説明

ポリオルガノシロキサン粒子の製造方法

【課題】 ポリオルガノシロキサン粒子の製造毎の平均粒子径のばらつきが小さく、所望の粒子径のポリオルガノシロキサン粒子を再現性よく製造する。
【解決手段】 下記式(1)で表される加水分解性有機ケイ素化合物相を上層に配置し、加水分解用触媒の水/アルコール混合溶媒相を下層に配置し、加水分解性有機ケイ素化合物と加水分解用触媒とを接触させるポリオルガノシロキサン粒子の製造方法において、アルコールが炭素数5〜10の一価アルコール(ROH1)を含む。
1nSi(OR24-n・・・・・・・(1)
(式中、R1は置換または非置換の炭化水素基から選ばれる炭素数1〜10の炭化水素基を示し、R2は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアシル基を示し、nは0〜3の正数である)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリオルガノシロキサン粒子の製造方法に関し、さらに詳しくは、加水分解性有機ケイ素化合物相を上層に配置し、加水分解用触媒の水/アルコール混合溶媒相を下層に配置し、加水分解性有機ケイ素化合物と加水分解用触媒とを接触させるポリオルガノシロキサン粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では、液晶表示装置用液晶セルに備えられた一対の電極間にスペーサーが介設され、かつ液晶物質が封入されて液晶層を形成している。この液晶層は、厚さが均一でないと、液晶セルに表示された画像に色むらや点灯時のコントラストの低下を引き起こすことがある。このため、液晶層には、厚さが均一であることが望まれている。また高速で表示画像を切り替える場合、視野角の広い画像を表示する場合にも、液晶セル内部の液晶層の厚さが均一であること望まれている。
【0003】
また、液晶層の周縁部に位置するシール部についても、基板間距離が不均一であると、これに起因して画像表示ムラやコントラストの低下などの問題を引き起こすことがあり、シール部の厚さも均一であることが要求されている。
特に、STNモードの大画面液晶表示装置では、液晶セル内部の液晶層の厚さをより均一にして、しかもシール部の面積を小さく保ち、表示部の面積を大きく保ちながら電極間距離を一定に保つことが要求されている。
【0004】
このようなシール部の基板間距離および液晶セル内部の液晶層の厚さを均一にするため、従来より、粒径の揃った球状粒子をシール部および液晶セルの電極間に散在して介在させること、すなわちシール用スペーサおよび面内用スペーサとして用いることが行われている。このようなスペーサー粒子としてポリスチレンなどのような有機樹脂粒子、シリカ微粒子あるいは有機樹脂で被覆したシリカ微粒子等が用いられている。
【0005】
しかしながら、ポリスチレンなどの有機樹脂粒子は、柔らかすぎるため、面内用スペーサーとして用いた液晶表示セルでは、液晶セル内部の液晶層に不均一な圧力が負荷されると、この圧力のばらつきに応じてスペーサーが変形し、液晶セル内部の液晶層の厚さを均一に維持できないという問題があり、しかも有機樹脂粒子を面内用スペーサーとして使用するには、散布個数を多くする必要があるという問題点があった。さらには有機樹脂粒子をシール用スペーサーとして用いると、粒子の変形が大きくなり電極間距離を所望の厚さにすることが困難となるという問題があった。
【0006】
また、シリカ微粒子を液晶セルの面内用スペーサーとして用いると、シリカ微粒子の粒度分布がシャープでないと、シリカ微粒子の圧縮変形が小さいことに起因して、液晶セル内部の液晶層の厚さが不均一になるという問題点があった。さらに、液晶表示装置が低温に曝された場合、液晶セル内部で液晶層の熱膨張係数とスペーサーの熱膨張係数とが異なるため、液晶セルの電極と液晶層との間に空隙が生じる、所謂、低温気泡が発生するという問題点があった。
また、シリカ微粒子をシール用スペーサーとして用いると、硬すぎるために電極を損傷したり、さらには断線することがあった。
【0007】
上記のような問題点を解決するため、特開平6−250193号公報では、加水分解可能なシリコン化合物、例えばテトラエトキシシランなどを加水分解してシリカ微粒子を調製し、このシリカ微粒子表面のシラノール基を有機化合物でエステル化して調製したシリカ微粒子を液晶セルの電極間(面内)スペーサーとして用いることが提案されている。
この方法で製造したシリカ微粒子は、適度の硬さと機械的復元性とを有しているため、液晶セルの電極間スペーサーとして好適であるといわれているものの、必ずしも液晶セルの電極間スペーサーとしては不充分であった。
【0008】
また、特開平7−140472号公報には、R1mSi(OR2)4-m
(式中のR1、R2は、それぞれ特定の有機基を表す。mは0〜3の整数である。)
で表される有機珪素化合物を加水分解、縮重合して得られた粒子を100〜1000℃の範囲で温度を変えて熱処理することにより特定の圧縮弾性率を有する液晶セル用スペーサー粒子が得られることが開示されている。
このスペーサー粒子の圧縮弾性率は、上記熱処理工程で粒子内部に存在する有機基の一部を熱分解した後の残存有機基量で制御されている。このような珪素化合物を用いた弾性微粒子は、珪素化合物の加水分解により、R1基は残留し、OR2基は加水分解によってアルコール(R2OH)に転換すると共に、生成するOH基は脱水反応をともなうポリシロキサン結合の生成によって弾性微粒子を形成し、その後乾燥、加熱処理して得られる。この弾性微粒子の、圧縮弾性率、弾性復元率は、加熱処理後の残存する直接ケイ素原子に結合した炭化水素基(R1基)に由来する炭素量に依存する。
【0009】
