説明

ポリエーテルエステルアミドの製造方法

【課題】外観色調に優れたポリエーテルエステルアミドを提供する。
【解決手段】(a)炭素原子数6以上のアミノカルボン酸または炭素原子数6以上のラクタム、もしくはジアミンとジカルボン酸から合成される合計炭素原子数が6以上の塩、
(b)ジオール化合物、および

(c)炭素原子数4〜20のジカルボン酸、
を重合して得られるポリエーテルエステルアミドの製造方法であり、(a)成分の色調YI値が32以下のものを使用する。さらに、(b)成分の酸値が1.4mgKOH/g以下、過酸化物価が3.0meq/g以下、カルボニル価が2.0μeq/g以下のものを使用することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外観色調に優れるポリエーテルエステルアミドの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂に帯電防止性を付加する方法として、特許文献1記載のポリアミド成分、ポリ(アルキレン)オキシドグリコール、ジカルボン酸を重合して得られるポリエーテルエステルアミドの添加が挙げられる。
【0003】
ポリエーテルエステルアミド樹脂の外観色調は、ポリエーテルエステルアミド樹脂を添加した熱可塑性樹脂組成物の外観色調に大きく影響するため、透明用途の熱可塑性樹脂組成物に用いるためには、ポリエーテルエステルアミドの外観色調がより低着色であることが要求される。外観色調を改良する方法として、特許文献2には、ポリ(アルキレン)オキシドグリコール中の酸価等の成分を一定値以下に規定する方法が記載されている。しかし、特許文献2に記載の方法では、外観色調の良好なポリエーテルエステルアミドを得るには不十分であった。
【特許文献1】特開2003−268104号公報
【特許文献2】特開2007−2171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明では、より外観色調の良好なポリエーテルエステルアミドを得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、色調YI値が一定値以下であるポリアミド成分モノマーを使用することにより、本発明の課題が解決されることを見出した。
すなわち、本発明は、
(1) (a)炭素原子数6以上のアミノカルボン酸または炭素原子数6以上のラクタム、もしくはジアミンとジカルボン酸から合成される合計炭素原子数が6以上の塩、
(b)次式(I)〜(IV)から選ばれる1種もしくは2種以上のジオール化合物
【0006】
【化1】

【0007】
(ただし式中、R、Rはエチレンオキシド基およびプロピレンオキシド基の少なくとも1つを示し、Yは共有結合、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜6のアルキリデン基、炭素数7〜17のシクロアルキリデン基、炭素数7〜17のアリールアルキリデン基、O、SO、SO、CO、S、CF、C(CF、またはNHを示し、X〜X12は水素、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン基、スルホン基、またはその金属塩を示す。)、および
(c)炭素原子数4〜20のジカルボン酸を重合して得られるポリエーテルエステルアミドの製造方法であり、(a)成分の色調YI値が32以下のものを使用することを特徴とするポリエーテルエステルアミドの製造方法、
(2) (b)成分の酸価が1.4mgKOH/g以下のジオール化合物を使用することを特徴とする(1)記載のポリエーテルエステルアミドの製造方法、
(3) (b)成分の過酸化物価が3.0meq/g以下のジオール化合物を使用することを特徴とする(1)および(2)記載のポリエーテルエステルアミドの製造方法、
(4) (b)成分のカルボニル価が2.0μeq/kg以下のジオール化合物を使用することを特徴とする(1)、(2)、(3)記載のポリエーテルエステルアミドの製造方法、
(5) 反応中に留出した(a)成分を、再度原料として用いることを特徴とする(1)〜(4)いずれかに記載のポリエーテルエステルアミドの製造方法、
(6) 窒素雰囲気下にある系内で留出した(a)成分を、再度原料として用いることを特徴とする(5)記載のポリエーテルエステルアミドの製造方法、
(7) 反応中に留出した(a)成分を、活性炭処理した後、再度原料として用いることを特徴とする(5)または(6)記載のポリエーテルエステルアミドの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、以下に説明するとおり、外観色調が良好なポリエーテルエステルアミドを得ることができる。特に、反応中に留出した原料を再利用する場合も、外観色調が良好なポリエーテルエステルアミドを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明はポリエーテルエステルアミドに関するものである。
【0011】
ポリエーテルエステルアミドとしては、その共重合成分が特に限定されるものではないが、以下に本発明に好ましいポリエーテルエステルアミドの成分を示す。
【0012】
本発明のポリエーテルエステルアミドの重合に用いる(a)炭素原子数6以上のアミノカルボン酸または炭素原子数6以上のラクタム、もしくはジアミンとジカルボン酸から合成される合計炭素原子数が6以上の塩は、ポリエーテルエステルアミドのポリアミド形成成分である。
