説明

ポリオレフィン系共重合体とその製造方法

【課題】 共重合活性の高いオレフィン系モノマーと反応性乳化剤の共重合体とその製造方法を提供する。
【解決手段】 配位重合触媒の存在下、オレフィン系モノマーと反応性乳化剤を共重合させる際、分子中に存在する共重合可能な官能基を適切に選択した反応性乳化剤(共重合活性の高い反応性乳化剤)を使用することにより、高効率でオレフィン系共重合体が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配位重合触媒存在下、オレフィン系モノマーと反応性乳化剤を共重合させて得られたポリオレフィン系共重合体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境対応という点から、塗料、インク、接着剤などの水性化が望まれている。これらは、成形体の表面あるいは成形体間の界面で多く用いられている。水性塗料、水性インク、水性接着剤としては、古くから、塩ビ系、SBR系、アクリル系などのものが使用されてきたが、近年、塩ビ、エンプラ、ABSなどの成形体がポリオレフィンに転換されているという大きな動きがあり、水性塗料、水性インキ、水性接着剤としても、成形体との接着性などの点からポリオレフィン系のものが望まれている。
【0003】
これに関連する技術としては、配位重合触媒存在下、オレフィン系モノマーを乳化重合させてポリオレフィン系ラテックス(エマルジョン)を得る技術がある(非特許文献1)。
【0004】
このラテックス(エマルジョン)は水性塗料、水性インキ、水性接着剤などに利用可能性があるが、乳化安定性のために乳化剤はポリオレフィンに結合している方が好ましい。さらには、水性塗料、水性インキ、水性接着剤などの改質剤(耐ブロッキング性、スリップ性、耐摩耗性、平滑性、摺動性)としても利用可能性があるが、よく混ざるためには極性を有する乳化剤がポリオレフィンに結合している方が好ましい。また、ラテックス(エマルジョン)から水を取り除いて微粒子の形状にすることにより溶剤型や粉体の塗料やインキ、接着剤の改質剤(耐ブロッキング性、スリップ性、耐摩耗性、平滑性、摺動性)、各種ポリマーの改質剤(耐摩耗性、平滑性、摺動性、帯電防止性、塗装性、印刷性、接着性)などに利用可能性もあるが、よく混ざるためや極性を発現するためには、極性を有する乳化剤がポリオレフィンに結合している方が好ましい。
【0005】
以上のようにオレフィン系モノマーと反応性乳化剤の共重合体が望まれていた。
【非特許文献1】アンゲバンテ・ケミー国際版(Angewandte Chemie International Edition),2002年,41巻,544−561頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、共重合した場合でもオレフィン重合活性の高いオレフィン系モノマーと反応性乳化剤の共重合体と、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは反応性乳化剤とオレフィン系モノマーの共重合体を得ることを目的に鋭意検討した結果、分子中に存在する共重合可能な官能基を適切に選択した反応性乳化剤(以後、共重合活性の高い反応性乳化剤と記載する場合がある。)を使用すること、配位重合触媒存在下、共重合活性の高い反応性乳化剤とオレフィン系モノマーとを共重合させること、により目的とするポリオレフィン系共重合体が得られることを見出した。
すなわち本発明は、
オレフィン系モノマーと反応性乳化剤が、配位重合触媒の存在下共重合されてなることを特徴とするポリオレフィン系共重合体。
【0008】
オレフィン系モノマーと反応性乳化剤を、配位重合触媒の存在下共重合させることを特徴とする前記のポリオレフィン系共重合体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、反応性乳化剤とオレフィン系モノマーとの共重合体が得られる。これらはラテックス(エマルジョン)として安定性が高いため水性塗料、水性インキ、水性接着剤など、および、水性塗料や水性インキや水性接着剤などの改質剤(耐ブロッキング性、スリップ性、耐摩耗性、平滑性、摺動性)として有用である。また、乳化重合を用いた重合方法を採用しているため微粒子形状が得られやすいことにより、溶剤型や粉体の塗料やインキ、接着剤の改質剤(耐ブロッキング性、スリップ性、耐摩耗性、平滑性、摺動性)、各種ポリマーの改質剤(耐摩耗性、平滑性、摺動性、帯電防止性、塗装性、印刷性、接着性)として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のポリオレフィン系共重合体は、配位重合触媒の存在下、オレフィン系モノマーと反応性乳化剤を共重合させることにより得られる。以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
(配位重合触媒)
本発明では、ポリオレフィン系共重合体(ラテックス)を製造するための触媒として、配位重合触媒を用いる。ここで、配位重合触媒とは、配位重合を進行させる効果を有する触媒をいう。
【0012】
本発明に使用される配位重合触媒としては、特に限定されず、水および極性化合物の共存下でオレフィン重合活性を有する公知の配位重合触媒があげられ、例えばケミカル・レビュー(Chemical Review),2000年,100巻,1169−1203頁、ケミカル・レビュー(Chemical Review),2003年,103巻,283−315頁、有機合成化学協会誌,2000年,58巻,293頁、アンゲバンテ・ケミー国際版(Angewandte Chemie International Edition),2002年,41巻,544−561頁、アンゲバンテ・ケミー国際版(Angewandte Chemie International Edition),2005年,44巻,429−432頁などに記載されているものが挙げられる。
【0013】
これらの中でも合成が簡便であり高活性が得られることから、一般式(1)〜(5)で記載される後周期遷移金属錯体系の配位重合触媒が好ましい。
【0014】
ここで、後周期遷移金属とは、周期表の後半にあたる遷移金属をいい、7A、8、1B、2B族がそれにあたる。なお、本発明では、特に8族の遷移金属が好ましく用いられる。
【0015】
【化1】