しかしながら、特開平7−140472号公報に記載されたスペーサー粒子では、粒子径が異なると上記熱処理工程後に粒子内部に残存する有機基量が異なることがあり、また加熱処理量、雰囲気、昇温速度、保持温度、処理温度保持時間など加熱処理条件をバッチ毎に同一にすることは困難であった。このため、弾性微粒子中の残存有機基量の精密な制御は難しく、粒子毎、バッチ毎の圧縮変形率が同一になるように制御することは非常に困難であり、液晶セル用スペーサー粒子の圧縮弾性率を所望の値に調整できないという問題点があった。
また、粒子の外側と内側とで残存有機基量が異なることから粒子全体にわたって圧縮弾性率は一様ではなく、さらに、上記熱処理工程で熱分解された粒子内部の有機基部分にボイドが発生し、この結果、得られた液晶セル用スペーサー粒子の圧縮強度が低下するといった問題点があった。
【0010】
本発明者らは、特開昭63−94224号において、無機絶縁物粒子の表面に合成樹脂粉末を固着した粒子は、液晶層などの液晶表示装置中で粒子が移動することがなく、凝集することが少ないので微妙な厚さの変化にも対応でき、かつセルギャップを均一にできることを提案している。
【0011】
また、本発明者らは、特開平9−59384号において、特定の有機珪素化合物を用いてオルガノポリシロキサン微粒子を製造することによって、上記のような熱処理工程を経ずとも、オルガノポリシロキサン微粒子内部の有機基量が制御され、高い弾性復元率を有し、かつ、粒径の揃った微粒子を得ることが可能であり、この微粒子は液晶セルの電極間スペーサーとして好適であることを提案している。
しかしながら、上記方法では、有機珪素化合物の種類によっては完全に加水分解・縮重合しなかったり、あるいは加水分解・重縮合が遅いために、得られる粒子の収率が低く、しかも収率がバッチによって変動することがあり、粒子径の再現性が不十分であった。
【0012】
さらにまた、特開平4−313727号公報および特開平5−80343号公報には特定範囲の弾性を有する球状粒子を液晶セルの電極間スペーサーとして用いることが提案されており、この球状粒子は、ビニール系プラスチックビーズ、あるいは無機質と有機質とのハイブリッド粒子であることが開示されている。
しかしながら、これらのような従来のスペーサー粒子では、平均的には所望の圧縮弾性率、高い弾性復元率を有しているものの、粒子間のばらつきが大きく、スペーサーとしての機能を充分発現することができなかった。しかも、このような物性値の均一な粒子を得るためには、製造規模を小さくしたり、製造条件を厳しく管理したりする必要があった。
さらに、製造規模を小さくした場合でも、製造バッチ毎のばらつきが問題となることがあった。
【0013】
また、本願出願人は均一な平均粒子径を有するシリカ粒子(核粒子)を調製し、疎水化し、これに界面活性剤存在下に有機珪素化合物に由来する弾性を有する被覆層を形成するポリオルガノシロキサン被覆弾性微粒子の製造方法を提案している(特開2000−204168号公報、特開2000−212422号公報)。
しかしながら、核粒子として粒子径が大きなシリカの核粒子を得るには長時間を要し、さらに弾性被覆層を形成することから、生産性、経済性に難点があった。さらにゲル状物質が生成し、これを除去する必要があった。
【0014】
長尾らは、テトラオルソシリケートを加水分解してシリカ粒子を調製するに際して、Kcl、Licl等の電解質の存在下で加水分解すると、粒子成長速度が速く、新たな粒子の生成を抑制し、粒子径が1μm程度の単分散した粒子が得られ、粒子径分布を調節できることを報告している。(非特許文献:D.Nagao et al.,J.Chem Eng.,Japan 33,468(2000))。
しかしながら、液晶表示装置用のスペーサーとして用いるには、さらに大きな粒子径の粒子が必要とされ、加えて製造毎の粒子径が変動する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平6−250193号公報
【特許文献2】特開平7−140472号公報
【特許文献3】特開平7−140472号公報
【特許文献4】特開昭63−94224号公報
【特許文献5】特開平9−59384号公報
【特許文献6】特開平4−313727号公報
【特許文献7】特開平5−80343号公報
【特許文献8】特開2000−204168号公報
【特許文献9】特開2000−212422号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】D.Nagao et al.,J.Chem Eng.,Japan 33,468(2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、加水分解性有機ケイ素化合物相を上層に配置し、加水分解用触媒の水/アルコール混合溶媒相を下層に配置し、加水分解性有機ケイ素化合物と加水分解用触媒とを接触させるポリオルガノシロキサン粒子の製造方法において、ポリオルガノシロキサン粒子の製造毎の平均粒子径のばらつきが小さく、所望の粒子径のポリオルガノシロキサン粒子を再現性よく製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係るポリオルガノシロキサン粒子の製造方法は、下記式(1)で表される加水分解性有機ケイ素化合物相を上層に配置し、加水分解用触媒の水/アルコール混合溶媒相を下層に配置し、加水分解性有機ケイ素化合物と加水分解用触媒とを接触させるポリオルガノシロキサン粒子の製造方法において、アルコールが炭素数5〜10の一価アルコール(ROH1)を含むことを特徴としている。
1nSi(OR24-n・・・・・・・(1)
(式中、R1は置換または非置換の炭化水素基から選ばれる炭素数1〜10の炭化水素基を示し、R2は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアシル基を示し、nは0〜3の正数である)
【0019】
