012Ωであった。このポリエーテルエステルアミドは(A−1)と比較し、YI,表面固有抵抗ともに上昇した。
【0072】
[実施例9]ポリエーテルエステルアミド(A−9)
数平均分子量が1,500であるビスフェノールAのエチレンオキシド付加物50部を、数平均分子量が3,000であり、酸価:1.20mgKOH/g、過酸化物価:3.5meq/g、カルボニル価:2.3μeq/kgであるビスフェノールAのエチレンオキシド付加物に変更した。さらにテレフタル酸5.82部を2.91部に変更した以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。
【0073】
反応時間は6.4時間であり、得られたポリエーテルエステルアミドの外観色調は、YI:60.4,表面固有抵抗値は1.2×1012Ωであった。このポリエーテルエステルアミドは(A−1)と比較し、YI,表面固有抵抗は若干の減少が見られたが、重合時間が大幅に増大した。
【0074】
[実施例10]ポリエーテルエステルアミド(A−10)
数平均分子量が1,500であるビスフェノールAのエチレンオキシド付加物50部を、数平均分子量が1,500であるビスフェノールAのエチレンオキシド付加物45部と数平均分子量が1,500であるポリエチレングリコール5部の混合物に変更し、酸価:0.04mgKOH/g 、過酸化物価:0.5meq/g、カルボニル価:0.2μeq/kgと変更した以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。
【0075】
反応時間は2.1時間であり、得られたポリエーテルエステルアミドの外観色調は、YI:64.2,表面固有抵抗値は4.3×1012Ωであった。このポリエーテルエステルアミドは(A−1)と比較し、YIは同等であったが、表面固有抵抗には若干の減少が見られた。
【0076】
[比較例1]ポリエーテルエステルアミド(B−1)
数平均分子量が1,500であるビスフェノールAのエチレンオキシド付加物50部を酸価:1.50mgKOH/g 、過酸化物価:3.2mgKOH/g、カルボニル価:2.5μeq/kgに変更した以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。
【0077】
反応時間は2.3時間であり、得られたポリエーテルエステルアミドの外観色調は、YI:79.6,表面固有抵抗値は9.5×1012Ωであった。
【0078】
このポリエーテルエステルアミドは(A−1)と比較し、YIに著しい上昇が見られ、十分な外観色調を得ることはできなかった。また、表面固有抵抗への影響は無かった。
【0079】
[比較例2]ポリエーテルエステルアミド(B−2)
数平均分子量が1,500であるビスフェノールAのエチレンオキシド付加物50部を、数平均分子量が250であり、酸価:1.50mgKOH/g、過酸化物価:3.4meq/g、カルボニル価:2.1μeq/kgであるビスフェノールAのエチレンオキシド付加物50部に変更した。さらにテレフタル酸5.82部を34.93部に変更した以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。
【0080】
反応時間は2.5時間であり、得られたポリエーテルエステルアミドの外観色調は、YI:85.0,表面固有抵抗値は100.6×1012Ωであった。このポリエーテルエステルアミドは(A−1)と比較し、YI,表面固有抵抗に大幅な上昇見られ、十分な外観色調ならびに帯電防止効果を得ることはできなかった。
【0081】
[比較例3]ポリエーテルエステルアミド(B−3)
数平均分子量が1,500であるビスフェノールAのエチレンオキシド付加物50部を、数平均分子量が6,000であり、酸価:1.50mgKOH/g、過酸化物価:3.3meq/g、カルボニル価:2.1μeq/kgであるビスフェノールAのエチレンオキシド付加物50部に変更した。さらにテレフタル酸5.82部を1.31部に変更した以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。
【0082】
反応後8.0時間経過した後も、攪拌トルクが11kg・m(11r/min)まで到達しない上、攪拌トルクの上昇が止まってしまったため、十分な重合度が得られず、YI,表面固有抵抗の測定を行うことはできなかった。
【0083】
次に金属触媒テトラブチルチタネートを三酸化アンチモンに変更しての実施例を示す。
【0084】
[実施例11]ポリエーテルエステルアミド(A−11)
テトラブチルチタネート0.1部を三酸化アンチモン0.1部に変更した以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。
【0085】