(式中、Mはパラジウムまたはニッケルである。R1,R4は各々独立して、炭素数1〜4の炭化水素基である。R2,R3は各々独立して水素原子、またはメチル基である。R5はハロゲン原子、水素原子、または炭素数1〜20の有機基である。Xは必ずしも必須ではないがMに配位可能なヘテロ原子を持つ有機基であり、R5と結合していてもよい。L-は任意のアニオンである。)
【0016】
【化2】

(式中、Mはパラジウムまたはニッケルである。R1,R4は各々独立して、炭素数1〜4の炭化水素基である。R5はハロゲン原子、水素原子、または炭素数1〜20の有機基である。Xは必ずしも必須ではないがMに配位可能なヘテロ原子を持つ有機基であり、R5と結合していてもよい。L-は任意のアニオンである。)
【0017】
【化3】

(式中、Mはニッケル、パラジウムまたは白金である。Eは酸素または硫黄である。Xはリン、砒素またはアンチモンである。R6,R7,R8は各々独立して、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。Rf1はフッ素原子または炭素数1〜20のフッ素化炭化水素基である。Rは水素、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、水酸基、炭素数1〜20の炭化水素基からなるエーテル基、炭素数1〜20の炭化水素基からなるエステル基、スルホン酸塩または炭素数1〜20の炭化水素基からなるスルホン酸エステル基である。)
【0018】
【化4】

