説明

ポリオキシメチレン樹脂製ハードディスクドライブ用ランプ

【課題】産業上利用可能なハードディスクドライブ用ランプを提供する。
【解決手段】本発明のポリオキシメチレン樹脂と着色剤とを含むハードディスクドライブ用ランプは、アウトガスが20μg/g以下であり、アウトガス中の有害成分が0.3μg/gであり、産業上非常に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオキシメチレン樹脂製ハードディスクドライブ用ランプに関する。更に詳しくは、本発明は、ポリオキシメチレン樹脂の優れた摩擦摩耗性能を生かし、アウトガスおよび有害成分を低減させたハードディスクドライブ用ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオキシメチレン樹脂は、バランスのとれた機械的性質と優れた摩擦摩耗性能をもつエンジニアリング樹脂として、各種の機構部品をはじめ、OA機器などに広く用いられている。近年、このポリオキシメチレン樹脂をハードディスクのランプ材に用いる試みがなされている。例えば、特許文献1、2にはランプの材質としてポリオキシメチレン等の合成樹脂が好適であることが示されている。また、特許文献3には、ランプ材料として4−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸のコポリエステル(HAHN)、ポリオキシメチレン、ポリエーテルエーテルケトンがあげられている。また、特許文献4には、ランプユニット材料としてポリイミド、ポリオキシメチレン、PEEK、HAHN、液晶性重合体およびPTFE充填プラスチックがあげられている。また、特許文献5には、ランプ材料として引っ張り伸びが30%以上である材料の使用が示され、具体的にポリオキシメチレン樹脂が示されている。また、本願出願人により提出された特許文献6には、ポリオキシメチレン樹脂と高分子潤滑材とからなるハードディスク用ランプが示されている。
【0003】
一方、ハードディスク装置に用いられるシール材、ガスケット材料に関しては、特許文献7、8に示される様に、装置内部の磁気または光ディスクを汚染させないため、アウトガス(イオウ、臭素、塩素等の腐食ガス、シロキサン、オレフィン等の有機ガス)の発生が少ない材料が求められている。ランプ材はシール材と比べると重量比で数分の一〜数百分の一であるが、HDDの小型化、高集積化を考えるとアウトガスや腐食性ガスの少ない材料が求められるのは必須と思われる。
【0004】
しかし、上記の先行技術にはアウトガスや腐食性ガス(有害ガス)に関する記載はなく、さらにポリオキシメチレン樹脂製のランプにおいて着色剤による悪影響を考慮しその低減を目指した提案はない。
【特許文献1】特開平10−064205号公報(US6151190A)
【特許文献2】特開平10−125014号公報(ファミリーなし)
【特許文献3】特開平11−339411号公報(ファミリーなし)
【特許文献4】特開2001−23325号公報
【特許文献5】特開2001−297548号公報(US2001/0040769A1)
【特許文献6】WO03−055945号公報
【特許文献7】特開平09−316255号公報
【特許文献8】特開2002−265681号公報
【特許文献9】特開2000−71241号公報(ファミリーなし)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記のような状況のもとでなされたものであって、ポリオキシメチレン樹脂製ハードディスクドライブ用ランプのアウトガスおよび有害成分を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、着色剤を含むポリオキシメチレン樹脂製ランプのアウトガスおよび有害成分を低減させることを目的に種々の検討を実施した結果、以下に示す処理方法を行うことで目的を達成し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)ポリオキシメチレン樹脂と着色剤とを含み、アウトガスが20μg/g以下であり、アウトガス中の有害成分が0.3μg/g以下であるハードディスクドライブ用ランプ。
(2)着色剤が無機顔料である(1)に記載のハードディスクドライブ用ランプ。
(3)着色剤が酸化亜鉛、酸化チタン、金属複合酸化物、酸化鉄、群青、コバルトブルー、焼成顔料、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラックからなる群から選ばれる無機顔料である(1)又は(2)に記載のハードディスクドライブ用ランプ。
