説明

ポリオキシメチレンジメチルエーテルをメタノールおよびホルムアルデヒドから製造する方法

次の工程:a)ホルムアルデヒド水溶液およびメタノールを反応器中に供給し、ホルムアルデヒド、水、メチレングリコール(MG)、ポリオキシメチレングリコール(MGn>1)、メタノール、ヘミホルマール(HF)、メチラール(POMDMEn=1)およびポリオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn>1)を含有する混合物aに変換する工程;b)反応混合物aを第1の蒸留塔中に供給し、低沸点留分b1とホルムアルデヒド、水、メタノール、ポリオキシメチレングリコール、ヘミホルマールおよびポリオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn>1)を含有する高沸点留分b2とに分離する工程;c)高沸点留分b2を第2の蒸留塔中に供給し、ホルムアルデヒド、水、メチレングリコール、ポリオキシメチレングリコール、メタノール、ヘミホルマール、ジオキシメチレングリコールジメチルエーテル、トリオキシメチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn=2,3,4)を含有する低沸点留分c1と高沸点留分c2とに分離する工程;d)低沸点留分c1を第3の蒸留塔中に供給し、低沸点留分d1と本質的にホルムアルデヒド、水、メチレングリコール、ポリオキシメチレングリコール、トリオキシメチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn=3,4)からなる高沸点留分d2とに分離する工程;e)高沸点留分d2を相分離装置中に供給し、本質的にホルムアルデヒド、水、メチレングリコールおよびポリオキシメチレングリコールからなる水相e1とトリオキシメチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn=3,4)を含有する有機相e2とに分離する工程;f)有機相e2を第4の蒸留塔中に供給し、本質的にホルムアルデヒド、水、メチレングリコールおよびポリオキシメチレングリコールからなる低沸点留分f1と本質的にトリオキシメチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn=3,4)からなる高沸点留分f2とに分離する工程でホルムアルデヒドとメタノールとを反応させ、引続きこの反応混合物を蒸留により後処理することにより、トリオキシメチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn=3,4)を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオキシメチレンジメチルエーテルの製造法に関する。
【0002】
ポリオキシメチレンジメチルエーテルは、一般式
CH3O(CH2O)nCH3
〔式中、nは1以上の数を表わす〕で示される同族列である。メチラールの同族列の骨格分子がCH3O(CH2O)CH3(n=1)であるように、ポリオキシメチレンジメチルエーテルは、アセタールである。このポリオキシメチレンジメチルエーテルは、メタノールを水性ホルムアルデヒドと酸触媒の存在で反応させることによって製造される。このポリオキシメチレンジメチルエーテルは、別のアセタールのように、中性またはアルカリ性の条件下で安定であるが、しかし、既に希釈された酸によって攻撃される。この場合、このポリオキシメチレンジメチルエーテルは、加水分解によって第1の工程で半アセタールおよびメタノールに変換される。第2の工程で半アセタールは、ホルムアルデヒドおよびメタノールに加水分解される。
【0003】
ポリオキシメチレンジメチルエーテルは、実験室規模でポリオキシメチレングリコールまたはパラホルムアルデヒドをメタノールと一緒に痕跡の硫酸または塩酸の存在で150〜180℃の温度および12〜15時間の反応時間で加熱することによって製造される。この場合には、ジメチルエーテルを形成させるために、二酸化炭素の形成下に分解反応を生じる。6:1のパラホルムアルデヒドまたはポリオキシメチレングリコール:メタノール比の場合には、nが100を上廻る、一般にnが300〜500であるポリマーを得ることができる。この生成物は、亜硫酸ナトリウム溶液で洗浄され、引続き分別結晶によって分画される。
【0004】
米国特許第2449469号明細書には、メチラールをパラホルムアルデヒドまたは濃縮されたホルムアルデヒド溶液で硫酸の存在で加熱する方法が記載されている。この場合には、1分子当たり2〜4個のホルムアルデヒド単位を有するポリオキシメチレンジメチルエーテルを得ることができる。
