説明

ポリオレフィン物品

1) 85%を超える量で周囲温度においてキシレンに不溶性であり、4〜13の範囲の多分散度インデックスおよび2.2 dl/gを超える極限粘度数([η]1)の値を有する結晶性プロピレンポリマー65〜95%;ならびに
2) 15〜85%の範囲のエチレン含量および少なくとも1.4 g/mlの極限粘度数([η]2)の値を有する、C3〜C10α-オレフィンとのエチレンの弾性オレフィンポリマー5〜35%
を含むヘテロ相ポリオレフィン組成物を含む、押出、成形およびこれらの組み合わせにより製造される物品、特に無圧単層または多層パイプ。[η]1/[η]2の比は0.45〜1.6の範囲である。該物品は、典型的に、2000 MPaを超える引張弾性率を有する。本発明は、上記のヘテロ相ポリオレフィン組成物および上記の物品を製造する押出プロセスにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出、成形およびこれらの組み合わせ、例えばパイプ成形、シート成形、フィルム成形、異形押出または吹込成形により製造される剛性物品に関する。より具体的には、本発明は、機械的特性のバランスが良好な単層または多層パイプ、継手(fittings)および積層物品に関する。本発明は、さらに、上記の成形物品の製造に特に適するポリオレフィン組成物に関する。該ポリオレフィン組成物は、標準的なヘテロ相ポリマー組成物よりも著しく高い剛性および強度を有し、衝撃特性が改善されたかまたは維持されたパイプを与える。
【0002】
本発明によるパイプは、無圧(non-pressure)パイプ用途、例えばインドアまたは好ましくはアウトドアの使用の両方のための廃水パイプに特に適する。特に、高い剛性特性により、上記のパイプは地下排水パイプおよび埋没(buried)下水パイプとしての使用を見出し得る。
【背景技術】
【0003】
パイプに適するプロピレンポリマーの多くが良好な加工性を有さないことも知られている。
米国特許第6300420号は、このような問題点は、広い分子量分布を有する反応器ブレンド組成物により克服し得ることを記載している。該組成物は、異なる分子量およびコモノマー(エチレン)含量とコポリマー中のコモノマーのより均一な分布を有する2つのコポリマーマトリックスからなる。このようなプロピレンランダムコポリマーは、圧力パイプの用途に特に適し、よって無圧用途に必要な特性のバランス、例えば充分に高い値の引張抵抗を有さない。
【0004】
プロピレンポリマーからつくられ、高い剛性および強度とともに他の所望の特性を有する無圧パイプは既に知られている。このような特性を得るためのいくつかの解決法が、従来技術において提案されている。例えば、欧州特許出願1260546号および米国特許第6503993号に開示されるように、プロピレンポリマーを特定の核剤を用いて有核させる。
【0005】
米国特許第6433087号に開示されるように、特定のポリマー組成物を用いることにより同じ結果を達成し得る。該組成物は、高結晶性アイソタクチックポリプロピレンホモポリマー80〜98重量部と、30〜50重量部のエチレンおよび/またはC4〜C10 α-オレフィンとのプロピレンの弾性コポリマー2〜20重量部とを含む。弾性ポリマーの結晶性ポリマーに対する極限粘度数の比は、0.9〜1.5である。該パイプは、高い値の剛性および引張弾性率を示す。実施例は、達成されたリング剛性(ring stiffness)の最高値は6.8 kN/m2であることを示す。この値は、外径110 mmで壁の厚さ3.7 mmのパイプについて測定される。上記の寸法およびリング剛性を有するパイプについて算出された引張弾性率の値は、1935 MPaであり、このような値はGerman法 AT 127による、以下に記載される式により算出される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、剛性を低下させることなく、改善された抵抗性、特により良好な引張抵抗および低温での耐衝撃性を有するポリオレフィンパイプを提供することである。パイプ用のポリマー組成物の加工性を改善することも目的とする。
【0007】
今回、驚くべきことに、高い強度(つまり引張弾性率)とともに高い剛性および低温での良好な耐衝撃性を有する成形品を、広い分子量分布を有する結晶性ポリマーとともに弾性ポリマーを含み、ポリマーが非常に高い分子量を有する、本発明のさらなる実施形態でもあるヘテロ相ポリオレフィン組成物を用いることにより得ることができることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の有利な特徴は、パイプが、例えばパイプの強度性能を低下させることなく、従来技術のパイプの壁よりもより薄い壁を有することである。よって、同じ長さのパイプで比較すると、本発明は、従来技術のパイプに以前用いられていたポリマー材料よりもより少ないポリマー材料を用いることになる。さらに、成形プロセスが必要とする冷却時間は短縮される。より少ないパイプ重量および短い冷却時間の結果として、経済的な効率がプラスに影響される。
【0009】
用いられるポリマー組成物のより高い流動性により、本発明による物品は、より均一な厚さをも有する。
さらに、本発明による物品の押出による加工性は、用いられるポリマー組成物のより高い流動性により、同じかより高い溶融流量を有する従来のプロピレンポリマーのものと比べても改善される。結果として、本発明による押出プロセスはダイのより低い圧力または押出温度を必要とするので、プロセスの実行のためのより少ないエネルギーおよび押出物品を冷却するためのより短い時間の両方を必要とする。よって、プロセスの効率が向上される。
【0010】
よって、本発明は、押出、成形およびこれらの組み合わせにより製造される物品を提供し、該物品は、重量%で:
1) プロピレンホモポリマー、ならびにエチレン、C4〜C10α-オレフィンおよびこれらの混合物から選択されるα-オレフィン0.1〜10%とプロピレンのランダムポリマーから選択され、85%を超える量で周囲温度においてキシレンに不溶性であり、4〜13、好ましくは4.5〜12、より好ましくは5〜9の範囲の多分散度(polydispersity)インデックスおよび2.2 dl/gを超える、好ましくは2.2〜4.5 dl/gの極限粘度数の値を有する結晶性プロピレンポリマー65〜95%;ならびに