【0019】
【化5】

(式中、Mはニッケル、パラジウムまたは白金である。Eは酸素または硫黄である。Xはリン、砒素またはアンチモンである。R6,R7,R8は各々独立して、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。Yはハロゲン原子である。mは1〜3である。)
一般式(1)、(2)記載の後周期遷移金属錯体系の配位重合触媒は、αージイミン型の配位子と遷移金属とからなる触媒と後述の助触媒の反応により得られもので、Brookhart触媒として知られている。
【0020】
一般式(1)、(2)中に記載のMは、配位重合触媒が水中で安定であることからパラジウムが好ましい。また、一般式(1)、(2)中に記載のR1、R4は、炭素数1〜4の炭化水素基であれば特に限定されず、この中でも、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−ブチル基などが好ましく、メチル基、イソプロピル基がさらに好ましい。
【0021】
一般式(1)、(2)中に記載のXは、後周期遷移金属Mに配位可能な分子であれば特に限定されず、例えばジエチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、アセトアルデヒド、酢酸、酢酸エチル、水、エタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレンなどの極性化合物が挙げられる。またR5がヘテロ原子、特にエステル結合などのカルボニル酸素を有する場合には、このカルボニル酸素がXとして配位してもよい。なお、オレフィンとの重合時には、オレフィンが配位する形になることが知られている。
【0022】
また、一般式(1)、(2)中に記載のL-は、α−ジイミン型の配位子と遷移金属とからなる触媒と、後述の助触媒の反応により、カチオン(M+)と共に生成するもので、溶媒中で非配位性のイオンペアを形成できるものならば特に限定されない。
【0023】
前記α−ジイミン型の配位子のなかでも、ArN=C(R2)−C(R3)=NArで記載される2つのイミン窒素に、芳香族基(Ar)が結合した化合物が、合成が簡便なこと、活性が高いことからさらに好ましく、置換基を持つ芳香族基を有する化合物が、立体因子的に有効なこと、ポリマーの分子量が高くなる傾向にあることから特に好ましい。置換基を有する芳香族基としては、より具体的には、2,6−ジメチルフェニル、2,6−ジイソプロピルフェニルなどが挙げられる。
【0024】
一般式(1)中に記載のR2、R3は、特に限定されないが、炭化水素基であることが好ましく、水素原子、メチル基、および一般式(2)中に記載のアセナフテン骨格を有する炭化水素基が、合成が簡便なこと、触媒活性が高いことよりさらに好ましい。
【0025】
本発明の後周期遷移金属錯体から得られる活性種中の補助配位子(R5)としては、炭化水素基あるいはハロゲン原子あるいは水素原子が好ましい。後述する助触媒のカチオン(Q+)が、触媒の金属−ハロゲン結合あるいは金属−水素結合あるいは金属−炭素結合から、ハロゲンなどを引き抜き、塩が生成する一方、触媒からは、活性種である、金属−炭素結合あるいは金属−ハロゲン結合あるいは金属−水素結合をもつカチオン(M+)が発生し、助触媒のアニオン(L-)と非配位性のイオンペアを形成する必要があるためである。
【0026】
R5としては、メチル基、塩素原子、臭素原子あるいは水素原子などが挙げられ、このなかでも、メチル基あるいは塩素原子が、合成が簡便であることから好ましい。なお、M+−ハロゲン結合へのオレフィンの挿入よりも、M+−炭素結合(あるいは水素結合)へのオレフィンの挿入の方がおこりやすいため、触媒の補助配位子としては、メチル基がより好ましい。
【0027】
さらに、R5としてはMに配位可能なカルボニル酸素を持つエステル結合をもつ有機基であってもよく、例えば、酪酸メチルから得られる基が挙げられる。
【0028】
助触媒としては、特に限定されず一般式:Q+-で記載される化合物が挙げられる。ここで、Qとしては、たとえばAg、Li、Na、K、Hが挙げられ、Agがハロゲンの引き抜き反応が完結しやすいことから好ましく、Na、Kが安価であることからより好ましい。Lとしては、たとえば、BF4、B(C654、B(C63(CF324、PF6、AsF6、SbF6、(RfSO22CH、(RfSO23C、(RfSO22N、RfSO3などが挙げられ、このなかでも、PF6、AsF6、SbF6、(RfSO22CH、(RfSO23C、(RfSO22N、RfSO3が、極性化合物に安定な傾向を示すことから好ましく、PF6、AsF6、SbF6が、合成が簡便で工業的に入手が容易であることからさらに好ましい。
【0029】
また、活性の高さからは、BF4、B(C654、B(C63(CF324が好ましく、B(C654、B(C63(CF324がさらに好ましい。
【0030】
前記Rfは複数のフッ素原子をもつフッ素化炭化水素基を示す。これらフッ素原子は、アニオンを非配位的にするために有効に働き、その数は多いほど好ましい。Rfとしては、複数のフッ素原子をもつフッ素化炭化水素基であれば限定されず、例えば、CF3、C25、C49、C817、C65があげられる。これらはいくつかを組み合わせて使用してもよい。
【0031】
一般式(3)、(4)または(5)で記載される後周期遷移金属錯体系の配位重合触媒は、SHOP(Shell Higher Olefin Process)触媒として知られている。一般式(3)で記載される配位重合触媒の中でも一般式(6):
【0032】
【化6】

(式中、Mはニッケル、パラジウムまたは白金である。Eは酸素または硫黄である。Xはリン、砒素またはアンチモンである。R6,R7,R8は各々独立して、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。Rf1,Rf2は各々独立してフッ素原子または炭素数1〜20のフッ素化炭化水素基である。)で記載されるオレフィン系重合用触媒が好ましい。特に、Rf1がフッ素化炭化水素基である場合、乳化系でも高いエチレン重合活性を示すことが報告されている(Angew.Chem.Int.Ed.2002年,41巻,544頁)。
【0033】
一般式(6)記載の配位重合触媒は、一般式(3)中に記載の有機基RとしてRf2で記載される電子吸引性の、フッ素原子または炭素数1〜20のフッ素化炭化水素基を選定したものであり、これにより触媒が高活性化し、より高分子量のポリオレフィン系共重合体を得ることができるものである。
【0034】
一般式(3)記載配位重合触媒は、一般式(7)記載の反応により調製するのが好ましい。
【0035】
【化7】