【0013】
炭素原子数6以上のアミノカルボン酸としてはω―アミノカプロン酸、ω―アミノエナント酸、ω―アミノカプリル酸、ω―アミノペルゴン酸、ω―アミノカプリン酸および、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられる。炭素原子数6以上のラクタムとしてはカプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタムおよびラウロラクタム等が挙げられる。ジアミンとジカルボン酸から合成される、合計炭素原子数が6以上の塩としては、ヘキサメチレンジアミン−アジピン酸塩、ヘキサメチレンジアミン−セバシン酸塩、ヘキサメチレンジアミン−デカンジカルボン酸塩、およびヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸塩等が挙げられる。特にカプロラクタム、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、ヘキサメチレンジアミン−アジピン酸塩が好ましく用いられ、より好ましくはカプロラクタムである。これらの(a)ポリアミド形成成分は1種もしくは必要に応じて2種以上用いることができる。
【0014】
(a)ポリアミド形成成分は、ポリエーテルエステルアミド構成単位に対して10〜90重量%、好ましくは20〜70重量%、より好ましくは30〜50重量%の範囲で用いられる。10〜90重量%の範囲ではポリエーテルエステルアミドの機械的性質および透明性が高くなるため好ましい。
【0015】
また、(a)ポリアミド形成成分は、酸素と接触することにより、酸化反応が進み、黄色状の着色が生じる。この黄色状に着色したポリアミド形成成分を用いて重合した場合、ポリエーテルエステルアミドの着色要因となるため、ポリアミド形成成分の黄色度が一定以下のものを使用する必要がある。
【0016】
したがって、本発明における(a)ポリアミド形成成分は、色調YI値が32以下のものを使用する必要があり、好ましくは32以下、さらに好ましくは25以下のものを使用することにより、外観色調の良好なポリエーテルエステルアミドを得ることができる。
【0017】
ここで、色調YI値とは、物質の黄色度を示す指標であり、値が大きいほど黄色具合が強いことを表している。測定方法は、(a)ポリアミド形成成分を50%水溶液に調製し、底面積3.5cm、高さ5.5cmの円筒形透明ガラス製サンプル瓶に、水溶液を高さ4cmになるまで入れ、カラーコンピューター(スガ試験株式会社S&MカラーコンピューターSM−7)を用いて行う。
【0018】
本発明における(a)ポリアミド形成成分は、重合反応中に留出したものを再度原料として用いてもよく、また、留出物と市販の製品を混合して使用してもよい。
【0019】
また、本発明における(a)ポリアミド形成成分は、重合反応中に留出したものを再度原料として用いる際に、何らかの酸化防止処理、または酸化物質除去処理を行うことで、色調YI値の低い(a)ポリアミド形成成分を得ることができる。
【0020】
(a)ポリアミド形成成分の酸化防止処理としては、酸化防止剤の添加、系内を不活性ガス雰囲気にする方法等が挙げられ、その方法は特に限定されない。ただし、使用する添加剤の種類・量を増やすことなく、設備面のみで対応ができることから、系内を不活性ガス雰囲気にする方法が好ましく、系内を不活性ガス雰囲気にした状態で、重合反応中に留出した(a)ポリアミド形成成分を再度原料として使用することで外観色調の良好なポリエーテルエステルアミドを得ることができる。ここで、系内とは重合缶、留出物を凝縮するコンデンサ、および凝縮した留出液を貯蔵するタンク、またはそれに該当するものを表しており、特にタンクは、不活性ガスにより常に常圧以上に加圧されていることが好ましい。また、系内への不活性ガス供給方法としては系内の圧力が一定値以下になった際に、随時追加供給する方法が好ましいが、定流量で連続的に不活性ガスを供給する方法がより好ましい。また、不活性ガスとしては、窒素を用いることが好ましい。
【0021】
(a)ポリアミド形成成分の酸化物質除去処理としては、イオン交換樹脂や活性炭を用いる方法など、処理方法は特に限定されない。
【0022】
本発明に用いる活性炭としては、比表面積が1000m/g以上、平均粒子径が20〜40μmの範囲を満たしているものが、吸着能力が高く、好ましい。活性炭を用いた酸化物資除去処理方法としては、重合反応中に留出した(a)ポリアミド形成成分に活性炭を投入、混合し、活性炭に酸化物質を吸着させた後、活性炭を分離する方法、あるいは活性炭カラムに通液し、酸化物質を吸着・除去する方法などが挙げられる。活性炭を投入・混合する場合の活性炭添加量は、留出したポリアミド形成成分に対して1.0重量部以上であることが好ましい。また、酸化物質除去処理を行う際、不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
【0023】
本発明におけるポリエーテルエステルアミドの製造に使用する(b)ジオール化合物としては、次式(I)〜(IV)で表されるものの1種もしくは2種以上を使用する。
【0024】
【化2】

【0025】