2) 15〜85%の範囲のエチレン含量および少なくとも1.4 g/ml、好ましくは2.5〜5 g/mlの極限粘度数([η])の値を有する、C3〜C10α-オレフィンと任意にジエンとのエチレンの弾性オレフィンポリマー5〜35%
を含むヘテロ相ポリオレフィン組成物により製造される。
結晶性ポリマー(1)の極限粘度数値の弾性ポリマー(2)の極限粘度数値に対する比は、0.45〜1.6の範囲である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書において用いられる「ポリマー」の用語は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合により製造されるポリマーのこともいう。よって、一般的な用語「ポリマー」は、用語「コポリマー」(これは通常、2種の異なるモノマーから製造されるポリマーに言及するのに用いられる)とともに、用語「ターポリマー」(これは通常、3種の異なるモノマーから製造されるポリマー、例えばプロピレン-エチレン-ブテンポリマーに言及するのに用いられる)も含む。
【0012】
本発明の別の実施形態は、現在の請求項7に記載のヘテロ相組成物である。
【0013】
本発明のある好ましい実施形態において、ヘテロ相組成物は、ヘテロ相ポリオレフィン組成物の100重量部に対して0.5〜60重量部の範囲の量の無機充填剤をさらに含む。このような充填剤のいくつかの例は、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタンおよびタルクである。タルクおよび炭酸カルシウムが好ましい。充填剤のいくつかは核形成効果も有することができ、例えばタルクは核剤でもある。核剤の量は、一般に、ポリマー量に対して0.5〜5 wt%である。
【0014】
上記の結晶性ポリマーの立体規則性は、アイソタクチック型が好ましい。
好ましくは、上記のポリオレフィン組成物において、結晶性ポリマーはアイソタクチックプロピレンホモポリマーである。
【0015】
結晶性ポリマーは、好ましくは90%を超え、より好ましくは95%を超える量で周囲温度でキシレンに不溶性である。
【0016】
結晶性プロピレンポリマーがプロピレンのC4〜C10 α-オレフィンとのコポリマーである場合、典型的にはC4〜C10 α-オレフィン含量は0.1から2 wt%未満の範囲である。
結晶性プロピレンポリマーがプロピレンのエチレンとC4〜C10 α-オレフィンとのターポリマーである場合、典型的にはエチレンとC4〜C10 α-オレフィンとの含量は0.5から2%未満の範囲である。
【0017】
結晶性および弾性ポリマー中のコモノマーがC4〜C10 α-オレフィンである場合、これは直鎖状または分岐鎖状であり、ブテン-1、ペンテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1およびオクテン-1またはこれらの組み合わせから選択されるのが好ましい。
【0018】
弾性ポリマーは、共役またはそうでないジエン、例えばブタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエンおよびエチリデン-ノルボルネン-1を含有し得る。存在する場合には、ジエンは、典型的には弾性ポリマーの重量に対して0.5〜10重量%の量である。
弾性ポリマーは、典型的には20〜80 wt%、好ましくは35〜60 wt%の範囲のエチレン含量を有する。
【0019】
上記のポリマー組成物は、通常、0.01〜100 g/10分の溶融流量の値を有する。
好ましくは、上記のヘテロ相組成物は、1600 MPa以上の曲げ弾性率値、および/または5 kJ/m2以上、好ましくは6 kJ/m2以上の-20℃でのアイゾッド耐衝撃性の値、および/または29 MPa以上、好ましくは30 MPa以上の降伏点引張強さの値を示す。好ましくは、ヘテロ相組成物は少なくとも1600 MPaの引張弾性率を有する。
【0020】
本発明の好ましい実施形態は、2 g/10分までの溶融流量の値を典型的に有する上記のヘテロ相ポリオレフィン組成物からつくられた無圧パイプシステム用の物品、例えば無圧パイプおよび継手に関する。特に、本発明は、少なくとも1層が2 g/10分までの溶融流量の値を有する上記のヘテロ相ポリオレフィン組成物を含むポリオレフィンベースの単層または多層パイプを提供する。
【0021】
典型的には、本発明による物品は、2000 MPaより高い、好ましくは2100 MPa以上、例えば2100〜2400 MPaの以下に報告する方法により測定された引張弾性率を有する。
【0022】
特に、平滑内表面および外表面を有しかつ20 mm以上から2000 mm以下のパイプ外径を有する本発明の固体壁(solid wall)パイプは、次の数学的関係:
270 kN/m2×[10/(SDR-1)]3≧SN≧130 kN/m2×[10/(SDR-1)]3
(式中、SDRは外径の壁厚さに対する比を表す)
を満足するリング剛性(SN)の値を有し、260と135 kN/m2 (270と130 kN/m2の代わりに)の数値が好ましい。
例えば、250 mmの外径および10.7 mmの壁の厚さを有するパイプの場合、これは、以下に記載のようにして測定されるリング剛性が約11.6〜24.1 kN/m2、好ましくは12.1〜23.7 kN/m2の値を有することを意味する。
【0023】
上記の組成物は、平滑内表面および外表面を有するもの以外に、いずれの形状の壁を有する硬質ポリプロピレンパイプを提供するのにも適する。その例は、サンドイッチ状パイプ壁を有するパイプ、長手方向に伸びるキャビティを有する中空壁構造のパイプ、らせん状のキャビティを有する中空壁構造のパイプ、平滑内表面および密もしくは中空の、らせん形状または環状リブ付きの外表面を、それぞれのパイプ末端の構造に関係なく有するパイプである。
【0024】
ヘテロ相ポリオレフィン組成物は、公知の重合方法に従って製造できる。
上記のヘテロ相組成物の製造方法は少なくとも2つの逐次的な工程を含む逐次重合により行なわれ、成分(1)および(2)は別々の次の工程で製造され、最初の工程を除く各工程においては、先行の工程で形成されたポリマーおよび用いられた触媒の存在下で操作される。触媒は最初の工程でのみ添加されるが、その活性は全ての後続の工程でまだ活性である。成分(1)は、単一の重合工程で製造されるのが好ましい。重合段階の順序は方法の重要な特徴ではないが、成分(1)は成分(2)の前に製造されるのが好ましい。
【0025】
重合は液相、気相または液−気相でおこり得る。