(4)ポリオキシメチレン樹脂がコポリマーである(1)〜(3)のいずれか1項に記載のハードディスクドライブ用ランプ。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明について具体的に説明する。
本発明に用いられるポリオキシメチレン樹脂は、ホルムアルデヒド、またはその3量体であるトリオキサンや4量体であるテトラオキサンなどの環状オリゴマーを重合し、重合体の両末端をエーテル、エステル基により封鎖したホモポリマー;ホルムアルデヒドまたはその3量体であるトリオキサンや4量体であるテトラオキサンと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,3−ジオキソラン、グリコールのホルマール、ジグリコールのホルマールなどとを共重合させて得られた炭素数2〜8のオキシアルキレン単位をオキシメチレンに対し、0.1〜20モル%を含有するオキシメチレンコポリマー;さらに分岐状分子鎖を有するもの;及び、オキシメチレン単位からなるセグメント50重量%以上と異種セグメント50重量%以下とを含有するオキシメチレンブロックポリマーから選ばれる少なくとも一種である。オキシメチレンブロックポリマーとしては、特開昭57−31918号公報に示されるポリアルキレングリコールとポリオキシメチレンホモポリマーとのブロックポリマー、特願平11−216654号公報に開示された水素添加ポリブタジエンとオキシメチレンコポリマーのブロックポリマーが好ましい。
【0008】
また、これらポリオキシメチレン樹脂は、その目的によって使い分けすることが出来る。摺動性や剛性の観点からはホモポリマーやコモノマー量の少ないコポリマーの使用が好ましい。熱安定性や耐衝撃性の観点からはコモノマー量の多いコポリマーや水素添加ポリブタジエンとオキシメチレンコポリマーのブロックポリマーの使用が好ましい。本発明の用途には、摺動性と熱安定性のバランスからコモノマー量の少ないコポリマーが最も好ましい。また、本発明で用いるポリオキシメチレン樹脂のメルトフローレイト(ASTM−D1238−57Tの条件で測定)は、0.5g/10分から100g/10分、好ましくは1.0g/10分から80g/10分、さらに好ましくは5g/10分〜60g/10分、最も好ましくは7g/10分〜50g/10分の範囲である。0.5g/10分以上では成形加工性に優れ、100g/10分未満では耐久性が十分である。
【0009】
本発明のポリオキシメチレン樹脂には、従来のポリオキシメチレン樹脂に使用されている安定剤、例えば熱安定剤、耐候(光)安定剤等を単独、またはこれらを組み合わせて用いることが出来る。具体的には、WO01−032775号公報に記載されている安定剤が使用可能である。
本発明のポリオキシメチレン樹脂に対する安定剤の好ましい組み合わせは、「ヒンダードフェノール(特にトリエチレングリコール−ビス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネートメタン))」、「ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体(特にポリアミド樹脂、ポリ−β−アラニン)」および必要により「アルカリ土類金属の脂肪酸塩(特に脂肪酸カルシウム塩)」の併用である。その添加量は、ポリオキシメチレン樹脂に対して、「ヒンダードフェノール」0.05〜0.5重量%、「ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体」0.01〜0.5重量%、および必要により「アルカリ土類金属の脂肪酸塩(特に脂肪酸カルシウム塩)」0.01〜0.5重量%の範囲である。
【0010】
本発明に用いられる着色剤は有機および無機の顔料及び/または染料の中から選ばれる1種以上である。無機顔料としては一般的に使用されるものであってよく、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、チタンイエローに代表される金属(Ti、Cr、Sb、Ni、Zn、Fe、Co、Al及びCuから選ばれる2種以上)の複合酸化物、酸化鉄、群青、コバルトブルー、焼成顔料、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等が挙げられる。
【0011】