(反応式中、Mはニッケル、パラジウムまたは白金である。Eは酸素または硫黄である。Xはリン、砒素またはアンチモンである。R6,R7,R8は各々独立して、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。Rf1はフッ素原子または炭素数1〜20のフッ素化炭化水素基である。Rは水素、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のハロゲン化炭化水素基、水酸基、炭素数1〜20の炭化水素基からなるエーテル基、炭素数1〜20の炭化水素基からなるエステル基、スルホン酸塩または炭素数1〜20の炭化水素基からなるスルホン酸エステル基である。MLnはゼロ価のニッケル、パラジウムまたは白金化合物である。LはMに対して配位し、Mの価数をゼロ価に保持するものであれば特に制限はない。nは自然数である)。
【0036】
一般式(7)記載の反応式の中でも、反応が進行しやすいことから、式中に記載のMはゼロ価のニッケルが、Eは酸素が、Xはリンが好ましい。なお、一般式(7)記載の反応で得られる配位重合触媒(一般式(3)、一般式(6)で記載)中のM、E、Xの好ましい例示も無論同様なものが挙げられる。
【0037】
一般式(3)、(6)、(7)中に記載のRf1、一般式(6)中に記載のRf2としては、炭素数1〜20のフッ素化炭化水素基が好ましく、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ペンタフルオロフェニル基、トリフルオロメチル基で置換されたフェニル基などがより好ましい。また、Rf1はトリフルオロメチル基が特に好ましく、Rf2はペンタフルオロフェニル基が特に好ましい。
【0038】
また、一般式(3)、(6)、(7)中に記載のR6,R7,R8としては、炭素数1〜20の炭化水素基が好ましく、置換芳香族基がさらに好ましく、フェニル基が最も好ましい。
【0039】
一般式(4)記載の配位重合触媒は、一般式(8)記載の反応により調製するのが好ましい。
【0040】
【化8】

また、一般式(5)記載の配位重合触媒は、一般式(9)記載の反応により調製するのが好ましい。
【0041】
【化9】

(一般式(8)、(9)中、Mはニッケル、パラジウムまたは白金である。Eは酸素または硫黄である。Xはリン、砒素またはアンチモンである。R6,R7,R8は各々独立して、水素または炭素数1〜20の炭化水素基である。Yはハロゲン原子である。mは1〜3である。MLnはゼロ価のニッケル、パラジウムまたは白金化合物である。LはMに対して配位し、Mの価数をゼロ価に保持するものであれば特に制限はない。nは自然数である。)
一般式(8)、(9)記載の反応式の中でも、反応が進行しやすいことから、式中に記載のMはゼロ価のニッケルが、Eは酸素が、Xはリンが好ましい。なお、一般式(8)、(9)記載の反応で得られる配位重合触媒(一般式(4)、一般式(5)で記載)中のM、E、Xの好ましい例示も無論同様なものが挙げられる。
【0042】
一般式(7)、(8)、(9)中に記載のMLnの一種であるゼロ価のニッケル化合物としては、ゼロ価のニッケルを有する有機化合物ならば特に限定されず、そのなかでもビス(シクロオクタジエン)ニッケル、ビス(シクロオクタテトラエン)ニッケル、ビス(1、3、7-オクタトリエン)ニッケル、ビス(シクロドデカトリエン)ニッケル、ビス(アリル)ニッケル、ビス(メタリル)ニッケル、トリエチレンニッケル、ビス(ブタジエン)ニッケル、ビス(イソプレン)ニッケルが好ましく、ビス(シクロオクタジエン)ニッケルがさらに好ましい。
【0043】
前記ビス(シクロオクタジエン)ニッケルは公知の方法に従って合成することもできるし、固体を取り出すことなく溶液のまま用いてもよい(例えば、実験化学講座第4版、371頁に準じて2価のニッケル化合物とシクロオクタジエンなどとトリアルキルアルミニウムとから合成できる)。
【0044】
一般式(4)、(5)、(8)、(9)中に記載のYは、塩素原子またはフッ素原子が好ましく、フッ素原子であることがより好ましい。また、一般式(4)、(5)、(8)、(9)中に記載のR6,R7,R8としては、炭素数1〜20の炭化水素基が好ましく、置換芳香族基がさらに好ましく、フェニル基が特に好ましい。
【0045】
また、一般式(7)、(8)、(9)記載の反応の促進のために、ホスフィン、ホスフィン酸化物、ケトン、エステル、エーテル、アルコール、ニトリル、アミン、ピリジン、オレフィンなどを共存させるのが好ましい。特にオレフィンを共存させるのが好ましい。オレフィンには以下に説明するオレフィン系モノマーを含む。
【0046】
一般式(7)、(8)、(9)記載の反応について、反応温度は0〜100℃、15〜90℃が好ましい。反応時間は特に制限はないが、10分間〜24時間が好ましい。なお、微量の酸素や水の存在による反応への影響は大きくないが、反応は不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましく、使用される不活性ガスとしては、アルゴン、窒素などが挙げられる。また、反応は公知の有機溶媒中で実施され、このなかでも脂肪族または芳香族溶媒が好ましく、これらはハロゲン化されていてもよい。
【0047】
好ましい有機溶媒の具体例としては、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘプタン、エチルシクロヘキサン、ブチルクロリド、塩化メチレン、クロロホルムなどが挙げられる。溶媒中のMの濃度は、1〜20000μmol/L、さらには10〜10000μmol/Lの範囲が好ましい。
【0048】
一般式(7)、(8)、(9)記載の反応は、分子内にX,Eを有する配位子と金属化合物(MLn)の等量反応であるが、反応収率を高めるため少なくともMLnを等量以上使用するのが好ましく、モル比(MLn/配位子)としては、5/1〜1/1が好ましく、3/1〜2/1がより好ましい。
【0049】
一般式(3)、(4)、(5)、(6)記載の配位重合用触媒としては、特に限定されず、式中に記載のMがニッケルである化合物が、入手が容易であることから好ましく、その具体例としては、一般式(3)記載の触媒としては、(10)式で記載される化合物など、一般式(4)、(5)記載の触媒としては、(11)式で記載される化合物など、一般式(6)記載の触媒としては、(12)式で記載される化合物などが挙げられる。
【0050】
【化10】