(ただし式中、R、Rはエチレンオキシド基おおよびプロピレンオキシド基の少なくとも1つを示し、Yは共有結合、炭素数1〜6アルキレン基、炭素数1〜6のアルキリデン基、炭素数7〜17のシクロアルキリデン基、炭素数7〜17のアリールアルキリデン基、O、SO、SO、CO、S、CF、C(CF、またはNHを示し、また、X〜X12は水素、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン基、スルホン基、またはその金属塩を示す。)
上記一般式(I)〜(IV)で示される化合物のうち、R、Rはエチレンオキシドであると重合性が良好であるので好ましい。また、X〜X12はそれぞれ同一または相違なる水素または炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、特に好ましくは水素である。数平均分子量は300〜5,000であり、特に900〜3,000の範囲が好ましく、1,000〜2,500の範囲がより好ましく、1,300〜1,700の範囲がさらに好ましい。式中のmおよびnはそれぞれ−R―、−R−の重合度を意味し、独立した値は求められないが、m+nの平均値は化合物の構造と数平均分子量から計算により求めることができる。数平均分子量が上記範囲にある場合に、得られるポリエーテルエステルアミドの帯電防止性の向上、重合時間の短縮や結晶化温度の向上を図ることができる。
【0026】
なお、本発明において、数平均分子量は、資料1gを過剰なアセチル化剤、例えば無水酢酸と加熱してアセチル化を行い、生成したアセチル化物を中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg数)をA、アセチル化前の試料1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg数)をBとしたとき、次式によって計算できる。
【0027】
数平均分子量=11,200/((A/(1−0.00075×A)−B))
ここで、2種類以上のジオール化合物を併用する場合の数平均分子量は、2種類以上のジオール成分を混合して上記の方法で数平均分子量を求めてもよいし、それぞれのジオール成分の数平均分子量から計算で求めた値であってもよい。
【0028】
また、一般式(III)で示される化合物が重合性の点で優れ好ましい。一般式(III)のYとしては、共有結合、炭素数1〜6のアルキレン基およびSOが好ましく、特に好ましくは炭素数1〜6のアルキレン基である。
【0029】
一般式(III)で示されるジオール化合物の具体的な例としては、ポリ(アルキレン)オキシドグリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(1,3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックまたはランダム共重合体や、エチレンオキシドとテトラヒドロフランのブロックまたはランダム共重合体および、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、2,2―ビス(4,4’―ヒドロキシフェニル−3,3’スルホン酸ナトリウム)プロパン、ビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールS、4,4’―(ヒドロキシ)ビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフルオロメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アミン、2,2’―ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’―ジヒドロキシベンゾフェノン、ハイドロキノン、および1,4−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム等のエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド付加物、ジヒドロキシナフタレン、およびそれらのブロック共重合体等が挙げられる。
【0030】
この中で好ましいジオール化合物としては、ハイドロキノンのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールSのエチレンオキシド付加物、ジヒドロキシナフタレンのエチレンオキシド付加物およびそれらブロック共重合体であり、特にビスフェノールAのエチレンオキシド付加物およびそのブロック共重合体が重合性、経済性の点で好ましい。
【0031】
これらの(b)ジオール化合物は、1種もしくは必要に応じて2種以上用いることができる。2種以上使用する際には、前記式(I)で表されるジオール化合物と、(II)〜(IV)の3種から選ばれる少なくとも1種のジオール化合物を併用することが好ましい。このようにジオール化合物を併用することで、帯電防止性の向上を図ることができる。
【0032】
また、(b)ジオール化合物は水酸基末端の酸化反応によって、過酸化物、アルデヒド、カルボキシル基が生成する。ジオール化合物の酸化は、ジオール化合物自身の着色を生じないが、酸化物質を含むジオール化合物を用いて重合した場合、ポリエーテルエステルアミドの着色要因となるため、外観色調の良好なポリエーテルエステルアミドを得るためには、ジオール化合物の酸価、過酸化物価、カルボニル価を一定値以下に抑えることが好ましい。