【0005】
最近、ポリオキシメチレンジメチルエーテルは、ディーゼル燃料添加剤として重要であることが判明した。従来のディーゼル燃料を燃焼させた際の煙およびカーボンブラックの形成を減少させるために、前記のポリオキシメチレンジメチルエーテルには、僅かにのみC−C−結合を有するかまたはそもそもC−C−結合を全く有しない酸素含有化合物、例えばメタノールが添加される。しかし、この種の化合物は、しばしばディーゼル燃料中で不溶性であり、ディーゼル燃料混合物のセタン価および/または引火点を減少させる。
【0006】
米国特許第5746785号明細書には、メチラール1部とパラホルムアルデヒド5部とを蟻酸0.1質量%の存在で150〜240℃の温度で反応させるかまたはメタノール1部とパラホルムアルデヒド3部とを150〜240℃の温度で反応させることによって、n=1〜10に相当する80〜350の分子量を有するポリオキシメチレンジメチルエーテルを製造することが記載されている。得られたポリオキシメチレンジメチルエーテルは、5〜30質量%の量でディーゼル燃料に添加される。
【0007】
欧州特許出願公開第1070755号明細書には、メチラールとパラホルムアルデヒドとをトリフルオロスルホン酸の存在で反応させることによって1分子当たり2〜6個のホルムアルデヒド単位を有するポリオキシメチレンジメチルエーテルを製造することが開示されている。この場合には、94.8%の選択率でnが2〜5であるポリオキシメチレンジメチルエーテルが形成され、その際、49.6%で二量体(n=2)が得られる。得られたポリオキシメチレンジメチルエーテルは、4〜11質量%の量でディーゼル燃料に添加される。
【0008】
米国特許第6392102号明細書には、ジメチルエーテルの酸化によって得られた、メタノールおよびホルムアルデヒドを含有する使用流を酸触媒の存在で反応させ、同時にこの反応生成物を接触蒸留塔中で分離することによってポリオキシメチレンジメチルエーテルを製造することが記載されている。この場合には、メチラール、メタノール、水およびポリオキシメチレンジメチルエーテルを得ることができる。
【0009】
低級ポリオキシメチレンジメチルエーテル(この場合、n=1〜10)を製造するための公知方法の欠点は、主に二量体が得られることである。主要生成物として形成される二量体は、低い沸点を有し、したがって同様に引火点を減少させ、それによってディーゼル燃料添加剤としては、殆んど不適当である。nが8を上廻るオリゴマーは、低い温度で結晶化する傾向にあり、ディーゼル燃料添加剤として不適当である。これとは異なり、nが3および4である低級ポリオキシメチレンジメチルエーテルは、十分に好適である(トリオキシメチレングリコールジメチルエーテルまたはテトラオキシメチレングリコールジメチルエーテル)。この低級ポリオキシメチレンジメチルエーテルは、典型的なディーゼル燃料混合物と比較可能な沸点および引火点を有する。また、"目詰まり点(cold filter plugging point)"は、上昇されない。
【0010】
ホルムアルデヒドおよびメタノールから出発する方法の欠点は、酸触媒の存在で既に形成されたポリオキシメチレンジメチルエーテルを加水分解する水が反応生成物として形成されることである。この場合には、不安定な半アセタールが形成される。この不安定な半アセタールは、ディーゼル燃料混合物の引火点を減少させ、したがってこのディーゼル燃料混合物の品質を損なう。しかし、ディーゼル燃料混合物の低すぎる引火点は、当該のDIN規格によって規定されている規格値をもはや満たすものではない。しかし、半アセタールは、比較可能な沸点のためにポリオキシメチレンジメチルエーテルと分離することが困難である。
【0011】
前記の問題は、十分に無水で作業することにより回避させることができる。これは、ホルムアルデヒド含有成分としてのトリオキサンを使用することによって達成され、この場合このホルムアルデヒド含有成分は、メチラールまたはジメチルエーテルと反応される。しかしながら、トリオキサンの使用は、ホルムアルデヒドより高価である。それというのも、トリオキサンの製造は、その側で使用物質としてのホルムアルデヒドから出発するからである。すなわち、1つの付加的な処理工程が必要とされる。
【0012】