例えば、プロピレン重合段階を液体プロピレンを希釈剤として用いて行い、プロピレンの部分脱気以外の中間段階を行なわずに、その後の気相での共重合段階を行うことができる。
【0026】
適切な反応器の例は、連続操作攪拌反応器、ループ反応器、流動床反応器または水平もしくは垂直攪拌粉末床(powder bed)反応器である。もちろん、反応は、連続して接続された複数の反応器において行うこともできる。
連続して接続され、粉状の反応床が垂直攪拌機により動いたままに保たれている攪拌気相反応器のカスケードで重合を行うこともできる。反応床は、通常、それぞれの反応器において重合されたポリマーを含む。
【0027】
成分(1)を形成するためのプロピレン重合は、エチレンおよび/または1種以上のC4〜C10 α-オレフィン、例えばブテン-1、ペンテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1およびオクテン-1またはこれらの組み合わせの存在下に行うことができる。
【0028】
上記のように、エチレンのプロピレン(好ましい)および/または他のC4〜C10 α-オレフィンとの成分(2)を形成する共重合は、上記のジエンの存在下に行うことができる。
【0029】
重合工程に関する反応時間、圧力および温度は重要ではないが、温度が20〜150℃、特に50〜100℃が最良である。圧力は大気圧以上であり得る。
【0030】
分子量の調節は、既知の調節剤、特に水素を用いることにより行うことができる。
【0031】
あるいは、本発明によるパイプを製造するために用いられるヘテロ相ポリオレフィン組成物は、少なくとも2つの相互連結された重合領域において行なわれる気相重合法により行うことができる。この種類の方法は、欧州出願第782 587号に説明される。
詳細には、上記の方法は、反応条件下で触媒の存在下に、上記の重合領域に1種以上のモノマーを供給し、そしてポリマー生成物を上記の重合領域から回収することを含む。該方法において、成長するポリマー粒子は、速流動化(fast fluidization)条件下に上記の重合領域の(最初の)一つ(上昇管(riser))を通って上方に流れ、該上昇管を離れて別の(第二の)重合領域(降下管(downcomer))に入り、ここを通ってそれらは重力の作用の下で密度を高めた形で下方に流れ、該降下管を離れて上昇管に再び導入され、このようにして上昇管および降下管の間のポリマーの循環を確立する。
【0032】
降下管においては固体が高密度の値に到達し、これはポリマーの嵩密度に近づく。よって、圧力が流れの方向に沿って増加することができ、特別な機械的手段によらずにポリマーを上昇管に再導入することが可能になる。このようにして、「ループ」循環が設定され、これは2つの重合領域の間の圧力のバランスおよびシステムに導入された損失水頭で規定される。
【0033】
一般に、上昇管内の速流動化条件は、適切なモノマーを含む気体混合物を該上昇管に供給することにより確立される。気体混合物の供給は、該上昇管にポリマーの再導入点より下で、適切であれば気体分配手段(gas distributor means)を用いて行うのが好ましい。上昇管への輸送気体の速度は、操作条件下の輸送速度よりも高く、2〜15 m/sが好ましい。
【0034】
一般に、上昇管を離れるポリマーおよび気体混合物は、固体/気体分離領域に運ばれる。固体/気体分離は、通常の分離手段を用いて行うことができる。分離領域からポリマーは降下管に入る。分離領域を離れる気体混合物は、圧縮され、冷却され、適切であるならば仕上げ(make-up)モノマーおよび/または分子量調節剤を添加して、上昇管に移送される。該移送は、気体混合物用の再利用ラインにより行うことができる。
【0035】
2つの重合領域の間を循環するポリマーの制御は、降下管を離れるポリマー量を、固体の流れの制御に適する手段、例えば機械的バルブを用いて調節することにより行うことができる。
【0036】
操作パラメータ、例えば温度は、気相オレフィン重合法において通常のもの、例えば50〜120℃である。
操作圧力は、0.5〜10 MPa、好ましくは1.5〜6 MPaの範囲であり得る。
【0037】
有利には、少なくとも1種の不活性気体が、該不活性気体の分圧の合計が気体の全圧の好ましくは5〜80%である量で重合領域に維持される。不活性気体は、例えば窒素またはプロパンであり得る。
【0038】
好ましくは、種々の触媒成分を、上記の上昇管に、該上昇管のいずれの点においても供給することができる。しかし、これらは降下管のいずれの点においても供給し得る。触媒は、いずれの物理的状態であることができ、よって固体または液体のいずれかの状態の触媒を用いることができる。
【0039】
本発明の重合方法において用いられる好ましい触媒は、少なくとも1つのチタン-ハロゲン結合を有するチタン化合物を含む固体触媒成分と電子供与化合物とを含み、これらの両者が好ましい支持体として、任意に共支持体としてシリカを有する活性形のハロゲン化マグネシウム上に担持されたチーグラー-ナッタ触媒である。
上記の特徴を有する触媒は、特許文献において公知である。特に有利なものは、米国特許第4,399,054号、欧州特許第45977および395083号に記載された触媒において用いられる固体触媒成分である。
【0040】
上記の触媒において用いられる固体触媒成分は、電子供与化合物(内部電子供与化合物)として、エーテル類、ケトン類、ラクトン類、N、Pおよび/またはS原子を含む化合物ならびにモノ-およびジ-カルボン酸のエステル類からなる群より選択される化合物を含む。特に適切な電子供与化合物は、フタル酸エステル、例えばジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジフェニルフタレートおよびベンジルブチルフタレート、ならびにコハク酸のエステルである。
【0041】
特に適切な内部電子供与化合物は、国際特許出願WO 00/63261に開示されるスクシネートから選択される。好ましくは、該スクシネートは次の式(I):
【化1】

【0042】