前記加水分解性有機ケイ素化合物が式(1)におけるnが1の加水分解性有機ケイ素化合物であることが好ましい。
前記加水分解性有機ケイ素化合物が式(1)におけるnが0と1の加水分解性有機ケイ素化合物の混合物であってもよい。
【0020】
前記アルコールがさらに炭素数1〜4の一価アルコール(ROH2)を含んでいてもよい。
前記全アルコール中のROH1の含有量が10重量%以上であることが好ましい。
【0021】
前記ポリオルガノシロキサン粒子の平均粒子径が0.5〜30μmの範囲にあり、粒子径変動係数(1)(CV値(1))が3%以下であることが好ましい。
製造毎の平均粒子径変動係数(2)(CV値(2))が3%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、加水分解性有機ケイ素化合物相を上層に配置し、加水分解用触媒の水/アルコール混合溶媒相を下層に配置し、加水分解性有機ケイ素化合物と加水分解用触媒とを接触させるポリオルガノシロキサン粒子の製造方法において、炭素数が5以上のアルコールを含むために短時間で粒子径が大きく、粒子径が均一で、また、炭素数が1〜4のアルコールを所定比で混合して用いると製造毎の平均粒子径のばらつきが小さく所望の粒子径のポリオルガノシロキサン粒子を再現性よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るポリオルガノシロキサン粒子の製造方法について説明する。
本発明に係るポリオルガノシロキサン粒子の製造方法は、下記式(1)で表される加水分解性有機ケイ素化合物相を上層に配置し、加水分解用触媒の水/アルコール混合溶媒相を下層に配置し、加水分解性有機ケイ素化合物と加水分解用触媒とを接触させるポリオルガノシロキサン粒子の製造方法において、アルコールが炭素数5〜10の一価アルコール(ROH1)を含むことを特徴としている。
1nSi(OR24-n・・・・・・・(1)
(式中、R1は置換または非置換の炭化水素基から選ばれる炭素数1〜10の炭化水素基を示し、R2は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアシル基を示し、nは0〜3の正数である)
【0024】
加水分解性有機ケイ素化合物
本発明に用いる加水分解性有機ケイ素化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル-3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリエキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシドキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリエキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、3-ウレイドイソプロピルプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシ-3-グリシドキシプロピルメチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジアセトキシジメチルシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルシラノール等が挙げられる。
【0025】
本発明では加水分解性有機ケイ素化合物が式(1)におけるnが1の加水分解性有機ケイ素化合物を用いることが好ましい。nが1の加水分解性有機ケイ素化合物を用いると、加水分解速度も速く、短時間で粒子径の大きなポリオルガノシロキサン粒子を得ることができる。
【0026】
本発明では、加水分解性有機ケイ素化合物が式(1)におけるnが0と1の加水分解性有機ケイ素化合物の混合物を用いることもできる。混合物を用いると比較的圧縮弾性率の高いポリオルガノシロキサン粒子を得ることができる。
【0027】
この時の加水分解性有機ケイ素化合物(n=0)のモル数(M0)と加水分解性有機ケイ素化合物(n=1)のモル数(M1)とのモル比(M0)/(M1)は0.01〜0.5、さらには0.02〜0.4の範囲にあることが好ましい。
モル比(M0)/(M1)が0.01未満の場合は、前記加水分解性有機ケイ素化合物(n=0)を混合して使用する効果、例えば粒子強度の高い粒子が得られない場合がある。
モル比(M0)/(M1)が0.5を越えると、反応性の高い加水分解性有機ケイ素化合物(n=0)が加水分解し、加水分解性有機ケイ素化合物(n=1)とのミセルが形成されないためか真球粒子の粒子が得られず、粒子径の制御が困難となる場合がある。
【0028】
加水分解用触媒
加水分解用触媒としては、前記加水分解性有機ケイ素化合物を加水分解することができれば特に制限はないがアルカリ金属の水溶液、アミン水溶液、アンモニア水溶液、アンモニアガス等が挙げられる。なかでもアンモニア水溶液、アンモニアガスは後述する乾燥後、粒子中に残存せず、安価であるので好ましい。
【0029】
アルコール
アルコールとしては炭素数5〜10の一価アルコール(ROH1)が用いられる。具体的には、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、2,2ジメチル−1−プロパノール、2−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、3−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール等が挙げられる。これらアルコールは必要に応じて混合して用いることができる。
【0030】
アルコールの炭素数が4以下であると、加水分解性有機ケイ素化合物の加水分解速度が速いためか、大きな粒子径が得られない場合、または粒子径のコントロールができない場合がある。