ハードディスクドライブ用ランプに着色剤を用いる目的はレーザー光による寸法測定を容易にすることである。このため、上記した無機の顔料には微粒子の無機充填材も含まれる。例えば、シリカ、石英粉末、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、ネフェリンサイナイト、クリストバライト、ウォラストナイト(珪酸カルシウム)、アルミナ、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、マイカ、導電性カーボンブラックやカーボンナノチューブなどの極微粒子炭素、各種金属粉末などである。これら無機顔料、充填剤は粒子径10μm以下のものが一般的に使用されており、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。これらの無機顔料、微粒子無機充填材は本発明のハードディスクドライブ用ランプに影響を与えない範囲で分散剤や表面処理剤で処理されていても良い。
【0012】
有機顔料としてはモノアゾ系、縮合アゾ系、フタロシアニン系、アンスラキノン系、ペリノン系、キナクドリン系、ジオキサジン系、イソインドリン系、キナフタロン系、イソインドリン系などが挙げられる。
これらの中で好ましいのは、酸化チタン、金属の複合酸化物、酸化鉄、カーボンブラック、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、極微粒子炭素である。
【0013】
本発明の着色剤中の有害物質とは、ハロゲン、ハロゲン含有脂肪族/芳香族化合物、シロキサン、シリコーン化合物、イオウ化合物、フタル酸およびフタル酸エステル類、アクリル酸およびアクリル酸エステル類、リン酸類、有機スズ等のハードディスクドライブ装置に対する腐食、接点不良の原因となる物質である。また、本発明のアウトガスとは、前記した有害物質を含む揮発成分であり、有害物質以外の成分は例えば脂肪族/芳香族炭化水素類、アルコール、エーテル、エステルなどの含酸素化合物、ホルムアルデヒド及びその環状化合物などである。これらの有害物質以外のアウトガスはヘッド/ディスクインターフェイス間に凝縮したり、ディスク表面を拡散し粘着障害を引き起こす原因となる。
【0014】
また、本発明のポリオキシメチレン樹脂には、WO03−055945号に示されるポリオレフィン樹脂、ポリエーテルとイソシアネート化合物を重合して得られる重合体、特願2004−244024号に示されるポリエーテルとオレフィンのブロック共重合体、各種無機フィラー、潤滑材や、通常ポリオキシメチレン樹脂で用いられる各種の添加剤、例えば、前記以外の潤滑材、耐衝撃改良材、他樹脂、結晶核剤、離型剤なども用いることが出来る。
【0015】
本発明のハードディスクランプは上記ポリオキシメチレン樹脂を次の処理方法を行うことにより得られる。
アウトガスの発生量の少ないポリオキシメチレン樹脂は、ベント付き押出機を用いて溶融混練時に一ヶ所以上のベントから減圧脱気することにより得られ、好ましくは二軸押出機を用いることにより得られる。ベントを複数設け、効率的な脱気を行うためには、押出機のL/Dは25〜50程度が好ましく、30〜50がより好ましい。また、減圧度は−0.06MPa以下が必要で、好ましくは−0.07MPa以下、さらに好ましくは−0.08MPa以下、特に好ましくは−0.09MPa以下である。
【0016】
さらに本発明のポリオキシメチレン樹脂は表面に付着する塩素イオンを0.5μg/g以下にすることでさらなるアウトガスの低減が可能で、より好ましくは0.3μg/g以下、特に好ましくは0.1μg/g以下である。その目的は加熱時に塩素イオンを原因するポリオキシメチレン樹脂の分解により生成するアウトガスを極力防止することにある。表面に付着する塩素イオンを削減する方法は特に限定されないが、溶融押出樹脂を冷却する工程においてエアーブローまたは吸引により付着水を除去する工程を追加したり、冷却水に含まれる塩素イオン自体をイオン交換などで低減する方法、等が挙げられる。冷却水に含まれる塩素イオンを低減させることによる熱安定性の改良は特開2000−71241に提案されているが、着色剤を含む系における塩素イオンとアウトガスとの関係は示されていない。
以上によりアウトガスを予め少なくし、さらに塩素イオンを低減したペレットを用いて、ペレット乾燥、射出成形、溶剤洗浄及び乾燥の各工程をへて、アウトガスの少ないハードディスク用ランプが得られる。そのアウトガス量は20μg/g以下であり、さらに15μg/g以下が好ましく、10μg/g以下がさらに好ましく、5μg/g以下が特に好ましい。
【0017】
一方、ポリオキシメチレン樹脂製ハードディスクドライブ用ランプのアウトガス中に含まれる有害物質を減少させる方法としては、着色剤中の有害物質の量を出来るだけ減少させることが重要である。着色剤中の有害物質を減少させる方法としては、有害物質を含まない原料を用いることや、さらに着色剤の製造工程において高温で処理する事により除去、減少させる事が可能となる。この意味から高温での処理が可能である無機顔料が好ましい。着色剤中の有害物質を低減させることで製品であるランプに含まれる有害物質量を減少させることが可能となる。ハードディスクドライブ用ランプの有害物質の量は0.3μg/g以下が好ましく、さらに好ましくは0.1μg/g以下、特に好ましくは0.05μg/g以下である。