(式中、R1基およびR2基は互いに同一または異なって、ヘテロ原子を任意に含んでいてもよいC1〜C20の直鎖状または分岐鎖状のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリール基であり;R3〜R6基は互いに同一または異なって、水素、またはヘテロ原子を任意に含んでいてもよいC1〜C20の直鎖状または分岐鎖状のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリール基であり、同じ炭素原子に結合しているR3〜R6基は一緒に結合して環を形成することができるが、但しR3〜R5基が同時に水素である場合に、R6は、3〜20の炭素原子を有する第一級分岐、第二級または第三級アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリール基、あるいはヘテロ原子を任意に含んでいてもよい少なくとも4の炭素原子を有する直鎖状アルキル基である)
を有する。
【0043】
R1およびR2は、好ましくはC1〜C8 アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルおよびアルキルアリール基である。特に好ましくは、R1およびR2が第一級アルキル、特に分岐鎖状第一級アルキルから選択される化合物である。適切なR1およびR2基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、nブチル、イソブチル、ネオペンチル、2-エチルヘキシルである。特に好ましくは、エチル、イソブチルおよびネオペンチルである。
【0044】
式(I)で表される化合物の好ましい群の一つは、R3〜R5基が水素でかつR6が3〜10の炭素原子を有する分岐鎖状のアルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルおよびアルキルアリール基であるものである。特に好ましくは、R6が、3〜10の炭素原子を有する分岐鎖状の第一級アルキル基またはシクロアルキル基である化合物である。具体例は、上記の特許出願に開示されている。
【0045】
さらに、水素ではない少なくとも2つの基、すなわちR3とR5またはR4とR6が異なる炭素原子に結合している化合物も特に好ましい。上記の触媒成分に用いられるそのようなスクシネートの好ましい例は、ジエチル 2,3-ビス(トリメチルシリル)スクシネート、ジエチル 2,2-sec-ブチル-3-メチルスクシネート、ジエチル 2-(3,3,3-トリフルオロプロピル)-3-メチルスクシネート、ジエチル 2,3-ビス(2-エチルブチル)スクシネート、ジエチル 2,3-ジエチル-2-イソプロピルスクシネート、ジエチル 2,3-ジイソプロピル-2-メチルスクシネート、ジエチル 2,3-ジシクロヘキシル-2-メチルスクシネート、ジエチル 2,3-ジベンジルスクシネート、ジエチル 2,3-ジイソプロピルスクシネート、ジエチル 2,3-ビス(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジエチル 2,3-ジ-t-ブチルスクシネート、ジエチル 2,3-ジイソブチルスクシネート、ジエチル 2,3-ジネオペンチルスクシネート、
【0046】
ジエチル 2,3-ジイソペンチルスクシネート、ジエチル 2,3-(1-トリフルオロメチル-エチル)スクシネート、ジエチル 2,3-(9-フルオレニル)スクシネート、ジエチル 2-イソプロピル-3-イソブチルスクシネート、ジエチル 2-t-ブチル-3-イソプロピルスクシネート、ジエチル 2-イソプロピル-3-シクロヘキシルスクシネート、ジエチル 2-イソペンチル-3-シクロヘキシルスクシネート、ジエチル 2-シクロヘキシル-3-シクロペンチルスクシネート、ジエチル 2,2,3,3-テトラメチルスクシネート、ジエチル 2,2,3,3-テトラエチルスクシネート、ジエチル 2,2,3,3-テトラプロピルスクシネート、ジエチル 2,3-ジエチル-2,3-ジイソプロピルスクシネート、ジイソブチル 2,3 ビス(トリメチルシリル)スクシネート、ジイソブチル 2,2-sec-ブチル-3-メチルスクシネート、ジイソブチル 2-(3,3,3-トリフルオロプロピル)-3-メチルスクシネート、ジイソブチル 2,3-ビス(2-エチルブチル)スクシネート、
【0047】
ジイソブチル 2,3-ジエチル-2-イソプロピルスクシネート、ジイソブチル 2,3-ジイソプロピル-2-メチルスクシネート、ジイソブチル 2,3-ジシクロヘキシル-2-メチルスクシネート、ジイソブチル 2,3-ジベンジルスクシネート、ジイソブチル 2,3-ジイソプロピルスクシネート、ジイソブチル 2,3-ビス(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジイソブチル 2,3-ジ-t-ブチルスクシネート、ジイソブチル 2,3-ジイソブチルスクシネート、ジイソブチル 2,3-ジネオペンチルスクシネート、ジイソブチル 2,3-ジイソペンチルスクシネート、ジイソブチル 2,3-(1,1,1-トリフルオロ-2-プロピル)スクシネート、ジイソブチル 2,3-n-プロピルスクシネート、ジイソブチル 2,3-(9-フルオレニル)スクシネート、
【0048】
ジイソブチル 2-イソプロピル-3-iブチルスクシネート、ジイソブチル 2-terブチル-3-iプロピルスクシネート、ジイソブチル 2-イソプロピル-3-シクロヘキシルスクシネート、ジイソブチル 2-イソペンチル-3-シクロヘキシルスクシネート、ジイソブチル 2-n-プロピル-3-(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジイソブチル 2-シクロヘキシル-3-シクロペンチルスクシネート、ジイソブチル 2,2,3,3-テトラメチルスクシネート、ジイソブチル 2,2,3,3-テトラエチルスクシネート、ジイソブチル 2,2,3,3-テトラプロピルスクシネート、
【0049】
ジイソブチル 2,3-ジエチル-2,3-ジイソプロピルスクシネート、ジネオペンチル 2,3-ビス(トリメチルシリル)スクシネート、ジネオペンチル 2,2-ジ-sec-ブチル-3-メチルスクシネート、ジネオペンチル 2-(3,3,3-トリフルオロプロピル)-3-メチルスクシネート、ジネオペンチル 2,3 ビス(2-エチルブチル)スクシネート、ジネオペンチル 2,3-ジエチル-2-イソプロピルスクシネート、ジネオペンチル 2,3-ジイソプロピル-2-メチルスクシネート、ジネオペンチル 2,3-ジシクロヘキシル-2-メチルスクシネート、ジネオペンチル 2,3-ジベンジルスクシネート、ジネオペンチル 2,3-ジイソプロピルスクシネート、ジネオペンチル 2,3-ビス(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジネオペンチル 2,3-ジ-t-ブチルスクシネート、ジネオペンチル 2,3-ジイソブチルスクシネート、ジネオペンチル 2,3-ジネオペンチルスクシネート、ジネオペンチル 2,3-ジイソペンチルスクシネート、ジネオペンチル 2,3-(1,1,1-トリフルオロ-2-プロピル)スクシネート、ジネオペンチル 2,3-n-プロピルスクシネート、ジネオペンチル 2,3(9-フルオレニル)スクシネート、