【0033】
したがって、本発明における(b)ジオール化合物は、酸価が1.4mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは0.5mgKOH/g以下、さらに好ましくは0.1mgKOH/g以下、最も好ましくは0.05mgKOH/g以下のものを使用することにより、外観色調の良好なポリエーテルエステルアミドを得ることができる。
【0034】
ここで、酸価とは、ジオール化合物中のカルボキシル基量の指標であり、下記の通り求める。試料(ジオール化合物)Bgを、イソプロパノール30mlに溶解し、0.1N水酸化カリウムエタノール標準液で中和するのに必要な量をAml、0.1Nアルコール性水酸化カリウム液の力価をfとして、次式によって計算する。
酸価=(A×f×5.611)/B
また、本発明における(b)ジオール化合物は、過酸化物価が3.0meq/g以下であることが好ましい。さらに好ましくは2.0meq/g以下、最も好ましくは1.2meq/g以下のものを使用することにより外観色調の良好なポリエーテルエステルアミドを得ることができる。
【0035】
ここで、過酸化物価とは、ジオール化合物中の過酸化物量の指標であり、下記の通り求める。試料Bgをイソプロパノールと酢酸(特級)を4:1で混合した溶剤25mlに溶解させたものにヨウ化カリウム1gを混合する。混合液を0.005Nチオ硫酸ナトリウムで滴定し、混合液が変色するのに必要な0.005Nチオ硫酸ナトリウムの使用量をAml、0.005Nチオ硫酸ナトリウムの力価をfとして、次式によって計算する。
過酸化物価=(A×f×10)/B
また、(b)本発明におけるジオール化合物は、カルボニル価が2.0μeq/kg以下であることが好ましい。さらに好ましくは1.0μeq/kg以下、最も好ましくは0.5μeq/kg以下のものを使用することにより外観色調の良好なポリエーテルエステルアミドを得ることができる。
【0036】
ここで、カルボニル価とは、ジオール化合物中のカルボニル基量の指標であり、下記の通り求める。試料Bgに0.05%2,4−ジニトロフェニルヒドラジン5mlと4.3%トリクロロ酢酸溶液3mlを混合し、さらに60℃で30分加熱し、冷却後に4%水酸化カリウム溶液10mlを加え、440nmで吸光度を測定し、検量線より求めたカルボニル化合物の量をAとして、次式によって計算する。
カルボニル価=A/B
(b)ジオール化合物の酸化を抑制する方法として、(b)ジオール化合物の製造を窒素雰囲気下で実施することが挙げられるが、あらかじめ(b)ジオール化合物の製造時に酸化防止剤を含有させることで、さらに酸化抑止効果を得ることができる。
【0037】
本発明では、あらかじめ(b)ジオール化合物製造時に含有させる酸化防止剤の量に制限はないが、(b)ジオール成分の全体量に対して、好ましくは0.0001〜0.1重量%、さらに好ましくは0.001〜0.05重量%、最も好ましくは0.01〜0.03重量%である。この範囲を満たすことにより、(b)ジオール化合物の酸化を抑制、すなわち酸価、過酸化物価、カルボニル価をより低減でき、外観色調の良好なポリエーテルエステルアミドを得ることができる。
【0038】
本発明におけるポリエーテルエステルアミドを構成する(c)炭素原子数4〜20のジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、および3−スルホイソフタル酸ナトリウムの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、およびジシクロヘキシル−4,4’−ジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、およびドデカンジ酸が重合性、色調、透明性、および物性の点から好ましく用いられる。
【0039】
(c)ジカルボン酸は(b)ジオール化合物と1:1のモル比で反応するが、使用するジカルボン酸の種類により、仕込比を1:1または適宜変更して供給してもよい。
【0040】
本発明のポリエーテルエステルアミドの重合方法は特に限定されず、例えば(a)ポリアミド形成成分と(c)ジカルボン酸を反応させて両末端がカルボン酸基のポリアミドプレポリマーを製造後、ポリアミドプレポリマー、(b)ポリ(アルキレン)オキシドグリコールを減圧下で反応させる方法がある。このポリアミドプレポリマーの平均分子量は特に制限はないが、200〜15,000が好ましく、より好ましくは500〜5,000である。
【0041】
他の手法として、(a)(b)(c)の各化合物を反応槽に仕込み、水の存在下または非存在下に220〜260℃の温度で常圧または加圧下で反応させることにより、ポリアミドプレポリマーを生成させ、その後減圧下で反応を進行する方法などを利用することができる。
【0042】
ここで減圧下とは、好ましくは約2kPa以下、より好ましくは0.67kPa以下、最も好ましくは0.13kPa以下をいう。
【0043】
