説明

ポリオルガノシロキサン粒子及び有機無機複合粒子の製造方法

【課題】所望の粒子径を有し、製造ロット間における粒子径のバラツキが少ないポリオルガノシロキサン粒子および有機無機複合粒子の製造方法を提案する。
【解決手段】本発明のポリオルガノシロキサン粒子および有機無機複合粒子の製造方法は、アルコキシシラン化合物の加水分解縮合反応によりポリオルガノシロキサン粒子を合成する合成工程を含み、且つ、上記合成工程に先立って、反応容器を有機溶剤で洗浄した後、さらに、水/有機溶剤の混合溶媒で洗浄することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオルガノシロキサン粒子および有機無機複合粒子の製造方法に関するものであり、より詳細には、所望の粒子径を有し、さらには、製造ロット間における粒子径の変動が少ないポリオルガノシロキサン粒子および有機無機複合粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置などの表示ディスプレイやタッチパネルなどのセル間隙(またはパネル間隙)用のスペーサー、マイクロ素子実装用の導電性接着剤、および、異方導電性接着剤などの導電性間隙部材などには充填剤として、重合体粒子が広く用いられている。これらの用途においては、粒子形状が略均一であること、柔軟で弾力性に優れることなどが求められており、かかる観点から、重合体粒子の材料として、有機材料や、有機成分と無機成分とを併用した有機無機複合材料が用いられている(特許文献1など)。
【0003】
上記要求特性の中でも特に粒子径に対する要求は高く、粒度(粒子径)分布が狭い単分散の重合体粒子を製造する方法が多数検討されている。例えば、特許文献2には、ケイ素化合物を加水分解、縮合させて得られたポリオルガノシロキサン粒子を、特定の計算式により導き出される希釈倍率で希釈し、所望の粒径となるまで粒子径を測定しつつ、成長反応を行う方法が記載されている。また、特許文献3では、球状シリコーン微粒子の粒子径をばらつかせる原因が、反応系内に存在する塩素やイオン性物質にあるとして、反応系内に存在する塩素含有量や、イオン性物質量を低減させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−199671号公報、特許請求の範囲など
【特許文献2】特開2002−80598号公報、特許請求の範囲、[0006]など
【特許文献3】特開平6−248081号公報、特許請求の範囲など
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さらに、上記用途に用いられる重合体粒子は、最終製品間における品質のバラツキを抑える観点から、製造ロット間で粒子径の変動が少ないものであることが求められる。しかしながら、従来の方法では、同一の条件を採用していても、重合体粒子の製造を複数回行うと、目的とする粒子径に対して40%程度のバラツキが生じることが指摘されている(特許文献2)。このように製造ロット間で粒子径がばらつく場合には、当該重合体粒子を使用する製品、特に、上述のような画像表示装置におけるセル間隙用のスペーサーや、導電性間隙部材に用いる場合には、製品品質を一定に保つことが困難になるといった問題があった。
【0006】
本発明は、上述のような問題に着目してなされたものであって、その目的は、所望の粒子径を有し、特に、製造ロット間における粒子径の変動が少ないポリオルガノシロキサン粒子および有機無機複合粒子の製造方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねたところ、ポリオルガノシロキサン粒子の合成を繰り返し行う際に見られる製造ロット間における粒子径のバラツキが、出発原料の配合量、反応時間、温度といった反応条件に加えて、合成反応に使用する反応容器の洗浄方法にも大きく影響されることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、上記課題を解決し得た本発明の製造方法とは、アルコキシシラン化合物の加水分解縮合反応によりポリオルガノシロキサン粒子を製造する方法であって、上記ポリオルガノシロキサン粒子の合成に先立って、反応容器を有機溶剤で洗浄した後、さらに、水/有機溶剤の混合溶媒で洗浄するところに要旨を有する。
【0009】
本発明の製造方法により、製造ロット間における粒子径のバラツキが抑えられる理由について、本発明者らは以下のように考えている。従来行われてきた洗浄方法では、出発原料や生成したシード粒子および有機無機複合体などが反応容器から十分に取り除かれておらず、同一の反応容器を繰り返し使用して有機無機複合粒子を製造する場合には、これらの成分がシード粒子生成の際の核として作用するため、あるいは、核形成時の初期段階において(析出段階)、核形成数の決定に大きく影響するため、同一条件を採用していても、生成する粒子数が多くなったり、製造ロット間において粒子径および粒度分布に変動が生じていたものと考えられる。
【0010】
なお、実験室レベルであれば、操作の度に反応容器をクレンザーなどで磨いて洗浄すれば、反応容器に極微量付着している残留成分を除去することはできるが、実験室レベルとはスケールが大きく異なる実操業において、実験室レベルの洗浄作業を行うことは、労力や時間を浪費するのみならず、製造装置の稼働率も低下させ、生産性を著しく害する結果となり、現実的ではない。
【0011】
本発明法によれば、磨き操作などを行わなくても、特定の有機溶媒で反応容器を洗浄することで反応容器内の微量残留成分が十分に除去され、製造ロット間における粒子径の変動を抑えることができるので、生産性を害することなく、品質の安定した有機無機複合粒子が得られる。
【0012】
このような問題は、技術の進歩により、一層厳密な粒子径の変動抑制が要求された結果、新たに生じてきたものであり、本発明と同様の観点から上記問題を見つめ、その解決策や、そのヒントとなる技術的思想を与えるような提案は存在していなかった。
【0013】
上記アルコキシシラン化合物は、重合性二重結合を有する化合物であるのが好ましい。
【0014】
本発明の製造方法では、上記混合溶媒に含まれる有機溶剤は、アルコール類、エーテル類およびケトン類よりなる群から選択される1種以上のものであるのが好ましく、より好ましい有機溶剤はアルコール類であり、さらに好ましくはメタノールである。
【0015】
また、上記混合溶媒に含まれる水の電気伝導度が5μS/cm以下であるのが好ましい。
【0016】
本発明には、上記ポリオルガノシロキサン粒子を用いた有機無機複合体粒子の製造方法も含まれ、当該製造方法とは、上記方法で得られたポリオルガノシロキサン粒子に、ラジカル重合性ビニルモノマー成分を吸収させる吸収工程、および、上記吸収工程で吸収させたモノマー成分をラジカル重合させる重合工程を含むところに要旨を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の製造方法によれば、製造ロット間におけるポリオルガノシロキサン粒子の粒子径のバラツキが低レベルに抑えられるため、所望の粒子径を有する有機無機複合粒子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実験例1の結果を示すグラフである。
【図2】実験例2の結果を示すグラフである。
【図3】実験例3の結果を示すグラフである。
【図4】実験例5の結果を示すグラフである。
【図5】実験例6の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のポリオルガノシロキサン粒子の製造方法とは、アルコキシシラン化合物の加水分解反応、縮合反応によりポリオルガノシロキサンの粒子を製造する方法であって、上記ポリオルガノシロキサン粒子の合成に先立って、反応容器を有機溶剤で洗浄した後、さらに、水/有機溶剤の混合溶媒で洗浄するところに特徴を有するものである。