米国特許第6392102号明細書中に記載の方法においては、ホルムアルデヒドの製造は、ポリオキシメチレンジメチルエーテル合成に組み込まれている。この場合、ホルムアルデヒドは、メタノールの酸化脱水素、但し、この場合には、一般に20〜60質量%のホルムアルデヒド含量を有するホルムアルデヒド水溶液が得られるものとし、によって製造されるのではなく、ジメチルエーテルの酸化脱水素によって製造される。この場合には、60質量%を上廻るホルムアルデヒド濃度が達成される。この方法全体が複雑であることは、欠点である。この方法は、反応性蒸留、多数の不均一系触媒作用を有する反応器、蒸留塔、吸収塔および噴霧塔を含む。これは、高い開発費および投資費ならびに連続運転における整備費を必要とする。
【0013】
即ち、依然として市販の大量に簡単に使用可能なホルムアルデヒド水溶液から出発する、ポリオキシメチレングリコールジメチルエーテルの製造法が必要とされている。ポリオキシメチレングリコールジメチルエーテルがディーゼル燃料添加剤として重要であることの背景に対して、殊にトリオキシメチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラオキシメチレングリコールジメチルエーテルを選択的および経済的に製造することが必要とされている。
【0014】
本発明の課題は、ホルムアルデヒド水溶液から出発する、トリオキシメチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラオキシメチレングリコールジメチルエーテルを選択的に製造するための改善された方法を提供することである。
【0015】
この課題は、次の工程:
a)ホルムアルデヒド水溶液およびメタノールを1つの反応器中に供給し、ホルムアルデヒド、水、メチレングリコール(MG)、ポリオキシメチレングリコール(MGn>1)、メタノール、ヘミホルマール(HF)、メチラール(POMDMEn=1)およびポリオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn>1)を含有する混合物aに変換する工程;
b)反応混合物aを第1の蒸留塔中に供給し、ホルムアルデヒド、水、メチレングリコール、メタノール、メチラールおよびジオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn=2)を含有する低沸点留分b1とホルムアルデヒド、水、メタノール、ポリオキシメチレングリコール、ヘミホルマールおよびポリオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn>1)を含有する高沸点留分b2とに分離する工程;
c)高沸点留分b2を第2の蒸留塔中に供給し、ホルムアルデヒド、水、メチレングリコール、ポリオキシメチレングリコール、メタノール、ヘミホルマール、ジオキシメチレングリコールジメチルエーテル、トリオキシメチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn=2,3,4)を含有する低沸点留分c1とポリオキシメチレングリコール、高沸点ヘミホルマール(HFn>1)および高沸点ポリオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn>4)を含有する高沸点留分c2とに分離する工程;
d)低沸点留分c1および場合によってはホルムアルデヒド、水、メチレングリコールおよびポリオキシメチレングリコールからなる1つ以上の返送流を第3の蒸留塔中に供給し、ホルムアルデヒド、水、メタノール、ポリオキシメチレングリコール、ヘミホルマールおよびジオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn=2)を含有する低沸点留分d1と本質的にホルムアルデヒド、水、メチレングリコール、ポリオキシメチレングリコール、トリオキシメチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn=3,4)からなる高沸点留分d2とに分離する工程;
e)高沸点留分d2を相分離装置中に供給し、本質的にホルムアルデヒド、水、メチレングリコールおよびポリオキシメチレングリコールからなる水相e1とトリオキシメチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn=3,4)を含有する有機相e2とに分離する工程;
f)有機相e2を第4の蒸留塔中に供給し、本質的にホルムアルデヒド、水、メチレングリコールおよびポリオキシメチレングリコールからなる低沸点留分f1と本質的にトリオキシメチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn=3,4)からなる高沸点留分f2とに分離する工程;
