説明

ポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体を含有する脂質膜構造体

【課題】ドラッグデリバリーシステムに適用した際の血中滞留性及び標的部位への選択的送達性に優れる新規な脂質膜構造体を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体を含有する脂質膜構造体。


(式中、L、Y、W、X1、X2、X3、OA、Z、m1、m2、m3、n1、n2及びn3は、本明細書の定義と同義である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体及び該誘導体を含有する脂質膜構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物等の生理活性物質の副作用を低減させ、薬物の標的部位への選択的送達性を向上させる目的で薬物送達システム(DDS)の開発が行われている。例えば、蛋白製剤等におけるポリペプチドを修飾する方法、リポソームあるいは親水性ポリマーと疎水性ポリマーとのコポリマーを用いた高分子ミセル等の微粒子で薬剤等を包含する方法等がある。初期のリポソーム製剤等においては、静脈内に投与した場合に血液中での滞留性が悪く、肝臓、脾臓等の細網内皮系組織(Reticulo-Endothelial System:以下「RES」という。)に捕捉されやすいという問題があった。このため、RESの存在は、RES以外の臓器へ医薬を送達させるターゲッティング型製剤や、長時間にわたって血液中に製剤を滞留させ、医薬の放出をコントロールする徐放型製剤としての微粒子性医薬キャリアを利用する際に大きな障害となっていた。
【0003】
このような問題を解決すべく、RESにおける捕捉の回避を意図して、膜表面を糖脂質、糖タンパク質、又はポリエチレングリコール脂質等で修飾し微小循環性を付与したリポソームが提案されている(国際公開第91/05546号パンフレット)。かかるリポソームによれば、血中での滞留性を向上させ、EPR効果(Enhanced Permeability and Retention Effect)を利用しリポソーム粒子を癌細胞の血管細胞からのみ透過させることで薬物を癌細胞の近くに集積させることが可能になる。しかしながら、かかるリポソームには、内包された薬物が迅速に放出されないという問題がある。
【0004】
近年、機能性リン脂質等を用いたリポソームが、前述の受動的な薬物の標的部位への到達ではなく、能動的に効率よく薬物を標的部位に到達させ得るとの報告がある(特開平04−346918号公報)。また、抗腫瘍剤等を標的部位に選択的に移行させるべく、抗腫瘍剤等の有効成分にアミノ酸からなるスペーサーを介してカルボキシアルキルプルランポリアルコールを結合させた薬物複合体とする方法が報告されている(特開平11−092405号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第91/05546号パンフレット
【特許文献2】特開平11−092405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの方法によれば、薬物の血中での滞留性や標的部位への輸送性等が改善されるが、薬物に多糖類等を直接共有結合させるため、薬物によっては活性の低下等の問題が生ずる。
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みなされたものであり、その解決しようとする課題はドラッグデリバリーシステムに適用した際の血中滞留性及び標的部位への選択的送達性に優れる新規な脂質誘導体及び脂質膜構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、ポリオキシアルキレン鎖を導入した脂質誘導体を得、これを含む脂質膜構造体をドラッグデリバリーシステムに適用すると、血中での長時間の滞留が可能になり、また標的部位においてポリオキシアルキレン鎖が効率的に切断されるため血中滞留性の調節が可能になることを見出した。更に詳細に研究を重ねた結果、ポリオキシアルキレン鎖の切断により脂質膜構造体の安定性が低下して内包された生理活性物質が放出されるため、標的部位への生理活性物質の効率的な送達及び放出が可能になることを見出した。これらの知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の内容を包含する。
[1]下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体。
【0010】
【化1】

【0011】
上記式中、
Lは、アミノ基、水酸基、カルボキシル基及びマレイミド基のうちの少なくとも1種の基を含有する脂肪族炭化水素、グリセロ脂質、スフィンゴ脂質及びステロールからなる群より選ばれる脂質に由来する残基、
Yは、−CONH−、−NHCO−、−OCONH−、−NHOCO−、−COO−、−OOC−、−CHNH−、−NHCH−、−S−CH<、>CH−S−、及び−O−からなる群より選ばれる基を含有する2価の基、
Wは、2〜10個のアミノ酸残基を含有するポリアミノ酸残基、
は、−NHCO−、又は−OOC−を含有する2価の基、
は、−OCONH−、−CONH−、−CHNH−、及び−NHC(O)NH−からなる群より選ばれる基を含有する2価の基、
は、>CH−S−、−NHCOO−、−COO−、−COS−、及び−O−からなる群より選ばれる基を含有する2価の基、
OAは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基、
Zは、水素原子又はメチル基、
m1、m2及びm3は、それぞれ独立して0〜5であり、かつ、1≦m1+m2+m3≦9を満たす整数、
n1、n2及びn3は、それぞれ独立して4〜800であり、かつ、4≦(n1×m1)+(n2×m2)+(n3×m3)≦2000を満たす正数、
をそれぞれ示す。
[2]上記Xが−OOC−を含有する2価の基であり、上記Xが−OCONH−、又は−CHNH−を含有する2価の基であり、上記Xが>CH−S−、又は−O−を含有する2価の基である、上記[1]記載のポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体。
[3]上記m1が0である、上記[2]記載のポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体。
[4]上記OAがオキシエチレン基である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体。
[5]上記m1、m2及びm3が1≦m1+m2+m3≦6を満たす整数であり、かつ、上記n1、n2及びn3が40≦(n1×m1)+(n2×m2)+(n3×m3)≦1000を満たす正数である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載のポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体。
[6]上記m1、m2及びm3が2≦m1+m2+m3≦6を満たす整数である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載のポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体。
[7]上記m1及びm3が0であり、上記m2が1であり、上記Xが−OCONH−を含有する2価の基であり、上記Yが−NHCO−を含有する2価の基である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載のポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体。
[8]上記Lがグリセロリン脂質に由来する残基である、上記[1]〜[7]のいずれかに記載のポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体。
[9]上記Wが2〜8個のグリシン残基を含有するポリアミノ酸残基である、上記[1]〜[8]のいずれかに記載のポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体。
[10]上記WがGly−Gly、Gly−Gly−Gly、Gly−Gly−Gly−Gly、Gly−Gly−Gly−Gly−Gly、又はGly−Gly−Gly−Gly−Gly−Glyで表される2〜6個のグリシン残基を含有するポリアミノ酸残基である、上記[1]〜[9]のいずれかに記載のポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体。
[11]上記WがPhe−Gly、Leu−Gly、又はTyr−Glyで表されるジペプチドを含有するポリアミノ酸残基である、上記[1]〜[10]のいずれかに記載のポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体。
[12]上記WがLys残基、Arg残基、Cys残基、Asp残基、Glu残基又はSer残基を含有するポリアミノ酸残基である、上記[1]〜[11]のいずれかに記載のポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体。
[13]上記[1]〜[12]のいずれかに記載のポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体を含有する、脂質膜構造体。
[14]上記ポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体の含有率が当該脂質膜構造体の総重量に対して0.1〜25重量%である、上記[13]記載の脂質膜構造体。
[15]脂質膜の構成成分としてホスファチジルエタノールアミンを含有する、上記[13]又は[14]記載の脂質膜構造体。
[16]上記ホスファチジルエタノールアミンがジオレオイルホスファチジルエタノールアミンである、上記[15]記載の脂質膜構造体。
[17]リポソームの形態である、上記[13]〜[16]のいずれかに記載の脂質膜構造体。
[18]生理活性物質を内包する、上記[17]記載の脂質膜構造体。
[19]上記生理活性物質がpH6以下で放出される、上記[18]記載の脂質膜構造体。
[20]上記[1]記載のポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体であって、Lがジオレオイルホスファチジルエタノールアミン残基であるポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体と、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンとを含有してなる脂質膜を有する、脂質膜構造体。
[21]Lがジオレオイルホスファチジルエタノールアミン残基である上記[1]記載のポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体と、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンとからなる脂質膜を有する、脂質膜構造体。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施例5〜7及び比較例1のリポソームのpHに対する内包蛍光色素の放出割合を示す図である。
【図2】図2は、実施例6のリポソームの血清中での安定性を示す図である。
【図3】図3は、実施例5〜6及び比較例2〜3のリポソームのパパイン処理後のpHに対する内包蛍光色素の放出割合を示す図である。
【図4】図4は、実施例8のリポソームのcathepsin Bへの感受性及びリポソームの崩壊性を示す図である。
【図5】図5は、実施例9及び比較例4〜5の抗癌剤(ドキソルビシン)封入リポソームの血中動態とリポソームの抗癌剤保持率を示す図である。