減圧下で重合反応を行う際に、水が留出するが、水とともに原料モノマーが一部留出する。この留出した原料モノマーには、(a)ポリアミド形成成分が多く含まれており、この留出した原料モノマーを再利用することが好ましい。また、前記の方法により留出物を酸化防止処理、および酸化物質除去処理を行うことで、色調YI値の低い(a)ポリアミド形成成分を得ることができるので好ましい。このとき留出成分には、各1%以下程度の(b)、(c)成分も含まれている場合もあるので、酸化防止処理、酸化物質除去処理、および原料として再利用を行う際に、(b)、(c)成分を分離して処理を行ってもよいし、分離をせず、(b)、(c)成分を含む混合物のままで処理を行ってもよい。
【0044】
ポリエーテルエステルアミドの重合反応においては、金属触媒を用いることが可能であり、これら金属触媒として、テトラブチルチタネート等のテトラアルキルチタネートやシュウ酸チタンカリウム等のシュウ酸チタン金属塩のようなチタン系触媒、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズラウレート、モノブチルスズオキサイドのようなスズ系触媒、酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキサイド、ジルコニウムイソプロポキサイド等のジルコニウム系触媒、ハフニウムテトラエトキサイド等のハフニウム系触媒、酢酸鉛等の鉛系触媒、酢酸亜鉛等の亜鉛系触媒、酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム系触媒、三酸化アンチモン等のアンチモン系触媒がある。これらは1種または必要に応じて2種以上組み合わせてもよい。
【0045】
本発明で使用する金属触媒は、チタン系、またはアンチモン系が好ましく、チタンアルコキシドまたは三酸化アンチモンが特に好ましい。
【0046】
また、本発明における金属触媒の添加量としては、特に制限はないが、重合性の観点から、(a)ポリアミド形成成分および(b)ジオール化合物の合計100重量%に対し、0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜1重量%である。
【0047】
本発明で使用される金属触媒は、原料と一括して添加する方法以外に、減圧開始前に添加してもよく、また(b)ジオール化合物を最初から他の原料と一括して添加せずに減圧重合開始前に金属触媒とともに添加する方法であってもよい。また、重合触媒を予め原料一成分とのスラリーとしておくと、反応器内に添加した際の均一分散性の観点から好ましい。
【0048】
本発明のポリエーテルエステルアミドは本発明の効果を損なわない程度に、重合前または重合後に酸化防止剤、熱分解防止剤、紫外線吸収剤、耐加水分解改良剤、着色剤、導電剤、難燃剤、補強材、充填剤、滑剤、核剤、離型剤、可塑剤、接着助剤、粘着剤等の添加剤を任意に含有せしめることができる。また、スルホン酸金属塩やアニオン系、カチオン系、非イオン系の界面活性剤等の帯電防止剤を添加して帯電防止性を一層向上させることもできる。
【0049】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられ、これらを併用して使用することもできる。中でもヒンダードフェノール系酸化防止剤が酸価防止効果が高く好ましい。また、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤または硫黄系酸化防止剤を併用することもできる。
【0050】
本発明で用いるヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、1,1,3−トリス(2−メチル−1−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレン−ジ−フォスフォナイト、ビス−[3,3−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)−ブタノイックアシッド]−グリコールエステル、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましく用いられるが、とりわけ3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましい。
【0051】
本発明で用いるリン系酸化防止剤としては、トリスノニルフェネルフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−フォスフォナイト−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジジフォスファスピロ[5,5]ウンデカンが好ましく用いられるが、とりわけビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジジフォスフォスピロ[5,5]ウンデカンが好ましい。
【0052】
本発明で用いる硫黄系酸化防止剤としては、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、2−メルカプトベンズイミダゾール、ジドデジル3,3’−チオジプロピオネート、ジオクタデシル3,3’−チオジプロピオネート、ジトリデシル3,4’−チオジプロピオネート、2,2−ビス{[3−(ドデシルチオ)−1−オキソプロポキシ]メチル}−1,3−プロパンジイルエステルが好ましく用いられるが、とりわけジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)が好ましい。
【0053】