【0018】
本発明のポリオキシメチレン樹脂ペレットの押出加工は、単軸押出機や二軸押出機を用い、一ヶ所以上のベントから減圧脱気することにより得られる。その加工温度は180〜240℃の範囲が望ましく、好ましくは180〜220℃であり、特に好ましくは190〜210℃である。また、品質や作業環境の保持のためには不活性ガスによる置換も好ましい。
【0019】
実施例
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。はじめに、実施例および比較例で使用する成分の内容と評価方法を以下に示す。
(使用成分)
A.ポリオキシメチレン樹脂
熱媒を通すことのできるジャケット付き2軸のパドル型連続重合機を80℃に調整し、水と蟻酸を4ppm含むトリオキサンを40モル/hrで重合機に供給した。同時に環状ホルマールとして1、3−ジオキソランを0.65モル/hrで重合機に供給した。重合触媒としてシクロヘキサンに溶解させた三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテラートをトリオキサン1モルに対し5×10−5モルになるように、さらに連鎖移動剤としてメチラール[(CHO)CH]をトリオキサン1モルに対し2×10−3モルになるように連続的にフィードし重合を行った。重合機から排出されたポリマーをトリエチルアミン1%水溶液中に投入し重合触媒の失活を完全に行った。その後、そのポリマーを濾過、洗浄を行い、均一に混合した後120℃で乾燥して粗ポリオキシメチレン共重合体を得た。
【0020】
次に、サイドフィード口、液添加ライン付き30mm二軸押出機(設定温度200℃)を用いて、上記乾燥粗ポリオキシメチレン共重合体100重量部をメインフィード口からフィードした。溶融しているポリオキシメチレン共重合体へ2重量%のトリエチルアミン水溶液を5重量部の割合でフィードし、不安定末端部分を分解した。その後、後段に設けられたベントから−0.07MPaで脱気した。さらにベントの後段に設けられたサイドフィード口より、酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.3重量部、ステアリン酸カルシウム0.05重量部を添加し、ポリアミド66を0.025重量部を添加して溶融混練を行った。押出機ダイス部よりストランドとして押し出し、イオン交換水(含有塩素イオン濃度0.1μg/g以下)で冷却後ペレタイズした。得られたポリオキメチレンコポリマーはコモノマーを0.51モル%(オキシメチレンユニットに対して)含有し、メルトフローレイトは29g/10分であった。また、熱風乾燥機を用いて80℃で3時間乾燥したペレットのアウトガス量は50μg/g、付着塩素イオン量は0.1μg/g以下であり、有害成分(ポリジメチルシロキサン(D4〜D10))は0.001μg/g以下であった(それぞれ、以下に説明した方法に従って測定)。なお、もちろんのこと、本発明が対象としている有害成分はポリジメチルシロキサン(D4〜D10)に限定されるわけではないが、ここでは便宜上、測定対象の有害成分をポリジメチルシロキサンのみとする。
【0021】
B.着色剤
B1;有害成分(ポリジメチルシロキサン(D4〜D10))を0.001μg/g以下含む酸化チタン
B2;有害成分(ポリジメチルシロキサン(D4〜D10))を5μg/g含む酸化チタン
B3;有害成分(ポリジメチルシロキサン(D4〜D10))を25μg/g含む酸化チタン
B4;有害成分(ポリジメチルシロキサン(D4〜D10))を50μg/g含む酸化チタン
【0022】
(評価方法)
(1)アウトガス試験
アウトガス量;GC−MS法、試料1.0gをヘリウムガス中で90℃に加熱し、ヘリウムガスを50ml/minでパージし、発生したガスを180分間吸着管に吸着させた。次にこの吸着管をGC−MS(ヒューレットパッカード社製、GC−5890+MSD−5972A)にセットし脱着させ、非極性カラムを用い基準物質にヘキサデカンを用いてアウトガスを測定した。
1)アウトガス中の有害成分量;上記、アウトガス成分中の有害成分(ポリジメチルシロキサン(D4〜D10))を同定し、その量を測定した(試料1.0gあたりの量(μg);μg/g)。
2)トータルアウトガス量;含有成分の各リテンションタイム(分)が、トルエン=3.99、テトラデカン=12.45、オクタデカン=16.35、ヘキサデカノイックアシド、エチルエステル=18.00の条件で、25(分)までの検出成分をトータルのアウトガス量とした(試料1.0gあたりの量(μg);μg/g)。
【0023】