g)場合によっては水相e1を第5の蒸留塔中に供給し、本質的にホルムアルデヒド、水、メチレングリコールおよびポリオキシメチレングリコールからなる低沸点留分g1と本質的に水からなる高沸点留分とに分離する工程でホルムアルデヒドとメタノールとを反応させ、引続きこの反応混合物を蒸留により後処理することにより、トリオキシメチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラオキシメチレングリコールジメチルエーテルを製造する方法によって解決される。
【0016】
反応器を離れる、ホルムアルデヒド、水、メチレングリコール、ポリオキシメチレングリコール、メタノール、ヘミホルマール、メチラールおよびポリオキシメチレングリコールジメチルエーテルを含有する混合物の蒸留による分離は、数多くの成分および数多くの同時に開始する化学的平衡反応のために、当業者にとって明確なことでなく、著しく要求の多い問題である。ただ、含有されている成分の沸騰温度からのみ、ホルムアルデヒド含有混合物に関連して、このホルムアルデヒド含有混合物を分離する可能性に関する若干の証言がなされている。このための根拠は、水およびメタノールの存在で開始し、なかんずくポリオキシメチレングリコールおよびヘミホルマールを生じる化学的平衡反応である。この反応は、一面で化学的平衡による制限を受け、他面、速度支配による制限を受ける。更に、複雑な相平衡をまねく反応性共沸混合物が形成される。
【0017】
工程a)において、ホルムアルデヒド水溶液およびメタノールは、1つの反応器中に供給され、ホルムアルデヒド、水、メチレングリコール、ポリオキシメチレングリコール、メタノール、ヘミホルマール、メチラールおよびポリオキシメチレングリコールジメチルエーテルを含有する混合物aに変換される。
【0018】
工程a)において、市販のホルムアルデヒド水溶液は、直接に使用されてもよいし、このホルムアルデヒド水溶液は、例えば欧州特許出願公開第106330221号明細書の記載と同様に先に濃縮されてもよい。一般に、濃厚なホルムアルデヒドは、本発明による方法で使用される、20〜60質量%のホルムアルデヒド水溶液である。メタノールは、特に純粋な形で使用される。微少量の別のアルコール、例えばエタノールの存在は、支障がない。30質量%までのエタノールを含有するメタノールの使用は、可能である。
【0019】
水、モノマー(モノマー不含)のホルムアルデヒド、メチレングリコール(MG)および異なる鎖長のオリゴマーのポリオキシメチレングリコール(MGn>1)は、水溶液中に共存して熱力学的平衡で存在し、この場合この熱力学的平衡は、異なる長さのポリオキシメチレングリコールの一定の分布を示す。この場合、"ホルムアルデヒド水溶液"の概念は、実際に遊離水を含有せずに、本質的になおメチレングリコールの形でのみ化学結合された水を含有するかまたはポリオキシメチレングリコールの末端OH基中に化学結合された水を含有するホルムアルデヒド溶液にも関連する。これは、殊に濃縮されたホルムアルデヒド溶液の場合である。この場合、ポリオキシメチレングリコールは、例えば2〜9個のオキシメチレン単位を有することができる。即ち、ホルムアルデヒド水溶液中には、ジオキシメチレングリコール、トリオキシメチレングリコール、テトラオキシメチレングリコール、ペンタオキシメチレングリコール、ヘキサオキシメチレングリコール、ヘプタオキシメチレングリコール、オクタオキシメチレングリコールおよびノナオキシメチレングリコールが共存していてよい。分布は、濃度に依存する。即ち、分布の最大は、短い鎖長の同族体の場合に希釈されたホルムアルデヒド溶液中に存在し、他方、長い鎖長の同族体の場合には、濃縮されたホルムアルデヒド溶液中に存在する。長鎖(高分子量)のポリオキシメチレングリコールへの平衡移動は、脱水、例えば薄膜蒸発器中での簡単な蒸留によって行なうことができる。この場合、平衡は、有限の速度でメチレングリコールと低分子量のポリオキシメチレングリコールとの分子間縮合によって高分子量のポリオキシメチレングリコールへの脱水下に調節される。
【0020】
ポリオキシメチレングリコールジメチルエーテルへのホルムアルデヒドとメタノールとの反応は、総反応式(1):
nCH2O + 2CH3OH →CH3−O−(CH2−O)n−CH3 + H2O (1)
により行なわれる。
【0021】