本発明のポリエーテルエステルアミドは、通常の熱可塑性樹脂やゴムの成形に利用される一般的な成形方法の適用が可能であり、例えば、射出成形、押出成形、ブロー成形、カレンダー加工、シート成形、コーティング被覆等を用いることができる。
【0054】
本発明で得られるポリエーテルエステルアミドは、エラストマーとしてこのまま用いてもよく、さらに、種々の熱可塑性樹脂と混合して用いることも可能である。熱可塑性樹脂に混合することにより、熱可塑性樹脂の機械物性の向上や帯電防止性の付与が可能である。例えば、帯電防止剤として使用する場合、熱可塑性樹脂100重量部に対して、ポリエーテルエステルアミドを5〜20重量部配合することが好ましい。さらに、この熱可塑性樹脂が透明性スチレン系樹脂の場合、ポリエーテルエステルアミドの屈折率と透明性スチレン系樹脂の屈折率との差を0.03以下、好ましくは0.02以下に調整することにより、透明性に優れる樹脂組成物を製造することができる。ポリエーテルエステルアミドの屈折率の調整は、共重合成分の変更により可能である。屈折率はポリエーテルエステルアミド中の芳香族や、ハロゲン等の屈折率を変動させる成分の量を加減することにより行うことができる。
【0055】
屈折率を低くする場合には、例えば芳香環やハロゲン等の屈折率を高くするものを含有しない化合物もしくは含有量の低い化合物を用いるか、そのような成分を含有する成分の共重合量を減らして重合を行い、ポリエーテルエステルアミド中の芳香環やハロゲン等の含有量を減少させる方法があり、逆に屈折率を高くする場合には、芳香環やハロゲン等の含有量を増量する方法がある。
【0056】
熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、変性ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリオキシメチレン樹脂ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、エチレン/プロピレン樹脂、エチレン/1−ブテン樹脂、エチレン/プロピレン/非共役ジエン樹脂、エチレン/アクリル酸エチル樹脂、エチレン/メタクリル酸グリシジル樹脂体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル樹脂、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル樹脂、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸樹脂、ポリエステルポリエーテルエラストマーポリエステルポリエステルエラストマー等のエラストマー、あるいはこれら熱可塑性樹脂の2種以上の混合物が挙げられるが、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂が好ましく、さらに好ましくは、スチレン系樹脂である。
【0057】
上記熱可塑性樹脂のなかで、スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル共重合体、ゴム強化スチレン系樹脂、およびゴム強化スチレン系樹脂とポリフェニレンオキシドとのポリマーブレンド体(変性ポリフェニレンオキシド)などが挙げられる。
【0058】
また、ゴム強化スチレン系樹脂としては、ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体と必要に応じ他の単量体をグラフト重合してなるグラフト(共)重合体を好ましく挙げることができ、これはゴム状重合体の存在下に、芳香族ビニル単量体および必要に応じ他のビニル系単量体を、公知の塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合または乳化重合に供することにより得られる。
【0059】
このようなゴム強化スチレン系樹脂としては、例えば、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエンゴム−スチレン共重合体)、AAS樹脂(アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体)、MBS樹脂(メチルメタクリレート−ブタジエンゴム−スチレン共重合体)、およびAES樹脂(アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体)などが挙げられる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明の構成、効果をさらに詳細に説明する。特に断らない限り、部数および%は重量部および重量%を意味する。
【0061】
なお、本発明で使用する測定方法は以下の通りである。
【0062】
(1)ポリエーテルエステルアミドの外観色調
直径2〜5mm、長さ2〜5mmの円筒状ポリエーテルエステルアミドチップを、カセットに充填し、カラーコンピューター(スガ試験株式会社S&MカラーコンピューターSM−7)を用いて黄色度YIの測定を行った。
【0063】
(2)ポリエーテルエステルアミドの表面固有抵抗値
射出成形機(住友重機社製プロマット40/25)を使用し、シリンダー温度210℃で溶融し、温度40℃の金型に射出圧を下限圧+10g/cmで射出することによって、80mm角、厚み3mmの角板を製造した後、超絶縁抵抗計(東亜電波工業社製SM−10E)を用い、温度23℃、湿度50%RHの環境で測定を行った。