【0020】
まず、ポリオルガノシロキサン粒子の合成工程に先立って行う反応容器の洗浄方法について説明する(以下、洗浄工程という場合がある)。
【0021】
本発明の製造方法では、まず、ポリオルガノシロキサン粒子の合成に用いる反応容器を有機溶剤で洗浄する(第1次洗浄工程)。有機溶剤による洗浄は、反応容器に備えられている攪拌装置を使用すればよい。すなわち、攪拌装置で反応容器に添加した有機溶剤を攪拌することで、反応容器内部を洗浄すればよい。なお、攪拌装置が備えられていない場合であっても、適宜、攪拌装置を使用すればよい。
【0022】
この第1次洗浄工程に使用する有機溶剤の量は、反応容器の容量および前ロットにおけるポリオルガノシロキサン粒子または有機無機複合粒子合成時の反応液の液量に応じて決定すればよいが、例えば、ポリオルガノシロキサン粒子の合成における反応溶液量の120%〜250%程度の量の有機溶剤を使用することが好ましい。
【0023】
洗浄に要する時間は、0.5時間〜24時間とするのが好ましい。より好ましくは0.5時間〜12時間であり、さらに好ましくは0.5時間〜4時間である。
【0024】
本発明の製造方法で使用する有機溶剤は、出発原料や生成物であるポリオルガノシロキサン粒子を完全に溶解するものが好ましい。例えば、溶解度パラメーター(SP値)が9(cal/cm3)1/2〜15(cal/cm3)1/2程度の有機溶剤を用いるのが好ましい。SP値が上記範囲に含まれる有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール及びプロピレングリコール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランおよびエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、および、アセトン等のケトン類などが挙げられる。これらの中でも、アルコール類が好ましく、特に、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールが好ましい。
【0025】
次いで、反応容器から、第1次洗浄工程で使用した有機溶剤を排出した後、水/有機溶剤からなる混合溶媒で、反応容器を洗浄する(第2次洗浄工程)。
【0026】
第2次洗浄工程で使用する混合溶媒は、水および有機溶剤の合計100質量%に対して、有機溶剤を60質量%〜95質量%含むものであるのが好ましい。より好ましくは65質量%〜90質量%であり、さらに好ましくは70質量%〜90質量%である。
【0027】
上記混合溶媒に含まれる有機溶剤は、第1次洗浄工程における有機溶媒と同様、溶解度パラメーター(SP値)を目安として選択すればよく、例えばSP値が9(cal/cm3)1/2〜15(cal/cm3)1/2の有機溶媒が好ましい。溶解度パラメータが上記範囲の有機溶剤は、ポリオルガノシロキサン粒子を溶解できるので、洗浄効果が得られやすいからである。具体的には、アルコール類、エーテル類、および、ケトン類よりなる群から選択される1種以上の有機溶媒を使用することが推奨される。アルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール及びプロピレングリコール等、エーテル類としてはテトラヒドロフラン、テトラヒドロピランおよびエチレングリコールモノメチルエーテル等、ケトン類としてはアセトンが好ましい有機溶媒として例示できる。これらの中でもアルコール類が好ましく、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールがより好ましく、特にメタノールが好ましい。尚、上記有機溶剤は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上の有機溶剤を用いる場合、メタノールを含むものであるのが好ましい。この場合、有機溶剤100質量%中におけるメタノールの配合量を50質量%〜99質量%とするのが好ましい。より好ましくは70質量%〜98質量%である。
【0028】
上記混合溶媒に含まれる水は、例えば、電気伝導度が5μS/cm以下であるのが好ましい。より好ましくは3μS/cm以下であり、さらに好ましくは1μS/cm以下である。電気伝導度が上記要件を満足する水は、純水あるいは超純水の製造装置で処理することにより調製できる。
【0029】
上記第1次、第2次洗浄工程は反応装置を温めながら行ってもよく、また、洗浄に使用する有機溶剤および混合溶媒を加温して用いてもよい。加温する場合、洗浄に使用する反応容器内の溶剤の温度が0℃〜65℃となるようにすることが推奨される。より好ましくは10℃〜65℃であり、さらに好ましくは20℃〜65℃である。
【0030】
また、上記第1次、第2次洗浄工程の終了後には、洗浄に使用した溶剤で反応容器内壁を洗い流すのが好ましい。これにより、反応容器内にわずかに残存する洗浄液に含まれる汚れも洗い流すことができるからである。
【0031】
さらに、上記洗浄工程の終了後には、反応容器を乾燥させる工程を設けてもよい。乾燥方法は特に限定されないが、例えば、反応容器を減圧して乾燥させればよい。なお、この際、反応容器内に微小な夾雑物が入り込まないようにするのが好ましい。このような夾雑物は、ポリオルガノシロキサン粒子生成時に核として作用すると考えられ、上述の洗浄工程を設けていても、生成するポリオルガノシロキサン粒子(シード粒子)の粒子径がばらつき、最終的に得られる有機無機複合粒子の粒子径に変動が生じる場合があるからである。
【0032】
本発明に係る有機無機複合粒子の製造に用いられる反応容器は特に限定されず、ステンレス鋼などの金属製の反応容器、ガラス製の反応容器など従来公知のものはいずれも使用できる。なお、これらの中でも、金属製の反応容器を用いる場合には、本発明法による効果が顕著に得られる。
【0033】
本発明に係る有機無機複合粒子は、無機質成分を含むポリオルガノシロキサン粒子(シード粒子)と有機質成分であるビニル系重合体とを必須としてなる複合体粒子である。上記ポリオルガノシロキサン粒子は、後述するように重合性不飽和結合を有するシリコン化合物を必須とする無機化合物原料を加水分解、縮合してなるポリシロキサン骨格構造からなる粒子、例えば、ビニル基、特に(メタ)アクリロキシ基を有するポリオルガノシロキサン粒子であるのが好ましい。そして、上記有機質成分であるビニル系重合体は、このポリオルガノシロキサン粒子の中に含まれている。つまり、本発明に係る有機無機複合粒子とは、主として上記ポリオルガノシロキサンからなる外殻の中にビニル系重合体とポリオルガノシロキサンが混在している粒子である。以下、本発明の製造方法について、各工程に分けて詳細に説明する。
【0034】
〔ポリオルガノシロキサン粒子の合成工程〕
本発明に係るポリオルガノシロキサン粒子の合成工程とは、水/アルコールの混合溶媒の存在下において、アルコキシシラン化合物の加水分解、縮合反応を行って、ポリオルガノシロキサン粒子を得る工程である。なお、この縮合反応時には、触媒としてアンモニアなどの塩基性触媒を用いてもよい。
【0035】
上記ポリオルガノシロキサン粒子は、アルコキシシラン化合物を出発原料とするものであり、重合性不飽和結合と加水分解性シリル基とを有する加水分解性シリコン化合物群(以下、重合性シリコン化合物ということがある)を必須的に含むものであるのが好ましい。粒子形成後に吸収させるラジカル重合性モノマーとの共重合が可能になるからである。これらの重合性シリコン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリアセトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシエトキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