【0050】
ジネオペンチル 2-イソプロピル-3-イソブチルスクシネート、ジネオペンチル 2-t-ブチル-3-イソプロピルスクシネート、ジネオペンチル 2-イソプロピル-3-シクロヘキシルスクシネート、ジネオペンチル 2-イソペンチル-3-シクロヘキシルスクシネート、ジネオペンチル 2-n-プロピル-3-(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジネオペンチル 2-シクロヘキシル-3-シクロペンチルスクシネート、ジネオペンチル 2,2,3,3-テトラメチルスクシネート、ジネオペンチル 2,2,3,3-テトラエチルスクシネート、ジネオペンチル 2,2,3,3-テトラプロピルスクシネート、ジネオペンチル 2,3-ジエチル-2,3-ジイソプロピルスクシネートである。
【0051】
特に好ましくは、ジエチル 2,3-ジベンジルスクシネート、ジエチル 2,3-ジイソプロピルスクシネート、ジエチル 2,3-ビス(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジエチル 2,3-ジイソブチルスクシネート、ジエチル 2,3-(1-トリフルオロメチル-エチル)スクシネート、ジイソブチル 2,3-ジベンジルスクシネート、ジイソブチル 2,3-ジイソプロピルスクシネート、ジイソブチル 2,3-ビス(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジイソブチル 2,3-n-プロピルスクシネート、ジネオペンチル 2,3-ジエチル-2-イソプロピルスクシネート、ジネオペンチル 2,3-ジイソプロピル-2-メチルスクシネート、ジネオペンチル 2,3-ジシクロヘキシル-2-メチルスクシネート、ジネオペンチル 2,3- ジベンジルスクシネート、ジネオペンチル 2,3-ジイソプロピルスクシネート、ジネオペンチル 2,3-ビス(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジネオペンチル 2,3-ジイソブチルスクシネート、ジネオペンチル 2,3-n-プロピルスクシネート、ジネオペンチル 2-イソプロピル-3-シクロヘキシルスクシネートである。
【0052】
特に適切な他の電子供与体は、式:
【化2】

【0053】
(式中、RIおよびRII基は同一または異なって、C1〜C18アルキル、C3〜C18シクロアルキルまたはC7〜C18アリール基であり;RIIIおよびRIV基は同一または異なって、C1〜C4アルキル基である)
の1,3-ジエーテル類であるか、または2位の炭素原子が5、6もしくは7の炭素原子でできていてかつ2もしくは3の不飽和を含む環状構造または多環構造に属する1,3-ジエーテル類である。
この種類のエーテル類は、公開欧州特許出願第361493および728769号に記載される。
【0054】
上記のジエーテル類の代表例は、次のとおりである:2-メチル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-シクロペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-イソアミル-1,3-ジメトキシプロパンおよび9,9-ビス(メトキシメチル)フルオレン。
【0055】
上記の触媒成分の製造は、種々の方法に従って行なわれる。例えば、MgCl2・nROH付加物(特に球状粒子の形) (ここで、nは通常1〜3であり、ROHはエタノール、ブタノールまたはイソブタノールである)を、電子供与化合物を含有する過剰のTiCl4と反応させる。反応温度は、通常、80〜120℃である。次いで固体を単離し、電子供与化合物の存在または不在下にもう一度TiCl4と反応させ、その後、これを単離して、全ての塩素イオンが消えるまで炭化水素の一定量で洗浄する。固体触媒化合物において、Tiで表されるチタン化合物は、通常、0.5〜10重量%の量で存在する。固体触媒成分上に固定されたままである電子供与化合物の量は、二ハロゲン化マグネシウムに対して、通常、5〜20モル%である。固体触媒成分の製造に用いることができるチタン化合物は、チタンのハロゲン化物およびハロゲンアルコラートである。四塩化チタンが好ましい化合物である。
【0056】
上記の反応により、活性形のハロゲン化マグネシウムが形成される。ハロゲン化物以外のマグネシウム化合物、例えばカルボン酸マグネシウムから出発して活性形のハロゲン化マグネシウムの形成をもたらすその他の反応は、文献において知られている。
【0057】
チーグラー・ナッタ触媒も助触媒、すなわち有機アルミニウム化合物、例えばアルミニウムアルキル化合物を含む。外部供与体が有機アルミニウム化合物に任意に添加される。
助触媒として用いられるAl-アルキル化合物は、Al-トリアルキル、例えばAl-トリエチル、Al-トリイソブチル、Al-トリブチル、およびOもしくはN原子またはSO4もしくはSO3基により互いに結合した2以上のAl原子を含む直鎖状または環状のAl-アルキル化合物を含む。
Al-アルキル化合物は、Al/Ti比が1〜1000である量で、通常用いられる。
【0058】
外部供与体として用い得る電子供与化合物は、芳香族酸エステル、例えばアルキルベンゾエートおよび特に少なくとも1つのSi-OR結合 (ここで、Rは炭化水素基である)を有するケイ素化合物を含む。ケイ素化合物の有用な例は、(tert-ブチル)2Si(OCH3)2、(シクロペンチル)2Si(OCH3)2、(シクロヘキシル) (メチル)Si(OCH3)2および(フェニル)2Si(OCH3)2である。
上記の式を有する1,3-ジエーテル類も有利に用いることができる。
【0059】
内部供与体がこれらのジエーテル類の一つである場合、外部供与体を省略することができる。
【0060】