【図6】図6は、実施例9の抗癌剤(ドキソルビシン)封入リポソームの抗腫瘍効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明のポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体(以下、単に「脂質誘導体」という場合がある。)は、上記一般式(1)で表されるものである。
【0014】
上記一般式(1)において、Lは脂質残基を示す。かかる脂質残基は、アミノ基、水酸基、カルボキシル基及びマレイミド基のうちの少なくとも1種の基を含有する脂肪族炭化水素、グリセロ脂質、スフィンゴ脂質又はステロールに由来する残基である。ここで、本発明における「残基」とは、脂質構造に含まれるアミノ基、水酸基、カルボキシル基又はマレイミド基を除いた基をいう。
【0015】
アミノ基、水酸基、カルボキシル基及びマレイミド基のうちの少なくとも1種の基を含有する脂肪族炭化水素に由来する残基としては、飽和又は不飽和でも、また直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよい。その炭素数は、好ましくは8〜24、より好ましくは12〜20である。かかる脂肪族炭化水素に由来の残基としては、例えば、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イソステアリル基、オクタデセニル基、オクタデカジエニル基、ナノデシル基、エイコシル基、ドコシル基、ドコセニル基、テトラコシル基等が挙げられる。
【0016】
アミノ基、水酸基、カルボキシル基及びマレイミド基のうちの少なくとも1種の基を含有する脂肪族炭化水素としては、例えば脂肪酸、脂肪族アミン、脂肪族アルコール、及びそれらの誘導体が挙げられる。具体的には、脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキン酸、アラキドン酸等が挙げられ、好ましくはモノカルボン酸である。脂肪族アミンとしては、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オクタデセニルアミン、エイコシルアミン等が挙げられ、これらの脂肪族モノアミンが好適である。脂肪族アルコールとしては、オクチルアルコール、デシルアルコール、ドデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクタデシルアルコール、オクタデセニルアルコール、エイコシルアルコール等が挙げられ、これらの脂肪族モノアルコールが好適である。
【0017】
また、脂肪族アミンあるいは脂肪族アルコールに下記(e0)のような二価性試薬を反応させてマレイミド基含有脂質として用いることもできる。
【0018】
【化2】

【0019】
上記式中、Qは炭素数1〜9の炭化水素基(例えば、アルキレン基)、Uは水素原子又は−SONaを示す。
【0020】
グリセロ脂質としては、グリセロリン脂質、ジアシルグリセロール等が挙げられる。グリセロリン脂質しては、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン等が挙げられる。グリセロリン脂質の複数存在するアシル基の炭素数は、それぞれ独立に好ましくは8〜24、より好ましくは12〜20、特に好ましくは18である。かかるアシル基は、同一でも異なっていてもよく、また飽和又は不飽和でも、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。また、アシル基の種類は特に限定されることなく、通常は脂肪酸に由来するアシル基を好適に用いることができる。具体的には、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキン酸、ベヘン酸、エルカ酸、リグノセリン酸等の脂肪酸由来のアシル基が挙げられる。なお、上記炭素数が24を越える場合には、水相への分散性が悪く反応性が低下する傾向にある。また、上記炭素数が8より少ない場合には、精製工程での結晶性が悪く、目的物の純度が低下する傾向にある。グリセロ脂質の残基は、脂質構造にアミノ基、水酸基、カルボキシル基、マレイミド基が複数存在する場合、残基にアミノ基、水酸基、カルボキシル基及びマレイミド基のうちの少なくとも1種が残っていてもよい。
【0021】
スフィンゴ脂質としては、スフィンゴミエリンに代表されるスフィンゴリン脂質、スフィンゴ糖脂質等が挙げられる。また、それらの構成成分であるセラミド、スフィンゴシン等には、その誘導体等が含まれる。その誘導体としては、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール、セラミドホスホリルグリセロールホスファート等が挙げられる。また、スフィンゴシンと結合する脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキン酸、ベヘン酸、エルカ酸、リグノセリン酸等が挙げられる。
【0022】
ステロールとしては、例えば、コレステロール、コレスタノール等が挙げられる。
【0023】
Yは、−CONH−、−NHCO−、−OCONH−、−NHOCO−、−COO−、−OOC−、−CHNH−、−NHCH−、−S−CH<、>CH−S−、又は−O−を含有する2価の基である。好ましくは、−CONH−、−NHCO−、−OCONH−、−NHOCO−、−COO−、−OOC−、−NHCH−、又は−S−CH<を含有する2価の基である。かかるYは、例えば、脂質のアミノ基、水酸基、カルボキシル基又はマレイミド基と、ポリアミノ酸のアミノ基、カルボキシル基、水酸基又はチオール基との反応により形成される基であり、一般式(1)におけるL及びWの結合基として機能する。また、Yは前述した基を含有していれば炭化水素基等を有してもよく、特に限定されるものではない。以下、Yで表される2価の基を具体的に説明する。
【0024】
例えば、脂質がホスファチジルエタノールアミンである場合、かかる脂質のアミノ基と、ポリアミノ酸のC末端のカルボキシル基、あるいはポリアミノ酸がグルタミン酸残基又はアスパラギン酸残基を含有する場合のカルボキシル基との反応により形成される−CONH−、またかかる脂質に無水コハク酸、無水グルタル酸等の2塩基酸無水物を反応させてカルボキシル基を導入したものと、ポリアミノ酸のN末端のα−アミノ基、あるいはポリアミノ酸がリジン等の塩基性アミノ酸残基を含有する場合のε−アミノ基との反応により形成される−CO(CHCONH−、−CO(CHCONH−、更にはかかる脂質に上記(e0)で表される試薬を反応させてマレイミド基を導入したものと、ポリアミノ酸がシステイン残基を含有する場合のチオール基との反応により形成される下記式(a1)で表される2価の基等が挙げられる。なお、下記式中、Qは上記と同義である。
【0025】
【化3】

【0026】
また、例えば、脂質がコレステロール又はジアシルグリセロールである場合、かかる脂質の末端水酸基と、ポリアミノ酸のC末端、あるいはポリアミノ酸がグルタミン酸残基又はアスパラギン酸残基を含有する場合のカルボキシル基との反応により形成される−COO−、前述の末端水酸基をp−ニトロフェニルカーボネート等でカーボネート化したものと、ポリアミノ酸のN末端のα−アミノ基、又はポリアミノ酸がリジン等の塩基性アミノ酸残基を含有する場合のε−アミノ基との結合により形成される−OCONH−が挙げられる。また、前述の末端水酸基をプロピルアミン又はエチルアミンに転換したものと、ポリアミノ酸のC末端のカルボキシル基、あるいはポリアミノ酸がグルタミン酸残基又はアスパラギン酸残基を含有する場合のカルボキシル基との反応により形成される−CHCHNHCO−、−CHCHCHNHCO−、更には前述の脂質にマレイミド基を導入したものと、ポリアミノ酸がシステイン残基を含有する場合のチオール基との反応により形成される−S−CH<が挙げられる。
【0027】
Wは、2〜10個のアミノ酸残基を含有するポリアミノ酸残基である。かかるWは、生体内において加水分解酵素により切断される基として機能する。加水分解酵素としては、例えば腫瘍細胞及び炎症部位周辺に存在する酵素、プロテアーゼであれば特に限定されるものではない。例えば、カテプシン、パパイン、ペプシン、トリプシン、キモトリプシン等のエンドペプチダーゼであってもよい。Wで表されるポリアミノ酸残基としては、加水分解酵素によって切断されるものであれば特に限定されるものではないが、2〜8個のグリシン残基を含有するポリアミノ酸残基が好適である。具体的には、Gly−Gly、Gly−Gly−Gly、Gly−Gly−Gly−Gly(配列番号1)、Gly−Gly−Gly−Gly−Gly(配列番号2)、Gly−Gly−Gly−Gly−Gly−Gly(配列番号3)で表される2〜6個のグリシン残基を含有するポリアミノ酸残基が挙げられる。更には、Phe(フェニルアラニン)−Gly、Leu(ロイシン)−Gly、Tyr(チロシン)−Gly、Phe−Phe、Ala(アラニン)−Gly、Pro(プロリン)−Gly、Gly−Phe、Ser(セリン)−Glyで表されるジペプチドを含有するポリアミノ酸残基や、Lys(リジン)残基、Arg(アルギニン)残基、Cys(システイン)残基、Asp(アスパラギン酸)残基、Glu(グルタミン酸)残基、Ser(セリン)残基のいずれかを含有するポリアミノ酸残基が挙げられる。また、Gly−Phe−Gly、Gly−Gly−Phe−Gly(配列番号4)、Gly−Phe−Gly−Gly(配列番号5)、Phe−Gly−Gly−Gly(配列番号6)、Phe−Phe−Gly−Gly(配列番号7)、Gly−Gly−Gly−Phe−Gly(配列番号8)、Gly−Gly−Phe−Phe(配列番号9)、Gly−Gly−Gly−Phe(配列番号10)を含有するポリアミノ酸残基が挙げられる。
【0028】
Wで表されるポリアミノ酸残基が酵素で切断されることにより、リポソーム等の脂質膜構造体表面のポリオキシアルキレン鎖が脱離する。これにより、脂質膜構造体が環境に晒されて破壊し、生理活性物質が体内に放出される。例えば、生理活性物質を内包し、かつ本発明の脂質誘導体を配合させたリポソームを血中に投与した場合、腫瘍部位周辺に該リポソームが到達すると、ペプチダーゼによってポリアミノ酸残基が加水分解を受けてポリオキシアルキレン鎖が脱離し、リポソーム表面の水和層がなくなる。これにより、腫瘍部位での低いpH環境により膜構造を安定に保てなくなり、崩壊して内包された生理活性物質を遊離し得る、pH感受性のリポソームを得ることができる。また、前述したポリアミノ酸を使用することで、生理活性物質の遊離速度を調整することができる。
【0029】
さらに、Lys残基、Arg残基、Cys残基、Asp残基、Glu残基、Ser残基を含有するポリアミノ酸は、側鎖にアミノ基、チオール基、カルボキシル基、水酸基を有する。このため、これらのポリアミノ酸は、末端を変性したポリオキシアルキレンと反応することができる。これにより、ポリアミノ酸の末端(N末端及びC末端)だけでなく、側鎖にもポリオキシアルキレン鎖を付与することができるため、本発明の脂質誘導体に複数本のポリオキシアルキレン鎖を導入することが可能になる。よって、かかる脂質誘導体をリポソームとした場合には、1本のポリオキシアルキレン鎖を有するリポソームに比べて、2本以上のポリオキシアルキレン鎖を有するリポソームの方が安定性等に優れるようになるだけでなく、ポリアミノ酸鎖が酵素により切断された際に複数本のポリオキシアルキレン鎖がリポソーム表面から同時に外れるため、生理活性物質の遊離を一層促進することができる。
【0030】
(OA)n1、(OA)n2、(OA)n3は、それぞれ独立して炭素数2〜4のオキシアルキレン基を構成単位とするポリオキシアルキレン基を示す。オキシアルキレン基は直鎖状でも分岐状でもよく、またポリオキシアルキレン基が複数種類のオキシアルキレン基を有する場合には、ポリオキシアルキレン基はブロック状でもランダム状でもよい。
【0031】
m1、m2、m3は、それぞれ独立して0〜5であり、かつ、m1+m2+m3が1〜9を満たす整数である。m1、m2、m3は、リポソームの安定性及び生理活性物質の遊離促進の点から、m1+m2+m3の値が1〜6であることが好ましく、2〜6であることがより好ましい。なお、m1、m2及びm3の合計数は、脂質誘導体中のポリオキシアルキレン鎖の総数を示す。