【0036】
重合性シリコン化合物の中でも、下記式(1)で表される(メタ)アクリロキシ基を有する重合性シリコン化合物(1)が好ましい。
【0037】
【化1】

【0038】
(上記一般式(1)中、Raは、水素原子またはメチル基を表し、Rbは、置換基を有していても良い炭素数1〜20の2価の有機基を表し、Rcは、同一または異なって、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基および炭素数2〜5のアシル基よりなる群から選択される少なくとも1つの1価基を表す。Rdは、同一または異なって、炭素数1〜5のアルキル基およびフェニル基よりなる群から選択される少なくとも1つの1価の基を示す。lは1または2であり、mは0または1である。)
【0039】
重合性シリコン化合物(1)としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリアセトキシシラン、γ−メタクリロキシエトキシプロピルトリメトキシシラン(または、γ−トリメトキシシリルプロピル−β−メタクリロキシエチルエーテルともいう)、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のビニル基を有するシリコン化合物を挙げることができる。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。上記(メタ)アクリロキシ基を有するアルコキシシランの中でも、最も好ましいのは、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランである。
【0040】
上記重合性シリコンン化合物(1)と共に、必要に応じて、下記一般式(2)
【0041】
【化2】

【0042】
(上記一般式(2)中、Reは同一または異なって、炭素数1〜20のアルキル基と、エポキシ基を有する炭素数1〜20のアルキル基と、炭素数6〜20のアリール基とからなる群から選ばれる少なくとも1つの1価基を示し;Rfは同一または異なって、水素原子と、炭素数1〜5のアルキル基と、炭素数2〜5のアシル基とからなる群から選ばれる少なくとも1つの1価基を示す。nは0〜3の整数である。)で示されるアルコキシシラン(以下、非重合性シリコン化合物(2)ということがある)を併用してもよい。
【0043】
非重合性シリコン化合物(2)としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラアセトキシシラン等の上記一般式(2)においてn=0の4官能性シラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等の上記一般式(2)においてn=1の3官能性シラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジアセトキシジメチルシラン、ジフェニルジシランジオール等の上記一般式(2)においてn=2の2官能性シラン;等を挙げることができる。これらの中でも、加水分解速度がある程度大きく、ポリオルガノシロキサン粒子が速やかに生成するという点からはn=1の3官能シランを用いるのが特に好ましい。上記非重合性シリコン化合物(2)は、1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
【0044】
シリコン化合物(1)および(2)の誘導体としては、特に限定はされないが、例えば、シリコン化合物(1)および(2)が含有するORc 基またはORf 基に関して、その少なくとも1つがβ−ジカルボニル基および/または他のキレート化合物を形成し得る基で置換された化合物と、シリコン化合物(1)および(2)および/またはそのキレート化合物を部分的に加水分解・縮合して得られた低縮合物と、からなる群より選ばれる少なくとも1つが好ましい。
【0045】
本発明に係るポリオルガノシロキサン粒子(シード粒子)は、上記シリコン化合物群を、水を含む溶媒中で加水分解させ縮合させて得られる。加水分解および縮合については、一括、分割、連続等、任意の方法を採ることができる。加水分解および縮合をさせるにあたり、アンモニア、尿素、エタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等の触媒を用いてもよい。
【0046】
本発明に係る合成工程では、アルコールを必須とする混合溶媒を用いる。反応溶媒として用いるアルコールは特に限定されず、使用するシリコン化合物に応じて適宜変更すればよい。好ましいアルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等が挙げられ、より好ましくはメタノールである。例えば、シリコン化合物としてメトキシシランを用いる場合には、メタノールを反応溶媒とするのが好ましく、また、エトキシシランをシリコン化合物として用いる場合には、エタノールを反応溶媒とすることが推奨される。
【0047】
上記混合溶媒には、アルコールの他に、水、その他の有機溶剤が含まれていてもよい。好ましくは水である。混合溶媒に水が含まれる場合、好ましい水/アルコールの混合割合は、95/5〜50/50(質量比)であり、より好ましくは95/5〜60/40であり、さらに好ましくは90/10〜65/35である。
【0048】
上記混合溶媒に使用する水としては、イオン交換水、純水、超純水などが挙げられる。これらの中でも、電気伝導度5μS/cm以下の超純水が好ましい。なお、超純水は、イオン交換装置や逆浸透膜純水製造装置、限外ろ過装置などで、無機イオン、溶存気体、固形粒子などを除去して得られる。
【0049】
上記反応溶媒には、水、アルコールに加えて、その他の有機溶剤を含んでいてもよい。他の有機溶剤としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;イソオクタン、シクロヘキサン等の(シクロ)パラフィン類;ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類などが好ましく挙げられる。これらは、1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
【0050】
加水分解および縮合反応時の条件は、特に限定はされないが、例えば、反応容器に、上記シリコン化合物群、反応溶媒および必要に応じて触媒を添加、混合し、0℃〜100℃、好ましくは0℃〜70℃の温度範囲で、30分〜100時間攪拌することによって行われる。
【0051】
上記加水分解および縮合を行うにあたっては、水濃度は50質量%〜99.99質量%、触媒濃度は0.01質量%〜10質量%、有機溶剤濃度は0質量%〜90質量%とし、上記シリコン化合物群の濃度は0.1質量%〜30質量%となるように、上記シリコン化合物群を0.001時間〜500時間かけて添加するのが好ましく、5分以内で添加し終わることがより好ましい。反応温度は0℃〜100℃に設定することが推奨される。
【0052】
本発明に係る方法においては、上記シリコン化合物群を、水を含む溶媒中で、適切な条件下で加水分解および縮合させることにより粒子が析出し、スラリーが生成する。析出した粒子は、上述の(メタ)アクリロキシ基を有するシリコン化合物(1)を必須成分として用いて得られたものであるため、(メタ)アクリロキシ基を有するポリオルガノシロキサン粒子が得られる。ここで、適切な条件とは、特に限定はされないが、例えば、得られたスラリーにおいて、重合性シリコン化合物(1)および非重合性シリコン化合物(2)の濃度(原料化合物に換算)が20質量%以下、水濃度が50%以上、触媒濃度が10質量%以下となるような条件が好ましい。
【0053】
これまで、本発明に係る合成工程として、上記アルコキシシラン化合物を反応系に一時に添加して、1段階で加水分解、縮合反応を行ってポリオルガノシロキサン粒子を得る方法について述べてきたが、より精度の高い粒子径の制御を行う観点からは、合成工程を2段階以上の複数の工程に分けて行うことも、推奨される本発明の実施態様である。