この場合に使用される酸触媒は、均一系酸触媒であってもよいし、不均一系酸触媒であってもよい。適当な酸触媒は、鉱酸、例えば十分に無水の硫酸、スルホン酸、例えばトリフルオロメタンスルホン酸およびパラ−トルエンスルホン酸、ヘテロポリ酸、酸性イオン交換樹脂、ゼオライト、アルミノケイ酸塩、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタンおよび二酸化ジルコニウムである。酸化物触媒は、酸濃度を上昇させるために、スルフェート基またはホスフェート基で、一般に0.05〜10質量%の量でドープされていてよい。反応は、攪拌釜型反応器(CSTR)または管状反応器中で実施されることができる。不均一系触媒を使用する場合には、固定床反応器が好ましい。触媒固定床を使用する場合には、引続き、生成物混合物は、アニオン交換樹脂と接触されることができ、本質的に酸不含の生成物混合物を得ることができる。また、僅かに好ましい場合には、反応性蒸留が使用されてよい。
【0022】
この反応は、一般に0〜200℃、有利に50〜150℃の温度および1〜20バール、有利に2〜10バールの圧力で行なわれる。
【0023】
総反応式(2)によれば、ポリオキシメチレングリコールが形成される。反応式(3)によれば、ポリオキシメチレングリコールモノメチルエーテル(ヘミホルマール、HFn)が形成される。
nCH2O + H2O → HO−(CH2−O)n−H (2)
nCH2O + CH3OH →CH3−O−(CH2−O)n−H (3)
【0024】
ポリオキシメチレングリコール、ヘミホルマールおよびポリオキシメチレングリコールジメチルエーテルの形成の際に含まれる縮合反応または連鎖形成反応(Kettenaufbaureaktionen)は、平衡反応であり、したがって(化学的平衡の状態に応じて)分解反応または連鎖分解反応として逆の方向でも進行する。しかし、それによって本発明による方法で実現された蒸留工程の全ては、複雑な反応性蒸留として把握することができる。
【0025】
次に記載された工程b)、c)、d)、f)およびg)で使用される蒸留塔は、通常の構造形式の塔である。不規則充填物塔、棚段塔および規則充填物塔が該当し、好ましいのは、棚段塔および規則充填物塔である。"低沸点留分"の概念は、塔の上部で取り出される混合物に対して使用され、"高沸点留分"の概念は、塔の下部で取り出される混合物に対して使用される。一般に、低沸点留分は、頭頂部から取り出され、高沸点留分は、塔底部から取り出される。しかし、これは、強制的なことではない。塔の分離部または濃縮部での側方の取出し口を介して取り出すことも可能である。
【0026】
工程b)において、反応混合物aは、第1の蒸留塔中に供給され、ホルムアルデヒド、水、メチレングリコール、メタノール、メチラールおよびジオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn=2)を含有する低沸点留分b1とホルムアルデヒド、水、メタノール、ポリオキシメチレングリコール、ヘミホルマールおよびポリオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn>1)を含有する高沸点留分b2とに分離される。
【0027】
第1の蒸留塔は、一般に3〜50個、特に5〜20個の棚段数を有する。この第1の蒸留塔は、0.2〜10バール、特に0.8〜6バールの圧力で運転される。頭頂部の温度は、一般に−20〜+160℃、特に+20〜130℃であり、塔底部の温度は、一般に+30〜+320℃、特に+90〜+200℃である。
【0028】
一般に、低沸点留分b1は、反応器中に返送される。
【0029】
工程c)において、高沸点留分b2は、第2の蒸留塔中に供給され、ホルムアルデヒド、水、メチレングリコール、ポリオキシメチレングリコール、メタノール、ヘミホルマール、ジオキシメチレングリコールジメチルエーテル、トリオキシメチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn=2,3,4)を含有する低沸点留分c1とポリオキシメチレングリコール、高沸点ヘミホルマール(HFn>1)および高沸点ポリオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn>4)を含有する高沸点留分c2とに分離される。
【0030】
第2の蒸留塔は、一般に3〜50個、特に5〜20個の棚段数を有する。この第2の蒸留塔は、0.1〜10バール、特に0.2〜6バールの圧力で運転される。頭頂部の温度は、一般に+20〜+260℃、特に+20〜230℃であり、塔底部の温度は、一般に+80〜+320℃、特に+100〜+250℃である。
【0031】
高沸点留分は、反応器(工程a))中に返送されることができる。
【0032】