(2)ペレット付着塩素イオン
ポリアセタール樹脂ペレット10gを用い、精製水10gにより23℃で5分間抽出した。上澄みをイオンクロマトグラフ(ダイオネクス社製、DX−500)を用いて塩素イオン量を測定した(ペレット1.0gあたりの量(μg);μg/g)。
(3)ランプの成形、洗浄
ポリオキシメチレン樹脂ペレットを熱風乾燥機により100℃で3時間乾燥した。その後、5オンスの射出能力を有する射出成形機を使用して、シリンダー温度:200℃、金型温度:100℃に設定し、射出時間:20秒、冷却時間:10秒の条件下、15×6×5mmで重量0.4gのランプを成形した。次にこのランプを60℃に設定された超音波洗浄機を4槽(第1槽は界面活性剤(旭化成ケミカルズ株式会社製エリーズ1000(登録商標)を5%含有)、第2〜第4槽は純水)を使用し、連続で各20分間浸漬超音波洗浄を行った。洗浄後のランプは熱風乾燥機にて、80℃で20時間乾燥を行った。
【0024】
[実施例1]
ポリオキシメチレン樹脂(A)100重量部、着色剤(B1)1重量部および添着剤として流動パラフィン0.05重量部をブレンダーで混合し、ベント口を一ヶ所有する55mmφの単軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpm、吐出量50kg/hrおよびベント減圧度0.07MPaで押出混練を行った。押出された樹脂を水道水(塩素イオン50μg/g含有)で冷却し、ストランドカッターを用いてペレットとし、80℃の熱風乾燥機で5時間乾燥を行った。得られたペレットのアウトガス量は40μg/gで付着塩素イオン量は0.7μg/gであった。このペレットを用いて、ランプの成形、洗浄、乾燥を行いアウトガス量および有害物質量を測定した。結果を表1に示す。
【0025】
[実施例2]
押出された樹脂を水道水(塩素イオン50μg/g含有)で冷却した後、水分除去装置を通して、水分を吸引除去し、ストランドカッターを用いてペレットとした以外は実施例1と全く同様に実施した。得られたペレットのアウトガス量は23μg/gで、付着塩素イオン量は0.3μg/gであった。このペレットを用いて、ランプの成形、洗浄、乾燥を行いアウトガス量および有害物質量を測定した。結果を表1に示す。
【0026】
[実施例3]
ポリオキシメチレン樹脂(A)100重量部、着色剤(B1)1重量部および添着剤として流動パラフィン0.05重量部をブレンダーで混合し、ベント口を一ヶ所有する58mmφの二軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpm、吐出量150kg/hrおよびベント減圧度0.07MPaで押出混練を行った。押出された樹脂は水道水(塩素イオン50μg/g含有)で冷却され、ストランドカッターを用いてペレットとし、80℃の熱風乾燥機で5時間乾燥を行った。得られたペレットのアウトガス量は15μg/gで、付着塩素イオン量は0.7μg/gであった。このペレットを用いて、ランプの成形、洗浄、乾燥を行いアウトガス量および有害物質量を測定した。結果を表1に示す。
【0027】
[実施例4]
押出された樹脂を水道水(塩素イオン50μg/g含有)で冷却した後、水分除去装置を通して、水分を吸引除去し、ストランドカッターを用いてペレットとした以外は実施例3と全く同様に実施した。得られたペレットのアウトガス量は10μg/gで、付着塩素イオン量は0.3μg/gであった。このペレットを用いて、ランプの成形、洗浄、乾燥を行いアウトガス量および有害物質量を測定した。結果を表1に示す。
【0028】
[実施例5]
実施例4の二軸押出機のベント口を一ヶ所増設して2ケ所とし同じ条件で脱気にする以外は実施例4と全く同様に実施した。得られたペレットのアウトガス量は7μg/gで、付着塩素イオン量は0.3μg/gであった。結果を表1に示す。
[実施例6]
実施例4の着色剤(B1)を着色剤(B2)に変更する以外は実施例4と全く同様に実施した。得られたペレットのアウトガス量は10μg/gで、付着塩素イオン量は0.3μg/gであった。結果を表1に示す。
【0029】
[実施例7]
実施例6の着色剤(B2)を着色剤(B3)に変更する以外は実施例4と全く同様に実施した。得られたペレットのアウトガス量は11μg/gで、付着塩素イオン量は0.3μg/gであった。結果を表1に示す。
[実施例8]
実施例7の着色剤(B3)を着色剤(B4)に変更する以外は実施例4と全く同様に実施した。得られたペレットのアウトガス量は12μg/gで、付着塩素イオン量は0.3μg/gであった。結果を表1に示す。
【0030】
[比較例1]