【0054】
2段階の工程を採用してポリオルガノシロキサン粒子を得る場合であれば、上記合成工程は、ポリオルガノシロキサンの1次シード粒子を得る生成工程と、生成工程で得られた1次シード粒子を成長させて2次シード粒子を得る成長工程とに分けて行うことができる。粒子径の制御は、得られる有機無機複合粒子の物性を安定させる観点からも望まれることである。例えば、粒子径のバラツキ自体は、後述する吸収工程においてシード粒子に吸収させるモノマー成分の使用量を増減させることで、ある程度調整できる。
【0055】
しかしながら、このような調整を行った場合、製造ロットによって粒子中の有機質成分量と無機質成分量との割合含有量が異なってしまうため、有機無機複合粒子の物性(機械的特性、光学特性など)にバラツキが生じる。したがって、このような物性のバラツキを抑制するためにも、シード粒子径は製造ロット間におけるバラツキが小さいものであるのが好ましく、予め、シード粒子の生成および/または成長過程(あるいは合成工程)において、これらの成分量を調整しておくことが好ましい。以下、合成工程を2段階で行う場合について説明する。
【0056】
〔1次シード粒子の生成工程〕
上述のように、1次シード粒子の生成工程とは、上記アルコキシシラン化合物の加水分解、縮合反応を行って、ポリオルガノシロキサン粒子の核となる縮合体を生成させる工程である。このとき使用可能なアルコキシシランとしては、上述のものと同様のものが用いられる。また、反応溶媒も、上記合成工程と同様の条件を採用すればよい。
【0057】
合成工程を2段階に分けて行う場合、1次シード粒子の生成工程において、出発原料である上記シリコン化合物群の濃度は、1質量%〜30質量%とするのが好ましい。より好ましくは2質量%〜20質量%であり、さらに好ましくは2質量%〜15質量%である。出発原料であるシリコン化合物群の濃度が1質量%未満では反応が進行し難く、縮合体の生成に長時間要したり、あるいは得られる縮合体の粒子数が増加したりする虞がある。一方、濃度が高すぎる場合には、多数の粒子が生成し、後述する成長工程を採用しても、最終生成物である有機無機重合体の成長が不十分となり、所期サイズを有する粒子が得られなかったり、後述の吸収工程における原材料の増減が必要になり、経済的にも、また安定操業面からも望ましくない。
【0058】
〔2次シード粒子への成長工程〕
2次シード粒子への成長工程とは、上記生成工程で得られた1次シード粒子含有水溶液に、さらに、出発原料であるアルコキシシラン化合物を添加して、所望の粒子径になるまで1次シード粒子径を増大(成長)させる工程である。このとき、添加するアルコキシシラン化合物は、上記生成工程で例示したものと同様のものが使用できる。なお、アルコキシシラン化合物の添加量は、下記式(3)を満足する量とするのが好ましい。
【0059】
【数1】

【0060】
ここで、上記式(3)中、rは1次シード粒子径、Rは2次シード粒子の設定粒子径、Bは、生成工程で使用したアルコキシシラン化合物の質量(g)、Aは成長工程において添加するアルコキシシラン化合物量(g)を意味する。
【0061】
このように、2段階の工程を採用することで、最初に生成し核となる縮合体の発生量のコントロールがより一層容易となる。また、成長工程では、すでに生成している縮合体を核として使用するため、新たな粒子の生成よりも、成長反応が優先して進行することとなる。
【0062】
成長工程に導入する1次シード粒子の濃度は0質量%〜15質量%とするのが好ましい。より好ましくは0.5質量%〜10質量%であり、さらに好ましくは1質量%〜10質量%である。
【0063】
〔ポリオルガノシロキサン粒子〕
上記合成工程(あるいは、生成および/または成長工程)において得られるポリオルガノシロキサン粒子(1次および2次シード粒子)の形状は、球状、針状、板状、鱗片状、粉砕(破砕)状、俵状、繭状、金平糖状など任意の粒子形状でよく、特に限定されない。
【0064】
上記1次および2次シード粒子(ポリオルガノシロキサン粒子)の平均粒子径は、目的とする有機無機複合粒子(ビニル系モノマー重合後の最終生成物)の粒子径に応じて適宜決定すればよいが、例えば、粒子径3〜30μmの有機無機複合粒子を得たい場合であれば、1次シード粒子の粒子径は、0.3μm〜12μmであるのが好ましく、より好ましくは0.4μm〜10μmであり、2次シード粒子(ポリオルガノシロキサン粒子)の粒子径は、0.5μm〜12μmであるのが好ましく、より好ましくは0.6μm〜11μm、最も好ましくは0.7μm〜10μmである。ポリオルガノシロキサン粒子の粒子径が上記範囲内であれば、後述するビニル重合性モノマーの吸収が効率よく進行するといった有利な効果を発揮することができる。また、上記ポリオルガノシロキサン粒子の粒子径が0.5μm未満であると、ビニル重合性モノマーの吸収が十分に行えない場合があり、12μmを超えると、粒子の質量が大きくなって反応器中で重合体粒子の沈降が起こり、粒子同士が凝集し易くなる場合がある。なお、本発明では、コールター原理を採用した精密粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター社製の「マルチサイザーII」など)により測定される中位径(50%粒子径)の値をシード粒子の粒子径として採用する。
【0065】
上記本発明に係る製造方法を採用すれば、ポリオルガノシロキサン粒子は、粒度分布のシャープさを示す変動係数(CV値)を15%以下とすることができる。このように、ポリオルガノシロキサン粒子の粒度分布が狭い場合には、後述する、吸収工程、重合工程を経て生成する有機無機複合体微粒子の粒度分布も狭いものとなる。なお、変動係数(CV値)が上記範囲内である場合は、後述するビニル重合性モノマーの吸収が効率よく行えるといった有利な効果も発揮することができる。15%を超える場合は、得られる有機無機複合粒子の粒子径のバラツキが大きくなる。
【0066】
本発明でいうポリオルガノシロキサン粒子(シード粒子)は、上記シリコン化合物群を原料無機化合物として得られるものであるため、この無機化合物中のケイ素原子に由来する無機質部分(ポリシロキサン骨格)を含んでなり、(メタ)アクリロキシ基などの有機基を有する。本発明でいうポリオルガノシロキサン粒子は、該粒子中、つまり、該粒子を構成するポリシロキサン骨格間に、後述するラジカル重合性ビニルモノマーを容易に吸収し、かつ、保持しておくことのできる粒子である。ポリオルガノシロキサン粒子が(メタ)アクリロキシ基を有している場合には、特に上述の効果に優れる。これは、(メタ)アクリロキシ基を有するポリオルガノシロキサン粒子はビニルモノマー等の有機化合物との相溶性に非常に優れているからであり、また、上記ポリオルガノシロキサン粒子がビニルモノマーを吸収するのに好適な架橋度となっているからであるともいえる。
【0067】
〔有機無機複合粒子の製造方法〕
上記合成工程に次いで、合成工程(あるいは、生成工程および/または成長工程)で得られたポリオルガノシロキサン粒子(シード粒子)に、ラジカル重合性ビニルモノマーを吸収させ(吸収工程)、次いで、上記吸収工程で吸収させたモノマー成分をラジカル重合させることで(重合工程)、製造ロット間における粒子径のバラツキが少ない有機無機複合粒子が得られる。以下、吸収工程から順に説明する。
【0068】
〔吸収工程〕
吸収工程では、ポリオルガノシロキサン粒子に、ラジカル重合性ビニルモノマー成分を吸収させる。この吸収工程では、計画的な製造を行うため、また、製造ロット間における有機無機複合粒子の粒子径のバラツキを一層低減させるために、吸収工程に導入するシード粒子量をコントロールしてもよい。吸収工程に導入する粒子量が一定であれば、最終的な収量や、吸収工程で必要となる原料量が定まるため、より計画的に安定して有機無機複合粒子を製造することができる。