【0064】
(3)(a)成分の色調YI
(a)ポリアミド形成成分を50重量%水溶液に調製し、底面積3.5cm、高さ5.5cmの円筒形透明ガラス製サンプル瓶に、水溶液を高さ4cmになるまで入れ、カラーコンピューター(スガ試験株式会社S&MカラーコンピューターSM−7)を用いて測定した。
【0065】
(4)(b)成分の酸価
試料(ジオール化合物)Bgを、イソプロパノール30mlに溶解し、0.1N水酸化カリウムエタノール標準液で中和するのに必要な量をAml、0.1Nアルコール性水酸化カリウム液の力価をfとして、次式を用いて計算した。
酸価(mgKOH/g)=(A×f×5.611)/B
(5)(b)成分の過酸化物価
試料Bgをイソプロパノールと酢酸(特級)を4:1で混合した溶剤25mlに溶解させたものにヨウ化カリウム1gを混合する。混合液を0.005Nチオ硫酸ナトリウムで滴定し、混合液が変色するのに必要な0.005Nチオ硫酸ナトリウムの使用量をAml、0.005Nチオ硫酸ナトリウムの力価をfとして、次式を用いて計算した。
過酸化物価(meq/g)=(A×f×10)/B
(6)(b)成分のカルボニル価
試料Bgに0.05%2,4−ジニトロフェニルヒドラジン5mlと4.3%トリクロロ酢酸溶液3mlを混合し、さらに60℃で30分加熱し、冷却後に4%水酸化カリウム溶液10mlを加え、440nmで吸光度を測定し、検量線より求めたカルボニル化合物の量をAとして、次式を用いて計算した。
カルボニル価(μeq/kg)=A/B
また、本実施例でポリエーテルエステルアミドの重合に用いた原料は以下の通りである。
【0066】
・留出液(1)
色調YI値が6.8のカプロラクタム45重量部、数平均分子量が1500のビスフェノールAエチレンオキシド付加物50重量部、テレフタル酸5.82重量部、酸化防止剤(イルガノックス1098:チバスペシャリティケミカルズ製 以下同様)0.5重量部を、ヘリカルリボンを備えた反応容器に仕込み、Nパージして260℃で60分間加熱攪拌して均質溶液とした後、0.07kPa以下まで減圧した。その後、テトラブチルチタネートを0.1重量部加え、圧力は0.07kPa以下、温度は260℃の条件で、攪拌トルクが11.0kgf・m(攪拌翼回転数11rpm)になった時点で反応を終了した。なお、本重合反応で生じた留出物を貯蔵するタンクは大気開放系であり、得られた留出液を大気開放系のタンク内で4時間保管した。この留出液に含まれるカプロラクタムの濃度を、水で50重量%に調製したものを留出液(1)とする。色調YIは35.6であった。
【0067】
・留出液(2)
留出液を貯蔵するタンクを窒素雰囲気に変更した以外は留出液(1)と同様の方法で重合反応を行い、得られた留出液を窒素雰囲気のタンク内で72時間保管した。この留出液に含まれるカプロラクタムの濃度を、水で50重量%に調製したものを留出液(2)とする。色調YIは30.5であった。
【0068】
・留出液(3)
留出液を貯蔵するタンクを窒素雰囲気に変更した以外は留出液1)と同様の方法で重合反応を行い、得られた留出液を窒素雰囲気のタンク内で4時間保管した。この留出液に含まれるカプロラクタムの濃度を水で50重量%に調製したものを留出液(3)とする。色調YIは23.0であった。
【0069】
・留出液(4)
留出液(1)と同様の方法で重合反応を行い、得られた留出液に、比表面積が1250m/g平均粒子径が35μmの活性炭を留出液に対して1.0重量部投入し、1時間攪拌混合した後、活性炭を分離した。本処理後の留出液に含まれるカプロラクタムの濃度を、水で50重量%に調製したものを留出液(4)とする。色調YIは17.8であった。
【0070】
・ジオール(1)
酸価:1.50mgKOH/g、過酸化物価:3.2meq/g、カルボニル価:2.5μeq/kgで、数平均分子量が1500であるビスフェノールAエチレンオキシド付加物をジオール(1)とする。
【0071】
・ジオール(2)
酸価:1.20mgKOH/g、過酸化物価:2.7meq/g、カルボニル価:1.9μeq/kgで、数平均分子量が1500であるビスフェノールAエチレンオキシド付加物をジオール(2)とする。
【0072】
・ジオール(3)
酸価:0.04mgKOH/g、過酸化物価:0.5meq/g、カルボニル価:0.2μeq/kgで、数平均分子量が1500であるビスフェノールAエチレンオキシド付加物をジオール(3)とする。
【0073】
[実施例1]
留出液(2)を90重量部、ジオール(2)を50重量部、テレフタル酸5.82重量部、酸化防止剤(イルガノックス1098:チバスペシャリティケミカルズ製 以下同様)0.5重量部を、ヘリカルリボンを備えた反応容器に仕込み、Nパージして260℃で60分間加熱攪拌して均質溶液とした後、0.07kPa以下まで減圧した。その後、テトラブチルチタネートを0.1重量部加え、圧力は0.07kPa以下、温度は260℃の条件で、攪拌トルクが11.0kgf・m(攪拌翼回転数11rpm)になった時点で反応を終了した。反応時間は2.1時間であり、得られたポリエーテルエステルアミドの色調YI値は60.9、表面固有抵抗値は10.1×1012Ωであった。このポリエーテルエステルアミドは外観色調に優れ、また、帯電防止剤の基本特性となる表面固有抵抗値も従来と同品質であった。
【0074】
[実施例2]