アルコールの炭素数が11以上であると、水への溶解度が低く、ミセルの形成が起きないためかゲル化等を生じ、所望の粒子が得られない場合がある。
【0031】
炭素数5〜10の一価アルコール(ROH1)を用いると平均粒子径が大きく粒子径変動係数(CV値)の小さなポリオルガノシロキサン粒子を得ることができる。
この時の平均粒子径はアルコールの種類によっても異なるが概ね5μm以上であり、CV値は3%以下であり、所要時間は概ね2時間以内である。
【0032】
本発明では、前記アルコール(ROH1)に加えて炭素数1〜4の一価アルコール(ROH2)を混合して用いることができる。
炭素数1〜4の一価アルコールとしては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール等およびこれらの混合物が挙げられる。
このようなアルコールを前記炭素数5〜10の一価アルコール(ROH1)と混合することなく単独で用いると、本発明方法では、アルコールの種類によっても異なるが平均粒子径は概ね3μm以下であり、CV値は3%以下であり、所要時間は概ね1時間程度である。
【0033】
なお、本発明では一価アルコールを用いるが、必要に応じて多価アルコールを混合して用いることもできる。
前記アルコール(ROH1)と前記アルコール(ROH2)との混合割合は、全アルコール中のROH1の含有量が10重量%以上、さらには20重量%以上であることが好ましい。
全アルコール中のROH1の含有量が10重量%未満の場合は、炭素数1〜4の一価のアルコールを単独で用いるのと大きな違いがなく、粒子の成長速度を早める効果が小さく、より大きな粒子径のポリオルガノシロキサン粒子を得ることができない場合がある。
【0034】
本発明では、アルコール(ROH1)とアルコール(ROH2)とを混合して用い、混合比を調節することによって得られるポリオルガノシロキサン粒子の平均粒子径を容易に調節することができる。一方、いずれか一方のアルコールのみを用いた場合に粒子径を調節するには、後述する加水分解時の固形分濃度、温度、撹拌速度、pH等の条件のいずれか一条件だけで平均粒子径を調節することは困難であり、このため、正確に所望の平均粒子径のポリオルガノシロキサン粒子を得ることが困難であり、加えて、製造毎の平均粒子径のばらつきが大きくなる問題がある。
【0035】
つぎに、製造方法について具体的に説明する。
先ず、アルコールと水の混合溶媒を調製する。混合溶媒中のアルコールの濃度は0.1〜20重量%、さらには0.2〜10重量%の範囲にあることが好ましい。
混合溶媒中のアルコール濃度が0.1重量%未満の場合は、均一で大きなミセルの形成が起きないためか得られる粒子が小さくなる傾向があり、且つ、加水分解反応時間が長くなる傾向がある。
混合溶媒中のアルコール濃度が20重量%を越えると、加水分解反応時間は短くなるが制御が困難で、粒子径の均一性、再現性が不充分となる場合があり、またアルコールの種類によっては加水分解性有機ケイ素化合物の上層とアルコール/水の下層の分離が不完全になり、この場合も粒子径の均一性、再現性が不充分となる場合がある
なお、この時、所望の粒子径によってアルコール(ROH1)とアルコール(ROH2)とを混合して用いることができる。
【0036】
ついで、前記した有機ケイ素化合物を添加する。この時、有機ケイ素化合物が上層に、混合溶媒が下層に分離した状態になるように、無撹拌下、あるいは緩やかな撹拌下で添加する。
有機ケイ素化合物の添加量は、混合溶媒と有機ケイ素化合物の合計中の有機ケイ素化合物の濃度が固形分(R1nSiO2/4-nまたはSiO2+R1nSiO2/4-n)として0.5〜15重量%、さらには1〜10重量%の範囲にあることが好ましい。
【0037】
有機ケイ素化合物の濃度が固形分として0.5重量%未満の場合は、得られるポリオルガノシロキサン粒子の粒子径が小さくなりすぎる場合があり、加えて生産性が低下する問題がある。
有機ケイ素化合物の濃度が固形分として15重量%を越えると、反応が速く、制御が困難となり、粒子径変動が大きくなる傾向にあり、また、有機ケイ素化合物の種類によっては合着した粒子が非常に多くなる。
【0038】
ついで、下層のアルコールと水の混合溶媒相を緩やかに撹拌しながら、下層に前記した加水分解用触媒を連続的にあるいは断続的に添加する。
加水分解用触媒の添加量は、有機ケイ素化合物を全て加水分解できれば特に制限はなく、有機ケイ素化合物の種類によっても異なるが、分散液のpHが好ましくは7〜13、さらに好ましくは8〜12の範囲となるように添加することが好ましい。
分散液のpHが7未満の場合は有機ケイ素化合物の加水分解がなかなか起こらず、また球状ミセルが形成不充分となるためか、粒子径変動が大きくなる傾向にある。
分散液のpHが13越えると反応が速く、また球状ミセルが形成されず、粒子径変動が大きくなる傾向にあり、また、不定形(非球状)となったり、ゲル物が多く生成する場合がある。
【0039】
加水分解する際の温度は使用するアルコールの種類、沸点、濃度等によっても異なるが、−10〜60℃、さらには5〜50℃の範囲にあることが好ましい。
加水分解温度が−10℃未満の場合は、有機ケイ素化合物の加水分解がなかなか起こらず、また球状ミセルが形成不充分となるためか、粒子径変動が大きくなる傾向にある。
加水分解温度が60℃を越えると、有機ケイ素化合物の加水分解が速く、粒子径変動が大きくなる傾向にある。
【0040】
加水分解用触媒を添加終了後、必要に応じて熟成することができる。熟成することによって、未反応有機ケイ素化合物が無くなり、得られるポリオルガノシロキサン粒子がさらに均一となり(CV値が低下し)、製造再現性も向上する。熟成温度は加水分解時と同じであってもよいが、高くてもよく、通常約20〜95℃、好ましくは30〜90℃の温度で約0.5〜2時間維持することが好ましい。