【0051】
【化11】

【0052】
【化12】

(式中、Phはフェニル基、R'は炭素数1〜6の炭化水素基、nは1〜3を示す)。
(オレフィン系モノマー)
本発明に用いられるオレフィン系モノマーとは、配位重合可能な炭素−炭素二重結合を有するオレフィン系化合物をいう。オレフィン系モノマーとしては、前記条件を満たす化合物ならば特に限定されず、このなかでも炭素数2〜20のオレフィンが好ましく、その具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロヘキサン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネンなどが挙げられる。
【0053】
また、炭素数10以下のα−オレフィンが、重合活性が高いことからより好ましく、その具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが挙げられる。これらの中でもエチレンが高活性のために特に好ましい。なお、これらのオレフィン系モノマーは、単独で使用してもよく、また2種以上使用してもよい。
【0054】
また、得られるポリオレフィン系共重合体の分子量、分岐度、架橋度などを調整する目的で、必要に応じて、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、1,11−ドデカジエン、1,13−テトラデカジエン、1,15−ヘキサデカジエン、1,5−シクロオクタジエン、ノルボルナジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ジメタノオクタヒドロナフタリン、ジシクロペンタジエンなどのジエン類を少量添加してもよい。ジエン類の添加量は、オレフィン系モノマー100重量部に対して0〜20重量部が好ましい。
【0055】
なお、本発明においてビニル系モノマーを添加することは、重合活性を低下させる可能性がある。
【0056】
オレフィン系モノマーの使用量としては、特に制限はないが、分子量の大きい重合体を収率良く得られることから、オレフィン系モノマー量は配位重合触媒量に対して大過剰に使用することが好ましく、具体的なモル比(オレフィン系モノマー/触媒活性種)としては、10〜109が好ましく、100〜107がより好ましく、1000〜105が特に好ましい。
【0057】
(反応性乳化剤)
本発明は、オレフィン系モノマーの共重合成分として反応性乳化剤を使用する。
【0058】
本発明に使用される反応性乳化剤とは、分子中にオレフィン系モノマーとの共重合性の二重結合を有する重合用乳化剤であり、重合が完了するまでは通常の重合用乳化剤と同様にポリマー粒子を安定化させる働きを有し、重合終了時にはモノマーと共重合してポリマー鎖中に取り込まれる性質を有するものをいう。
【0059】
反応性乳化剤としては、配位重合可能な炭素−炭素2重結合を有している乳化剤であれば、特に限定されず、公知の反応性乳化剤を使用することが可能である。このなかでも、オレフィン系モノマーとの共重合時に高い活性を発現できるということから、アクリル基、メタクリル基、アリル基、α−オレフィン含有基、環状オレフィン含有基、スチレン含有基を有する化合物であることが好ましい。
【0060】
また、反応性乳化剤としては、配位重合可能な炭素−炭素2重結合を有していれば、アニオン系、ノニオン系、カチオン系のいずれの乳化剤でも特に限定されず、単独で又は2種類以上組み合わせて使用できる。
【0061】
具体的には、アリル基を有するアニオン系反応性乳化剤としては、旭電化工業(株)製のアデカリアソープSE−10N、アデカリアソープSE−20N、アデカリアソープSE−30Nが、スチレン含有基を有するアニオン系反応性乳化剤としては、第一工業製薬(株)製のアクアロンHS−05、アクアロンHS−10、アクアロンHS−20、アクアロンHS−30、花王(株)製のラテムルS−120、ラテムルS−120A、ラテムルS−180、ラテムルS−180A、三洋化成工業(株)製のエレミノールJS−21が、メタクリル基を有するアニオン系反応性乳化剤としては、日本乳化剤(株)製のアントックスMS−60が挙げられる。その他、アルキルアルケニルコハク酸エステル塩系反応性乳化剤である花王(株)製のラテムルASK、ポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート硫酸エステル塩系反応性乳化剤である三洋化成工業(株)製のエレミノールRS−30、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル脂肪族不飽和ジカルボン酸エステル塩系反応性乳化剤である日本乳化剤(株)製のRA−1120、RA−2614、(メタ)アクリル酸スルホアルキルエステル塩系反応性乳化剤である日本乳化剤(株)製)のアントックスMS−2N、モノもしくはジ(グリセロール−1−アルキルフェニル−3−アリル−2−ポリオキシアルキレンエーテル)リン酸エステル塩系反応性乳化剤である第一工業製薬(株)製のH−3330PL、フタル酸ジヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート硫酸エステル塩系反応性乳化剤などが挙げられる。