【0069】
吸収工程では、ポリオルガノシロキサン粒子にラジカル重合性ビニルモノマーを必須とするモノマー成分を吸収させられれば良く、その実施形態は特に限定されない。したがって、ポリオルガノシロキサン粒子を分散させた溶媒中にモノマー成分を加える形態であってもよいし、また、モノマー成分を含む溶媒中にポリオルガノシロキサン粒子を加える形態であっても良い。最終的に、ポリオルガノシロキサン粒子と上記モノマー成分とが共存する状態で吸収工程を進行させるものであればよい。なかでも、前者のように、予めポリオルガノシロキサン粒子を分散させた溶媒中に、モノマー成分を加える形態が好ましく、さらには、ポリオルガノシロキサン粒子を合成して得られたポリオルガノシロキサン粒子分散液からポリオルガノシロキサン粒子を取り出すことなく、該分散液にモノマー成分を加える形態は、複雑な工程が必要とならず、生産性に優れており好ましい。
【0070】
本発明でいうビニル系重合体は、ラジカル重合性ビニルモノマーを必須とするモノマー成分を、ラジカル重合してなるものである。
【0071】
本発明で使用可能なラジカル重合性ビニルモノマーとしては、分子内に少なくとも1個以上のエチレン性不飽和基を含有する化合物であれば、その種類等は特に限定されない。また、モノマー成分は、有機無機複合粒子に要求される物性が発揮できるよう、用途に応じて適宜選択することができる。具体的なモノマー成分としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する単量体類;メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコール成分を有する単量体類;(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等のアルキル(メタ)アクリレート類;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ペンタンフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロアミル(メタ)アクリレート等のフッ素原子含有(メタ)アクリレート類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル等を用いることが好ましい。これらラジカル重合性ビニルモノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0072】
上記モノマー成分を効率よくポリオルガノシロキサン粒子に吸収させるためには、予め上記モノマー成分を乳化分散させてエマルションを生成しておくのが好ましい。
【0073】
また、上記モノマー成分として、架橋性モノマーを用いれば、得られる重合体粒子に関する機械的特性の調整が容易となるため好ましい。上記架橋性モノマーとしては、特に限定はされないが、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレートおよびその異性体、トリアリルイソシアヌレートおよびその誘導体、などが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0074】
上記吸収工程は、上述のモノマー成分がポリオルガノシロキサン粒子(シード粒子)の構造中に容易に吸収されるような条件の下で行うことが好ましい。そのような条件としては、例えば、上記ポリオルガノシロキサン粒子およびモノマー成分それぞれの濃度や、上記ポリオルガノシロキサン粒子とモノマー成分との混合比、混合の処理方法・手段、混合時の温度や時間、混合後の処理方法・手段などが挙げられる。これらの条件は、用いるポリオルガノシロキサン粒子やモノマー成分の種類などに応じて、適宜決定すればよい。また、これらの条件は1種のみを採用しても、2種以上を組み合わせて採用してもよい。
【0075】
上記吸収工程におけるモノマー成分の使用量は、ポリオルガノシロキサン粒子の原料として使用したシリコン化合物の質量に対して、質量で0.01倍〜100倍とするのが好ましい。より好ましくは1倍以上であり、さらに好ましくは5倍以上である。一方、50倍以下であるのがより好ましく、さらに好ましくは30倍以下である。上記添加量が0.01倍より小さい場合は、ポリオルガノシロキサン粒子のモノマー成分の吸収量が少なくなり所期の粒子径が得られ難くなったり、有機無機複合粒子の機械的特性が損なわれたりする虞があり、一方、100倍を超える場合は、添加したモノマー成分をポリオルガノシロキサン粒子に完全に吸収させることが困難となり、未吸収のモノマー成分が残存するため、得られる最終組成物が有機無機複合粒子と有機粒子との混合物となり、また、後の重合段階において粒子間の凝集が発生しやすくなる虞がある。
【0076】
吸収工程において、モノマー成分の添加方法は特に限定されず、使用するモノマー成分の全量を一括で反応系に加えてもよく、数回に分けて加えてもよく、又、任意の速度でフィードしてもよい。さらに、このとき、モノマー成分のみを添加してもよく、あるいは、モノマー成分を溶媒に分散あるいは溶解させたモノマー成分溶液を添加してもよいが、モノマー成分を予め乳化分散させた状態でポリオルガノシロキサン粒子に加えれば、ポリオルガノシロキサン粒子への吸収がより効率よく行われるため好ましい。
【0077】
上記乳化剤としては特に限定はされないが、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤、分子中に1個以上の重合可能な炭素−炭素不飽和結合を有する重合性界面活性剤等がある。なかでも、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤が、ポリオルガノシロキサン粒子や、モノマー成分を吸収したポリオルガノシロキサン粒子や、重合体粒子の分散状態を安定化させることもできるので好ましい。これら乳化剤は、1種のみを使用しても2種以上を併用してもよい。
【0078】
上記アニオン性界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート等のアルカリ金属アルキルサルフェート類;アンモニウムドデシルサルフェート等のアンモニウムアルキルサルフェート類;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート、ナトリウムスルホシノエート、スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩類、スルホン化パラフィンのアンモニウム塩等のアルキルスルホネート類;ナトリウムラウリレート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩類;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルアリールスルホネート類;高級アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩等を好ましく挙げることができる。
【0079】
上記カチオン性界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アミン塩、4級アンモニウム塩、オキシエチレン付加型アンモニウム塩酸塩などが挙げられ、具体的には、トリメチルアルキルアンモニウム塩酸塩、ジメチルジアルキルアンモニウム塩酸塩、モノアルキルアミン酢酸塩、アルキルメチルジポリオキシエチレンアンモニウム塩酸塩などが例示できる。等を好ましく挙げることができる。
【0080】