【0041】
加水分解用触媒を添加終了後、あるいは熟成した後、分散液から粒子を分離し、必要に応じてアルコール等の有機溶媒で洗浄し、ついで、乾燥および/または加熱処理する。
乾燥条件、加熱処理条件は、粒子の用途によって適宜選択することが好ましく、例えば、面内用スペーサとして圧縮弾性率の低い粒子を所望する場合は、50〜200℃程度で乾燥あるいは、200〜500℃程度の比較的低温で加熱処理すればよい。また、シール用スペーサとして圧縮弾性率の高い粒子を所望する場合は、500〜1200℃程度の比較的高温で加熱処理すればよい。
【0042】
このようにして得られるポリオルガノシロキサン粒子の平均粒子径は0.5〜30μm、さらには1〜25μmの範囲にあることが好ましい。
ポリオルガノシロキサン粒子の平均粒子径(Dn)は走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製:JSM-5300型)により写真を撮影し、この画像の250個の粒子について画像解析装置(旭化成(株)製:IP-1000)を用いて測定される。
【0043】
ポリオルガノシロキサン粒子の粒子径変動係数(1)(CV値(1))は3%以下、さらには2%以下であることが好ましい。
粒子径変動係数(1)が3%を越えると、ポリオルガノシロキサン粒子を液晶表示装置用のスペーサに用いた場合、外部からの不均一な圧力に対して電極間距離を精密に一定に保つことができないことがある。
CV値(1)は下記式(2)によって算出される。
CV値(1)=(粒子径標準偏差(σ1)/平均粒子径(Dn))x100・・・・(2)
粒子径標準偏差(σ1)=Σn|Di−Dn|/(n−1)xDn
i:個々の粒子の粒子径、n:250
【0044】
また、前記ポリオルガノシロキサン粒子を製造する毎の平均粒子径変動係数(2)(CV値(2))が3%以下、さらには2%以下であることが好ましい。
製造毎の平均粒子径変動係数(2)は下記式(3)によって算出される。
CV値(2)=(粒子径標準偏差(σ2)/平均粒子径(Dm))x100・・・・(3)
粒子径標準偏差(σ2)=Σn|Dh−Dm|/(m−1)xDm
h:製造毎の平均粒子径、m:10
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0046】
[実施例1]
ポリオルガノシロキサン粒子(1)の調製
水16760gに1−ペンタノール420gを混合し、温度20℃に調整した水―アルコール混合溶媒(1)を調製した。
水―アルコール混合溶媒(1)に有機ケイ素化合物としてメチルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM-13)1362g(10モル)を滴下した。
ついで、下層の水―アルコール混合溶媒(1)を緩やかに撹拌しながら、濃度2.8重量%のアンモニア水96.4gを約1分間で添加した。添加終了後の混合溶媒相のpHは10.5であった。混合溶媒相に、有機ケイ素化合物相が無くなるまで60分間を要した。引き続き、80℃で15時間熟成した。
ついで、遠心分離器にて分離、洗浄し、ついで、110℃で15時間乾燥後、1000℃にて3時間焼成してポリオルガノシロキサン粒子(1)を調製した。
得られたポリオルガノシロキサン粒子(1)について平均粒子径、粒子径変動係数(1)(CV値(1))を測定し、結果を表に示す。
つぎに、前記ポリオルガノシロキサン粒子(1)をさらに9回繰り返し調製し、製造毎の平均粒子径変動係数(2)(CV値(2))を測定し、結果を表に示す。
【0047】
[実施例2]
ポリオルガノシロキサン粒子(2)の調製
水16760gに1−ペンタノール336gとメタノール84gとを混合し、温度20℃に調整した水―アルコール混合溶媒(2)を調製した。
水―アルコール混合溶媒(2)に有機ケイ素化合物としてメチルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM-13)1362g(10モル)を滴下した。
ついで、下層の水―アルコール混合溶媒(2)を緩やかに撹拌しながら、濃度2.8重量%のアンモニア水96.4gを約1分間で添加した。添加終了後の混合溶媒相のpHは10.3であった。混合溶媒相に、有機ケイ素化合物相が無くなるまで50分間を要した。引き続き、80℃で15時間熟成した。
ついで、遠心分離器にて分離、洗浄し、ついで、110℃で15時間乾燥後、1000℃にて3時間焼成してポリオルガノシロキサン粒子(2)を調製した。
得られたポリオルガノシロキサン粒子(2)について平均粒子径、粒子径変動係数(1)(CV値(1))を測定し、結果を表に示す。
つぎに、前記ポリオルガノシロキサン粒子(2)をさらに9回繰り返し調製し、製造毎の平均粒子径変動係数(2)(CV値(2))を測定し、結果を表に示す。
【0048】
[実施例3]
ポリオルガノシロキサン粒子(3)の調製
水16760gに1−ペンタノール252gとメタノール168gとを混合し、温度20℃に調整した水―アルコール混合溶媒(3)を調製した。
水―アルコール混合溶媒(3)に有機ケイ素化合物としてメチルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM-13)1362g(10モル)を滴下した。
ついで、下層の水―アルコール混合溶媒(3)を緩やかに撹拌しながら、濃度2.8重量%のアンモニア水96.4gを約1分間で添加した。添加終了後の混合溶媒相のpHは10.8であった。混合溶媒相に、有機ケイ素化合物相が無くなるまで40分間を要した。引き続き、80℃で15時間熟成した。
ついで、遠心分離器にて分離、洗浄し、ついで、110℃で15時間乾燥後、1000℃にて3時間焼成してポリオルガノシロキサン粒子(3)を調製した。