ポリオキシメチレン樹脂(A)100重量部と添着剤として流動パラフィン0.05重量部をブレンダーで混合し、ベント口を一ヶ所有する55mmφの単軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpm、吐出量50kg/hrおよびベント減圧なしで押出混練を行った。押出された樹脂を水道水(塩素イオン50μg/g含有)で冷却し、ストランドカッターを用いてペレットとし、80℃の熱風乾燥機で5時間乾燥を行った。得られたペレットのアウトガス量は55μg/gで、付着塩素イオン量は0.6μg/gであった。このペレットを用いて、ランプの成形、洗浄、乾燥を行いアウトガス量および有害物質量を測定した。結果を表1に示す。
【0031】
[比較例2]
比較例1をベント減圧度0.07MPaとし全く同様に実施した。得られたペレットのアウトガス量は30μg/gで、付着塩素イオン量は0.6μg/gであった。このペレットを用いて、ランプの成形、洗浄、乾燥を行いアウトガス量および有害物質量を測定した。結果を表1に示す。
【0032】
[比較例3]
ポリオキシメチレン樹脂(A)100重量部と着色剤(B1)1重量部および添着剤として流動パラフィン0.05重量部をブレンダーで混合し、ベント口を一ヶ所有する55mmφの単軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpm、吐出量50kg/hrおよびベント減圧なしで押出混練を行った。押出された樹脂を水道水(塩素イオン50μg/g含有)で冷却し、ストランドカッターを用いてペレットとし、80℃の熱風乾燥機で5時間乾燥を行った。得られたペレットのアウトガス量は70μg/gで、付着塩素イオン量は0.7g/gであった。このペレットを用いて、ランプの成形、洗浄、乾燥を行いアウトガス量および有害物質量を測定した。結果を表1に示す。
【0033】
[比較例4]
比較例2の冷却に用いられる水道水を、塩素イオン150μg/gを含有する水に変更する以外は比較例2と全く同様に実施した。得られたペレットのアウトガスは60μg/gで付着塩素イオンは1.3μg/gあった。結果を表1に示す。
【0034】
[比較例5]
比較例3の冷却に用いられる水道水を塩素イオン150μg/g含有する水に変更する以外は比較例3と全く同様に実施した。得られたペレットのアウトガスは85μg/gで付着塩素イオンは1.3μg/gあった。結果を表1に示す。
【0035】
【表1−1】


【表1−2】

【0036】
表1の結果から以下のことがわかった。
1)本発明の方法によって、ハードディスクドライブ用ランプのアウトガスを20μg/g以下と非常に低いレベルに抑えることが可能となった。
2)また、アウトガス中の有害物質は、着色剤中に含まれる量をコントロールすることによって、0.3μg/g以下と非常に低いレベルにすることが可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のハードディスクドライブ用ランプはアウトガスおよびアウトガス中の有害成分を著しく低減させることを可能としたもので、ますます高密度化が進むハードディスクドライブの信頼性向上に有効である。
またハードディスクドライブ以外でもこのアウトガスおよび有害成分を大幅に低減させたポリオキシメチレン樹脂材料はその摩擦摩耗性を生かし、密閉された条件で使用される精密部品用途にも最適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシメチレン樹脂と着色剤とを含み、アウトガスが20μg/g以下であり、アウトガス中の有害成分が0.3μg/g以下であるハードディスクドライブ用ランプ。
【請求項2】
着色剤が無機顔料である請求項1に記載のハードディスクドライブ用ランプ。
【請求項3】
着色剤が酸化亜鉛、酸化チタン、金属複合酸化物、酸化鉄、群青、コバルトブルー、焼成顔料、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラックからなる群から選ばれる無機顔料である請求項1又は2に記載のハードディスクドライブ用ランプ。
【請求項4】
ポリオキシメチレン樹脂がコポリマーである請求項1〜3のいずれか1項に記載のハードディスクドライブ用ランプ。

【公開番号】特開2011−74396(P2011−74396A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283017(P2010−283017)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【分割の表示】特願2006−513989(P2006−513989)の分割
【原出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】