【0032】
n1、n2及びn3は、アルキレンオキシドの平均付加モル数を意味する。n1、n2及びn3は、それぞれ独立して4〜800、好ましくは6〜227であり、かつ、(n1×m1)+(n2×m2)+(n3×m3)が4〜2,000、好ましくは8〜1,000、より好ましくは22〜1000、更に好ましくは40〜1000、特に好ましくは40〜500を満たす正数であることが望ましい。n1、n2及びn3が4よりも小さいと、脂質膜構造体に安定化を付与するための水和層が充分に保たれず、安定性が不充分となる。また、上記数式において上限値が2,000よりも大きいと、溶液にした場合に粘性が高く作業性が悪く取り扱いが困難になる。更に、脂質誘導体の分子中における、ポリオキシエチレン鎖の親水性部分と脂質の疎水性部分とのバランスが悪く、脂質膜構造体を形成した場合に膜構造からポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体が抜け落ちる可能性がある。
【0033】
Zは、水素原子又はメチル基であり、ポリオキシアルキレン基の末端基として機能する。
【0034】
は、−NHCO−、又は−OOC−を含有する2価の基を示す。かかるXは、例えば、ポリアミノ酸のC末端のカルボキシル基、あるいはポリアミノ酸がグルタミン酸残基又はアスパラギン酸残基を含有する場合の側鎖のカルボキシル基と、末端にアミノ基又は水酸基を有するポリオキシアルキレン化合物との反応により形成される2価の基である。Xとしては、前述した結合基を含有していれば直鎖又は環状の炭化水素基等を含有してもよく、特に限定されるものではない。Xとしては、下記式(b1)〜(b3)で表される基が好適である。
−OCHCHCHNHCO− (b1)、
−OCHCHNHCO− (b2)、
−OOC− (b3)
【0035】
は、−OCONH−、−CONH−、−CHNH−、及び−NHC(O)NH−からなる群より選ばれる基を含有する2価の基を示す。かかるXは、例えば、ポリアミノ酸のN末端のα−アミノ基、又はポリアミノ酸がリジン残基若しくはアルギニン残基を含有する場合の側鎖のε−アミノ基と、末端にカーボネート基、カルボキシル基若しくはその活性エステル基、イソシアネート基、又はアルデヒド基を有するポリオキシアルキレン化合物との反応により形成される2価の基である。Xとしては、前述した結合基を含有していれば直鎖又は環状の炭化水素基等を含有してもよく、特に限定されるものではない。Xとしては、下記式(c1)〜(c7)で表される基が好適である。
−OCONH− (c1)、
−OCOCHCHCONH− (c2)、
−OCOCHCHCHCONH− (c3)、
−OCHCONH− (c4)、
−O(CHCONH− (c5)、
−OCONH(CHNHCONH− (c6)、
−OCHCHCHNH− (c7)
【0036】
は、>CH−S−、−NHCOO−、−COO−、−COS−、及び−O−からなる群より選ばれる基を含有する2価の基を示す。かかるXとしては、例えば、ポリアミノ酸がシステイン残基を含有する場合のチオール基、又はポリアミノ酸がセリン残基を含有する場合の水酸基と、末端にマレイミド基を含有するポリオキシアルキレン化合物との反応により形成される2価の基、あるいはイソシアネート基、メタンスルホン酸基、トリフルオロエタンスルホン酸基、p−トルエンスルホン酸基、カルボキシル基又はグリシジル基を含有するポリオキシアルキレン化合物との反応により形成される2価の基が挙げられる。Xとしては、下記式(d1)〜(d4)で表される基が好適である。なお、下記式中、aは2又は3、bは2〜5である。
【0037】
【化4】

【0038】
次に、本発明のポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体の製造方法について説明する。本発明の脂質誘導体の製造方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法により製造することができる。
(i)ポリアミノ酸とポリオキシアルキレン化合物とを反応させた後に、更に脂質を反応させる方法。
(ii)ポリアミノ酸と脂質とを反応させた後に、更にポリオキシアルキレン化合物を反応させる方法。
【0039】
上記(i)及び(ii)のいずれの方法を採用してもよいが、通常(i)に記載の方法の方が、(ii)に記載の方法よりも反応性が高いことが多い。また、アミノ酸とポリオキシアルキレン化合物とを反応させた後、更に他のアミノ酸とペプチド結合させてポリアミノ酸を合成し、次いで脂質との反応を行ってもよい。なお、ポリアミノ酸とポリオキシアルキレン化合物との反応は、例えば、以下の製法1〜6に記載の方法により行うことができる。また、製法1〜6により得られるポリオキシアルキレン−ポリアミノ酸化合物と脂質との反応は、以下の製法7〜10に記載の方法により行うことができる。なお、ポリアミノ酸のアミノ基及びカルボキシル基は、合成工程において、「ペプチド合成の基礎と実験」(泉屋信夫著、丸善株式会社発行、1985年1月20日)に記載されるような保護基で保護して使用することができる。
【0040】
(製法1:Xが−NHCO−を含有する2価の基である場合)
ポリオキシアルキレン化合物として、例えば、(OA)n1、(OA)n2、(OA)n3で表されるポリオキシアルキレン基の末端が下記式(e1)又は(e2)で表されるアミノ基であるポリオキシアルキレンアミン化合物を使用することができる。
−OCHCHCHNH (e1)、
−OCHCHNH (e2)
【0041】
ポリアミノ酸としては、例えば、C末端にカルボキシル基を有するポリアミノ酸、あるいは側鎖にカルボキシル基を有するグルタミン酸残基又はアスパラギン酸残基を含有するポリアミノ酸を使用することができる。ポリアミノ酸のカルボキシル基は、脱水縮合剤と活性化剤とを用いて活性化エステルとして用いるか、あるいは1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド等の水溶性カルボジイミドを用いて活性化してもよい。
【0042】
脱水縮合剤としては、ポリアミノ酸のカルボキシル基同士を脱水縮合できるものであれば特に制限なく使用できる。このような脱水縮合剤としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド等のカルボジイミド誘導体が挙げられ、特にジシクロヘキシルカルボジイミドが好ましい。脱水縮合剤の使用量としては、ポリオキシアルキレンカルボン酸化合物の1.05〜5倍当量、好ましくは1.5〜2.5倍当量である。
【0043】
活性化エステルは、例えばポリアミノ酸と活性化剤とを脱水縮合剤の存在下で反応させることにより得ることができる。活性化剤の種類は特に限定されないが、例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N,N’−ジコハク酸イミドカーボネート、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、N−ヒドロキシフタルイミド、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムメチルサルフェート、イソブチルクロロホルメート等が挙げられる。これらの中では、N−ヒドロキシコハク酸イミドが好ましい。N−ヒドロキシコハク酸イミドの使用量は、ポリアミノ酸に対して0.1〜2倍当量である。これにより、収率を高めることができる場合がある。
【0044】
ポリオキシアルキレンアミン化合物とポリアミノ酸とを塩基性触媒の存在下、有機溶媒中で反応させることにより高純度で、上記2価の基を有するポリオキシアルキレン−ポリアミノ酸化合物を製造することができる。ポリオキシアルキレンアミン化合物の使用量は特に限定されるものではないが、ポリオキシアルキレンアミン化合物(A)とポリアミノ酸(B)との当量比(A:B)が1:1〜1:5であることが好ましい。
【0045】
反応に使用する塩基性触媒の種類は特に限定されないが、例えば、トリエチルアミン、酢酸アンモニウム等の窒素含有物質、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等のナトリウム塩が挙げられる。塩基性触媒の使用量は、例えば、ポリアミノ酸に対して1〜10倍当量、好ましくは1.2〜5倍当量である。反応温度は通常10〜90℃、好ましくは15〜50℃、さらに好ましくは20〜45℃である。10℃より低温では反応率が低い場合があり、90℃より高温では副反応物が生成する場合がある。反応時間は1時間以上、好ましくは2〜8時間である。
【0046】
反応に使用する有機溶媒としてエタノール等の水酸基を有する有機溶媒を使用すると、ポリアミノ酸の末端のカルボキシル基と反応する場合がある。このため、有機溶媒としては、水酸基等の反応性官能基を有しないものであれば特に制限なく使用することができる。かかる有機溶媒としては、例えば、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、又はこれらを含有する酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン及びトルエン等の混合溶媒が挙げられる。これらの中では、ポリアミノ酸を溶解しやすい点で、アセトニトリル、ジメチルホルムアミドが好ましい。
【0047】
反応終了後、以下の工程を行うことにより精製することができる。反応溶液から不溶物を濾過後、濾液を濃縮又は貧溶媒に投入して結晶化する等の方法により、ポリオキシアルキレン−ポリアミノ酸化合物の結晶を純度よく得ることができる。得られた結晶を溶解し、冷却又は貧溶媒を加えてポリオキシアルキレン−ポリアミノ酸化合物の結晶を析出させることにより、遊離のポリアミノ酸、脱水縮合剤、N−ヒドロキシコハク酸イミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド等を除去して精製することができる。この工程で使用する溶媒としては、得られた結晶を溶解し、冷却によってポリオキシアルキレン−ポリアミノ酸化合物の結晶を析出させることのできる溶媒、又は貧溶媒を加えることによりポリオキシアルキレン−ポリアミノ酸化合物を結晶化させることのできる溶媒が好ましい。
【0048】
得られた結晶を酢酸エチル等の溶媒に溶解後、吸着剤を添加して攪拌する等の方法により塩等の不純物を除去することが望ましい。吸着剤としては、アルカリ土類金属酸化物(例えば、酸化マグネシウム)、アルカリ土類金属水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム)、アルミニウム又はケイ素を含有する吸着剤(例えば、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化ケイ素)、活性炭等が挙げられる。これらの吸着剤は商業的に入手することができ、例えば、キョーワード200、キョーワード300、キョーワード500、キョーワード600、キョーワード700、キョーワード1000、キョーワード2000(以上、協和化学工業(株)製、商標)、トミックス−AD300、トミックス−AD500、トミックス−AD700(以上、冨田製薬(株)製、商標)等が挙げられる。吸着剤は、単独で又は2種以上を組み合せて使用することができる。
【0049】
吸着剤を用いて処理する温度は10〜85℃、好ましくは40〜70℃であり、処理時間は10分〜5時間、好ましくは30分〜3時間である。処理する温度が10℃未満ではポリオキシアルキレン−ポリアミノ酸化合物の結晶が析出してしまい、吸着剤を除去する場合にポリオキシアルキレン−ポリアミノ酸化合物も一緒に除去されて収率が低下する傾向にある。また、85℃を超えると、微量の水分の存在によって吸着剤処理中にポリオキシアルキレン−ポリアミノ酸化合物の加水分解等が起こる可能性がある。吸着剤の使用量は、処理する結晶100重量部に対して0.1〜200重量部、好ましくは1〜50重量部である。吸着剤処理後、濾過等の方法により吸着剤を除去した後、冷却するか、又は貧溶媒を用いて結晶化させることができる。好ましくは10℃以下に冷却して結晶化を行えば、良好な収率で結晶が得られる。