得られたポリオルガノシロキサン粒子(3)について平均粒子径、粒子径変動係数(1)(CV値(1))を測定し、結果を表に示す。
つぎに、前記ポリオルガノシロキサン粒子(3)をさらに9回繰り返し調製し、製造毎の平均粒子径変動係数(2)(CV値(2))を測定し、結果を表に示す。
【0049】
[実施例4]
ポリオルガノシロキサン粒子(4)の調製
水16760gに1−ペンタノール168gとメタノール252gとを混合し、温度20℃に調整した水―アルコール混合溶媒(4)を調製した。
水―アルコール混合溶媒(4)に有機ケイ素化合物としてメチルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM-13)1362g(10モル)を滴下した。
ついで、下層の水―アルコール混合溶媒(4)を緩やかに撹拌しながら、濃度2.8重量%のアンモニア水96.4gを約1分間で添加した。添加終了後の混合溶媒相のpHは10.4であった。混合溶媒相に、有機ケイ素化合物相が無くなるまで30分間を要した。引き続き、80℃で15時間熟成した。
ついで、遠心分離器にて分離、洗浄し、ついで、110℃で15時間乾燥後、1000℃にて3時間焼成してポリオルガノシロキサン粒子(4)を調製した。
得られたポリオルガノシロキサン粒子(4)について平均粒子径、粒子径変動係数(1)(CV値(1))を測定し、結果を表に示す。
つぎに、前記ポリオルガノシロキサン粒子(4)をさらに9回繰り返し調製し、製造毎の平均粒子径変動係数(2)(CV値(2))を測定し、結果を表に示す。
【0050】
[実施例5]
ポリオルガノシロキサン粒子(5)の調製
水16760gに1−ペンタノール84gとメタノール336gとを混合し、温度20℃に調整した水―アルコール混合溶媒(5)を調製した。
水―アルコール混合溶媒(5)に有機ケイ素化合物としてメチルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM-13)1362g(10モル)を滴下した。
ついで、下層の水―アルコール混合溶媒(5)を緩やかに撹拌しながら、濃度2.8重量%のアンモニア水96.4gを約1分間で添加した。添加終了後の混合溶媒相のpHは10.6であった。混合溶媒相に、有機ケイ素化合物相が無くなるまで25分間を要した。引き続き、80℃で15時間熟成した。
ついで、遠心分離器にて分離、洗浄し、ついで、110℃で15時間乾燥後、1000℃にて3時間焼成してポリオルガノシロキサン粒子(5)を調製した。
得られたポリオルガノシロキサン粒子(5)について平均粒子径、粒子径変動係数(1)(CV値(1))を測定し、結果を表に示す。
つぎに、前記ポリオルガノシロキサン粒子(5)をさらに9回繰り返し調製し、製造毎の平均粒子径変動係数(2)(CV値(2))を測定し、結果を表に示す。
【0051】
[実施例6]
ポリオルガノシロキサン粒子(6)の調製
水16760gに1−ペンタノール42gとメタノール378gとを混合し、温度20℃に調整した水―アルコール混合溶媒(6)を調製した。
水―アルコール混合溶媒(6)に有機ケイ素化合物としてメチルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM-13)1362g(10モル)を滴下した。
ついで、下層の水―アルコール混合溶媒(6)を緩やかに撹拌しながら、濃度2.8重量%のアンモニア水96.4gを約1分間で添加した。添加終了後の混合溶媒相のpHは10.5であった。混合溶媒相に、有機ケイ素化合物相が無くなるまで15分間を要した。引き続き、80℃で15時間熟成した。
ついで、遠心分離器にて分離、洗浄し、ついで、110℃で15時間乾燥後、1000℃にて3時間焼成してポリオルガノシロキサン粒子(6)を調製した。
得られたポリオルガノシロキサン粒子(6)について平均粒子径、粒子径変動係数(1)(CV値(1))を測定し、結果を表に示す。
つぎに、前記ポリオルガノシロキサン粒子(6)をさらに9回繰り返し調製し、製造毎の平均粒子径変動係数(2)(CV値(2))を測定し、結果を表に示す。
【0052】
[実施例7]
ポリオルガノシロキサン粒子(7)の調製
水16760gにヘプタノール420gを混合し、温度20℃に調整した水―アルコール混合溶媒(7)を調製した。
水―アルコール混合溶媒(7)に有機ケイ素化合物としてメチルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM-13)1362g(10モル)を滴下した。
ついで、下層の水―アルコール混合溶媒(7)を緩やかに撹拌しながら、濃度2.8重量%のアンモニア水96.4gを約1分間で添加した。添加終了後の混合溶媒相のpHは10.7であった。混合溶媒相に、有機ケイ素化合物相が無くなるまで80分間を要した。引き続き、80℃で15時間熟成した。
ついで、遠心分離器にて分離、洗浄し、ついで、110℃で15時間乾燥後、1000℃にて3時間焼成しポリオルガノシロキサン粒子(7)を調製した。
得られたポリオルガノシロキサン粒子(7)について平均粒子径、粒子径変動係数(1)(CV値(1))を測定し、結果を表に示す。
つぎに、前記ポリオルガノシロキサン粒子(7)をさらに9回繰り返し調製し、製造毎の平均粒子径変動係数(2)(CV値(2))を測定し、結果を表に示す。
【0053】
[実施例8]
ポリオルガノシロキサン粒子(8)の調製
水16760gに1−ノナナール420gを混合し、温度20℃に調整した水―アルコール混合溶媒(8)を調製した。
水―アルコール混合溶媒(8)に有機ケイ素化合物としてメチルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM-13)1362g(10モル)を滴下した。