【0062】
アリル基を有するノニオン系反応性乳化剤としては、旭電化工業(株)製のアデカリアソープNE−10、アデカリアソープNE−20、アデカリアソープNE−30、第一工業製薬(株)製のアクアロンRN−10、アクアロンRN−20、アクアロンRN−30、アクアロンRN−50が、(メタ)アクリレート基を有するノニオン系反応性乳化剤としては、日本乳化剤(株)製のRMA−564、RMA−568、RMA−1114が挙げられる。 同じく、メタクリル基を有するノニオン系反応性乳化剤としては、日本油脂(株)社製のブレンマーPE−90、200,350、PP−1000、500、800、50PEP−300、日本乳化剤社製のMA−30、50、100、150が、アクリル基を有するノニオン系反応性乳化剤としては、日本油脂(株)社製のブレンマーAE−90、200、400が挙げられる。その他、メトキシポリエチレングリコールメタクリレートとメタクリル酸メチルの混合物である日立化成工業(株)社製のFA2000M、アシドホスホキシエチルアクリレート又はメタクリレート、ポリエチレンあるいはプロピレングリコールモノアクリレート又はメタクリレートの燐酸エステルである旭電化工業(株)製のアデカリアソープPP70、アデカリアソープPP710)などが挙げられる。
【0063】
(オレフィン系モノマーと反応性乳化剤の共重合)
本発明の、配位重合触媒を用いた、反応性乳化剤とオレフィン系モノマーの共重合方法は、得られる共重合体がラテックス(エマルジョン)で得られれば特に限定はないが、乳化重合法(ミニエマルジョン重合法を含む)に近い系で行うことができる。例えば水中に配位重合触媒および反応性乳化剤およびオレフィン系モノマーを均一に分散させて反応させることが出来る。用いるオレフィン系モノマーが反応温度において気体である場合は、低温で凝縮あるいは凝固させて液体もしくは固体として仕込んだ後に系を反応温度まで加熱しても良いし、圧力をかけて液体または気体として仕込んでも良い。
【0064】
オレフィン系モノマーおよび配位重合触媒は、反応容器内に一括して全量を仕込んでも一部を仕込んだ後に残りを連続的にまたは間欠的に追加しても良い。また、水および反応性乳化剤(乳化剤を含んでも良い)と混合して、例えばホモジナイザーなどをかけて乳化液とした状態で仕込んでも良い。
【0065】
反応性乳化剤とともに用いる乳化剤は公知のものを使うことができ、アニオン性、カチオン性、ノニオン性のいずれの乳化剤も特に限定なく使うことができる。乳化能が良好であるという点から、アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルキル硫酸のアルカリ金属塩、アルキルスルホコハク酸のアルカリ金属塩などのアニオン性乳化剤が好ましく、さらに好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウムなどが好ましい。該乳化剤の使用量としては、特に限定がなく、適宜調整すればよいが、好ましくは使用する水に対して、1g/L〜50g/L、さらに好ましくは2g/L〜20g/Lである。
【0066】
重合の際、オレフィン系モノマーおよび配位重合触媒の溶解度を高め反応を促進するために有機溶媒を少量添加してもよい。その溶媒としては特に限定されず、公知の有機溶媒の添加が可能である。この中でも、脂肪族系または芳香族系の有機溶媒が好ましく、これらはハロゲン化されていてもよい。具体例としては、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ブチルクロリド、塩化メチレン、クロロホルムが挙げられる。
【0067】
また、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、アセトン、エタノール、メタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチルなどの極性溶媒であってもよい。これら具体例のなかでも、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、ブチルクロリド、クロロベンゼンなどが、水溶性が比較的低く、かつ触媒が溶解しやすい溶媒であることからより好ましい。