【0050】
上記工程で使用する溶媒量は結晶に対して1〜100容量倍であり、好ましくは2〜50容量倍である。再結晶した後、冷却するか、又は貧溶媒を用いて結晶化を行う。具体的な結晶化方法としては、以下の方法を挙げることができる。酢酸エチル、トルエン、クロロホルム等の溶媒に溶解した後、エーテル又は炭素数5〜8の脂肪族炭化水素の溶媒を添加することでポリオキシアルキレン−ポリアミノ酸化合物の結晶を析出させる。具体的には、酢酸エチルを用いて溶解後、ヘキサンを添加し結晶化させる方法が好ましい。炭素数5〜8の脂肪族炭化水素としては特に制限はないが、例えば、ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、3−メチルペンタン、ネオヘキサン、2,3−ジメチルブタン、ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、3−エチルペンタン、2,2−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、2,3,3−トリメチルブタン、オクタン、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタン、4−メチルヘプタン、3−エチルヘキサン、2,2−ジメチルヘキサン、2,3−ジメチルヘキサン、2,4−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,3−ジメチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキサン、2−メチル−3−エチルペンタン、3−メチル−3−エチルペンタン、2,2,3−トリメチルペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,2,3,3−テトラメチルブタン等を挙げることができる。これらの中では、ヘキサン、ヘプタンが好ましい。結晶の純度を更に向上させたい場合には、同様の晶析工程を数回繰り返すことにより、純度の一層優れたポリオキシアルキレン−ポリアミノ酸化合物を得ることができる。
【0051】
(製法2:Xが−CONH−を含有する2価の基である場合)
ポリオキシアルキレン化合物として、例えば、前述したポリオキシアルキレン基の末端が下記式(f1)〜(f4)で表されるカルボン酸であるポリオキシアルキレンカルボン酸化合物を使用することができる。
−OCOCHCHCOOH (f1)、
−OCOCHCHCHCOOH (f2)、
−OCHCOOH (f3)、
−O(CHCOOH (f4)
【0052】
これらの末端のカルボキシル基は、脱水縮合剤を用いて酸無水物としてもよく、また活性化剤を用いて活性化エステルとしてもよい。脱水縮合剤及び活性化剤としては、前述の製法1と同様の化合物が挙げられる。
【0053】
ポリアミノ酸としては、例えば、N末端にα−アミノ基を有するポリアミノ酸、又はε−アミノ基を有するリジン残基を含有するポリアミノ酸が挙げられる。上記ポリオキシアルキレンカルボン酸化合物とポリアミノ酸とを塩基性触媒の存在下、有機溶媒中で反応させることにより高い純度で、上記2価の基を有するポリオキシアルキレン−ポリアミノ酸化合物を製造することができる。ポリオキシアルキレンカルボン酸化合物の使用量は特に限定されるものではないが、ポリオキシアルキレンカルボン酸化合物(C)とポリアミノ酸(B)との当量比(C:B)が1:1〜1:5であることが好ましい。なお、その他反応条件、精製工程等については、前述の製法1と同様である。
【0054】
(製法3:Xが−OCONH−を含有する2価の基である場合)
ポリオキシアルキレン化合物として、例えば、前述したポリオキシアルキレン基の末端がカーボネート化されたポリオキシアルキレンカーボネート化合物を使用することができる。ポリオキシアルキレンカーボネート化合物としては、例えば、ポリオキシアルキレン−p−ニトロフェニルカーボネートが挙げられる。ポリアミノ酸としては、例えば、N末端にα−アミノ基を有するポリアミノ酸、又はε−アミノ基を有するリジン残基を含有するポリアミノ酸を使用することができる。ポリオキシアルキレンカーボネート化合物とポリアミノ酸とを塩基性触媒の存在下、有機溶媒中で反応させることにより高純度で、上記2価の基を有するポリオキシアルキレン−ポリアミノ酸化合物を製造することができる。ポリオキシアルキレンカーボネート化合物の使用量は特に限定されるものではないが、ポリオキシアルキレンカーボネート化合物(D)とポリアミノ酸(B)との当量比(D:B)が1:1〜1:5であることが好ましい。なお、反応条件及び精製工程については、前述の製法1と同様の方法により行うことができる。
【0055】
(製法4:Xが−CHNH−を含有する2価の基である場合)
ポリオキシアルキレン化合物としては、例えば、前述したポリオキシアルキレン基の末端がアルデヒド基であるポリオキシアルキレンアルデヒド化合物を使用することができる。ポリオキシアルキレンアルデヒド化合物としては、例えば、下記式(g1)で表されるアルデヒド基を有するポリオキシアルキレンアルデヒド化合物を使用することができる。なお、下記式中、Pはメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等のアルキレン基を示す。
−O−P−CHO (g1)
【0056】
ポリアミノ酸としては、例えば、N末端にα−アミノ基を有するポリアミノ酸、又はε−アミノ基を有するリジン残基を含有するポリアミノ酸を使用することができる。ポリオキシアルキレンアルデヒド化合物とポリアミノ酸とを還元剤の存在下、緩衝液中で反応させることにより高純度で、上記2価の基を有するポリオキシアルキレン−ポリアミノ酸化合物を製造することができる。ポリオキシアルキレンアルデヒド化合物の使用量は特に限定されるものではないが、ポリオキシアルキレンアルデヒド化合物(E)とポリアミノ酸(B)との当量比(E:B)が1:1〜1:5であることが好ましい。
【0057】
上記緩衝液としては、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス酸緩衝液等が好適に使用される。また、反応に関与しないアセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の有機溶媒を更に添加してもよい。反応時のpHとしてはpH2〜8.5、好ましくはpH3〜7である。反応温度は0〜90℃であり、反応時間は0.5〜20時間、好ましくは0.5〜4時間である。上記還元剤が存在しない場合は、シッフ塩基が形成される。シッフ塩基が形成された場合には、これをシアノ水素化ホウ酸ナトリウム等の還元剤を用いて還元処理を行い、2級アミノ基を形成させる。反応後は、透析、塩析、限外ろ過、イオン交換クロマトグラフィー、電気泳動、抽出、再結晶、吸着処理、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等の精製手段にて精製することができる。
【0058】
(製法5:Xが−OOC−を含有する2価の基である場合)
ポリオキシアルキレン化合物としては、例えば、前述したポリオキシアルキレン基の末端が水酸基であるポリオキシアルキレン化合物を使用することができる。ポリアミノ酸としては、例えば、C末端にカルボキシル基を有するポリアミノ酸、あるいは側鎖にカルボキシル基を有するグルタミン酸残基又はアスパラギン酸残基を含有するポリアミノ酸を使用することができる。ポリアミノ酸のカルボキシル基は、前述の製法2と同様の方法により活性化エステルとして使用するか、あるいは水溶性カルボジイミドを用いて活性化してもよい。反応条件及び精製条件については、前述の製法2と同様である。
【0059】
(製法6:Xが>CH−S−を含有する2価の基である場合)
ポリオキシアルキレン化合物として、例えば、前述したポリオキシアルキレン基の末端がマレイミド基であるポリオキシアルキレンマレイミド化合物を使用することができる。ポリオキシアルキレンマレイミド化合物としては、下記式(h1)〜(h3)で表されるマレイミド基を有するポリオキシアルキレンマレイミド化合物が挙げられる。なお、下記式中、aは2又は3、bは2〜5である。
【0060】
【化5】

【0061】
ポリアミノ酸としては、例えば、セリン残基由来のチオール基を有するポリアミノ酸、あるいはイミノチオラン等を用いてチオール基を導入したアミノ酸残基を含有するポリアミノ酸を使用することができる。上記ポリオキシアルキレンマレイミド化合物とポリアミノ酸とを緩衝液中で反応させることによりスルフィド結合が形成される。上記緩衝液としては、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、トリス酸緩衝液、酢酸緩衝液等の緩衝液が好ましい。製法4と同様に有機溶媒を添加しても良い。反応温度は特に限定されないが、好ましくは0〜80℃である。反応時間は0.5〜72時間が好ましく、更に好ましくは、1〜24時間である。
【0062】
(製法7:Yが−CONH−を含有する2価の基である場合)
脂質としては、ホスファチジルエタノールアミン等のアミノ基を含有するリン脂質を使用することができる。このホスファチジルエタノールアミンと、上記方法で得られたカルボキシル基を含有するポリオキシアルキレン−ポリアミノ酸化合物とを塩基性触媒の存在下、有機溶媒中で反応させることにより、上記2価の基を有するポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体を製造することができる。この反応は、通常脱水縮合剤を用いて行う。塩基性触媒の種類は特に限定されないが、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、酢酸アンモニウム等の窒素含有物質、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等のナトリウム塩が挙げられる。塩基性触媒の使用量は、例えば、ポリオキシアルキレン−ポリアミノ酸化合物の1.5〜10倍当量、好ましくは2〜5倍当量である。
【0063】
有機溶媒としてエタノール等の水酸基を有する有機溶媒を使用すると、ポリオキシアルキレン−ポリアミノ酸化合物のカルボキシル基と反応する場合がある。このため、有機溶媒としては、水酸基等の反応性官能基を有しないものであれば特に制限なく使用することができる。かかる有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、又はこれらの混合溶媒等を使用することができる。これらの中では、クロロホルム、トルエンが好ましい。なお、ポリオキシアルキレン−ポリアミノ酸化合物の種類によっては、緩衝液等の水溶液中でも反応を行うことができる。この場合、水溶性の脱水縮合剤として、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド等を使用してもよい。また、有機溶媒中の反応においても脱水縮合剤を使用することができる。脱水縮合剤としては、ポリオキシアルキレン−ポリアミノ酸化合物のカルボキシル基と、リン脂質のアミノ基とを脱水縮合できるものであれば特に制限はない。このような脱水縮合剤としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物が挙げられ、特にジシクロヘキシルカルボジイミドが好ましい。脱水縮合剤の使用量としては、例えばポリオキシアルキレン−ポリアミノ酸化合物に対して1.05〜5倍当量、好ましくは1.5〜2.5倍当量である。活性化剤を反応系中にポリオキシアルキレン−ポリアミノ酸化合物に対して0.1〜2倍当量加えることで、活性化エステル体として反応させることもできる。活性化剤の種類は特に限定されないが、例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N,N’−ジコハク酸イミドカーボネート、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、N−ヒドロキシフタルイミド、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムメチルサルフェート、イソブチルクロロホルメート等を使用することができる。