本発明による方法の1つの実施態様において、高沸点留分c2は、メタノールと一緒に他(第2)の反応器中に供給され、反応される。この場合、長鎖のオリゴマーのポリオキシメチレングリコール、ヘミホルマールおよびポリオキシメチレングリコールジメチルエーテルは、メタノールとの反応によってよりいっそう短い鎖に分解される。この場合、同じ酸性触媒は、第1の反応器中での場合と同様に使用されてよい。反応生成物は、特に(工程a))の(第1の)反応器中に供給される。この反応生成物は、直接に第1の蒸留塔中に供給されてもよい。第2の反応器中の温度は、一般に第1の反応器中の場合よりも高く、一般に50〜320℃、特に80〜250℃である。この場合、第2の反応器は、一般に1〜20バール、特に2〜10バールの圧力で運転される。
【0033】
工程d)において、低沸点留分c1および場合によってはホルムアルデヒド、水、メチレングリコールおよびポリオキシメチレングリコールからなる1つ以上の返送流は、第3の蒸留塔中に供給され、ホルムアルデヒド、水、メタノール、ポリオキシメチレングリコール、ヘミホルマールおよびジオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn=2)を含有する低沸点留分d1と本質的にホルムアルデヒド、水、メチレングリコール、ポリオキシメチレングリコール、トリオキシメチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn=3,4)からなる高沸点留分d2とに分離される。
【0034】
"本質的に・・・からなる"は、本明細書中および以下において、該当する留分の少なくとも90質量%、特に少なくとも95質量%が記載された成分からなることを意味する。高沸点留分d2は、殊に実質的にジオキシメチレングリコールジメチルエーテルをもはや含有しない。高沸点留分d2中のジオキシメチレングリコールジメチルエーテルの含量は、一般に3質量%未満である。
【0035】
第3の蒸留塔は、一般に1〜50個、特に1〜20個の棚段数を有する。この第3の蒸留塔は、0.1〜10バール、特に0.2〜6バールの圧力で運転される。頭頂部の温度は、一般に0〜+160℃、特に+20〜130℃であり、塔底部の温度は、一般に+50〜+260℃、特に+80〜+220℃である。
【0036】
一般に、低沸点留分d1は、反応器中に返送される。
【0037】
工程e)において、高沸点留分d2は、相分離装置中に供給され、本質的にホルムアルデヒド、水、メチレングリコールおよびポリオキシメチレングリコールからなる水相e1とトリオキシメチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn=3,4)を含有する有機相e2とに分離される。その上、有機相e2は、同様になおホルムアルデヒド、水、メチレングリコールおよびポリオキシメチレングリコールを含有する。
【0038】
工程f)において、有機相e2は、第4の蒸留塔中に供給され、本質的にホルムアルデヒド、水、メチレングリコールおよびポリオキシメチレングリコールからなる低沸点留分f1と本質的にトリオキシメチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn=3,4)からなる高沸点留分f2とに分離される。
【0039】
第4の蒸留塔は、一般に1〜100個、特に1〜50個の棚段数を有する。この第4の蒸留塔は、0.1〜10バール、特に0.2〜6バールの圧力で運転される。頭頂部の温度は、一般に0〜+160℃、特に+20〜130℃であり、塔底部の温度は、一般に+100〜+260℃、特に+150〜+240℃である。
【0040】
高沸点留分f2は、本発明による方法の価値のある生成物である。この高沸点留分f2は、99質量%を上廻るPOMDMEn=3,4を含有することができる。
【0041】
一般に、もう1つの(場合による)工程g)において、水相e1は、さらに後処理される。そのために、この水相e1は、第5の蒸留塔中に供給され、本質的にホルムアルデヒド、水、メチレングリコールおよびポリオキシメチレングリコールからなる低沸点留分g1と本質的に水からなる高沸点留分とに分離される。
【0042】
第5の蒸留塔は、一般に1〜30個、特に1〜20個の棚段数を有する。この第5の蒸留塔は、0.1〜10バール、特に0.2〜6バールの圧力で運転される。頭頂部の温度は、一般に−20〜+120℃、特に+20〜100℃であり、塔底部の温度は、一般に+40〜+180℃、特に+60〜+150℃である。
【0043】
低沸点留分f1および/またはg1は、返送流として第3の蒸留塔(工程d))中に返送されることができる。好ましくは、この低沸点留分f1および/またはg1は、第3の蒸留塔中に返送される。しかし、低沸点留分f1および/またはg1は、返送流として反応器(工程a))中に返送されてもよい。
【0044】
本発明は、図によって具体的に示される。
【0045】
図1は、本発明による方法の好ましい変法を示す。