【0068】
あらかじめ系全体を乳化させておくミニエマルジョン重合の場合は、エマルジョン(ラテックス)の安定化のためにペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカンなどの水溶性の低い脂肪族溶媒、ポリブテンなどの水溶性の低いオリゴマーなどが添加される。これらの溶媒は単独で用いても良いし、複数を組み合わせて用いても良い。溶媒の合計使用量は、反応液全体の体積に対して好ましくは30容量%以下、さらに好ましくは10容量%以下である。これらの溶媒は、そのまま添加してもよいし、乳化させて添加しても良い。
【0069】
オレフィンモノマーと反応性乳化剤の共重合は、−30〜200℃、好ましくは0〜100℃、特に好ましくは15〜90℃で行われる。重合時間は特に制限はないが、通常10分〜24時間が好ましい。反応圧力は特に制限はないが、常圧〜10MPaである。温度および圧力は、反応開始から終了まで常時一定に保っても良いし、反応途中で連続的もしくは段階的に変化させても良い。
【0070】
用いるオレフィン系モノマーがエチレン、プロピレンなどの気体である場合は、重合反応によるモノマー消費に伴って徐々に圧力が低下しうるが、そのまま圧力を変化させて反応を行っても良く、モノマーを供給したり加熱するなどにより常時一定の圧力を保って反応を行っても良い。
【0071】
本発明により得られるポリオレフィン系共重合体は通常ラテックスとして得られる。ラテックスの粒子径は、使用した(反応性)乳化剤、有機溶媒、水の量、乳化条件によって適宜調整することが可能であるが、ラテックスの分散安定性が良好なことなどから、20〜1000nmが好ましく、50〜900nmがより好ましく100〜800nmが特に好ましい。
【0072】
なお、前記のごとく得られるポリオレフィン系共重合体を含むラテックスは、たとえば該ラテックスを噴霧乾燥したり、あるいは塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、ギ酸カルシウムなどの電解質により凝集させたり、このような析出のプロセスを経たのち洗浄・脱水(脱溶媒)・乾燥などの処理を経て、ポリオレフィン系共重合体からなる微粒子、粉末、樹脂塊あるいはゴム塊として回収することができる。
【実施例】
【0073】
以下に、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限を受けるものではない。
(固形分含量(SC)の測定方法)
反応後に得られたラテックスを軟膏缶に0.5〜2g程度採取し、100℃のオーブンで熱乾燥して残留する固形分の割合を以下の計算式を用いて求め、これをラテックス中の固形分濃度(SC)とした。
SC=(M3−M1)/(M2−M1
(式中、M1は空の軟膏缶の質量、M2はラテックス液を入れた軟膏缶の質量、M3はラテックス液を乾燥させた軟膏缶の質量である。)
なお、熱乾燥する時間は、さらに30分以上加熱しても重量変化が1%以下となるまで(通常30分〜2時間)とした。
【0074】
(TurnOverNumber(TON)の測定方法)
反応後に得られたラテックスの全重量(Mtotal)と前記固形分濃度(SC)を乗じることにより、重合で生成したポリエチレン共重合体の重量(MPE:MPE=Mtotal×SC)を求めた。つぎに、以下の計算式を用いて重合により触媒1分子あたり何モルのエチレン(分子量:28)が取り込まれたかを示すTurnOverNumber(TON)を求めた。TON=(MPE/28)/Qcat
(式中、Qcatは反応系中に存在する触媒のモル数で、後述の(合成例1)によって得られた配位子の仕込みモル数を用いた。)
(合成例1)
<配位子の合成>
窒素雰囲気下、Helvetica Chimica Acta.1928頁,76巻,1993年を参考にして合成したペンタフルオロベンジルトリフェニルホスホニウムブロミド2.61g、乾燥THF(和光純薬(株)製)11mlを仕込み、氷浴を用いて0℃に冷却した。モレキュラーシーブで乾燥したトリエチルアミン(和光純薬(株)製)1.5mlを加え、15分攪拌した。さらにトリフルオロ酢酸無水物(東京化成製)0.78mlを滴下し、0℃で1時間、室温(15℃)で1時間反応させた。
【0075】
濾液を濃縮し、蒸留水(和光純薬(株)製)15mlで洗浄、乾燥した。得られた生成物を60℃のメタノールに溶解させ0℃まで徐々に冷却し、再結晶を行った。乾燥後の収量は、1.5gであった。1H−NMR(CDCl3)により、ベンジルプロトンが消失していることから、下記化学式で示される化合物が生成していることを確認した。
【0076】
【化13】