反応時間は3.2時間であり、得られたポリエーテルエステルアミドの外観色調は、YI:69.2,表面固有抵抗値は9.1×1012Ωであった。このポリエーテルエステルアミドは(A−1)と比較し、YIが若干高いものの、外観色調に優れると共に、帯電防止剤の基本特性となる表面固有抵抗は従来と同品質であった。
【0086】
[比較例4]ポリエーテルエステルアミド(B−4)
数平均分子量が1,500であるビスフェノールAのエチレンオキシド付加物50部を酸価:1.50mgKOH/g 、過酸化物価:3.2meq/g、カルボニル価:2.5μeq/kgに変更した。さらに、テトラブチルチタネート0.1部を三酸化アンチモン0.1部に変更した以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。
【0087】
反応時間は3.5時間であり、得られたポリエーテルエステルアミドの外観色調は、YI:86.8,表面固有抵抗値は9.4×1012Ωであった。このポリエーテルエステルアミドは(A−11)と比較し、YIが大幅に増大し、十分な外観色調を得ることができなかった。
【0088】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)炭素原子数6以上のアミノカルボン酸または炭素原子数6以上のラクタム、もしくはジアミンとジカルボン酸から合成される合計炭素原子数が6以上の塩、
(b)次式(I)〜(IV)から選ばれる1種もしくは2種以上のジオール化合物
【化1】

(ただし式中、R、Rはエチレンオキシド基およびプロピレンオキシド基の少なくとも1つを示し、Yは共有結合、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜6のアルキリデン基、炭素数7〜17のシクロアルキリデン基、炭素数7〜17のアリールアルキリデン基、O、SO、SO、CO、S、CF、C(CF、またはNHを示し、X〜X12は水素、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン基、スルホン基、またはその金属塩を示す。)、および
(c)炭素原子数4〜20のジカルボン酸を重合せしめることを特徴とするポリエーテルエステルアミドの製造方法であって、(b)成分として酸価が1.40 mgKOH/g 以下のジオール化合物を使用することを特徴とするポリエーテルエステルアミドの製造方法。
【請求項2】
(b)成分として過酸化物価が3.0meq/g 以下のジオール化合物を使用することを特徴とする請求項1記載のポリエーテルエステルアミドの製造方法。
【請求項3】
(b)成分としてカルボニル価が2.0μeq/kg 以下のジオール化合物を使用することを特徴とする請求項1または2記載のポリエーテルエステルアミドの製造方法。
【請求項4】
(b)成分として、前記式(I)で表されるジオール化合物と、(II)〜(IV)の3種から選ばれる少なくとも1種のジオール化合物を併用することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のポリエーテルエステルアミドの製造方法。
【請求項5】
(b)成分の分子量が300〜5,000であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のポリエーテルエステルアミドの製造方法。
【請求項6】
(b)成分に、あらかじめ(b)成分の合計量に対して0.0002〜0.05重量%の酸化防止剤を含有させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のポリエーテルエステルアミドの製造方法。
【請求項7】
酸化防止剤がヒンダードフェノール系酸化防止剤であることを特徴とする請求項6記載のポリエーテルエステルアミドの製造方法。
【請求項8】
金属触媒を用いて重合せしめることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載のポリエーテルエステルアミドの製造方法。
【請求項9】
金属触媒がチタン系,スズ系,ジルコニウム系,ハフニウム系,鉛系,亜鉛系,ゲルマニウム系およびアンチモン系から選択されるいずれかの金属触媒であることを特徴とする請求項8記載のポリエーテルエステルアミドの製造方法。
【請求項10】
金属触媒がチタン系またはアンチモン系金属触媒であることを特徴とする請求項9記載のポリエーテルエステルアミドの製造方法。
【請求項11】
金属触媒がチタンアルコキシドまたは三酸化アンチモンであることを特徴とする請求項10記載のポリエーテルエステルアミドの製造方法。

【公開番号】特開2007−2171(P2007−2171A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−186549(P2005−186549)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】