【0046】
ホルムアルデヒド水溶液1およびメタノール2は、反応器3中に供給され、ホルムアルデヒド、水、メチレングリコール、ポリオキシメチレングリコール、メタノール、ヘミホルマール、メチラールおよびポリオキシメチレングリコールジメチルエーテルを含有する混合物4に変換される。反応混合物4は、第1の蒸留塔5中でホルムアルデヒド、水、メチレングリコール、メタノール、メチラールおよびジオキシメチレングリコールジメチルエーテルを含有する低沸点留分6とホルムアルデヒド、水、メタノール、ポリオキシメチレングリコール、ヘミホルマールおよびポリオキシメチレングリコールジメチルエーテルを含有する高沸点留分7とに分離される。低沸点留分6は、反応器3中に返送される。高沸点留分7は、第2の蒸留塔8中でホルムアルデヒド、水、メチレングリコール、ポリオキシメチレングリコール、メタノール、ヘミホルマール、ジオキシメチレングリコールジメチルエーテル、トリオキシメチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラオキシメチレングリコールジメチルエーテルを含有する低沸点留分9とポリオキシメチレングリコール、高沸点ヘミホルマールおよび高沸点ポリオキシメチレングリコールジメチルエーテルを含有する高沸点留分10とに分離される。高沸点留分10および他のメタノール23は、反応器11中で反応され、反応生成物12は、反応器3中に返送される。反応生成物12は、全部または部分的に第1の蒸留塔5中に返送されてもよい。低沸点留分9およびホルムアルデヒド、水、メチレングリコールおよびポリオキシメチレングリコールからなる返送流19および21は、第3の蒸留塔13中に供給され、ホルムアルデヒド、水、メタノール、ポリオキシメチレングリコール、ヘミホルマールおよびジオキシメチレングリコールジメチルエーテルを含有する低沸点留分14とホルムアルデヒド、水、メチレングリコール、ポリオキシメチレングリコール、トリオキシメチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラオキシメチレングリコールジメチルエーテルからなる高沸点留分15とに分離される。低沸点留分14は、反応器中に返送される。高沸点留分15は、相分離装置16中でホルムアルデヒド、水、メチレングリコールおよびポリオキシメチレングリコールからなる水相20とトリオキシメチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラオキシメチレングリコールジメチルエーテル、およびその上をホルムアルデヒド、水、メチレングリコールおよびポリオキシメチレングリコール含有する有機相17とに分離される。有機相17は、第4の蒸留塔18中でホルムアルデヒド、水、メチレングリコールおよびポリオキシメチレングリコールからなる低沸点留分19とトリオキシメチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラオキシメチレングリコールジメチルエーテルからなる高沸点留分20とに分離される。高沸点留分20は、価値のある生成物として取得される。低沸点留分19は、第3の蒸留塔13中に返送される。水相20は、第5の蒸留塔24中でホルムアルデヒド、水、メチレングリコールおよびポリオキシメチレングリコールからなる低沸点留分21と水からなる高沸点留分22とに分離される。低沸点留分21は、第3の蒸留塔13中に返送される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明による方法の好ましい変法を示す系統図。
【符号の説明】
【0048】
1 ホルムアルデヒド水溶液、 2 メタノール、 3、11 反応器、 4 反応混合物、 5 第1の蒸留塔、 6、9、14、19、21 低沸点留分、 7、10、15、22 高沸点留分、 8 第2の蒸留塔、 12 反応生成物、 13 第3の蒸留塔、 16 相分離装置、 17 有機相、 18 第4の蒸留塔、 20 水相、 23 他のメタノール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程:
a)ホルムアルデヒド水溶液およびメタノールを反応器中に供給し、ホルムアルデヒド、水、メチレングリコール(MG)、ポリオキシメチレングリコール(MGn>1)、メタノール、ヘミホルマール(HF)、メチラール(POMDMEn=1)およびポリオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn>1)を含有する混合物aに変換する工程;