上記非イオン界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセロールのモノラウレート等の脂肪酸モノグリセライド類;ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体、エチレンオキサイドと脂肪酸アミン、アミドまたは酸との縮合生成物等を好ましく挙げることができる。
【0081】
上記高分子界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸カリウム、ポリ(メタ)アクリル酸アンモニウム、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、これらの重合体の構成単位である重合性単量体の2種以上の共重合体または他の単量体との共重合体、クラウンエーテル類の相関移動触媒等を好ましく挙げることができる。
【0082】
上記重合性界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、プロペニル−2−エチルヘキシルベンゼンスルホコハク酸エステルナトリウム、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンの硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルエーテル硫酸アンモニウム塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンエステルのリン酸エステル等のアニオン性重合性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルベンゼンエーテル(メタ)アクリル酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(メタ)アクリル酸エステル等のノニオン性重合性界面活性剤等を好ましく挙げることができる。
【0083】
上記乳化剤の使用量は、例えば、上記ラジカル重合性ビニルモノマーを必須に含むモノマー成分の総質量に対して0.01質量%〜10質量%とするのが好ましく、より好ましくは0.05質量%〜8質量%、さらに好ましくは1質量%〜5質量%である。上記乳化剤の使用量が、0.01質量%未満の場合は、安定なモノマーの乳化分散物が得られないことがあり、10質量%を超える場合は、乳化重合等が副反応として併発してしまうおそれがある。上記乳化分散については、通常、上記モノマー成分を乳化剤とともにホモミキサーや超音波ホモジナイザー等を用いて水中で乳濁状態とすることが好ましい。
【0084】
上記吸収工程において、モノマー成分が吸収されたかどうかの判断は、例えば、モノマーを加える前および吸収工程終了後の粒子径を顕微鏡で観察することにより容易に判断できる。すなわち、吸収工程終了後の粒子径が、吸収工程前の粒子径に比べて大きくなっていれば、ポリオルガノシロキサン粒子内にモノマー成分が吸収されているものと判断できる。
【0085】
〔重合工程〕
重合工程では、上記吸収工程でシード粒子内に吸収されたラジカル重合性ビニルモノマーをラジカル重合させる。ラジカル重合させる方法は特に限定はされないが、例えば、ラジカル重合開始剤を用いる方法、紫外線や放射線を照射する方法、熱を加える方法などが挙げられる。
【0086】
上記ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、過酸化水素、過酢酸、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物系開始剤類;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)・二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物類;などが好ましく挙げられる。これらラジカル重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0087】
ラジカル重合開始剤の使用量は、上記ラジカル重合性ビニルモノマーを必須に含むモノマー成分の総質量に対して、0.001質量%〜20質量%とするのが好ましく、より好ましくは0.01質量%〜10質量%、さらに好ましくは0.1質量%〜5質量%である。上記ラジカル重合開始剤の使用量が、0.001質量%未満の場合は、ラジカル重合性ビニルモノマーの重合度が上がらないことがある。上記ラジカル重合開始剤の上記溶媒に対する仕込み方法については、特に限定はなく、最初(重合反応開始前)に全量仕込む態様(吸収工程において、上記モノマー成分にラジカル重合開始剤を溶解させ、これを乳化分散させておく態様、シード粒子に重合性成分を吸収させた後ラジカル重合開始剤を仕込む態様);最初に一部を仕込んでおき、残りを連続フィード添加する態様、または、断続的にパルス添加する態様、あるいは、これらの組み合わせる態様など、従来公知の方法はいずれも採用することができる。
【0088】
上記重合工程において、ラジカル重合する際の反応温度は40〜100℃であることが好ましく、50〜80℃がより好ましい。上記反応温度が40℃未満では、重合度が十分に上がらず重合体粒子の機械的特性が得られ難い場合があり、100℃を超えると、重合中に粒子間の凝集が起こりやすくなる場合がある。上記重合工程において、ラジカル重合する際の反応時間は、用いる重合開始剤の種類により適宜変更可能であるが、5〜600分であることが好ましく、10〜300分がより好ましい。反応時間が5分未満の場合は、重合度が十分に上がらない結果となり、600分を超える場合は、粒子間の凝集が起こり易くなる。
【0089】
尚、これまで、ポリオルガノシロキサン粒子(シード粒子)を合成し、得られたシード粒子に、ラジカル重合性モノマー成分を吸収させた後、重合反応を行って有機無機複合粒子を製造する方法について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ポリオルガノシロキサン粒子が重合性不飽和結合(好ましくはビニル基)を有する場合には、上記吸収工程を経ることなく、重合反応を行って、有機無機複合粒子を得ても良い。すなわち、上記ポリオルガノシロキサン粒子の合成工程についで、重合工程を行うことも、本発明の好ましい態様の一つであり、当該態様においても本発明の効果は得られる。
【0090】
〔有機無機複合粒子〕
上記本発明の製造方法により得られる有機無機複合粒子は、中位径3〜30μmである。また、本発明の製造方法によれば、粒度分布のシャープさを示す変動係数(CV値)が15%以下の有機無機複合粒子が得られる。
【0091】
なお、機械的特性や光学特性は、無機質成分、有機質成分の含有比、あるいは、使用するモノマー成分の種類や量等を調整することにより、各種用途に応じて所望の特性を有するように設計することができるが、例えば、光学用途に用いる場合には、吸収させるモノマーの種類や配合量を選択することで、有機無機複合粒子の屈折率を調整できる。具体的には、シード粒子に吸収させるモノマー成分として、スチレンとメチルメタクリレートとを用いる場合であれば、スチレンの配合量を増加することで屈折率を高めることができ、一方、メチルメタクリレートの配合量を増加することで、屈折率を低下させることができる。
【0092】
本発明の重合体粒子の形状は、特に限定されるわけではなく、具体的には、例えば、球状、針状、板状、鱗片状、粉砕(破砕)状、繭状、金平糖状などの形状を挙げることができる。本発明に係る重合体粒子は、染料および/または顔料などで着色されたものであってもよい。なお、本発明に係る有機無機複合粒子が着色されているものである場合、染料および/または顔料は、単に重合体粒子に含まれるものでもよく、あるいは、染料および/または顔料と重合体粒子を構成するマトリックスとが化学結合によって結び付けられた構造を有するものでもよいが、特にこれらに限定されない。
【0093】
また、本発明に係る有機無機複合粒子は、その表面に導体層を形成すれば、導電性微粒子としても好ましく用いられる。このとき、導体層は、有機無機複合粒子表面の少なくとも一部に形成されていればよい。