重合プロセスに先立って、触媒を少量のオレフィンと予め接触させることができ(予備重合)、よって触媒の性能およびポリマーの形態の双方を向上させることができる。予備重合は、触媒を炭化水素溶媒(例えばヘキサンまたはヘプタン)中の懸濁液に維持して、周囲温度〜60℃の温度で、固体触媒成分の重量の0.5〜3倍の量のポリマーを製造するのに充分な時間重合させる。これは、液体プロピレン中で、上記の温度条件で、触媒成分のg当たり1000 gまで達し得るポリマー量を製造するように行うこともできる。
【0061】
本発明に従って用い得る他の触媒は、USP 5,324,800およびEP-A-0 129 368に記載されるようなメタロセン型触媒である。特に有利なものは、例えばUSP 5,145,819およびEP-A-0 485 823に記載されるようなブリッジされたビス-インデニルメタロセンである。適切な触媒の別のクラスは、EP-A-0 416 815、EP-A-0 420 436、EP-A-0 671 404、EP-A-0 643 066およびWO 91/04257に記載されるような、いわゆる拘束配置触媒(constrained geometry catalysts)である。
【0062】
本発明によるパイプ、継手、異形材、フィルムおよびシートは、それぞれ例えば(共)押出または成形によるそれ自体で知られた方法で製造される。
物品の押出は、ポリオレフィン用の種々の型の押出機、例えば一軸または二軸押出機を用いて行うことができる。
【0063】
本発明のさらなる実施形態は、上記のヘテロ相ポリマー組成物を上記の物品に成形する方法である。
用いられるポリマー組成物の高い流動性により、押出プロセスでは、要求されるダイの圧力および温度が、従来のオレフィンポリマー(これらがより高い溶融流量を有していても)を用いるときに必要とされるものより低い。例えば、圧力の値は約10%低減し得る。
【0064】
パイプが多層である場合、少なくとも1層は上記のプロピレンポリマー組成物でつくられる。他の層は、好ましくはR-CH=CH2オレフィン (ここで、Rは水素原子またはC1〜C6アルキル基である)の非晶質または結晶性ポリマー(例えばホモポリマーおよびコポリマーまたはターポリマー)である。特に好ましくは、以下のポリマーである。
【0065】
1) アイソタクチックまたは主にアイソタクチックなプロピレンホモポリマー;
2) プロピレンのエチレンおよび/またはC4〜C8 α-オレフィン、例えば1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテンとのランダムコポリマーおよびターポリマー(ここで全コモノマー含量は0.05〜20重量%である)、あるいは該ポリマーのアイソタクチックまたは主にアイソタクチックなプロピレンホモポリマーとの混合物;
3) (a) プロピレンホモポリマーおよび/または項目(2)のコポリマーおよびターポリマーの一つ、ならびにポリマー(2)(a)について開示されたのと同じ、少量のジエンを任意に含有してもよいエチレンのプロピレンおよび/またはC4〜C8 α-オレフィンとのコポリマーおよびターポリマーを含む弾性部分(b)を含むヘテロ相ポリマーブレンド;および
4) 非晶質ポリマー、例えばフッ素化ポリマー、例えばポリビニルジフルオリド(PVDF)。
【0066】
多層パイプにおいて、パイプの層は、同じかまたは異なる厚さを有し得る。
【0067】
本発明のポリオレフィン組成物を用いることにより、埋没下水システム用のより薄いパイプおよび継手を、例えばS11.2シリーズのパイプの代わりにS 13.3シリーズを用いてつくることができ、8 kN/m2以上のリング剛性に達することができる。S-シリーズおよび対応する壁厚さは規則EN 1852/A1に記載される。
【実施例】
【0068】
以下の実施例は、本発明を説明するが、限定しない。
以下の分析方法は、電子供与化合物の抽出性を測定し、ポリマー組成物およびそれから得られたパイプの特徴づけを行うのに用いる。
溶融流量:ISO法 1133に従う(明記しないかぎりは5 kg、230℃)。
[η]極限粘度数:テトラヒドロナフタレン中において135℃で測定。
エチレン含量:I.R.分光法により測定。
【0069】
25℃でキシレンに可溶および不溶な画分:ポリマー2.5 gをキシレン250 mlに135℃で攪拌下に溶解させる。20分後に、溶液を25℃まで攪拌下に冷却させ、次いで30分間沈降させる。沈殿物を濾紙で濾過し、溶液を窒素流で蒸発させ、残渣を真空下に80℃で一定重量に達するまで乾燥させる。こうして、周囲温度においてキシレンに可溶および不溶なポリマーの重量パーセントを算出する。
【0070】
多分散度インデックス(PI):ポリマー中の分子量分布の測定。PI値を求めるために、低弾性率値、例えば500 Paでの弾性率分離(modulus separation)を、200℃の温度で、0.01 rad/秒から100 rad/秒に増加する振動周期数で操作するRheometrics (USA)により販売されるRMS-800平行板レオメーターモデルを用いて測定する。弾性率分離の値から、PIは次の等式を用いて得ることができる。
PI=54.6×(弾性率分離)-1.76
(ここで、弾性率分離(MS)は:
MS=(G'=500 Paでの周期数)/(G''=500 Paでの周期数)
(ここで、G'は貯蔵弾性率であり、G''は低弾性率(low modulus)である)
と定義される)。
【0071】
曲げ弾性率:ISO法 178に従う。
降伏点伸び:ISO/R法 527に従う。
降伏点引張応力および引張弾性率:ISO法 527に従う。
【0072】
ノッチ付きアイゾッド(IZOD)耐衝撃性:ISO法 180/1Aに従う。
リング剛性:23℃でISO法 9969に従う。
パイプの引張弾性率(ME):German法 AT 127の以下の式により算出:
ME = SN×12×8×t-3×[(dex-t)/2]3
(式中、SNはリング剛性であり、dexはパイプの外径であり、tはパイプの壁厚さである)。
【0073】
実施例1
固体触媒成分の製造
無水MgCl2 28.4 gおよび無水エタノール49.5 g、流動パラフィンROL OB/30 100 mlおよびシリコーン油100 ml (粘度:350 mm2/s)を、不活性雰囲気下に、120℃の恒温浴に浸漬したフラスコに導入し、MgCl2が完全に溶解するまで攪拌下におく。このことにより、油と混和したエタノールとのMgCl2付加物が形成される。まだ不活性雰囲気下で、流動パラフィン150 mlおよびシリコーン油150 mlを含む、加熱ジャケットを備えた1,500 mlの容器に熱混合物を移す。この混合物を120℃に維持し、攪拌下に保つ。混合物を3,000 rpmで3分間攪拌する。そこで、混合物を、最終温度が0℃を超えないように攪拌下に保ち冷却された無水n-ヘプタン1,000 mlを含む2リットルの容器に排出する。