【0064】
反応温度は、通常20〜90℃の範囲であり、好ましくは40〜80℃である。反応時間は1時間以上、好ましくは2〜8時間である。20℃より低温では反応率が低く、90℃より高温では反応に使用するリン脂質のアシル基が加水分解する場合がある。
【0065】
(製法8:Yが−NHCO−を含有する2価の基である場合)
カルボキシル基を含有するリン脂質と、上記方法で得られたアミノ基を含有するポリオキシアルキレン−ポリアミノ酸化合物とを塩基性触媒の存在下、有機溶媒中で反応させることにより、上記2価の基を有するポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体を製造することができる。この反応は、通常脱水縮合剤を用いて行う。カルボキシル基を含有するリン脂質は、リン脂質とジカルボン酸無水物とを反応させることにより容易に製造することができる。上記ジカルボン酸無水物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テレフタル酸の無水物等を挙げることができる。ジカルボン酸無水物としては、分子内無水物、分子間無水物のいずれを用いてもよい。これらの中では、コハク酸及びグルタル酸の無水物、コハク酸又はグルタル酸の無水物が好ましい。
【0066】
カルボキシル基を含有するリン脂質と活性化剤との反応は、ポリオキシアルキレン化合物とジカルボン酸無水物との反応と同様に脱水縮合剤の存在下、カルボン酸と反応しない溶媒(例えば、クロロホルム、トルエン)中で反応温度15〜80℃、好ましくは25〜55℃で行うことができる。この場合、例えば、活性化剤をポリオキシアルキレン−ポリアミノ酸化合物の溶液に分散撹拌することにより行うことができる。活性化剤としては、上記活性化剤と同様のものを用いることができる。リン脂質とポリオキシアルキレン−ポリアミノ酸化合物との反応は、製法7と同様の条件で行うことができる。
【0067】
(製法9:Yが>CHS−を含有する2価の基である場合)
脂質として、ホスファチジルエタノールアミンの末端に下記式(j1)〜(j2)で表されるマレイミド基を有するリン脂質化合物を使用することができる。下記式中、bは2〜5である。
【0068】
【化6】

【0069】
ポリアミノ酸としては、セリン残基由来のチオール基を有するポリアミノ酸、あるいはイミノチオラン等を用いてチオール基を導入したアミノ酸残基を含有するポリアミノ酸等を使用することができる。上記リン脂質とポリアミノ酸とを緩衝液中で反応させることによりスルフィド結合が形成される。上記緩衝液としては、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、トリス酸緩衝液、酢酸緩衝液等が好適である。また、上記反応においては、製法4と同様に有機溶媒を添加してもよい。反応温度は特に限定されないが、好ましくは0〜80℃である。反応時間は好ましくは0.5〜72時間、更に好ましくは1〜24時間である。
【0070】
(製法10:Yが−OCONH−を含有する2価の基である場合)
脂質としては、例えば、末端がカーボネート化されたコレステロールカーボネート化合物を使用することができる。かかるコレステロールカーボネート化合物としては、例えば、コレステリル−p−ニトロフェニルカーボネートが挙げられる。また、ポリアミノ酸としては、例えば、N末端にα−アミノ基を有するポリアミノ酸、あるいはε−アミノ基を有するリジン残基を含有するポリアミノ酸を使用することができる。
【0071】
上記コレステロールカーボネート化合物とポリアミノ酸とを塩基性触媒の存在下、有機溶媒中で反応させることにより高純度のコレステロールカーボネート−ポリアミノ酸化合物を製造することができる。コレステロールカーボネート化合物の使用量は特に限定されるものではないが、コレステロールカーボネート化合物(F)とポリアミノ酸(B)との当量比(F:B)が1:1〜1:5であることが好ましい。反応条件及び精製工程については、前述の製法7と同様である。
【0072】
上記製造方法により得られるポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体の平均分子量は、1000〜90000が好ましく、1200〜90000がより好ましく、さらに好ましくは2500〜90000である。分子量が1000より小さい場合には、脂質膜構造体に安定化を付与するための水和層が充分に保たれず、安定性が不充分となる。また、90000よりも大きいと、溶液にした場合に作業性が悪く取り扱いが困難になる。更に、脂質膜構造体を形成した場合に膜構造からポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体が抜け落ちる可能性がある。
【0073】
次に、本発明の脂質膜構造体について説明する。本発明の脂質膜構造体は、上記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体を含有するものである。ここで、本発明における「脂質膜構造体」とは、両親媒性脂質の親水基が界面の水相側に向かって配列した膜構造を有する粒子を意味する。脂質膜構造体の形態は特に限定されないが、例えば、乾燥した脂質混合物の形態、水系溶媒に分散した形態、更にこれを乾燥させた形態や凍結させた形態等を挙げることができる。乾燥した脂質混合物の形態の場合には、例えば、脂質成分を一旦クロロホルム等の有機溶媒に溶解させ、次いでエバポレーターによる減圧乾固や噴霧乾燥機による噴霧乾燥を行うことで製造することができる。水系溶媒に分散した形態としては、一枚膜リポソーム、多重層リポソーム、O/W型エマルション、W/O/W型エマルション、球状ミセル、ひも状ミセル、不定型かつ層状の構造物等を挙げることができる。これらのなかでは、リポソームが好ましい。例えば、リポソームの場合、脂質膜構造体であるリポソームの全重量に対して、ポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体を0.1〜25重量%、好ましくは0.1〜20重量%配合して使用する。
【0074】
また、本発明における脂質膜構造体の構成成分の脂質としては、ホスファチジルコリン等のリン脂質を単独で使用してもよく、複数の脂質を含有する混合脂質を使用してもよい。ここで言う脂質膜構造体の構成成分とは、ポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体以外の構成成分のことを示す。脂質としては、複合脂質(例えば、リン脂質、糖脂質)、ステロール類、炭素数8〜24の飽和又は不飽和のアシル基を有する化合物が挙げられる。ここで、リン脂質としてはグリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質等が挙げられ、糖脂質としてはグリセロ糖脂質等が挙げられる。ステロール類とは、コレステロール、ジヒドロコレステロール、エルゴステロール、ラノステロール等を意味する。グリセロリン脂質としては、炭素数4〜24、好ましくは12〜20の飽和又は不飽和の直鎖若しくは分岐のアシル基を有する、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン等が挙げられる。また、卵黄レシチン又は大豆レシチンのような天然物由来の脂質を混合してもよい。炭素数8〜24のアシル基を有する化合物としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキン酸、ベヘン酸、エルカ酸、リグノセリン酸等が挙げられる。
【0075】
さらに、例えば、下記に示す組成比の混合脂質とすることもできる。ホスファチジルコリン/コレステロール/ホスファチジルグリセロールが20〜90/10〜60/2〜40(モル%)、好ましくは30〜60/20〜50/15〜25(モル%)である混合脂質。
【0076】
リポソームの構成成分の脂質として、酸性リン脂質、例えば親水性基の末端にカルボキシル基を含有するリン脂質を用いる場合には、低pH、例えばpH6以下、好ましくはpH5以下であって、カルボキシル基がプロトン化されるため、脂質膜表面の電荷がなくなり安定でなくなる。すなわち、pH感受性を示す。酸性リン脂質としては、例えば、リン脂質化合物とジカルボン酸無水物とを反応させることにより製造することができる。リン脂質化合物としては、天然リン脂質でも合成リン脂質であってもよい。天然リン脂質としては、例えば、大豆ホスファチジルエタノールアミン、卵黄ホスファチジルエタノールアミン等の天然ホスファチジルエタノールアミンが挙げられる。合成リン脂質としては、例えば、水素添加大豆ホスファチジルエタノールアミン、水素添加卵黄ホスファチジルエタノールアミン等の水素添加天然ホスファチジルエタノールアミンが挙げられる。さらに、ポリオキシアルキレン鎖含有リン脂質誘導体のアミノ酸部分が加水分解した時に、リン脂質化合物の末端がカルボキシ基となるポリオキシアルキレン鎖含有リン脂質誘導体を用いてリポソームを調製した場合、ポリオキシアルキレン鎖が切断されると、リポソーム表面の水和層がなくなり、リン脂質化合物の末端はカルボキシル基となる。このため、上記酸性リン脂質を用いた場合と同様に、リポソームはpH感受性を示し同等の効果が得られるようになる。
【0077】
また、リポソームの構成成分の脂質として、オレイン酸由来のアシル基を有するリン脂質、特にジオレオイルホスファチジルエタノールアミンを用いる場合には、ポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体として、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンを原料化合物に用いて製造されたものを使用することが望ましい。リポソームの主要構成成分がジオレオイルホスファチジルエタノールアミンである場合、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンが低pH、例えばpH6以下、好ましくはpH5以下でヘキサゴナル構造又は逆ミセル構造を形成しやすくなる。このため、リポソーム表面を覆っているポリオキシアルキレン鎖が切断されることにより、リポソーム表面の水和層がなくなり、リポソームの性質であるpH感受性を示すようになる。これにより、腫瘍部位等の標的部位でリポソームに内包された生理活性物質等を効率的に放出することができる。
【0078】
水系溶媒に分散した形態の脂質膜構造体の大きさは特に限定されないが、例えば、リポソームやエマルションの場合には粒子径が50nm〜5μmであり、球状ミセルの場合には粒子径が5nm〜100nmである。また、ひも状ミセルや不定型かつ層状の構造物の場合には、1層あたりの厚みが5nm〜10nmであり、このような層が複数層形成されたものである。なお、本発明において粒子径とは、動的光散乱法により測定したものをいう。
【0079】
水系溶媒(分散媒)の種類は特に限定されず、例えば、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝化生理食塩液等の緩衝液、生理食塩水、細胞培養用の培地等を使用することができる。本発明のポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体を水系溶媒に分散して用いる場合には、安定に分散された脂質膜構造体を得ることができるが、水の他にグルコース、乳糖、ショ糖等の糖水溶液、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコール等を加えてもよい。水系溶媒に分散した脂質膜構造体を安定に長期間保存するには、凝集等の物理的安定性の面から、水系溶媒中の電解質を極力低減することが望ましく、また窒素バブリングにより溶存酸素を除去することが望ましい。さらに、凍結乾燥保存や噴霧乾燥保存をする場合には、例えば、水系溶媒に分散した脂質膜構造体を凍結保存するに際に糖水溶液や多価アルコール水溶液を用いると長期保存が可能になる。水系溶媒の濃度は特に限定されるものではないが、例えば、糖水溶液においては、2〜20%(W/V)が好ましく、5〜10%(W/V)が更に好ましい。また、多価アルコール水溶液においては、1〜5%(W/V)が好ましく、2〜2.5%(W/V)が更に好ましい。緩衝液においては、緩衝剤の濃度が5〜50mMが好ましく、10〜20mMが更に好ましい。水系溶媒中の脂質膜構造体の濃度は特に限定されないが、水系溶媒中の脂質の合計濃度は、0.1〜500mMが好ましく、1〜100mMがさらに好ましい。