【0094】
本発明に係る有機無機複合粒子の用途は、特に限定されるわけではないが、具体的には、例えば、液晶表示素子用面内スペーサー、液晶表示素子用シール部スペーサー、EL表示素子用スペーサー、タッチパネル用スペーサー、セラミックやプラスチック等の各種基板間の隙間を均一に保持し得る隙間保持材等の隙間距離保持用スペーサーや、導電性粒子などを好ましく挙げることができる。
【実施例】
【0095】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、以下では、便宜上、「質量部」を単に「部」と記すことがある。また、「質量%」を「wt%」と記すことがある。まず、本発明の実施例において記載する測定値の定義、測定方法、評価基準について以下に示す。
【0096】
[粒子径]
ポリオルガノシロキサン粒子および有機無機複合体粒子の中位径(50%粒子径)は、精密粒度分布測定装置(「コールターマルチサイザーII」、ベックマン・コールター社製)を使用して、30000個の粒子の粒子径を測定することにより求めた。尚、微小粒子が副生し、メインピークと異なる粒子径が観測される場合には、editモードを用いて、メインピークのみを測定した。
【0097】
測定溶液の調製
下記実験例で得られたシード粒子(15分後、60分後)の懸濁液0.1mL、あるいは有機無機複合粒子0.03gを、それぞれ1%界面活性剤水溶液(「ハイテノール(登録商標)N−08」、第一工業製薬株式会社製)5mlに分散させて、測定用の溶液を調製した。
【0098】
ここで、上記「15分後のシード粒子」とは、加水分解縮合反応の開始から15分後に生成している粒子を意味し、一方、「60分後のシード粒子」とは、加水分解縮合反応の開始から60分後(加水分解反応の終了後)に生成している粒子を意味する。
【0099】
下記実験例1〜7では、以下の合成方法および製造方法に従ってポリオルガノシロキサンの合成および有機無機複合粒子の製造を行った。
【0100】
[ポリオルガノシロキサン粒子の合成方法]
攪拌羽根、還流管、滴下口および温度計を備えた容量2Lのステンレス製の反応容器に、予め調製した超純水451g(逆浸透膜装置(「ピュアライト(登録商標)PRA−0030」、オルガノ株式会社製)を通した後、超純水製造装置(「PURIC(登録商標)−MIX II」オルガノ株式会社製)を通した水、電気伝導度0.0549μS/cm)と、メタノール193g(和光純薬工業株式会社製の試薬特級メタノール)を投入し、回転数120回転で攪拌混合した後、25%アンモニア水を1.64g加え、混合溶液の温度を28℃に調節した。次いで、この混合溶液の撹拌下、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM‐503」)71.5gを一括投入し、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解、縮合反応を行った。数分後に反応容器内が白濁したが、そのまま60分間、加水分解縮合反応を行い、ポリオルガノシロキサン粒子の分散液を得た。
【0101】
加水分解縮合反応の開始(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの投入)から15分後および60分後(加水分解縮合反応の終了後)のシルセスキオキサン粒子(シード粒子)の中位径と変動係数を測定した。
【0102】
[モノマー懸濁液の調製]
別途用意した容量1Lのガラス製のフラスコに、スチレン112.5g、メチルメタクリレート112.5gおよびエチレングリコールジメタクリレート75gに、2,2’−アゾビス(2,4’−ジメチルバレロニトリル)6.6gを溶解し、その後、界面活性剤1.5g(「ハイテノール(登録商標)NF−08」、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、第一工業製薬株式会社製)およびイオン交換水300gを添加し、ホモミキサー(「T.K.ホモミキサマークII」、プライミクス株式会社製)を用いて乳化分散させて、モノマー懸濁液を調製した。
【0103】
[有機無機複合粒子の製造方法]
得られたポリオルガノシロキサン粒子の懸濁液301gを、攪拌羽根と還流管を備えた2Lのガラス製フラスコに加えて攪拌した。ここに、上記モノマー懸濁液を全量一度に添加し、室温で60分間攪拌することにより、ポリオルガノシロキサンシード粒子にモノマー成分を吸収させ、有機モノマーを吸収した膨潤粒子を作製した。なお、モノマー成分の吸収は、モノマー懸濁液の添加から60分後にフラスコから取り出したシード粒子を顕微鏡で観察することにより、シード粒子の粒子径の増大を確認した。
【0104】
シード粒子がモノマーを吸収したことを確認した後、ここにイオン交換水を600g加え、モノマー成分を吸収して膨潤した粒子分散液を65℃まで昇温し、3時間重合反応を行って、有機無機複合粒子を得た。反応溶液を冷却した後、吸引濾過により固液分離を行い、得られたケーキを真空乾燥機で乾燥し、解砕機で解砕して、乾燥工程において生じた凝集粒子を単粒子に戻して有機無機複合粒子の粉体を得た。得られた粒子の粒子径を表1に示す。
【0105】
〔実験例1−1〜1−4〕
攪拌羽根、還流管、滴下口および温度計を備えた容量2Lのステンレス製の反応容器にメタノール1.5Lを加え、1時間攪拌して洗浄した。反応容器内のメタノールを全て流し出した後、メタノール0.3Lを反応容器内部(付属機器も含む)にかけ流した。次いで、ここに、50℃に加温したメタノール/イオン交換水(電気伝導度0.2μS/cm)=7/3(質量比)の混合溶媒を加え、1時間攪拌洗浄した。ついで、反応容器内の混合溶媒を流し出した後、超純水(逆浸透膜装置(「ピュアライトPRA−0030」、オルガノ株式会社製)を通した後、超純水製造装置(「PURIC−MIX II」オルガノ株式会社製)を通した水、電気伝導度0.0549μS/cm)0.3Lを反応容器内部にかけ流し、反応容器を傾け、よく水を切った後、上記合成方法に従って、ポリオルガノシロキサン粒子の合成を行った。
【0106】
上記洗浄、ポリオルガノシロキサン粒子および有機無機複合粒子の製造操作を4回繰り返し、各ロットにおいて加水分解縮合反応の開始から15分後および60分後のシード粒子の粒子径(中位径)を測定した。結果を表1および図1に示す。
【0107】
【表1】

【0108】
表1および図1より、本実験例により得られたシード粒子はロット間における粒子径のバラツキが小さく、当該実験例により得られた有機無機複合粒子の粒子径のバラツキも小さかった(実験No.1−1で得られた有機無機複合粒子の中位径:7.4μm)。
【0109】
〔実験例2−1〜2−4〕
混合溶媒として、25℃に加温したメタノール/イオン交換水(電気伝導度0.2μS/cm)=7/3(質量比)の混合溶媒を使用したこと以外は、実験例1と同様にして、反応容器の洗浄を行い、その後、上記合成方法にしたがってポリオルガノシロキサン粒子の合成を行った。
【0110】
上記洗浄、有機無機複合粒子の合成操作を4回繰り返し、各ロットにおいて加水分解縮合反応の開始から15分後および60分後のシード粒子の粒子径(中位径)を測定した。結果を表2および図2に示す。
【0111】
【表2】

【0112】
表2および図2より、本実験例により得られたシード粒子のロット間における粒子径のバラツキは小さく、当該実験例により得られた有機無機複合粒子の粒子径のバラツキも小さいものであった(実験No.2−1で得られた有機無機複合粒子の中位径:7.5μm)。
【0113】
〔実験例3−1〜3−4〕
混合溶媒として、25℃に加温したメタノール/イオン交換水(電気伝導度0.2μS/cm)=95/5(質量比)の混合溶液を使用したこと以外は、実験例1と同様にして、反応容器の洗浄を行い、その後、上記合成方法にしたがってポリオルガノシロキサン粒子の合成を行った。