(実施例1)
<反応性乳化剤(ブレンマー50PEP−300)を用いたエチレン乳化重合>
ドデシル硫酸ナトリウム(a)(Fluka製)2g、純水(和光純薬製)500ml、ヘキサデカン(和光純薬製)5.1g、1,9-デカジエン(東京化成製)5.1gと下記化学式で示されるブレンマー50PEP-300(日本油脂製)5gの混合物を1L4口フラスコにいれ、減圧とアルゴン(エアウォーター社製、超高純度アルゴンガス)置換を20回繰り返すことで水溶液の脱気とフラスコ内のアルゴン置換を行った後、脱水トルエン(関東化学社製、モレキュラーシーブスによる乾燥、1時間のアルゴンバブリング処理をしたもの)50mlを加え、超音波ホモジナイザー(SMT company社製、超音波分散機 UH−600)で約2分間乳化させた。
【0077】
【化14】

得られた乳化溶液をアルゴン雰囲気下の1L耐圧オートクレーブ(TAIATSU TECHNO社製、TAS−1型オートクレーブ)にチューブを用いて導入し、オートクレーブ内液温を70℃に調節した。
【0078】
一方、ビスシクロオクタジエンニッケル(Ni(cod)2(関東化学社製))27.8mg(101μmol)をアルゴン雰囲気下で20mlシュレンク管に秤量した。また、別の20mlシュレンク管に、(合成例1)の配位子をアルゴン雰囲気下13.5mg(25.4μmol)秤量した。Ni(cod)2、及び、配位子のシュレンク管に0.6mLずつトルエンを加えて、これらを溶解させた後、Ni(cod)2のトルエン溶液を配位子のトルエン溶液に加えた。続いて、この溶液に1−ヘキセン(和光純薬社製、蒸留後、1時間のアルゴンバブリング処理をしたもの)0.36mLを加えた。1−ヘキセンを加えると、触媒溶液は黄色からオレンジ色へと変化した。色調の変化を確認した後、この溶液をシリンジでドデシル硫酸ナトリウム(b)50mgと蒸留水1.8mLを入れた20mLシュレンク管に注入した。この混合液に超音波ホモジナイザーを約10秒間作用させることにより、乳化状態の触媒溶液を得た。
【0079】
この乳化状態の触媒溶液を、先に乳化溶液を仕込んでおいた1Lオートクレーブ内にシリンジで加えた後、ただちに600rpmで撹拌を開始した。その後エチレンガスを添加し、オートクレーブ内が3MPaとなるように調整した。エチレンガス導入後、エチレンの消費にともなう発熱が観測され、液温のゆるやかな上昇が約4分続いた。オートクレーブ内液温を70℃に保ち2時間反応させ、反応後、未反応のエチレンガスを除去し、反応性乳化剤とポリエチレンの共重合ラテックスを得た。
【0080】
なお、得られた共重合ラテックスの固形分含量(SC)は1.94%であり、この反応での単位触媒あたりのエチレンモノマー取り込み数を示すTurn Over Number(TON)は5500であった。
(実施例2)
<反応性乳化剤(ラテムルS180)を用いたエチレン乳化重合>
ドデシル硫酸ナトリウム(a)を使用しないこと、使用する反応性乳化剤をブレンマー50PEP−300からラテムルS180(化学式を下記に記載)、に変更する以外は実施例1と同様にした。エチレン導入後、エチレンの消費にともなう発熱が観測され、液温のゆるやかな上昇が約3分続いた。オートクレーブ内液温を70℃に保ち2時間反応させ、反応後、未反応のエチレンガスを除去し、反応性乳化剤とポリエチレンの共重合体ラテックスを得た。なお、得られた共重合体ラテックスの固形分含量は1.33%であり、この反応でのTONは6600であった。
【0081】
【化15】

(比較例1)
ビスシクロオクタジエンニッケルと(合成例1)の配位子を使用しないこと以外は実施例2と同様にした。エチレンを導入したが、発熱は観測されず、液温は上昇しなかった。
【0082】
なお、実施例1では、反応性乳化剤のみでは系内の乳化状態が不安定であったため、乳化状態を安定化する目的で、乳化剤(ドデシル硫酸ナトリウム(a))を添加した。
実施例1〜2、比較例1の結果を表1に示す。
【0083】
【表1】

表1より明らかなように 配位重合触媒と反応性乳化剤の存在下、オレフィン系モノマーが重合していることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系モノマーと反応性乳化剤が、配位重合触媒の存在下共重合されてなることを特徴とするポリオレフィン系共重合体。
【請求項2】
オレフィン系モノマーと反応性乳化剤を、配位重合触媒の存在下共重合させることを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン系共重合体の製造方法。

【公開番号】特開2008−115230(P2008−115230A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−298102(P2006−298102)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】