【0080】
脂質膜構造体が水系溶媒に分散した形態は、前述の乾燥した脂質混合物を水系溶媒に添加し、更にホモジナイザー等の乳化機、超音波乳化機、高圧噴射乳化機等により乳化することで製造することができる。また、リポソームを製造する方法としては特に限定されるものではなく、よく知られている方法、例えば逆相蒸発法等によっても製造することができる。脂質膜構造体の大きさを制御したい場合には、均一な孔径のメンブランフィルター等を用いて、高圧下でイクストルージョン(押し出し濾過)を行えばよい。
【0081】
水系溶媒に分散した脂質膜構造体を更に乾燥させる方法としては、通常の凍結乾燥や噴霧乾燥を挙げることができる。この場合、水系溶媒として、前述したように糖水溶液、好ましくはショ糖水溶液、乳糖水溶液を用いることができる。水系溶媒に分散した脂質膜構造体を製造した後に更に乾燥すると、脂質膜構造体の長期保存が可能となる。また、この乾燥した脂質膜構造体に医薬水溶液を添加すると、効率よく脂質混合物が水和され、医薬を効率よく脂質膜構造体に保持させることができる。
【0082】
脂質膜構造体に保持可能な生理活性物質としては、体の働きを調節する成分が挙げられ、その種類は特に限定されるものではない。生理活性物質としては、ビタミン、神経伝達物質、タンパク質、ポリペプチド、薬剤、遺伝子等が挙げられる。ビタミンとしては、例えば、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK等が挙げられる。タンパク質、ポリペプチドとしては、例えば、ホルモン、血清タンパク質、免疫グロブリン、インターロイキン、インターフェロン(−α、−β、−γ)、顆粒球コロニー刺激因子(α及びβ型)、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、血小板由来増殖因子、ホスホリパーゼ活性化タンパク質、インシュリン、モノクロナール、ポリクロナール抗体及びそれらのフラグメント等が挙げられる。薬剤としては、抗癌剤、抗真菌剤等が挙げられる。抗癌剤としては、例えば、パクリタキセル、アドリアマイシン、ドキソルビシン、シスプラチン、ダウノマイシン、マイトマイシン、ビンクリスチン、エピルビシン、メトトレキセート、5−フルオロウラシル等が挙げられる。抗真菌剤の種類は特に限定されるものではないが、例えば、アムホテリシンB、ナイスタチン、フルシトシン、ミコナゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール及びペプチド性抗真菌剤が挙げられる。遺伝子としては、例えば、オリゴヌクレオチド、DNA、RNA等が挙げられる。
【実施例】
【0083】
以下、本発明の実施例についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0084】
(実施例1)
メチルポリオキシエチレンカルバミル−グリシル−グリシル−グリシル−ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE-GGG-PEG2000)の合成
(1)メチルポリオキシエチレンカルバミル−グリシル−グリシル−グリシンの合成
メトキシポリエチレングリコール−p−ニトロフェニルカーボネート(商品名:SUNBRIGHT MENP-20H、重量平均分子量2,000、日本油脂(株)製)5g(2.5mmol)をアセトニトリル15mLに溶解した。この溶液に946mgのグリシル−グリシル−グリシンを水10mLに溶解させた水溶液を添加して攪拌し、更にトリエチルアミン0.5gを添加して室温で3時間攪拌した。反応終了後、ろ過にて不溶物を除去し、続いてエバポレーターにて減圧で溶剤を除去した。次いで、酢酸エチル50mLを加えて溶解し、硫酸ナトリウムを添加して攪拌した後、ろ過して脱水を行った。次いで、ろ液にヘキサン100mLを加えて0℃以下に冷却後、ろ過して粗結晶を得た。粗結晶を酢酸エチル50mLに溶解し、吸着剤としてキョーワード#2000(0.1g)、キョーワード#700(1g)を加え、60℃にて1時間攪拌した。吸着剤をろ過後、ヘキサン100mLを加えて冷却し、結晶化させた。結晶をろ過後、上記と同様の晶析を更にもう一回行い乾燥し、目的化合物3g(収率52.2%)を得た。
【0085】
なお、反応の進行及び生成物の同定は、シリカゲルプレートを用いた薄層クロマトグラフィー(TLC)によって行った。展開溶媒としては、クロロホルムとメタノールとの混合比(容量比)が85:15の混合溶媒を用い、ヨウ素蒸気にて発色させて、標準物質とのRf値の比較により物質の定性を行った。反応終点は、上記TLCにてRf値0.6付近に検出されるメトキシポリエチレングリコール−p−ニトロフェニルカーボネートのスポットと、Rf値0.1付近に検出されるグリシル−グリシル−グリシンのスポットとが、Rf0.35付近に検出されるスポットに変換したことにより確認を行った。生成物の確認は、H−NMR(400MHz、CDCl)より、メトキシポリエチレングリコール由来の末端メトキシのメチル基がδ:3.3ppm付近に、エチレングリコールのエチレン基がδ:3.5ppm付近に、またペプチド由来のメチレン基がδ:1.5ppm付近に、それぞれ検出されることにより、モノメトキシオキシエチレン鎖及びペプチド鎖の存在を確認した。
【0086】
(2)メチルポリオキシエチレンカルバミル−グリシル−グリシル−グリシル−ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンの合成
上記(1)で得られたメチルポリオキシエチレンカルバミル−グリシル−グリシル−グリシン2g(0.90mmol)をクロロホルム10mLに加えて40〜45℃で攪拌溶解した後、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン1.34g(1.80mmol)を添加して攪拌した。次いで、ジシクロヘキシルカルボジイミド1.86g(9.03mol)を添加し攪拌した後、更にトリエチルアミン27mg(0.27mmol)を添加し4時間反応させた。反応終了後、ろ過して不溶物を除去し、続いてろ液をエバポレーターにてクロロホルムを除去してクロロホルム2mLに再溶解し、以下の条件にてカラム分取し精製を行った。固定相にはWakogelC−100 150gを用い、移動相にはクロロホルムとメタノールとの混合溶媒を用いた。クロロホルム/メタノールの混合比(容量比)を95/5〜85/15まで変化させ、分画を行った。得られた画分を脱溶剤し、ヘキサン10mLを加えて結晶化し、ろ過乾燥を行って標記化合物400mgを得た。
【0087】
なお、反応の進行及び生成物の同定は、展開溶媒としてクロロホルム、メタノール及び水の混合比(容量比)が65:25:4の混合溶媒を用いたこと以外、上記と同様の薄層クロマトグラフィー(TLC)によって行った。反応の進行は、Rf値0.5付近に検出されるメチルポリオキシエチレンカルバミル−グリシル−グリシル−グリシンのスポットと、Rf値0.6付近に検出されるジオレオイルホスファチジルエタノールアミンのスポットとが、Rf0.75付近に検出されるスポットに変換したことにより確認した。生成物の確認は、H−NMR(400MHz、CDCl)より、メトキシポリエチレングリコール由来の末端メトキシのメチル基がδ:3.4ppm付近に、ポリオキシエチレン基がδ:3.5ppm付近に、またペプチド由来のメチレン基がδ:1.5ppm付近に、更にジオレオイルホスファチジルエタノールアミン由来のアシル基の末端メチル基がδ:0.9ppm付近に、それぞれ検出されることにより、モノメトキシオキシエチレン鎖、ペプチド鎖及びジオレオイルホスファチジルエタノールアミンの存在を確認した。また、MALDI-TOF/MS(BIFLEX III:BRUKER社製)分析により、得られた化合物の平均分子量は3100であることが確認された。
【0088】
(実施例2)
メチルポリオキシエチレンカルバミル−グリシル−リジン(メチルポリオキシエチレンカルバミル)−グリシル−グリシル−グリシル−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE-GGG-K(PEG2000)-G-PEG2000)の合成
(1)メチルポリオキシエチレンカルバミル−グリシル−リジン(メチルポリオキシエチレンカルバミル)−グリシル−グリシル−グリシルの合成
メトキシポリエチレングリコール−p−ニトロフェニルカーボネート(SUNBRIGHT MENP-20H、重量平均分子量2000、日本油脂(株)製)10g(5mmol)をアセトニトリル30mLに溶解し、この溶液に1.6gのグリシル−リジン−グリシル−グリシル−グリシン(配列番号11)を水18mLに溶解させた水溶液を添加して攪拌し、更にトリエチルアミン1gを添加して室温で3時間攪拌した。反応終了後、ろ過にて不溶物を除去し、続いてエバポレーターにて減圧で溶剤を除去した。次いで、酢酸エチル50mLを加えて溶解し、硫酸ナトリウムを添加して攪拌した後、ろ過して脱水を行った。次いで、ろ液にヘキサン100mLを加えて0℃以下に冷却後、ろ過して粗結晶を得た。粗結晶を酢酸エチル50mLに溶解し、合成例1と同様の方法により吸着剤処理を行い結晶化し、更に晶析を行って目的化合物6.2g(収率55%)を得た。
【0089】
なお、反応の進行及び生成物の同定は、シリカゲルプレートを用いた薄層クロマトグラフィー(TLC)によって行った。展開溶媒としては、クロロホルムとメタノールとの混合溶媒(混合比(容量比)が85:15)を用い、ヨウ素蒸気にて発色させて、標準物質とのRf値の比較により物質の定性を行った。反応終点は、上記TLCにてRf値0.6付近に検出されるメトキシポリエチレングリコール−p−ニトロフェニルカーボネートのスポットと、Rf値0.1付近に検出されるグリシル−リジン−グリシル−グリシル−グリシンのスポットとが、Rf0.35付近に検出されるスポットに変換したことにより確認した。生成物の確認は、H−NMR(400MHz、CDCl)より、メトキシポリエチレングリコール由来の末端メトキシのメチル基がδ:3.3ppm付近に、エチレングリコールのエチレン基がδ:3.5ppm付近に、またペプチド由来のメチレン基がδ:1.5ppm付近に、それぞれ検出されたことにより、モノメトキシオキシエチレン鎖及びペプチド鎖の存在を確認した。
【0090】
(2)メチルポリオキシエチレンカルバミル−グリシル−リジン(メチルポリオキシエチレンカルバミル)−グリシル−グリシル−グリシル−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンの合成
上記(1)で得られたメチルポリオキシエチレンカルバミル−グリシル−リジン(メチルポリオキシエチレンカルバミル)−グリシル−グリシル−グリシル4g(0.90mmol)をクロロホルム20mLに加えて、40〜45℃で攪拌溶解した後、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン1.34g(1.80mmol)を添加して攪拌した。次いで、ジシクロヘキシルカルボジイミド1.86g(9.03mol)を添加し攪拌した後、更にトリエチルアミン27mg(0.27mmol)を添加し4時間反応させた。反応終了後、ろ過して不溶物を除去し、続いてろ液をエバポレーターにてクロロホルムを除去してクロロホルム5mLに再溶解し、以下の条件にてカラム分取し精製を行った。固定相にはWakogelC−100 150gを用い、移動相にはクロロホルムとメタノールとの混合溶媒を用いた。クロロホルム/メタノールの混合比(容量比)を95/5〜85/15まで変化させ、分画を行った。得られた画分を脱溶剤し、ヘキサン20mLを加えて結晶化し、ろ過乾燥を行って標記化合物700mgを得た。