b)反応混合物aを第1の蒸留塔中に供給し、ホルムアルデヒド、水、メチレングリコール、メタノール、メチラールおよびジオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn=2)を含有する低沸点留分b1とホルムアルデヒド、水、メタノール、ポリオキシメチレングリコール、ヘミホルマールおよびポリオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn>1)を含有する高沸点留分b2とに分離する工程;
c)高沸点留分b2を第2の蒸留塔中に供給し、ホルムアルデヒド、水、メチレングリコール、ポリオキシメチレングリコール、メタノール、ヘミホルマール、ジオキシメチレングリコールジメチルエーテル、トリオキシメチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn=2,3,4)を含有する低沸点留分c1とポリオキシメチレングリコール、高沸点ヘミホルマール(HFn>1)および高沸点ポリオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn>4)を含有する高沸点留分c2とに分離する工程;
d)低沸点留分c1および場合によってはホルムアルデヒド、水、メチレングリコールおよびポリオキシメチレングリコールからなる1つ以上の返送流を第3の蒸留塔中に供給し、ホルムアルデヒド、水、メタノール、ポリオキシメチレングリコール、ヘミホルマールおよびジオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn=2)を含有する低沸点留分d1と本質的にホルムアルデヒド、水、メチレングリコール、ポリオキシメチレングリコール、トリオキシメチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn=3,4)からなる高沸点留分d2とに分離する工程;
e)高沸点留分d2を相分離装置中に供給し、本質的にホルムアルデヒド、水、メチレングリコールおよびポリオキシメチレングリコールからなる水相e1とトリオキシメチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn=3,4)を含有する有機相e2とに分離する工程;
f)有機相e2を第4の蒸留塔中に供給し、本質的にホルムアルデヒド、水、メチレングリコールおよびポリオキシメチレングリコールからなる低沸点留分f1と本質的にトリオキシメチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn=3,4)からなる高沸点留分f2とに分離する工程;
g)場合によっては水相e1を第5の蒸留塔中に供給し、本質的にホルムアルデヒド、水、メチレングリコールおよびポリオキシメチレングリコールからなる低沸点留分g1と本質的に水からなる高沸点留分とに分離する工程でホルムアルデヒドとメタノールとを反応させ、引続きこの反応混合物を蒸留により後処理することにより、トリオキシメチレングリコールジメチルエーテルおよびテトラオキシメチレングリコールジメチルエーテル(POMDMEn=3,4)を製造する方法。
【請求項2】
低沸点留分b1および/またはd1を返送流として反応器中(工程a))に返送する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
高沸点留分c2およびメタノールを他の反応器中に供給し、反応させ、この反応生成物を反応器中(工程a))および/または第1の蒸留塔中に供給する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
低沸点留分f1および/またはg1を返送流として第3の蒸留塔中(工程d))に返送する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
低沸点留分f1および/またはg1を返送流として反応器中(工程a))に返送する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−546665(P2008−546665A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516293(P2008−516293)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【国際出願番号】PCT/EP2006/063087
【国際公開番号】WO2007/051658
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】