原料を留出液(3)に変更した以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。反応時間は2.2時間であり、得られたポリエーテルエステルアミドの色調YI値は48.2、表面固有抵抗値は9.8×1012Ωであった。このポリエーテルエステルアミドは実施例1と比較し、外観色調が向上した。また、表面固有抵抗値への影響もなかった。
【0075】
[実施例3]
原料を留出液(3)、およびジオール(3)に変更した以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。反応時間は2.2時間であり、得られたポリエーテルエステルアミドの色調YI値は37.9、表面固有抵抗値は10.0×1012Ωであった。このポリエーテルエステルアミドは実施例2と比較し、さらに外観色調が向上した。また、表面固有抵抗値への影響もなかった。
【0076】
[実施例4]
原料を留出液(4)、およびジオール(3)に変更した以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。反応時間は2.0時間であり、得られたポリエーテルエステルアミドの色調YI値は31.1、表面固有抵抗値は10.0×1012Ωであった。このポリエーテルエステルアミドは実施例3と比較し、さらに外観色調が向上した。また、表面固有抵抗値への影響もなかった。
【0077】
[比較例1]
原料を留出液(1)、およびジオール(1)に変更した以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。反応時間は2.4時間であり、得られたポリエーテルエステルアミドの色調YI値は85.6、表面固有抵抗値は9.4×1012Ωであった。このポリエーテルエステルアミドは実施例1と比較し、YI値が著しく上昇し、十分な外観色調を得ることができなかった。また、表面固有抵抗値への影響はなかった。
【0078】
[比較例2]
原料を留出液(1)、およびジオール(2)に変更した以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。反応時間は2.3時間であり、得られたポリエーテルエステルアミドの色調YI値は82.4、表面固有抵抗値は10.7×1012Ωであった。このポリエーテルエステルアミドは実施例1と比較し、YI値が大幅に上昇し、十分な外観色調を得ることができなかった。また、表面固有抵抗値への影響はなかった。
【0079】
以上の結果を表1に示す。
【0080】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)炭素原子数6以上のアミノカルボン酸または炭素原子数6以上のラクタム、もしくはジアミンとジカルボン酸から合成される合計炭素原子数が6以上の塩、
(b)次式(I)〜(IV)から選ばれる1種もしくは2種以上のジオール化合物
【化1】

(ただし式中、R、Rはエチレンオキシド基およびプロピレンオキシド基の少なくとも1つを示し、Yは共有結合、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜6のアルキリデン基、炭素数7〜17のシクロアルキリデン基、炭素数7〜17のアリールアルキリデン基、O、SO、SO、CO、S、CF、C(CF、またはNHを示し、X〜X12は水素、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン基、スルホン基、またはその金属塩を示す。)、および
(c)炭素原子数4〜20のジカルボン酸
を重合して得られるポリエーテルエステルアミドの製造方法であり、(a)成分の色調YI値が32以下のものを使用することを特徴とするポリエーテルエステルアミドの製造方法。
【請求項2】
(b)成分の酸価が1.4mgKOH/g以下のジオール化合物を使用することを特徴とする請求項1記載のポリエーテルエステルアミドの製造方法。
【請求項3】
(b)成分の過酸化物価が3.0meq/g以下のジオール化合物を使用することを特徴とする請求項1または2記載のポリエーテルエステルアミドの製造方法。
【請求項4】
(b)成分のカルボニル価が2.0μeq/kg以下のジオール化合物を使用することを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のポリエーテルエステルアミドの製造方法。
【請求項5】
反応中に留出した(a)成分を、再度原料として用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエーテルエステルアミドの製造方法。
【請求項6】
不活性ガス雰囲気下にある系内で留出した(a)成分を、再度原料として用いることを特徴とする請求項5記載のポリエーテルエステルアミドの製造方法。
【請求項7】
反応中に留出した(a)成分を、酸化物質除去処理した後、再度原料として用いることを特徴とする請求項5または6記載のポリエーテルエステルアミドの製造方法。

【公開番号】特開2009−84340(P2009−84340A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253499(P2007−253499)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】