【0074】
このようにして得られた微小球MgCl2・3C2H5OHを、部分的に脱アルコール化する。アルコールは、50℃から100℃に徐々に上昇する温度で、窒素流中に、アルコールがMgCl2のモル当たり1.8モルまで低減されるまで付加物から除去される。次いで、付加物を濾過し、真空下に室温で乾燥させ、USP 4,399,054の実施例1に記載のようにして活性化する。
このような微小球は、1.95重量%のTiを含有する固体触媒成分を生じる。
【0075】
窒素でパージした500 mlの四つ口丸底フラスコ中に、TiCl4 250 mlを0℃で導入する。攪拌しながら、上記の微小球MgCl2・1.8 C2H5OH 10.0 gを導入する。次いで、ジエチル 2,3-(ジイソプロピル)スクシネート (DIEDIPS)のラセミ体およびメソ体の両方のブレンドを内部供与体として加える。
温度を110℃に上げ、60分間維持する。次いで、攪拌を停止し、固体生成物を沈降させ、上清の液体をサイホンで吸いだす。
【0076】
新鮮TiCl4 250 mlを加える。混合物を120℃で30分間反応させ、次いで、上清の液体をサイホンで吸いだす。
次いで、攪拌を停止し、固体物質を沈降させ、上清の液体をサイホンで吸いだす。
新鮮TiCl4 250 mlを再び加える。混合物を120℃で30分間反応させ、次いで、上清の液体をサイホンで吸いだす。
固体を無水ヘキサン(各回100 ml)を用いて60℃で6回洗浄する。
固体触媒成分中の内部供与体含量は、11.1 wt%である。
【0077】
重合
ポリマー組成物は、プロピレンとエチレンを、気相重合装置を含むプラントで連続条件下に重合させることにより製造される。
上記で開示の触媒成分を、外部電子供与成分としてのジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)、およびトリエチルアルミニウム(TEAL)とともに用いる。重量比TEAL/触媒成分は5である。重量比TEAL/DCPMSは4である。触媒を気相重合装置に送る。後者は、相互に連結された2つの円筒形反応器、上昇管1および降下管2を有する。気体-固体分離器から気体を再利用することにより、反応器1中に速流動化条件を確立する。
【0078】
2つの反応器の脚の気体組成物を区別する方法は、「バリア」の供給である。この流れは、降下管のより大きい上部に供給されるプロピレンである。
その他の操作条件および得られたポリマーの特徴は、表Iに示す。
重合の最後に、得られたポリマー粉末を排出し、通常の安定剤パッケージング(stabilizer packaging)で安定化し、窒素流中に60℃で乾燥機にて乾燥させ、次いでポリマー部分に対して2 wt%の量のタルクとともに、粒状化のためにWerner 53押出機に導入する。
【0079】
表IIでは、粒状組成物について測定されたポリマー組成物の特性を報告する。
ISO 9969によるパイプのリング剛性、ならびに110.24 mmの通常の直径および3.2 mmの壁厚さでの弾性率の計算値を測定して計算し、結果を表IIに示す。
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【0082】
実施例2
第一の固体触媒成分の製造
無水MgCl2 48 g、無水C2H5OH 77 g、および灯油830 mlを、不活性気体中に周囲温度で、タービン攪拌機および引抜管(drawing pipe)を備えた2リットルのオートクレーブに供給する。内容物を攪拌しながら120℃に加熱し、それによりMgCl2とアルコールの付加物を形成させ、これは溶融して分散剤と混合されたままである。オートクレーブ内部の窒素圧は1.5 MPaに保つ。オートクレーブの引抜管を外部から加熱ジャケットを用いて120℃に加熱し、該加熱ジャケットは1 mmの内径を有し、加熱ジャケットの一端から他端まで3メートルの長さを有する。混合物は、管を約7 m/secの速度で通って流れる。
【0083】
管の出口において、分散液を、初期温度-40℃に維持されたジャケットにより外部から冷却され、灯油2.5 lを含有する5 lのフラスコに攪拌下に回収する。
分散液の最終温度は0℃である。
【0084】
エマルションの分散相を構成する球状固体生成物は、沈降および濾過により分離し、次いでヘプタンで洗浄して乾燥させる。上記の全ての操作は不活性気体雰囲気下に行う。
50ミクロン以下の最大径を有する球状固体物質の形のMgCl2・3C2H5OH 130 gを得る。次いで、このようにして得られたMgCl2・3C2H5OH微小球を実施例1に記載のようにして部分的に脱アルコール化し、MgCl2・1.1C2H5OHを得る。
【0085】
濾過バリアを備えた500 mlの円筒形ガラス反応器に、0℃でTiCl4 225 mlを、および攪拌しながら15分間かけて、上記のようにして得られた微小球MgCl2・2.1C2H5OH 10.1 g (54ミリモル)を導入する。
添加の最後に、温度を40℃にしてジイソブチルフタレートを導入する。
【0086】
温度を1時間かけて100℃に上げ、攪拌をさらに2時間続ける。次いでTiCl4を濾過により除去し、TiCl4 200 mlを加え、さらに1時間120℃で攪拌を継続する。最後に、内容物を濾過し、濾過物から全ての塩素イオンが消えるまで60℃でn-ヘプタンを用いて洗浄する。この方法で得られた触媒成分は、3.3重量%のTiと10.8重量%のジイソブチルフタレートを含有する。
【0087】
第二の固体触媒成分の製造
第二の触媒を、微小球MgCl2・2.4C2H5OHが得られ、触媒成分が17.4重量%のジイソブチルフタレートを含有する以外は第一の固体触媒成分と同様にして製造する。
【0088】
触媒系および予備重合処理
上記の2種の固体触媒成分の重量比1:1の混合物を重合反応器に導入する前に、これをトリエチルアルミニウムおよびジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)と、TEALの固体触媒成分に対する重量比が11に等しくかつTEALとDCPMSの重量比が5.45であるような量で、12℃で24分間接触させる。
次いで、触媒系を液体プロピレンの懸濁液中に20℃で約5分間維持することにより予備重合に付し、その後これを第一重合反応器に導入する。