ついで、下層の水―アルコール混合溶媒(8)を緩やかに撹拌しながら、濃度2.8重量%のアンモニア水96.4gを約1分間で添加した。添加終了後の混合溶媒相のpHは10.4であった。混合溶媒相に、有機ケイ素化合物相が無くなるまで110分間を要した。引き続き、80℃で15時間熟成した。
ついで、遠心分離器にて分離、洗浄し、ついで、110℃で15時間乾燥後、1000℃にて3時間焼成してポリオルガノシロキサン粒子(8)を調製した。
得られたポリオルガノシロキサン粒子(8)について平均粒子径、粒子径変動係数(1)(CV値(1))を測定し、結果を表に示す。
つぎに、前記ポリオルガノシロキサン粒子(8)をさらに9回繰り返し調製し、製造毎の平均粒子径変動係数(2)(CV値(2))を測定し、結果を表に示す。
【0054】
[実施例9]
ポリオルガノシロキサン粒子(9)の調製
水16728gに1−ペンタノール420gを混合し、温度20℃に調整した水―アルコール混合溶媒(9)を調製した。
水―アルコール混合溶媒(9)に有機ケイ素化合物としてメチルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM-13)1294g(9.5モル)、およびテトラエトキシシラン(多摩化学工業(株)製:正珪酸エチル-A)104g(0.5モル)を滴下した。
ついで、下層の水―アルコール混合溶媒(9)を緩やかに撹拌しながら、濃度2.8重量%のアンモニア水96.4gを約1分間で添加した。添加終了後の混合溶媒相のpHは10.3であった。混合溶媒相に、有機ケイ素化合物相が無くなるまで50分間を要した。引き続き、80℃で15時間熟成した。
ついで、遠心分離器にて分離、洗浄し、ついで、110℃で15時間乾燥後、1000℃にて3時間焼成してポリオルガノシロキサン粒子(9)を調製した。
得られたポリオルガノシロキサン粒子(9)について平均粒子径、粒子径変動係数(1)(CV値(1))を測定し、結果を表に示す。
つぎに、前記ポリオルガノシロキサン粒子(9)をさらに9回繰り返し調製し、製造毎の平均粒子径変動係数(2)(CV値(2))を測定し、結果を表に示す。
【0055】
[実施例10]
ポリオルガノシロキサン粒子(10)の調製
水16760gに1−ペンタノール420gを混合し、温度40℃に調整した水―アルコール混合溶媒(10)を調製した。
水―アルコール混合溶媒(10)に有機ケイ素化合物としてメチルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM-13)1362g(10モル)を滴下した。
ついで、下層の水―アルコール混合溶媒(10)を緩やかに撹拌しながら、濃度2.8重量%のアンモニア水96.4gを約1分間で添加した。添加終了後の混合溶媒相のpHは10.4であった。混合溶媒相に、有機ケイ素化合物相が無くなるまで14分間を要した。引き続き、80℃で15時間熟成した。
ついで、遠心分離器にて分離、洗浄し、ついで、110℃で15時間乾燥後、1000℃にて3時間焼成してポリオルガノシロキサン粒子(10)を調製した。
得られたポリオルガノシロキサン粒子(10)について平均粒子径、粒子径変動係数(1)(CV値(1))を測定し、結果を表に示す。
つぎに、前記ポリオルガノシロキサン粒子(10)をさらに9回繰り返し調製し、製造毎の平均粒子径変動係数(2)(CV値(2))を測定し、結果を表に示す。
【0056】
[実施例11]
ポリオルガノシロキサン粒子(11)の調製
水15218gに1−ペンタノール168gとメタノール252gとを混合し、温度20℃に調整した水―アルコール混合溶媒(11)を調製した。
水―アルコール混合溶媒(11)に有機ケイ素化合物として3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM-503)2904g(10モル)を滴下した。
ついで、下層の水―アルコール混合溶媒(11)を緩やかに撹拌しながら、濃度2.8重量%のアンモニア水96.4gを約1分間で添加した。添加終了後の混合溶媒相のpHは10.4であった。混合溶媒相に、有機ケイ素化合物相が無くなるまで70分間を要した。引き続き、80℃で15時間熟成した。
ついで、遠心分離器にて分離、洗浄し、ついで、110℃で15時間乾燥後、1000℃にて3時間焼成してポリオルガノシロキサン粒子(11)を調製した。
得られたポリオルガノシロキサン粒子(11)について平均粒子径、粒子径変動係数(1)(CV値(1))を測定し、結果を表に示す。
つぎに、前記ポリオルガノシロキサン粒子(11)をさらに9回繰り返し調製し、製造毎の平均粒子径変動係数(2)(CV値(2))を測定し、結果を表に示す。
【0057】
[比較例1]
ポリオルガノシロキサン粒子(R1)の調製
水16760gにメタノール420gを混合し、温度20℃に調整した水―アルコール混合溶媒(R1)を調製した。
水―アルコール混合溶媒(R1)に有機ケイ素化合物としてメチルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM-13)1362g(10モル)を滴下した。
ついで、下層の水―アルコール混合溶媒(R1)を緩やかに撹拌しながら、濃度2.8重量%のアンモニア水96.4gを約1分間で添加した。添加終了後の混合溶媒相のpHは10.6であった。混合溶媒相に、有機ケイ素化合物相が無くなるまで12分間を要した。引き続き、80℃で15時間熟成した。
ついで、遠心分離器にて分離、洗浄し、ついで、110℃で15時間乾燥後、1000℃にて3時間焼成してポリオルガノシロキサン粒子(R1)を調製した。
得られたポリオルガノシロキサン粒子(R1)について平均粒子径、粒子径変動係数(1)(CV値(1))を測定し、結果を表に示す。
つぎに、前記ポリオルガノシロキサン粒子(R1)をさらに9回繰り返し調製し、製造毎の平均粒子径変動係数(2)(CV値(2))を測定し、結果を表に示す。
【0058】
[比較例2]
ポリオルガノシロキサン粒子(R2)の調製