【0091】
なお、反応の進行及び生成物の同定は、展開溶媒としてクロロホルム、メタノール及び水の混合溶媒(混合比(容量比)が65:25:4)を用いたこと以外、上記と同様の方法により薄層クロマトグラフィー(TLC)によって行った。反応終点は、Rf値0.5付近に検出されるメチルポリオキシエチレンカルバミル−グリシル−リジン(メチルポリオキシエチレンカルバミル)−グリシル−グリシル−グリシルのスポットと、Rf値0.6付近に検出されるジステアロイルホスファチジルエタノールアミンのスポットとが、Rf0.75付近に検出されるスポットに変換したことにより確認した。生成物の確認は、H−NMR(400MHz、CDCl)より、メトキシポリエチレングリコール由来の末端メトキシのメチル基がδ:3.4ppm付近に、ポリオキシエチレン基がδ:3.5ppm付近に、またペプチド由来のメチレン基がδ:1.5ppm付近に、更にジオレオイルホスファチジルエタノールアミン由来のアシル基の末端メチル基がδ:0.9ppm付近に、それぞれ検出されたことにより、モノメトキシオキシエチレン鎖、ペプチド鎖及びジステアロイルホスファチジルエタノールアミンの存在を確認した。また、MALDI-TOF/MS(BIFLEX III:BRUKER社製)分析により、得られた標記化合物の平均分子量は5250であることを確認した。
【0092】
(実施例3)
メチルポリオキシエチレンカルバミル−システイン(メチルポリオキシエチレンマレイミド)−グリシル−グリシル−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE-GGC(-PEG2000)-PEG5000)の合成
(1)メチルポリオキシエチレンカルバミル−システインの合成
L−シスチン2.5gに0.1M、pH9.5のホウ酸緩衝液150mLを加えて完全に溶解するまで攪拌を行った。メトキシポリエチレングリコール−p−ニトロフェニルカーボネート(商品名:SUNBRIGHT MENP-50H、平均分子量5000、日本油脂(株)製)50g(10mmol)を水50mLに溶解し、先のL−シスチン溶液に加え、pHを9.5に保ち室温で2時間反応を行った。反応終了後、希塩酸にてpH5.5に調整し、2℃に冷却した。次いで、不溶物をろ過して除去し、ろ液を透析チューブを用いて2Lのイオン交換水に対して5回透析を行った。透析終了後、pH7.5に調整し溶液を2℃に冷却し、1,4−ジチオスレイトール2.8gを添加し還元を行った。還元後、1.5%酢酸水溶液を用いて透析を行い、凍結乾燥してメチルポリオキシエチレンカルバミル−システインの結晶25gを得た。
【0093】
(2)メチルポリオキシエチレンカルバミル−システイン(メチルポリオキシエチレンマレイミド)の合成
上記(1)で得られたメチルポリオキシエチレンカルバミル−システイン5gを生理食塩緩衝液(PBS)50mLに溶解し、メトキシポリエチレングリコール−プロピルマレイミド(商品名:SUNBRIGHT ME-020MA、平均分子量2,000、日本油脂(株)製)2gを添加し、室温で8時間反応させた。反応後、pH2に調整し、更に食塩を添加して溶解し20%w/w水溶液とした。次いで、クロロホルム50mLを加えて抽出した後、エバポレーターにて脱溶剤し、酢酸エチルで再溶解した。次いで、ヘキサンを加えて結晶化し、ろ過にてメチルポリオキシエチレンカルバミル−システイン(メチルポリオキシエチレンマレイミド)の結晶4.5gを得た。
【0094】
(3)メチルポリオキシエチレンカルバミル−システイン(メチルポリオキシエチレンマレイミド)−グリシル−グリシルの合成
上記(2)で得られたメチルポリオキシエチレンカルバミル−システイン(メチルポリオキシエチレンマレイミド)4gをクロロホルム80mLに溶解し、N−ヒドロキシコハク酸イミド0.1gを添加して30分攪拌した。更にDCCを0.25g添加して2時間室温で攪拌した。反応後、ろ過にて生成したDCUを除去し、エバポレーターで脱溶剤した。次いで、酢酸エチルとヘキサンを用いて晶析を3回行った後、得られた結晶を乾燥した。グリシル−グリシル50mgを水1mLに加えて攪拌し、更にトリエチルアミン25mgを添加した。この溶液に、上記結晶2.5gをアセトニトリル3mLに溶解した溶液を滴下しながら添加し、室温にて3時間反応させた。反応後、濃縮脱水し、酢酸エチル及びヘキサンを用いて晶析を行い乾燥して結晶1.75gを得た。
【0095】
(4)メチルポリオキシエチレンカルバミル−システイン(メチルポリオキシエチレンマレイミド)−グリシル−グリシル−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンの合成
上記(3)で得られたメチルポリオキシエチレンカルバミル−システイン(メチルポリオキシエチレンマレイミド)−グリシル−グリシル1.5g(0.2mmol)をクロロホルム10mLに加えて、40〜45℃で攪拌溶解した。更にジステアロイルホスファチジルエタノールアミン0.5g(0.675mmol)を添加して攪拌した、次いで、ジシクロヘキシルカルボジイミド0.7g(3.4mmol)を添加し攪拌した後、更にトリエチルアミン10mg(0.1mmol)を添加し4時間反応させた。反応後、ろ過して不溶物を除去し、ろ液をエバポレーターにてクロロホルムを除去し、続いてクロロホルム5mLに再溶解し、以下の条件にてカラム分取し精製を行った。固定相にはWakogelC−100を100g用い、移動相にはクロロホルムとメタノールとの混合溶媒を用いた。クロロホルム/メタノールの混合比(容量比)は95/5〜85/15まで変化させ、分画を行った。得られた画分を脱溶剤し、ヘキサン20mLを加えて結晶化し、ろ過乾燥を行って標記化合物500mgを得た。
【0096】
なお、反応の進行及び生成物の同定において、展開溶媒としてクロロホルム、メタノール及び水の混合溶媒(混合比(容量比)が65:25:4)を用いたこと以外は、上記と同様の方法により薄層クロマトグラフィー(TLC)によって行った。反応終点は、Rf値0.5付近に検出されるメチルポリオキシエチレンカルバミル−システイン(メチルポリオキシエチレンマレイミド)−グリシル−グリシルのスポットと、Rf値0.6付近に検出されるジステアロイルホスファチジルエタノールアミンのスポットとが、Rf0.75付近に検出されるスポットに変換したことにより確認した。生成物の確認は、H−NMR(400MHz、CDCl)より、メトキシポリエチレングリコール由来の末端メトキシのメチル基がδ:3.4ppm付近に、ポリオキシエチレン基がδ:3.5ppm付近に、またペプチド由来のメチレン基が1.5ppm付近に、更にジステアロイルホスファチジルエタノールアミン由来のアシル基の末端メチル基がδ:0.9ppm付近に、それぞれ検出されたことにより、モノメトキシオキシエチレン鎖、ペプチド鎖及びジステアロイルホスファチジルエタノールアミンの存在を確認した。また、MALDI-TOF/MS(BIFLEX III:BRUKER社製)分析により、得られた標記化合物の平均分子量は7700であることを確認した。
【0097】
(実施例4)
メチルポリオキシエチレンカルバミル−グリシル−グリシル−グリシル−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE-GGG-PEG2000)の合成
実施例1の(1)で得られたメチルポリオキシエチレンカルバミル−グリシル−グリシル−グリシン2gとジステアロイルホスファチジルエタノールアミン1.35gを用いて実施例1と同様にして反応した後、不溶物をろ過して除去し、エバポレーターにてクロロホルムを除去した。次いで、酢酸エチルに溶解し、ヘキサンを添加して氷水中で冷却して結晶化し、ろ過して結晶を得た。そして、再度同様の晶析を行い、得られた結晶にヘキサンを加えて攪拌し、ろ過乾燥を行って標記化合物1.5gを得た。
なお、反応の進行及び生成物の同定は、実施例1と同様に行った。
【0098】
(実施例5〜7及び比較例1〜3)
(リポソームの製造及び膜安定性の評価)
以下の方法により、リポソーム溶液を調製した後、その膜安定性を評価した。
(1)リポソーム溶液の調製
実施例1で得られたメチルポリオキシエチレンカルバミル−グリシル−グリシル−グリシル−ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE−GGG−PEG2000)と、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)と、メチルポリオキシエチレンカルバミル−ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE−PEG2000)とを用いて、表1に示す配合割合の組成物をナス型フラスコに測り取り、クロロホルムに溶解した。次いで、ロータリーエバポレーターにて脱溶剤し、フラスコの内壁に脂質の薄膜を形成させた。減圧下にて溶剤の除去を十分に行った後、蛍光色素のHPTSとそのクエンチャー(消光剤)であるDPXをそれぞれ15.731mg/mL、12.665mg/mLとなるようにTris緩衝液(pH10)2mLに溶解させ,この2mLを脂質薄膜に添加し、ボルテックスミキサーで分散させた。この分散液を種々の孔径のポリカーボネートメンブレンフィルターを用いてサイジング(0.4μm×3回、0.2μm×3回、0.1μm×3回、0.1μm(2枚重ね)×3回)を行い、リポソーム溶液を得た。
【0099】
【表1】

【0100】
リポソーム分散液をゲル濾過(セファデックスG−50;移動相は生理食塩水)して、ボイドボリュームに溶出したリポソーム画分を採取し、リポソーム溶液とした。粒子径については、上記リポソーム溶液を取って動的光散乱法(粒度測定装置:NICOMP Model 370、Particle Sizing System製)にて測定した。その結果、いずれのリポソームも、その粒子径は95〜115nmであった。得られたリポソーム溶液を室温にて1か月間放置した。1か月後のリポソーム溶液の分散状態を確認したところ、脂質であるDOPEのみを添加したリポソーム溶液(比較例1)は安定ではなく沈降が見られたが、その他のリポソーム溶液は目視では変化が認められず、均一なリポソーム溶液であった。
【0101】
(2)リポソームの膜安定性試験
pH5、6、7、8、9の各緩衝液中で、実施例5〜7及び比較例1のリポソーム溶液について37℃、1時間インキュベーションを行った。インキュベーション後、一部を採取しpH10の緩衝液に添加して希釈し、蛍光強度を測定器(F-4500、Hitachi社製)で測定した。そして、蛍光色素(HPTS)のリポソームからの漏れ(リポソームの崩壊度)を測定し、膜安定性を評価した。その結果を図1に示す。図1に示したように、DOPE−GGG−PEG2000をリポソームに添加することにより、pHの違いによるリポソームの崩壊が認められず、pH感受性が抑制されていることが確認された。他方、DOPEのみを添加したリポソームは、中性領域より低いpHでリポソームの崩壊が認められ、pH感受性が確認された。このことから、DOPE−GGG−PEG2000を添加したリポソームは、通常の状態では、その分子を構成するポリオキシアルキレン鎖によって水溶液中での安定性が増大されていることが確認された。
【0102】
(3)血液中での安定性試験
実施例5〜6及び比較例2〜3で得られたリポソームを、血清中37℃でインキュベーションし、0、1、3、4、8、24時間経過後にそれぞれの一部を採取し、pH10の緩衝液に添加して希釈した。そして、蛍光強度を測定することにより、蛍光色素(HPTS)のリポソームからの漏れ(リポソームの崩壊度)を測定した。実施例6で得られたリポソームの測定結果を図2に示す。実施例5及び比較例2〜3についても同様の結果が得られたことから、ヒト、ウシの血清中では安定であり、リポソームの崩壊が見られないことが確認された。
【0103】
(4)リポソーム溶液の酵素感受性及びリポソームの崩壊性試験