【0114】
上記洗浄、有機無機複合粒子の合成操作を4回繰り返し、各ロットにおいて加水分解縮合反応の開始から15分後および60分後のシード粒子の粒子径(中位径)を測定した。結果を表3および図3に示す。
【0115】
【表3】

【0116】
表3および図3より、本実験例により得られたシード粒子のロット間における粒子径のバラツキは小さく、当該実験例により得られた有機無機複合粒子の粒子径のバラツキも小さいものであった(実験No.3−1で得られた有機無機複合粒子の中位径:7.3μm)。
【0117】
〔実験例4〕
実験例3で有機無機複合粒子を合成した後、反応容器を洗浄することなく、上記合成方法に従って、ポリオルガノシロキサン粒子(シード粒子)の合成を行った。
【0118】
加水分解縮合反応の開始から15分後および60分後のシード粒子の粒子径(中位径)を測定した。結果を表4に示す。
【0119】
【表4】

【0120】
表4より、本実験例により得られたシード粒子の粒子径は、実験例3でシード粒子と大きくことなっており、また、当該実験例により得られた有機無機複合粒子の粒子径も、実験例3で得られたものとは大きく異なるものであった(有機無機複合粒子の中位径:4.8μm)。
【0121】
〔実験例5−1〜5−5〕
実験例3で有機無機複合粒子を合成後、反応容器をメタノールで洗浄し、メタノールですすいだ後、クレンザー(ニューホーミング、花王株式会社製)をつけたスポンジたわし(ポリウレタン製)で反応容器の内面を満遍なく磨いた。ついで、反応容器内にクレンザーが残らないように流水(水道水)でよくすすぎ洗いした後、メタノール0.5L、超純水0.3L(電気伝導度0.0549μS/cm)で順によくすすいだ後、上記合成法に従ってポリオルガノシロキサン粒子の合成を行った。
【0122】
上記洗浄、有機無機複合粒子の合成操作を5回繰り返し、各ロットにおいて加水分解縮合反応の開始から15分後および60分後のシード粒子の粒子径(中位径)を測定した。結果を表5および図4に示す。
【0123】
【表5】

【0124】
表5および図4より、本実験例により得られたシード粒子の粒子径は製造ロットによらず安定していた。また、当該実験例により得られた有機無機複合粒子の粒子径はバラツキが小さいものであった。しかしながら、本実験例で採用した磨き洗浄を実操業レベルで実施することは困難であり、また、生産性を低下させる結果となる。
【0125】
〔実験例6−1〜6−7〕
メタノール(和光純薬工業株式会社製)1.5Lを反応容器に加え、1時間攪拌して洗浄した。その後、反応容器内のメタノールを全て流し出し、反応容器を新たなメタノール0.3Lですすぎ、反応容器を傾けてメタノールをよくきった後、上記合成方法に従って、ポリオルガノシロキサン粒子の合成を行った。
【0126】
上記洗浄、有機無機複合粒子の合成操作を7回繰り返し、各ロットにおいて加水分解縮合反応の開始から15分後および60分後のシード粒子の粒子径(中位径)を測定した。結果を表6および図5に示す。
【0127】
【表6】

【0128】
表6および図5より、本実験例では、製造ロット間におけるシード粒子径のバラツキが大きく、当該実験例のシード粒子から得られた有機無機複合粒子の粒子径のバラツキも大きかった。
【0129】
〔実験例7−1〜7−2〕
メタノール(和光純薬工業株式会社製)1.5Lを反応容器に加え、1時間攪拌して洗浄した。その後、反応容器内のメタノールを全て流し出した。次いで、ここに超純水1.5L(逆浸透膜装置(「ピュアライトPRA−0030」、オルガノ株式会社製)を通した後、超純水製造装置(「PURIC−MIX II」オルガノ株式会社製)を通した水、電気伝導度0.0549μS/cm)を加え、1時間攪拌して洗浄した。その後、反応容器内の超純水を全て流しだし、超純水0.3Lですすぎ洗いした後、上記合成方法に従って、ポリオルガノシロキサン粒子の合成を行った。
【0130】
上記洗浄、有機無機複合粒子の合成操作を2回繰り返し、各ロットにおいて加水分解縮合反応の開始から15分後および60分後のシード粒子の粒子径(中位径)を測定した。結果を表7に示す。
【0131】
【表7】

【0132】
表7より、本実験例で得られたシード粒子は、ロット間における粒子径の変動が比較的大きく、当該シード粒子を使用して得られた有機無機複合粒子の粒子径のバラツキも大きかった(実験例No.7−1より得られた有機無機複合粒子中位径:7.9μm)。
【0133】
上記実験例1〜7の結果より、本発明法によれば、反応容器をクレンザーで磨いて洗浄するのと同程度の洗浄効果が得られる。したがって、本発明法は、大スケールでポリオルガノシロキサン粒子および有機無機複合粒子を製造する工業的な製造にも有用である。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明の製造方法によれば、所望の粒子径を有し、且つ、粒度分布の狭いポリオルガノシロキサン粒子および有機無機複合粒子が得られるのみならず、製造ロット間における粒子径のバラツキを低レベルに抑えることができる。従って、本発明の製造方法により得られた粒子を用いれば、最終製品間における品質のバラツキをごく低レベルに抑えられるものと考えられる。また、本発明の製造方法により得られる有機無機複合粒子は、液晶表示素子用面内スペーサー、液晶表示素子用シール部スペーサー、EL表示素子用スペーサー、タッチパネル用スペーサー、セラミックやプラスチック等の各種基板間の隙間を均一に保持し得る隙間保持材等の隙間距離保持用スペーサーや、導電性粒子などの用途に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコキシシラン化合物の加水分解縮合反応によりポリオルガノシロキサン粒子を製造する方法であって、
上記ポリオルガノシロキサン粒子の合成に先立って、反応容器を有機溶剤で洗浄した後、さらに、水/有機溶剤の混合溶媒で洗浄することを特徴とするポリオルガノシロキサン粒子の製造方法。
【請求項2】
上記アルコキシシラン化合物が、重合性二重結合を有する化合物である請求項1に記載のポリオルガノシロキサン粒子の製造方法。
【請求項3】
上記混合溶媒に含まれる有機溶剤が、アルコール類、エーテル類およびケトン類よりなる群から選択される1種以上のものである請求項1または2に記載のポリオルガノシロキサン粒子の製造方法。
【請求項4】
上記混合溶媒に含まれる有機溶剤がアルコール類である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリオルガノシロキサン粒子の製造方法。
【請求項5】
上記混合溶媒に含まれる有機溶剤がメタノールである請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリオルガノシロキサン粒子の製造方法。
【請求項6】
上記混合溶媒に含まれる水の電気伝導度が5μS/cm以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリオルガノシロキサン粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の方法で得られたポリオルガノシロキサン粒子に、ラジカル重合性ビニルモノマー成分を吸収させる吸収工程、および、
上記吸収工程で吸収させたモノマー成分をラジカル重合させる重合工程を含むことを特徴とする有機無機複合粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−235876(P2010−235876A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87736(P2009−87736)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】