水16760gに1−ペンタノール21gとメタノール399gとを混合し、温度20℃に調整した水―アルコール混合溶媒(R2)を調製した。
水―アルコール混合溶媒(R2)に有機ケイ素化合物としてメチルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM-13)1362g(10モル)を滴下した。
ついで、下層の水―アルコール混合溶媒(R2)を緩やかに撹拌しながら、濃度2.8重量%のアンモニア水96.4gを約1分間で添加した。添加終了後の混合溶媒相のpHは10.4であった。混合溶媒相に、有機ケイ素化合物相が無くなるまで13分間を要した。引き続き、80℃で15時間熟成した。
ついで、遠心分離器にて分離、洗浄し、ついで、110℃で15時間乾燥後、1000℃にて3時間焼成してポリオルガノシロキサン粒子(R2)を調製した。
得られたポリオルガノシロキサン粒子(R2)について平均粒子径、粒子径変動係数(1)(CV値(1))を測定し、結果を表に示す。
つぎに、前記ポリオルガノシロキサン粒子(R2)をさらに9回繰り返し調製し、製造毎の平均粒子径変動係数(2)(CV値(2))を測定し、結果を表に示す。
【0059】
[比較例3]
ポリオルガノシロキサン粒子(R3)の調製
水16760gにブタノール420gを混合し、温度20℃に調整した水―アルコール混合溶媒(R3)を調製した。
水―アルコール混合溶媒(R3)に有機ケイ素化合物としてメチルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM-13)1362g(10モル)を滴下した。
ついで、下層の水―アルコール混合溶媒(R3)を緩やかに撹拌しながら、濃度2.8重量%のアンモニア水96.4gを約1分間で添加した。添加終了後の混合溶媒相のpHは10.5であった。混合溶媒相に、有機ケイ素化合物相が無くなるまで30分間を要した。引き続き、80℃で15時間熟成した。
ついで、遠心分離器にて分離、洗浄し、ついで、110℃で15時間乾燥後、1000℃にて3時間焼成してポリオルガノシロキサン粒子(R3)を調製した。
得られたポリオルガノシロキサン粒子(R3)について平均粒子径、粒子径変動係数(1)(CV値(1))を測定し、結果を表に示す。
つぎに、前記ポリオルガノシロキサン粒子(R3)をさらに9回繰り返し調製し、製造毎の平均粒子径変動係数(2)(CV値(2))を測定し、結果を表に示す。
【0060】
[比較例4]
ポリオルガノシロキサン粒子(R4)の調製
水16760gにウンデカノール420gを混合し、温度20℃に調整した水―アルコール混合溶媒(R4)を調製した。
水―アルコール混合溶媒(R4)に有機ケイ素化合物としてメチルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM-13)1362g(10モル)を滴下した。
ついで、下層の水―アルコール混合溶媒(R4)を緩やかに撹拌しながら、濃度2.8重量%のアンモニア水96.4gを約1分間で添加した。添加終了後の混合溶媒相のpHは10.8であった。混合溶媒相は、2時間経過後、ゲルの生成が認められたのでその後の調製を中止した。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される加水分解性有機ケイ素化合物相を上層に配置し、加水分解用触媒の水/アルコール混合溶媒相を下層に配置し、加水分解性有機ケイ素化合物と加水分解用触媒とを接触させるポリオルガノシロキサン粒子の製造方法において、アルコールが炭素数5〜10の一価アルコール(ROH1)を含むことを特徴とするポリオルガノシロキサン粒子の製造方法。
1nSi(OR24-n・・・・・・・(1)
(式中、R1は置換または非置換の炭化水素基から選ばれる炭素数1〜10の炭化水素基を示し、R2は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアシル基を示し、nは0〜3の正数である)
【請求項2】
前記加水分解性有機ケイ素化合物が式(1)におけるnが1の加水分解性有機ケイ素化合物であることを特徴とする請求項1に記載のポリオルガノシロキサン粒子の製造方法。
【請求項3】
前記加水分解性有機ケイ素化合物が式(1)におけるnが0と1の加水分解性有機ケイ素化合物の混合物であることを特徴とする請求項1に記載のポリオルガノシロキサン粒子の製造方法。
【請求項4】
前記アルコールがさらに炭素数1〜4の一価アルコール(ROH2)を含むこと特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリオルガノシロキサン粒子の製造方法。
【請求項5】
前記全アルコール中のROH1の含有量が10重量%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリオルガノシロキサン粒子の製造方法。
【請求項6】
前記ポリオルガノシロキサン粒子の平均粒子径が0.5〜30μmの範囲にあり、粒子径変動係数(1)(CV値(1))が3%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリオルガノシロキサン粒子の製造方法。
【請求項7】
製造毎の平均粒子径変動係数(2)(CV値(2))が3%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリオルガノシロキサン粒子の製造方法。

【公開番号】特開2011−6592(P2011−6592A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152184(P2009−152184)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】