実施例5〜6及び比較例2〜3で得られたリポソームを、papain(2mg/mL)、reduced glutathione(5mM)、EDTA(1mM)共存下、37℃で1時間インキュベーションした。インキュベーション終了後、一部を採取しpH10の緩衝液に添加して希釈し、蛍光強度を測定することにより蛍光色素(HPTS)のリポソームからの漏れ(リポソームの崩壊度)を測定した。その結果を図3に示す。図3に示したように、実施例5〜6のリポソームではpHに依存した内包蛍光色素の放出が観察されたが、比較例2〜3のリポソームでは認められなかった。
【0104】
(実施例8)
リポソーム溶液の異なる酵素への感受性及びリポソームの崩壊性の評価
DOPEのみを用いて、上記(1)と同様の方法により粒子径を約100nmに揃えた蛍光色素封入リポソーム溶液を得た。得られたリポソーム溶液に、リポソームに対してモル比で1.5、2.5、5.0%となるように、DOPE−GGG−PEG2000をTris緩衝液(pH10)に溶解させて添加し、室温で1時間インキュベーションしリポソーム溶液とした。
【0105】
上記のようにして得られた0.5mMリポソーム溶液(100μL)をcathepsin B(CB, 2.5units/mL, 6.4μM)を含んだ1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)と、cathepsin Bを含んでいない同緩衝液(900μL)に添加し、これらを37℃で1時間及び24時間インキュベーションした。
【0106】
反応液100μLを2mLのTris緩衝液(pH10)に添加し、この溶液中の蛍光強度を上記(2)と同様の方法により測定し、リポソームからの蛍光色素の崩壊度を求めた。その結果を図4に示す。図4に示したように、酵素非存在下(buffer)に比べ、酵素存在下では顕著な内封物の放出が観察された。また、この放出はインキュベーション時間に依存して増加することが確認された。
【0107】
(実施例9及び比較例4〜5)
(1)抗癌剤(ドキソルビシン)封入リポソームの血中動態とリポソームの抗癌剤保持率の評価
実施例4で得られたメチルポリオキシエチレンカルバミル−グリシル−グリシル−グリシル−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE−GGG−PEG2000)、又はメチルポリオキシエチレンカルバミル−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE−PEG2000)と、卵黄ホスファチジルコリン(EPC)又は水素添加卵黄ホスファチジルコリン(HEPC)と、コレステロールとを用いて、以下の表2に示す配合割合の組成物をナス型フラスコに測り取り、蛍光色素の代わりにドキソルビシンを用いて上記(1)と同様の方法により実施例9及び比較例4〜5の各リポソーム溶液を得た。リポソーム自体の血中動態を追跡するために40μCi/μmolのH-cholesterylhexadecylether(H-CHE)を添加した。なお、ドキソルビシンは硫酸アンモニウム勾配法により封入した(0.2mgドキソルビシン/mg lipid)。
【0108】
次いで、雄性ddYマウスに尾静脈から各リポソームを投与(25mg lipid/kg)し、2分、30分、1時間、2時間、4時間、8時間、24時間後に血液を採取して、血液中の放射活性を測定することによりリポソーム自体の濃度を得、また蛍光法によりドキソルビシンを測定することによりその時点でのドキソルビシン濃度を得た。リポソームから漏出したドキソルビシンは速やかに様々な組織に分布するため、本法で得られたドキソルビシン濃度は、リポソーム中に保持されているドキソルビシン量を反映するものと考えられる。よって、各測定点におけるリポソーム濃度及びドキソルビシン濃度を求めることにより、ドキシルビシン保持率を求めた。その結果を図5に示す。図5に示したように実施例8のDSPE−GGG−PEG2000を配したリポソームは、DSPE−PEG2000を配合したリポソームと同等の血中動態を示すことが確認された。また、ドキソルビシン保持に関しても、比較例5と同等であり、添加されたDSPE−GGG−PEG2000が血中でほとんど切断されず、リポソームを十分保護していることが確認された。さらに、この実験系ではDSPE−GGG−PEG2000は、リポソームの薬物放出性に影響を与えないことが確認された。
【0109】
【表2】

【0110】
(2)抗癌剤(ドキソルビシン)封入リポソームの抗腫瘍効果
雄性C57BL/6マウス背部皮下にLewis lung cancer(5×10)を移植し、移植後13日後に、実施例9、比較例4及び5のドキソルビシン封入リポソームを尾静脈より投与(5mgドキソルビシン/kg)し、がんの増殖をモニターした。その結果を図6に示す。図6に示したようにDSPE−GGG−PEG2000配合したリポソームが最も高い抗腫瘍性を示した。
【0111】
以上の結果から、本発明のリポソームは、通常状態では安定であるが、腫瘍部位等では酵素の働きを受けて、ポリオキシアルキレン鎖が切断されることにより、リポソームに内包される生理活性物質が遊離することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明によれば、新規なポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体が提供される。また、本発明の脂質膜構造体は、上記脂質誘導体を含有することでドラッグデリバリーシステムに適用した際の脂質膜構造体の安定性が向上し、また標的部位におけるポリオキシアルキレン鎖の効率的な切断が可能になるため血中滞留性を調節することができる。更に、ポリオキシアルキレン鎖が切断されて脂質膜構造体の表面を覆う水和層が喪失することにより脂質膜構造体の構造を安定に保てなくなり、加えてpH感受性等の性質を示すことにより脂質膜構造体が崩壊し、内包された生理活性物質が放出される。その結果、生理活性物質の標的部位への選択的送達性が向上し、ひいては過剰投与による副作用の低減にも寄与することができる。
【0113】
なお、本出願は、日本で出願された特願2005−043196を基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体を含有する、脂質膜構造体。
【化1】

(式中、
Lは、アミノ基、水酸基、カルボキシル基及びマレイミド基のうちの少なくとも1種の基を含有するグリセロ脂質、スフィンゴ脂質及びステロールからなる群より選ばれる脂質に由来する残基、
Yは、−CONH−、−NHCO−、−OCONH−、−NHOCO−、−COO−、−OOC−、−CHNH−、−NHCH−、−S−CH<、>CH−S−、及び−O−からなる群より選ばれる基を含有する2価の基、
Wは、2〜10個のアミノ酸残基を含有するポリアミノ酸残基、
は、−NHCO−、又は−OOC−を含有する2価の基、
は、−OCONH−、−CONH−、−CHNH−、及び−NHC(O)NH−からなる群より選ばれる基を含有する2価の基、
は、>CH−S−、−NHCOO−、−COO−、−COS−、及び−O−からなる群より選ばれる基を含有する2価の基、
OAは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基、
Zは、水素原子又はメチル基、
m1、m2及びm3は、それぞれ独立して0又は1であり、かつ、1=m1+m2+m3を満たす整数、
n1、n2及びn3は、それぞれ独立して4〜800である正数、
をそれぞれ示す。)
【請求項2】
前記Xが−OOC−を含有する2価の基であり、前記Xが−OCONH−、又は−CHNH−を含有する2価の基であり、前記Xが>CH−S−、又は−O−を含有する2価の基である、請求項1記載の脂質膜構造体。
【請求項3】
前記m1が0である、請求項2記載の脂質膜構造体。
【請求項4】
前記OAがオキシエチレン基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の脂質膜構造体。
【請求項5】
前記n1、n2及びn3がそれぞれ独立して40〜800である正数である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の脂質膜構造体。
【請求項6】
前記m1及びm3が0であり、前記m2が1であり、前記Xが−OCONH−を含有する2価の基であり、前記Yが−NHCO−を含有する2価の基である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の脂質膜構造体。
【請求項7】
前記Lがグリセロリン脂質に由来する残基である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の脂質膜構造体。
【請求項8】
前記Wが2〜8個のグリシン残基を含有するポリアミノ酸残基である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の脂質膜構造体。
【請求項9】
前記WがGly−Gly、Gly−Gly−Gly、Gly−Gly−Gly−Gly、Gly−Gly−Gly−Gly−Gly、又はGly−Gly−Gly−Gly−Gly−Glyで表される2〜6個のグリシン残基を含有するポリアミノ酸残基である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の脂質膜構造体。
【請求項10】
前記WがPhe−Gly、Leu−Gly、又はTyr−Glyで表されるジペプチドを含有するポリアミノ酸残基である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の脂質膜構造体。
【請求項11】
前記WがLys残基、Arg残基、Cys残基、Asp残基、Glu残基又はSer残基を含有するポリアミノ酸残基である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の脂質膜構造体。
【請求項12】
前記ポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体の含有率が当該脂質膜構造体の総重量に対して0.1〜25重量%である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の脂質膜構造体。
【請求項13】
脂質膜の構成成分としてホスファチジルエタノールアミンを含有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の脂質膜構造体。
【請求項14】
前記ホスファチジルエタノールアミンがジオレオイルホスファチジルエタノールアミンである、請求項13記載の脂質膜構造体。
【請求項15】
リポソームの形態である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の脂質膜構造体。
【請求項16】
生理活性物質を内包する、請求項15記載の脂質膜構造体。
【請求項17】
前記生理活性物質がpH6以下で放出される、請求項16記載の脂質膜構造体。
【請求項18】
Lがジオレオイルホスファチジルエタノールアミン残基であるポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体と、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミンとを含有してなる脂質膜を有する、請求項1記載の脂質膜構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−107015(P2012−107015A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−282369(P2011−282369)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【分割の表示】特願2007−503802(P2007−503802)の分割
【原出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(304020292)国立大学法人徳島大学 (307)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】