【0089】
重合
重合運転は、一つの反応器からすぐ次の反応器に生成物を移送する装置を備えた一連の3つの反応器において、連続的に行う。最初の2つの反応器は液相反応器であり、3つ目は流動床気相反応器である。成分(1)を第一および第二の反応器において製造し、成分(2)を第三の反応器で製造する。
水素を分子量で調節剤として用いる。
気相(プロピレン、エチレンおよび水素)を、ガスクロマトグラフィにより連続的に分析する。
運転の最後に、粉末を排出して窒素流で乾燥させる。
【0090】
次いで、Cortiplast押出機において、このようにして得られたポリマー組成物の粉末を、ポリマー部分に対して2 wt%の量のタルクおよび通常の安定剤パッケージングと混合し、溶融し、そして粒状化する。
押出機において、溶融ポリマー組成物の温度は230℃であり、ダイ圧力は19〜20 MPaである。
【0091】
3つの反応器で製造されたポリマーに関する主重合条件および分析データは、表IIIに報告する。
実施例2のポリマー組成物およびそれから得られたパイプの特徴ならびに機械的および物理的特性は、表IVに報告する。
ISO 9969によるパイプのリング剛性、ならびに250 mmの通常の直径および10.7 mmの壁厚さでの引張弾性率の計算値を測定して算出し、結果を表IVに示す。
【0092】
比較例1
プロピレンのコポリマーは、約4.5 wt%のエチレンを含有し、3.58 dl/gの[η]の値、0.29 g/10分のMFR (230℃、2.16 kg) (230℃および5 kg で0.3 g/10分に相当)を有し、89.1%の量で周囲温度のキシレンに不溶である。
【0093】
硬質パイプの分野の技術の現状に相当する上記の従来の市販のプロピレンコポリマーを、実施例3と同様にしてCortiplast押出機で押し出す。押出機において、温度は227℃であり、ダイ圧力は21 MPaである。
ダイ押出機での高い圧力の値は、従来のポリマーの加工性が、MFR値が類似の本発明による組成物のものより低いことを示す。
【0094】
【表3−1】

【0095】
【表3−2】

【0096】
【表4】

【0097】
実施例1および2は、本発明によるパイプが、従来技術のパイプとは反対に、2000 MPaより高い引張弾性率の値を有することを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で:
1) プロピレンホモポリマー、ならびにエチレン、C4〜C10α-オレフィンおよびこれらの混合物から選択されるα-オレフィン0.1〜10%とプロピレンのランダムコポリマーおよびランダムターポリマーから選択され、85%を超える量で周囲温度においてキシレンに不溶性であり、4〜13の範囲の多分散度インデックスおよび2.2 dl/gを超える極限粘度数([η])の値を有する結晶性プロピレンポリマー65〜95%;ならびに
2) 15〜85%の範囲のエチレン含量および少なくとも1.4 g/mlの極限粘度数([η])の値を有する、C3〜C10α-オレフィンと任意にジエンとのエチレンの弾性オレフィンポリマー5〜35%
を含み、結晶性ポリマー(1)の極限粘度数の値の弾性ポリマー(2)の極限粘度数の値に対する比が0.45〜1.6の範囲であるヘテロ相ポリオレフィン組成物を含む、押出、成形およびこれらの組み合わせにより製造される物品。
【請求項2】
結晶性プロピレンポリマーが、4.5〜12の多分散度インデックスを有する請求項1に記載の物品。
【請求項3】
2000 MPaを超える引張弾性率を有する請求項1または2に記載の物品。
【請求項4】
少なくとも1つの層が請求項1〜3のいずれか1つに記載の組成物を含む単層または多層パイプ。
【請求項5】
平滑な内表面および外表面を有し、20 mm以上から2000 mm以下のパイプの外径を有する固体壁パイプのリング剛性(SN)が、次の数学的関係:
270 kN/m2×[10/(SDR-1)]3≧SN≧130 kN/m2×[10/(SDR-1)]3
(式中、SDRは外径のパイプ壁厚さに対する比を表す)
を満足する請求項4に記載の単層または多層パイプ。
【請求項6】
パイプが、廃水パイプ、地下排水パイプまたは埋没下水パイプのいずれかである請求項4または5に記載のパイプ。
【請求項7】
2 g/10分までの溶融流量の値を有し、重量%で:
1) プロピレンホモポリマー、ならびにエチレン、C4〜C10α-オレフィンおよび混合物から選択されるα-オレフィン0.1〜10%とプロピレンのランダムコポリマーおよびランダムターポリマーから選択され、85%を超えるパーセンテージで周囲温度においてキシレンに不溶性であり、4〜13の範囲の多分散度インデックスおよび2.2 dl/gを超える極限粘度数([η])の値を有する結晶性プロピレンポリマー65〜95%;ならびに
2) 15〜85%の範囲のエチレン含量および少なくとも1.4 g/mlの極限粘度数([η])の値を有する、C3〜C10α-オレフィンと任意にジエンとのエチレンの弾性オレフィンポリマー5〜35%
を含み、結晶性ポリマー(1)の極限粘度数の値の弾性ポリマー(2)の極限粘度数の値に対する比が0.45〜1.6の範囲であるヘテロ相ポリオレフィン組成物。
【請求項8】
結晶性プロピレンポリマーが、4.5〜12の多分散度インデックスを有する請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
請求項7に記載の組成物が、押し出されるかまたは成形されるかまたはその両方である請求項1に記載の物品を製造する方法。
【請求項10】
請求項7または8の組成物からつくられた押出の異形材、フィルムおよびシート。

【公表番号】特表2007−501298(P2007−501298A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522273(P2006−522273)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008252
【国際公開番号】WO2005/014713
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(501468046)バセル ポリオレフィン イタリア エス.アール.エル. (33)
【住所又は居所原語表記】Via Pergolesi 25,20124 Milano,Italy
【Fターム(参考)】